説明

炭化水素脱水素方法

3+供給炭化水素の接触脱水素化方法。炭化水素供給材料をまず分割し、供給材料の第1の部分を、酸化性再加熱を伴うことなく運転する第1の脱水素化反応区域中に導入し、得られる流出流を、酸化性再加熱を伴うことなく運転する第2の脱水素化反応区域中に導入する。第2の脱水素化反応区域から得られる流出流を、供給材料の第2の部分と一緒に酸化性再加熱を伴って運転する第3の脱水素化反応区域中に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明が属する技術分野は炭化水素の接触脱水素化である。より詳細には、本発明は、パラフィン及びアルキル芳香族物質などの炭化水素を脱水素化する方法である。
【背景技術】
【0002】
[0002]酸化性再加熱能を有しない既存の接触脱水素化設備の改修による設備能力の向上は、反応器の内部速度、及び反応器移送ラインの最高温度によって制約される。既存の設備に対するこれらの制約のために、単純に処理量(throughput)を増加させることによる既存の反応器に対する最大に可能な能力の拡大は35%である。
【0003】
[0003]炭化水素の脱水素化は周知であり、それによってアクリル系及び芳香族炭化水素が飽和度のより低い対応する生成物に転化される。例えば、脱水素化は、エチルベンゼンからスチレンを製造するために商業的に行われている。米国特許第3,515,766号及び同第3,409,689号明細書においては、エチルベンゼンなどのアルキル芳香族物質のための接触水蒸気脱水素化方法が開示されている。これらの参照文献には、過熱水蒸気と供給炭化水素を混合し、脱水素触媒の一連の床の間で更なる量の過熱水蒸気を反応物質と混合して反応物質を再加熱することが記載されている。
【0004】
[0004]また、従来技術においては、酸素を脱水素化反応中に放出される水素と反応させて、それによって熱を放出させ且つ水素を消費する目的で、酸素を脱水素化区域中に通すことも教示されている。この技術を用いる公知の方法では、脱水素化区域中に同様に存在している供給炭化水素又は生成物炭化水素ではなく、水素を選択的に酸化する目的で水素酸化触媒を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,515,766号明細書
【特許文献2】米国特許第3,409,689号明細書
【発明の概要】
【0006】
[0005]本発明は、酸化性再加熱を伴うことなく運転する既存の2反応器脱水素化プロセスの能力を向上させる手段を提供する。すなわち、炭化水素供給材料をまず分割し、炭化水素供給材料の第1の部分を、酸化性再加熱を伴うことなく運転する第1の脱水素化反応区域中に導入し、得られる流出流を次に再加熱し、同様に酸化性再加熱を伴うことなく運転する第2の脱水素化反応区域中導入する。第2の脱水素化反応区域から得られる流出流を、炭化水素供給材料の第2の部分と一緒に、酸化性再加熱を伴って運転する第3の脱水素化反応区域中に導入する。
【0007】
[0006]初めの2つの脱水素化反応区域を迂回する供給流の部分が、実質的に所望の能力の向上を達成する供給流の量である。例えば、全炭化水素供給流の33%を迂回させる場合には、2反応区域で開始して3反応区域へ移行する場合には全プラント能力の50%の増大が得られる。このようにして全プロセスを実施する際には、水蒸気の流速及び水蒸気過熱器への温度に変化はなく、既存の第1の脱水素化反応区域への混合供給流は元のデザインから変化しないままであるので、装置の重要な要素、即ち水蒸気過熱器及び2つの既存の反応器は能力の向上によって直接影響は受けない。本発明方法を用いて50〜60%の能力の向上が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】[0007]図1は、本発明の好ましい態様の簡略化したプロセスフロー図である。図は、本発明を図式的に例示することを意図するものであり、本発明の限定を意図したものではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0008]芳香族炭化水素の脱水素化プロセスは幅広く商業的に用いられている。例えば、エチルベンゼンの脱水素化によって大量のスチレンが製造されている。得られるスチレンはそれ自体で重合させることができ、或いはブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル等と共重合させることができる。大体同じようにして脱水素化することができる他の炭化水素としては、ジエチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、及びイソプロピルベンゼンが挙げられる。また、本方法は、C〜C16パラフィンの比較的純粋な流れ又は混合流などの他のタイプの炭化水素の脱水素化に適用することもできる。したがって、本方法は、プロパン、ブタン類、ヘキサン類、又はノナン類の脱水素化に適用することができる。しかしながら、現在の商業的な脱水素化方法の大部分はエチルベンゼンの脱水素化のために用いられているので、本発明についての以下の記載は主にエチルベンゼンの脱水素化に関するものである。上記のアルキル芳香族物質及びアクリル系炭化水素、或いは二環式化合物などの異なる環構造を有するものを本発明の範囲から除外する意図はない。
【0010】
[0009]脱水素化反応は高吸熱性である。したがって、反応物質を脱水素化触媒床に通して通過させると反応物質の温度の低下が起こる。反応の吸熱性は、温度低下によって反応物質が所望の温度範囲から取り除かれるようにする程度のものである。実際に、反応物質は、所望の反応が商業的に実施可能な速度で更に進行しない程度まで冷却される。したがって、反応物質を脱水素化触媒の単一の床に単純に接触させて通すことによっては、望ましい、又は商業的に必要なパスあたりの転化率を達成することができない。このため、幾つかの方法で段階間再加熱を行うことが標準的な商業的手順になってきている。段階間再加熱においては、触媒の第1の床の反応物質流出流を触媒の第2の下流の床の所望の入口温度に加熱する。この再加熱は、第1の触媒床から得られる反応物質流中に高温の水蒸気を混合することなどによる直接熱交換によって行うことができる。
【0011】
[0010]好ましい段階間再加熱方法は、間接熱交換を用いることを含む。この方法においては、脱水素化区域からの流出流を熱交換器に通して加熱し、次に反応物質を次段の脱水素化区域中に送る。この間接熱交換方法において用いる高温流体は、高温水蒸気、燃焼ガス、高温プロセス流、又は他の容易に入手できる高温流体であってよい。
【0012】
[0011]本発明によれば、脱水素化可能な炭化水素供給材料の第1の部分を加熱し、好ましくは水蒸気と共に酸化性再加熱を伴うことなく運転する第1の脱水素化反応区域中に導入して流出流を生成させ、これを再加熱して第2の脱水素化反応区域中に導入する。第2の脱水素化反応区域から得られる流出流は脱水素化中に生成する水素を含み、これは次に、下流の脱水素化触媒中に通す前に反応物質を再加熱するための熱を生成させる接触酸化のために利用する。第2の脱水素化反応区域から得られる流出流、脱水素化可能な炭化水素供給材料の第2の部分、酸素、及び場合によっては水蒸気を、酸化性再加熱を伴って運転する第3の脱水素化反応区域内で反応させる。
【0013】
[0012]脱水素化可能な炭化水素供給材料の第2の部分、酸素、及び存在する場合には水蒸気は、好ましくは、脱水素化触媒と接触させる前に所望の反応温度を達成するために酸化性再加熱触媒への均一な供給を確保するために、第3の脱水素化反応区域に導入する前に混合する。また、この均一性によって炭化水素の爆発性濃度を与える可能性も排除される。
【0014】
[0013]酸化性再加熱を用いる動機は、脱水素化反応区域において生成する水素の燃焼が脱水素化プロセスにおいて有益な2つの機能を果たすことを認識したことである。第1に、水素の消費は、脱水素化反応の平衡を増加する量の脱水素化に有利に働くようにシフトする点で有益である。第2に、水素の選択的燃焼は、反応物質を所望の脱水素化条件に再加熱するのに十分な熱を放出する。
【0015】
[0014]酸化は、好ましくは、より価値のある供給炭化水素及び生成物炭化水素を破壊する燃焼又は酸化と比べて水素の酸化を選択的に促進する触媒の存在下で行う。段階間再加熱の選択的燃焼方法は、より経済的な脱水素化プロセスを提供する。
【0016】
[0015]触媒反応及び炭化水素転化の当該技術において達成されている進歩にもかかわらず、脱水素化区域を通る一回の通過中に達成することができる最高転化率は、全転化率よりも少ない量に限定される。即ち、供給炭化水素の対応する生成物脱水素化炭化水素への100%の転化率を達成することは不可能である。任意の脱水素化プロセスにおいて達成することができる転化率における基本的な制約は、用いる温度における種々の反応物質の平衡濃度である。したがって、接触脱水素化区域の流出流は、供給炭化水素、脱水素化炭化水素生成物、及び水素の混合物を含む。一般に、脱水素化炭化水素生成物を分離及び回収し、未転化の供給炭化水素を再循環させることが必要である。脱水素化区域において達成される転化率がより大きいと、再循環させなければならない未転化の物質の量がより少ないことが認められる。生成物と未反応の炭化水素との分離は、大規模な資本設備が必要であり、熱及び電力の形態の大量のユーティリティーを消費する。したがって、脱水素化区域において1パスあたりに達成される転化率を増加させ、それによって分離及び再循環させなければならない物質の量を減少させることが望ましい。また、1パスあたりのより高い転化率によって、プロセスにおいて用いる反応区域をより小さくし、これに関連して反応器のコスト、及び反応区域を運転する触媒及びユーティリティーのコストを減少させることもできる。これらの理由で、脱水素化区域供給流を多床脱水素化区域に通して通過させる間に全転化率の向上を達成することが非常に望ましい。
【0017】
[0016]酸化性再加熱プロセスにおいては、酸素含有気体流を、好ましくは前段の脱水素化反応区域の流出流と混合し、得られる混合物を、脱水素化可能な炭化水素供給材料の一部と一緒に選択的水素酸化触媒の床中に通す。このプロセスにおける性能及び安全性の最適のレベルを達成するためには、このようにして酸素をプロセス中に通す速度を精密に制御することが必要である。
【0018】
[0017]不十分な量の酸素は、所望量より少ない水素の消費、及びより重要なことには所望量よりも少ない反応物質流の再加熱をもたらす。その結果、反応区域全体を通過させる間に達成される脱水素化度が減少する。所望の程度の水素燃焼を行うために必要な量を上回る過剰量の酸素を脱水素化区域の任意の部分中に注入することは通常は望ましくない。
【0019】
[0018]また、脱水素化区域中に過剰量の酸素を通すことは、プロセスの長期間運転に対する有害な影響も与える。例えば、酸素は通常は幾つかの商業的に用いられている脱水素化触媒を失活又は被毒するように働く。したがって、残留酸素を酸化触媒床から放出させて、その結果脱水素化触媒と接触させることは望ましくない。また、酸素−炭化水素混合物の明らかな爆発性のために、酸素の完全な消費を与えないような脱水素化区域の運転も望ましくない。しかしながら、これらの混合物の爆発性は、希釈剤及び意図的に低い酸素添加速度を用いること、及び爆発抑圧手段として作用する十分量の固体物質を存在させることなどによって、混合物の存在が爆発性の範囲になることを回避するようにプロセスを適切に運転することによって、実質的になくすことができる。最後に、酸素は炭化水素と反応して種々の望ましくない酸素化化合物を形成する可能性があるので、酸素の存在は炭化水素を含む容器内では通常は望ましくない。
【0020】
[0019]脱水素化反応区域の構造は、用いる触媒床のタイプを変更することによって変化させることができる。例えば、環状触媒床を通る放射流、及び円筒状触媒床を通る鉛直流が挙げられる。放射流を用いる場合には、脱水素化触媒及び酸化触媒の床は、1つ又は複数の容器内において同じ高さに同心円状に配置することができることに留意すべきである。この配置の外側の床内に、酸化触媒又は脱水素化触媒のいずれかを配置することができる。次に、気体流を放射流触媒床の中央部に配置されている円筒形の中央パイプ領域に通し、且つ触媒床の外表面と容器の内壁との間に配置されている環状の気体回収・分配空隙体積に通して通過させる。また、用いることができる触媒の床の数を変化させることも可能である。触媒配置に関する好適なシステムは、米国特許第3,498,755号明細書;同第3,515,763号明細書;及び同第3,751,232号明細書;に示されているものを手本とすることができる。
【0021】
[0020]脱水素化触媒は、一般に周期律表の第VI及びVIII族から選択される1種類以上の金属成分から構成される。アルキル芳香族物質の脱水素化のための1つの代表的な触媒は、85重量%の酸化第二鉄、2重量%のクロミア、12重量%の水酸化カリウム、及び1重量%の水酸化ナトリウムを含む。商業的に用いられる第2の脱水素化触媒は、87〜90重量%の酸化第二鉄、2〜3重量%の酸化クロム、及び8〜10重量%の酸化カリウムから構成される。第3の代表的な触媒は、90重量%の酸化鉄、4重量%のクロミア、及び6重量%の炭酸カリウムを含む。好適な触媒の製造方法は当該技術において周知である。これは、活性触媒剤として少なくとも35重量%の酸化鉄、1〜8重量%の亜鉛又は銅酸化物、0.5〜50重量%のアルカリ促進剤、並びに安定剤及び結合剤として1〜5重量%の酸化クロムの触媒複合体の製造が記載されている米国特許第3,387,053号明細書の教示によって示される。また、米国特許第4,467,046号明細書には、水蒸気の存在下でエチルベンゼンを脱水素化するための触媒が記載されている。この触媒は、15〜30重量%の酸化カリウム、2〜8重量%の酸化セリウム、1.5〜6重量%の酸化モリブデン、1〜4重量%の炭酸カルシウムを含み、残余は酸化鉄である。
【0022】
[0021]脱水素化条件は、一般に500℃〜750℃、好ましくは565℃〜675℃の温度を含む。任意の特定の脱水素化プロセスの効率的な運転のために必要な温度は、供給炭化水素、及び用いる触媒の活性によって定まる。脱水素化区域内に保持する圧力は100〜750mmHgの範囲であってよく、好ましい圧力範囲は250〜700mmHgである。脱水素化区域内の運転圧力は、区域の入口、中央部、及び出口において測定して、それによって平均圧力を与える。供給流は、15.6℃において充填する全液体炭化水素を基準として0.1〜2.0hr−1、好ましくは0.1〜1.0hr−1の液時空間速度で脱水素化区域に充填する。
【0023】
[0022]脱水素化する炭化水素供給流は、好ましくは過熱水蒸気と混合して吸熱脱水素反応の温度低下効果を補償する。また、水蒸気の存在は、炭素堆積物の蓄積を抑止することによって脱水素化触媒の安定性に利するとも記載されている。好ましくは、水蒸気は、供給炭化水素1ポンドあたり0.5〜1.5ポンドの水蒸気の速度で供給流の他の成分と混合する。必要に応じて、1つ以上の後続の脱水素触媒床の後に更なる量の水蒸気を加えることができる。しかしながら、脱水素区域の流出流は、生成物炭化水素1ポンドあたり3ポンド未満の水蒸気、好ましくは生成物炭化水素1ポンドあたり2ポンド未満の水蒸気を含んでいなければならない。
【0024】
[0023]最後の脱水素化区域からの気体流出流は、水蒸気流、このプロセス又は他のプロセスの反応物質流に対して熱交換するか、或いは分別のための熱源として用いることができる。商業的には、流出流はしばしば幾つかの熱交換器に通されて、その結果、多数の異なる流れの加熱と流出流の冷却がおこる。この熱交換は、上記の制約下で行う。好ましくは、冷却は、脱水素化区域の流出流中のC6+炭化水素、即ち分子あたり6以上の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも95モル%、及び水蒸気の少なくとも95モル%を凝縮させるのに十分なものである。これによって、流出流中に存在する実質的にすべての脱水素化炭化水素生成物(例えばスチレン)、殆どの水、及び他の容易に凝縮可能な化合物が液体に転化される。これにより混合相流が生成し、これを相分離容器中に通す。この手順は、デカンテーションによる、流出流中に存在する水及び水素から炭化水素の手軽で大雑把な分離を可能にする。脱水素化区域流出流中に存在する脱水素化炭化水素生成物は分離容器から排出される炭化水素流の一部になり、これは適切な分離設備に送られる。脱水素化炭化水素生成物は、好ましくは、当該技術において公知の幾つかの分別システムの1つを用いることによって炭化水素流から回収する。この分別によって、好ましくはエチルベンゼンのような未転化の炭化水素供給流の比較的純粋な流れが与えられ、これは経済性を向上させるために再循環させることができる。また、生成物の分別中に、脱水素化反応の副生成物を含む更なる炭化水素流を得ることもできる。例えば、エチルベンゼンからのスチレンの製造においては、ベンゼン及びトルエンを回収することができ、また、その一部を米国特許第3,409,689号明細書及び英国特許第1,238,602号明細書に教示されているように再循環させるか、或いはプロセスから完全に排出することができる。所望の場合には、分別以外の方法を用いて脱水素化炭化水素生成物を回収することができる。例えば、米国特許第3,784,620号明細書には、ナイロン−6及びナイロン6,10のようなポリアミド透過膜を用いることによってスチレンとエチルベンゼンを分離することが教示されている。米国特許第3,513,213号明細書には、無水フルオロホウ酸銀を溶媒として用いる液−液抽出を用いる分離方法が教示されている。フルオロホウ酸第一銅及びフルオロリン酸第一銅を用いる同様の分離方法が、米国特許第3,517,079号明細書;同第3,517,080号明細書;及び同第3,517,081号明細書;に記載されている。
【0025】
[0024]プロセスへの酸素供給流は空気であってもよいが、好ましくは空気よりも高い酸素含量を有する気体である。酸素供給流は10モル%未満の窒素含量を有していることが好ましく、経済的に実行可能である場合には実質的に純粋な酸素を用いることが非常に好ましい。酸素供給流中の好ましい酸素濃度は、主として経済的な事項であり、純粋な酸素を有することの有利性を、酸素を得るコストと比較することによって決定することができる。窒素が存在することの基本的な欠点は、生成物分離容器から取り出される水素含有気体流が希釈されること、及び窒素が脱水素化区域を通過し、その結果触媒床を通る圧力損失が増大すること、並びに脱水素化区域内で絶対圧が保持されることである。他方において、窒素の存在は、希釈剤として作用することにより平衡転化レベルに好ましい影響を与える。
【0026】
[0025]水素の酸化を促進するために酸化性再加熱又は酸化区域内で用いる酸化触媒は、商業的に好適な触媒のいすれでもよい。酸化触媒は脱水素化触媒と異なる組成を有する。好ましくは、酸化触媒は水素の酸化に関して高い選択性を有し、供給流又は生成物炭化水素の少量しか酸化されない。好ましい酸化触媒は、IUPAC第7、8、又は9族の貴金属及び少なくとも1種類の他の金属又は金属カチオンを含み、これらの物質のいずれも耐熱性固体担体上に少量存在する。好ましい貴金属は白金及びパラジウムであるが、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、及びイリジウムの使用も意図している。一態様においては、貴金属は最終触媒の0.01〜5.0重量%の範囲の量で存在させる。金属又は金属カチオンは、好ましくはIUPAC第I又は2族から選択され、最終触媒の0.01〜20重量%の量で存在させる。金属又は金属カチオンは、リチウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群から選択することができる。一態様においては、金属又は金属カチオンはリチウム又はカリウムである。酸化触媒の他の任意成分は、IUPAC第14族から選択することができる。
【0027】
[0026]好ましい態様においては、酸化触媒の耐熱性固体担体は、1〜300m/gの間の表面積;0.2〜1.5g/ccの間の見かけ嵩密度;及び20Åより大きい平均細孔径;を有するアルミナである。金属含有成分は、好ましくは、水溶液中に浸漬し、次に500℃〜1200℃の範囲の温度において、空気中で乾燥及び焼成することによって固体担体の固体粒子中に含侵させる。担体は、球状体、ペレット、又は押出物の形態であってよい。脱水素化区域内に存在させる酸化触媒の全量は、好ましくは脱水素化触媒の全量の30重量%未満であり、より好ましくはこの脱水素化触媒の全量の5〜15重量%の間である。
【0028】
[0027]反応物質流を酸化触媒の床と接触させる間に用いる条件は、上述の脱水素化条件によってかなりの程度まで設定される。酸化触媒の好ましい出口温度は、下流の脱水素化触媒の床の好ましい入口温度である。酸化触媒を横切る温度上昇は、好ましくは酸化触媒を横切る水素転化の量によって調節する。15.6℃における液体炭化水素充填物に基づく液時空間速度は、好ましくは2〜20hr−1の間である。
【0029】
[0028]図面において、簡略化した概略フロー図を用いて本発明方法を示す。図面において、ポンプ、器具使用法、熱交換及び熱回収回路、圧縮器、及び同様のハードウエアのような詳細は、関与する技術の理解に対しては非本質的なものであるので削除した。かかる種々の装置の使用は当業者の理解の範囲内である。
【0030】
[0029]ここで図を参照すると、C3+供給炭化水素、即ち分子あたり3以上の炭素原子を有する炭化水素を含む炭化水素供給流を、ライン1に通してプロセス中に導入し、分岐させて第1の部分及び第2の部分を与える。供給流の第1の部分は、ライン2に通して送り、ライン3によって与えられる水蒸気と混合し、得られる混合物をライン4に通して送り、脱水素化反応区域5中に導入する。脱水素化区域5は酸化性再加熱を伴うことなく運転し、得られる流出流をライン6に通して送り、間接熱交換(図示せず)によって加熱し、脱水素化反応区域7中に導入する。脱水素化区域7は酸化性再加熱を伴うことなく運転し、得られる流出流はライン8に通して送り、ライン13及びライン9に通して送られる供給流の第2の部分と混合する。脱水素化区域7から得られる流出流はライン8に通して送り、ライン14及び9に通して供給される酸素及び水蒸気の混合物とも混合する。得られたこの混合物は、ライン10に通して送り、酸化性再加熱を伴うことなく運転する脱水素化反応区域11中に導入する。脱水素化反応区域11は、酸化区域16及び脱水素化区域17を含む。脱水素化反応区域11から得られる流出流は生成物脱水素化炭化水素を含み、これはライン12に通して送り、そして回収する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の脱水素化区域内において、C3+供給炭化水素を含む供給流の第1の部分を脱水素化条件において脱水素化触媒の第1の床に通して通過させて、水素、C3+供給炭化水素、及びC3+生成物炭化水素を含む第1の脱水素化区域の流出流を生成させ;
(b)第1の脱水素化区域の流出流の少なくとも一部を加熱し、第2の脱水素化区域内において脱水素化条件で脱水素化触媒の第2の床に通して通過させて、水素、C3+供給炭化水素、及びC3+生成物炭化水素を含む第2の脱水素化区域の流出流を生成させ;
(c)酸化区域内において、第2の脱水素化区域の流出流の少なくとも一部、C3+供給炭化水素を含む供給流の第2の部分、及び酸素を、酸化条件において選択的水素酸化触媒の別の床中に通して酸化区域流出流を生成させ;
(d)第3の脱水素化区域内において、酸化区域流出流の少なくとも一部を、脱水素化条件において脱水素化触媒の第3の床に通して通過させて、生成物炭化水素を含む第3の脱水素化区域の流出流を生成させ;そして
(e)生成物炭化水素を回収する;
ことを含む、C3+供給炭化水素の接触脱水素化方法。
【請求項2】
水蒸気を供給流の第1の部分と混合して、その後に供給流の第1の部分及び水蒸気を脱水素化触媒の第1の床に通して通過させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水蒸気の量が供給流の第1の部分中のC3+供給炭化水素1ポンドあたり0.5〜1.5ポンドの範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水蒸気を第2の脱水素化区域の流出流の一部、供給流の第2の部分、及び酸素と混合し、その後に第2の脱水素化区域の流出流の一部、供給流の第2の部分、酸素、及び水蒸気を選択的水素酸化触媒の別の床中に通す、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
3+供給炭化水素がアルキル芳香族炭化水素である、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
3+供給炭化水素がエチルベンゼンである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
3+供給炭化水素がプロパンである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
3+供給炭化水素がブタンである、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
脱水素化条件が500℃〜750℃の温度及び100〜750mmHgの圧力を含む、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
脱水素化条件が250〜700mmHgの圧力を含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−519685(P2012−519685A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552920(P2011−552920)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/036129
【国際公開番号】WO2010/101571
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【出願人】(500443589)ラマス テクノロジー インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】