説明

炭化水素井戸の掘削および運転のためのネジ山付き接続部

本発明は、回転軸(10)を有する第1と第2の管状部品を備え、第1と第2の管状部品の端部(1、2)の一方は、そのネジ山付き端部が雄型か又は雌型かによってその部品の外周面又は内周面に形成されたネジ山付き領域(3;4)を備え、前記端部(1、2)は終端面(7、8)で完結し、前記ネジ山付き領域(3;4)は、前記管状部品の回転軸(10)を通る長手方向断面で見ると、ネジ山の頂(35、45)、ネジ山の谷(36、46)、ロードフランク(30;40)、及びスタブフランク(31;41)を備えるネジ山(32、42)を少なくとも一部分上に備え、各管状部品の前記ネジ山の頂(35、45)の幅は、対象となる管状部品の終端面(7;8)の方向に減少すると共に、前記ネジ山の谷(36、46)の幅は増加し、雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの外形は、前記管状部品の回転軸(10)を通る長手方向断面で見ると、各々が、少なくとも一つの同一部分(E、E´)を有し、それによって、第1及び第2の管状部品の一方が他方の中に入るように締付けられる際、雄型及び雌型のネジ山が前記同一部分(E、E´)上で一方が他方に嵌合される、ネジ山付き接続部を製造するためのセットであって、前記雄型及び雌型の端部(1、2)の同一部分(E、E´)は、互いに対して半径方向にオフセットされることを特徴とするセットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素井戸の掘削および運転のために使用されるネジ山付き接続部を製造するためのセットに関し、そのセットは、一方が雄型のネジ山付き端部を備え、他方が雌型のネジ山付き端部を備える第1と第2の管状部品を備え、その二つの端部は、セルフロッキング締付によって連携可能である。また、本発明は、締付によって2つの管状部品を接続した結果として得られるネジ山付き接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
「炭化水素井戸の掘削と運転のために使用される部品」という言葉は、炭化水素井戸を掘削するためのストリング、又は改修作業ライザ等のメンテナンスのためのライザあるいは生産ライザのような運転のためのライザ、又は井戸の運転に用いられるケーシングストリングあるいは管状ストリングのいずれかを構成するために、同型又は非同型の別の要素に適切に接続されるよう意図された略管形状のあらゆる要素を意味する。本発明は、ドリルパイプ、重量ドリルパイプ、ドリルカラー、及びパイプや重量パイプを接続するツールジョイントとして知られる部品等の、ドリルストリングに使用される部品に特に利用されるものである。
【0003】
既知のように、ドリルストリングに使用される各部品は、一般的に、雄ネジ山付き領域を備える端部及び/又は雌ネジ山付き領域を備える端部を備え、その各端部は別の部品の対応端部と締付によって接続されるようになっており、その組立品によって接続部が画定する。このように構成されたストリングは、掘削中、井戸の表面から回転駆動される。このため、部品同士は、破損することなく井戸の掘削が実行されるよう十分な回転トルクを伝達出来るように、高トルクあるいは過剰トルクにまで締付けられる必要がある。
【0004】
従来の製品では、一般的に締付対象の各部品上に備わる当接面同士を緊切させて連携することで締付トルクが達成される。しかし、当接面の範囲は管厚の一部に過ぎないため、高過ぎる締付トルクが加えられるとすぐに当接面の臨界可塑性閾値に到達してしまう。
【0005】
このため、当接面が支持出来ない荷重の少なくとも一部或いは全てを当接面から取り除くことが出来るネジ切り部が開発されている。この目的は、先行技術文献の米国再発行特許第30647号(US Re30647)及び第34467号(US Re34467)に記載されたネジ切り部等のセルフロッキングネジ切り部を使用することによって達成された。このタイプのセルフロッキングネジ山では、雄型端部のネジ山(歯とも呼ぶ)のフランク及び雌型端部のネジ山(歯とも呼ぶ)のフランクは一定のリードを有するが、ネジ山の幅は可変である。
【0006】
より正確には、雄型端部のネジ山及び雌型端部のネジ山において、それぞれネジ山の頂(又は歯)の幅が、雄型端部及び雌型端部からそれぞれ遠ざかるに連れて徐々に増加する。このように、締付中、雄型及び雌型のネジ山(又は歯)が係止点に対応する位置において相互に係止し合う。より正確には、雄型のネジ山(又は歯)のフランクが対応する雌型のネジ山(又は歯)のフランクに対して係止した時に、セルフロッキングネジ切り部同士が係止する。係止位置に到達すると、相互に締付けられた雄型及び雌型のネジ山付き領域は対称面を有し、その対称面に沿って、雄型のネジ山付き領域の端部に位置する雄型及び雌型歯の共通中間高さにおける幅が、雌型のネジ山付き領域の端部に位置する雄型及び雌型歯の共通中間高さにおける幅に相当する。
【0007】
このため、フランク同士間の全ての接触面によって、即ち、先行技術における当接面で構成される総表面積よりもはるかに大きな総表面積によって締付トルクが支持される。
【0008】
雌型のネジ山の雄型のネジ山との連結を補強するために、雄型及び雌型のネジ山(又は歯)は、通常、略鳩尾形の輪郭を有し、それにより、締付けられた後に一方が他方に強固に嵌合される。この鳩尾形の構成により、ネジ山付き領域が互いに締付けられた際に雄型と雌型のネジ山が分離することに相当するジャンプアウトのリスクを回避できる。より正確には、鳩尾形のネジ山の形状により、軸方向幅がネジ山の底部からネジ山の頂に向かって減少するAPI5Bに定義されている「台形」のネジ山と比較して、且つAPI7に定義されているような「三角形」のネジ山と比較して、それらの接続部の半径方向剛性が増加する。
【0009】
更に、流体密に関しての増え続ける課題のために、二つの管状部品同士の間のネジ山付き接続部における高圧に対応する高密性が保証されなければならない。そのために、高密性を確保するネジ山のフランクに加えて、ネジ山の頂と谷を緊密に接触させることが知られている。このように、接続部の内側と接続部の外側との間の緊密性がネジ切り部自体によって提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国再発行特許第30647号(US Re30647)
【特許文献2】米国再発行特許第34467号(US Re34467)
【特許文献3】米国特許第6254146号
【特許文献4】米国特許第4600024号
【特許文献5】国際公開第2008/039317号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、鳩尾形の構成は、ネジ山の頂と谷が締付け中に緊密に接触させられる際に幾つかの不利益を受けることになる。すなわち、ネジ山のフランクがネジ山の谷を通る軸に対して負の角度(即ち、台形のネジ山構成の場合に使用される角度とは逆の角度)をなすという事実によって、接続部の締付け及び離脱の際に雄型と雌型のネジ山が磨耗するリスクが増加する。これにより、締付けの進行が困難になると共にネジ山の疲労強度が減少することになる。
【0012】
この問題を克服するために、US−6254146、US−4600024及びWO−2008/039317のような幾つかの文献において、締付け中にネジ山の頂とネジ山の谷との間の接触圧を減少するためにファセットを使用するフランク構成が提案されている。このために、ネジ山は、略鳩尾形の輪郭を有すると共にネジ山の谷とネジ山の頂の表面積が減少されている。しかしながら、その構成では、ネジ山の頂と谷との間の接触の問題を十分には解決しない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このために、本発明の目的は、磨耗の問題を防ぐために締付け動作中にネジ山の頂とネジ山の谷との間の接触圧を最小に保ち且つ締付けの終わりに(即ち、接続を完了する締付け動作中に)ネジ山の頂とネジ山の谷との間の高い接触圧を保証することである。この高い接触圧により、特に、接続部の緊密性を高めることが可能となる。
【0014】
より正確には、本発明は、各々が回転軸を有する第1と第2の管状部品を備え、第1と第2の管状部品の端部の一方は、そのネジ山付き端部が雄型か又は雌型かによってその部品の外周面又は内周面に形成されたネジ山付き領域を備え、前記端部は終端面で完結し、前記ネジ山付き領域は、前記管状部品の回転軸を通る長手方向断面で見ると、ネジ山の頂、ネジ山の谷、ロードフランク、及びスタブフランクを備えるネジ山を少なくとも一部分上に備え、各管状部品の前記ネジ山の頂の幅は、対象となる管状部品の終端面の方向に減少すると共に、前記ネジ山の谷の幅は増加し、雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの外形は、前記管状部品の回転軸を通る長手方向断面で見ると、各々が、少なくとも一つの同一部分を有し、それによって、第1及び第2の管状部品の一方が他方の中に入るように締付けられる際、雄型及び雌型のネジ山が前記同一部分上で一方が他方に嵌合される、ネジ山付き接続部を製造するためのセットであって、前記雄型及び雌型の端部の同一部分は、互いに対して半径方向にオフセットされることを特徴とするセットに関する。
【0015】
本発明の選択的補足もしくは代替的な特徴を以下に述べる。
【0016】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの外形の同一部分の回転軸からの距離は、雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの対応する外形の同一部分の回転軸からの距離よりも小さい。
【0017】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの外形の同一部分の回転軸からの距離は、雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの対応する外形の同一部分の回転軸からの距離よりも大きい。
【0018】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分の回転軸からの距離は、雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの対応する嵌合部分の回転軸からの距離とは、0.01から0.05mmの範囲の値だけ異なっている。
【0019】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分の回転軸からの距離は、雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの対応する嵌合部分の回転軸からの距離とは、0.02mmと実質的に等しい値だけ異なっている。
【0020】
雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分は、第1の曲率半径を介して接線方向に共に接続された二つの線分によって構成される。
【0021】
曲率半径を介して接線方向に共に接続されるこれら二つの線分は、90から120度の範囲の角度を形成する。
【0022】
雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分は、第2の曲率半径によってネジ山の頂及び/又は谷に接続される。
【0023】
雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分は、変曲点を備える連続する曲線であり、前記曲線は、ネジ山の頂及び谷へ接線方向に接続される。
【0024】
ネジ山付き領域は、各々が、管状部品の回転軸に対して角度βを形成するテーパ母線を有する。
【0025】
ネジ山の頂と谷は、管状部品の軸に平行である。
【0026】
また、本発明は、締付けによって本発明のセットを接続することで得られるネジ山付き接続部に関する。
【0027】
幾つかの特徴によれば、接続部の雄型と雌型の端部の各々は、ネジ山付き領域の部分がセルフロッキング締付けに従って連携する際に、互いに緊密に接触することで連携可能なシール面を備える。
【0028】
他の特徴によれば、既ネジ山付き接続部は、掘削用部品のネジ山付き接続部である。
【0029】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面を参照する以下の記述においてより詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の実施の形態によるセルフロッキング締付けによって二つの管状部品を連結することで得られる接続部の長手方向断面における線図である。
【図1B】本発明の実施の形態による雌型の管状部品の長手方向断面における線図である。
【図1C】本発明の実施の形態による雄型の管状部品の長手方向断面における線図である。
【図2】図1の接続部のネジ山付き領域の長手方向断面における詳細な線図である。
【図3A】本発明の特定の実施の形態による雄型と雌型のネジ山の詳細な長手方向断面図である。
【図3B】本発明の特定の実施の形態による雄型と雌型のネジ山の詳細な長手方向断面図である。
【図3C】本発明の特定の実施の形態による雄型と雌型のネジ山の詳細な長手方向断面図である。
【図3D】本発明の特定の実施の形態による雄型と雌型のネジ山の詳細な長手方向断面図である。
【図3E】本発明の特定の実施の形態による雄型と雌型のネジ山の詳細な長手方向断面図である。
【図3F】本発明の特定の実施の形態による雄型と雌型のネジ山の詳細な長手方向断面図である。
【図4】図3Aに示される特定の実施の形態の詳細な図である。
【図5】他の実施の形態の詳細な図である。
【図6A】従来技術の接続部の締付けに対応する締付け曲線を示す。
【図6B】本発明の実施の形態による接続部の締付けに対応する締付け曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1Aに示された回転軸10を有するネジ山付き接続部は、既知のように、同じ回転軸10を有し且つ雄型の端部1を有する第1の管状部品と、同じ回転軸10を有し且つ雌型の端部2を有する第2の管状部品とを備える。
【0032】
図1Bと1Cにそれぞれ示される管状部品は、各々、既知のように、端部1と2を備える。前記端部は、各々がネジ山付き接続部の軸10に対して半径方向へ配向された終端面7、8で完結し、締付けによってこれら二つの要素の相互接続のために共に連携するネジ山付き領域3と4をそれぞれ備えている。ネジ山付き領域3と4は、「セルフロッキング」(漸進的に変化するネジ山の軸方向幅及び/又はネジ山同士間の間隔を有するとも言われる)として知られる既知のタイプのものであり、締付け中は、最後の係止位置に到達するまで漸進的な軸方向の締付けが生じる。
【0033】
既知のように且つ図2に示されるように、用語「セルフロッキングネジ山付き領域」は、以下に詳述される特徴を含むネジ山付き領域を意味する。雄型のネジ山(又は歯)32のフランクは、雌型のネジ山(又は歯)42のフランクと同様に、一定のリードを有するが、ネジ山の幅は、それぞれの終端面7、8の方向へ減少しており、締め付け中に、雄型32と雌型42のネジ山(又は歯)は、所定の位置で互いに係止することで停止する。より正確には、雌型のネジ山付き領域4のロードフランク40同士間のリードLFPbは、雌型ネジ山付き領域のスタブフランク41同士間のリードSFPbと同様に一定であり、特に、ロードフランク40同士間のリードがスタブフランク41同士間のリードよりも大きいことを特徴とする。
【0034】
同様に、雄型スタブフランク31同士間のリードSFPpは、雄型のロードフランク30同士間のリードLFPpと同様に一定である。更に、雄型31と雌型41のスタブフランク同士間のそれぞれのリードSFPpとSFPbは互いに等しく、且つ互いに等しい雄型30と雌型40のロードフランク同士間のそれぞれのリードLFPpとLFPbよりも小さい。
【0035】
図2に示されるように且つ当該技術分野で既知のように、雄型と雌型のネジ山(又は歯)は、ネジ山付き接続部の軸10を通過する長手方向断面で見て、締付け後、一方が他方に強固に嵌合するように略鳩尾の外見を有する外形を有する。こうした追加の保証により、接続部が大きな曲げや引張力を受けた際の雄型と雌型のネジ山が分離することに相当する「ジャンプアウト」のリスクが回避されることになる。より正確には、鳩尾形のネジ山の形状によって、ネジ山の底部から頂に向かって軸方向幅が減少する「台形」と一般的に呼ばれるネジ山と比較して、それらの接続部の半径方向剛性が高められる。
【0036】
有利なことに且つ図2に示されるように、管状部品のネジ山3と4は、締付けの進行を容易にするようテーパ母線20に沿って配向されている。一般的に、このテーパ母線は、1度から5度の範囲に含まれる角度を軸10との間に形成する。今回の場合においては、テーパ母線は、ロードフランクの中間を通るものとして定義される。
【0037】
有利なことに且つ図2に示されるように、雄型と雌型のネジ山付き領域の歯の頂と谷は、ネジ山付き接続部の軸10に対して平行である。これによって、機械加工が容易になる。
【0038】
図3A、3B、3C、3D、3E、3F、4及び5は、各々、管状部品に属する雄型のネジ山32と雌型のネジ山42の長手方向断面図を示す。これらの管状部品は、本発明によるセットを構成する。これらの図の各々は、管状部品の回転軸10を通る長手方向断面に沿って見られる雄型31と雌型41のスタブフランクの外形を示す。また、この軸は、接続部の回転軸でもある。本発明によれば、雄型31のスタブフランクの外形と雌型41のスタブフランクの外形は、各々、同一部分E、E´を有する。より正確には、これらの部分は、図式的な観点から、一方が他方の上に重なることができるように同一である。
【0039】
更に、雄型と雌型のネジ山は、管状部品の一方が他方に締付けされる時に、これらの同一部分E、E´上で一方が他方へ嵌合されうる。用語「嵌合される」は、同一部分が、一定の凸部及び/又は一定の凹部を有し、それらが相補的であり且つ一方が他方へ嵌合されうることを意味する。このことは、対応する雄型と雌型のネジ山(歯としても知られている)のフランク(ロードフランク又はスタブフランク)の一方が他方に嵌合されるときに、前記ネジ山が回転軸10に垂直な軸に沿って互いに対して平行移動できなくなることを意味する。
【0040】
また、本発明によれば、雄型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分Eの回転軸10からの距離dは、雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分E´の回転軸10からの距離d´とは異なる。このため、部分EとE´とは、互いに対して半径方向に、即ち、軸10に対してオフセットされる。用語「部分Eの回転軸10からの距離d」は、回転軸10からの前記部分の距離間隔を意味する。換言すれば、部分EとE´とは、一方が他方に嵌合されうるが、互いに対向しない。それらの一方を他方に嵌合するために、回転軸10からの並進を行うだけでは十分でない。更に、回転軸10に対して垂直な軸に沿う並進を実行する必要がある。
【0041】
図3A、3B、3C、3D、3E、3F及び4に示される実施の形態によれば、雄型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分Eの回転軸10からの距離dは、雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分E´の回転軸10からの距離d´よりも短い。
【0042】
図5に示される実施の形態によれば、雄型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分Eの回転軸10からの距離dは、雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分E´の回転軸10からの距離d´よりも大きい。
【0043】
図3A、3B、3C、3D、3E、3F及び4に示される実施の形態によれば、同一部分E、E´は、回転軸10に対して垂直な軸に沿って互いに対して半径方向にオフセットされている。従って、締付け中に、ネジ山の頂は、ネジ山の谷と干渉しない。また、一定の隙間を表出してもよい。対照的に、締付けの完了時に雄型と雌型のフランクの一方が他方に係合すると、同一部分のオフセットに起因する隙間は減少されていき、最後の締付け力が加えられた際にその隙間は無くなる。このことは、初期にオフセットされていた同一部分E、E´が対向されて、一方から他方へ押し付けられことによって完了することを意味する。同時に、雄型と雌型のネジ山の谷と頂も、弾性変形の影響下で互いに押圧される。ネジ山の谷と頂との間に存在する初期の隙間の大きさ次第で、締付けの終了時に、大きい又は小さい圧力でネジ山の谷と頂を接触状態にしてもよい。このように、ネジ山の緊密さは、ロードフランク、スタブフランク及びネジ山の頂と谷で、緊密な接触状態になることによって確保される。
【0044】
図5に示される実施の形態において、ネジ山の頂は、磨耗を回避するように選択された接触圧でネジ山の谷と接触している。反対に、初期にオフセットされた同一部分E、E´が対向されて、一方から他方へ押し付けられことによって完了する時に、雄型と雌型のネジ山の谷と頂は一定接触圧下で互いに押圧されたままとなる。
【0045】
全ての場合において且つ本発明の実施の形態にかかわらず、雄型のフランクの外形と雌型のフランクの外形が、締付け前は互いに異なり、締付け後は合致するように、雄型及び/又は雌型のフランクの外形の弾性変形が生じる。ネジ込みの緊密さは、締付けの終わりに、雄型と雌型のネジ山がロードフランク、スタブフランク及びネジ山の頂と谷で緊密に接触していることによって確保される。
【0046】
図6Aは、従来のセルフロッキングの半径方向の緊密なネジ込みの締付け曲線を示す。ネジ山の谷と頂で締付け中に印加されるトルクの変動が略ゼロ(曲線Dを参照)であり、他方、ロードフランク及びスタブフランクで締付け中に印加されるトルクの変動(曲線CとBを参照)が増加している。全体として取られるネジ山付き領域で締付け中に印加されるトルクの変動もまた増加し(曲線Aを参照)、後者は、従来通り、スタブフランクによって、より特定的には、ロードフランクによって取り込まれる。
【0047】
反対に、本発明の実施の形態によるセルフロッキングの半径方向の緊密なネジ込みの場合、ネジ山の頂と谷で締付け中に印加されるトルクの変動は、ピーク(図6Bの曲線Dを参照)を有し、これは、同一部分E、E´を一方から他方へ嵌合するための力に相当する。このトルクは、締付けの終わりに略ゼロに戻り、全体のトルクは、スタブフランク、より特定的には、ロードフランクによって取り込まれる。
【0048】
有利には、雄型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分Eの回転軸10からの距離dは、雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分E´の回転軸10からの距離d´とは0.01から0.05mmの範囲内の値eだけ異なる。このように、雄型と雌型のフランクを完全に嵌合させる最終の締付け力は、印加可能な最大の力の15%から30%の範囲内である。
【0049】
また、好ましくは、雄型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分Eの回転軸10からの距離dは、雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分E´の回転軸10からの距離d´とは0.02mmに略等しい値eだけ異なる。このことは、ネジ山の頂/谷の接触が材料の可塑化限界に達することなく最適化されうることを意味している。
【0050】
図3Aに記述され且つ図4に詳述される有利な実施の形態によれば、雄型と雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の部分E、E´は、曲率半径Rを介して接線方向に共に接続される二つの線分Sによって構成される。このことは、一方が他方へ嵌合されうるフランクの部分が斜面として働く傾斜平面であることを意味し、一方の他方に対するフランクの嵌合を容易にする。曲率半径Rによる接線方向の接続により、応力集中の発生箇所となる鋭角が回避することができる。
【0051】
有利には、曲率半径を介して接線方向に接続される二つの線分は、90から120度の範囲の角度を形成する。値がこの範囲をとることで、雄型のフランク及び雌型のフランクのそれぞれが凹部又は凸部を有する外形を得られるよう制御される。これにより、曲げ及び引張/圧縮応力を受ける接続部の疲労強度を最適にすることができる。このことは、雄型と雌型の要素の係合と係合解除が容易になることを意味する。
【0052】
有利には、雄型と雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの外形の同一部分E、E´は、鋭角を回避するために、ネジ山の頂35、45及びネジ山の谷36、46へ曲率半径rを介して接続される。
【0053】
図3Bに詳述される他の実施の形態によれば、雄型と雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの同一部分E、E´も、曲率半径を介して接線方向に共に接続される二つの線分であり、これらの線分は実質的に長さが等しい。
【0054】
図3Cと3Dに詳述される二つの他の類似の実施の形態によれば、雄型と雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの同一部分E、E´は、一つ以上の膨らみを有し、その膨らみによって、その膨らみの寸法に応じた外形の調節可能な嵌合が可能となる。
【0055】
図3Eに詳述される他の実施の形態によれば、雄型と雌型のネジ山付き領域のスタブフランクの同一部分E、E´は、特異点を有さず且つ変曲点を備える連続曲線である。好ましくは、上述のように、前記曲線は、曲率半径によってネジ山の頂と谷に接線方向に接続される。
【0056】
図3Fに示される実施の形態は、図3Aに示されるものと類似のモードである。このモードでは、線分Sの斜面の機能が強化されている。
【0057】
有利なことに且つ図1に見られるように、管状接続部の内部及び外部媒体の両方への流体密シールは、雄型の要素の終端面7に近接して配置される二つのシール領域5、6によって補強されうる。
【0058】
二つの部品間の接続部で、高圧に対応するより高い緊密度を保証することが必要である。このために、本出願人によってカタログ番号940に記述されたVAM TOP(登録商標)接続部等の他のタイプの接続部では、接続部の雌型端部上に設けられたシール面と半径方向締付において連携するよう意図されたシール面を、ネジ山付き領域外の接続部の雄型端部上に設けることが知られている。
【0059】
シール領域5は、終端面7へ向かって直径が減少し、半径方向外方へ曲げられたドーム形表面を有していても良い。このドーム形表面の半径は、好ましくは、30から100mmの範囲内である。ドーム形表面の半径が大き過ぎる(>150mm)と、錘体同士の接触の場合と同等の不利益を引き起こすことになる。このドーム形表面の半径が小さ過ぎる(<30mm)と、接触幅が不十分になる。
【0060】
このドーム形表面に面して、雌型端部2は、雄型要素の終端面7へ向かって直径が減少し、半径方向内方へ曲がるテーパ表面を有する。テーパ表面のピーク半角の接平面は、0.025から0.075の範囲内にあり、すなわち、5%から15%の範囲内のテーパである。テーパ表面のテーパが低すぎる(<5%)と、締付けでの磨耗のリスクを引き起こし、テーパが高すぎる(>15%)と、機械加工許容誤差が非常に厳しくなる。
【0061】
本発明者等は、テーパ表面とドーム形表面との間のこのような接触領域において、接触領域の端部に二つの狭い有効接触領域を有する二つのテーパ表面間の接触領域とは異なり、高い有効軸方向接触幅とその有効接触領域に沿った接触圧の実質的な半楕円分配とを生成することが可能になることを発見した。
【0062】
雄型と雌型の端部のシール領域5と6が雌型の端部の終端面8に近接して配置されうることに留意すべきである。
【0063】
また、本発明は、ロードフランクにも適用でき、単にスタブフランクのみではないことに留意すべきである。同様に、本発明は、スタブフランクの一部のみ又はロードフランクの一部のみにも適用されうる。このことは、最終の締付け力を減少する利点を有するが、接続部の緊密さを減少する不利益も有する。本発明によれば、雄型と雌型のフランク同士間及び対応するネジ山の谷と頂との間になお存在する隙間が完全に無くなるのは、締付けの終わりにおいてである。この時、接続部がシールされる。
【0064】
本発明は、締付けを容易にするために使用される潤滑剤の流れの最適化管理を提供するという更なる利点を有する。締付けの終わり間際までネジ山のフランクに隙間があるということは、ネジ山付き領域に亘ってより均一に潤滑剤が移動できるということである。また、これにより、ネジ山付き領域における潤滑剤のつまりを回避できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(10)を有する第1と第2の管状部品を備え、第1と第2の管状部品の端部(1、2)の一方は、そのネジ山付き端部が雄型か又は雌型かによってその部品の外周面又は内周面に形成されたネジ山付き領域(3;4)を備え、前記端部(1、2)は終端面(7、8)で完結し、前記ネジ山付き領域(3;4)は、前記管状部品の回転軸(10)を通る長手方向断面で見ると、ネジ山の頂(35、45)、ネジ山の谷(36、46)、ロードフランク(30;40)、及びスタブフランク(31;41)を備えるネジ山(32、42)を少なくとも一部分上に備え、各管状部品の前記ネジ山の頂(35、45)の幅は、対象となる管状部品の終端面(7;8)の方向に減少すると共に、前記ネジ山の谷(36、46)の幅は増加し、雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの外形は、前記管状部品の回転軸(10)を通る長手方向断面で見ると、各々が、少なくとも一つの同一部分(E、E´)を有し、それによって、第1及び第2の管状部品の一方が他方の中に入るように締付けられる際、雄型及び雌型のネジ山が前記同一部分(E、E´)上で一方が他方に嵌合される、ネジ山付き接続部を製造するためのセットであって、前記雄型及び雌型の端部(1、2)の同一部分(E、E´)は、互いに対して半径方向にオフセットされることを特徴とするセット。
【請求項2】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分(E)の回転軸(10)からの距離(d)は、雌型のネジ山付き領域の対応するフランクの対応する部分(E´)の回転軸(10)からの距離(d´)よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項3】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分(E)の回転軸(10)からの距離(d)は、雌型のネジ山付き領域の対応するフランクの対応する部分(E´)の回転軸(10)からの距離(d´)よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項4】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分(E)の回転軸(10)からの距離は、雌型のネジ山付き領域の対応するフランクの部分(E´)の回転軸(10)からの距離とは、0.01から0.05mmの範囲の値だけ異なっていることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項5】
雄型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分の回転軸(10)からの距離は、雌型のネジ山付き領域の対応するフランクの部分の回転軸(10)からの距離とは、0.02mmと実質的に等しい値(e)だけ異なっていることを特徴とする請求項4に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項6】
雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの部分(E、E´)は、第1の曲率半径(R)を介して接線方向に共に接続された二つの線分(S)によって構成されることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項7】
曲率半径を介して接線方向に共に接続されるこれらの二つの線分は、90から120度の範囲の角度を形成することを特徴とする請求項6に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項8】
雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの同一部分(E、E´)は、第2の曲率半径(r)によってネジ山の頂(35、45)及び/又は谷(36、46)に接続されることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項9】
雄型及び雌型のネジ山付き領域のロードフランク及び/又はスタブフランクの少なくとも一つの嵌合部分は、変曲点を備える連続する曲線であり、前記曲線は、ネジ山(32、42)の頂(35、45)及び谷(36、46)へ接線方向に接続されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項10】
ネジ山付き領域(3、4)は、各々が、管状部品の回転軸(10)に対して角度(β)を形成するテーパ母線(20)を有することを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項11】
ネジ山の頂(35、45)と谷(36、46)は、管状部品の軸(10)に平行であることを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載のネジ山付き接続部を製造するためのセット。
【請求項12】
先行する請求項のいずれか一項に記載のセットを接続することで得られるネジ山付き接続部。
【請求項13】
雄型(1)と雌型(2)の端部は、各々、シール面(5;6)を備え、各シール面は、前記ネジ山付き領域(3、4)の部分がセルフロッキング締付けに従って連携する際に、互いに緊密に接触することで連携可能であることを特徴とする請求項12に記載のネジ山付き接続部。
【請求項14】
ネジ山付き接続部は、掘削用部品のネジ山付き接続部であることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載のネジ山付き接続部。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2012−527546(P2012−527546A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511167(P2012−511167)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002805
【国際公開番号】WO2010/133299
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(504255249)ヴァルレック・マンネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス (30)
【氏名又は名称原語表記】VALLOUREC MANNESMANN OIL & GAS FRANCE
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】