説明

炊飯器

【課題】炊飯工程中に発生するおねばを鍋内に満遍なく戻すことができる炊飯器において、部品等の落下を抑制した安全性の高い炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯鍋20と、炊飯鍋20を収容し加熱手段を備える炊飯器本体11と、蓋体21と、炊飯鍋20内の内圧を調整する内圧調整装置PVと、一連の炊飯工程を実行する制御装置62とを備えた炊飯器10において、蓋体21は、炊飯鍋20の開口を密閉する内蓋22と、内蓋22が装着されて炊飯器本体11の開口を覆う中蓋33と、中蓋33の上部を覆いおねば貯留タンク60が装着される外蓋58とを有し、内蓋22には、所定面積を有し所定深さ窪んだ凹部22bが設けられ、凹部22bには複数の貫通孔22dが形成され、内蓋22に形成された凹部22bの開口部22cには、調圧弁25と負圧弁24bが設けられた閉塞部材23が、開口部22dを密閉するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍋内を大気圧以上に加圧して炊飯する圧力型の炊飯器に関し、さらに詳しくは炊飯工程中に発生するおねばを一時貯留し、この貯留したおねばを鍋内に満遍なく戻すことができる構造を有する炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧力型の炊飯器は、1個又は複数個の圧力弁を設け、炊飯工程の沸騰維持工程において、鍋内を大気圧を超える圧力に加圧すると共に、この圧力弁を所定単位時間単位で間歇的に1ないし複数回開放し、この圧力弁の開放時に鍋内に激しい沸騰現象を発生させて炊飯物を撹拌して炊飯するものが開発・製品化されており、既に一般家庭などでも多く使用されている。
【0003】
このような炊飯器には、炊飯工程中に発生する蒸気を外部へ放出するために蒸気口が設けられており、この蒸気口を通じて炊飯工程中に鍋内の被炊飯物が沸騰した際に吹きこぼれが生じることがある。この吹きこぼれは、粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、「おねば」とも呼ばれている。
【0004】
このように、炊飯工程中におねばが蒸気とともに外部へ放出されてしまうと、旨み成分も外部へ排出されてしまうため、美味しいご飯が炊きあがらないという問題がある。そこで、近年においては、下記特許文献1に代表されるような、炊飯工程中に外部に放出されるおねばを一時貯留することができるおねば容器を設け、炊飯工程の所定のタイミングでおねば容器内に貯留したおねばを鍋内に戻すような構成を有する炊飯器が開発されている。
【0005】
しかし、下記特許文献1に示す炊飯器は、貯留されたおねばが開閉弁を通して炊きたてのご飯の上に落下するので、戻されるおねばは開閉弁の真下の一箇所に集中されてしまう。そのために、おねばが落下した箇所のご飯は、おねばが多く含まれ水っぽくなり、結果として美味く炊き上がらないという課題がある。
【0006】
このような課題を解決するために、下記特許文献2には、おねばを分散して戻す構成を有する炊飯器の発明が開示されている。下記特許文献2の炊飯器では、調理器本体の蓋体の内蓋には、所定深さを有する有底の受け皿が取り付けられており、この受け皿には底部上面に形成された受容部と底部に分散して形成された分散孔とを備えている。このような構成とすることで、下記特許文献2の炊飯器によれば、炊飯工程において発生する旨み・美味しさの素であるおねばや蒸気の水滴を受容部で受けた後、複数の分散孔を通じてシャワー状に分散して被調理物の表面のほぼ全域に戻すことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開平11−244138号公報(段落〔0012〕、図1)
【特許文献2】 特許4684329号公報(段落〔0019〕、図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2に記載の炊飯器では、おねばを分散して戻す受け皿を取り付けることで、効率よくおねばを被調理物の表面のほぼ全域に戻すことが可能である。しかし、この受け皿は、内蓋の鍋側に取り付けられており、しかも、受け皿に形成された取付部を介してネジ等によって内蓋に取り付けられていたり、取り付け支柱を介して着脱が可能なように取り付けられたりしている。そのため、炊飯工程中には圧力変動があるため、炊飯器の使用頻度によってはこのネジ等が落下してしまうおそれがあり、さらには受け皿自体が被調理物の上に落下するおそれもある。また、これらが落下したまま炊飯工程が行われると、炊飯器が故障してしまうおそれもある。
【0009】
さらに、上記特許文献2に記載の炊飯器は、内蓋と受け皿は別体で構成されているため、保温時等に内蓋に付着した結露を除去するために内蓋に設けられた蓋ヒータの熱が伝わり難く、受け皿に多くの結露が付着してしまうおそれがあり、この結露が被調理物上に落ちることで調理物が美味しくなくなるおそれもある。
【0010】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、炊飯工程中に発生するおねばを所定の工程中に鍋内に満遍なく戻すことができる構造を有する炊飯器において、部品等の落下を抑制した安全性の高い炊飯器を提供し、さらに、内鍋に付着する結露を効率よく取り除くことができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記発明の目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の炊飯器は、炊飯物を入れる炊飯鍋と、前記炊飯鍋を収容して該炊飯鍋を加熱する加熱手段を備える炊飯器本体と、前記炊飯器本体を覆うように開閉自在に取り付けられた蓋体と、前記炊飯鍋内の内圧を調整する内圧調整装置と、前記加熱手段及び内圧調整装置を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えた炊飯器において、前記蓋体は、前記炊飯鍋の開口を密閉する内蓋と、前記内蓋が着脱自在に装着されて前記炊飯器本体の開口を覆う中蓋と、前記中蓋の上部を覆い、前記炊飯工程中に発生したおねばを貯留するおねば貯留タンクが着脱自在に装着されている外蓋とを有し、前記内蓋には、所定面積を有し前記炊飯鍋側に向かって所定深さ窪んだ凹部が設けられ、前記凹部には複数の貫通孔が形成され、前記内蓋に形成された凹部の開口部には、前記内圧調整装置を構成する少なくとも一つの調圧弁と前記鍋内が負圧となったとき前記おねばが通過する負圧弁が設けられた閉塞部材が、前記凹部の開口部を密閉するように、着脱自在に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、第2の態様の炊飯器においては、前記閉塞部材は、前記内蓋に固定手段により固定されていることを特徴とする。
【0013】
また、第3の態様の炊飯器においては、前記閉塞部材の前記中蓋側には、前記中蓋と接する支持部材が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、第4の態様の炊飯器においては、前記閉塞部材は、前記中蓋に固定手段により固定されていることを特徴とする。
【0015】
また、第5の態様の炊飯器においては、前記貫通孔は、溝状の導通路により連通されていることを特徴とする。
【0016】
また、第6の態様の炊飯器においては、前記中蓋には、蓋ヒーターが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様の炊飯器では、炊飯工程中に発生したおねばをおねば貯留タンクに一時貯留しておき、貯留したおねばを炊飯鍋内に戻すとき、おねばが一旦内鍋に形成された凹部に戻され、その後、凹部に形成された複数の貫通孔から炊飯鍋内に戻すことができるので、うまみ成分であるおねばを満遍なく炊飯物に戻すことができ、美味しい炊飯物が得られる。このとき、本発明の第1の態様の炊飯器によれば、内蓋の凹部は、内蓋と一体に成形され、凹部の炊飯鍋側には、従来技術のように取り付け部や取り付けるためのネジ等の部品も設けられていないので、炊飯物にネジ等の部品や受け皿自体が落下するおそれがなく、また、落下した部品等により炊飯器が故障を起すおそれもなくなるので、安全性の高めることができる。また、閉塞部材は、凹部と着脱自在に設けられているので、内蓋の凹部や閉塞部材の洗浄を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明の第2の態様の炊飯器によれば、内蓋に形成された凹部を閉塞する閉塞部材を、内蓋に固定手段を用いて固定することで、炊飯工程中に炊飯鍋内の内圧が変化しても閉塞部材が外れることを抑制することができる。なお、この固定手段は、公知の構造を使用でき、たとえば、内蓋と閉塞部材にそれぞれ溝と突起を形成しそれらを螺合するようにしてもよく、また、ワンタッチで固定を解除できる機構を有するようにしてもよい。このようにすることで、閉塞部材の着脱が容易となる。
【0019】
また、本発明の第3の態様の炊飯器によれば、内蓋の凹部を閉塞する閉塞部材に支持部材が形成されていることで、閉塞部材が、炊飯工程中の炊飯鍋内の内圧の上昇により外れてしまうことを抑制することができる。特に、炊飯器が大型となった場合、内圧がより高くなり吹き出す蒸気の量も多くなるので、より大きな圧力に耐えられるようにする必要があるため、閉塞部材に支持部材を形成し中蓋を押えることで、より大きな圧力に耐えることができるようになる。
【0020】
また、本発明の第4の態様の炊飯器によれば、内蓋に形成された凹部を閉塞する閉塞部材を、中蓋に固定手段を用いて固定することで、炊飯工程中に内圧が上昇したとしても、閉塞部材が中蓋に固定されているので、高い圧力にも耐えることができるようになる。
【0021】
また、本発明の第5の態様の炊飯器によれば、凹部に戻されたおねばは、導通路を通ることで貫通孔に導くことができ、効率よくおねばを被炊飯物の上に満遍なく戻すことができる。このとき、凹部の中央に向かってやや下方傾斜するように形成されると、おねばが動きやすくなり、貫通孔へと導くことがより効率よくなる。
【0022】
また、本発明の第6の態様の炊飯器によれば、内蓋と凹部は一体に形成されているので、中蓋に設けられた蓋ヒーターの熱を凹部まで効率よく伝えることができ、内蓋に付着する結露を効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る圧力型の炊飯器の正面図である。
【図2】図2は図1の炊飯器の化粧カバーを取外した状態の蓋体の平面図である。
【図3】図3は図2の矢印A方向からみた第一の内圧調圧装置の拡大図である。
【図4】図4は図2のIV−IV線に沿って図1の炊飯器を切断した断面図である。
【図5】図5は図4の第一の内圧調圧装置を拡大した断面図である。
【図6】図6は図4と同様に図2のVI−VI線で切断した断面図である。
【図7】図7は図6の第二の内圧調圧装置を拡大した断面図である。
【図8】図8は内蓋の斜視図である。
【図9】図9は内蓋の分解斜視図である。
【図10】図10Aは図8のXA−XA線で切断した断面図であり、図10Bは図8のXB−XB線で切断した断面図である。
【図11】図11は制御装置のブロック図である。
【図12】図12は複数の炊飯メニューの炊飯フローチャート図である。
【図13】図13は炊飯メニュー「白米・ふつう」の炊飯工程における鍋内の温度・圧力の変化を示した炊飯特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る圧力型の炊飯器を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための圧力型の炊飯器を例示するものであって、本発明をこの炊飯器に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0025】
図1〜図10を参照して、本発明の実施形態に係る圧力型の炊飯器の構造を説明する。なお、図1は本発明の実施形態に係る圧力型の炊飯器の正面図、図2は図1の炊飯器の化粧カバーを取外した状態の蓋体の平面図、図3は図2の矢印A方向からみた第一の内圧調圧装置の拡大図、図4は図2のIV−IV線に沿って図1の炊飯器を切断した断面図、図5は図4の第一の内圧調圧装置を拡大した断面図、図6は図4と同様に図2のVI−VI線で切断した断面図、図7は図6の第二の内圧調圧装置を拡大した断面図、図8は内蓋の斜視図、図9は内蓋の分解図、図10は内蓋の断面図である。
【0026】
本発明の実施形態に係る圧力型の炊飯器10は、図1、図4、図6に示すように、米と水とを含む所定量の炊飯物を入れる炊飯鍋(以下、鍋という)20と、この鍋を収容して該鍋を加熱する加熱手段を設けた炊飯器本体(以下、本体という)11と、鍋20の加熱温度を検出する鍋底温度検出手段15と、鍋及び本体の開口を塞ぐ蓋体21と、この蓋体に設けて鍋内の内圧を調整する2組の第一、第二の内圧調整装置PV、PVと、加熱手段及び第一、第二の内圧調整装置PV、PVなどを制御して、一連の炊飯工程を実行する制御装置62(図11参照)とを備えている。加熱手段は底部ヒータ14a、側部ヒータ14b及び蓋ヒータ14cなど及び鍋底温度検出手段はサーミスタ等からなるセンサ15となっている。また、後述する第一、第二の調圧弁は,従来技術でいう「圧力弁」となっている。
【0027】
なお、一連の炊飯工程とは、例えば、図12に示す炊飯メニュー「白米・ふつう」、「白米・あまみ」、「白米・あっさり」、「すしめし」等を含むものである。例えば、炊飯メニュー「白米・ふつう」では、鍋内の米に所定量の水を吸水させる吸水工程、吸水後に鍋内を一気に加熱して沸騰させる立上加熱工程、この沸騰状態を維持して米のデンプンを糊化させて炊き上げる沸騰維持工程、この炊き上ったご飯から余分な水分を除去するとともに糊化をさらに促進させる蒸らし工程などを含むものとなっている。沸騰維持工程では、鍋20内が大気圧を超える圧力に加圧されると共に、第一の内圧調整装置PVの第一の調圧弁25の閉塞ロックを所定の単位時間単位で間歇的に所定回数解除して、鍋20内に激しい沸騰現象、すなわち突沸現象を生じさせて炊飯物を撹拌して炊き上げるようになっている。
【0028】
以下、この炊飯器の個々の構成を詳述する。
【0029】
本体11は、図4、図6に示すように、上方に所定大きさの開口を有し、深底箱型の外部ケース12と、この外部ケース12内にあって鍋20を支える内部ケース13とを備え、外部ケース12と内部ケース13との間に隙間が形成され、この隙間に制御装置62(図11参照)を構成する制御回路基板19などが配設されている。外部ケース12は、上方の開口部付近が略楕円形状をなしており、この楕円形状の上方部の長手方向の一端部に蓋体21を枢支する枢支部16、他端部に蓋体21が炊飯中に開放されないように係止ロックされる鎖錠爪17及びこの係止ロックを解除して蓋体21を開く解除釦18が設けてある。内部ケース13には、深底の容器からなる鍋20が収容される。この鍋20は、例えばアルミニウムとステンレスとのクラッド材で形成されている。また、内部ケース13には、その底部13a及び側部13bにそれぞれ底部ヒータ14a及び側部ヒータ14bが設けられ、底部13aに鍋底温度を検知するサーミスタ等からなる鍋底温度センサ15が設けられている。底部ヒータ14aには環状に巻装した電磁誘導コイルが使用されている。
【0030】
蓋体21は、図2、図4、図6に示すように、鍋20の開口部を密閉する内蓋22と、この内蓋が着脱自在に装着されて本体11の開口部を覆う中蓋33と、この中蓋の上部を覆い表示パネルなどが設けられておねば貯留タンク60が着脱自在に装着される外蓋58等とを有している。外蓋58は、化粧蓋となっている。この蓋体21は、中蓋33の一側に本体11の枢支部16に枢支されるヒンジ機構34、35、他側に本体11の鎖錠爪17に係止ロックする蓋ロック手段36が設けてある。
【0031】
内蓋22は、図4、図6、図8〜図10に示すように、鍋20の開口部を密閉する大きさであって、略中央部分に所定面積を有し鍋20側に向かって所定深さ窪んだ凹部22bが設けられた円盤状体からなり、その外周縁に気密パッキン22aが装着されている。この凹部22bには、複数の貫通孔22dが形成されており、これら貫通孔22dは環状の溝からなる導通路22eによりいくつかに分かれて連通されている。また、内蓋22に設けられた凹部22bの開口部22cは、着脱自在に設けられた閉塞部材23に覆われている。この閉塞部材23の外周縁には閉塞パッキン23aが設けられており、内蓋22と密閉されるようになる。また、凹部22bは、凹部22bの中心に向かってやや下方に傾斜して形成されている。
【0032】
また、閉塞部材23は、内蓋22と固定手段63により固定されている。この固定手段63は、内蓋22に形成された一方が開口し、屋根状の係合部63aを有する係合溝部63bと、閉塞部材23に形成された係合突起63cとで構成され、それぞれが少なくとも2箇所に形成されており、閉塞部材23を回転させることで、係合突起63cを係合溝部63bにスライドさせ、係合突起63cが係合部63aに当接して係合されるような構造としている。このとき、係合溝部63bは、徐々に狭まるように構成されているため、係合突起63bが強固に係合することができるようになる。なお、この固定手段63は、これに限らず、公知のものを使用することができる。
【0033】
さらに、この閉塞部材23は、上面の略中央部付近に、第一、第二の調圧弁25、29、鍋内の圧力が異常に上がったときに開放する安全弁24a及び、鍋内が負圧になったときに開成しておねば貯留タンク60に貯留されたおねばを鍋内へ戻す負圧弁24bが配設されている。これらの安全弁24a及び負圧弁24bは、既存のものを使用しこれらは既に公知であるので説明を省略する。また、第一、第二の調圧弁の構造などは、第一、第二の内圧調整装置PV、PVに関連して後述する。
【0034】
また、閉塞部材23の上面には、複数個の突起が形成されている。この突起は、閉塞部材23と後述する中蓋33と接するように形成されており、炊飯工程中に鍋20内の圧力が高くなったとき、この内圧により閉塞部材23が内蓋22から外れないようにするために、閉塞部材23と中蓋33との間を支える支持部材23bとなっている。
【0035】
中蓋33は、図2、図4、図6に示すように、本体11の開口部を塞ぐ大きさの楕円形状体からなり、機械的強度が高いフレームなどで補強されている。この中蓋33は、その略中央部に、第一調圧弁閉塞ロック機構38、第二調圧弁開放機構52及びおねば貯留タンク60が装着される装着孔37が設けてある。なお、この中蓋33には、結露を防止する蓋ヒータ14c及び蒸気温度を検知する蒸気温度センサ(図示省略)などが取り付けられている。
【0036】
次に、図2〜図10を参照して、第一、第二の内圧調整装置PV、PVを説明する。まず、主に図5を参照して第一の内圧調整装置PVを説明する。なお、図5は第一の内圧調整装置PVを示し、図5Aは第一の調整弁の非閉塞ロック状態、図5Bは閉塞ロックの解除状態を示している。
【0037】
この第一の内圧調整装置PVは、図3〜図5に示すように、鍋20内を大気圧を超える所定の設定圧力値に保持する閉塞保持圧力を有する第一の調圧弁25と、この第一の調圧弁の弁口を閉塞し、その閉塞が鍋内の内圧の上昇によって閉塞保持圧力を超えても開成しないように、この閉塞状態を保持ロックする第一調圧弁閉塞ロック機構38とを有している。第一の調圧弁25は内蓋22に設けられた閉塞部材23に、第一調圧弁閉塞ロック機構38は中蓋33に設けた取付け基板33Aにそれぞれ設けられている。第一の調圧弁25は、所定の口径26a’の弁口26aが形成された弁座26と、この弁口26aの口径26a’を塞ぐように弁座26上に載置される金属製の調圧ボール28と、この調圧ボール28が外へ転がり落ちないように規制するカバー27とを有し、このカバー27に排気孔27aが形成されている。この第一の調圧弁25は、鍋20内を大気圧を超える所定の圧力値に保持する閉塞保持圧力1.05気圧(atm)に設定されている。この設定は、弁口の大きさ及び調圧ボールの重さで設定する。例えば、第一の調圧弁25は、口径26a’が4.6mm、調圧ボール28の直径を12.7mm及びその重量が8.505g(比重7.93)にして、閉塞保持圧力が1.05気圧(atm)になっている。この閉塞保持圧力1.05気圧(atm)は、非閉塞ロック状態であるが、調圧ボールを押さえた閉塞ロック状態では、押さえ力65gをプラスして、ロック状態の閉塞保持圧力は1.44気圧(atm)になっている。
【0038】
なお、この第一の調圧弁25の設定閉塞保持圧力は、大気圧を超える圧力値であれば任意の値でよいが、大気圧(1.0気圧)に近いと第一調圧弁閉塞ロック機構38で第一の調圧弁25の閉塞ロックが解除されたときに鍋20内の圧力が過度に下がり過ぎて鍋内の温度が低下し炊飯物が冷えることがあるので、大気圧(1.0気圧)から所定圧力値を超えた圧力、例えば1.05気圧(atm)以上1.075気圧の範囲に設定するのが好ましい。
【0039】
また、排気孔27aは、金属製の調圧ボール28が鍋20内の圧力により押上げられて弁口26aの口径26a’が開成したときに、鍋20内の蒸気及びおねばを排出するものとなっている。
【0040】
また、第一調圧弁閉塞ロック機構38は、図5に示すように、第一の調圧弁25の閉塞状態をロック及びこの閉塞ロック状態を解除するロック・解除作動部材39と、このロック・解除作動部材を作動させる駆動装置46とを有している。ロック・解除作動部材39は、一端部(下方端)40bが調圧ボール28を所定の押圧力で押圧してこの調圧ボールの持ち上がりを阻止(ロック)する押圧棒40と、この押圧棒を押圧降下させる揺動アーム42とを有している。この揺動アーム42は、略中央部が固定枠45に支軸43で枢支されて揺動自在となっており、その一端部42aが押圧棒40の他端部(上方端)40aに当接するようにすると共に、他端部42bがスライド枠体50に当接するようにしてバネ体44で付勢されている。このバネ体44は、支軸43に装着して、揺動アーム42を図5の時計方向に回動するように付勢している。押圧棒40は、このバネ体44の付勢力で揺動アーム42を回動させて押圧される。すなわち、ロック状態の閉塞力はバネ体によって設定される。
【0041】
また、押圧棒40は、固定枠45内にあって、押圧棒40の下方端部40b部分が、この押圧棒40が持ち上がるように付勢する弾性体からなる密閉パッキン41が固定枠45に固定されている。この密閉パッキン41は、所定直径の弾性を有する円盤体からなり、外周縁に取付け部を有して、この取付け部で中蓋に固定されている。密閉パッキン41は、円盤体の中央に突出部が設けられて、この突出部に押圧棒40の下方端部40b部が固定されている。すなわち、密閉パッキン41は、その弾性を利用して、図5に示す取付け状態で、押圧棒40を上方へ押上げると共に、下方向へも押動されることができ、かつ中蓋33の開口を密閉する働きをするものとなっている。なお、この実施形態では、ロック状態の閉塞力は、揺動アーム42を回動させるバネ体によって設定するようにしたが、この構成に限定されることなく、調圧ボールを所定の押圧力で押さ付けるのであれば、任意の機構を用いてもよい。
【0042】
駆動装置46は、図3、図5に示すように、電磁コイルが巻回されたシリンダ47と、このシリンダ内にあって電磁コイルの励磁により引込められるプランジャ48とを有し、プランジャ48の先端部に、このプランジャを所定長さ引き出す伸張コイルバネ49が装着されている。この伸張コイルバネ49は、その先端がスライド枠体50に固定されて、このスライド枠体50は取付け基板33A上にスライド移動自在に固定されている。スライド枠体50は、取付け基板33A上をスライド移動自在なスライド台50aと、このスライド台の一側面にあって揺動アーム42の下方端42bに当接して押動する押動部50bとを有している。この下方端42bと押動部50bとは、押動部50bの両端、すなわち、図3の前方と奥方とに一対の対向する腕突起を設けて、これらの腕突起間に弾性湾曲可能な細金属線51を懸架し、この細金属線51に揺動アーム42の下方端42bが引っ掛かるようにして連結されている。この連結は、一種の緩衝機構或いは緩衝手段となっている。
【0043】
この構成によると、プランジャ48が電磁コイルの励磁にシリンダ内に引込められたときに、揺動アーム42の下方端42bが細金属線51に当接して、この下方端42bがシリンダ方向へ引っ張られる。この引っ張りの際に、細金属線51が弾性湾曲可能になっているので、揺動アーム42との間に無理な力が加わらず若干の余裕ができるので、駆動装置46とロック・解除作動部材39との連結・調整が容易になる。すなわち、この作動時に、揺動アーム42は、支軸43を支点に揺動(シーソー)動作されて、駆動装置46の進退動作の許容動作範囲以上のストロークが確保でき押圧棒40で押圧する調圧ボール28との余裕を取ることが可能となり、駆動装置46の取付け位置にも余裕が取れる。なお、緩衝機構は、弾性湾曲可能な細金属線51を用いたもので構成したが、他の緩衝機構ないし手段で構成してもよい。
【0044】
この第一の内圧調整装置PVは、制御装置によって制御されて、以下の(a)〜(c)の作用をする。
(a)第一調圧弁非閉塞ロック状態
この非閉塞ロック状態では、駆動装置46の電磁コイルが無励磁状態にある。図5Aに示すように、シリンダ47が伸張コイルバネ49の伸長力により、スライド台50aをロック・解除作動部材39の揺動アーム42の下方端42bに当接すると共に、バネ体44のバネ力に打ち勝って、この揺動アーム42の上方42aで押圧棒40を下方へ押し下げることがない。その結果、押圧棒40は、密閉パッキン41で上方へ持上げられて、第一の調圧弁25は調圧ボール28の自重により弁口26a’が閉塞される。弁口26a’が調圧ボール28で閉塞されると、炊飯中は、鍋内の圧力が閉塞力、すなわち、設定値1.05気圧以下になることがない。
(b)第一調圧弁閉塞ロック状態
この状態は、駆動装置46の電磁コイルが励磁される。図5Bに示すように、シリンダ47が伸張コイルバネ49の伸長力に抗して引かれると共に、揺動アーム42がバネ体44の付勢力により図5Bの時計方向へ回動する。揺動アーム42の回動により、その上方端42aで押圧棒40を下方へ押下げて、調圧ボール28に当接させて押圧し、この調圧ボールを弁口26a’に押し付けて、閉塞状態を保持、すなわち、ロックする。その結果、第一の調圧弁25は、設定値(1.05気圧)を超えても開成されることなく鍋の内圧が上昇する。なお、鍋内の圧力が上昇しても、第二の調圧弁29が閉成されているので、この内圧は第二の調圧弁29の閉塞保持圧力まで上昇する。
(c)第一調圧弁閉塞ロック状態の解除
駆動装置46の電磁コイルへの励磁が無くなると、シリンダ47が伸張コイルバネ49の伸長力により、その先端部が揺動アーム42の下方端42bに当接して、バネ体44により揺動アーム42が図5の反時計方向へ回動する。これにより、押圧棒40が密閉パッキン41の復元力により持上げられて、調圧ボール28から離れて、上記(a)の非閉塞ロック状態となる。その結果、鍋内の圧力が設定値1.05気圧より高いと、この内圧により第一の調圧弁25が開成される。また、鍋内の圧力が設定値1.05気圧を超えないと、閉塞状態が保持される。このロック解除は、沸騰維持工程において、炊飯メニューに応じて、所定の回数実施される。なお、この第一の内圧調整装置PVは、駆動装置46と第一調圧弁閉塞ロック機構38とが緩衝機構を介して連結されているので、駆動装置と第一調圧弁閉塞ロック機構との連結・調節が容易になるとともに、第一の調圧弁の開成ないし閉成をスムーズに行える。
【0045】
主に図7を参照して、第二の内圧調整装置PVを説明する。なお、図7は第二の内圧調整装置PVを示し、図7Aは第二の調整弁が強制的に開放された状態を示し、図7Bは第二の調整弁が閉成された状態を示している。
【0046】
この第二の内圧調整装置PVは、第一の調圧弁より高い閉塞保持圧力を有する第二の調圧弁29と、この第二の調圧弁を強制的に開放させる第二調圧弁開放機構52とを有している。第二の調圧弁29は内蓋22に設けられた閉塞部材23に、第二調圧弁開放機構52は中蓋33に設けた取付け基板33Aに、それぞれ設けられている。第二の調圧弁29は、所定の口径30a’の弁口30aが形成された弁座30と、この弁口30aの口径30a’を塞ぐように弁座30上に載置される金属製の調圧ボール32と、この調圧ボール32の移動を規制することで弁座30上に調圧ボール32を保持するカバー31とを有し、カバー31に排気孔31aが形成されている。この第二の調圧弁29の閉塞保持圧力は、弁口の大きさ及び調圧ボールの重さで設定する。例えば、調圧ボールの直径を19.84mm、調圧ボールの重量を32.445g(比重7.93)及び弁座の弁口(直径)を3.7mmにして、閉塞力1.3気圧(atm)にする。この閉塞保持圧力は、第一の調圧弁の閉塞力1.05気圧より高くなっている。第二の調圧弁29の閉塞保持圧力は、1.3気圧(atm)に限定されるものでなく、それ以上、例えば、2.0気圧にしてもよい。
【0047】
なお、この第二の調圧弁29の閉塞保持圧力は、第一の調圧弁25の閉塞保持圧力1.05気圧より高い値、例えば.1.2気圧(atm)以上に設定されているが、第二の調圧弁29の閉塞保持圧力は、第一の調圧弁25の閉塞保持圧力を超える圧力値であれば任意の値でよい。しかし、第一の調圧弁25の閉塞保持圧力1.05〜1.075気圧に近いと、両者の圧力差が少なくなり、第一の調圧弁が開放されたときに、鍋内に発生する突沸現象が大きくならず、そのために炊飯物の撹拌が不足するので、この圧力値より高い値、例えば、1.2気圧以上2.0気圧の範囲が好ましい。
【0048】
また、排気孔31aは、第二の調圧弁29が強制的に開放されたときに、鍋20内の蒸気を排出するものとなっている。また、第二調圧弁開放機構52は、電磁コイルが巻回されたシリンダ53と、このシリンダ内から電磁コイルの励磁により入出し調圧ボール32を移動させるプランジャ54と、プランジャの先端が固定されたスライド枠体56と、シリンダの一端部とスライド枠体との間にあってプランジャ54の先端を所定長さ突出させる伸張バネ体55とを有し、スライド枠体56は、取付け基板33A上にスライド移動自在に固定されている。スライド枠体56は、取付け基板33A上をスライド移動するスライド台56aと、このスライド台の上方にあってプランジャの先端が固定される固定片56b及びこの固定片から前方へ突出して調圧ボールに先端部が当接する突出棒56cとを有している。突出棒56cは、その先端が密閉パッキン57に固定されている。密閉パッキン57は、所定直径の弾性を有する円盤体からなり、外周縁に取付け部を有して、この取付け部でカバー体に固定されている。密閉パッキン57は、円盤体の中央に突出部が設けられて、この突出部の一方端に突出棒56cの先端が固定され他端が調圧ボールに当接するようになっている。すなわち、密閉パッキン57は、弾性を利用して、取付け状態で水平方向へ動くことができると共に、カバーの開口を密閉する働きをするものとなっている。
【0049】
この第二の内圧調整装置PVは、制御装置62により制御される。すなわち、制御装置62からの指令に基づき、電磁コイルが励磁される。この励磁により、プランジャ54がシリンダ53に引込められる。これにより、調圧ボール32はその自重により転動して弁口30a’を閉塞する。また、この状態から、電磁コイルが無励磁になると、シリンダ53が伸張バネ体55の伸長力により、前方へ引き出されて調圧ボール32が押動されて調圧弁が開成する。
【0050】
この実施形態では、第一、第二の調圧弁は、調圧ボールの重さで圧力調整するようにしたが、この方法に限らず、弁口の口径の大きさをそれぞれ変える方法とすれば、ボールの重さは同じでも、異なる圧力の設定が可能となる。例えば重さ11.0gで、直径14.0のボールを、調圧ボール28,32に使用した場合に弁口の口径4〜5mmで圧力1.05気圧前後が得られ、さらに弁口の口径を、2〜3.0mmとすると圧力1.30気圧前後を得ることが出来る。
【0051】
外蓋58は、中蓋33を覆い化粧カバーで構成されている。この外蓋58には、表示操作部59が設けられると共に、おねば貯留タンク60が着脱自在に装着される。表示操作部59は、図1に示すように、各種の炊飯選択コース及び時刻等が表示される表示パネルと、この表示パネルの周辺に複数個のスイッチ操作釦が設けられている。これらのスイッチ操作釦は、炊飯器を作動させる炊飯/スタート釦(キーともいう、以下同じ)、炊飯予約をする炊飯予約釦、炊飯等の設定を取消す取消/保温釦、炊飯する米を選択するお米選択釦、炊飯メニューを選択するメニュー選択釦、コースを選択するコース釦、及び表示パネルに表示されたメニュー等を選択・決定するシフトキーなどとなっている。これらの釦(キー)は、押し釦式のスイッチを構成する操作釦等であって、これらの釦(キー)を押圧することにより、各種操作がなされるようになっている。
【0052】
また、貯留タンク60は、図4、図6に示すように、その内部におねばを一時貯留する空間60aと、蒸気を外部へ逃す蒸気口60cと、おねば戻し弁60dと、中空筒状接続部60bとを有し、この中空筒状接続部60bが装着孔37に嵌入装着されるようになっている。なお、おねばは粘り気のある糊状の汁であって、この糊状の汁は旨み成分を含んでおり、このおねばをそのまま外へ排出されてしまうとご飯が美味しく炊きあがらない。そこで、このおねばを貯留する貯留タンク60を設けて、この貯留タンクにおねばを一時貯留しておき、鍋20内の加熱が終了して鍋20内が負圧になったときにおねばを鍋内に戻すことで美味しく炊きあげることができる。このおねばを戻す工程の詳細については後述する。
【0053】
次に、図11を参照して、制御装置62を説明する。なお、図11は制御装置を構成するブロック図である。
【0054】
制御装置62は、図11に示すように、種々の演算処理を行うCPU、各種データの記憶を行うROMおよびRAMからなる記憶手段、選択された炊飯メニューを検出する炊飯メニュー検出回路、第一、第二の調圧弁の開閉時間を設定する弁開閉タイマー、第一、第二の調圧弁の開閉回数をカウントするカウンタと、炊飯量を判定する量判定手段と、加熱手段を制御する加熱制御回路、表示パネルに表示される表示画面を制御する表示パネル制御回路、第一、第二の調圧弁を制御する調圧弁制御手段などを備えている。記憶手段には、各種の炊飯メニューに対応した炊飯プログラムが記憶されている。この炊飯プログラムは、各炊飯メニューに共通で、吸水工程、立上加熱工程、沸騰維持工程、追い炊き工程及び蒸らし工程などとなっている。この制御装置62は、入力側に、炊飯スタートキー、炊飯メニュー設定キー、鍋底温度センサ及び蒸気温度センサなど、出力側にヒータ(加熱手段)、表示パネル。第一、第二の調圧弁を制御する第一、第二の内圧調整装置PV、PVなどが接続されている。なお、ヒータは、鍋底ヒータ、側面ヒータおよび蓋ヒータとなっている。
【0055】
ここで、図12、図13を参照して、各炊飯工程を説明する。なお、図12は複数の炊飯メニューの炊飯フローチャート図、図13は炊飯メニュー「白米・ふつう」の炊飯工程における鍋内の温度・圧力の変化を示した炊飯特性曲線図である。
【0056】
各種の炊飯メニューは、例えば、白米・ふつう、白米・あまみ、白米・あっさり、すしめしが表示パネルに表示される。ユーザーがこの表示パネルをみて炊飯メニュー設定キー61bを操作し所望の炊飯メニューを選定する。
【0057】
最初に、白米・ふつうを選択した場合の炊飯工程を説明する。まず、鍋20に所定量の水と白米とを入れ、この鍋を本体11の内部ケース13内にセットした(ステップS101)後に、炊飯メニュー「白米・ふつう」が選択されると(S102〜S103)、制御装置62は、一連の炊飯工程を実行する。この制御装置62は、吸水工程の開始前に第一の調圧弁25を「閉」にしてから、吸水工程を実行する。吸水工程では、第一の調圧弁25はその自重により弁口が閉じられるが、第一調圧弁閉塞ロック機構38は作動していない。また、第二の調圧弁29も「閉」にされる(S104)。そして、吸水工程では、加熱手段(底部ヒータ14a)への通電を行って鍋20内の温度を所定の吸水温度(60℃)にして所定の吸水時間を掛けて米に所定量の水を吸水させる(S105)。このとき、鍋内の圧力は略大気圧になっている。なお、吸水工程で鍋内の圧力を1.05気圧まで上昇させて吸水させてもよい。
【0058】
吸水工程が終了した後に、立上加熱工程へ移行する。この立上加熱工程では、第一調圧弁閉塞ロック機構38を作動させて第一の調圧弁25を閉塞ロック(S106)し、加熱手段(14a、14b)へフルパワー通電を行って鍋20内を加圧状態下において沸騰状態にする(S107)。蓋体21に設置した蒸気温度センサで蒸気温度を検知し、この蒸気温度が所定温度(75℃)に達したときに次の沸騰維持工程へ移行させる。なお、この立上加熱工程では、図13に示すように、鍋20内の圧力が1.3気圧に向かって加圧される。
【0059】
沸騰維持工程(S108)では、所定の沸騰維持電力で鍋内を沸騰状態に維持する。この沸騰維持工程では、沸騰を検出した後、所定時間、例えば20秒経過した後に、制御装置62は、駆動装置46を介して第一調圧弁閉塞ロック機構38を作動させて、第一調圧弁25の閉塞ロックを所定の単位時間で複数(3〜5回以上)回間歇的に解除し、この解除・ロック操作を繰り返させる(S109)。この解除・ロック操作は、鍋内の圧力の高低によって時間を異ならせておこない、低圧に比べ高圧の際の時間が長くなるように設定される。この設定は、第一調圧弁の閉塞ロックが解除される低圧の時間をt1、閉塞ロックが実行される高圧の時間をt2としたとき、t2はt1の約4〜7倍とすると好ましい。このようにすることで、閉塞ロックの実行時に披炊飯物に熱量を蓄積し、閉塞ロックの解除時に高圧と低圧の差分の圧力を一時に放出することができる。このとき、第一の調圧弁の弁口の径が大きいほど短時間に圧力の放出を集中できて大きな撹拌現象を起こすことができる。そこで、低圧の時間t2で放出する内圧のエネルギーに対して高圧の時間t1で内圧のエネルギーを蓄積することが必要となる。このとき、放出される圧力のエネルギー量は第一の調圧弁の弁口径と高圧と低圧の差と閉塞ロック解除時間で決定され、蓄積された圧力のエネルギー量は沸騰維持工程での電力と閉塞ロック時間の積で決定することができる。すなわち、放出される圧力のエネルギーと蓄積された圧力のエネルギーとの関係が、放出される圧力のエネルギー≦蓄積された圧力のエネルギーとなるように閉塞ロックの作動時間と閉塞ロックの解除時間の設定が行われ、放出される圧力のエネルギー>蓄積された圧力のエネルギーとなれば徐々に閉塞ロック解除時の撹拌力が弱まっていくこととなる。なお、本実施形態では、例えば高圧を52秒、低圧を8秒で行う。
【0060】
このロック・解除毎に、第一の調圧弁25が間歇的に開放されて、開放時に鍋20内の状態が加圧状態から1.05気圧近傍まで一気に降下して鍋内に圧力変動が起こり、この圧力変動が間歇的に複数回に亘って繰り返される(図13参照)。この間歇的な調圧弁25の開放により、鍋20内の圧力が大きく変動し、その度毎に鍋内に激しい沸騰現象、いわゆる突沸現象が生じて大量の泡が発生すると、同時に鍋内の中央側の米粒が鍋内の側方へ或いは逆方向への移動を繰り返して、鍋内の米粒が効率よく撹拌される。この撹拌により、米粒全体に十分な熱が加わり、加熱ムラがなくなる。また、圧力を変動させることにより鍋20内が負圧となったとき、おねば貯留タンク60に貯留されていたおねばは、おねば戻し弁60d及び内蓋22の閉塞部材23に配設された負圧弁24bを通り内蓋22の凹部22bへと戻される。そして、この凹部22bには、複数個の貫通孔22dが形成されているので、これらの貫通孔22dからおねばが鍋20内に落下することで、おねばを米粒上に満遍なく広げることができる。なお、凹部22bに形成された貫通孔22dは、環状の溝で形成された導通路22eにより連通されていることで、おねばを効率よく貫通孔22d全体に行き渡らせることができる(図4、図6参照)。さらに、この撹拌により、おねばも効率よく混ざり込み、米粒の周囲がこのおねばによってコーティングされる。おねばには、ご飯の旨み成分が多く含まれているので、炊き上がったご飯はこのおねばでコーティングされてより美味しいものになる。
【0061】
また、第一の調圧弁25が開放されても、図13に示すように、鍋20内の圧力は、第一の調圧弁25の閉塞保持圧力、すなわち1.05気圧以下に降下することがないので、この内圧降下に伴う鍋内温度の低下が最小限、すなわち、鍋20内の温度は(101.1〜101.4℃)〜(103.0〜107.0℃)範囲の変動となるので、炊飯物の一部が冷えて炊き上がったご飯に炊飯ムラが発生することがない。
【0062】
この沸騰維持工程において、第一の調圧弁25が複数回に亘り開放された後、所定時間の間は、第一の調圧弁25を閉塞ロックした状態を維持したままでこの沸騰維持工程を継続し、その後は、第一の調圧弁25の閉塞ロックを解除して、鍋内の圧力を設定値1.05気圧に維持して残りの沸騰維持工程を実行する(S110)。そして、沸騰維持工程の後半では、鍋底温度センサ15が所定の鍋底温度(130℃)を検出すると、制御装置62は加熱手段への通電を停止してむらし1工程へ移行する(S111)。この蒸らし1工程が終了した後に、第二の調圧弁29を開放して(S112)追い炊き工程(S113)へ移行すると共に、加熱手段で再加熱する。この再加熱が終了すると、蒸らし2工程へ移行(S114)して、この炊飯メニューの一連の炊飯工程を終了する。
【0063】
以上より、この白米・ふつうの炊飯は、沸騰維持工程において、第一の調圧弁が開成されても、この第一の調圧弁が大気圧を超える所定の圧力に保持する閉塞保持圧力を有しているので、鍋内の内圧は、この閉塞保持圧力の圧力値より下方へ降下することがない。したがって、従来技術の炊飯器が大気圧近傍まで低下することによる課題を解消して、炊飯することができる。
【0064】
なお、炊飯工程が終了したのち、鍋20内のご飯を保温して保存する場合、鍋20内に結露が発生し、この結露がご飯に落下することで、ご飯が水っぽくなる等の不具合が起こる。そのため、保温中は、各ヒータ14a〜14cを間歇的に作動させることで、この結露を効率よく蒸発させている。このとき、本実施形態の炊飯器10では、中蓋33に設けられた蓋ヒータ14cにより、内蓋22に付着した結露を蒸発させる際、内蓋22とこの内蓋22に形成された凹部22bは一体に形成されているので、蓋ヒータ14cの熱を凹部22bの全体に伝えることができるので、内蓋22に付着した結露を効率よく蒸発させ除去することができる。
【0065】
本発明の炊飯器によれば、うまみ成分であるおねばを満遍なく炊飯物に戻すことができ、美味しいご飯を炊き上げることができる。さらに、おねばを鍋内に戻す機構が、内蓋に凹部として一体に形成されているので、従来のような、受け皿をネジ等を用いて固定していないので、ネジ等の脱落等のおそれがなく、安全性の高い炊飯器を提供することができるようになる。
【0066】
なお、上記実施例では、内蓋の凹部の開口部を覆う閉塞部材23を内蓋22に設けるようにしたが、これに限らず、中蓋に設けるようにしてもよい。すなわち、上記実施例で内蓋に設けた固定手段における係合溝部の構造を、中蓋に設けるようにし、この係合溝部に閉塞部材の係合突起を係合するようにする。このとき、閉塞部材に設けられた閉塞パッキンが内蓋の凹部の開口部が密閉されるようにするのは実施例と同様である。このような構成としても、上記実施例の効果を奏することができるようになる。また、閉塞部材を中蓋に設けることで、閉塞部材が圧力を受けたとしても、中蓋で支えることができるようになるので実施例のような支持部材を特別に形成する必要がなくなる。
【0067】
また、実施例では、内蓋の凹部に形成された貫通孔は、環状の溝の導通路によって連通されているが、環状に限らず、例えば、おねばが落下する位置を基準として放射状に広がるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 炊飯器
11 炊飯器本体
12 外部ケース
13 内部ケース
14a、14b ヒータ
14c 蓋ヒータ
15 鍋底温度センサ(鍋底温度検出手段)
17 鎖錠爪
18 解除釦
21 蓋体
22 内蓋
23 閉塞部材
24a 安全弁
24b 負圧弁
25 第一の調圧弁
26 弁座
26a 弁口
28 調圧ボール
29 第二の調圧弁
30 調圧ボール
30a’ 弁口
33 中蓋
38 第一調圧弁閉塞ロック機構
39 ロック・解除作動部材
42 揺動アーム
46 駆動装置
50a スライド台
51 細金属線(緩衝装置)
56 スライド枠体
58 外蓋
59 制御パネル
60 おねば貯留タンク
60d おねば戻し弁
62 制御装置
PV 第一の内圧調整装置
PV 第二の内圧調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯物を入れる炊飯鍋と、前記炊飯鍋を収容して該炊飯鍋を加熱する加熱手段を備える炊飯器本体と、前記炊飯器本体を覆うように開閉自在に取り付けられた蓋体と、前記炊飯鍋内の内圧を調整する内圧調整装置と、前記加熱手段及び内圧調整装置を制御して一連の炊飯工程を実行する制御装置とを備えた炊飯器において、
前記蓋体は、前記炊飯鍋の開口を密閉する内蓋と、前記内蓋が着脱自在に装着されて前記炊飯器本体の開口を覆う中蓋と、前記中蓋の上部を覆い、前記炊飯工程中に発生したおねばを貯留するおねば貯留タンクが着脱自在に装着されている外蓋とを有し、
前記内蓋には、所定面積を有し前記炊飯鍋側に向かって所定深さ窪んだ凹部が設けられ、前記凹部には複数の貫通孔が形成され、
前記内蓋に形成された凹部の開口部には、前記内圧調整装置を構成する少なくとも一つの調圧弁と前記鍋内が負圧となったとき前記おねばが通過する負圧弁が設けられた閉塞部材が、前記凹部の開口部を密閉するように、着脱自在に設けられていることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記内蓋に固定手段により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記閉塞部材の前記中蓋側には、前記中蓋と接する支持部材が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記閉塞部材は、前記中蓋に固定手段により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記貫通孔は、溝状の導通路により連通されていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記中蓋には、蓋ヒーターが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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