説明

炭水化物マトリックス中へフレーバー又はフレグランス成分又は組成物を配合するための連続法

本発明は、フレーバー又はフレグランスデリバリーシステムの連続的な製造方法に関するものであり、その際に、それぞれ蒸発及び冷却工程を操作する2つの熱交換器の存在が最終生成物の品質及び収率を最適化することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル封入の分野に関する。本発明はより詳細には、加工費用及び収益性の点で、並びに最終生成物の品質において、炭水化物をベースとするマトリックス中へフレーバー化合物又はフレグランス化合物のような揮発性の成分又は組成物を配合することに関連している公知方法を改善することに関する。本発明はとりわけ、炭水化物材料の水溶液を製造し、前記溶液から水を蒸発させ、得られた濃厚溶液中にフレーバーもしくはフレグラント成分又はフレーバーもしくはフレグラント組成物を乳化させ、混合物を冷却し、前記混合物を冷有機溶剤中へ押し出し、最終的にそこで得られた粒状組成物を乾燥させることを含んでなる、固体のフレーバー又はフレグランス粒状組成物の製造法に関する。本発明の方法は、まず第一に前記方法が連続法で完全に達成されるという事実により、かつ第二に一方では蒸発工程及び他方では冷却工程を実施するための2つの熱交換器の使用により、特徴付けられている。
【0002】
カプセル封入技術は、特にフレーバー及びフレグランス工業において、この種の活性成分の揮発性及び不安定性により引き起こされる問題を解消するために、幅広く使用される。実際には、後者の性質のために、揮発性成分の損失は、これらの活性成分を最終消費製品中に配合する前に貯蔵又は加工の間に生じうるであろう。さらに、活性成分のカプセル封入も、マトリックス系からの前記活性成分の適切かつ制御された放出を保証するために使用される。
【0003】
故に、揮発性でかつ不安定なフレーバー又はフレグランス成分に付随される安定性又は放出の問題を減少させるか又は無くすために、そのような成分を、それらの揮発性又は不安定性を減少させるように炭水化物マトリックス中にカプセル封入するという多様な試みがなされてきたことを観察することは意外なことではない。このことは、こうして得られた粒子が最終消費製品中へ配合される場合又はそのような生成物が場合により消費される場合にその後のフレーバー又はフレグランスの放出のためにフレーバーもしくはフレグランス成分又はフレーバーもしくはフレグランス組成物を含有する安定な易流動性粉末を製造することになる。
【0004】
故に先行技術は、特にフレーバー工業において、固体の精油粒状組成物を製造するための多数の技術を開発してきた。これらの技術の中で、押出し法は典型的にはマトリックスを構成する炭水化物材料の使用に依存しており、前記炭水化物材料は溶融状態に加熱され、精油又はフレーバー成分と組み合わされてから、押し出され、最終的に急冷されてフレーバーを保護するガラス状物質が形成される。
【0005】
この分野における先行技術の開示の有意義な一例はUS 3,704,137であり、前記明細書には、油を酸化防止剤と混合し、別個に水、スクロース及び20未満のDEを有する加水分解された穀類固形物を混合し、2つの混合物を一緒に乳化させ、生じる混合物をロッドの形で溶剤中へ押し出し、過剰の溶剤を除去し、最終的に固化防止剤を添加することにより形成される精油組成物が記載されている。
【0006】
本発明に関連して、より該当する他の例は、高い含量の精油を有する固体の精油組成物の製造法が記載されているUS 4,610,890及びUS 4,707,367のそれであり、前記組成物は糖、デンプン水解物及び乳化剤を含有する水溶液を形成させることにより製造される。精油は制御された圧力下に密閉容器中で水溶液とブレンドされて、均質なメルトが形成され、前記メルトはついで相対的に冷たい溶剤中へ押し出され、乾燥され、固化防止剤と組み合わされる。
【0007】
より最近には、WO 01/74178にも、マトリックス成分を沸騰させ、ついで加熱して、混合物の含水量を減少させ、冷却してから、カプセル封入すべきフレーバーを添加し、最終的にさらに冷却して、カプセル封入されたフレーバーを凝固させてから、前記のカプセル封入されたフレーバーを粒状化することを含んでなるカプセル封入されたフレーバー組成物の製造法が開示されている。
【0008】
前記の特許は単に、特に押出しによる、多様なマトリックス中のフレーバー又はフレグランス成分の固定に関連したかなりたくさんの特許文献の例証となるに過ぎず、かつ本質的にこれらの刊行物は全て、バッチ条件において実施されるカプセル封入法を開示する。その結果、特に混合工程及び押出し工程を含んでなるこれらの先行技術の方法は重大な欠点が存在し、前記欠点を無くすことは有用であろう。実際には、バッチ式条件は不均質な反応条件と同義であり、それ故その際に多様な品質及び得られた生成物中の収率を提供する。より詳細には、バッチ条件において実施される混合工程はいくらか時間がかかり、故に特定の揮発性成分の分解及び揮発を生じうる。これに関連して、US 4,707,367が例えば、高い百分率の精油又は油溶性フレーバーが最初に、油損失に対応するために前記明細書に記載された方法において、例えば生成物の乳化及び溶剤洗浄の間に、添加されることに言及していることに注目することができる。さらに、押出し工程は、間欠操作として行われる場合に、生産規模において達成されることができない。最終的に、バッチ条件はプロセスの間の温度のような物理パラメーターを精密に制御することができない。
【0009】
そしてまたフレーバーを含有するカプセルの製造に関するUS 5,709,895には、炭水化物混合物を加熱し、ついでフレーバーをその混合物に添加し、後者を、押出しながらそれを迅速に冷却することにより凝固させる工程を含んでなる方法が開示されている。前記刊行物には一連の操作が単一容器中で連続的に実施されることができることは言及されていない。より詳細には、加熱、混合及び押出しは、圧力容器からなり、かつ2つ又はそれ以上のスクリューが設けられている1つの押出機中で実施されることができる。これら3つの操作、すなわち、一体となった装置中での加熱、混合及び押出しの実施は、温度のようなプロセスパラメーターを精密に制御することを妨げる。さらに、前記刊行物に記載された方法は、最初の混合物の含水量が、炭水化物混合物の含水量を低下させるのに必要とされる長期間の加熱時間を回避するために、最小限に維持されなければならないことを言及している。本明細書で引用された先行技術の刊行物は、しばしば遭遇され、かつ活性成分の損失の原因である、溶融された塊状物(mass)の加熱暴露の時間に付随される問題を強調する。依然として、前記問題はこの先行技術の刊行物において効率的な方法で解決されない。実際には、前記刊行物に特許の保護が請求された水の最小限の使用は、混合物の粘度を増大させ、ひいては高度に粘稠な媒体を押し出すことができる装置、例えば、もちろん極めて高価である2軸スクリュー押出機を必要とする。
【0010】
発明の開示
発明が解決しようとする課題
これらの先行技術の刊行物を考慮して、フレーバー又はフレグランスを含有するカプセル又は粒子を製造するための改善された方法への需要が明らかに存在し、その際に方法の混合工程、押出し工程又はさらに加熱工程の間に生じる活性成分の損失が最小限に維持されるのに対して、単純で及び費用効果のある押出しを可能にする。
【0011】
課題を解決するための手段
目下、意外なことに、活性成分、さらに“活性な”と呼ばれる、すなわちフレーバー又はフレグランス成分又はフレーバー又はフレグランス組成物のカプセル封入のための方法を提供することにより、先行技術において遭遇される欠点が克服されることができ、その際に前記方法はマトリックスのベースを構成する少なくとも1つの炭水化物材料の水溶液の製造、前記溶液の濃縮、その中への活性成分の乳化、混合物の冷却、冷溶剤中への前記混合物の押出し及び最終的に得られた粒状組成物の乾燥を含んでなる。前記方法は、連続的な方法で完全に実施されるという事実により、かつ一方では炭水化物材料の水溶液の濃縮の間の水の蒸発、及び他方では押し出されるべき炭水化物及び活性成分の混合物の冷却を規定する2つの熱交換器の、前記方法の連続的な配置における存在により特徴付けられている。第一の熱交換器の存在は、水溶液の精密な濃縮を可能にする一方で、熱交換器中の溶液の平均滞留時間を最小限に保持するので、マトリックスの炭水化物成分の損傷を減少させる。他方では、第二の熱交換器は、炭水化物及び活性成分の混合物を所望の押出し温度に冷却するための精密な方法を提供し、それ故、前記方法の終わりに、フレーバー又はフレグランス保留の点で及び特に揮発性材料に関してより均一である生成物を提供する。さらに、押出し温度の精密な制御は、最終的に得られた粒状組成物のサイズ分布をより良好に制御することを可能にする。
【0012】
発明を実施するための最良の形態
本発明は目下、より詳細に記載される。
【0013】
本発明は、固体のフレーバー又はフレグランス粒状組成物の製造方法に関するものであり、前記方法は、次の工程:a)少なくとも1つの炭水化物材料の水溶液を製造してシロップを形成させる工程;b)シロップを加熱して濃厚溶液又はキャンデーを形成させる工程;c)活性フレーバー又はフレグランス成分又は組成物をキャンデー全体に均一に分散させてキャンデー−活性混合物を形成させる工程;d)キャンデー−活性混合物を溶融された状態である温度に冷却する工程;e)溶融された混合物を冷有機溶剤中へ押し出す工程、その際に押し出された溶融された塊状物は粒状組成物に粉砕される;及びf)粒状組成物を乾燥させる工程を含んでなり、その際に工程a)〜f)は連続的に実施され、かつ工程b)及びd)は、工程b)においてシロップを、もしくは工程d)においてキャンデー−活性混合物を、熱交換器の表面上に通過させることにより実施される。
【0014】
連続法は、全ての操作が手動であるバッチ法に対して、コンピューター制御された方法を意味する。本質的に、本発明の方法の異なる加工工程は、適切にサイズ決定されかつ一緒に接続された場合に、連続法にするために組み合わされる装置の異なる部分によりその都度実施される。後者は、プロセス変数、特に押出し温度を精密に制御することを可能にし、故に一貫した品質の最終生成物を提供することを可能にする。さらに、本発明の方法は、類似のバッチ法と比較して、製造されるより大きな体積のために、最終生成物の製造の費用を低下させることを可能にする。実地上、US 4,707,367に記載されるような、先行技術からの方法に開示されたバッチ条件が、組み合わされかつマトリックス中へ乳化される油の量の多くとも約75〜80質量%をカプセル封入することを可能にするのに対して、本発明の方法は、濃縮されたキャンデーと組み合わされて90%を上回る活性成分を有効にカプセル封入することを可能にする。
【0015】
本発明の方法は、蒸発工程(工程b)及び冷却工程(工程d)において、それぞれ掃引式(swept)及び掻き取り式(scraped)の表面を有する、熱交換器の使用により特徴付けられる。
【0016】
掃引式又は掻き取り式の表面熱交換器は基本的には、仕上げ内部表面を有する円筒、ほぼ円筒軸上に取り付けられたローター、及びローターの回転方向に応じて連続的にすくい取る又は掻き取るために掻き取る又はすくい取る翼を取り付けるためのローターにより保持されたピン又は他の手段、内部円筒壁からの加熱された又は冷却された液体の層からなり、その際に加熱又は冷却は通常、熱交換円筒を包囲する環形ジャケット中の熱い又は冷たい媒体により行われる。そのようなタイプの掃引式又は掻き取り式の表面熱交換器は例えばUS 3,633,664に開示されている。場合により、US 4,073,339に開示されているように、ローターの円筒状外部表面を加熱又は冷却するための第二の熱交換のための通路が存在していてよいので、ジャケット付きの円筒中の部屋を通過する生成物塊状物は、同時に、掻き取り手段の作用により塊状物を混合しながら、塊状物の外側及び内側の双方から加熱又は冷却されることができる。
【0017】
他の多くのモデルの掃引式又は掻き取り式の表面熱交換器は文献に、例えばUS 3,955,617又はさらにUS 5,518,067に記載され、その際に開示された装置は、特定の粘度を有する流体の加熱又は冷却に特に適合される。本発明は熱交換器の特別な1つのタイプに限定されない。商業的に入手可能な多くのタイプの装置は本発明のためにふさわしい。故に装置のより詳細な記載はここでは必要とされない、それというのもこれは文献に十分記載されており、かつ当業者により十分公知だからである。
【0018】
本発明の方法の第二の工程において使用される第一の熱交換器は、好ましくは掃引式表面熱交換器であり、かつ水を炭水化物材料の最初の水溶液又はシロップから蒸発させて、濃縮された炭水化物溶液又はキャンデーを形成させることを可能にする。そのような熱交換器の存在は、加熱するためのシロップもしくはキャンデーの平均暴露滞留時間を減少させるのに効率的な方法を提供する。故に、これまで公知の方法に反して、本発明の方法は有利には、マトリックスの炭水化物成分全体に亘る加熱のために考えられる損傷を減少させる。結果として、スクロースが炭水化物材料の中に存在する特別な場合に、炭水化物の褐変及びオフフレーバーの発生(off-flavor development)の危険は最小限になる。さらに、マトリックスがガム(gum)材料を含んでなる他の特別な場合に、過剰の熱暴露は、後者の材料の乳化性に不利益な影響を及ぼすことが公知である。ここで再び、そのような欠点は本発明の方法のために回避される。
【0019】
他方では、本発明の連続法における前記の熱交換器の存在は、蒸発のための熱交換器へのシロップのフィードの速度が制御され、かつ結果として、濃縮された形成されたキャンデーは色及びフレーバー又はフレグランスが均一であることを暗示する。先行技術が開示しているバッチ法において、蒸発段階におけるばらつきは、個々のバッチ間の(炭水化物のカラメル化からの)視覚的及びフレーバーの差となりうる。
【0020】
本発明の枠内で使用される第二の熱交換器は、押し出されようとするキャンデー−活性混合物(乳濁液)を、本方法の第4の工程において精密でかつ定義された温度に冷却することを可能にする。より詳細には、当業者は、マトリックス材料、水分及びフレーバー又はフレグランス成分又は組成物の与えられた組合せにとって、最適な押出し温度が存在することを知っている。実際には、後者が高すぎる場合には、完成した生成物中の低い揮発分となる、乳濁液の凝離(de-mixing)、並びに低沸成分がダイのホールを出る際にそれ故急速気化(flash off)しうる低沸成分の分解を引き起こしうる。そのうえ、そのような温度条件は、最終生成物中の低い活性含量、フレーバー又はフレグランスプロフィールの老化及びダイを出るストランドの膨張による押し出された生成物のストランドの弱体化も与える。他方では、押出し温度が低すぎる場合には、混合物は高い粘度のために押し出すことが困難であり、それ故押し出されるためにより高い圧力条件を必要とし、このことは、ダイを出るストランドの直径の乏しい制御をまねきうる。この低い温度も、押出量に不利な強い影響を与える長い押出し時間となる。
【0021】
目下、典型的な押出しバッチ法において、押出しの温度は制御されるパラメーターではない。実際には、容器のジャケットの温度は調節されるけれども、押出し前に材料の最終温度に小さな影響を及ぼすに過ぎない。押出しの温度は主として、濃縮されたキャンデーの温度、添加されるフレーバー又はフレグランスの温度及び量、及び活性成分のせん断からキャンデー中へカプセル封入されて液滴を形成する(乳化)までに添加される熱により決定される。しかしながら、本発明の方法において、乳化ユニットを出た後に、キャンデー−活性な混合物又は乳濁液は熱交換器、好ましくは掻き取り式表面熱交換器を通過して、混合物を精密な所望の押出し温度に冷却し、このことはバッチ法を用いて不可能である。結果として、本方法の終わりに形成された生成物は有利には、活性成分の保留において、特により揮発性の成分に関してより均一である。そのうえ、押出し温度のより良好な制御は、狭いサイズ分布を有する粒状組成物を製造することを可能にし、又は言い換えれば、粒度の制御を改善することを可能にする。
【0022】
本発明の方法の他の態様及び利点は、詳細な説明及び本明細書の以下の例に開示される。
【0023】
本発明による方法の第一の工程は少なくとも1つの炭水化物材料の水溶液の製造であり、前記溶液は“シロップ”と呼ばれる。炭水化物材料として、押出し技術を通じて加工されて乾燥した押し出された固体を形成することができる任意の炭水化物又は炭水化物誘導体が使用されることができる。適している材料の特別な例は、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、フルクトース、マルトース、リボース、デキストロース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール(lactitol)、マルチトール、ペンタトール(pentatol)、アラビノース、ペントース、キシロース、ガラクトース、水素化されたデンプン水解物、マルトデキストリン、寒天、カラゲナン、他のガム、ポリデキストロース、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、半合成ポリマー、例えばスクシニル化デンプン、セルロースエーテル、タンパク質、例えばゼラチン、及びそれらの誘導体及び混合物からなる群から選択されるものを含む。
【0024】
本発明の特別な実施態様によれば、マルトデキストリン又はマルトデキストリンと、スクロース、グルコース、ラクトース、レブロース、マルトース、フルクトース、イソマルト、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール及び水素化されたデンプン水解物からなる群から選択される少なくとも1つの材料との混合物、好ましくは20を上回らない(≦20)デキストロース当量及びより好ましくは18のDEを有するマルトデキストリンが使用される。
【0025】
前記の炭水化物材料は本発明により一例として与えられており、かつそれらは本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。多糖類が特別な例として上で挙げられているけれども、押し出し可能であり、かつ目下、フレーバー又はフレグランス用途に適切な押し出された固体の製造においてマトリックス材料として使用される任意の材料が本発明の目的にとって十分であり、故に本発明により後者において含まれることが明らかである。
【0026】
本発明の第一の工程において製造される水溶液又はシロップは典型的には、溶液の全質量に対して、水12〜40質量%、好ましくは18〜25質量%を含有する。
【0027】
この第一の工程が実施される装置は、搬送機を備えた炭水化物成分の3つのスーパーサックホルダー、すなわち乾燥した固体質量タンク、高せん断ミキサーを備えた混合タンク、及び撹拌翼を備えた加熱タンク;多管式熱交換器及び熱交換器を経てシロップを循環させるポンプからなる。3つのタンクは互いに上へ取り付けられるので、質量タンクから混合タンクを経て加熱タンクへの材料の移動は重力による。
【0028】
シロップを製造するために、水の一部は混合タンク中へ計量供給される。炭水化物材料は所望の量に達するまで乾燥した固体質量タンクに搬送される。この材料は水を有する混合タンク中へ滴下される。水の別の部分は、湿潤及び分散を促進するために、タンク中で炭水化物の頂部へ噴霧される。この方法は、マトリックスが1つよりも多い炭水化物成分を含んでなる場合に繰り返される。またこの混合タンク中へ、必要に応じて、他のマトリックス成分、例えばpH調節剤、乳化剤、ガム又は着色剤が添加されることができる。例えば、適している乳化剤はモノグリセリド及びジグリセリドのスルホアセテート並びにポリグリセリンエステル、レシチン及び変性レシチンを含む。これらの乳化剤は一例として与えられるが、しかしそれらは本発明を限定するものとして解釈されるべきではない、それというのも、疎水性部分及び親水性部分を有する任意の乳化剤が本発明の枠内で使用されることができるからである。混合タンクの内容物は高せん断で混合されて均質な分散液を形成する。分散液は、底部に位置している加熱タンクへ重力によりさらに移動される。分散液は、タンクから多管式熱交換器を経てポンプ輸送され、かつループで熱タンクに戻される。シロップは溶液を形成するために約60〜80℃、好ましくは70〜80℃に加熱される。シロップが所望の温度に加熱されると、濃縮及びさらなる加工のための保持タンクにポンプ輸送される。
【0029】
本方法のこの工程の連続的な実施は有利には、特に固体百分率に関して、均一な組成のシロップを提供する。このことはその後の加工工程において均一な生成物を製造するのに重要である。さらに、このような措置は、水溶液の濃縮前に炭水化物材料の完全な可溶化を保証し、それ故、方法全体に亘って残留しうるものであり、かつ活性成分のカプセル封入及び最終生成物の品質に不利な強い影響を及ぼしうる炭水化物の小さな微視的なアグロメレートの存在のための問題を回避する。
【0030】
本方法の第二の工程において、水はシロップから蒸発されて濃縮された炭水化物溶液又はキャンデーが形成される。濃縮後のキャンデーの含水量は、マトリックス組成及び配合すべき活性成分量に応じて変化する。典型的には、キャンデーの水分は、濃厚溶液の全質量に対して、2〜11質量%及び好ましくは3.5〜7質量%である。
【0031】
実地上、第一の工程の終わりに得られたシロップは保持タンクから、水が蒸発されてキャンデー中の所望の水分レベルが達成される掃引式表面熱交換器を経て、ポンプ輸送される。典型的には、熱交換器の温度は105〜150℃である。特別な実施態様において、その温度は115〜135°である。この温度はマトリックス組成の関数として調節される。熱交換器の内容物はタンク中へ排出され、前記タンク中で蒸発された水が雰囲気へ排出され、かつ濃縮されたキャンデーはタンクの底部に落下する。本方法のこの工程における熱交換器の存在は本発明を特徴付けるものであり、かつ有利には、バッチ法に比較して、加熱暴露された材料に損傷を与える加熱暴露の時間を減少させることを可能にする。特別な実施態様において、熱交換器中のシロップの平均滞留時間は1〜10分間である。この工程の終わりに、形成された濃縮されたキャンデーは、色及びフレーバーが均一である。
【0032】
蒸発工程の次は乳化工程になり、その際に“活性な”と呼ばれるフレーバー又はフレグランス成分又は組成物は、キャンデー全体に分散されてキャンデー−活性混合物が形成される。本明細書において使用されるようなフレーバー又はフレグランス成分又は組成物という用語は、天然及び合成の双方の起源の多様なフレーバー及びフレグランス材料を定義するものと考えられる。それらは単一の化合物及び混合物を含む。本発明の方法は、液体又は固体の形、親水性又は疎水性であってよいカプセル封入された揮発性でかつ不安定な成分の製造に使用されることができる。そのような成分の特別な例は、最近の文献、例えばPerfume and Flavor Chemicals、S. Arctander著、Montclair N.J.(USA); Fenaroli's Handbook of flavour Ingredinets、CRC Press又はSynthetic Food Adjuncts by M.B.Jacobs、van Nostrand Co., Inc.に見出されうるものであり、かつ消費製品にパヒューミング、フレーバリング及び/又はアロマタイジングする、すなわちにおい又は味を消費製品に付与する当業者に十分公知である。
【0033】
天然抽出物も本発明の方法によりカプセル封入されることができる。これらは、なかでも、例えばシトラス抽出物、例えばレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ又はマンダリン油、又はコーヒー、茶、ココア、ミント、バニラ又はハーブ及びスパイスの精油を含む。
【0034】
デリバリーシステムにおける活性成分の有効なカプセル封入のためには、この活性成分は、小さな液滴としてマトリックス材料全体に均一に分散されなければならないことは十分公知である。実地上、本発明の方法によれば、本方法の前の段階において得られた濃縮されたキャンデーは固定された速度でタンクを出て、かつインライン高せん断ホモジナイザーを経てポンプ輸送される。この均質化ユニットの直前に、活性成分は加工ライン中へ固定された速度で計量供給される。均質化ユニット中の滞留時間は10秒未満である。その結果、バッチ法と比較して、本発明は有利には高せん断条件への暴露時間を短縮することを可能にする。粘稠なマトリックス内部の高せん断翼の作用は、摩擦のために著しい量の熱発生をもたらすので、熱不安定な成分は、これらの混合条件への暴露が継続される場合に損傷されうるものであり、その際にバッチ法における場合のように、老化したフレーバー又はフレグランスプロフィール及びオフフレーバー/フレグランスの発生を引き起こす。これらの潜在的な問題は本発明の方法を用いて回避される。さらに、均一な含水量のキャンデーの一定フローへの活性成分の添加の均一な速度は、一貫した完成した生成物となるのに対して、古典的な方法の個々のバッチは、バッチ間の外観及びフレーバー又はフレグランスカプセル封入効率の差異をもたらす蒸発段階からの含水量及び色が変化しうる。
【0035】
上で言及したように、ここで前記した乳化工程は熱をキャンデー−活性な混合物に加え、それ故この混合物は次の工程において最適化された押出し温度に冷却されることを必要とする。我々は予期せずに、これが、第二の熱交換器を用いて最適な方法で達成されることができることを確立した。故に、乳化ユニットを出た後に、キャンデー−フレーバー/フレグランス乳濁液は熱交換器、好ましくは掻き取り式表面熱交換器を通過して、混合物は上記で説明された制限間で最適化される温度に冷却される。典型的には、押出し温度は102〜135℃、好ましくは112〜130℃である。押出し温度は、マトリックス組成、及びフレーバー又はフレグランス材料の組成及びレベルの関数として最適化される。当業者はこの最適化された温度を定義することが可能である。熱交換器はついで精密に特にこの温度に到達することを可能にし、かつこの制御を通して、活性成分の保留の点で有利には均一な生成物、並びに最終的な粒状組成物サイズのより良好な制御を提供することを可能にする。
【0036】
押出し工程は、キャンデー−活性な溶融された混合物をダイのホールに強制的に通過させ、それ故生成物のストランドを形成させ、このストランドが有機溶剤浴中へ落下することにある。押出し工程の制御は生成物品質及び収率において極めて重要である。今まで記載された大部分の方法、特にバッチ法は、高い押出し圧、典型的には少なくとも2〜7×10Paの範囲を必要としており、これは相(親水性の炭水化物マトリックス及び疎水性の油)の凝離を引き起こしうる。そのうえ、高い押出し圧で、ストランドはダイホールを出る際に膨張しうる。目下、本発明によれば、押し出すための力は、一定の押出し速度となる固定された速度でのポンプ操作により供給される。典型的な押出し圧は、本発明の枠内で、1〜3×10Paの範囲内である。故に、これらのより低い押出し圧のために、ダイホールの出口でのストランド直径の膨張は回避され、かつサイズのより良好な均一性は得られることができる。そのうえ、相の凝離は回避される。全熱暴露時間は製造される全ての材料にとって均一であり、かつ最終的には、均一な押出し速度は有利には均一なストランド直径となる。
【0037】
押し出されたストランドは冷有機溶剤中へ落下する。これは極めて迅速な冷却を提供して、溶融されたストランドを無定形ガラス状物質中へ変換する。浴の中で、ストランドは短い粒子に機械的にチョップされる。粒子及び有機溶剤のスラリーは、大部分の有機溶剤を粒子から分離する遠心機にポンプ輸送される。残留有機溶剤を有する粒子は乾燥機に移動される。
【0038】
本方法の最終工程は、残留有機溶剤を粒子から除去し、かつそれらの含水量を所望のレベルに減少させることが目的の乾燥段階である。粒子が乾燥してから、それらは易流動剤(free flow agent)と混合され、かつサイズ規格に適合するようにふるい分けされる。本発明による方法において、遠心機からの粒子は、それぞれ2時間又は45分間の典型的な滞留時間で多段トレイタイプ乾燥機又は流動床乾燥機中で乾燥及び冷却される。これらの乾燥機は一例として与えられる、それというのも任意の公知の他のタイプの連続乾燥機も優秀に働くからである。
【0039】
本発明は目下、一例としてより詳細な方法で記載され、その際に温度はセルシウス度で示されており、かつ省略形は当工業界において通常の意味を有する。
【0040】
実施例
本発明による方法
次の組成:
成分 質量部
スクロース 40
マルトデキストリン 18DE 40
水 20
のシロップ溶液を、80°で第一の熱交換器中へ、8.0kg/minの速度でポンプ輸送した。蒸気(ほぼ150°で)を、水をシロップから蒸発させるために熱交換器のジャケットに供給した。蒸気温度及び流量を、蒸発後の所望の含水量を与えるように制御した。熱交換器中の滞留時間は2minであった。濃縮されたシロップ及び水は熱交換器を出てタンク中へ排出され、水蒸気を除去した。メルトはそこで含水量約6%及び127°であった。
【0041】
タンクからポンプ除去したメルト及びフレーバー油(冷圧搾されたオレンジ油96部、レシチン4部の混合物)を、1.5kg/minの速度で加工ライン中へ注入した。メルト及びフレーバー油の混合物は10秒間インライン高せん断ミキサーを通過して乳濁液を形成した。
【0042】
乳濁液を第二の熱交換器を通過させて、熱交換器の出口で測定される120°の温度に冷却した。熱交換器のジャケットを流動する媒体(熱水)の温度を、乳濁液の出口温度を達成するために制御した。ついで生成物は押出しダイを通過し、冷たいイソプロパノール浴中へ落下した。フィラメントの衝撃破砕後、そこで得られた粒子は45minの滞留時間で流動床乾燥機中で乾燥させた。
【0043】
得られた粒子は、粒子の全質量に対して、オレンジ油16.8質量%及び水分4質量%を含有しており、かつ最初に組み合わされた冷圧搾された油の95%は、本方法の終わりにカプセル封入された形で見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
a)少なくとも1つの炭水化物材料の水溶液を製造して、シロップを形成させる工程;
b)シロップを加熱して濃厚溶液又はキャンデーを形成させる工程;
c)活性フレーバー又はフレグランス成分又は組成物をキャンデー全体に均一に分散させてキャンデー−活性混合物を形成させる工程;
d)キャンデー−活性混合物を、混合物が溶融された状態である温度に冷却する工程;
e)溶融された混合物を冷有機溶剤中へ押し出す工程、その際に押し出された溶融された塊状物を粒子へ粉砕する;及び
f)粒子を乾燥する工程;
を含んでなる、固体のフレーバー又はフレグランス粒状組成物の製造方法において、
工程a)〜f)を連続的に実施し、かつ工程b)及びd)を、工程b)においてシロップ、もしくは工程d)においてキャンデー−活性混合物を、熱交換器の表面上へ通過させることにより実施することを特徴とする、固体のフレーバー又はフレグランス粒状組成物の製造方法。
【請求項2】
工程b)を掃引式表面熱交換器で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程d)を掻き取り式表面熱交換器で実施する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
シロップを工程b)において105〜150℃の温度に加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程b)における熱交換器中のシロップの平均滞留時間が1〜10minである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
工程a)の水溶液が溶液の全質量に対して水12〜40質量%を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程a)の水溶液を、出発物質を乾燥した固体質量タンクから混合タンク及び加熱タンクへ搬送し、ついで加熱タンクから多管式熱交換器を経てポンプ輸送し、かつループで熱タンクへ戻すことにより製造する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程b)の終わりにキャンデーが2〜11質量%の含水量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
工程c)を高せん断ホモジナイザーを用いて実施し、その際に混合物の滞留時間が1min未満である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
キャンデー−活性混合物を102〜135℃の温度に冷却する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
工程c)においてキャンデー全体に分散されるフレーバー又はフレグランス成分又は組成物の少なくとも90質量%を、製造された粒状組成物中に有効にカプセル封入する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
押出し工程を1×10Pa及び3×10Paの圧力で実施する、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2006−523096(P2006−523096A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506382(P2006−506382)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000880
【国際公開番号】WO2004/082393
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1、route des Jeunes、 CH−1211 Geneve 8、 Switzerland
【Fターム(参考)】