炎症性疾患および障害を治療するための方法
本開示は、PKCアイソフォーム制御因子を使用して炎症性疾患および障害を治療するための方法、組成物およびキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に疾患を治療する方法、より詳細には炎症性疾患および障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症の開始は炎症反応とともに始まり、好中球、顆粒球、単球、マクロファージ、ならびにその他の免疫調節細胞の活性化をもたらす。これは、炎症性サイトカインおよびメディエーター、例えばインターロイキン類、TNFα、およびプロスタグランジン類を包含する局所性または全身性炎症カスケードを生じさせる可能性がある。この複雑な炎症媒介性カスケードは、あらゆる種類の反応、例えば細胞走化性および内皮損傷を誘発し、先天性および適応免疫系からの追加の細胞の動員をもたらす。
【0003】
皮膚は、身体内部と環境との重要な境界として機能し、潜在的に有害な病原菌との接触を妨害する。抗原/病原菌が侵入した症例では、炎症反応が抗原を排除するために誘導されることが多い。この反応は、主としてT細胞、多核白血球、およびマクロファージからなる皮膚浸潤をもたらす。
【0004】
炎症反応は、必ずしも外部からの刺激と関連していない場合、または非有害性環境物質によって引き起こされる場合(アレルギーの場合)がある。どちらの場合も、前炎症性サイトカインの過剰発現は、適正に制御されないと、一般に局所性および全身性炎症の特徴である炎症、ならびに様々な炎症性疾患および障害を引き起こす。炎症には、様々な障害、例えば湿疹および皮膚炎が結び付いており、例えばアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、異汗性湿疹、貨幣状湿疹、うっ血性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、乾癬、掻痒症、多発性硬化症、皮膚炎症、瘢痕性類天疱瘡、強皮症、化膿性汗腺炎、中毒性表皮剥離症、座瘡、骨炎、移植片対宿主病(GvHD)、壊疽性膿皮症、およびベーチェット症候群(Behcet’s Syndrome)が包含される。
【0005】
当然のことながら、前炎症性サイトカインの過剰産生は、多数の炎症性および自己免疫疾患に関係すると見なされてきた。例えば、サイトカイン類、例えばTh17細胞の生存および増殖を刺激するTNFαおよびインターロイキン(IL)−23の分泌は乾癬と高度に関連しているが、一方、IL−6がその前炎症性サイトカインとしての一般的役割に加えてTh17発生のために必要とされる。IL−12およびIP−10のような他のサイトカイン類は開始因子であり、乾癬およびその他の自己免疫疾患に典型的であるTh1経路に関与している。好酸球の産生を増加させるサイトカインであるインターロイキン5(IL−5)は、喘息において過剰発現し、結果としてアレルギー性炎症の特徴である、喘息性気管支粘膜における好酸球の蓄積を生じさせる。インターロイキン4(IL−4)およびインターロイキン13(IL−13)は、炎症性腸疾患および喘息において見いだされる平滑筋の高収縮性の公知のメディエーターである。さらに、以下で詳細に考察するように、炎症性サイトカインは、例えば、乾癬、多発性硬化症、関節炎、虚血、敗血性ショック、および臓器移植拒否反応に関係することが証明されている。
【0006】
同様に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、顆粒球およびマクロファージ系統集団の成熟の制御因子であり、多数の炎症性および自己免疫疾患における重要な因子であると関係付けられてきた。例えば、GM−CSF分泌を阻害する抗体は、自己免疫疾患を改善することが証明されている。
【0007】
そこで、前炎症性サイトカインの分泌を減少させる、および/または免疫制御因子を調節する治療薬の開発は、一般に局所性および全身性炎症、ならびに本明細書で考察する炎症性および/または自己免疫疾患の宿主を改善することに有益となる。複数の一連の証拠は、PKCアイソフォームの修飾因子がこれらの結果を達成する際に有用であることを指摘している。
【0008】
数件のin vivo試験は、Tヘルパー(Th)17細胞の関与ならびに皮膚関連細胞、例えばケラチン生成細胞、樹状細胞およびTヘルパー細胞によるサイトカイン類、例えばインターロイキン類およびTNFαの分泌が乾癬および他の自己免疫炎症性疾患の病原に関与する炎症反応の発生における重要な要素であることを証明している。本明細書で使用するin vivo(「生体内」を意味するラテン語)は生きている生体全体を用いる実験であり、部分的もしくは死んでいる生体、またはin vitro(「ガラス内」、例えば、試験管もしくはペトリ皿内)制御環境とは対照的である。Th17細胞の生存および増殖を刺激するサイトカイン類、例えばTNFαおよびインターロイキン(IL)−23の分泌もまた、これらの疾患にとって重要な主要サイトカイン制御因子として役立つ(非特許文献1)。真皮内のTh17細胞は、順にIL−17AおよびIL−22の分泌を誘導する。IL−22は、特に、ケラチン生成細胞の過剰増殖を引き出し、乾癬における炎症反応を増強する(非特許文献1)。
【0009】
プロテインキナーゼC(PKC)ファミリーは、リン酸のATPからタンパク質のセリンおよびトレオニン残基への共有転移を触媒する1群のリン脂質依存性酵素を表している。このファミリーは、現在、カルシウムイオンおよびその他の因子によるそれらの活性化に基づいて3つの別個のカテゴリーに属する少なくとも12の個別アイソフォームから構成されると考えられている。PKCファミリーは、通常、従来型、新型および非典型PKCの3つのサブグループ(図1)に分けられる少なくとも10のメンバーからなる。特異的補因子要求、組織分布、および細胞区分化は、各アイソフォームに対する機能差および特異的シグナル伝達カスケードの調整を示唆している。そこで、特異的刺激は、それらの因子によって調節されるアイソフォーム特異的PKCシグナル伝達による特異的反応:例えば特定の生物学的状況における発現、局在化、および/またはリン酸化状態をもたらし得る。PKCアイソフォームは、様々な細胞外シグナルによって活性化され、そして順に、受容体、酵素、細胞骨格タンパク質、および転写因子を包含する細胞タンパク質の活性を修飾する。したがって、PKCファミリーは、細胞増殖、分化、生存および死の調節を包含する細胞シグナルプロセシングにおいて中心的役割を果たす。
【0010】
皮膚内で高度に豊富であるPKCαは、表皮内で主要な従来型のCa2+反応性PKCアイソフォームであり、それは、最初はin vitroおよびin vivoにおけるケラチン生成細胞中で検出された唯一のcPKCであった(非特許文献2、非特許文献3)。このため、PKCαは、Ca2+誘導性分化における重要な因子であると提案されていた(非特許文献4、非特許文献2)。表皮内に、および主として基底層直上に限定すると(非特許文献5)、PKCαは細胞周期離脱に関与しており、主としてケラチン細胞骨格および接着斑細胞−細胞接着と関連付けられている(非特許文献6、非特許文献7)。従来型PKC活性化因子であるTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)に曝露させると有棘マーカーが抑制されたので、PKCαは、TPA活性化の結果として有棘状から顆粒状分化への変化にとって大きな役割を果たすと考えられた(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。実際に、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるPKCα活性またはその合成のブロッキングは、顆粒マーカーを無効にし、K1およびK10のような有棘状マーカーを蘇生させると思われた。同様に、優性ネガティブPKCαの実施は、(後期)有棘状マーカーであるインボルクリンを再生すると思われた(非特許文献12)。したがって、皮膚癌における不完全な分化(非特許文献13、非特許文献14)は、in vitroの腫瘍細胞においても観察される上昇したPKCα活性と相関する(非特許文献2、非特許文献15)。しかし、正常ヒトケラチン生成細胞中のPKCαの過剰発現は、それらの分化パターンを変化させるとは思われなかった(非特許文献12)。遊走中のβ1−インテグリンの細胞内輸送および膜動員にPKCαが及ぼす影響(非特許文献16)は、創傷再上皮化および腫瘍細胞浸潤の両方を明確に促進することができる。
【0011】
トランスジェニックマウスにおけるPKCαの過剰発現は、著しい炎症反応、増加した表皮肥厚および好中球浸潤と相関する浮腫、多発性微小膿瘍、ならびに炎症性サイトカイン類およびケモカイン類、例えばTNFα、MIP−2、COX−2もしくはマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)の顕著な増加を誘導すると思われてきた。これらの結果は、表皮炎症反応にPKCαを関係付けている(非特許文献17)。TPA(PKCα活性因子)を用いた治療は、明らかに表皮過形成、表皮内炎症、および広範なアポトーシスを誘発した(非特許文献18、非特許文献6)。さらに、PKCアイソエンザイム選択的ノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスにおける近年のin vivo試験は、免疫系における個別PKCの際だった別個の機能を有すると思われる。これらの遺伝分析は、生化学的試験と一緒に、PKC調節シグナル伝達経路が免疫反応の多数の態様において重要な役割を果たすことを示すと思われる。例えば、PKCファミリーのメンバーは、T細胞シグナル伝達経路において極めて重要であると思われる。特に、PKCαのアイソタイプは、リンパ球特異的in vivoエフェクターの性質を決定すると思われる。PKCαは、さらにマクロファージ活性化に関与すると考察されており、明白に肥満細胞シグナル伝達に関与することが証明された(非特許文献19)。このため、PKCアイソタイプは、適応免疫において有効な薬物標的である。
【0012】
炎症性疾患の1つの例は、乾癬である。感染発生をもたらす基本病変に関する2つの主要な仮説が存在する。第1の仮説は、乾癬が主として皮膚細胞の過剰成長および再生の障害であると見なしている。第2の仮説は、乾癬を皮膚細胞の過剰再生が免疫系によって生成される因子に続発性である免疫媒介性障害であると見なしている。したがって、乾癬に対する大多数の薬物は、皮膚細胞の過剰増殖状態、または乾癬斑として存在する皮膚炎症反応のいずれかである疾患の1つの成分を標的としている。
【0013】
近年のデータは、どちらの経路も皮膚細胞と免疫学的環境(環境、周囲、位置および/または状況を網羅する)とのクロストークを通して疾患の病理学の基礎をなすという概念を支持している。従来型の全ゲノム連鎖解析は、乾癬感受性1〜9(PSORS1〜PSORS9)遺伝子座と命名された乾癬を発生する傾向と関連する様々な染色体上の9つの場所(遺伝子座)を同定した。これらの場所では、数個の遺伝子が特性付けられ、表皮細胞内で発現するタンパク質、例えば表皮の顆粒層および角化層内で発現し、乾癬においてはアップレギュレートされるコルネオデスモシンをコードすることが見いだされた。他方では、他の乾癬関連遺伝子は、インターロイキン−12Bを発現する染色体5q上で例えば1L−12Bのように特性付けられた免疫系の調節に関与するタンパク質をコードする(非特許文献20)。
【0014】
炎症性疾患のまた別の例は、多発性硬化症(MS)である。MSは、一般に青少年に影響を及ぼす脳および脊髄に影響を及ぼす可能性があるCNSの慢性的かつ予測不能な炎症性疾患である(非特許文献21)。MSは、現在は青少年の最も一般的な神経系疾患であると言われており、通常、20〜40歳で始まり、男性に比較して女性においてほぼ2倍の確率で発生する傾向がある。
【0015】
MSでは、神経細胞を取り囲んで保護する物質である髄鞘、および/またはその産生能力が損傷され、これは「脱髄」と呼ばれている。この損傷は、脳と身体との間のメッセージを緩徐化または遮断する作用を有し、MSとともに観察される症状をもたらす。脳および/または脊髄内に散在する領域内の脱髄および瘢痕もしくはその他の病変は、この疾患に特徴的であると考えられている(非特許文献22)。これらの病変は、神経伝導を変化させ、CNSにおける脱髄性プラークの場所に伴って変化する廃疾神経学的欠損を誘導すると思われる。(非特許文献24)。その臨床徴候および症状は様々で、それが影響するCNSの部分に依存し、運動、感覚、自律神経および認知障害が含まれる可能性がある。(非特許文献23)。
【0016】
MSの一部の一般的症状には以下が含まれる:1)極度の疲労の感覚、2)平衡歩行および協調運動障害、3)視覚的問題−複視および失明、4)手足における麻痺および刺痛、5)軽度および重度両方の疼痛、筋力低下、6)筋肉の硬直および痙攣、7)気分変動−抑うつおよび不安、8)記憶および集中力の欠如、会話障害(非特許文献24)。
【0017】
進行性身体障害は、特に25年間見通しが包含される場合、MSを有する大多数の患者の宿命である。MS患者の半数は、疾患発症の15年間以内には歩行に杖を必要とするようになる。MSは、若年および中年成人における神経性身体障害の主要原因であり、過去10年間までは、公知の有益な治療を有していなかった。MSは非特異的な臨床所見のために診断を下すのが困難であるが、このことがMRIスキャン、誘発電位、および脳脊髄液(CSF)試験からなる幾つかの技術的進歩を包含する高度に構造化された診断基準の開発をもたらした。診断基準は、一般には様々な時点に発生するが、他の病因、例えば感染、血管障害、または自己免疫障害によって説明されない中心体白質内の散在性病変の一般的原理に依存している。
【0018】
MSは、それによって未知の薬剤がT細胞媒介性炎症性発作を引き起こし、CNS(中枢神経系)組織の脱髄を誘発する自己免疫疾患であると広く考察されている(非特許文献25)。ミエリンを標的とする自己免疫反応についての証拠は強力であるが、決定的ではない。例えば、リンパ球またはミエリン食作用の非存在下では、早期多発性硬化症病変におけるマイクログリア細胞活性化による原発性オリゴデンドロサイトアポトーシスの開示がある(非特許文献26)。
【0019】
MSは、特徴的に4つの疾患パターン:再発寛解型MS(RRMS)、一次進行型MS(PPMS)、進行再発型MS(PRMS)、および二次進行型MS(SPMS)を有すると報告されている。RRMSを備える患者の推定50%は10年以内にSPMSを発生し、RRMSの90%までは最後にはSPMSを発生することになる。疾患の各パターンは、軽度、中等度または重度として現れることがある。RRMSを患うヒトは、悪化する神経機能の明確な発作を提示する。これらの発作には、その間疾患進行が発生しない部分または完全回復期(緩解期)が続く(約85%の人々は、最初はRRMSであると診断される)。PPMSは、最初から緩徐に悪化する神経機能を特徴とし、顕著な再発または緩解を伴わない(約10%のヒトはPPMSと診断される)。SPMSでは、RRMSの原初期に続いて、多くの人はこの疾患がより確実に悪化する二次進行型疾患経過をたどる(RRMSを備えるヒトの約50%が10年間以内にこの疾患のこの形態を発生する)。PRMSでは、ヒトは最初から確実に、しかし途中で悪化する神経機能の明白な発作を伴って悪化する疾患症状を経験し、他方ではこの疾患は緩解を伴わずに進行すると思われる(5%)(非特許文献26)。
【0020】
現時点ではMSに対する治療薬はないが、疾患活性および疾患進行の低下を試みる幾つかの治療薬を利用できる。合衆国では、4つのクラスの6種の薬物がMSの治療のために承認されている。FDA承認の疾患治療薬には、以下のインターフェロンクラス、IFN−β−1a(REBIF(登録商標)およびAVONEX(登録商標))およびIFN−β−1b(BETASERON(登録商標))、酢酸グラチラマー(COPAXONE(登録商標))、ポリペプチド、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))、ミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標))、細胞毒性薬、が包含される。コルチコステロイド剤、メソトレキセート、シクロホスファミド、アザチオプリン、および静脈内(IV)イムノグロブリンを包含する様々な成功度を示す他の薬物が使用されてきた。現在承認されている治療薬の利点は、MSにおける、相当小さな再発率、そして身体障害の予防である。
【0021】
REBIF(登録商標)(インターフェロンβ1a)は、ヒトの身体において見いだされるものと同一のインターフェロンβを産生するバイオ技術プロセスによって製造された医薬品である。REBIF(登録商標)は、週3回皮下投与すると報告されている(REBIF(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0022】
AVONEX(登録商標)(インターフェロンβ1a)は、ヒトの身体において見いだされるものと同一のインターフェロンβを産生するバイオ技術プロセスによって製造された医薬品である。AVONEX(登録商標)は、週1回筋肉内注射として投与すると報告されている(AVONEX(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0023】
BETASERON(登録商標)(インターフェロンβ1b)は、ヒトの身体において見いだされるものと同一のインターフェロンβを産生するバイオ技術プロセスによって製造された医薬品である。BETASERON(登録商標)は、1日おきに皮下注射すると報告されている(BETASERON(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0024】
COPAXONE(登録商標)(酢酸グラチラマー)は、ミエリン塩基性タンパク質を刺激する合成タンパク質である。完全には理解されていない機序を通して、この薬物はミエリンデコイとして作用することによりミエリン損傷性T細胞をブロックすると思われる。COPAXONE(登録商標)は、1日1回皮下注射すると報告されている(COPAXONE(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0025】
TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)は、実験室で生成されたモノクローナル抗体である。TYSABRI(登録商標)は、潜在的損傷免疫細胞が血流から「血液脳関門」を越えて脳および脊髄内に移動するのを阻止するように設計されている。TYSABRI(登録商標)は、4週に1回、点滴静脈によって投与すると報告されている(TYSABRI(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0026】
NOVANTRONE(登録商標)(ミトキサントロン)は、抗悪性腫瘍薬と呼ばれる医薬品の一般群に属する。NOVANTRONE(登録商標)は、所定の形態の癌を治療するために使用されてきた。NOVANTRONE(登録商標)は、MS治療において、ミエリン鞘上での発作をもたらすと推定されているT細胞、B細胞およびマクロファージの活性を抑制することによって作用すると報告されている(NOVANTRONE(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Fitch et al.(2007)Curr Rheumatol Rep. 9:461−7
【非特許文献2】Dlugosz et al.(1992)Biomed Pharmacother 46:304
【非特許文献3】Wang et al.(1993)J Cancer Res Clin Oncol 119:279−287
【非特許文献4】Denning et al.(1995)Cell Growth Differ 6:149−157
【非特許文献5】Denning et al.(2004)Int J Biochem Cell Biol 36:1141−1146
【非特許文献6】Jansen et al.(2001)Int J Cancer 93:635−643
【非特許文献7】Tibudan et al.(2002)J Invest Dermatol. 119:1282−1289
【非特許文献8】Dlugosz and Yuspa(1993)J Cell Biol 120:217−225
【非特許文献9】Lee et al.(1998)J Invest Dermatol 111:762−766
【非特許文献10】Matsui et al.(1992)J Invest Dermatol 99:565−571
【非特許文献11】Punnonen et al.(1993)J Invest Dermatol 101:719−726
【非特許文献12】Deucher et al.(2002)J Biol Chem 277:17032−17040
【非特許文献13】Tennenbaum et al.(1993)Cancer Res 3:4803−4810
【非特許文献14】Tomakidi et al.(2003)J Pathol 200:298−307
【非特許文献15】Yang et al.(2003)J Cell Physiol. 195:249−259
【非特許文献16】Ng et al.(1999)EMBO J 18:3909−3923
【非特許文献17】Wang and Smart(1999)J Cell Sci 112:3497−3506
【非特許文献18】Cataisson et al.(2003)J Immunol 171:2703−2713
【非特許文献19】Cataisson et al.(2005)J Immunol 174:1686−1692
【非特許文献20】Frank et al.(2009)N Engl J Med 361:496−509
【非特許文献21】Hafler et al.(2005)Immunol Rev 204:208−31
【非特許文献22】Beeton et al.(2007)Journal of Visualized Experiments 594−604
【非特許文献23】Noseworthy et al.(2000)N Engl J Med 343:938−52
【非特許文献24】The National MS Society(全国多発性硬化症協会)ウェブサイト
【非特許文献25】Weiner et al.(2004)Arch Neurol 61:1613−1615
【非特許文献26】Manuel et al.(2006)Brain
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
炎症性疾患と闘うための既存の治療法は、概して病因の複数の成分を標的とする多成分アプローチを提供することはできていない。例えば、自己免疫疾患のための多数の治療法は、炎症を阻止するために、細胞増殖を阻止すること、または免疫反応を抑制することのいずれかによる疾患の単一成分を標的とする工程を包含する。結果として、PCKアイソフォーム活性を標的として調節することによる、炎症性疾患の病因の複数の成分を標的とする効果的治療薬を提供するという強い必要性が存在する。特異的PKCアイソフォームを選択的に阻害または活性化することのできる特異的に標的化された治療薬が不可欠であり、そのような治療薬は、例えば局所投与された場合、副作用を低レベルに維持しながら、炎症性疾患の病因の複数の成分を標的とする治療アプローチを提供することになる。そこで、前炎症性サイトカインの分泌を減少させる、および/またはPKCアイソフォームの調節によって免疫制御因子を調節する治療薬の開発は、局所性および全身性炎症、ならびに本明細書で考察する炎症性および/または自己免疫疾患の宿主の改善に有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、炎症性疾患および障害の治療であって、被験体にPKCの制御因子、例えばPKCεもしくはPKCηの阻害因子またはPKCδの活性化剤を投与する工程による治療に関する。
【0030】
したがって1つの態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における炎症性疾患または障害を治療する。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜29のポリペプチドである。
【0031】
また別の態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCδの活性化因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における炎症性疾患または障害を治療する。様々な実施形態では、活性化因子は、PKCδを選択的に活性化するポリペプチド、例えば配列番号30〜37のポリペプチドである。
【0032】
また別の態様では、本開示は、被験体において掻痒症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における掻痒症を治療する。様々な実施形態において、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηの阻害因子である。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜29のポリペプチドである。
【0033】
また別の態様では、本開示は、被験体において掻痒症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCδの活性化因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における掻痒症を治療する。様々な実施形態では、活性化因子は、PKCδを選択的に活性化するポリペプチド、例えば配列番号30〜37のポリペプチドである。
【0034】
また別の態様では、本開示は、被験体において多発性硬化症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCα、PKCη、PKCε、またはPKCεの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における多発性硬化症を治療する。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCαまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜13および26〜29のポリペプチドである。
【0035】
様々な態様において、本開示は、本開示の方法を実施するためのキットを提供する。一実施形態では、本キットは、PKCの阻害因子、例えばPKCα、PKCεもしくはPKCηの阻害因子、またはPKCδの活性化因子、ならびに該阻害因子または活性化因子を投与するための取扱説明書を包含する。
【0036】
また別の態様では、本開示は、配列番号3の単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供し、ここで該ポリペプチドは、N−ミリストイル化されている。典型的な実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号12である。
【0037】
本開示は、配列番号3のポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供し、ここで該ポリペプチドは、N−ミリストイル化され、そして薬学的に許容される溶媒(vehicle)を包含する医薬組成物をさらに提供する。
【0038】
また別の態様では、本開示は、配列番号4のアミノ酸配列を包含する単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を提供する。典型的な実施形態では、該単離ポリペプチドは、配列番号10または配列番号13のポリペプチドである。
【0039】
本開示は、配列番号4のアミノ酸配列を包含する単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を包含する医薬組成物をさらに提供する。
【0040】
また別の態様では、本開示は、配列番号30〜33から選択される単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を提供する。典型的な実施形態では、該単離ポリペプチドは、配列番号34〜37のポリペプチドである。
【0041】
本開示は、配列番号30〜33のアミノ酸配列を包含する単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を包含する医薬組成物をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、PKCファミリーのアイソフォームの様々なメンバーを描出している図的表示である。
【図2】図2は、乾癬に特徴的なケラチン生成細胞構造統合性を調節するPKCαの阻害を描出している一連の図的表示である。皮膚組織は、パラフィン包埋して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)一般組織学的染色、または基底層に対するケラチン14(K14)、有棘層に対するケラチン1(K1)、ケラチン生成細胞遊走に対するケラチン6(K6)およびケラチン生成細胞増殖に対するPCNAを包含する様々な皮膚層に対する別個のマーカーについて染色した。結果は、PKCα阻害後の皮膚特性の正常化を証明している(左欄はWT、右欄はPKCαノックアウトである)。
【図3】図3は、IMQを用いた処置後のコントロールに比較した、様々なノックアウトマウスにおける落屑の重症度を比較しているヒストグラムである。
【図4】図4は、IMQを用いた処置後のコントロールに比較した、様々なノックアウトマウスにおける落屑を示している一連の図的表示である。
【図5】図5は、フィラグリン(Fil)、ロリクリン(Lor)およびケラチン1(K1)の発現を示す一連の図的表示である。
【図6】図6は、in vitroおよびin vivoでのケラチン生成細胞増殖を評価している一連の図的およびグラフ表示である。上方は、PCNAの発現を示す図的表示である。下方は、HO/02/10を用いて処置されたPCNA陽性細胞およびコントロールのパーセンテージを比較しているヒストグラムである。
【図7】図7は、フィラグリン(Fil)、ロリクリン(Lor)、ケラチン1(K1)、PCNAおよびケラチン14(K14)の発現を示す一連の図的表示である。
【図8】図8は、様々なペプチドPKCα阻害因子に対するケラチン生成細胞内でのタンパク質発現データの概要を示しているグラフ表示である。
【図9】図9は、HO/02/10を用いて処置された皮膚サンプルおよびコントロールの破裂圧を比較しているヒストグラムである。
【図10】図10は、創傷の4および9日後にB57BL/6Jマウスにおける皮膚創傷にHO/02/10が及ぼす抗炎症作用を比較しているヒストグラムである。
【図11】HO/02/10を用いて処置された脾細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図12】図12は、皮膚の血管内の基底ケラチン生成細胞および内皮細胞内でのICAM発現を示している一連の図的表示である。
【図13】図13は、皮膚の血管内の基底ケラチン生成細胞および内皮細胞内でのICAM発現を示している一連の図的表示である。
【図14】図14は、創縁部での陽性ICAM−1染色を示すマウスのパーセントを比較しているヒストグラムである。
【図15】図15は、Iba−1陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図16A】図16Aは、ケラチン生成細胞内でのMAC−2発現を示している一連の図的表示であり、MAC−2発現を示している一連の染色を示す。
【図16B】図16Bは、ケラチン生成細胞内でのMAC−2発現を示している一連のグラフ表示であり、左から、コントロール、1、10および100μg(マイクログラム)/mlのPKCα阻害因子を用いてMAC−2陽性染色された細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図17A】図17Aは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、IL−6、IL−1α、およびGM−CSFの分泌を比較している。
【図17B】図17Bは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、G−CSFの分泌を比較している。
【図17C】図17Cは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、MIP−2の分泌を比較している。
【図17D】図17Dは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、KCの分泌を比較している。
【図18A】図18Aは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化マクロファージにおけるサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、G−CSF、KC、およびMIP−2の分泌を比較している。
【図18B】図18Bは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化マクロファージにおけるサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、IL−1α(ヒストグラム対の左のバー)およびTNFα(ヒストグラム対の右のバー)の分泌を比較している。
【図18C】図18Cは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化マクロファージにおけるサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、IL1β(ヒストグラム対の左のバー)およびIL12(ヒストグラム対の右のバー)の分泌を比較している。
【図19】図19は、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図20】図20は、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図21A】図21Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−1αの分泌を比較している。
【図21B】図21Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−6の分泌を比較している。
【図22A】図22Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、G−CSFの分泌を比較している。
【図22B】図22Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、GM−CSFの分泌を比較している。
【図23A】図23Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、MIP−2の分泌を比較している。
【図23B】図23Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IP−10の分泌を比較している。
【図24A】図24Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−1αの分泌を比較している。
【図24B】図24Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−6の分泌を比較している。
【図25A】図25Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、TNFαの分泌を比較している。
【図25B】図25Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IP−10の分泌を比較している。
【図26A】図26Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、G−CSFの分泌を比較している。
【図26B】図26Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、GM−CSFの分泌を比較している。
【図27A】図27Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、KCの分泌を比較している。
【図27B】図27Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、MIP−2の分泌を比較している。
【図28A】図28Aは、HO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮へのT細胞浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、抗CD3抗体を使用した一連の染色を示している図である。
【図28B】図28BHO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮へのT細胞浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、CD3陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図29】図29は、様々な細胞タイプにおいてペプチドPKCα阻害因子MPDY−1を使用した処置が及ぼす作用の概要を提示しているグラフ表示である。
【図30】図30は、乾癬関連経路においてHO/02/10が及ぼす全体的作用のスキーマを示しているグラフ表示である。
【図31A】図31Aは、HO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮への好中球浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、好中球特異的抗体を使用した染色である。
【図31B】図31Bは、HO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮への好中球浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、好中球特異的陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図32】図32は、Ser176/180抗体を用いて染色されたSDS PAGEの図的表示である。
【図33】図33は、治療の時間経過にわたるEAE(実験的アレルギー性脳脊髄炎)スコアを示しているグラフ表示である。
【図34】図34は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図35】図35は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図36】図36は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図37】図37は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図38】図38は、掻痒症へMPDY−1が及ぼす作用を評価するために皮刺試験(プリックテスト)モデルで使用されるヒスタミンの作用機序の図的表示である。
【図39】図39は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図40】図40は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図41】図41は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図42】図42は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図43】図43は、PKCα阻害因子MPDY−1およびPKCδ活性化因子DAP−1(配列番号34)についてのin vitro免疫学的試験で収集されたデータの表である(全データは表示されていない)。
【図44】図44は、TNFαおよび阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌のPKCδ活性化因子DAP−1(配列番号34)についての結果を表にまとめた概要である。
【図45】図45は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図46】図46は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図47】図47は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図48】図48は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図49】図49は、LPSまたはTNFαおよび阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌の様々なPKCε阻害因子についての結果を表にまとめた概要である。
【図50】図50は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図51】図51は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図52】図52は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図53】図53は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図54】図54は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図55】図55は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図56】図56は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図57】図57は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図58】図58は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図59】図59は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図60】図60は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図61】図61は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図62】図62は、ペプチドPKCα阻害因子AWOT−1(配列番号7)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図63】図63は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図64】図64は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図65】図65は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図66】図66は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図67】図67は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図68】図68は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図69】図69は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図70】図70は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図71】図71は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図72】図72は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図73】図73は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図74】図74は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図75】図75は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図76】図76は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図77】図77は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図78】図78は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図79】図79は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)およびPDY−1(配列番号13)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図80】図80は、LPS、TNFαまたはIL−17Aおよび阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌の様々なPKCα阻害因子についての結果を表にまとめた概要である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、PKCアイソフォームの修飾因子を炎症性疾患および障害のための効果的治療薬として投与できるという独創性に富む発見に基づいている。皮膚細胞の主要細胞プロセス、ならびに免疫系の多数の成分におけるPKCアイソフォームの関与は、PKCアイソフォームが炎症性病理状態を治療するための潜在的標的であることを特徴付けている。本明細書に提示したデータは、PKCファミリーのアイソフォームが炎症および炎症性疾患と関連する皮膚細胞および免疫細胞内での活性化プロセスを調節することを証明している。
【0044】
本開示は、本明細書に記載した特定の組成物、方法、および実験条件には限定されず、そのような方法および条件は変動する可能性があることを理解すべきである。さらにまた、本明細書で使用する専門用語は特定の実施形態を説明することだけを目的としており、限定することは意図しておらず、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲の記載においてのみ限定されることもまた理解すべきである。
【0045】
本開示による方法の原理および操作は、図面および添付の説明を参照することでより明確に理解することができる。
【0046】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「1つの」および「その」は、状況が明白に他のことを指示しない限り、複数の言及を包含する。そこで、例えば、「該方法」との言及は、本開示を読むなどすると当業者には明白になる、1つ以上の方法および/または本明細書に記載したタイプの工程を包含する。
【0047】
他に規定されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載した方法と類似する、または同等の任意の方法および材料は本開示の実践または試験において使用できるが、以下では一部の好ましい方法および材料を記載する。
【0048】
本明細書で使用する用語「被験体」は、哺乳動物被験体を意味する。そこで、他の哺乳動物における任意の動物の治療が想定されている。そのような動物には、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ヤギ、ヒツジ、非ヒト霊長類およびヒトが包含されるがそれらに限定されない。そこで、本開示の方法は、獣医学的用途における使用ならびにヒト使用のために企図されている。
【0049】
本明細書の被験体の「処置」は、治療的処置および予防的もしくは防止的手段を意味する。処置を必要とする被験体には、すでに炎症性疾患または障害を備える被験体ならびにそれが防止されなければならない被験体が包含される。そこで、該被験体は、炎症性疾患または障害を有すると診断されている、または炎症性疾患もしくは障害に罹りやすい、または感受性である可能性がある。
【0050】
本明細書で使用する「炎症性疾患または障害」は、PKCファミリーのアイソフォーム調節と関連する病因を有する任意の疾患および障害を包含することが意図されている。そのような疾患には、掻痒症、皮膚炎症、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型もしくはII型糖尿病、喘息、炎症性肺障害、炎症性肝障害、炎症性糸球体障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、シェーグレン(Sjoegren)症候群、角結膜炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン(Crohn)病、潰瘍性大腸炎、関節、皮膚、もしくは筋肉の炎症性疾患、急性もしくは慢性特発性炎症性関節炎、筋炎、脱髄疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、間質性腎炎および慢性活動性肝炎が包含されるがそれらに限定されない。
【0051】
炎症性疾患または障害の「症状」は、該被験体が経験した、または炎症性疾患もしくは障害の指標となる任意の病的徴候または構造、機能、もしくは感覚における正常からの逸脱である。
【0052】
文言「有効量」は、PKCアイソフォームの阻害因子もしくは活性化因子、例えば配列番号1〜37のポリペプチドの炎症性疾患または障害を予防する、緩和する、または治療するために有効である量を意味する。そのような有効量は、一般には炎症性疾患または障害の徴候、症状および/またはその他の指標における改善を生じさせる。例えば、皮膚炎症では、有効量は腫脹および/または炎症の減少および/または発赤の除去を生じさせる。掻痒症に対しては、有効量は発赤および/または掻痒の除去を生じさせることができる。MSに対しては、有効量は、再発率の低下、身体障害の防止、脳MRI病変の数および/または容積の減少、25フィート歩行時間の改善、無進行期間の延長などを生じさせることができる。
【0053】
本明細書で使用する用語「PKCアイソフォーム」は、全てのPKCアイソフォームを含み、PKCα、PKCβ、PKCδ、PKCε、PKCη、PKCζ、PKCγ、PKCθ、およびPKCλを包含する。
【0054】
文言「PKCアイソフォームの発現および/または活性を調節する」は、PKCアイソフォームの増加または減少した発現および/または活性に関する。発現の増加は、PKCアイソフォームの産生増加をもたらす。
【0055】
用語「活性化因子」は、本明細書ではPKCアイソフォームの発現および/または活性を増強する分子を記載するために使用される。用語「阻害因子」は、本明細書ではPKCアイソフォームの発現および/または活性を阻害する分子を記載するために使用される。特に、リン酸基転移領域、偽基質ドメイン、ホルボールエステル結合配列、およびリン酸化部位は、アイソエンザイム特異的PKC活性の調節のための標的となることがある。
【0056】
PKCアイソフォームの「偽基質領域」もしくは自己阻害ドメインは、本明細書では、本質的にリン酸化可能な残基を備えていないキナーゼのための基質のコンセンサス配列であると規定されている。偽基質ドメインは調節領域に基づいており、認識部位を阻害してリン酸化を防止する基質認識モチーフに酷似している。そこで、PKCアイソフォームの阻害性ペプチド、例えば本開示のポリペプチドは、セリン(S)またはチロシン(T)のリン酸化可能な残基をアラニン(A)で置換することによって得られる。PKCδは、PKCδの保存ドメイン2であるC2ドメイン上でのこのアイソフォームの活性化を可能にする追加の結合部位を有することが公知である唯一のPKCアイソフォームである。
【0057】
PKCは、ケラチン生成細胞の増殖、遊走および分化を媒介する主要シグナル伝達経路である。多数のPKCアイソフォームは、皮膚組織中で発現することが公知であり、それらの発現/活性は、細胞増殖および/または細胞遊走および/または細胞分化において役割を果たすと思われる。しかし、炎症性疾患の治療を達成するためのそれらの発現および活性の特異的調節は以前は未知であったが、本開示において証明されている。
【0058】
総体的に、本明細書に提示した結果は、様々なPKCアイソフォームの発現および/または活性を調節することが炎症および炎症性疾患の治療において効果的であることを実証している。
【0059】
そこで、1つの態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における炎症性疾患または障害を治療する。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜29のポリペプチドである。
【0060】
実施例において開示するように、PKCアイソフォーム阻害因子の投与は、多種多様性のある皮膚細胞タイプ(皮膚細胞だけではない。つまり、マクロファージは、他の組織において見いだされ、活性である)における前炎症性サイトカイン、ケモカインおよびTh1サイトカインの分泌を減少させることが証明されている。さらに、PKCアイソフォームの投与は、活性化因子、例えばケラチン生成細胞および内皮細胞上のICAM−1およびマクロファージ上のmac−2の発現を減少させる。さらに、PKCα阻害因子は、皮膚炎症の治療において、および乾癬の炎症性皮膚モデルにおける炎症症状を軽減するために有効であることが見いだされている。実施例でさらに考察するように、PCKアイソフォームの阻害因子の作用機序は、炎症性疾患または障害のための効果的療法としてのそれらの使用に関係することが解明されてきた。例えば、PCKアイソフォームのペプチド阻害因子は、例えば、図30に要約したように、炎症性プロセスの様々な工程において様々な細胞タイプの動員および活性化へ特異的に影響を及ぼすことによって:1)最終分化を減少させることにより表皮分化マーカーの発現を正常化する、2)異常過剰増殖を軽減する、3)皮膚構造を調節し、皮膚強度を増強する、および/または4)炎症をダウンレギュレートすることが証明されてきた。
【0061】
さらに実施例において開示するように、PKCδの活性化因子は、多種多様性のある皮膚細胞タイプにおいて前炎症性サイトカインの分泌を減少させることもまた証明されている。そこで、また別の態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、該被験体にPKCδの活性化因子を投与し、それにより該被験体において該炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。様々な実施形態では、活性化因子は、PKCδを選択的に活性化するポリペプチド、例えば配列番号30〜37のポリペプチドである。
【0062】
さらに、実施例において開示するように、PKCα阻害因子およびPKCη阻害因子の投与は、MSの症状を軽減することが見いだされてきた。したがって、また別の態様では、本開示は、被験体において多発性硬化症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCαまたはPKCηの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における多発性硬化症を治療する。
【0063】
さらに、PKCアイソフォーム阻害因子の投与は、掻痒症の治療において有効であることが見いだされている。したがって、また別の態様では、本開示は、被験体において掻痒症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における掻痒症を治療する。
【0064】
実施例および図面は、PKCδの活性化因子が、主要な前炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−6およびTNFαの分泌を阻害する能力を示すデータを提示している。類似のデータは、PKCα、PKCεおよびPKCηを包含する様々なPKCアイソフォーム阻害因子について示されている。実施例において示したように、本開示のPKC阻害因子および活性化因子を包含する製剤は、主要前炎症性サイトカインの分泌を阻害することが証明されてきた。乾癬に関しては、特定の理論に連関しなくても、前炎症性物質のレベルを減少させると、隣接血管内の内皮細胞の活性化、したがって好中球、マクロファージおよびT細胞の乾癬斑への動員を防止すると考えられている。さらに、TH1およびTH17細胞は、炎症を強化する、またはケラチン生成細胞過剰増殖を各々駆動すると思われる特異的サイトカインの分泌によって、乾癬の病因に関与することが証明された。上述した前炎症性サイトカインは、これらのTH17細胞の発生(Mangan et al.(2006)Nature 441:231−234;Bettelli et al.(2006)Nature 441:235−238)およびTH1細胞活性に不可欠であると思われる。PKC阻害因子および活性化因子によるそれらの分泌の減少は、炎症性障害および掻痒症の効果的治療におけるそれらの使用を関係付けている。
【0065】
様々な実施形態では、PKCアイソフォームの阻害因子は、PKCの偽基質領域の阻害因子であり、ポリペプチドであるが、PKCアイソフォームの活性化因子もまたポリペプチドである。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、本明細書では、隣接残基のαアミノ基とカルボキシ基とのペプチド結合によって1つを他の残基に結合させた直鎖系列のアミノ酸残基を指定するために互換的に使用される。
【0066】
様々な実施形態では、使用可能なペプチドPKC活性化因子および阻害因子の例には、制限なく、表1に記載の配列番号1〜5、14〜19、26、27および30〜33のペプチドまたはそれらの生理学的に許容される塩、ならびに特定の修飾もしくは末端保護基を有すると示されている表1の配列番号6〜13、20〜25、28、29、34〜37のペプチドが包含される。
【0067】
【表1−1】
【表1−2】
【0068】
様々な実施形態では、ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は、典型的には6〜12アミノ酸を含有するが、長さがもっと長くても短くてもよい。様々な実施形態では、ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は長さが6〜45、6〜40、6〜35、6〜30、6〜25、6〜20、6〜15、または6〜10個のアミノ酸の範囲に及んでよい。一実施形態では、該ペプチドは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸を包含する。
【0069】
様々な実施形態では、ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は、好ましくはC12−C20脂肪酸、例えばC14アシル(ミリストイル)またはC16アシル(パルミトイル)に由来するアシル基によってN−アセチル化されてよい。
【0070】
一般に、ペプチドPKCα阻害因子には、共通モチーフ配列Phe−Ala−Arg−Lys−Gly−Ala(配列番号1)が包含される。または、また別の実施形態では、PKCα阻害因子には、共通モチーフ配列Thr−Leu−Asn−Pro−Gln−Trp−Glu−Ser(配列番号5)が包含される。
【0071】
ペプチドPKC阻害因子および活性化因子は正確な配列またはモチーフ配列によって規定できるが、当業者であれば、類似の配列を有するペプチドは類似機能を有する可能性があることを理解できる。このため、実質的に同一の配列を有する、または実質的に表1に記載のPKC阻害因子または活性化因子と全く同一もしくは類似する配列を有するペプチドは、含まれることが意図されている。本明細書で使用する用語「実質的に同一の配列」には、配列番号1〜37によって規定された配列と少なくとも60+%(60%以上を意味する)、好ましくは70+%、より好ましくは80+%、および最も好ましくは90+%、95+%、または98+%配列同一性を有する配列を包含する、およびPKCアイソフォーム活性を阻害または活性化するペプチドが包含される。
【0072】
2つのポリペプチドが実質的に同一であるというまた別の指摘は、1つのポリペプチドが第2のポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。そこで、ポリペプチドは、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ相違する場合、典型的には第2ポリペプチドと実質的に同一である。
【0073】
用語「保存的置換」は、タンパク質またはペプチドに関連して分子の活性(例えば、抗菌活性)を実質的には変化させないアミノ酸置換を示すために使用される。典型的な保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸と類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を備える別のアミノ酸との置換を包含する。以下の6つの群は、各々相互に対して典型的な保存的置換であるアミノ酸を含有する、1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、ならびに6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)。
【0074】
用語「アミノ酸」は、極めて広い意味では、天然型アミノ酸ならびにアミノ酸アナログを包含する非天然型アミノ酸を包含するために使用される。この広い定義を考慮すると、当業者であれば、本明細書でのアミノ酸に関する言及には、例えば、天然型のタンパク生成(L)−アミノ酸、(D)−アミノ酸、化学修飾アミノ酸、例えばアミノ酸アナログ、天然型の非タンパク生成アミノ酸、例えばノルロイシン、および当分野においてアミノ酸に特徴的である公知の特性を有する化学合成化合物が包含されることが公知である。本明細書で使用する用語「タンパク生成(proteogenic)」は、アミノ酸を代謝経路を通して細胞内のタンパク質内に組み込めることを示している。
【0075】
2つのポリペプチド配列の状況における用語「同一」または「同一性率」(%)は、配列比較アルゴリズムを使用して、もしくは視覚的検定によって測定した場合、比較して最大対応についてアラインメントされると同一である、または規定パーセンテージの同一であるアミノ酸残基を有する2つ以上の配列または部分配列に関する。
【0076】
2つのポリペプチド配列の状況における文言「実質的に同一」は、配列比較アルゴリズムを使用して、もしくは視覚的検査によって測定した場合、最大一致で、比較及びアラインメントされると、少なくとも60+%、好ましくは80+%、最も好ましくは90〜95+%のアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列または部分配列に関する。
【0077】
当分野において一般に公知であるように、比較のための最適な配列アラインメントは、例えばSmith & Waterman((1981)Adv Appl Math 2:482)の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch((1970)J Mol Biol 48:443)のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman((1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:2444)の類似性検索方法によって、視覚的検定によるこれらのアルゴリズムのコンピュータ化実行、またはその他の効果的方法によって実施することができる。
【0078】
ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は、修飾アミノ酸配列または非天然型末端修飾を有する可能性がある。ペプチド配列への修飾には、例えば、そのような修飾によって生成されたペプチドがPKCα阻害因子活性を保持することを前提に、アミノ酸の付加、欠失または置換を包含することができる。さらに、ペプチドは、遊離末端もしくはアミノ保護(例えば、N−保護)および/またはカルボキシ保護(例えば、C−保護)末端を備える形態で存在してよい。保護基には、(a)ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、イソニコチニルオキシカルボニルおよび4−メトキシベンジルオキシカルボニルを包含する芳香族ウレタン型保護基、(b)t−ブトキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニルおよびメチルスルホニルエトキシカルボニルを包含する脂肪族ウレタン型保護基、(c)アダマンチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニルおよびイソボルニルオキシカルボニルを包含するシクロアルキルウレタン型保護基、(d)アシル保護基またはスルホニル保護基が包含される。追加の保護基には、ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、アセチル、2−プロピルペンタノイル、4−メチルペンタノイル、t−ブチルアセチル、3−シクロヘキシルプロピオニル、n−ブタンスルホニル、ベンジルスルホニル、4−メチルベンゼンスルホニル、2−ナフタレンスルホニル、3−ナフタレンスルホニルおよび1−カンファースルホニルが包含される。
【0079】
様々な実施形態では、ペプチドPKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子は、被験体を治療するために局所、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、静脈内、および/または病巣内投与を包含する任意の適切な手段によって投与することができる。しかし、典型的な実施形態では、ペプチドは局所投与のため、例えば液剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、泡スプレーなどの形態で調製される。
【0080】
本開示によって使用されるPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子の治療用製剤は、例えば、所望の純度を有するPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子を任意の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または安定剤とともに混合する工程によって調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)を参照されたい)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量および濃度で受容者に非毒性であり、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸類、アスコルビン酸およびメチオニンを包含する抗酸化物質、保存料(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン類、例えばメチルもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくはイムノグロビン類、親水性ポリマー類、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシン、単糖類、二糖類、およびその他のグルコース、マンノース、もしくはデキストリン類を包含する炭水化物、キレート剤、例えばEDTA、糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えばナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性化因子、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を包含することができる。
【0081】
典型的な実施形態では、PKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子は、クリーム剤に調製される。PKCアイソフォームの阻害因子および活性化因子は、皮膚炎症および他の炎症性障害の局所治療のために理想的であるが、それはPKC酵素の活性を特異的に標的とすることができるからである。特異的PKC酵素の阻害または活性化は、他のPKCアイソフォームに影響を及ぼさずに低濃度でPKCアイソフォームを選択的に調節する能力によって達成される。
【0082】
局所投与の代表的な製剤は、ペプチドMPDY−1(配列番号6)が局所投与のためのクリーム剤として調製される実施例4に開示されている。しかし、当業者であれば、本製剤は、クリーム剤の本質的特性、例えば粘度、安定性、非毒性などを保持しながら変更を加えられることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、本製剤を本開示のペプチドPKC阻害因子または活性化因子のいずれかのための溶媒として使用可能なことを認識するであろう。
【0083】
また別の実施形態では、1つの製造品、例えば本開示の治療方法を実施するために有用な材料を含有するキットが提供される。様々な実施形態では、本キットは、PKCアイソフォーム活性化因子または阻害因子、つまり本明細書に開示したペプチドPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子、および該被験体に該活性化因子または阻害因子を投与するための取扱説明書を包含する。
【0084】
用語「取扱説明書」または「添付文書」は、適応、用法、用量、投与、禁忌、包装された製品と結合すべき他の治療用製品および/またはそのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含有する、治療用製品の商業包装内に慣習的に包含される取扱説明書を意味するために使用される。
【0085】
本明細書で開示するPKCαの阻害因子は、特定投与経路のために調製することができる。したがって、本キットは、適切な容器、例えばチューブ、ボトル、バイアル、シリンジなどの中に含有されるPKCαの阻害因子を包含する製剤を包含することができる。容器は、様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成されてよい。容器は、炎症性疾患を治療するために有効である組成物を保持または含有し、無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈注射溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。製剤中の少なくとも1つの成分は、PKCアイソフォームの阻害因子または活性化因子である。ラベルまたは添付文書は、PKCアイソフォームの阻害因子または活性化因子を包含する製剤を提供するために投与量および投与間隔に関する特別の手引きを用いて、本組成物が炎症性疾患を患う患者において治療するために使用されることを示している。本製造品は、商業的観点および利用者の観点から望ましい、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードル、およびシリンジを包含する他の材料をさらに包含することができる。
【0086】
当然ながら、治療を必要とする任意の特定被験体のための特定用量レベルおよび投与頻度は変動してよく、使用されるPKCアイソフォームの阻害因子または活性化因子の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与様式および時刻、特定状態の重症度、および療法を受ける宿主に依存することになる。しかし一般に、用量は、特異的PKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子の公知の投与方法に典型的な用量に近似する。当業者であれば、最適用量、投与方法および反復頻度を容易に決定することができる。正確な処方および用量は、患者の状態に照らして個々の医師が選択することができる(Fingl et al. “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch.1 p.1(1975))。
【0087】
そこで、治療対象の状態の重症度および反応性に依存して、投与は単回、または治癒するまで、または障害の減少が達成されるまで治療過程が数日間から数週間持続する反復投与であってよい。
【0088】
PKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子がペプチドである様々な実施形態では、該ペプチドは組成物中で0.001〜100μg/mlの濃度で提供される。例えば、濃度は、0.001〜100、0.01〜50、0.01〜10、0.01〜1、および0.01〜0.5μg/mlであってよい。
【0089】
1つの投与プロトコールでは、本方法は、ペプチドPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子を該被験体へ局所的に、例えばクリーム剤として投与する工程を含んでいる。ペプチドは、約1μg/ml〜約1,000μg/ml、1μg/ml〜約500μg/ml、1μg/ml〜約100μg/ml、1μg/ml〜約10μg/ml、または10μg/ml〜約100μg/mlの濃度で局所投与される。ペプチドは、その状態が治療されるまで少なくとも1日1回投与される。
【0090】
また別の投与プロトコールでは、本方法は、ペプチドPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子を該被験体へ非経口、皮下または静脈内投与する工程を含んでいる。ペプチドは、約1μg/ml〜約1,000μg/ml、1μg/ml〜約500μg/ml、1μg/ml〜約100μg/ml、1μg/ml〜約10μg/ml、または10μg/ml〜約100μg/mlの濃度で投与される。ペプチドは、その状態が治療されるまで少なくとも1日1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。
【0091】
以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに具体的に示すために提供するが、範囲を限定することは意図されていない。これらの実施例は使用可能な実施例の典型ではあるが、あるいはまた当業者には公知の他の手順、方法、または技術を使用することができる。
【実施例1】
【0092】
PKCαの阻害は炎症性皮膚障害である乾癬に特徴的なケラチン生成細胞構造統合性(structure integrity)を調節する
PKCαの阻害は、乾癬に特徴的なケラチン生成細胞構造統合性を調節することが証明された。皮膚組織をパラフィン包埋し、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)一般組織学的染色のため、または基底層に対するケラチン14(K14)、有棘層に対するケラチン1(K1)、ケラチン生成細胞遊走に対するケラチン6(K6)およびケラチン生成細胞増殖に対するPCNAを包含する様々な皮膚層に対する別のマーカーについて染色した。結果は、PKCα阻害後の皮膚特性の正常化を証明している(図2)。
【実施例2】
【0093】
乾癬モデルによる炎症のin vivoおよびex vivo治療を評価するためのモデル
これまで極めて多数の動物モデルが乾癬を試験するために使用されてきたが、これらのモデルはいずれも、過剰な皮膚産生、新規血管の形成、および重度免疫機能障害を特徴とするヒト疾患病理を適正に模倣するために十分ではなかった。一般に、乾癬の有用なモデルであると見なすには、モデルは、乾癬との一部の組織病理学的特徴を共有し、類似の病因および/または疾患機序を示し、そしてこの疾患を治療するための治療薬に同様に応答しなければならない。既存モデルは、表皮肥厚、表皮分化の変化、脈管新生の増加、および白血球/T細胞浸潤を包含する幾つかの特徴を示す。しかし、特に既存のマウスモデルの中では、既存薬物および療法に応答するマウスは多くない。したがって、既存モデルを使用して、以下の実施例において利用された乾癬治療を評価するための新規のin vitro、ex vivoおよびin vivoモデルが開発されてきた。
【0094】
in vitroモデル
開発されたモデルは、細胞系および皮膚由来細胞ならびに免疫細胞の一次培養物を使用し、STAT3およびPKCα媒介性シグナル伝達経路を過剰発現させて不活性化するための構築体およびツールを利用する細胞培養試験を包含していた。皮膚細胞の増殖、遊走、分化、炎症およびシグナル伝達を試験するための膨大な一連の技術が利用され、乾癬の発生機序を試験し、乾癬におけるPKCαの阻害の治療作用を試験するのに有用であることが証明された。
【0095】
in vivoモデル
PKCα過剰発現およびノックアウトマウスモデルを使用した。K5−PKCαトランスジェニックマウスを使用したケラチン生成細胞内でのPKCαの過剰発現は、例えば膿疱性乾癬などの状態を模倣する重度の表皮内好中球浸潤および表皮の破壊を示すことが証明された。トランスジェニックマウスのPKCαおよびDN形態の両方が確立され、これは、皮下投与によってin vivoで試験された。さらに、皮膚構造および機能にPKCα不活性化が及ぼす作用を試験するために、PKCαノックアウトマウスを使用した。
【0096】
STAT3を過剰発現するマウスモデルを使用した。中でも、乾癬、ヒト乾癬に対する類似性に関するリードマウスモデルは、Stat3が表皮ケラチン生成細胞内で過剰発現するトランスジェニックマウスである。これらのマウスは、乾癬状の表皮での棘細胞増殖を発生し、真皮内では主としてCD4+であり、表皮内ではCD8+である皮膚リンパ球浸潤を有するが、これらは全てヒトにおける乾癬に類似する特徴である。
【0097】
皮膚炎症および過形成のためのモデルとしての創傷。創傷状況における皮膚病変内の炎症を検出して定量的に評価するために、様々な皮膚区画における皮膚炎症応答を追跡し、この応答に影響を及ぼす薬剤の同定を可能にするスクリーニング方法が開発された。
【0098】
ex vivoモデル
ニワトリ絨毛尿膜(CAM)上での乾癬性皮膚の移植。ニワトリ絨毛尿膜(CAM)上での乾癬性皮膚移植の技術は、ex vivo治療用途を試験する目的で開発された。この技術は皮膚腫瘍試験および血管新生実験において一般に使用されるが、これを乾癬試験のために採用して使用した。この最初のアプローチは、ヒト乾癬性皮膚への新規薬物の直接的な投与を可能にするため、そこで感染を治療するための新規薬物のより臨床的に意義のある試験を作り出す。移植後、乾癬性ヒト皮膚を利用して様々な製剤における様々な治療の有効性およびタイミングを確定し、形態学的、組織学的および生化学的分析を使用して分析する。
【実施例3】
【0099】
PKCαノックアウトマウスにおける瘢痕形成の軽減
PKCαノックアウトマウスモデルを開発し、皮膚構造および機能にPKCα不活性化の作用が及ぼす作用を試験するために利用した。図3および4に示したように、落屑の軽減がPCKαノックアウトマウスにおいて観察された。図3は、平均落屑重症度が、コントロールと比較してPCKαノックアウトマウスにおいて50%超減少したことを示しているヒストグラムであり、PKCαの阻害が乾癬治療の重要な要件であることを証明している。これは、相違するマウスにおける落屑を比較している一連の図である図4においても証明されている。
【実施例4】
【0100】
局所的PKCα阻害因子製剤
局所的PKCα阻害因子製剤を開発し、乾癬の治療における有効性について評価した。ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)をクリーム剤に調製し(本明細書では、HO/02/10と称する)、その成分は表2に示した。
【0101】
【表2】
【実施例5】
【0102】
PKCα阻害因子がin vitro表皮分化に及ぼす作用
実施例4の製剤(HO/02/10)をin vitroで表皮分化を制御するために決定した。基底ケラチン生成細胞は、分化してK1/K10ケラチンを特徴とする有棘層、ロリクリン/フィラグリンを特徴とする顆粒層および角層を形成する。ロリクリンおよびフィラグリン線維の発現および取込みの欠損には、乾癬を包含する様々な免疫学的皮膚疾患が関連している。そこで、HO/02/10が皮膚分化および増殖に及ぼす作用を評価した。図5および6に示したように、HO/02/10は、皮膚増殖(PCNA)(図6)を正常化し、ロリクリンおよびフィラグリンの発現を減少させることによって皮膚分化を調節したが、その間、有棘層は影響を受けないままであった(図5)。乾癬性皮膚ケラチン生成細胞は急速に分化して顆粒細胞および主として大量の角膜細胞(鱗屑)を生成するが、有棘層は薄化するので、HO/02/10は、皮膚特性を正常表現型に向けて修正することによって乾癬性皮膚を正常化するように機能した。
【0103】
図5は、HO/02/10がin vitroでの表皮顆粒分化を制御することを図示している。C57BL/6Jマウスに由来するケラチン生成細胞は、ケラチン生成細胞分化を誘導するためにCa2+を含有する培地中でインキュベートした。次に細胞をHO/02/10(1μg/ml)の存在下でインキュベートした。細胞を採取し、SDS PAGEゲル上でランし、抗フィラグリン(Fil)、抗ロリクリン(Lor)および抗ケラチン1(K1)抗体を使用してイムノブロッティングした。
【0104】
図6は、HO/02/10がin vitroおよびin vivoでのケラチン生成細胞増殖を減少させたことを図示している。2日齢Balb/cマウス由来の一次マウスケラチン生成細胞は、0.05mM Ca2+MEM培地中で完全コンフルエンスに達するまで5日間増殖させた。HO/02/10処置(10−6Mおよび10−5M)は、分化誘導の6時間前に適用した。細胞を採取し、SDS PAGEゲル上でランし、抗PCNA抗体を使用して免疫ブロッティングした。結果は、図6の上図に示した。8〜10週齢のC57Blackマウスは、表皮リモデリングおよび分化を誘導するために、上背領域内での全層創傷形成を受けさせた。創傷形成後、マウスは1日1回7日間HO/02/10(範囲:40〜4,000mg/kg/日)で処置した。終了時点に、マウスを安楽死させ、上背皮膚サンプルを4%パラホルムアルデヒド溶液中で固定し、パラフィン包埋し、スライド標本作製した。皮膚サンプルを次にPCNA抗体を利用して免疫組織学的染色にかけた(n=18)。結果は、図6の下図に示した。
【0105】
図7および8は、MPDY−1(配列番号6)を利用したケラチン生成細胞内の追加の発現データならびにPKCα阻害因子AIP−1(配列番号9)、AIP−2(配列番号8)、AWOT−1(配列番号7)およびPPDY−1(配列番号10)についてのデータを示している。図7は、様々なペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内での抗PCNA、抗フィラグリン(Fil)、抗ロリクリン(Lor)、抗ケラチン1(K1)および抗ケラチン14(K14)抗体を利用した免疫組織学的染色を示している。図8は、様々なペプチドPKCα阻害因子に対するケラチン生成細胞内での発現データの概要を示している。
【0106】
皮膚の強度および弾性を試験するために、破裂チャンバを使用して、皮膚サンプルを破裂(皮膚弾性および耐久性の測定可能な指標)させるために必要とする圧力を測定した。図9における結果は、HO/02/10処置皮膚が皮膚強度を増強したことを証明した。そこで、PKCαの阻害は、皮膚の統合性を増強して乾癬病変の破裂を防止することが証明されたため、乾癬性皮膚にとって有益な可能性がある。
【0107】
図9は、HO/02/10が皮膚強度を劇的に強化したことを証明している。マウス皮膚を14日間HO/02/10を用いて処置し、続いて破裂圧分析にかけた。破裂チャンバデバイスは、一端は閉鎖して、制御弁および圧力計によって高圧CO2容器に接続した固定容積の金属製シリンダーから構成された。チャンバの他方の端部では、試験対象の皮膚組織を載荷して適所に保持するために、調節可能なフレームを据え付けた。ガスを徐々にチャンバ内に流入させ、内部の圧力は、試験対象組織の破裂が発生するまで持続的に監視した。
【実施例6】
【0108】
PKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子が皮膚炎症に及ぼす作用
創傷状況における皮膚病変内の炎症を検出して定量的に評価するために、様々な皮膚区画における皮膚炎症応答を追跡し、この応答に影響を及ぼす薬剤を(予備スクリーニングとして)同定することを可能にする方法が開発された。炎症応答は、以下の3つの状態の内2つが明白であった場合に重度と見なした。(1)膿瘍形成、(2)過度の白血球増加症(固定視野×200内で>100細胞)、(3)血管内の>20%のWBC含量が固定視野×200内で示されている、血管内での高WBC/RBC比。免疫学的応答の作用的特性は、特異的免疫学的細胞の浸潤および活性化を同定するためのマーカーを利用して試験する。そのようなマーカーについての例は、ICAM−1(マーカー活性化基底細胞および内皮細胞として)、MAC−2(活性化マクロファージのためのマーカーとして)およびCD3(T細胞マーカー)である。この定量的方法を使用すると、数種の動物モデルにおける異なる細胞タイプおよびプロセスにおける無傷皮膚および皮膚病変内でのHO/02/10およびその他のペプチドPCKα阻害因子が及ぼす強力な抗炎症性作用を証明することが可能であった。
【0109】
下記の代表的な結果は、創傷の4および9日後にB57BL/6Jマウスにおける皮膚創傷にHO/02/10が及ぼす抗炎症作用を証明している(図10)。図10は、C57BL/6Jマウスにおける炎症にHO/02/10が及ぼす用量反応を示している。C57BL/6Jマウスの皮膚は、1日1回、HO/02/10(4μg/kg/日)または(40μg/kg/日)の投与によって処置した(6マウス/群)。処置は局所的に投与した。生検標本は、創傷の4および9日後に採取した。組織は、組織学および免疫組織化学によって炎症を評価するために安楽死させた動物から切除した。
【0110】
HO/02/10は、LPS活性化脾細胞からの前炎症性サイトカイン分泌を減少させることもまた証明された。in vitroでの一般的抗炎症作用を評価するために、マウス由来一次脾細胞を免疫学的モデルとして利用した。脾細胞は、C57BL/6Jマウスに由来し、赤血球を溶解し、細胞は96ウエルプレート内で500,000/ウエルでインキュベートした。LPSを加え(IL−1およびTNFα試験のために1μg/ml、およびIL−6試験のために0.2ng/ml)、そして細胞をMPDY−1(1μg/ml)またはPBSで処置した。陰性コントロールサンプルにはLPSを加えなかった。培地を2日後に収集し、分泌されたサイトカインの量はELISAを使用して定量した。
【0111】
図11、ならびに図17〜27、43および50は、HO/02/10が、主要な全炎症性サイトカイン、例えばTNFα、IL−1およびIL−6の活性化ケラチン生成細胞からの分泌を劇的に減少させる能力を証明している。詳細には、IL−6が乾癬の病因に関与するTH17細胞の発達に必須であることが証明され、IL−1およびTNFαについては増強作用が証明された。TNFαおよびIL−6は、乾癬療法にとって公知の標的である。図11は、1μg/mlのHO/02/10の作用を証明している。
【0112】
HO/02/10は、in vivoで基底ケラチン生成細胞および内皮細胞の免疫学的活性化を阻害することもまた証明された。ICAMは、炎症性病変内への白血球浸潤を許容する接着分子である。詳細には、皮内で、基底ケラチン生成細胞が免疫学的活性化されるとICAM−1を発現し、これは乾癬の特徴の1つである好中球およびCD8−T細胞の表皮内への浸潤を増強する可能性がある。そこで、HO/02/10が皮膚内でのICAM発現に及ぼす作用をin vivoでの創傷炎症性状況において免疫組織化学によって試験した。
【0113】
皮膚炎症において活性化されたケラチン生成細胞および内皮細胞のダウンレギュレーション(ICAM−1染色)が観察された。2cmの縦切開をC57BL/6Jマウスの上背部で実施した。創傷後、このマウスの皮膚に無菌パッドを縫合した。動物は、毎日、HO/02/10を用いて処置した(n=12)。創傷の5日後、炎症期がそのピークに達した時点で、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン包埋し、抗ICAM−1抗体を利用して免疫組織化学的染色を実施した。
【0114】
図12に示したように、HO/02/10は、皮膚の血管内の基底ケラチン生成細胞および内皮細胞上でのICAM発現を劇的に減少させる。この作用は、用量依存性であることが証明され、最大作用は10μg/mlで証明された。
【0115】
図13は、皮膚炎症における活性化されたケラチン生成細胞および内皮細胞のダウンレギュレーション(ICAM−1染色)を示す追加の染色を示している。上述したように、2cmの縦切開をC57BL/6Jマウスの上背部で実施した。創傷後、このマウスの皮膚に無菌パッドを縫合した。動物は、毎日回MPDY−1を用いて処置した(n=6)。創傷の5日後、炎症期がそのピークに達した時点で、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン包埋し、抗ICAM−1抗体を利用して免疫組織化学的染色を実施した。
【0116】
図14は、両創縁部で陽性ICAM−1染色を示すマウスのパーセントを比較しているヒストグラムである。
【0117】
MPDY−1がマクロファージ浸潤に及ぼす作用もまたIba−1染色によって証明された。Iba−1は、マクロファージのための一般的マーカーである。図15は、Iba−1陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。上述したように、2cmの縦切開をC57BL/6Jマウスの上背部で実施した。創傷後、このマウスの皮膚に無菌パッドを縫合した。動物は、毎日MPDY−1を用いて処置した(n=6)。創傷の5日後、炎症期がそのピークに達した時点で、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン包埋し、抗Iba−1抗体を利用して免疫組織化学的染色を実施した。MPDY−1がマクロファージ浸潤に及ぼす用量依存性作用が観察された。
【0118】
MPDY−1がマクロファージ活性化に及ぼす作用もまたMAC−2染色によって証明された。MAC−2は、活性化されたマクロファージのための特異的マーカーである。図16は、一連のMAC−2染色および陽性MAC−2染色を示している1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。上述したように2cmの縦切開を実施した。動物は、毎日、DPBS−/−(コントロール)または規定濃度のMPDY−1を用いて処置した(n=6)。5日後に、免疫組織化学的染色は、抗MAC−2抗体を利用して実施した。バー1μm。(*p(コントロール対MPDY−1 10μg)=0.0028)。マクロファージの活性化は、MPDY−1処置後、有意に阻害された。
【0119】
MPDY−1はさらに、図32に示したように、用量依存様式によりケラチン生成細胞内でTNFα誘導性IKK活性化を有意に減少させることも証明された。マウス一次ケラチン生成細胞は、低Ca+2MEM中で完全コンフルエンスまで4日間増殖させた。細胞は、TNFα誘導に先行して、図に記載したように1時間にわたり指定濃度のMPDY−1を用いて前処置した。MPDY−1前処置後、細胞は15分間TNFα 35ng/mlとともにインキュベートした。反応は、氷温dPBS−/−を添加することにより停止させ、ケラチン生成細胞は、RIPA緩衝液中でホモジナイズした。サンプルは、リン−IKKa/b(Ser176/180抗体)を利用して、SDS PAGEウエスタンブロット(Western Blot)分析にかけた。MPDY−1を用いた前処置はケラチン生成細胞内のTNFα誘導性IKK活性化を用量依存様式で有意に減少させたが、この時、最低MPDY−1濃度(0.1mg/ml)は最強の阻害を示し、したがってNFkB活性化を抑制した。
【0120】
上記で考察したように、HO/02/10はさらに活性化されたケラチン生成細胞およびマクロファージからのサイトカイン分泌を減少させることも証明された。近年、免疫成分および皮膚成分の両方が乾癬の病因の基礎にある周期へ同等に寄与することが見いだされた。常在皮膚細胞および免疫学的細胞(常在細胞および浸潤細胞の両方)は、細胞−細胞相互作用およびサイトカイン分泌によって炎症性乾癬プロセスにおいて相互作用する。そこで、HO/02/10がケラチン生成細胞および免疫細胞、例えばマクロファージおよび樹状細胞両方からの前炎症性、化学走化性および免疫学的経路関連サイトカインの分泌へ及ぼす直接作用を試験した。図17および18に示した結果は、HO/02/10がケラチン生成細胞およびマクロファージからの免疫関連サイトカイン類、例えばIL−6、IL−1α、GM−CSF、MIP−2およびKCの分泌をダウンレギュレートすることを証明している。
【0121】
図17の結果は、ケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌にHO/02/10が及ぼす作用を示している。ケラチン生成細胞は、新生仔C57BL/6Jマウスに由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は、次にDPBS−/−、LPS(100ng/ml)、またはHO/02/10(1μg/ml)+LPS(100ng/ml)を用いて処置した。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、Luminexシステムを使用して分析した。
【0122】
図18の結果は、マクロファージ内のサイトカイン分泌をHO/02/10がダウンレギュレートすることを示している。骨髄細胞は、B6マウスに由来した。細胞は、GM−CSF(20ng/ml)の存在下で6日間インキュベートし、次にDPBS−/−、LPS(100ng/ml)またはHO/02/10+LPS(各々、1μg/mlおよび100ng/ml)を用いて処置した。
【0123】
その他のペプチドPKCα阻害因子は、さらに活性化されたケラチン生成細胞およびマクロファージからのサイトカイン分泌を減少させることも証明された。図19〜23は、ペプチド阻害因子MPDY−1(配列番号6)、MPDY−1sh(配列番号12)およびPDY−1(配列番号13)は、LPSおよびTNFα活性化ケラチン生成細胞からのサイトカイン分泌を減少させることを示している。図24〜27は、ペプチド阻害因子MPDY−1(配列番号6)、MPDY−1sh(配列番号12)およびPDY−1(配列番号13)は、IL−17A活性化ケラチン生成細胞からのサイトカイン分泌を減少させることを示している。
【0124】
表3は、HO/02/10についてのサイトカインの役割および起源に関する結果を要約している。
【0125】
【表3】
【0126】
様々なその他のPKCα阻害因子は、さらに活性化されたケラチン生成細胞におけるサイトカイン分泌を減少させることも証明された。それらの作用を決定するために、ケラチン生成細胞を、新生仔BALB/Cマウス皮膚に由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は次に、コントロールとしてのPBS−/−とともにインキュベートした、またはLPS、TNFα、もしくはIL−17によって刺激した。PKCα阻害因子は指示どおりに加えた。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、ELISAを使用して分析した。図50は、サイトカイン分泌の表にまとめた概要である。PKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、AWOT(配列番号7)およびPPDY−1(配列番号10)は、全てケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌の減少に効果的であることが証明された。
【0127】
HO/02/10もまた、皮膚へのT細胞浸潤を軽減することが証明された。HO/02/10がT細胞浸潤に及ぼす作用は、抗CD3特異的染色を使用してin vivoで試験した。
【0128】
図28から明らかなように、HO/02/10は、炎症期中に真皮および表皮へのT細胞浸潤をダウンレギュレートした。詳細には、HO/02/10は、同様に乾癬斑に特徴的な更なる抗炎症特性を示す表皮内へのT細胞浸潤を阻害した。上述したように2cmの縦切開を実施した。動物は、毎日HO/02/10を用いて処置した(n=12)。9日後、免疫組織化学的染色は、抗CD3抗体を利用して実施した。図28Bは、CD3に対して陽性染色された1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。この作用は、1μg/mlおよび10μg/mlの濃度で統計的有意であったが、1μg/mlの処置は10μg/mlより強度の作用を証明している。
【0129】
HO/02/10もまた、皮膚への好中球浸潤を軽減することが証明された(図31)。HO/02/10が好中球浸潤に及ぼす作用は、好中球特異的染色を使用してin vivoで試験した。上述したように2cmの縦切開を実施した。動物は、毎日、DPBS−/−(コントロール)または規定濃度のPKCαを用いて処置した(n=6)。5日後、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン中に包埋し、好中球に対する免疫組織化学的染色を実施した。用量依存性傾向が観察されたが、結果は統計的有意ではなかった。
【0130】
PKCδ活性化因子もまたケラチン生成細胞および脾細胞に及ぼす抗炎症作用を有することが証明された。ケラチン生成細胞は、新生仔BALB/Cマウス皮膚に由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は次に、コントロールとしてのPBS−/−とともにインキュベートした、またはLPSもしくはTNFαによって刺激した。PKCδ阻害因子DAP−1(配列番号34)を加えた。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、ELISAを使用して分析した。図43は、LPSを用いて刺激したケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を示している表による概要である。図44は、TNFαを用いて刺激した脾細胞内でのサイトカイン分泌を示している表による概要である。DAP−1は、ケラチン生成細胞および脾細胞の両方で炎症性サイトカインの分泌を有意に減少させることが証明された。
【0131】
PKCε阻害因子もまた、ケラチン生成細胞に抗炎症作用を有することが証明された。ケラチン生成細胞は、新生仔BALB/Cマウス皮膚に由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は次に、コントロールとしてのPBS−/−とともにインキュベートした、またはLPSもしくはTNFαによって刺激した。PKCε阻害因子EPIP−1(配列番号20)、EPIP−2(配列番号21)、またはEPIP−4(配列番号23)を加えた。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、ELISAを使用して分析した。図45〜48は特異的サイトカインの分泌についての結果を示しており、図49は様々なPKCε阻害因子についてのサイトカイン分泌の表による概要である。PKCε阻害因子の幾つかは、ケラチン生成細胞における炎症性サイトカインの分泌を有意に減少させることが証明された。
【0132】
要約すると、炎症および炎症性疾患のための効果的療法としてのそれらの使用に関係しているPKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子の作用機序を決定した。そのようなペプチドは、炎症性プロセスの様々な工程において様々な細胞タイプ動員および活性化に示差的に影響を及ぼすことによって、1)末端分化を減少させることにより表皮分化マーカーの発現を正常化する、2)異常過剰増殖を軽減する、3)皮膚構造を調節し、皮膚強度を増強する、および/または4)炎症をダウンレギュレートすることが証明された。
【0133】
図30は、本開示のPKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子が皮膚炎症および乾癬関連経路に及ぼす全体的作用を示すスキームを図示している。このスキームは、阻害因子および活性化因子が皮膚内の様々な細胞タイプおよび炎症段階に及ぼす阻害作用を要約している。PKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子は、常在皮膚免疫細胞による前炎症性サイトカイン(例えば、IL−1、IL−6およびTNFα)の分泌を阻害する。したがって、内皮細胞およびケラチン生成細胞活性化における減少が達成され、結果、ICAM−1発現の有意な減少、ケモカイン分泌および好中球、マクロファージ、およびT細胞を包含する炎症部位への白血球浸潤の減少が生じる。どちらも乾癬における主要経路であるTh1およびTh17経路の発達および進行に関与するサイトカインもまた、ダウンレギュレートされた。
【実施例7】
【0134】
PKCαおよびPKCη阻害因子を用いた多発性硬化症の治療
多発性硬化症の動物モデル:CNS組織は容易にはサンプリングされないため、疾患機序に関する情報を獲得するために、多数のモデルが開発され、文献において一般に使用されている。これらのモデルには、報告によれば、MSの臨床状態および病理を模倣するミエリン突然変異体、化学的に誘導された病変、ウイルスおよび自己免疫モデルが包含される(Baker et al.(2007)ACNR 6(6):10−12)。モデルの中でも、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、報告によればMSのために最も一般的に使用されるモデルである(Baker et al.(2007)ACNR 6(6):10−12)。
【0135】
多発性硬化症の自己免疫モデル:実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、明らかにMS疾患および進行のモデルとして最も注目を受けており、MSのための治療戦略を試験する際にルーチン的に使用されている(Baker et al.(2007)ACNR 6(6):10−12)。
【0136】
この疾患モデルはMSの多数の臨床的および組織学的特徴を示し、報告によればCNSにおいて自然に、または人工的のいずれかで発現する抗原への自己免疫の誘導によって誘発される(Lavi et al.(2005)ISBN 0−387−25517−6;およびOwens et al.(2006)Adv Neurol 98:77−89)。ミエリン抗原への感作後、動物は、四肢麻痺を典型とする疾患を発生すると思われる。これには、血液脳関門機能障害、結果として神経伝達障害を生じさせるCNSおよび伝導ブロック内への単核球浸潤が関連している。
【0137】
EAEは、感受性および臨床経過が免疫抗原および調査対象の動物の血統/種に依存して変動すると思われる多遺伝子性である。小さなミエリンタンパク質であるMOGは、C57BL/6マウスにおいて慢性麻痺性EAEを誘導すると思われる。EAEは、単一モデルではなく、MSと類似する程度の様々な病理を提示する多数のモデルである(Lavi et al.(2005)ISBN 0−387−25517−6)。
【0138】
数種のPKC阻害因子がEAEマウスの発達および臨床状態に及ぼす作用を試験するために、以下の実験プロトコールを利用する様々な試験を実施した。詳細には、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)およびペプチドPKCη阻害因子MPE−1(配列番号28)を評価した。
【0139】
試験には、雌性8〜10週齢C57BL/6Jマウスを使用した。群の総数は7であった(n=7/群)。動物の総数は49匹であった。麻酔後、マウスをMOG35−55/CFAにより免疫した。マウスは、300μgの結核菌(tuberculosis)(Mt)H37RA(Difco)を補給した200μgのMOG35−55/CFAを用いて側腹部への皮下(s.c.)注射により免疫した。百日咳毒素(Pertussis Toxin:PTX)は、免疫時および48時間後に静脈内(i.v.)注射した。追加免疫の必要性は、合成MOG35−55ペプチドを用いた予備キャリブレーション実験(マウス20匹)に基づいて決定した(処置実験に先行してキャリブレーション手順として実施した)。
【0140】
処置は、以下の通りに投与した。免疫当日に開始し、マウスは週3回、腹腔内(i.p.)注射(200μl/注射)によって処置した。
【0141】
臨床観察およびスコア判定は、49日間の観察期間、6日間/週で実施した。体重は、免疫前およびその後は週2回測定した。有効EAEは、以下の表4に示したようにマウスの定量可能な臨床所見に依存して0〜6のスケール上でスコア付けした。
【0142】
【表4】
【0143】
マウス群は、表5に示したように処置した。
【0144】
【表5】
【0145】
結果は、図33〜37に提示し、要約した。
【0146】
図33から明らかなように、MPDY−1 0.1mg/kgを用いて処置されたマウスは、コントロール群より2日後、実験の第13日目に疾病の徴候を示し始めた。MPDY−1 0.1mg/kg群のマウスは、ほとんどの実験期間中にコントロール群のマウスと比較して低いスコアを示した。さらにMPDY−1 0.1mg/kg群およびMPE−1 0.1mg/kg群のマウスは実験期間中に1匹も死ななかったが(スコア6)、他の全群では時間の経過に伴ってマウスが死んだ(コントロール群−最初のマウスは実験第34日目に死亡し、もう1匹は第35日目に死んだ)。全マウスの死亡の要約は、以下の表6に提示した。
【0147】
【表6】
【0148】
特定時点での図33〜37から引き出されたスコアの概要は、表7に示した。
【0149】
【表7】
【0150】
処置の第4群および第6群は、実験の第49日目までの無死亡数を包含する、疾患の臨床症状の発生への耐性を示している。0.1μg/ml(第4群)の濃度でのMPDY−1およびMPE処置はEAEの重症度を低下させ、コントロール動物における疾患の後期に観察された致死性EAEからマウスを保護したので、そこで実験終了時(第42日目)での平均群スコア(1.93のMPDY−1、2.00のMPE−1)の平均コントロール群スコア(2.86)より下方への低下を生じさせた。0.1μg/mlの濃度でのMPDY−1処置は、コントロール群と比較してEAE比較の発生の臨床状態の2日間の遅延を誘導した。このため、MPDY−1およびMPEは、MSの治療のための効果的薬剤であると証明されたと思われた。
【実施例8】
【0151】
掻痒症治療のin vivo評価
図38に示したように、掻痒症を評価するためにヒスタミンを利用する皮刺試験モデルを開発した。個々の被験体の前腕に、ヒスタミン溶液およびプラセボを注射した。実施例4の製剤は、様々な濃度でMPDY−1とともに局所的に適用し、図39〜42に示したように掻痒症を時間の経過に伴って評価した。
【0152】
この試験は、可能性のあるアレルゲンを含有する溶液の液滴を皮膚上に配置し、一連の引っ掻き傷または針穿刺により溶液の皮内進入を可能にする。抽出液は、細針(例えば、26Gディスポーザブル針)を使用して皮膚の外層(表皮)内に進入させる。この試験は非有痛性であり、一般には針は皮膚の表面を引っ掻くだけであるので、出血を伴うことがない。皮膚が赤く盛り上がった痒い領域(膨疹と呼ばれる)を発生した場合、これはそのアレルゲンに対するアレルギー反応の結果である。これは陽性反応と呼ばれている。抽出物の液滴は細針(例えば、No.26のディスポーザブル針)を通して導入する。この試験は不快感を引き起こさず、生じさせる外傷は極めて小さいので、コントロールおよび陰性試験は、たとえ示しても穿刺部位しか示さない。
【0153】
26G針を利用してヒスタミンストック液(Histatrol陽性コントロールヒスタミン、1mg/ml、コード番号HIST14999V、Trupharm社)を導入した。本試験は、二重盲験無作為化試験において健常志願者を対象に実施した。製剤は、前腕に適用された。3カ所の処置領域を選択し、マーキングした(肘から手首までの前腕の表面を近位、中部および遠位3分の1に横に分割した)、これらの領域を下記の処置前に穿刺した。
【0154】
1つの領域は、二重盲験法により活性製剤で10分間処置し、Aとマーキングした。
【0155】
1つの領域は、二重盲験法によりプラセボで10分間処置し、Cとマーキングした。
【0156】
カラー写真は、0(T0)、10、20、30分後の時点に撮影した。
【0157】
掻痒症のアンケートには、処置の5および15分後に被験体に回答してもらった。
【0158】
1つの試験では、3人の被験体を表8および9に示した処置で試験した。
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
被験体に掻痒感覚記入様式を提供し、様々な時間間隔で感じた掻痒レベルを0(反応なし)〜4(制御不能な掻痒症)で示すように求めた。結果は、下記の表10に示した。
【0162】
【表10】
【0163】
さらに、図39〜42で明白なように、MPDY−1の投与は、コントロールと経時的に比較して、発赤、炎症および掻痒を有意に軽減した。
【0164】
本開示の課題を上記の実施例を参照して記載してきたが、変更態様および変形態様が本開示の真意および範囲内に含まれることを理解されたい。したがって、本開示は以下の特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例9】
【0165】
インスリンおよびPKCα阻害因子を組み合わせると、インスリン単独処置によって誘発される有害な副作用を回避する。
【0166】
創傷は、8〜10週齢のC57BLマウスの背部に切開によって作製し、7日間にわたり1日1回ビヒクル(PBS)コントロールまたは1μMインスリン(Humulin、Eli Lilly社、米国)もしくは1μMインスリンと1μMの配列番号6のPKCα阻害因子との混合物のいずれかで処置した。創傷の7日後、全マウスを犠牲にし、処置した創傷を表皮の増殖能力(増殖性細胞核抗原−PCNA)、血管新生、炎症、表皮細胞および創傷間隙でのリモデリングプロセスについて組織学的に分析した。
【0167】
表11に示したように、インスリン単独処置は、PBSコントロールと比較して、創傷領域内の異常な血管新生の発生率の実質的増加を誘発した(各々、60%および25%)。創傷治癒プロセスは急速に増殖する表皮細胞を包含するので、そのような増加した血管新生は正常顆粒組織の形成を遅延させることによる創閉鎖欠陥のリスクを増加させる可能性もある。他方、インスリンが配列番号6のPKCα阻害因子と結合された場合、処置された創傷領域内で異常な血管新生は観察されなかった。
【0168】
【表11】
【0169】
さらにインスリン単独処置は、増加した炎症、表皮細胞の過形成、表皮細胞の有棘層の遅延性分化および瘢痕形成の増加を生じさせた。インスリン単独処置の結果として生じた有害な副作用は、PKCα阻害因子がインスリンと組み合わされた場合、全く観察されなかった。
【実施例10】
【0170】
PKCα阻害因子は創傷炎症を減少させる。
【0171】
創傷における後期および重度の炎症反応は治癒プロセスを抑制する可能性があるため、そこでそのような炎症の発生の予防は創傷治癒プロセスを促進できる。そこで、PKCα阻害因子HO/02およびインスリンが創傷炎症に及す作用を下記の実験において試験した。
【0172】
創傷はC57BLマウスの背部上で切開によって作製し、7日間にわたり毎日、(i)PBS、コントロール、(ii)1μMの配列番号6のPKCα阻害因子、(iii)1μMのインスリン(Humulin、Eli Lilly社、米国)、または(iv)1μM PKCα阻害因子と1μMインスリンとの混合物を用いて処置した。創傷の7日後、全マウスを犠牲にし、処置した創傷を顕微鏡下で炎症について観察した。創傷領域で観察された、結果として生じた重度炎症の発生率は、表12に要約した。
【0173】
図12に示したように、創傷へのPKCα阻害因子の投与は、コントロールと比較して、重度創傷炎症発生率の実質的な(33.3%の)減少を引き起こした。インスリン単独は、実験条件下で抗炎症作用を有していなかった。
【0174】
【表12】
【0175】
これらの結果は、PKCα阻害因子を療法に使用すると、創傷の重度炎症を制御できることを示している。配列番号6のPKCα阻害因子が炎症を減少させる実証済みの能力は、表皮閉鎖、皮膚閉鎖および表皮細胞の空間分化を促進する能力と結合すると、創傷治癒のために潜在的に最も効果的な治療薬となる。
【実施例11】
【0176】
STZ−誘導性糖尿病マウスの創傷治癒におけるPKCa阻害因子HO/02と組み合わせたインスリンの有効性
全層皮膚切開(20mm)は、麻酔をかけて、ストレプトゾシン(STZ)注射(175mg/kg(体重))糖尿病性、クエン酸緩衝液緩衝液注射(6マウス/群)非糖尿病性、および未注射(6マウス/群)C57BL/6Jマウスの上背部上で実施した。定期的血糖モニタリングは、STZ注射後の尾静脈からの血糖値を測定することによって実施した。450mg/dL超の血糖レベルを示すマウスだけを試験に取り入れた。切開後、STZ誘導性糖尿病性創傷は、毎日PBS(7/6マウス/群)、インスリン(0.1単位/ml)(6マウス/群)、配列番号6のPKCa阻害因子(1μg/ml)(7/5マウス/群)またはインスリン+配列番号6のN−ミリストイル化PKCα阻害因子を含有する製剤(本明細書ではHO/03/03と命名した)(7/6マウス/群)の外科的包帯材への直接的適用によって処置した。生検標本は、創傷の9日後に採取した。創傷は、組織学および免疫組織化学検査によって創傷−治癒パラメータを評価するために安楽死させた動物から切除した。
【0177】
創傷は、ケラチン14染色によって表皮閉鎖について評価した。創傷は、完全表皮染色が創傷間隙を越えて観察された場合に閉鎖したと見なした。H&E染色を利用して固定視野×100の倍率で両方の皮膚の縁を視認できた場合に皮膚収縮と見なした。上皮分化は、ケラチン1染色によって評価した。全創傷間隙を越えて陽性染色を示した創傷は、分化している(K1陽性である)と見なした。
【0178】
表13に示したように、STZ誘導性糖尿病性動物は、創傷治癒欠陥であった。糖尿病性処置、未処置および非糖尿病性マウスにおける重要な創傷治癒パラメータの比較は、製剤HO/03/03処置群が相乗的治癒作用を示すことを解明した。相乗作用は、表皮閉鎖(71%対17%(糖尿病性コントロール、p<0.05)、表皮分化(28%対0%)および皮膚収縮(33%対0%)を包含する全ての臨床的治癒段階において明白であった。
【0179】
皮下組織の組織化を、両方の創縁部の皮下組織の存在(または非存在)によって評価した。顆粒組織形成は、創傷床における線維芽細胞およびコラーゲン線維の存在によって評価した。創傷は、顆粒組織の連続相が創傷間隙内に存在した場合に顆粒組織形成に対して陽性であると見なした。さらに、本発明者らは、糖尿病性創傷の重度炎症を特徴付ける3種の特異的組織学的パラメータを規定した。(i)創傷領域での膿瘍形成、(ii)過度の白血球増加症(固定視野内で>100細胞(×200))、および(iii)固定視野内で示された血管内での高い白血球(WBC)/赤血球(RBC)比(×200)。創傷間隙にこれらのパラメータ中少なくとも2つが存在する場合、創傷は重度に炎症していると見なされる。
【0180】
【表13】
【0181】
結果は、各群における創傷のパーセントとして提示した。
【0182】
【表14】
【0183】
結果は、各群における創傷のパーセントとして提示した。
【0184】
表14に示したように、糖尿病性動物は、他の創傷治癒パラメータにおける障害、例えば創縁部での皮下組織の組織化、炎症および顆粒組織形成を示した。糖尿病関連の治癒パラメータ障害は、創傷間隙縁での皮下組織の組織化(43%対25%)および顆粒組織形成(86%対42%)によって証明されるように、製剤HO/03/03を用いた処置によって補正された。HO/03/03を用いた処置は、創傷間隙における炎症反応(28%対67%)を減少させた。製剤単独(インスリンまたは配列番号6のペプチド)の治癒有効性は、部分的治癒作用しか示さなかった。
【0185】
上記に要約した結果は、製剤HO/03/03が多数の治癒パラメータにおける糖尿病関連治癒障害の克服に相乗作用を示すことを証明している。
【実施例12】
【0186】
ブタ皮膚モデルにおけるin vivoでの創傷治癒におけるPKCα阻害因子HO/02と組み合わせたインスリンの有効性
数件の創傷治癒試験は、創傷治癒プロセスならびに製剤HO/03/03の治癒作用についてさらに理解するためにブタモデル系で実施した。
【0187】
全層(full tickness)の35〜40mmの皮膚切開は、麻酔した雌性ブタ(5カ月齢、60〜70kg)の背部上で実施した。10カ所の対称的切開を背骨から等間隔で背部領域の両側で実施した(計20創傷)。創傷は毎日、1日2回、1mlのPBS(10例/群)またはインスリン0.1単位および配列番号6のN−ミリストイル化PKCα阻害因子1μg/ml(10例/群)を含有する製剤(本明細書ではHO/03/03と称した)の創傷領域への直接投与によって処置した。創傷は犠牲にした動物から創傷7および22日後に切除し、形態学的、組織学的および免疫組織化学的評価を実施した。
【0188】
表15に示したように、製剤HO/03/03を用いた処置は、治癒の早期に表皮の移動および顆粒組織の形成に影響を及ぼすことによって創傷治癒を促進する。さらに、これらの創傷は大きく、環境病原菌からの感染(動物は無菌状態には維持されない)に曝される可能性があるが、HO/03/03は創傷間隙での炎症反応の軽減を促進し、したがって、創傷治癒を促進する。
【0189】
【表15】
【0190】
【表16】
として提示した。
【0191】
進行した治癒段階を試験すると、HO/03/03処置創傷は、加速された治癒をさらに示す。表16に示したように、表皮閉鎖では差は認められなかったが、皮膚収縮および表皮分化は処置した創傷において有意に高かった。これらの創傷が同一動物上で実施され、このため処置が顕著な治癒作用に寄与したことを強調することは重要である。
【0192】
上記に要約した結果から、製剤HO/03/03が、創傷治癒段階の早期ならびに後期における治癒パラメータに影響を及ぼして、ブタ皮膚モデルにおける加速された治癒を促進することは容易に理解される。
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に疾患を治療する方法、より詳細には炎症性疾患および障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症の開始は炎症反応とともに始まり、好中球、顆粒球、単球、マクロファージ、ならびにその他の免疫調節細胞の活性化をもたらす。これは、炎症性サイトカインおよびメディエーター、例えばインターロイキン類、TNFα、およびプロスタグランジン類を包含する局所性または全身性炎症カスケードを生じさせる可能性がある。この複雑な炎症媒介性カスケードは、あらゆる種類の反応、例えば細胞走化性および内皮損傷を誘発し、先天性および適応免疫系からの追加の細胞の動員をもたらす。
【0003】
皮膚は、身体内部と環境との重要な境界として機能し、潜在的に有害な病原菌との接触を妨害する。抗原/病原菌が侵入した症例では、炎症反応が抗原を排除するために誘導されることが多い。この反応は、主としてT細胞、多核白血球、およびマクロファージからなる皮膚浸潤をもたらす。
【0004】
炎症反応は、必ずしも外部からの刺激と関連していない場合、または非有害性環境物質によって引き起こされる場合(アレルギーの場合)がある。どちらの場合も、前炎症性サイトカインの過剰発現は、適正に制御されないと、一般に局所性および全身性炎症の特徴である炎症、ならびに様々な炎症性疾患および障害を引き起こす。炎症には、様々な障害、例えば湿疹および皮膚炎が結び付いており、例えばアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、異汗性湿疹、貨幣状湿疹、うっ血性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、乾癬、掻痒症、多発性硬化症、皮膚炎症、瘢痕性類天疱瘡、強皮症、化膿性汗腺炎、中毒性表皮剥離症、座瘡、骨炎、移植片対宿主病(GvHD)、壊疽性膿皮症、およびベーチェット症候群(Behcet’s Syndrome)が包含される。
【0005】
当然のことながら、前炎症性サイトカインの過剰産生は、多数の炎症性および自己免疫疾患に関係すると見なされてきた。例えば、サイトカイン類、例えばTh17細胞の生存および増殖を刺激するTNFαおよびインターロイキン(IL)−23の分泌は乾癬と高度に関連しているが、一方、IL−6がその前炎症性サイトカインとしての一般的役割に加えてTh17発生のために必要とされる。IL−12およびIP−10のような他のサイトカイン類は開始因子であり、乾癬およびその他の自己免疫疾患に典型的であるTh1経路に関与している。好酸球の産生を増加させるサイトカインであるインターロイキン5(IL−5)は、喘息において過剰発現し、結果としてアレルギー性炎症の特徴である、喘息性気管支粘膜における好酸球の蓄積を生じさせる。インターロイキン4(IL−4)およびインターロイキン13(IL−13)は、炎症性腸疾患および喘息において見いだされる平滑筋の高収縮性の公知のメディエーターである。さらに、以下で詳細に考察するように、炎症性サイトカインは、例えば、乾癬、多発性硬化症、関節炎、虚血、敗血性ショック、および臓器移植拒否反応に関係することが証明されている。
【0006】
同様に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、顆粒球およびマクロファージ系統集団の成熟の制御因子であり、多数の炎症性および自己免疫疾患における重要な因子であると関係付けられてきた。例えば、GM−CSF分泌を阻害する抗体は、自己免疫疾患を改善することが証明されている。
【0007】
そこで、前炎症性サイトカインの分泌を減少させる、および/または免疫制御因子を調節する治療薬の開発は、一般に局所性および全身性炎症、ならびに本明細書で考察する炎症性および/または自己免疫疾患の宿主を改善することに有益となる。複数の一連の証拠は、PKCアイソフォームの修飾因子がこれらの結果を達成する際に有用であることを指摘している。
【0008】
数件のin vivo試験は、Tヘルパー(Th)17細胞の関与ならびに皮膚関連細胞、例えばケラチン生成細胞、樹状細胞およびTヘルパー細胞によるサイトカイン類、例えばインターロイキン類およびTNFαの分泌が乾癬および他の自己免疫炎症性疾患の病原に関与する炎症反応の発生における重要な要素であることを証明している。本明細書で使用するin vivo(「生体内」を意味するラテン語)は生きている生体全体を用いる実験であり、部分的もしくは死んでいる生体、またはin vitro(「ガラス内」、例えば、試験管もしくはペトリ皿内)制御環境とは対照的である。Th17細胞の生存および増殖を刺激するサイトカイン類、例えばTNFαおよびインターロイキン(IL)−23の分泌もまた、これらの疾患にとって重要な主要サイトカイン制御因子として役立つ(非特許文献1)。真皮内のTh17細胞は、順にIL−17AおよびIL−22の分泌を誘導する。IL−22は、特に、ケラチン生成細胞の過剰増殖を引き出し、乾癬における炎症反応を増強する(非特許文献1)。
【0009】
プロテインキナーゼC(PKC)ファミリーは、リン酸のATPからタンパク質のセリンおよびトレオニン残基への共有転移を触媒する1群のリン脂質依存性酵素を表している。このファミリーは、現在、カルシウムイオンおよびその他の因子によるそれらの活性化に基づいて3つの別個のカテゴリーに属する少なくとも12の個別アイソフォームから構成されると考えられている。PKCファミリーは、通常、従来型、新型および非典型PKCの3つのサブグループ(図1)に分けられる少なくとも10のメンバーからなる。特異的補因子要求、組織分布、および細胞区分化は、各アイソフォームに対する機能差および特異的シグナル伝達カスケードの調整を示唆している。そこで、特異的刺激は、それらの因子によって調節されるアイソフォーム特異的PKCシグナル伝達による特異的反応:例えば特定の生物学的状況における発現、局在化、および/またはリン酸化状態をもたらし得る。PKCアイソフォームは、様々な細胞外シグナルによって活性化され、そして順に、受容体、酵素、細胞骨格タンパク質、および転写因子を包含する細胞タンパク質の活性を修飾する。したがって、PKCファミリーは、細胞増殖、分化、生存および死の調節を包含する細胞シグナルプロセシングにおいて中心的役割を果たす。
【0010】
皮膚内で高度に豊富であるPKCαは、表皮内で主要な従来型のCa2+反応性PKCアイソフォームであり、それは、最初はin vitroおよびin vivoにおけるケラチン生成細胞中で検出された唯一のcPKCであった(非特許文献2、非特許文献3)。このため、PKCαは、Ca2+誘導性分化における重要な因子であると提案されていた(非特許文献4、非特許文献2)。表皮内に、および主として基底層直上に限定すると(非特許文献5)、PKCαは細胞周期離脱に関与しており、主としてケラチン細胞骨格および接着斑細胞−細胞接着と関連付けられている(非特許文献6、非特許文献7)。従来型PKC活性化因子であるTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)に曝露させると有棘マーカーが抑制されたので、PKCαは、TPA活性化の結果として有棘状から顆粒状分化への変化にとって大きな役割を果たすと考えられた(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。実際に、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるPKCα活性またはその合成のブロッキングは、顆粒マーカーを無効にし、K1およびK10のような有棘状マーカーを蘇生させると思われた。同様に、優性ネガティブPKCαの実施は、(後期)有棘状マーカーであるインボルクリンを再生すると思われた(非特許文献12)。したがって、皮膚癌における不完全な分化(非特許文献13、非特許文献14)は、in vitroの腫瘍細胞においても観察される上昇したPKCα活性と相関する(非特許文献2、非特許文献15)。しかし、正常ヒトケラチン生成細胞中のPKCαの過剰発現は、それらの分化パターンを変化させるとは思われなかった(非特許文献12)。遊走中のβ1−インテグリンの細胞内輸送および膜動員にPKCαが及ぼす影響(非特許文献16)は、創傷再上皮化および腫瘍細胞浸潤の両方を明確に促進することができる。
【0011】
トランスジェニックマウスにおけるPKCαの過剰発現は、著しい炎症反応、増加した表皮肥厚および好中球浸潤と相関する浮腫、多発性微小膿瘍、ならびに炎症性サイトカイン類およびケモカイン類、例えばTNFα、MIP−2、COX−2もしくはマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)の顕著な増加を誘導すると思われてきた。これらの結果は、表皮炎症反応にPKCαを関係付けている(非特許文献17)。TPA(PKCα活性因子)を用いた治療は、明らかに表皮過形成、表皮内炎症、および広範なアポトーシスを誘発した(非特許文献18、非特許文献6)。さらに、PKCアイソエンザイム選択的ノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスにおける近年のin vivo試験は、免疫系における個別PKCの際だった別個の機能を有すると思われる。これらの遺伝分析は、生化学的試験と一緒に、PKC調節シグナル伝達経路が免疫反応の多数の態様において重要な役割を果たすことを示すと思われる。例えば、PKCファミリーのメンバーは、T細胞シグナル伝達経路において極めて重要であると思われる。特に、PKCαのアイソタイプは、リンパ球特異的in vivoエフェクターの性質を決定すると思われる。PKCαは、さらにマクロファージ活性化に関与すると考察されており、明白に肥満細胞シグナル伝達に関与することが証明された(非特許文献19)。このため、PKCアイソタイプは、適応免疫において有効な薬物標的である。
【0012】
炎症性疾患の1つの例は、乾癬である。感染発生をもたらす基本病変に関する2つの主要な仮説が存在する。第1の仮説は、乾癬が主として皮膚細胞の過剰成長および再生の障害であると見なしている。第2の仮説は、乾癬を皮膚細胞の過剰再生が免疫系によって生成される因子に続発性である免疫媒介性障害であると見なしている。したがって、乾癬に対する大多数の薬物は、皮膚細胞の過剰増殖状態、または乾癬斑として存在する皮膚炎症反応のいずれかである疾患の1つの成分を標的としている。
【0013】
近年のデータは、どちらの経路も皮膚細胞と免疫学的環境(環境、周囲、位置および/または状況を網羅する)とのクロストークを通して疾患の病理学の基礎をなすという概念を支持している。従来型の全ゲノム連鎖解析は、乾癬感受性1〜9(PSORS1〜PSORS9)遺伝子座と命名された乾癬を発生する傾向と関連する様々な染色体上の9つの場所(遺伝子座)を同定した。これらの場所では、数個の遺伝子が特性付けられ、表皮細胞内で発現するタンパク質、例えば表皮の顆粒層および角化層内で発現し、乾癬においてはアップレギュレートされるコルネオデスモシンをコードすることが見いだされた。他方では、他の乾癬関連遺伝子は、インターロイキン−12Bを発現する染色体5q上で例えば1L−12Bのように特性付けられた免疫系の調節に関与するタンパク質をコードする(非特許文献20)。
【0014】
炎症性疾患のまた別の例は、多発性硬化症(MS)である。MSは、一般に青少年に影響を及ぼす脳および脊髄に影響を及ぼす可能性があるCNSの慢性的かつ予測不能な炎症性疾患である(非特許文献21)。MSは、現在は青少年の最も一般的な神経系疾患であると言われており、通常、20〜40歳で始まり、男性に比較して女性においてほぼ2倍の確率で発生する傾向がある。
【0015】
MSでは、神経細胞を取り囲んで保護する物質である髄鞘、および/またはその産生能力が損傷され、これは「脱髄」と呼ばれている。この損傷は、脳と身体との間のメッセージを緩徐化または遮断する作用を有し、MSとともに観察される症状をもたらす。脳および/または脊髄内に散在する領域内の脱髄および瘢痕もしくはその他の病変は、この疾患に特徴的であると考えられている(非特許文献22)。これらの病変は、神経伝導を変化させ、CNSにおける脱髄性プラークの場所に伴って変化する廃疾神経学的欠損を誘導すると思われる。(非特許文献24)。その臨床徴候および症状は様々で、それが影響するCNSの部分に依存し、運動、感覚、自律神経および認知障害が含まれる可能性がある。(非特許文献23)。
【0016】
MSの一部の一般的症状には以下が含まれる:1)極度の疲労の感覚、2)平衡歩行および協調運動障害、3)視覚的問題−複視および失明、4)手足における麻痺および刺痛、5)軽度および重度両方の疼痛、筋力低下、6)筋肉の硬直および痙攣、7)気分変動−抑うつおよび不安、8)記憶および集中力の欠如、会話障害(非特許文献24)。
【0017】
進行性身体障害は、特に25年間見通しが包含される場合、MSを有する大多数の患者の宿命である。MS患者の半数は、疾患発症の15年間以内には歩行に杖を必要とするようになる。MSは、若年および中年成人における神経性身体障害の主要原因であり、過去10年間までは、公知の有益な治療を有していなかった。MSは非特異的な臨床所見のために診断を下すのが困難であるが、このことがMRIスキャン、誘発電位、および脳脊髄液(CSF)試験からなる幾つかの技術的進歩を包含する高度に構造化された診断基準の開発をもたらした。診断基準は、一般には様々な時点に発生するが、他の病因、例えば感染、血管障害、または自己免疫障害によって説明されない中心体白質内の散在性病変の一般的原理に依存している。
【0018】
MSは、それによって未知の薬剤がT細胞媒介性炎症性発作を引き起こし、CNS(中枢神経系)組織の脱髄を誘発する自己免疫疾患であると広く考察されている(非特許文献25)。ミエリンを標的とする自己免疫反応についての証拠は強力であるが、決定的ではない。例えば、リンパ球またはミエリン食作用の非存在下では、早期多発性硬化症病変におけるマイクログリア細胞活性化による原発性オリゴデンドロサイトアポトーシスの開示がある(非特許文献26)。
【0019】
MSは、特徴的に4つの疾患パターン:再発寛解型MS(RRMS)、一次進行型MS(PPMS)、進行再発型MS(PRMS)、および二次進行型MS(SPMS)を有すると報告されている。RRMSを備える患者の推定50%は10年以内にSPMSを発生し、RRMSの90%までは最後にはSPMSを発生することになる。疾患の各パターンは、軽度、中等度または重度として現れることがある。RRMSを患うヒトは、悪化する神経機能の明確な発作を提示する。これらの発作には、その間疾患進行が発生しない部分または完全回復期(緩解期)が続く(約85%の人々は、最初はRRMSであると診断される)。PPMSは、最初から緩徐に悪化する神経機能を特徴とし、顕著な再発または緩解を伴わない(約10%のヒトはPPMSと診断される)。SPMSでは、RRMSの原初期に続いて、多くの人はこの疾患がより確実に悪化する二次進行型疾患経過をたどる(RRMSを備えるヒトの約50%が10年間以内にこの疾患のこの形態を発生する)。PRMSでは、ヒトは最初から確実に、しかし途中で悪化する神経機能の明白な発作を伴って悪化する疾患症状を経験し、他方ではこの疾患は緩解を伴わずに進行すると思われる(5%)(非特許文献26)。
【0020】
現時点ではMSに対する治療薬はないが、疾患活性および疾患進行の低下を試みる幾つかの治療薬を利用できる。合衆国では、4つのクラスの6種の薬物がMSの治療のために承認されている。FDA承認の疾患治療薬には、以下のインターフェロンクラス、IFN−β−1a(REBIF(登録商標)およびAVONEX(登録商標))およびIFN−β−1b(BETASERON(登録商標))、酢酸グラチラマー(COPAXONE(登録商標))、ポリペプチド、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))、ミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標))、細胞毒性薬、が包含される。コルチコステロイド剤、メソトレキセート、シクロホスファミド、アザチオプリン、および静脈内(IV)イムノグロブリンを包含する様々な成功度を示す他の薬物が使用されてきた。現在承認されている治療薬の利点は、MSにおける、相当小さな再発率、そして身体障害の予防である。
【0021】
REBIF(登録商標)(インターフェロンβ1a)は、ヒトの身体において見いだされるものと同一のインターフェロンβを産生するバイオ技術プロセスによって製造された医薬品である。REBIF(登録商標)は、週3回皮下投与すると報告されている(REBIF(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0022】
AVONEX(登録商標)(インターフェロンβ1a)は、ヒトの身体において見いだされるものと同一のインターフェロンβを産生するバイオ技術プロセスによって製造された医薬品である。AVONEX(登録商標)は、週1回筋肉内注射として投与すると報告されている(AVONEX(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0023】
BETASERON(登録商標)(インターフェロンβ1b)は、ヒトの身体において見いだされるものと同一のインターフェロンβを産生するバイオ技術プロセスによって製造された医薬品である。BETASERON(登録商標)は、1日おきに皮下注射すると報告されている(BETASERON(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0024】
COPAXONE(登録商標)(酢酸グラチラマー)は、ミエリン塩基性タンパク質を刺激する合成タンパク質である。完全には理解されていない機序を通して、この薬物はミエリンデコイとして作用することによりミエリン損傷性T細胞をブロックすると思われる。COPAXONE(登録商標)は、1日1回皮下注射すると報告されている(COPAXONE(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0025】
TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)は、実験室で生成されたモノクローナル抗体である。TYSABRI(登録商標)は、潜在的損傷免疫細胞が血流から「血液脳関門」を越えて脳および脊髄内に移動するのを阻止するように設計されている。TYSABRI(登録商標)は、4週に1回、点滴静脈によって投与すると報告されている(TYSABRI(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【0026】
NOVANTRONE(登録商標)(ミトキサントロン)は、抗悪性腫瘍薬と呼ばれる医薬品の一般群に属する。NOVANTRONE(登録商標)は、所定の形態の癌を治療するために使用されてきた。NOVANTRONE(登録商標)は、MS治療において、ミエリン鞘上での発作をもたらすと推定されているT細胞、B細胞およびマクロファージの活性を抑制することによって作用すると報告されている(NOVANTRONE(登録商標)についてのFDA承認医療用医薬品情報から)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Fitch et al.(2007)Curr Rheumatol Rep. 9:461−7
【非特許文献2】Dlugosz et al.(1992)Biomed Pharmacother 46:304
【非特許文献3】Wang et al.(1993)J Cancer Res Clin Oncol 119:279−287
【非特許文献4】Denning et al.(1995)Cell Growth Differ 6:149−157
【非特許文献5】Denning et al.(2004)Int J Biochem Cell Biol 36:1141−1146
【非特許文献6】Jansen et al.(2001)Int J Cancer 93:635−643
【非特許文献7】Tibudan et al.(2002)J Invest Dermatol. 119:1282−1289
【非特許文献8】Dlugosz and Yuspa(1993)J Cell Biol 120:217−225
【非特許文献9】Lee et al.(1998)J Invest Dermatol 111:762−766
【非特許文献10】Matsui et al.(1992)J Invest Dermatol 99:565−571
【非特許文献11】Punnonen et al.(1993)J Invest Dermatol 101:719−726
【非特許文献12】Deucher et al.(2002)J Biol Chem 277:17032−17040
【非特許文献13】Tennenbaum et al.(1993)Cancer Res 3:4803−4810
【非特許文献14】Tomakidi et al.(2003)J Pathol 200:298−307
【非特許文献15】Yang et al.(2003)J Cell Physiol. 195:249−259
【非特許文献16】Ng et al.(1999)EMBO J 18:3909−3923
【非特許文献17】Wang and Smart(1999)J Cell Sci 112:3497−3506
【非特許文献18】Cataisson et al.(2003)J Immunol 171:2703−2713
【非特許文献19】Cataisson et al.(2005)J Immunol 174:1686−1692
【非特許文献20】Frank et al.(2009)N Engl J Med 361:496−509
【非特許文献21】Hafler et al.(2005)Immunol Rev 204:208−31
【非特許文献22】Beeton et al.(2007)Journal of Visualized Experiments 594−604
【非特許文献23】Noseworthy et al.(2000)N Engl J Med 343:938−52
【非特許文献24】The National MS Society(全国多発性硬化症協会)ウェブサイト
【非特許文献25】Weiner et al.(2004)Arch Neurol 61:1613−1615
【非特許文献26】Manuel et al.(2006)Brain
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
炎症性疾患と闘うための既存の治療法は、概して病因の複数の成分を標的とする多成分アプローチを提供することはできていない。例えば、自己免疫疾患のための多数の治療法は、炎症を阻止するために、細胞増殖を阻止すること、または免疫反応を抑制することのいずれかによる疾患の単一成分を標的とする工程を包含する。結果として、PCKアイソフォーム活性を標的として調節することによる、炎症性疾患の病因の複数の成分を標的とする効果的治療薬を提供するという強い必要性が存在する。特異的PKCアイソフォームを選択的に阻害または活性化することのできる特異的に標的化された治療薬が不可欠であり、そのような治療薬は、例えば局所投与された場合、副作用を低レベルに維持しながら、炎症性疾患の病因の複数の成分を標的とする治療アプローチを提供することになる。そこで、前炎症性サイトカインの分泌を減少させる、および/またはPKCアイソフォームの調節によって免疫制御因子を調節する治療薬の開発は、局所性および全身性炎症、ならびに本明細書で考察する炎症性および/または自己免疫疾患の宿主の改善に有益となる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、炎症性疾患および障害の治療であって、被験体にPKCの制御因子、例えばPKCεもしくはPKCηの阻害因子またはPKCδの活性化剤を投与する工程による治療に関する。
【0030】
したがって1つの態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における炎症性疾患または障害を治療する。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜29のポリペプチドである。
【0031】
また別の態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCδの活性化因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における炎症性疾患または障害を治療する。様々な実施形態では、活性化因子は、PKCδを選択的に活性化するポリペプチド、例えば配列番号30〜37のポリペプチドである。
【0032】
また別の態様では、本開示は、被験体において掻痒症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における掻痒症を治療する。様々な実施形態において、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηの阻害因子である。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜29のポリペプチドである。
【0033】
また別の態様では、本開示は、被験体において掻痒症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCδの活性化因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における掻痒症を治療する。様々な実施形態では、活性化因子は、PKCδを選択的に活性化するポリペプチド、例えば配列番号30〜37のポリペプチドである。
【0034】
また別の態様では、本開示は、被験体において多発性硬化症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCα、PKCη、PKCε、またはPKCεの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における多発性硬化症を治療する。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCαまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜13および26〜29のポリペプチドである。
【0035】
様々な態様において、本開示は、本開示の方法を実施するためのキットを提供する。一実施形態では、本キットは、PKCの阻害因子、例えばPKCα、PKCεもしくはPKCηの阻害因子、またはPKCδの活性化因子、ならびに該阻害因子または活性化因子を投与するための取扱説明書を包含する。
【0036】
また別の態様では、本開示は、配列番号3の単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供し、ここで該ポリペプチドは、N−ミリストイル化されている。典型的な実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号12である。
【0037】
本開示は、配列番号3のポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供し、ここで該ポリペプチドは、N−ミリストイル化され、そして薬学的に許容される溶媒(vehicle)を包含する医薬組成物をさらに提供する。
【0038】
また別の態様では、本開示は、配列番号4のアミノ酸配列を包含する単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を提供する。典型的な実施形態では、該単離ポリペプチドは、配列番号10または配列番号13のポリペプチドである。
【0039】
本開示は、配列番号4のアミノ酸配列を包含する単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を包含する医薬組成物をさらに提供する。
【0040】
また別の態様では、本開示は、配列番号30〜33から選択される単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を提供する。典型的な実施形態では、該単離ポリペプチドは、配列番号34〜37のポリペプチドである。
【0041】
本開示は、配列番号30〜33のアミノ酸配列を包含する単離ポリペプチド、または、その生理学的に許容される塩を包含する医薬組成物をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、PKCファミリーのアイソフォームの様々なメンバーを描出している図的表示である。
【図2】図2は、乾癬に特徴的なケラチン生成細胞構造統合性を調節するPKCαの阻害を描出している一連の図的表示である。皮膚組織は、パラフィン包埋して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)一般組織学的染色、または基底層に対するケラチン14(K14)、有棘層に対するケラチン1(K1)、ケラチン生成細胞遊走に対するケラチン6(K6)およびケラチン生成細胞増殖に対するPCNAを包含する様々な皮膚層に対する別個のマーカーについて染色した。結果は、PKCα阻害後の皮膚特性の正常化を証明している(左欄はWT、右欄はPKCαノックアウトである)。
【図3】図3は、IMQを用いた処置後のコントロールに比較した、様々なノックアウトマウスにおける落屑の重症度を比較しているヒストグラムである。
【図4】図4は、IMQを用いた処置後のコントロールに比較した、様々なノックアウトマウスにおける落屑を示している一連の図的表示である。
【図5】図5は、フィラグリン(Fil)、ロリクリン(Lor)およびケラチン1(K1)の発現を示す一連の図的表示である。
【図6】図6は、in vitroおよびin vivoでのケラチン生成細胞増殖を評価している一連の図的およびグラフ表示である。上方は、PCNAの発現を示す図的表示である。下方は、HO/02/10を用いて処置されたPCNA陽性細胞およびコントロールのパーセンテージを比較しているヒストグラムである。
【図7】図7は、フィラグリン(Fil)、ロリクリン(Lor)、ケラチン1(K1)、PCNAおよびケラチン14(K14)の発現を示す一連の図的表示である。
【図8】図8は、様々なペプチドPKCα阻害因子に対するケラチン生成細胞内でのタンパク質発現データの概要を示しているグラフ表示である。
【図9】図9は、HO/02/10を用いて処置された皮膚サンプルおよびコントロールの破裂圧を比較しているヒストグラムである。
【図10】図10は、創傷の4および9日後にB57BL/6Jマウスにおける皮膚創傷にHO/02/10が及ぼす抗炎症作用を比較しているヒストグラムである。
【図11】HO/02/10を用いて処置された脾細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図12】図12は、皮膚の血管内の基底ケラチン生成細胞および内皮細胞内でのICAM発現を示している一連の図的表示である。
【図13】図13は、皮膚の血管内の基底ケラチン生成細胞および内皮細胞内でのICAM発現を示している一連の図的表示である。
【図14】図14は、創縁部での陽性ICAM−1染色を示すマウスのパーセントを比較しているヒストグラムである。
【図15】図15は、Iba−1陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図16A】図16Aは、ケラチン生成細胞内でのMAC−2発現を示している一連の図的表示であり、MAC−2発現を示している一連の染色を示す。
【図16B】図16Bは、ケラチン生成細胞内でのMAC−2発現を示している一連のグラフ表示であり、左から、コントロール、1、10および100μg(マイクログラム)/mlのPKCα阻害因子を用いてMAC−2陽性染色された細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図17A】図17Aは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、IL−6、IL−1α、およびGM−CSFの分泌を比較している。
【図17B】図17Bは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、G−CSFの分泌を比較している。
【図17C】図17Cは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、MIP−2の分泌を比較している。
【図17D】図17Dは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、KCの分泌を比較している。
【図18A】図18Aは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化マクロファージにおけるサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、G−CSF、KC、およびMIP−2の分泌を比較している。
【図18B】図18Bは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化マクロファージにおけるサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、IL−1α(ヒストグラム対の左のバー)およびTNFα(ヒストグラム対の右のバー)の分泌を比較している。
【図18C】図18Cは、HO/02/10を用いて処置されたLPS活性化マクロファージにおけるサイトカイン分泌を比較している一連のヒストグラムであり、IL1β(ヒストグラム対の左のバー)およびIL12(ヒストグラム対の右のバー)の分泌を比較している。
【図19】図19は、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図20】図20は、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図21A】図21Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−1αの分泌を比較している。
【図21B】図21Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−6の分泌を比較している。
【図22A】図22Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、G−CSFの分泌を比較している。
【図22B】図22Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、GM−CSFの分泌を比較している。
【図23A】図23Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、MIP−2の分泌を比較している。
【図23B】図23Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IP−10の分泌を比較している。
【図24A】図24Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−1αの分泌を比較している。
【図24B】図24Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IL−6の分泌を比較している。
【図25A】図25Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、TNFαの分泌を比較している。
【図25B】図25Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、IP−10の分泌を比較している。
【図26A】図26Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、G−CSFの分泌を比較している。
【図26B】図26Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、GM−CSFの分泌を比較している。
【図27A】図27Aは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、KCの分泌を比較している。
【図27B】図27Bは、ペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムであり、MIP−2の分泌を比較している。
【図28A】図28Aは、HO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮へのT細胞浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、抗CD3抗体を使用した一連の染色を示している図である。
【図28B】図28BHO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮へのT細胞浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、CD3陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図29】図29は、様々な細胞タイプにおいてペプチドPKCα阻害因子MPDY−1を使用した処置が及ぼす作用の概要を提示しているグラフ表示である。
【図30】図30は、乾癬関連経路においてHO/02/10が及ぼす全体的作用のスキーマを示しているグラフ表示である。
【図31A】図31Aは、HO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮への好中球浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、好中球特異的抗体を使用した染色である。
【図31B】図31Bは、HO/02/10を用いた処置後の炎症段階中の真皮および表皮への好中球浸潤のダウンレギュレーションを示している一連の表示であり、好中球特異的陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。
【図32】図32は、Ser176/180抗体を用いて染色されたSDS PAGEの図的表示である。
【図33】図33は、治療の時間経過にわたるEAE(実験的アレルギー性脳脊髄炎)スコアを示しているグラフ表示である。
【図34】図34は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図35】図35は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図36】図36は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図37】図37は、治療の時間経過にわたるEAEスコアを示しているグラフ表示である。
【図38】図38は、掻痒症へMPDY−1が及ぼす作用を評価するために皮刺試験(プリックテスト)モデルで使用されるヒスタミンの作用機序の図的表示である。
【図39】図39は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図40】図40は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図41】図41は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図42】図42は、ヒスタミンが注射され、MPDY−1を用いて、または用いずに処置された被験体の前腕を示している図的表示である。
【図43】図43は、PKCα阻害因子MPDY−1およびPKCδ活性化因子DAP−1(配列番号34)についてのin vitro免疫学的試験で収集されたデータの表である(全データは表示されていない)。
【図44】図44は、TNFαおよび阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌のPKCδ活性化因子DAP−1(配列番号34)についての結果を表にまとめた概要である。
【図45】図45は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図46】図46は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図47】図47は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図48】図48は、LPSまたはTNFαおよび様々なPKCε阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌の比較を示しているヒストグラムである。
【図49】図49は、LPSまたはTNFαおよび阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌の様々なPKCε阻害因子についての結果を表にまとめた概要である。
【図50】図50は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図51】図51は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図52】図52は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図53】図53は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図54】図54は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図55】図55は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図56】図56は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図57】図57は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図58】図58は、MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、およびPPDY(配列番号10)を包含するペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図59】図59は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図60】図60は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図61】図61は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図62】図62は、ペプチドPKCα阻害因子AWOT−1(配列番号7)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図63】図63は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図64】図64は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図65】図65は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図66】図66は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図67】図67は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図68】図68は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図69】図69は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図70】図70は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたTNFα活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図71】図71は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図72】図72は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図73】図73は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図74】図74は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図75】図75は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図76】図76は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図77】図77は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図78】図78は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AWOT−1(配列番号7)、およびAIP−2(配列番号8)を用いて処置されたIL−17A活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図79】図79は、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)およびPDY−1(配列番号13)を用いて処置されたLPS活性化ケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を比較しているヒストグラムである。
【図80】図80は、LPS、TNFαまたはIL−17Aおよび阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌の様々なPKCα阻害因子についての結果を表にまとめた概要である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、PKCアイソフォームの修飾因子を炎症性疾患および障害のための効果的治療薬として投与できるという独創性に富む発見に基づいている。皮膚細胞の主要細胞プロセス、ならびに免疫系の多数の成分におけるPKCアイソフォームの関与は、PKCアイソフォームが炎症性病理状態を治療するための潜在的標的であることを特徴付けている。本明細書に提示したデータは、PKCファミリーのアイソフォームが炎症および炎症性疾患と関連する皮膚細胞および免疫細胞内での活性化プロセスを調節することを証明している。
【0044】
本開示は、本明細書に記載した特定の組成物、方法、および実験条件には限定されず、そのような方法および条件は変動する可能性があることを理解すべきである。さらにまた、本明細書で使用する専門用語は特定の実施形態を説明することだけを目的としており、限定することは意図しておらず、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲の記載においてのみ限定されることもまた理解すべきである。
【0045】
本開示による方法の原理および操作は、図面および添付の説明を参照することでより明確に理解することができる。
【0046】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する単数形「1つの」および「その」は、状況が明白に他のことを指示しない限り、複数の言及を包含する。そこで、例えば、「該方法」との言及は、本開示を読むなどすると当業者には明白になる、1つ以上の方法および/または本明細書に記載したタイプの工程を包含する。
【0047】
他に規定されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載した方法と類似する、または同等の任意の方法および材料は本開示の実践または試験において使用できるが、以下では一部の好ましい方法および材料を記載する。
【0048】
本明細書で使用する用語「被験体」は、哺乳動物被験体を意味する。そこで、他の哺乳動物における任意の動物の治療が想定されている。そのような動物には、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ヤギ、ヒツジ、非ヒト霊長類およびヒトが包含されるがそれらに限定されない。そこで、本開示の方法は、獣医学的用途における使用ならびにヒト使用のために企図されている。
【0049】
本明細書の被験体の「処置」は、治療的処置および予防的もしくは防止的手段を意味する。処置を必要とする被験体には、すでに炎症性疾患または障害を備える被験体ならびにそれが防止されなければならない被験体が包含される。そこで、該被験体は、炎症性疾患または障害を有すると診断されている、または炎症性疾患もしくは障害に罹りやすい、または感受性である可能性がある。
【0050】
本明細書で使用する「炎症性疾患または障害」は、PKCファミリーのアイソフォーム調節と関連する病因を有する任意の疾患および障害を包含することが意図されている。そのような疾患には、掻痒症、皮膚炎症、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型もしくはII型糖尿病、喘息、炎症性肺障害、炎症性肝障害、炎症性糸球体障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、シェーグレン(Sjoegren)症候群、角結膜炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン(Crohn)病、潰瘍性大腸炎、関節、皮膚、もしくは筋肉の炎症性疾患、急性もしくは慢性特発性炎症性関節炎、筋炎、脱髄疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、間質性腎炎および慢性活動性肝炎が包含されるがそれらに限定されない。
【0051】
炎症性疾患または障害の「症状」は、該被験体が経験した、または炎症性疾患もしくは障害の指標となる任意の病的徴候または構造、機能、もしくは感覚における正常からの逸脱である。
【0052】
文言「有効量」は、PKCアイソフォームの阻害因子もしくは活性化因子、例えば配列番号1〜37のポリペプチドの炎症性疾患または障害を予防する、緩和する、または治療するために有効である量を意味する。そのような有効量は、一般には炎症性疾患または障害の徴候、症状および/またはその他の指標における改善を生じさせる。例えば、皮膚炎症では、有効量は腫脹および/または炎症の減少および/または発赤の除去を生じさせる。掻痒症に対しては、有効量は発赤および/または掻痒の除去を生じさせることができる。MSに対しては、有効量は、再発率の低下、身体障害の防止、脳MRI病変の数および/または容積の減少、25フィート歩行時間の改善、無進行期間の延長などを生じさせることができる。
【0053】
本明細書で使用する用語「PKCアイソフォーム」は、全てのPKCアイソフォームを含み、PKCα、PKCβ、PKCδ、PKCε、PKCη、PKCζ、PKCγ、PKCθ、およびPKCλを包含する。
【0054】
文言「PKCアイソフォームの発現および/または活性を調節する」は、PKCアイソフォームの増加または減少した発現および/または活性に関する。発現の増加は、PKCアイソフォームの産生増加をもたらす。
【0055】
用語「活性化因子」は、本明細書ではPKCアイソフォームの発現および/または活性を増強する分子を記載するために使用される。用語「阻害因子」は、本明細書ではPKCアイソフォームの発現および/または活性を阻害する分子を記載するために使用される。特に、リン酸基転移領域、偽基質ドメイン、ホルボールエステル結合配列、およびリン酸化部位は、アイソエンザイム特異的PKC活性の調節のための標的となることがある。
【0056】
PKCアイソフォームの「偽基質領域」もしくは自己阻害ドメインは、本明細書では、本質的にリン酸化可能な残基を備えていないキナーゼのための基質のコンセンサス配列であると規定されている。偽基質ドメインは調節領域に基づいており、認識部位を阻害してリン酸化を防止する基質認識モチーフに酷似している。そこで、PKCアイソフォームの阻害性ペプチド、例えば本開示のポリペプチドは、セリン(S)またはチロシン(T)のリン酸化可能な残基をアラニン(A)で置換することによって得られる。PKCδは、PKCδの保存ドメイン2であるC2ドメイン上でのこのアイソフォームの活性化を可能にする追加の結合部位を有することが公知である唯一のPKCアイソフォームである。
【0057】
PKCは、ケラチン生成細胞の増殖、遊走および分化を媒介する主要シグナル伝達経路である。多数のPKCアイソフォームは、皮膚組織中で発現することが公知であり、それらの発現/活性は、細胞増殖および/または細胞遊走および/または細胞分化において役割を果たすと思われる。しかし、炎症性疾患の治療を達成するためのそれらの発現および活性の特異的調節は以前は未知であったが、本開示において証明されている。
【0058】
総体的に、本明細書に提示した結果は、様々なPKCアイソフォームの発現および/または活性を調節することが炎症および炎症性疾患の治療において効果的であることを実証している。
【0059】
そこで、1つの態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における炎症性疾患または障害を治療する。典型的な実施形態では、阻害因子は、PKCα、PKCεまたはPKCηを選択的に阻害するポリペプチド、例えば配列番号1〜29のポリペプチドである。
【0060】
実施例において開示するように、PKCアイソフォーム阻害因子の投与は、多種多様性のある皮膚細胞タイプ(皮膚細胞だけではない。つまり、マクロファージは、他の組織において見いだされ、活性である)における前炎症性サイトカイン、ケモカインおよびTh1サイトカインの分泌を減少させることが証明されている。さらに、PKCアイソフォームの投与は、活性化因子、例えばケラチン生成細胞および内皮細胞上のICAM−1およびマクロファージ上のmac−2の発現を減少させる。さらに、PKCα阻害因子は、皮膚炎症の治療において、および乾癬の炎症性皮膚モデルにおける炎症症状を軽減するために有効であることが見いだされている。実施例でさらに考察するように、PCKアイソフォームの阻害因子の作用機序は、炎症性疾患または障害のための効果的療法としてのそれらの使用に関係することが解明されてきた。例えば、PCKアイソフォームのペプチド阻害因子は、例えば、図30に要約したように、炎症性プロセスの様々な工程において様々な細胞タイプの動員および活性化へ特異的に影響を及ぼすことによって:1)最終分化を減少させることにより表皮分化マーカーの発現を正常化する、2)異常過剰増殖を軽減する、3)皮膚構造を調節し、皮膚強度を増強する、および/または4)炎症をダウンレギュレートすることが証明されてきた。
【0061】
さらに実施例において開示するように、PKCδの活性化因子は、多種多様性のある皮膚細胞タイプにおいて前炎症性サイトカインの分泌を減少させることもまた証明されている。そこで、また別の態様では、本開示は、被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、該被験体にPKCδの活性化因子を投与し、それにより該被験体において該炎症性疾患または障害を治療する方法を提供する。様々な実施形態では、活性化因子は、PKCδを選択的に活性化するポリペプチド、例えば配列番号30〜37のポリペプチドである。
【0062】
さらに、実施例において開示するように、PKCα阻害因子およびPKCη阻害因子の投与は、MSの症状を軽減することが見いだされてきた。したがって、また別の態様では、本開示は、被験体において多発性硬化症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCαまたはPKCηの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における多発性硬化症を治療する。
【0063】
さらに、PKCアイソフォーム阻害因子の投与は、掻痒症の治療において有効であることが見いだされている。したがって、また別の態様では、本開示は、被験体において掻痒症を治療する方法を提供する。本方法は、被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を包含し、それにより該被験体における掻痒症を治療する。
【0064】
実施例および図面は、PKCδの活性化因子が、主要な前炎症性サイトカイン、例えばIL−1、IL−6およびTNFαの分泌を阻害する能力を示すデータを提示している。類似のデータは、PKCα、PKCεおよびPKCηを包含する様々なPKCアイソフォーム阻害因子について示されている。実施例において示したように、本開示のPKC阻害因子および活性化因子を包含する製剤は、主要前炎症性サイトカインの分泌を阻害することが証明されてきた。乾癬に関しては、特定の理論に連関しなくても、前炎症性物質のレベルを減少させると、隣接血管内の内皮細胞の活性化、したがって好中球、マクロファージおよびT細胞の乾癬斑への動員を防止すると考えられている。さらに、TH1およびTH17細胞は、炎症を強化する、またはケラチン生成細胞過剰増殖を各々駆動すると思われる特異的サイトカインの分泌によって、乾癬の病因に関与することが証明された。上述した前炎症性サイトカインは、これらのTH17細胞の発生(Mangan et al.(2006)Nature 441:231−234;Bettelli et al.(2006)Nature 441:235−238)およびTH1細胞活性に不可欠であると思われる。PKC阻害因子および活性化因子によるそれらの分泌の減少は、炎症性障害および掻痒症の効果的治療におけるそれらの使用を関係付けている。
【0065】
様々な実施形態では、PKCアイソフォームの阻害因子は、PKCの偽基質領域の阻害因子であり、ポリペプチドであるが、PKCアイソフォームの活性化因子もまたポリペプチドである。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、本明細書では、隣接残基のαアミノ基とカルボキシ基とのペプチド結合によって1つを他の残基に結合させた直鎖系列のアミノ酸残基を指定するために互換的に使用される。
【0066】
様々な実施形態では、使用可能なペプチドPKC活性化因子および阻害因子の例には、制限なく、表1に記載の配列番号1〜5、14〜19、26、27および30〜33のペプチドまたはそれらの生理学的に許容される塩、ならびに特定の修飾もしくは末端保護基を有すると示されている表1の配列番号6〜13、20〜25、28、29、34〜37のペプチドが包含される。
【0067】
【表1−1】
【表1−2】
【0068】
様々な実施形態では、ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は、典型的には6〜12アミノ酸を含有するが、長さがもっと長くても短くてもよい。様々な実施形態では、ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は長さが6〜45、6〜40、6〜35、6〜30、6〜25、6〜20、6〜15、または6〜10個のアミノ酸の範囲に及んでよい。一実施形態では、該ペプチドは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸を包含する。
【0069】
様々な実施形態では、ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は、好ましくはC12−C20脂肪酸、例えばC14アシル(ミリストイル)またはC16アシル(パルミトイル)に由来するアシル基によってN−アセチル化されてよい。
【0070】
一般に、ペプチドPKCα阻害因子には、共通モチーフ配列Phe−Ala−Arg−Lys−Gly−Ala(配列番号1)が包含される。または、また別の実施形態では、PKCα阻害因子には、共通モチーフ配列Thr−Leu−Asn−Pro−Gln−Trp−Glu−Ser(配列番号5)が包含される。
【0071】
ペプチドPKC阻害因子および活性化因子は正確な配列またはモチーフ配列によって規定できるが、当業者であれば、類似の配列を有するペプチドは類似機能を有する可能性があることを理解できる。このため、実質的に同一の配列を有する、または実質的に表1に記載のPKC阻害因子または活性化因子と全く同一もしくは類似する配列を有するペプチドは、含まれることが意図されている。本明細書で使用する用語「実質的に同一の配列」には、配列番号1〜37によって規定された配列と少なくとも60+%(60%以上を意味する)、好ましくは70+%、より好ましくは80+%、および最も好ましくは90+%、95+%、または98+%配列同一性を有する配列を包含する、およびPKCアイソフォーム活性を阻害または活性化するペプチドが包含される。
【0072】
2つのポリペプチドが実質的に同一であるというまた別の指摘は、1つのポリペプチドが第2のポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。そこで、ポリペプチドは、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ相違する場合、典型的には第2ポリペプチドと実質的に同一である。
【0073】
用語「保存的置換」は、タンパク質またはペプチドに関連して分子の活性(例えば、抗菌活性)を実質的には変化させないアミノ酸置換を示すために使用される。典型的な保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸と類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を備える別のアミノ酸との置換を包含する。以下の6つの群は、各々相互に対して典型的な保存的置換であるアミノ酸を含有する、1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リシン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、ならびに6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)。
【0074】
用語「アミノ酸」は、極めて広い意味では、天然型アミノ酸ならびにアミノ酸アナログを包含する非天然型アミノ酸を包含するために使用される。この広い定義を考慮すると、当業者であれば、本明細書でのアミノ酸に関する言及には、例えば、天然型のタンパク生成(L)−アミノ酸、(D)−アミノ酸、化学修飾アミノ酸、例えばアミノ酸アナログ、天然型の非タンパク生成アミノ酸、例えばノルロイシン、および当分野においてアミノ酸に特徴的である公知の特性を有する化学合成化合物が包含されることが公知である。本明細書で使用する用語「タンパク生成(proteogenic)」は、アミノ酸を代謝経路を通して細胞内のタンパク質内に組み込めることを示している。
【0075】
2つのポリペプチド配列の状況における用語「同一」または「同一性率」(%)は、配列比較アルゴリズムを使用して、もしくは視覚的検定によって測定した場合、比較して最大対応についてアラインメントされると同一である、または規定パーセンテージの同一であるアミノ酸残基を有する2つ以上の配列または部分配列に関する。
【0076】
2つのポリペプチド配列の状況における文言「実質的に同一」は、配列比較アルゴリズムを使用して、もしくは視覚的検査によって測定した場合、最大一致で、比較及びアラインメントされると、少なくとも60+%、好ましくは80+%、最も好ましくは90〜95+%のアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列または部分配列に関する。
【0077】
当分野において一般に公知であるように、比較のための最適な配列アラインメントは、例えばSmith & Waterman((1981)Adv Appl Math 2:482)の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch((1970)J Mol Biol 48:443)のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman((1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:2444)の類似性検索方法によって、視覚的検定によるこれらのアルゴリズムのコンピュータ化実行、またはその他の効果的方法によって実施することができる。
【0078】
ペプチドPKC阻害因子または活性化因子は、修飾アミノ酸配列または非天然型末端修飾を有する可能性がある。ペプチド配列への修飾には、例えば、そのような修飾によって生成されたペプチドがPKCα阻害因子活性を保持することを前提に、アミノ酸の付加、欠失または置換を包含することができる。さらに、ペプチドは、遊離末端もしくはアミノ保護(例えば、N−保護)および/またはカルボキシ保護(例えば、C−保護)末端を備える形態で存在してよい。保護基には、(a)ベンジルオキシカルボニル、2−クロロベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、イソニコチニルオキシカルボニルおよび4−メトキシベンジルオキシカルボニルを包含する芳香族ウレタン型保護基、(b)t−ブトキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニルおよびメチルスルホニルエトキシカルボニルを包含する脂肪族ウレタン型保護基、(c)アダマンチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニルおよびイソボルニルオキシカルボニルを包含するシクロアルキルウレタン型保護基、(d)アシル保護基またはスルホニル保護基が包含される。追加の保護基には、ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、アセチル、2−プロピルペンタノイル、4−メチルペンタノイル、t−ブチルアセチル、3−シクロヘキシルプロピオニル、n−ブタンスルホニル、ベンジルスルホニル、4−メチルベンゼンスルホニル、2−ナフタレンスルホニル、3−ナフタレンスルホニルおよび1−カンファースルホニルが包含される。
【0079】
様々な実施形態では、ペプチドPKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子は、被験体を治療するために局所、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、静脈内、および/または病巣内投与を包含する任意の適切な手段によって投与することができる。しかし、典型的な実施形態では、ペプチドは局所投与のため、例えば液剤、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、泡スプレーなどの形態で調製される。
【0080】
本開示によって使用されるPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子の治療用製剤は、例えば、所望の純度を有するPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子を任意の薬学的に許容される担体、賦形剤および/または安定剤とともに混合する工程によって調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)を参照されたい)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量および濃度で受容者に非毒性であり、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸類、アスコルビン酸およびメチオニンを包含する抗酸化物質、保存料(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン類、例えばメチルもしくはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、もしくはイムノグロビン類、親水性ポリマー類、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシン、単糖類、二糖類、およびその他のグルコース、マンノース、もしくはデキストリン類を包含する炭水化物、キレート剤、例えばEDTA、糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール、塩形成対イオン、例えばナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性化因子、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を包含することができる。
【0081】
典型的な実施形態では、PKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子は、クリーム剤に調製される。PKCアイソフォームの阻害因子および活性化因子は、皮膚炎症および他の炎症性障害の局所治療のために理想的であるが、それはPKC酵素の活性を特異的に標的とすることができるからである。特異的PKC酵素の阻害または活性化は、他のPKCアイソフォームに影響を及ぼさずに低濃度でPKCアイソフォームを選択的に調節する能力によって達成される。
【0082】
局所投与の代表的な製剤は、ペプチドMPDY−1(配列番号6)が局所投与のためのクリーム剤として調製される実施例4に開示されている。しかし、当業者であれば、本製剤は、クリーム剤の本質的特性、例えば粘度、安定性、非毒性などを保持しながら変更を加えられることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、本製剤を本開示のペプチドPKC阻害因子または活性化因子のいずれかのための溶媒として使用可能なことを認識するであろう。
【0083】
また別の実施形態では、1つの製造品、例えば本開示の治療方法を実施するために有用な材料を含有するキットが提供される。様々な実施形態では、本キットは、PKCアイソフォーム活性化因子または阻害因子、つまり本明細書に開示したペプチドPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子、および該被験体に該活性化因子または阻害因子を投与するための取扱説明書を包含する。
【0084】
用語「取扱説明書」または「添付文書」は、適応、用法、用量、投与、禁忌、包装された製品と結合すべき他の治療用製品および/またはそのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含有する、治療用製品の商業包装内に慣習的に包含される取扱説明書を意味するために使用される。
【0085】
本明細書で開示するPKCαの阻害因子は、特定投与経路のために調製することができる。したがって、本キットは、適切な容器、例えばチューブ、ボトル、バイアル、シリンジなどの中に含有されるPKCαの阻害因子を包含する製剤を包含することができる。容器は、様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成されてよい。容器は、炎症性疾患を治療するために有効である組成物を保持または含有し、無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈注射溶液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。製剤中の少なくとも1つの成分は、PKCアイソフォームの阻害因子または活性化因子である。ラベルまたは添付文書は、PKCアイソフォームの阻害因子または活性化因子を包含する製剤を提供するために投与量および投与間隔に関する特別の手引きを用いて、本組成物が炎症性疾患を患う患者において治療するために使用されることを示している。本製造品は、商業的観点および利用者の観点から望ましい、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、ニードル、およびシリンジを包含する他の材料をさらに包含することができる。
【0086】
当然ながら、治療を必要とする任意の特定被験体のための特定用量レベルおよび投与頻度は変動してよく、使用されるPKCアイソフォームの阻害因子または活性化因子の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与様式および時刻、特定状態の重症度、および療法を受ける宿主に依存することになる。しかし一般に、用量は、特異的PKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子の公知の投与方法に典型的な用量に近似する。当業者であれば、最適用量、投与方法および反復頻度を容易に決定することができる。正確な処方および用量は、患者の状態に照らして個々の医師が選択することができる(Fingl et al. “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch.1 p.1(1975))。
【0087】
そこで、治療対象の状態の重症度および反応性に依存して、投与は単回、または治癒するまで、または障害の減少が達成されるまで治療過程が数日間から数週間持続する反復投与であってよい。
【0088】
PKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子がペプチドである様々な実施形態では、該ペプチドは組成物中で0.001〜100μg/mlの濃度で提供される。例えば、濃度は、0.001〜100、0.01〜50、0.01〜10、0.01〜1、および0.01〜0.5μg/mlであってよい。
【0089】
1つの投与プロトコールでは、本方法は、ペプチドPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子を該被験体へ局所的に、例えばクリーム剤として投与する工程を含んでいる。ペプチドは、約1μg/ml〜約1,000μg/ml、1μg/ml〜約500μg/ml、1μg/ml〜約100μg/ml、1μg/ml〜約10μg/ml、または10μg/ml〜約100μg/mlの濃度で局所投与される。ペプチドは、その状態が治療されるまで少なくとも1日1回投与される。
【0090】
また別の投与プロトコールでは、本方法は、ペプチドPKCアイソフォーム阻害因子または活性化因子を該被験体へ非経口、皮下または静脈内投与する工程を含んでいる。ペプチドは、約1μg/ml〜約1,000μg/ml、1μg/ml〜約500μg/ml、1μg/ml〜約100μg/ml、1μg/ml〜約10μg/ml、または10μg/ml〜約100μg/mlの濃度で投与される。ペプチドは、その状態が治療されるまで少なくとも1日1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。
【0091】
以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに具体的に示すために提供するが、範囲を限定することは意図されていない。これらの実施例は使用可能な実施例の典型ではあるが、あるいはまた当業者には公知の他の手順、方法、または技術を使用することができる。
【実施例1】
【0092】
PKCαの阻害は炎症性皮膚障害である乾癬に特徴的なケラチン生成細胞構造統合性(structure integrity)を調節する
PKCαの阻害は、乾癬に特徴的なケラチン生成細胞構造統合性を調節することが証明された。皮膚組織をパラフィン包埋し、H&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)一般組織学的染色のため、または基底層に対するケラチン14(K14)、有棘層に対するケラチン1(K1)、ケラチン生成細胞遊走に対するケラチン6(K6)およびケラチン生成細胞増殖に対するPCNAを包含する様々な皮膚層に対する別のマーカーについて染色した。結果は、PKCα阻害後の皮膚特性の正常化を証明している(図2)。
【実施例2】
【0093】
乾癬モデルによる炎症のin vivoおよびex vivo治療を評価するためのモデル
これまで極めて多数の動物モデルが乾癬を試験するために使用されてきたが、これらのモデルはいずれも、過剰な皮膚産生、新規血管の形成、および重度免疫機能障害を特徴とするヒト疾患病理を適正に模倣するために十分ではなかった。一般に、乾癬の有用なモデルであると見なすには、モデルは、乾癬との一部の組織病理学的特徴を共有し、類似の病因および/または疾患機序を示し、そしてこの疾患を治療するための治療薬に同様に応答しなければならない。既存モデルは、表皮肥厚、表皮分化の変化、脈管新生の増加、および白血球/T細胞浸潤を包含する幾つかの特徴を示す。しかし、特に既存のマウスモデルの中では、既存薬物および療法に応答するマウスは多くない。したがって、既存モデルを使用して、以下の実施例において利用された乾癬治療を評価するための新規のin vitro、ex vivoおよびin vivoモデルが開発されてきた。
【0094】
in vitroモデル
開発されたモデルは、細胞系および皮膚由来細胞ならびに免疫細胞の一次培養物を使用し、STAT3およびPKCα媒介性シグナル伝達経路を過剰発現させて不活性化するための構築体およびツールを利用する細胞培養試験を包含していた。皮膚細胞の増殖、遊走、分化、炎症およびシグナル伝達を試験するための膨大な一連の技術が利用され、乾癬の発生機序を試験し、乾癬におけるPKCαの阻害の治療作用を試験するのに有用であることが証明された。
【0095】
in vivoモデル
PKCα過剰発現およびノックアウトマウスモデルを使用した。K5−PKCαトランスジェニックマウスを使用したケラチン生成細胞内でのPKCαの過剰発現は、例えば膿疱性乾癬などの状態を模倣する重度の表皮内好中球浸潤および表皮の破壊を示すことが証明された。トランスジェニックマウスのPKCαおよびDN形態の両方が確立され、これは、皮下投与によってin vivoで試験された。さらに、皮膚構造および機能にPKCα不活性化が及ぼす作用を試験するために、PKCαノックアウトマウスを使用した。
【0096】
STAT3を過剰発現するマウスモデルを使用した。中でも、乾癬、ヒト乾癬に対する類似性に関するリードマウスモデルは、Stat3が表皮ケラチン生成細胞内で過剰発現するトランスジェニックマウスである。これらのマウスは、乾癬状の表皮での棘細胞増殖を発生し、真皮内では主としてCD4+であり、表皮内ではCD8+である皮膚リンパ球浸潤を有するが、これらは全てヒトにおける乾癬に類似する特徴である。
【0097】
皮膚炎症および過形成のためのモデルとしての創傷。創傷状況における皮膚病変内の炎症を検出して定量的に評価するために、様々な皮膚区画における皮膚炎症応答を追跡し、この応答に影響を及ぼす薬剤の同定を可能にするスクリーニング方法が開発された。
【0098】
ex vivoモデル
ニワトリ絨毛尿膜(CAM)上での乾癬性皮膚の移植。ニワトリ絨毛尿膜(CAM)上での乾癬性皮膚移植の技術は、ex vivo治療用途を試験する目的で開発された。この技術は皮膚腫瘍試験および血管新生実験において一般に使用されるが、これを乾癬試験のために採用して使用した。この最初のアプローチは、ヒト乾癬性皮膚への新規薬物の直接的な投与を可能にするため、そこで感染を治療するための新規薬物のより臨床的に意義のある試験を作り出す。移植後、乾癬性ヒト皮膚を利用して様々な製剤における様々な治療の有効性およびタイミングを確定し、形態学的、組織学的および生化学的分析を使用して分析する。
【実施例3】
【0099】
PKCαノックアウトマウスにおける瘢痕形成の軽減
PKCαノックアウトマウスモデルを開発し、皮膚構造および機能にPKCα不活性化の作用が及ぼす作用を試験するために利用した。図3および4に示したように、落屑の軽減がPCKαノックアウトマウスにおいて観察された。図3は、平均落屑重症度が、コントロールと比較してPCKαノックアウトマウスにおいて50%超減少したことを示しているヒストグラムであり、PKCαの阻害が乾癬治療の重要な要件であることを証明している。これは、相違するマウスにおける落屑を比較している一連の図である図4においても証明されている。
【実施例4】
【0100】
局所的PKCα阻害因子製剤
局所的PKCα阻害因子製剤を開発し、乾癬の治療における有効性について評価した。ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)をクリーム剤に調製し(本明細書では、HO/02/10と称する)、その成分は表2に示した。
【0101】
【表2】
【実施例5】
【0102】
PKCα阻害因子がin vitro表皮分化に及ぼす作用
実施例4の製剤(HO/02/10)をin vitroで表皮分化を制御するために決定した。基底ケラチン生成細胞は、分化してK1/K10ケラチンを特徴とする有棘層、ロリクリン/フィラグリンを特徴とする顆粒層および角層を形成する。ロリクリンおよびフィラグリン線維の発現および取込みの欠損には、乾癬を包含する様々な免疫学的皮膚疾患が関連している。そこで、HO/02/10が皮膚分化および増殖に及ぼす作用を評価した。図5および6に示したように、HO/02/10は、皮膚増殖(PCNA)(図6)を正常化し、ロリクリンおよびフィラグリンの発現を減少させることによって皮膚分化を調節したが、その間、有棘層は影響を受けないままであった(図5)。乾癬性皮膚ケラチン生成細胞は急速に分化して顆粒細胞および主として大量の角膜細胞(鱗屑)を生成するが、有棘層は薄化するので、HO/02/10は、皮膚特性を正常表現型に向けて修正することによって乾癬性皮膚を正常化するように機能した。
【0103】
図5は、HO/02/10がin vitroでの表皮顆粒分化を制御することを図示している。C57BL/6Jマウスに由来するケラチン生成細胞は、ケラチン生成細胞分化を誘導するためにCa2+を含有する培地中でインキュベートした。次に細胞をHO/02/10(1μg/ml)の存在下でインキュベートした。細胞を採取し、SDS PAGEゲル上でランし、抗フィラグリン(Fil)、抗ロリクリン(Lor)および抗ケラチン1(K1)抗体を使用してイムノブロッティングした。
【0104】
図6は、HO/02/10がin vitroおよびin vivoでのケラチン生成細胞増殖を減少させたことを図示している。2日齢Balb/cマウス由来の一次マウスケラチン生成細胞は、0.05mM Ca2+MEM培地中で完全コンフルエンスに達するまで5日間増殖させた。HO/02/10処置(10−6Mおよび10−5M)は、分化誘導の6時間前に適用した。細胞を採取し、SDS PAGEゲル上でランし、抗PCNA抗体を使用して免疫ブロッティングした。結果は、図6の上図に示した。8〜10週齢のC57Blackマウスは、表皮リモデリングおよび分化を誘導するために、上背領域内での全層創傷形成を受けさせた。創傷形成後、マウスは1日1回7日間HO/02/10(範囲:40〜4,000mg/kg/日)で処置した。終了時点に、マウスを安楽死させ、上背皮膚サンプルを4%パラホルムアルデヒド溶液中で固定し、パラフィン包埋し、スライド標本作製した。皮膚サンプルを次にPCNA抗体を利用して免疫組織学的染色にかけた(n=18)。結果は、図6の下図に示した。
【0105】
図7および8は、MPDY−1(配列番号6)を利用したケラチン生成細胞内の追加の発現データならびにPKCα阻害因子AIP−1(配列番号9)、AIP−2(配列番号8)、AWOT−1(配列番号7)およびPPDY−1(配列番号10)についてのデータを示している。図7は、様々なペプチドPKCα阻害因子を用いて処置されたケラチン生成細胞内での抗PCNA、抗フィラグリン(Fil)、抗ロリクリン(Lor)、抗ケラチン1(K1)および抗ケラチン14(K14)抗体を利用した免疫組織学的染色を示している。図8は、様々なペプチドPKCα阻害因子に対するケラチン生成細胞内での発現データの概要を示している。
【0106】
皮膚の強度および弾性を試験するために、破裂チャンバを使用して、皮膚サンプルを破裂(皮膚弾性および耐久性の測定可能な指標)させるために必要とする圧力を測定した。図9における結果は、HO/02/10処置皮膚が皮膚強度を増強したことを証明した。そこで、PKCαの阻害は、皮膚の統合性を増強して乾癬病変の破裂を防止することが証明されたため、乾癬性皮膚にとって有益な可能性がある。
【0107】
図9は、HO/02/10が皮膚強度を劇的に強化したことを証明している。マウス皮膚を14日間HO/02/10を用いて処置し、続いて破裂圧分析にかけた。破裂チャンバデバイスは、一端は閉鎖して、制御弁および圧力計によって高圧CO2容器に接続した固定容積の金属製シリンダーから構成された。チャンバの他方の端部では、試験対象の皮膚組織を載荷して適所に保持するために、調節可能なフレームを据え付けた。ガスを徐々にチャンバ内に流入させ、内部の圧力は、試験対象組織の破裂が発生するまで持続的に監視した。
【実施例6】
【0108】
PKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子が皮膚炎症に及ぼす作用
創傷状況における皮膚病変内の炎症を検出して定量的に評価するために、様々な皮膚区画における皮膚炎症応答を追跡し、この応答に影響を及ぼす薬剤を(予備スクリーニングとして)同定することを可能にする方法が開発された。炎症応答は、以下の3つの状態の内2つが明白であった場合に重度と見なした。(1)膿瘍形成、(2)過度の白血球増加症(固定視野×200内で>100細胞)、(3)血管内の>20%のWBC含量が固定視野×200内で示されている、血管内での高WBC/RBC比。免疫学的応答の作用的特性は、特異的免疫学的細胞の浸潤および活性化を同定するためのマーカーを利用して試験する。そのようなマーカーについての例は、ICAM−1(マーカー活性化基底細胞および内皮細胞として)、MAC−2(活性化マクロファージのためのマーカーとして)およびCD3(T細胞マーカー)である。この定量的方法を使用すると、数種の動物モデルにおける異なる細胞タイプおよびプロセスにおける無傷皮膚および皮膚病変内でのHO/02/10およびその他のペプチドPCKα阻害因子が及ぼす強力な抗炎症性作用を証明することが可能であった。
【0109】
下記の代表的な結果は、創傷の4および9日後にB57BL/6Jマウスにおける皮膚創傷にHO/02/10が及ぼす抗炎症作用を証明している(図10)。図10は、C57BL/6Jマウスにおける炎症にHO/02/10が及ぼす用量反応を示している。C57BL/6Jマウスの皮膚は、1日1回、HO/02/10(4μg/kg/日)または(40μg/kg/日)の投与によって処置した(6マウス/群)。処置は局所的に投与した。生検標本は、創傷の4および9日後に採取した。組織は、組織学および免疫組織化学によって炎症を評価するために安楽死させた動物から切除した。
【0110】
HO/02/10は、LPS活性化脾細胞からの前炎症性サイトカイン分泌を減少させることもまた証明された。in vitroでの一般的抗炎症作用を評価するために、マウス由来一次脾細胞を免疫学的モデルとして利用した。脾細胞は、C57BL/6Jマウスに由来し、赤血球を溶解し、細胞は96ウエルプレート内で500,000/ウエルでインキュベートした。LPSを加え(IL−1およびTNFα試験のために1μg/ml、およびIL−6試験のために0.2ng/ml)、そして細胞をMPDY−1(1μg/ml)またはPBSで処置した。陰性コントロールサンプルにはLPSを加えなかった。培地を2日後に収集し、分泌されたサイトカインの量はELISAを使用して定量した。
【0111】
図11、ならびに図17〜27、43および50は、HO/02/10が、主要な全炎症性サイトカイン、例えばTNFα、IL−1およびIL−6の活性化ケラチン生成細胞からの分泌を劇的に減少させる能力を証明している。詳細には、IL−6が乾癬の病因に関与するTH17細胞の発達に必須であることが証明され、IL−1およびTNFαについては増強作用が証明された。TNFαおよびIL−6は、乾癬療法にとって公知の標的である。図11は、1μg/mlのHO/02/10の作用を証明している。
【0112】
HO/02/10は、in vivoで基底ケラチン生成細胞および内皮細胞の免疫学的活性化を阻害することもまた証明された。ICAMは、炎症性病変内への白血球浸潤を許容する接着分子である。詳細には、皮内で、基底ケラチン生成細胞が免疫学的活性化されるとICAM−1を発現し、これは乾癬の特徴の1つである好中球およびCD8−T細胞の表皮内への浸潤を増強する可能性がある。そこで、HO/02/10が皮膚内でのICAM発現に及ぼす作用をin vivoでの創傷炎症性状況において免疫組織化学によって試験した。
【0113】
皮膚炎症において活性化されたケラチン生成細胞および内皮細胞のダウンレギュレーション(ICAM−1染色)が観察された。2cmの縦切開をC57BL/6Jマウスの上背部で実施した。創傷後、このマウスの皮膚に無菌パッドを縫合した。動物は、毎日、HO/02/10を用いて処置した(n=12)。創傷の5日後、炎症期がそのピークに達した時点で、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン包埋し、抗ICAM−1抗体を利用して免疫組織化学的染色を実施した。
【0114】
図12に示したように、HO/02/10は、皮膚の血管内の基底ケラチン生成細胞および内皮細胞上でのICAM発現を劇的に減少させる。この作用は、用量依存性であることが証明され、最大作用は10μg/mlで証明された。
【0115】
図13は、皮膚炎症における活性化されたケラチン生成細胞および内皮細胞のダウンレギュレーション(ICAM−1染色)を示す追加の染色を示している。上述したように、2cmの縦切開をC57BL/6Jマウスの上背部で実施した。創傷後、このマウスの皮膚に無菌パッドを縫合した。動物は、毎日回MPDY−1を用いて処置した(n=6)。創傷の5日後、炎症期がそのピークに達した時点で、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン包埋し、抗ICAM−1抗体を利用して免疫組織化学的染色を実施した。
【0116】
図14は、両創縁部で陽性ICAM−1染色を示すマウスのパーセントを比較しているヒストグラムである。
【0117】
MPDY−1がマクロファージ浸潤に及ぼす作用もまたIba−1染色によって証明された。Iba−1は、マクロファージのための一般的マーカーである。図15は、Iba−1陽性染色細胞の1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。上述したように、2cmの縦切開をC57BL/6Jマウスの上背部で実施した。創傷後、このマウスの皮膚に無菌パッドを縫合した。動物は、毎日MPDY−1を用いて処置した(n=6)。創傷の5日後、炎症期がそのピークに達した時点で、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン包埋し、抗Iba−1抗体を利用して免疫組織化学的染色を実施した。MPDY−1がマクロファージ浸潤に及ぼす用量依存性作用が観察された。
【0118】
MPDY−1がマクロファージ活性化に及ぼす作用もまたMAC−2染色によって証明された。MAC−2は、活性化されたマクロファージのための特異的マーカーである。図16は、一連のMAC−2染色および陽性MAC−2染色を示している1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。上述したように2cmの縦切開を実施した。動物は、毎日、DPBS−/−(コントロール)または規定濃度のMPDY−1を用いて処置した(n=6)。5日後に、免疫組織化学的染色は、抗MAC−2抗体を利用して実施した。バー1μm。(*p(コントロール対MPDY−1 10μg)=0.0028)。マクロファージの活性化は、MPDY−1処置後、有意に阻害された。
【0119】
MPDY−1はさらに、図32に示したように、用量依存様式によりケラチン生成細胞内でTNFα誘導性IKK活性化を有意に減少させることも証明された。マウス一次ケラチン生成細胞は、低Ca+2MEM中で完全コンフルエンスまで4日間増殖させた。細胞は、TNFα誘導に先行して、図に記載したように1時間にわたり指定濃度のMPDY−1を用いて前処置した。MPDY−1前処置後、細胞は15分間TNFα 35ng/mlとともにインキュベートした。反応は、氷温dPBS−/−を添加することにより停止させ、ケラチン生成細胞は、RIPA緩衝液中でホモジナイズした。サンプルは、リン−IKKa/b(Ser176/180抗体)を利用して、SDS PAGEウエスタンブロット(Western Blot)分析にかけた。MPDY−1を用いた前処置はケラチン生成細胞内のTNFα誘導性IKK活性化を用量依存様式で有意に減少させたが、この時、最低MPDY−1濃度(0.1mg/ml)は最強の阻害を示し、したがってNFkB活性化を抑制した。
【0120】
上記で考察したように、HO/02/10はさらに活性化されたケラチン生成細胞およびマクロファージからのサイトカイン分泌を減少させることも証明された。近年、免疫成分および皮膚成分の両方が乾癬の病因の基礎にある周期へ同等に寄与することが見いだされた。常在皮膚細胞および免疫学的細胞(常在細胞および浸潤細胞の両方)は、細胞−細胞相互作用およびサイトカイン分泌によって炎症性乾癬プロセスにおいて相互作用する。そこで、HO/02/10がケラチン生成細胞および免疫細胞、例えばマクロファージおよび樹状細胞両方からの前炎症性、化学走化性および免疫学的経路関連サイトカインの分泌へ及ぼす直接作用を試験した。図17および18に示した結果は、HO/02/10がケラチン生成細胞およびマクロファージからの免疫関連サイトカイン類、例えばIL−6、IL−1α、GM−CSF、MIP−2およびKCの分泌をダウンレギュレートすることを証明している。
【0121】
図17の結果は、ケラチン生成細胞内のサイトカイン分泌にHO/02/10が及ぼす作用を示している。ケラチン生成細胞は、新生仔C57BL/6Jマウスに由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は、次にDPBS−/−、LPS(100ng/ml)、またはHO/02/10(1μg/ml)+LPS(100ng/ml)を用いて処置した。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、Luminexシステムを使用して分析した。
【0122】
図18の結果は、マクロファージ内のサイトカイン分泌をHO/02/10がダウンレギュレートすることを示している。骨髄細胞は、B6マウスに由来した。細胞は、GM−CSF(20ng/ml)の存在下で6日間インキュベートし、次にDPBS−/−、LPS(100ng/ml)またはHO/02/10+LPS(各々、1μg/mlおよび100ng/ml)を用いて処置した。
【0123】
その他のペプチドPKCα阻害因子は、さらに活性化されたケラチン生成細胞およびマクロファージからのサイトカイン分泌を減少させることも証明された。図19〜23は、ペプチド阻害因子MPDY−1(配列番号6)、MPDY−1sh(配列番号12)およびPDY−1(配列番号13)は、LPSおよびTNFα活性化ケラチン生成細胞からのサイトカイン分泌を減少させることを示している。図24〜27は、ペプチド阻害因子MPDY−1(配列番号6)、MPDY−1sh(配列番号12)およびPDY−1(配列番号13)は、IL−17A活性化ケラチン生成細胞からのサイトカイン分泌を減少させることを示している。
【0124】
表3は、HO/02/10についてのサイトカインの役割および起源に関する結果を要約している。
【0125】
【表3】
【0126】
様々なその他のPKCα阻害因子は、さらに活性化されたケラチン生成細胞におけるサイトカイン分泌を減少させることも証明された。それらの作用を決定するために、ケラチン生成細胞を、新生仔BALB/Cマウス皮膚に由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は次に、コントロールとしてのPBS−/−とともにインキュベートした、またはLPS、TNFα、もしくはIL−17によって刺激した。PKCα阻害因子は指示どおりに加えた。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、ELISAを使用して分析した。図50は、サイトカイン分泌の表にまとめた概要である。PKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)、AIP−2(配列番号8)、AIP−1(配列番号9)、AWOT(配列番号7)およびPPDY−1(配列番号10)は、全てケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌の減少に効果的であることが証明された。
【0127】
HO/02/10もまた、皮膚へのT細胞浸潤を軽減することが証明された。HO/02/10がT細胞浸潤に及ぼす作用は、抗CD3特異的染色を使用してin vivoで試験した。
【0128】
図28から明らかなように、HO/02/10は、炎症期中に真皮および表皮へのT細胞浸潤をダウンレギュレートした。詳細には、HO/02/10は、同様に乾癬斑に特徴的な更なる抗炎症特性を示す表皮内へのT細胞浸潤を阻害した。上述したように2cmの縦切開を実施した。動物は、毎日HO/02/10を用いて処置した(n=12)。9日後、免疫組織化学的染色は、抗CD3抗体を利用して実施した。図28Bは、CD3に対して陽性染色された1視野当たりの細胞数を比較しているヒストグラムである。この作用は、1μg/mlおよび10μg/mlの濃度で統計的有意であったが、1μg/mlの処置は10μg/mlより強度の作用を証明している。
【0129】
HO/02/10もまた、皮膚への好中球浸潤を軽減することが証明された(図31)。HO/02/10が好中球浸潤に及ぼす作用は、好中球特異的染色を使用してin vivoで試験した。上述したように2cmの縦切開を実施した。動物は、毎日、DPBS−/−(コントロール)または規定濃度のPKCαを用いて処置した(n=6)。5日後、マウスを犠牲にし、皮膚組織をパラフィン中に包埋し、好中球に対する免疫組織化学的染色を実施した。用量依存性傾向が観察されたが、結果は統計的有意ではなかった。
【0130】
PKCδ活性化因子もまたケラチン生成細胞および脾細胞に及ぼす抗炎症作用を有することが証明された。ケラチン生成細胞は、新生仔BALB/Cマウス皮膚に由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は次に、コントロールとしてのPBS−/−とともにインキュベートした、またはLPSもしくはTNFαによって刺激した。PKCδ阻害因子DAP−1(配列番号34)を加えた。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、ELISAを使用して分析した。図43は、LPSを用いて刺激したケラチン生成細胞内でのサイトカイン分泌を示している表による概要である。図44は、TNFαを用いて刺激した脾細胞内でのサイトカイン分泌を示している表による概要である。DAP−1は、ケラチン生成細胞および脾細胞の両方で炎症性サイトカインの分泌を有意に減少させることが証明された。
【0131】
PKCε阻害因子もまた、ケラチン生成細胞に抗炎症作用を有することが証明された。ケラチン生成細胞は、新生仔BALB/Cマウス皮膚に由来した。細胞は、24ウエルプレート内で5日間インキュベートした。細胞は次に、コントロールとしてのPBS−/−とともにインキュベートした、またはLPSもしくはTNFαによって刺激した。PKCε阻害因子EPIP−1(配列番号20)、EPIP−2(配列番号21)、またはEPIP−4(配列番号23)を加えた。分泌されたサイトカインを含有する培地を48時間後に収集し、ELISAを使用して分析した。図45〜48は特異的サイトカインの分泌についての結果を示しており、図49は様々なPKCε阻害因子についてのサイトカイン分泌の表による概要である。PKCε阻害因子の幾つかは、ケラチン生成細胞における炎症性サイトカインの分泌を有意に減少させることが証明された。
【0132】
要約すると、炎症および炎症性疾患のための効果的療法としてのそれらの使用に関係しているPKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子の作用機序を決定した。そのようなペプチドは、炎症性プロセスの様々な工程において様々な細胞タイプ動員および活性化に示差的に影響を及ぼすことによって、1)末端分化を減少させることにより表皮分化マーカーの発現を正常化する、2)異常過剰増殖を軽減する、3)皮膚構造を調節し、皮膚強度を増強する、および/または4)炎症をダウンレギュレートすることが証明された。
【0133】
図30は、本開示のPKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子が皮膚炎症および乾癬関連経路に及ぼす全体的作用を示すスキームを図示している。このスキームは、阻害因子および活性化因子が皮膚内の様々な細胞タイプおよび炎症段階に及ぼす阻害作用を要約している。PKCアイソフォーム阻害因子および活性化因子は、常在皮膚免疫細胞による前炎症性サイトカイン(例えば、IL−1、IL−6およびTNFα)の分泌を阻害する。したがって、内皮細胞およびケラチン生成細胞活性化における減少が達成され、結果、ICAM−1発現の有意な減少、ケモカイン分泌および好中球、マクロファージ、およびT細胞を包含する炎症部位への白血球浸潤の減少が生じる。どちらも乾癬における主要経路であるTh1およびTh17経路の発達および進行に関与するサイトカインもまた、ダウンレギュレートされた。
【実施例7】
【0134】
PKCαおよびPKCη阻害因子を用いた多発性硬化症の治療
多発性硬化症の動物モデル:CNS組織は容易にはサンプリングされないため、疾患機序に関する情報を獲得するために、多数のモデルが開発され、文献において一般に使用されている。これらのモデルには、報告によれば、MSの臨床状態および病理を模倣するミエリン突然変異体、化学的に誘導された病変、ウイルスおよび自己免疫モデルが包含される(Baker et al.(2007)ACNR 6(6):10−12)。モデルの中でも、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、報告によればMSのために最も一般的に使用されるモデルである(Baker et al.(2007)ACNR 6(6):10−12)。
【0135】
多発性硬化症の自己免疫モデル:実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、明らかにMS疾患および進行のモデルとして最も注目を受けており、MSのための治療戦略を試験する際にルーチン的に使用されている(Baker et al.(2007)ACNR 6(6):10−12)。
【0136】
この疾患モデルはMSの多数の臨床的および組織学的特徴を示し、報告によればCNSにおいて自然に、または人工的のいずれかで発現する抗原への自己免疫の誘導によって誘発される(Lavi et al.(2005)ISBN 0−387−25517−6;およびOwens et al.(2006)Adv Neurol 98:77−89)。ミエリン抗原への感作後、動物は、四肢麻痺を典型とする疾患を発生すると思われる。これには、血液脳関門機能障害、結果として神経伝達障害を生じさせるCNSおよび伝導ブロック内への単核球浸潤が関連している。
【0137】
EAEは、感受性および臨床経過が免疫抗原および調査対象の動物の血統/種に依存して変動すると思われる多遺伝子性である。小さなミエリンタンパク質であるMOGは、C57BL/6マウスにおいて慢性麻痺性EAEを誘導すると思われる。EAEは、単一モデルではなく、MSと類似する程度の様々な病理を提示する多数のモデルである(Lavi et al.(2005)ISBN 0−387−25517−6)。
【0138】
数種のPKC阻害因子がEAEマウスの発達および臨床状態に及ぼす作用を試験するために、以下の実験プロトコールを利用する様々な試験を実施した。詳細には、ペプチドPKCα阻害因子MPDY−1(配列番号6)およびペプチドPKCη阻害因子MPE−1(配列番号28)を評価した。
【0139】
試験には、雌性8〜10週齢C57BL/6Jマウスを使用した。群の総数は7であった(n=7/群)。動物の総数は49匹であった。麻酔後、マウスをMOG35−55/CFAにより免疫した。マウスは、300μgの結核菌(tuberculosis)(Mt)H37RA(Difco)を補給した200μgのMOG35−55/CFAを用いて側腹部への皮下(s.c.)注射により免疫した。百日咳毒素(Pertussis Toxin:PTX)は、免疫時および48時間後に静脈内(i.v.)注射した。追加免疫の必要性は、合成MOG35−55ペプチドを用いた予備キャリブレーション実験(マウス20匹)に基づいて決定した(処置実験に先行してキャリブレーション手順として実施した)。
【0140】
処置は、以下の通りに投与した。免疫当日に開始し、マウスは週3回、腹腔内(i.p.)注射(200μl/注射)によって処置した。
【0141】
臨床観察およびスコア判定は、49日間の観察期間、6日間/週で実施した。体重は、免疫前およびその後は週2回測定した。有効EAEは、以下の表4に示したようにマウスの定量可能な臨床所見に依存して0〜6のスケール上でスコア付けした。
【0142】
【表4】
【0143】
マウス群は、表5に示したように処置した。
【0144】
【表5】
【0145】
結果は、図33〜37に提示し、要約した。
【0146】
図33から明らかなように、MPDY−1 0.1mg/kgを用いて処置されたマウスは、コントロール群より2日後、実験の第13日目に疾病の徴候を示し始めた。MPDY−1 0.1mg/kg群のマウスは、ほとんどの実験期間中にコントロール群のマウスと比較して低いスコアを示した。さらにMPDY−1 0.1mg/kg群およびMPE−1 0.1mg/kg群のマウスは実験期間中に1匹も死ななかったが(スコア6)、他の全群では時間の経過に伴ってマウスが死んだ(コントロール群−最初のマウスは実験第34日目に死亡し、もう1匹は第35日目に死んだ)。全マウスの死亡の要約は、以下の表6に提示した。
【0147】
【表6】
【0148】
特定時点での図33〜37から引き出されたスコアの概要は、表7に示した。
【0149】
【表7】
【0150】
処置の第4群および第6群は、実験の第49日目までの無死亡数を包含する、疾患の臨床症状の発生への耐性を示している。0.1μg/ml(第4群)の濃度でのMPDY−1およびMPE処置はEAEの重症度を低下させ、コントロール動物における疾患の後期に観察された致死性EAEからマウスを保護したので、そこで実験終了時(第42日目)での平均群スコア(1.93のMPDY−1、2.00のMPE−1)の平均コントロール群スコア(2.86)より下方への低下を生じさせた。0.1μg/mlの濃度でのMPDY−1処置は、コントロール群と比較してEAE比較の発生の臨床状態の2日間の遅延を誘導した。このため、MPDY−1およびMPEは、MSの治療のための効果的薬剤であると証明されたと思われた。
【実施例8】
【0151】
掻痒症治療のin vivo評価
図38に示したように、掻痒症を評価するためにヒスタミンを利用する皮刺試験モデルを開発した。個々の被験体の前腕に、ヒスタミン溶液およびプラセボを注射した。実施例4の製剤は、様々な濃度でMPDY−1とともに局所的に適用し、図39〜42に示したように掻痒症を時間の経過に伴って評価した。
【0152】
この試験は、可能性のあるアレルゲンを含有する溶液の液滴を皮膚上に配置し、一連の引っ掻き傷または針穿刺により溶液の皮内進入を可能にする。抽出液は、細針(例えば、26Gディスポーザブル針)を使用して皮膚の外層(表皮)内に進入させる。この試験は非有痛性であり、一般には針は皮膚の表面を引っ掻くだけであるので、出血を伴うことがない。皮膚が赤く盛り上がった痒い領域(膨疹と呼ばれる)を発生した場合、これはそのアレルゲンに対するアレルギー反応の結果である。これは陽性反応と呼ばれている。抽出物の液滴は細針(例えば、No.26のディスポーザブル針)を通して導入する。この試験は不快感を引き起こさず、生じさせる外傷は極めて小さいので、コントロールおよび陰性試験は、たとえ示しても穿刺部位しか示さない。
【0153】
26G針を利用してヒスタミンストック液(Histatrol陽性コントロールヒスタミン、1mg/ml、コード番号HIST14999V、Trupharm社)を導入した。本試験は、二重盲験無作為化試験において健常志願者を対象に実施した。製剤は、前腕に適用された。3カ所の処置領域を選択し、マーキングした(肘から手首までの前腕の表面を近位、中部および遠位3分の1に横に分割した)、これらの領域を下記の処置前に穿刺した。
【0154】
1つの領域は、二重盲験法により活性製剤で10分間処置し、Aとマーキングした。
【0155】
1つの領域は、二重盲験法によりプラセボで10分間処置し、Cとマーキングした。
【0156】
カラー写真は、0(T0)、10、20、30分後の時点に撮影した。
【0157】
掻痒症のアンケートには、処置の5および15分後に被験体に回答してもらった。
【0158】
1つの試験では、3人の被験体を表8および9に示した処置で試験した。
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
被験体に掻痒感覚記入様式を提供し、様々な時間間隔で感じた掻痒レベルを0(反応なし)〜4(制御不能な掻痒症)で示すように求めた。結果は、下記の表10に示した。
【0162】
【表10】
【0163】
さらに、図39〜42で明白なように、MPDY−1の投与は、コントロールと経時的に比較して、発赤、炎症および掻痒を有意に軽減した。
【0164】
本開示の課題を上記の実施例を参照して記載してきたが、変更態様および変形態様が本開示の真意および範囲内に含まれることを理解されたい。したがって、本開示は以下の特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例9】
【0165】
インスリンおよびPKCα阻害因子を組み合わせると、インスリン単独処置によって誘発される有害な副作用を回避する。
【0166】
創傷は、8〜10週齢のC57BLマウスの背部に切開によって作製し、7日間にわたり1日1回ビヒクル(PBS)コントロールまたは1μMインスリン(Humulin、Eli Lilly社、米国)もしくは1μMインスリンと1μMの配列番号6のPKCα阻害因子との混合物のいずれかで処置した。創傷の7日後、全マウスを犠牲にし、処置した創傷を表皮の増殖能力(増殖性細胞核抗原−PCNA)、血管新生、炎症、表皮細胞および創傷間隙でのリモデリングプロセスについて組織学的に分析した。
【0167】
表11に示したように、インスリン単独処置は、PBSコントロールと比較して、創傷領域内の異常な血管新生の発生率の実質的増加を誘発した(各々、60%および25%)。創傷治癒プロセスは急速に増殖する表皮細胞を包含するので、そのような増加した血管新生は正常顆粒組織の形成を遅延させることによる創閉鎖欠陥のリスクを増加させる可能性もある。他方、インスリンが配列番号6のPKCα阻害因子と結合された場合、処置された創傷領域内で異常な血管新生は観察されなかった。
【0168】
【表11】
【0169】
さらにインスリン単独処置は、増加した炎症、表皮細胞の過形成、表皮細胞の有棘層の遅延性分化および瘢痕形成の増加を生じさせた。インスリン単独処置の結果として生じた有害な副作用は、PKCα阻害因子がインスリンと組み合わされた場合、全く観察されなかった。
【実施例10】
【0170】
PKCα阻害因子は創傷炎症を減少させる。
【0171】
創傷における後期および重度の炎症反応は治癒プロセスを抑制する可能性があるため、そこでそのような炎症の発生の予防は創傷治癒プロセスを促進できる。そこで、PKCα阻害因子HO/02およびインスリンが創傷炎症に及す作用を下記の実験において試験した。
【0172】
創傷はC57BLマウスの背部上で切開によって作製し、7日間にわたり毎日、(i)PBS、コントロール、(ii)1μMの配列番号6のPKCα阻害因子、(iii)1μMのインスリン(Humulin、Eli Lilly社、米国)、または(iv)1μM PKCα阻害因子と1μMインスリンとの混合物を用いて処置した。創傷の7日後、全マウスを犠牲にし、処置した創傷を顕微鏡下で炎症について観察した。創傷領域で観察された、結果として生じた重度炎症の発生率は、表12に要約した。
【0173】
図12に示したように、創傷へのPKCα阻害因子の投与は、コントロールと比較して、重度創傷炎症発生率の実質的な(33.3%の)減少を引き起こした。インスリン単独は、実験条件下で抗炎症作用を有していなかった。
【0174】
【表12】
【0175】
これらの結果は、PKCα阻害因子を療法に使用すると、創傷の重度炎症を制御できることを示している。配列番号6のPKCα阻害因子が炎症を減少させる実証済みの能力は、表皮閉鎖、皮膚閉鎖および表皮細胞の空間分化を促進する能力と結合すると、創傷治癒のために潜在的に最も効果的な治療薬となる。
【実施例11】
【0176】
STZ−誘導性糖尿病マウスの創傷治癒におけるPKCa阻害因子HO/02と組み合わせたインスリンの有効性
全層皮膚切開(20mm)は、麻酔をかけて、ストレプトゾシン(STZ)注射(175mg/kg(体重))糖尿病性、クエン酸緩衝液緩衝液注射(6マウス/群)非糖尿病性、および未注射(6マウス/群)C57BL/6Jマウスの上背部上で実施した。定期的血糖モニタリングは、STZ注射後の尾静脈からの血糖値を測定することによって実施した。450mg/dL超の血糖レベルを示すマウスだけを試験に取り入れた。切開後、STZ誘導性糖尿病性創傷は、毎日PBS(7/6マウス/群)、インスリン(0.1単位/ml)(6マウス/群)、配列番号6のPKCa阻害因子(1μg/ml)(7/5マウス/群)またはインスリン+配列番号6のN−ミリストイル化PKCα阻害因子を含有する製剤(本明細書ではHO/03/03と命名した)(7/6マウス/群)の外科的包帯材への直接的適用によって処置した。生検標本は、創傷の9日後に採取した。創傷は、組織学および免疫組織化学検査によって創傷−治癒パラメータを評価するために安楽死させた動物から切除した。
【0177】
創傷は、ケラチン14染色によって表皮閉鎖について評価した。創傷は、完全表皮染色が創傷間隙を越えて観察された場合に閉鎖したと見なした。H&E染色を利用して固定視野×100の倍率で両方の皮膚の縁を視認できた場合に皮膚収縮と見なした。上皮分化は、ケラチン1染色によって評価した。全創傷間隙を越えて陽性染色を示した創傷は、分化している(K1陽性である)と見なした。
【0178】
表13に示したように、STZ誘導性糖尿病性動物は、創傷治癒欠陥であった。糖尿病性処置、未処置および非糖尿病性マウスにおける重要な創傷治癒パラメータの比較は、製剤HO/03/03処置群が相乗的治癒作用を示すことを解明した。相乗作用は、表皮閉鎖(71%対17%(糖尿病性コントロール、p<0.05)、表皮分化(28%対0%)および皮膚収縮(33%対0%)を包含する全ての臨床的治癒段階において明白であった。
【0179】
皮下組織の組織化を、両方の創縁部の皮下組織の存在(または非存在)によって評価した。顆粒組織形成は、創傷床における線維芽細胞およびコラーゲン線維の存在によって評価した。創傷は、顆粒組織の連続相が創傷間隙内に存在した場合に顆粒組織形成に対して陽性であると見なした。さらに、本発明者らは、糖尿病性創傷の重度炎症を特徴付ける3種の特異的組織学的パラメータを規定した。(i)創傷領域での膿瘍形成、(ii)過度の白血球増加症(固定視野内で>100細胞(×200))、および(iii)固定視野内で示された血管内での高い白血球(WBC)/赤血球(RBC)比(×200)。創傷間隙にこれらのパラメータ中少なくとも2つが存在する場合、創傷は重度に炎症していると見なされる。
【0180】
【表13】
【0181】
結果は、各群における創傷のパーセントとして提示した。
【0182】
【表14】
【0183】
結果は、各群における創傷のパーセントとして提示した。
【0184】
表14に示したように、糖尿病性動物は、他の創傷治癒パラメータにおける障害、例えば創縁部での皮下組織の組織化、炎症および顆粒組織形成を示した。糖尿病関連の治癒パラメータ障害は、創傷間隙縁での皮下組織の組織化(43%対25%)および顆粒組織形成(86%対42%)によって証明されるように、製剤HO/03/03を用いた処置によって補正された。HO/03/03を用いた処置は、創傷間隙における炎症反応(28%対67%)を減少させた。製剤単独(インスリンまたは配列番号6のペプチド)の治癒有効性は、部分的治癒作用しか示さなかった。
【0185】
上記に要約した結果は、製剤HO/03/03が多数の治癒パラメータにおける糖尿病関連治癒障害の克服に相乗作用を示すことを証明している。
【実施例12】
【0186】
ブタ皮膚モデルにおけるin vivoでの創傷治癒におけるPKCα阻害因子HO/02と組み合わせたインスリンの有効性
数件の創傷治癒試験は、創傷治癒プロセスならびに製剤HO/03/03の治癒作用についてさらに理解するためにブタモデル系で実施した。
【0187】
全層(full tickness)の35〜40mmの皮膚切開は、麻酔した雌性ブタ(5カ月齢、60〜70kg)の背部上で実施した。10カ所の対称的切開を背骨から等間隔で背部領域の両側で実施した(計20創傷)。創傷は毎日、1日2回、1mlのPBS(10例/群)またはインスリン0.1単位および配列番号6のN−ミリストイル化PKCα阻害因子1μg/ml(10例/群)を含有する製剤(本明細書ではHO/03/03と称した)の創傷領域への直接投与によって処置した。創傷は犠牲にした動物から創傷7および22日後に切除し、形態学的、組織学的および免疫組織化学的評価を実施した。
【0188】
表15に示したように、製剤HO/03/03を用いた処置は、治癒の早期に表皮の移動および顆粒組織の形成に影響を及ぼすことによって創傷治癒を促進する。さらに、これらの創傷は大きく、環境病原菌からの感染(動物は無菌状態には維持されない)に曝される可能性があるが、HO/03/03は創傷間隙での炎症反応の軽減を促進し、したがって、創傷治癒を促進する。
【0189】
【表15】
【0190】
【表16】
として提示した。
【0191】
進行した治癒段階を試験すると、HO/03/03処置創傷は、加速された治癒をさらに示す。表16に示したように、表皮閉鎖では差は認められなかったが、皮膚収縮および表皮分化は処置した創傷において有意に高かった。これらの創傷が同一動物上で実施され、このため処置が顕著な治癒作用に寄与したことを強調することは重要である。
【0192】
上記に要約した結果から、製剤HO/03/03が、創傷治癒段階の早期ならびに後期における治癒パラメータに影響を及ぼして、ブタ皮膚モデルにおける加速された治癒を促進することは容易に理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、前記被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を含み、それにより前記被験体における前記炎症性疾患または障害を治療する方法。
【請求項2】
前記阻害因子は、ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、N−末端修飾、C−末端修飾またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、N−アセチル化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、N−ミリストイル化またはN−パルミトイル化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドは、非経口投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドは、皮下または静脈内投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドは、局所、経口、粘膜、直腸、肺、鼻腔、または耳投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約10,000μg/kgの用量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約1,000μg/kgの用量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドは、約1.0〜約50μg/kgの用量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドは、毎日、毎週、隔週または毎月投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記炎症性疾患または障害は、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型もしくはII型糖尿病、喘息、炎症性肺障害、炎症性肝障害、炎症性糸球体障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、シェーグレン(Sjoegren)症候群、角結膜炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン(Crohn)病、潰瘍性大腸炎、関節、皮膚、もしくは筋肉の炎症性疾患、急性もしくは慢性特発性炎症性関節炎、筋炎、脱髄疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、間質性腎炎および慢性活動性肝炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
被験体における炎症性疾患または障害を治療するためのキットであって:
a)PKCの阻害因子、および
b)前記被験体に前記PKC阻害因子を投与するための取扱説明書を含むキット。
【請求項15】
前記阻害因子は、ポリペプチドである、請求項18に記載のキット。
【請求項16】
前記ポリペプチドは、N−末端修飾、C−末端修飾またはそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記ポリペプチドは、N−アセチル化されている、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記ポリペプチドは、N−ミリストイル化またはN−パルミトイル化されている、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記ポリペプチドは、非経口、皮下、静脈内、局所、経口、粘膜、直腸、肺、鼻腔、または耳投与される、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記取扱説明書は、前記ポリペプチドが約0.1〜約10,000μg/kgの用量で投与されることを規定する、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記取扱説明書は、前記ポリペプチドが毎日、毎週、隔週または毎月投与されることを規定する、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
炎症性疾患または障害を治療するための医薬品の製造におけるPKC阻害因子の使用。
【請求項23】
前記阻害因子は、ポリペプチドである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記ポリペプチドは、N−末端修飾、C−末端修飾、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記ポリペプチドは、N−アセチル化されている、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
前記ポリペプチドは、N−ミリストイル化またはN−パルミトイル化されている、請求項23に記載の使用。
【請求項27】
前記ポリペプチドは、非経口投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
前記ポリペプチドは、皮下または静脈内投与される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記ポリペプチドは、局所、経口、粘膜、直腸、肺、鼻腔、または耳投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項30】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約10,000μg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項31】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約1,000μg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項32】
前記ポリペプチドは、約1.0〜約50μg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項33】
前記ポリペプチドは、毎日、毎週、隔週または毎月投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項1】
被験体において炎症性疾患または障害を治療する方法であって、前記被験体にPKCの阻害因子を投与する工程を含み、それにより前記被験体における前記炎症性疾患または障害を治療する方法。
【請求項2】
前記阻害因子は、ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、N−末端修飾、C−末端修飾またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、N−アセチル化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、N−ミリストイル化またはN−パルミトイル化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドは、非経口投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドは、皮下または静脈内投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドは、局所、経口、粘膜、直腸、肺、鼻腔、または耳投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約10,000μg/kgの用量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約1,000μg/kgの用量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドは、約1.0〜約50μg/kgの用量で投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドは、毎日、毎週、隔週または毎月投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記炎症性疾患または障害は、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、変形性関節症、全身性紅斑性狼瘡、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型もしくはII型糖尿病、喘息、炎症性肺障害、炎症性肝障害、炎症性糸球体障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、シェーグレン(Sjoegren)症候群、角結膜炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン(Crohn)病、潰瘍性大腸炎、関節、皮膚、もしくは筋肉の炎症性疾患、急性もしくは慢性特発性炎症性関節炎、筋炎、脱髄疾患、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、間質性腎炎および慢性活動性肝炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
被験体における炎症性疾患または障害を治療するためのキットであって:
a)PKCの阻害因子、および
b)前記被験体に前記PKC阻害因子を投与するための取扱説明書を含むキット。
【請求項15】
前記阻害因子は、ポリペプチドである、請求項18に記載のキット。
【請求項16】
前記ポリペプチドは、N−末端修飾、C−末端修飾またはそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記ポリペプチドは、N−アセチル化されている、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
前記ポリペプチドは、N−ミリストイル化またはN−パルミトイル化されている、請求項15に記載のキット。
【請求項19】
前記ポリペプチドは、非経口、皮下、静脈内、局所、経口、粘膜、直腸、肺、鼻腔、または耳投与される、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記取扱説明書は、前記ポリペプチドが約0.1〜約10,000μg/kgの用量で投与されることを規定する、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記取扱説明書は、前記ポリペプチドが毎日、毎週、隔週または毎月投与されることを規定する、請求項15に記載のキット。
【請求項22】
炎症性疾患または障害を治療するための医薬品の製造におけるPKC阻害因子の使用。
【請求項23】
前記阻害因子は、ポリペプチドである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記ポリペプチドは、N−末端修飾、C−末端修飾、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記ポリペプチドは、N−アセチル化されている、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
前記ポリペプチドは、N−ミリストイル化またはN−パルミトイル化されている、請求項23に記載の使用。
【請求項27】
前記ポリペプチドは、非経口投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項28】
前記ポリペプチドは、皮下または静脈内投与される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記ポリペプチドは、局所、経口、粘膜、直腸、肺、鼻腔、または耳投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項30】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約10,000μg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項31】
前記ポリペプチドは、約0.1〜約1,000μg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項32】
前記ポリペプチドは、約1.0〜約50μg/kgの用量で投与される、請求項23に記載の使用。
【請求項33】
前記ポリペプチドは、毎日、毎週、隔週または毎月投与される、請求項23に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図29】
【図30】
【図31A】
【図31B】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
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【図60】
【図61】
【図62】
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【図64】
【図65】
【図66】
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【図70】
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【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図26A】
【図26B】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図29】
【図30】
【図31A】
【図31B】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図80】
【公表番号】特表2013−516500(P2013−516500A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548532(P2012−548532)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000034
【国際公開番号】WO2011/083483
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508064333)ヒールオア・リミテッド (4)
【住所又は居所原語表記】RUHRBERG SCIENCE BUILDING, GRAHAM BELL ENTRANCE, FLOOR 5, 3 PEKERIS STREET, RECHOVOT 76702, ISRAEL
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/IL2011/000034
【国際公開番号】WO2011/083483
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508064333)ヒールオア・リミテッド (4)
【住所又は居所原語表記】RUHRBERG SCIENCE BUILDING, GRAHAM BELL ENTRANCE, FLOOR 5, 3 PEKERIS STREET, RECHOVOT 76702, ISRAEL
【Fターム(参考)】
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