説明

炭化水素を分解する多孔質触媒体及びその製造方法、炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法、並びに燃料電池システム

【課題】 本発明は、炭化水素を分解する多孔質触媒体として、より安価であり、炭化水素の分解・除去に対して優れた触媒活性を示し、耐硫黄被毒性に優れ、低スチーム下においても高い耐コーキング性を有し、DSS運転に最適な圧壊強度及び変位長を有し、優れた耐久性を有する触媒の提供を目的とする。
【解決手段】 少なくともマグネシウム及び/又はカルシウムとアルミニウムとを含む多孔性複合酸化物と粒子径が1〜25nmの金属ニッケルとからなる多孔質触媒体であって、該多孔質触媒体の平均圧壊強度が5kgf以上であって、荷重5kgfで圧縮したときの変位長が0.05mm以上であることを特徴とする炭化水素を分解する多孔質触媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を分解する多孔質触媒体として、より安価であり、炭化水素の分解・除去に対して優れた触媒活性を示し、耐硫黄被毒性に優れ、低スチーム下においても高い耐コーキング性を有し、DSS運転に最適な圧壊強度及び変位長を有し、優れた耐久性を有する触媒の提供を目的とする。
【0002】
また、本発明は、前記触媒を用いることによって、効果的に炭化水素を分解・除去するとともに、水素を製造することを目的とする。
【背景技術】
【0003】
近年、地球環境の問題より新エネルギーの早期実用化技術が脚光を浴びている。その手段の一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池には使用する電解質の種類に応じて、リン酸型(PEFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)等のタイプが一般的に知られている。
【0004】
燃料電池に用いる水素の発生燃料源としては、灯油、イソオクタン、ガソリン等の石油系、LPG、都市ガスなど幅広い炭化水素含有原料が検討されている。
【0005】
炭化水素含有燃料を改質して水素を主成分とする改質ガスを得る方法として、SR(スチーム改質)、POX(部分酸化)、SR+POX(オートサーマル)等の技術がある。このような改質技術の中、高い水素濃度の改質ガスを得られることから、スチーム改質(SR)のコージェネレーションへの適用検討に最も力点が置かれている。
【0006】
スチーム改質(SR)は以下の反応式によって行われる。
2n+2 + nHO → nCO + (2n+1)H
CO + HO → CO + H
一般に、この反応は600℃〜800℃で行われ、S/C(水蒸気/炭素比:Steam/Carbon比)が2.0〜3.5付近で行われる。この反応は吸熱反応であり、温度が高い程、反応を促進することができる。
【0007】
一般に燃料電池システムでは、脱硫器を用いて燃料中の硫黄分をほぼ完全に除去し炭化水素の分解を行って水素を主成分とした改質ガスを得、該改質ガスを燃料電池セルスタックに導く工程を経る。このような従来法では、改質触媒により炭化水素類の改質を行っているが、長時間にわたって運転する間に改質触媒の性能が低下する。特に、脱硫器をスリップした極微量の硫黄分などにより、改質触媒が被毒され触媒活性が低下してしまう。加えて、C以上の炭化水素を燃料として用いた場合、燃料中の炭化水素が熱分解を起こして、カーボン析出したり、縮重合物が生成したりして、改質触媒の性能を低下させる可能性がある。また、一般に、燃料電池システムのうちPAFC、PEFCの改質触媒は一般的にビーズ状等の成型物として用いられる。この場合、コーキングがビーズ内部で発生すると甚だしい場合は触媒が破裂、粉化して反応管の閉塞を招いてしまう。
【0008】
都市ガス、LPG、灯油、ガソリン、ナフサ等の燃料にはC以外の炭化水素、すなわち、C以上の炭化水素が含まれる。例えば、都市ガス13Aでは、メタン:88.5%、エタン:4.6%、プロパン:5.4%、ブタン:1.5%程度であり、主成分であるメタンに加えて炭素数C〜Cの炭化水素が11.5%も含まれている。また、LPGではエタン:0.7%、プロパン:97.3%、プロピレン:0.2%、ブタン:1.8%程度であり、Cの炭化水素が1.8%含まれている。C以上の炭化水素は容易に熱分解を起こして、カーボン析出をする。
【0009】
現在、スチーム改質触媒における活性金属種として、貴金属系ではPt、Rh、Ru、Ir、Pd等が用いられ、卑金属系ではNi、Co、Fe等が用いられている。このうち、触媒活性の高さから、Ni、Ruの金属元素を担持した触媒が主に使用されている。
【0010】
貴金属系元素Ru等では、S/C(水蒸気/炭素比)が低い条件下でも炭素析出を起こしにくいが、原料中に含まれる硫黄分によって、容易に硫化被毒されて触媒活性が短時間で劣化してしまう。硫化被毒された触媒上には炭素析出が極めて起こり易く、硫黄被毒が炭素析出の引き金になる欠点を持っている。また、貴金属が高価であることから、これを用いた燃料電池システムの値段は非常に高価になってしまい、燃料電池システムのより一層の普及を妨げる要因となりうる。
【0011】
また、卑金属系元素のNiでは比較的炭素析出を起こしやすいため、水蒸気を理論組成よりも過剰に添加した水蒸気/炭素比が高い条件下で使用する必要があり、運転操作が複雑になる他、水蒸気原単位が増加して経済的でない。さらにシステムの連続運転可能条件が狭められ、これを全うするために高価な制御システムが必要になるばかりでなく、システム全体が非常に複雑になるため、製造コストとメンテナンスの面において経済的ではない。
【0012】
燃料電池システムではDSS運転(Daily Start−up and Shutdown)を行うため、外部加熱による反応器の伸縮・膨脹により触媒体が密に詰まっていき、これの繰り返しにより触媒体の破裂を招いてしまう。そのため、反応器の伸縮・膨張に耐え得る多孔質触媒体が強く望まれている。
【0013】
また、炭化水素を分解する触媒としては、より安価であり、機能面では優れた炭化水素を分解除去する触媒活性を示し、低スチーム下においても高い耐コーキング性を有し、優れた耐久性を有する触媒が望まれている。
【0014】
従来、α−アルミナや酸化マグネシウム、酸化チタンなどの担体に、白金、パラジウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどを触媒活性金属として担持した触媒が、炭化水素分解用触媒として報告されている(特許文献1〜3など)。また、Niを含有するハイドロタルサイト化合物を前駆体として炭化水素分解用触媒を製造することが知られている。(特許文献4、5など)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平9−173842号公報
【特許文献2】特表2000−503624号公報
【特許文献3】特開2003−135967号公報
【特許文献4】特開2001−146406号公報
【特許文献5】特開2004−82034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前記特許文献1に記載の技術は、α―アルミナを担体に、Ruを活性金属種として灯油等の炭化水素を含む燃料の水蒸気改質にて水素の製造方法を示している。しかし、Ru系触媒は原料中に含まれる硫黄分によって硫化し、その硫化によりコーキングが促され触媒活性を失ってしまうと考えられる。
【0017】
前記特許文献2、3に記載の技術は、耐硫黄被毒性の向上は得られるものの、未だ十分とは言い難い。
【0018】
また、前記特許文献4、5に記載の技術は、Niを含有するハイドロタルサイト化合物を前駆体として得られた炭化水素分解用触媒であるが、多孔質触媒体の圧壊強度及び変位については考慮されていない。
【0019】
本発明は、炭化水素を分解する多孔質触媒体として、より安価であり、炭化水素の分解・除去に対して優れた触媒活性を示し、耐硫黄被毒性に優れ、低スチーム下においても高い耐コーキング性を有し、DSS運転に最適な圧壊強度及び変位長を有し、優れた耐久性を有する触媒の提供を目的とする。
【0020】
また、本発明は、炭化水素を分解する多孔質触媒体及びその製造方法に関するものであり、高い圧壊強度を有しつつ、しかも長い変位長を有する炭化水素を分解する多孔質触媒体及びその製造方法の提供を目的とする。
【0021】
また、本発明は、前記触媒を用いることによって、効果的に炭化水素を分解・除去するとともに、水素を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0023】
即ち、本発明は、少なくともマグネシウム及び/又はカルシウムとアルミニウムとを含む多孔性複合酸化物と粒子径が1〜25nmの金属ニッケルとからなる多孔質触媒体であって、該多孔質触媒体の平均圧壊強度が5kgf以上であって、荷重5kgfで圧縮したときの変位長が0.05mm以上であることを特徴とする炭化水素を分解する多孔質触媒体である(本発明1)。
【0024】
また、本発明は、多孔質触媒体のニッケル含有量は金属換算で5〜30wt%であり、ニッケルが金属として含まれる割合がニッケル含有量に対して40〜75wt%であり、アルミニウム含有量は金属換算で15〜45wt%であることを特徴とする本発明1に記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体である(本発明2)。
【0025】
また、本発明は、本発明1乃至2に記載の多孔質触媒体に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素が含まれることを特徴とする炭化水素を分解する多孔質触媒体である(本発明3)。
【0026】
また、本発明は、少なくともマグネシウム及び/又はカルシウム、ニッケル及びアルミニウムを含むハイドロタルサイト化合物粉末と水酸化アルミニウムとを混合して成形し、焼成及び還元処理を行うことを特徴とする本発明1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体の製造方法である(本発明4)。
【0027】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体を用いて、反応温度が250℃〜850℃であり、スチームとカーボンのモル比(S/C)が1.0〜6.0であり、空間速度(GHSV)が100〜100000h−1である条件下で、炭化水素と水蒸気を反応させることを特徴とする炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法。である(本発明5)。
【0028】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体を用いることを特徴とする燃料電池システムである(本発明6)。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、金属ニッケルが非常に微細な粒子の状態で存在しているため、活性金属種である金属ニッケルが水蒸気に接触する面積が増大し、優れた触媒活性を有するものである。
【0030】
また、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、高い圧壊強度を有しているため、触媒反応中にコーキングが起こったとしても、多孔質触媒体が破裂、粉化することなく優れた触媒活性を維持することができる。
【0031】
また、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、大きな変位長を有しているので、DSS運転により反応器の伸縮、膨張が繰り返され触媒層が密に詰まったとしても、多孔質触媒体自身が圧力を緩和し、破裂、粉化することなく優れた触媒活性を維持することができる。
【0032】
また、前記のとおり、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、高い触媒活性を有するので、低スチーム下においても耐コーキング性に優れ高い触媒活性を示すことができる。
【0033】
さらに、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は金属ニッケルが微細な粒子の状態で存在しているため、活性点が非常に多いことが耐硫黄被毒性を高めている。そのため、耐久性の面でも優れた触媒活性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体について述べる。
【0035】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、少なくともマグネシウム及び/又はカルシウムとアルミニウムとを含む多孔性複合酸化物及び金属ニッケルとからなる。また、ニッケルとアルミニウムとを含む多孔性複合酸化物を含んでいてもよい。これらの複合酸化物はスピネル型結晶構造の化合物であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、粒子径が1〜25nmの金属ニッケルを含む。粒子径が1nm未満の金属ニッケルを含む多孔質触媒体を得ることは困難である。金属ニッケルの粒子径が25nmを超えると触媒の初期活性が低下すると同時に耐コーキング性が悪くなる。好ましくは1〜24nm、より好ましくは2〜20nmである。
【0037】
また、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体の平均圧壊強度は5kgf以上である。平均圧壊強度が5kgf未満の場合には、高温での使用時に割れが発生してしまう。さらに内部でコーキングが発生した場合に破壊、粉化してしまう。好ましくは6〜50kgf、より好ましくは7〜40kgfである。
【0038】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体を荷重5kgfで圧縮したときの変位長は0.05mm以上である。変位長が0.05mm未満の場合には、DSS運転に起因する反応器の伸縮・膨張に耐えることができず、多孔質触媒体が割れてしまう。好ましくは0.11mm以上である。また、上限は0.4mm程度である。
【0039】
また、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体のニッケル含有量は金属ニッケル換算で5〜30wt%であることが好ましい。5wt%未満では触媒の初期活性が大きく低下してしまう。また、30wt%を超えると上記した金属ニッケル粒子径の範囲の触媒を得ることができない。より好ましくは7〜27wt%、更により好ましくは9〜24wt%である。
【0040】
また、ニッケルが金属として含まれる割合は、ニッケル含有量に対して40〜75wt%であることが好ましい。金属ニッケルの割合が40%未満では触媒の初期活性が大きく低下してしまう。また、75%を超えると上記した金属ニッケル粒子径の範囲の触媒を得ることができない。金属ニッケルの割合は、より好ましくは42〜75wt%、更により好ましくは45〜73wt%である。
【0041】
また、アルミニウム含有量は金属アルミニウム換算で15〜45wt%であることが好ましい。アルミニウム含有量が15wt%未満では、満足する変位長を有した多孔質触媒体を作製することができない。また、45wt%を超えるとニッケル含有量に対する金属ニッケルの割合が40%未満となり、触媒の初期活性が大きく低下してしまう。アルミニウム含有量はより好ましくは27〜45wt%、更により好ましくは28〜43wt%である。
【0042】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体には、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素が含まれてもよい。アルカリ金属元素としては、ナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムなどの3B族及びランタノイド系、貴金属元素としては、白金、金、イリジウム、パラジウム、銀、インジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウムなどがその例として挙げられる。
【0043】
これらの元素は、その組合せや量に関して特に限定されるものではなく、用途に見合った触媒の性能を重視して選択すればよい。例えば、含有量としては20ppm〜65wt%である。
【0044】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体の製造方法について述べる。
【0045】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体の製造方法は、前駆体として少なくともマグネシウム及び/又はカルシウム、ニッケル及びアルミニウムを含むハイドロタルサイト化合物粉末に水酸化アルミニウムを添加、混合して成形体を作製した後、焼成して多孔性酸化物成形体とし、次いで、還元処理をして製造することができる。
【0046】
また、ハイドロタルサイト化合物を焼成して得られる酸化物粉末にニッケルを含む溶液を含浸させることにより、酸化物粉末にニッケルを含むハイドロタルサイト相を再生させて担持し、水酸化アルミニウムを添加・混合し、成形し、焼成して多孔性酸化物成形体とし、次いで、加熱還元しても良い。
【0047】
また、水酸化アルミニウムを含むハイドロタルサイト化合物成形体を焼成して得られる多孔性酸化物成形体に、さらにニッケルを含む溶液を含浸させることにより、多孔性酸化物成形体の表面近傍にニッケルを含むハイドロタルサイト相を再生させて担持した後、加熱還元しても良い。
【0048】
本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末は、少なくともマグネシウム及び/又はカルシウム、ニッケル及びアルミニウムを含むものである。本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末は、アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム原料及び/又はカルシウム原料、ニッケル原料及びアルミニウム原料水溶液を混合し、pH値が7.0〜13.0の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を50〜300℃の温度範囲で熟成し、その後、濾別分離し、乾燥して得ることができる。
【0049】
熟成時間は特に限定されるものではないが、1〜80時間、好ましくは、3〜24時間、より好ましくは、5〜18時間である。80時間を超える成長反応は工業的ではない。
【0050】
マグネシウム原料及び/又はカルシウム原料、ニッケル原料及びアルミニウム原料としては硝酸塩等水溶性のものであれば特に限定しない。
【0051】
マグネシウム原料としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム等を用いることができる。
【0052】
カルシウム原料としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0053】
ニッケル原料としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、安息香酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、ギ酸ニッケル、クエン酸ニッケル、硫酸ニッケル二アンモニウム等を用いることができる。
【0054】
アルミニウム原料としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、塩基性アンモニウムアルミニウム等を用いることができる。
【0055】
また、本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末を作製する際に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素を添加して作製しても良い。アルカリ金属元素としては、ナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムなどの3B族及びランタノイド系、貴金属元素としては、白金、金、イリジウム、パラジウム、銀、インジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウムなどがその例として挙げられる。
【0056】
また、ハイドロタルサイト化合物を焼成して得られる酸化物粉末に前記添加元素を含む溶液を含浸させることにより、酸化物粉末に添加元素を含むハイドロタルサイト相を再生させて担持し、水酸化アルミニウムを添加・混合し、成形し、焼成して多孔性酸化物成形体とし、次いで、加熱還元しても良い。
【0057】
また、水酸化アルミニウムを含むハイドロタルサイト化合物成形体を焼成して得られる多孔性酸化物成形体に前記添加元素を含む溶液を含浸させることにより、多孔性酸化物成形体の表面近傍に添加元素を含むハイドロタルサイト相を再生させて担持した後、加熱還元しても良い。
【0058】
本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末の粒子における平均板面径は0.05〜0.4μmが好ましい。平均板面径が0.05μm未満の場合には、濾別・水洗が困難となり工業的な生産が困難であり、0.4μmを超える場合には、炭化水素を分解する多孔質触媒体を作製することが困難である。
【0059】
本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末の結晶子サイズD006は0.001〜0.08μmが好ましい。結晶子サイズD006が0.001μm未満の場合には、水性懸濁液の粘度が非常に高く工業的な生産が難しく、0.08μmを超える場合には、炭化水素を分解する多孔質触媒体を作製するのが困難である。より好ましくは0.002〜0.07μmである。
【0060】
本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は3.0〜300m/gが好ましい。比表面積が3.0m/g未満の場合には、炭化水素を分解する多孔質触媒体を作製するのが困難であり、300m/gを超える場合には、水性懸濁液の粘度が非常に高く、また濾別・水洗が困難となり工業的に生産が困難である。より好ましくは5.0〜250m/gである。
【0061】
本発明におけるハイドロタルサイト化合物粉末の二次凝集粒子径は0.1〜200μmである。0.1μm未満の場合には粉砕処理が困難となり工業的に生産が困難である。200μmを超える場合には成形体を作製することが困難である。好ましくは0.2〜100μmである。
【0062】
上記粉砕処理は一般的な粉砕装置(アトマイザー、ヤリヤ、ヘンシェルミキサー等)を用いて行うことができる。
【0063】
本発明においては、多孔質触媒体の前駆体であるハイドロタルサイト化合物粉末に水酸化アルミニウム、成形助剤、さらに分散媒体として水及びアルコールを添加し、混練機(スクリューニーダー等)で粘土状混練物とした後に成形する。成形は、圧縮成形、プレス成形、打錠成形等で行うことができる。
【0064】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体の成形体の形状は、特に制約されず、通常の触媒に採用されている形状であれば良い。例えば、球状、円柱状、中空円柱状、ペレット状等である。
【0065】
球状の場合、その触媒体のサイズは、通常1〜10mmφであり、好ましくは2〜8mmφである。
【0066】
成形助剤には脂肪酸、セルロース、ポリビニルアルコール、でんぷん、メチルセルロース、マルトース、カルボキシメチルセルロース等を用いることができ、その中の2種以上を併用してもよい。これらの成形助剤は焼成処理により、燃焼消失し炭化水素を分解する多孔質触媒体には残留しない。添加量はハイドロタルサイト化合物粉末100重量部に対して、例えば1〜50重量部である。
【0067】
添加する水酸化アルミニウムとしては、結晶相がベーマイト、ギブサイト、バイヤライト等のものが挙げられ、粒子形状としては針状、板状、多面体等のものを用いることができる。また、水酸化アルミニウムの一次粒子としては、粒子径が0.01〜5μm、BET比表面積が0.1〜150m/gが好ましい。粒子径が0.01μm未満では、所望の変位長を有した多孔質触媒体を得ることができない。また、5μmを超える場合は多孔質触媒体の圧壊強度が大幅に低下してしまう。好ましくは0.05〜2μmである。添加量はハイドロタルサイト化合物粉末100重量部に対して、例えば1〜100重量部である。
【0068】
アルコール類としては、例えばエタノール、プロパノールなどの1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類、グリセリンなどの多価アルコール類等を用いることができ、その中の2種以上を併用してもよい。添加量はハイドロタルサイト化合物粉末100重量部に対して、例えば50〜150重量部である。
【0069】
また、燃焼性物質として、木屑、コルク粒、石炭末、活性炭、結晶性セルロース粉末、でんぷん、蔗糖、グルコン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリスチレン等及びこれらの混合物を添加しても良い。前記燃焼物質の添加量が多いほど細孔容積が大きくなるが、添加しすぎると強度低下を起こすので強度を考慮して添加量の調整を行えばよい。
【0070】
別にハニカム状とする場合には、必要に応じて自由に手法を選択すればよい。
【0071】
前記方法により成形したハイドロタルサイト化合物成形体の乾燥は、自然乾燥、熱風乾燥、真空乾燥などの方法により乾燥することができる。
【0072】
さらに、乾燥したハイドロタルサイト化合物成形体を焼成して多孔性酸化物成形体とする。焼成温度は700℃〜1500℃である。焼成温度が700℃未満の場合には圧壊強度を保つため長時間の焼成が必要となり、工業的ではない。また1500℃を超える場合には、所望の割合の金属ニッケルを含む多孔質触媒体を得ることができない。好ましくは800℃〜1400℃、より好ましくは900℃〜1300℃である。
【0073】
焼成の時間は1〜72時間である。1時間未満の場合では圧壊強度が低下し、72時間を超えるような長時間の焼成は工業的ではない。好ましくは2〜60時間であり、より好ましくは3〜50時間である。
【0074】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、多孔性酸化物成形体を600℃〜900℃の範囲で還元処理することにより得られる。還元温度が600℃未満の場合には、ニッケルが金属化しないので本発明の目的とする触媒活性が得られない。900℃を超える場合にはニッケルのシンタリングが進み粒子サイズが大きくなるため低温における炭化水素の転化率が低下し、さらに耐コーキング性も低下する。好ましくは700〜850℃である。
還元時の雰囲気は、水素を含んだガスなど還元雰囲気であれば特に限定されない。
還元処理の時間は特に限定されないが0.5〜24時間が望ましい。24時間を越えると工業的にメリットが見出せない。好ましくは1〜10時間である。
【0075】
次に、本発明に係る炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法について述べる。
【0076】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、炭化水素と接触させることで水素を含んだ混合改質ガスを得ることができる。
【0077】
本発明に係る炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法は、反応温度が250℃〜850℃であり、水蒸気と炭化水素とのモル比(S/C)が1.0〜6.0であり、空間速度(GHSV)が100〜100000h−1である条件下で、炭化水素を含む原料ガス及び水蒸気を本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体に接触させる。
【0078】
反応温度が250℃未満の場合には低級炭化水素の転化率が低く、長時間にわたり反応を行うとコーキングが起こりやすくなり終には触媒活性が失活することもある。850℃を超える場合には活性金属がシンタリングを起こしやすくなり触媒特性が失活することもある。好ましくは300〜700℃、より好ましくは400〜700℃である。
【0079】
水蒸気(S)と炭化水素(C)のモル比S/Cが1.0未満の場合には耐コーキング性が低下する。また、S/Cが6.0を超える場合には水素製造に多量の水蒸気を必要としコストがかさみ現実的ではない。好ましくは1.5〜6.0、より好ましくは1.8〜5.0である。
【0080】
なお、空間速度(GHSV)は100〜100000h−1が好ましく、より好ましくは1000〜10000h−1である。
【0081】
本発明に使用する炭化水素は特に制限はなく、種々の炭化水素が使用できる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテン等不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等芳香族炭化水素及びこれらの混合物が上げられる。工業的に使用できる好適な原料としては、都市ガス13A、天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、軽油、ナフサ等である。
【0082】
本発明に使用する炭化水素が灯油、ガソリン、軽油等の室温において液状であるものは気化器を用いて気化させて用いることができる。
【0083】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、オートサーマルリフォーミング反応で起動した後にスチーム改質に切り替わった場合でも、さらには長時間スチーム改質を行った場合でも十分な触媒活性、耐久性、耐コーキング性、耐硫黄被毒性を発揮でき、DSS(Daily start−up shut−down)を導入した燃料電池システムにおいて最適な触媒である。
【0084】
<作用>
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体が高い圧壊強度、大きな変位長を有し、且つ、優れた触媒活性、耐硫黄被毒性、耐コーキング性を有する理由については、本発明者は次のように推定している。
【0085】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、少なくともマグネシウム及び/又はカルシウム、ニッケル及びアルミニウムを含む層状複水酸化物であるハイドロタルサイト化合物粉末に水酸化アルミニウムを添加し高温焼成して作製するため、ハイドロタルサイト粒子間に水酸化アルミニウムが架橋することにより、圧縮したときの変位長が大きくなり、結果として割れにくい成形体となると本発明者は推測している。
【0086】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、高温焼成することでニッケル及びアルミニウムからなるスピネル相が生成することにより高い圧壊強度を発現できると本発明者は推測している。
【0087】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、金属ニッケルが非常に微細な粒子の状態で存在しているため、活性金属種である金属ニッケルが水蒸気に接触する面積が増大し、優れた触媒活性を有する。
【0088】
また、前記のとおり、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、高い触媒活性を有するので、低スチーム下においても耐コーキング性に優れ高い触媒活性を示すことができる。
【0089】
さらに、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は金属ニッケルが微細な粒子の状態で存在しているため、活性点が非常に多いことが耐硫黄被毒性を高めている。そのため、耐久性の面でも優れた触媒活性を有する。
【実施例】
【0090】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0091】
BET比表面積は、窒素によるB.E.T.法により測定した。
【0092】
多孔質触媒体の圧壊強度および変位長の評価は、JIS Z 8841に準拠して行い、デジタルフォースゲージを用い100個の平均から値を求めた。なお、変位長は荷重5kgfで圧縮したときの変位とした。
【0093】
金属ニッケルの粒子の大きさは、電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示したものである。また10nmを超える金属微粒子の大きさは、「X線回折装置RINT−2500(理学電機(株)製)」(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:300mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.020°、走査速度:2°/min、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.50mm)を使用し、シェラーの式を用いて微粒子の大きさを計算で求めた。このX線回折装置より求めた金属ニッケルの粒子サイズは、電子顕微鏡写真より求めたものと同じであった。
【0094】
ニッケル及びアルミニウム、またアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、貴金属元素の含有量は、試料を酸で溶解し、プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業(株)、SPS4000)を用い分析して求めた。
【0095】
金属ニッケルの含有量は、熱重量測定装置を用いて酸素気流下で800℃まで加熱し、酸化されたニッケル量から求めた。
【0096】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0097】
実施例1 <ハイドロタルサイト化合物粉末の調整>
MgSO・7HO 1113.2gとAl(SO・8HO 439.3g、NiSO・6HO 308.8gとを純水で溶解させ20000mlとした。別にNaOH 3772ml(14mol/L濃度)とNaCO 134.1gを溶解させたものを合わせた5000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩、アルミニウム塩及びニッケル塩との混合溶液を加え、95℃で8時間熟成を行ってハイドロタルサイト化合物を得た。これを濾別分離後、乾燥、粉砕しハイドロタルサイト化合物粉末を得た。得られたハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は33.0m/gであった。また粉砕処理後の二次凝集粒子の平均粒子径は48.2μmであった。
【0098】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
得られたハイドロタルサイト化合物粉末 567.2gに水酸化アルミニウム(結晶相:ベーマイト、BET比表面積:110.6m/g) 62.39gとPVA 64.94g、さらに水 119.1gとエチレングリコール 368.7gを混合し、スクリューニーダーで3時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1120℃で4時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、780℃にて100%水素のガス気流中において4時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径3.2mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は17.308wt%であり、その内金属ニッケルは72.6%であり、アルミニウム含有量は19.563wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は8.6nmであった。また、平均圧壊強度は24.5kgfであり、変位長は0.16mmであった。
【0099】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体を用いた反応>
炭化水素を分解する多孔質触媒体の性能評価は、触媒を直径20mmのステンレス製反応管に10〜50g充填して触媒管を作った。この触媒管(反応器)に対して、原料ガス及び水蒸気を流通し、触媒性能評価を行った。
【0100】
DSS運転方法には、下記する立ち上げ方法、定常運転、立ち下げ方法を採用した。
立ち上げ方法:室温から昇温を開始し、250℃で水蒸気を、350℃で都市ガス(13A)を流通開始
定常運転:700℃で1時間保持(触媒性能評価を実施)
立ち下げ方法:水蒸気及び都市ガス(13A)を流通しながら、300℃まで降温し水蒸気及び都市ガス(13A)の流通停止。その後、100℃を下回ってから都市ガス(13A)で反応管内部に残った改質ガスを除去
【0101】
触媒割れ発生率については、下記する計算式から算出した。
触媒割れ発生率=100×(評価後の触媒重量)/(評価前の触媒重量)
【0102】
以上の炭化水素はメタン、CO、CO、Hとして分解されるため、Cn転化率(全炭化水素転化率)を用いた。また、都市ガス(13A)を用いた場合、原料ガス中に含まれるC以上の炭化水素(エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等)の転化率を13A転化率として算出した。
例)原料ガスにプロパンを用いた場合
プロパン転化率
=100×(CO+CO+CH+C)/(CO+CO+CH+C+C
Cn転化率(全炭化水素転化率)
=(CO+CO)/(CO+CO+CH+C+C
【0103】
表1には、原料ガスとして都市ガス(13A)を用い、GHSVが3000h−1、温度が700℃、水蒸気/炭素(S/C)が1.5の場合における、反応時間と13A転化率及び触媒活性測定前後の炭素析出量、さらに平均圧壊強度の関係を示す。
表2には、原料ガスとして都市ガス(13A)を用い、評価条件をGHSVが1000h−1、反応温度が700℃、水蒸気/炭素(S/C)が3.0とし、DSS運転を行った際の13A転化率及び炭素析出量、平均圧壊強度、さらにDSS運転による多孔質触媒体の割れ発生率を示す。
【0104】
実施例2
Mg(NO・6HO 3355.4gとAl(NO・9HO 2134.4g、Ni(NO・6HO 2481.7gとを純水で溶解させ20000mlとした。別にNaOH 6241ml(14mol/L濃度)とNaCO 844.3gを溶解させたものを合わせた15000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩、アルミニウム塩及びニッケル塩との混合溶液を加え、60℃で6時間熟成を行ってハイドロタルサイト化合物を得た。これを濾別分離後、乾燥、粉砕しハイドロタルサイト化合物粉末を得た。得られたハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は125.0m/gであった。また粉砕処理後の二次凝集粒子の平均粒子径は15.2μmであった。
【0105】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
得られたハイドロタルサイト化合物粉末 2495.6gに水酸化アルミニウム(結晶相:ベーマイト、BET比表面積:0.7m/g) 124.8gとエチルセルロース 235.8g、さらに水 748.9gとエチレングリコール 1247.8gを混合し、スクリューニーダーで5時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1280℃で12時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、880℃にて水素/アルゴン体積比が50/50のガス気流中において6時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径3.5mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は28.897wt%であり、その内金属ニッケルは42.1%であり、アルミニウム含有量は21.520wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は23.6nmであった。また、平均圧壊強度は38.5kgfであり、変位長は0.11mmであった。
【0106】
実施例3
Ca(NO 1827.7gとAl(NO・9HO 949.5g、Ni(NO・6HO 1177.7gとを純水で溶解させ28000mlとした。別にNaOH 3854ml(14mol/L濃度)とNaCO 375.6gを溶解させたものを合わせた12000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記カルシウム塩、アルミニウム塩及びニッケル塩との混合溶液を加え、80℃で12時間熟成を行ってハイドロタルサイト化合物を得た。これを濾別分離後、乾燥、粉砕しハイドロタルサイト化合物粉末を得た。得られたハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は88.5m/gであった。また粉砕処理後の二次凝集粒子の平均粒子径は122.8μmであった。
【0107】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
得られたハイドロタルサイト化合物粉末 1531.4gに水酸化アルミニウム(結晶相:ベーマイト、BET比表面積:22.2m/g) 581.9gとでんぷん 52.83g、さらに水 76.57gとプロピレングリコール 1255.7gを混合し、スクリューニーダーで4時間混練した。混練後の粘土状混練物を打錠成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1080℃で6時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、820℃にて水素/アルゴン体積比が40/60のガス気流中において8時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径5.2mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は26.107wt%であり、その内金属ニッケルは55.2%であり、アルミニウム含有量は21.520wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は15.2nmであった。また、平均圧壊強度は16.5kgfであり、変位長は0.09mmであった。
【0108】
実施例4 <ハイドロタルサイト化合物粉末の調整>
MgSO・7HO 873.6gとAl(SO・8HO 861.9g、NiSO・6HO 186.4g、硝酸Ru溶液(51g/L) 436.4gとを純水で溶解させ5000mlとした。別にNaOH 3010ml(14mol/L濃度)とNaCO 263.1gを溶解させたものを合わせた10000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩、アルミニウム塩及びニッケル塩、ルテニウム塩との混合溶液を加え、125℃で8時間熟成を行ってハイドロタルサイト化合物を得た。これを濾別分離後、乾燥、粉砕しハイドロタルサイト化合物粉末を得た。得られたハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は16.5m/gであった。また粉砕処理後の二次凝集粒子の平均粒子径は32.5μmであった。
【0109】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
得られたハイドロタルサイト化合物粉末 589.8gに水酸化アルミニウム(結晶相:ギブサイト、BET比表面積:58.2m/g) 353.9gとメチルセルロース 38.05g、さらに水 58.99gとジエチレングリコール 421.9gを混合し、スクリューニーダーで3時間混練した。混練後の粘土状混練物を押出成形法により円柱状に成形後、105℃で乾燥し、880℃で10時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、750℃にて水素/アルゴン体積比が95/5のガス気流中において3時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径4.1mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は5.942wt%であり、その内金属ニッケルは62.8%であり、アルミニウム含有量は37.283wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は5.2nmであった。また、平均圧壊強度は6.8kgfであり、変位長は0.06mmであった。
【0110】
実施例5
Mg(NO・6HO 1187.9gとAl(NO・9HO 482.8g、Ni(NO・6HO 516.4g、ZrO(NO・2HO 68.79とを純水で溶解させ7000mlとした。別にNaOH 2254ml(14mol/L濃度)とNaCO 190.9gを溶解させたものを合わせた15000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩、アルミニウム塩及びニッケル塩、ジルコニウム塩との混合溶液を加え、165℃で6時間熟成を行ってハイドロタルサイト化合物を得た。これを濾別分離後、乾燥、粉砕しハイドロタルサイト化合物粉末を得た。得られたハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は12.2m/gであった。また粉砕処理後の二次凝集粒子の平均粒子径は84.5μmであった。
【0111】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
得られたハイドロタルサイト化合物粉末 698.8gに水酸化アルミニウム(結晶相:バイヤライト、BET比表面積:86.5m/g) 124.8gとPVA 25.15g、さらに水 167.7gとエチレングリコール 370.4gを混合し、スクリューニーダーで5時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1150℃で2時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、815℃にて水素/アルゴン体積比が30/70のガス気流中において6時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径2.2mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は22.276wt%であり、その内金属ニッケルは48.5%であり、アルミニウム含有量は16.421wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は11.5nmであった。また、平均圧壊強度は18.4kgfであり、変位長は0.07mmであった。
【0112】
実施例6
実施例1と同様にして製造した直径3.2mmφの多孔性酸化物成形体にRhを金属換算で3.455wt%となるようにスプレー担持させ、乾燥後、250℃で3時間焼成を行った。さらにその後、805℃にて100%水素のガス気流中において1.5時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は16.710wt%であり、その内金属ニッケルは73.6%であり、アルミニウム含有量は18.887wt%であり、ロジウム含有量は3.451wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は6.7nmであった。また、平均圧壊強度は24.8kgfであり、変位長は0.16mmであった。
【0113】
比較例1
実施例1で得られた焼成後の成形体を、945℃にて水素/アルゴン体積比が95/5のガス気流中において8時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径3.4mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は17.308wt%であり、その内金属ニッケルは89.5%であり、アルミニウム含有量は19.413wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は42.1nmであった。また、平均圧壊強度は23.2kgfであり、変位長は0.03mmであった。

【0114】
比較例2 <ハイドロタルサイト化合物粉末の調整>
MgSO・7HO 956.9gとAl(SO・8HO 236.0g、NiSO・6HO 38.28gとを純水で溶解させ4000mlとした。別にNaOH 2041ml(14mol/L濃度)とNaCO 72.04gを溶解させたものを合わせた16000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩、アルミニウム塩及びニッケル塩との混合溶液を加え、105℃で11時間熟成を行ってハイドロタルサイト化合物を得た。これを濾別分離後、乾燥、粉砕しハイドロタルサイト化合物粉末を得た。得られたハイドロタルサイト化合物粉末のBET比表面積は21.5m/gであった。また粉砕処理後の二次凝集粒子の平均粒子径は52.2μmであった。
【0115】
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
得られたハイドロタルサイト化合物粉末 378.1gに水酸化アルミニウム(結晶相:ベーマイト、BET比表面積:110.6m/g) 3.781gとPVA 43.29g、さらに水 79.41gとエチレングリコール 245.8gを混合し、スクリューニーダーで5時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1100℃で3時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、850℃にて水素/アルゴン体積比が95/5のガス気流中において7時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径4.5mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は3.922wt%であり、その内金属ニッケルは35.2%であり、アルミニウム含有量は12.832wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は4.1nmであった。また、平均圧壊強度は14.1kgfであり、変位長は0.02mmであった。
【0116】
比較例3
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
実施例1で得られたハイドロタルサイト化合物粉末 567.2gに酸化チタン(結晶相:アナターゼ、BET比表面積:85.2m/g) 5.672gとPVA 64.94g、さらに水 119.1gとエチレングリコール 368.7gを混合し、スクリューニーダーで3時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1150℃で4時間焼成を行い多孔性酸化物成形体を得た。さらにその後、790℃にて水素/アルゴン体積比が75/25のガス気流中において3時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。得られた直径3.8mmφの炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は19.520wt%であり、その内金属ニッケルは59.2%であり、アルミニウム含有量は13.805wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は7.8nmであった。また、平均圧壊強度は4.2kgfであり、変位長は0.01mmであった。
【0117】
比較例4
<炭化水素を分解する多孔質触媒体の調整>
γ-アルミナ 623.9gに水酸化アルミニウム(結晶相:ベーマイト、BET比表面積:110.6m/g) 218.4gとPVA 71.44g、さらに水 131.0gとエチレングリコール 405.6gを混合し、スクリューニーダーで5時間混練した。混練後の粘土状混練物を圧縮成形法により球状に成形後、105℃で乾燥し、1420℃で1時間焼成を行い、直径3.6mmφの成形体を得た。得られた成形体に含浸法にて硝酸Niを吸着させ、さらに550℃で3時間焼成を行った。
さらにその後、810℃にて水素/アルゴン体積比が42/58のガス気流中において3時間還元処理を行い、炭化水素を分解する多孔質触媒体を得た。炭化水素を分解する多孔質触媒体中のニッケル含有量は11.097wt%であり、その内金属ニッケルは92.1%であり、アルミニウム含有量は47.006wt%であった。また、金属ニッケルの粒子径は46.8nmであった。また、平均圧壊強度は8.9kgfであり、変位長は0.03mmであった。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、金属ニッケルが非常に微細な粒子の状態で存在しているため、活性金属種である金属ニッケルが水蒸気に接触する面積が増大し、優れた触媒活性を有するものである。
【0121】
また、本発明に係る炭化水素を分解する多孔質触媒体は、大きな変位長を有しているので、DSS運転により反応器の伸縮、膨張が繰り返され触媒層が密に詰まったとしても、多孔質触媒体自身が圧力を緩和し、破裂、粉化することなく優れた触媒活性を維持することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともマグネシウム及び/又はカルシウムとアルミニウムとを含む多孔性複合酸化物と粒子径が1〜25nmの金属ニッケルとからなる多孔質触媒体であって、該多孔質触媒体の平均圧壊強度が5kgf以上であって、荷重5kgfで圧縮したときの変位長が0.05mm以上であることを特徴とする炭化水素を分解する多孔質触媒体。
【請求項2】
多孔質触媒体のニッケル含有量は金属換算で5〜30wt%であり、ニッケルが金属として含まれる割合がニッケル含有量に対して40〜75wt%であり、アルミニウム含有量は金属換算で15〜45wt%であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多孔質触媒体に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素及び貴金属元素から選ばれる1種以上の元素が含まれることを特徴とする炭化水素を分解する多孔質触媒体。
【請求項4】
少なくともマグネシウム及び/又はカルシウム、ニッケル及びアルミニウムを含むハイドロタルサイト化合物粉末と水酸化アルミニウムとを混合して成形し、焼成及び還元処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体を用いて、反応温度が250℃〜850℃であり、スチームとカーボンのモル比(S/C)が1.0〜6.0であり、空間速度(GHSV)が100〜100000h−1である条件下で、炭化水素と水蒸気を反応させることを特徴とする炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化水素を分解する多孔質触媒体を用いることを特徴とする燃料電池システム。


【公開番号】特開2011−56391(P2011−56391A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208440(P2009−208440)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】