説明

炎症性ヒトTh17細胞の増殖および機能を決定的に調節するICOS

本発明は、治療用Th17細胞を生成および増殖させるための組成物および方法を含む。本発明は、T細胞を、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質とT細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質とを含む組成物と、Th-17偏向物質の存在下で接触させる段階を含む。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
CD4+ T細胞は、病原体に対する免疫、アレルギー反応、喘息、および自己組織または腫瘍組織に対する免疫を調節する上で重要である(Zhu et al., 2010 Annu. Rev. Immunol. 28:445-489;Muranski et al., 2009 N. P. Restifo, Curr. Opin. Immunol. 21:200-208;Zhu et al., 2008 Blood 112:1557-1569)。存在する微小環境因子(microenvironmental cue)に応じて、ナイーブCD4+ T細胞は、TH1、TH2、Th17、TH22および調節T(Treg)細胞を含むいくつかのTヘルパー(TH)細胞系列の1つに分化する(O'Shea et al., 2010 Science 327:1098-1102;Murphy et al., 2010 Nat. Immunol. 11:674-680)。TH1細胞およびTH2細胞はそれぞれ、T-betおよびGATA-3を発現するエフェクター細胞である(Zhu et al., 2010 Annu. Rev. Immunol. 28:445-489)。対照的に、Treg細胞はエフェクターT細胞の機能を抑制し、自己免疫応答の調節のために必須であり(Tang et al., 2006 Immunol. Rev. 212:217-237)、最近記述されたTH22細胞はインターロイキン-22(IL-22)を分泌し、炎症の原因になる皮膚ホーミング細胞のサブセットである可能性があり(Duhen et al., 2009 Nat. Immunol. 10:857-863;Trifari et al., 2009 Nat. Immunol. 10:864-871)、Th17細胞は宿主防御を増強し、粘膜免疫に大きな役割を果たし、数多くの自己免疫疾患を強めるとともに、IL-17AおよびIL-17Fを含むサイトカインを放出する(Korn et al., 2009 Annu. Rev. Immunol. 27:485-517)。腫瘍免疫に対するTh17細胞の寄与はさまざまであり、抗腫瘍形成活性および腫瘍形成促進活性の両方の潜在能力があることを示している(Zou et al., 2010 Nat. Rev. Immunol. 10:248-256)。このため、腫瘍免疫を理解するためには、Th17応答を制御する機序の同定が不可欠である。ヒトTh17細胞の発生におけるサイトカイン(例えば、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、IL-6、IL-1b、IL-21およびIL-23)および転写因子(RORC2およびRORa)の機能は、TH1およびTH2エフェクター細胞の場合とは明確に異なる(Zhou et al., 2009 Curr, Opin. Immunol. 21:146-152;Manel et al., 2008 Nat. Immunol. 9:641-649;Yang et al., 2008 Nature 454:350-352;Volpe et al, 2008 Nat. Immunol. 9:650-657)。さらに、芳香族炭化水素受容体(AHR)の天然アゴニストも、マウスTh17細胞の分化を増強する(Veldhoen et al., 2009 J. Exp. Med. 206:43-49)。しかし、Th17の生成および安定性に影響を与える可能性のある具体的な補助刺激経路はまだ解明されていない。
【0002】
Tリンパ球の活性化、分化および機能のためには、抗原提示細胞(APC)からの抗原特異的および抗原非特異的な補助刺激シグナルが必要である(Greenwald et al., 2005 Annu. Rev. Immunol. 23:515-548)。CD28はその初期発現が理由で、CD4+ T細胞上の主要な補助シグナル伝達分子であると考えられており、IL-17を産生するリンパ球を生成させるためにしばしば用いられる(Manel et al., 2008 Nat. Immunol. 9:641-649;Yang et al., 2008 Nature 454:350-352;Volpe et al., 2008 Nat. Immunol. 9:650-657;Acosta-Rodriguez et al., 2007 Nat. Immunol. 8:942-949;Acosta-Rodriguez et al., 2007 Nat. Immunol. 8:639-646;Wilson et al., 2007 Nat. Immunol. 8:950-957)。しかし、最適なサイトカイン分泌のためには、CD28のほかに、誘導性補助刺激物質(ICOS、CD278とも呼ばれる)を介するシグナル伝達も、マウスTh17細胞による最適なIL-17A分泌のために両方の分子が必須であることからみて、必要である(Park et al., 2005 Nat. Immunol. 6:1133-1141)。マウスモデルにおける最近の知見により、ICOSが転写因子c-MAFの発現を誘導することによってTh17応答を増幅し、その結果、IL-21産生をトランス活性化することが明らかになっている(Bauquet et al., 2009 Nat. Immunol. 10:167-175)。
【0003】
CD28およびICOSはいずれもマウスTh17細胞の生成のために重要であるが、ヒトTh17細胞における鍵となる遺伝子を調節する上でのそれらの具体的な役割はまだ特定されていない。本発明は、当技術分野におけるこの要求に応える。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質および前記T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質を含む組成物を提供する。
【0005】
1つの態様において、組成物は固相表面を含む。別の態様において、組成物はヒト細胞株である。さらに別の態様において、ヒト細胞株は、K562細胞、U937細胞、721.221細胞、T2細胞およびC1R細胞からなる群より選択される。
【0006】
1つの態様において、細胞は、ヒトFcγ受容体を発現するように遺伝的に改変されている。別の態様において、Fcγ受容体は、CD32、CD64およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0007】
1つの態様において、第1の作用物質は、CD3、またはTCR/CD3複合体の構成要素と結合する。別の態様において、第2の作用物質は抗ICOS抗体またはICOS-Lである。
【0008】
別の態様において、細胞は、前記第2の作用物質を発現するように、さらに遺伝的に改変されている。別の態様において、細胞は、サイトカインを発現するようにさらに改変されている。さらに別の態様において、サイトカインは、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-23およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0009】
別の態様において、細胞は、Th17分化過程に干渉するサイトカインを阻害する阻害分子を発現するようにさらに改変されている。好ましくは、Th17分化過程に干渉するサイトカインは、IFNγ、IL-4およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0010】
本発明はまた、T細胞の集団を活性化または刺激するための方法も含む。本方法は以下の段階を含む:1)その少なくとも一部分がT細胞を含む、細胞の集団を提供する段階;2)細胞の集団を、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質および前記T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質を含む組成物と接触させる段階。
【0011】
1つの態様において、細胞の集団と、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質およびT細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質を含む組成物との接触は、Th-17偏向物質(polarizing agent)の存在下においてである。
【0012】
1つの態様において、Th-17偏向物質は、IL-1β、IL-6、中和性抗IFNγ、抗IL-4およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0013】
1つの態様において、T細胞はCD4+ T細胞である。
【0014】
別の態様において、T細胞は臍帯T細胞である。
【0015】
別の態様において、T細胞は末梢T細胞である。
【0016】
1つの態様において、T細胞は、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回または8回の刺激後に、CD28で補助刺激した細胞と比較して、より増大したレベルのIL-17A、IL-17FおよびCCL20を分泌する。
【0017】
1つの態様において、T細胞は、CD28補助刺激と比較して、より高いレベルのIFNγ、TNFαおよびIL-21を分泌する。
【0018】
別の態様においては、T細胞を抗原と接触させる。1つの態様において、抗原は腫瘍抗原である。
【0019】
本発明は、ICOSで刺激したT細胞をそれを必要とする患者に投与する段階を含む、免疫療法の方法を含む。1つの態様において、ICOSで刺激したT細胞は、Th-17偏向物質の存在下で、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質およびT細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質との接触を受けている。
【0020】
1つの態様において、Th-17偏向物質は、IL-1β、IL-6、中和性抗IFNγ、抗IL-4およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0021】
1つの態様において、第1の作用物質は、CD3、またはTCR/CD3複合体の構成要素と結合する。別の態様において、第2の作用物質は抗ICOS抗体またはICOS-Lである。
【0022】
1つの態様において、Th17は抗原との接触を受けている。
【0023】
本発明はまた、抗腫瘍活性を呈する、培養して増殖させたTh17細胞の集団であって、抗腫瘍活性が長期にわたって保たれ、細胞が哺乳動物における有効な治療法のために十分な数に増殖されている集団も提供する。
【0024】
本発明はまた、哺乳動物におけるTh17細胞の調節方法も提供する。本方法は、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質および前記T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質を含む組成物の有効量を哺乳動物に投与する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明を実例で説明するために、本発明のある特定の態様を図面として描写する。しかし、本発明は、図面中に描写された態様の厳密な配置および手段には限定されない。
【図1】図1A〜1Cで構成される図1は、ヒトCD4+ T細胞サブセット上でのICOSおよびCD28の発現および機能の差異を描写している一連の画像である。図1Aは、補助刺激分子ICOSおよびCD28の発現を、CXCR3+CCR4-CCR6+ TH1細胞、CCR4+CXCR3-CCR6- TH2細胞、CCR4+CCR6+ Th17細胞、CD25+CD127loFoxP3+ Treg細胞およびCXCR5+CD45RO+ TFH細胞からなる休止ヒト末梢血CD4+ T細胞サブセット上で評価したことを明示している画像である。図1Bは、数人の健常ドナー(n=7)由来の種々のサブセット上でのICOSおよびCD28のフローサイトメトリー定量を描写している画像である。水平バーは平均を指し示している;ns=有意差なし。図1Cは、CD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体によって活性化したさまざまな分取細胞から分泌され、第3日にELISAによって測定した、サイトカインIL-2(i)、IL-4(ii)、IFN-γ(iii)、IL-10(iv)、IL-22(v)、IL-17A(vi)、IL-17F(vii)、CCL20(viii)およびIL-21(ix)を描写している画像である。統計量は、ANOVA Scheffe検定による多重比較用に補正した。TFH=濾胞ヘルパーT。
【図2】図2A〜2Gで構成される図2は、ICOSがヒトTh17細胞によるサイトカイン産生を増強することを明示している一連の画像を示している。図2Aは、Th17偏向条件(Th17分化を誘導するために必要なサイトカインであるTGF-βを含む血清中のIL-6、IL-1b、IL-23、中和性IFN-γおよび中和性IL-4抗体)を用いてTh17表現型に分化させて、CD86、CD80、CD70、ICOSL、OX40Lもしくは4-1BBLを発現するaAPC、またはCD3およびCD28に対する抗体を担持するビーズのいずれかによって活性化した末梢血CD4+ T細胞によるIL-17F産生を、第3日にELISAによって評価したことを示している画像である。図2Bは、Th17偏向条件を用いるかまたは用いずに培養して、ICOSLを発現するように操作したaAPC、またはCD3/ICOSに対する抗体を担持するビーズによって活性化した末梢血CD4+ T細胞によるIL-17F産生を第3日に評価したことを明示している画像である。図2C〜2Gは、CD3、CD28および/またはICOSに対する抗体を担持するビーズによって活性化したTh17偏向性CD4+ T細胞による(C)IL-17F、(D)IL-17A、(E)IL-2、(F)IL-22および(G)IL-10の分泌または発現の、ELISAまたは逆転写PCR(RT-PCR)を用いた第3日での測定を描写している。
【図3】図3A〜3Gで構成される図3は、ICOSがヒトTh17細胞の増殖のために決定的に重要であることを明示している一連の画像である。図3Aおよび3Bは、Th17偏向条件下で培養して、CD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体によって活性化した末梢血CD4+ T細胞のフローサイトメトリーによって経時的に評価したCCR4+CCR6+CD4+ T細胞の頻度および絶対数をそれぞれ描写している。図3Cは、これらの細胞上でのCD27およびCD62Lの発現を、第10日にフローサイトメトリーによって測定したことを明示している画像である。図3Dは、表記の日に、CD28またはICOSと係合させたTh17偏向性CD4+ T細胞をPMA-イオノマイシンで刺激して、IL-17AおよびIFN-γを分泌する細胞の頻度をフローサイトメトリーを介して評価したことを明示している。図3Eは、IL-17Aおよび/またはIFN-γを共産生する、CD28またはICOSと係合させたTh17偏向性細胞の頻度を、異なる数人の正常ドナー(n=8)におけるそれらの初代増殖(第9日〜第14日の範囲)の終了時に判定したことを明示している画像である。図3Fおよび3Gは、第3日および第10日にRT-PCRを用いて測定した、これらの処理細胞におけるRORC2およびT-betの発現をそれぞれ明示している。
【図4】図4A〜4Fで構成される図4は、ICOSがナイーブUCB CD4+ T細胞からの急速なTh17細胞分化を生じさせることを明示している一連の画像である。図4A〜4Cは、UCB CD45RA+CD25-CD4+ T細胞をTh17偏向条件を用いて培養して、CD3/CD28、CD3/ICOSまたはCD3/CD28/ICOSビーズに対する抗体によって増殖させたことを明示している一連の画像である。第3日以後に、IL-2(50 IU/ml)を培養物に添加した。培養物をPMA-イオノマイシン(IONO)で刺激して、IL-17A、IFN-γ、IL-2およびTNF-αの細胞内発現ならびにIL-23RおよびCD161の細胞外発現を第11日に評価した。図4A〜図4Cからの細胞を、CD28および/またはICOSに対する抗体を担持するCD3結合ビーズに対する抗体によって再活性化した。図4D〜4Fは、培養物をPMA-イオノマイシンで再刺激して、IL-17A、IFN-γ、IL-2およびTNF-αの細胞内発現ならびにIL-23RおよびCD161の細胞外発現を第18日に評価したことを明示している。
【図5】図5A〜5Lで構成される図5は、CD28およびICOSがUCB Th17細胞におけるc-MAF、RORC2およびT-betの発現を異なるように調節することを明示している一連の画像である。UCB CD4+ T細胞をTh17偏向条件下で培養して、CD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体によって増殖させた。IL-2(50 IU/ml)を第3日に添加した。図5Aおよび5Bは、第5日に、CD28またはICOSで刺激した細胞におけるc-MAFおよびIL-21のmRNA発現をRT-PCRによって測定したことを明示している。図5Cは、第5日に、外因性IL-21およびIL-2中和とともに培養したCD28刺激細胞におけるIL-17F産生をELISAによって測定したことを明示している。図5D〜5Lは、表記の日に、CD28またはICOSで刺激した細胞におけるRORC2、T-bet、FoxP3、AHR、IL-22、IL-10およびIL-17Aの産生をフローサイトメトリーおよびRT-PCRによって測定したことを明示している。
【図6】図6A〜6Eで構成される図6は、ヒトTh17細胞がICOS+CD161+CD4+ T細胞前駆細胞から生じることを明示している一連の画像である。図6Aは、UCB由来のICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞上でのCD45RA、CD31、CD127、CD62LおよびCD27の発現をフローサイトメトリーを介して評価したことを明示している。図6Bは、Th17偏向条件を用いて培養して、CD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体によって増殖させた、分取したICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞によるIL-17F、CCL20、IFN-γ、IL-4、IL-22およびIL-10の分泌を、第4日にELISAによって評価したことを明示している画像である。図6Cは、Th17偏向条件を用いて培養して、CD3/CD28またはCD3/ICOSをコーティングしたビーズに対する抗体によって増殖させたCD161+細胞の頻度および絶対数を、第4日または表記の日にそれぞれ判定したことを描写している画像である。図6Dは、Th17偏向条件を用いて培養して、CD3/CD28またはCD3/ICOSをコーティングしたビーズに対する抗体によって増殖させた分取ICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞における、第7日にRT-PCRによって評価したRORC2、IL-23R、AHRおよびFoxP3 mRNAの発現を描写している画像である。図6Eは、培地のみの中で、またはTH1、TH2、Th17およびTregの偏向条件下で培養して、CD3/CD28またはCD3/ICOSをコーティングしたビーズに対する抗体によって増殖させたICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞を、続いて第7日にPMA-イオノマイシンで刺激して、IL-17A分泌をフローサイトメトリーによって評価したことを明示している画像である。
【図7】図7A〜7Fで構成される図7は、ICOSがT細胞媒介性腫瘍免疫を増強することを明示している一連の画像である。概略的に示しているように、ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞をCD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体によって再刺激し、Th17偏向条件を用いるかまたは用いずに培養した。1日後に、ビーズで活性化したT細胞を、メソテリンと結合するCARによって遺伝的に方向転換させた。それらの初代増殖後に、遺伝的に方向変換させた細胞(2回の投与、合計8×106個)を、あらかじめ61日間かけて成立させた大きなヒトメソテリン(M108)腫瘍を担持するマウスに注入した(n=各群当たりマウス8匹)。図7A〜7Dは、Th17偏向条件を用いるかまたは用いずにICOSまたはCD28シグナルを用いて増殖させた、遺伝的に方向変換させた細胞を注入したマウスにおいて、腫瘍成長を測定したことを明示している。腫瘍成長を、線形混合効果モデルを用い、保存的Bonferroni補正アプローチを適用することによって分析した(平均±SEM)。図7Eは、方向変換させたT細胞をマウス脾臓から(第43日に)単離して、メソテリンを担持する照射aAPCとともに培養したことを明示している。IL-17AおよびIFN-γの分泌を24時間後にフローサイトメトリーによって分析した。図7Fは、血液中および脾臓内のCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の絶対数をそれぞれ第21日および第43日に判定したことを示している。
【図8】図8は、UCB CD45RA+CD25-CD4+ T細胞がCD161+IL-23R+細胞をほとんど含まないことを明示している画像である。ヒト臍帯血細胞に関して、CD45RA+CD25-CD4+ T細胞上でのCD161およびIL-23R表面マーカーの発現を、フローサイトメトリーを用いて評価した。
【図9】図9は、ICOSがc-MAFおよびIL-21を誘導することを明示している画像である。PB CD4+ T細胞をTh17偏向条件下(IL-1β、IL-6、IL-23に加えて、中和性抗IFN-γおよび抗IL-4)で培養して、抗CD28抗体または抗ICOS抗体のいずれかを担持する抗CD3ビーズによって活性化した。それらの初代増殖、それらのc-MAFおよびIL-21 mRNA発現レベルをRT-PCRによって評価した。
【図10】図10は、CD28が芳香族炭化水素受容体の発現を誘導することを明示している画像である。PB CD4+ T細胞をTh17表現型に向けてプログラム化して、抗CD28抗体または抗ICOS抗体のいずれかを担持する抗CD3ビーズによって活性化した。それらの初代増殖後に、それらのAHR mRNA発現レベルをβ-アクチンと対比してRT-PCRによって評価した。
【図11】図11は、外因性TGF-βがヒトTH 17細胞の炎症能力を増強することを明示している画像である。PB CD4+ T細胞をTH 17表現型に向けてプログラム化して、血清を含む培地中で抗CD28抗体または2つの抗ICOS抗体のいずれかを担持する抗CD3ビーズによって活性化して、表記の添加用TGF-β(0.1〜10ng/ml)を第1日に培養物に添加した。細胞によるIL-17A分泌を、活性化後の第5日にELISAによって測定した。
【図12】図12は、UCB由来のICOS+CD161+CD4+ T細胞がRORC2およびIL23Rを構成的に発現することを明示している画像である。CD4+ T細胞、ICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞を分取して、それらのRORC2およびIL-23RのmRNA発現レベルを、β-アクチンと対比してRT-PCRによって測定した。
【図13】図13A〜13Dで構成される図13は、ICOS+CD161+CD4+ T細胞がTh17細胞としてインプリントされることを明示している一連の画像である。UCB由来のCD4+ T細胞およびICOS+CD161+CD4+ T細胞を分取して、表記の通りのさまざまな偏向条件下で培養した。抗CD28抗体または抗ICOS抗体を担持する抗CD3ビーズを用いたそれらの初代増殖後に、IFN-γ+(図13A)、IL-4+(図13B)、IL-17A+(図13C)またはFoxP3+(図13D)細胞の頻度を測定した。対照として、バルクUCB CD4 T細胞の随伴対照培養物を抗CD3/CD28ビーズで再刺激した。PMA/イオノマイシンによる刺激後の培養第7日に、サイトカインおよびFoxP3をフローサイトメトリーまたはELISAによって測定した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、所望のT細胞をインビトロまたはインビボで増殖させるため、特定のT細胞サブセットを活性化および/または増殖させるため、特定のT細胞サブセットの増殖を促進しうる刺激分子、補助刺激分子およびそれらの組み合わせを同定するための組成物ならびにそれらを用いるための方法、さらにはT細胞の増殖および刺激に関係する数多くの治療的用途を提供する。好ましくは、T細胞はTh17である。
【0027】
本発明は、ヒトTh17細胞の増殖および機能は、それらがCD28またはICOSの補助刺激を受けるか否かに応じて著しく異なるという発見に基づく。本明細書において提示する本開示は、ICOS補助刺激が末梢Th17細胞の生育を特異的に促進するとともにその機能を増強することを実証している。対照的に、CD28補助刺激はICOSの効果を無効化する。本明細書において提示する結果は、ヒト臍帯血由来のナイーブ前駆細胞の、Th17偏向物質の存在下におけるICOSによる補助刺激が、増大したレベルのIL-17A、IL-17FおよびCCL20を分泌するそれらの能力によって指し示されるように、Th17細胞の生成および増殖を補助することを実証している。ICOS補助刺激は、Th17に関連したサイトカインを産生するようにTh17細胞を賦活しうるだけでなく、CD28補助刺激と比較してIFNγ、TNFαおよびIL-21の分泌も賦活させることができる。
【0028】
1つの態様において、T細胞に対するICOS補助刺激は、T細胞を、T細胞上のICOSを活性化しうる分子を含む人工抗原提示細胞(aAPC)と接触させることによって達成することができる。
【0029】
別の態様において、T細胞上のICOSを活性化しうる分子を含むaAPCを、Th17分化を促進するサイトカインを含むようにさらに操作することができる。そのようなTh17分化性サイトカインには、IL-2、IL-6およびIL-1が非限定的に含まれる。
【0030】
さらに別の態様において、T細胞上のICOSを活性化しうる分子を含むaAPCを、Th17分化過程に干渉するサイトカインを阻止しうる阻害分子をも含むように操作することもできる。例えば、Th17分化に干渉するサイトカインを阻害しうる中和抗体を分泌するように、aAPCを操作することができる。Th17分化過程に干渉するサイトカインには、IFNγおよびIL-4が非限定的に含まれる。
【0031】
臨床的に重要なこととして、本発明の方法に従って生成されたTh17細胞を、養子移入免疫療法に用いることができる。すなわち、ICOS補助刺激の存在下で増殖させたヒトT細胞は、CD28の存在下で増殖させた、それ以外の点では同一なT細胞と比較して、成立したヒト腫瘍のより優れた縮退を媒介する。1つの態様において、T細胞上のICOSを活性化しうるように操作された細胞は、ワクチン接種の形態で、インビボでTh17細胞を追加刺激して増殖させるために用いることができる。
【0032】
定義
別に定める場合を除き、本明細書中で用いる技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されたものと同様または同等な任意の方法および材料を本発明の試験のために実地に用いることができるが、本明細書では好ましい材料および方法について説明する。本発明の説明および特許請求を行う上では、以下の専門用語を用いる。
【0033】
また、本明細書中で用いる専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解される必要がある。
【0034】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指して用いられる。一例として、「1つの要素」は、1つの要素または複数の要素を意味する。
【0035】
本明細書で用いる「アミノ酸」は、天然アミノ酸および合成アミノ酸の両方、ならびにDアミノ酸およびLアミノ酸の両方を含むものとする。「標準アミノ酸」とは、天然のペプチド中に一般的に見いだされる20種のL-アミノ酸のいずれかを意味する。「非標準アミノ酸残基」とは、それが合成的に調製されるかまたは天然供給源に由来するかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。本明細書で用いる場合、「合成アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)および置換物を非限定的に含む、化学的に修飾されたアミノ酸も範囲に含む。ペプチド中に、特にカルボキシ末端またはアミノ末端に含まれるアミノ酸は、そのペプチドの活性に悪影響を及ぼすことなくペプチドの循環半減期を変化させうる、メチル化、アミド化、アセチル化または他の化学基との置換によって修飾することができる。さらに、ペプチド中にジスルフィド結合が存在してもよく、または存在しなくてもよい。
【0036】
量、時間的長さなどの測定可能な量に言及する場合に本明細書で用いる「約」は、特定された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、いっそうより好ましくは±0.1%のばらつきを範囲に含むものとするが、これはそのようなばらつきは開示された方法を実施する上で妥当なためである。
【0037】
本明細書で用いる「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれうる。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として働きうることを理解するであろう。その上、抗原が組換えDNAまたはゲノムDNAに由来してもよい。当業者は、免疫応答を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、それ故に、本明細書中でその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。その上、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことも理解するであろう。本発明が複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を非限定的に含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を惹起するさまざまな組み合わせで並べられていることは直ちに明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことも理解するであろう。抗原を合成して生成することもでき、または生物試料から得ることもできることは直ちに明らかである。そのような生物試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液が非限定的に含まれうる。
【0038】
「抗体」という用語は、本明細書で用いる場合、抗原と特異的に結合しうる免疫グロブリン分子のことを指す。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであってもよく、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は典型的には、免疫グロブリン分子のテトラマーである。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに単鎖抗体およびヒト化抗体を含む、種々の形態で存在しうる(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0039】
「作用物質」、「リガンド」または「細胞表面モイエティーと結合する作用物質」という用語は、本明細書で用いる場合、細胞の規定の集団と結合する分子のことを指す。作用物質は、標的細胞集団上に存在する受容体、抗原決定基または他の結合部位といった任意の細胞表面モイエティーと結合してよい。作用物質は、タンパク質、ペプチド、抗体およびそれらの抗体断片、融合タンパク質、合成分子、有機分子(例えば、低分子)、糖質などであってよい。本明細書中およびT細胞刺激の状況においては、抗体および天然リガンドを、そのような作用物質のプロトタイプ的な例として用いる。
【0040】
「細胞表面モイエティーと結合する作用物質」および「細胞表面モイエティー」という用語は、本明細書で用いる場合、リガンド/抗リガンドの対に関連して用いられる。したがって、これらの分子は、特異的結合を一般に比較的高い親和性で示す、相補的分子/抗相補的分子のセットとみなすべきである。
【0041】
本明細書で用いる場合、「自己」という用語は、後にその個体に再び導入される、同じ個体に由来する任意の材料を指すものとする。
【0042】
「同種」とは、同じ種の異なる動物に由来する移植片のことを指す。
【0043】
「異種」とは、異なる種の動物に由来する移植片のことを指す。
【0044】
「癌」という用語は、本明細書で用いる場合、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖を特徴とする疾患と定義される。癌細胞は局所的に広がることもあれば、または血流およびリンパ系を通じて身体の他の部分に広がることもある。さまざまな癌の例には、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵癌、結腸直腸癌、腎癌、肝臓癌、脳悪性腫瘍、リンパ腫、白血病、肺癌などが非限定的に含まれる。
【0045】
遺伝子の「コード領域」は、遺伝子のコード鎖のヌクレオチド残基および遺伝子の非コード鎖のヌクレオチドからなり、これらはそれぞれ、その遺伝子の転写によって産生されるmRNA分子のコード鎖に対して相同的または相補的である。
【0046】
mRNA分子の「コード領域」も、mRNA分子の翻訳の際にトランスファーRNA分子のアンチコドン領域と対合するか、または終止コドンをコードする、mRNA分子のヌクレオチド残基からなる。コード領域はこのため、mRNA分子によってコードされる成熟タンパク質に存在しないアミノ酸残基(例えば、タンパク質搬出シグナル配列中のアミノ酸残基)に対応するヌクレオチド残基を含みうる。
【0047】
「コードする」とは、所定のヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または所定のアミノ酸配列のいずれか、およびそれに由来する生物学的特性を有する他のポリマーおよび高分子の生物過程における合成のためのテンプレートとして働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性のことを指す。すなわち、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、そのタンパク質をコードする。mRNA配列と同一であって通常は配列表に提示されるヌクレオチド配列を有するコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられる非コード鎖の両方を、タンパク質、またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると称することができる。
【0048】
別に指定する場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互に縮重型であって、同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチドが含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含みうる。
【0049】
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において互換的に用いられ、特定の生物学的結果を達成するために有効な、本明細書に記載の化合物、製剤、材料または組成物の量のことを指す。そのような結果には、当技術分野において適した任意の手段によって決定されるようなウイルス感染の阻害が非限定的に含まれうる。
【0050】
本明細書で用いる場合、「内因性」とは、生物体、細胞、組織もしくは系に由来するか、またはその内部で産生される任意の材料のことを指す。
【0051】
本明細書で用いる場合、「外因性」という用語は、生物体、細胞、組織もしくは系に導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の材料のことを指す。
【0052】
本明細書で用いる「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0053】
「発現ベクター」とは、発現させようとするヌクレオチド配列と機能的に連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターのことを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されうる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)といった、当技術分野において公知であるすべてのものが含まれる。
【0054】
本明細書で用いる場合、核酸に対して適用される「断片」という用語は、より大きな核酸の部分配列のことを指す。核酸の「断片」は、少なくとも約15ヌクレオチド長;例えば、少なくとも約50ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド;少なくとも約100〜約500ヌクレオチド、少なくとも約500〜約1000ヌクレオチド、少なくとも約1000ヌクレオチド〜約1500ヌクレオチド;または約1500ヌクレオチド〜約2500ヌクレオチド;または約2500ヌクレオチド(およびそれらの間の任意の整数値)であってよい。
【0055】
本明細書で用いる場合、タンパク質またはペプチドに対して適用される「断片」という用語は、より大きなタンパク質またはペプチドの部分配列のことを指す。タンパク質またはペプチドの「断片」は、少なくとも約20アミノ酸長;例えば、少なくとも約50アミノ酸長;少なくとも約100アミノ酸長、少なくとも約200アミノ酸長、少なくとも約300アミノ酸長および少なくとも約400アミノ酸長(およびそれらの間の任意の整数値)であってよい。
【0056】
本明細書で用いる「相同な」とは、2つのポリマー分子の間、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子といった2つの核酸分子の間、または2つのポリペプチド分子の間のサブユニット配列同一性のことを指す。2つの分子の両方で、あるサブユニット位置が同じモノマーサブユニットによって占められている場合;例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおいて、ある位置がアデニンによって占められている場合には、それらはその位置で相同である。2つの配列間の相同性は、一致する位置または相同な位置の数の一次関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、10サブユニット長のポリマーにおける5つの位置)が相同であるならば、2つの配列は50%相同である;位置の90%(例えば、10のうち9)が一致するかまたは相同であるならば、2つの配列は90%相同である。一例として、DNA配列5'-ATTGCC-3'および5'-TATGGC-3'は50%の相同性を有する。
【0057】
「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書で用いる場合、抗体として機能するタンパク質のクラスと定義される。このクラスのタンパク質に含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgDおよびIgEである。IgAは、唾液、涙液、母乳、消化管分泌物、ならびに気道および泌尿生殖路の粘液分泌物などの身体分泌物中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な流血中抗体である。IgMは、ほとんどの哺乳動物で一次免疫応答において産生される主な免疫グロブリンである。これは凝集反応、補体固定および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスに対する防御に重要である。IgDは抗体機能が判明していない免疫グロブリンであるが、抗原受容体として働いている可能性がある。IgEは、アレルゲンに対する曝露時にマスト細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことによって即時型過敏症を媒介する免疫グロブリンである。
【0058】
本明細書で用いる場合、「使用説明書」には、本発明の組成物および方法の有用性を伝達するために用いうる、刊行物、記録、略図または他の任意の表現媒体が含まれる。本発明のキットの使用説明書は、例えば、本発明の核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器に添付してもよく、または核酸、ペプチドおよび/もしくは組成物を含む容器と一緒に出荷してもよい。または、使用説明書および化合物がレシピエントによって一体として用いられることを意図して、使用説明書を容器と別に出荷してもよい。
【0059】
「単離された」とは、天然の状態から変更されるかまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きた動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然の状態で共存する物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもでき、または例えば宿主細胞などの自然ではない環境で存在することもできる。
【0060】
「単離された核酸」とは、天然の状態でそれに隣接する配列から分離された核酸セグメントまたは断片、すなわち、その断片に本来隣接する配列、すなわちその断片が天然に存在するゲノム中でその断片に隣接する配列から取り出されたDNA断片のことを指す。この用語はまた、核酸に本来付随する他の構成要素、すなわち、細胞内でその核酸に本来付随するRNAまたはDNAまたはタンパク質から実質的に精製された核酸にも適用される。したがって、この用語には、例えば、ベクター、自律複製性プラスミドもしくはウイルス、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNA、または他の配列と独立した別個の分子として(すなわち、cDNAとして、またはPCRもしくは制限酵素消化によって生成されるゲノムDNAもしくはcDNAの断片として)存在する組換えDNAが含まれる。これにはまた、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。
【0061】
本発明に関連して、一般的に存在する核酸塩基に関しては以下の略語を用いる。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、そして「U」はウリジンを指す。
【0062】
別に指定する場合を除き、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互に縮重型であって、同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチドが含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句には、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部の型においてイントロンを含む場合がある限り、イントロンも含まれてよい。
【0063】
本明細書で用いる場合、「モジュレートする」という用語は、生物学的状態の任意の変化、すなわち増加、減少などのことを指す。
【0064】
「機能的に連結した」という用語は、調節配列と核酸配列との間の、後者の発現を結果的にもたらす機能的連結のことを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列との機能的関係の下で配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターはコード配列と機能的に連結している。一般に、機能的に連結したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結することが必要な場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
【0065】
免疫原性組成物の「非経口的」投与には、例えば、皮下(s.c)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)または胸骨内の注射法または注入法が含まれる。
【0066】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの連鎖と定義される。その上、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で用いる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらはモノマー性「ヌクレオチド」に加水分解されうるという一般知識を有する。モノマー性ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解されうる。本明細書で用いるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを用いて組換えライブラリーまたは細胞ゲノムから核酸配列をクローニングすること、および合成手段を非限定的に含む、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られる、すべての核酸配列が非限定的に含まれる。
【0067】
本明細書で用いる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基で構成される化合物のことを指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互に結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で用いる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当技術分野において一般にタンパク質と称される長鎖の両方のことを指し、それらには多くの種類がある。「ポリペプチド」には、いくつか例を挙げると、例えば、生物学的活性断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
本明細書で用いる「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要な、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。
【0069】
本明細書で用いる場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列と機能的に連結した遺伝子産物の発現のために必要とされる核酸配列を意味する。ある場合には、この配列はコアプロモーター配列であってよく、また別の場合には、この配列が、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の制御エレメントをも含んでもよい。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現させるものであってもよい。
【0070】
「構成性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0071】
「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的にはそのプロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0072】
「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、実質的には細胞がそのプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ、その遺伝子産物が細胞内で産生されるようにするヌクレオチド配列のことである。
【0073】
本明細書で用いる「RNA」という用語は、リボ核酸と定義される。
【0074】
本明細書で用いる「組換えDNA」という用語は、異なる供給源に由来するDNAの小片を結びつけることによって作製されるDNAと定義される。
【0075】
本明細書で用いる「組換えポリペプチド」という用語は、組換えDNA法を用いることによって作製されるポリペプチドと定義される。
【0076】
「対象」という用語は、免疫応答を惹起することができる生きている生物体(例えば、哺乳動物)を含むものとする。
【0077】
本明細書で用いる場合、「実質的に精製された」細胞とは、他の細胞型を本質的に含まない細胞のことである。また、実質的に精製された細胞とは、その天然の状態に本来付随する他の細胞型から分離された細胞のことも指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団とは、均一な細胞集団のことを指す。また別の場合には、この用語は、単に、天然の状態において本来付随する細胞から分離された細胞のことを指す。いくつかの態様において、細胞はインビトロで培養される。他の態様において、細胞はインビトロでは培養されない。
【0078】
細胞に言及して本明細書で用いられる「T-ヘルパー」という用語は、当業者によって同定可能な複数の異なる細胞型を含む、リンパ球(白血球(white blood cellまたはleukocyte)の1つの型)のサブグループを指し示している。特に、本開示によるT-ヘルパー細胞は、エフェクターTh細胞(Th1、Th2およびTh17など)を含む。これらのTh細胞は、他の白血球を刺激するかまたはそれと相互作用するサイトカイン、タンパク質またはペプチドを分泌する。
【0079】
本明細書で用いる「治療的」という用語は、治療および/または予防処置のことを意味する。治療効果は、疾病状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0080】
本明細書で用いる「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞内に移入または導入される過程のことを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞とは、外因性核酸によってトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入されたもののことである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0081】
本明細書で用いる「転写制御下」または「機能的に連結した」という語句は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために正しい位置および向きにあることを意味する。
【0082】
「変異体」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、それぞれ参照核酸配列またはペプチド配列とは配列が異なるものの、参照分子の必須の性質は保っている核酸配列またはペプチド配列のことである。核酸変異体の配列の変化は、参照核酸によってコードされるペプチドのアミノ酸配列を変更しないこともあれば、またはアミノ酸の置換、付加、欠失、融合および短縮をもたらすこともある。ペプチド変異体の配列の変化は典型的には限定的または保存的であり、その結果、参照ペプチドおよび変異体の配列は全体的に極めて類似しており、多くの領域では同一である。変異体および参照ペプチドは、アミノ酸配列に関して、1つまたは複数の置換、付加、欠失の任意の組み合わせで異なりうる。核酸またはペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体のように天然に存在してもよく、または天然に存在することが判明していない変異体であってもよい。核酸およびペプチドの天然に存在しない変異体は、突然変異誘発法によって、または直接合成によって作製しうる。
【0083】
「ベクター」とは、単離された核酸を含み、かつその単離された核酸を細胞の内部に送達するために用いうる組成物のことである。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを非限定的に含むさまざまなベクターが、当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律複製性プラスミドまたはウイルスを含む。この用語は、例えばポリリシン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが非限定的に含まれる。
【0084】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がそのコグネイトリガンドに結合して、それにより、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達などの、ただしこれには限定されないシグナル伝達イベントを媒介することによって誘導される一次応答を意味する。刺激は、TGF-βのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再構築などのような、ある種の分子の発現の改変を媒介することができる。
【0085】
「活性化」とは、本明細書で用いる場合、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に誘導されたT細胞の状態のことを指す。また、活性化がサイトカイン産生の誘導、および検出可能なエフェクター機能を伴うこともある。「活性化されたT細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂中のT細胞のことを指す。
【0086】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書で用いる場合、試料中に存在するコグネイト結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激分子および/または補助刺激分子)タンパク質を認識してそれと結合するが、試料中の他の分子は実質的に認識しないか、またはそれらと結合しない抗体を意味する。
【0087】
「刺激リガンド」とは、本明細書で用いる場合、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合に、T細胞上のコグネイト結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称する)と特異的に結合して、それにより、活性化、免疫応答の開始、増殖などを非限定的に含む、T細胞による一次応答を媒介することのできるリガンドを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチド、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体が負荷されたMHCクラスI分子を範囲に含む。
【0088】
「刺激分子」とは、この用語が本明細書で用いられる場合、抗原提示細胞(例えば特に、本発明のaAPC)上に存在するコグネイト刺激リガンドに特異的に結合する、T細胞上の分子を意味する。
【0089】
ペプチドが「負荷された」とは、本明細書で用いる場合、MHC分子との関連における抗原の提示のことを指す。本明細書で用いる「負荷された」はまた、細胞上のFc結合受容体、例えばCD32および/またはCD64に対する抗体の結合も意味する。
【0090】
「補助刺激シグナル」とは、本明細書で用いる場合、TCR/CD3連結などの一次シグナルとの組み合わせで、T細胞の増殖および/または鍵となる分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションを導く分子のことを指す。
【0091】
「補助刺激分子」とは、補助刺激リガンドに特異的に結合し、それにより、増殖などの、ただしこれに限定されない、T細胞による補助刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネイト結合パートナーのことを指す。補助刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体が非限定的に含まれる。
【0092】
「補助刺激リガンド」には、この用語を本明細書で用いる場合、T細胞上のコグネイト補助刺激分子と特異的に結合し、それにより、例えば、ペプチドが負荷されたMHC分子へのTCR/CD3複合体の結合によって与えられる一次シグナルに加えて、増殖、活性化、分化などを非限定的に含むT細胞応答を媒介するシグナルも与えることのできる、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子が含まれる。補助刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性補助刺激リガンド(ICOS-L)、細胞内接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体と結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3に特異的に結合するリガンドが非限定的に含まれる。補助刺激リガンドにまた、いくつか例を挙げると、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3などの、ただしこれらに限定されない、T細胞上に存在する補助刺激分子に特異的に結合する抗体、およびCD83に特異的に結合するリガンドも範囲に含む。
【0093】
説明
本発明は一部、CD4+ T細胞活性化の際の補助刺激の性質がヒトTh17細胞の分化を決定的に調節するという観察所見に基づく。例えば、ICOSはヒトTh17細胞の最適な増殖および機能のために必要であるが、CD28はそうでないことが見いだされた。驚いたことに、CD28連結により、ICOS補助刺激の効果は無効化された。臨床的に意義のあることとして、ICOSを用いて増殖させた遺伝的にリプログラミングされたヒトTh17細胞は、CD28を用いて増殖させた細胞と比較して、ヒト腫瘍のより優れた縮退を媒介した。これらの知見は、ヒトTh17細胞の発生におけるICOSシグナル伝達の重要な役割を明らかにするとともに、新たな治療アプローチを示唆するものである。
【0094】
本発明は、Th17細胞のICOS補助刺激が、CD28で補助刺激した、それ以外の点では同一な細胞から産生されたIL-17F、CCL20およびIL-21のレベルと比較して、有意に高いレベルのIL-17F、CCL20およびIL-21産生をもたらしたという驚くべき発見に関する。場合によっては、ICOS補助刺激はまた、CD28で補助刺激した、それ以外の点では同一な細胞からのIL-17A分泌のレベルと比較して、IL-17A分泌の増大ももたらした。場合によっては、ICOSで刺激したTh17細胞は、IFNγ産生の主要な源であると以前は考えられていたCD28で刺激したTh1細胞サブセットと比較して、かなり多い量のIFNγも産生した。
【0095】
したがって、本発明は、特有の炎症特性を有するヒトTh17細胞の集団を生成させるための組成物および方法を含む。例えば、ICOSで刺激したTh17細胞は、CD28で刺激したTh1細胞と比較して、高レベルのIL-17およびCCL20を分泌する上、増大したレベルのIFNγおよびIL-21も産生する。本発明は、ICOS補助刺激はTh17細胞を選好的に増殖させるが、CD28補助刺激はそうでないという予期せぬ発見に基づく。ICOS補助刺激は、Th17を培養して増殖させるため、およびTh17細胞の長期培養を維持するための手段を提供する。
【0096】
本発明は、Th17細胞を増殖させるための組成物、およびそれらの使用のための方法、ならびにTh17細胞の増殖および刺激に関係する数多くの治療的用途を提供する。
【0097】
1つの態様において、本発明は、治療量のTh17細胞を末梢血または臍帯血(UCB)から生成させるための組成物および方法を提供する。場合によっては、Th17細胞はナイーブ前駆細胞から生成される。好ましくは、ナイーブ前駆細胞はCD45RA+CD25-細胞である。
【0098】
組成物
本発明は、T細胞増殖のための補助刺激シグナル(例えば、ICOSL)をT細胞に与える作用物質を含む組成物に関する。場合によっては、補助刺激シグナルは、一次活性化シグナル(例えば、TCR/CD3複合体)をT細胞に与える作用物質と組み合わせて、T細胞に与えられる。例えば、一次活性化シグナルをT細胞に与える作用物質の1つは抗CD3抗体である。
【0099】
場合によっては、作用物質(一次性、補助刺激性またはそれらの組み合わせ)は、好ましくは、ビーズに結びつけられる。また、本発明の組成物には、異なる固相表面に結合された複数の種類の作用物質(すなわち、第1の固相表面に結合された、T細胞一次活性化シグナルを与える作用物質、および第2の固相表面に結合された、補助刺激シグナルを与える作用物質)を含むものも含まれうる。
【0100】
または、作用物質(一次性、補助刺激性またはそれらの組み合わせ)は、人工抗原提示細胞(aAPC)上にディスプレイされる状況にある。したがって、本発明は、固相表面(例えば、ビーズ)または細胞(例えば、aAPC)のいずれかを用いて、T細胞のICOS係合を促進するための任意の手段を含む。すなわち、T細胞の活性化および誘導に関与するイベントおよび分子に関して、当技術分野には広範囲にわたる知識が存在する。しかし、本発明は、ICOS係合はTh17表現型を有する細胞を選好的に増殖させるが、CD28補助刺激はそうでないという予期せぬ発見に基づく。
【0101】
WO 03/057171号およびUS2003/0147869号に提供された広範囲にわたる開示は、その全体が本明細書中に明記されたのと同じように、参照により組み入れられる。より具体的には、通常はT細胞上のT細胞受容体/CD3複合体を介して媒介される一次シグナルは、T細胞活性化過程を開始させる。さらに、T細胞の表面上に存在するさまざまな補助刺激分子が、休止T細胞から細胞増殖への移行の調節に関与する。「補助刺激物質」とも称されるそのような補助刺激分子は、それらの各々のリガンドに特異的に結合し、CD28(B7-1[CD80]、B7-2[CD86]に結合する)、PD-1(リガンドPD-L1およびPD-L2に結合する)、B7-H3、4-1BB(リガンド4-1BBLに結合する)、OX40(リガンド OX40Lに結合する)、ICOS(リガンドICOS-Lに結合する)およびLFA(リガンドICAMに結合する)が非限定的に含まれる。このように、一次刺激シグナルはT細胞刺激を媒介するが、増殖によって明示されるようなT細胞活性化のためには、その上で補助刺激シグナルが必要である。
【0102】
T細胞活性化は、T細胞TCR/CD3複合体を刺激することによって、またはCD2表面タンパク質の刺激を介して達成することができる。抗CD3モノクローナル抗体を用いて、T細胞の集団をTCR/CD3複合体を介して活性化することができる。いくつかの抗ヒトCD3モノクローナル抗体が市販されているが、American Type Culture Collectionから入手したハイブリドーマ細胞から調製したOKT3、またはモノクローナル抗体G19-4が好ましい。同様に、抗CD2抗体の結合もT細胞を活性化すると考えられる。刺激型の抗CD2抗体が公知であり、利用可能である。
【0103】
また、ホルボールエステル(例えば、ホルボールミリステートアセテート)などのプロテインキナーゼC(PKC)活性化物質とカルシウムイオノフォア(例えば、細胞質カルシウム濃度を上昇させるイオノマイシン)との組み合わせの使用を通じて、一次活性化シグナルをT細胞に送達することもできる。これらの作用物質の使用により、TCR/CD3複合体を経由せずに刺激シグナルをT細胞に送達することができる。これらの作用物質はT細胞に対して相乗効果を発揮してT細胞活性化を促進することも知られており、一次活性化シグナルをT細胞に送達するための抗原が存在しなくても用いることができる。
【0104】
T細胞における一次活性化シグナルの送達のためにはTCR/CD3複合体またはCD2分子の刺激が必要であるものの、休止T細胞の芽細胞化の移行ならびにその後の増殖および分化の調節における、アクセサリー分子または補助刺激分子と命名されているT細胞の表面上のいくつかの分子の関与が指摘されている。したがって、T細胞応答の誘導のためには、TCR/CD3複合体を通じて与えられる一次活性化シグナルに加えて、第2の補助刺激シグナルが必要である。そのような補助刺激分子またはアクセサリー分子の1つであるCD28は、TCR複合体によって刺激されるものとは明確に異なるシグナル伝達経路を開始または調節すると考えられている。しかし、本発明は、ICOS補助刺激はTh17表現型を有する細胞を選好的に増殖させるが、CD28補助刺激はそうでないという発見に基づく。さらに、CD28補助刺激およびICOS補助刺激の併用はTh17表現型を増強させず、むしろそれを特異的に減少させる。この発見は、当技術分野におけるTh17を増殖させるためのCD28の広範な使用からみて、驚くべきことであった。
【0105】
したがって、本発明は、T細胞に対するICOS補助刺激を促進しうる組成物の使用に関する。ICOS分子の刺激を誘導しうるあらゆる作用物質が、本発明の範囲に含まれる。加えて、天然リガンドの結合性相同体を、ネイティブのものであるかまたは化学的手法もしくは組換え手法によって合成されたかにかかわらず、本発明に従って用いることもできる。ICOSを刺激するために有用なリガンドは、本明細書に記載したように、可溶型として、細胞の表面に結びつけて、または固相表面上に固定化して用いることができる。抗ICOS抗体またはその断片も、ICOS分子を刺激するのに有用である。
【0106】
本発明の1つの具体的な態様においては、活性化されたT細胞を、補助刺激のために、ICOSに対する刺激型の天然リガンドと接触させる。ICOSの天然リガンドは当技術分野においてICOSLと称される。「ICOSに対する刺激型の天然リガンド」とは、ICOSと結合してT細胞を補助刺激することのできる、天然リガンドの形態のことである。補助刺激は、CD3/TCR複合体またはCD2を通じての刺激などの一次活性化シグナルを受け取ったT細胞による増殖および/またはサイトカイン産生によって明らかとなる。
【0107】
本発明の1つの好ましい態様において、ICOSL分子は細胞の表面上に局在する。これは、ICOSL分子を細胞表面上でのその発現のために適した形態でコードする核酸で細胞をトランスフェクトすることによって、またはICOSL分子を細胞表面に結合させることによって、達成することができる。または、抗ICOS抗体をaAPCの細胞表面に「負荷する」こともできる。すなわち、当業者は、本明細書で提供した開示に基づき、ヒトFcγ受容体(例えば、CD32またはCD64)をコードする核酸をaAPCに導入することによって、本明細書中の他所に例示されているように、抗体を含むaAPCを作製しうることを理解するであろう。続いて、aAPC表面上に発現されたCD32および/またはCD64を、CD3と特異的に結合する抗体およびICOSと特異的に結合する抗体を非限定的に含むCD32および/またはCD64と結合する任意の所望の抗体を「負荷する」ことができる。
【0108】
当業者は、ICOS分子と架橋することのできる抗ICOS抗体もしくはその断片を含む任意の作用物質、またはICOSに対する天然リガンドを用いて、T細胞を刺激しうることを認識しているであろう。特に、ヒトICOSリガンドを適切な細胞からpcDNA3ベクターまたは他の適したベクター中にクローニングして、aAPCにトランスフェクトすることができる。
【0109】
さらに、本発明は、関心対象の抗体リガンドをコードする核酸が、任意でIRES配列と連結された上で形質導入されてaAPCの表面上に発現され、それにより、CD32および/またはCD64の発現およびそれらの負荷の必要性がなくなったaAPCも範囲に含む。したがって、本発明は、一次活性化シグナルおよびとりわけICOSと関連のある分子と特異的に結合する少なくとも1つの抗体をコードする核酸が形質導入されたaAPC、ならびにCD32および/またはCD64が形質導入され、前述の分子と特異的に結合する少なくとも1つの抗体が負荷されたaAPCを含む。
【0110】
補助刺激物質としての可溶型のICOSL
ICOSの天然リガンドを、可溶型としてT細胞に提示させることもできる。可溶型のICOSL分子には、天然のICOSL分子、その断片、またはICOSと結合してT細胞を補助刺激することのできる完全長のICOSL分子または断片の改変型が含まれる。補助刺激は、一次活性化シグナルを受け取ったT細胞による増殖および/またはサイトカイン産生によって明らかとなる。ICOSL分子の改変には、ICOS分子に対するICOSL分子の結合の親和性を好ましくは高める改変だけでなく、ICOS分子に対するICOSL分子の結合の親和性を低下させるかまたはそれに影響しない改変も含まれる。ICOSL分子の改変には、可溶型のICOSL分子の安定性を高めるものも含まれる。ICOS分子の改変はアミノ酸置換によって通常は作製されるが、別の分子との連結によって作製することもできる。
【0111】
1つの具体的な態様において、可溶型のICOSL分子は、ICOSL分子またはその断片からなる第1のペプチドと、第1のペプチドの溶解性、結合、親和性、安定性または結合価(すなわち、分子1個につき利用可能な結合部位の数)を変化させるモイエティーに対応する第2のペプチドとを含む融合タンパク質である。好ましくは、第1のペプチドは、ICOSL融合タンパク質およびT細胞一次活性化シグナルへの曝露後にT細胞の増殖またはT細胞からのサイトカインの分泌の刺激によって明らかになるような、ICOSと相互作用して補助刺激シグナルを与えることができるICOSL分子の細胞外ドメイン部分を含む。
【0112】
本発明の範囲内にある融合タンパク質は、融合タンパク質をコードする核酸の、種々の異なる系における発現によって調製することができる。典型的には、ICOSL融合タンパク質をコードする核酸は、ICOSL分子またはその断片からなる第1のペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列と、第1のペプチドの溶解性、結合、安定性または結合価を変化させるモイエティー、例えば免疫グロブリン定常領域などに対応する第2のペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列とを含む。免疫グロブリン定常領域を含むペプチドをコードする核酸は、Bリンパ球内に存在するヒト免疫グロブリンmRNAから入手することができる。また、B細胞ゲノムDNA由来の免疫グロブリン定常領域をコードする核酸を入手することも可能である。例えば、Cγ1またはCγ4をコードするDNAを、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリーのいずれかから、または標準的なプロトコールに従ったポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によってクローニングすることができる。免疫グロブリン定常領域をコードする好ましい核酸は、以下のものの全体または一部分を含む:ヒトCγ1をコードするDNA(Takahashi, N. S. et al. (1982) Cell 29:671-679)、ヒトCγ2をコードするDNA;ヒトCγ3をコードするDNA(Huck, S. et al. (1986) Nucl. Acid Res. 14:1779);およびヒトCγ4をコードするDNA。免疫グロブリン定常領域をICOSL融合タンパク質中に用いる場合には、定常領域によって媒介される少なくとも1つの生物学的効果または機能が低下するように定常領域を改変することができる。例えば、Cγ1またはCγ4定常領域をコードするDNAを、PCR突然変異誘発または部位指定突然変異誘発によって改変することができる。部位指定突然変異誘発システムに関するプロトコールおよび試薬は、Amersham International PLC, Amersham, UKから商業的に入手することができる。
【0113】
1つの態様において、第1および第2のヌクレオチド配列は、ICOSLタンパク質またはその断片およびIgC(すなわち、ヒトIgGのヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含むFc断片)をコードするセグメントの翻訳フレームが維持される(すなわち、ヌクレオチド配列がインフレームで連結される)ように連結される(すなわち、ホスホジエステル結合によって5'から3'の向きに)。このため、このヌクレオチド配列の発現(すなわち、転写および翻訳)により、機能的なICOSLIg融合タンパク質が産生される。本発明の核酸は、標準的な組換えDNA手法によって調製することができる。例えば、ICOSLIg融合タンパク質を、ICOSLおよび免疫グロブリン定常領域をコードする別々のテンプレートDNAを用いて構築することができる。各テンプレートDNAの適切なセグメントをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅し、標準的な手法を用いてインフレームに連結することができる。また、本発明の核酸を、標準的な手法を用いて化学合成することもできる。市販のDNA合成装置で自動化されている固相合成を含む、ポリデオキシヌクレオチドを化学合成するさまざまな方法が公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Itakura et al. 米国特許第4,598,049号;Caruthers et al. 米国特許第4,458,066号;ならびにItakura 米国特許第4,401,796号および第4,373,071号を参照)。
【0114】
以下は、可溶性ICOSLを作製するために適用しうる分子生物学的手法の説明である。しかし、これらの分子生物学的手法を、本発明による範囲に含まれる任意の形態の状況で提示される(例えば、固相支持体、aAPCなどの上にディスプレイされる)ICOSLを作製するために適用することもできる。
【0115】
ICOSL分子またはICLOSLIg融合タンパク質をコードする核酸をさまざまな発現ベクター中に挿入し、続いてそれが、種々の宿主、特に哺乳動物細胞または昆虫細胞培養物などの真核細胞および大腸菌などの原核細胞において、対応するタンパク質の合成を導く。本発明の範囲内にある発現ベクターは、本明細書に記載したような核酸、およびその核酸と機能的に連結したプロモーターを含む。そのような発現ベクターを用いて、宿主細胞をトランスフェクトし、それにより、本明細書に記載したような核酸によってコードされる融合タンパク質を産生させることができる。本明細書に記載したような本発明の発現ベクターは、典型的には、少なくとも1つの調節配列と機能的に連結したICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0116】
本発明の発現ベクターを用いて、原核細胞または真核細胞のいずれか(例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞または酵母細胞)である細胞をトランスフェクトし、それにより、ベクターのヌクレオチド配列によってコードされる融合タンパク質を産生させることができる。原核生物における発現は、ほとんどの場合、構成性または誘導性プロモーターを含むベクターを有する大腸菌において行われる。ある種の大腸菌発現ベクター(いわゆる融合ベクター)は、発現される組換えタンパク質に、通常は発現されるタンパク質のアミノ末端に、いくつかのアミノ酸残基を付加するように設計されている。そのような融合ベクターは、典型的には3つの目的に役立つ:1)組換えタンパク質の発現を増大させるため;2)標的組換えタンパク質の溶解性を高めるため;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することによって標的組換えタンパク質の精製を助けるため。融合発現ベクターの例には、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼおよびマルトースE結合タンパク質を標的組換えタンパク質と融合させる、pGEX(Amrad Corp., Melbourne, Australia)およびpMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass.)が含まれる。このように、ICOSL分子またはICOSLIg融合遺伝子を、融合タンパク質の発現、溶解性または精製を助けるために原核生物融合ベクター中で付加的なコード配列と連結させることができる。多くの場合、融合発現ベクター中には、融合タンパク質の精製後に融合モイエティーからの標的組換えタンパク質の分離が可能になるように、融合モイエティーと標的組換えタンパク質との接合部にタンパク質分解切断部位が導入される。そのような酵素およびそれらのコグネイト認識配列には、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。
【0117】
大腸菌におけるICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質の発現を最大にするための1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解で切断する能力が損なわれた宿主細菌内でタンパク質を発現させることである(Gottesman, S., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990) 119-128)。別の戦略は、発現ベクター中に挿入するICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質構築物のヌクレオチド配列を変更することであり、それによって各アミノ酸の個々のコドンが、高発現される大腸菌タンパク質において選好的に利用されるものとなる(Wada et al., (1992) Nuc. Acids Res. 20:2111-2118)。核酸配列のそのような変更は本発明による範囲に含まれ、標準的なDNA合成法を用いて行うことができる。
【0118】
または、ICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質を、哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはNS0細胞)、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクターを用いる)または酵母細胞などの真核宿主細胞内で発現させることもできる。他の適した宿主細胞も当業者に公知である。ICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質の原核生物発現ではなく真核生物発現が好ましいことがあるが、これは真核細胞における発現が、組換えタンパク質の部分的もしくは完全なグリコシル化、および/または適切な鎖間もしくは鎖内ジスルフィド結合の形成をもたらしうるためである。哺乳動物細胞における発現の場合、発現ベクターの制御機能はしばしばウイルス材料によって提供される。
【0119】
ベクターDNAは、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションなどの従来の形質転換またはトランスフェクションの手法を介して、原核細胞または真核細胞内に導入することができる。宿主細胞の形質転換のために適した方法は、Sambrook et al(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press (2001))および他の実験用教科書に記載されている。
【0120】
哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションの場合、用いる発現ベクターおよびトランスフェクション手法によっては、わずかな細胞しかDNAをそのゲノム中に組み込まない場合があることが知られている。これらの組込み体の同定および選択のために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、関心対象の遺伝子とともに宿主細胞に一般に導入される。好ましい選択マーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与するものが含まれる。選択マーカーをコードする核酸は、関心対象の遺伝子と同じプラスミド上で宿主細胞に導入することもでき、別々のベクター上で導入することもできる。関心対象の遺伝子を含む細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存し、他の細胞は死滅すると考えられる)。続いて、生き延びた細胞を、例えば、抗ICOSLモノクローナル抗体を用いた細胞上清からの免疫沈降によって、ICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質の産生に関してスクリーニングする。
【0121】
組換え手法によって産生されたICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質を、細胞とタンパク質を含む培地との混合物から分泌させて、単離してもよい。または、タンパク質を細胞質に保持させ、細胞を採取し、溶解させた上でタンパク質を単離してもよい。細胞培養物は典型的には、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養のために適した培地は当技術分野において周知である。タンパク質を、細胞培地、宿主細胞またはその両方から、タンパク質を精製するための当技術分野において公知の手法を用いて単離することができる。
【0122】
T細胞補助刺激のためには、ICOSLに対する可溶型の天然リガンドを、活性化されたT細胞の補助刺激をもたらすのに十分な量で、T細胞培養物に添加する。添加する可溶性リガンドの適切な量は個々のリガンドに応じて異なると考えられるが、実施例に記載したように、T細胞培養物中の種々の量の可溶性リガンドをアッセイして、補助刺激の程度を増殖アッセイまたはサイトカインの産生によって測定することによって決定することができる。
【0123】
固相表面に対する天然リガンドの結合
本発明の別の態様において、ICOSの天然リガンドを、ビーズなどの固相表面に結びついた形態でT細胞に提示することができる。ICOSL分子、その断片、またはICOSと結合してT細胞を補助刺激することのできるその改変型を、可溶型ICOSLに関して説明したのと同じように調製することができる。続いて、これらの分子を、いくつかの方法を介して固相表面に結びつけることができる。例えば、トシル結合を用いる共有結合修飾を介して、ICOSL分子をビーズに架橋させることができる。この方法では、ICOSL分子またはICOSL融合タンパク質を0.05Mホウ酸緩衝液、pH 9.5に入れ、トシル活性化磁性イムノビーズ(Dynal Inc., Great Neck, N.Y.)に対して、製造元の指示に従って添加する。22℃での24時間のインキュベーション後に、ビーズを収集して十分に洗浄する。他の方法も申し分ないことから、免疫磁性ビーズを用いることは必須ではない。例えば、ICOSL分子をポリスチレンビーズまたは培養容器表面上に固定化することもできる。二次モノクローナル抗体による吸着または捕捉のためには、固相表面に対するICOSL分子またはICOSLIg融合タンパク質の共有結合が好ましい。ICOSLIg融合タンパク質を、固相表面に結合した抗ヒトIgG分子を介して固相表面に結びつけることができる。続いて、これらのビーズを、PBSなどの適切な緩衝液中でICOSLIg融合タンパク質とともに5℃で約1時間インキュベートし、PBSなどの緩衝液中でのビーズの洗浄によって、結合しなかったICOSLIgタンパク質を除去する。
【0124】
また、アビジン-ビオチン複合体またはストレプトアビジン-ビオチン複合体を介してICOSL分子を固相表面に結びつけることも可能である。この特定の態様においては、可溶性ICOSL分子をまずビオチンと架橋させ、続いてアビジン分子またはストレプトアビジン分子を結合させた固相表面と反応させる。また、ICOSL分子とアビジンまたはストレプトアビジンと架橋させて、これらをビオチン分子で覆った固相表面と反応させることも可能である。
【0125】
固相表面に結びついたICOSL分子の量は、固相表面がビーズのものである場合にはFACS分析によって、または固相表面が組織培養皿のものである場合にはELISAによって決定することができる。ICOSL分子と反応する抗体をこれらのアッセイに用いることができる。
【0126】
1つの具体的な態様においては、刺激型のICOSL分子を、TCR/CD3複合体を刺激する抗CD3抗体などの作用物質と同じ固相表面に結びつける。抗CD3に加えて、抗原シグナルを模倣する受容体と結合する他の抗体を用いてもよく、例えば、ビーズまたは他の固相表面を抗CD2およびICOSL分子の組み合わせでコーティングしてもよい。
【0127】
1つの典型的な実験では、ICOSLでコーティングしたビーズ、またはICOSL分子およびTCR/CD3複合体を刺激する作用物質でコーティングしたビーズを、T細胞1個につきビーズ3個の比で添加する。しかし、この比は、望ましい結果を得るために調整することができる。
【0128】
人工抗原提示細胞(aAPC)
本発明が範囲に含むaAPCにおいて、補助刺激リガンドは補助刺激分子に特異的に結合するコグネイト結合パートナーであり、さらにこのリガンドは補助刺激分子に特異的に結合する抗体であり、およびそれらの任意の組み合わせであり、そのため単一のaAPCが、補助刺激リガンドおよび/またはT細胞上に存在する補助刺激分子に対して特異的な抗体をコードする両方の核酸、およびそれらの任意の組み合わせを含むことができる。WO 03/057171号およびUS2003/0147869号に提供されたaAPCに関する広範囲にわたる開示は、その全体が本明細書中に明記されたのと同じように、参照により組み入れられる。しかし、本発明は、CD28補助刺激ではなくICOS補助刺激が、Th17表現型を有する細胞を選好的に増殖させるという驚くべき発見に基づく。
【0129】
本発明はまた、関心対象の抗原をコードする核酸を含むaAPCも範囲に含む。テロメラーゼ、T細胞により認識される黒色腫抗原(MART-1)、黒色腫抗原コード遺伝子1、2および3(MAGE-1、-2、-3)、黒色腫GP100、癌胎児性抗原(CEA)、乳癌抗原HER-2/Neu、血清前立腺特異抗原(PSA)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、ムチン抗原(MUC-1、-2、-3、-4)ならびにB細胞リンパ腫イディオタイプといった腫瘍抗原などの、ただしこれらには限定されない、極めて多岐にわたる抗原が含まれる。これは、本明細書中の他所に開示されたデータによって実証されているように、ある抗原を含むK562をベースとするaAPCが、その抗原をプロセシングしてMHCとの関連において提示し(細胞はMHCクラスIまたはクラスII分子をコードする核酸による形質導入も受けている)、それにより、抗原特異的T細胞を生成させ、その集団を増殖させることができるためである。開示されたデータは、抗CD3/ICOSビーズまたは抗CD3/ICOSLを発現するaAPCによって増殖させ、続いてメソテリン発現腫瘍に対する特異性を付与するためにキメラ免疫受容体により遺伝的に改変したT細胞が、抗腫瘍活性を呈したことを実証している。したがって、T細胞をそれを必要とする患者に投与し、それにより抗原を担持する腫瘍細胞を対象とする免疫ワクチン治療を提供する目的で、aAPCを用いて十分な抗原特異的T細胞を増殖させ、生成することができる。または、別の形態の免疫ワクチン接種として、aAPCを患者に直接投与することもできる。すなわち、関心対象の抗原を本発明のaAPCに導入することができ、するとaAPCが続いてその抗原をMCHクラスIまたはII複合体との関連において提示する、すなわち、MHC分子に抗原が「負荷され」、そのaAPCを用いて抗原特異的T細胞を生成させることができる。または、aAPCを用いてインビトロまたはインビボでT細胞を増殖させ、増殖させたT細胞を抗原特異的になるようにさらに改変することもできる。
【0130】
1つの態様において、本発明は、少なくともICOS補助刺激によって増殖させたT細胞を含み、増殖させたT細胞は、ICOSで補助刺激したT細胞を抗原特異的にするためにさらに改変される。例えば、ICOSで補助刺激したT細胞をインビトロでAg特異的にさせること、例えば、ICOSで補助刺激したT細胞を、所望の抗原に対する特異性を付与するために遺伝的に改変することなどができる。ICOSで補助刺激したT細胞に、ICOSで補助刺激したT細胞による特異的抗原の発現を可能にするベクターをトランスフェクトさせることもできる。
【0131】
別の態様において、本発明は、インビボでT細胞を追加刺激するためにICOSL aAPCを用いる。T細胞を事前にインビトロで操作し、患者への注入後に、ICOSL aAPCワクチン接種によって追加刺激することができる。または、ICOSL aAPCに抗原を負荷させて、Th17応答を刺激するための初回刺激ワクチンとして用いることもできる。
【0132】
本明細書中の他所で考察したように、それに対する免疫原性応答が望まれるタンパク質をコードして発現する特定のポリヌクレオチドを含むように、ベクターを調製することができる。本明細書中の他所で考察したように、さまざまな方法を用いて、宿主細胞にポリヌクレオチドをトランスフェクトすることができる。これらの方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、コロイド分散系(すなわち、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型乳剤、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系)が非限定的に含まれる。
【0133】
抗原をコードするポリヌクレオチドを発現ベクター中にクローニングし、そのベクターをICOSで補助刺激したT細胞に導入することにより、ICOSで補助刺激した抗原特異的T細胞を別の方法で生成させることができる。細胞内に核酸を導入するさまざまな種類のベクターおよび方法については、本明細書中の他所で考察している。例えば、抗原をコードするベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞に導入しうる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。例えば、Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)およびAusubel et al. (1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)を参照のこと。
【0134】
関心対象の抗原は、ウイルス、真菌または細菌に由来しうる。抗原は、感染症、癌、自己免疫疾患からなる群より選択される疾患に関連した自己抗原または抗原であってよい。
【0135】
ある態様においては、ICOSで補助刺激した抗原特異的T細胞を哺乳動物に導入することによって、免疫応答を促進させることができる。ワクチンとして有用となる抗原組成物の場合、抗原組成物は細胞、組織または哺乳動物(例えば、ヒト)において抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。本明細書で用いる場合、「免疫学的組成物」は、抗原(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)、抗原をコードする核酸(例えば、抗原発現ベクター)、抗原または細胞成分を発現または提示する細胞を含みうる。特定の態様において、抗原組成物は、本明細書に記載された任意の抗原の全体もしくは一部、またはその免疫学的機能的同等物を含むかまたはコードする。
【0136】
本発明に関連して、「腫瘍抗原」または「過剰増殖性疾患抗原」または「過剰増殖性疾患に関連した抗原」とは、特定の過剰増殖性疾患に共通する抗原のことを指す。ある局面において、本発明の過剰増殖性疾患抗原は、原発性または転移性黒色腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎癌、ならびに乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌などのような腺癌を非限定的に含む癌に由来する。
【0137】
1つの態様において、本発明の腫瘍抗原は、哺乳動物の癌腫瘍由来の腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)によって免疫学的に認識される1つまたは複数の抗原性癌エピトープを含む。
【0138】
悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原として働きうるさまざまなタンパク質を発現する。これらの分子には、黒色腫におけるMART-1、チロシナーゼおよびGP 100、ならびに前立腺癌における前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺特異的抗原(PSA)などの組織特異的抗原が非限定的に含まれる。他の標的分子には、癌遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の群に属するものがある。標的抗原のさらに別の群には、癌胎児性抗原(CEA)などの腫瘍胎児性抗原がある。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンが、個々の腫瘍に特有な真の腫瘍特異的免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20およびCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原の他の候補である。これらの抗原のいくつか(CEA、HER-2、CD 19、CD20、イディオタイプ)は、モノクローナル抗体を用いる受動免疫療法の標的として用いられ、ある程度の成果を収めている。
【0139】
腫瘍抗原およびその抗原性癌エピトープは、初代臨床単離物、細胞株などのような天然の供給源から精製および単離することができる。癌ペプチドおよびそれらの抗原エピトープを、当技術分野において公知の化学合成または組換えDNA手法によって入手することもできる。化学合成のための手法は、Steward et al. (1969);Bodansky et al. (1976);Meienhofer (1983);およびSchroder et al. (1965)に記載されている。その上、Renkvist et al.(2001)に記載されたように、当技術分野において公知の多数の抗原が存在する。以下の表は、腫瘍抗原によってコードされる、T細胞で明らかにされているエピトープを記載し、T細胞(細胞傷害性CD8+またはヘルパーCD4+のいずれか)によって認識される腫瘍抗原のみを列挙している。類似体および人工的に改変されたエピトープは列挙されていないものの、当業者は、当技術分野における標準的な手段によってそれらを入手するかまたは生成させる方法を認識している。抗体によって同定され、かつSerex技術(Sahin et al. (1997)およびChen et al. (2000)を参照)によって検出される他の抗原は、Ludwig Institute for Cancer Researchのデータベース中に特定されている。
【0140】
T細胞の供給源
増殖の前に、T細胞の供給源を対象から入手する。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織および腫瘍を含む、さまざまな供給源から入手しうる。本発明のある態様において、当技術分野で利用可能なさまざまなT細胞株を用いてよい。本発明のある態様において、T細胞は、対象から収集した血液ユニットから、当業者に公知のいくつかの手法、例えばフィコール分離などを用いて入手することができる。1つの態様において、個体の循環血に由来する細胞を、アフェレーシスまたは白血球除去法によって入手する。アフェレーシス産物は典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球および血小板を含むリンパ球を含む。1つの態様においては、アフェレーシスによって収集した細胞を、血漿画分を除去するため、および細胞を以後の加工処理段階のために適した緩衝液または培地中に入れるために洗浄することができる。本発明の1つの態様においては、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄する。1つの代替的な態様において、洗浄溶液はカルシウムを含まず、さらにマグネシウムを含まないか、またはすべてでないにしても多くの二価のカチオンを含まなくてもよい。洗浄後に、細胞を、例えばCa非含有、Mg非含有のPBSなどの種々の生体適合性緩衝液中に再懸濁させてもよい。または、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去した上で、細胞を培地中に再懸濁させてもよい。
【0141】
別の態様においては、赤血球を溶解させて、かつ例えばPERCOLL(商標)勾配を介した遠心法によって単球を枯渇させることにより、T細胞を末梢血から単離する。または、T細胞を臍帯から単離することもできる。いずれの場合にも、陽性選択または陰性選択の手法によって、T細胞の特定の部分集団をさらに単離することができる。
【0142】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択される細胞に特有の表面マーカーを対象とする抗体の組み合わせを用いて達成することができる。1つの好ましい方法は、陰性の磁性免疫付着、または陰性選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーを対象とするモノクローナル抗体のカクテルを用いるフローサイトメトリーを介した、細胞分取および/または選択である。例えば、CD4+細胞を陰性選択によって濃縮するためには、モノクローナル抗体のカクテルは典型的にはCD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。
【0143】
陽性選択または陰性選択による所望の細胞集団の単離のための、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度はさまざまでありうる。ある態様においては、細胞およびビーズの接触が確実に最大になるように、ビーズおよび細胞を混ぜ合わせる容積を著しく減らす(すなわち、細胞の濃度を高める)ことが望ましいと考えられる。例えば、1つの態様においては、細胞20億個/mlの濃度を用いる。1つの態様においては、細胞10億個/mlの濃度を用いる。1つのさらなる態様においては、細胞1億個/mlを上回る濃度を用いる。1つのさらなる態様においては、1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個または5000万個/mlの細胞濃度を用いる。さらに別の態様においては、7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個または1億個/mlの細胞濃度を用いる。さらなる態様においては、細胞1億2500万個または1億5000万個/mlの濃度を用いることができる。高濃度を用いることで、細胞収量、細胞活性化および細胞増殖の増大を生じさせることができる。
【0144】
1つの関連した態様においては、より低い細胞濃度を用いることが望ましいと考えられる。T細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の混合物を著しく希釈することにより、粒子と細胞との間の相互作用が最小化される。これにより、粒子に結合させようとする所望の抗原を大量に発現する細胞が選択される。例えば、希釈濃度では、CD4+ T細胞はCD8+ T細胞よりも高レベルのCD28を発現し、より効率的に捕捉される。
【0145】
刺激のためのT細胞を、洗浄段階の後に凍結させることもでき、これは単球除去段階を必要としない。理論に拘束されることは望まないが、凍結段階およびその後の解凍段階は、細胞集団の中の顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を与える。血漿および血小板を除去する洗浄段階の後に、細胞を凍結溶液中に再懸濁させてもよい。多くの凍結溶液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、この状況で有用であると考えられる一方、非限定的な例において、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン、または他の適した細胞凍結培地を含むPBSを用いることを伴う。続いて細胞を1分当たり1℃の速度で-80℃に凍結させて、液体窒素保存タンクの気相中で保存する。他の制御凍結法のほか、即時的な-20℃または液体窒素中での非制御的凍結を用いることもできる。
【0146】
細胞集団の刺激
本明細書で述べたように、本発明は、細胞集団を、その集団内の細胞の表面上のモイエティーへの結合によって刺激するための組成物および方法を提供する。細胞集団を、細胞表面モイエティーと結合する作用物質(例えば、リガンド)と接触させることにより、細胞集団を刺激することができる。リガンドは液体中にあってもよいが、表面に結びつけてもよい。受容体などの細胞表面モイエティーの連結により、一般に特定のシグナル伝達経路が誘導される。
【0147】
本発明の方法は、細胞モイエティーと結合するリガンドまたは作用物質を導入して、それによって細胞イベントを誘導することによる、標的細胞の刺激に関する。細胞に対するリガンドまたは作用物質の結合はシグナル伝達経路を誘発し、続いてそれが細胞における特定の表現型変化または生物学的変化を活性化する可能性がある。本明細書に記載したような細胞モイエティーと結合するリガンドまたは作用物質を導入することによる標的細胞の刺激は、いくつかの細胞過程をアップレギュレートまたはダウンレギュレートさせて、特定の表現型変化または生物学的変化を導く可能性がある。細胞の活性化は正常な細胞機能を強化するか、または異常細胞において正常細胞機能を惹起する可能性がある。本明細書に記載した方法は、細胞を、細胞表面モイエティーと結合するリガンドまたは作用物質と接触させることによって刺激を与える。第2の細胞表面モイエティーと連結する第2の作用物質またはリガンドを導入することによって、細胞の刺激を強化すること、または特定の細胞イベントを刺激することもできる。この方法は、細胞表面モイエティーの連結がシグナル伝達イベントを導く任意の細胞に対して適用することができる。本発明はさらに、刺激された細胞の選択または培養のための手段も提供する。
【0148】
1つの態様においては、臍帯血細胞を、ICOS補助刺激に関する本発明に従って刺激する。例えば、臍帯血細胞を、Th17偏向性サイトカインの存在下で、抗CD3/抗ICOSビーズまたはICOSLを発現するaAPCのいずれかによって刺激することができる。Th17偏向性サイトカインの一例には、IL-6、IL-1βおよびIL-23サイトカイン、ならびに中和性IFNγおよびIL-4抗体が非限定的に含まれる。したがって、本発明は、Th17前駆細胞を増殖させるための手段を提供する。本発明のこの局面は、Th17偏向性サイトカインの存在下におけるCD4+ T細胞のICOS補助刺激がIL-17Aの分泌増大をもたらし、一方、CD28と係合させた細胞のうちIL-17Aを産生したものは事実上皆無であったという予期せぬ知見に基づく。
【0149】
本発明の1つの特定の態様において、作用物質をT細胞上の細胞表面モイエティーと接触させることによって、T細胞を刺激することもできる。本発明の1つの局面においては、CD3およびICOSに対する抗体をaAPC上に負荷させる。本発明の別の局面においては、TCR/CD3複合体と結合して一次刺激シグナルを惹起する任意のリガンドを、aAPC上に負荷されるかまたはaAPCによって発現される一次活性化作用物質として、利用することができる。ICOSと結合してICOSシグナル伝達経路を開始させ、それによってCD3リガンドによる細胞の補助刺激を引き起こし、かつT細胞の集団の活性化を強化するあらゆるリガンドはICOSリガンドであり、そのため、本発明の文脈における補助刺激作用物質である。
【0150】
本発明の他の局面においては、T細胞をビーズに曝露させることができ、このビーズは、TCR/CD3複合体と結合して一次刺激シグナルを惹起する第1の作用物質と、ICOSと結合してICOSシグナル伝達経路を開始させ、それによってCD3リガンドによる細胞の補助刺激を引き起こし、かつT細胞の集団の活性化を強化する第2の作用物質とを含む。
【0151】
本発明の方法によって刺激された細胞は活性化され、これは、シグナル伝達の誘導、細胞表面マーカーの発現、および/または増殖によって示される。Th17細胞に関する適切なマーカーには、増大したレベルのIL-17A、IL-17F、およびCCL20を分泌するそれらの能力が非限定的に含まれる。さらに、本発明のICOS補助刺激法に従って生成させて増殖させた細胞は、CD28で補助刺激した細胞と比較して、Th17に関連したサイトカインの産生増大を呈するだけでなく、IFNγ、TNFα、およびIL-21の分泌増大も呈する。
【0152】
T細胞上のICOSの刺激を手段としてTh17細胞を生成させる状況においては、T細胞のTCR/CD3複合体と結合する第1の作用物質とICOSと結合する第2の作用物質とを含むようにaAPCを操作することができ、Th17分化を促進するサイトカインを含むようにaAPCをさらに操作することもできる。例示的なTh17分化サイトカインには、IL-2、IL-6、IL-23、およびIL-1が非限定的に含まれる。
【0153】
したがって、ある局面において、本発明は、刺激作用物質、補助刺激作用物質、および/またはサイトカイン、ならびに他のポリペプチドを発現するように遺伝的に改変されたaAPCを含む。本発明は、少なくとも1つのサイトカインをコードする核酸が形質導入されたaAPCを範囲に含む。細胞を遺伝的に改変するための本明細書に開示された方法または当技術分野において公知の方法を用いて、Th17分化を促進する任意の望ましいサイトカインを発現して分泌するようにaAPCを操作することができる。
【0154】
したがって、本発明の範囲に含まれるサイトカインは、完全長のサイトカイン、その断片、相同体、変異体、または突然変異体を含む。サイトカインには、別の細胞の生物学的機能に影響を及ぼしうるタンパク質が含まれる。サイトカインによって影響を受ける生物学的機能には、細胞増殖、細胞分化、または細胞死が非限定的に含まれうる。好ましくは、本発明のサイトカインは、細胞の表面上の特定の受容体と結合して、それにより、細胞の生物学的機能に影響を及ぼすことができる。好ましくは、サイトカインはTh17分化を促進する。
【0155】
好ましいサイトカインには、いくつか例を挙げると、造血因子、インターロイキン、インターフェロン、免疫グロブリンスーパーファミリー分子、腫瘍壊死因子ファミリー分子、および/またはケモカインが含まれる。本発明のサイトカインには、とりわけ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-21(IL-21)、インターロイキン-23(IL-23)、インターフェロンα(INFα)、インターフェロンβ(IFNβ)、インターフェロンγ(IFNγ)、およびIGIFが非限定的に含まれる。本発明のより好ましいサイトカインには、IL-2、IL-6、IL-1(例えば、IL-1β)を非限定的に含む、Th17分化を促進するサイトカインが含まれる。当業者は、本明細書に提供された教示を受ければ、本発明が、当技術分野において公知のもの、ならびに将来発見されるあらゆるものといった、あらゆるTh17分化促進性サイトカインを範囲に含むことを了解するであろう。
【0156】
Th17分化促進性サイトカインを含むようにaAPCを操作することに加えて、Th17分化過程に干渉するサイトカインを阻止しうる阻害分子を含むように、aAPCを操作することもできる。例えば、Th17分化に干渉するサイトカインを阻害しうる中和抗体を分泌するように、aAPCを操作することができる。Th17分化過程に干渉するサイトカインには、IFNγおよびIL-4が非限定的に含まれる。
【0157】
Th17分化を促進する所望のサイトカインおよび/またはTh17分化に干渉するサイトカインの阻害物質を発現するようにaAPCが操作されている場合、本発明は、外因性に添加されるサイトカインの非存在下において、Th17分化を促進させるために、T細胞の集団を活性化および/または刺激するための方法を提供する。さらに、そのようなTh17分化がインビボで起こってもよい。
【0158】
別の態様において、本発明のICOSで刺激した細胞を、抗原特異的であるようにさらに操作することができる。例えば、ICOSで刺激した細胞を、抗腫瘍活性を呈するようにさらに遺伝的に方向転換させることができる。1つの態様においては、Th17偏向性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-23、ならびにIL-4およびIFNγに対する中和抗体)の存在下で、T細胞をICOS補助刺激に供する。これらのICOSで刺激した細胞は、遺伝的に方向転換させると、慣例的にCD28によって増殖させた細胞と比較して、より優れた腫瘍縮退を媒介することができる。例えば、抗CD3/ICOSLを用いてT細胞を増殖させ、続いて、所望の腫瘍抗原に対する特異性を付与するために、キメラ免疫受容体によって遺伝的に改変する。本発明のこの局面は、Th17偏向条件において、ICOSシグナル伝達は、CD28を用いて生成させたものを上回る抗腫瘍能を有する炎症性ヒトT細胞の生成を促進するという発見に基づく。本発明以前には、CD28補助刺激分子はヒトT細胞を増殖させるために用いるのに好ましいと判断されていたため、ICOSシグナル伝達にCD28を上回る利点があることは、予期せぬ発見であった。
【0159】
当業者には、本明細書に記載された細胞刺激法を種々の環境(すなわち、容器)内で実施しうることが容易に理解できよう。例えば、そのような容器は、培養フラスコ、培養バッグ、または好ましくは無菌環境で細胞を保持することが可能な任意の容器であってよい。本発明の1つの態様において、バイオリアクターも有用である。例えば、いくつかの製造元は現在、細胞を成長させるために用いることができ、本発明の方法と組み合わせて用いることのできる装置を製造している。例えば、バイオリアクターを対象とする特許、例えば米国特許第6,096,532号;第5,985,653号;第5,888,807号;第5,190,878号などを参照されたく、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0160】
細胞集団
Tヘルパー細胞(エフェクターT細胞またはTh細胞としても知られる)は、免疫系の能力の確立および最大化において、特に他の免疫細胞の活性化および方向づけにおいて重要な役割を果たすリンパ球(白血球の1つの型)のサブグループである。分化過程の結果として生じ、特異的な表現型を伴う、さまざまな種類のTh細胞が同定されている。T細胞発生の後に、成熟したナイーブ(それらが応答しうる抗原に、それらが一度も曝露されていないことを意味する)T細胞は胸腺から離れ、全身に広がり始める。ナイーブT細胞は、T-ヘルパー1(Th1)、T-ヘルパー2(Th2)、T-ヘルパー17(Th17)、または調節性T細胞(Treg)表現型へと分化しうる。
【0161】
これらのTh細胞型のそれぞれは、Th細胞を含む他の白血球を刺激するかまたはそれと相互作用するサイトカイン、タンパク質、またはペプチドを分泌する。しかし、各細胞型は、他のものに干渉して、しばしば対立する、特異な表現型および活性を有する。
【0162】
Th1、Th2、およびTh17(炎症性Tヘルパーまたは炎症性Th)は、IL-1、IL-6、TNF-α、IL-17、IL21、IL23などの炎症誘発性サイトカインの分泌を介して、ならびに/または他のTh細胞を含む他のT細胞の活性化および/もしくは阻害(例えば、Th1細胞はTh2およびTh17を抑制し、Th2はTh1およびTh17を抑制する)を介して、炎症反応を促進する。Tregはそうではなく、免疫反応に関連する他の細胞の生物学的活性を抑制する免疫系の構成要素である。特に、Tregは、免疫抑制サイトカインTGF-βおよびインターロイキン10を分泌することができ、炎症を制限または抑制しうることが知られている。
【0163】
本発明は、ICOS補助刺激がTh17細胞の増殖に寄与するという発見に基づく。例えば、CD4+ T細胞はTh17偏向性サイトカインの存在下でICOS補助刺激によって活性化されて、Th17の特徴を呈した。そのような方法は、患者への注入用の細胞を活性化および刺激するためにエクスビボ環境で治療的に用いることができ、または、標的細胞集団に対して細胞シグナル伝達イベントを誘導するためにインビボで用いることもできると考えられる。
【0164】
Th17細胞、またはTh17細胞表現型を呈する別の細胞は、使用される条件に応じて、種々の特異的な表現型特性を有しうる。そのような表現型特性には、IL-17AおよびIFNγの産生が含まれる。さらに、本発明の方法に従って増殖させた細胞は、それらの初代増殖後にIL-17AおよびIFNγイベントの両方を産生し続ける。場合によっては、ICOSと係合させた細胞は、それぞれTh17細胞およびTh1細胞の発生を調節する転写因子であるRORγtおよびT-betの両方を共発現した。場合によっては、ICOSと係合させた臍帯T細胞は、臍帯Th17細胞に関連した表現型マーカーであるIL-23RおよびCD161をその細胞表面上に共発現した。場合によっては、ICOSで刺激した細胞はRORγtを発現した。
【0165】
1つの態様において、本発明は、ICOS係合後に、CD28係合と比較してより高いレベルのCCL20、IL-17F、およびIFNγを分泌する、ICOS+CD28+臍帯血Th17前駆細胞の精製された集団を提供する。ICOS係合はICOS+CD28+前駆Th17細胞の機能を増強しただけでなく、その増殖も促進した。臍帯血由来のCD4細胞のこの新たなサブセットは、胸腺から移出して間もないものと考えられ、ICOSを構成性に発現し、ICOS係合を介してTh17細胞としてインプリントされている。CD4細胞のこの新たなサブセットは、抗腫瘍能を伴う炎症特性を呈する。さらに、本明細書に提示された本開示は、ICOSシグナル伝達が、CD28を用いて生成させたものを上回る抗腫瘍能を有する炎症性ヒトT細胞の生成を促進することを実証している。本発明の細胞は、癌、感染症、および自己免疫の患者に対する免疫療法の設計のための臨床応用に用いることができる。
【0166】
本発明のT細胞集団はまた、抗原特異的T細胞、例えば腫瘍抗原特異的T細胞でもありうる。ある態様においては、本発明のICOS刺激法に従って抗原特異的T細胞を生成させることができる。ある態様においては、抗原特異的T細胞を、それを必要とする哺乳動物に対して抗腫瘍療法として投与することができる。
【0167】
治療法
本発明の範囲に含まれるaAPCにおいて、補助刺激リガンドは補助刺激分子に特異的に結合するコグネイト結合パートナーであり、さらにこのリガンドは補助刺激分子に特異的に結合する抗体であり、およびそれらの任意の組み合わせであり、そのため単一のaAPCが、補助刺激リガンドおよび/またはT細胞上に存在する補助刺激分子に対して特異的な抗体をコードする両方の核酸、およびそれらの任意の組み合わせを含むことができる。好ましくは、aAPCはICOSに対するリガンドを含む。これは、本発明が、CD28補助刺激ではなくICOS補助刺激が、Th17表現型を有する細胞を選好的に増殖させるという驚くべき発見に基づくためである。
【0168】
1つの態様において、本発明は、T細胞上のICOSを活性化して、インビボでT細胞を追加刺激することのできるaAPCを範囲に含む。例えば、本発明は、インビボでT細胞を追加刺激するためにICOSL aAPCを用いることを含む。T細胞を事前にインビトロで操作し、患者への注入後に、ICOSL aAPCワクチン接種によって追加刺激することができる。または、ICOSL aAPCに抗原を負荷させて、Th17応答を刺激するための初回刺激ワクチンとして用いることもできる。
【0169】
本発明の別の局面においては、抗原特異的T細胞を活性化する方法が提供される。本方法は、T細胞を、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質(例えば、抗CD3抗体)およびT細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質(抗ICOS抗体)と接触させる段階を含む。好ましくは、T細胞をTh17偏向性サイトカインの存在下で培養し、その時に、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質(例えば、抗CD3抗体)およびT細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質(抗ICOS抗体)によって、T細胞を刺激する。ICOSで刺激されたT細胞を、続いて、腫瘍抗原を認識する所望のキメラ抗原受容体によって遺伝的に方向転換させる。したがって、本発明の1つの態様は、T細胞を抗原と接触させる前に、ICOSで刺激したT細胞集団を生成させることを含む。
【0170】
ある態様においては、T細胞の集団をまず抗原と接触させ、続いて本発明によるICOS刺激に供する。1つの特定の態様においては、単独もしくはアジュバントを伴う特定の抗原による患者のワクチン接種、または樹状細胞に対するパルス刺激によって、抗原特異的T細胞を誘導する。また、本発明のICOS刺激法を用いる増殖に用いるための抗原特異的細胞をインビトロで生成させてもよい。
【0171】
本発明の別の局面は、抗原特異的T細胞を増殖させるための方法を提供し、本方法は、T細胞の集団を、前記抗原に対して特異的なT細胞の活性化を誘導するのに十分な時間にわたって抗原と接触させる段階;前記抗原特異的T細胞の集団をエクスビボで、本発明のICOS刺激法に従って、前記抗原に対して特異的なT細胞の増殖を誘導するのに十分な条件および時間の下で接触させ、それにより、抗原特異的T細胞を増殖させる段階を含む。1つの態様において、抗原は腫瘍抗原である。別の態様において、抗原を抗原提示細胞に対してパルス刺激するか、またはその上で発現させる。1つのさらなる態様において、T細胞の集団をインビボで前記抗原と接触させる。さらに別の態様において、T細胞の集団をエクスビボで前記抗原と接触させる。別の態様において、本方法は、前記抗原特異的T細胞の少なくとも1回のペプチド-MHCテトラマー分取を含む。ある態様において、本発明の方法は、前記抗原特異的T細胞の少なくとも1回のペプチド-MHCテトラマー磁性選択をさらに含む。
【0172】
本発明の別の局面は、癌の治療のための方法であって、癌患者に対して、本明細書で提供した方法に従って増殖させた抗原特異的T細胞を投与する段階を含む方法を提供する。
【0173】
本発明に従って生成された細胞を、自己免疫疾患を治療するために用いることもできる。自己免疫疾患の例には、後天性免疫不全症候群(AIDS、これは自己免疫要素を持つウイルス疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルー疱疹状皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円盤状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スチル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨症、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、感染性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、これは全身性硬化症(SS)としても知られる)、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症が非限定的に含まれる。
【0174】
また、本発明に従って生成された細胞を、炎症性疾患を治療するために用いることもできる。炎症性疾患の例には、慢性および急性の炎症性疾患が非限定的に含まれる。炎症性疾患の例には、アルツハイマー病、喘息、アトピー性アレルギー、アレルギー、アテローム性動脈硬化、気管支喘息、湿疹、糸球体腎炎、移植片対宿主病、溶血性貧血、変形性関節症、敗血症、脳卒中、組織および臓器の移植、血管炎、糖尿病性網膜症、ならびに人工呼吸器誘発肺損傷が含まれる。
【0175】
本発明はまた、動物における癌または悪性細胞の存在を予防するため、阻害するため、または減少させるための方法を提供し、本方法は、本発明の抗腫瘍細胞の抗癌有効量を動物に投与する段階を含む。
【0176】
免疫応答をそれに対して誘導させる、またはその存在を予防、阻害、もしくは減少させようとする、本発明によって想定される癌には、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、形質細胞腫、肉腫、神経膠腫、胸腺腫、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腎癌、腎細胞癌、膵癌、食道癌、脳悪性腫瘍、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、肝細胞癌、鼻咽頭癌、ALL、AML、CML、CLL、および当技術分野において公知の他の新生物が非限定的に含まれうる。
【0177】
または、本明細書に記載された組成物を、ウイルス(例えば、一本鎖RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、二本鎖DNAウイルス、HIV、A型、B型、およびC型肝炎ウイルス、HSV、CMV、EBV、HPV)、寄生生物(例えば、プラスモジウム属種、リーシュマニア属種、住血吸虫属種、トリパノソーマ属種などの原生動物病原体および後生動物病原体)、細菌(例えば、マイコバクテリア、サルモネラ、連鎖球菌、大腸菌、ブドウ球菌)、真菌(例えば、カンジダ属種、アスペルギルス属種)、およびニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)などの病原微生物に対する反応性を誘導または強化するために用いることもできる。
【0178】
本発明の主題の組成物を投与することによって動物において誘導される免疫応答には、腫瘍および感染細胞を死滅させることのできるCD8+ T細胞によって媒介される細胞性免疫応答、ならびにCD4+ T細胞応答が含まれうる。CD4+ T細胞による活性化の後に抗体を産生するB細胞によって主として媒介される体液性免疫応答を誘導することもできる。種々の手法を、本発明の組成物によって誘導された免疫応答の型を分析するために用いることができ、それらは当技術分野において詳細に記載されている;例えば、Coligan et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons Inc., 1994を参照のこと。
【0179】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療量」が記されている場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者の状態の個々の違いを考慮した上で、医師によって決定されうる。本発明の主題の細胞を含む薬学的組成物は、適切な臨床試験の間に決定されることになる投与量で投与してよいと一般に言うことができる。また、本発明の細胞をこれらの投与量で複数回投与してもよい。個々の患者に対する最適な投与量および治療レジメンは、患者を疾患の徴候に関してモニターして、それに応じて治療を調節することにより、医学の当業者によって容易に決定されうる。
【0180】
本発明の細胞は、適切な臨床試験において決定されることになる投与量および経路および回数で投与することができる。細胞組成物を、これらの範囲内にある投与量で複数回投与してもよい。本発明の細胞を他の方法と併用してもよい。投与用の本発明の細胞は、治療法を受ける患者にとって自己、同種、または異種のいずれでもよい。所望であれば、治療は、免疫応答の誘導を強化するために、本明細書に記載したように、マイトジェン(例えば、PHA)またはリンホカイン、サイトカインおよび/またはケモカイン(例えば、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1-αなど)の投与も含みうる。
【0181】
本発明の細胞の投与は、あらゆる従来の様式で行うことができる。本発明の細胞は、患者に対して皮下、皮内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与することができる。場合によっては、本発明の細胞は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。また別の場合には、本発明の細胞はi.v.注射によって投与される。また別の場合には、本発明の細胞は腫瘍内またはリンパ節内に直接注射される。
【0182】
また、本発明の細胞を、いくつかのマトリックスを用いて投与することもできる。本発明では、そのようなマトリックスを、典型的にはT細胞のモジュレーションを通じて免疫系を支援し、維持し、またはモジュレートするための人工リンパ系器官として作用させる新しい状況で使用する。従って、本発明は、組織工学において有用性が実証されているマトリックス組成物および製剤を利用することができる。したがって、本発明の組成物、装置、および方法に用いうるマトリックスの種類は事実上制限がなく、生体マトリックスおよび合成マトリックスの両方が含まれてよい。1つの具体例では、米国特許第5,980,889号;第5,913,998号;第5,902,745号;第5,843,069号;第5,787,900号;または第5,626,561号によって記載された組成物および装置が利用され、そのようなこれらの特許はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。マトリックスは、哺乳動物宿主に投与した場合に生体適合性であることに一般的に関連する特徴を含む。マトリックスは、天然材料および/または合成材料で形成してよい。マトリックスは、インプラントのように永続的構造または除去可能な構造を動物の体内に残すことが望ましい場合には非生分解性であってもよく;または生分解性であってもよい。マトリックスは、スポンジ、インプラント、管、テルファパッド(telfa pad)、繊維、中空糸、凍結乾燥成分、ゲル、粉末、多孔性組成物、またはナノ粒子の形態をとりうる。加えて、マトリックスを、播種された細胞または産生されたサイトカインもしくは他の活性物質の持続放出が可能になるように設計することもできる。ある態様において、本発明のマトリックスは可撓性および伸縮性であり、無機塩、水性液、および酸素を含む溶存気体状物質などの物質を透過させる半固体スカフォールドとして記載することもできる。
【0183】
マトリックスは、本明細書において生体適合性物質の一例として用いられる。しかし、本発明はマトリックスには限定されないため、マトリックス(matrixまたはmatrices)という用語が出てきた場合、これらの用語はいずれも、細胞の保持または細胞の横断を可能にし、生体適合性であり、かつその物質自体が半透過性膜であるようにその物質中を直接高分子が横断するかまたは特定の半透過性物質とともに用いて高分子が横断することを可能にする、装置または他の物質を含むと解釈されるべきである。
【0184】
本発明の1つの局面において、本発明の細胞は、米国特許第6,464,973号に記載されたようなアジュバントとしてインビボで用いることができる。1つのさらなる態様において、本発明の細胞は、本明細書に記載されたもの(例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、自己抗原など)のような関心対象の抗原に対する免疫応答をインビボで誘導するためのワクチンとして用いることができる。1つの態様において、本発明の細胞は、単独で、または他の免疫調節物質と組み合わせて、および他の公知の治療法と組み合わせて投与して、インビボで免疫応答を生じさせるために用いることができる。
【実施例】
【0185】
ここで本発明を、以下の実施例を参照しながら説明する。これらの実施例は例示のみを目的として提供されるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるとは全く見なされるべきではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意かつすべての変更も範囲に含むとみなされるべきである。
【0186】
ヒトTヘルパー17(Th17)細胞は、宿主防御、自己免疫および腫瘍免疫を調節する。ヒトTh17細胞の発生を制御するサイトカインは同定されているものの、Th17細胞の生成のために重要な補助刺激分子は不明である。本発明は一部、誘導性補助刺激物質(ICOS)がヒトTh17細胞の分化および増殖のために決定的に重要であったという発見に基づく。ヒト臍帯血は、胸腺から移出して間もないものであり、ICOSを構成性に発現し、かつICOSシグナル伝達を通じてTh17細胞としてインプリントされるCD161+CD4+ T細胞のサブセットを含んでいた。ICOS刺激はこれらの細胞におけるc-MAF、RORC2およびT-betの発現を誘導し、CD28で刺激した細胞と比較して、インターロイキン-21(IL-21)、IL-17およびインターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌増加を導いた。その反対に、CD28連結はICOS補助刺激を無効化して、RORC2発現を減衰させる一方で芳香族炭化水素受容体の発現を促進し、ICOSで刺激した細胞と比較してIL-17の分泌減少およびIL-22の産生増大を導いた。さらに、ICOSはIL-17+IFN-γ+ヒトT細胞の活発な増殖も促進し、大きなヒト腫瘍を担持するマウスへの養子移入後のこれらの細胞の抗腫瘍活性は、CD28を用いて増殖させた細胞のものよりも優れていた。ICOSで増殖させた細胞の治療有効性には、インビボでの機能性および生着の増大が関連していた。これらの知見は、ヒトTh17細胞の生成および維持におけるICOSシグナル伝達の極めて重要な役割を明らかにするとともに、この経路の構成要素を癌または慢性感染症を治療するために治療的に標的化しうる可能性、およびその反対にこの経路の途絶が多発性硬化症および他の自己免疫症候群において有用である可能性を示唆する。これらの知見により、腫瘍免疫療法に関する新たな臨床試験を設計する根拠が得られた。
【0187】
本明細書に開示された実験に使用した材料および方法について、以下に説明する。
【0188】
細胞の精製
血液試料は、University of PennsylvaniaのHuman Immunology Coreから入手した。記載された通りに(Acosta-Rodriguez et al., 2007 Nat. Immunol. 8:639-646;Liu et al., 2006 J. Exp. Med. 203:1701-1711;Rasheed et al., 2006 Eur. J. Immunol. 36:1892-1903)、末梢血CD4+ T細胞を陰性的に単離し、純度が95%を上回るTH1、TH2、Th17、TregおよびTFH CD4+ T細胞の成人サブセットをさらに精製した。
【0189】
ビーズまたはaAPCによるT細胞活性化
刺激のために、1×106個のCD4+ T細胞を、CD3、CD28および/もしくはICOSに対する抗体をコーティングした3×106個の活性化ビーズ、またはCD80、CD86、CD70、ICOSL、OX40Lもしくは4-1BBLを担持する0.5×106個のCD32形質導入aAPCのいずれかとともに培養した。aAPC生成およびT細胞増殖の方法は他所に記載されている(Parry et al., 2009 J. Immunol. 171:166-174;Suhoski et al., 2007 Mol. Ther. 15:981-988)。培養物を細胞体積に関してモニターし、Coulter Multisizer 3(Beckman Coulter)によって数値化した。
【0190】
細胞培養ならびにTH1、TH2、Th17およびTreg細胞への偏向
細胞を、以前に記載された通りに37℃および5% CO2のインキュベーター内のRPMI 1640培地中で培養した(Turka et al., 1990 J. Immunol. 144:1646-1653)。偏向実験のために、抗体をコーティングしたビーズまたはaAPCとともに細胞を播種した。以前に記載された通りに(Suhoski et al., 2007 Mol. Ther. 15:981-988;Maus et al., 2002 Nat. Biotechnol. 20:143-148)、IL-2(50〜100 IU/ml)を第3日に添加し、培地を交換した。Th17細胞偏向に関しては、指定の通りに、IL-1b(10ng/ml)、IL-6(10ng/ml)、IL-23(20ng/ml)ならびにIL-4およびIFN-γに対する中和抗体(10mg/ml)(eBioscience)を第0日に添加し、実験全体を通じて維持した。実験は、TGF-βの内因性供給源を含むウシ胎仔血清を用いて行った。示されている実験では、IL-21(25ng/ml)(eBioscience)およびIL-2に対する抗体(5mg/ml)(R&D Systems)を、Th17偏向性T細胞に添加した。
【0191】
TH1細胞偏向に関しては、IL-12(5ng/ml)およびIL-4に対する中和抗体(eBioscience)を第0日に添加した。TH2細胞偏向に関しては、IL-4(5ng/ml)およびにIFN-γに対する中和抗体(eBioscience)を第0日に添加し、実験全体を通じて維持した。Treg細胞偏向に関しては、TGF-β(5ng/ml)およびラパマイシン(50ng/ml)を第0日に添加し、実験全体を通じて維持した。細胞内染色および/またはELISAのために、細胞および上清を、短期および長期の初代および二次培養物の全体からさまざまな日数で採取した。
【0192】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
RNAqueous単離キット(Ambion)を用いてRNAを抽出し、続いて、iScript cDNA Synthesis(Bio-Rad)を用いて相補的DNA(cDNA)を転写させて、指定された試料からのTaqmanポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のためのテンプレートとして用いた。RORC2、Tbx21(T-bet)、FoxP3、AHR、c-MAF、IL-17A、IL-21およびIL-23Rの発現を、特異的プライマーおよびプローブ(Applied Biosystems)を用いて、Applied Biosystems 7500 FastSystemによって評価した。遺伝子発現は、ヒト遺伝子b-アクチンの発現に対して正規化した。操作していないCD4+ T細胞を参照基準として用いて相対的定量を行った。
【0193】
表面染色および細胞内染色
細胞内サイトカイン染色のために、細胞を、PMA(20ng/ml)(Sigma)およびイオノマイシン(2mg/ml)(Sigma)およびGolgiStop(BD)とともに5時間インキュベートした。表面染色を行った後に、以前に記載された通りに、LSR II(BD Biosciences)フローサイトメーターおよびFlowJoソフトウエア(TreeStar Inc.)を用いて細胞内染色を行った。RORC2、T-betおよびFoxP3は、FoxP3染色緩衝液(eBioscience)を用いて染色した。
【0194】
マウス
University of Pennsylvaniaの施設内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)が、すべての動物実験を承認した。NSGマウスをThe Jackson Laboratoryから購入し、University of Pennsylvaniaの飼育室で飼育した。マウスは規定の無菌条件下のマイクロアイソレーターケージに収容し、オートクレーブ処理した食餌および酸性水を自由摂取させた。
【0195】
抗メソテリンCAR T細胞のインビボ評価
4-1BBおよびT細胞受容体z(TCRz)シグナル伝達ドメインを含むキメラ型抗メソテリン単鎖可変断片(scFv)融合タンパク質を、以前に記載された通りに作製した(Carpenito et al., 2009 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106:3360-3365)。Th17細胞の養子移入の前に、NSGマウスに、以前に記載された通りにM108異種移植片腫瘍を成立させた(Carpenito et al., 2009 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106:3360-3365)。腫瘍をキャリパーで測定し、長さと幅を掛け合わせることによってそれらの面積を計算した。
【0196】
統計分析
腫瘍成長データは、生命表法により、保存的Bonferroni補正アプローチを用いる線形混合効果モデルを用いて分析した。P<0.005の値を統計学的に有意とみなした。他のデータは、分散分析(ANOVA)Scheffe検定またはStudentのt検定によって分析した。P=0.05の値を統計学的に有意とみなした。
【0197】
本明細書に開示された実験の結果を以下に説明する。
【0198】
実施例1:ICOSおよびCD28はヒトCD4+ T細胞サブセットに対して明確に異なる影響を及ぼす
ICOSは当初、活性化の後のみにT細胞上で発現される分子として同定された(Hutloff et al., 1999 Nature 397:263-266)。後に、マウス休止エフェクターメモリーT細胞、Treg細胞および濾胞ヘルパーT(TFH)細胞の亜集団においてICOSの構成性発現が見いだされた(Burmeister et al., 2008 J. Immunol. 180:774-782;Ito et al., 2008 Immunity 28:870-880;King et al., 2008 Annu. Rev. Immunol. 26:741-766)。ヒトTh17細胞が最近同定されたことから、ICOSもこれらの細胞上で構成性に発現されるか否かを検討するための実験をデザインした。休止末梢血CD4+ T細胞を、ケモカイン受容体および他の細胞表面分子の発現に基づいて、さまざまなサブセットとして分取した。この戦略により、TH1(CXCR3+CCR4-CCR6-)、TH2(CCR4+CXCR3-CCR6-)、Th17(CCR4+CCR6+)、Treg(CD25+CD127lo)およびTFH(CXCR5+CD45RO+)のサブセットが得られた(Acosta-Rodriguez et al., 2007 Nat. Immunol. 8:639-646;Liu et al., 2006 J. Exp. Med. 203:1701-1711;Rasheed et al., 2006 Eur. J. Immunol. 36:1892-1903)。驚いたことに、Th17サブセットの細胞の40%はICOSを構成性に発現したが、一方、TH1およびTH2サブセットはICOSを発現しなかった(図1Aおよび1B)。予想された通り、TregおよびTFHサブセットはICOSを構成性に発現したが(Burmeister et al., 2008 J. Immunol. 180:774-782;Ito et al., 2008 Immunity 28:870-880;King et al., 2008 Annu. Rev. Immunol. 26:741-766)、一方、すべてのサブセットがCD28を高レベルで構成性に発現した(図1Aおよび1B)。
【0199】
ヒトT細胞サブセットがさまざまな量のICOSおよびCD28を構成性に発現することを受けて、各サブセット上でのこれらの特定の分子を介したシグナル伝達の機能的影響を評価するために、次の一連の実験をデザインした。すなわち、サブセットを上記の通りに分取し、続いて、CD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体によって刺激した。IL-2、IL-4、インターフェロン-γ(IFN-γ)、IL-10、IL-22、IL-17A、IL-17F、CCL20およびIL-21の産生を、固相酵素免疫アッセイ(ELISA)によって測定した(図1C)。
【0200】
予想された通り、Treg細胞を除くすべてのサブセットが、CD28補助刺激後にかなりの量のIL-2を分泌した(図1C、i)。対照的に、ICOS補助刺激はIL-2分泌を誘発せず、これは、CD28はT細胞によるIL-2産生を媒介するがICOSはそうでないという以前の知見を裏づけるものであった(Riley et al., 2005 Blood 105:13-21;Parry et al., 2009 J. Immunol. 171:166-174)。その上、CD28はTH2細胞によるIL-4産生を誘導したが、ICOSはそうでなかった(図1C、ii)。IL-10およびIL-22の分泌はCD28補助刺激およびICOS補助刺激のいずれにおいてもサブセット特異的な様式で誘発されたが、ほとんどのサブセットではCD28補助刺激の方がより多くの量のこれらのサイトカインを誘導した(図1C、ivおよびv)。対照的に、Th17細胞のICOS補助刺激は、CD28補助刺激と比較して、IL-17A、IL-17F、CCL20およびIL-21の有意に多い産生をもたらした(図1C、vi〜ix)。注目すべきこととして、ICOSで刺激したTh17細胞は、IFN-γ分泌の主要な源であると報告されているサブセットである、CD28で刺激したTH1細胞よりも多くの量のIFN-γを産生した(図1C、iii)。ICOS補助刺激はTh17細胞機能を増強したものの、興味深いことにこのシグナルはTH1細胞機能もTH2細胞機能も増幅させず、これはこれらの細胞がICOSを持たないためである可能性が高い。
【0201】
実施例2:ICOSはヒトTh17細胞分化を推進する
補助刺激分子は、T細胞応答の開始に決定的な役割を果たすが(Greenwald et al., 2005 Annu. Rev. Immunol. 23:515-548;Smith et al., 1994 Cell 76:959-962)、ヒトTh17の機能に対するそれらの個々の影響は依然として不明である。Th17機能に対するそれらの各々の影響を解明するために、末梢血CD4+ T細胞を、CD86、CD80、CD70、ICOSL、OX40Lまたは4-1BBLを発現するように操作した、OKT3が負荷された人工APC(aAPC)によって活性化し、続いてこれらの細胞をTh17偏向条件(TGF-βの内因性供給源を含む血清中のIL-6、IL-1b、IL-23、中和性IFN-γおよび中和性IL-4抗体)下で培養した。IL-17F分泌を再現性を伴って誘導したのはICOS補助刺激のみであり(図2A)、このことは、ICOSがヒトTh17細胞発生において特有の役割を果たしている可能性があるという考え方を裏づける。
【0202】
次の一連の実験は、ICOS係合のみで、偏向させていないバルクCD4+ T細胞によるIL-17F分泌を誘導するのに十分であるか否かを評価するためにデザインした。ICOS係合は、Th17偏向条件の非存在下では、有意なIL-17F産生を促進するのに十分ではないことが観察された。しかし、Th17偏向条件の存在下では、ICOSはバルクCD4+ T細胞からのIL-17F分泌を誘導した(図2B)。ビーズまたはaAPCのいずれかを介したICOSシグナルの送達は、IL-17F分泌を誘導するのに等しく有効であった(図2B)。このように、ICOSは、既に分化したCCR4+CCR6+Th17細胞におけるIL-17F分泌を増強するのには十分であったが(図1C)、それはTh17偏向条件の非存在下ではバルクCD4+ T細胞によるIL-17F分泌を誘導することができなかった(図2B)。このようにIL-17Fを検出できなかったのは、一部には、バルクCD4+ T細胞におけるTh17細胞の頻度の低さに起因する可能性がある。マウスTh17細胞の分化のためには、ICOS補助刺激およびCD28補助刺激の両方が必要である(Park et al., 2005 Nat. Immunol. 6:1133-1141)。このため、それらは併用下でヒトTh17機能も増強すると予想される。その反対に、ICOSへのCD28の添加は、IL-17F分泌(図2C)およびIL-17AメッセンジャーRNA(mRNA)発現を顕著に低下させた(図2D)。しかしながら、これらのシグナルを組み合わせても、IL-2、IL-10およびIL-22分泌のいずれに対しても同様の「ベト効果(veto effect)」は発揮されなかった(図2、E〜G)。CD28はヒトTh17細胞を増殖させるためにしばしば用いられることを考慮すれば、これらのデータは驚くべきものである。
【0203】
実施例3:ICOSはIL-17A+IFN-γ+ヒトCD4+ T細胞の集団を増殖させる
ICOSはヒトTh17細胞機能を初期の時点(活性化後の第3日)で増強したものの、ICOSがそれらの長期的発生を支援するか否かは依然として不明である。この疑問に対処するために、CCR4+CCR6+CD4+ T細胞の頻度および絶対数を、それらの初代増殖期間を通じて測定した。ベースラインでは、CCR4+CCR6+CD4+ T細胞の頻度はほぼ16%であった(図3A)。しかし、CD28で補助刺激した培養物では、これらの細胞の頻度の漸進的低下が観察された。対照的に、ICOSで補助刺激した培養物ではCCR4+CCR6+CD4+ T細胞の頻度は安定しており、幾分上昇さえしていた。それらの絶対数をCD28を用いて増殖させたものと比較したところ、ICOSによるこれらの細胞の選択的生育は明らかであった(図3B)。ICOSで刺激した培養物では、CCR4+CCR6+CD4+ T細胞の数は30倍以上に増加し、一方、CD28で刺激した培養物では、それらの数は5日間は増加し、その後はベースラインに戻った。CD28によって推進させた培養物は、報告されている通り(Bondanza et al., 2006 Blood 107:1828-1836)、セントラルメモリー様(CD62LhiCD27hi)表現型を有する細胞の頻度がより高く、一方、ICOSで推進させた培養物ではエフェクターメモリー様(CD62LloCD27lo)表現型を有する細胞の頻度がより高かった(図3C)。ヒトTh17細胞機能に対するCD28またはICOSの影響を経時的に評価するために、次の一連の実験をデザインした。CD28で補助刺激した培養物では、Th17偏向性CD4+ T細胞は最初の5〜7日間の増殖後にIL-17Aを産生し(図3D)、これは以前の報告に一致した。しかし、IL-17A、またはIL-17AおよびIFN-γの両方を産生する、CD28と係合させたTh17偏向性細胞の頻度は、それらの初代増殖の終了時までにベースラインレベル近くまで低下した。対照的に、ICOSで補助刺激した培養物ではこれらの細胞の頻度は経時的に上昇し(図3D)、この所見は数個の独立した培養物でも再現された。ICOSと係合させた細胞は、Th17およびTH1分化のマスター調節因子である転写因子RORC2およびT-betの両方を、CD28と係合させた細胞よりも高いmRNA濃度で経時的に共発現した(図3Fおよび3G)。このように、ICOSはIL-17A+IFN-γ+CD4+ T細胞の集団を増殖させ(図3E)、これはRORC2およびT-betの発現と相関する。
【0204】
実施例4:ICOSおよびCD28は臍帯血由来のTh17細胞の発生において明確に異なる役割を果たす
以上のデータから、ICOSがエフェクターヒトTh17細胞を選好的に増殖させることが指し示されたが、これらのデータはICOSがナイーブCD4+ T細胞からのそれらの発生を支援するか否かについては見極めていない。Bauquetらは、ICOSはマウスTh17細胞の増殖のためには極めて重要であるが、その発生に対してはそうでないことを報告している(Bauquet et al., 2009 Nat. Immunol. 10:167-175)。このため、ナイーブCD4+ T細胞がICOSシグナル伝達を介してTh17細胞に選好的に分化するか否かを明らかにするために、次の一連の実験をデザインした。これを検証するために、臍帯血(UCB)由来のナイーブCD45RA+CD25-CD4+ T細胞を分取し、Th17偏向条件下で培養して、CD28および/またはICOSに対する抗体を担持するCD3ビーズに対する抗体によって活性化した。一次(第11日)および二次(第18日)刺激後に、この培養物の機能および表現型を評価した(図4のスキーム)。ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)-イオノマイシン活性化の後に、IL-17A、IFN-γ、IL-2および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を測定した。ICOSと係合させた細胞の40%超はIL-17AのみまたはIFN-γのみを産生したこと、およびICOSと係合させた細胞のほぼ20%が両方のサイトカインを分泌したことが観察された。対照的に、CD28と係合させた細胞のほとんどはIL-17Aを産生しなかった(図4Aおよび4B)。CD28補助刺激またはCD28+ICOS補助刺激後に、これらの細胞のほぼ10%がIFN-γを産生し、かつこれらの細胞の50%超がIL-2を産生したことからみて、CD28はこれらの条件下で確かに機能的であった(図4Aおよび4C)。しかしながら、ICOS補助刺激のみの後でIL-2を分泌したのは細胞のほぼ10%に過ぎなかった(図4B)。CD28補助刺激とICOS補助刺激を組み合わせるとIL-17A産生が妨げられ、IFN-γはこれらの細胞によってCD28刺激のみの場合と同程度のレベルで産生された(図4C)。細胞のICOSとの一次係合はTNF-αおよびIL-17Aのかなり高度の共発現を誘導したが、CD28についてはそうでなかった。ヒトTh17細胞はUCB中のCD161+CD4+ T細胞前駆体から生じるため、CD161発現についても評価した(Cosmi et al., 2008 J. Exp. Med. 205:1903-1916)。ICOSと係合させた細胞の半数近くがCD161およびIL-23受容体(IL-23R)を共発現したが(図4B)、一方、CD28またはCD28+ICOSと係合させた細胞のうちIL-23RおよびCD161に関して陽性であったのは5%未満であり(図4Aおよび4C)、休止CD4+CD45RA+CD25- T細胞はこれらの細胞を0.5%未満しか含まなかった(図8)。二次増殖後の細胞の検討により、最初にICOSで刺激した細胞は多くの量のIL-17A、IFN-γおよびTNF-αを分泌し続け、これは二次補助刺激の様式とは独立していることが判明した(図4E)。同様に、これらの細胞のほぼ30%はIL-23RおよびCD161を共発現し続けた。しかし、最初にCD28またはCD28+ICOSで刺激したUCB Th17偏向性細胞のうちIL-17Aを分泌したものは、ICOSで再刺激した後でさえも事実上皆無であった(図4Dおよび4F)。このように、CD28補助刺激は、拮抗なしのICOS補助刺激による一次誘導後のIL-17A分泌を阻止しない(図4Bおよび4E)。これらのデータは、ナイーブヒトUCB CD4+ T細胞からのTh17発生のプログラミングにおけるICOSの重要な役割を示唆する。
【0205】
実施例5:ICOSはc-MAFおよびIL-21を誘導することによってヒトTh17機能を増強する
ICOSを介したヒトTh17細胞機能の強化の基礎にある機序を調べるために、次の一連の実験をデザインした。マウスにおいて、ICOSは転写因子c-MAFを誘導し、続いてそれがIL-21をトランス活性化して、Th17機能を増強する(Bauquet et al., 2009 Nat. Immunol. 10:167-175)。次の実験は、ICOSがIL-21分泌を増加させることから、ICOSがヒトTh17細胞でもc-MAFを誘導するか否かを評価するために行った(図1C、ix)。Th17表現型に向けて偏向させたヒトUCB CD4+ T細胞は、ICOS補助刺激により、CD28補助刺激と比較して、c-MAFおよびIL-21をかなり高いmRNA濃度で発現した(図5Aおよび5B)。末梢血ヒトTh17細胞でも同様の結果が観察された(図9)。このように、ICOSはCD28よりも多くの量のc-MAF発現を誘導し、これはICOSで刺激したヒトTh17細胞によるIL-21発現の増大に対応する。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、ICOSによって誘導されたIL-21は、ヒトTh17細胞機能の強化の原因の一部であると考えられている。このため、CD28で刺激したTh17偏向性UCB CD4+ T細胞に対する外因性IL-21の添加により、それらがIL-17Fを分泌する能力が高まるか否かを評価した。
【0206】
以前の研究に一致して(Yang et al., 2008 Nature 454:350-352)、CD28で刺激したTh17偏向性UCB細胞に対するIL-21の添加は、それらがIL-17Fを分泌する能力をある程度高めたが、ICOSで刺激したTh17偏向性UCB細胞によって達成されるレベルには至らなかった(図5C)。CD28で補助刺激したTh17細胞はICOSで刺激したものよりも有意に多くの量のIL-2を分泌することからみて、IL-2はCD28で刺激したTh17偏向性UCB細胞で観察された機能低下の原因である可能性があると考えられる。
【0207】
事実、IL-2を中和させた培養物ではIL-17F産生が増加した。その上、CD28で刺激したTh17偏向性UCB細胞の培養物における外因性IL-21とIL-2中和の併用はIL-17F産生をさらに増加させたが、それはやはり、IL-17F分泌を、ICOS刺激によって惹起されたものと同等なレベルまで誘導することはなかった(図5C)。したがって、ICOSで強化されたヒトTh17偏向性UCB細胞の機能の媒介には、c-MAF媒介性IL-21産生に加えて、他の因子が関与している可能性が高い。
【0208】
実施例6:ICOSはRORC2発現を誘導する
ICOSシグナル伝達がヒトTh17細胞の機能を増強する様式の基礎にある機序をさらに解明するために、ICOSが、それぞれTh17細胞、TH1細胞およびTreg細胞のマスター調節因子であるRORC2(RORgt)、T-bet(Tbx21)およびFoxP3の細胞発現をどのように調節しているかを調べるための実験を行った(Zhu et al., 2010 Annu. Rev. Immunol. 28:445-489)。このために、Th17偏向条件下で培養したナイーブUCB CD25-CD4+ T細胞におけるRORC2、T-betおよびFoxP3を、フローサイトメトリーによって経時的に測定した。ベースラインでは、細胞はRORC2、T-betおよびFoxP3をいずれも事実上全く発現しなかった;刺激から3〜5日後の各培養物では、一過性活性化に関連したそれらの発現の増加が認められた(図5Dおよび5E)。しかし、それらの初代増殖の終了時までに、ICOSで刺激した細胞の75%超はRORC2を発現したことが観察された(図5Dおよび5E、第7日〜第10日)。対照的に、RORC2、T-betおよびFoxP3を発現する、CD28で増殖させた細胞の頻度は漸進的に低下した(図5Dおよび5E)。同様に、ICOSはCD28よりも、RORC2およびT-betのmRNAの高度の発現を誘導したが(図5Fおよび5G)、一方、これらの細胞においてCD28はICOSよりも高度ではあるが一過性であるFoxP3のmRNA発現を誘導した(図5H)。
【0209】
末梢血データ(図2Fおよび図10)と同様に、CD28はICOSよりも、AHR転写物の高度の発現を誘導したが(図5I)、これはそれらのIL-22の産生増大をもたらした可能性が高い(図5J)。これらのデータは、AHRがT細胞によるIL-22産生と相関することを示したマウスにおける知見と一致する(Veldhoen et al., 2009 J. Exp. Med. 206:43-49;Veldhoen et al., 2008 Nature 453:106-109)。CD28またはICOSのいずれかで刺激した細胞におけるIL-10発現は同等であたが(図5K)、一方、IL-17A発現はICOSで刺激した細胞の方がCD28と比較して経時的に有意に高度であった(図5L)。ICOSで刺激した細胞において、RORC2転写物は、T-bet転写物およびFoxP3転写物と比較して、培養期間を通じて多くの量で安定して誘導された(図5F〜5H)。
【0210】
いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、CD28補助刺激によるIL-17Aの量は、TGF-βを添加しない血清中で細胞を分化させたために少ない可能性があると考えられる。事実、培養物にTGF-βを3-log10の範囲の濃度にわたって滴下したところ、CD28シグナルを用いて増殖させたTh17偏向性CD4+ T細胞によって産生されるIL-17Aの量は増加したが、ICOSで刺激した細胞によって達する量には至らなかった(図11)。これらのデータは、CD28で補助刺激したT細胞はその完全な炎症能力に到達していないTh17細胞で構成されるという考え方を強く裏づけるものである。さらに、それらにより、Th17細胞の炎症能力を調節する能力を持つ、微小環境ならびにCD28「ベト(veto)シグナル伝達」におけるTGF-βの利用可能性の重要性も明らかになった(図2Cおよび2D)。
【0211】
実施例7:UCB CD161+CD4+ T細胞はICOSを構成性に発現する
Th17細胞はCD161+CD4+UCBT細胞前駆体から生じること(Cosmi et al., 2008 J. Exp. Med. 205:1903-1916)、およびICOSはそれらの機能を増強するために決定的に需要であることを考慮して、これらの細胞がICOSを構成性に発現するか否かを調べるための実験を行った。末梢血CCR4+CCR6+CD4+ Th17細胞(図1Aおよび1B)と同様に、休止CD161+CD4+臍帯血T細胞のほぼ50%はICOSを発現した(図6A)。このため、ICOSを構成性に発現するCD161+CD4+ T細胞がICOS-CD161+CD4+ T細胞と表現型の上で異なるか否かを調べるための次の実験を行った。
【0212】
末梢血由来のICOS+細胞は主としてエフェクターメモリー細胞であることを考慮して、ICOS+CD161+CD4+臍帯血T細胞はICOS-CD161+CD4+ T細胞よりも高度に分化したサブセットであるとの仮説を立てた。予想外のことに、ICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞は、CD45RA、CD127、CD62LおよびCD27の同等な高発現、ならびに胸腺から移出して間もないものに典型的であるCD31の明瞭な発現によって示されるように(Kohler et al., 2009 Blood 114:290-298)、類似したナイーブ表現型を有していた(図6A)。
【0213】
実施例8:ICOS+CD161+CD4+ T細胞はICOSシグナル伝達を介してTh17細胞としてインプリントされる
次の一連の実験は、ICOSを発現するCD161+CD4+臍帯血T細胞がICOSシグナル伝達を介してヒトTh17細胞に分化するか否かを調べるためにデザインした。このために、Th17偏向条件下でCD3/CD28またはCD3/ICOSビーズのいずれかに対する抗体で刺激した、UCBから分取したICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞の機能を比較検討するための実験を行った。
【0214】
ICOS+CD161+CD4+ T細胞は、ICOS係合により、ICOS-CD161+CD4+ T細胞と比較して、より多くの量のIL-17F、CCL20およびIFN-γを分泌した(図6B)。対照的に、CD28係合は、ICOS-CD161+CD4+ T細胞によるものを幾分上回る、ICOS+CD161+CD4+によるIL-10およびIL-22の分泌を媒介した。さらに、CD28係合は、ICOS-CD161+CD4+ T細胞によるIL-4分泌も誘導した。注目すべきこととして、ICOS係合は、ICOS+CD161+CD4+ T細胞の頻度および全収量がより上回ることによって示されるように、それらの持続的増殖を促進したが、CD28係合はそうではなかった(図6C)。
【0215】
CD161+CD4+ T細胞はRORC2およびIL-23Rを構成性に発現すること、ならびにTh17偏向条件はこれらの分子の発現をさらにアップレギュレートさせることが報告されている(Cosmi et al., 2008 J. Exp. Med. 205:1903-1916)。本明細書に提示された結果からみて、ICOSを構成性に発現するCD161+CD4+ T細胞は、ICOS-CD161+CD4+ T細胞よりも、RORC2およびIL-23Rをより多いmRNA量で発現すると考えられる。さらに、いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、ICOS係合はICOS+CD161+CD4+ T細胞におけるRORC2およびIL-23R mRNAの発現をさらに増大させると考えられる。事実、休止ICOS+CD161+CD4+UCB T細胞は、休止ICOS-CD161+CD4+またはバルクUCB T細胞よりも、RORC2およびIL-23Rをより多いmRNA量で発現した(図12)。その上、ICOS係合は、ICOS+CD161+CD4+ T細胞において、ICOS-CD161+CD4+ T細胞と比較して、RORC2およびIL-23R mRNAのより高度の発現を誘導し(図6D)、これはそれらのIL-17FおよびCCL20分泌の増加に対応していた(図6B)。対照的に、CD28係合はICOS+CD161+CD4+ T細胞において、より多くの量のAHRのmRNA発現を誘導し(図6D)、これはそれらのIL-22産生の増大に一致した(図6B)。したがって、CD161に加えて、ICOSも、発生によってTh17細胞になるUCB CD4+ T細胞の表面マーカーである可能性がある。
【0216】
ICOS+CD161+CD4+ T細胞のICOSによる補助刺激がRORC2およびIL-17Aを特異的に誘導したことからみて、これらの細胞はICOSシグナルを介してTh17細胞としてインプリントされており、その結果、TH1-、TH2-およびTreg-偏向条件の存在下においてさえ、これらの細胞はIL-17Aを分泌し続け、TH1細胞、TH2細胞またはTreg細胞のそれぞれへの分化に抵抗すると考えられる。この考え方を検証するために、ICOS+CD161+CD4+ T細胞およびICOS-CD161+CD4+ T細胞を分取して、CD3/CD28またはCD3/ICOSをコーティングしたビーズに対する抗体で刺激し、続いて培地のみの中、またはTH1-、TH2-、Th17-およびTreg-偏向条件下で培養した。ICOS+CD161+CD4+ T細胞のICOS補助刺激は、TH1-、TH2-またはTreg-偏向条件下においてさえ、量はさまざまであるもののIL-17A分泌を誘導した(図6E)。対照的に、CD28による補助刺激は、Th17偏向条件の存在下においてさえ、少量のIL-17A分泌しか誘導しなかった(図6E)。バルクUCB CD4+ T細胞をTH1、TH2、Th17およびTreg細胞表現型に向けて偏向させる条件が有効であったのは、それらがそれぞれIFN-γ、IL-4、IL-17A分泌またはFoxP3発現を促進したためであった(図13)。対照的に、ICOS+CD161+CD4+ T細胞のICOS補助刺激は、それらのTH2またはTreg発生を助長する条件下で培養した場合にIL-4分泌を惹起せず、FoxP3発現を促進することができなかった(図13)。T細胞サブセット偏向条件および補助刺激の様式にかかわらず、IL-17Aを産生したICOS-CD161+CD4+ T細胞は5%未満であることが観察された(図6E)。したがって、本明細書に提示された結果は、Th17細胞に分化する能力を有する細胞は主としてCD161+CD4+UCB T細胞のICOS+サブセットに限られ、ICOSシグナル伝達を介してTh17細胞として迅速にインプリントされることを指し示している。
【0217】
実施例9:ICOSはT細胞媒介性腫瘍免疫を増強する
CD3/CD28ビーズに対する抗体を用いて増殖させ、遺伝的に方向転換させた末梢血T細胞は、ヒト腫瘍異種移植片を担持するマウスへの注入後に強固な抗腫瘍効果を媒介することが報告されている(Carpenito et al., 2009 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106:3360-3365)。Th17偏向条件の存在下におけるICOS補助刺激はインビトロでIL-17A+IFN-γ+Tリンパ球を生成させるという今回の知見を考慮して、これらの細胞が、遺伝的方向転換を受けた際に、ヒト腫瘍の成長にどのような影響を及ぼすかを調べるための実験をデザインした。この疑問を検証するために、バルク末梢血T細胞を、Th17偏向条件の存在下または非存在下で、CD3/CD28またはCD3/ICOSビーズに対する抗体を用いて増殖させた上で、メソテリン発現腫瘍に対する特異性を付与するために、それらをキメラ抗原受容体(CAR)によって遺伝的に改変した(図7のスキーム)。NOD/scid/IL-2Rgnullマウスの側腹部にヒト中皮腫細胞株M108を注射した上で、腫瘍負荷刺激後の第61日以後に、方向転換させた細胞の腫瘍内注射を行った。
【0218】
Th17サイトカインによって偏向させたICOS刺激T細胞を投与したマウスでは、他のいずれの治療群よりも優れた腫瘍縮退が観察された(P<0.005;図7Dと図7A〜7Cとの比較)。大きな腫瘍の縮退を媒介することができたのは、Th17偏向条件の存在下においてICOSで刺激した細胞のみであった(図7D)。CD28のみまたはCD28+Th17偏向条件によって刺激した細胞は腫瘍進行を緩徐化することができたが、長期間持続する腫瘍縮退を媒介することはできなかった(図7、A〜C)。ICOSで刺激した偏向性細胞の治療有効性は、エクスビボでの抗原認識後のそれらのIFN-γ分泌の増大(図7E)およびインビボでの生着増加(図7F)の結果である可能性がある。本明細書に提示された結果は、ICOSおよびその下流シグナル伝達経路を、Th17細胞の機能および数を改変させる癌免疫療法の開発のための標的として特定している。
【0219】
実施例10:誘導性補助刺激物質(ICOS)はヒトTh17細胞の発生のために決定的に重要である
系統発生的研究により、補助シグナル伝達分子ICOSはCD28の重複物として生じたこと、およびこのイベントが高親和性メモリー抗体応答の出現と同時に起こることが指し示されている(Bernard et al., 2007 Immunol. 31 :255-271)。ICOSパラログおよびCD28パラログの多くの様相は保存されているものの、いくつかの重要な違いが現れている。例えば、胸腺および末梢T細胞におけるヒトおよびマウスCD28の発現パターンはかなり異なる(Riley et al., 2005 Blood 105:13-21;Turka et al., 1990 J. Immunol. 144:1646-1653;Gross et al., 1992 J. Immunol. 149:380-388)。ヒトおよびマウスのCD4+ T細胞におけるICOS発現の違いは解明されており、ヒトとは異なり、マウスでは、胸腺から移出して間もないものの上ではICOSは発現されない(Burmeister et al., 2008 J. Immunol. 180:774-782)。ICOSを欠損したヒトはTFH細胞をほとんど持たず(Bossaller et al., 2006 J. Immunol. 177:4927-4932)、しかもTH1、TH2およびTh17応答が損なわれており(Takahashi et al., 2009 J. Immunol. 182:5515-5527)、このことはICOSシグナル伝達が複数のヒトCD4+ T細胞サブセットのホメオスタシスに対して非冗長的な役割を果たすことを示唆する。本明細書に提示された結果は、マウスとヒトとの間のこれらの違いのいくつかは、ヒトの方がマウスよりもリンパ球発生時におけるICOSの発現がより早いことの結果である可能性を示唆する。
【0220】
本明細書に提示された結果は、CD28リガンドおよびICOSリガンドが、サイトカイン環境と協調して、Th17細胞の運命を決定的に定めることを示唆する。以前の研究は、CD28補助刺激がTh17細胞の短期的増殖をもたらすことを示しており、本発明者らの結果はそれらの知見に一致する。しかし、ICOSに基づく培養系を用いることで、ヒトTh17細胞の持続的増殖を可能にする条件が特定された。ICOSLが多くの組織で構成性に発現されること、およびICOSL過剰発現が自己免疫を引き起こしうることを考慮すれば(Tafuri et al., 2001 Nature 409:105-109;Yu et al., 2007 Nature 450:299-303)、本明細書に提示された結果は、Th17細胞増殖がどのように制御されるかについての疑問を提起する。本明細書に提示された結果は、CD28リガンドがTh17細胞の増殖能力および炎症能力を高めるという点で、このパラドックスを解消する可能性がある。これらのデータは、IL-22を産生する能力はあるがIL-17AおよびIFN-γは微量でしか産生しないことを特徴とする、TH22細胞と呼ばれる新たなヒトT細胞系列を記述している最近のデータを鑑みれば特に興味深い(Duhen et al., 2009 Nat. Immunol. 10:857-863)。本明細書に提示された結果は、CD28はTh17細胞をTH22細胞に移行させるが、一方、ICOSはそれらをTH1/Th17細胞に移行させる可能性を示唆する。本明細書に提示された結果は、ヒトにおけるT細胞サブセット、特にTh17細胞の運命は、これまで考えられてきたよりも柔軟であるように思われるという見解を裏づけるものである(Murphy et al.、2010 Nat. Immunol. 11:674-680)。
【0221】
これらの知見から得られる治療上の意義はいくつかある。数多くの自己免疫疾患および炎症性疾患では、Th17細胞およびそれらに関連したサイトカインの増加が伴ってみられる。例えば、乾癬における皮膚病変は、CCL20およびCCR6の大幅なアップレギュレーションを示す(Homey et al., 2000 J. Immunol. 164:6621-6632)。多発性硬化症において、患者のあるサブセットはTh17細胞を主体とする疾患を有し、このバイオマーカーにより、IFN-βによる以後の治療法には反応しないことが予測される(Axtell et al., 2010 Nat. Med. 16:406-412)。ICOSおよびCD28に対するリガンドによるAPCの相対的均衡は、病原性および調節性のTh17細胞集団のホメオスタシスに役割を果たしている可能性が高い。このため、ある種の自己免疫疾患ではICOS機能のモジュレーションに治療的有用性がある可能性がある。
【0222】
Th17細胞は、マウスおよびヒトにおいて抗腫瘍免疫を促進することもできる(Zou et al., 2010 Nat. Rev. Immunol. 10:248-256;Martin-Orozco et al., 2009 Immunity 31:787-798;Muranski et al., 2008 Blood 112:362-373)。養子療法の場合には、本明細書で実証されたように、CD28およびICOSLの利用可能性を制御するための規定された細胞培養条件の使用により、Th17細胞の選択的増殖または枯渇を行わせて、慢性炎症を無効化すること、または抗腫瘍免疫を強化することが可能になる可能性がある。ICOS刺激を用いることで、強力な抗腫瘍活性を有する、臨床的に意義のある数のヒトTh17リンパ球を生成させることができる。新たな腫瘍免疫療法の臨床試験を、本明細書で報告された知見に基づいて現在デザインしているところであり、この試験では遺伝的にリプログラミングされたTh17細胞の抗腫瘍効果を検討する予定である。
【0223】
実施例11:薬学的組成物および投与様式
Th17リンパ球を、これらの細胞のインビトロまたはエクスビボでの大規模な増殖を得るために培養し、それと同時に医薬品適正製造基準(GMP)条件を維持するために、以下の実験をデザインした。これらの条件下では、Th17細胞を培養して増殖させ、かつそれらの治療特性を保たせる目的でそれらの機能を維持することが望ましい。
【0224】
Th17細胞の発生に関して本明細書で開示された概念および機序を適用することにより、本発明の細胞を、エクスビボ治療および長期的な培養-増殖のために生物試料から単離することができる。続いて、増殖させた細胞を、それを必要とする患者に対して、疾患を治療するために投与することができる。多数の培養Th17細胞を入手しうることにより、これらの細胞のより詳細な免疫学的、生化学的および分子的な特性決定が可能になる。さらに重要なこととして、本方法はGMP条件に対応可能であるため、臨床的検討が実施可能であり、培養Th17細胞が新規な形態の細胞療法として許容される可能性がある。
【0225】
本開示はまた、精製されたTh17細胞の治療的有効量を単独で、または薬学的に許容される担体とともに含む薬学的組成物も提供する。その上、この薬学的組成物または治療方法を、化学療法薬および/または抗菌薬、またはワクチンなどの他の治療的処置と併用して与えることもできる。
【0226】
特定の障害または病状の治療に有効な精製されたTh17細胞の量は、障害または病状の性質に依存し、これは標準的な臨床的手法によって決定することができる。加えて、アッセイを利用して、最適な投与量の範囲を特定することもできる。製剤中に使用される正確な用量は、投与経路および疾患または障害の重篤度にも依存し、臨床医の判断および各対象の状況に応じて決まる。有効量は、インビトロまたは動物モデルの試験系から導き出された用量反応曲線から外挿することができる。
【0227】
本開示はまた、本発明の薬学的組成物の成分の1つまたは複数が充填された1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットも提供する。そのような容器には任意で、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制している政府当局によって定められた形式での注意書きであって、ヒトへの投与を目的とする製造、使用または販売についての当局による承認を反映している注意書きを付属させることができる。組成物の使用に関する説明書を含めることもできる。
【0228】
本明細書中に引用したあらゆる特許、特許出願および刊行物の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0229】
具体的な態様を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変更が当業者によって考案されうることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのような態様および等価な変更のすべてを含むと解釈されるものとする。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−1】

【図2−2】

【図3−1】

【図3−2】

【図4−1】

【図4−2】

【図4−3】

【図4−4】

【図5−1】

【図5−2】

【図6−1】

【図6−2】

【図7−1】

【図7−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質と該T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質とを含む、組成物。
【請求項2】
固相表面を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ヒト細胞株を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ヒト細胞株が、K562細胞、U937細胞、721.221細胞、T2細胞、およびC1R細胞からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞がヒトFcγ受容体を発現するように遺伝的に改変されている、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
Fcγ受容体が、CD32、CD64、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
第1の作用物質が、CD3と、またはTCR/CD3複合体の構成要素と結合する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
第2の作用物質が抗ICOS抗体またはICOS-Lである、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞が第2の作用物質を発現するようにさらに遺伝的に改変されている、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞がサイトカインを発現するようにさらに改変されている、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
サイトカインがIL-1β、IL-2、IL-6、IL-23、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞が、Th17分化過程に干渉するサイトカインを阻害する阻害分子を発現するようにさらに改変されている、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
阻害分子に干渉するサイトカインが、Th17分化過程に干渉するサイトカインを阻害するものであり、IFNγ、IL-4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
1)その少なくとも一部分がT細胞を含む、細胞の集団を提供する段階;
2)該細胞の集団を、一次活性化シグナルを該T細胞に与えることのできる第1の作用物質と該T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質とを含む組成物と接触させる段階
を含む、T細胞の集団を活性化または刺激するための方法。
【請求項15】
前記細胞の集団と、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質と該T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質とを含む組成物との接触が、Th-17偏向物質(polarizing agent)の存在下においてである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Th-17偏向物質がIL-1β、IL-6、中和性抗IFNγ、抗IL-4、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が固相表面を含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記組成物がヒト細胞株を含む、請求項14記載の方法。
【請求項19】
ヒト細胞株がK562細胞、U937細胞、721.221細胞、T2細胞、およびC1R細胞からなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記細胞がヒトFcγ受容体を発現するように遺伝的に改変されている、請求項18記載の方法。
【請求項21】
Fcγ受容体がCD32、CD64、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第1の作用物質が、CD3と、またはTCR/CD3複合体の構成要素と結合する、請求項14記載の方法。
【請求項23】
第2の作用物質が抗ICOS抗体またはICOS-Lである、請求項14記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が第2の作用物質を発現するようにさらに遺伝的に改変されている、請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記細胞がサイトカインを発現するようにさらに改変されている、請求項24記載の方法。
【請求項26】
T細胞がCD4+ T細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項27】
T細胞が臍帯T細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項28】
T細胞が末梢T細胞である、請求項14記載の方法。
【請求項29】
T細胞が、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、または8回の刺激後に、CD28で補助刺激した細胞と比較して、より増大したレベルのIL-17A、IL-17F、およびCCL20を分泌する、請求項14記載の方法。
【請求項30】
T細胞が、CD28補助刺激と比較して、より高いレベルのIFNγ、TNFαおよびIL-21を分泌する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
T細胞を抗原と接触させる段階をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項32】
抗原が腫瘍抗原である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ICOSで刺激したT細胞をそれを必要とする患者に投与する段階を含む、免疫療法の方法。
【請求項34】
ICOSで刺激したT細胞が、Th-17偏向物質の存在下で、一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質と該T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質との接触を受けている、請求項33記載の方法。
【請求項35】
Th-17偏向物質がIL-1β、IL-6、中和性抗IFNγ、抗IL-4およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
第1の作用物質が、CD3と、またはTCR/CD3複合体の構成要素と結合する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
第2の作用物質が抗ICOS抗体またはICOS-Lである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
Th17が抗原との接触を受けている、請求項34記載の方法。
【請求項39】
培養して増殖させた抗腫瘍活性を呈するTh17細胞の集団であって、該抗腫瘍活性が長期にわたって保たれ、かつ該細胞が哺乳動物における有効な治療法のために十分な数に増殖されている、前記集団。
【請求項40】
一次活性化シグナルをT細胞に与えることのできる第1の作用物質と該T細胞上のICOSを活性化することのできる第2の作用物質とを含む組成物の有効量を、該哺乳動物に投与する段階
を含む、哺乳動物におけるTh17細胞の調節方法。

【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【公表番号】特表2013−518900(P2013−518900A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552108(P2012−552108)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/023744
【国際公開番号】WO2011/097477
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】