説明

炭化珪素質多孔体

【課題】フィルタとして用いたときに捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止することができるとともに、熱サイクルによる強度低下の少ない炭化珪素質多孔体を提供する。
【解決手段】骨材としての複数の炭化珪素(SiC)粒子と、炭化珪素粒子同士を結合させる、複数の相からなる結合相とを有し、結合相のなかで、最も大きな体積を占める相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相(金属珪化物相)の、いずれか一方であり、次に大きな体積を占める相が、Si相又は金属珪化物相の、残りの一方であり、結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する炭化珪素質多孔体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素質多孔体に関し、さらに詳しくは、フィルタとして用いたときに捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止することができるとともに、熱サイクルによる強度低下の少ない炭化珪素質多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、優れた耐熱性及び耐火性を有する炭化珪素質多孔体等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。上記DPFは、通常、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された所定のセル(所定のセル)と、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口された残余のセル(残余のセル)とが交互に配設され、所定のセルが開口する一方の端部から流入した流体(排ガス)を、隔壁を透過させて残余のセル内に透過流体として流出させ、透過流体を残余のセルが開口する他方の端部から流出させることにより、排ガス中のPMを捕集除去するものである。DPFは、PMが内部に堆積すると排ガス処理能力が低下するため、通常、適宜、加熱等することにより、捕集したPMを燃焼除去し、処理能力の高い状態にもどしながら使用される。
【0003】
DPFの材質として用いられる上記炭化珪素質多孔体としては、骨材である炭化珪素粒子を、結合材である珪素により結合して形成されたものが好適に用いられているが(例えば、特許文献1参照)、PMを燃焼除去する際に、DPFが昇温し過ぎるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−201082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PMを燃焼除去する際に、DPFが昇温し過ぎるのは、結合材としての珪素の熱容量が低いためと考えられる。一方、熱容量の大きい金属珪化物を結合材として使用することも考えられるが、金属珪化物は、熱容量が大きいとともに熱膨張率も大きいため、熱サイクルによりDPFが強度低下する可能性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、フィルタとして用いたときに捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止することができるとともに、熱サイクルによる強度低下の少ない炭化珪素質多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の炭化珪素質多孔体を提供するものである。
【0007】
[1] 骨材としての複数の炭化珪素(SiC)粒子と、前記炭化珪素粒子同士を結合させる、複数の相からなる結合相とを有し、前記結合相のなかで、最も大きな体積を占める結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、いずれか一方であり、次に大きな体積を占める結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、残りの一方であり、前記結合相を形成する結合材の含有率(100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材))が、5〜60体積%であり、前記結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する炭化珪素質多孔体。
【0008】
[2] 開気孔率が30〜75%である[1]に記載の炭化珪素質多孔体。
【0009】
[3] 平均細孔径が、5〜50μmである[1]又は[2]に記載の炭化珪素質多孔体。
【0010】
[4] 炭化珪素粒子の平均粒径が5〜100μmである[1]〜[3]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
【0011】
[5] Si相と、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相との合計体積が、前記結合相全体の70体積%以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
【0012】
[6] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えるハニカム構造体である[1]〜[5]のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
【0013】
[7] 炭化珪素粒子、結合材原料、及び造孔剤を含有し、前記結合材原料が金属珪化物原料を含有し、前記金属珪化物原料が、(a)珪素粉末と、Ti、Zr、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一種との混合物;(b)Tiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種;又は(c)前記(a)及び前記(b)の混合物であり、前記結合材原料の含有率(100×結合材原料/(炭化珪素粒子+結合材原料))が5〜70体積%であり、造孔剤の含有率(100×造孔剤/成形原料)が25〜85体積%である成形原料を、混練して坏土を形成し、前記坏土を成形して成形体を形成し、前記成形体を焼成して、焼成後の結合相のうち、最も大きな体積を占める結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、いずれか一方であり、次に多く含有されている結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、残りの一方であり、前記結合相を形成する結合材の含有率(100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材))が、5〜60体積%であり、前記結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する炭化珪素質多孔体を得る炭化珪素質多孔体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炭化珪素質多孔体によれば、炭化珪素粒子同士を結合させる結合相のなかで、最も大きな体積を占める結晶相が、「Si相」又は、「40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相」の、いずれか一方であり、次に大きな体積を占める結晶相が、「Si相」又は、「40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相」の、残りの一方であり、結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有するため、結合相の熱容量が高くなり、それにより炭化珪素質多孔体全体の熱容量が高くなることより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止することができるとともに、急激な温度変化といった熱サイクルによる強度低下を抑制することが可能である。これは、結合相を、熱容量が大きく且つ熱膨張率が大きい金属珪化物と、熱膨張率の小さいSiとを複合化した相とすることにより、PMを燃焼除去する際のDPFの温度上昇と、熱サイクルによりDPFの強度低下とを、両方抑制することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
(1)炭化珪素質多孔体:
本発明の炭化珪素質多孔体の一実施形態は、骨材としての複数の炭化珪素(SiC)粒子と、炭化珪素粒子同士を結合させる、複数の相からなる結合相とを有し、結合相のなかで、最も大きな体積を占める結晶相が、「Si相」又は、「40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値の、Ti(チタン)の珪化物、Zr(ジルコニウム)の珪化物、Mo(モリブデン)の珪化物及びW(タングステン)の珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相」(以下、「金属珪化物相」ということがある。)の、いずれか一方であり、次に大きな体積を占める結晶相が、「Si相」又は「金属珪化物相」の、残りの一方であり、結合相を形成する結合材の含有率(100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材))が、5〜60体積%であり、結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有するものである。
【0017】
本実施形態の炭化珪素質多孔体は、金属珪化物相が、結合相のなかで、最も大きな体積を占めるか、又は次に大きな体積を占める結晶相であるため、金属珪化物の高い熱容量により、炭化珪素質多孔体全体の熱容量が高くなり、それにより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、炭化珪素質多孔体が昇温し過ぎることを防止することができる。ここで、900KにおけるTiの珪化物(TiSi)の熱容量は3.6J/cm・Kであり、Moの珪化物(MoSi)の熱容量は3.2J/cm・Kであり、Wの珪化物(WSi)の熱容量は3.1J/cm・Kであり、Siの熱容量は2.1J/cm・Kである。更に、Si相が、結合相のなかで、最も大きな体積を占めるか、又は次に大きな体積を占める結晶相であり、且つ、結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有するものであるため、炭化珪素粒子とSiとの線熱膨張係数の差が小さく、熱サイクルによっても大きな熱応力は発生し難く、熱サイクルによる強度低下を小さくすることが可能である。
【0018】
金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数は、Siの40〜800℃の線熱膨張係数より3×10−6(℃−1)以上高い値である。通常、金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数は、「Siの40〜800℃の線熱膨張係数より3×10−6(℃−1)だけ高い値」より低い値にはならない。具体的には、Siの40〜800℃の線熱膨張係数は、5×10−6(℃−1)であり、Tiの珪化物(TiSi)の40〜800℃の線熱膨張係数は、11×10−6(℃−1)であり、Zrの珪化物(ZrSi)の40〜800℃の線熱膨張係数は、9×10−6(℃−1)であり、Moの珪化物(MoSi)の40〜800℃の線熱膨張係数は、9×10−6(℃−1)であり、Wの珪化物(WSi)の40〜800℃の線熱膨張係数は、9×10−6(℃−1)である。また、炭化珪素の40〜800℃の線熱膨張係数は、5×10−6(℃−1)である。
【0019】
金属珪化物相は、上記所定の熱膨張係数の、Tiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相であるが、Tiの珪化物からなる相であることが好ましい。Tiの珪化物からなる相であることより、最も高熱容量化できるという利点がある。
【0020】
本実施形態の炭化珪素質多孔体を構成する結合相は、Si相又は金属珪化物相のいずれか一方が、最も大きな体積を占める結晶相であり、他方が次に大きな体積を占める結晶相である。結合相中の最も大きな体積を示す結晶相は、Si相であっても金属珪化物相であってもよいが、金属珪化物相が好ましい。結合相中に、金属珪化物相を最も多く含むことにより、より高熱容量化できるという利点がある。
【0021】
結合相は、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有し、25〜70体積%含有することが好ましく、30〜60体積%含有することが更に好ましい。結合相がSi相をこのような範囲で含有するため、熱サイクルによる強度低下を抑制することが可能である。また、結合相に含有されるSi相と金属珪化物相との合計が、結合相全体の70体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。結合相に含有されるSi相と金属珪化物相との合計がこのような範囲であるため、結合相の熱容量が高くなり、それにより炭化珪素質多孔体全体の熱容量が高くなることより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止できるとともに、熱サイクルによる強度低下を小さくすることが可能である。
【0022】
結合相に含有される珪素(Si)及び上記金属珪化物以外の成分としては、ニ酸化珪素、酸化アルミニウムといった金属酸化物等を挙げることができる。これらの物質により、結合相中の他の相が形成される。珪素(Si)及び上記金属珪化物以外の成分の結合相中の含有率は、結合相全体に対して、30体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることが更に好ましい。
【0023】
結合相を形成する結合材の含有率(100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材))は、5〜60体積%であり、10〜50であることが好ましく、15〜40であることが更に好ましい。結合材の含有率が、5体積%より少ないと炭化珪素粒子同士を十分に結合させることができず、炭化珪素質多孔体の強度が低下するため好ましくない。60体積%より多いと炭化珪素質多孔体の気孔率が低下し圧力損失が高くなるため好ましくない。結合材の含有率は、炭化珪素質多孔体を粉砕したものについてX線回折測定を行うことにより算出した値である。
【0024】
本実施形態の炭化珪素質多孔体を構成する炭化珪素粒子は、平均粒径が5〜100μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることより、フィルタに好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒径が5μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎ、100μmより大きいと気孔率が小さくなり過ぎる。平均粒径は、JIS R 1629に準拠して測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素質多孔体の40〜95体積%含有されていることが好ましく、50〜85体積%含有されていることが更に好ましい。尚、炭化珪素粒子の平均粒径は、炭化珪素粒子の原料の平均粒径である。
【0025】
また、本実施形態の炭化珪素質多孔体全体の熱容量は、フィルタの設計により好ましい範囲が異なるため限定されるものではない。ただし一例として結合材の含有率40%での例を挙げると、900Kでの熱容量が3.2J/cm・K以上が好ましい。炭化珪素質多孔体全体の熱容量をこのような範囲とすることより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、炭化珪素質多孔体が昇温し過ぎることを防止することができる。炭化珪素質多孔体全体の熱容量が、3.2J/cm・Kより小さいと、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、炭化珪素質多孔体が昇温し過ぎることを防止することができないことがある。熱容量は、DSC法による比熱、乾式自動密度計(Accupyc 1330 島津製作所社製)による密度から算出した値である。
【0026】
本実施形態の炭化珪素質多孔体は、開気孔率が30〜75%であることが好ましく、40〜65%であることが更に好ましい。開気孔率をこのような範囲とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくできるという利点がある。開気孔率が30%未満であると、圧力損失が上昇することがあり、開気孔率が75%を超えると、強度が低下することがある。開気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0027】
本実施形態の炭化珪素質多孔体は、平均細孔径が5〜50μmであることが好ましく、7〜35μmであることが更に好ましい。平均細孔径をこのような範囲とすることにより、粒子状物質(PM)を効果的に捕集できるという利点がある。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすいため好ましくない。平均細孔径が50μmを超えると、粒子状物質(PM)がフィルタに捕集されず通過することがあるため好ましくない。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0028】
本実施形態の炭化珪素質多孔体は、600℃における熱伝導率が、10W/mK以上であることが好ましく、11W/mK以上であることが更に好ましい。熱伝導率をこのような範囲とすることにより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に昇温し過ぎることを抑制できるという利点がある。熱伝導率が10W/mK未満であると、昇温し過ぎる恐れがある。熱伝導率は、JIS R 1611に準拠して測定した値である。
【0029】
本実施形態の炭化珪素質多孔体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えるハニカム構造体であることが好ましい。本実施形態の炭化珪素質多孔体であるハニカム構造体に、所定の目封止を施してDPFを形成することにより、DPFの熱容量が高くなり、DPFに捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止することができる。
【0030】
本発明の炭化珪素質多孔体をハニカム構造体とする場合、そのハニカム構造体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ハニカム構造体の柱状構造の中心軸に垂直な断面形状(底面の形状)としては、四角形等の多角形、円形、楕円形、長円形、異形等を挙げることができる。そして、その大きさは、特に限定されないが、中心軸方向の長さが、70〜500mm程度であることが好ましい。また、得られるハニカム構造体の底面の形状が、例えば、正方形である場合には、その一辺の長さが、30〜100mm程度であることが好ましい。また、ハニカム構造体のセル形状(ハニカム構造体の中心軸方向(セルが延びる方向)に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。目封止部の熱容量を増大させる手段としては、目封止部材質を高熱容量化することや目封止部容積を増大させることが挙げることができる。例えば八角セルと四角セルの組合せにより、入口側では四角セルを目封止し、出口側では八角セルを目封止する構造とすることで、出口側における目封止部の容積が入口側の目封止部よりも増大することになる。ハニカム構造体の隔壁の厚さは、50〜2000μmであることが好ましい。隔壁の厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがあり、2000μmより厚いと、圧力損失が大きくなることがある。ハニカム構造体のセル密度は、特に制限されないが、0.9〜311セル/cmであることが好ましく、7.8〜62セル/cmであることが更に好ましい。
【0031】
上記炭化珪素質多孔体であるハニカム構造体をフィルタとして用いる場合、ハニカム構造体をハニカムセグメントとして用い、複数のハニカムセグメントを接合したものをハニカムフィルタとして用いても良い。この場合、ハニカムセグメントの構造は、上記ハニカム構造体における好ましい構造と同様の構造であることが好ましい。
【0032】
(2)炭化珪素質多孔体の製造方法:
本発明の炭化珪素質多孔体の一実施形態の製造方法は、炭化珪素粒子、結合材原料及び造孔剤を含有する成形原料を、混練して坏土を形成し、坏土を成形して成形体を形成し、成形体を焼成して炭化珪素質多孔体を得るものである。そして、結合材原料が金属珪化物原料を含有し、金属珪化物原料が、(a)珪素粉末と、Ti、Zr、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一種との混合物;(b)Tiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種;又は(c)前記(a)及び前記(b)の混合物である。そして、本実施形態の炭化珪素質多孔体の製造方法は、結合材原料の含有率(100×結合材原料/(炭化珪素粒子+結合材原料))が5〜70体積%であり、造孔剤の含有率(100×造孔剤/成形原料)が25〜85体積%であり、焼成後の結合相のうち、最も大きな体積を占める相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、いずれか一方であり、次に多く含有されている相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、残りの一方であり、上記焼成後の結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する炭化珪素質多孔体を得るものである。ここで、結合材原料が、得られる炭化珪素質多孔体における結合相を形成し、Siが、Si相を形成し、金属珪化物原料が、金属珪化物相を形成する。
【0033】
本実施形態の炭化珪素質多孔体の製造方法は、まず、炭化珪素粒子及び結合材原料を含有する成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料は、炭化珪素粒子及び結合材原料と、必要に応じてその他の原料とを混合して作製することが好ましい。結合材原料には、珪素(Si)及び金属珪化物原料が含有され、結合材原料のなかで、最も多く含有されている原料がSi又は金属珪化物原料の一方であり、次に多く含有されている原料がSi又は金属珪化物原料の残りの一方である。本実施形態において金属珪化物原料は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値である。
【0034】
金属珪化物原料は、(a)珪素粉末と、Ti、Zr、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一種との混合物;(b)Tiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種;又は(c)「(a)及び(b)の混合物」であることが好ましい。これらの中でも(a)が更に好ましい。金属珪化物原料として、上記(a)を用いた場合、珪素粉末と、Ti、Zr、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一種とが、焼成時に反応して金属珪化物となり、珪素と共に炭化珪素粒子同士を結合する。また、金属珪化物原料として、上記(b)を用いた場合、焼成時に、Tiの珪化物等がそのまま珪素と共に炭化珪素粒子同士を結合する。また、金属珪化物原料として、上記(c)を用いた場合、焼成時に、珪素粉末と、Ti、Zr、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一種とが反応して金属珪化物となり、(b)の金属珪化物、珪素と共に炭化珪素粒子同士の結合に用いられる。
【0035】
成形原料に含有される結合材原料は、Si及び金属珪化物原料以外のものを含有しても良く、Si及び金属珪化物原料以外の結合材原料としては、ニ酸化珪素、酸化アルミニウムといった金属酸化物等を挙げることができる。
【0036】
ここで、金属珪化物原料というときは、焼成により金属珪化物になる原料であり、焼成後に未反応で残存するものは、金属珪化物原料ではない。例えば、上記(a)の場合、結合材原料に含有される珪素(Si)は、Ti等の金属に対して過剰に含有されており、含有されるSiの中で、焼成によりTi等の金属と反応して金属珪化物となるものは金属珪化物原料であるが、焼成後もSiとして残存するものは「結合材原料に含有されるSi」である。結合材原料に含有されるSiは、結合材原料全体の20〜80体積%含有し、25〜75体積%であることが好ましく、30〜70体積%であることが更に好ましい。結合材原料中にSiがこのような範囲で含有されるため、得られる炭化珪素質多孔体の熱サイクルによる強度低下を抑制することが可能である。また、結合材原料に含有されるSiと金属珪化物原料との合計が、結合材原料全体の70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることが更に好ましく、90体積%以上であることが特に好ましい。結合材原料に含有されるSiと金属珪化物原料との合計がこのような範囲であるため、得られる炭化珪素質多孔体の結合相の熱容量が高くなり、それにより炭化珪素質多孔体全体の熱容量が高くなることより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に、昇温し過ぎることを防止できるとともに、熱サイクルによる強度低下を抑制することが可能である。
【0037】
成形原料中の結合材原料の含有率(100×結合材原料/(炭化珪素粒子+結合材原料))は、5〜60体積%であり、10〜50体積%であることが好ましく、15〜40体積%であることが更に好ましい。結合材原料の含有率が、5体積%より少ないと炭化珪素粒子同士を十分に結合させることができず、炭化珪素質多孔体の強度が低下することがある。60体積%より多いと炭化珪素質多孔体の気孔率が低下し圧力損失が高くなることがある。
【0038】
成形原料に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、5〜100μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることより、フィルタに好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒径が5μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎることがあり、100μmより大きいと気孔率が小さくなり過ぎることがある。気孔径が小さ過ぎると粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすく、気孔率が小さすぎると圧力損失が上昇するといった問題がある。平均粒径は、JIS R 1629に準拠して測定した値である。成形原料中に、炭化珪素粒子が40〜95体積%含有されていることが好ましく、50〜85体積%含有されていることが更に好ましい。
【0039】
成形原料中には、その他の原料として、造孔剤、バインダー、界面活性剤、分散媒等を配合することができる。
【0040】
造孔材としては、焼成工程により飛散消失する性質のものであればよく、コークス等の無機物質や発泡樹脂等の高分子化合物、澱粉等の有機物質等を単独で用いるか組み合わせて用いることができる。成形原料中の造孔剤の含有率(100×造孔剤/成形原料)は、25〜85体積%であることが好ましい。造孔剤の含有率をこのような範囲にすることにより、得られる炭化珪素質多孔体の開気孔率を30〜75%とすることができる。造孔剤の含有率が25体積%未満であると、得られる炭化珪素質多孔体の開気孔率が低下し、85体積%を超えると、得られる炭化珪素質多孔体の開気孔率が大きくなり、強度が低下することがある。
【0041】
バインダーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを使用することができ、モンモリロナイト等の無機バインダーを使用することもできる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。バインダーの含有量は、成形原料全体に対して1〜20質量%であることが好ましい。
【0042】
分散媒としては、水を用いる。分散媒の含有量は、成形原料全体に対して5〜45質量%であることが好ましい。
【0043】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0044】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0045】
次に、坏土を成形して成形体を形成する。坏土を成形して成形体を形成する方法は特に制限されず、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形法を用いることができる。複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム構造体を作製する場合は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。そして、DPFを作製する場合は、ハニカム成形体の一方の端面における所定のセルの開口部と、他方の端面における残余のセルの開口部に、目封止を施すことが好ましい。目封止を施す方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0046】
得られた成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができる。中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。熱風乾燥の条件は、80〜150℃で、5分〜2時間とすることが好ましい。
【0047】
次に、成形体を焼成して本発明の炭化珪素質多孔体を作製する。焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜2200℃で、1〜5時間加熱することが好ましい。得られた炭化珪素質多孔質体の開気孔率は、30〜75%であることが好ましく、40〜65%であることが更に好ましい。開気孔率をこのような範囲とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくできるという利点がある。開気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0048】
得られた炭化珪素質多孔質体は、平均細孔径が5〜50μmであることが好ましく、7〜35μmであることが更に好ましい。平均細孔径をこのような範囲とすることにより、粒子状物質(PM)を効果的に捕集できるという利点がある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0049】
得られた炭化珪素質多孔体は、600℃における熱伝導率が、10W/mK以上であることが好ましく、11W/mK以上であることが更に好ましい。熱伝導率をこのような範囲とすることにより、捕集された粒子状物質(PM)を燃焼除去する際に昇温し過ぎることを抑制できるという利点がある。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末25質量部、及び金属Ti粉末11質量部を混合し、有機バインダーとしてポリビニルアルコールを1質量部、水を8質量部添加して、混錬機を用いて混練し、可塑性の坏土を得た。尚、SiC粉末の平均粒径は、JIS R 1629に準拠して、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した。
【0052】
(ペレット作製)
得られた坏土を一軸プレス成形機を用いて160kg/cmの圧力でプレス成形して、25mm×50mm×6mmの未焼成ペレットを得た。得られた未焼成ペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で2時間乾燥させた後、大気雰囲気にて脱臭装置付き大気炉を用いて約450℃で5時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成して、SiC結晶粒子がSi及びTiSiで結合された、多孔質のペレット(炭化珪素質多孔体のペレット)を得た。
【0053】
得られたペレット(炭化珪素質多孔体)について、以下の方法により、熱サイクル試験前後の強度比(強度比)、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を以下の方法(熱膨張測定)で測定した。Si相及び金属珪化物相の熱膨張係数測定用サンプルは、焼成したペレットを加工して作製した。
【0055】
(目封止ハニカム構造体作製)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末25質量部、及び金属Ti粉末11質量部を混合し、造孔剤として澱粉および発泡樹脂を10質量部、有機バインダーとしてメチルセルロースを6質量部、界面活性剤を2.5質量部、水を24質量部添加して、混練機を用いて混練し、可塑性の坏土を得た。
【0056】
得られた坏土を押出成形機を用いて成形し、マイクロ波乾燥をした後、熱風乾燥機を用いて150℃で2時間乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm(300セル/平方インチ)、断面が一辺35mmの正四角形、長さが152mmのハニカム成形体を得た。
【0057】
得られたハニカム成形体について、隣接するセルが互いに反対側の端部で封じられ、両端面が市松模様状を呈するように、各セルの端部を目封止した。目封止用の充填材には、ハニカム成形体と同様の材料を用いた。
【0058】
目封止後、目封止ハニカム成形体を、熱風乾燥機を用いて150℃で2時間乾燥し、その後、大気雰囲気にて脱臭装置付き大気炉を用いて約450℃で5時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で2時間焼成して、SiC結晶粒子がTiSiで結合された、多孔質の目封止ハニカムセグメント(炭化珪素質多孔体)を得た。このハニカムセグメントはペレットと同様な結晶相、気孔率、平均細孔径を有した。
上記ハニカムセグメントを用い、接合材にはハニカムセグメントと同材料で粘性を低くしたものを用いて複数のハニカムセグメントを接合し、接合後に熱風乾燥機を用いて150℃で2時間乾燥して、その後、窒素雰囲気中にて700℃で1時間熱処理し、加工することで、直径144mm×高さ153mm、の円柱状ハニカム構造体を得た。
【0059】
得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
(熱膨張測定)
ペレットから15mm×3mm×1mmの試験片を切り出し、JIS R 1618に準拠した方法で、40〜800℃の線熱膨張係数を測定する。昇温速度は、10℃/分とした。使用した装置は、理学電気工業社製、商品名:TMA−8310である。
【0062】
(炭化珪素粒子及び結合材の組成比)
ペレットを粉砕し、XRD測定により炭化珪素粒子及び結合材の成分の同定を行う。同定に用いる検量線を、SiC原料粉末を基準として各結合材成分(試薬を使用)について作成する。具体的には、SiC原料粉末と結合材成分とを体積比が90:10、75:25、50:50、25:75、及び10:90となるように混合し、混合したものを粉砕して粉末状にし、得られた粉末のXRD測定を実施することにより作成する。この測定を結合材成分比毎に行う。各結合材成分の割合は検量線から定量し、体積比に換算する際には、検量線作成に使用した粉末の、乾式自動密度計(Accupyc 1330 島津製作所社製)で測定した密度を使用する。XRD測定には、リガク社製、商品名:RINT−2500を用いる。結合材含有率(体積%)は、「100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材)」により算出し、Si含有率(体積%)は、「100×Si/結合材」により算出する。
【0063】
(開気孔率)
ペレットから10mm×10mm×1mmの試験片を切り出し、アルキメデス法により開気孔率を求める。尚、開気孔率の測定は、各実施例、比較例のペレットについて行ったが、各実施例、比較例のハニカム構造体においても同じ値であった。
【0064】
(平均細孔径)
ペレットから10mm×10mm×1mmの試験片を切り出し、水銀ポロシメータにより平均細孔径(細孔径)を測定する。尚、平均細孔径の測定は、各実施例、比較例のペレットについて行ったが、各実施例、比較例のハニカム構造体においても同じ値であった。
【0065】
(強度試験)
ペレットについて、JIS R 1601に準拠して、4点曲げ強度試験を行う。強度試験は、以下に示す、「熱サイクル試験」を行う前のペレットと、「熱サイクル試験」を行った後のペレットについて行う。「熱サイクル試験前のペレット」の強度に対する、「熱サイクル試験後のペレット」の強度の比の値(熱サイクル試験後/熱サイクル試験前)を強度比(熱サイクル試験前後の強度比)とした。強度比は、1.0以上を合格とし、1.0未満を不合格とした。
【0066】
(熱サイクル試験)
JIS R 1601に準拠して強度試験を行なえるようにペレットを加工した試験片を、「室温から100℃/分の条件で昇温し、1100℃に維持した箱型大気炉中に10分間保持し、その後100℃/分の条件で降温し、室温で30分静置する」というサイクルを計20回繰り返し、熱サイクル試験とする。なお結合部にWSiを含む実施例7及び比較例4については、熱サイクル試験を、雰囲気制御可能な電気炉を用いて窒素雰囲気下で実施した。
【0067】
(燃焼時の温度上昇確認試験(温度確認試験))
目封止ハニカム構造体(ハニカム構造体)の外周部に把持材としてセラミック製無膨張マットを巻き、SUS409製のキャニング用缶体に押し込んでキャニング構造体を作製する。ディーゼル燃料軽油の燃焼により発生させたスートを含むパティキュレートを含んだ燃焼ガスを、得られたキャニング構造体に導入し、ハニカム構造体の一方の端面(排ガス流入端面)より流入させ、反対側の端面(排ガス流出端面)より流出させることにより、パティキュレートをハニカム構造体内に捕集する。その後、一旦室温まで放冷してから、ハニカム構造体の排ガス流入端面より、一定割合の酸素を含む700℃の燃焼ガスを流入させることでスートを燃焼させ、流出端面の中心部の温度(測定温度)を熱電対により測定する。試験は各水準とも5回行った。評価は比較例5(結合材が全て珪素)で温度確認試験した際における流出端面中心の最高温度(基準温度)の平均値を基準とし、それと比較した場合に温度低下が確認できた場合を合格とし、5回の試験中の合格回数を調べた。
【0068】
(実施例2)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末4質量部、及び金属Ti粉末2質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例3)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末25質量部、及び金属Ti粉末17質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例4)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末25質量部、及び金属Ti粉末4質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例5)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末24質量部、及び金属Mo粉末21質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例6)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末22質量部、及び金属Zr粉末16質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例7)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末24質量部、及び金属W粉末38質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例8)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末111質量部、及び金属Ti粉末48質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例9)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末17質量部、及び金属Ti粉末7質量部、コロイダルシリカの固形分が7質量部となるように混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例10)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末16質量部、及び金属Ti粉末7質量部、コロイダルシリカの固形分が8質量部となるように混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例11)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)45質量部、及び平均粒径100μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)40質量部、及び平均粒径10μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)15質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末35質量部、及び金属Ti粉末15質量部を混合し、坏土を一軸プレス成形機を用いて200kg/cmの圧力でプレス成形した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)を得た。また、平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)45質量部、及び平均粒径100μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)40質量部、及び平均粒径10μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)15質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末35質量部、及び金属Ti粉末15質量部を混合し、造孔材を含まないこと以外は実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例12)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)20質量部、及び平均粒径10μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)70質量部、及び平均粒径5μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)10質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末49質量部、及び金属Ti粉末21質量部を混合し、造孔材としてPMMAを10質量部添加した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)を得た。また、平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)20質量部、及び平均粒径10μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)70質量部、及び平均粒径5μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)10質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末49質量部、及び金属Ti粉末21質量部を混合し、造孔剤として澱粉および発泡樹脂を25質量部したこと以外は実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例13)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)25質量部、及び平均粒径10μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)60質量部、及び平均粒径5μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)15質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末45質量部、及び金属Ti粉末20質量部を混合し、坏土を一軸プレス成形機を用いて200kg/cmの圧力でプレス成形した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)を得た。また、平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)25質量部、及び平均粒径10μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)60質量部、及び平均粒径5μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)15質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末45質量部、及び金属Ti粉末20質量部を混合し、造孔材を含まないこと以外は実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例14)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)10質量部、及び平均粒径100μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)90質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末19質量部、及び金属Ti粉末8質量部を混合し、造孔材としてPMMAを5質量部添加した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)を得た。また、平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)10質量部、及び平均粒径100μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)90質量部からなるSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末19質量部、及び金属Ti粉末8質量部を混合し、造孔剤として澱粉および発泡樹脂を20質量部したこと以外は実施例1と同様にして目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例1)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末25質量部、及び金属Ti粉末19質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(比較例2)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末24質量部、及び金属Mo粉末37質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例3)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末20質量部、及び金属Zr粉末29質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(比較例4)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末23質量部、及び金属W粉末68質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(比較例5)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末24質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例6)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末1質量部、及び金属Ti粉末1質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。尚、比較例6においては、結合材量が2体積%と少ないことにより、焼成後の強度が低くなったため、ペレット及びハニカム構造体が崩壊し、各物性の測定を行えなかった。
【0087】
(比較例7)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末637質量部、及び金属Ti粉末568質量部を混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。結果を表1に示す。尚、比較例7においては、目封止ハニカム構造体の細孔径及び開気孔率が小さいことより、圧力損失が大きくなり、温度確認試験においてスートを完全に燃焼できなかったために、温度確認試験のデータを採ることができなかった。
【0088】
(比較例8)
平均粒径35μmのSiC粉末(炭化珪素粒子)100質量部に対し、金属Si粉末9質量部、及び金属Ti粉末4質量部、コロイダルシリカの固形分が15質量部となるように混合した以外は実施例1と同様にしてペレット(炭化珪素質多孔体)及び目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の場合と同様にして、ペレットについて、上記、強度比、炭化珪素粒子及び結合材の組成比、開気孔率、及び平均細孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。また、得られたペレット(炭化珪素質多孔体)を構成するSi相及び金属珪化物相の40〜800℃の線熱膨張係数を測定した。また、得られた目封止ハニカム構造体について、温度確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0089】
実施例1〜14、比較例1〜8より、結合相のなかで、最も大きな体積を占める相が、Si相又は金属珪化物相のいずれか一方であり、次に大きな体積を占める相が、Si相又は金属珪化物相の残りの一方であり、結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する場合に、熱サイクルによる強度低下を防止することがきることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
自動車等の排ガス中の粒子状物質を捕集、除去するフィルタとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材としての複数の炭化珪素(SiC)粒子と、前記炭化珪素粒子同士を結合させる、複数の相からなる結合相とを有し、
前記結合相のなかで、最も大きな体積を占める結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、いずれか一方であり、次に大きな体積を占める結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、残りの一方であり、
前記結合相を形成する結合材の含有率(100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材))が、5〜60体積%であり、
前記結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する炭化珪素質多孔体。
【請求項2】
開気孔率が30〜75%である請求項1に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項3】
平均細孔径が、5〜50μmである請求項1又は2に記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項4】
炭化珪素粒子の平均粒径が5〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項5】
Si相と、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相との合計体積が、前記結合相全体の70体積%以上である請求項1〜4のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項6】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えるハニカム構造体である請求項1〜5のいずれかに記載の炭化珪素質多孔体。
【請求項7】
炭化珪素粒子、結合材原料、及び造孔剤を含有し、
前記結合材原料が金属珪化物原料を含有し、前記金属珪化物原料が、(a)珪素粉末と、Ti、Zr、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも一種との混合物;(b)Tiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種;又は(c)前記(a)及び前記(b)の混合物であり、
前記結合材原料の含有率(100×結合材原料/(炭化珪素粒子+結合材原料))が5〜70体積%であり、造孔剤の含有率(100×造孔剤/成形原料)が25〜85体積%である成形原料を、
混練して坏土を形成し、前記坏土を成形して成形体を形成し、前記成形体を焼成して、焼成後の結合相のうち、最も大きな体積を占める結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、いずれか一方であり、次に多く含有されている結晶相が、Si相又は、40〜800℃の線熱膨張係数がSiより3×10−6(℃−1)以上高い値のTiの珪化物、Zrの珪化物、Moの珪化物及びWの珪化物からなる群から選択される少なくとも一種からなる相の、残りの一方であり、前記結合相を形成する結合材の含有率(100×結合材/(炭化珪素粒子+結合材))が、5〜60体積%であり、前記結合相が、Si相を、結合相全体の20〜80体積%含有する炭化珪素質多孔体を得る炭化珪素質多孔体の製造方法。

【公開番号】特開2009−143763(P2009−143763A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322438(P2007−322438)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】