説明

炎症性障害を治療するための組成物及び方法

【課題】IL−22の抑制物質及びこれを使用した薬学的組成物及び方法を提供する。
【解決手段】IL−22タンパク質を免疫学的に反応する抗体、前記抗体及び薬学的担体を含有する薬学的組成物、及びIL−22活性のレベルを抑制する有効量の物質を含む前記薬学的組成物の製造方法。
【効果】前記抑制物質は、炎症性障害の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、サイトカインポリペプチド及びこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、サイトカインポリペプチドに対する抗体及びこれらの抗体を含有する治療的組成物に関する。これらの組成物は、例えば関節炎などの炎症状態の治療に有用である。
【発明の背景】
【0002】
炎症性関節炎は、リンフォカインが媒介する関節の炎症を特徴とする種類の関節疾患である。炎症性関節炎は、自己免疫が原因となっている場合が多い。炎症性関節炎の例に、リウマチ様関節炎、乾癬性関節炎及び狼瘡に関連した関節炎が含まれてもよい。最もよく見られる形の炎症性関節炎は、リウマチ様関節炎である。リウマチ様関節炎は、関節の持続的な炎症を特徴とする。炎症は、軟骨の破壊及び骨のびらんに至るおそれがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、サイトカインIL−22の抑制物質が関節炎に関連する症状を抑制しうるという発見に部分的に基づく。より詳細には、IL−22に対して産生された抗体(ここでGIL−19及びAE289としても言及される)は、ネズミモデル系におけるコラーゲン誘導関節炎に関連する症状の進行を抑制することが判明している。
【0004】
一局面においては、本発明は、IL−22タンパク質と免疫学的に反応する抗体を特徴とする。前記抗体は、例えば中和抗体であってもよい。好適な複数の実施態様においては、前記抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の例には、ヒトモノクローナル抗体及びヒト化モノクローナル抗体が含まれる。
【0005】
複数の実施態様においては、前記抗体は、ヒトIL−22ポリペプチドのアミノ酸配列に対応する、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドと特異的に結合する。
【0006】
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するIL−22タンパク質と免疫学的に反応するIL−22抗体及び薬学的担体を含有する薬学的組成物も提供する。前記薬学的組成物の前記抗体は、中和抗体であることが望ましい。前記抗体は、ヒトモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体などのモノクローナル抗体であることが望ましい。
【0007】
本発明は、対象におけるIL−22活性に関連した病的状態を、IL−22活性のレベルを抑制する有効量の物質を投与することによって治療する方法も提供する。
【0008】
前記病的状態が、例えば敗血症及び自己免疫性障害であってもよい。好適な自己免疫性障害には、例えばリウマチ様関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、重症筋無力症、炎症性腸疾患、狼瘡、糖尿病及び乾癬が含まれる。これらの応答が、創傷治癒過程、コレステロール代謝、活性酸素による損傷、虚血、アテローム性動脈硬化症及びアレルギーに関連していてもよい。
【0009】
本発明は、関節炎に関連した症状を、治療を必要とする対象に治療上有効量のIL−22抗体を投与することによって治療する方法も提供する。幾つかの実施態様においては、前記関節炎はリウマチ様関節炎である。
【0010】
前記IL−22抗体は、治療的に投与されても、予防的に投与されても、又は治療的かつ予防的に投与されてもよい。
【0011】
本発明は、対象の抗原に対する免疫応答を促進させる方法であって、免疫抗原性を発揮する量の前記抗原と、前記抗原と同時的に又は連続的に組み合わせた、免疫抗原性を増強する量のIL−22とを、前記対象の免疫応答が促進されるように前記対象に投与する方法も提供する。
【0012】
また、IL−22の調節を必要としている対象の病的状態を、前記対象の前記病的状態が治療されるように、IL−22活性を調節する有効量の物質を投与することによって治療する方法も提供される。
【0013】
ここに開示する研究結果は、IL−22が急性期応答に関与するサイトカインであることを示している。本発明は、免疫応答を、臨床状況に応じて上方調節又は下方調節することによって変化させるために、IL−22及びIL−22調節物質(即ち、IL−22活性を刺激又は抑制する物質)を使用する方法を提供する。
【0014】
ここで使用される「IL−22」分子という用語には、ここに記載のIL−22活性を少なくとも1つ有する核酸分子、タンパク質、ポリペプチド及びこれらの断片又はバリアントが包含される。好適な一実施態様においては、前記IL−22はヒトIL−22分子(例えば配列番号1及び配列番号2で表されるヒトIL−22核酸及びタンパク質分子)である。
【0015】
一実施態様においては、本発明は、以下からなる群から選択される、単離されたポリヌクレオチドを含む組成物を提供する:
(a)配列番号1のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドと;
(b)配列番号1のヌクレオチド65乃至ヌクレオチド601のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドと;
(c)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22の全長タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドと;
(d)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22のcDNAインサートによってコードされる全長タンパク質をコードするポリヌクレオチドと;
(e)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22の成熟タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドと;
(f)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22のcDNAインサートによってコードされる成熟タンパク質をコードするポリヌクレオチドと;
(g)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドと;
(h)生物活性を有する配列番号2のアミノ酸配列の断片を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、前記断片に、配列番号2の8個の連続したアミノ酸が含まれる、ポリヌクレオチドと;
(i)上記(a)乃至(f)のポリヌクレオチドの対立遺伝子バリアントであるポリヌクレオチドと;
(j)上記(g)又は(h)のタンパク質と相同な種をコードするポリヌクレオチドと;
(k)(a)乃至(h)で特定されるポリヌクレオチドのうちのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドと;
(a)乃至(h)に特定されるポリヌクレオチドのうちのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号1の長さの少なくとも25%の長さを有するポリヌクレオチド。
【0016】
好適には、そのようなポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド65乃至ヌクレオチド601のヌクレオチド配列;ATCC登録番号207231で寄託されたクローンIL−22の全長タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列;又は、ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22の成熟タンパク質コーディング配列のヌクレオチド配列(例えば配列番号1のヌクレオチド1−1177)を有する。別の好適な複数の実施態様においては、前記ポリヌクレオチドは、ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22のcDNAインサートによってコードされる全長又は成熟タンパク質(例えば配列番号2のアミノ酸1乃至179)をコードする。更に好適な複数の実施態様においては、本発明は、生物活性を有する、配列番号2のアミノ酸配列の断片、好適には配列番号2の連続した8個の(より好適には20個、最も好適には30個)のアミノ酸配列を有する断片を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、或いは生物活性を有する、配列番号2のアミノ酸配列の断片を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、前記断片が配列番号2のアミノ酸84乃至アミノ酸93のアミノ酸配列を有するポリヌクレオチドを提供する。
【0017】
別の複数の実施態様は、配列番号1のcDNA配列に対応する遺伝子を提供する。
【0018】
本発明の更なる複数の実施態様は、以下からなる群から選択された方法に基づいて作製された、単離されたポリヌクレオチドを提供する:
(a)以下のステップを含む方法:
(i)以下からなる群から選択されたヌクレオチド配列に、6倍のSSC中で、65℃でハイブリダイズする1つ又は複数のポリヌクレオチドプローブを作製するステップ:
(aa)配列番号1の3’側末端のポリ(A)鎖を除く配列番号1と;
(ab)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22のcDNAインサートのヌクレオチド配列。
(ii)前記1つ又は複数のプローブを、4倍のSSC中、50℃と少なくとも同程度にストリンジェントな条件下でヒトゲノムDNAとハイブリダイズさせるステップ;及び、
(iii)前記1つ又は複数のプローブを用いて検出されたDNAポリヌクレオチドを単離するステップ。
(b)以下のステップを含む方法:
(i)以下からなる群から選択されたヌクレオチド配列に、6倍のSSC中で、65℃でハイブリダイズする1つ又は複数のポリヌクレオチドプライマを作製するステップ:
(ba)配列番号1の3’側末端のポリ(A)鎖を除く配列番号1と;
(bb)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22のcDNAインサートのヌクレオチド配列。
(ii)前記一つ又は複数のプライマを、4倍のSSC中、50℃と少なくとも同程度にストリンジェントな条件下でヒトゲノムDNAとハイブリダイズさせるステップ;
(iii)ヒトDNA配列を増幅するステップ;及び、
(iv)ステップ(b)(iii)のポリヌクレオチド産物を単離するステップ。
【0019】
好適には、上述の方法で単離されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1のcDNA配列に対応し、配列番号1の5’側末端に対応するヌクレオチド配列から配列番号1の3’側末端に対応するヌクレオチド配列まで連続的に延伸しているが、配列番号1の3’側末端のポリ(A)鎖は含まない。また、好適には、上述の方法で単離されたポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド65乃至ヌクレオチド601のcDNA配列に対応し、前記配列番号1のヌクレオチド65乃至ヌクレオチド601の配列の5’側末端に対応するヌクレオチド配列から、前記配列番号1のヌクレオチド65乃至ヌクレオチド601の3’側末端に対応するヌクレオチド配列まで連続的に延伸している。
【0020】
別の複数の実施態様においては、本発明は、タンパク質を含有する組成物を提供し、このタンパク質は、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する:
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号2のアミノ酸配列の断片であって、配列番号2の8個の連続するアミノ酸を含む断片;及び、
(c)ATCCに登録番号207231で寄託されたクローンIL−22のcDNAインサートによってコードされるアミノ酸配列。
このタンパク質は、他の哺乳類のタンパク質を実質的に含まない。好適には、そのようなタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。更なる好適な複数の実施態様においては、本発明は、生物活性を有する配列番号2のアミノ酸配列の断片を有するタンパク質を提供し、前記断片は、好適には配列番号2の8個(より好適には20個、最も好適には30個)の連続したアミノ酸を有する。
【0021】
いくつかの好適な実施態様においては、前記ポリヌクレオチドは、発現制御配列に作動的に連結している。本発明は、そのようなポリヌクレオチド組成物によって形質転換された、細菌の、酵母の、昆虫の及び哺乳類の細胞を含めた宿主細胞も提供する。本発明は、ここに開示されたポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子の発現を促進された、抑制された、又は調節された生物も提供する。
【0022】
タンパク質を作製するための、以下を含む方法も提供される:
(a)上記のポリヌクレオチド組成物によって形質転換された宿主細胞の培養物を、適切な培地中で培養することと;
(b)前記培地から前記タンパク質を精製すること。
本発明は、このような方法で作製されたタンパク質も提供する。
【0023】
本発明のタンパク質組成物が、薬学上許容可能な担体を更に含有してもよい。本発明は、そのようなタンパク質と特異的に反応する抗体を含有する組成物も提供する。
【0024】
ここで使用される「モジュレータ」「物質」又は「調節物質」には、任意のタンパク質、ポリペプチド、核酸、アゴニスト又はアンタゴニスト、或いはIL−22の活性を変化させることの可能なタンパク質、ポリペプチドもしくは核酸断片又はこれらのバリアントが含まれる。例えば、そのようにIL−22活性を変化させることに、IL−22活性の阻害、IL−22活性の下方調節又はIL−22活性の抑制が含まれてもよい。或いは、IL−22活性を変化させることに、IL−22活性の増強、IL−22活性の上方調節又はIL−22活性の促進が含まれてもよい。
【0025】
別の一実施態様においては、本発明に作用するモジュレータが提供される。好適な一実施態様においては、本発明のポリクローナル及び/又はモノクローナル抗体(例えばIL−22に特異的な中和抗体)も、免疫応答を下方調節するため(即ち、敗血症及びその他の慢性の炎症性障害を治療するため)に提供される。別の好適な一実施態様においては、本発明は、抗原のみによって起こされる免疫応答の種類を変化させるためのワクチンアジュバントとして使用される。
【0026】
別の一実施態様においては、対象の病的状態を、前記病的状態が治療されるようにIL−22の活性を調節することによって治療する方法が提供される。好適な一実施態様においては、前記病的状態は、感染性疾患である。より好適には、前記感染性疾患が、細菌、ウィルス、寄生生物又は真菌によって開始されてもよい。別の好適な一実施態様においては、前記病的状態が癌であり、より好適には腎細胞癌である。
【0027】
別の一実施態様においては、調節物質が、例えば腎臓の近位尿細管の塩基好性細胞増多症の誘発などの、腎臓における炎症性の病状を変化させるために使用される。
【0028】
別の一実施態様においては、本発明は、in vivo及びex vivo双方における組織の再構築に使用される。好適な一実施態様においては、IL−22又はIL−22のアゴニストが、腎臓の上皮組織の再構築に使用される。
【0029】
別の一実施態様においては、ある対象における疾患の研究方法であって、前記疾患を研究できるように、IL−22の活性を調節する物質をin vivoで投与することを含む方法が提供される。好適な一実施態様においては、前記研究対象が、遺伝子改変された哺乳類であり、好適には遺伝子改変マウスであり、最も好適にはトランスジェニックマウス又は遺伝子ノックアウトマウスである。
【0030】
哺乳類の対象に、本発明のタンパク質及び薬学上許容可能な担体を含有する組成物を治療上有効量投与することを含めた、医学的状態を予防、治療又は緩和するための方法も提供される。
【0031】
特別に定義されない限り、ここで使用する技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野において通常の技術を有する者に共通に理解されている意味と同じ意味を持つ。本発明の実施又は試験に当たっては、ここに記載の方法及び材料と類似の又は等価な方法及び材料を使用してもよいが、好適な方法及び材料を以下に記載する。ここに記載の刊行物、特許出願、登録特許及びその他の参考文献はすべて、引用をもって援用されたものである。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。加えて、これらの材料、方法及び例は、単に例示的なものであり、本発明を限定するものとしては意図されていない。
【0032】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明らかとなろう。
【発明の詳細な説明】
【0033】
本発明は、IL−22の抑制物質及びこれらの抗体を含有する治療的組成物を提供する。これらの抑制物質は、例えばリウマチ様関節炎などの自己免疫性疾患を含めた炎症状態の治療に有用である。
【0034】
抑制物質を、IL−22ポリペプチド配列及びこれをコードする核酸を用いて作製してもよい。IL−22は、活性化されたヒト及びマウスのCD4陽性Th1細胞からは産生されるが、CD4陽性Th2細胞からは産生されない。このサイトカインは、その発現がLPSによっては刺激されるが、IFN−γによっては刺激されない、多機能性の分子である。IL−22は、IL−10とおよそ20%相同であり、活性化されたヒト及びマウスのCD4陽性Th1細胞からは産生されるが、CD4陽性Th2細胞からは産生されない。更に、LPSは、ネズミのPECの粘着細胞内区画からのIL−22の産生を強力に刺激するが、IFN−γは刺激しない。このことは、IL−22が自然免疫の媒介に関与することを示している。
【0035】
ネズミIL−22又は組換え精製されたネズミIL−22のいずれかをコードするアデノウィルスをC57b/6マウスに皮下注射した結果、赤血球細胞数の減少、血小板数の増加、血清アルブミンの減少、血清アミロイドA及びフィブリノーゲンレベルの増加、並びに体重の減少を含めた数多くの全身的な影響が誘発された。これらは全て、急性期反応を示唆するものである。更に、IL−22の投与によって、急性期反応とは別に、近位尿細管における塩基好性細胞増多症が誘発されるが、これは、細胞増殖が誘発されたことを示唆するものである。IL−22のこれらの生物学的活性を明らかにすることで、免疫応答に関連した様々な疾患及び障害の治療への新たな対処方法及びこれに有用な療法が開発されてきた。更に、敗血症、慢性炎症及び自己免疫を含めた過程におけるIL−22の役割が分析されており、これらの状態を治療するための新たな機序をここに開示する。
【0036】
I.単離されたIL−22タンパク質及びポリヌクレオチド
IL−22ヌクレオチド及びアミノ酸の配列を、以下に提供する。各クローンのヌクレオチド配列を、寄託されたクローンを公知の方法で配列決定することで調べてもよい。次に、これらのヌクレオチド配列から、推定アミノ酸配列(全長及び成熟双方の形の)を調べてもよい。特定のクローンによってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を、前記クローンを適切な宿主細胞中で発現させ、前記タンパク質を回収してその配列を調べることで、調べてもよい。
【0037】
ここで使用される「分泌」タンパク質は、適切な宿主細胞中で発現された場合に、膜を透過して又は通って輸送されるタンパク質であり、この輸送には、そのアミノ酸配列中のシグナル配列の結果起こる輸送が含まれる。「分泌」タンパク質には、これらが発現される前記細胞からその全体が分泌されたタンパク質(例えば可溶性タンパク質など)又はその一部が分泌されたタンパク質(例えばレセプタなど)が含まれるが、これらに限定されることなはい。「分泌」タンパク質には、小胞体の膜を透過して輸送されるタンパク質が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、当初はクローン「hTIF/AE289」と呼ばれていたが、後に改名され、ここでは「IL−22」としても言及される。クローンIL−22を、以下の方法で単離した。ネズミのESTを、ConA及び骨髄由来の樹枝状細胞の双方によって活性化された脾細胞から作製されたネズミのcDNAライブラリから同定した。前記ESTは、分泌タンパク質をコードするcDNAを選別する方法を用いて同定された(米国特許第5,536,637号を参照のこと)。前記ネズミのEST配列を用いて、同じcDNAライブラリから全長ネズミクローンを単離した(配列番号3、以下に記載)。前記ネズミクローン配列の分析の結果、インターロイキン−10(IL−10)との高い相同性が判明した。
【0039】
前記ネズミクローンのヒト相同配列を単離するために、前記ネズミ配列の中でIL−10との相同性を示した前記領域に基づき、PCRプライマを作製した。このプライマを、PHA/PMAによって刺激されたヒトPBMCに由来するcDNAライブラリにおける増幅に使用して、相当なサイズのPCR産物を作製した。このPCR産物の配列を分析した結果、これが前記ネズミcDNAの相同配列であることが確認された。前記部分ヒトクローン配列からオリゴヌクレオチドを作製し、これを用いて、前記PBMCライブラリから全長ヒトクローンを単離した。
【0040】
前記開示されたヒトIL−22ヌクレオチド配列は、全長クローンであり、分泌タンパク質の全コーディング配列を有する。この配列を分析すると、IL−10との相同性が20%であることが分かる。
【0041】
前記開示されたヒトIL−22ポリヌクレオチド配列を以下に示す(配列番号1)。これにはポリ(A)鎖が含まれる。前記開示されたヌクレオチド配列には、読み枠が含まれる。また、このヌクレオチド配列に対応する全長IL−22タンパク質のアミノ酸配列を、配列番号2で表す。成熟IL−22のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸34乃至179に対応する。
【0042】
【化1】

【0043】
前記コードされたポリペプチドのポリペプチド配列を、以下に示す。
【0044】
【化2】

【0045】
クローン「IL−22」は、1999年4月28日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(20110−2209、米国バージニア州マナッサス、ユニバーシティ・ブルヴァール10801)に、ブダペスト条約に基づく原寄託として寄託され、登録番号ATCC207231を付与された。この寄託物を公に利用するに当たっての全ての制約は、連邦規則集第37条セクション1.808(b)に指定の要件を除いては、本出願の特許化の際に取り消し不可能に除去され、前記寄託の用語は、連邦規則集第37条セクション1.806に適合する。
【0046】
ネズミIL−22をコードするヌクレオチド配列及び前記コードされたポリペプチドの配列を、以下に示す:
【0047】
【化3】

【0048】
上述のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を、以下に示す:
【0049】
【化4】

【0050】
IL−22タンパク質の断片(例えば、生物学的活性を発揮することの可能な断片)も、本発明の組成物及び方法に包含される。前記タンパク質の断片は、線状であってもよいし、又は、例えば双方共に引用をもってここに援用された、H.U.Saragovi他、Bio/Technology 10,773−778(1992)及びR.S.McDowell他、J.Amer.Chem.Soc.114,9245−9253(1992)に記載された方法などの公知の方法によって環状化されていてもよい。そのような断片を、タンパク質結合部位の価を増加させることなどを含めた様々な目的のために、例えば免疫グロブリンなどの担体分子と融合させてもよい。例えば、前記タンパク質の断片を、「リンカ」配列を用いて、免疫グロブリンのFc部位に融合させてもよい。前記タンパク質が二価である場合には、そのような融合の相手がIgG分子のFc部位であってもよい。別の免疫グロブリンのアイソタイプを用いて、そのような融合を起こさせてもよい。例えば、タンパク質−IgM融合によって、10価の形の本発明のタンパク質が生成される。
【0051】
本発明は、全長及び成熟した双方の形の前記開示されたタンパク質も提供する。全長形のそのようなタンパク質を、各開示されたクローンのヌクレオチド配列を翻訳することによって、配列表に示す。成熟した形のそのようなタンパク質を、前記開示された全長ポリヌクレオチド(好適にはATCCに寄託されたもの)を適切な哺乳類細胞又はその他の宿主細胞中で発現させることによって得てもよい。前記成熟した形のタンパク質の配列を、前記全長形のアミノ酸配列から調べてもよい。成熟IL−22ポリペプチド配列の一例は、配列番号2のアミノ酸1乃至179である。
【0052】
本発明は、ここに開示するポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子も提供する。「対応する遺伝子」は、そこからcDNAポリヌクレオチド配列が得られるmRNAを作製すべく転写されるゲノム領域であり、そのような遺伝子の発現の制御に必要な前記ゲノムの連続した複数の領域が含まれていてもよい。従って、対応する遺伝子に、コーディング配列、5’側及び3’側末端の非翻訳領域、選択的にスプライスされたエキソン、イントロン、プロモータ、エンハンサ及びサイレンサ又はサプレッサ要素が含まれるが、これらに限定されることはない。前記対応する遺伝子を、ここに開示する配列情報を用いて、公知の方法で単離してもよい。そのような方法には、適切なゲノムライブラリ又はその他のゲノム材料のソース中の遺伝子を同定及び/又は増幅するために、前記開示された配列情報からプローブ又はプライマを作製することが含まれる。「単離された遺伝子」は、前記遺伝子の単離元の生物のゲノム中に、隣接するコーディング配列が存在する場合に、そのようなコーディング配列から切り離された遺伝子である。
【0053】
ここに記載のポリヌクレオチド配列に対応する染色体位置を、例えば本発明の適切に標識されたポリヌクレオチドをin situで染色体とハイブリダイズさせることによって特定してもよい。ある公開されたポリヌクレオチドに対応する染色体位置を、特定の染色体位置に既にマッピングされている、例えば発現配列タグ(EST)などの高度に類似したヌクレオチド配列を公共のデータベースで特定することで調べてもよい。ここに開示するポリヌクレオチド配列のうちの少なくとも幾つかについては、本発明のポリヌクレオチドと少なくとも何らかの類似性を有する公共のデータベースの配列が、データベースの登録番号によってリストされている。従って、これらの公共のデータベース配列のGenBank登録番号を用いた検索を、米国バイオテクノロジー情報センター提供の、アドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/のインターネットサイトで行って、重なり合っている配列の「UniGeneクラスタ」を特定してもよい。こうして特定された「UniGeneクラスタ」の多くは、特定の染色体位置に既にマッピングされているであろう。
【0054】
ここに開示されたポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子の発現が促進された、抑制された又は調節された生物も提供される。遺伝子発現の望ましい変化を、前記遺伝子から転写されたmRNAに結合及び/又はこれを開裂するアンチセンスポリヌクレオチド又はリボザイムを用いて生じさせてもよい(Albert及びMorris,1994,Trends Pharmacol.Sci.15(7):250−254;Lavarosky他,1997,Biochem.Mol.Med.62(1):11−22;及びHampel,1998,Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.58:1−39;これらは全て、引用をもってここに援用されている)。ここに記載のポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子のコピーを複数有するトランスジェニック動物であって、形質転換される細胞及びこれらの後代中で安定に維持される遺伝子コンストラクトによってこれらの細胞を形質転換させることによって作製されることが望ましいトランスジェニック動物が提供される。遺伝子発現レベルを増加又は減少させる、或いは遺伝子発現の時間的又は空間的パターンを変化させる、変化した遺伝子制御領域を有するトランスジェニック動物も提供される(引用をもってここに援用された欧州登録特許0 649 464 B1を参照のこと)。加えて、ここに記載のポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子が、前記対応する遺伝子内に外来性の配列を挿入することによって、又は前記対応する遺伝子の全て又は一部を削除することによって、部分的に又は完全に不活性化された生物も提供される。遺伝子の部分的な又は完全な不活性化を、転移因子の挿入及び好適にはその後の不正確な切り出し(Plasterk,1992,Bioessays 14(9): 629−633;Zwaal他,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(16):7431−7435;Clark他,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(2):719−722;これらは全て、引用をもってここに援用されたものである)によって、又は好適には遺伝子のポジティブ/ネガティブセレクション法によって検出される相同組換え(Mansour他,1988,Nature 336:348−352;米国特許第5,464,764号;第5,487,992号;第5,627,059号;第5,631,153号;第5,614,396号;第5,616,491号;及び第5,679,523号;これらは全て、引用をもってここに援用されたものである)によって、行ってもよい。遺伝子発現が変化したこれらの生物は、好適には真核生物であり、より好適には哺乳類である。これらのような生物は、前記対応する遺伝子が関与する障害の研究のための非ヒトモデルの開発及び前記対応する遺伝子のタンパク質産物と相互作用する分子を特定するためのアッセイシステムの開発に有用である。
【0055】
本発明のタンパク質が膜結合型である(例えばレセプタである)場合には、本発明は、可溶型のそのようなタンパク質も提供する。そのような型においては、前記タンパク質が発現されている細胞から前記タンパク質が完全に分泌されるように、前記タンパク質の細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインの一部又は全てが削除される。本発明のタンパク質の細胞内ドメイン及び膜貫通ドメインを、これらのようなドメインを配列情報から調べるための公知の方法に基づいて特定してもよい。例えば、TopPredIIIコンピュータプログラムを用いて、あるアミノ酸配列における膜貫通ドメインの位置を推定してもよい。これらの膜貫通ドメインは、その中央の位置によって表され、この中央の残基の両端に、少なくとも10個の膜貫通アミノ酸を有する。
【0056】
本発明のタンパク質及びタンパク質断片には、開示された一タンパク質の長さと少なくとも25%(より好適には少なくとも50%、更に好適には少なくとも75%)の長さであり、前記開示されたタンパク質と配列が少なくとも60%(より好適には少なくとも75%;最も好適には少なくとも90%又は95%)同一なアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれる。この配列同一性を、オーバーラップ及び同一性を最大にすると共に配列ギャップを最小にするようにアライメントした時のこれらのタンパク質のアミノ酸配列を比較することによって、調べられる。本発明には、好適には8個又はそれ以上(より好適には20個又はそれ以上、最も好適には30個又はそれ以上)の連続するアミノ酸を有するセグメントであって、開示された任意のタンパク質の任意のそのようなセグメントとの配列同一性が少なくとも75%(より好適には少なくとも85%;最も好適には少なくとも95%)であるセグメントを有するタンパク質及びタンパク質断片が含まれる。
【0057】
別の一実施態様においては、本発明のタンパク質、タンパク質断片及び組換えタンパク質に、少なくとも1つの「IL−22レセプタ結合モチーフ」の存在に基づいて同定することの可能なタンパク質、タンパク質断片及び組換えタンパク質が含まれる。ここで使用される「IL−22レセプタ結合モチーフ」という用語には、IL−22がその必要なレセプタに結合するために重要なアミノ酸配列又は残基が含まれる。好適な一実施態様においては、IL−22タンパク質に、配列番号2のアミノ酸およそ50乃至60を有するIL−22レセプタ結合モチーフが含まれる。別の一実施態様においては、IL−22タンパク質に、配列番号2のアミノ酸およそ63乃至81を有するIL−22レセプタ結合モチーフが含まれる。更に別の一実施態様においては、IL−22タンパク質に、配列番号2のアミノ酸およそ168乃至177を有するIL−22レセプタ結合モチーフが含まれる。好適な一実施態様においては、IL−22タンパク質に、配列番号2のアミノ酸50乃至60、63乃至81及び/又はおよそ168乃至177の少なくともいずれか1つを有するIL−22レセプタ結合モチーフが含まれる。
【0058】
更に別の一実施態様においては、IL−22レセプタ結合モチーフが、配列番号2のアミノ酸50乃至60、配列番号2のアミノ酸63乃至81及び配列番号2のアミノ酸168乃至177からなる群から選択されたアミノ酸配列との同一性が少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上であるアミノ酸配列を有する。
【0059】
別の一実施態様においては、本発明のタンパク質、タンパク質断片及び組換えタンパク質に、N−結合グリコシレーションのための少なくとも1個、2個、3個、4個又はそれ以上の部位の存在に基づいて同定可能なタンパク質、タンパク質断片及び組換えタンパク質が含まれる。
【0060】
特に、配列の同一性を、公共のドメインNCBI−BLASTバージョン1.4に基づくWU−BLASTバージョン1.4上に構築されたWU−BLAST(ワシントン大学BLAST)バージョン2.0ソフトウェアを用いて調べてもよい(Altschul及びGish,1996,Local alignment statistics,Doolittle編,Methods in Enzymology 266:460−480;Altschul他,1990,Basic local alignment search tool,Journal of Molecular Biology 215:403−410;Gish及びStates,1993,Identification of protein coding regions by database similarity search,Nature Genetics 3:266−272;Karlin及びAltschul,1993,Applications and statistics for multiple high−scoring segments in molecular sequences,Proc. Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877;これらは全て、引用をもってここに援用されたものである)。いくつかのUNIX(登録商標)プラットフォーム用のWU−BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、ftp://blast.wustl.edu/blast/executablesからダウンロード可能である。いくつかのサポートプログラムに加えて、複数の検索プログラム(BLASTP、BLASTN、BLASTX、TBLASTN及びTBLASTX)の完全なパッケージソフトも、このサイトで提供されている。WU−BLAST2.0は著作権で保護されており、いかなる形式又は方法においても、明文化された著者の承諾を得ずに販売又は再販することはできない;但し、公開されている実行可能プログラムについては、商業的、非営利的又は学術的用途での自由な使用が認められる。前記パッケージソフト中の全ての検索プログラム、即ち、BLASTP、BLASTN、BLASTX、TBLASTN及びTBLASTXにおいて、ギャップ付きアライメントルーチンが前記データベース検索自体に組み込まれているので、高精度、高選択性であると同時に、出力がより容易に解釈される。これらのプログラム全てにおいて、所望の場合には、ギャップ無しとしてもよい。長さ1のギャップのデフォルトペナルティ(Q)は、タンパク質及びBLASTPではQ=9であり、BLASTNではQ=10であるが、0、1乃至8、9、10、11、12乃至20、21乃至50、51乃至100などを含めた任意の整数値に変更されてもよい。ギャップを伸長させるためのデフォルト残基当たりペナルティ(R)は、タンパク質及びBLASTPではR=2であり、BLASTNではQ=10であるが、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12乃至20、21乃至50、51乃至100などを含めた任意の整数値に変更されてもよい。Q及びRの値の任意の組合せを、配列アライメントに使用して、オーバーラップ及び相同性を最大にすると同時に、配列ギャップを最小にしてもよい。デフォルトアミノ酸比較マトリックスはBLOSUM62であるが、PAMなどのその他のアミノ酸比較マトリックスを利用してもよい。
【0061】
開示されたポリヌクレオチド及びタンパク質の相同な種も、本発明によって提供される。ここで使用される「相同な種」とは、ある任意のタンパク質又はポリヌクレオチドとは由来する種が異なるが、前記任意のタンパク質又はポリペプチドと配列が高度に類似しているタンパク質又はポリヌクレオチドである。好適には、ポリヌクレオチドの相同な種は、前記任意のポリヌクレオチドとの配列同一性が少なくとも60%(より好適には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%)であり、タンパク質の相同な種は、前記任意のタンパク質との配列同一性が少なくとも30%(より好適には、少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)であるが、ここでの配列同一性は、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列又は前記タンパク質のアミノ酸配列を、オーバーラップ及び同一性を最大にする一方で配列ギャップを最小にするようにアライメントさせて比較することによって、決定される。相同な種を、ここに提供の配列から適切なプローブ又はプライマを作製し、前記所望の種から適切な核酸源をスクリーニングすることで単離及び同定してもよい。好適には、相同な種は、哺乳類種から単離された種である。より好適には、相同な種は、例えば、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、クロテナガザル、アカゲザル、ギニアヒヒ、マントヒヒ、サバンナモンキー、ノドジロオマキザル、ヨザル、ワタボウシパンシェ、グレイネズミレムール、ハツカネズミ、ドブネズミ、チャイニーズハムスター、イエネコ、イエイヌ、カイウサギ、ウシ、ヒツジ、イノシシ及びウマなどの、遺伝子マップが既に作製されており、1つの種におけるゲノム構造と、別の種における関連する遺伝子のゲノム構造との間にシンテニックな関係が存在することが判明している哺乳類種から単離された種である(O’Brien及びSeuanez,1988,Ann.Rev.Genet.22:323−351;O’Brien他,1993,Nature Genetics 3:103−112;Johansson他,1995,Genomics 25:682−690;Lyons他,1997,Nature Genetics 15:47−56;O’Brien他,1997,Trends in Genetics 13(10):393−399;Carver及びStubbs,1997,Genome Research 7:1123−1137;これらは全て、引用をもってここに援用されたものである)。
【0062】
本発明には、開示されたポリヌクレオチド又はタンパク質の対立遺伝子バリアント、即ち、前記開示されたポリヌクレオチドによってコードされる配列と同一な、又は高度に類似した配列を有するタンパク質をもコードする、前記単離されたポリヌクレオチドの天然に存在する別の形も包含される。好適には、対立遺伝子バリアントは、前記ポリヌクレオチドとの配列同一性が少なくとも60%(より好適には、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%)であるが、ここでの配列同一性は、これらのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を、オーバーラップ及び相同性を最大にする一方で配列ギャップを最小にするようにアライメントさせて比較することによって、決定される。対立遺伝子バリアントを、ここに提供の配列から適切なプローブ又はプライマを作製し、前記適切な種から適切な核酸源をスクリーニングすることで単離及び同定してもよい。
【0063】
本発明には、ここに開示されたポリヌクレオチドの配列の相補的配列を有するポリヌクレオチドも含まれる。
【0064】
本発明には、軽度にストリンジェントな条件下で、より好適にはストリンジェントな条件下で、最も好適には高度にストリンジェントな条件下でここに記載のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドも含まれる。ストリンジェンシー条件の例を、以下の表に示す:高度にストリンジェントな条件は、例えば条件A−Fと少なくとも同程度にストリンジェントな条件である;ストリンジェントな条件は、例えば条件G−Lと少なくとも同程度にストリンジェントな条件である;軽度にストリンジェントな条件は、例えば条件M−Rと少なくとも同程度にストリンジェントな条件である。
【0065】
【表1】

‡:ハイブリッド長さは、ハイブリダイゼーション対象のポリヌクレオチドのハイブリダイズ領域の推定される長さである。あるポリヌクレオチドを、未知の配列の標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせる場合は、ハイブリッド長さは、前記ハイブリダイゼーション対象のポリヌクレオチドの長さになると推定される。公知の配列のポリヌクレオチド同士をハイブリダイズさせる場合は、これらのポリヌクレオチドの配列のアライメントを行い、配列の相補性が最大となる1つの又は複数の領域を特定することによって、ハイブリッド長さを調べてもよい。
†:ハイブリダイゼーション及び洗浄緩衝液中のSSPE(1倍のSSPEは、0.15MのNaCl、10mMのNaH2PO4及び1.25mMのEDTA、pH 7.4である)を、 SSC(1倍のSSCは、0.15MのNaCl及びl5mMのクエン酸ナトリウムである)と置き換えてもよい;洗浄を、ハイブリダイゼーション完了後15分間にわたって実施する。
*:長さ50塩基対未満と推測されるハイブリッドについては、ハイブリダイゼーション温度は、前記ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5−10℃低い温度であるべきである。ここでのTmは、以下の式から求められる。長さ18塩基対未満のハイブリッドでは、Tm(°C) = 2(A + T塩基の数) + 4(G + C塩基の数)。長さ18乃至49塩基対のハイブリッドでは、Tm(°C) = 81.5 + 16.6(log10[Na+]) + 0. 41(%G+C) - (600/N)である。このNは、前記ハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]は、前記ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1倍のSSCの[Na+] = 0.165 M)。
【0066】
ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件の更なる例が、引用をもってここに援用された、Sambrook,J.,E.F.Fritsch及びT.Maniatis,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス,コールド・スプリング・ハーバー,ニューヨーク,第9及び11章,及びCurrent Protocols in Molecular Biology,1995,F.M.Ausubel他編,ジョン・ワイリー&サンズ社,セクション2.10及び6.3−6.4に記載されている。
【0067】
好適には、そのようなハイブリダイゼーション対象の各ポリヌクレオチドは、そのハイブリダイゼーション先である本発明のポリヌクレオチドの長さの少なくとも25%(より好適には少なくとも50%、最も好適には少なくとも75%)の長さを有し、そのハイブリダイゼーション先である本発明のポリヌクレオチドと少なくとも60%(より好適には少なくとも75%;最も好適には少なくとも90%又は95%)同一である。ここでの配列同一性は、これらのハイブリダイゼーション対象のポリヌクレオチドの配列を、オーバーラップ及び相同性を最大にする一方で配列ギャップを最小にするようにアライメントさせて比較することによって、決定される。
【0068】
II.ベクター及び宿主細胞
前記タンパク質を組換え作製するために、本発明の単離されたポリヌクレオチドを、Kaufman他,Nucleic Acids Res.19,4485−4490(1991)に開示されているpMT2又はpED発現ベクターなどの発現制御配列に作動的に連結させてもよい。多くの好適な発現制御配列が当業で知られている。組換えタンパク質を発現させる一般的な方法も知られており、例えばR.Kaufman,Methods in Enzymology 185,537−566(1990)に示されている。ここに定義される「作動的に連結された」とは、ライゲーションされたポリヌクレオチド/発現制御配列によって形質転換(トランスフェクト)された宿主細胞によって前記タンパク質が発現されるような方法で、本発明の単離されたポリヌクレオチド及び発現制御配列があるベクター又は細胞内に存在することを意味する。
【0069】
多くの種類の細胞が、前記タンパク質の発現のための宿主細胞として作用可能である。哺乳類の宿主細胞には、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、その他の形質転換された霊長類細胞系統、正常二倍体細胞、一次組織のin vitro培養によって得られた細胞系統、一次外殖片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、HaK又はJurkat細胞が含まれる。
【0070】
或いは、酵母などの下等真核生物又は細菌などの原核生物中で前記タンパク質を作製することも可能である。適切であろう酵母菌株の例には、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces菌株、カンジダ属、又は異種タンパク質を発現することの可能な任意の酵母菌株が含まれる。適切であろう細菌株の例には、大腸菌、枯草菌、ネズミチフス菌又は異種タンパク質を発現することの可能な任意の細菌株が含まれる。前記タンパク質を酵母又は細菌中で作製する場合には、前記機能タンパク質を得るために、その中で作製される前記タンパク質を、例えば適切な部位のリン酸化又はグリコシレーションによって修飾することが必要であってもよい。そのような共有結合を、公知の化学的な又は酵素を用いた方法で形成してもよい。前記タンパク質を、ポリエチレングリコールによる修飾が含まれるがこれに限定されることはない共有結合修飾によって修飾してもよい。
【0071】
本発明の前記単離されたポリヌクレオチドを1つ又は複数の昆虫発現ベクター中で適切な制御配列に作動的に連結させ、昆虫発現システムを使用することによって、前記タンパク質を作製してもよい。バキュロウィルス/昆虫細胞発現システムは、例えば米国カリフォルニア州サンディエゴのインビトロゲン社から、キットの形で市販されており(MaxBac(登録商標)キット)、そのような方法は公知であり、引用をもってここに援用された、Summers及びSmith,Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載されている。ここで使用される、本発明のポリヌクレオチドを発現することの可能な昆虫細胞は、「形質転換」されている。
【0072】
形質転換された宿主細胞を、前記組換えタンパク質の発現に適した培養条件下で培養することによって、本発明のタンパク質を作製することができる。この結果得られた発現タンパク質を、例えばゲル濾過及びイオン交換クロマトグラフィなどの公知の精製プロセスを用いて、次にそのような培養物から(即ち、培地又は細胞細胞抽出液から)精製してもよい。前記タンパク質の精製に、前記タンパク質に結合する剤を充填したアフィニティカラム法;そのようなアフィニティ樹脂として、コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−toyopearl(登録商標)又はCibacrom blue 3GAセファロース(登録商標)を用いた1つ又は複数のカラム法;そのような樹脂としてフェニルエーテル、ブチルエーテル又はプロピルエーテルを用いた疎水性相互作用クロマトグラフ法を含めた1つ又は複数の方法;或いはイムノアフィニティクロマトグラフィが含まれてもよい。
【0073】
又は、本発明のタンパク質を、精製を容易にする形で発現させてもよい。例えば、前記タンパク質を、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)又はチオレドキシン(TRX)などの融合タンパク質として発現させてもよい。そのような融合タンパク質の発現及び精製のためのキットは、ニューイングランド・バイオラブズ社(マサチューセッツ州ベヴァリー)、ファーマシア社(ニュージャージー州ピスカタウェイ)及びインヴィトロゲン社(カリフォルニア州カールズバッド)からそれぞれ市販されている。前記タンパク質を、エピトープを用いてタグ付けした後に、そのようなエピトープに対する特異的な抗体を用いて精製してもよい。そのようなエピトープ(「Flag」)の1つは、イーストマン・コダック社(コネチカット州ニューヘーヴン)から市販されている。
【0074】
加えて、例えばペンダントメチル又はその他の脂肪族基を持つシリカゲルなどの疎水性のRP−HPLC媒体を用いた1つ又は複数の逆相高性能液体クロマトグラフ法(RP−HPLC)を用いて、前記タンパク質を更に精製してもよい。上述の精製方法の幾つか又は全てを、様々な組合せで用いて、実質的に同種の単離された組換えタンパク質を作製してもよい。このように精製された前記タンパク質は、他の哺乳類のタンパク質を実質的に含有せず、本発明に基づいて「単離されたタンパク質」として定義される。
【0075】
本発明のタンパク質を、例えばトランスジェニックウシ、ヤギ、ブタ又はヒツジの乳成分などの、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する体細胞又は生殖細胞を特徴とするトランスジェニック動物の産物として発現させてもよい。
【0076】
前記タンパク質を、公知の従来の化学合成によって作製してもよい。合成手段によって本発明のタンパク質を作製する方法は、当業者に公知である。そのような合成によって作製された複数のタンパク質配列が、そのタンパク質一次、二次又は三次構造及び/又はコンホメーションの特徴が共通することにより、タンパク質活性を含めた生物学的特性を共通に有してもよい。従って、これらを、治療的化合物のスクリーニング及び抗体開発のための免疫プロセスにおいて、天然の精製されたタンパク質に代わる生物学的に活性な又は免疫学的な代替物として使用することができる。
【0077】
前記タンパク質を、当業で公知の方法を用いて、組換えウィルスベクター中で作製してもよい。例えば、Ad5 E1aを削除された(dl327)組換えアデノウィルスなどの組換えアデノウィルスを、ヒト腎臓胚細胞系統における相同組換えによって作製することができる。次に、IL−22 cDNAを、Adori1−2などのアデノウィルスベクター中にライゲーションすることができる。このクローニングされたウィルスベクターを、次に皮下又は静脈内注射によって対象に投与することにより、本発明をin vivoで作製することができる。
【0078】
ここで提供されるタンパク質には、精製されたタンパク質の配列と類似したアミノ酸配列を特徴とするが、修飾が天然に又は意図的に加えられたタンパク質も含まれる。例えば、当業者が公知の方法を用いて前記ペプチド又はDNA配列を修飾してもよい。前記タンパク質配列における目的の修飾に、前記コーディング配列中の選択されたアミノ酸残基の変更、置換、交換、挿入又は削除が含まれてもよい。例えば、システイン残基のうちの1つ又は複数を削除又は別のアミノ酸と置換することによって、前記分子のコンホメーションを変化させてもよい。そのような変更、置換、交換、挿入又は削除のための技術は当業者に公知である(例えば米国特許No.4,518,584を参照のこと)。そのような変更、置換、交換、挿入又は削除の後も、前記タンパク質の所望の活性が維持されることが望ましい。
【0079】
タンパク質活性を全体的に又は部分的に維持すると予想され、このためスクリーニング又はその他の免疫学的方法に有用であろう前記タンパク質配列のその他の断片及び誘導体を、当業者が本願中の開示に基づいて容易に作製可能であろう。そのような修飾は、本発明に包含されるものと考えられる。
【0080】
III.使用方法及び生物学的活性
本発明のポリヌクレオチド及びタンパク質は、以下に記載の生物学的活性(ここに引用するアッセイに関連するものを含む)のうちの1つ又は複数の発揮可能であり、従って、様々な研究、薬学的及び治療的方法において有用である。(例えば、遺伝子治療又はDNAの導入に適したベクターなどにおける)本発明のタンパク質に関する方法、用途又は活性を、そのようなタンパク質の投与又は使用或いはそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドの投与又は使用によって提供してもよい。
【0081】
IL−22は、その構造上の及び機能上の特性によって、サイトカインファミリーに分類される。サイトカインは、健康な状態及び疾患状態の双方において重要な役割を果たし、数多くの臨床状態に関与する。以下の実施例で詳細に述べられるように、IL−22は炎症性サイトカイン(IL−1及びTNFαなど)によって引き起こされる臨床状態に伴う変化を誘発し、またIL−22の抑制物質は、リウマチ様関節炎の症状を緩和する。従って、IL−22及び/又はIL−22のレベルを上昇させるか或いはIL−22の作用を模倣する物質(及び本発明のその他の分子)は、幾つかの臨床状態においてはアゴニストとして有用であり、一方、別の臨床状態、特に炎症状態の調節が望ましい臨床状態においては、この分子のアンタゴニストが有用である。前記アゴニスト又はアンタゴニストのいずれが望ましいかは、例えば関与する細胞種、刺激物質の性質及び細胞レベルの微環境などの、病理学上の特定の局面によって異なる。
【0082】
好適な一実施態様においては、IL−22活性に、炎症状態を示す活性を少なくとも1つ誘発することが含まれる。更なる活性に、以下の活性の少なくとも1つ又は複数が含まれてもよい:(1)シグナル伝達経路(例えばIL−22依存性経路)を、例えばアンタゴナイズするなど、調節すること;(2)サイトカインの産生及び/又は分泌(例えば炎症性サイトカインの産生及び/又は分泌)を調節すること;(3)リンフォカインの産生及び/又は分泌を調節すること;(4)接着分子の産生及び/又は細胞接着を調節すること;(5)核転写因子の発現又は活性を調節すること;(7)IL−1の分泌を調節すること;(8)他のサイトカインのレセプタと競合すること;(9)IL−22レセプタに結合する際に、別のIL−22ファミリーメンバーと競合すること;(10)IL−22又は別のサイトカインの内在性レセプタ或いはリガンド結合レセプタの核転座を調節すること;(11)(例えば食道上皮細胞などの上皮細胞又はケラチン合成細胞などの皮膚細胞などの)例えばサイトカインによって刺激された又はIL−22タンパク質によって刺激された増殖、発育又は分化などの、細胞増殖、発育又は分化を調節すること;(12)(例えば破骨前駆細胞、破骨細胞及び/又は骨芽細胞などの)骨形成原細胞の細胞増殖、発育又は分化を調節すること;(13)(例えば骨吸収の抑制など)骨形成、骨代謝及び骨ホメオスタシスを調節すること;(15)細胞の免疫応答を調節すること;(16)(例えば肝細胞、発熱及び/又はPGE合成などのプロスタグランジン合成による急性期タンパクの合成の抑制など)サイトカインが媒介する炎症性作用を調節すること;及び(17)創傷治癒を促進及び/強化すること。
【0083】
IL−22抑制物質の例には、IL−22ポリペプチドの可溶性断片が含まれる。前記可溶性断片が、例えばIgG融合タンパク質などの融合タンパク質として提供されてもよい。抑制物質に、IL−22ポリペプチドに対する抗体及びIL−22ポリペプチドに対する小分子抑制物質が更に含まれてもよい。これらの小分子が、IL−22ポリペプチドの発現及び/又は活性を抑制することによって作用してもよい。
A.診断アッセイ
【0084】
生物学的試料中のIL−22タンパク質又は核酸の有無の検出方法の一例には、試験対象から生物学的試料を採取して、前記生物学的試料を、IL−22タンパク質又は(例えばmRNA、ゲノムDNAなどの)IL−22タンパク質をコードする核酸を検出することの可能な化合物又は物質と、前記生物学的試料中のIL−22タンパク質又は核酸の存在が検出されるように接触させることが含まれる。IL−22 mRNA又はゲノムDNAを検出するための好適な物質は、IL−22 mRNA又はゲノムDNAとハイブリダイズすることの可能な、標識された核酸プローブである。前記核酸プローブが、例えば配列番号1の核酸などの全長IL−22核酸或いは少なくとも15、30、50、100、250又は300ヌクレオチド長であり、ストリンジェントな条件下でIL−22 mRNA又はゲノムDNAと十分に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドなどの、IL−22核酸の断片又は一部分であってもよい。本発明の診断アッセイにおける使用に適したその他のプローブは、本願中に記載されている。
【0085】
IL−22タンパク質の検出に好適な物質は、IL−22タンパク質と結合可能な抗体であり、好適には、検出可能な標識を有する抗体である。抗体がポリクローナル抗体であってもよく、より好適にはモノクローナル抗体であってもよい。完全な抗体又はその断片(例えばFab又はF(ab’))を使用してもよい。プローブ又は抗体に関して用いられる「標識された」という用語は、検出可能な物質を前記プローブ又は抗体に結合させる(即ち、物理的に連結させる)ことによって前記プローブ又は抗体を直接的に標識することと、前記プローブ又は抗体を、直接に標識された別の試薬との反応によって間接的に標識することと、が包含されるものとして意図されている。間接標識の例には、蛍光標識された二次抗体を用いて一次抗体を検出することと、DNAプローブを、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるようにビオチンで末端標識することと、が含まれる。「生物学的試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞及び体液並びに、対象中に存在する組織、細胞及び液体が包含されるものとして意図されている。即ち、本発明の検出方法を、生物学的試料中のIL−22 mRNA、タンパク質又はゲノムDNAのin vitro検出にもin vivo検出にも使用可能である。例えば、IL−22 mRNAのin vitro検出方法には、ノーザンハイブリダイゼーション法及びin situハイブリダイゼーション法が含まれる。IL−22タンパク質のin vitro検出方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELIZA)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法及び免疫蛍光法が含まれる。IL−22ゲノムDNAのin vitro検出方法には、サザンハイブリダイゼーション法が含まれる。更に、IL−22タンパク質のin vivo検出方法には、標識された抗IL−22抗体を対象中に導入することが含まれる。例えば、対象における存在及び位置を標準的なイメージング技術を用いて検出可能な放射性マーカで、前記抗体を標識してもよい。
【0086】
一実施態様においては、前記生物学的試料に、前記試験対象からのタンパク質分子が含有されている。又は、前記生物学的試料に、前記試験対象からのmRNA分子又は前記試験対象からのゲノムDNA分子が含有されていてもよい。好適な生物学的試料は、通常の手段で対象から単離された血清試料である。
【0087】
別の一実施態様においては、これらの方法に、コントロール対象からコントロール生物学的試料を採取することと、前記コントロール試料を、IL−22タンパク質、mRNA又はゲノムDNAを検出可能な化合物又は物質と、前記生物学的試料中のIL−22タンパク質、mRNA又はゲノムDNAの存在が検出されるように接触させることと、前記コントロール試料中のIL−22タンパク質、mRNA又はゲノムDNAの前記存在を、前記試験試料中のIL−22タンパク質、mRNA又はゲノムDNAの存在と比較することと、が更に含まれる。
【0088】
本発明は、生物学的試料中のIL−22の存在を検出するためのキットも包含する。例えば、前記キットに、生物学的試料中のIL−22タンパク質又はmRNAを検出可能な、標識された化合物又は物質(例えばプローブ又は抗体);前記試料中のIL−22の量を測定するための手段;及び前記試料中の前記IL−22の量を標準と比較するための手段が含まれてもよい。前記化合物又は物質が、適切な容器内に封入されていてもよい。前記キットに、前記キットを用いてIL−22タンパク質又は核酸を検出するための使用説明書が更に含まれてもよい。
【0089】
ヒトIL−22アゴニストには、IL−22タンパク質及び断片、これらの欠失変異体及び付加変異体;及びヒトIL−22のレセプタ又はその他の標的と相互作用するペプチド及び小分子化合物が非限定的に含まれる。ヒトIL−22アンタゴニストには、ヒトIL−22タンパク質に対する抗体;可溶型のヒトIL−22のレセプタ又はその他の標的;ヒトIL−22のレセプタ又はその他の標的に対する抗体;及びヒトIL−22とそのレセプタ又はその他の標的との相互作用を抑制又は妨害するペプチド及び小分子化合物が非限定的に含まれる。
【0090】
B.薬学的組成物
本発明の核酸分子、タンパク質、調節物質及び/又は抗体及び生合成分子(ここで「活性化合物」とも呼ぶ)を、投与に適した薬学的組成物中に組み込んでもよい。そのような組成物には、典型的には、前記核酸分子、タンパク質、調節物質及び/又は抗体と、薬学上許容可能な担体とが含有される。ここで使用する「薬学上許容可能な担体」という用語は、薬剤投与に適した任意の及び全ての溶剤、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを包含するものとして意図されている。これらのような媒質及び薬剤を薬学的に活性な物質に使用することは、当業で公知である。従来の媒質又は薬剤のいずれもが前記活性化合物と適合しない場合を除いては、これらを前記組成物中に使用することが考慮されている。補助的な活性化合物を前記組成物中に組み込んでもよい。本発明の薬学的組成物に、更なるサイトカイン、リンフォカイン又はその他の造血因子が含有されてもよい。前記薬学的組成物が、治療の際に前記タンパク質の前記活性を促進するか或いはその活性又は用途を補うその他の薬剤を更に含有してもよい。
【0091】
従って、本発明の薬学的組成物が、M−CSF、G−CSF、Meg−GCSF、トロンボポエチン、幹細胞因子、エリスロポエチン、TNFα、IL−1β、IL−2乃至IL−26、IFNα/β、IFNγ及び上述のサイトカイン全ての抑制物質、特にTNFα、IL−1β、IL−12及びIL−18の抑制物質などの更なるサイトカイン、リンフォカイン又はその他の造血因子も含有してもよい。
【0092】
これらのような更なる因子及び/又は物質を、前記薬学的組成物中に含有させて、本発明のタンパク質との相乗効果をもたらしたり、或いは副作用を最小限にしてもよい。逆に、本発明のタンパク質を、特定のサイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊性の又は抗血栓性の因子或いは抗炎症性物質の製剤中に含有させて、前記サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊性の又は抗血栓性の因子或いは抗炎症性物質の副作用を最小限にしてもよい。
【0093】
本発明のタンパク質が、マルチマー(例えば異質二量体又は同質二量体など)或いはそれ自体又は別のタンパク質との複合体中で活性であってもよい。この結果、本発明の薬学的組成物が、本発明のタンパク質を、そのようなマルチマー又は複合体の形で含有してもよい。
【0094】
本発明の薬学的組成物が、本発明の1つ又は複数のタンパク質と、タンパク質又はペプチド抗原との複合体の形であってもよい。前記タンパク質及び/又はペプチド抗原は、Bリンパ球及びTリンパ球の双方に刺激シグナルを送る。Bリンパ球は、その表面の免疫グロブリンレセプタによって、抗原に応答する。Tリンパ球は、MHCタンパク質による前記抗原の提示の後に、T細胞レセプタ(TCR)を介して抗原に応答する。MHC及び、宿主細胞上のクラスI及びクラスIIMHC遺伝子によってコードされるタンパク質を含めた、構造的に関連したタンパク質は、1つ又は複数の前記ペプチド抗原をTリンパ球に提示すべく作用する。これらの抗原成分は、精製されたMHC−ペプチド複合体として単独で供給されてもよいし、又はT細胞に直接にシグナルを送ることの可能な共刺激分子と共に供給されてもよい。或いは、B細胞上の表面免疫グロブリン及びその他の分子と結合可能な抗体並びにT細胞上のTCR及びその他の分子と結合可能な抗体を、本発明の薬学的組成物と混合させてもよい。
【0095】
本発明の薬学的組成物は、本発明のタンパク質が、別の薬学上許容可能な担体に加えて、水溶液中でミセル、不溶性の単分子層、液晶又は薄膜状の層として塊状の形で存在する、例えば脂質などの両親媒性の物質と混合されたリポソームの形であってもよい。リポソーム製剤に適した脂質には、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが非限定的に含まれる。これらのようなリポソーム製剤は、当業者のレベルの範囲内であり、例えば米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号;及び米国特許第4,737,323に開示されているが、これらは全て、引用をもってここに援用されている。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、その意図された投与経路に適合すべく製剤される。投与経路の例には、例えば静脈内投与、皮下投与、(例えば吸入などの)口腔投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与及び直腸投与などの非経口投与が含まれる。非経口、皮内及び皮下投与に使用される溶液又は懸濁液には、以下の成分が含まれてもよい:注射用の水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶剤などの滅菌希釈液;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸又は硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸又はリン酸などの緩衝剤及び、塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度調整剤。塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基を用いてpHを調整してもよい。非経口製剤が、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、ディスポーザブル注射筒又はマルチドーズ用バイアルに封入されていてもよい。
【0097】
注射に適した薬学的組成物には、(水溶性の場合の)滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調合用の滅菌粉末が含まれる。静脈内投与に適した担体には、生理的食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(ニュージャージー州パーシッパニー、BASF社)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合において、前記組成物は無菌でなければならず、また注射が容易である程度に流動性であるべきである。前記組成物は、製造及び保管条件下で安定でなければならず、また細菌及び真菌などの微生物の汚染活動から保護されなければならない。前記担体は、例えば水、エタノール、(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなどの)ポリオール類及びこれらの適切な混合物などを含有する溶液又は分散媒であってもよい。適切な流動性を、例えばレシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合には必要な粒度を維持することにより、及び表面活性剤を使用することにより、維持してもよい。例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌剤及び抗真菌剤によって、微生物の活動を防止してもよい。多くの場合、例えば糖類、マンニトールなどの多価アルコール類、ソルビトール、塩化ナトリウムなどの等張剤が前記組成物中に含有されることが望ましいであろう。例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの、吸収を遅延させる物質を前記組成物中に含有させることで、前記注射用組成物を持続的に吸収させてもよい。
【0098】
(例えばイムノモジュリンタンパク質又は抗イムノモジュリン抗体などの)前記活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又はこれらの組合せと共に適切な溶剤中に必要量含有させた後に、濾過除菌することにより、滅菌注射用溶液を調製してもよい。一般に、分散液を調製するには、前記活性化合物を、塩基性の分散媒と上述の成分のうちの必要な別の成分とを含有する無菌の送達剤中に組み込む。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末を調製する好適な方法は、予め濾過滅菌した前記活性化合物と任意の更なる望ましい成分との溶液から粉末を生じさせる真空乾燥法及び凍結乾燥法である。
【0099】
経口投与用の組成物には、通常、不活性の希釈剤又は食用の担体が含有される。これらをゼラチンカプセルに封入してもよいし、又は圧縮して錠剤としてもよい。経口治療的投与の場合には、前記活性化合物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ剤又はカプセル剤の形で使用してもよい。経口組成物を、含嗽剤として使用するために流動性の担体を用いて調製してもよく、この場合、前記流動性の担体中の前記化合物は、口内に含まれ、うがい後に吐出又は嚥下される。製薬に適した結合剤及び/又はアジュバント材料が、前記組成物の一部として含有されてもよい。前記錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などに、以下の成分又は同様の性質を持つ化合物が含有されてもよい:微結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又はラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogel、又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSteroteなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味料;或いはペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香料などの着香料。
【0100】
吸入による投与の場合には、前記化合物は、例えば二酸化炭素などのガスなどの好適な噴射剤を入れた加圧容器又はディスペンサ或いはネブライザから、エアロゾールスプレイの形で送達される。
【0101】
全身投与を、経粘膜手段又は経皮手段によって行ってもよい。経粘膜又は経皮投与の場合には、製剤中に、浸透対象の障壁に適した浸透剤が使用される。そのような浸透剤は当業で公知であり、例えば経粘膜投与の場合には、界面活性剤、胆汁酸塩類及びフシジン酸誘導体が含まれる。鼻スプレー又は座剤を用いて経粘膜投与を行ってもよい。経皮投与の場合には、前記活性化合物は、当業で公知の軟膏剤、塗剤、ゲル剤又はクリーム剤に製剤される。
【0102】
前記化合物を、直腸内送達のための(例えばカカオバター及びその他のグリセリド類などの通常の座剤基剤などを含有した)座剤又は停留性浣腸剤の形で調製してもよい。
【0103】
一実施態様においては、前記活性化合物を、例えば制御放出製剤などのための、前記化合物の体内からの急速な排出を防止する、インプラント及びマイクロカプセルに封入した送達系を含めた担体と一緒に調製する。例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの、生分解性の生体適合性ポリマーを使用してもよい。そのような製剤の調製方法は、当業者に明らかであろう。これらの材料を、アルザ社及びノバ・ファーマシューティカル社から購入してもよい。(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体を封入した、導入細胞を標的とするリポソームを含有する)リポソーム懸濁液を、薬学上許容可能な担体として使用してもよい。これらを、例えば米国特許第4,522,811号に記載の方法などの、当業者に公知の方法で調製してもよい。
【0104】
投与の簡便化及び投与量の均一化を図るために、経口又は非経口組成物を一回服用単位に製剤すると特に有利である。ここで使用される一回服用単位という用語は、治療対象への単位投与に適した物理的に個別の単位を指す;各単位には、前記必要な薬学的担体と組み合わせて前記所望の治療効果を上げるべく計算された所定量の活性化合物が含まれる。本発明の一回服用単位の詳細は、前記活性化合物の独自の特性、達成すべき特定の治療効果及び個人を治療するためのそのような活性化合物の調剤技術に固有の制約によって左右され、及びこれらに直接に依存する。
【0105】
これらのような化合物の毒性及び治療効率を、培養細胞又は実験動物を用いて、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な投与量)及びED50(集団の50%に治療上有効な投与量)を調べるなどの標準的な薬学的手法で調べてもよい。毒性効果と治療的効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50で表される。高い治療指数を発揮する化合物が望ましい。毒性の副作用を発揮する化合物を用いてもよいが、罹患していない細胞が受けると予想される損傷を最小限に抑えて副作用を減じるために、そのような化合物を罹患組織部位へと送達させる送達系のデザインのデザインに当たっては注意が必要である。
【0106】
細胞培養アッセイ及び動物を用いた研究から得られたデータを用いて、ヒトに使用する用量範囲を定めてもよい。そのような化合物の用量は、毒性が殆ど又は全く伴わないED50を含めた循環血中濃度の範囲内であることが望ましい。前記用量が、使用する剤形及び投与経路によって、この範囲内で変動してもよい。本発明の方法で使用するいかなる化合物についても、「治療上有効な」用量を最初に細胞培養アッセイから推測することが可能である。IC50(即ち、症状を最大の50%抑制する試験化合物濃度)を含めた循環血漿中濃度の範囲を定めるために、細胞培養で調べたように、「治療上有効な」用量を、動物モデル中で更に定めてもよい。そのような情報を用いて、ヒトに使用できる用量をより正確に調べてもよい。血漿中のレベルを、例えば高性能の液体クロマトグラフィで測定してもよい。
【0107】
本発明の核酸分子を、ベクター中に挿入して、遺伝子治療ベクターとして使用してもよい。遺伝子治療ベクターを、例えば静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)又は定位注射(原語stereostatic injection)(例えばChen他(1994)PNAS91:3054−3057を参照のこと)によって対象に送達してもよい。遺伝子治療ベクター製剤に、許容可能な希釈液に希釈した前記遺伝子治療ベクターが含まれてもよいし、又は、遺伝子送達剤が埋め込まれた徐放性のマトリックスが含まれてもよい。或いは、例えばレトロウィルスベクターなどの組換え細胞を使用せずに完全な遺伝子送達ベクターを作製可能である場合には、前記製剤に、遺伝子送達系を形成する1つ又は複数の細胞が含まれてもよい。ex vivo
【0108】
前記薬学的組成物が、投与説明書と共に容器、包装又はディスペンサ中に封入されていてもよい。
【0109】
C.治療方法
本発明は、(例えばヒト対象などの)対象を治療するための予防的方法及び治療的方法の双方を提供する。一局面においては、本発明は、対象における疾患又は障害を予防的に又は治療的に予防又は治療する方法を提供する。ある物質の予防的投与を、望ましくない疾患又は障害の症状が発生する前に、前記疾患又は障害が予防されるか、或いはその進行が遅延するような方法で行ってもよい。本発明の予防的方法を、ここに記載の治療的方法と同様の方法で実施してもよいが、用量及び治療方針が異なっていてもよい。
【0110】
本発明の別の一局面は、対象を治療的に治療する方法に関する。一実施態様においては、本発明には、免疫応答を調節する方法が含まれる。詳細には、免疫応答の調節には、細胞毒性の調節、(例えば、サイトカイン発現、生成又は分泌の促進又は抑制などの)サイトカイン発現、生成又は分泌の調節が含まれるが、これらに限定されることはない。本発明の好適な一実施態様は、IL−22の調節、特にIL−22刺激調節物質を用いたIL−22の刺激又はIL−22抑制調節物質を用いたIL−22の抑制に関する。従って、本発明の方法は、ある免疫応答を、望ましい治療方針に応じて、自然免疫型の応答に近付くように、又はこれから遠ざかるように偏らせる治療効果を有する。そのような調節方法は、ウィルス性の及び細菌性の感染症などの疾患、特に急性期応答、敗血症及び自己免疫障害(即ち慢性炎症状態)に特に有用である。更に、本発明の免疫調節方法を、免疫システムが損なわれた個体の治療に用いて、免疫性を促進させてもよい。ウィルス性感染症への抵抗性を向上させるため及び外部分子への拒絶反応を促進させるための使用も、本発明の範囲に含まれる。本発明の免疫調節方法は、敗血症の治療に更に有用である。例えば、グラム陰性菌に感染した患者におけるIL−22及び腫瘍壊死因子などのサイトカインを抑制することにより、免疫応答が弱まり、敗血症性ショックを防止することが可能である。本発明の免疫調節方法は、急性期応答及び慢性炎症疾患の治療に更に有用である。
【0111】
ここで使用される「治療上有効量」という用語は、患者にとっての有意な利益、即ち関連する医学的状態の治療、治癒、予防又は緩和或いはそのような状態の治療、治癒、予防又は緩和の進度の向上を十分に示す前記薬学的組成物の各活性成分又は方法の総量を意味する。単独で投与される一活性成分に関して使用される場合には、前記用語は、前記成分のみを指す。複数の活性成分の組合せに関して使用される場合には、前記用語は、連続して投与されるか又は同時に投与されるかにかかわらず、前記複数の活性成分の、治療的効果をもたらす組合せの総量を指す。
【0112】
ここで使用される「治療」という用語には、ある薬剤を、疾患、疾患の症状又は疾患の前兆を有する対象或いは前記対象から単離された組織又は細胞系統に、前記疾患、疾患の症状又は疾患の前兆を治療、治癒、緩和、軽減、変化、矯正、改良、改善又はこれに影響を及ぼす目的で塗布又は投与することが包含される。
【0113】
本発明の治療方法又は使用方法の実施に当たっては、本発明の治療上有効量のタンパク質を、治療すべき状態を有する哺乳類に投与する。本発明のタンパク質を、単独で、或いはサイトカイン、リンフォカイン又はその他の造血因子を用いた治療などの他の療法と組み合わせて、本発明の方法に基づいて投与してもよい。1つ又は複数のサイトカイン、リンフォカイン又はその他の造血因子と一緒に投与する場合、本発明のタンパク質を、前記サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊性の又は抗血栓性の因子と同時に投与してもよいし、又はこれらを逐次投与してもよい。逐次投与する場合には、担当医が、本発明のタンパク質と、サイトカイン、リンフォカイン、その他の造血因子、血栓崩壊性の又は抗血栓性の因子とを組み合わせて投与する際の適切な順序を決定するであろう。
【0114】
前記薬学的組成物中で又は本発明の方法を実施するために使用される本発明のタンパク質を、経口摂取、吸入、局所塗布或いは皮膚、皮下、腹腔内、非経口又は静脈内注射を含めた様々な従来の方法で投与してもよい。患者への静脈内投与が望ましい。
【0115】
本発明の治療上有効量のタンパク質を経口投与する場合、本発明のタンパク質を、錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤又はエリキシル剤の形とされるだろう。錠剤の形で投与される場合には、本発明の薬学的組成物に、ゼラチン又はアジュバントなどの固形の担体が更に含有されていてもよい。前記錠剤、カプセル剤及び粉末剤には、本発明のタンパク質が約5乃至95%、好適には約25乃至90%含有されている。液体の形で投与される場合には、水、石油、動物又は植物に由来する、ピーナッツ油、鉱油、大豆油又は胡麻油などの油或いは合成油が添加されていてもよい。前記液状の薬学的組成物に、生理的食塩水、デキストロース又はその他の糖類溶液、或いはエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコール類が更に含有されていてもよい。液体の形で投与される場合には、前記薬学的組成物には、本発明のタンパク質が約0.5乃至90%、好適には約1乃至50%含有される。
【0116】
本発明の治療上有効量のタンパク質を静脈内注射、皮膚注射又は皮下注射によって投与する場合には、本発明のタンパク質は、発熱性物質を含有しない、非経口的に許容可能な水溶液の形で投与されるであろう。そのような非経口的に許容可能なタンパク質水溶液を、pH、等張性、安定性などを考慮して調製することは、当業における技術の範囲内である。静脈内注射、皮膚注射及び皮下注射に好適な薬学的組成物には、本発明のタンパク質に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射液又はその他の当業で公知の賦形剤などの等張性の賦形剤が含有されるべきである。本発明の薬学的組成物に、安定化剤、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤又はその他の当業者に公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0117】
本発明の薬学的組成物中の本発明のタンパク質の量は、治療される状態の性質及び重度並びに患者が以前に受けた治療の性質によって左右されるであろう。最終的には、担当医が、各患者を治療するための本発明のタンパク質の量を決定するであろう。最初は、前記担当医は、本発明のタンパク質を低用量で投与して、患者の応答を観察するであろう。本発明のタンパク質の用量を前記患者にとって最大の治療効果が得られるまで次第に増加させ、この時点以降は用量を増加させないようにしてもよい。本発明の方法の実施に使用される様々な薬学的組成物には、kg体重当たり、約0.01μg乃至約100mg(好適には約0.1ng乃至約10mg、より好適には約0.1μg乃至約1mg)の本発明のタンパク質が含有されるべきことが考慮されている。
【0118】
本発明の薬学的組成物を使用した静脈内療法の持続時間は、治療される疾患の重度並びに各患者の状態及び予想される特異体質性の応答によって異なるであろう。本発明のタンパク質を静脈内持続投与した場合の使用毎の持続時間は、12乃至24時間であろうと考えられる。最終的には、本発明の薬学的組成物を使用した静脈内療法の適切な持続時間は、担当医が決定するであろう。
【0119】
好適な一実施態様においては、本発明の(例えば中和剤を含有する)製剤は、感染症の発症後2乃至6時間後に投与されるであろう。例えば、複数のin vitroアッセイで、腹腔浸出細胞の接着性の画分が、LPSによる治療の2乃至6時間後にIL−22を産生するが、このことは、IL−22が免疫応答の早期に産生されることを示している。従って、感染過程における例えば中和剤の早期投与は、そのような薬剤の治療効果を促進しうる。
【0120】
本発明のタンパク質を動物の免疫化に使用して、前記タンパク質と特異的に反応するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を得てもよい。ここで使用される「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体又はこれらの、前記タンパク質と結合する断片が含まれるが、これらに限定されることはない。この用語には、前記タンパク質と結合可能な抗体又は抗体配列から生じた任意のその他の種も含まれる。
【0121】
特定のタンパク質に対する抗体を、当業者に公知の方法で作製してもよい。例えば、モノクローナル抗体を、公知の方法に基づく抗体産生ハイブリドーマの形成によって作製してもよい(例えば、Goding,1983,Monoclonal antibodies:principles and practice,アカデミック・プレス社、ニューヨーク;及びYokoyama,1992,“Production of Monoclonal Antibodies“,Current Protocols in Immunology,Unit 2.5,グリーン・パブリッシング・アソシエーション及びジョン・ワイリー・アンド・サンズ社を参照のこと)。前記関連するタンパク質又はその断片を公知の方法で哺乳類対象に接種することで、ポリクローナル血清及び抗体を作製してもよい。好適な方法には、動物へのDNA遺伝子又はウィルス(例えばアデノウイルス又はレトロウィルスなど)の直接投与が含まれる。抗体、レセプタ又はその他の反応性のペプチドを、対応する抗体から、公知の方法による開裂及び所望の断片の回収によって作製してもよい(例えば、Goding,同上;及びAndrew他,1992,”Fragmentation of Immunoglobulins”,Current Protocols in Immunology,Unit 2.8,グリーン・パブリッシング・アソシエーション及びジョン・ワイリー・アンド・サンズ社を参照のこと)。キメラ抗体及び一本鎖抗体も、公知の組換え方法に基づいて作製可能である(例えば、5,169,939、5,194,594及び5,576,184を参照のこと)。ヒト化抗体も、公知の方法に基づき、対応するネズミ抗体から作製可能である(例えば、米国特許第5,530,101号、第5,585,089号及び5,693,762号を参照のこと)。加えて、ヒト抗体を、ヒト抗体分子を発現すべく遺伝子組換えされたマウスなどの非ヒト動物内で作製してもよい(例えば、Fishwild他,1996, Nature Biotechnology 14:845−851;Mendez他, 1997,Nature Genetics 15:146−156(Nature Genetics 16:410の誤植);並びに米国特許第5,877,397号及び5,625,126号を参照のこと)。これらのような抗体を、タンパク質全体又は断片のいずれかを免疫原として使用して得てもよい。前記ペプチド免疫原が、更に、そのカルボキシ末端にシステイン残基を有し、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などのハプテンと結合していてもよい。これらのようなペプチドの合成方法は、当業で公知であり、例えばR.P.Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.85,2149−2154(1963);J.L.Krstenansky,他,FEES Lett.211,10(1987)に記載されている。
【0122】
本発明のタンパク質に結合するモノクローナル抗体は、前記タンパク質の免疫検出のための診断物質として有用である。前記タンパク質に結合する中和モノクローナル抗体も、前記タンパク質に関連した状態及び前記タンパク質の異常な発現が関与するいくつかの形の癌の治療において有用であろう。癌細胞又は白血病細胞の場合には、前記タンパク質に対する中和モノクローナル抗体は、前記タンパク質によって媒介されうる前記癌細胞の転移性の広がりの検出及び予防に有用である。
【0123】
好適な一実施態様においては、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は、免疫応答の下方調節に使用される。そのような治療が有益である免疫学的状態の例には、細菌性感染(即ち、敗血症性ショック及び/又は敗血症に至るおそれのあるセプシスの誘発)及びその他の、例えばリウマチ様関節炎及び変形性関節症などの慢性炎症状態が含まれる。
【0124】
本発明の活性調節物質は、腎臓の炎症性病状を変化させるためにも使用される。
【0125】
骨、軟骨、腱又は靭帯の再生に有用な本発明の組成物に関しては、前記治療方法に、前記組成物を移植片又は装置として表面投与、全身投与又は局所投与することが含まれる。当然の事ながら、本発明で使用される前記治療的組成物は、発熱性物質を含有しない、生理学的に許容可能な形で投与される。更に、前記組成物は、骨、軟骨又は組織の損傷部位に、粘性の形で封入又は注射されることが望ましい。表面投与は、創傷の治癒及び組織の修復に好適であろう。上述の組成物中に任意に含有されてもよい、本発明のタンパク質以外の治療上有用な物質を、本発明の方法で、前記組成物と交互に又は追加的に、同時に又は順次投与してもよい。骨及び/又は軟骨の形成の場合、前記組成物に、前記タンパク質含有組成物を前記骨及び/又は軟骨の損傷部位に送達することの可能なマトリックスが含有され、前記形成中の骨及び軟骨に構造を付与し、その後可能な限り体内に再吸収されることが望ましい。そのようなマトリックスが、現在他の医療用インプラントに使用されている材料から形成されていてもよい。
【0126】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、装飾的外見及びインターフェース特性に基づいて行われる。前記組成物の用途によって、適切な形態が規定されるべきである。前記組成物に使用可能なマトリックスは、生分解性の合成硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びポリ無水物であってもよい。その他の使用可能な材料は、生分解性の及び生物学的構造の明確な、例えば骨又は皮膚コラーゲンなどの材料である。更なるマトリックスは、純粋なタンパク質又は細胞外マトリックス成分から構成されている。その他の使用可能なマトリックスは、焼結ヒドロキシアパタイト、生体ガラス、アルミン酸塩又はその他のセラミックスなどの、非生分解性の合成材料である。マトリックスが、例えばポリ乳酸とヒドロキシアパタイト又はコラーゲンとリン酸三カルシウムなどの、上述の種類の材料の任意の組合せから構成されていてもよい。前記生体セラミックスの成分を、例えばリン酸アルミン酸カルシウム(原語calcium−aluminate−phosphate)などに変えて、細孔の大きさ、粒子の大きさ、粒子の形状及び生分解性を変化させるべく加工してもよい。
【0127】
現在のところ、乳酸とグリコール酸の50:50(分子量)共重合体を、直径150乃至800ミクロンの有孔粒子としたものが好適である。いくつかの用途においては、カルボキシメチルセルロース又は自己由来の血餅などの金属イオン封鎖剤を利用して、前記タンパク質組成物の前記マトリックスからの解離を防止すると有用であろう。
【0128】
好適な種類の金属イオン封鎖剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含めたアルキルセルロース類(ヒドロキシアルキルセルロース類を含む)などのセルロース材料であり、最も好適なものは、カルボキシメチルセルロース(CMC)のカチオン塩である。その他の好適な金属イオン封鎖剤には、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)、酸化ポリオキシエチレン、カルボキシビニルポリマー及びポリ(ビニルアルコール)が含まれる。ここでの有用な金属イオン封鎖剤の量は、全製剤重量の0.5乃至20重量%、好適には1乃至10重量%であり、これは、前記ポリマーマトリックスからの前記タンパク質の脱着を防止するため及び前記組成物の適切な取扱いを可能にするために必要であるが、始原細胞の前記マトリックス内への浸潤は防止されるために、前記タンパク質が前記始原細胞の造骨活動を支援することが可能な量である。
【0129】
更なる組成物においては、本発明のタンパク質が、骨及び/又は軟骨の欠陥、傷又は問題の組織の治療に有益なその他の物質と混合されていてもよい。これらの物質には、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF−α及びTGF−β)及びインシュリン様成長因子(IGF)などの様々な成長因子が含まれる。
【0130】
これらの治療的組成物は、現在のところ、獣医学的用途にも有用である。特に、ヒトに加えて、家畜及びサラブレッド馬も、本発明のタンパク質を用いたそのような治療の望ましい患者である。
【0131】
組織の再形成に使用されるべきタンパク質含有薬学的組成物の投与方針は、例えば好適な形成組織重量、損傷部位、損傷を受けた組織の状態、傷の大きさ、損傷を受けた組織の種類(例えば骨)、患者の年齢、性別及び食餌、感染の重度、投与時点及びその他の臨床的要素などの、前記タンパク質の活性を変化させる様々な要素を考慮した担当医によって決定されるであろう。前記方針が、前記再構成に使用されるマトリックスの種類及び前記薬学的組成物に含有されるその他のタンパク質によって左右されてもよい。例えば、IGF I(インスリン様成長因子I)などのその他の公知の成長因子を前記最終組成物に加えて、前記投与の効果を上げてもよい。例えばX線、組織形態計測学的測定及びテトラサイクリン標識などによる、組織/骨の成長及び/又は修復の定期的な評価によって、経過をモニタしてもよい。
【0132】
本発明のポリヌクレオチドを、遺伝子治療に使用してもよい。そのようなポリヌクレオチドを、in vivo又はex vivoで細胞内に導入し、哺乳類対象中で発現させてもよい。本発明のポリヌクレオチドをその他の公知の方法で投与して、核酸を細胞又は生物中に導入してもよい(ウィルスベクター又は裸のDNAの形が含まれるが、これらに限定されることはない)。
【0133】
細胞を、本発明のタンパク質の存在下でex vivoで培養して、そのような細胞に対する望ましい作用又はそのような細胞の望ましい活性を増加させるか又は生じさせてもよい。次に、処理された細胞をin vivoで治療目的のために導入してもよい。
【0134】
D.スクリーニングアッセイ
本発明が提供するタンパク質を、高スループットのスクリーニングのための複数のタンパク質のパネルを対象としたアッセイを含めた、生物学的活性を調べるためのアッセイにおいて、抗体を産生させるため又は別の免疫応答を引き出すため;生物学的液体中のタンパク質(又はそのレセプタ)のレベルを定量すべくデザインされたアッセイにおける試薬(標識された試薬を含む)として;対応するタンパク質が(構成的に、或いは組織の分化又は発生における特定の段階において、又は疾患状態において)選択的に発現される組織のマーカとして;及び、当然のことながら、相補的レセプタ又はリガンドを単離するために使用してもよい。前記タンパク質が(例えばレセプターリガンド相互作用において)別のタンパク質に結合する場合又は結合可能である場合、前記タンパク質を、結合が起こる前記その他のタンパク質を特定するために、又は前記結合相互作用の抑制物質を特定するために使用してもよい。これらの結合相互作用に関与するタンパク質を、前記結合相互作用のペプチド又は小分子抑制物質又はアゴニストのスクリーニングに使用してもよい。
【0135】
これらの研究用物品のいずれか又は全ては、研究用製品として市販するための試薬又はキットの形式に展開させることが可能である。
【0136】
上記に列挙した用途を実施するための方法は、当業者に公知である。これらのような方法を開示している参考文献には、”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,第2版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス社,Sambrook,J.,E.F.Fritsch及びT.Maniatis編,1989,及び”Methods in Enzymology:Guide to Molecular Cloning Techniques”,アカデミック・プレス社,Berger,S.L.及びA.R.Kimmel編,1987が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0137】
本発明のタンパク質の活性を、数ある中で特に、以下の方法で測定してもよい:
【0138】
胸腺細胞又は脾臓細胞の細胞毒性を調べるための好適なアッセイには、Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober編,グリーン・パブリッシング・アソシエーツ・アンド・ワイリー・インターサイエンス社発行(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;第7章,Immunologic studies in Humans);Herrmann他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2488−2492,1981;Herrmann他,J.Immunol.128:1968−1974,1982;Handa他,J.Immunol.135:1564−1572,1985;Takai他,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai他,J.Immunol.140:508−512,1988;Herrmann他,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 78:2488−2492,1981;Herrmann他, J.Immunol.128:1968−1974,1982;Handa他,J.Immunol.135:1564−1572,1985;Takai他,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Bowman他,J.Virology 61:1992−1998;Takai他,J.Immunol.140:508−512,1988;Bertagnolli他,Cellular Immunology 133:327−341,1991;Brown他,J.Immunol.153:3079−3092,1994に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0139】
T細胞依存性免疫グロブリン応答及びアイソタイプスイッチングのアッセイ(数ある中で特に、T細胞依存性抗体応答を調節する、及びTh1/Th2プロフィールに影響を与えるタンパク質を特定する)には、Maliszewski,J.Immunol.144:3028−3033,1990;及びAssays for B cell function:In vitro antibody production, Mond,J.J.及びBrunswick,M. Current Protocols in Immunology.J.E.e.a.Coligan編、第1巻 pp.3.8.1−3.8.16,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、トロント、1994に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0140】
混合白血球反応(MLR)アッセイ(数ある中で特に、Th1及びCTL応答を生じるタンパク質を特定する)には、Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober編,グリーン・パブリッシング・アソシエーツ・アンド・ワイリー・インターサイエンス社(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;第7章,Immunologic studies in Humans);Takai他,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai他,J.Immunol.140:508−512,1988;Bertagnolli他,J.Immunol.149:3778−3783,1992に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0141】
樹状細胞依存性アッセイ(数ある中で特に、ナイーブT細胞を活性化させる樹状細胞によって発現されるタンパク質を特定する)には、Guery他,J.Immunol.134:536−544,1995;Inaba他,Journal of Experimental Medicine 173:549−559,1991;Macatonia他,Journal of Immunology 154:5071−5079,1995; Porgador他,Journal of Experimental Medicine 182:255−260,1995;Nair他,Journal of Virology 67:4062−4069,1993;Huang他,Science 264:961−965,1994;Macatonia他,Journal of Experimental Medicine 169:1255−1264,1989;Bhardwaj他,Journal of Clinical Investigation 94:797−807,1994;及びInaba他,Journal of Experimental Medicine 172:631−640,1990に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0142】
リンパ球の生存/アポトーシスのアッセイ(数ある中で特に、超抗原導入後のアポトーシスを防止するタンパク質及びリンパ球のホメオスタシスを調整するタンパク質を特定する)には、Darzynkiewicz他,Cytometry 13:795−808,1992;Gorczyca他,Leukemia 7:659−670,1993;Gorczyca他,Cancer Research 53:1945−1951, 1993;Itoh他,Cell 66:233−243,1991;Zacharchuk,Journal of Immunology 145:4037−4045,1990;Zamai他,Cytometry 14:891−897,1993;Gorczyca他,International Journal of Oncology 1:639−648,1992に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0143】
T細胞の拘束及び発生の早期段階に影響を及ぼすタンパク質のアッセイには、Antica他,Blood 84:111−117,1994;Fine他,Cellular Immunology 155:111−122,1994;Galy他,Blood 85:2770−2778,1995;Toki他,Proc.Nat.Acad Sci. USA 88:7548−7551,1991に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0144】
上述のスクリーニングアッセイで特定された調節物質は、例えばそのような物質を用いた治療の有効性、毒性又は副作用を調べるために、適切な動物モデル中で試験される。又は、調節物質は、ここに記載のin vitro又はin situアッセイのうちの少なくとも1つで試験される。
【0145】
本発明の別の一局面においては、トランスジェニック動物又は遺伝子ノックアウト動物が、疾患の研究に使用される。詳細には、疾患の表現型を発現すべく遺伝子組換えされたマウスが、IL−22活性を調節する物質のスクリーニングに使用される。ここで使用される「遺伝子組換えされた」という用語は、あるタンパク質をコードする非相同遺伝子の導入(トランスジェニック動物)又は相同組換えによるある遺伝子の削除(遺伝子ノックアウト動物)のいずれかによって遺伝子操作された任意の動物を意味する。好適には、遺伝子組換えされた前記動物は、マウスである。
【0146】
別の一実施態様においては、IL−22分子(例えばRNA、DNA、cDNA、タンパク質又は抗体)は、例えば炎症状態にある組織の存在の検出のためなどの診断ツールとして使用される。
【0147】
IL−22分子のアッセイ効果
IL−22アゴニスト又はアンタゴニストの活性は、以下の方法で測定することができる:
【0148】
T細胞又は胸腺細胞増殖のアッセイには、Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H. Margulies,E.M.Shevach,W Strober,編、グリーン・パブリッシング・アソシエーツ・アンド・ワイリー・インターサイエンス社(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1 3.19;第7章,Immunologic studies in Humans);Takai他,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Bertagnolli他,J.Immunol.145:1706−1712,1990;Bertagnolli他,Cellular Immunology 133:327−341,1991;Bertagnolli他,J.Immunol.149:3778−3783,1992;Bowman他,J.Immunol.152:1756−1761,1994に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0149】
脾臓細胞、リンパ節細胞又は胸腺細胞のサイトカイン産生及び/又は増殖のアッセイには、Polyclonal T cell stimulation,Kruisbeek,A.M.及びShevach,E.M.,Current Protocols in Immunology.、J.E. Coligan編、第1巻 pp.3.12.1−3.12.14,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、トロント、1994;及びMeasurement of mouse and human Interferon γ,Schreiber,R.D. Current Protocols in Immunology.、J.E.Coligan編、第1巻、pp.6.8.1−6.8.8,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社,トロント、1994に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0150】
造血細胞及びリンパ球生成細胞の増殖及び分化のアッセイには、Measurement of Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4,Bottomly,K.,Davis,L.S.及びLipsky,P.E.Current Protocols in Immunology. J.E.e.a.Coligan編、第1巻、pp.6.3.1−6.3.12,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、トロント、1991;deVries他,J.Exp.Med.173:1205−1211,1991;Moreau他,Nature 336:690−692,1988;Greenberger他,Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A.10 80:2931−2938,1983;Measurement of mouse and human Interleukin 6 − Nordan,R.Current Protocols in Immunology.J.E.e.a.Coligan編、第1巻、pp.6.6.1−6.6.5,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、トロント、1991;Smith他,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:1857−1861,1986;Measurement of human Interleukin 11 − Bennett,F., Giannotti,J.,Clark,S.C.及びTurner,K.J.、Current Protocols in Immunology.、J.E.e.a.Coligan編、第1巻、pp.6.15.1、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、トロント、1991;Measurement of mouse and human Interleukin 9 − Ciarletta,A.,Giannotti,J.,Clark,S.C.及びTurner,K.J.、Current Protocols in Immunology.J.E.e.a.Coligan編、第1巻、pp.6.13.1,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社、トロント、1991に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0151】
抗原に対するT細胞クローン応答のアッセイ(数ある中で特に、APC−T細胞相互作用及び直接的なT細胞作用に影響を及ぼすタンパク質を、増殖及びサイトカイン産生を測定することで特定する)には、Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober編,グリーン・パブリッシング・アソシエーツ・アンド・ワイリー・インターサイエンス社(第3章、In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function; 第6章,Cytokines and their cellular receptors;第7章,Immunologic studies in Humans); Weinberger他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:6091−6095,1980;Weinberger他,Eur.J.Immun.11:405−411,1981;Takai他,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takai他,J.Immunol.140:508−512,1988に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0152】
免疫刺激又は抑制活性
IL−22調節物質が、ここにこれらの活性についてのアッセイが記載されるがこれらに限定されることはない、免疫刺激又は免疫抑制活性を発揮してもよい。IL−22アゴニストは、(重症複合免疫不全症(SCID)を含めた)様々な免疫不全及び障害の治療において、例えばTリンパ球及び/又はBリンパ球の成長及び増殖を(上方又は下方)調節したり、NK細胞及びその他の細胞集団の細胞溶解活性に対して作用を及ぼすなどの点で、有用である。これらの免疫不全が、遺伝的なものであってもよいし、ウィルス性の(例えばHIV)及び細菌性の又は真菌性の感染によるものであってもよいし、或いは自己免疫性障害の結果起こったものであってもよい。より詳細には、HIV、肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス、ミコバクテリア、リーシュマニア種、マラリア種による感染及びカンジダ症などの様々な真菌性の感染を含めた、ウィルス性の、細菌性の、真菌性の又はその他の感染による感染症が、本発明のタンパク質を用いて治療可能であってもよい。IL−22タンパク質は、免疫系の増強が一般に望ましいであろう場合、即ち癌の治療においても、有用である。
【0153】
IL−22抑制物質(例えばIL−22抗体など)を、自己免疫疾患の治療に使用してもよい。本発明のタンパク質を用いて治療可能な自己免疫疾患には、例えば、結合組織病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、自己免疫性肺炎、ギヤン−バレー症候群、自己免疫性甲状腺炎、インスリン依存性真性糖尿病、重症筋無力症、対宿主性移植片病及び自己免疫性炎症性眼疾患が含まれる。本発明のそのようなタンパク質を、例えば膵臓炎などに関連した炎症状態の治療に使用してもよい。IL−22抑制物質は、喘息(特にアレルギー性喘息)などのアレルギー性反応及び状態の治療においても有用である。免疫抑制が望ましいその他の状態(例えば臓器移植を含む)も、本発明のタンパク質を用いて治療可能であろう。
【0154】
本発明のタンパク質を使用して、免疫応答を様々な方法で調節することも可能であろう。下方調節が、既に進行している免疫応答の抑制又は阻害の形をとってもよいし、或いは、免疫応答の誘発の予防に関与してもよい。活性化T細胞の機能が、T細胞応答の抑制により、又はT細胞に特定の耐性を導入することにより、又はこれら双方により、抑制されてもよい。T細胞応答の免疫抑制は、一般に、前記T細胞の抑制物質への持続的な曝露を必要とする、能動的な、非抗原特異性のプロセスである。耐性は、T細胞を非応答性又はアネルギー状態とするものであるが、これが一般に抗原特異的であり、耐性化物質への曝露が停止した後も持続するという点で、免疫抑制と区別される。作用上は、耐性は、耐性化物質の非存在下で特定の抗原に再曝露した時のT細胞応答の欠如によって立証される。
【0155】
ここで使用される「病的状態」という用語は、有害な刺激が細胞、組織及び臓器にもたらす構成上の及び機能上の結果、ひいては生物全体にもたらす結果を指す。そのような有害な刺激には、異物(即ち、細菌、ウィルス、真菌及び寄生生物)による感染、炎症、自己免疫疾患(即ち、リウマチ様関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、重症筋無力症、炎症性超疾患、糖尿病、全身性エリテマトーデス及び乾癬)、癌、ネクローシス、虚血、急性期応答、アポトーシス、創傷治癒過程、コレステロール代謝、活性酸素による損傷、アテローム性動脈硬化症及びアレルギーが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0156】
特定の一実施態様においては、本発明のIL−22分子の活性の1つ又は複数を下方調節又は予防することが、敗血症の治療に役立ってもよい。端的には、敗血症は、血液又は組織中の様々な膿形成性の及びその他の病原生物(即ちグラム陰性菌)又はこれらの毒素に応答してしばしば起こる、制御不可能な炎症性応答である。従って、本発明のIL−22分子の活性を阻害する物質は、敗血症性ショックの誘発を和らげることが可能である。
【0157】
別の一実施態様においては、例えば活性化T細胞による高レベルリンフォカイン合成を予防するなど、1つ又は複数の抗原機能((例えばB7などの)Bリンパ球抗原機能が含まれるが、これに限定されることはない)を下方調節又は予防することは、組織、皮膚及び臓器移植並びに対宿主性移植片病(GVHD)の場合において有用であろう。例えば、組織移植において、T細胞機能を阻害することで、組織破壊が軽減されるであろう。組織移植では、多くの場合、移植片の拒絶反応は、T細胞がこれを異物として認識することから始まり、次に、前記移植片を破壊する免疫反応が起こる。免疫細胞上のB7リンパ球抗原とその天然のリガンドとの相互作用を抑制又は阻害する分子(例えば、B7−2リンパ球活性を有する可溶性モノマーの形のペプチドのみ、或いはこれを別のBリンパ球抗原(例えばB7−1、B7−3)を有するモノマーの形のペプチド又は阻害抗体と組み合わせたもの)を移植前に投与することによって、前記免疫細胞上の前記分子を、対応する共刺激シグナルを伝達することなく、前記天然のリガンドに結合させることができる。Bリンパ球抗原の機能のこのような方法での阻害は、T細胞などの免疫細胞によるサイトカイン合成を予防し、免疫抑制薬として作用する。更に、共刺激の欠如によって、T細胞が十分にアネルギー化され、対象中に耐性が導入されるであろう。Bリンパ球抗原阻害試薬によって長期にわたる耐性が導入されることにより、これらの阻害試薬を繰返し投与する必要がなくなるであろう。対象における十分な免疫抑制又は耐性を達成するために、複数のBリンパ球抗原の組合せの機能を阻害することが必要であろう。
【0158】
特定の阻害試薬が臓器移植拒絶反応又はGVHDを予防する効力を、ヒトにおける効力が予測される動物モデルを用いて評価することができる。使用可能な適切な系の例には、ラットの同種心臓移植片及びマウスの異種膵島細胞移植片があるが、これらは双方とも、Lenschow他,Science 257:789−792 (1992)及びTurka他,Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:11102−11105(1992)に記載されているように、CTLA4Ig融合タンパク質の免疫抑制効果をin vivoで調べるために使用されてきた。更に、GVHDのネズミモデル(Paul編,Fundamental Immunology,レーヴン・プレス社、ニューヨーク、1989,pp.846−847を参照のこと)を、Bリンパ球抗原機能の阻害がこの疾患の発生にin vivoで及ぼす作用を調べるために使用してもよい。
【0159】
抗原機能の阻害は、自己免疫疾患の治療にも有用であろう。多くの自己免疫障害は、自己組織に対して反応性であり、この疾患の病因に関与するサイトカイン及び自己抗体の生成を促進するT細胞の不適切な活性化の結果として起こる。自己反応性T細胞の活性化を防止することで、疾患症状が軽減又は除去されるであろう。Bリンパ球抗原のレセプタ:リガンド相互作用を断つことによってT細胞の共刺激を阻害する試薬を投与して、T細胞の活性化を抑制すると共に、前記疾患のプロセスに関与している可能性のある自己抗体又はT細胞由来のサイトカインの生成を防止してもよい。更に、阻害試薬が、自己反応性T細胞に抗原特異的耐性を付与し、この結果、前記疾患が長期にわたって軽減されるであろう。阻害試薬が自己免疫障害を予防又は緩和する効力を、ヒト自己免疫疾患の数多くの十分に解明されている動物モデルを使用して調べてもよい。その例には、ネズミの実験的自己免疫性脳炎、MRL/lpr/lprマウス又はNZBハイブリッドマウスにおける全身性エリテマトーデス、ネズミの自己免疫性コラーゲン関節炎、NODマウス及びBBラットにおける真性糖尿病、並びにネズミの実験的重症筋無力症が含まれる(Paul編,Fundamental Immunology,レーヴン・プレス社、ニューヨーク、1989,pp.840−856を参照のこと)。
【0160】
特定の一実施態様においては、本発明のIL−22抑制物質(例えば阻害物質)を、例えばリウマチ様関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、炎症性腸炎、糖尿病及び全身性エリテマトーデス(SLE)、アテローム性動脈硬化症及びアレルギーなどの一連の慢性炎症に見られる、長期にわたる急性期応答を伴う自己免疫疾患、特にリンパ球が媒介する自己免疫疾患の治療に使用してもよい。このような場合、血清アミロイドAタンパク質が高レベルを維持する結果、このタンパク質が組織の間質に沈着することがあるが、これがアミロイド症として知られている状態である。血清アミロイドAタンパク質の組織への沈着は、多くの場合、βシート構造の多筋原繊維の形をとり、これが、正常な組織機能(即ち、心筋収縮及び糸球体濾過)を妨害するおそれがある。従って、例えば中和抗体によるIL−22産生の抑制又は阻害が、急性期応答を停止させる一助となり、この結果、アミロイド症の発生が防止されうる。
【0161】
免疫応答の上方調節の一手段としての抗原機能(好適にはBリンパ球抗原機能)の上方調節も、治療上有用であろう。免疫応答の上方調節は、既に存在する免疫応答の促進の形であってもよいし、又は、初期免疫応答の導出の形であってもよい。例えば、Bリンパ球抗原機能を刺激してある免疫応答を促進することは、ウィルス性感染の場合に有用である。加えて、例えばインフルエンザ、感冒及び脳炎などの全身性ウィルス性疾患が、刺激性の形のBリンパ球抗原の全身投与によって緩和されてもよい。
【0162】
又は、感染患者における抗ウィルス免疫応答を、前記患者からT細胞を取り出し、これらのT細胞を、本発明のペプチドを発現している、又は刺激性の形の本発明の可溶性ペプチドと組み合わせたウィルス抗原パルスAPCでin vitroで共刺激し、これらのin vitroで活性化されたT細胞を前記患者中に再導入することによって促進してもよい。抗ウィルス免疫応答を促進する別の一方法では、患者から感染細胞を単離し、これらの細胞が上述の本発明のタンパク質の全て又は一部を表面上に発現するように、これらの細胞を前記タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトし、トランスフェクトされたこれらの細胞を前記患者中に再導入する。この結果、前記感染細胞は、共刺激シグナルをin vivoでT細胞に伝達し、これらを活性化させることが可能となる。
【0163】
特定の一実施態様においては、本発明のIL−22分子及び/又は調節物質を、これらが免疫系を調節する能力に基づき、ワクチンアジュバントとして使用してもよい。例えば、本発明の前記IL−22分子及び/又はモジュレータ(例えば正の調節物質)を潜在的ワクチン抗原と一緒に投与して、前記潜在的ワクチン抗原に対する非特異的な炎症性免疫応答を引き出してもよい。そのようなワクチンを、外来の生物(即ち、細菌、ウィルス、寄生生物又は真菌)又は癌抗原に対抗させてもよい。更に、そのような治療に、IL−22DNAを用いた遺伝子導入が包含されてもよいが、これに限定されることはない。
【0164】
ここで使用される「免疫抗原性の増強」という用語には、例えばあるワクチンの免疫抗原性を、IL−22の非存在下における前記ワクチンと比較して促進及び/又は増加させることが含まれる。
【0165】
別の一用途においては、抗原機能(望ましくはBリンパ球抗原機能)の上方調節又は促進は、腫瘍免疫の誘導に有用である。本発明のペプチドの少なくとも1つをコードする核酸でトランスフェクトされた腫瘍細胞(例えば肉腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、癌腫など)を対象に投与して、前記対象の腫瘍特異的耐性を克服してもよい。所望の場合には、前記腫瘍細胞を、複数のペプチドの組合せを発現すべくトランスフェクトしてもよい。例えば、ある患者から得た腫瘍細胞を、B7−2様活性を有するペプチドのみ、或いはこれとB7−1様活性及び/又はB7−3様活性を有するペプチドとの組合せを発現させる発現ベクターを用いて、ex vivoでトランスフェクトしてもよい。前記トランスフェクトされた腫瘍細胞は、前記患者に戻され、この結果、前記ペプチドが前記トランスフェクトされた細胞の表面上に発現される。或いは、遺伝子治療技術を用いて、ある腫瘍細胞をin vivoでのトランスフェクションの標的としてもよい。
【0166】
Bリンパ球抗原活性を有する本発明のペプチドが腫瘍細胞の表面上に存在することによって、前記トランスフェクトされた腫瘍細胞に対するT細胞媒介性免疫応答を誘発させるために必要な共刺激シグナルが、T細胞に供給される。加えて、MHCクラスI分子又はMHCクラスII分子の欠如した、又は十分な量のMHCクラスI分子又はMHCクラスII分子が再発現されていない腫瘍細胞を、MHCクラスIα鎖タンパク質とβミクログロブリンタンパク質又はMHCクラスIIα鎖タンパク質とMHCクラスIIβ鎖タンパク質の全て又は一部分(例えば細胞質ドメインが切断された部分)をコードする核酸でトランスフェクトして、前記細胞表面上にMHCクラスIタンパク質又はMHCクラスIIタンパク質を発現させてもよい。適切なクラスI又はクラスIIMHCをBリンパ球抗原(例えばB7−1、B7−2、B7−3)の活性を有するペプチドと共に発現させることで、前記トランスフェクトされた腫瘍細胞に対するT細胞媒介性免疫応答が誘導される。又は、例えばインバリアント鎖などのMHCクラスII関連タンパク質の発現を阻害するアンチセンスコンストラクトをコードする遺伝子を、Bリンパ球抗原活性を有するペプチドをコードするDNAと一緒にトランスフェクトして、腫瘍関連抗原の提示を促進し、腫瘍特異的免疫を誘導してもよい。このように、ヒト対象におけるT細胞媒介性免疫応答の誘導によって、前記対象の腫瘍特異的耐性が十分に克服されうる。
【0167】
造血制御活性
IL−22タンパク質又はモジュレータを、造血の制御及びこれを利用した骨髄性細胞又はリンパ球様細胞欠損症の治療に使用してもよい。コロニ形成細胞又は因子依存性細胞系統を支援する二義的な生物学的活性でさえもが、例えば赤血球の始原細胞の成長及び増殖の支援などの造血制御への、単独での又は他のサイトカインとの組み合わせとしての関与を示しており、このことは、例えば様々な貧血の治療或いは放射線照射/化学療法と組み合わせての使用による赤血球前駆細胞及び/又は赤血球細胞の産生の刺激;例えば化学療法と組み合わせて、その結果起こる白血球の抑制を予防又は治療するのに有用な、顆粒球及び単球/マクロファージなどの骨髄性細胞の成長及び増殖(即ち、通常のCSF活性)の支援;巨核球及びこれから生じる血小板の成長及び増殖を支援することによる、例えば血小板減少症などの様々な血小板障害の予防又は治療並びに、一般には、血小板輸血に代わるか又はこれを補うための使用;及び/又は、任意の及び全ての上述の造血細胞へと成熟することが可能であり、従って様々な幹細胞障害(例えば再生不良性貧血及び発作性夜間血色素尿症が含まれるがこれらに限定されることはない、通常は移植によって治療される障害)において治療効果を有する、造血幹細胞の成長及び増殖の支援;並びに、放射線照射/化学療法後の幹細胞区画を、正常な細胞として又は遺伝子治療用に遺伝子操作された細胞として、in vivo又はex vivoで再増殖させることにおいて効果を有することを示している。
【0168】
本発明のタンパク質の活性を、その他の手段の中で特に、以下の方法で測定してもよい:
【0169】
様々な造血系統の増殖及び分化の好適なアッセイは、上記に引用されている。
【0170】
胚の幹細胞分化のアッセイ(数ある中で特に、胚分化における造血に影響を及ぼすタンパク質を特定する)には、Johansson他 Cellular Biology 15:141−151,1995;Keller他,Molecular and Cellular Biology 13:473−486,1993;McClanahan 他,Blood 81:2903−2915,1993に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0171】
幹細胞の生存及び分化のアッセイ(数ある中で特に、リンパ球造血を制御するタンパク質を特定する)には、Methylcellulose colony forming assays,Freshney,M.G.Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney,他編、Vol pp.265−268,ワイリー−リス社、ニューヨーク州ニューヨーク、1994; Hirayama他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5907−5911,1992;Primitive Hematopoietic colony forming cells with high proliferative potential,McNiece,I.K.及びBriddell,R.A.Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney他編、Vol pp. 23−39,ワイリー−リス社、ニューヨーク州ニューヨーク、1994;Neben他,Experimental Hematology 22:353−359,1994; Cobblestone area forming cell assay,Ploemacher,R.E.Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney他編,Vol pp.1−21,ワイリー−リス社、ニューヨーク州ニューヨーク、1994;Long term bone marrow cultures in the presence of stromal cells, Spooncer,E.,Dexter,M.及びAllen,T.Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney他編、Vol pp.163−179,ワイリー−リス社、ニューヨーク州ニューヨーク、1994;Long term culture initiating cell assay,Sutherland,H.J.Culture of Hematopoietic Cells.R.I.Freshney他編,Vol pp.139−162,ワイリー−リス社、ニューヨーク州ニューヨーク、1994に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0172】
組織成長活性
本発明の一タンパク質はまた、骨、軟骨、腱、靭帯及び/又は神経組織の成長又は再形成、創傷治癒及び組織の修復と置換、並びに熱傷、切開創及び潰瘍の治療に使用される組成物において有用性を有するであろう。
【0173】
本発明の一タンパク質、それは骨が正常に形成されない場合の軟骨及び/又は骨の成長を誘導するが、ヒト及びその他の動物における骨折、及び軟骨の損傷又は欠損の治療に有用である。本発明のタンパク質を使用したそのような製剤が、閉鎖骨折及び開放骨折の整復において、及び人工関節の良好な固定において、予防的な用途を有するであろう。骨形成物質によって誘導されるde novo骨形成は、先天性の、外傷による、又は腫瘍切除による顔面頭蓋欠損の修復に貢献すると共に、美容成形術においても有用である。
【0174】
本発明の一タンパク質は、歯周病の治療及びその他の歯の修復プロセスにも使用されよう。そのような物質が、骨形成細胞を誘引する、骨形成細胞の成長を刺激する、又は骨形成細胞の前駆細胞の分化を誘導する環境を提供するであろう。本発明の一タンパク質が、例えば骨及び/又は軟骨の修復を刺激することによって、或いは炎症又は炎症プロセスが媒介する組織破壊プロセス(コラゲナーゼ活性、破骨細胞活性など)を阻害することによって、骨粗しょう症又は変形性関節症の治療にも有用であろう。
【0175】
本発明のタンパク質に起因しうる組織再形成活性の別の一カテゴリーは、腱/靭帯形成である。本発明の一タンパク質、それは腱/靭帯様組織又はその他の組織の形成を、そのような組織が正常に形成されない状況下で誘導するが、このタンパク質は、ヒト又はその他の動物における腱又は靱帯の断裂、変形及びその他の腱又は靱帯の欠陥の治癒に有用である。腱/靭帯様組織誘導タンパク質を使用したそのような製剤が、腱又は靱帯組織の損傷を防止する予防的用途を有するであろうし、また、腱又は靱帯の骨又はその他の組織への良好な固定及び腱又は靱帯組織の欠陥の修復にも使用されよう。本発明の組成物によって誘導されるde novo腱/靭帯様組織形成は、先天性の、外傷による、又はその他の原因による腱又は靱帯の欠陥の修復に貢献すると共に、腱又は靱帯を結合させるか又は修復する美容成形術においても有用である。本発明の組成物が、腱又は靱帯形成細胞を誘引する、腱又は靱帯形成細胞の成長を刺激する、腱又は靱帯形成細胞の前駆細胞の分化を誘導する、又は腱/靭帯の細胞又は前駆細胞の成長をex vivoで誘導し、その後in vivoに戻して組織修復を行わせるための環境を提供するであろう。本発明の組成物は、腱炎、手根管症候群及びその他の腱又は靱帯の欠陥の治療にも有用であってもよい。これらの組成物に、当業で公知の適切なマトリックス及び/又は金属イオン封鎖剤を、担体として含有するであろう。
【0176】
本発明の前記タンパク質は、神経細胞の増殖並びに神経及び脳組織の再形成、即ち中枢神経系及び末梢神経系の疾患並びに神経障害や、神経細胞又は神経組織の変性、死又は外傷を伴う機械的及び外傷性の障害の治療にも有用であろう。より詳細には、あるタンパク質は、末梢神経の負傷、末梢神経障害及び限局的な神経障害などの末梢神経系疾患並びに、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症及びシャイ−ドレーガー症候群などの中枢神経系疾患の治療に使用され得る。本発明に基づいて治療可能な更なる状態には、例えば脊髄障害、頭部外傷などの機械的及び外傷性の障害並びに卒中など脳血管疾患が含まれる。化学療法又はその他の医学的療法に起因する末梢神経障害も、本発明のタンパク質を用いて治療可能であろう。
【0177】
本発明の複数のタンパク質が、褥瘡性潰瘍、血管機能不全に関連する潰瘍、外科的な及び外傷性の創傷などが含まれるがこれらに限定されることはない難治性創傷のより良好な又は迅速な閉合にも有用であろう。
【0178】
本発明の一タンパク質は、臓器(例えば膵臓、肝臓、腸、腎臓、皮膚、内皮を含む)、筋肉(平滑筋、骨格筋又は心筋)及び血管(血管内皮を含む)組織などのその他の組織を発生又は再生させる、或いはそのような組織を有する細胞を成長させる活性も発揮するであろう。線維症瘢痕の抑制又は調節による正常な組織の再生によって、望ましい効果の一部を得てもよい。本発明の一タンパク質は、脈管形成活性をも発揮するであろう。
【0179】
本発明の一タンパク質は、腸管の保護又は再生並びに肺又は肝臓の線維症、様々な組織における再潅流障害及び全身性サイトカイン障害に起因する状態の治療にも有用であろう。
【0180】
好適な一実施態様においては、本発明を、腎臓組織のex vivo及びin vivo双方でのリモデリングに使用する。例えば、外来性のIL−22は、腎臓の近位尿細管における上皮組織の発生を誘導する。
【0181】
本発明の一タンパク質は、上述の組織の前駆組織又は細胞からの分化の促進又は抑制;或いは上述の組織の成長の抑制にも有用である。
【0182】
本発明の一タンパク質の活性は、当業で公知の方法で測定することができる。その幾つかを以下に記す:
【0183】
組織発生活性のアッセイには、国際特許公報第WO95/16035号(骨、軟骨、腱);国際特許公報第W095/05846号(神経、ニューロン);国際特許公報第WO91/07491号(皮膚、上皮)に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0184】
創傷治癒活性のアッセイには、Winter,Epidermal Wound Healing,pps.71−112(Maibach,HI及びRovee,DT編),イヤー・ブック・メディカル・パブリッシャーズ社、シカゴ、Eaglstein及びMertz,J.により修正、Invest.Dermatol 71:382−84(1978)に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0185】
止血及び血栓溶解活性
本発明の一タンパク質は、止血又は血栓溶解活性をも発揮するであろう。この結果、そのようなタンパク質は、様々な凝固障害(血友病などの遺伝性障害を含む)の治療に有用であるか、或いは、外傷、外科手術又はその他の原因に起因する外傷を治療する際の凝固及びその他の止血事象を促進することが予想される。本発明の一タンパク質は、血栓の溶解又はその形成の抑制並びに、これに起因する状態(例えば、心筋及び中枢神経系脈管の梗塞症(例えば卒中))の治療及び予防にも有用であろう。
【0186】
本発明のタンパク質の活性を、数ある中で特に、以下の方法で測定してもよい:
【0187】
止血及び血栓溶解活性のアッセイには、Linet他,J.Clin.Pharmacol.26:131−140,1986;Burdick他,Thrombosis Res.45:413−419,1987;Humphrey他,Fibrinolysis 5:71−79(1991);Schaub,Prostaglandins 35:467−474,1988に記載されたものが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0188】
抗炎症活性
IL−22アンタゴニストを、抗炎症物質として使用してもよい。好適な状態(慢性及び急性の状態を含む)には、感染症(例えは敗血症性ショック、敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)など)、虚血−再潅流障害、内毒素性致死、関節炎、補体が媒介する激症拒絶反応、腎炎、サイトカイン又はケモカイン誘発性の肺障害、炎症性腸疾患、クローン病に関連する、或いはTNF又はIL−1などのサイトカインの過剰な生成に起因する炎症が含まれるが、これらに限定されることはない。更なる適用状態には、抗原物質又は材料に対する過敏症及び過敏性が含まれる。
【0189】
本発明について以下の非限定的実施例で更に説明する。本願全体を通じて引用された参考文献、登録特許及び公開特許出願並びに配列表の内容はすべて、引用をもってここに援用されたものである。
【実施例】
【0190】
実施例1:クローン「IL22」の同定及び特性の解析
本発明の一ポリヌクレオチドは、クローン「IL−22」として同定されている。クローンIL−22を以下の方法で単離した。ネズミのESTを、ConA及び骨髄由来の樹状細胞の双方によって活性化された脾臓細胞から作製したネズミcDNAライブラリから同定した。このESTを、分泌タンパク質をコードするcDNAを選別する方法を用いて同定した(米国特許第5,536,637号を参照のこと)。このネズミEST配列を用いて、同じcDNAライブラリから、全長ネズミクローンを単離した。このネズミクローンの配列を分析した結果、インターロイキン−10(IL−10)との高い相同性が判明した。
【0191】
このネズミクローンのヒト相同配列を単離するために、このネズミ配列の、IL−10との相同性を示す領域に基づき、PCRプライマを作製した。これらのプライマを、PHA/PMAによって刺激されたヒトPBMCに由来するcDNAライブラリの増幅に使用して、相当なサイズのPCR産物を得た。このPCR産物の配列を分析した結果、これが前記ネズミcDNAの相同配列であることが確認された。前記部分ヒトクローンの配列からオリゴヌクレオチドを作製し、これを用いて、前記PBMCライブラリから全長ヒトクローンを単離した。
【0192】
IL−22は、全長ヒトクローンであり、分泌タンパク質(ここで「IL−22」タンパク質とも呼ぶ)の全コーディング配列を有する。このアミノ酸配列を分析した結果、hIL−10との相同性が約23%であることが示された。IL−10中の推定されるレセプタ結合モチーフに基づき、類似の機能を有する3つのモチーフが、コンピュータ・モデリングによって提案された。これらは、配列番号2の残基50乃至60、残基63乃至81及び残基168乃至177の領域である。複数のデータベース分析の結果、IL−22が他の複数の種のIL−10とも同様のレベルの相同性を有することが判明した。
【0193】
現在のところ確認されているIL−22のヌクレオチド配列は、配列番号1として示されており、ポリ(A)鎖を有する。上述のヌクレオチド配列に対応するIL−22タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2として示されている。
【0194】
実施例2:IL−22タンパク質の特性の解析
全長IL−22を安定的に発現及び分泌する細胞系統を、適切な発現ベクター中でIL−22 cDNAを用いてCHO細胞をトランスフェクトすることによって作製した。適切なIL−22発現ベクターを用いて一過性にトランスフェクトされたCOS細胞を用いて、分析用のIL−22タンパク質を作製した。トランスフェクションを、市販のLipofectamine試薬(Gibco社)を使用して実施した。興味深いことに、IL−22を発現するCOS細胞が、細胞培養単層中で不均一に分離し、孔を形成することが観察された。トランスフェクトされたCOS細胞によって調整された培地を用いて、IL−22タンパク質のサイトカイン様活性を実証した。細胞溶解物のウェスタンブロット分析によって、マクロファージ様特性を発揮する腎臓糸球体間質組織由来の細胞系統(MES−13;Dumoutier他(2000)J. of immunology 164:1814−1819を参照のこと)において、Stat−3をIL−22発現細胞によって調整された培地に曝露すると、この細胞がリン酸化される(活性化される)ことが示された。更に、Stat−3のリン酸化は、IL−22タンパク質で処理された、トランスフェクトされていないCOS細胞中で誘導される。
【0195】
IL−22タンパク質(ここに記載のトランスフェクトされたCOS細胞系統に由来する)の電気泳動分析の結果、発現されたタンパク質のサイズがある範囲内にわたることが示された。COS由来のIL−22タンパク質を電気泳動の前にN−グリカナーゼで処理すると、未処理のIL−22に見られる移動度の最も高い(例えば分子量が最も低いなどの)種類に対応する単一バンドが現れた。このことは、IL−22のアミノ酸配列中に見られる推定N−結合型グリコシレーション部位(配列番号2のアミノ酸残基54乃至56、68乃至70及び176乃至178)において起こりうると予想されるグリコシレーション事象と一致する。
【0196】
エドマンN末端配列決定法によって、成熟IL−22タンパク質のN末端が、配列番号2の位置34にある残基(アラニン)から始まることが確認された。「6xヒスチジン」アフィニティタグとFLAGエピトープタグとを成熟IL−22タンパク質のN末端に融合させる発現ベクターを作製した。(付加されたアミノ酸タグは、配列番号5で表され、以下のアミノ酸配列を有する:
MKFLVNVALVFMVVYISYIYAGSGHHHHHHGSGDYKDDDDKAPISSHCR)。
これらのタグ付けされたコンストラクトを用いて、安定に発現するCHO細胞系統と、一過性に発現するCHO細胞系統とを作製した。これらのタグは、IL−22検出のための(例えば抗6xhis抗体;抗FLAG抗体)、及び前記タンパク質を調整培地から精製するための(Ni+2樹脂を使用)簡便な手段を提供する。IL−22を発現しているCOS細胞系統からこのタグによって精製されたヒトIL−22タンパク質を用いて、MES−13細胞においてStat−3を活性化させた。
【0197】
複数のIL−22 mRNA転写産物を、活性化されたTh1及びTh2細胞内で比較(例えばSyrbe他,(1999)Springer Seminars in Immunopathology,21:263−85を参照のこと)した結果、活性化されたTh1細胞では、活性化されたTh2細胞におけるよりもIL−22の発現レベルが実質的に高いことが示された。IL−22 mRNAの分析を、RNase保護アッセイで実施した。その結果、IL−22が、適応性免疫応答の間に、Th1 CD4+ T細胞によって特異的に誘導された。
【0198】
例3:IL−22組換えアデノウィルスベクターの構築及びin vivoでの投与
pED6dpc−2mIL−22をEcoRI及びNotIで消化し、1.1kbのmIL−22 cDNA断片を、EcoRI及びNotIで消化したアデノウィルスベクターAdori1−2と連結させることにより、Adori1−2ネズミIL−22(mIL−22)ベクターを作製した。pEGFP−N1(クローンテック・ラボラトリーズ社、カリフォルニア州パロアルト)をEcoRl及びNotlで消化し、前記EGFPをAdori1−1のEcoRl及びNotl部位中に挿入することにより、Adori1−1緑色蛍光タンパク質(GFP)コンストラクトを作製した。これらのプラスミド中のcDNAインサートの詳細な制限消化分析及び配列決定により、これらのコンストラクト双方を検証した。mIL−22 cDNA及びEGFPの発現は、サイトメガロウィルス(CMV)前初期プロモータ及びエンハンサによって促進される。
【0199】
ヒト腎臓の胚腎臓細胞系統293における相同組換えによって、Ad5 Elaが削除された(dl327)組換えアデノウィルスを作製した。組換えアデノウィルスを単離し、次に293細胞上で増幅した。このウィルスを、3サイクルの凍結融解で感染した293細胞から放出させた。このウィルスを、2つの塩化セシウム遠心沈殿グラジェントにて精製し、pH7.2のリン酸緩衝食塩水(PBS)に対して4℃で透析を行った。透析後、グリセロールを濃度10%になるまで加え、前記ウィルスを使用時まで−80℃で保存した。前記ウィルスの特性を、前記ウィルスの導入遺伝子の発現、293細胞上のプラーク形成単位、粒子数/ml、菌体内毒素の測定及びPCR分析並びに前記ウィルス中のIL−22コーディング領域の配列分析によって解析した。
【0200】
mIL−22をコードする組換えアデノウィルス粒子5×1010個を、単回投与にて、生後7乃至8週の雌C57Bl/6マウスの尾の静脈に注射した。コントロールマウスに、GFPをコードするアデノウィルス又はPBS/10%グリセロールを投与した。各実験グループからのマウスを、注射後様々な時点で屠殺した。血液学的及び血清化学的分析のために、血液を心臓穿刺によって採取した。血液を眼窩後洞から採取し、血液塗抹検査にて差動カウントを実施した。組織を採取し、ホルマリン中で固定し、ヘマトキシリン及びエオシンにて染色して、組織変化を調べた。
例4:IL−22の免疫学的効果
【0201】
後生生物におけるIL−22の免疫学的効果を、ウィルスを用いてネズミIL−22のcDNAをマウス中に導入することで調べた。アデノウィルスベクターを用いて、5×1010個のウィルス粒子を静脈内注射又は皮下注射することにより、ネズミIL−22のcDNAを生後8週のC57/B6雌マウス中で発現させた。注射後7乃至14日目に試験マウスを屠殺し、緩衝液のみ又は緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現しているアデノウィルスを注射されたコントロールマウスと比較した。7日目及び14日目に、ウィルスによるネズミIL−22を発現したマウスにおいて、胸腺の絶対重量及び相対重量が大幅に減少したことが確認された。脾臓の絶対平均重量が14日目に減少し、肝臓の重量は、7日目に僅かに増加した。胸腺の大幅なびまん性萎縮及びリンパ球の枯渇(顕微鏡下で観察)が、7日目及び14日目で顕著であった。腎臓重量の増加及び肝臓の肥大も観察された。
【0202】
加えて、赤血球細胞数、ヘモグロビン及びヘマトクリット値の減少を含めた数多くの血液学的効果が、7日目に顕著に見られた。これらの効果を併せて考慮すると、これらの動物で貧血が起こったことが示される。更に、好中球の増加に起因する血小板の増加及び白血球細胞数の増加も観察された。これらの観察結果から、再生応答の存在を立証する証拠は見られず、これらの効果が骨髄レベルで起こるのかもしれないことが示された。この原因としては、腎臓又は腸で小分子が失われるのかもしれないことが考えられる。更に、7日目及び14日目にアルブミンレベルが僅かに減少する一方で、血清アミロイドAおよびフィブリノーゲンレベルが増加したが、このことは、急性期応答の存在を示唆している。その他の臨床上の観察結果には、体重の減少、軽微な脱水症の兆候、尿比重の増加、尿量の減少及び腎臓の近位尿細管の好塩基化が含まれる。観察された好塩基化は、細胞分裂の増加及び腎臓の近位尿細管の上皮細胞中に存在するrRNAの増加に起因する。
【0203】
例5:抗IL−22モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の作製及び特性の解析
モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を、本明細書中にも記載の通常の方法を用いて作製した。以下の表は、モノクローナル抗体P3/1、P3/2、P3/3及びP3/5並びにIL−22に対するニワトリのポリクローナル抗体の結合特異性及び中和特異性を示したものである。
【0204】
【表2】

【0205】
結合特異性を、マウス又はヒトh/fでタグ付けしたIL−22マイクロタイタプレートを使用して、ELIZAにて調べた。各抗体は、ヒト又はマウスIL−22のいずれかに対する強い特異性を示した。中和特異性を、前記抗体が5ng/mlのマウス又はヒトh/fでタグ付けしたIL−22が媒介するSTAT3リン酸化を抑制する能力を評価することによって調べた。結合したネズミIL−22を使用した酵素結合免疫吸着アッセイ(ELIZA)で、モノクローナル抗体P3/1が、IL−22−Fcについては〜2nM、H/F IL−22については〜10nMで、〜5nMのED50を有することが示された。更に、P3/1モノクローナル抗体は、組換えIL−22を認識することに加えて、IL−22レトロウィルスベクターでトランスフェクトされたT細胞から分泌されたナイーブIL−22にも結合する。
【0206】
IL−22抗体P3/1は、前記サイトカインが丁度飽和状態にある(1nM)場合に、〜1nMのID50を有し、IL−22活性を化学量論上は阻害することが判明している。
【0207】
例6 IL−22 mRNA及びレセプタの発現
様々なヒト及びマウス組織におけるIL−22及びそのレセプタの発現を、半定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)にて調べた。これらの実験は、IL−22メッセンジャーRNA(mRNA)が、コントロールアクチンに対して正規化を行った場合に、ヒトの精巣、肺、前立腺及び末梢血リンパ球(PBL)において非常に低レベルに存在することを示す。更に、半定量RT−PCRの結果、IL−22レセプタが、ヒトの膵臓において最高レベルで、また肝臓、腸、皮膚、甲状腺、腎臓、心臓、胃、精巣、唾液腺、副腎及び前立腺においてより低いレベルで検出されることが示された。一方、ネズミIL−22レセプタは、肝臓、小腸、筋肉、皮膚及び卵巣において最高レベルに発現し、腎臓及び胚e8.5及びe19においてより低いレベルで発現する。
【0208】
例7 IL−22タンパク質のin situハイブリダイゼーション及びアポトーシス染色
IL−22タンパク質と、アデノウィルス発現IL−22(AdIL−22)又はリポ多糖類(LPS)で治療されたマウスのレセプタメッセンジャーRNA(mRNA)とのin situハイブリダイゼーションを実施した。その結果を以下に示す:
【0209】
A.IL−22サイトカインmRNAの検出
【表3】

【0210】
B.LPS治療されたマウスにおけるIL−22レセプタmRNAの検出
【表4】

【0211】
更に、IL−22レセプタmRNAは、小腸及び大腸、胃、リンパ節、脾臓及び肺で検出される。IL−22レセプタの発現が、LPSなどの先天的免疫応答の媒介物質によって更に上方調節され得る。
【0212】
最後に、mIL−22タンパク質を静脈内投与されたc57BL/6マウスから採取した腎臓細胞のTUNELアッセイで、少数のアポトーシス上皮細胞が幾つかの近位尿細管曲部に見られた。食塩水を静脈内投与されたマウス(コントロール群)では、陽性の染色は観察されなかった。
【0213】
これらのデータは、前記サイトカインとレセプタとの双方が、先天的免疫応答の間に導入されるのかもしれないことと、前記導入が、炎症状態(LPS)にある組織に限定されることとを示している。IL−22は、適応免疫反応の間に、Th1 CD4+ T細胞からも導入されるのかもしれない。循環白血球はレセプタを有さないと考えられることから、この結果は、IL−22が適応免疫反応の下流側の組織内でエフェクタとして機能し、前記レセプタの組織発現によって構成的に強化され、先天的な炎症誘発因子によって更に上方調節されることを示唆している。
【0214】
例8:IL−22によって媒介される遺伝子発現変化
IL−22がAdIL−22又はAd−GFPコンストラクトに感染したマウスの肝細胞における遺伝子発現レベルを変化させる能力を調べた。
【0215】
感染後1日乃至3日の凍結マウス肝臓を粉砕し、Promega RNAgents Total RNA Isolation System(プロメガ社、ワイオミング州マディソン)を用いてRNAを精製した。このRNAを、RNeasy mimikitを用いて更に精製した。全RNAを、RNeasy mimikit(キアゲン社、ドイツ国ヒッデン)を用いて、ヒトPBMCから単離した。
【0216】
全RNA10μgを、100pMのT7/T24でタグ付けされたオリゴ−dTプライマ(ジェネティックス・インスティテュート社、マサチューセッツ州ケンブリッジで合成)を用いて、70℃で10分間変性させた後に氷冷し、ハイブリダイゼーション用の全RNAを作製した。以下の緩衝液条件下で、cDNAの第一鎖の合成を行った:1倍の第一鎖緩衝液(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社、カリフォルニア州カールズバッド)、10mMのDTT(ギブコ社/インビトロゲン社)、500μMの各dNTP(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社、カリフォルニア州カールズバッド)、400単位のSuperscript RT II(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)及び40単位のRNase抑制物質(アンビオン社、テキサス州オースチン)。反応は、47℃で1時間にわたって進行した。cDNAの第二鎖を、列挙した最終濃度の以下の試薬を加えて合成した:1倍の第二鎖緩衝液(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)、200μMの更なる各dNTP(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)、40単位の大腸菌DNAポリメラーゼI(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)、2単位の大腸菌RNaseH(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)及び10単位の大腸菌RNAリガーゼ。反応は、15.80℃で2時間にわたって進行した。反応の最後の5分間に、6単位のT4 DNAポリメラーゼ(ニューイングランド・バイオラブズ社、マサチューセッツ州ベヴァリー)を添加した。
【0217】
得られた二本鎖cDNAを、BioMagカルボキシル基末端粒子を用いて、以下のように精製した:0.2mgのBioMag粒子(ポリサイエンス社、ペンシルヴェニア州ウォリントン)を、0.5MのEDTAで3回洗浄することで平衡させ、0.5MのEDTA中で、濃度22.2mg/mlにて再懸濁させた。この二本鎖cDNA反応物を、最終濃度10%PEG/1.25M NaClまで希釈し、ビード懸濁液を、最終ビード濃度0.614mg/mlとなるまで添加した。この反応物を、室温にて10分間インキュベートした。このcDNA/ビード複合体を、300μlの70%エタノールで洗浄後、エタノールを除去し、試験管を空気乾燥させた。10mM、pH7.8のTris−酢酸を20μl加えてcDNAを溶離し、2乃至5分間インキュベートし、cDNAを含有する上清を除去した。
【0218】
10μlの精製した二本鎖cDNAを、1倍のIVT緩衝液(アンビオン社、テキサス州オースチン)、5000単位のT7 RNAポリメラーゼ(エピセンター・テクノロジーズ社、ワイオミング州マディソン)、3mMのGTP、1.5mMのATP、1.2mMのCTP及び1.2mMのUTP(アマーシャム社/ファーマシア社)、0.4mMの各bio−16 UTP及びbio−11 CTP(エンゾ・ダイアグノスティック社、ニューヨーク州ファーミングデール)及び80単位のRNA分解酵素抑制物質(アンビオン社、テキサス州オースチン)を含有するin vitro転写(IVT)溶液に添加した。反応は、37℃で16時間にわたって進行した。標識されたRNAを、RNeasy(キアゲン社)を用いて精製した。RNA産生量を、260nmでの吸収度を測定することで定量した。
【0219】
12μgの前記in vitro転写産物を、40mMのTris−酢酸、pH8.0、100mMの酢酸カリウム、及び30mMの酢酸マグネシウム中にて、94℃で35分間断片化した。この断片化された標識RNAプローブを、1倍の2−N−モルホリノエタンスルホン酸(MES緩衝液(pH6.5))、50pMのBio948(プローブアレイ上の標識構造とハイブリダイズするコントロールビオチン標識オリゴ(ジェネティックス・インスティテュート社、マサチューセッツ州ケンブリッジ))、100μgのニシン精子DNA(プロメガ社、ワイオミング州マディソン)、500μg/mlのアセチル化BSA(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)及び1μl/μgの標準曲線試薬(ジーン・ロジック社、メリーランド州ゲーサーズバーグが提供するプロプライエタリな試薬)の最終組成のハイブリダイゼーション緩衝液中に希釈した。このハイブリダイゼーション溶液を、2つのガラスビード(フィッシャー・サイエンティフィック社、ペンシルヴァニア州ピッツバーグ)を用いて、45℃で一晩プレハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション溶液を清浄な試験管に移し、95℃で1乃至2分間加熱し、高速で2分間微量遠心分離して、ペレット状の不溶性の塊を得た。複数のオリゴヌクレオチドアレイ・カートリッジ(ネズミ74Kv2、アフィメトリックス社、カリフォルニア州サンタクララ)を、非ストリンジェントな洗浄緩衝液(0.9MのNaCl、60mMのリン酸ナトリウム、6mMのEDTA及び0.01%のTween20)で予め湿らせ、45℃で回転させながら5乃至10分間インキュベートした。カートリッジから緩衝液を除去し、アレイを、180μlの前記ハイブリダイゼーション溶液で、45℃で、毎秒45乃至60回転させながら、一晩ハイブリダイズさせた。一晩インキュベートした後に、ハイブリダイゼーション溶液を除去し、カートリッジを非ストリンジェントな洗浄緩衝液で満たした。これらのアレイ・カートリッジを、フルイディクス・ステーションを用いて、25℃の非ストリンジェントな洗浄緩衝液で2回混合/サイクルを10サイクルの後、ストリンジェントな洗浄緩衝液(100mMのMES、0.1MのNa、0.01%のTween20及び0.005%の消泡剤)で15回混合/サイクルを4サイクルにて洗浄した。次に、このプローブアレイの1回目の染色を、25℃で10分間、SAPE溶液(100mMのMES、1MのNa、0.05%のTween20、0.005%の消泡剤、2mg/mlのアセチル化BSA(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)及び10μg/mlのRフィコエリトリンストレプトアビジン(モレキュラー・プローブズ社、オレゴン州ユージーン))中で行った。1回目の染色の後、前記プローブアレイを、25℃の非ストリンジェントな洗浄緩衝液で4回混合/サイクルを10サイクルにて洗浄した。次に、このプローブアレイを、抗体溶液(100mMのMES、1MのNa、0.05%のTween20、0.005%の消泡剤、2mg/mlのアセチル化BSA(インビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ社)、100μg/mlのヤギIgG(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)及び3μg/mlのビオチン標識された抗ストレプトアビジン抗体(ヤギ)(ベクター・ラボラトリーズ社))中で、25℃で10分間染色した。この2回目の染色の後、前記プローブアレイを更に25℃で10分間、SAPE溶液中で再染色した。最後に、前記プローブアレイを、30℃の非ストリンジェントな洗浄緩衝液で、4回混合/サイクルを15サイクルにて洗浄した。
【0220】
Affymetrix遺伝子チップスキャナ(アフィメトリックス社、カリフォルニア州サンタクララ)を使用して、アレイをスキャンした。前記スキャナは、走査型共焦点顕微鏡を有し、励起光源としてアルゴンイオンレーザを使用し、光電子増倍管を用いて530nmのバンドパスフィルタ(フルオレセイン0又は560ロングパスフィルタ(フィコエリトリン))にて放射光を検出した。
【0221】
ネズミ74k(Mu74K)チップセットにてmRNAを分析した。GENECHIP4.0ソフトウェアを使用してデータを換算した。各実験試料を、ツーファイル(原語two−file)分析にて時間一致(原語time matched)コントロールと比較した。「存在する」と呼ばれる範疇の遺伝子については、データを1グループに区別し、「増加」とも「減少」とも呼ばれない遺伝子は全て除外した。
【0222】
3匹のマウスに関するデータを以下に示す(AD−GIL−19マウス49、51及び52)。Ad−GFPコントロールに対して発現が変化した遺伝子を、各動物毎に、平均変化倍数と共に示す。Ad−IL−22で治療された動物の遺伝子発現で観察された変化は、IL−22による急性期応答の誘発と一致する。前記観察された変化は、前記治療された動物における炎症状態も示す。
【0223】
【表5】

【表6】

【表7】

【0224】
【表8】

【表9】

【0225】
例9 in vivo関節炎モデルにおける抗IL−22抗体の効果
P3/1モノクローナル抗体がコラーゲン誘導関節炎(CIA)ネズミモデルにおける症状を緩和する能力を調べた。雄DBA/1(ジャクソン・ラボラトリーズ、メイン州バーハーバー)マウスを全ての実験に使用した。複数のDBAマウスに、抗体を予防的又は治療的に投与した。治療的処方では、一匹のマウスに2日連続して疾患が観察された場合に治療を開始した。
【0226】
ウシコラーゲンタイプII(コンドレックス社、ワシントン州レドモンド)を用いて関節炎を誘発させた。ウシコラーゲンタイプII(コンドレックス社、ワシントン州レドモンド)を0.1Mの酢酸に溶解させ、1mg/mlのヒト型結核菌(H37RA菌株)を含有する同量のCFA(シグマ社)中で乳化させた。0日目に、100μgのウシコラーゲンを、尾の付け根に皮下注射した。21日目に、200μgのウシコラーゲンを含有する0.1Mの酢酸溶液を同量の不完全フロイントアジュバント(シグマ社)と混合したものを、マウスの尾の付け根に皮下注射した。ナイーブ動物に、コラーゲンを含有しない以外は同じ成分の注射を行った。投薬プロトコルを図1に概略的に図示する。
【0227】
マウスを、疾患の進行について少なくとも1週間に3回モニタした。個々の肢に、以下の指標に基づき、臨床スコアを当てはめた:0=正常;P=指先の限局的な紅斑を特徴とする関節炎前駆症;1=指1乃至2本の腫れを伴う目に見える紅斑;2=足の腫れ及び/又は複数本の指の腫れを特徴とする、明白な紅斑;3=足首又は手首の関節に至る広範囲の腫れ;4=肢の使用の困難又は関節の硬直。従って、任意のマウスの全ての肢のスコアの合計は、最大で全身スコア16となった。
【0228】
動物を、疾患の様々な段階で安楽死させ、組織を採取して、足を組織学的検査用の10%ホルマリン又は4%パラホルムアルデヒド、pH7.47中で固定し、20%EDTA(pH8.0)中で脱灰し、in situハイブリダイゼーション用にパラフィン中に包埋した。これらの足を、光顕微鏡法で5等級スコア法(0乃至4)にて採点し、関節炎の強度及び程度を分析した。例えばパンヌスの形成、滑膜の線維化、関節軟骨のびらん及び/又は肋軟骨下の骨の破壊などの、炎症に関連したその他の変化に加えて、炎症性の浸潤物を採点に使用した。組織学的等級を、個々の肢の示数:NAD=0又は異常なし;1=極軽度から中程度;2:軽度から中程度;3:高度及び4:超高度を用いて調べた。
【0229】
IL−22抗体の治療的投与の効果を、図2に示す。身体スコアを、時間の関数として示す。抗IL−22抗体を投与されたマウスは、コントロールヒトIgG又はPBSを投与されたマウス(データは図示せず)に比較して、著しく軽い症状を呈した。
【0230】
中和IL−22抗体の予防的投与の効果を、図3乃至5に示す。身体スコアを、抗IL−22抗体又はコントロール抗体投与後の時間の関数として示す。抗IL−22抗体を投与されたマウスは、コントロールラットIgG又はPBSを投与されたマウス(データは図示せず)に比較して、著しく軽い症状を呈した。
【0231】
身体スコアを、別々の予防的処方を施された複数のマウスにおいても調べた。結果を、図4に時間の関数として示す。コントロール抗体を投与されたマウスは、抗IL−22抗体を投与されたマウスに比較して、著しく高い平均全身スコアを示した。抗IL−22抗体を投与されたマウスは、コントロールラットIgG1又はPBSを投与されたマウス(データは図示せず)に比較して、著しく軽い症状を呈した。
【0232】
前記予防的処方を施されたマウスの足における疾患の進行を、図5に示す。36日目のマウスを屠殺し、これらの足の疾患の重度を調べた。これらの足に、組織学的等級0乃至4を当てはめた。0は疾患無し、4は疾患の重度が最も高いことを表す。IL−22抗体を注射されたラットでは、組織学的等級「0」が60%を超え、一方、約20%のマウスの組織学的等級が「1」であった。約15%のマウスの組織学的等級が「2」であり、約10%のマウスの組織学的等級が「3」であった。少ないパーセンテージのマウスの組織学的等級が「4」であった。コントロール抗体を注射されたマウスでは、約30%が組織学的等級「0」を示し、約5%のマウスの組織学的等級が「1」であった。残りのマウスは、より重い組織学的等級を示した:約18%が組織学的等級「2」を示し、20%が組織学的等級「3」を示し、残りのマウスが組織学的等級「4」を示した。抗IL−22抗体を投与されたマウスは、コントロールラットIgG1又はPBSを投与されたマウス(データは図示せず)に比較して、著しく軽い症状を呈した。
【0233】
これらの結果は、IL−22の投与は、予防的なものであっても治療的なものであっても、動物系における関節炎の症状を著しく緩和することを示している。
【0234】
例10 IL−22転写産物のin situハイブリダイゼーション
関節炎に罹患したマウスの足蹠の様々な細胞種におけるIL−22及びIL−22レセプタ配列の発現を調べた。アンチセンスIL−22及びIL−22ネズミレセプタリボプローブを、対応する転写産物から2つの別個のPCR産物を生成させることにより、作製した。オリゴヌクレオチド5’−GACTGATAATACGACTCACTATAGGGCGAACAATTTTGACTCCGATATTGTCCAAG−3’(配列番号6)及び5’−AGGATGGAGACATCTGACTGCCCTACG−3’(配列番号5)をIL−22レセプタのセンスプローブの作製に使用し、5’−ACAATTTTGACTCCGATATTGTCCAAG(配列番号7)及び3’−GACTGATAATACGACTCACTATAGGGCGAAGGATGGAGACATCTGACTGCCCTACG−3’(配列番号8)をIL−22レセプタのアンチセンスプローブの作製に使用した。PCR増幅の後、プローブを、T7 RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写にて作製した。
【0235】
以下の配列をプラスミド内に入れて、この配列から、T7及びSP6プロモータの制御下でセンス又はアンチセンス転写産物を作製することにより、IL−22配列のプローブを作製した:CAGCCATACATCGTCAACCGCACCTTTATGCTGGCCAAGGAGGCCAGCCTTGCAGATAACAACACAGATGTCCGGCTCATCGGGGAGAAACTGTTCCGAGGAGTCAGTGCTAAGGATCAGTGCTACCTGATGAAGCAGGTGCTCAACTTCACCCTGGAAGACGTTCTGCTCCCCCAGTCAGACAGGTTCCA(配列番号9)。
【0236】
T7 RNAポリメラーゼ結合部位をこれらのオリゴヌクレオチドに組み込み、T7結合部位を前記PCR産物の5’末端に挿入してセンスリボプローブを作製するか、又は前記PCR産物の3’末端に挿入してアンチセンスリボプローブを作製した。ジゴキシゲニン標識プローブを、DIG DNAラベリング・ミックス(ロシェ・ダイアグノスティックス社、ドイツ国マンハイム)とT7 RNAポリメラーゼ(ロシェ・ダイアグノスティックス社)を製造者の説明に従って使用して作製した。CIAネズミモデルの足のIL−22レセプタmRNA陽性細胞は、マクロファージ、線維芽細胞、リンパ球亜群、活性化骨芽細胞、滑膜性腫瘍細胞及び表皮であった。コントロール足において又はセンスプローブを用いた場合には、陽性の染色は観察されなかった。mIL−22 mRNA陽性細胞は、好中球、マクロファージ、線維芽細胞及び骨細胞であった。mIL−22 mRNAによる染色は、センスプローブで治療した足部分では観察されなかったが、コントロールマウスの足では観察された。関節炎マウスの足には、IL−22レセプタ及びサイトカインの双方が存在することが、in situハイブリダイゼーションで示された。
等価物
【0237】
当業者は、本明細書に記載した発明の実施例の等価物を数多く、通常の実験で理解し、あるいは確認することが可能であろう。そのような等価物については、請求項に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】in vivoネズミ関節炎モデルにおけるIL−22抗体の効果の分析に使用する実験プロトコルを示した概略図である。
【図2】治療的処方に基づいてIL−22抗体又はコントロールで関節炎マウスを治療した後の身体スコアを示すグラフである。
【図3】予防的処方に基づいてIL−22抗体又はコントロールで関節炎マウスを治療した後の身体スコアを示すグラフである。
【図4】IL−22抗体又はコントロールで重度の関節炎マウスを治療した後の身体スコアを示すグラフである。
【図5】IL−22抗体又はコントロールの投与後に所定の組織学的等級を示した足の相対的パーセンテージを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−22タンパク質と免疫学的に反応する抗体。
【請求項2】
前記抗体が中和抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドと特異的に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列を有するIL−22タンパク質と免疫学的に反応するIL−22抗体及び薬学的担体を含有する薬学的組成物。
【請求項8】
前記抗体が中和抗体である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
対象におけるIL−22活性に関連した病的状態を治療するための薬学的組成物の製造方法であって、前記薬学的組成物が、前記病的状態を治療するために投与される、IL−22活性のレベルを抑制する有効量の物質を含む、製造方法。
【請求項11】
前記病的状態が、敗血症、自己免疫障害並びに炎症及び急性期応答の調節からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記自己免疫障害が、リウマチ様関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、重症筋無力症、炎症性腸疾患、狼瘡、糖尿病及び乾癬からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記炎症及び急性期応答の調節が、創傷治癒過程、コレステロール代謝、活性酸素による損傷、虚血、アテローム性硬化症及びアレルギーからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記物質が中和IL−22抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記物質が小分子である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記対象がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
関節炎に関連した症状の治療のための薬学的組成物の製造方法であって、前記薬学的組成物が、治療を必要とする対象に投与される治療上有効量のIL−22を含む、製造方法。
【請求項18】
前記関節炎がリウマチ様関節炎である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記IL−22抗体が治療的に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記IL−22抗体が予防的に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
対象の抗原に対する免疫応答を促進させるための医薬であって、免疫抗原性を発揮する量の前記抗原と、前記抗原と同時的に又は連続的に組み合わせた、免疫抗原性を増強する量のIL−22とを、組み合わせてなり、前記対象の免疫応答が促進されるように前記対象に投与される医薬。
【請求項22】
前記対象がヒトである、請求項21に記載の医薬
【請求項23】
前記IL−22の投与が同時的である、請求項21に記載の医薬
【請求項24】
IL−22の調節を必要としている対象の病的状態を治療するための薬学的組成物の製造方法であって、前記薬学的組成物が、前記対象の前記病的状態が治療されるように投与される、IL−22活性を調節する有効量の物質を含む、製造方法。
【請求項25】
前記病的状態が感染性疾患状態である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記感染性疾患状態が、細菌、ウィルス、寄生生物及び真菌からなる群から選択される生物によって開始される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
対象の腎臓における炎症性病状の治療方法であって、前記対象の前記炎症性病状が治療されるように、IL−22活性を調節する有効量の物質を投与することが含まれる方法。
【請求項28】
前記炎症性病状が虚血による壊死の結果である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象における癌の治療方法であって、前記癌が治療されるように、IL−22活性を調節する有効量の物質を投与することが含まれる方法。
【請求項30】
前記癌が腎細胞腫である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
腎組織の再構築方法であって、腎組織の前記再構築が起こるように、IL−22活性を調節する有効量の物質を投与することが含まれる方法。
【請求項32】
前記再構築がex vivoで行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記再構築がin vivoで行われる、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−137986(P2009−137986A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1211(P2009−1211)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【分割の表示】特願2002−567986(P2002−567986)の分割
【原出願日】平成14年2月25日(2002.2.25)
【出願人】(501418214)ジェネティクス インスティテュート,エルエルシー (35)
【Fターム(参考)】