説明

炭疽菌からの防御抗原の調製

ポリヌクレオチド配列が提供され、配列番号1に対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列であって、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)をコードする核酸配列;または、該核酸配列のフラグメントであって、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)のフラグメントをコードするフラグメントを含む。また、本発明のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターおよび宿主細胞、ならびにrPAまたはそのフラグメントを製造する方法が提供される。本発明はさらに、抗原性組成物および免疫応答を誘発するための対応する方法および使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)をコードするポリヌクレオチドおよびベクター、rPAを製造する方法、および抗原性組成物(例えば、ワクチン)におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭疽菌(Bacillus anthracis)はグラム陽性胞子形成細菌であり、そして炭疽病の原因菌である。炭疽病は、家畜および陸生動物の疾患であり、感染動物製品との接触を通してヒトを罹患させ得る。肺においては、炭疽病は、大量の体液蓄積、組織腐敗、毒性ショック、および死亡を引き起こし得る。
【0003】
炭疽ワクチンは、40年にわたる間、本出願人によって製造されており、そして1979年以来、保健大臣により保持されるUK薬品認可(PL1511/0037)の主題である。しかし、その間に、製品の発展またはその製造プロセスの進展はほとんどなかった。
【0004】
上記ワクチン調製物をここにより詳細に記載する。毒素産生性非莢膜形成炭疽菌34F2「Sterne」株の培養物[Sterne, M. (1939). Onderstepoort J. of Veterinary Science and Animal Industry, 13, 307-312頁を参照のこと]を、37℃にてThompsonボトル中の部分限定培地で多数の500mL容量にて、選択された培養ボトルのpHがpH7.4を下回るまで増殖させる。
【0005】
増殖期(約24〜28時間)の終わりに、これらの培養物を吸引により回収し、そしてこのプールされた上清液を濾過により滅菌する。硫酸アルミニウムカリウム溶液を添加し、そして得られた溶液を混合する。次いで、pHを5.8〜6.2に調整し、そして生じた凝集物(「ミョウバン沈降」)を5℃にて1週間まで重力下で静置させる。
【0006】
次いで、この沈降物を吸引により20倍(容量)濃縮し、そして生理食塩溶液で1:4希釈して、炭疽ワクチン沈降物(AVP)の「5倍」濃縮物を提供する。これは、ワクチン処方に用いられる抗原性組成物である。このワクチンは、ヒトに使用する前に力価および安全性について動物試験に供しているが、別個の日常的な生化学特徴づけを行っていない。
【0007】
1つのさらなる無細胞炭疽ワクチンがヒトへの使用のために利用可能である。このワクチンは、米国で製造され、そして異なる炭疽菌株を用いて嫌気的に増殖していることを除いて、PL1511/0037で利用可能なものと広く類似している。このプロセスは発酵槽ベースであり、そして培養濾液を水酸化アルミニウム懸濁液に対して吸着させる。
【0008】
他の利用可能なワクチンは、弱毒化した生胞子懸濁液を含む。しかし、弱毒化した病原体に伴う固有の危険性のために、これらのワクチンは、通常、非ヒト使用に制限される。
【0009】
炭疽菌毒素は、防御抗原(PA)、浮腫因子(EF)、および致死因子(LF)として公知の3つの異なるポリペプチドからなる。毒素成分は、PAおよびEFの特定の二成分組合せで作用して浮腫毒素(ET)を形成し、組織浮腫を引き起こし、そしてPAおよびLFの特定の二成分組合せで作用して致死毒素(LT)を形成し、実験動物に対して致死となり、単球およびマクロファージ細胞の溶解を引き起こす。致死毒素は、末梢マクロファージおよび他の細胞に対するその細胞傷害性効果の結果として炭疽病関連死の主要な原因であるとみなされている。
【0010】
PAは、標的細胞結合部分として作用し、そして細胞会合プロテアーゼ(フリン)による部位特異的N末端活性化後、オリゴマー化して、EFおよびLFが競合する高親和性結合成分を提供する。活性化されたPAへのEFまたはLFの結合後、生じるETまたはLTの複合体は、酸性エンドソームコンパートメントによって内在化されるようになり、そして毒素因子EFおよびLFは、それにより標的細胞のサイトゾルに送達される。
【0011】
EFは、カルシウム依存性およびカルモジュリン依存性アデニリルシクラーゼであり、これは、細胞内ATPからcAMPへの変換を触媒する。EFは、種々の細胞内シグナル伝達経路で活性であり、そしてそれにより種々の細胞プロセスを中断し得る。
【0012】
LFは、Zn2+依存性メタロプロテアーゼである。二重特異性のマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼMAPKK/1および2、MEK−1およびMEK−2ならびにおそらく他のタンパク質を切り離しそして不活性化する。
【0013】
ヒトへの使用のための炭疽ワクチンに関するインビトロまたはインビボにて公開されたデータの概括は、以下の通りである:
1.これまで、全ての有効な炭疽ワクチンはPA(すなわち、83kDaプロ型またはその活性化された63kDa誘導体のいずれか)を含むかまたは生産する。実際、現行の定説は、有効な炭疽ワクチンの製造のためにPAが必要であり、それのみで十分であるというものであり、このようなワクチンを開発する試みが進行中である[例えば、Baillie, L.(2001), 91, 609-613頁を参照のこと];
2.非莢膜形成毒素産生性生胞子ワクチンは、認可された無細胞ワクチンよりも、これまで試験された全ての炭疽菌株に対してより高い程度の防御を引き起こす[Little, S. F. (1986) Inf. and Immunol. 52巻, 2号, 509-512頁を参照のこと];
3.現行の無細胞ワクチンは、一般に定義が不十分であり、バッチ毎で有効性が大きく変動し得る。したがって、各バッチが、ヒトへの使用の前に動物モデルにおける効力について個々に試験されなければならない;
4.現行の無細胞炭疽ワクチン製造プロセスは、製造プロセスおよび最終製品の梱包の完了時にのみ評価される。したがって、ワクチン材料のいずれか1つのバッチが検証試験基準に合わない場合、寄与因子は容易に同定できない。このような因子は、製造バッチ間で異なり得、そしてこの理解に欠けることにより、製造プロセスで遭遇する困難性が悪化される;
5.現行の無細胞ワクチンのあまり十分に定義されていない性質の結果として、これらのワクチンは、LFおよび/またはEFと共に多量のPAを含有し得る。このことにより、63kDa型へのPAのインビボ(もしくはインビトロ)での活性化に際して、LTおよびETを形成してワクチンの受容者に副作用を生じさせ得る。もちろん、このようなワクチンはまた、他の炭疽菌タンパク質(分泌産物および溶解産物ともに)、ペプチドグリカン、核酸および炭水化物を含み得、これらは、防御効力を損ない得る;
6.現行の無細胞ワクチン組成物は、LF、PA、およびEF濃度が非常に変動し得、そのためいくつかの調製物からEFがなくなり得る;および
7.現行の無細胞組成物は、総タンパク質含有量が非常に変動し得る。したがって、所定の組成物中に存在する毒素成分の濃度は、顕著に変動し得る。したがって、これにより、ヒトでの効力および潜在毒性に影響を及ぼし得る。
【0014】
最近の数年にわたって、炭疽病分野で目立った学術的研究があった。Sharmaら(1996)は、大腸菌からの天然型PAの発現を記載している。外膜タンパク質A(OmpA)のシグナル配列をPA遺伝子の5’末端に付加し、そして大腸菌ペリプラズム腔からのタンパク質の精製を可能にした。さらなる研究により、PAの天然型結合部位および転位ドメインの同定が可能になった[Bhatnagas, R. (2001) Critical Rev. in Microbiol., 27 (3), 167-200頁;およびBatra, S. (2001) Biochem. and Biophys. Res. Comm., 281, 186-192頁を参照のこと]。したがって、PAの構造および結合/転位ドメインは十分に記載されている。
【0015】
近年、第二世代「組換え」炭疽ワクチンが、The Ohio State University Research Foundationによって提唱されている[WO01/45639;およびPrice, B.M. (2001) Inf. and Immun., 69巻, 7号, 4509-4515頁を参照のこと]。記載のワクチンは、PAおよびLFに基づいており、LF分子は、亜鉛メタロプロテアーゼ陰性であるように改変されている。したがって、記載のPAおよびLF成分は、互いに十分に結合してLT分子を形成し得るが、生じるLT分子は、LF成分と共に存在する活性亜鉛メタロプロテアーゼ機能がないので、細胞傷害性ではない。
【0016】
Ahuja Nidhiら, Biochem. and Biophys. Research Communications, 287巻, 2号, 2001年9月21日, 542-549頁は、オリゴマー化が損なわれているPA変異体、およびそれらのワクチン候補体としての潜在性を記載している。
【0017】
Batra Smritiら, Biochem. and Biophys. Research Communications, 281巻, 1号, 2001年2月16日, 186-192頁は、PAの膜挿入および/またはサイトゾルへのLF/EFの転位に役割を有し得る変異した残基を有するPA変異体を記載している。
【0018】
WO02/04646は、免疫応答を生じ得るPAポリペプチドドメインを記載している。PAポリペプチドは、大腸菌で生産され、そして封入体の形態で蓄積する。
【0019】
DNAベースの炭疽ワクチン組成物が、WO2004/024067に記載されている。このワクチン組成物は、真核生物宿主(例えば、ワクチン組成物が投与される患者)での発現を最適化するように改変された炭疽菌核酸を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
バイオテロリズムおよび生物戦の脅威が増大しつつあることを考慮して、代替の炭疽ワクチン、および上記課題の1つ以上を解決したワクチンが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明の第一の局面によれば、配列番号1に対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列であって、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)をコードする核酸配列;または該核酸配列のフラグメントであって、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)のフラグメントをコードするフラグメントを含む、ポリヌクレオチド配列が提供される。
【0022】
この点において、配列番号1は、rPAをコードする改変型核酸を表している。配列番号1の配列は、本明細書中で配列番号2として提供される、PAをコードする野生型炭疽菌核酸配列に対して約70%同一である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明者らは、野生型PA核酸配列(配列番号2)を改変することにより、rPAタンパク質の発現レベルが顕著に改善され得ることを見出した。したがって、本発明は、rPAポリペプチドをコードする非天然核酸配列に関する。特に、非天然核酸配列は、異種系、例えば、異種細菌系、例えば、大腸菌で発現されるrPAの発現レベルを増大するように選択される。好ましくは、本発明の改変型非天然核酸配列(またはそのフラグメント)から発現される、rPAポリペプチドまたはそのフラグメントは、等しい条件下で野生型核酸配列から発現されるよりも少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、または少なくとも500%高いレベルで発現される。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドは、rPA(またはそのフラグメント)をコードする核酸配列(またはそのフラグメント)を含む。このrPAをコードする核酸配列(またはそのフラグメント)を、本明細書中ではrPA核酸(またはそのフラグメント)という。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、rPA核酸と加えて他のコード配列および/または非コード配列を含み得る。例として、本発明のポリヌクレオチドに含まれ得る非コード配列は、プロモーター配列および転写/翻訳開始および終結配列を含む。
【0025】
この点において、本発明のrPA核酸配列は、コードされたポリペプチドの同じ翻訳アミノ酸配列を生じる多数の改変を包含し得る。核酸配列を改変する場合に多数の因子が考慮されるべきである。例えば、利用可能な縮重度、コドン用法、および推定RNA二次構造の考慮。例えば、多くのアミノ酸が、遺伝暗号の「縮重」によって、1つより多くのコドンによって指定される。より詳細には、アラニンは4つの異なるトリプレットによってコードされ、セリンは6つの異なるトリプレットによってコードされる。この縮重は、DNA塩基組成が、DNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変化させることなく広範囲にわたって変動することを可能にする。
【0026】
炭疽菌UM44 PAの野生型ポリペプチド配列が配列番号5に提供される(Vodkin, M.ら, Cell, 34: 693 (1983);およびWelkos, S.ら, Gene, 69 (2): 287 (1988)もまた参照のこと)。
【0027】
配列比較のために、代表的には、1つの配列を参照配列として、次いでこれに対して試験配列を比較し得る。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピューターに入力し、引き続き必要であれば座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定したプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一パーセントを算定する。
【0028】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWatermanの局所相同性アラインメントアルゴリズム[Adv. Appl. Math. 2: 484 (1981)]、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム[J. Mol. Biol. 48: 443 (1970)]、PearsonおよびLipmanの類似性方法の検索[Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988)]、これらのアルゴリズムのコンピューター実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA - Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)、または可視検査[Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら編, Current Protocols, Greene Publishing Associates, In.およびJohn Wiley & Sons, Inc.の間の共同事業 (1995補遺) Ausubelを参照のこと]によって実施され得る。
【0029】
配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである[Altschul (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410頁;および「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/」、National Center for Biotechnology Informationを参照のこと]。
【0030】
ポリペプチド相同性比較の1つの実施態様では、同一性は、少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸、より好ましくは少なくとも35アミノ酸長である配列の領域にわたって存在する。好ましいポリペプチド相同性比較においては、同一性は、少なくとも100アミノ酸、好ましくは少なくとも200アミノ酸、より好ましくは少なくとも350アミノ酸長である配列の領域にわたって存在する。
【0031】
本明細書全体にわたって用語「ペプチド」または「ポリペプチド」は、用語「タンパク質」と同義であり、産物の特定の長さをいうわけではない。これらの用語は、グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化のような翻訳後改変を包含し得る。
【0032】
本願を通してrPAポリペプチド、ポリヌクレオチド、および核酸と呼ぶ場合、それらのフラグメント、改変体、および誘導体を包含する。
【0033】
ポリペプチドの「フラグメント」との用語は、問題のポリヌクレオチドの産物である全長ポリペプチドの少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、そして最も好ましくは少なくとも35のアミノ酸残基からなるペプチドを意味する。フラグメントは、好ましくは、対応する全長ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープを含む。フラグメントは、対応する全長ポリペプチドの酵素分解から生じ得る。あるいは、対応する全長ポリペプチドのフラグメントは、対応する全長ポリヌクレオチドのフラグメントであるポリヌクレオチドを発現させることにより生産され得る。
【0034】
好ましい実施態様では、ポリペプチド「フラグメント」は、対応する全長ポリペプチドのアミノ酸配列の長さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、そしてより好ましくは少なくとも80%であるアミノ酸長を有する。例えば、ポリペプチドフラグメントは、野生型PAポリペプチド配列(配列番号5)の少なくとも200、好ましくは少なくとも300、最も好ましくは少なくとも400のアミノ酸残基を含み得る。
【0035】
本発明は、「改変体」を包含する。「改変体」の一例は、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸)または置換連結を含むペプチドまたはペプチドフラグメントである。さらなる実施態様では、「改変体」は、ペプチドまたはペプチドフラグメントの模倣物であり得、その模倣物は、ペプチドまたはペプチドフラグメントの少なくとも1つのエピトープを再生している。模倣物は、例えば、核酸模倣物、好ましくはDNA模倣物であり得る。
【0036】
本発明はまた、「誘導体」を包含し、これは、問題のペプチド(またはフラグメント、またはそれらの改変体)を含むタンパク質を意味する。したがって、誘導体は、問題のペプチド、および1つ以上の付加エピトープを導入し得るさらなるペプチド配列を含み得る。このさらなる配列は、好ましくは、基本の折り畳みに干渉せず、したがって問題のペプチドの立体構造に干渉すべきでない。
【0037】
「誘導体」の例は、融合タンパク質、結合体、およびグラフトである。したがって、2つ以上のペプチド(またはフラグメント、または改変体)が一緒に接合されて誘導体を形成し得る。あるいは、ペプチド(またはフラグメント、または改変体)が、関連のない分子(例えば、第二の関連のないペプチド)に接合され得る。誘導体は、化学合成され得るが、代表的には、組換え核酸方法によって調製される。脂質、および/または多糖、および/またはポリケチド成分のような付加成分が誘導体に含まれ得る。
【0038】
「フラグメント」、「改変体」、および「誘導体」の分子の全ては、それらが由来する問題のポリヌクレオチドの産物と共通の抗原交差反応性および/または実質的に同じインビトロもしくはインビボでの生物学的活性を有する。例として、フラグメント、改変体、または誘導体に結合し得る抗体もまた、問題のポリヌクレオチドの産物に結合し得る。
【0039】
フラグメント、改変体、または誘導体は各々、問題のペプチドの活性部位を有することが好ましい特徴である。あるいは、本発明のペプチドの上記実施態様の全てが、炭疽菌感染の抗原性成分に以前に曝露されたTリンパ球の「リコール応答」を誘発する共通の能力を有している。
【0040】
rPAペプチドフラグメント、改変体、または誘導体は、好ましくは、以下の特性の1つ以上を有する:a)細胞膜上のPAレセプターに結合し得る;b)EFおよび/またはLFに結合し得る;およびc)フリンプロテアーゼにより切断され得る。したがって、1つの実施態様では、本発明のペプチドのフラグメント、改変体、または誘導体は、WO03/037370(本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、上記特性について簡易試験を実施することにより同定され得る。
【0041】
本願において使用される用語DNA「フラグメント」、ポリヌクレオチド「フラグメント」、および核酸「フラグメント」は、通常少なくとも約5のコドン(15ヌクレオチド)、より通常には少なくとも約7〜15のコドン、および最も好ましくは少なくとも約35のコドンを含むポリヌクレオチドをいう。このヌクレオチド数は、通常、このような配列と(例えば、選択的なハイブリダイゼーション条件下で)特異的にハイブリダイズがうまくいくプローブに必要とされるほぼ最小限の長さである。
【0042】
好ましい実施態様では、DNA「フラグメント」は、対応する遺伝子のコード配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも80%であるヌクレオチド長を有する。例えば、フラグメントは、本発明の全長rPA核酸配列の少なくとも600、好ましくは少なくとも900、最も好ましくは少なくとも1200のヌクレオチドを含み得る。
【0043】
本発明は、DNA「改変体」を包含する。DNA改変体は、参照配列、例えば、対応する野生型(天然)遺伝子のコード配列(またはそのフラグメント)、に対して実質的な相同性または実質的な類似性を有するDNA配列である。核酸またはそのフラグメントは、他方の核酸(またはその相補鎖)と(適宜ヌクレオチド挿入または欠失を含めて)最適にアラインされる場合に、ヌクレオチド塩基の少なくとも約60%、通常少なくとも約70%、より通常には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、およびより好ましくはヌクレオチド残基の少なくとも約95〜99%でヌクレオチド配列同一性がある場合、もう一方に対して「実質的に相同」(または「実質的に類似」)である。相同性決定は、ペプチドに対して上述したように実施される。
【0044】
あるいは、DNA「改変体」は、それが選択的ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得る場合に、野生型(天然)遺伝子のコード配列(またはそのフラグメント)と実質的に相同(または実質的に類似)である。核酸ハイブリダイゼーションは、当業者によって容易に理解されるように、塩基組成、相補鎖の長さ、およびハイブリダイズ核酸間のヌクレオチド塩基ミスマッチ数に加えて、塩濃度(例えばNaCl)、温度、または有機溶媒のような条件によって影響される。好ましくは、ストリンジェントな温度条件が用いられ、そして一般に30℃を超える温度、代表的には37℃を超える温度、および好ましくは45℃を超える温度を含む。ストリンジェントな塩条件は、通常1000mM未満、代表的には500mM未満、および好ましくは200mM未満である。pHは、代表的には7.0と8.3との間である。しかし、パラメーターの組合せが、任意の1つのパラメーターの基準よりもずっとより重要である。例えば、WetmurおよびDavidson (1968) J. Mol. Biol. 31:349-370を参照のこと。
【0045】
ハイブリダイゼーションの選択性は、特異性が全体的に欠如するというよりも実質的に選択的であるハイブリダイゼーションが生じる場合に存在する。代表的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも約14ヌクレオチドのストレッチ(伸長部)にわたって少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約75%、および最も好ましくは少なくとも約90%の相同性がある場合に生じる(Kanehisa (1984) Nuc. Acids Res. 12: 203-213を参照のこと)。記載のような相同性比較の長さは、より長い伸長部にわたり得、そして特定の実施態様では、しばしば、少なくとも約17ヌクレオチド、通常には少なくとも約20ヌクレオチド、より通常には少なくとも約24ヌクレオチド、代表的には少なくとも約28ヌクレオチド、より代表的には少なくとも約32ヌクレオチド、および好ましくは少なくとも約36以上のヌクレオチドの伸長部にわたる。好ましい実施態様では、相同性比較の長さは、少なくとも約170ヌクレオチド、通常には少なくとも約200ヌクレオチド、より通常には少なくとも約240ヌクレオチド、代表的には少なくとも約280ヌクレオチド、より代表的には少なくとも約320ヌクレオチド、および好ましくは少なくとも約360以上のヌクレオチドの伸長部にわたる。
【0046】
本発明は、DNA「誘導体」を包含し、これは、参照遺伝子(例えば、野生型炭疽菌PA遺伝子)のコード配列に対応するDNA配列(またはフラグメント、またはそれらの改変体)と、コード配列に対応するDNA配列に天然には付随していない付加DNA配列とを含むDNAポリヌクレオチドを意味する。上記ペプチド誘導体に関する説明はまた、DNA「誘導体」にも適用される。「誘導体」は、例えば、オペロンの2つ以上のコード配列を含み得る。したがって、コード配列間の非コード領域の存在または不在に依存して、このような「誘導体」の発現産物は、融合タンパク質、または個々のコード領域によりコードされる別個のペプチド産物であり得る。
【0047】
上の用語DNA「フラグメント」、「改変体」、および「誘導体」は、得られるペプチド産物が、対応する野生型ペプチドと実質的に同じである交差反応抗原特性を有する点で互いに共通している。好ましくは、本発明の上記DNA分子実施態様のペプチド産物の全てが、これもまた野生型ペプチドに結合する抗体に結合する。あるいは、上記ペプチド産物の全てが、炭疽菌感染の抗原性成分に以前に曝露されたTリンパ球の「リコール応答」を誘発し得る。
【0048】
したがって、DNAフラグメント、改変体、または誘導体は、例えば、上述の(およびWO03/037370に記載の)簡易試験を実施することにより、そのコードされたペプチド産物によって同定され得る。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、および最も好ましくは99%もしくは100%の同一性を有する核酸;または当該核酸のフラグメントを含む。
【0050】
1つの実施態様では、本発明のポリヌクレオチド配列は、分泌配列をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。分泌配列をコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、rPA核酸配列またはそのフラグメントの上流にクローニングされ、そして最も好ましくは、当該核酸配列またはそのフラグメントに作動可能に連結される。
【0051】
分泌配列は、コードされたタンパク質を、細胞膜を横断させるおよび/または細胞膜に固着させて、これによりその機能的トポロジーを達成させるかまたは宿主細胞から分泌させ得る。この点において、分泌配列は、発現されたポリペプチドの宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞)から細胞外環境への細胞外転位のためであり得る。あるいは、分泌配列は、発現されたポリペプチドの細菌宿主細胞の細胞質からペリプラズム腔へのペリプラズム転位のためであり得る。
【0052】
分泌配列は、ペリプラズム転位の間または細胞外転位の間に発現されたポリペプチドから切り離され得ることが特に好ましい。これらの場合、ペリプラズム/細胞外ポリペプチドは、この配列を含まない。このような「切り離され得る」配列の一例は、シュードモナスカルボキシペプチダーゼGリーダー配列(本明細書中、以降ではcpgまたはcpgと称する)であり、これは配列番号3によりコードされる。
【0053】
配列番号3に示すcpgリーダー配列は、それがNdeI部位で発現ベクターに挿入するための5’−NdeI制限部位およびrPA核酸配列またはそのフラグメント(好ましくは、同様のMscI部位が作製されている)との融合のための3’−MscI部位を有するように設計されている。したがって、cpgリーダーは、発現されたrPAタンパク質(またはそのフラグメント)が宿主細胞膜を通過するにつれてそれから切り離され、したがって、「トリミングされた」成熟rPAタンパク質またはそのフラグメントを細胞外環境またはペリプラズム腔に放出させる。
【0054】
本発明に使用される他の適切な分泌配列は、Watson (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 12巻: 5145;およびMakrides (1996) Microbiological Reviews 60: 512-538に記載されており、そして該分泌配列には、ompA(Denefleら (1989) Gene 85: 4990-510;およびGhrayebら (1984) EMBO J. 3: 2437-2442.);pelB(Betterら (1988) Science 240: 1041-1043;およびLeiら (1987) J. Bacteriol. 169: 4379-4383);それらの縮重型を含む−Le Calvezら (1996) Gene 170: 51-55を参照のこと;phoA(Denefleら (1989) Gene 85: 499-510;およびOkaら (1985) Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 82: 7212-7216);ompT(Johnsonら (1996) Protein Expression Purif. 7: 104-1123);lamB(HoffmanおよびWright (1985) Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 82: 5107-5111);ompF(HoffmanおよびWright (1985));βラクタマーゼ(Kadonagaら (1984) J. Biol. Chem. 259: 2149-2154;およびVilla-Komaroffら (1977) Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 75: 3727-3731);黄色ブドウ球菌プロテインA(Abrahmsen (1986) Nucl. Acids Res. 14: 7487-7500;およびMacyntyreおよびHenning (1990) Biochimmie 72: 157-167);枯草菌エンドグルカナーゼ(Proudfootら (1996) J. Biol. Chem. 271: 2599-2603);マウスRNAse(Scheinら (1992) Biochem. J. 283: 137-144);ヒト成長ホルモン(Grayら (1985) Gene 39: 247-254);およびエンテロトキシンST−II、LT−AおよびLT−B(Fujimotoら (1988) J. Biotechnol. 8: 77-86;およびMorioka-Fujimotoら (1991) J. Biol. Chem. 266: 1728-1732)が含まれる。
【0055】
1つの実施態様では、本発明のポリヌクレオチド配列は、3’末端および5’末端を有する、本発明の核酸またはそのフラグメントを含み、そして当該核酸またはそのフラグメントは、5’末端に対してクローニングされたメチオニン残基をコードするコドンを有する。例として、当該核酸は、配列番号7(または配列番号5の5’末端のmetをコードするコドンを含む配列番号7のフラグメント)であり得る。このメチオニンをコードするコドンは、大腸菌で発現される場合に最終の(シグナルのない)タンパク質の安定性を増大させるために付加される。したがって、本発明のこの特定の実施態様のポリヌクレオチドによりコードされるrPAタンパク質は、N末端に追加のメチオニン残基を付加することにより、炭疽菌で天然に生産される野生型PAタンパク質と区別される。
【0056】
したがって、本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントも提供する。したがって、本発明のポリペプチドは、rPAアミノ酸配列のN末端に付加された追加のメチオニン残基を有する、rPAをコードするアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み得る。
【0057】
関連した局面では、本発明はまた、本発明のDNAポリヌクレオチド配列または当該DNA配列のフラグメントもしくは改変体もしくは誘導体によりコードされる単離されたRNA分子を提供する。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターもまた、本発明の範囲内であると理解される。発現ベクターは、宿主細胞における異種核酸配列の発現に有用である。本明細書中で使用される用語「異種」は、目的のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が細胞中に天然には存在しないが、その細胞に例えば形質転換、トランスフェクション、注入などによって導入されていることを意味する。
【0059】
発現ベクターは、一般には、適切な転写および翻訳調節エレメントに作動可能に連結された、ペプチドのコード領域を含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクター中に通常含まれる調節エレメントの例は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳開始および終結配列である。これらの調節エレメントは、翻訳されるべき配列に作動可能に連結されている。核酸配列は、別の核酸配列と機能的に関係するように配置される場合、作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがその転写または発現に影響する場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結」とは、連結されているそれぞれのDNA配列が連続していること、および2つのタンパク質コード領域を接続することが必要である場合は、連続しておりかつ読み枠内にあることを意味する。ビルレンス因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで用いられる調節エレメントは、発現のために使用される宿主細胞で機能的である。
【0060】
発現ベクターは、化学誘導因子の不在下でポリヌクレオチドを発現すること、すなわち、化学誘導因子が発現ベクターからの発現の誘導に必要ではないことが好ましい。1つの実施態様では、ベクターは、ポリヌクレオチドを構成的に発現し、遺伝子発現の誘導は必要とされない。別の実施態様では、ベクターは、環境上の刺激(1つまたは複数)に応答してポリヌクレオチドを発現する。このような刺激は、例えば、飢餓または栄養素もしくは酸素の制限であり、例えば、1つまたは複数の成分が増殖培地で消尽されるようになる場合である。
【0061】
用語「プロモーター」は当該分野で周知であり、比較的単純な最小限のプロモーターから、上流エレメントおよびエンハンサーを有する複雑なプロモーターまでを包含する。原核生物および真核生物宿主細胞における発現に適切なプロモーターは当該分野で周知であり、そして例えば、Molecular Cloning. A laboratory Manual(Sambrookら, 第2版, 1989)およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編, 1994)に記載されている。
【0062】
適切なプロモーターおよび他の必要なベクター配列が、宿主において機能的であるように選択される。例として、trp、lac、およびファージプロモーター(例えばT7、T4、ラムダ、fd)、tRNAプロモーター、および解糖酵素プロモーターのようなプロモーターが原核生物宿主において用いられ得る。発現ベクターは、「強力」なプロモーター、すなわち、コードされるrPAポリペプチド(またはそのフラグメント)が高度に発現されることを確実にするように選択されるプロモーター、を含むことが好ましい。強力なプロモーターの例は、recA、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、T7、tacなどを含む。この点において、ポリペプチドは、総宿主細胞可溶性タンパク質の20%を上回る、好ましくは30%を上回る、より好ましくは40%を上回る、および最も好ましくは50%を上回る総宿主細胞可溶性タンパク質のレベルで発現される場合に「高度に発現」されるといわれる。本発明に従って使用される好ましい「強力なプロモーター」は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh)プロモーター(CAMR所有;米国特許第5,670,333号)である。
【0063】
発現ベクターは、選択マーカー、すなわち、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。この遺伝子の存在は、所望のベクターを含みそして選択マーカーを発現している宿主細胞のみが選択培地上で増殖することを確実にする。代表的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒性物質、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン、メトトレキセートなど、に対する耐性を付与するタンパク質;(b)栄養要求性欠乏を補充するタンパク質;または(c)複合培地から利用できない必須栄養素を供給するタンパク質をコードする。適切なベクターおよび適切な選択マーカーの選択は、宿主細胞に依存し、そして当業者の能力の範囲内で十分に行われる。
【0064】
発現ベクターは、代表的には、宿主細胞における核酸の効率的な発現に必要である付加エレメントの全てを含む。細菌における異種タンパク質の発現に適切なベクターの例は、pETベクター(例えば、pET26b-Novagen)およびpTrKHis(Invitrogen)を含む。これらのベクターの両方ともが、大腸菌での核酸の高レベルの発現を達成する。
【0065】
pMTL発現ベクターは、それらが高レベルの組換えタンパク質を生じ得、そして抗生物質を用いる選択圧がない場合でさえ非常に安定であり得るので有利である。さらに、非常に強力な大腸菌リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh)プロモーターに基づくpMTLベクターは、外因性誘導化学物質を用いる発現の誘導を必要としない(Alldreadら (1992) Gene 14: 139-143)ので特に有利である。調節のために外因性化学誘導因子を必要としないことは有利である。なぜなら、いかなる化学誘導因子も、患者への投与前に最終産物から厳密にかつ首尾よく取り除かれねばならないからである。
【0066】
特に好ましい実施態様では、発現ベクターは、高コピー数プラスミドでもあり、例えば、pMTL1015(Chambersら (1988) Gene 68: 139-149)である。pMTL1015は、pMTL4の誘導体であり、それはColE1レプリコンの変異体から複製し(1細胞当たり600コピー;Mintonら (1988) Focus 10: 56)、そして配列番号4によりコードされている。プラスミドpMTL1015は、Brehmら (1991) Appl. Microbiol Biotechnol 36: 358-363により記載されるようにpMTL1003に対して本質的に同一であり、そして多数の有利な特徴を有する。例として、pMTL1015は、trpプロモーターが非常に強力なmdhプロモーター(Alldreadら(1992) Gene 14: 139-143)と置換されておりそしてアンピシリン耐性遺伝子がpBR322のテトラサイクリン耐性遺伝子(Bolivarら (1977) Gene 2: 95)と置換されている点でpMTL1003とは異なる。このプラスミドはまた、pSC101分配機能(par;Millerら (1983) Gene 24: 309-315)、rrnB二重終結因子(Brosiusら (1981) J. Mol. Biol. 148: 107-127)およびpMTL20ポリリンカークローニング領域(Chambersら, 1988)もまた組み込んでいる。par遺伝子座は、プラスミドに良好な分離安定性を与え、プラスミドを欠損することなく抗生物質非含有発酵を可能にし、そしてテトラサイクリン耐性マーカーは、生物薬剤学的に受容可能な薬物である。
【0067】
本発明での使用に適した発現ベクターの例は、ECACC番号04061401で寄託されているべクターである。
【0068】
本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターの例は、pMTL1015−cpg−PA−synt(ECACC番号04052501で寄託)である。
【0069】
目的の核酸を含むベクターがインビトロで転写されて、そして生じるRNAが宿主細胞に(例えば、注入により)導入され得るか、あるいはベクターは、細胞宿主のタイプに依存して変動する方法によって宿主細胞に直接導入され得、この方法には、エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、または他の物質を用いるトランスフェクション; マイクロプロジェクタイルボンバードメント;リポフェクション;感染(ベクターが感染因子(例えば、レトロウイルスゲノム)である場合)が含まれる。用語「宿主細胞」は、このような細胞の子孫を包含することが意図される。
【0070】
したがって、本発明はまた、上記のような発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。宿主細胞は、細菌細胞、特に大腸菌細胞、例えば、大腸菌株DH5、BL21、およびHMS174(Invitrogen)であることが好ましい。
【0071】
細菌細胞(例えば、大腸菌株)がプロテアーゼ欠損株であることが特に好ましい。なぜなら、rPAタンパク質は、プロテアーゼ感受性タンパク質であると一般に考えられているからである。大腸菌のプロテアーゼ欠損株の一例は、大腸菌RV308(ATCC番号31608)である。
【0072】
また、本発明によって、rPAを製造する方法が提供され、この方法は、本発明のポリヌクレオチドを発現させる工程を含む。
【0073】
1つの実施態様では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞において発現、すなわち、転写および翻訳される。別の実施態様では、ポリヌクレオチドは、DNAであり、これがインビトロでRNAに転写され、次いでこのRNAが宿主細胞でタンパク質に翻訳される。宿主細胞は、細菌細胞であり得、例えば、大腸菌宿主細胞であり得る。大腸菌宿主細胞は、好ましくは、プロテアーゼ欠損株であり、例えば、大腸菌RV308(ATCC番号31608で寄託)である。
【0074】
好ましい実施態様では、rPAは、上記のような本発明の発現ベクターから宿主細胞で発現される。この実施態様では、本方法は、以下の特徴の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくは全てを組み込み得る:(i)発現ベクターは、配列番号3によりコードされるcpgリーダー配列を含む;(ii)ベクターはプラスミドpMTL1015(配列番号4によりコードされる)である;および(iii)ベクターは、大腸菌宿主細胞、例えば大腸菌RV308(ATCC番号31608)で発現される。
【0075】
1つの実施態様では、本方法は、目的のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを宿主細胞、例えば、大腸菌宿主細胞に形質転換する工程、および適切な増殖培地で該形質転換した宿主細胞を培養する工程の初期工程を含む。
【0076】
必要に応じて、培養は、選択圧下で実施され、例えば、抗生物質(例えば、テトラサイクリン)の存在下で実施され、この場合、発現ベクターが抗生物質に対する耐性を付与する選択マーカーを含むことが有利である。
【0077】
培養物中の栄養素、pH、および/または酸素レベル(溶存酸素圧−DOT)を調節するために、培養パラメーターは調節され得る。例えば、DOTは、攪拌、逆圧、スパージング気流、および/または酸素補充によって調節され得る。DOTが40%を上回るように維持されることが好ましい。
【0078】
宿主細胞が増殖される温度は、培養物から精製され得るタンパク質のレベルに関して効果を有し得る。例えば、タンパク質発現速度およびタンパク質分解速度(例えばプロテアーゼ活性に起因する)はともに、抽出され得るタンパク質の量に影響し得る。本願のポリヌクレオチドを含む培養宿主細胞を低温(例えば、40℃よりも低い)で増殖させることにより、rPA発現および安定性の受容可能なレベルが生じることが見出された。したがって、本発明の1つの実施態様では、本発明のポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)を含む宿主細胞を、40℃未満;好ましくは37℃未満;より好ましくは35℃未満;より好ましくは約30℃;および最も好ましくは25〜30℃、例えば、29℃、28℃、27℃、26℃、および25℃で培養する。これらの低温で宿主細胞を培養することは、rPA発現の速度を低下させ得るが、これは、高レベル発現ベクター(例えば、プラスミドpMTL1015)を発現に用いる場合に有用であり得る。
【0079】
動物製品(すなわち、動物に由来する製品)を含まない増殖培地が用いられることが好ましい。なぜなら、これが、注射用製品の規制に適合するために有利であるからである。適切な培地の例は、フィトンペプトンベースのTerrific Broth、およびダイズペプトンベースのL−ブロスを含む。
【0080】
増殖培地へのポリペプチドの細胞外分泌を可能にする分泌配列が用いられる場合、ポリペプチドを抽出するために、増殖培地が回収されて、そしてさらなる精製工程に供され得る。
【0081】
あるいは、分泌配列が細菌ペリプラズムへのポリペプチドの分泌を可能にする場合、ポリペプチド産物は細胞内である。この場合、細胞からポリペプチドを抽出するためには、細胞が培養培地から回収されて(例えば、遠心分離により細胞ペーストとして)、そしてさらなるプロセシングに供されなければならない。ポリペプチドの精製のために細胞培養物(例えば、細菌培養物)を回収するための適切なプロトコルは、当該分野で周知であり、そしてSambrookら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press;およびSambrookおよびRussell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Pressのような一般の実験書に見出され得る。
【0082】
代表的には、細菌細胞が、核酸またはポリペプチドのいずれかの抽出のために、遠心分離により回収され得る。タンパク質精製のために、遠心分離により培養細胞を回収するために選択される条件は、標的タンパク質を損傷しないように、一般に、核酸の抽出よりも穏やかである。例えば、標的ポリペプチドの抽出のための細菌細胞の回収は、4,000〜5,000gでの10〜15分間の遠心分離により4℃にて実施され得る。
【0083】
本方法は、必要に応じて、さらなるプロセシングの前に、所望のポリペプチドの存在および/または収量を確認する試験工程をさらに含む。1つの実施態様では、ELISAベースの試験が実施される。
【0084】
発酵(細菌増殖および回収)および任意の試験プロトコルに従って、本方法は、単離精製されたrPAタンパク質を得るために、下流プロセシング工程をさらに含み得る。
【0085】
本発明において使用される下流プロセシング工程は、好ましくは、以下の目的の1つ以上を達成する:
先行技術の方法と比較して、必要とされるクロマトグラフィー工程の数を減少する;
いくつかの(好ましくは全ての)クロマトグラフィー工程でグラジエント溶出ではなく段階溶出を使用する;
先行技術の方法と比較して、クロマトグラフィー前の一次プロセシングのレベルを増大させる;
可能であれば条件剤(例えば、ヌクレアーゼ)の添加の必要性を取り除く;
少なくとも100Lの発酵スケールにまでスケールアップし得る技術を用いる;および
cGMPと適合する技術を用いる。
【0086】
精製手順は、先行技術の方法に比較して、プロセスの時間および容量を減少させ、そして/またはプロセスの効率を増大させていることが好ましい。本発明では、透析/緩衝液交換工程の数が、好ましくは、例えば、高伝導度のプロセス流れを生じる工程と高伝導度出発材料を必要とする工程とを連結する(例えば、硫酸アンモニウム沈殿またはイオン交換クロマトグラフィー後に疎水性相互作用クロマトグラフィーを行い得る)ことにより、最小限にされる。
【0087】
下流プロセシングプロトコルは、rPAポリペプチドを含有する粗混合物を用いて出発する。rPAポリペプチドが宿主細胞内(例えば、細菌宿主細胞ペリプラズム内)に位置する場合、細胞は、rPAポリペプチドを抽出するために処理されなければならない(例えばホモジナイゼーションによる)。
【0088】
本方法は、抽出されたrPAポリペプチドで実施される、少なくとも1つの分離工程をさらに含むことが好ましい。本方法に含まれ得る分離工程の例は、濾過工程(例えば、ダイアフィルトレーション工程)およびクロマトグラフィー工程である。1つの実施態様では、本方法は、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程および少なくとも1つの濾過工程を含む。
【0089】
本方法の特に好ましい実施態様では、抽出されたrPAポリペプチド(核酸、他のタンパク質、および細胞破片のような望ましくない成分と共に)がダイアフィルトレーション(例えば、接線フローダイアフィルトレーション)に供される。この工程の目的は、続く分離工程(例えば、クロマトグラフィー工程)の準備において、荷電分子の負荷を変更することである。ダイアフィルターは、特定の分子量を上回る分子(例えば、30kDa、40kDa、または50kDaを上回る)を保持し、そして溶解した物質および特定分子量を下回る物質はフィルターを通過させる。したがって、本方法は、ダイアフィルトレーション工程である少なくとも1つの濾過工程を含むことが好ましい。
【0090】
クロマトグラフィー工程は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Q−セファロースアニオン交換カラムを用いる)および疎水性電荷クロマトグラフィー(例えば、メルカプロエチルピリジンハイパーセルカラムを用いる)を含み得る。適切なクロマトグラフィー技術の他の例は、当該分野で公知であり、そして当業者に日常的に利用され得る。したがって、本方法は、少なくとも1つのイオン交換クロマトグラフィー工程および少なくとも1つの疎水性電荷クロマトグラフィー工程を含み得る。
【0091】
1つの実施態様では、rPAポリペプチドが大腸菌宿主細胞で発現されている場合、rPAポリペプチドと付随した大腸菌エンドトキシンが残存し得、そしてこれは、必要に応じて、(さらなる)分離工程によってrPAポリペプチドから分離され得る。1つの実施態様では、エンドトキシンの分離は、毒素が付着する荷電フィルターを用いて、濾過によって達成され得る。
【0092】
したがって、特定の実施態様では、rPAを製造する方法は、本発明のポリペプチドを発現する宿主細胞を得る工程;該宿主細胞から発現されたrPAを抽出する工程;該抽出されたrPAをダイアフィルトレーション工程(例えば、30kDaでの接線フローダイアフィルトレーション)に供する工程;続いて、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性電荷クロマトグラフィーから選択される少なくとも1つのクロマトグラフィー工程;次いでさらなるダイアフィルトレーション工程(これは、より高い分子量カットオフ(例えば、40kDaまたは50kDa)であり得る);および必要に応じてさらなる濾過工程で残渣タンパク質および/または細菌エンドトキシンを除去する工程を含む。
【0093】
本発明の1つの実施態様では、高レベル遺伝子発現(強力プロモーターを含むプラスミド)、ペリプラズム転位(分泌配列)、核酸配列改変(rPA核酸配列)、および効率的な下流プロセシングを組み合わせることにより、先行技術で以前に得られた収量よりも10〜20倍上回るrPAタンパク質収量の増大が得られる。
【0094】
さらに、本発明の下流のプロセシング工程により、70%より高い、好ましくは80%より高い、90%より高い、または95%より高い、およびより好ましくは98%より高い純度を有するrPAタンパク質が得られ得る。
【0095】
ポリペプチドの純度または均一性は、例えば、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動、引き続きゲルを染色した際の単一のポリペプチドバンドの可視化によって示され得る。あるいは、より高い分離度が、例えば、HPLCを用いることにより、提供され得る。
【0096】
所望であれば、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列は、タンパク質配列決定方法によって決定され得る。
【0097】
したがって、本発明は、本発明の方法によって製造されたrPAポリペプチドまたはそのフラグメントもまた提供する。1つの実施態様では、ポリペプチドは、炭疽菌により生産される野生型PAと同一であり得る。別の実施態様では、上記のように、ポリペプチドまたはそのフラグメントは、rPAアミノ酸配列のN末端の追加の残基(例えば、メチオニン残基)の存在によって、野生型PA(またはそのフラグメント)とは区別され得る。例えば、ポリペプチドは、配列番号6または配列番号6のN末端メチオニン残基を含むそのフラグメントであり得る。
【0098】
また、本発明によって、本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞、およびポリペプチドの1つ以上を含み得るキットも予期され得る。
【0099】
また、本発明によって、本発明のポリペプチドを含む抗原性組成物、例えば、ワクチン組成物も提供され得る。
【0100】
本発明はまた、炭疽菌による感染に対して免疫応答を誘発する方法を提供し、この方法は、本発明のポリペプチドまたは本発明の抗原性組成物を投与する工程を含む。
【0101】
また、本発明によって、炭疽菌による感染に対して免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、本発明のポリペプチドの使用も提供され得る。
【0102】
この点において、「免疫応答を誘発する」は、炭疽菌による感染に対して防御することを包含し得る。本発明の方法および/または使用によって付与される防御は、100%であり得るか、または100%未満であり得る。好ましくは、「炭疽菌による感染に対して防御する」は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の炭疽菌感染に対して防御を提供する。好ましくは、「炭疽菌による感染に対して防御する」は、炭疽菌感染に対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%有効なレベルでの防御を提供する。
【0103】
さらに、用語「感染に対して防御する」は、感染を予防することおよび感染を治療することを包含し得る。この点において、用語「予防する」は、炭疽菌感染の重篤度/強度を低下させること、または炭疽菌感染の開始を低減することを含む。用語「治療する」は、炭疽菌感染の感染後治療および改善を含む。
【0104】
抗原性組成物は、当該分野で周知の方法を用いて、従来の経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、および粘膜経路)によって投与され得る。
【0105】
代表的には、このような抗原性組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能製品として調製され得る。注射前に液体中に入れて溶液とするかまたは懸濁液とするのに適切な固体形態もまた調製され得る。調製物はまた乳化され得るか、またはペプチドがリポソームまたはマイクロカプセル中にカプセル化され得る。
【0106】
活性な免疫原性成分が、しばしば、賦形剤と混合される。この賦形剤は、薬学的に受容可能であり、そして活性成分と適合し得る。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。さらに、所望であれば、ワクチンは、少量の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤、および/またはアジュバント(これは、ワクチンの有効性を増強する))を含み得る。有効であり得るアジュバントの例は、以下を含むが、これらに限定されない:水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、ノル−MDPともいう)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEともいう)、およびRIBI、これは、細菌から抽出された3つの成分、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween80エマルジョン中に含有する。
【0107】
活性成分は、中性または塩形態でワクチン中に処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)を含み、これは、無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸のような)と共に、または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸など)と共に形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩もまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄)および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導され得る。
【0108】
抗原性組成物は、注射(例えば、皮下もしくは筋肉内のいずれか)によって、従来通りに非経口投与される。
【0109】
抗原性組成物は、投薬処方と適合され得る様式で、予防および/または治療に有効であるような量での投与用である。投与されるべき量は、一般には、一用量当たり5μgから250μgの抗原の範囲であり、好ましくは、一用量当たり約50μgから100μgであり、これは、処置されるべき被験体、被験体の免疫系の抗体合成能、および所望の防御度に依存する。投与されることが必要な活性成分の正確な量は、主治医の判断に依存し得、各被験体に対して特有であり得る。
【0110】
抗原性組成物は、単回投薬スケジュール、または必要に応じて複数回投薬スケジュールでで与えられ得る。複数回投薬スケジュールは、ワクチン接種初回経過は1〜6回の個別投薬であり、引き続き、免疫応答の維持およびまたは強化に必要な後続期間の間隔で、例えば、2回目の投薬のために1〜4ヶ月で、別の投薬が与えられ、そして必要であれば数ヶ月後に引き続き投薬され得るというものである。投薬レジメはまた、少なくとも部分的には、個体の必要性によって決定され、そして主治医の判断に依存する。
【0111】
さらに、免疫原性抗原を含む抗原性組成物は、他の免疫調節剤(例えば、免疫グロブリン)ならびに抗生物質と合わせて投与され得る。
【0112】
他の投与態様に適したさらなる処方物としては、マイクロカプセル、坐薬、およびいくつかの場合には、経口処方物またはエアロゾルとしての分散に適した処方物が挙げられる。坐薬について、従来の結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る;このような坐薬は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含む混合物から形成され得る。
【0113】
経口処方物は、例えば、薬剤等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性処方物または散剤の形態をとり、そして活性成分を10%〜95%、好ましくは25%〜70%含む。
【0114】
1つの実施態様では、医薬は、鼻腔内投与(i.n.)され得る。鼻腔内組成物は、100〜5000μmの範囲のおよその直径を有する、容量換算では、0.001〜100μlのおよその範囲の小滴サイズを有する小滴形態で投与され得る。
【0115】
鼻腔内投与は、点鼻剤の適用によりまたは鼻噴霧を介して達成され得る。点鼻剤の場合、小滴は、代表的には、約1000〜3000μmの直径および/または1〜25μlの容量を有し得る。一方、鼻噴霧の場合、小滴は、代表的には、約100〜1000μmの直径および/または0.001〜1μlの容量を有し得る。
【0116】
抗体の鼻腔内送達後、それらの肺への輸送は、粘膜分泌の逆流によって促進され得ると考えられる。
【0117】
異なる実施態様では、医薬は、エアロゾル処方物で送達され得る。エアロゾル処方物は、散剤、懸濁剤、または溶剤の形態をとり得る。
【0118】
エアロゾル粒子のサイズは、エアロゾルの送達能に関連する一要因である。したがって、粒子が小さい方が、より大きな粒子よりも肺胞に向かって気道をさらに移動し得る。1つの実施態様では、エアロゾル粒子は、気管支、細気管支、および肺胞までの全長に沿った送達を促進するような直径の分布を有する。あるいは、粒子サイズ分布は、気道の特定の部分(例えば、肺胞)を標的するように選択され得る。
【0119】
エアロゾル粒子は、噴霧吸入器または鼻噴霧によって送達され得る。
【0120】
医薬のエアロゾル送達の場合、粒子は、0.1〜50μm、好ましくは1〜5μmのおよその範囲の直径を有し得る。
【0121】
本発明の医薬のエアロゾル処方物は、必要に応じて、推進剤および/または界面活性剤を含み得る。
【0122】
患者に投与される小滴のサイズを本発明の所定の範囲内に調節することにより、肺胞への不慮の抗原送達を回避/最小限にし、したがって、肺胞に関連した病理上の問題点(例えば、肺の炎症および線維症瘢痕形成)を回避することができる。
【0123】
鼻腔内ワクチン接種は、他の粘膜関連リンパ系組織とは異なる鼻および気管支に関連した粘膜組織で、T細胞媒介エフェクター機構およびB細胞媒介エフェクター機構の両方を呼び起こす。
【0124】
抗原の鼻腔内送達は、呼吸系の粘膜下B細胞への抗原の標的化を可能にする。これらのB細胞は、哺乳動物における主要な局所IgA産生細胞であり、そして鼻腔内送達は、炭疽菌抗原に対してこれらの細胞によるIgAの産生の急速な増加を促進する。
【0125】
1つの実施態様では、炭疽菌抗原を含む医薬の投与はIgA抗体産生を刺激し、そしてIgA抗体は炭疽菌抗原に結合する。別の実施態様では、粘膜および/またはTh2免疫応答が刺激される。
【0126】
1つの実施態様では、ワクチン組成物は、AlhydrogelTMアジュバントに吸着されたrPAタンパク質を含む。1つの実施態様では、ワクチンは、筋肉内注射によって送達される。
【0127】
本発明はまた、配列番号4の配列を有するベクターを提供する。
【0128】
本発明はまた、ECACC番号04061401で寄託されたベクターを提供する。
【0129】
本発明はまた、ECACC番号04052501で寄託された、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0130】
本願の図面を説明する。
【0131】
図1は、HPAクローンpMTL1015−cpg−rPA−synt、すなわち、pMTL1015(Tc)中のcpgリーダーに融合した改変型rPA核酸配列を図示する。このプラスミドの作製に必要な操作は以下の通りである:(1)合成「成熟」rPA配列を配列検証されたPCR産物TOPOベクター(すなわち、リーダーなし)からHPA pET22bcpgベクターにサブクローニングする;(2)cpg−SynPAをpET22bcpgSynPAからpMTL1015にサブクローニングする。
【0132】
図2は、フィトンペプトンベースのTerrific Brothでの16時間振盪フラスコ培養後にrPAを発現しているpMTL1015クローンのSDS−PAGEを示す。数字は以下の通りである:
1.ブランク
2.rPA標準(DEV030IP;100μg/mL)
3.pMTL1015ベクターのみ
4.pMTL1015−ompA−PA−wt
5.pMTL1015−cpg−PA−wt
6.pMTL1015−pelB−PA−wt
7.pMTL1015−ompA−PA−synt
8.pMTL1015−cpg−PA−synt
9.pMTL1015−pelB−PA−synt
10.分子量マーカー。
【0133】
図3は、フィトンペプトンベースのTerrific Brothでの16時間振盪フラスコ培養後にrPAを発現しているpMTL1015クローンのウェスタンブロットを示す。数字は図2について上で記載した通りである。
【0134】
図4は、フィトンペプトンベースのTerrific Brothで大腸菌(pMTL1015−cpg−PA−synt)の振盪フラスコ培養からの試料の(A)SDS−PAGEおよび(B)ウェスタンブロットによる経時分析を示す。陰性コントロールは大腸菌RV308(pMTL1015)であった。
【0135】
図5は、バッフル付フラスコ中(AおよびB)またはバッフルなしのフラスコ(C)中でのフィトンペプトンベースのTerrific Brothの振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−syntの増殖曲線を示す。
【0136】
図6は、Hy−soyベースの半限定培地の振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−wt(AおよびB)およびpMTL1015−ompA−PA−synt(CおよびD)の増殖曲線を示す。
【0137】
図7は、Hy−soyベースの半限定培地の振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−pelB−PA−wt(AおよびB)およびpMTL1015−pelB−PA−synt(CおよびD)の増殖曲線を示す。
【0138】
図8は、Hy−soyベースの半限定培地の振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−wt(AおよびB)およびpMTL1015−cpg−PA−synt(CおよびD)の増殖曲線を示す。
【0139】
図9は、Hy−soyベースの半限定培地を用いる振盪フラスコ培養でrPAを発現しているpMTL1015クローンのSDS−PAGE(12.5% PHAST−GEL)を示す。数字は以下の通りである:
1:分子量マーカー
2:RV308 pMTL1015 ompA−PA−synt
3:RV308 pMTL1015 ompA−PA−wt
4:RV308 pMTL1015 pelB−PA−synt
5:RV308 pMTL1015 pelB−PA−wt
6:RV308 pMTL1015 cpg−PA−synt
7:RV308 pMTL1015 cpg−PA−wt
8:参照DEV0303IP(100μg/mL)。
【0140】
図10は、生産培地(フィトンペプトン12g/L、バクト酵母エキス60g/L、グルコース25g/L、硫酸マグネシウム七水和物2g/L、KHPO 12.54g/L、KHPO 2.31g/L、およびテトラサイクリン1.5mg/L、pH7.0〜7.2)での大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntの増殖を示す。酵母エキスのレベルを以下のように変化させた:
A 1×酵母エキス
B 1.5×酵母エキス
C 2×酵母エキス
D 2.5×酵母エキス。
【0141】
図11は、生産培地における大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntの増殖曲線(A)およびrPA生産曲線(B)を示す。
【0142】
図12は、rPAの単離のための下流プロセシング工程を示すフローチャートである。
【0143】
図13(A〜D)は、配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。配列同一性は71.2%である。
【0144】
本発明を、以下の実施例を参照してここに記載する。
【実施例】
【0145】
(実施例1−rPA発現系)
以下のいずれかの発現を指向するpMTL発現ベクター構築物を生成した:野生型PA遺伝子配列または改変型rPA遺伝子配列(エルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)pelBまたはシュードモナスカルボキシペプチダーゼG(cpgまたはcpg)リーダー配列のいずれかに融合させた)。後者の配列は、欧州特許0 121 352に記載されており、大腸菌で効率的にプロセシングされて、可溶性タンパク質をペリプラズム腔に方向付けることが示されている。これらのrPA発現構築物を、評価のために、Dynport Vaccine Company(DVC)のpET26bおよびInvitrogenのpTrkベクターベースの構築物と比較した。
【0146】
新規rPA pMTLベースの発現クローンの作製は、以下の通りであった:
1.ともにpelB、ompA、およびcpgリーダー配列に融合させた2つのPAをコードするヌクレオチド配列(野生型および改変型)をPCR増幅する。このことにより、6つのrPA配列選択肢が生じた;
2.PCR産物クローニングベクター系(例えば、Invitrogen TAクローニング)で一次クローンを構築した;
3.一次クローンをPA/リーダー配列複合体のDNA配列分析によって確認した;
4.6つのrPA配列をpMTL1015発現ベクターにサブクローニングし、そして組換えプラスミドを確認した;
5.4つの確認したクローンに由来するプラスミドDNAを用いて、プロテアーゼ欠損発現株である大腸菌RV308(ATCC31608)を形質転換した。
【0147】
(1.1 rPA発現系の比較に関するストラテジー)
pMTL発現プラスミドに基づく6つのクローンを、現行の生産培地での振盪フラスコ培養で評価した。既存のDVC生産生物をコントロールとして用いた。増殖条件および誘導開始/持続期間(適用可能な場合)は、所与の実験条件下での発現レベルの真の比較をすることが可能になるように、可能な限りで標準化した。例えば、接種のために標準細胞密度を用いた。生産レベルを、増殖の全期間にわたって培養物をサンプリングし、そして回収した細胞のBugBusterTM(Novagen)を用いる化学的細胞溶解に供することにより、SDS−PAGEのデンシトメトリー分析により、比較した。ウェスタンブロッティングを用いて、rPAタンパク質バンドの同一性を確認した。
【0148】
(1.2 培地選択ストラテジー)
遺伝子操作によりrPAの発現レベルを増大させることに加え、より高い栄養素レベルを含む培地を用いて培養物をより高い細胞密度にまで増殖させることにより、産物の最終収量を上昇させた。
【0149】
現行の生産培地でrPA生産レベルに関して最も有望性を示している株を、まず種々の可能な生産培地を用いて振盪フラスコ培養で、さらに試験した。DVCにより用いられた分析技術(SDS−PAGE、RP−HPLC)を用いて、増殖の全期間にわたっておよび収集時の産物レベルを評価した。
【0150】
(実施例2−rPA発現の振盪フラスコ比較)
(2.1 フィトンペプトンベースのTerrific Broth)
振盪フラスコ培養を用いて、フィトンペプトンベースのTerrific Brothでの6つのpMTL1015クローンによるrPAの発現を比較する実験を行った。CAMRでのpMTL1015発現系を用いる以前の研究は、低い酸素添加速度が産物の発現に好ましいものであり得ることを示したので、培養をバッフル付フラスコ(高酸素添加)およびバッフルなしのフラスコ(低酸素添加)の両方で設定した。
【0151】
細胞バンクのための一次種培養物として調製した10mL培養物を用いて、本研究のための種培養物を調製した。10mL培養物の50μLアリコートを用いて、250mLのバッフル付フラスコ中の50mLのフィトンペプトンベースのTerrific Brothに接種した。
【0152】
これらの種培養物を30℃にて150rpmで17時間インキュベートし、次いで1000mLのバッフル付フラスコ中の同じ培地の二連の200mL培養物および500mLのバッフルなしのフラスコ中の250mLの1つの培養物に接種した。各培養物の接種材料を算定し、出発OD600は0.1〜0.2であった。培養物を30℃にて150rpmで24時間インキュベートした。OD600が5〜7に達したときに、rPAアッセイのために試料(2.5mL)を2時間間隔で取り出した。試料をClandon T-52卓上遠心分離機で4,000rpmにて15分間遠心分離し、上清を捨て、そしてペレットを−20℃にて凍結保存した。24時間増殖後、この二連のバッフル付フラスコの培養物を1つにし、そして細胞塊を遠心分離(Sorvall RC-3、5000rpmにて15分間)によって回収し、そして細胞ペーストを−20℃にて凍結保存した。
【0153】
図2および図3は、高い酸素添加(バッフル付フラスコ)の条件下でフィトンペプトンベースのTerrific Broth中で増殖したpMTL1015クローンの各々からの16時間試料のBugBusterTMでの処理後のSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析を示す。合成遺伝子産物を発現する3つのクローンについて、SDS−PAGEでの推定rPA分子量の位置に強いタンパク質バンドが存在しており、野生型遺伝子を発現するクローンについては、より弱いバンドがあることが分かり得る(図2)。存在するrPAの量をrPA標準の強度と比較することにより概算し、ELISAによって確認した(表1)。ウェスタンブロット分析は、rPAよりも低い分子量にいくつかの免疫反応性物質の存在を示した(図3)。インタクトなrPAに対するこの物質の量は、全てのクローンについて同様であった。これが、タンパク質分解産物を表すのかまたは短縮型発現を表すのかは、現時点では不明である。
【0154】
【表1】

【0155】
pMTL1015−cpg−PA−syntクローンからの経時試料を、SDS−PAGE(Phast-gel)、ウェスタンブロット(図4)およびELISA(表2)により分析して、以下を決定した;(a)rPA発現が最大であった時点、および(b)インキュベーションの延長がタンパク質分解活性に起因して産物の損失を生じたか否か。ELISAによるrPA発現は、14〜16時間のインキュベーション後に最適であり、そして24時間までのさらなるインキュベーションで目立った変化はなかったことが理解され得る(表2)。ウェスタンブロット分析(図4)は、インタクトなrPAに対する低分子量免疫反応性物質のレベルにはインキュベーション時間の延長によって顕著な変化がないことを示した。
【0156】
【表2】

【0157】
図5は、バッフル付フラスコ(高酸素添加)およびバッフルなしのフラスコ(低酸素添加)を用いてフィトンペプトンベースのTerrific Brothで増殖させた場合の大腸菌RV308(pMTL1015−ompA−PA−synt)について得られた増殖曲線を示す。増殖はバッフル付フラスコで実質的に良好であったことが理解され得る。バッフルなしのフラスコで増殖させた培養物では、バッフル付フラスコ培養と比較してずっとより低い最終細胞密度となった。rPA発現は、バッフルなしのフラスコで増殖させた培養物ではかなり低かった(データは示さず)。
【0158】
(2.2 Hy−soyベースの半限定培地)
上記の実験(実施例2.1)を、バッフル付フラスコのみでHy−soyベースの半限定培地を用いて繰り返した。増殖曲線(図6、7および8)は、この培地で、Terrific Brothに比較して低い増殖速度および最終細胞密度が得られたこと、および合成遺伝子を発現しているクローンについて8時間までの停滞期があったことを示している。rPA発現レベルは、一般に、フィトンペプトンベースのTerrific Brothで観察されるよりも低かった。しかし、野生型遺伝子と比較して合成遺伝子を発現するクローンによる優れた発現レベルの同様のパターンが、SDS−PAGE(図9)およびELISA(表3)によって観察された。
【0159】
【表3】

【0160】
(実施例3−rPA発現の発酵レベル比較)
発酵培養における以下の4つのさらに選択したクローンについて評価を続けた:
大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−synt
大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−synt
大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−wt
大腸菌DH5 pTrcK−pelB−PA−synt。
【0161】
(3.1 培地選択)
前に記載したような条件下で各培地において、DOTおよびpHを調節しながら、8L発酵を実施した。
【0162】
得られた増殖曲線は、同じ培地で以前に見られた増殖曲線と同様であった(図10を参照のこと)が、生産培地(生産番号(Run No)PRECRV0034:表4)からのrPA収量は、ELISAによれば2500μg/mLであった。この培養物に、培養物中のグルコース涸渇前に80mLの50%グルコース溶液を供給した。rPA生産を示すPRECRV0034についての増殖曲線が図11に見られ得るが、データは、培養物を回収した時に収量が最大に達していたか否かを示していない。
【0163】
生産に培養した場合に大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntについて得られたrPA収量の改善がまた、他の2つのさらに選択したpMTL1015クローンでも生じたか否かを決定するために、これらの条件下で3つの株全てについて並行発酵を設定した。しかし、前の培養物に供給した80mLの50%グルコースを出発時から含ませて、初期グルコース濃度を25g/Lに増やした。
【0164】
大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntは再度、2500μg/mLの収量を得、そして大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−syntは2000μg/mLを生じた(PRECRV0038および0037を参照のこと、表4)。
【0165】
大腸菌DH5α pTrcK−pelB−PA−syntを、誘導時のOD600が15に上昇したことを除いて、8LスケールにてPPTBglyで増殖させた(表4のPRECDH0013を参照のこと)。rPA収量は、前の結果よりも顕著な改善を示さなかったが、より多くのバイオマスが生産され、IPTGでの誘導4時間後に26というより高い最終OD600が得られた。
【0166】
(3.2 増殖温度の影響)
大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−宿主/ベクター系を組み込んでいる前の開発プログラムは、産物の発現が25〜30℃の間の温度で最も効率的であることを示していた。
【0167】
大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntのより低い温度での増殖の収量および産物安定性に関する影響の評価を、30℃、28℃、および25℃にて上記条件下、生産培地で株を培養することにより行った(表4のPRECRV0039、0040および0041のそれぞれを参照のこと)。
【0168】
より低い温度での生産からの収量は、30℃で増殖した場合よりも低かった。生産された物質の質は、温度の低下では改善されることなく、SDS−PAGE/ウェスタンブロットにおける微量の不純物バンドの減少はほとんどまたは全くなかった。
【0169】
(3.3 抗生物質濃度の影響)
抗生物質減少による選択圧下でのプラスミドの安定性の確認として、大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntを、培地中のテトラサイクリン濃度レベルを変更させながら、上記条件下、生産培地で培養した(表4のPRECRV0042〜0044を参照のこと)。テトラサイクリン濃度は、15μg/mL(100%)、1.5μg/mL(10%)および0であった。第二の種培養物はそれぞれ15、1.5、および15μg/mLを含んだ。したがって、種増殖の間のテトラサイクリンの分解がないと仮定すると、抗生物質を添加していない発酵槽は、選択圧を供給するために第二の種からのキャリーオーバーに頼った。発酵槽に移した種の容量は124mLであり、接種時の発酵培地に名目上0.23μg/mLのテトラサイクリンを与えた。
【0170】
最終OD600およびバイオマスについての収量は予想範囲内であったが、rPAの収量は、15μg/mLコントロールについて予想されるよりもわずかに低かった。抗生物質減少培養物でのレベルは、わずかに高かった。pMTL1015−cpg−PA−syntプラスミドの安定性は、選択培地(15μg/mLテトラサイクリンを添加したL−寒天)および非選択培地上の最終発酵試料コロニー単離物を爪楊枝で掬い取ることにより確認した。15、1.5、および0μg/mLテトラサイクリンの発酵のそれぞれについて選択培地上で100、98、および96%増殖したという結果は、用いた条件下での良好な安定性を示している。PPTBgluc2.5×YE発酵についての生存数の結果は、2×1010〜5×1010cfu/mLの範囲にある。
【0171】
【表4】

【0172】
(3.4 生産株の選択)
初期のダウン選択後に調べたクローンについてこれまで得られた結果は、4つのうち、大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntが、等しい条件下で他のpMTL1015クローンと比較した場合、ほとんどの場合において最も高い収量を示したことを示していた。
【0173】
発酵およびDSP開発の両方について生じた情報の大部分が大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntクローンからのものであり、生産培地を用いた場合に1.5〜2.5mg/mLの範囲の収量であった。このことにより、本出願人は、続きの全ての研究について、好ましい生産生物としてこのクローンを選択することにした。
【0174】
表5は、生産培地でこれまでに増殖した全ての培養物の概要を示す。数値は、2500μg/mLも達成され得るが、収量についてのより実際的な値は2000μg/mLであることを示している。
【0175】
【表5】

【0176】
(実施例4−rPA生産についての上流のプロセス)
(4.1 大腸菌RV308(ATCC 31608)に形質転換した目的のクローン[クローンpMTL1015−cpg−PA−synt]のシードバンク)
配列確認後、研究用シードバンクを、ダイズペプトンベースのL−ブロス(フィトンペプトン15g/L、バクト酵母エキス5g/L、NaCl 5g/L、pH6.8〜7.0)でのテトラサイクリン(15mg/L)の選択圧下での増殖によって調製した。テトラサイクリンを含む栄養寒天プレートからの1つのコロニーを、500mLバッフル付振盪フラスコ中の100mL培地に接種し、そしてOD600が1.5になるまで振盪インキュベーター中で30℃にて150rpmでインキュベートした。次いで、この培養物を増殖培地(上記を参照のこと)中で滅菌50%グリセロールと混合して10%の最終グリセロール濃度とし、そして1.8mL凍結バイアル中に1mLアリコートとして−80℃で凍結保存した。
【0177】
250バイアルの実験研究用細胞バンク(WRCB)を、同じ条件および増殖用培地を用いて上記シードバンクから調製したが、250μLの融解したバイアル内容物を1000mLバッフル付振盪フラスコ中で200mL培地に接種した。
【0178】
(4.2 一次種菌培養)
1バイアルのWRCBを溶解し、そして100μLを、25mLユニバーサルボトル中の15mg/Lでテトラサイクリンを含む10mLのダイズペプトンベースのL−ブロス(上記を参照のこと)に接種し、150rpmで振盪しながら30℃にて7〜9時間インキュベートした。これは、生物が生存していることを確実にし、そしてより一貫した種菌生産プロセスを得る回収工程であった。この工程の最終OD600は0.7〜1.0であった。
【0179】
(4.3 二次種菌培養)
この工程は、発酵用の接種材料を生産し、そして合理的な大きさの振盪インキュベーターを用いて、振盪フラスコ中での5〜250Lの培養に十分な接種材料を製造し得る。50Lスケールでは、200μLの一次種菌を、5×1000mLバッフル付振盪フラスコの各々の中の200mLの生産培地に接種した。この培養物を、150rpmで振盪しながら30℃にて11〜12時間インキュベートし、13〜16の最終OD600を得た。
【0180】
オートクレーブによる滅菌の間にいくつかの成分の沈殿およびカラメル化を防ぐために、生産培地を、複合成分をバルクとして滅菌し、次いでそれらの成分の温度が25℃より低い温度に下がった時点でグルコース、リン酸塩、マグネシウム、およびテトラサイクリンを滅菌溶液として無菌的に添加することによって調製する。
【0181】
(4.4 生産発酵)
次いで、種菌培養物をひとまとめにして、発酵槽中で出発OD600が0.2となるのに十分な容量を、72LのApplikon攪拌発酵タンク中の50L生産培地(上記を参照のこと)に接種した。複合培地成分を、40Lバルクとして、121〜123℃にて30分間インサイチュで滅菌し、25℃を下回るまで冷却し、次いで残りの成分を補充して総容量を50Lとした。
【0182】
次いで、培養物を、水酸化ナトリウムおよびリン酸を添加することにより調節したpH7.0にて、30(±0.5)℃の温度で、バッチで増殖させた。記載した順に以下のパラメーターのカスケード段階調節により、溶存酸素圧を>40%に維持した:攪拌(200〜800rpm)、逆圧(3〜7psi)、スパージング気流(25〜50Lpm)および酸素補充(0〜20Lpm)。
【0183】
ODによる測定(OD600 60〜65)により増殖が停止した時点で(12〜14時間)、培養物を15℃を下回るまで冷却し、そしてバッチ遠心分離(Sorvall RC-3B、H6000Aローター、5000rpmで15分間)により回収した。回収した細胞ペーストを、下流プロセシングに必要となるまで−20℃にて保存した。培養物から1時間ごとに取り出した試料から、ELISAアッセイによって、産物の発現を評価した。
【0184】
(実施例5−下流プロセシング工程)
(5.1 細胞破壊)
約4.5kgの凍結細胞ペースト回収物を、まず最小容量の20mMトリス/1mM EDTA pH8.5によって懸濁し、滑らかなペーストとした。さらなる緩衝液を添加して16Lの総懸濁液容量を得た。
【0185】
懸濁細胞を、7000psiの圧で「APV Gaulin」高圧ホモジナイザーに2回通すことにより破壊した。次いで、このホモジネートを「Sorval」RC3遠心分離機中で5000rpmにて1時間遠心分離した。ペレットを捨て、そして上清(約16L)を保持した。
【0186】
(5.2 ダイアフィルトレーション)
遠心分離したホモジネートを、2つの「Pall」OS030F07 0.5m「Centrasette 2 Omega」懸架式スクリーンチャンネル30kDa膜が取り付けられた「Millipore Pellicon」濃縮器を用いて、その容量の3倍の精製水でダイアフィルトレートした。この濃縮器を、1.6バールの膜透過圧で17L/分の流速で操作した。pHを8.0に調整し、そして伝導度を2mS/cmに調整した。
【0187】
(5.3 アニオン交換およびクロマトグラフィー)
25cm直径のクロマトグラフィーカラムに5Lの「Amersham」「Q−セファロースファストフロー(Q-Sepharose Fast Flow)」アニオン交換体を充填して10cmのベッド高とした。次いで、工業用UVモニターを流出ラインに接続した。カラムを全体にわたって330mL/分の流速で操作した。充填カラムを10Lの水、次いで5Lの0.5M水酸化ナトリウム、引き続き精製水で洗浄した。10Lの0.5Mトリス、pH8.0をポンプで注入し、次いでカラムを開始緩衝液(20mMトリス、pH8.0)で平衡化した。
【0188】
ダイアフィルトレート液を流し、次いでこの流したカラムを開始緩衝液でベースライン分離度まで洗浄した。結合したrPAを、開始緩衝液中の10、20、および65mMの塩化ナトリウムの塩濃度を段階で増大させながら溶出し、そして溶出したピークを、別々の適切なサイズの容器中に収集した。溶出液をSDS−PAGEおよびSEC−HPLCによってアッセイし、そして>40%の純度でrPAを含む画分を保持した。
【0189】
カラムを、10Lの2M塩化ナトリウム、引き続き10Lの1M酢酸ナトリウム、10Lの0.5M水酸化ナトリウム、次いで10Lの50mM水酸化ナトリウムを連続的に通過させることにより再生し、保存した。
【0190】
(5.4 疎水性電荷誘導クロマトグラフィー)
UVモニターに接続した30cm直径のカラムに、7L/分の流速で20Lの「Ciphergen」「MEPハイパーセル(HyperCel)」を充填した。充填すると、さらに続く全ての工程を800mL/分で実施した。カラムを、40分以下の接触時間で5Lの1M水酸化ナトリウムで洗浄した。次いで、カラムを水で洗浄し、次いで20Lのローディング緩衝液(50mMトリス、pH8.0)で平衡化した。Qプール(すなわち、前のQクロマトグラフィー工程からのプール)を流し、カラムをローディング緩衝液でベースラインまで洗浄し、次いで結合したrPAを精製水で溶出させた。収集した産物をSDS−PAGEおよびSEC−HPLCによってアッセイした。MEPプール(すなわち、MEPハイパーセルカラムからのプール)を0.22μmの2000cmのPall「ポジダイン(Posidyne)」フィルターを通して濾過した。カラムを10Lの1M水酸化ナトリウムで再生し、精製水で洗浄し、次いで0.2μm濾過した50mM水酸化ナトリウム中に保存した。
【0191】
(5.5 ダイアフィルトレーションおよび処方)
精製したrPAを、「Pall Centramate」媒体スクリーン「Omega」50kDaカートリッジ(部品番号OS0350C12、0.093m)を用いてダイアフィルトレートした。800mL/分の流速および1.6バールの膜透過圧を用いた。ダイアフィルトレーションを、5Lの処方緩衝液;25mMリン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH8.0に対して実施した。5000cm面積の0.22μm Pall「ポジダイン」フィルターを用いてさらなる濾過を実施し、次いで最終産物を適切なバイアル中に分配した。
【0192】
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【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】HPAクローンpMTL1015−cpg−rPA−synt、すなわち、pMTL1015(Tc)中のcpgリーダーに融合した改変型rPA核酸配列を図示する。
【図2】フィトンペプトンベースのTerrific Brothでの16時間振盪フラスコ培養後にrPAを発現しているpMTL1015クローンのSDS−PAGEを示す。
【図3】フィトンペプトンベースのTerrific Brothでの16時間振盪フラスコ培養後にrPAを発現しているpMTL1015クローンのウェスタンブロットを示す。
【図4A】フィトンペプトンベースのTerrific Brothで大腸菌(pMTL1015−cpg−PA−synt)の振盪フラスコ培養からの試料のSDS−PAGEによる経時分析を示す。
【図4B】フィトンペプトンベースのTerrific Brothで大腸菌(pMTL1015−cpg−PA−synt)の振盪フラスコ培養からの試料のウェスタンブロットによる経時分析を示す。
【図5】バッフル付フラスコ中(AおよびB)またはバッフルなしのフラスコ(C)中でのフィトンペプトンベースのTerrific Brothの振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−syntの増殖曲線を示す。
【図6】Hy−soyベースの半限定培地の振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−ompA−PA−wt(AおよびB)およびpMTL1015−ompA−PA−synt(CおよびD)の増殖曲線を示す。
【図7】Hy−soyベースの半限定培地の振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−pelB−PA−wt(AおよびB)およびpMTL1015−pelB−PA−synt(CおよびD)の増殖曲線を示す。
【図8】Hy−soyベースの半限定培地の振盪フラスコ培養の大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−wt(AおよびB)およびpMTL1015−cpg−PA−synt(CおよびD)の増殖曲線を示す。
【図9】Hy−soyベースの半限定培地を用いる振盪フラスコ培養でrPAを発現しているpMTL1015クローンのSDS−PAGE(12.5% PHAST−GEL)を示す。
【図10】生産培地(フィトンペプトン12g/L、バクト酵母エキス60g/L、グルコース25g/L、硫酸マグネシウム七水和物2g/L、KHPO 12.54g/L、KHPO 2.31g/L、およびテトラサイクリン1.5mg/L、pH7.0〜7.2)での大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntの増殖を示す。
【図11】生産培地における大腸菌RV308 pMTL1015−cpg−PA−syntの増殖曲線(A)およびrPA生産曲線(B)を示す。
【図12】rPAの単離のための下流プロセシング工程を示すフローチャートである。
【図13A1】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13A2】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13A3】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13B1】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13B2】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13B3】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13C1】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13C2】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13C3】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13D1】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。
【図13D2】配列番号8−「DVC.Synthetic.rP」(すなわち、野生型PA遺伝子配列(配列番号2)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)と配列番号7−「AP.PA.wt.Sequenc」(すなわち、本発明の改変型rPA遺伝子配列(配列番号1)およびメチオニン残基をコードする5’コドン)との間の配列アラインメントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に対して少なくとも75%の同一性を有する核酸配列であって、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)をコードする核酸配列;または
該核酸配列のフラグメントであって、組換え炭疽菌防御抗原(rPA)のフラグメントをコードするフラグメント
を含む、ポリヌクレオチド配列。
【請求項2】
前記核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項3】
前記核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項2に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項4】
前記組換え炭疽菌防御抗原(rPA)のフラグメントが、配列番号5の少なくとも200、好ましくは少なくとも300、および最も好ましくは少なくとも400のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項5】
前記核酸配列のフラグメントが、請求項1に記載の核酸配列の少なくとも600、好ましくは少なくとも900、および最も好ましくは少なくとも1200のヌクレオチドを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項6】
分泌配列をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
前記分泌配列が、ompA、ompT、ompF、pelB、phoA、lamB、βラクタマーゼ、黄色ブドウ球菌プロテインA、枯草菌エンドグルカナーゼ、マウスRNAse、ヒト成長ホルモン、エンテロトキシンST−II、LT−AもしくはLT−B、およびcpg(cpg)から選択される、請求項6に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項8】
前記分泌配列が、発現されたポリペプチドの細菌宿主細胞の細胞質からのペリプラズム転位のためである、請求項6または請求項7に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項9】
前記分泌配列が、発現されたポリペプチドの細菌宿主細胞の細胞質からの細胞外転位のためである、請求項6または請求項7に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項10】
前記分泌配列が、ペリプラズム転位の間に前記発現されたポリペプチドから切り離され得る、請求項8に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
前記分泌配列が、細胞外転位の間に前記発現されたポリペプチドから切り離され得る、請求項9に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項12】
前記分泌配列が、配列番号3によりコードされるcpg(cpg)リーダー配列である、請求項6から11のいずれかに記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項13】
前記核酸またはそのフラグメントが3’末端および5’末端を有し、そして該核酸またはそのフラグメントが該5’末端に対してクローニングされたメチオニン残基をコードするコドンを有する、請求項1から12のいずれかに記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
前記核酸が配列番号7またはそのフラグメントであり、該フラグメントが配列番号7の5’末端コドンを含む、請求項13に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項16】
rPAポリペプチドまたはそのフラグメントが高度に発現されることを確実にするように選択されるプロモーターを含む、請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
選択マーカーをさらに含む、請求項15または請求項16に記載の発現ベクター。
【請求項18】
前記ベクターが、pETベクター、pTrKHisベクター、およびpMTLベクターから選択される、請求項15から17のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項19】
前記プロモーターが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh)プロモーターである、請求項16から18のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項20】
前記ベクターが、化学誘導因子の不在下で前記ポリヌクレオチドを発現する、請求項15から19のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項21】
前記発現ベクターが、配列番号3によりコードされるcpg(cpg)リーダー配列を含む、請求項15から20のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項22】
前記ベクターが、配列番号4によりコードされるプラスミドpMTL1015である、請求項16から21のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項23】
前記ベクターが、ECACC番号04061401で寄託されている、請求項16から21のいずれかに記載の発現ベクター。
【請求項24】
請求項15から23のいずれかに記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
前記宿主が大腸菌細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記大腸菌細胞が大腸菌RV308(ATCC番号31608)である、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
rPAまたはそのフラグメントを製造する方法であって、請求項1から14のいずれかに記載のポリヌクレオチドを発現させる工程を含む、方法。
【請求項28】
前記ポリヌクレオチドが宿主細胞で発現される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリヌクレオチドがDNAであり、そして必要に応じてインビトロにてRNAにまず転写され、次いで該RNAが宿主細胞で翻訳される、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記宿主細胞が大腸菌宿主細胞である、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記大腸菌宿主細胞が大腸菌RV308(ATCC番号31608)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項15から23のいずれかに記載の発現ベクターからrPAを発現させる工程を含む、請求項27から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記発現ベクターが、配列番号3によりコードされるcpg(cpg)リーダー配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ベクターが、配列番号4によりコードされるプラスミドpMTL1015である、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ベクターが、大腸菌RV308(ATCC番号31608)で発現される、請求項32から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記発現ベクターを宿主細胞に形質転換する工程、および増殖培地で該形質転換した宿主細胞を培養する工程の初期工程をさらに含む、請求項28から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記増殖培地が、動物製品を実質的に含まない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記形質転換した宿主細胞を低温で培養する工程を含む、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記宿主細胞を回収する工程をさらに含む、請求項36から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記宿主細胞からrPAを抽出する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
分離工程をさらに含む、請求項27から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記分離工程が、1つ以上のクロマトグラフィー工程および1つ以上の濾過工程から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記濾過工程の少なくとも1つがダイアフィルトレーション工程である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記クロマトグラフィー工程の少なくとも1つがイオン交換クロマトグラフィー工程および疎水性電荷クロマトグラフィー工程から選択される、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項28から44のいずれかに記載の方法であって、
(a)請求項1から14のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは請求項15から23のいずれかに記載の発現ベクターを発現する宿主細胞を得る工程;
(b)該宿主細胞から発現されたrPAを抽出する工程;
(a)該抽出されたrPAをダイアフィルトレーション工程に供する工程;
(b)該ダイアフィルトレートされたrPAを、アニオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性電荷クロマトグラフィーから選択される少なくとも1つのクロマトグラフィー工程に供する工程;および
(c)さらなるダイアフィルトレーション工程を実施する工程
を含む、方法。
【請求項46】
請求項27から45のいずれかに記載の方法により製造されたポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項47】
請求項13または請求項14に記載のポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項48】
請求項1から14のいずれかに記載のポリヌクレオチド;請求項15から23のいずれかに記載の発現ベクター;請求項24から26のいずれかに記載の宿主細胞;および請求項46または請求項47に記載のポリペプチド;の1つ以上を含むキット。
【請求項49】
請求項46または請求項47に記載のポリペプチドを含む抗原性組成物。
【請求項50】
炭疽菌による感染に対して免疫応答を誘発する方法であって、請求項46または請求項47に記載のポリペプチドまたは請求項49に記載の抗原性組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項51】
炭疽菌による感染に対して防御するための、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
炭疽菌による感染に対して免疫応答を誘発するための医薬の製造のための、請求項46または請求項47に記載のポリペプチドの使用。
【請求項53】
炭疽菌による感染に対して防御するための、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
配列番号4の配列を有するベクター。
【請求項55】
ECACC番号04061401またはECACC番号04052501で寄託されたベクター。
【請求項56】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される、ポリヌクレオチド。
【請求項57】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される、ポリペプチド。
【請求項58】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される、ベクター。
【請求項59】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される、宿主細胞。
【請求項60】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される、rPAを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A1】
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【図13A2】
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【図13A3】
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【図13B1】
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【図13B2】
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【図13B3】
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【図13C1】
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【図13C2】
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【図13C3】
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【図13D1】
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【図13D2】
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【公表番号】特表2008−504019(P2008−504019A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516035(P2007−516035)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002360
【国際公開番号】WO2005/123764
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(503191210)ヘルス プロテクション エージェンシー (19)
【出願人】(506417201)ディンポート ヴァクシーン カンパニー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】