説明

炭化水素を処理するための触媒を再生する方法

【課題】耐火性酸化物担体上に付着されているVIII族の少なくとも一つの金属とVIB族の少なくとも一つの金属を含む触媒を再生する方法を提供する。
【解決手段】酸素の存在下に350℃〜550℃の範囲にある温度で触媒を熱処理する少なくとも一つの第一工程; 下記式(I)の一つ以上の添加剤を触媒の表面に付着させる少なくとも一つの第二工程を含む方法を用いる:



(式中:
- R1は、水素原子又は炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示し;
- R2は、必要により、酸素原子及び窒素原子より選ばれる一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、;
- R3は、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に石油精製と石油化学の分野において炭化水素を処理するための触媒を再生する方法に関する。
本特許出願は、より詳細には、炭化水素の水素化処理及び/又は水素化変換のための使用済み触媒を再生して、良好なレベルの活性を回復させ少なくとも新鮮な触媒に近づくことを企図した方法に関する。
本発明は、また、本方法によって得られる再生触媒に関する。
最後に、本発明は、これらの触媒の活性を増加させるための特定の添加剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
精製装置及び/又は石油化学装置において行われる炭化水素を処理するための方法は、水素の存在下に行われる多くの処理を含んでおり、これらは炭化水素分子の構造を変化させ且つ/又は炭化水素画分から望ましくない化合物、例えば、特に硫黄を含む化合物、窒素を含む化合物又は芳香族化合物を除去するためのものである。限定されない例として、水素化分解プロセス、改質プロセス又は水素添加プロセス及び“水素化処理”プロセス、例えば、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱芳香族又は水素化脱金属を挙げることができる。
これらのプロセスは、元素周期律表のVIII族の少なくとも一つの金属を、通常はVIB族の一つ以上の金属と組み合わせて含む一つ以上の触媒的に活性な金属を付着している一つ以上の耐火性無機酸化物に基づく多孔性担体を含む特定の触媒を必要とする。
これらの使用の間に、特に表面にコークス、即ち、重質炭化水素や残留炭素や金属不純物の混合物が付着するために、触媒は徐々に非活性化する。
経済のために、また、環境を保護するために、これらの触媒を使用サイクル後に再利用することが今後ますます研究されるようになる。
従って、再使用されることを可能にするのに充分なレベルまで活性を回復させるために使用済み触媒を処理することからなる“再生”プロセスが開発された。
使用済み触媒の再生は、従来は、コークスを燃焼させることにより行われており、触媒は酸素を含むガスの存在下に高温に加熱される。それは、インサイチュで(即ち、停止した後に、直接、装置内で)又はエクスサイチュで(即ち、装置から触媒を排出した後に)行われ得る。
しかしながら、これらの最初の再生後の触媒の活性は、新鮮な状態での初期活性よりしばしば著しく劣っている。
このために、最近、できる限り新鮮な触媒に近いレベルに活性を戻すために再生触媒を有機添加剤で含浸させる“復活(rejuvenation)”プロセスが開発された。
【0003】
このように、特許出願WO 96/41848には、担体上に付着しているVIII族金属の酸化物とVI族金属の酸化物を含む水素化処理触媒を活性化するための方法が記載されている。この方法によれば、少なくとも2つのヒドロキシル基と2〜10個の炭素原子を含む化合物又はこのような化合物の(ポリ)エーテルである添加剤と触媒とを接触させ、次に、添加剤の少なくとも50%が触媒上に存在したままであるような条件下で触媒を乾燥させる。
この方法は、活性を増加させることが望まれる新鮮な触媒、又は予め再生工程に供された使用済み触媒に適用され得る。好ましい添加剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコールである。
特許出願EP 0 882 503には、ガンマ・アルミナや一つ以上の触媒的に活性な金属を含浸したアモルファスアルミナに基づく担体を含む使用済み触媒を再生するための方法であって:
(1)炭素ベースの付着物を除去するために使用済み触媒を処理し;
(2)このようにして処理した担体を支持液体中のキレート化剤を用いて湿潤させ;
(3)このようにして湿潤させた担体を熟成相に供し;
(4)担体を乾燥させて、支持液体を蒸発させ;
(5)このようにして乾燥させた担体をか焼する
前記方法が記載されている。
キレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその誘導体、例えば、N-ヒドロキシ-EDTAや二アンモニウム-EDTA、トリ(2-アミノエチル)アミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル) N,N'-四酢酸及びテトラエチレンペンタアミンが挙げられている。
特許出願WO 01/02092には、添加された(additivated)使用済み触媒を再生し回復させる方法であって、500℃の最高温度で酸素を含むガスと接触させることにより触媒を再生させる工程、次に、触媒を有機添加剤と接触させ、続いて、必要により、添加剤の少なくとも50%が触媒上に存在したままであるような温度で乾燥することにより、触媒を復活させる工程を含む方法が記載されている。
再生温度は、好ましくは350〜425℃である。この方法に使われる有機添加剤は、少なくとも一つの炭素原子と一つの水素原子を含む任意の化合物であり得る。
しかしながら、従来の技術に記載される方法は、多くの欠点を示し、特に、リサイクルした触媒の活性の良好なレベルを達成することを必ずしも可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来の技術の方法の欠点を克服し且つ少なくとも等価レベルの活性を、また、より良好なレベルの活性さえも得ることを可能にするVIII族とVIB族の金属に基づく使用済み触媒を再生する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人会社は、この目的が、二つの工程の組み合わせ、制御された温度条件下にコークスを燃焼させる第一工程、続いて、触媒の表面に特定の添加剤を付着させる第二工程を使う方法により達成されることを見い出した。
従って、本発明の内容は、耐火性酸化物担体上に付着されているVIII族の少なくとも一つの金属とVIB族の少なくとも一つの金属を含む触媒を再生する方法であって:
- 酸素の存在下に350℃〜550℃の範囲にある温度で触媒を熱処理する少なくとも一つの第一工程;
- 下記式(I)の一つ以上の添加剤を触媒の表面に付着させる少なくとも一つの第二工程
を含む、前記方法である:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中:
- R1は、水素原子又は炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示し;
- R2は、必要により、酸素原子及び窒素原子より選ばれる一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を示し、;
- R3は、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示す)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、従来の技術の一部の方法において見られるものより大きい優れたレベルの活性を触媒に回復させることを可能にする。
更に、式(I)の添加剤は、使うのが容易である。
最後に、従来の技術に記載される再生法と比較すると、本発明の方法は、触媒の予備硫化を生じる追加の利点を示すことがわかった。
このことは、VIII族とVIB族の金属に基づく触媒が金属スルフィドの形で活性であるからである。このことは、触媒の使用直前に、金属酸化物を金属スルフィドに変換することによって金属触媒部位を活性化するために、触媒の硫化を行うことが知られている理由である。
この硫化は、触媒を一つ以上の硫化剤、例えば、特に、硫化水素、元素の硫黄、CS2、有機硫黄化合物、例えば、メルカプタン、スルフィド又はポリスルフィド、又は硫黄化合物を天然に含み且つ/又は硫黄化合物が濃縮された炭化水素画分と接触させることにより行われる。
本発明の方法は、触媒の適当な再生に加えて、全く同一の添加剤により行われる、硫黄の第一の固定を同時に行うことを可能にすることがわかった。このことは、予備硫化された形態で存在する再生触媒を得ることを可能にする。
従って、本発明の方法は、リサイクル触媒の使用時に行われる最終の硫化処理を大幅に容易にすることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、酸素の存在下に350℃〜550℃の範囲にある温度で触媒を加熱することからなる触媒の熱処理の第一工程を含む。この工程の目的は、コークスの燃焼によって触媒の表面に存在するコークスを除去することである。
触媒における温度の厳密な制御が、この工程において不可欠である。このことは、できる限り完全なコークスの燃焼を可能にするために、温度が充分に高くなければならないからである。しかしながら、高温が、例えば、触媒の多孔性の劣化を引き起こすことによって触媒を損傷する影響を有するので、温度は局部的にさえ、550℃を超えてはならない。
好ましくは、熱処理の第一工程は、530℃以下、好ましくは520℃以下の温度で行われる。
本発明の特定の実施態様によれば、熱処理である第一工程は、全体に又は部分的に、500℃を超え550℃以下の温度で行われる。
この特定の実施態様は、より急速に且つより完全にコークスと他の不純物を除去することを可能にする。しかしながら、このことは、温度が局部的に550℃を超えないように、温度の正確な制御を必要とする。
触媒の温度は、例えば、触媒の本体に適切に配置される熱電対によってそれ自体既知の方法で制御し得る。
第一工程は、酸素の存在下に、例えば、酸素を含むガス流により行われる。このガスは、例えば、純粋な又は追加の酸素と又は不活性ガスと混合した空気から構成され、空気の酸素含有量を増加或いは低下させることができる。このガスは、また、酸素と不活性ガス、例えば、窒素の混合物又は酸素を含む他のガス混合物から構成され得る。
ガスの酸素含有量は、好ましくは、燃焼温度をより良く制御するように制御される。この含有量は、第一工程において一定であり得るし、一方、経時変動もさせ得る。
ガス流量もまた、燃焼を制御するように制御される。
第一工程は、異なる温度で及び/又は可変量の酸素の存在下に行われるいくつかの相を含み得る。
この第一工程の全持続時間は、通常は、処理される触媒の量、触媒の組成、表面に存在するコークスの量及び操作条件(温度、酸素含有量)に左右される。この持続時間は、温度が上がるにつれて減少する。通常は、0.1〜20時間、好ましくは0.2〜10時間である。
【0010】
本発明の方法は、式(I)の一つ以上の添加剤を触媒の表面に付着させる第二工程を含む。
好ましい実施態様によれば、式(I)の一つ又は複数の添加剤は、一つの硫黄原子だけを含む。
好ましくは、式(I)において、R1は、水素原子又は炭素原子1〜8個、好ましくは炭素原子1〜4個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示す。
好ましくは更にまた、R2は、一つ以上の-OH基、-OR基、-NH2基、-NHR基又は-NRR'基(ここで、R及びR'は炭素原子1〜4個、好ましくは炭素原子1又は2個を含むアルキル基を示す)により置換され得る、炭素原子1〜8個、好ましくは炭素原子1〜6個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を示す。
好ましくは更にまた、R3は、炭素原子1〜8個、好ましくは炭素原子1〜4個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基示す。
好ましい実施態様によれば、式(I)において:
- R1は、水素原子又は炭素原子1又は2個を含むアルキル基を示し、好ましくは、R1は、水素原子を示し;
- R2は、一つ以上の-OH基により置換され得る炭素原子1〜5個を含むアルキル基を示し;
- R3は、炭素原子1又は2個を含むアルキル基を示し、好ましくは、R1は、メチル基を示す。
本発明の特に好ましい実施態様によれば、式(I)の添加剤は、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸である。即ち、式(I)において: R1は水素原子を示し、R2は-CHOH-CH2-CH2-基を示し、R3はメチル基を示す。
この実施態様は、アミノ酸のメチオニンと似ており、同様の経路により合成され得る化合物であるので、添加剤が調製するのが容易で且つ安価である限りにおいて特に有利である。
更に、この添加剤は、水に完全に可溶性である追加の利点を示し、これが水溶液の形で使われることを可能にする。
式(I)の添加剤は、触媒をこの添加剤と接触させることにより触媒の表面に付着する。いくつかの方法で、例えば、触媒を純粋な添加剤と(特に液体又は気体の形で)、又は液体、気体又は超臨界であり得る担体流体中に添加剤を含む組成物と接触させることにより、進行させることが可能である。好ましくは、式(I)の添加剤は、担体液体中の添加剤の溶液又は懸濁液と触媒を接触させることにより付着する。
従って、特に好ましくは、適切な水性液体及び/又は有機液体中の添加剤の溶液又は分散液を用いて触媒を含浸させる。
【0011】
本発明の特に有利な実施態様によれば、式(I)の一つ又は複数の添加剤は、この(これらの)添加剤の一つ以上の水溶液で含浸することにより触媒上に付着する。
好ましくは、使われる一つ又は複数の水溶液は、有機共溶媒を含まない。
触媒の乾燥含浸により(即ち、触媒の細孔容積以下の容積を有する溶液を用いる)、過剰量の溶液の存在下に触媒を含浸させることにより又は過剰量の溶液に触媒を浸漬することにより進行させることが可能である。
触媒と添加剤とのこの接触は、瞬間であり得るし、20時間まで続けることもできる。好ましくは、この接触操作は、約2時間、好ましくは約1時間続ける。大気圧から5バールまでの範囲にある圧力で、好ましくは大気圧で行うことができる。
溶媒が残る場合には、引き続き、例えば、加熱して、蒸発させることにより、又は吸引により、又はガス流を用いて、必要により加熱を存在させてもよく、乾燥させることにより、除去される。いずれにせよ、残留溶媒の除去は、適切である場合には、触媒の表面に付着した添加剤の全部、或いは少なくともかなりの部分を保持し且つ添加剤が分解するのを防ぐように行われなければならない。
また、過剰量の溶媒を除去する前か後に、周囲温度で又は100℃までの範囲にあり得る、弱い加熱の存在下に、触媒を熟成する工程を行うことも可能である。
この熟成は、0.1〜100時間、好ましくは0.2〜20時間、より好ましくは1〜10時間の範囲にある時間行われ得る。
一般に、第二工程は、触媒の表面に、式(I)の添加剤の充分な量の付着を可能にする条件下で行われて、良好なレベルの活性を得ることができなければならない。
好ましくは、第二工程の終わりに、式(I)の一つ又は複数の添加剤のモル量のVIII族とVIB族の金属の全モル量に対する比率として表される、触媒の表面に付着した式(I)の一つ又は複数の添加剤の全量は、VIII族とVIB族の金属1モルにつき一つ又は複数の添加剤は少なくとも0.01モルである。この量は、好ましくはVIII族とVIB族の金属1モルにつき一つ又は複数の添加剤0.01〜10モル、より好ましくは0.05〜5モル、更により好ましくは0.1〜1.5モルである。
第二工程において、式(I)の一つ又は複数の添加剤の付着と同時に又は式(I)の一つ又は複数の添加剤の付着前に及び/又はその付着後に、式(I)の一つ又は複数の添加剤に加えて、一つ以上の追加の有機添加剤又は無機添加剤を付着させることも可能である。しかしながら、このような追加の付着は、式(I)の添加剤の付着又はその活性に不利が生じないような条件下で行われなければならない。
【0012】
本発明の再生方法は、上記二工程に加えて、必要により、前記第一工程及び/又は第二工程の前に及び/又は後に行われるか又はこれらの二工程の間に挿入される一つ以上の追加の工程を含んでもよい。
従って、本発明の方法は、有利には、前記第一工程の前に、触媒中に含まれる遊離不純物と炭化水素を除去する工程を含むことができる。
この工程は、触媒を洗浄することにより行うことができる。このような洗浄は、適切な溶媒、例えば、トルエン、キシレン、アセトン又は他の任意の適切な溶媒を用いて行うことができる。
この工程は、また、有利には、ガス流、例えば、空気、蒸気、二酸化炭素又は不活性ガス、例えば、窒素を用いて、例えば、100〜450℃の温度でストリッピングすることにより行うことができる。
本発明の方法は、また、前記第二工程後に、開放空気中又は空気、不活性ガス、例えば、窒素、又は他の任意の適切なガスのガス流の存在下に、80℃〜350℃、好ましくは100℃〜200℃の範囲にある温度で行うことができる触媒を乾燥させる工程を含むことができる。
本発明の方法は、また、必要により、前記第二工程後に、開放空気中又は空気、不活性ガス、例えば、窒素、又は他の任意の適切なガスのガス流の存在下に、300℃〜500℃の範囲にある温度で行うことができる触媒をか焼する工程を含んでもよい。
本発明の方法がすでに触媒を乾燥させる工程を含む場合には、か焼工程(存在する場合には)は乾燥工程の後に行われる。
好ましくは、本発明の方法の終わりであって、かつ、従来のいかなる硫化工程の前に、触媒の表面に存在する硫黄の量は、触媒の全質量に対して、0.5〜8質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲にある。より好ましくは、触媒の表面に存在する硫黄の量は、触媒の全質量に対して、2〜3質量%の範囲にある。
本発明の方法の終わりであって、かつ、リサイクル触媒の使用の直前に、触媒を一つ以上の硫化剤と接触させることにより通例の最終の硫化を行うことが有利である。この硫化は、水素の存在下での活性化の前に或いは付随して行われ得る。
【0013】
対応する硫化剤は、例えば、硫化水素、元素の硫黄、CS2、有機硫黄化合物、例えば、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド又はポリスルフィド、又は硫黄化合物を天然に含み且つ/又は硫黄化合物が濃縮された炭化水素画分より選ばれる通例の化合物である。
しかしながら、本発明によれば、触媒がすでに予備硫化されている形で与えられるので、従来の技術の方法と比較すると、硫化の持続時間及び/又は強度は、かなり短縮及び/又は低下させ得る。これにより、時間が節約され且つほとんどの場合攻撃的で且つ汚染する化合物である硫化剤が節約されることになる。
再生触媒が硫黄化合物を含む炭化水素原料を処理する方法に使われる場合、原料へ硫黄化合物を添加せずに触媒を原料で直接活性化させる工程を行うことも可能であり、原料中に存在する硫黄によってのみ必要な化学量論で触媒の硫化を完了し得る。このことは、本発明の特に有利な実施態様である。
本発明の方法は、インサイチュで、即ち、触媒が使われる装置において直接行うことができる。
好ましい実施態様によれば、エクスサイチュで、即ち、装置から触媒を排出した後に行われる。
本発明の方法は、また、一部の工程がインサイチュで行われ、その他の工程がエクスサイチュで行われる工程も含み得る。
本発明の方法は、精製と石油化学の分野において、炭化水素を水素化処理及び/又は水素化変換するためのいかなる使用済み触媒をも再生することを可能にする。
これらは、元素周期律表のVIII族の少なくとも一つの金属、例えば、コバルト、ニッケル、鉄、白金又はパラジウムを、VIB族の少なくとも一つの金属、例えば、モリブデン、タングステン又はクロムと組み合わせて含む触媒である。VIII族の一つの金属又は複数の金属の含量は、触媒の全質量に対して、一般的には0.1〜10質量%であり、VIB族の一つの金属又は複数の金属の含量は、触媒の全質量に対して、一般的には1〜20質量%である。
【0014】
これらの金属は、一つ以上の耐火性無機酸化物、例えば、特に、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、酸化チタン、酸化ホウ素、このような酸化物の混合物に基づく担体上に付着されている。
本発明の方法は、アルミナベースの担体上に付着したCoMo、NiMo、NiW又はNiCoMo金属の組み合わせを含む触媒の再生に特に適切である。
使用済み触媒は、新鮮な状態において又は前のリサイクルの結果として、一つ以上の添加剤、例えば、有機添加剤、ハロゲン化合物、ホウ素化合物又はリン化合物を含んでいてもよく、又は含んでいたことがあってもよい。
本発明の方法に関係する触媒は、通常は、小さい固体粒子、例えば、ビーズ、多少円筒形の粒子、又は押出し物の形で用意される。これらは、BET法により測定される比表面積が一般的には100〜300m2/gであり、窒素吸着により決定される細孔容積が0.25〜1ml/gの範囲にあり、窒素吸着により決定される平均細孔径が7〜20nmの範囲にある。
本発明は、また、上記の方法によって得られる再生触媒に関する。これらの触媒は、上で説明したように、特に良好なレベルの活性を示すとともに予備硫化されている追加の利点を示す。
本発明の他の内容は、耐火性酸化物担体に付着されているVIII族の少なくとも一つの金属とVIB族の少なくとも一つの金属を含む触媒の活性を増加させるための上記の式(I)の一つ以上の添加剤の使用である。
この使用に関係する触媒は、コークスの少なくとも部分的な除去によって予め再生された新鮮な触媒又は使用済み触媒であり得る。
以下の実施例は、単に本発明の具体的な説明として示されるものである。
【0015】
実施例
実施例1
23.1質量%のMoO3、4.2質量%のCoO、12.4質量%の炭素及び14.5質量%の硫黄を含む市販の使用済み触媒から出発して本実施例を行った。
この使用済み触媒の一部を、空気の下、400℃の温度で2時間熱処理に供して、処理触媒T1を得た。
手順は、100g(当量乾燥質量)の触媒を5つのガラスるつぼに入れ、るつぼを300℃に予熱したマッフル炉に導入し、この温度で1時間維持し、炉を400℃にし、この温度で2時間維持することからなる。
この同じ使用済み触媒の同じ分量を、最終固定相に対する520℃の温度で2時間以外は同じ手順に従って熱処理に供して、処理触媒T2を得た。
触媒T1とT2の特性を、以下の表に示す:
【0016】

【0017】
100gの触媒T1を、10gのポリエチレングリコール200(PEG-200)と33gの脱塩水から構成される溶液で細孔容積が飽和するまで含浸した。
含浸後、試料を70℃の温度で8時間熟成させる工程に供し、次に、140℃のオーブンで窒素下に乾燥して、比較再生触媒A1を得た。
100gの触媒T1を、14.2gの市販の88質量% 2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸(即ち、12.5gの2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸)溶液と36gの脱塩水から構成される溶液で細孔容積が飽和するまで含浸した。
含浸後、試料を70℃の温度で8時間熟成させる工程に供し、次に、140℃のオーブンで窒素下に乾燥して、本発明の再生触媒A2を得た。この触媒は、4.2質量%の炭素及び2.3質量%の硫黄を含む。
100gの触媒T2を、14.2gの市販の88質量% 2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸(即ち、12.5gの2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸)溶液と36gの脱塩水から構成される溶液で細孔容積が飽和するまで含浸した。
含浸後、試料を70℃の温度で8時間熟成させる工程に供し、次に、140℃のオーブンで窒素下に乾燥して、本発明の再生触媒A3を得た。この触媒は、4.4質量%の炭素と2.4質量%の硫黄を含む。
次に、炭化水素の水素化脱硫における触媒T1とT2及びA1〜A3の活性を比較し、以下に記載されるプロトコールに従った。
用いられる原料は、以下の特性を示す直留軽油である:
【0018】

【0019】
各試料について、試験に使われる触媒の容積は、10mlであった。
水素化脱硫試験の前に、各触媒試料を、ジメチルジスルフィド(DMDS)を用いて2.5質量%の硫黄が添加された軽油で周囲温度で3時間湿潤した後に硫化することによって活性化した。硫化プロセスを、3 h-1の時空間速度(HSV)で、200(Sl/h)/(l/h)のH2/添加軽油比率と3MPa(30バール)の全圧において行った。周囲温度から250℃までの第一温度勾配を30℃/hの勾配で行い、その後、250℃で8時間の固定相を続けた。引き続き、250℃から320℃までの第二温度勾配を20℃/hの勾配で行い、その後、320℃で5時間の固定相を続けた。
次に、試験原料を注入して、試験を開始した。試験条件は以下の通りであった: 3MPaの圧力、300のH2/軽油比率、HSV = 2h-1、340〜350℃の温度。
原料の硫黄含有量を、UV蛍光アナライザを用いて装置の出口で測定した。脱硫反応の見掛け定数を、以下の式E1に従って算出した:
【0020】
【数1】

【0021】
式中
v = 見掛け反応定数
α= 反応次数(1.2とみなされる)
S = 溶出液の硫黄分
S0 = 原料の硫黄分
HSV = 液体原料の時空間速度
各試料の性能を、参照触媒に関して評価した。このために、相対容積活性(RVA)を以下の式E2に従って算出した:
【0022】
【数2】

【0023】
v値100を、参照として処理触媒T2にあてはめた。
得られた結果を、以下の表に示す:
【0024】

【0025】
上記表に示される結果は、本発明の方法により再生された触媒A2とA3が、処理触媒T1とT2より活性であり、比較再生触媒A1より活性であることを示している。
【0026】
実施例2
第二工程において使われる添加剤(2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸)の量を2倍にした以外は上記実施例1のそれぞれの触媒A2及びA3と同一の方法で本発明の再生触媒A4及びA5を調製して、再生触媒(予備硫化)の硫黄含有量を増加させた:
100gの触媒T1を、28.4gの市販の88質量% 2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸溶液(即ち、25gの2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸)と24.5gの脱塩水から構成された溶液で細孔容積が飽和するまで含浸した。
含浸後、試料を70℃の温度で8時間熟成する工程に供し、次に、140℃のオーブンで窒素下に乾燥して、本発明の再生触媒A4を得た。この触媒は、8.2質量%の炭素と4.3質量%の硫黄を含む。
100gの触媒T2を、28.4gの市販の88質量% 2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸溶液(即ち、25gの2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸)と24.5gの脱塩水から構成された溶液で細孔容積が飽和するまで含浸した。
含浸後、試料を70℃の温度で8時間熟成する工程に供し、次に、140℃のオーブンで窒素下に乾燥して、本発明の再生触媒A5を得た。この触媒は、8.1質量%の炭素と4.3質量%の硫黄を含む。
次に、炭化水素の水素化脱硫における触媒A4とA5の活性を試験し、硫化による活性化の処理を除いて、上記実施例1と同一のプロトコールを行い、実施例1と同じであるが、DMDSが添加されていない軽油で行った。その他については、硫化手順は、実施例1の手順と、更に水素化脱硫試験自体と完全に同じである。
得られた結果を以下の表に示す:
【0027】

【0028】
上記表に記載される結果は、より多量の2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を使いつつ本発明の方法により再生された触媒A4及びA5の活性が、触媒A2及びA3に匹敵し、比較触媒A1より大きいことを示している。
このように、本発明の方法は、触媒を調製することを可能にし、活性化は特定の硫化剤の使用を必要とせず、対照的に、脱硫される軽油で直接行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性酸化物担体上に付着されているVIII族の少なくとも一つの金属とVIB族の少なくとも一つの金属を含む触媒を再生する方法であって:
- 酸素の存在下に350℃〜550℃の範囲にある温度で触媒を熱処理する少なくとも一つの第一工程;
- 下記式(I)の一つ以上の添加剤を触媒の表面に付着させる少なくとも一つの第二工程
を含む、前記方法:
【化1】

(式中、
- R1は、水素原子又は炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示し;
- R2は、必要により、酸素原子及び窒素原子より選ばれる一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を示し;
- R3は、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示す)。
【請求項2】
前記第一工程が、530℃の以下の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一工程が、全体に又は部分的に、500℃を超え550℃以下の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)において、R1が、水素原子又は炭素原子1〜8個、好ましくは炭素原子1〜4個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)において、R2が、一つ以上の-OH基、-OR基、-NH2基、-NHR基又は-NRR'基(ここで、R及びR'は炭素原子1〜4個、好ましくは炭素原子1又は2個を含むアルキル基を示す)により置換され得る、炭素原子1〜8個、好ましくは炭素原子1〜6個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を示すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)において、R3が、炭素原子1〜8個、好ましくは炭素原子1〜4個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の添加剤が、2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の一つの添加剤又は複数の添加剤が、一つ以上のこの添加剤水溶液で含浸することにより触媒上に付着されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二工程の終わりに、式(I)の一つ又は複数の添加剤のモル量のVIII族とVIB族の金属の全モル量に対する比率として表される、触媒の表面に付着されている式(I)の一つ又は複数の添加剤の全量が、1モルのVIII族とVIB族の金属につき一つ又は複数の添加剤が少なくとも0.01モルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第二工程の終わりに、触媒の表面に付着されている式(I)の一つ又は複数の添加剤の全量が、1モルのVIII族とVIB族の金属につき一つ又は複数の添加剤が0.01〜10モルであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一工程と第二工程の前に及び/又は後に行われるか或いはまたこれらの二工程の間に挿入される一つ以上の追加の工程を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一工程の前に、触媒を溶媒で洗浄するか又はガス流を用いてストリッピングすることにより遊離不純物と炭化水素を除去する工程を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第二工程後に、開放空気中又は空気、不活性ガス、例えば、窒素、又は他の任意の適切なガスのガス流の存在下に、80℃〜350℃の範囲にある温度で行われる触媒を乾燥する工程を含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
エクスサイチュで、即ち、触媒を装置から排出した後に行われることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
本方法の終わりであって、かつ、いかなる適切な硫化工程の前に、触媒の表面に存在する硫黄の量が、触媒の全質量に対して、0.5〜8質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法によって得られる再生触媒。
【請求項17】
耐火性酸化物担体上に付着されているVIII族の少なくとも一つの金属とVIB族の少なくとも一つの金属を含む触媒の活性を増加させるための下記式(I)の一つ以上の添加剤の使用:
【化2】

(式中:
- R1は、水素原子又は炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示し;
- R2は、必要により、酸素原子及び窒素原子より選ばれる一つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を示し;
- R3は、炭素原子1〜30個を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を示す)。

【公開番号】特開2010−89087(P2010−89087A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−251294(P2009−251294)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(509301769)ユーレキャット ソシエテ アノニム (4)
【Fターム(参考)】