説明

炊飯釜搬送装置及びそれを備えた炊飯装置並びに炊飯釜の搬送方法

【課題】搬送中に炊飯釜の位置ズレが発生することのない炊飯釜搬送装置とそれを備えた炊飯装置、さらには炊飯釜の搬送方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一対の把持爪11と、前記一対の把持爪11を互いに接近又は離間させる駆動装置と、前記一対の把持爪11を対として垂直方向及び水平方向に移動させる移動装置とを有し、前記一対の把持爪11が、互いに対向するそれぞれの先端部に、被搬送物である炊飯釜Pの少なくとも一部がはまり込む凹部11wを有している炊飯釜搬送装置1と、そのような炊飯釜搬送装置1を備えた炊飯装置、並びに搬送方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯釜搬送装置及びそれを備えた炊飯装置並びに炊飯釜の搬送方法に関し、詳細には、炊飯釜を位置ズレすることなく搬送することができる炊飯釜搬送装置と、それを備えた炊飯装置、並びに、炊飯釜を位置ズレすることなく搬送することを可能にする炊飯釜の搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数台の一釜炊きの炊飯機を備え、炊飯釜搬送装置によって、未炊飯の米と水とを収容した炊飯釜を搬送し、個々の一釜炊飯機にセットして、炊飯釜ごとに炊飯を行う炊飯装置が多数提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、本発明者らが経験したところによれば、これら従来の一釜炊飯機を備えた炊飯装置においては、炊飯釜搬送装置によって炊飯釜を炊飯機へと搬送している途中に、炊飯釜の位置ズレが生じ、炊飯釜を降下させて炊飯機にセットするときに、炊飯釜の底部が炊飯機や炊飯機上面に設置されているスペーサーなどに接触し、炊飯機やスペーサーを変形ないしは破損させることがあった。また、位置ズレが大きい場合には、炊飯釜が炊飯機の側壁部分に当接してしまい、炊飯機にセットすることすらできなくなることがあった。
【0003】
そこで、本発明者らが炊飯釜の位置ズレが生じる原因について探求を重ねたところ、搬送途中に炊飯釜の位置ズレが生じるのは、従来の炊飯釜搬送装置の構造に原因があることが判明した。すなわち、従来の炊飯釜搬送装置においては、炊飯釜の搬送は、例えば特許文献1、2に見られるように、単に一対の把持爪を炊飯釜の鍔部の下方に差し込み、そのまま上昇させて炊飯釜を持ち上げて移動させるか、特許文献3に見られるように、せいぜいU字型のフォークを片側から炊飯釜の鍔部の下方に差し込んで、持ち上げて移動させることによって行われており、一対の把持爪上又はフォーク上で搬送中に炊飯釜が移動することに関しては何らの規制も施されていない。このため、炊飯釜の搬送中、中でも、搬送開始時と停止時に、炊飯釜が自身の慣性で把持爪上又はフォーク上を滑り、位置ズレが発生することが判明した。
【0004】
特に、近年では、炊飯装置の効率化、高速化が求められており、炊飯釜搬送装置による炊飯釜の搬送速度は次第に速くなる傾向にある。その結果、停止時と搬送時の速度差も大きく、炊飯釜搬送装置による搬送開始時及び停止時に、炊飯釜が自身の慣性によって把持爪又はフォーク上を滑る距離も増し、場合によっては、炊飯機にセットできない程度に無視できない大きさになるものと考えられる。このような知見は、本発明者らが長年の知識と経験に基づいて初めて見出した知見である。
【0005】
また、従来の一釜炊飯機においては、例えば特許文献4に見られるように、炊飯釜が炊飯位置にセットされたときに炊飯釜の底面中央部と当接する温度センサが炊飯機内部に設けられており、この温度センサからの信号に基づいて、各炊飯機の加熱手段が制御されているが、搬送中に炊飯釜に位置ズレが発生すると、それが炊飯機へのセットを許容する程度のものであったとしても、炊飯釜は位置がずれたままの状態で炊飯機へとセットされることになる。その結果、温度センサの当接位置が炊飯釜の底面中央部からずれ、炊飯釜内部の炊飯状況を正確に反映した温度計測ができなくなり、炊飯不足や炊飯過剰などの炊飯異常が生じるという不都合がある。このような不都合は、温度センサが、例えば、炊飯釜の蓋に設けられた通気孔と対向する位置に設けられ、通気孔から噴出する蒸気の温度を計測するものであっても、温度センサと上記通気孔との位置関係にズレが生じると、同様に起こる可能性のある不都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−128850号公報
【特許文献2】特開2002−104646号公報
【特許文献3】特開2005−052432号公報
【特許文献4】特開2005−069641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の炊飯釜搬送装置が有する不都合を解消するために為されたもので、搬送中に炊飯釜の位置ズレが発生することのない炊飯釜搬送装置とそれを備えた炊飯装置、さらには炊飯釜の搬送方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の課題を解決すべく更に研究を重ねた結果、少なくとも一対の把持爪を用いる炊飯釜搬送装置において、一対の把持爪の互いに対向するそれぞれの先端部に、被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部を設けることによって、搬送時には、炊飯釜の一部が上記凹部にはまり込み、その移動が規制されるので、搬送中に炊飯釜の位置ズレが発生しないことを見出して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、上記の課題を、少なくとも一対の把持爪と、前記一対の把持爪を互いに接近又は離間させる駆動装置と、前記一対の把持爪を対として垂直方向及び水平方向に移動させる移動装置とを有し、前記一対の把持爪が、互いに対向するそれぞれの先端部に、被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部を有している炊飯釜搬送装置と、そのような炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置を提供することによって解決するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の課題を、互いに対向するそれぞれの先端部に被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部を有している一対の把持爪を、炊飯釜に対して接近させ、前記凹部のそれぞれに炊飯釜の一部をはまり込ませた状態で、前記一対の把持爪を上昇させ、炊飯釜を持ち上げて移動させる炊飯釜の搬送方法を提供することによって解決するものである。
【0011】
炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部の形状は、対象となる炊飯釜の形状、構造に合わせて適宜の形状とすることができる。例えば、炊飯釜の凹部にはまり込む部分の水平断面形状が角形である場合には、上記凹部の形状は把持爪の先端部に向かうに連れて間隔が広がるテーパ部を備えた先広がりの台形状とするのが良く、炊飯釜の一部は、テーパ部に案内されて台形状の凹部の奥、すなわち、把持爪の根元側へと進入し、その先端が台形状の凹部の最深部にはまり込むことによって、その移動を規制される。
【0012】
また、炊飯釜の凹部にはまり込む部分の水平断面形状が円弧状である場合には、上記凹部は円弧状の凹部とするのが良く、炊飯釜の一部は前記円弧状の凹部に案内されつつ、その最深部にはまり込み、炊飯釜の移動が規制されることになる。
【0013】
本発明の好ましい一態様において、被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部は有底の凹部である。凹部が有底である場合には、炊飯釜の一部が当該凹部にはまり込んだ後に把持爪を上昇させることによって、当該凹部の底部を凹部にはまり込んでいる炊飯釜の一部の下面と当接させ、炊飯釜を持ち上げて搬送することができる。
【0014】
本発明の炊飯釜搬送装置は、典型的には、一対の把持爪とその駆動装置及び昇降装置、及び走行手段を備えた炊飯釜搬送台車である。炊飯釜搬送台車は、列状に配置された複数台の一釜炊飯機の上部又は側部の空間を走行して、一対の把持爪を対として水平方向に移動させ、また、適宜の位置に停止し、その位置で一対の把持爪を昇降させて一対の把持爪を対として垂直方向に移動させ、さらに一対の把持爪を互いに接近又は離間させて炊飯釜を把持し、搬送する。また、本発明の炊飯釜搬送装置は、炊飯釜搬送ロボットであっても良く、一対の把持爪を備えた腕を伸縮させたり、適宜の関節部で垂直面内及び水平面内で回転させて、一対の把持爪を対として垂直方向及び水平方向に移動させ、適宜の位置で一対の把持爪を互いに接近又は離間させて炊飯釜を把持し、搬送する。炊飯釜搬送ロボットは、自身が走行手段を有している場合には、直線状又は曲線状に走行して、一対の把持爪を対として移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炊飯釜搬送装置、炊飯装置、及び炊飯釜の搬送方法によれば、位置ズレを生じさせることなく、炊飯釜を搬送することができるので、常に、炊飯機の予め定められた正規の位置に炊飯釜をセットすることができ、セット時に炊飯釜の底部が炊飯機の側壁やスペーサーと接触して、炊飯機やスペーサーを変形させたり、破損したりする恐れがない上に、炊飯機に設けられている温度センサに対する炊飯釜の位置も常に予め定められた正規の位置となるので、正確な温度計測が可能となり、炊飯不足や炊飯過剰などの炊飯異常という利点が得られる。また、本発明の炊飯釜搬送装置、炊飯装置、及び炊飯釜の搬送方法によれば、搬送中に炊飯釜の位置ズレが生じることがないので、炊飯釜を高速で搬送することが可能となり、炊飯装置の効率化、高速化を実現することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置の一例を示す正面図である。
【図2】炊飯釜搬送装置の左側面図である。
【図3】図2のX−X’断面平面図である。
【図4】一対の把持爪が互いに離間した解放位置にある状態を示す平面図である。
【図5】一対の把持爪が互いに接近した把持位置にある状態を示す平面図である。
【図6】本発明の炊飯釜搬送装置を用いて一釜炊飯機に炊飯釜をセットした状態を示す部分断面図である。
【図7】他の例の一対の把持爪が互いに離間した解放位置にある状態を示す平面図である。
【図8】図7のY−Y’断面図である。
【図9】他の例の一対の把持爪が互いに接近した把持位置にある状態を示す平面図である。
【図10】本発明の炊飯釜搬送装置を用いて一釜炊飯機に炊飯釜をセットした状態を示す部分断面図である。
【図11】更に他の例の一対の把持爪が互いに離間した解放位置にある状態を示す平面図である。
【図12】更に他の例の一対の把持爪が互いに接近した把持位置にある状態を示す平面図である。
【図13】本発明の炊飯釜搬送装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0018】
図1は本発明の炊飯釜搬送装置を備えた炊飯装置の一例を示す正面図である。図1において、1は本発明の炊飯釜搬送装置、2は本発明の炊飯釜搬送装置1を備えた炊飯装置である。3a、3b、3c、3dは炊飯装置2を構成する列状に配置された一釜炊飯機、4は炊飯釜受入部、5は炊飯釜搬出部、Pは炊飯釜である。本例において炊飯釜Pは、その水平断面形状が円形であり、その上部に上部鍔部Pと下部鍔部Pを備えている。なお、図1においては、一釜炊飯機3a〜3dは4台しか示されていないけれども、炊飯装置2を構成する一釜炊飯機は5台以上であっても良いことは勿論である。
【0019】
本例において、炊飯釜搬送装置1は、台車本体6と、台車本体6に回転自在に取り付けられた走行輪7、7と、走行輪7、7を回転駆動する電動機8を備えた炊飯釜搬送台車として構成されている。9は走行輪7、7の走行路であり、炊飯釜搬送装置1は、電動機8によって走行輪7、7を前転又は後転させて走行路9上を、図中矢印で示す左右方向に移動する。
【0020】
10は把持装置であり、把持装置10には、図示しない駆動装置と、当該駆動装置によって駆動され、互いに接近した把持位置と互いに離間した解放位置との間で移動する一対の把持爪11(図では手前側の把持爪しか表されていない)が取り付けられている。12はシリンダであり、シリンダ12のピストンロッドの先端部には把持装置10が取り付けられており、シリンダ12がピストンロッドを突出位置と引き込み位置との間で移動させると、それに伴い、把持装置10は、一対の把持爪11とともに、図中矢印で示す上下方向に昇降する。13はケーブルベアであり、内部に信号線、電力線、シリンダ12等に作動流体を供給する管路等を収容している。14は電力源、15は作動流体源、16は制御装置である。
【0021】
本発明の炊飯釜搬送装置1は上記のように構成されており、制御装置16の制御の下に、走行輪7、7による走行と、シリンダ12による把持装置10の昇降とによって、一対の把持爪11を対として垂直方向及び水平方向に移動させ、さらに図示しない駆動装置によって一対の把持爪11を互いに接近した把持位置と互いに離間した解放位置との間で移動させる。これにより、炊飯釜搬送装置1は、搬送されてくる未炊飯の米と水を収容した炊飯釜Pを炊飯釜受入部4において把持し、一釜炊飯機3a〜3dのうちのいずれか空いている一釜炊飯機の直上まで搬送して、その一釜炊飯機に炊飯釜Pをセットする動作と、一釜炊飯機3a〜3dのいずれかから、炊飯が終了した炊飯釜Pを取り出して、炊飯釜搬出部5へと搬送する動作を行う。
【0022】
図2は、炊飯釜搬送装置1だけを拡大して示す左側面図であり、図1におけるものと同じ部材には同じ符号を付してある。図2において、7aは走行輪7、7の回転軸、7b、7bは回転軸7aの軸受、7cは回転軸7aに取り付けられた従動プーリ、8aは電動機8の出力軸に取り付けられた駆動プーリであり、電動機8の回転力は、駆動プーリ8aから従動プーリ7cへと両者の間に掛け渡されたタイミングベルトを介して伝達され、走行輪7、7が回転する。なお、炊飯釜搬送装置1には、図示しないロータリエンコーダが取り付けられており、走行路9上における炊飯釜搬送装置1の位置に対応した信号を出力するので、その信号に基づいて制御装置16は炊飯釜搬送装置1の走行を制御して、炊飯釜搬送装置1を適宜の位置まで走行させ、その位置に停止させることができるようになっている。
【0023】
10aは、把持装置10の天板であり、シリンダ12のピストンロッドは台車本体6を突き抜けて、その先端部が天板10aに結合されている。したがって、シリンダ12が作動して、そのピストンロッドをシリンダから突出させたり、シリンダ内に引き込むと、天板10aがピストンロッドの先端に結合されている把持装置10は下降又は上昇することになる。因みに、図2は、シリンダ12のピストンロッドがシリンダ内に最も引き込まれた状態を示している。なお、20、20は、把持装置10が昇降を案内するガイドバーである。
【0024】
10bは、把持装置10の底板であり、底板10bには、シリンダ17a、17bと、シリンダ17a、17bへの作動流体の供給を制御する電磁弁18a、18bが取り付けられている。また、シリンダ17a、17bのピストンロッドの先端には、支持体11a、11aがそれぞれ取り付けられており、支持体11a、11aと一対の把持爪11、11とは、連結体11b、11bによって連結されている。したがって、シリンダ17a、17bがそのピストンロッドを突出位置と引き込み位置との間で移動させると、把持爪11、11は、互いに近接した把持位置と、互いに離間した解放位置との間で移動することになる。したがって、シリンダ17a、17bは、一対の把持爪11、11を互いに接近又は離間させる駆動装置ということになる。19、19は、支持体11a、11aの移動を案内するガイドバーである。
【0025】
図3は図2のX−X’断面平面図である。図3に示すとおり、シリンダ17a、17bのピストンロッド21a、21bの先端は、それぞれ、支持体11a、11aと連結されている。これにより、シリンダ17a、17bがそのピストンロッドを突出ないしは引き込むと、把持爪11、11は、互いに近接した把持位置と、互いに離間した解放位置との間で移動することになる。
【0026】
次に図4、図5を用いて、本発明の炊飯釜搬送装置1における一対の把持爪11、11の動作について説明する。まず、図4は、一対の把持爪11、11が互いに離間した解放位置にある状態を示している。図に示すとおり、一対の把持爪11、11は、互いに対向するそれぞれの先端部に円弧状の凹部11w、11wを有している。この円弧状の凹部11w、11wの曲率は、被搬送物である炊飯釜Pの側壁の曲率とほぼ同じ大きさに設定されている。この状態で、炊飯釜搬送装置1は、シリンダ12を作動させて把持装置10を下降させ、把持装置10に取り付けられている一対の把持爪11、11を、その上面が炊飯釜Pの上部鍔部Pの下面よりも下になり、その下面が炊飯釜Pの下部鍔部Pの上面よりも上になる位置まで下降させる。
【0027】
一対の把持爪11、11が上記の位置まで下降すると、炊飯釜搬送装置1は、駆動装置であるシリンダ17a、17bを作動させて、一対の把持爪11、11を、図5に示すように、互いに接近した把持位置まで移動させる。凹部11w、11wの曲率は、被搬送物である炊飯釜Pの側壁の曲率とほぼ同じ大きさに設定されているので、炊飯釜Pの円弧状に突出した側壁の一部は、図5に示すように、一対の把持爪11、11の凹部11w、11wにはまり込むことになる。
【0028】
把持位置において、一対の把持爪11、11の凹部11w、11wの先端部は炊飯釜Pの側壁と接触しても良いが、凹部11w、11wの先端部が炊飯釜Pの側壁と接触すると、炊飯釜Pの側壁を傷つけたり、騒音を発生したりするので、把持位置は、凹部11w、11wの先端部と炊飯釜Pの側壁との間に若干の間隙を残す位置に設定するのが好ましい。間隙の大きさは、炊飯釜Pや一釜炊飯機3a〜3dの大きさにも依るが、余りに大きいと、搬送途中での炊飯釜Pの移動を規制する効果が十分ではなくなるので、通常は10mm以下とするのが良く、好ましくは7mm以下、より好ましくは5mm以下である。なお、把持位置の設定は、シリンダ17a、17bのストロークを調整したり、シリンダ17a、17bの底板10b上の取り付け位置を変更するなどして、容易に変更、調整が可能である。
【0029】
一対の把持爪11、11と炊飯釜Pとが図5に示す状態になると、炊飯釜搬送装置1は、シリンダ12を作動させて一対の把持爪11、11を上昇させる。上昇途中で、一対の把持爪11、11の上面は炊飯釜Pの上部鍔部Pの下面と当接し、炊飯釜Pは持ち上げられ、垂直方向に移動し、さらに炊飯釜搬送装置1が走行路9上を走行すると水平方向に移動して、搬送されることになる。このとき、図5に示すとおり、炊飯釜Pの円弧状に突出した側壁の一部は凹部11w、11wにはまり込んでいるので、図中αで示す方向は勿論、βで示す方向にも、炊飯釜Pの移動量は、高々、凹部11w、11wの先端と炊飯釜Pの側壁間に残された間隙の大きさ程度に規制されている。したがって、搬送途中に炊飯釜Pに一釜炊飯機3a〜3dにセットする際に何らかの支障をもたらすほどの位置ズレは生じない。
【0030】
図6は、炊飯釜搬送装置1を用いて、例えば一釜炊飯機3dに炊飯釜Pをセットした状態を示す部分断面図である。図に示すとおり、本発明の炊飯釜搬送装置1によれば、炊飯釜Pは、一釜炊飯機3dの側壁上面に設置されたスペーサー22、22とも接触することなく、一釜炊飯機3dのほぼ中央の正規の炊飯位置に正確にセットされ、その底面の中央部には温度センサ23が当接して、炊飯釜P内部の炊飯状態を反映した正確な温度計測が可能である。
【0031】
図7は、一対の把持爪11、11の他の例を示す図であり、図示しない本発明の炊飯釜搬送装置によって、一対の把持爪11、11が対として、炊飯釜Pを把持できる位置にまで移動された状態を示している。図に示すとおり、本例において炊飯釜Pは長方形であり、下部鍔部Pは、炊飯釜Pの周囲全体に設けられているが、上部鍔部Pは、炊飯釜Pの対向する短辺の中央部のみに部分的に設けられている。この部分的な上部鍔部Pに対応して、一対の把持爪11、11には、先端部に向かうに連れて間隔が広がるテーパ部11s、11sを備えた先広がりの台形状の凹部11w、11wが設けられている。凹部11w、11wの台形状の短辺の長さは、部分的な上部鍔部Pの炊飯釜Pの短辺に沿った方向の長さとほぼ同じに設定されており、部分的な上部鍔部Pは、テーパ部11s、11sに案内されて凹部11w、11wにはまり込むことになる。本例の把持爪11、11は、その凹部11w、11wの部分に底部11z、11zを有しており、有底である。なお、Pは炊飯釜Pの蓋であり、Pは蓋Pに設けられた蒸気排出用の通気孔である。
【0032】
図8は図7のY−Y’断面図である。図8に示すように、一対の把持爪11、11は、凹部11w、11wが炊飯釜Pの部分的な上部鍔部Pを受け入れることができる高さにあり、底部11z、11zは、上部鍔部Pと下部鍔部Pとの間の高さにある。この状態で一対の把持爪11、11を互いに接近した把持位置まで移動させると、炊飯釜Pの部分的な上部鍔部Pは凹部11w、11wにはまり込むことになる。また、把持爪11、11の底部11z、11zは、上部鍔部Pと下部鍔部Pとの間に入ることになる。
【0033】
図9は、図7に示す状態から一対の把持爪11、11を互いに接近した把持位置まで移動させた状態を示している。図9に示すとおり、炊飯釜Pの部分的な上部鍔部Pは、テーパ部11s、11sに案内されて、一対の把持爪11、11の凹部11w、11wにはまり込んでおり、炊飯釜Pの移動は、図中左右方向及び上下方向のいずれにおいても、凹部11w、11wの先端部と上部鍔部Pとの間隙の範囲で規制されている。なお、本例の把持爪11、11においても、把持位置は、凹部11w、11wの台形状の短辺の先端部と上部鍔部Pの先端部との間に若干の間隙を残す位置に設定するのが好ましく、その間隙の大きさは、炊飯釜Pや、炊飯釜Pがセットされる一釜炊飯機の大きさにも依るが、前述の例におけると同様に、通常は10mm以下とするのが良く、好ましくは7mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0034】
また、図9に示す状態において、凹部11w、11wの底部11z、11zは、上部鍔部Pよりも下方にあるので、この状態で一対の把持爪11、11が上昇すると、底部11z、11zの上面が部分的な上部鍔部Pの下面と当接し、炊飯釜Pは持ち上げられ、垂直方向に移動し、さらに図示しない炊飯釜搬送装置によって水平方向に移動され、搬送されることになる。このとき、図9に示すとおり、炊飯釜Pの部分的な上部鍔部Pは凹部11w、11wにはまり込んでいるので、炊飯釜Pの移動量は図9における左右方向にも上下方向にも規制されている。したがって、搬送途中に炊飯釜Pに一釜炊飯機にセットする際に何らかの支障をもたらすほどの位置ズレは生じない。
【0035】
図10は、図7〜図9に示したような一対の把持爪11、11を備えた本発明の炊飯釜搬送装置を用いて、一釜炊飯機3zに炊飯釜Pをセットした状態を示す部分断面図である。図に示すとおり、上述したような把持爪11、11を備えた本発明の炊飯釜搬送装置によれば、炊飯釜Pは、一釜炊飯機3zの側壁上面に設置されたスペーサー22、22とも接触することなく、一釜炊飯機3zのほぼ中央の正規の炊飯位置に正確にセットされている。その結果、温度センサ23と炊飯釜Pの蓋Pに設けられた通気孔Pとの位置関係にもズレはなく、温度センサ23は、通気孔Pから噴出する蒸気の温度を正確に計測して、炊飯釜P内部の炊飯状態を推測することが可能である。
【0036】
図11、図12は、一対の把持爪11、11のさらに他の例を示す平面図である。図11に示すとおり、本例において炊飯釜Pは長方形であり、下部鍔部P及び上部鍔部Pの双方が、炊飯釜Pの周囲全体にわたって設けられている。一対の把持爪11、11は、長方形の炊飯釜Pの短辺部分に対応した凹部11w、11wを備えており、図12に示すように把持位置へと移動させると、炊飯釜Pの短辺側の側部が一対の把持爪11、11のテーパ部11s、11sに案内されて、凹部11w、11wにはまり込むことになる。したがって、炊飯釜Pの移動は規制され、搬送途中において位置ズレが生じる恐れはない。
【0037】
なお、本例の把持爪11、11においても、把持位置は、凹部11w、11wの先端部と炊飯釜Pの側壁との間に若干の間隙を残す位置に設定するのが好ましく、その間隙の大きさは、炊飯釜Pや、炊飯釜Pがセットされる一釜炊飯機の大きさにも依るが、前述の例におけると同様に、通常は10mm以下とするのが良く、好ましくは7mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0038】
図13は、本発明の炊飯釜搬送装置1の他の例を示す図である。本例の炊飯釜搬送装置1は、基台24と、基台24に対して垂直軸方向の回りに回転自在な旋回胴25と、旋回胴25に対して回転自在な関節部を介して連結されている2本の作業アーム26a、26bと、作業アーム26bの先端に取り付けられた把持装置10及び一対の把持爪11、11とを備えている。本例の炊飯釜搬送装置1は、旋回胴25及び作業アーム26a、26bを回動させて、一対の把持爪11、11を備えた把持装置10を垂直方向及び水平方向に移動させ、炊飯釜Pの搬送及び図示しない炊飯機へのセットを行う。一対の把持爪11、11には、上述したような凹部11w、11wが設けられているので、把持、搬送される炊飯釜の一部はそれらの凹部11w、11wにはまり込み、炊飯釜の移動が規制されるので、搬送中に炊飯釜の位置ズレが生じる恐れがない。
【0039】
以上の例においては、把持爪11、11は一対しか設けられていないが、例えば直交する方向に2対設け、四方から炊飯釜を把持するようにしても良い。また、以上の例においては、一対の把持爪11、11の凹部11w、11wにはまり込む炊飯釜の一部は、炊飯釜の側壁又は鍔部であったが、炊飯釜が取っ手を備えている場合には、取っ手を凹部11w、11wにはまり込むようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上述べたとおり、本発明の炊飯釜搬送装置及び炊飯装置並びに炊飯釜の搬送方法によれば、搬送中に炊飯釜に位置ズレが生じる恐れがないので、効率の良い炊飯が可能であり、また、炊飯釜搬送装置による炊飯釜の搬送速度を上げることができるので、炊飯装置の高速化が可能となる。本発明は、大量のご飯を必要とする外食産業、弁当業界、食堂業界等において多大な利用可能性を備えている発明である。
【符号の説明】
【0041】
1 炊飯釜搬送装置
2 炊飯装置
3a、3b・・・ 一釜炊飯機
4 炊飯釜受入部
5 炊飯釜搬出部
6 台車本体
7 走行輪
8 電動機
9 走行路
10 把持装置
11 把持爪
11w 凹部
11s テーパ部
11z 底部
12 シリンダ
13 ケーブルベア
14 電力源
15 作動流体源
16 制御装置
17a、17b シリンダ
18a、18b 電磁弁
19、20 ガイドバー
21a、21b ピストンロッド
22 スペーサー
23 温度センサ
24 基台
25 旋回胴
26a、26b 作業アーム
P 炊飯釜
上部鍔部
下部鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の把持爪と、前記一対の把持爪を互いに接近又は離間させる駆動装置と、前記一対の把持爪を対として垂直方向及び水平方向に移動させる移動装置とを有し、前記一対の把持爪が、互いに対向するそれぞれの先端部に、被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部を有している炊飯釜搬送装置。
【請求項2】
被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部が、把持爪の先端部に向かうに連れて間隔が広がるテーパ部を備えた先広がりの台形状の凹部である請求項1記載の炊飯釜搬送装置。
【請求項3】
被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部が、円弧状の凹部である請求項1記載の炊飯釜搬送装置。
【請求項4】
被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部が有底の凹部である請求項1〜3のいずれかに記載の炊飯釜搬送装置。
【請求項5】
未炊飯の炊飯釜を受け入れる炊飯釜受入部と、複数台の一釜炊飯機と、炊飯釜受入部から個々の一釜炊飯機へと炊飯釜を搬送する請求項1〜4のいずれかに記載の炊飯釜搬送装置とを有している炊飯装置。
【請求項6】
一釜炊飯機が、炊飯釜が炊飯位置にセットされたときに、炊飯釜の底面中央部と当接する温度センサを備えている請求項5記載の炊飯装置。
【請求項7】
一釜炊飯機が、炊飯釜が炊飯位置セットされたときに、炊飯釜の蓋に設けられた通気孔と対向する位置に温度センサを備えている請求項5記載の炊飯装置。
【請求項8】
互いに対向するそれぞれの先端部に被搬送物である炊飯釜の少なくとも一部がはまり込む凹部を有している一対の把持爪を、炊飯釜に対して接近させ、前記凹部のそれぞれに炊飯釜の一部をはまり込ませた状態で、前記一対の把持爪を上昇させ、炊飯釜を持ち上げて移動させる炊飯釜の搬送方法。
【請求項9】
前記凹部にはまり込む炊飯釜の一部が、炊飯釜の側壁、鍔部、又は取っ手である請求項8記載の炊飯釜の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−19869(P2011−19869A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169949(P2009−169949)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(599103122)精宏機械株式会社 (26)
【Fターム(参考)】