炎症および/または内毒素ショックの治療
本発明は、対象における炎症および/または内毒素ショックの治療および/または創傷の治療および/または炎症性ケモカインのレベルの減少のための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用、ならびに、炎症および/または内毒素ショックおよび/または創傷の治療における使用のための、または、炎症性メディエータのレベルの減少のための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、炎症および/または内毒素ショックの治療および/または炎症性ケモカインのレベルの減少に関し、ならびに、炎症および/または内毒素ショックの治療における使用のためのまたは炎症性メディエータのレベルの減少のための組成物に関する。
【0002】
炎症は、多くのヒトおよび動物の疾病の病因を構成し、結果として、ヒトまたは動物の体における組織に対して身体的、化学的または外傷性の損傷を生じさせる。一般に、免疫応答は、血管拡張、好中球の遊走、化学走性および血管透過性の増大をもたらす、内因性の化学的メディエータの全身的放出に帰着する。免疫応答は、どこで生じようとも、何が原因であろうとも、本質的に同じである。応答は急性でありえ(短く存続)、または、慢性であり得る(長く続く)。
【0003】
しばしば敗血症性ショックとも言及される内毒素ショックは、炎症様応答をもたらす大量の内毒素に対して、血管内がさらされることを原因として生じると考えられる。内毒素への暴露は、TNFαおよびIL−1を含む多数サイトカインの生産をもたらす。第VII因子を含む補体系および凝集カスケードも刺激される。この反応の結果は、組織損傷、熱、血管拡張、頻脈および血管内凝集でありえる。
【0004】
炎症部位において、栄養素、酸素、抗体および治療剤への接触を増大させ、ならびに繊維素形成および毒素の希釈化を増大させるため、炎症反応は典型的に有益である。しかしながら、炎症が望ましくない場合または長引く場合、組織にダメージを与え得る。そのような状況において、抗炎症剤がしばしば使用される。2つの主要な種類の抗炎症剤、副腎皮質ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が存在する。これらの薬剤のほとんどは、望ましくない副作用を有する。副腎皮質ステロイドの長引く投与は、しばしば、クッシング症候群(コルチゾールの生産過剰をもたらす副腎の不調)に似た重大な副作用に関与する。その他の潜在的な副作用は、体重増加、胸、顔、首および背中上部における脂肪蓄積、浮腫、高血圧症、糖尿病、乏しい創傷治癒、感染症に対する感受性の増大、皮膚の薄層化、情緒不安定およびうつ病を含む。NSAIDSの最も重大な副作用は、損傷または外科手術の後における腎不全、肝不全、潰瘍および長引く出血である。一部の人はNSAIDに対してアレルギーを有し、喘息の人は、アスピリンへの重大なアレルギー反応を経験するリスクがより高い。それ故、抗炎症効果を有する代替となる薬剤を同定する必要がある。
【0005】
ケメリン(Chemerin)は、腹水液および関節液を含む一連のヒト炎症性滲出液中に豊富に存在するタンパク質である(Wittamer V et al. J Exp Med. Oct 6 2003;198(7):977-985; Meder Wet et al. FEBS Lett. Dec 18 2003;555(3):495-499)。ヒトケメリンは、プロケメリンと言及される163のアミノ酸(aa)前駆体(ハツカネズミおよびマウスの等価物は162aaである)として分泌され、NおよびC端末の切断を受けて、137aaの走化性のあるタンパク質となる(ハツカネズミでは140aa)(Wittamer V et al. J Exp Med. Oct 6 2003;198(7):977-985; Zabel BA et al. J Biol Chem. Oct 14 2005;280(41):34661-34666; Wittamer V et al. J Immunol. Jul 1 2005;175(1):487-493; Samson M et al. Eur J Immunol. May 1998;28(5):1689-1700)。ケメリンの予測される構造は、ケモカインと構造的な類似性を示し、異常のあるカルボキシル末端、αプリーツシートおよびβヘリカルアミノ末端ドメインを潜在的に有する「リバース」ケモカインとして記述されている(Zabel BA et al. Exp Hematol. Aug 2006;34(8):1021-1032)。構造は、活性化の達成するためにタンパク質分解プロセスを受けるカテリシジンおよびキニノーゲンに存在するシスタチンフォールドを暗示させる(Zabel BA et al. Exp Hematol. Aug 2006;34(8):1106-1114; Colman RW, Biol Chem. Jan 2001;382(1):65-70; Yamasaki K et al. FASEB J. October 1, 2006 2006;20(12):2068-2080)。
【0006】
第1の側面によると、本発明は、炎症の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0007】
別の側面によると、本発明は、内毒素ショックの治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0008】
更なる側面によると、本発明は、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少させるための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0009】
更に別の側面によると、本発明は、炎症の治療および/または内毒素ショックの治療における使用のための、および/または、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少するための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0010】
1以上の炎症性メディエータは、サイトカイン、ケモカインおよび炎症を仲介する脂質を含んでよい。炎症性メディエータは、TNFα、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−12、G−CSF、MCP−2(CCL8)、GROα(CXCL1)、GROβ(CXCL2)、IL−8(CXCL8)、TECK(CCL25)、MCP−1(CCL2)、インターフェロンγおよびランテス(CCL5)を含む群から選択される1以上のケモカインを含んでよい。好ましくは、医薬は、TNFαのレベルを減少することができる。
【0011】
驚くべきことに、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドは抗炎症特性を有し、炎症および/または内毒素ショックを治療、予防または回復するために使用してもよい。
【0012】
医薬は、治療的および/または予防的用途を有してよい。
【0013】
好ましくは、ペプチドは、約5から約30の間のアミノ酸である。より好ましくは、ペプチドは、約5から約25の間のアミノ酸であり、好ましくは、ペプチドは、約5から約20の間のアミノ酸である。
【0014】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端またはそのアナログもしくは誘導体に由来する約5から約30の間のアミノ酸を含む。より好ましくは、ペプチドは、約5から約25の間のアミノ酸であり、好ましくは、ペプチドは、約5から約20の間のアミノ酸である。
【0015】
ケメリンタンパク質という言及は、ケメリンのプロセスされた形態を意味し、このプロセスにおいて、プレプロケメリンに見つかるN末端アミノ酸がタンパク質分解的に除去され、プロケメリン前駆体に見つかるC末端アミノ酸がタンパク質分解的に除去され、ケメリンと称される活性を有した切断型のタンパク質が生じる。
【0016】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンのヒトまたは非ヒトの形態に由来する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンのヒトまたは哺乳類の形態に由来する。哺乳類非ヒトケメリンは、ラットまたはマウスのようなげっ歯動物、馬、犬、猫、雌牛、羊またはブタに由来してよい。
【0017】
好ましくは、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドは、天然のケメリンタンパク質のC末端と、少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端における天然のペプチド配列と、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0018】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じるアミノ酸の最後の約5から約30の間、好ましくは最後の約10から約25の間と、少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じるアミノ酸の最後の約5から約30の間、好ましくは最後の約10から約25の間と、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0019】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じる最後の30アミノ酸の5から25の間と、少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じる最後の30アミノ酸の5から25の間と、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0020】
ケメリンタンパク質における「最後のアミノ酸」という言及は、タンパク質のC末端におけるアミノ酸を意味する。
【0021】
ヒトおよびマウスのケメリン、プロケメリンおよびプレプロケメリンの全長配列は図2Aに示されており、ヒトタンパク質はそれぞれ配列番号31、32、33、マウスタンパク質はそれぞれ配列番号34、35、36である。好ましくは、ケメリンペプチドは、配列番号31または34の配列を有する。 ウシやラットといったその他の種に由来するケメリンタンパク質の配列は、既にGenBankから利用でき、当業者は容易にアクセスできる。
【0022】
好ましくは、ペプチドは、配列番号31(ヒト配列)および配列番号34(マウス配列)によるケメリンの最後の5から最後の30の間のアミノ酸と、少なくとも30%またはそれ以上, より好ましくは、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0023】
パーセントアミノ酸配列同一性は、配列を整列し、必要に応じて最大パーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後における、天然のケメリンタンパク質のアミノ酸と同一の配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者に既知の多数の方法で行うことができ、例えばBLASTおよびALIGNアルゴリズムを使用する方法を含む。
【0024】
ペプチドは、それが、本来の配列のペプチドに対して、少なくとも50%の抗炎症活性、および/または、少なくとも50%の抗内毒素ショック活性、および/または、少なくとも50%までの1以上の炎症性メディエータのレベルを減少させる能力を有している限り、ケメリンタンパク質のC末端の本来の配列に対する付加、挿入、欠失、転換または移動を含んでよい。
【0025】
「アナログ」または「誘導体」という用語は、天然の配列とは異なる配列を有するものの、天然の配列を有するペプチドに対して、同等以上、および少なくとも約50%、好ましくは60%、70%、80%または90%の抗炎症活性および/または抗内毒素ショック活性、炎症性メディエータ減少活性を本質的に有するペプチドを意味する。
【0026】
ペプチドアナログまたは誘導体は、N末端またはC末端残基を含む任意のアミノ酸残基の、1以上の欠失、挿入または修飾を有してよい。ペプチドは、アセチル化、アシル化、アルキル化、糖鎖形成等されてよい。ペプチドは、さらに、CもしくはN末端の何れかまたは両末端に付加的なアミノ酸を含んでよい。
【0027】
ペプチド、アナログまたは誘導体は、融合タンパク質の一部でよい。
【0028】
ペプチドは、天然のアミノ酸配列と比較して、1以上の保存的アミノ酸配列置換を含んでよい。
【0029】
好ましくは、1以上のペプチドは、以下を含む群から選択される配列を含む:
PHGYFLPGQFA(ケメリン11−マウス;C11m;配列番号1);
PHGYFLPGQFAF(ケメリン12−マウス;C12m;配列番号2);
PHGYFLPGQFAFS(ケメリン13−マウス;C13m;配列番号3);
AGEDPHGYFLPGQFA(ケメリン15−マウス;C15m;配列番号4);
AGEDPHGYFLPGQFAF(ケメリン16−マウス;C16m;配列番号5);
AGEDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン17−マウス;C17m;配列番号6);
DPHGYFLPGQFA(ケメリン12A−マウス;C12Am;配列番号7);
EDPHGYFLPGQFA(ケメリン13A−マウス;C13Am;配列番号8);
GEDPHGYFLPGQFA(ケメリン14A−マウス;C14Am;配列番号9);
DPHGYFLPGQFAF(ケメリン13B−マウス;C13Bm;配列番号10);
EDPHGYFLPGQFAF(ケメリン14B−マウス;C14Bm;配列番号11);
GEDPHGYFLPGQFAF(ケメリン15A−マウス;C15Am;配列番号12);
DPHGYFLPGQFAFS(ケメリン14C−マウス;C14Cm;配列番号13);
EDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン15B−マウス;C15Bm;配列番号14);
GEDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン16A−マウス;C16Am;配列番号15);
PHSFYFPGQFA(ケメリン11−ヒト;C11h;配列番号16);
PHSFYFPGQFAF(ケメリン12−ヒト;C12h;配列番号17);
PHSFYFPGQFAFS(ケメリン13−ヒト;C13h;配列番号18);
AGEDPHSFYFPGQFA(ケメリン15−ヒト;C15h;配列番号19);
AGEDPHSFYFPGQFAF(ケメリン16−ヒト;C16h;配列番号20);
AGEDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン17−ヒト;C17h;配列番号21);
DPHSFYFPGQFA(ケメリン12A−ヒト;C12Ah;配列番号22);
EDPHSFYFPGQFA(ケメリン13A−ヒト;C13Ah;配列番号23);
GEDPHSFYFPGQFA(ケメリン14A−ヒト;C14Ah;配列番号24);
DPHSFYFPGQFAF(ケメリン13B−ヒト;C13Bh;配列番号25);
EDPHSFYFPGQFAF(ケメリン14B−ヒト;C14Bh;配列番号26);
GEDPHSFYFPGQFAF(ケメリン15A−ヒト;C15Ah;配列番号27);
DPHSFYFPGQFAFS(ケメリン14C−ヒト;C14Ch;配列番号28);
EDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン15B−ヒト;C15Bh;配列番号29);および
GEDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン16A−ヒト;C16Ah;配列番号30);
またはそれらのアナログもしくは誘導体。
【0030】
好ましくは、1以上のペプチドは、以下を含む群から選択される配列を含む:
AQAGEDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン19−マウス;C19m;配列番号37);および
QRAGEDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン19−ヒト;C19h;配列番号38);またはそれらのアナログもしくは誘導体。
【0031】
好ましくは、ペプチドは、上において配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30として言及される1以上のペプチドと、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0032】
好ましくは、ペプチドは、上において配列番号37または38として言及される1以上のペプチドと、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0033】
好ましくは、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドのアナログまたは誘導体は、ペプチドの小分子擬態物を含む。
【0034】
ペプチド、アナログまたは誘導体は、本来のシステムから単離されてよく、または、合成的にまたは組み換えで生産されてよい。合成されたペプチドは、自動化された方法による合成を含む標準的化学的方法によって生産してよい。
【0035】
組換えタンパク質は精製された形態で使用してよい。あるいは、組換えタンパク質を発現する細胞からの上清を使用してよい。
【0036】
ペプチド、アナログまたは誘導体は、より大きなタンパク質または分子複合体の一部を形成してよい。
【0037】
ペプチドは直鎖または環状であってよい。
【0038】
ペプチドはプロテアーゼ耐性の骨格を含んでよい。
【0039】
ペプチドはCおよび/またはN末端における修飾を含んでよい。
【0040】
ペプチドは、当該分野で既知の方法によって、例えば放射性ラベル、蛍光性ラベル、質量分析タグ、ビオチン等でラベルされてよい。
【0041】
医薬は、その他の既知の抗炎症剤および/またはその他の既知の抗内毒素ショック剤および/またはケモカインレベルを減少されることが既知のその他の薬剤を含む、その他の活性成分を含んでよい。
【0042】
医薬は、さらに、医薬的に許容可能な賦形剤を含んでよい。賦形剤は、大きな巨大分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、トレハロース、脂質凝集物および不活性ウィルス粒子を含んでよい。そのような賦形剤は当業者に周知であろう。
【0043】
医薬は、さらに、1以上の緩衝剤、粘性増加剤、溶剤、安定剤および防腐剤を含んでよい。
【0044】
医薬の投与経路は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、損傷内、関節内、局所、経口、直腸、経鼻、吸入またはその他の適切な経路による注射または注入であってよい。
【0045】
使用されるペプチドの用量は、ペプチド、標的および治療に依存するだろう。用量および投与経路の決定は、通常の医師の技術に属す。標準的投与計画は、約1pg/kgから約100mg/kgまで変化してよく、より好ましくは、用量は、約10pg/kgから約1mg/kg、より好ましくは、約10pg/kgから約100ng/kgであろう。好ましくは、これらの用量は1日当たりの用量である。
【0046】
驚くべきことに、本発明によるペプチドの0.32ナノグラム/kg程度に低い用量が、マウスにおける無菌の腹膜炎に対して有効であるのに対し、同程度の効果得るためには、1.2mg/kgのデキサメタゾンが要求されることがわかった。
【0047】
好ましくは、本発明の使用による医薬は、約10pg/kgから約1mg/kgの間の用量で、より好ましくは、約10pg/kgから約100ng/kgの間、または約10pg/kgから約10ng/kgの間の用量での投与を意図してよい。これらの用量は、必要とされるデキサメタゾンの用量より少なくとも3log低い。
【0048】
別の側面によると、本発明は、対象における炎症を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0049】
別の側面によると、本発明は、対象における内毒素ショックを治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0050】
別の側面によると、本発明は、対象における1以上の炎症性メディエータのレベルを減少する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0051】
治療は、治療的、予防的または美容的であってよい。
【0052】
好ましくは、ペプチドは、有効な量で、すなわち、(i)炎症の低下を誘導するまたは引き起こすために、または、炎症を予防または減少するために;(ii)内毒素ショックの低下を誘導するまたは引き起こすために、または、内毒素ショックを予防または減少するために;および/または(iii)1以上の炎症性メディエータのレベルを減少するために十分な量で投与される。
【0053】
あるいは、本発明の医薬は、装置に関連する炎症のリスクを減らすために、医療装置に直接適用されてよい。これは、装置の表面に医薬を適用することによって、または、装置の表面にケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を浸透させることによって達成してよい。
【0054】
別の側面によると、本発明は、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した医療装置を提供する。
【0055】
医療装置はステントまたはカテーテルであってよい。
【0056】
別の側面によると、本発明は、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した創傷包帯または絆創膏を提供する。
【0057】
本発明の任意の側面において言及される炎症は、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(硬皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性脈管炎、サーコイドーシス、自己免疫溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿症)、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫介在性血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、自己免疫性炎症性疾病(例えば、アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、甲状腺亢進症、硬皮症、全身性紅斑狼瘡、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、遠位性回腸炎、肉芽腫性腸炎、限局性回腸炎、終末回腸炎)、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、同種異系移植片拒絶反応、糖尿病、免疫介在性腎臓病(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢神経および末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄性多発神経障害またはギラン・バレー症候群、および慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆汁性疾病例えば、伝染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎およびその他の肝臓指向性(hepatotropic)ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、硬化性胆管炎、グルテン過敏性腸疾患、ホイップル病、水疱性皮膚病、多形性紅斑および接触性皮膚炎を含む自己免疫介在性または免疫介在性皮膚病、乾癬、アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症およびじんましん、肺の免疫疾患、例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症および過敏性肺炎、移植片拒絶および移植片対宿主病を含む移植関連疾患ウイルス病を含む感染症、例えばAIDS(HIV感染症)、疱疹など、細菌感染、真菌感染症、原生動物感染症、寄生性感染症および呼吸器合胞体ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルスなど、湿疹および内毒素ショックといった症状に関連してよい。
【0058】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、炎症を治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0059】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37、38の配列を有するペプチドおよびそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、炎症を治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0060】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、内毒素ショックを治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0061】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37、38の配列を有するペプチドおよびそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、内毒素ショックを治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0062】
更なる側面によると、本発は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少できるペプチドを提供する。
【0063】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37、38の配列を有するペプチドおよびそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少できるペプチドを提供する。
【0064】
別の側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0065】
別の側面によると、本発明は、配列番号37および38の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0066】
医薬組成物は、炎症の治療および/または予防のため、および/または、内毒素ショックの治療および/または予防のため、および/または、サイトカインおよびケモカインといった1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のためであってよい。
【0067】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0068】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37または38の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0069】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチドを提供する。好ましくは、ペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドに対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の配列同一性を有するペプチドを有する。
【0070】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37または38の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチドを提供する。好ましくは、ペプチドは、配列番号37または38の配列を有するペプチドに対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の配列同一性を有する。
【0071】
更なる側面によると、本発明は、創傷の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0072】
更なる側面によると、本発明は、対象における創傷を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0073】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、37または38の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチドを含む、創傷の治療のための医薬組成物を提供する。
【0074】
更なる側面によると、本発明は、炎症の治療および/または予防における使用のための、および/または、内毒素ショックの治療および/または予防における使用のための、および/または、サイトカインおよびケモカインといった1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のためのケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0075】
更なる側面によると、本発明は、創傷の治療における使用のための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0076】
当業者は、上に議論された任意の望ましい特徴は、本発明の任意の側面に適用することができると認識するだろう。
【0077】
本発明の好ましい実施例を、単に例示として、以下の図および例に関連して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1B】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1C】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1D】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1E】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1F】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図2A】図2Aは、ヒト(上の配列)およびマウス(下の配列)のケメリン(Tig2)のアミノ酸配列アラインメントを示す。ヒト(プロテインデータバンクアクセション番号NP_002880)およびマウス(NP_082128)ケメリンのアミノ酸配列は、PeptideCutter(http://www.expasy.org/tools/peptidecutter)を使用して整列して分析し、予測されるトリプシン切断サイト(黒い垂線)を得た。太字および灰色の全長配列は、プレプロケメリンの配列である(ヒトについて配列番号33およびマウスについて配列番号36)。N末端アミノ酸の灰色を除去した配列は、プロケメリン配列(ヒトについて配列番号32およびマウスについて配列番号35)である。N末端およびC末端アミノ酸の灰色を除去した太字の配列は、ケメリンの配列である(ヒトについて配列番号31およびマウスについて配列番号34)。
【0079】
C末端ペプチドC11m(配列番号1)、C13m(配列番号2)、C15m(配列番号3)およびC17m(配列番号4)の配列も示される。
【図2B】図2Bは、ケメリンのC端末部に由来するペプチドが、マクロファージにより活性化されたプロ炎症性メディエータ産生を抑えることを示す。図中のペプチドC13、C15およびC17とは、それぞれ、上においてC13m、C15mおよびC17mと示されるペプチドである。
【図3】図3−ケメリンペプチドは、ケメリン140と比較して、マクロファージ走化特性をほとんど示さない。図中のペプチドC11、C13、C15およびC17は、それぞれ、上にてC11m、C13m、C15mおよびC17mと記載されるペプチドを意味する。
【図4】図4A−Hは、ケメリン、ケメリンペプチドおよびケメリン処理した上清に仲介される化学走性を示す。30分の百日咳毒素による前処理(PTX;200ng/ml)を行うまたは行わないPMΦ(0.4×106)を、4時間にわたり、修飾したボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、化学遊走物質(図4A;rmケメリン、図4B;C15、図4C;C11、図4D;C13、図4E;C19、図4F;C6、図4G;C8)の方へ移動させた。図4H−PMΦ(7.5x105)は、4時間にわたり、修飾したボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、未処理のマクロファージおよびLPS/IFNγ±ケメリンまたはC15で処理したマクロファージからの条件培地の方へ移動させた。グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEM(n=4つの独立した実験)を示す。PMΦ+PTXについて、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05(スチューデントのt−検定)。図中のペプチドC11、C13、C15およびC19は、上において、それぞれC11m、C13m、C15mおよびC19mとして示されるペプチドである。
【図5】図5−マクロファージが、ケメリン処理マクロファージからの条件培地への化学走性の減少を示したことを表す。図中のペプチドC15およびC17は、上において、それぞれC15mおよびC17mと示されるペプチドを表す。
【図6】図6−ケメリン15−マウスが、ザイモサン誘導性腹膜炎を抑制することを示す。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。Zはザイモサンを示す。
【図7A】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7B】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7C】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7D】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7E】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7F】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7G】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図8】図8A−D−抗ケメリン抗体はケメリン種を中和し、腹膜の炎症を悪化させることを示す。図8A−PMΦは、マクロファージ化学走性アッセイ(図7に詳述するように行なった)に使用し、抗rmケメリン抗体またはコントロールIgGの存在下または非存在下でランテス、ケメリンまたはC15に向けて移動させた。グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEMを示す(n=4つの独立した実験)。化学遊走物質について、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。図8B−PMΦは、抗rmケメリン抗体またはコントロールIgGの存在下または非存在下で、1pMのC15または1pMのケメリンで1時間前処理し、その後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。16時間後のマクロファージ上清におけるランテス±SEMの平均発現を、ELISAで決定した(n=4独立した実験)。LPS/IFNγ処理サンプルについて、**,P<0.01;*,P<0.05。図8Cおよび8D−C57Bl6/Jマウスに、PBS、抗rmケメリン抗体(100ng/マウス)またはコントロールIgG(100ng/マウス)をi.pで投与し、1時間後、PBSまたはザイモサン(10μg/空隙)を注入した。腹膜滲出細胞は、ザイモサン注入から4時間および24時間後、腹膜洗浄によって収集し、図7に概説されるように処理した。Z;ザイモサン、ChAB;抗rmケメリン抗体。ザイモサン負荷マウスについて、**,P<0.01。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図9】図9は、0.32ng/kgのC15mのみの注入は、好中球またはマクロファージのリクルートメントを誘導しないが、腹膜のTNFαレベルを減少させないことを示す。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図10】図10は、修飾ケメリン13−ヒトペプチドは、マウスマクロファージにおけるランテスおよびTNFα転写発現を抑えることを示す。図中のペプチドhC13は修飾C13hペプチドを指す。
【図11】図11は、C17mはC140誘導性マクロファージ化学走性に影響しないことを示す。図中のペプチドC17は、上にて言及されるペプチドC17mを意味する。
【図12】図12は、ケメリン15−マウスおよびケメリン17−マウスは、ザイモサンで刺激したマウスマクロファージによるTNFα分泌を抑えることを示す。図中のペプチドC15およびC17は、それぞれ上にてC15mおよびC17mと記述されたペプチドを指す。デキサはデキサメタゾンを指す。
【図13】図13は、ケメリン140およびケメリン15−マウスが、真のマクロファージ化学走性を誘導し、ケモキネシスを誘導しないことを実証するチェッカーボード分析である。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図14】図14A−Bは、ケメリン15は、一連のC15およびザイモサンの用量にわたって、ザイモサン腹膜炎における単球および好中球のリクルートメントを抑えることを示す。図14A−C57Bl6/Jマウス(5−6動物/投与)に、PBSまたはC15(0.32ng/kg)をi.pで投与し、1時間後、PBSまたはザイモサン用量範囲(10μg−1mg;A)を注入した。図14B−マウス(5−6動物/投与)は、PBSまたはC15用量範囲をi.pで投薬(4−40pg/マウス)し、1時間後、PBSまたはザイモサン(10μg;2x106粒子/空隙)を注入した。ザイモサン負荷から4時間後、腹膜洗浄によって腹膜滲出細胞を収集した(5−6マウス/群)。図7に記載される通りに、洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物について***,P<0.001;**,P<0.01,**;P<0.05 *(スチューデントのt−検定)。図中のペプチドC15またはケメリン15は、上にてC15mと示されたペプチドを指す。
【図15】図15は、相対的認識指標として示される、マクロファージによるザイモサン認識のための蛍光測定を示す。実験は、様々な濃度のC15の存在下または非存在下で行った。データは、4つのプールし、標準化した実験の平均(±s.e.m。)を示す。
【実施例】
【0080】
本願におけるケメリン140またはC140とは、配列番号34の140アミノ酸マウスケメリンタンパク質(ケメリン140−マウス)を意味する。
【0081】
[ケメリン140は、プロテアーゼ阻害剤によって抑制される活性化されたマクロファージに対する抗炎症効果を奏する]
以前の研究において、脱顆粒後に多形核細胞(PMN)によって放出されるセリンプロテアーゼが、プロケメリンのC末端を切断し、その走化性の可能性を解放することが実証された(Wittamer V et al. J Immunol. Jul 1 2005;175(1):487-493)。しかしながら、ケメリンの更なるタンパク質分解プロセシングによって生産されたペプチドの抗炎症効果は、新規且つ発明性がある。
【0082】
マウス腹膜マクロファージ(PMΘ、ここではPMΦとも言及される)を以下の条件で培養した:未処理;LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間;ケメリン(1pM)で1時間の前処理の後、LPS/IFNγで15時間;ロイペプチン(プロテアーゼ阻害剤;15mg/ml)およびケメリン(1pM)で1時間の後、LPS/IFNγで15時間;またはデキサメタゾン(ポジティブコントロール;1μMで1時間の前治療の後、LPS/IFNγで15時間。
【0083】
ケメリン+リポ多糖類/インターフェロン−γ(LPS/IFNγ)で処理したマクロファージ由来の上清についてケモカイン量を分析すると、その結果から、ケメリン処理細胞は、LPS/IFNγ処理サンプルと比較して、TNFα(70%)、IL−12p40(54%)、ランテス(CCL5;40%)、IL−6(42%)およびIL−1β(60%)のレベルが有意に低いことが示された(n=5;p<0.001 図1Aおよび1B)。広域スペクトルのプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)がマクロファージに添加された場合に、いずれの抗炎症効果も予防されることから、この抗炎症効果は、広域スペクトルのプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)により阻害され、このことは、これらの抗炎症ペプチドの生産における付加的なケメリン切断の重要性を示す(図1Aおよび図1F)。
【0084】
抗ケメリン中和抗体を使用すると、ケメリンの抗炎症効果が除去されることから、これらの効果はケメリン特異的であることも実証された(図8B)。
【0085】
図1Aの棒グラフは、Luminexアッセイによって決定されるサイトカインの平均発現±SEMを示す。実験は、それぞれの処理について、三重の測定を行った。異なる群のC57Bl6/Jマウス由来の細胞を使用する3つの独立した実験からの代表的データが示される。LPS/IFNγ処理サンプルに関して、特に規定のない限り、p<0.001 ***; p<0.01 **。デキサはデキサメタゾン(1mM)を意味する。
【0086】
図1Bは、図1Aに関して上記した結果と同様の結果を示しており、0.1pM、0.5pMおよび1.0pMの異なる濃度のケメリンの効果を示すデータを付加している。
【0087】
さらに、図1Cは、ケメリンが、抗炎症サイトカインTGFβ(54%)およびIL−10(89%)のmRNAの発現を誘導したことを示す。
【0088】
ケメリンの効果は、1pMにおいて観察される応答を最大として用量依存的であり(図1Bおよび図1C)、百日咳毒素感受性であり、このことは、Gαiに関連するGPCRの関与を示している(図1D)。
【0089】
さらに、抗炎症効果は、LPS/IFNγ投与の後に4時間、8時間および15時間で観察され、全ての時点でPTXによって抑制された(図1E)。
【0090】
以前の研究によって、脱顆粒後の顆粒細胞によって放出されるセリンプロテアーゼが、プロケメリンのC末端を切断し、その走化性の可能性を解放することが示された(Wittamer, V., et al., (2005), J Immunol 175:487-493)。マウスケメリンが、マウスMФ活性化によって放出される酵素によってタンパク質分解プロセシングを更に受ける可能性を調べた。図1Aに関して上で議論したように、ケメリンとロイペプチン(セリンおよびシステインプロテアーゼ阻害剤)との共投与は、その抗炎症効果を抑制した(図1Aおよび図1F)。この効果は、E−64(システインプロテアーゼ阻害剤)についても実証されたが、酸性プロテアーゼ阻害剤ペプスタチンAおよびセリンプロテアーゼ阻害剤ペファブロックは、MФ活性化のケメリンが介在する抑制に対して何ら効果を発揮しなかった(図1F)。これらのデータは、ケメリンは、システインプロテアーゼに依存する様式で、MФ活性化に阻害作用を及ぼすことを実証する。ケメリン切断に関与する特異的システインプロテアーゼを更に調べるために、カテプシンL阻害剤(Z−FF−FMK)、カテプシンS阻害剤(Z−FL−COCHO)、およびカルパインIおよびII阻害剤、カルペプチンを使用した(図1F)。ケメリンの抗炎症効果は、カルパインおよびカテプシンSに依存するが、カテプシンLに依存しないこともわかった。まとめると、結果は、典型的に活性化されたマウスMФが、カルパインIIおよびカテプシンSに最も関連するようである親分子の特異的システインプロテアーゼ介在切断により、ケメリンをMФ活性化の強力なペプチド阻害剤に変換することができることを初めて実証する。
【0091】
[抗炎症活性を有するC末端ケメリンペプチド]
重要な保存残基の指標としてのEnsemblにおける配列アラインメント機能を使用して、11−20aaの一連のペプチドを設計し、C11m(P144−A154;PHGYFLPGQF A配列番号1)、C13m(P144−S156;PHGYFLPGQFAFS 配列番号3)、C15m(A140−A154;AGEDPHGYFLPGQFA 配列番号4)、C17m(A140−S156;AGEDPHGYFLPGQFAFS 配列番号6)、C19(A138−S156;AQAGEDPHGYFLPGQFAFS 配列番号37)、N19(E23−K41;ELSETQRRSLQVALEEFHK 配列番号44)およびM20(K86−K105;KPECTIKPNGRRRKCLACIK 配列番号45)と名付けた。図2Aは、これらのペプチドの一部の配列アラインメントを示す。ケメリンペプチド(1pM−100nM)は、記述したプロトコールによるマクロファージ活性化アッセイにて特徴づけられた。
【0092】
マウスPMΘを様々な条件下で培養した:未処理、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間;ケメリンペプチド(1pM−100nMの濃度)で1時間前処理、その後LPS/IFNγで15時間。示される濃度は、両アッセイにおけるそれぞれのペプチドについての最適な効果用量を表す。図2Bにおける棒グラフは、ランテスおよびTNFαタンパク質の平均発現±SEMを示す。実験は、それぞれの処理において三重の測定を行った。異なる群のC57Bl6/Jマウスに由来する細胞を使用する5つの独立した実験からの代表的データを示す。LPS/IFNγ処理サンプルについて、p<0.01 **; p<0.001 ***。
【0093】
C末端ペプチドC13m(100pM)、C15m(1pM)およびC17m(1pM)は、LPS/IFNγ誘導性ランテス分泌(C13m−32%;C15m−41%;C17m−49%)およびTNFα発現(C13m−10%;C15m−56%;C17m−66%、図2B)を抑制した。C15mおよびC17mは、同じ濃度で使用した場合に、C140と同程度でマクロファージ活性化を阻害した。
【0094】
同様の結果が表1に示されており、C末端ペプチドC13およびC19は、最適用量100pMで、LPS/IFNγ誘導性ランテスおよびTNFα発現を中程度に抑制する(表1)。しかしながら、ケメリン15(C15)は、ケメリンと同様の効果および力価で(最適用量1pM)、タンパク質分解されたケメリンによって示される抗炎症活性を保持し、サイトカイン発現を抑制した。さらに、C11、N末端ペプチド(N19)、途中のペプチド(M20)およびコントロールペプチド(スクランブルドC15;C15−S、GLFHDQAGPPAGYEF;配列番号39、および、変異体C15;C15M、AGEDPHGYALPGQAA;配列番号40)は、MФ活性化アッセイにおいて、抗炎症活性がなかった。凝析および繊維素溶解のカスケードのプロテアーゼによるプロケメリン切断の際に除去される6aa(RALRTK;配列番号41)および8aa(FSRALRTK;配列番号42)ペプチド(それぞれC6およびC8と名付けられる)が、MФ活性化アッセイにおいて、検出可能な抗炎症活性を有さないこともわかった。
【表1】
【0095】
表1に関して、ケメリン誘導ペプチドの抗炎症活性−マウスPMΦを図1Bに記載されるとおりに培養し、1時間のペプチド(0.1pM−100nM)による前処理を行って/行わずに、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)により15時間負荷した。ペプチドが抗炎症特性を示す場合、LPS/IFNγ誘導性マクロファージ活性化のパーセンテージ阻害は、最適用量で効果を表わす(1pMのケメリンおよびC15または100pMのC13およびC19)。ペプチド配列は次のとおりである:C11(P144−A154;PHGYFLPGQFA)、C13(P144−S156;PHGYFLPGQFAFS)、C15(A140−A154;AGEDPHGYFLPGQFA)、C19(A138−S156;AQAGEDPHGYFLPGQFAFS;配列番号37)、N19(E23−K41;ELSETQRRSLQVALEEFHK;配列番号44)およびM20(K86−K105;KPECTIKPNGRRRKCLACIK;配列番号45)。コントロールペプチド:スクランブルドC15(C15−S;GLFHDQAGPPAGYEF)および変異体C15(C15M;AGEDPHGYALPGQAA;F148A&F153A)。データは、ELISAおよびLuminexアッセイによって決定される、4−8の独立した実験からの、典型的に活性化されたマクロファージによるサイトカイン生産の平均パーセンテージ阻害を示す。
【0096】
[ケメリン140は、強力なマクロファージ化学遊走物質であるが、そのC末端由来抗炎症ペプチドは異なる。]
改変したボイデンチャンバーアッセイを利用して、C140のマクロファージ化学遊走物質特性を実証した。マウスケメリン140は、典型的な正規曲線を示し、10nMにて最適な化学走性を示し、その後低下し、おそらく次に、化学遊走物質勾配の受容体脱感作またはブレークダウンを示した(図3)。図4Aでは、百日咳毒素前処理の効果(PTX:200ng/ml)を示す付加的データも示される。
【0097】
PMΘ(0.5×106)を、改変ボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、化学遊走物質(ケメリン140またはケメリンペプチド)に向けて4時間にわたり移動させた。フィルターを4%ホルマリンで固定し、その後、移動した細胞核をDAPIで染色して視覚化した。無血清培地(SFM)をネガティブコントロールとして使用し、マクロファージ化学遊走物質ランテス(25ng/ml;3nM)をポジティブコントロールとして使用した。グラフは、それぞれの投与群(n=5−6)についての、平均遊走指数(化学遊走物質%しきい値領域/SFM%しきい値領域)±SEMを意味する。SFM処理ウェルについて、p<0.001 ***;p<0.01 **;p<0.05 *。
【0098】
C11m、C13mおよびC15m(1pM−100nM)は、C140(1pM−50nM)またはポジティブコントロール、CCケモカインランテス(25ng/ml;3nM)と比較して、走化活性が少ないことが観察された。最大のマクロファージ遊走は、100pMのC15mおよび10nMのC13mおよびC11mで観察された。しかしながら、C17mは、試験した全濃度において、走化活性を示さなかった(0.1pM−500nM;n=5回の独立した実験)(図3)。この結果は、図4B−Dにおいても見られ、付加的に百日咳毒素前処理(PTX:200ng/ml)の効果のデータが示される。図4Eに関して、C19は、さらに、試験した全濃度で走化活性を示さなかった(0.1pM−500nM;図4E)。したがって、ケメリン誘導ペプチドは、抗炎症活性を保持するが、MФにとって走化活性を示さないと同定され、このことは、治療学的に開発可能な、ケメリンの明確な機能特異的成分の存在を示す。MФ抗炎症活性を欠くことがわかっているプロケメリン由来ペプチドC6およびC8は、さらに、試験した全ての濃度でMФ遊走を誘導することができなかった(0.1pM−500nM;図4F−G)。それ故、データから、主要な走化性種は、切断されたケメリン分子自体またはまだ未確認のペプチドのいずれかであるようである。
【0099】
[ケメリンおよびケメリン15が、マクロファージによる化学遊走物質生産の全般的な抑制を誘導することを示す付加的例]
炎症の際の免疫細胞のリクルートメントにおけるMФ由来の化学遊走物質の十分確立された役割に基づいて(Glabinski, A.R., et al., (1998).Neuroimmunomodulation 5:166-171; Huang, D. J. et al., (2001). J. Exp. Med. 193:713-726)、未処理のMФ、および、化学走性アッセイにおいてケメリン+LPS/IFNγ、C15+LPS/IFNγ、およびLPS/IFNγ単独で処理したMФからの条件培地を使用して、ケメリンおよび合成C末端ペプチド、C15によるMФ活性化の抑制が、更なるMФリクルートメントにどのように影響するかを調べた(図4Hを参照)。未処理MФ条件培地自体は、MФの走化活性を示さなかった(遊走指数1.0±0.15);しかしながら、LPS/IFNγ処理マクロファージ培地は、MФ化学走性にて著しい増加を誘導した(遊走指数9.3±0.4; 図4H)。更に、MФは、ケメリン+LPS/IFNγおよびC15+LPS/IFNγ処理マクロファージからの条件培地に向かう化学走性において、それぞれ49%および55%の減少を示した(図4H)。このことは、条件培地の走化活性が影響を受ける程度まで、ケメリンおよびC15が、広範囲のMФ由来MФ化学遊走物質の一般的な抑制を誘導することを意味する。
【0100】
さらに二次的な化学走性アッセイは、ケメリン140−マウス、ケメリン15−マウスおよびケメリン17−マウスで処理したマクロファージからの上清へ向かうマクロファージ化学走性を抑制することを明らかにした。これらの結果は、C15mおよびC17mによる活性化マクロファージの前処理は、マクロファージによって放出される化学遊走物質の量および/または生物活性を減少させ、それゆえ、これらのペプチドが、炎症部位への単球/マクロファージの継続するリクルートメントを著しく低減できることを示す。
【0101】
C140+LPS/IFNγ、C15m+LPS/IFNγ、C17m+LPS/IFNγおよびLPS/IFNγ単独で処理したマクロファージ条件培地を第二の化学走性アッセイに使用し、C140およびそのC末端ペプチドによるマクロファージ活性化の抑制に関する潜在的な病態生理学の影響を評価した。
【0102】
細胞(0.5×106)を、4時間にわたり、改変ボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、化学遊走物質(ケメリンペプチド)または条件培地に移動させた。無血清培地(SFM)はネガティブコントロールとして使用した。フィルターを4%のホルマリンにおいて固定し、その後、核をDAPIで染色して視覚化した。棒グラフは、それぞれ投与群について、平均遊走指数(化学遊走物質%しきい値領域/SFM%しきい値領域)±SEMを示す。それぞれのバーは少なくとも三重のウェルを示し、一処理あたり6枚の画像がとられた。特記されない限り、p<0.001 ***; p<0.01 ** 有意性は、LPS/IFNγ条件培地に関する。ABは抗マウスケメリン抗体を指す。
【0103】
図5に示された結果から見ることができるように、マクロファージ条件培地自体は、マクロファージに対して走化活性を示さないが、しかしながら、LPS/IFNγ処理マクロファージ培地は、マクロファージ化学走性における劇的な増加を誘導した。さらに、マクロファージは、C140+LPS/IFNγ、C15m+LPS/IFNγおよびC17m+LPS/IFNγ処理マクロファージからの条件培地に対する化学走性を減少させ、このことは、C140、C15mおよびC17mの広範囲のマクロファージ化学遊走物質の一般的な抑制を誘導する能力を示す。
【0104】
ケメリン処理上清が、ケメリン誘導型走化性タンパク質/ペプチドを保護する可能性を排除するために、上清を、マクロファージ遊走の評価に先立って中和ケメリン抗体とともにインキュベートした。ケメリンは、ケメリン処理上清において、遊走に寄与しないようであった。
【0105】
[ケメリン15−マウスはザイモサン誘導性腹膜炎を抑制する]
腹膜炎症は、急性炎症反応を誘発するザイモサン粒子(酵母菌壁成分)の腹腔内注入によって誘導することができる。ザイモサン誘導性腹膜炎は、マウス腹腔における好中球その後の単球の十分記述された時間依存的蓄積に続く(Lawrence T et al. Nat Rev Immunol. Oct 2002;2(10):787-795参照)。このモデルを、組織の構造および機能の初期の回復並びに好中球および単球の血管外遊走の抑制を伴う炎症の時間的経過を典型的に短くする確立されたメディエーター、リポキシンA4およびアネキシン−1のプロ分解(pro−resolving)特性を実証するために使用した。文献中で報告された前の実験では、一連の用量のザイモサンA粒子(10μg−1mg)が使用された (Taylor PR et al. Eur J Immunol. Jul 2005;35(7):2163-2174; Arita M et al. J. Biol. Chem. August 11, 2006 2006;281(32):22847-22854)。
【0106】
ケメリンの高い走化性の可能性およびタンパク質分解の本来の要求に基づいて、C末端合成ペプチドケメリン15を、無菌腹膜炎モデルにおける抗炎症効果のインビボの特徴づけに使用した。これは、C15が、走化活性をほとんど欠くものの(図3および図4B)、タンパク質分解されたケメリンに匹敵する抗炎症効果を発揮するためである(表1)。
【0107】
図6に示される結果に関連して、この研究は10μg/マウス(1−2粒子/常在性マクロファージ)を使用した。これは、これがより緊密に病態生理学の用量を表わすと予想されるためである。
【0108】
より具体的には、オスC57Bl6/Jマウス(8−12週)に対し、0.5mlのPBSまたは0.5mlのケメリン15−マウス(0.32ng/kg)を腹膜内に注射し、1時間後、0.5mlのPBSまたはザイモサン(2x106粒子/空隙)を注射した。4時間後、動物を殺処分し、腹腔を5mlのPBS−3mM EDTAで洗浄した。トリパンブルー排除試験を使用して、前細胞数を得た。細胞内組成(好中球対単核食細胞)の決定のために、細胞を、2.4G2抗FcgRII/IIImABで5分間ブロックし、PE複合抗マウスLy−6GおよびFITC複合抗マウス7/4mABで10分間染色した。CellQuestソフトウェアによるFACS分析の前に、1%ホルムアルデヒドで細胞を固定した。ゲートを2つの集団のまわりで構築した:好中球(N; 7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high)。C15はケメリン15−マウスを指す。Zはザイモサンを指す。ザイモサン処理に関して、p<0.01 ** ; p<0.05 *。
【0109】
好中球(7/4high、Ly−6Ghigh)、単球(7/4high、Ly−6Glow)および常在性マクロファージ集団(7/4low、Ly−6Glow)を、文献の記載に基づいて決定した(Gordon S and Taylor PR Nat Rev Immunol. 2005;5(12):953; Taylor PR et al. Eur J Immunol. Aug 2003;33(8):2090-2097; and Taylor PR et al. Eur J Immunol. Jul 2005;35(7):2163-2174)。
【0110】
この研究の結果は、0.32ng/kg(8pg/マウス)の用量でC15mで処理したマウスが、ザイモサンに誘発される単球および好中球リクルートメントを、それぞれ42%および52%減少したことを示す(図6)。TNFαのレベルも、C15mで処理したマウスにおいて減少した。
【0111】
上記の結果をさらに調査した。インビボのC15ペプチドの抗炎症特性を決定するために、48時間にわたって時間的経過実験を行った。腹膜洗浄液中の好中球(7/4high、Ly−6Ghigh)および単球(7/4high、Ly−6Glow)集団を、公表されたプロトコールによるFACS分析によって決定した(Taylor, P.R. et al., (2005). Eur J Immunol 35:2163-2174; Taylor, P.R., (2003). Eur J Immunol 33:2090-2097)。マウス腹腔へのザイモサンの投与は、腹腔への炎症細胞の時間依存的血管外遊走をもたらし、その後、急性炎症反応の典型的なプロファイルを示した(図7A−B、実線)。好中球は、空隙を浸透する最初の白血球であり、ザイモサン後2時間で検出可能となり、4時間後に好中球増加がピークとなった(1.95×106細胞)。炎症を起こした腹腔への単球流入は、最初に4時間後に検出され(0.69×106細胞)、ザイモサン注入後24時間でピークに達し(1.25×106細胞)、その後減少した。ザイモサン負荷の1時間前における、8pg/マウスの用量(ほぼ0.32ng/kg)によるC15の前処理は、ザイモサン負荷マウスの約50%の大きさで、2時間早く好中球増加のピークに達した(1.25x106から0.62×106細胞への減少;図7A、点線)。C15による好中球浸潤の顕著な抑制が2時間(50%)、4時間(66%)および24時間(50%)にてみられた。1回量8pgのC15ペプチドもまた、全時点において、炎症を起こした空隙における腹膜単球の数の減少に有効であった(60%を超える抑制が見られた、4時間(63%)、8時間(61%)および48時間(64%)、図7B、点線)。単球浸潤の速度は、ザイモサン注入後2−4時間において最も高く(0.51x106/h)、C15の投与は、炎症を起こした空隙への流入速度を減少した(0.18x106/h)。ザイモサン負荷に先立つ単一量のC15ペプチドは、それゆえ、実験の48時間にわたり、ザイモサン誘導性腹膜炎症に対する顕著な保護を提供した。
【0112】
時間的経過実験は、C15の抗炎症活性の確認のための適切なポイントとして、ザイモサン後4時間の時点を同定した。この研究では、単一用量のC15は、ザイモサン誘発好中球および単球リクルートメントにおける用量依存的な減少をもたらしたものの(最大8pg/マウスC15(ほぼ0.32ng/kg;図7C−Eおよび16A−B))、、顕著な抗炎症効果は、4pg/マウスと同程度に低い用量が見られた(ほぼ0.16ng/kg; 図14B)。ザイモサン負荷の1時間前にC15を投与する場合、好中球数は、1.9x106から0.78×106まで減少し(63%の減少;図7C)、単球レベルは、0.69×106から0.30×106に減少した(62%の減少;図7D、4時間の時点の代表的なFACSプロットが、図7Eに示される)。C15投与は、4時間で、腹膜洗浄液におけるプロ炎症性サイトカインの発現をさらに著しく減少させた:TNFα(51%)、IL−1β(67%)、IL−6(67%)、MCP−1(59%)およびKC(38%)(図7F)。インビトロ抗炎症活性を欠くコントロールペプチドC15−SおよびC15−Mもまた(表1)、インビボでC15と同じ用量および時間で投与された場合、単球および好中球レベルで判断して保護性でないことがわかった(図7C−D)。同じ用量のC15がザイモサン注入後2時間で与えられた場合、単球(0.69×106から0.42×106細胞;42%の減少)および好中球リクルートメント(1.9×106から0.83×106細胞;60%の減少)の顕著な抑制がザイモサン後4時間においてもみられた(図7G)。このことは、C15は、既に確立している炎症性状態において、好中球および単球リクルートメントを減少できることを実証し、C15/C15−誘導体が、炎症性病理をターゲットとする魅力的なファルマコフォアを表わす可能性があることも示唆する。
【0113】
[内因性ケメリン種の遮断は腹膜の炎症を悪化させる]
4時間または24時間のザイモサン負荷の1時間前に、中和ポリクローナル抗rmケメリン抗体(ChAb)またはコントロールIgGをi.pでマウスに注入することで、ケメリンおよびケメリン由来ペプチドの潜在的な内因性の役割を調べた。コントロールIgGではなくChAbが、インビトロで、C15およびケメリンに誘導されるMФ化学走性および抗炎症効果を阻害することができることが以前にわかっている(図8A−B)。インビボでは、内因性のケメリン種の中和によって、腹膜の好中球数の63%の上昇および4時間の時点でコントロールIgG処理マウスと比較して単球レベルの45%の増加およびザイモサン注入の24時間後において腹膜の好中球および単球レベルの170%および86%の増加がもたらされることがわかった(図8C−D)。24時間にわたる腹膜の炎症のこのような悪化は、インビボにおけるケメリン種の重要な内因性の抗炎症性の役割を示唆する。
【0114】
[ケメリン15−マウス単独は、好中球またはマクロファージのリクルートメントを誘導しないが、TNFαレベルを低下させる]
オスC57Bl6/Jマウス(8−12週)の腹膜内に、0.5mlのPBSまたは0.5mlのケメリン15−マウス(0.32ng/kg)を注入した。4時間後、投与群当たり3匹の動物を犠牲にし、腹腔を5mlのPBS−3mM EDTAで洗浄した。トリパンブルー排除試験を使用して、全細胞数を得た。細胞内組成(好中球対単核食細胞)の決定のために、細胞を、2.4G2抗FcgRII/IIImABで5分間ブロックし、PE複合抗マウスLy−6GおよびFITC複合抗マウス7/4mABで10分間染色した。CellQuestソフトウェアによるFACS分析の前に、1%ホルムアルデヒドで細胞を固定した。ゲートを2つの集団のまわりで構築した;好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)。C15は、ケメリン15−マウスを意味する。PBS処理について、p<0.01 **。Nsは統計的有意差p>0.05がないことを意味する。
【0115】
図9の結果からわかるように、0.32ng/kgのC15mは、単球または好中球の遊走を引き起こさない。しかしながら、TNFαの顕著な減少が観察される。
【0116】
マウスにおける無菌の腹膜炎を研究するこのモデルは、実験医学および薬理学で広く使用されており、中程度の組織外傷または感染症により引き起こされる軽度の炎症を表す。結果は、C15mが治療的抗炎症効果を達成できることを示す。
【0117】
[改変ケメリン13−ヒトは、マウスマクロファージにおけるランテスおよびTNFαの転写発現を抑制する]
マウス腹膜マクロファージ(PMΘ)を、様々な条件下で培養した:未処理、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間、改変ケメリン13−ヒト(1nM)で1時間の前処理、その後LPS/IFNγで15時間。棒グラフは、qRT−PCRによって決定し、ハウスキーパー、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、HPRTに対して標準化した、サイトカイン転写の平均発現を示す。実験は、それぞれの処理について三重の測定を行った(n=1つの独立した実験)。特記しないかぎり、LPS/IFNγ処理サンプルについてp<0.01 **; p<0.05 *。改変C13hペプチドの配列は、NH2−FHSFYFPGQFAFS−COOH(配列番号43)であり、この配列において、C13hにおけるN末端Pはアミノ酸Fと置換され、それ故、ペプチドは、改変C13hと言及される。
【0118】
図10の結果から見ることができるように、改変C13hは、TNFαおよびランテスの発現を著しく減少した。
【0119】
[ケメリン17−マウスはC140に誘導されるマクロファージ化学走性に影響しない]
BioGELビーズによる4日の腹膜刺激後に、PMΘをリクルートした。オスC57Bl6/Jマウスの腹腔を5mlのPBS−2mlのEDTAで洗浄した。細胞を遠心分離し、0.5%のBSAおよび25mMのHepesを添加したRPMIに再懸濁した。細胞(0.5×106)を、4時間にわたり、ボトムウェルにおいて、化学遊走物質(C140、C17mまたはC17m+C140)に向けて移動させた。フィルターを4%のホルマリンで固定し、その後、核をDAPIで染色して視覚化した。無血清培地はネガティブコントロール(−/−)として使用した。細胞は、化学走性アッセイの30分前に百日咳毒素(PTX)で前培養した。図11における棒グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEMを示す。棒はそれぞれ、少なくとも三重のウェルを表わし、1つの処理当たり少なくとも3つの写真を撮影した。特記しないかぎり、SFM処理ウェルについて、p<0.001 ***; p<0.01 ** ; p<0.05 *。
【0120】
図11の結果は、C17mとC140の共投与は、C140へのマクロファージ遊走に影響しないようであることを示す。
【0121】
[ケメリン15−マウスおよびケメリン17−マウスは、ザイモサンで刺激されたマウスマクロファージによるTNFα分泌を抑制する]
PMΘを様々な条件の下で培養した:未処理;ザイモサンで15時間;ケメリン(1pM)1時間の前処理+ザイモサンで15時間。棒グラフは、ELISA±SEMによって決定されるTNFαの平均発現を示す。実験は、それぞれの処理について三重の測定を行った。異なるドナーからの細胞を使用する3つの独立した実験からの代表的データを図12に示す。ザイモサン処理サンプルについて、p<0.001 ***; p<0.01 **。デキサはデキサメタゾン(1mM)を指し、ndは、検出下限値(0.25ng/ml)より下であることを指す。
【0122】
示されるように、C15m(1pM)およびC17m(1pM)の処理は、ザイモサン誘導性TNF発現を抑制した(C15m;21%、C17m;30%)。それ故、C15mおよびC17mは、細菌(LPS)および酵母(ザイモサンA)の両方によって誘導されるマクロファージ活性化を抑える。
【0123】
[チェッカーボード分析は、ケメリン140およびケメリン15−マウスはマクロファージ化学走性を誘導し、ケモキネシスを誘導しないことを実証する]
チェッカーボード分析は、化学走性とケモキネシスとの間の区別を可能にする。化学走性は、下部ウェルにおけるより高い濃度の化学遊走物質に向かう遊走によって示される。ケモキネシスは、非方向性の細胞運動の増大に関与し、濃度勾配の存在にかかわらず生じる。チェッカーボード分析は、C140(10−500pM)またはC15m(10−1000pM)で細胞をプレインキュベートし、それぞれ下部ウェルにおいて、それらをC140(10−1000pM)またはC15m(10−1000pM)の方へ移動させて濃度のチェッカーボードを形成することで行った。
【0124】
より具体的には、BioGELビーズによる4日の腹膜刺激後に、PMΘをリクルートした。オスC57Bl6/Jマウスの腹腔を5mlのPBS−2mlのEDTAで洗浄した。細胞を遠心分離し、0.5%のBSAおよび25mMのHepesを添加したRPMIに再懸濁した。細胞(0.5×106)を、化学走性アッセイの30分前にC140またはC15mでインキュベートし、その後、4時間にわたり、ボトムウェルで化学遊走物質に向けて移動させた。フィルターを4%のホルマリンで固定し、その後、核をDAPIで染色して視覚化した。無血清培地(SFM)をネガティブコントロール(−/−)として使用し、CCケモカインランテスを、ポジティブコントロール(25ng/ml)として使用した。図13における棒グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEMを示す。棒はそれぞれに少なくとも三重のウェルを表わし、1つの処理当たり少なくとも3つの写真を撮影した。SFM処理ウェルについて、p<0.001 ***。
【0125】
ボイデンチャンバーの下部ウェルへの遊走は、より高い濃度の化学遊走物質がそこに置かれた場合にのみ生じ、フィルターの上部の側に置かれた場合に生じないため、C140およびC15mは、ケモキネシスではなく真の化学走性を誘発することがわかった。
【0126】
C15mは、マクロファージ化学走性C140のはるかに弱い誘導物であることが示される。
【0127】
[C15はザイモサンのマクロファージ食作用を誘導する]
マクロファージによるザイモサンのインビトロの認識のために、腹膜滲出細胞は、4日前にBiogelビーズ(2%w/v)で腹膜内を処理したマウスから、氷冷した2mM EDTAを含むPBSによる洗浄液によって単離した。マクロファージを、24ウェルプレートに、Optimem培地で1ウェル当たり2.5x105細胞の密度でプレーティングした。細胞を培地で3回洗浄したあと、認識アッセイにおいて、0.1pM、1pM、10pM、100pMまたは1nMのいずれかのケメリン15の存在下、10:1のマクロファージ/粒子比で、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ザイモサン(Invitrogen)を添加した。ベヒクル=ケメリン15を含まないコントロールサンプル。FITC−ザイモサン取り込みを、FACS分析の後に行い、相対的認識指標、すなわち、ザイモサンを取り込む%細胞の比x幾何平均C15処理マクロファージ/ベヒクルで処理したマクロファージの幾何平均の比として表現する。
【0128】
図15の結果は、ケメリン15が、ザイモサンのマクロファージ食作用を誘導することを示す。マクロファージ食作用の誘導は、ケメリン15が10pMの濃度のときにもっとも大きい。これらの結果は、ケメリンペプチドが、アポトーシス性細胞、細胞残屑、病原体および病原体生成物のマクロファージ食作用を増加させることにより、創傷修復を促進する可能性があることを実証する。
【0129】
[考察]
複数のメディエータが、急性炎症の初期の事象を調整することが知られている。例えば、脂質由来エイコサノイド、サイトカインおよびケモカインは、血管変化および炎症細胞リクルートメントを調節する。TNFαおよびIL−1γを含むプロ炎症性サイトカインは、内皮細胞におけるシグナル経路を活性化し、接着分子発現のアップレギュレーションをもたらし、循環する白血球の捕獲を促進する。上に示された結果は、ケメリン140に由来するC末端ペプチドが、炎症反応のすべての成分を抑制できることを示す。結果は、さらに、ケメリン140に由来するC末端ペプチドが、ケモカインレベルを低下させ、内毒素ショックのための療法として使用できたことを示す。
【0130】
この研究の中で使用したペプチドは、すべてケメリン由来であり、非常に高い力価(10−12M)を示し、このことは、これらのメディエータが、補体由来ケモタキシン、C5a des−arg(10−12M)、ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP;10−11M)、ロイコトリエンB4(LTB4;10−11M)、TNFα(10−11M)、LPS(10−15M)およびIL−1(10−14M)のランクに加わることを確かなものとする。出願人は、10−11M−10−15Mで生理的な効果を示すことが実証された医薬を知らない。確かに、デキサメタゾンは、インビトロでミクロモルの範囲の濃度で一般に投与され、ザイモサン誘導性腹膜炎モデルにおいて、30μg/マウス(1.2mg/kg)で、単球および好中球流入の50%のダウンレギュレーションを達成する。ケメリン15−マウスは、単球および好中球リクルートメントを、30gのデキサメタゾンと同様の程度にダウンレギュレートした。ケメリン15−マウスは、8pg/マウスの用量(0.32ng/kg)で、この炎症のマウスモデルにおいて等価な抗炎症効果をもたらす。
【0131】
第2の化学走性アッセイは、マクロファージ活性化アッセイからの上清の走化性の可能性の定量を可能とし、培地の走化性の特性に対するケメリン介在ケモカイン抑制の効果の決定を可能にする。これらの結果の分析から、LPS/IFNγ単独と比較して、ケメリン+LPS/IFNγ処理マクロファージからの上清へのマクロファージ遊走の減少が明らかとなり、広範囲のマクロファージ化学遊走物質の一般的な抑制が示唆される。示された例は、C140と比較した、ケメリン由来抗炎症ペプチドの限られた現存しない化学遊走物質の特性を実証する。
【0132】
結論として、結果から、ケメリンのC末端ペプチドは、インビトロおよびインビボで、非常に強力な抗炎症特性を発揮することが示される。
【0133】
[材料および方法]
[動物]
全ての動物実験は、局所的な倫理承認および英国内務省規則に基づいて行った(Guidance on the Operation of Animals, Scientific Procedures Act, 1986)。
【0134】
[抗体および試薬]
抗ヒトケメリン、抗マウスケメリンAB、hケメリン137(配列番号31、組み換えGlu21−Ser157としてRandDから入手可能)、mケメリン140(配列番号34)、抗mランテス捕獲AB、抗mランテス検出AB、mランテス、mTNFα、抗mTNFα捕獲AB、抗mTNFα検出ABは、R&D Systemsから購入した。ケメリンペプチド(C11m、C13m、C13h、C15m、C17m)は、生合成によって合成した(www.biosyn.com)。デキサメタゾン、リポ多糖類(E.coli)、ロイペプチンはSigma Aldrichから入手した。インターフェロンガンマ(IFNγ)はPeprotechから購入した。OPD錠剤はDakocytomataから入手し、ストレプトアビジン−HRPおよびStrepAv−HRP希釈緩衝液はEndogenから購入した。Luminex6−plexキット(IL−12 p40、IL−1β、IL−6、MCP−1、TNFα、IL−10)はBio−radから提供され、Bio−radバイオアナライザーおよびXソフトウェアを使用して分析した。
【0135】
[マクロファージ活性化の阻害−マクロファージ活性化アッセイ]
無菌のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1mlの2%のBioGELポリアクリルアミドビーズを、C57Bl/6Jマウスの腹膜内に(ip)注入した。BioGELのip投与の4日後、マウスを、内務省ガイドラインに従うCO2方法によって犠牲にした。腹腔を10mlの無菌のPBS−2mM EDTAで洗浄し、BioGELに誘起/誘発された細胞浸潤物を採取した。収集した細胞の懸濁液を、4℃、1000xgで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、2mMグルタミン、50ユニット/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンを添加した6mlのOptiMEM培地に懸濁した。マクロファージは、チュルク液による5−10分間の氷上でのインキュベートの後、血球計算器を使用して定量した。細胞懸濁液(2ml;1.5x106/ウェル)を、6ウェル組織培養プレート(直径35mm:Costar,UK)にプレーティングし、37℃で2時間、5%のCO2を含む加湿した大気中で接着させ、接着によりマクロファージ集団を単離した。これは、サイトスピン、メチレンブルーおよびエオシンによる細胞の染色および細胞形態学に基づく計測によって評価すると、95%を超える純度を与えた。非付着細胞(主として顆粒細胞)を破棄し、ウェルを無菌PBSで3回洗浄して、弱く付着している細胞または死細胞を除去した。マクロファージ活性化の潜在的な抑制を評価し、それによって、プロ炎症性メディエータの発現の減少を評価するために、マクロファージ(1.5x106細胞/ウェル)を、ケメリンペプチド(C11m、C13m、C15m、C17m;10−12−10−8M)またはポジティブコントロール(デキサメタゾン;1μM)と共に1時間プレインキュベートし、その後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)を15時間負荷した。タンパク質分解におけるPTX感受性および依存性を決定するために、細胞を、PTX(200ng/ml)またはロイペプチン(15μg/ml)と共にプレインキュベートした。付加的な細胞をペプチド単独で処理した。上清を採集し、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびLuminexアッセイで使用するまで−20℃で保存した。細胞を溶解し、TRIZOL法により全RNAの抽出を行った。ライセートを、説明書に従うRNA抽出(Qiagen、RNeasyミニプレップキット)まで−80℃で保存した。
【0136】
[ELISAおよびLuminexによる、分泌されたタンパク質の検出]
ランテス、腫瘍壊死因子(TNFα)およびCCL9の細胞上清中の濃度をELISAで評価した。IL−12 p40、IL−10、IL−1β、TNFα、MCP−1(単球化学遊走物質タンパク質−1)およびIL−6レベルを、Luminexマルチプレックスビーズアッセイ(Bio−rad6プレックスアッセイ)で決定した。ELISAの検出下限値は、0.1−0.5ng/mlであり、Luminexアッセイでは、10−50pg/mlであった。
【0137】
[RNA作製およびRT−PCR]
Qiagen RNeasyキットを使用して全RNAを抽出し、逆転写し、Sybr−Green法を用いてqRT−PCRに供した。データは2−ΔΔCT法を使用して分析した(Livak, K.J. & Schmittgen T.D. (2001), Methods 25:402-408)。
【0138】
[化学走性アッセイ]
細胞遊走はトランスウェル膜(ChemoTX、直径6mm、孔径8μm)を使用して評価した。簡潔には、BioGELに誘発された細胞を採取し、25mMのHepesおよび0.1%のウシ血清アルブミンを添加したRPMIを用いて、トランスウェル膜にプレーティングした(250,000細胞/膜)。細胞を、ケメリンペプチド(1pM−100nM)に向けて4時間移動させた。細胞をトランスウェル膜に置く前に、百日咳毒素(PTX、200ng/ml、Sigma−Aldrich)で30分間細胞をプレインキュベートすることで、Gタンパク質共役受容体を介した信号伝達を遮断した。膜の下側に移動した細胞を固定し(3%ホルムアルデヒド)、DAPIで染色した。共焦点顕微鏡下、遊走を、DAPI染色した核のピクセル数の合計として定量した(1つの処理当たり、2つの写真/膜および最小で3つの複製ウェル)。画像はMetamorphオフラインソフトウェアを使用して分析し、移動した細胞によって占領されたパーセンテージしきい領域(TA)を決定した。遊走の指標を、無血清培地TAで処理TAを割ることにより得た。第二の化学走性アッセイのために、ChemoTx(3mmの直径、8μm孔)の膜を、50,000細胞/膜で使用した。
【0139】
[マウス腹膜炎]
C57BL6/Jマウスに、500μのケメリン15−マウス(0.32ng/kg)またはベヒクル単独(無菌PBS)をi.p.で投与し、その1時間後、10μgザイモサンAを500μlでi.p.投与した。4時間後、人道的に犠牲にした後に、5mlの無菌PBS−3mM EDTAを用いて腹膜洗浄することで、腹膜滲出を採集した。無細胞洗浄液をELISAでの使用のために取得し、滲出細胞を、後述する分析のために準備した。
【0140】
[鑑別血球計算およびFACS分析]
C57BL6/Jマウスに、500μlのケメリン15(0.32ng/kg)またはベヒクル(PBS)をi.p.投与し、その1時間後、10μgザイモサンAを500μlでi.p.投与した。2時間、4時間、8時間、16時間、24時間および48時間後、人道的に犠牲にした。洗浄細胞の一部を、全数および鑑別血球計算の測定のために準備した。細胞内組成(PMN対単核細胞)の決定のために、細胞を抗マウス2.42G FcμII/III(0.5μg/0.1x106細胞)で10分間ブロックし、FITC複合抗マウス7/4およびPE複合抗マウスLy−6G(0.5μg/0.5x106細胞;クローンrmC5−3およびRB6−8C5、それぞれBD Pharmingenから入手)で染色した(10分)。細胞を、CellQuestソフトウェアを使用して、FACSCaliburフロー血球計上で分析した。それぞれのサンプルのために、最低10,000の事象を得た。ゲートを3つの集団のまわりで構築した:好中球(7/4high、Ly−6Ghigh)、単球(7/4high、Ly−6Glow)および常在性マクロファージ(7/4low、Ly−6Glow)。それぞれの集団における事象の合計のパーセンテージを測定した。さらに、ELISAおよびLuminexアッセイで使用するために、無細胞洗浄液を回収した。
【0141】
[統計]
スチューデントのt−検定および一元配置ANOVAを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して行った。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、炎症および/または内毒素ショックの治療および/または炎症性ケモカインのレベルの減少に関し、ならびに、炎症および/または内毒素ショックの治療における使用のためのまたは炎症性メディエータのレベルの減少のための組成物に関する。
【0002】
炎症は、多くのヒトおよび動物の疾病の病因を構成し、結果として、ヒトまたは動物の体における組織に対して身体的、化学的または外傷性の損傷を生じさせる。一般に、免疫応答は、血管拡張、好中球の遊走、化学走性および血管透過性の増大をもたらす、内因性の化学的メディエータの全身的放出に帰着する。免疫応答は、どこで生じようとも、何が原因であろうとも、本質的に同じである。応答は急性でありえ(短く存続)、または、慢性であり得る(長く続く)。
【0003】
しばしば敗血症性ショックとも言及される内毒素ショックは、炎症様応答をもたらす大量の内毒素に対して、血管内がさらされることを原因として生じると考えられる。内毒素への暴露は、TNFαおよびIL−1を含む多数サイトカインの生産をもたらす。第VII因子を含む補体系および凝集カスケードも刺激される。この反応の結果は、組織損傷、熱、血管拡張、頻脈および血管内凝集でありえる。
【0004】
炎症部位において、栄養素、酸素、抗体および治療剤への接触を増大させ、ならびに繊維素形成および毒素の希釈化を増大させるため、炎症反応は典型的に有益である。しかしながら、炎症が望ましくない場合または長引く場合、組織にダメージを与え得る。そのような状況において、抗炎症剤がしばしば使用される。2つの主要な種類の抗炎症剤、副腎皮質ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が存在する。これらの薬剤のほとんどは、望ましくない副作用を有する。副腎皮質ステロイドの長引く投与は、しばしば、クッシング症候群(コルチゾールの生産過剰をもたらす副腎の不調)に似た重大な副作用に関与する。その他の潜在的な副作用は、体重増加、胸、顔、首および背中上部における脂肪蓄積、浮腫、高血圧症、糖尿病、乏しい創傷治癒、感染症に対する感受性の増大、皮膚の薄層化、情緒不安定およびうつ病を含む。NSAIDSの最も重大な副作用は、損傷または外科手術の後における腎不全、肝不全、潰瘍および長引く出血である。一部の人はNSAIDに対してアレルギーを有し、喘息の人は、アスピリンへの重大なアレルギー反応を経験するリスクがより高い。それ故、抗炎症効果を有する代替となる薬剤を同定する必要がある。
【0005】
ケメリン(Chemerin)は、腹水液および関節液を含む一連のヒト炎症性滲出液中に豊富に存在するタンパク質である(Wittamer V et al. J Exp Med. Oct 6 2003;198(7):977-985; Meder Wet et al. FEBS Lett. Dec 18 2003;555(3):495-499)。ヒトケメリンは、プロケメリンと言及される163のアミノ酸(aa)前駆体(ハツカネズミおよびマウスの等価物は162aaである)として分泌され、NおよびC端末の切断を受けて、137aaの走化性のあるタンパク質となる(ハツカネズミでは140aa)(Wittamer V et al. J Exp Med. Oct 6 2003;198(7):977-985; Zabel BA et al. J Biol Chem. Oct 14 2005;280(41):34661-34666; Wittamer V et al. J Immunol. Jul 1 2005;175(1):487-493; Samson M et al. Eur J Immunol. May 1998;28(5):1689-1700)。ケメリンの予測される構造は、ケモカインと構造的な類似性を示し、異常のあるカルボキシル末端、αプリーツシートおよびβヘリカルアミノ末端ドメインを潜在的に有する「リバース」ケモカインとして記述されている(Zabel BA et al. Exp Hematol. Aug 2006;34(8):1021-1032)。構造は、活性化の達成するためにタンパク質分解プロセスを受けるカテリシジンおよびキニノーゲンに存在するシスタチンフォールドを暗示させる(Zabel BA et al. Exp Hematol. Aug 2006;34(8):1106-1114; Colman RW, Biol Chem. Jan 2001;382(1):65-70; Yamasaki K et al. FASEB J. October 1, 2006 2006;20(12):2068-2080)。
【0006】
第1の側面によると、本発明は、炎症の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0007】
別の側面によると、本発明は、内毒素ショックの治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0008】
更なる側面によると、本発明は、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少させるための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0009】
更に別の側面によると、本発明は、炎症の治療および/または内毒素ショックの治療における使用のための、および/または、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少するための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0010】
1以上の炎症性メディエータは、サイトカイン、ケモカインおよび炎症を仲介する脂質を含んでよい。炎症性メディエータは、TNFα、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−12、G−CSF、MCP−2(CCL8)、GROα(CXCL1)、GROβ(CXCL2)、IL−8(CXCL8)、TECK(CCL25)、MCP−1(CCL2)、インターフェロンγおよびランテス(CCL5)を含む群から選択される1以上のケモカインを含んでよい。好ましくは、医薬は、TNFαのレベルを減少することができる。
【0011】
驚くべきことに、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドは抗炎症特性を有し、炎症および/または内毒素ショックを治療、予防または回復するために使用してもよい。
【0012】
医薬は、治療的および/または予防的用途を有してよい。
【0013】
好ましくは、ペプチドは、約5から約30の間のアミノ酸である。より好ましくは、ペプチドは、約5から約25の間のアミノ酸であり、好ましくは、ペプチドは、約5から約20の間のアミノ酸である。
【0014】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端またはそのアナログもしくは誘導体に由来する約5から約30の間のアミノ酸を含む。より好ましくは、ペプチドは、約5から約25の間のアミノ酸であり、好ましくは、ペプチドは、約5から約20の間のアミノ酸である。
【0015】
ケメリンタンパク質という言及は、ケメリンのプロセスされた形態を意味し、このプロセスにおいて、プレプロケメリンに見つかるN末端アミノ酸がタンパク質分解的に除去され、プロケメリン前駆体に見つかるC末端アミノ酸がタンパク質分解的に除去され、ケメリンと称される活性を有した切断型のタンパク質が生じる。
【0016】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンのヒトまたは非ヒトの形態に由来する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンのヒトまたは哺乳類の形態に由来する。哺乳類非ヒトケメリンは、ラットまたはマウスのようなげっ歯動物、馬、犬、猫、雌牛、羊またはブタに由来してよい。
【0017】
好ましくは、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドは、天然のケメリンタンパク質のC末端と、少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端における天然のペプチド配列と、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0018】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じるアミノ酸の最後の約5から約30の間、好ましくは最後の約10から約25の間と、少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じるアミノ酸の最後の約5から約30の間、好ましくは最後の約10から約25の間と、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0019】
好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じる最後の30アミノ酸の5から25の間と、少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する。好ましくは、ペプチドは、ケメリンタンパク質のC末端において天然に生じる最後の30アミノ酸の5から25の間と、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0020】
ケメリンタンパク質における「最後のアミノ酸」という言及は、タンパク質のC末端におけるアミノ酸を意味する。
【0021】
ヒトおよびマウスのケメリン、プロケメリンおよびプレプロケメリンの全長配列は図2Aに示されており、ヒトタンパク質はそれぞれ配列番号31、32、33、マウスタンパク質はそれぞれ配列番号34、35、36である。好ましくは、ケメリンペプチドは、配列番号31または34の配列を有する。 ウシやラットといったその他の種に由来するケメリンタンパク質の配列は、既にGenBankから利用でき、当業者は容易にアクセスできる。
【0022】
好ましくは、ペプチドは、配列番号31(ヒト配列)および配列番号34(マウス配列)によるケメリンの最後の5から最後の30の間のアミノ酸と、少なくとも30%またはそれ以上, より好ましくは、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0023】
パーセントアミノ酸配列同一性は、配列を整列し、必要に応じて最大パーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後における、天然のケメリンタンパク質のアミノ酸と同一の配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者に既知の多数の方法で行うことができ、例えばBLASTおよびALIGNアルゴリズムを使用する方法を含む。
【0024】
ペプチドは、それが、本来の配列のペプチドに対して、少なくとも50%の抗炎症活性、および/または、少なくとも50%の抗内毒素ショック活性、および/または、少なくとも50%までの1以上の炎症性メディエータのレベルを減少させる能力を有している限り、ケメリンタンパク質のC末端の本来の配列に対する付加、挿入、欠失、転換または移動を含んでよい。
【0025】
「アナログ」または「誘導体」という用語は、天然の配列とは異なる配列を有するものの、天然の配列を有するペプチドに対して、同等以上、および少なくとも約50%、好ましくは60%、70%、80%または90%の抗炎症活性および/または抗内毒素ショック活性、炎症性メディエータ減少活性を本質的に有するペプチドを意味する。
【0026】
ペプチドアナログまたは誘導体は、N末端またはC末端残基を含む任意のアミノ酸残基の、1以上の欠失、挿入または修飾を有してよい。ペプチドは、アセチル化、アシル化、アルキル化、糖鎖形成等されてよい。ペプチドは、さらに、CもしくはN末端の何れかまたは両末端に付加的なアミノ酸を含んでよい。
【0027】
ペプチド、アナログまたは誘導体は、融合タンパク質の一部でよい。
【0028】
ペプチドは、天然のアミノ酸配列と比較して、1以上の保存的アミノ酸配列置換を含んでよい。
【0029】
好ましくは、1以上のペプチドは、以下を含む群から選択される配列を含む:
PHGYFLPGQFA(ケメリン11−マウス;C11m;配列番号1);
PHGYFLPGQFAF(ケメリン12−マウス;C12m;配列番号2);
PHGYFLPGQFAFS(ケメリン13−マウス;C13m;配列番号3);
AGEDPHGYFLPGQFA(ケメリン15−マウス;C15m;配列番号4);
AGEDPHGYFLPGQFAF(ケメリン16−マウス;C16m;配列番号5);
AGEDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン17−マウス;C17m;配列番号6);
DPHGYFLPGQFA(ケメリン12A−マウス;C12Am;配列番号7);
EDPHGYFLPGQFA(ケメリン13A−マウス;C13Am;配列番号8);
GEDPHGYFLPGQFA(ケメリン14A−マウス;C14Am;配列番号9);
DPHGYFLPGQFAF(ケメリン13B−マウス;C13Bm;配列番号10);
EDPHGYFLPGQFAF(ケメリン14B−マウス;C14Bm;配列番号11);
GEDPHGYFLPGQFAF(ケメリン15A−マウス;C15Am;配列番号12);
DPHGYFLPGQFAFS(ケメリン14C−マウス;C14Cm;配列番号13);
EDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン15B−マウス;C15Bm;配列番号14);
GEDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン16A−マウス;C16Am;配列番号15);
PHSFYFPGQFA(ケメリン11−ヒト;C11h;配列番号16);
PHSFYFPGQFAF(ケメリン12−ヒト;C12h;配列番号17);
PHSFYFPGQFAFS(ケメリン13−ヒト;C13h;配列番号18);
AGEDPHSFYFPGQFA(ケメリン15−ヒト;C15h;配列番号19);
AGEDPHSFYFPGQFAF(ケメリン16−ヒト;C16h;配列番号20);
AGEDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン17−ヒト;C17h;配列番号21);
DPHSFYFPGQFA(ケメリン12A−ヒト;C12Ah;配列番号22);
EDPHSFYFPGQFA(ケメリン13A−ヒト;C13Ah;配列番号23);
GEDPHSFYFPGQFA(ケメリン14A−ヒト;C14Ah;配列番号24);
DPHSFYFPGQFAF(ケメリン13B−ヒト;C13Bh;配列番号25);
EDPHSFYFPGQFAF(ケメリン14B−ヒト;C14Bh;配列番号26);
GEDPHSFYFPGQFAF(ケメリン15A−ヒト;C15Ah;配列番号27);
DPHSFYFPGQFAFS(ケメリン14C−ヒト;C14Ch;配列番号28);
EDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン15B−ヒト;C15Bh;配列番号29);および
GEDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン16A−ヒト;C16Ah;配列番号30);
またはそれらのアナログもしくは誘導体。
【0030】
好ましくは、1以上のペプチドは、以下を含む群から選択される配列を含む:
AQAGEDPHGYFLPGQFAFS(ケメリン19−マウス;C19m;配列番号37);および
QRAGEDPHSFYFPGQFAFS(ケメリン19−ヒト;C19h;配列番号38);またはそれらのアナログもしくは誘導体。
【0031】
好ましくは、ペプチドは、上において配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30として言及される1以上のペプチドと、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0032】
好ましくは、ペプチドは、上において配列番号37または38として言及される1以上のペプチドと、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0033】
好ましくは、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドのアナログまたは誘導体は、ペプチドの小分子擬態物を含む。
【0034】
ペプチド、アナログまたは誘導体は、本来のシステムから単離されてよく、または、合成的にまたは組み換えで生産されてよい。合成されたペプチドは、自動化された方法による合成を含む標準的化学的方法によって生産してよい。
【0035】
組換えタンパク質は精製された形態で使用してよい。あるいは、組換えタンパク質を発現する細胞からの上清を使用してよい。
【0036】
ペプチド、アナログまたは誘導体は、より大きなタンパク質または分子複合体の一部を形成してよい。
【0037】
ペプチドは直鎖または環状であってよい。
【0038】
ペプチドはプロテアーゼ耐性の骨格を含んでよい。
【0039】
ペプチドはCおよび/またはN末端における修飾を含んでよい。
【0040】
ペプチドは、当該分野で既知の方法によって、例えば放射性ラベル、蛍光性ラベル、質量分析タグ、ビオチン等でラベルされてよい。
【0041】
医薬は、その他の既知の抗炎症剤および/またはその他の既知の抗内毒素ショック剤および/またはケモカインレベルを減少されることが既知のその他の薬剤を含む、その他の活性成分を含んでよい。
【0042】
医薬は、さらに、医薬的に許容可能な賦形剤を含んでよい。賦形剤は、大きな巨大分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、トレハロース、脂質凝集物および不活性ウィルス粒子を含んでよい。そのような賦形剤は当業者に周知であろう。
【0043】
医薬は、さらに、1以上の緩衝剤、粘性増加剤、溶剤、安定剤および防腐剤を含んでよい。
【0044】
医薬の投与経路は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、損傷内、関節内、局所、経口、直腸、経鼻、吸入またはその他の適切な経路による注射または注入であってよい。
【0045】
使用されるペプチドの用量は、ペプチド、標的および治療に依存するだろう。用量および投与経路の決定は、通常の医師の技術に属す。標準的投与計画は、約1pg/kgから約100mg/kgまで変化してよく、より好ましくは、用量は、約10pg/kgから約1mg/kg、より好ましくは、約10pg/kgから約100ng/kgであろう。好ましくは、これらの用量は1日当たりの用量である。
【0046】
驚くべきことに、本発明によるペプチドの0.32ナノグラム/kg程度に低い用量が、マウスにおける無菌の腹膜炎に対して有効であるのに対し、同程度の効果得るためには、1.2mg/kgのデキサメタゾンが要求されることがわかった。
【0047】
好ましくは、本発明の使用による医薬は、約10pg/kgから約1mg/kgの間の用量で、より好ましくは、約10pg/kgから約100ng/kgの間、または約10pg/kgから約10ng/kgの間の用量での投与を意図してよい。これらの用量は、必要とされるデキサメタゾンの用量より少なくとも3log低い。
【0048】
別の側面によると、本発明は、対象における炎症を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0049】
別の側面によると、本発明は、対象における内毒素ショックを治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0050】
別の側面によると、本発明は、対象における1以上の炎症性メディエータのレベルを減少する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0051】
治療は、治療的、予防的または美容的であってよい。
【0052】
好ましくは、ペプチドは、有効な量で、すなわち、(i)炎症の低下を誘導するまたは引き起こすために、または、炎症を予防または減少するために;(ii)内毒素ショックの低下を誘導するまたは引き起こすために、または、内毒素ショックを予防または減少するために;および/または(iii)1以上の炎症性メディエータのレベルを減少するために十分な量で投与される。
【0053】
あるいは、本発明の医薬は、装置に関連する炎症のリスクを減らすために、医療装置に直接適用されてよい。これは、装置の表面に医薬を適用することによって、または、装置の表面にケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を浸透させることによって達成してよい。
【0054】
別の側面によると、本発明は、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した医療装置を提供する。
【0055】
医療装置はステントまたはカテーテルであってよい。
【0056】
別の側面によると、本発明は、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した創傷包帯または絆創膏を提供する。
【0057】
本発明の任意の側面において言及される炎症は、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(硬皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性脈管炎、サーコイドーシス、自己免疫溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿症)、自己免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病、免疫介在性血小板減少症)、甲状腺炎(バセドウ病、橋本甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、自己免疫性炎症性疾病(例えば、アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、甲状腺亢進症、硬皮症、全身性紅斑狼瘡、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、遠位性回腸炎、肉芽腫性腸炎、限局性回腸炎、終末回腸炎)、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、同種異系移植片拒絶反応、糖尿病、免疫介在性腎臓病(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢神経および末梢神経系の脱髄疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄性多発神経障害またはギラン・バレー症候群、および慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆汁性疾病例えば、伝染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎およびその他の肝臓指向性(hepatotropic)ウイルス)、自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、硬化性胆管炎、グルテン過敏性腸疾患、ホイップル病、水疱性皮膚病、多形性紅斑および接触性皮膚炎を含む自己免疫介在性または免疫介在性皮膚病、乾癬、アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症およびじんましん、肺の免疫疾患、例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症および過敏性肺炎、移植片拒絶および移植片対宿主病を含む移植関連疾患ウイルス病を含む感染症、例えばAIDS(HIV感染症)、疱疹など、細菌感染、真菌感染症、原生動物感染症、寄生性感染症および呼吸器合胞体ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルスなど、湿疹および内毒素ショックといった症状に関連してよい。
【0058】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、炎症を治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0059】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37、38の配列を有するペプチドおよびそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、炎症を治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0060】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、内毒素ショックを治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0061】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37、38の配列を有するペプチドおよびそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、内毒素ショックを治療、予防または回復できるペプチドを提供する。
【0062】
更なる側面によると、本発は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少できるペプチドを提供する。
【0063】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37、38の配列を有するペプチドおよびそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される、1以上の炎症性メディエータのレベルを減少できるペプチドを提供する。
【0064】
別の側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0065】
別の側面によると、本発明は、配列番号37および38の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0066】
医薬組成物は、炎症の治療および/または予防のため、および/または、内毒素ショックの治療および/または予防のため、および/または、サイトカインおよびケモカインといった1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のためであってよい。
【0067】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0068】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37または38の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0069】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチドを提供する。好ましくは、ペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドに対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の配列同一性を有するペプチドを有する。
【0070】
更なる側面によると、本発明は、配列番号37または38の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチドを提供する。好ましくは、ペプチドは、配列番号37または38の配列を有するペプチドに対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の配列同一性を有する。
【0071】
更なる側面によると、本発明は、創傷の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用を提供する。
【0072】
更なる側面によると、本発明は、対象における創傷を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0073】
更なる側面によると、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、37または38の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチドを含む、創傷の治療のための医薬組成物を提供する。
【0074】
更なる側面によると、本発明は、炎症の治療および/または予防における使用のための、および/または、内毒素ショックの治療および/または予防における使用のための、および/または、サイトカインおよびケモカインといった1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のためのケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0075】
更なる側面によると、本発明は、創傷の治療における使用のための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を提供する。
【0076】
当業者は、上に議論された任意の望ましい特徴は、本発明の任意の側面に適用することができると認識するだろう。
【0077】
本発明の好ましい実施例を、単に例示として、以下の図および例に関連して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1B】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1C】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1D】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1E】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図1F】図1Aおよび1Bは、ケメリン140が、タンパク質分解依存様式でマクロファージによる炎症性メディエータの生産を抑えることを示す。マクロファージまたは活性化マクロファージ由来の上清(100ng/mlのLPSおよび20ng/mlのインターフェロンγで処理)について、LuminexおよびELISAのアッセイを使用して、サイトカイン発現を分析した。示された用量の組み換えマウスケメリンまたはデキサメタゾンの存在下または非存在下で、およびプロテアーゼ阻害剤ロイペプチン(15mg/ml)の存在下または非存在下で、細胞をインキュベートした。図1C−マクロファージサイトカインmRNAレベルの量を、qRT−PCR(IL−10、TGFβ)によって定量し、HPRTに標準化した。図1D−PMΦを、ケメリン(0.1−1pM)±百日咳毒素(PTX;200ng/ml)で前処理し、その後、LPS/IFNγ−負荷に供した。図1E−PMΦは、1時間ケメリン(1pM)±PTXで前処理した後、次に、4時間、8時間または15時間LPS/IFNγで刺激した。LPS/IFNγ処理サンプルに対して、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。ケメリン処理サンプルに対して、###,p<0.001;##,p<0.01;#,p<0.05。図1F−腹膜マクロファージ(PMΦ)は、ケメリン(1pM)、ケメリン(1pM)+プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン[ロイ]、E−64、ペファブロック[ペファ]、ペプスタチンA[ペプA]、カルペプチン[カル]、カテプシンS阻害剤[カテS]、カテプシンL阻害剤[カテL])で1時間前処理した後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。グラフは、3−8の独立した実験からの平均値±SEMを示す。nd;このアッセイの検出限界以下。ns、有意でない。
【図2A】図2Aは、ヒト(上の配列)およびマウス(下の配列)のケメリン(Tig2)のアミノ酸配列アラインメントを示す。ヒト(プロテインデータバンクアクセション番号NP_002880)およびマウス(NP_082128)ケメリンのアミノ酸配列は、PeptideCutter(http://www.expasy.org/tools/peptidecutter)を使用して整列して分析し、予測されるトリプシン切断サイト(黒い垂線)を得た。太字および灰色の全長配列は、プレプロケメリンの配列である(ヒトについて配列番号33およびマウスについて配列番号36)。N末端アミノ酸の灰色を除去した配列は、プロケメリン配列(ヒトについて配列番号32およびマウスについて配列番号35)である。N末端およびC末端アミノ酸の灰色を除去した太字の配列は、ケメリンの配列である(ヒトについて配列番号31およびマウスについて配列番号34)。
【0079】
C末端ペプチドC11m(配列番号1)、C13m(配列番号2)、C15m(配列番号3)およびC17m(配列番号4)の配列も示される。
【図2B】図2Bは、ケメリンのC端末部に由来するペプチドが、マクロファージにより活性化されたプロ炎症性メディエータ産生を抑えることを示す。図中のペプチドC13、C15およびC17とは、それぞれ、上においてC13m、C15mおよびC17mと示されるペプチドである。
【図3】図3−ケメリンペプチドは、ケメリン140と比較して、マクロファージ走化特性をほとんど示さない。図中のペプチドC11、C13、C15およびC17は、それぞれ、上にてC11m、C13m、C15mおよびC17mと記載されるペプチドを意味する。
【図4】図4A−Hは、ケメリン、ケメリンペプチドおよびケメリン処理した上清に仲介される化学走性を示す。30分の百日咳毒素による前処理(PTX;200ng/ml)を行うまたは行わないPMΦ(0.4×106)を、4時間にわたり、修飾したボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、化学遊走物質(図4A;rmケメリン、図4B;C15、図4C;C11、図4D;C13、図4E;C19、図4F;C6、図4G;C8)の方へ移動させた。図4H−PMΦ(7.5x105)は、4時間にわたり、修飾したボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、未処理のマクロファージおよびLPS/IFNγ±ケメリンまたはC15で処理したマクロファージからの条件培地の方へ移動させた。グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEM(n=4つの独立した実験)を示す。PMΦ+PTXについて、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05(スチューデントのt−検定)。図中のペプチドC11、C13、C15およびC19は、上において、それぞれC11m、C13m、C15mおよびC19mとして示されるペプチドである。
【図5】図5−マクロファージが、ケメリン処理マクロファージからの条件培地への化学走性の減少を示したことを表す。図中のペプチドC15およびC17は、上において、それぞれC15mおよびC17mと示されるペプチドを表す。
【図6】図6−ケメリン15−マウスが、ザイモサン誘導性腹膜炎を抑制することを示す。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。Zはザイモサンを示す。
【図7A】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7B】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7C】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7D】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7E】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7F】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図7G】図7A−G−ケメリン15は、マウスにおけるザイモサン誘導性腹膜炎を改善することを示す。図7Aおよび7B−C57Bl6/Jマウスは、i.pで、PBSまたはケメリン15(0.32ng/kg)を投与し、1時間後にPBSまたはザイモサンを注入した(10μg、〜2x106粒子/空隙)。腹膜滲出細胞は、複数の時点で(図7Aおよび7B;5−6マウス/投与)または4時間後に(図7C−7E;6−15マウス/群)、腹膜洗浄によって収集した。図7C−7E−洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。細胞は、2.4G2抗FcγRII/IIIでブロックし、Ly−6G−PEおよび7/4−FITCで染色した。ゲートを2つの集団好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)のまわりで構築した。図7E−代表的FACSプロットは、ザイモサン後4時間におけるそれぞれの投与群を示す。図7F−腹膜洗浄液は、ELISAによってTNFαおよびKCならびにLuminexアッセイによってIL−6、IL1βおよびMCP−1についてアッセイされる。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物に関して、***,P<0.001;**,P<0.01 **(スチューデントのt−検定)。図7G−マウス(6−8/投与)に、i.pで、1時間前(C15前治療)または2時間後(C15後処理)の何れかに、ザイモサン(10μg)とC15(8pg)またはPBSとを投与した。腹膜洗浄を、ザイモサン負荷後4時間に行った。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図8】図8A−D−抗ケメリン抗体はケメリン種を中和し、腹膜の炎症を悪化させることを示す。図8A−PMΦは、マクロファージ化学走性アッセイ(図7に詳述するように行なった)に使用し、抗rmケメリン抗体またはコントロールIgGの存在下または非存在下でランテス、ケメリンまたはC15に向けて移動させた。グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEMを示す(n=4つの独立した実験)。化学遊走物質について、***,p<0.001;**,p<0.01;*,p<0.05。図8B−PMΦは、抗rmケメリン抗体またはコントロールIgGの存在下または非存在下で、1pMのC15または1pMのケメリンで1時間前処理し、その後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間刺激した。16時間後のマクロファージ上清におけるランテス±SEMの平均発現を、ELISAで決定した(n=4独立した実験)。LPS/IFNγ処理サンプルについて、**,P<0.01;*,P<0.05。図8Cおよび8D−C57Bl6/Jマウスに、PBS、抗rmケメリン抗体(100ng/マウス)またはコントロールIgG(100ng/マウス)をi.pで投与し、1時間後、PBSまたはザイモサン(10μg/空隙)を注入した。腹膜滲出細胞は、ザイモサン注入から4時間および24時間後、腹膜洗浄によって収集し、図7に概説されるように処理した。Z;ザイモサン、ChAB;抗rmケメリン抗体。ザイモサン負荷マウスについて、**,P<0.01。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図9】図9は、0.32ng/kgのC15mのみの注入は、好中球またはマクロファージのリクルートメントを誘導しないが、腹膜のTNFαレベルを減少させないことを示す。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図10】図10は、修飾ケメリン13−ヒトペプチドは、マウスマクロファージにおけるランテスおよびTNFα転写発現を抑えることを示す。図中のペプチドhC13は修飾C13hペプチドを指す。
【図11】図11は、C17mはC140誘導性マクロファージ化学走性に影響しないことを示す。図中のペプチドC17は、上にて言及されるペプチドC17mを意味する。
【図12】図12は、ケメリン15−マウスおよびケメリン17−マウスは、ザイモサンで刺激したマウスマクロファージによるTNFα分泌を抑えることを示す。図中のペプチドC15およびC17は、それぞれ上にてC15mおよびC17mと記述されたペプチドを指す。デキサはデキサメタゾンを指す。
【図13】図13は、ケメリン140およびケメリン15−マウスが、真のマクロファージ化学走性を誘導し、ケモキネシスを誘導しないことを実証するチェッカーボード分析である。図中のペプチドC15は、上においてC15mとして表されるペプチドを示す。
【図14】図14A−Bは、ケメリン15は、一連のC15およびザイモサンの用量にわたって、ザイモサン腹膜炎における単球および好中球のリクルートメントを抑えることを示す。図14A−C57Bl6/Jマウス(5−6動物/投与)に、PBSまたはC15(0.32ng/kg)をi.pで投与し、1時間後、PBSまたはザイモサン用量範囲(10μg−1mg;A)を注入した。図14B−マウス(5−6動物/投与)は、PBSまたはC15用量範囲をi.pで投薬(4−40pg/マウス)し、1時間後、PBSまたはザイモサン(10μg;2x106粒子/空隙)を注入した。ザイモサン負荷から4時間後、腹膜洗浄によって腹膜滲出細胞を収集した(5−6マウス/群)。図7に記載される通りに、洗浄液中の全細胞数を定量し、FACS分析を使用して細胞内組成(好中球対単核食細胞)を決定した。C15;ケメリン15、Z;ザイモサン。ザイモサン処理動物について***,P<0.001;**,P<0.01,**;P<0.05 *(スチューデントのt−検定)。図中のペプチドC15またはケメリン15は、上にてC15mと示されたペプチドを指す。
【図15】図15は、相対的認識指標として示される、マクロファージによるザイモサン認識のための蛍光測定を示す。実験は、様々な濃度のC15の存在下または非存在下で行った。データは、4つのプールし、標準化した実験の平均(±s.e.m。)を示す。
【実施例】
【0080】
本願におけるケメリン140またはC140とは、配列番号34の140アミノ酸マウスケメリンタンパク質(ケメリン140−マウス)を意味する。
【0081】
[ケメリン140は、プロテアーゼ阻害剤によって抑制される活性化されたマクロファージに対する抗炎症効果を奏する]
以前の研究において、脱顆粒後に多形核細胞(PMN)によって放出されるセリンプロテアーゼが、プロケメリンのC末端を切断し、その走化性の可能性を解放することが実証された(Wittamer V et al. J Immunol. Jul 1 2005;175(1):487-493)。しかしながら、ケメリンの更なるタンパク質分解プロセシングによって生産されたペプチドの抗炎症効果は、新規且つ発明性がある。
【0082】
マウス腹膜マクロファージ(PMΘ、ここではPMΦとも言及される)を以下の条件で培養した:未処理;LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間;ケメリン(1pM)で1時間の前処理の後、LPS/IFNγで15時間;ロイペプチン(プロテアーゼ阻害剤;15mg/ml)およびケメリン(1pM)で1時間の後、LPS/IFNγで15時間;またはデキサメタゾン(ポジティブコントロール;1μMで1時間の前治療の後、LPS/IFNγで15時間。
【0083】
ケメリン+リポ多糖類/インターフェロン−γ(LPS/IFNγ)で処理したマクロファージ由来の上清についてケモカイン量を分析すると、その結果から、ケメリン処理細胞は、LPS/IFNγ処理サンプルと比較して、TNFα(70%)、IL−12p40(54%)、ランテス(CCL5;40%)、IL−6(42%)およびIL−1β(60%)のレベルが有意に低いことが示された(n=5;p<0.001 図1Aおよび1B)。広域スペクトルのプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)がマクロファージに添加された場合に、いずれの抗炎症効果も予防されることから、この抗炎症効果は、広域スペクトルのプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)により阻害され、このことは、これらの抗炎症ペプチドの生産における付加的なケメリン切断の重要性を示す(図1Aおよび図1F)。
【0084】
抗ケメリン中和抗体を使用すると、ケメリンの抗炎症効果が除去されることから、これらの効果はケメリン特異的であることも実証された(図8B)。
【0085】
図1Aの棒グラフは、Luminexアッセイによって決定されるサイトカインの平均発現±SEMを示す。実験は、それぞれの処理について、三重の測定を行った。異なる群のC57Bl6/Jマウス由来の細胞を使用する3つの独立した実験からの代表的データが示される。LPS/IFNγ処理サンプルに関して、特に規定のない限り、p<0.001 ***; p<0.01 **。デキサはデキサメタゾン(1mM)を意味する。
【0086】
図1Bは、図1Aに関して上記した結果と同様の結果を示しており、0.1pM、0.5pMおよび1.0pMの異なる濃度のケメリンの効果を示すデータを付加している。
【0087】
さらに、図1Cは、ケメリンが、抗炎症サイトカインTGFβ(54%)およびIL−10(89%)のmRNAの発現を誘導したことを示す。
【0088】
ケメリンの効果は、1pMにおいて観察される応答を最大として用量依存的であり(図1Bおよび図1C)、百日咳毒素感受性であり、このことは、Gαiに関連するGPCRの関与を示している(図1D)。
【0089】
さらに、抗炎症効果は、LPS/IFNγ投与の後に4時間、8時間および15時間で観察され、全ての時点でPTXによって抑制された(図1E)。
【0090】
以前の研究によって、脱顆粒後の顆粒細胞によって放出されるセリンプロテアーゼが、プロケメリンのC末端を切断し、その走化性の可能性を解放することが示された(Wittamer, V., et al., (2005), J Immunol 175:487-493)。マウスケメリンが、マウスMФ活性化によって放出される酵素によってタンパク質分解プロセシングを更に受ける可能性を調べた。図1Aに関して上で議論したように、ケメリンとロイペプチン(セリンおよびシステインプロテアーゼ阻害剤)との共投与は、その抗炎症効果を抑制した(図1Aおよび図1F)。この効果は、E−64(システインプロテアーゼ阻害剤)についても実証されたが、酸性プロテアーゼ阻害剤ペプスタチンAおよびセリンプロテアーゼ阻害剤ペファブロックは、MФ活性化のケメリンが介在する抑制に対して何ら効果を発揮しなかった(図1F)。これらのデータは、ケメリンは、システインプロテアーゼに依存する様式で、MФ活性化に阻害作用を及ぼすことを実証する。ケメリン切断に関与する特異的システインプロテアーゼを更に調べるために、カテプシンL阻害剤(Z−FF−FMK)、カテプシンS阻害剤(Z−FL−COCHO)、およびカルパインIおよびII阻害剤、カルペプチンを使用した(図1F)。ケメリンの抗炎症効果は、カルパインおよびカテプシンSに依存するが、カテプシンLに依存しないこともわかった。まとめると、結果は、典型的に活性化されたマウスMФが、カルパインIIおよびカテプシンSに最も関連するようである親分子の特異的システインプロテアーゼ介在切断により、ケメリンをMФ活性化の強力なペプチド阻害剤に変換することができることを初めて実証する。
【0091】
[抗炎症活性を有するC末端ケメリンペプチド]
重要な保存残基の指標としてのEnsemblにおける配列アラインメント機能を使用して、11−20aaの一連のペプチドを設計し、C11m(P144−A154;PHGYFLPGQF A配列番号1)、C13m(P144−S156;PHGYFLPGQFAFS 配列番号3)、C15m(A140−A154;AGEDPHGYFLPGQFA 配列番号4)、C17m(A140−S156;AGEDPHGYFLPGQFAFS 配列番号6)、C19(A138−S156;AQAGEDPHGYFLPGQFAFS 配列番号37)、N19(E23−K41;ELSETQRRSLQVALEEFHK 配列番号44)およびM20(K86−K105;KPECTIKPNGRRRKCLACIK 配列番号45)と名付けた。図2Aは、これらのペプチドの一部の配列アラインメントを示す。ケメリンペプチド(1pM−100nM)は、記述したプロトコールによるマクロファージ活性化アッセイにて特徴づけられた。
【0092】
マウスPMΘを様々な条件下で培養した:未処理、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間;ケメリンペプチド(1pM−100nMの濃度)で1時間前処理、その後LPS/IFNγで15時間。示される濃度は、両アッセイにおけるそれぞれのペプチドについての最適な効果用量を表す。図2Bにおける棒グラフは、ランテスおよびTNFαタンパク質の平均発現±SEMを示す。実験は、それぞれの処理において三重の測定を行った。異なる群のC57Bl6/Jマウスに由来する細胞を使用する5つの独立した実験からの代表的データを示す。LPS/IFNγ処理サンプルについて、p<0.01 **; p<0.001 ***。
【0093】
C末端ペプチドC13m(100pM)、C15m(1pM)およびC17m(1pM)は、LPS/IFNγ誘導性ランテス分泌(C13m−32%;C15m−41%;C17m−49%)およびTNFα発現(C13m−10%;C15m−56%;C17m−66%、図2B)を抑制した。C15mおよびC17mは、同じ濃度で使用した場合に、C140と同程度でマクロファージ活性化を阻害した。
【0094】
同様の結果が表1に示されており、C末端ペプチドC13およびC19は、最適用量100pMで、LPS/IFNγ誘導性ランテスおよびTNFα発現を中程度に抑制する(表1)。しかしながら、ケメリン15(C15)は、ケメリンと同様の効果および力価で(最適用量1pM)、タンパク質分解されたケメリンによって示される抗炎症活性を保持し、サイトカイン発現を抑制した。さらに、C11、N末端ペプチド(N19)、途中のペプチド(M20)およびコントロールペプチド(スクランブルドC15;C15−S、GLFHDQAGPPAGYEF;配列番号39、および、変異体C15;C15M、AGEDPHGYALPGQAA;配列番号40)は、MФ活性化アッセイにおいて、抗炎症活性がなかった。凝析および繊維素溶解のカスケードのプロテアーゼによるプロケメリン切断の際に除去される6aa(RALRTK;配列番号41)および8aa(FSRALRTK;配列番号42)ペプチド(それぞれC6およびC8と名付けられる)が、MФ活性化アッセイにおいて、検出可能な抗炎症活性を有さないこともわかった。
【表1】
【0095】
表1に関して、ケメリン誘導ペプチドの抗炎症活性−マウスPMΦを図1Bに記載されるとおりに培養し、1時間のペプチド(0.1pM−100nM)による前処理を行って/行わずに、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)により15時間負荷した。ペプチドが抗炎症特性を示す場合、LPS/IFNγ誘導性マクロファージ活性化のパーセンテージ阻害は、最適用量で効果を表わす(1pMのケメリンおよびC15または100pMのC13およびC19)。ペプチド配列は次のとおりである:C11(P144−A154;PHGYFLPGQFA)、C13(P144−S156;PHGYFLPGQFAFS)、C15(A140−A154;AGEDPHGYFLPGQFA)、C19(A138−S156;AQAGEDPHGYFLPGQFAFS;配列番号37)、N19(E23−K41;ELSETQRRSLQVALEEFHK;配列番号44)およびM20(K86−K105;KPECTIKPNGRRRKCLACIK;配列番号45)。コントロールペプチド:スクランブルドC15(C15−S;GLFHDQAGPPAGYEF)および変異体C15(C15M;AGEDPHGYALPGQAA;F148A&F153A)。データは、ELISAおよびLuminexアッセイによって決定される、4−8の独立した実験からの、典型的に活性化されたマクロファージによるサイトカイン生産の平均パーセンテージ阻害を示す。
【0096】
[ケメリン140は、強力なマクロファージ化学遊走物質であるが、そのC末端由来抗炎症ペプチドは異なる。]
改変したボイデンチャンバーアッセイを利用して、C140のマクロファージ化学遊走物質特性を実証した。マウスケメリン140は、典型的な正規曲線を示し、10nMにて最適な化学走性を示し、その後低下し、おそらく次に、化学遊走物質勾配の受容体脱感作またはブレークダウンを示した(図3)。図4Aでは、百日咳毒素前処理の効果(PTX:200ng/ml)を示す付加的データも示される。
【0097】
PMΘ(0.5×106)を、改変ボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、化学遊走物質(ケメリン140またはケメリンペプチド)に向けて4時間にわたり移動させた。フィルターを4%ホルマリンで固定し、その後、移動した細胞核をDAPIで染色して視覚化した。無血清培地(SFM)をネガティブコントロールとして使用し、マクロファージ化学遊走物質ランテス(25ng/ml;3nM)をポジティブコントロールとして使用した。グラフは、それぞれの投与群(n=5−6)についての、平均遊走指数(化学遊走物質%しきい値領域/SFM%しきい値領域)±SEMを意味する。SFM処理ウェルについて、p<0.001 ***;p<0.01 **;p<0.05 *。
【0098】
C11m、C13mおよびC15m(1pM−100nM)は、C140(1pM−50nM)またはポジティブコントロール、CCケモカインランテス(25ng/ml;3nM)と比較して、走化活性が少ないことが観察された。最大のマクロファージ遊走は、100pMのC15mおよび10nMのC13mおよびC11mで観察された。しかしながら、C17mは、試験した全濃度において、走化活性を示さなかった(0.1pM−500nM;n=5回の独立した実験)(図3)。この結果は、図4B−Dにおいても見られ、付加的に百日咳毒素前処理(PTX:200ng/ml)の効果のデータが示される。図4Eに関して、C19は、さらに、試験した全濃度で走化活性を示さなかった(0.1pM−500nM;図4E)。したがって、ケメリン誘導ペプチドは、抗炎症活性を保持するが、MФにとって走化活性を示さないと同定され、このことは、治療学的に開発可能な、ケメリンの明確な機能特異的成分の存在を示す。MФ抗炎症活性を欠くことがわかっているプロケメリン由来ペプチドC6およびC8は、さらに、試験した全ての濃度でMФ遊走を誘導することができなかった(0.1pM−500nM;図4F−G)。それ故、データから、主要な走化性種は、切断されたケメリン分子自体またはまだ未確認のペプチドのいずれかであるようである。
【0099】
[ケメリンおよびケメリン15が、マクロファージによる化学遊走物質生産の全般的な抑制を誘導することを示す付加的例]
炎症の際の免疫細胞のリクルートメントにおけるMФ由来の化学遊走物質の十分確立された役割に基づいて(Glabinski, A.R., et al., (1998).Neuroimmunomodulation 5:166-171; Huang, D. J. et al., (2001). J. Exp. Med. 193:713-726)、未処理のMФ、および、化学走性アッセイにおいてケメリン+LPS/IFNγ、C15+LPS/IFNγ、およびLPS/IFNγ単独で処理したMФからの条件培地を使用して、ケメリンおよび合成C末端ペプチド、C15によるMФ活性化の抑制が、更なるMФリクルートメントにどのように影響するかを調べた(図4Hを参照)。未処理MФ条件培地自体は、MФの走化活性を示さなかった(遊走指数1.0±0.15);しかしながら、LPS/IFNγ処理マクロファージ培地は、MФ化学走性にて著しい増加を誘導した(遊走指数9.3±0.4; 図4H)。更に、MФは、ケメリン+LPS/IFNγおよびC15+LPS/IFNγ処理マクロファージからの条件培地に向かう化学走性において、それぞれ49%および55%の減少を示した(図4H)。このことは、条件培地の走化活性が影響を受ける程度まで、ケメリンおよびC15が、広範囲のMФ由来MФ化学遊走物質の一般的な抑制を誘導することを意味する。
【0100】
さらに二次的な化学走性アッセイは、ケメリン140−マウス、ケメリン15−マウスおよびケメリン17−マウスで処理したマクロファージからの上清へ向かうマクロファージ化学走性を抑制することを明らかにした。これらの結果は、C15mおよびC17mによる活性化マクロファージの前処理は、マクロファージによって放出される化学遊走物質の量および/または生物活性を減少させ、それゆえ、これらのペプチドが、炎症部位への単球/マクロファージの継続するリクルートメントを著しく低減できることを示す。
【0101】
C140+LPS/IFNγ、C15m+LPS/IFNγ、C17m+LPS/IFNγおよびLPS/IFNγ単独で処理したマクロファージ条件培地を第二の化学走性アッセイに使用し、C140およびそのC末端ペプチドによるマクロファージ活性化の抑制に関する潜在的な病態生理学の影響を評価した。
【0102】
細胞(0.5×106)を、4時間にわたり、改変ボイデンチャンバーのボトムウェルにおいて、化学遊走物質(ケメリンペプチド)または条件培地に移動させた。無血清培地(SFM)はネガティブコントロールとして使用した。フィルターを4%のホルマリンにおいて固定し、その後、核をDAPIで染色して視覚化した。棒グラフは、それぞれ投与群について、平均遊走指数(化学遊走物質%しきい値領域/SFM%しきい値領域)±SEMを示す。それぞれのバーは少なくとも三重のウェルを示し、一処理あたり6枚の画像がとられた。特記されない限り、p<0.001 ***; p<0.01 ** 有意性は、LPS/IFNγ条件培地に関する。ABは抗マウスケメリン抗体を指す。
【0103】
図5に示された結果から見ることができるように、マクロファージ条件培地自体は、マクロファージに対して走化活性を示さないが、しかしながら、LPS/IFNγ処理マクロファージ培地は、マクロファージ化学走性における劇的な増加を誘導した。さらに、マクロファージは、C140+LPS/IFNγ、C15m+LPS/IFNγおよびC17m+LPS/IFNγ処理マクロファージからの条件培地に対する化学走性を減少させ、このことは、C140、C15mおよびC17mの広範囲のマクロファージ化学遊走物質の一般的な抑制を誘導する能力を示す。
【0104】
ケメリン処理上清が、ケメリン誘導型走化性タンパク質/ペプチドを保護する可能性を排除するために、上清を、マクロファージ遊走の評価に先立って中和ケメリン抗体とともにインキュベートした。ケメリンは、ケメリン処理上清において、遊走に寄与しないようであった。
【0105】
[ケメリン15−マウスはザイモサン誘導性腹膜炎を抑制する]
腹膜炎症は、急性炎症反応を誘発するザイモサン粒子(酵母菌壁成分)の腹腔内注入によって誘導することができる。ザイモサン誘導性腹膜炎は、マウス腹腔における好中球その後の単球の十分記述された時間依存的蓄積に続く(Lawrence T et al. Nat Rev Immunol. Oct 2002;2(10):787-795参照)。このモデルを、組織の構造および機能の初期の回復並びに好中球および単球の血管外遊走の抑制を伴う炎症の時間的経過を典型的に短くする確立されたメディエーター、リポキシンA4およびアネキシン−1のプロ分解(pro−resolving)特性を実証するために使用した。文献中で報告された前の実験では、一連の用量のザイモサンA粒子(10μg−1mg)が使用された (Taylor PR et al. Eur J Immunol. Jul 2005;35(7):2163-2174; Arita M et al. J. Biol. Chem. August 11, 2006 2006;281(32):22847-22854)。
【0106】
ケメリンの高い走化性の可能性およびタンパク質分解の本来の要求に基づいて、C末端合成ペプチドケメリン15を、無菌腹膜炎モデルにおける抗炎症効果のインビボの特徴づけに使用した。これは、C15が、走化活性をほとんど欠くものの(図3および図4B)、タンパク質分解されたケメリンに匹敵する抗炎症効果を発揮するためである(表1)。
【0107】
図6に示される結果に関連して、この研究は10μg/マウス(1−2粒子/常在性マクロファージ)を使用した。これは、これがより緊密に病態生理学の用量を表わすと予想されるためである。
【0108】
より具体的には、オスC57Bl6/Jマウス(8−12週)に対し、0.5mlのPBSまたは0.5mlのケメリン15−マウス(0.32ng/kg)を腹膜内に注射し、1時間後、0.5mlのPBSまたはザイモサン(2x106粒子/空隙)を注射した。4時間後、動物を殺処分し、腹腔を5mlのPBS−3mM EDTAで洗浄した。トリパンブルー排除試験を使用して、前細胞数を得た。細胞内組成(好中球対単核食細胞)の決定のために、細胞を、2.4G2抗FcgRII/IIImABで5分間ブロックし、PE複合抗マウスLy−6GおよびFITC複合抗マウス7/4mABで10分間染色した。CellQuestソフトウェアによるFACS分析の前に、1%ホルムアルデヒドで細胞を固定した。ゲートを2つの集団のまわりで構築した:好中球(N; 7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high)。C15はケメリン15−マウスを指す。Zはザイモサンを指す。ザイモサン処理に関して、p<0.01 ** ; p<0.05 *。
【0109】
好中球(7/4high、Ly−6Ghigh)、単球(7/4high、Ly−6Glow)および常在性マクロファージ集団(7/4low、Ly−6Glow)を、文献の記載に基づいて決定した(Gordon S and Taylor PR Nat Rev Immunol. 2005;5(12):953; Taylor PR et al. Eur J Immunol. Aug 2003;33(8):2090-2097; and Taylor PR et al. Eur J Immunol. Jul 2005;35(7):2163-2174)。
【0110】
この研究の結果は、0.32ng/kg(8pg/マウス)の用量でC15mで処理したマウスが、ザイモサンに誘発される単球および好中球リクルートメントを、それぞれ42%および52%減少したことを示す(図6)。TNFαのレベルも、C15mで処理したマウスにおいて減少した。
【0111】
上記の結果をさらに調査した。インビボのC15ペプチドの抗炎症特性を決定するために、48時間にわたって時間的経過実験を行った。腹膜洗浄液中の好中球(7/4high、Ly−6Ghigh)および単球(7/4high、Ly−6Glow)集団を、公表されたプロトコールによるFACS分析によって決定した(Taylor, P.R. et al., (2005). Eur J Immunol 35:2163-2174; Taylor, P.R., (2003). Eur J Immunol 33:2090-2097)。マウス腹腔へのザイモサンの投与は、腹腔への炎症細胞の時間依存的血管外遊走をもたらし、その後、急性炎症反応の典型的なプロファイルを示した(図7A−B、実線)。好中球は、空隙を浸透する最初の白血球であり、ザイモサン後2時間で検出可能となり、4時間後に好中球増加がピークとなった(1.95×106細胞)。炎症を起こした腹腔への単球流入は、最初に4時間後に検出され(0.69×106細胞)、ザイモサン注入後24時間でピークに達し(1.25×106細胞)、その後減少した。ザイモサン負荷の1時間前における、8pg/マウスの用量(ほぼ0.32ng/kg)によるC15の前処理は、ザイモサン負荷マウスの約50%の大きさで、2時間早く好中球増加のピークに達した(1.25x106から0.62×106細胞への減少;図7A、点線)。C15による好中球浸潤の顕著な抑制が2時間(50%)、4時間(66%)および24時間(50%)にてみられた。1回量8pgのC15ペプチドもまた、全時点において、炎症を起こした空隙における腹膜単球の数の減少に有効であった(60%を超える抑制が見られた、4時間(63%)、8時間(61%)および48時間(64%)、図7B、点線)。単球浸潤の速度は、ザイモサン注入後2−4時間において最も高く(0.51x106/h)、C15の投与は、炎症を起こした空隙への流入速度を減少した(0.18x106/h)。ザイモサン負荷に先立つ単一量のC15ペプチドは、それゆえ、実験の48時間にわたり、ザイモサン誘導性腹膜炎症に対する顕著な保護を提供した。
【0112】
時間的経過実験は、C15の抗炎症活性の確認のための適切なポイントとして、ザイモサン後4時間の時点を同定した。この研究では、単一用量のC15は、ザイモサン誘発好中球および単球リクルートメントにおける用量依存的な減少をもたらしたものの(最大8pg/マウスC15(ほぼ0.32ng/kg;図7C−Eおよび16A−B))、、顕著な抗炎症効果は、4pg/マウスと同程度に低い用量が見られた(ほぼ0.16ng/kg; 図14B)。ザイモサン負荷の1時間前にC15を投与する場合、好中球数は、1.9x106から0.78×106まで減少し(63%の減少;図7C)、単球レベルは、0.69×106から0.30×106に減少した(62%の減少;図7D、4時間の時点の代表的なFACSプロットが、図7Eに示される)。C15投与は、4時間で、腹膜洗浄液におけるプロ炎症性サイトカインの発現をさらに著しく減少させた:TNFα(51%)、IL−1β(67%)、IL−6(67%)、MCP−1(59%)およびKC(38%)(図7F)。インビトロ抗炎症活性を欠くコントロールペプチドC15−SおよびC15−Mもまた(表1)、インビボでC15と同じ用量および時間で投与された場合、単球および好中球レベルで判断して保護性でないことがわかった(図7C−D)。同じ用量のC15がザイモサン注入後2時間で与えられた場合、単球(0.69×106から0.42×106細胞;42%の減少)および好中球リクルートメント(1.9×106から0.83×106細胞;60%の減少)の顕著な抑制がザイモサン後4時間においてもみられた(図7G)。このことは、C15は、既に確立している炎症性状態において、好中球および単球リクルートメントを減少できることを実証し、C15/C15−誘導体が、炎症性病理をターゲットとする魅力的なファルマコフォアを表わす可能性があることも示唆する。
【0113】
[内因性ケメリン種の遮断は腹膜の炎症を悪化させる]
4時間または24時間のザイモサン負荷の1時間前に、中和ポリクローナル抗rmケメリン抗体(ChAb)またはコントロールIgGをi.pでマウスに注入することで、ケメリンおよびケメリン由来ペプチドの潜在的な内因性の役割を調べた。コントロールIgGではなくChAbが、インビトロで、C15およびケメリンに誘導されるMФ化学走性および抗炎症効果を阻害することができることが以前にわかっている(図8A−B)。インビボでは、内因性のケメリン種の中和によって、腹膜の好中球数の63%の上昇および4時間の時点でコントロールIgG処理マウスと比較して単球レベルの45%の増加およびザイモサン注入の24時間後において腹膜の好中球および単球レベルの170%および86%の増加がもたらされることがわかった(図8C−D)。24時間にわたる腹膜の炎症のこのような悪化は、インビボにおけるケメリン種の重要な内因性の抗炎症性の役割を示唆する。
【0114】
[ケメリン15−マウス単独は、好中球またはマクロファージのリクルートメントを誘導しないが、TNFαレベルを低下させる]
オスC57Bl6/Jマウス(8−12週)の腹膜内に、0.5mlのPBSまたは0.5mlのケメリン15−マウス(0.32ng/kg)を注入した。4時間後、投与群当たり3匹の動物を犠牲にし、腹腔を5mlのPBS−3mM EDTAで洗浄した。トリパンブルー排除試験を使用して、全細胞数を得た。細胞内組成(好中球対単核食細胞)の決定のために、細胞を、2.4G2抗FcgRII/IIImABで5分間ブロックし、PE複合抗マウスLy−6GおよびFITC複合抗マウス7/4mABで10分間染色した。CellQuestソフトウェアによるFACS分析の前に、1%ホルムアルデヒドで細胞を固定した。ゲートを2つの集団のまわりで構築した;好中球(N;7/4high、Ly−6Ghigh)および炎症性単球(Mo;7/4high、Ly−6Glow)。C15は、ケメリン15−マウスを意味する。PBS処理について、p<0.01 **。Nsは統計的有意差p>0.05がないことを意味する。
【0115】
図9の結果からわかるように、0.32ng/kgのC15mは、単球または好中球の遊走を引き起こさない。しかしながら、TNFαの顕著な減少が観察される。
【0116】
マウスにおける無菌の腹膜炎を研究するこのモデルは、実験医学および薬理学で広く使用されており、中程度の組織外傷または感染症により引き起こされる軽度の炎症を表す。結果は、C15mが治療的抗炎症効果を達成できることを示す。
【0117】
[改変ケメリン13−ヒトは、マウスマクロファージにおけるランテスおよびTNFαの転写発現を抑制する]
マウス腹膜マクロファージ(PMΘ)を、様々な条件下で培養した:未処理、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)で15時間、改変ケメリン13−ヒト(1nM)で1時間の前処理、その後LPS/IFNγで15時間。棒グラフは、qRT−PCRによって決定し、ハウスキーパー、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ、HPRTに対して標準化した、サイトカイン転写の平均発現を示す。実験は、それぞれの処理について三重の測定を行った(n=1つの独立した実験)。特記しないかぎり、LPS/IFNγ処理サンプルについてp<0.01 **; p<0.05 *。改変C13hペプチドの配列は、NH2−FHSFYFPGQFAFS−COOH(配列番号43)であり、この配列において、C13hにおけるN末端Pはアミノ酸Fと置換され、それ故、ペプチドは、改変C13hと言及される。
【0118】
図10の結果から見ることができるように、改変C13hは、TNFαおよびランテスの発現を著しく減少した。
【0119】
[ケメリン17−マウスはC140に誘導されるマクロファージ化学走性に影響しない]
BioGELビーズによる4日の腹膜刺激後に、PMΘをリクルートした。オスC57Bl6/Jマウスの腹腔を5mlのPBS−2mlのEDTAで洗浄した。細胞を遠心分離し、0.5%のBSAおよび25mMのHepesを添加したRPMIに再懸濁した。細胞(0.5×106)を、4時間にわたり、ボトムウェルにおいて、化学遊走物質(C140、C17mまたはC17m+C140)に向けて移動させた。フィルターを4%のホルマリンで固定し、その後、核をDAPIで染色して視覚化した。無血清培地はネガティブコントロール(−/−)として使用した。細胞は、化学走性アッセイの30分前に百日咳毒素(PTX)で前培養した。図11における棒グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEMを示す。棒はそれぞれ、少なくとも三重のウェルを表わし、1つの処理当たり少なくとも3つの写真を撮影した。特記しないかぎり、SFM処理ウェルについて、p<0.001 ***; p<0.01 ** ; p<0.05 *。
【0120】
図11の結果は、C17mとC140の共投与は、C140へのマクロファージ遊走に影響しないようであることを示す。
【0121】
[ケメリン15−マウスおよびケメリン17−マウスは、ザイモサンで刺激されたマウスマクロファージによるTNFα分泌を抑制する]
PMΘを様々な条件の下で培養した:未処理;ザイモサンで15時間;ケメリン(1pM)1時間の前処理+ザイモサンで15時間。棒グラフは、ELISA±SEMによって決定されるTNFαの平均発現を示す。実験は、それぞれの処理について三重の測定を行った。異なるドナーからの細胞を使用する3つの独立した実験からの代表的データを図12に示す。ザイモサン処理サンプルについて、p<0.001 ***; p<0.01 **。デキサはデキサメタゾン(1mM)を指し、ndは、検出下限値(0.25ng/ml)より下であることを指す。
【0122】
示されるように、C15m(1pM)およびC17m(1pM)の処理は、ザイモサン誘導性TNF発現を抑制した(C15m;21%、C17m;30%)。それ故、C15mおよびC17mは、細菌(LPS)および酵母(ザイモサンA)の両方によって誘導されるマクロファージ活性化を抑える。
【0123】
[チェッカーボード分析は、ケメリン140およびケメリン15−マウスはマクロファージ化学走性を誘導し、ケモキネシスを誘導しないことを実証する]
チェッカーボード分析は、化学走性とケモキネシスとの間の区別を可能にする。化学走性は、下部ウェルにおけるより高い濃度の化学遊走物質に向かう遊走によって示される。ケモキネシスは、非方向性の細胞運動の増大に関与し、濃度勾配の存在にかかわらず生じる。チェッカーボード分析は、C140(10−500pM)またはC15m(10−1000pM)で細胞をプレインキュベートし、それぞれ下部ウェルにおいて、それらをC140(10−1000pM)またはC15m(10−1000pM)の方へ移動させて濃度のチェッカーボードを形成することで行った。
【0124】
より具体的には、BioGELビーズによる4日の腹膜刺激後に、PMΘをリクルートした。オスC57Bl6/Jマウスの腹腔を5mlのPBS−2mlのEDTAで洗浄した。細胞を遠心分離し、0.5%のBSAおよび25mMのHepesを添加したRPMIに再懸濁した。細胞(0.5×106)を、化学走性アッセイの30分前にC140またはC15mでインキュベートし、その後、4時間にわたり、ボトムウェルで化学遊走物質に向けて移動させた。フィルターを4%のホルマリンで固定し、その後、核をDAPIで染色して視覚化した。無血清培地(SFM)をネガティブコントロール(−/−)として使用し、CCケモカインランテスを、ポジティブコントロール(25ng/ml)として使用した。図13における棒グラフは、それぞれの投与群の平均遊走指数±SEMを示す。棒はそれぞれに少なくとも三重のウェルを表わし、1つの処理当たり少なくとも3つの写真を撮影した。SFM処理ウェルについて、p<0.001 ***。
【0125】
ボイデンチャンバーの下部ウェルへの遊走は、より高い濃度の化学遊走物質がそこに置かれた場合にのみ生じ、フィルターの上部の側に置かれた場合に生じないため、C140およびC15mは、ケモキネシスではなく真の化学走性を誘発することがわかった。
【0126】
C15mは、マクロファージ化学走性C140のはるかに弱い誘導物であることが示される。
【0127】
[C15はザイモサンのマクロファージ食作用を誘導する]
マクロファージによるザイモサンのインビトロの認識のために、腹膜滲出細胞は、4日前にBiogelビーズ(2%w/v)で腹膜内を処理したマウスから、氷冷した2mM EDTAを含むPBSによる洗浄液によって単離した。マクロファージを、24ウェルプレートに、Optimem培地で1ウェル当たり2.5x105細胞の密度でプレーティングした。細胞を培地で3回洗浄したあと、認識アッセイにおいて、0.1pM、1pM、10pM、100pMまたは1nMのいずれかのケメリン15の存在下、10:1のマクロファージ/粒子比で、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識ザイモサン(Invitrogen)を添加した。ベヒクル=ケメリン15を含まないコントロールサンプル。FITC−ザイモサン取り込みを、FACS分析の後に行い、相対的認識指標、すなわち、ザイモサンを取り込む%細胞の比x幾何平均C15処理マクロファージ/ベヒクルで処理したマクロファージの幾何平均の比として表現する。
【0128】
図15の結果は、ケメリン15が、ザイモサンのマクロファージ食作用を誘導することを示す。マクロファージ食作用の誘導は、ケメリン15が10pMの濃度のときにもっとも大きい。これらの結果は、ケメリンペプチドが、アポトーシス性細胞、細胞残屑、病原体および病原体生成物のマクロファージ食作用を増加させることにより、創傷修復を促進する可能性があることを実証する。
【0129】
[考察]
複数のメディエータが、急性炎症の初期の事象を調整することが知られている。例えば、脂質由来エイコサノイド、サイトカインおよびケモカインは、血管変化および炎症細胞リクルートメントを調節する。TNFαおよびIL−1γを含むプロ炎症性サイトカインは、内皮細胞におけるシグナル経路を活性化し、接着分子発現のアップレギュレーションをもたらし、循環する白血球の捕獲を促進する。上に示された結果は、ケメリン140に由来するC末端ペプチドが、炎症反応のすべての成分を抑制できることを示す。結果は、さらに、ケメリン140に由来するC末端ペプチドが、ケモカインレベルを低下させ、内毒素ショックのための療法として使用できたことを示す。
【0130】
この研究の中で使用したペプチドは、すべてケメリン由来であり、非常に高い力価(10−12M)を示し、このことは、これらのメディエータが、補体由来ケモタキシン、C5a des−arg(10−12M)、ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP;10−11M)、ロイコトリエンB4(LTB4;10−11M)、TNFα(10−11M)、LPS(10−15M)およびIL−1(10−14M)のランクに加わることを確かなものとする。出願人は、10−11M−10−15Mで生理的な効果を示すことが実証された医薬を知らない。確かに、デキサメタゾンは、インビトロでミクロモルの範囲の濃度で一般に投与され、ザイモサン誘導性腹膜炎モデルにおいて、30μg/マウス(1.2mg/kg)で、単球および好中球流入の50%のダウンレギュレーションを達成する。ケメリン15−マウスは、単球および好中球リクルートメントを、30gのデキサメタゾンと同様の程度にダウンレギュレートした。ケメリン15−マウスは、8pg/マウスの用量(0.32ng/kg)で、この炎症のマウスモデルにおいて等価な抗炎症効果をもたらす。
【0131】
第2の化学走性アッセイは、マクロファージ活性化アッセイからの上清の走化性の可能性の定量を可能とし、培地の走化性の特性に対するケメリン介在ケモカイン抑制の効果の決定を可能にする。これらの結果の分析から、LPS/IFNγ単独と比較して、ケメリン+LPS/IFNγ処理マクロファージからの上清へのマクロファージ遊走の減少が明らかとなり、広範囲のマクロファージ化学遊走物質の一般的な抑制が示唆される。示された例は、C140と比較した、ケメリン由来抗炎症ペプチドの限られた現存しない化学遊走物質の特性を実証する。
【0132】
結論として、結果から、ケメリンのC末端ペプチドは、インビトロおよびインビボで、非常に強力な抗炎症特性を発揮することが示される。
【0133】
[材料および方法]
[動物]
全ての動物実験は、局所的な倫理承認および英国内務省規則に基づいて行った(Guidance on the Operation of Animals, Scientific Procedures Act, 1986)。
【0134】
[抗体および試薬]
抗ヒトケメリン、抗マウスケメリンAB、hケメリン137(配列番号31、組み換えGlu21−Ser157としてRandDから入手可能)、mケメリン140(配列番号34)、抗mランテス捕獲AB、抗mランテス検出AB、mランテス、mTNFα、抗mTNFα捕獲AB、抗mTNFα検出ABは、R&D Systemsから購入した。ケメリンペプチド(C11m、C13m、C13h、C15m、C17m)は、生合成によって合成した(www.biosyn.com)。デキサメタゾン、リポ多糖類(E.coli)、ロイペプチンはSigma Aldrichから入手した。インターフェロンガンマ(IFNγ)はPeprotechから購入した。OPD錠剤はDakocytomataから入手し、ストレプトアビジン−HRPおよびStrepAv−HRP希釈緩衝液はEndogenから購入した。Luminex6−plexキット(IL−12 p40、IL−1β、IL−6、MCP−1、TNFα、IL−10)はBio−radから提供され、Bio−radバイオアナライザーおよびXソフトウェアを使用して分析した。
【0135】
[マクロファージ活性化の阻害−マクロファージ活性化アッセイ]
無菌のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1mlの2%のBioGELポリアクリルアミドビーズを、C57Bl/6Jマウスの腹膜内に(ip)注入した。BioGELのip投与の4日後、マウスを、内務省ガイドラインに従うCO2方法によって犠牲にした。腹腔を10mlの無菌のPBS−2mM EDTAで洗浄し、BioGELに誘起/誘発された細胞浸潤物を採取した。収集した細胞の懸濁液を、4℃、1000xgで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、2mMグルタミン、50ユニット/mlペニシリンおよび50μg/mlストレプトマイシンを添加した6mlのOptiMEM培地に懸濁した。マクロファージは、チュルク液による5−10分間の氷上でのインキュベートの後、血球計算器を使用して定量した。細胞懸濁液(2ml;1.5x106/ウェル)を、6ウェル組織培養プレート(直径35mm:Costar,UK)にプレーティングし、37℃で2時間、5%のCO2を含む加湿した大気中で接着させ、接着によりマクロファージ集団を単離した。これは、サイトスピン、メチレンブルーおよびエオシンによる細胞の染色および細胞形態学に基づく計測によって評価すると、95%を超える純度を与えた。非付着細胞(主として顆粒細胞)を破棄し、ウェルを無菌PBSで3回洗浄して、弱く付着している細胞または死細胞を除去した。マクロファージ活性化の潜在的な抑制を評価し、それによって、プロ炎症性メディエータの発現の減少を評価するために、マクロファージ(1.5x106細胞/ウェル)を、ケメリンペプチド(C11m、C13m、C15m、C17m;10−12−10−8M)またはポジティブコントロール(デキサメタゾン;1μM)と共に1時間プレインキュベートし、その後、LPS(100ng/ml)およびIFNγ(20ng/ml)を15時間負荷した。タンパク質分解におけるPTX感受性および依存性を決定するために、細胞を、PTX(200ng/ml)またはロイペプチン(15μg/ml)と共にプレインキュベートした。付加的な細胞をペプチド単独で処理した。上清を採集し、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびLuminexアッセイで使用するまで−20℃で保存した。細胞を溶解し、TRIZOL法により全RNAの抽出を行った。ライセートを、説明書に従うRNA抽出(Qiagen、RNeasyミニプレップキット)まで−80℃で保存した。
【0136】
[ELISAおよびLuminexによる、分泌されたタンパク質の検出]
ランテス、腫瘍壊死因子(TNFα)およびCCL9の細胞上清中の濃度をELISAで評価した。IL−12 p40、IL−10、IL−1β、TNFα、MCP−1(単球化学遊走物質タンパク質−1)およびIL−6レベルを、Luminexマルチプレックスビーズアッセイ(Bio−rad6プレックスアッセイ)で決定した。ELISAの検出下限値は、0.1−0.5ng/mlであり、Luminexアッセイでは、10−50pg/mlであった。
【0137】
[RNA作製およびRT−PCR]
Qiagen RNeasyキットを使用して全RNAを抽出し、逆転写し、Sybr−Green法を用いてqRT−PCRに供した。データは2−ΔΔCT法を使用して分析した(Livak, K.J. & Schmittgen T.D. (2001), Methods 25:402-408)。
【0138】
[化学走性アッセイ]
細胞遊走はトランスウェル膜(ChemoTX、直径6mm、孔径8μm)を使用して評価した。簡潔には、BioGELに誘発された細胞を採取し、25mMのHepesおよび0.1%のウシ血清アルブミンを添加したRPMIを用いて、トランスウェル膜にプレーティングした(250,000細胞/膜)。細胞を、ケメリンペプチド(1pM−100nM)に向けて4時間移動させた。細胞をトランスウェル膜に置く前に、百日咳毒素(PTX、200ng/ml、Sigma−Aldrich)で30分間細胞をプレインキュベートすることで、Gタンパク質共役受容体を介した信号伝達を遮断した。膜の下側に移動した細胞を固定し(3%ホルムアルデヒド)、DAPIで染色した。共焦点顕微鏡下、遊走を、DAPI染色した核のピクセル数の合計として定量した(1つの処理当たり、2つの写真/膜および最小で3つの複製ウェル)。画像はMetamorphオフラインソフトウェアを使用して分析し、移動した細胞によって占領されたパーセンテージしきい領域(TA)を決定した。遊走の指標を、無血清培地TAで処理TAを割ることにより得た。第二の化学走性アッセイのために、ChemoTx(3mmの直径、8μm孔)の膜を、50,000細胞/膜で使用した。
【0139】
[マウス腹膜炎]
C57BL6/Jマウスに、500μのケメリン15−マウス(0.32ng/kg)またはベヒクル単独(無菌PBS)をi.p.で投与し、その1時間後、10μgザイモサンAを500μlでi.p.投与した。4時間後、人道的に犠牲にした後に、5mlの無菌PBS−3mM EDTAを用いて腹膜洗浄することで、腹膜滲出を採集した。無細胞洗浄液をELISAでの使用のために取得し、滲出細胞を、後述する分析のために準備した。
【0140】
[鑑別血球計算およびFACS分析]
C57BL6/Jマウスに、500μlのケメリン15(0.32ng/kg)またはベヒクル(PBS)をi.p.投与し、その1時間後、10μgザイモサンAを500μlでi.p.投与した。2時間、4時間、8時間、16時間、24時間および48時間後、人道的に犠牲にした。洗浄細胞の一部を、全数および鑑別血球計算の測定のために準備した。細胞内組成(PMN対単核細胞)の決定のために、細胞を抗マウス2.42G FcμII/III(0.5μg/0.1x106細胞)で10分間ブロックし、FITC複合抗マウス7/4およびPE複合抗マウスLy−6G(0.5μg/0.5x106細胞;クローンrmC5−3およびRB6−8C5、それぞれBD Pharmingenから入手)で染色した(10分)。細胞を、CellQuestソフトウェアを使用して、FACSCaliburフロー血球計上で分析した。それぞれのサンプルのために、最低10,000の事象を得た。ゲートを3つの集団のまわりで構築した:好中球(7/4high、Ly−6Ghigh)、単球(7/4high、Ly−6Glow)および常在性マクロファージ(7/4low、Ly−6Glow)。それぞれの集団における事象の合計のパーセンテージを測定した。さらに、ELISAおよびLuminexアッセイで使用するために、無細胞洗浄液を回収した。
【0141】
[統計]
スチューデントのt−検定および一元配置ANOVAを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して行った。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項2】
内毒素ショックの治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項3】
1以上の炎症性メディエータのレベルを減少させるための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項4】
対象における炎症を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項5】
対象における内毒素ショックを治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項6】
対象における1以上の炎症性メディエータのレベルを減少する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項7】
前記1以上の炎症性メディエータが、TNFα、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−12、G−CSF、MCP−2(CCL8)、GROα(CXCL1)、GROβ(CXCL2)、IL−8(CXCL8)、TECK(CCL25)、MCP−1(CCL2)、インターフェロンγおよびランテス(CCL5)を含む群から選択される、請求項3に記載の使用または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
創傷の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項9】
対象における創傷を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項10】
前記医薬が、治療的および/または予防的および/または美容的用途のためのものである請求項1、2、3、7または8に記載の使用、または、前記治療が、治療的および/または予防的および/または美容的である請求項4、5、6、7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチドが約5から約30の間のアミノ酸である、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項12】
前記ペプチドが、ケメリンタンパク質のC末端に由来する約5から約30の間のアミノ酸またはそのアナログもしくは誘導体を含む、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項13】
前記ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドは、天然のケメリンタンパク質のC末端と少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項14】
前記ペプチドは、配列番号31(ヒト配列)または配列番号34(マウス配列)によるケメリンタンパク質の最後の5から最後の30の間のアミノ酸と、少なくとも30%の配列同一性を有する、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項15】
前記アナログまたは誘導体が、天然の配列を有するペプチドの少なくとも約50%の抗炎症活性、および/または抗内毒素ショック活性、および/または炎症性メディエータのレベルを低減する活性を有する、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項16】
1以上の前記ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30の配列を有する、または、それらのアナログまたは誘導体である、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法;または
1以上の前記ペプチドが、配列番号37および38の配列を有する、または、それらのアナログまたは誘導体である、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項17】
前記ペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の1以上のペプチドと、少なくとも30%の配列同一性を有する、請求項16に記載の使用または方法;または、
前記ペプチドは、配列番号37または38の1以上のペプチドと少なくとも30%の配列同一性を有する、請求項16に記載の使用または方法。
【請求項18】
ペプチドアナログまたは誘導体が、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドの小分子擬態物を含む、請求項1から15の何れか1項に記載の使用または方法。
【請求項19】
前記ペプチド、またはそのアナログもしくは誘導体が、約10pg/kgから約1mg/kgの間の用量の投与が意図される、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項20】
前記ペプチド、またはそのアナログもしくは誘導体が、約10pg/kgから約100ng/kgの間の用量の投与が意図される、請求項19に記載の使用または方法。
【請求項21】
ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した医療装置。
【請求項22】
ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した創傷包帯または絆創膏。
【請求項23】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチド、および医薬的に許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物;または
配列番号37および38の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチド、および医薬的に許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
炎症の治療および/または予防、および/または内毒素ショックの治療および/または予防のための、および/または1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のための、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
創傷の治療のための請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体;または
配列番号37または38の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体。
【請求項27】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチド;または
配列番号37または38の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチド。
【請求項28】
炎症の治療および/または予防、および/または内毒素ショックの治療および/または予防における使用のための、および/またはサイトカインおよびケモカインといった1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のための、;または創傷の治療のための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体。
【請求項1】
炎症の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項2】
内毒素ショックの治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項3】
1以上の炎症性メディエータのレベルを減少させるための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項4】
対象における炎症を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項5】
対象における内毒素ショックを治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項6】
対象における1以上の炎症性メディエータのレベルを減少する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項7】
前記1以上の炎症性メディエータが、TNFα、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−12、G−CSF、MCP−2(CCL8)、GROα(CXCL1)、GROβ(CXCL2)、IL−8(CXCL8)、TECK(CCL25)、MCP−1(CCL2)、インターフェロンγおよびランテス(CCL5)を含む群から選択される、請求項3に記載の使用または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
創傷の治療のための医薬の製造における、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体の使用。
【請求項9】
対象における創傷を治療、予防または回復する方法であって、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項10】
前記医薬が、治療的および/または予防的および/または美容的用途のためのものである請求項1、2、3、7または8に記載の使用、または、前記治療が、治療的および/または予防的および/または美容的である請求項4、5、6、7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチドが約5から約30の間のアミノ酸である、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項12】
前記ペプチドが、ケメリンタンパク質のC末端に由来する約5から約30の間のアミノ酸またはそのアナログもしくは誘導体を含む、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項13】
前記ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドは、天然のケメリンタンパク質のC末端と少なくとも30%またはそれ以上の配列同一性を有する、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項14】
前記ペプチドは、配列番号31(ヒト配列)または配列番号34(マウス配列)によるケメリンタンパク質の最後の5から最後の30の間のアミノ酸と、少なくとも30%の配列同一性を有する、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項15】
前記アナログまたは誘導体が、天然の配列を有するペプチドの少なくとも約50%の抗炎症活性、および/または抗内毒素ショック活性、および/または炎症性メディエータのレベルを低減する活性を有する、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項16】
1以上の前記ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30の配列を有する、または、それらのアナログまたは誘導体である、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法;または
1以上の前記ペプチドが、配列番号37および38の配列を有する、または、それらのアナログまたは誘導体である、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項17】
前記ペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の1以上のペプチドと、少なくとも30%の配列同一性を有する、請求項16に記載の使用または方法;または、
前記ペプチドは、配列番号37または38の1以上のペプチドと少なくとも30%の配列同一性を有する、請求項16に記載の使用または方法。
【請求項18】
ペプチドアナログまたは誘導体が、ケメリンタンパク質のC末端に由来するペプチドの小分子擬態物を含む、請求項1から15の何れか1項に記載の使用または方法。
【請求項19】
前記ペプチド、またはそのアナログもしくは誘導体が、約10pg/kgから約1mg/kgの間の用量の投与が意図される、前述の何れかの請求項に記載の使用または方法。
【請求項20】
前記ペプチド、またはそのアナログもしくは誘導体が、約10pg/kgから約100ng/kgの間の用量の投与が意図される、請求項19に記載の使用または方法。
【請求項21】
ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した医療装置。
【請求項22】
ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体が浸透した創傷包帯または絆創膏。
【請求項23】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチド、および医薬的に許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物;または
配列番号37および38の配列を有するペプチドならびにそれらのアナログまたは誘導体を含む群から選択される1以上のペプチド、および医薬的に許容可能な希釈剤、担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
炎症の治療および/または予防、および/または内毒素ショックの治療および/または予防のための、および/または1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のための、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
創傷の治療のための請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体;または
配列番号37または38の配列を有するペプチドまたはそれらのアナログもしくは誘導体。
【請求項27】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチド;または
配列番号37または38の配列を有するペプチドに対して少なくとも50%の配列同一性を有するペプチド。
【請求項28】
炎症の治療および/または予防、および/または内毒素ショックの治療および/または予防における使用のための、および/またはサイトカインおよびケモカインといった1以上の炎症性メディエータのレベルの減少のための、;または創傷の治療のための、ケメリンタンパク質のC末端に由来する1以上のペプチドまたはそのアナログもしくは誘導体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−522228(P2010−522228A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500351(P2010−500351)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001020
【国際公開番号】WO2008/114037
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(503361318)イシス イノベイション リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001020
【国際公開番号】WO2008/114037
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(503361318)イシス イノベイション リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]