説明

炭素の酸化物を分解するための光触媒材料

一実施形態は、(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、第1の成分と、(b)炭素の酸化物を吸着/吸収する、第2の成分と、(c)光励起電子を使用して炭素の酸化物を炭素および酸素に分解する、第3の成分とを含む光触媒複合材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの人間の活動が、過剰な量の二酸化炭素等の温室効果ガスを大気に追加することにより、地球温暖化の一因となっている可能性があることは、科学者らにより明らかにされている。二酸化炭素は、通常は宇宙空間に放出される熱を捕捉する。多くの温室効果ガスは自然に発生し、生命を維持するために十分地球を温暖とする温室効果を形成する上で必要であるが、人間による化石燃料の使用は、過剰な温室効果ガスの原因となり得る。車の運転、石炭火力発電所からの電気の使用、および石油または天然ガスによる家の暖房により、人間は二酸化炭素および他の温暖化ガスを大気中に放出する。木がより少ないということは、二酸化炭素から酸素への変換がより少ないということであるため、森林伐採も温室効果ガスの別の大きな原因である。
【0002】
150年という産業化時代にわたり、二酸化炭素の大気中濃度は31パーセント増加した。この傾向を覆す1つの手法は、炭素の酸化物を炭素および酸素に分解し得るシステムを導入することである。1つのアプローチは、光触媒の使用である。しかし、ほとんどの光触媒は紫外領域で機能し、非効率的であるか、または可視光を吸収しない。
【発明の概要】
【0003】
本明細書における実施形態は、(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、第1の成分と、(b)炭素の酸化物を吸着/吸収する、第2の成分と、(c)光励起電子を使用して炭素の酸化物を炭素および酸素に分解する、第3の成分とを含む光触媒複合材料に関する。例えば、第1の成分は、光触媒を含む。例えば、光触媒は、半導体を含む。例えば、光触媒は、オキシ硝酸チタンを含む。例えば、ある特定の最小バンドギャップは、少なくとも約3.4eVである。例えば、光触媒は、結晶質である。例えば、第2の成分は、I族またはII族の炭酸塩を含む。例えば、第2の成分は、CaCO、MgCO、NaCO、NaHCOまたはこれらの組合せを含む。例えば、第3の成分は、WC、TaO、Pd、Pt、Ru、Snまたはこれらの組合せを含む。
【0004】
別の実施形態は、基板と、(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、第1の成分と、(b)炭素の酸化物を吸着/吸収する、第2の成分と、(c)光励起電子を使用して炭素の酸化物を炭素および酸素に分解する、第3の成分とを含む光触媒複合材料と、を備える炭素隔離デバイスに関する。例えば、基板は、透明または不透明である。例えば、基板は、石英板、プラスチックシート、ガラスシート、家の壁、家の屋根、またはこれらの組合せを含む。例えば、デバイスは、基板と光触媒複合材料との間に導電層をさらに備えてもよい。例えば、導電層は、透明または不透明である。例えば、導電層は、金属層、インジウム・スズ酸化物層、酸化亜鉛層、酸化アルミニウム層、またはこれらの組合せを含む。
【0005】
さらに別の実施形態は、炭素の酸化物を光触媒複合材料に曝露することと、炭素の酸化物を分解して炭素および酸素を形成することとを含み、光触媒複合材料は、光励起電子を生成し、炭素の酸化物を吸着/吸収し、光励起電子を使用して炭素の酸化物をカーボンブラックおよび酸素に分解する、炭素隔離方法に関する。例えば、炭素の酸化物は、二酸化炭素、一酸化炭素、亜酸化炭素、またはこれらの組合せを含む。例えば、方法は、光触媒複合材料の表面からカーボンブラックを除去することをさらに含んでもよい。例えば、方法は、市街地、石炭、ガスもしくは石油火力発電所、家の屋根の上もしくは外壁上、オフィスもしくはホテル街、バス停、駐車場、またはこれらの組合せにおいて実行される。
【0006】
上記概要は、例示のみを目的とし、決して限定を意図するものではない。上記の例示的な態様、実施形態および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態および特徴が、図面および以下の発明を実施するための形態を参照することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】光触媒複合材料試料でコーティングされた基板を有する炭素隔離デバイスの例を示す図である。
【図2】光触媒複合材料試料のSEM画像および試料のXRD EDAXスペクトルである。
【図3】光触媒複合材料試料のラマンスペクトルおよびFTIRスペクトルである。
【図4】光触媒複合材料試料のXRDスペクトル(バンドギャップは、透過率スペクトル(UV−Visスペクトル)から計算した)である。
【図5】日光およびCO2の存在下での光触媒複合材料試料の電流−電圧(I−V)特性である。
【図6】光触媒複合材料試料でコーティングされた基板を有する炭素隔離デバイス試料を含有する炭素隔離デバイスチャンバの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「触媒」という用語は、それ自体はいかなる変化も生じずに化学反応速度を増加させる物質を指す。
【0009】
「光触媒」という用語は、光触媒反応の発生を補助する触媒を指す。
【0010】
「潜在性熱触媒(latent thermal catalyst)」という用語は、第1の高温では潜在性であるが、第1の温度よりごく僅かに高い第2の温度で急速に活性化される触媒を指す。
【0011】
エネルギーギャップまたはバンドギャップ(band gap)とも呼ばれる「バンドギャップ(bandgap)」は、電子状態が存在しない固体内のエネルギー範囲である。
【0012】
「金属」は、その価電子帯と伝導帯との間にバンドギャップを有さない材料を指す。金属において、価電子帯および伝導帯は重なっている。
【0013】
「半導体」という用語は、その価電子帯と伝導帯との間に、300Kにおいて0eVを超え約10eV未満であるバンドギャップを有する材料を指す。半導体の場合、バンドギャップは、一般に、価電子帯の最上部と伝導帯の最下部との間のエネルギー差(電子ボルト単位)を指す。バンドギャップは、外殻電子をその核周囲の軌道から解放し、固体材料中で自由に移動できる可動電荷担体とするために必要なエネルギーの量である。
【0014】
「量子効率」という用語は、電子−正孔対を生成する光触媒に衝突する光子の割合を指す。
【0015】
実施形態は、光触媒複合材料が炭素の酸化物および日光に曝露された際に、炭素の酸化物を炭素(または別の炭素の酸化物)および酸素に分解する光触媒複合材料に関する。炭素の酸化物は、一酸化炭素CO、二酸化炭素CO2、および亜酸化炭素C3O2であってもよい。
【0016】
実施形態の光触媒複合材料は、(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、半導体等の光触媒である第1の成分と、(b)CO2を吸着/吸収する、第2の成分(一般にI族およびII族の炭酸塩)と、(c)光励起電子を使用してCO2を炭素および酸素に分解する、潜在性熱触媒である第3の成分とを含み得る。第1の成分および第2の成分は、光触媒複合材料中に異なる不均一相として存在し得る。
【0017】
一実施形態において、光触媒は、少なくとも約3.4eVのバンドギャップを有し、これが炭素の酸化物を分解するための十分な電力を生成する。以下は、少なくとも約3.4eVのバンドギャップを有するいくつかの材料である。
【0018】
【表1】

【0019】
実施形態において、光触媒は非晶質であってもよく、それにより光励起電子と正孔の再結合が回避される。光励起電子と正孔の再結合が実質的に防止される結晶構造もまた使用され得る。光励起電子と正孔の再結合が実質的に防止される、本明細書の実施形態の結晶構造は、炭素の酸化物を分解するための十分な電力を有する自由光励起電子を生成する結晶構造である。オキシ硝酸チタンが、そのような結晶構造の一例である。
【0020】
全ての半導体が光触媒であるわけではない。また、全ての光触媒が可視領域内で触媒として効率的に機能するわけではない。成分1、2および3の材料の例示的な選択は、光触媒により吸収されるエネルギーが炭素−酸素間結合を切断するのに十分となるように、太陽放射エネルギーを可能な限り捕捉するような選択とすることができる。価電子帯と伝導帯との間のエネルギー差、すなわちバンドギャップは、どれ程の太陽エネルギーが吸収されるか、およびどれ程の電気エネルギー(光励起電子)が生成されるかを決定付け、一般にバンドギャップが大きい程、より良好な光励起電子生成の性能が得られる。
【0021】
第1の成分は、良好な量子効率を提供するある特定の最小バンドギャップおよび結晶構造を有する材料であってもよい。例えば、最小バンドギャップは、オキシ硝酸チタン(TiOxNy)の最小バンドギャップであってもよい。TiOxNyより大きいバンドギャップを有するその他の材料があり、第1の成分として使用することができる。ある特定の最小バンドギャップおよび結晶構造を有する第1の成分に加えて、第1の成分の選択のための他の因子は、原材料の安価な入手可能性、製造/加工および取り扱いの容易性、ならびに非毒性である。
【0022】
第2の成分は、CO2を吸着および/または吸収すること、長期間にわたり劣化しない(すなわち良好な長期安定性を有する)こと、および好ましくは、多孔質、安価、製造および取り扱いが容易、ならびに非毒性であることという基準を満たす材料とすることができる。CaCO3および/またはMgCO3だけでなく、Na2CO3およびNaHCO3等の他の材料もまた、第2の成分として使用することができる。
【0023】
一実施形態において、第3の成分は、光励起電子を使用してCO2を炭素および酸素に分解する、潜在性熱触媒である材料である。WC(炭化タングステン)だけでなく、TaO2(酸化タンタル)、Pd、Pt、Ru、Sn等の他の材料も、第3の成分として使用することができる。
【0024】
一実施形態において、光触媒複合材料は、TiOxNy(x=4.7、4.1、4.3、4.5;y=1.39、1.0、1.1、1.2、1.3)を含む第1の成分、CaCO3および/またはMgCO3を含む第2の成分、ならびにWCを含む第3の成分のクラスタまたは粒子を含む。TiOxNyおよびCaCO3は、異なる不均一相のクラスタまたは粒子の形態であってもよい。光触媒複合材料構造は、約400nm〜1000nmのサイズであってもよく、TiOxNyは約40nm〜100nmのサイズを、CaCO3またはMgCO3は約35nm〜900nmのサイズを有していてもよい。例えば、光触媒複合材料構造は、約500nmのサイズであってもよく、TiOxNyは約50nmのサイズを、CaCO3またはMgCO3は約450nmのサイズを有していてもよい。
【0025】
実施形態の光触媒複合材料は、以下の利点を有する。
(1)光励起電子と正孔の再結合が実質的に発生しない。再結合は、結晶の欠陥に起因して結晶構造内で生じる。
(2)光触媒の同じ場所での酸化および還元反応の同時進行が実質的に発生しない。同じ場所での同時酸化還元反応は、酸化還元電位をもたらし、これは非効率的な触媒活性をもたらし得る。実施形態において、光触媒は、光触媒の同じ場所での同時酸化還元反応をもたらさない。
(3)可視光照射における光触媒活性。
(4)エネルギー変換の高い量子効率。例えば、TiOxNyの量子効率は、快晴日の入射日光で100cm2で約75%であり、電力は約7.5ワットである。
(5)サイズ制御クラスタまたはサイズ制御粒子の容易な堆積。
【0026】
他の実施形態は、基板と、本明細書において開示される実施形態の光触媒複合材料とを備える炭素隔離デバイスに関する。基板は、透明または不透明であってよい。
【0027】
炭素隔離デバイスの一実施形態において、基板と光触媒複合材料との間に導電層が位置してもよい。導電層は、透明導電層または不透明導電層であってもよい。透明基板および透明導電層を使用して、透明導電層および光触媒複合材料を基板の両面に適用して日光に曝露することができる。家の外壁または屋根等の不透明基板を使用して、不透明導電層および光触媒複合材料を基板の片面に適用することができる。
【0028】
一般に、基板は、特に、石英板、ガラス、プラスチック、または家の外壁もしくは屋根等の任意の非導電性材料であってもよい。導電層は、金属層またはITO(インジウム・スズ酸化物)、酸化アルミニウムまたは酸化亜鉛層等の透明導電層であってもよい。
【実施例】
【0029】
炭素隔離デバイスの一例を、図1に示す。図1の左に、片側から日光(4)に曝露される片面炭素隔離デバイスを示す。図1の右に、両側から日光(4)に曝露される両面炭素隔離デバイスを示す。炭素隔離デバイスは、石英基板(1)、インジウム・スズ酸化物(ITO)の透明導電層(2)、および光触媒複合材料層(3)を備える。図1の例において、TiOxNy、CaCO3およびWCを含む複合材は、複合材の溶媒混合物を石英基板上に溶媒キャストおよびスプレーコーティングすることにより調製することができる。約3.4eVのバンドギャップエネルギーのTiOxNyは、太陽からの光子の吸収後、光励起電子を生成する。炭酸カルシウムは、酸化炭素(CO2およびCO)を吸収するための細孔を含有し得る。CO2およびCOの結合エネルギーは、187Kcal/molである。吸収された酸化炭素は、TiOxNy半導体材料により生成された高エネルギー光励起電子により分解される。
【0030】
図1のデバイスは、以下のように作製した。約100オームの抵抗を有するインジウム−スズ(90:10)を使用して、透明導電性酸化物(ITO)薄膜等の導電膜を、石英板、プラスチック板、ガラス板等の透明板上に調製した。プロセスおよび光触媒複合材料(後述)を、透明導電性酸化物コーティング表面に適用した。導電膜の目的は、TiOxNyからCaCO3に電子またはイオンを輸送することである。
【0031】
TiOxNy(x=4.7、y=1.39)、CaCO3およびWCを有する光触媒複合材料を作製し、所望の表面(すなわち、ITOコーティングガラス表面)上にコーティングするためのプロセスは、以下のステップで説明される。
1)5重量%の炭酸カルシウムおよび2重量%の炭化タングステンを、30mlの2Mアンモニアおよび20mlの5%氷酢酸を含む溶液が入った丸底フラスコに入れる。
2)上記組成物を撹拌する。
3)5.9mlの20mmolチタン−テトラ−イソプロポキシドを一滴ずつ添加する。
4)真空スプレーコーティングチャンバ内の空気不含環境下、430℃の温度で、ITOガラスまたは任意の他の好適な基板/任意の表面上にスプレーコーティングする。
【0032】
【化1】

【0033】
実施形態は特定の反応スキームに限定されないが、光触媒複合材料の作製プロセスの1つの可能な反応スキームは、以下の通りである。
【0034】
【化2】

【0035】
ボールミル法および電子スピンコーティング法等の他の方法も使用可能である。
【0036】
スプレーコーティングした炭素隔離デバイスを試験し、結果は以下の通りである。
【0037】
光触媒複合材料試料中のTiOxNy光触媒の結晶性は、SEM画像化により検証し、EDAX/XRD(エネルギー分散分光法/X線回折)スペクトル(図2)を使用して分析した。XRDスペクトルの目的は、光触媒複合材料試料中のTiOxNy光触媒が結晶質か、または非晶質か、または多結晶質かを調べることであった。
【0038】
図3は、光触媒複合材料のラマンスペクトルおよびFTIRスペクトルを示す。図4は、FEI量子FEG200−HRSEMを使用して得られたEDAX/XRDスペクトルを示す。透明性およびバンドギャップは、UVスペクトル(JASCO−V−530)(図5)により測定した。図2〜5において、TCCPという用語は、チタンカルシウムカーボネート系光触媒(Titanium Calcium Carbonate based Photo catalyst、TCCP)を指す。
【0039】
光触媒は一般に非晶質材料であるが、TiOxNyは結晶質材料である。図2は、光触媒複合材料中に存在する組成を示す。図3は、COOH、OH、NH2およびSH等の官能基の存在を示す。図4は、光触媒複合材料試料の結晶性を示す。図5は、日光およびCO2に曝露された際の光触媒複合材料の電流−電圧(I−V)特性により測定された、得られる光触媒活性を示す。生成された光励起電子は、炭素および酸素の分解に利用された。したがって、図5中のピークは下向きである。炭素隔離デバイスのコーティングがデバイス表面上への炭素の堆積により黒色になると、光励起電子はCO2から炭素および酸素への分解に利用されないため、ピークのピーク高さは減少を続けた。
【0040】
図2〜5に示されたデータから、結論として、TiOxNyのバンドギャップは、UV−Visスペクトルを吸収するのに十分であると判断することができ、図5aは、日光の存在下での電子の生成を示す半導体材料の機能性を示し、図5bは、日光およびCO2両方への光触媒複合材料の断続的な曝露を示し、図5cは、CO2の分解を示しているが、これはさらにカーボンブラックの形成として検証された。
【0041】
図1は、光触媒複合材料試料でコーティングされた基板を有する炭素隔離デバイス試料の概略図を示す。図6は、光触媒複合材料試料でコーティングされた基板を有する炭素隔離デバイス試料(12)を含有する炭素隔離デバイスチャンバ(11)の例を示す。炭素隔離デバイスチャンバは、典型的には、二酸化炭素入口(13)および酸素出口(14)を有する透明チャンバである。
【0042】
上記で説明したように調製した光触媒複合材料試料を日光に曝露し、長期間にわたり、光触媒複合材料の表面を柔らかい刷毛で掃くことにより、炭素の回収を蓄積した。
【0043】
上述の光触媒複合材料には、以下の様々な用途がある。
(1)CO2からその構成物質であるCおよびO2またはCOへの分解。
(2)大規模に展開した場合、現在の地球温暖化という気候的危機を軽減し得る大気中CO2の低減。
(3)本アプローチにおいて使用される単純なプロセスおよび材料と比較するとコスト構造に起因して高価である、ケイ素系アプローチの代替。
(4)カーボンクレジットを請求するための、市街地、CO2を生成する石炭/ガス/石油火力発電所、家屋の屋根の上および家屋の外壁上、オフィス/ホテル街、ならびにバス停/駐車場等の様々な場所における、光触媒複合材料単独、またはソーラーパネルのパネル技術と併せた導入。
【0044】
発明を実施するための形態において、本発明の一部を成す添付の図面が参照される。図面において、文脈により異なる解釈が必要とされない限り、類似の符号は、典型的には類似の構成要素を指している。発明を実施するための形態、図面、および特許請求の範囲に記載される例示的実施形態は、限定を意図しない。本明細書に示される主題の精神または範囲から逸脱せずに、他の実施形態が利用されてもよく、他の変更がなされてもよい。本明細書において概説され、図に示されるような本開示の態様は、多種多様な構成で配設、置換、結合、分離、および設計することができ、その全てが本明細書において明示的に企図されることが、容易に理解される。
【0045】
本開示は、本出願において記載される、様々な態様の例示として意図される特定の実施形態に関して制限されない。当業者に明らであるように、本開示の精神および範囲から逸脱せずに、多くの修正および変形を行うことができる。本明細書において列挙された方法および装置に加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法および装置が、上記説明から当業者に明らかである。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。本開示は、添付の特許請求の範囲の条件、およびそのような特許請求の範囲の対象となる均等物の全範囲によってのみ制限される。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生体系に限定されず、当然ながら変動し得ることを理解されたい。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的とし、限定を意図しないことを理解されたい。
【0046】
本明細書における実質的にすべての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、当業者は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することができる。さまざまな単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。
【0047】
通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることが、当業者には理解されよう(例えば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む実施形態に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0048】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して説明される場合、本開示がまたマーカッシュ群の任意の個々の要素または要素の部分集合に関しても説明されることが、当業者に理解される。
【0049】
当業者に理解されるように、ありとあらゆる目的において、例えば文章による説明の提供に関して、本明細書において開示された全ての範囲は、そのありとあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組合せをも包含する。任意の列挙された範囲は、少なくとも等価な2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分割された同じ範囲についても十分に説明するものであり有効であることが、容易に理解され得る。制限されない例として、本明細書において議論される各範囲は、下限側の3分の1、中間の3分の1、および上限側の3分の1等に容易に分割され得る。同じく当業者に理解されるように、「〜まで」、「少なくとも」、「〜を超える」、「未満」等の用語は全て、挙げられた数を含み、上述のような部分範囲に実質的に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解されるように、範囲は、個々の要素のそれぞれを含む。したがって、例えば、1〜3個のセルを有する群は、1個、2個または3個のセルを有する群を指す。同様に、例えば、1〜5個のセルを有する群は、1個、2個、3個、4個または5個のセルを有する群を指す。
【0050】
本明細書において様々な態様および実施形態が開示されたが、他の態様および実施形態も当業者に明らかである。本明細書において開示された様々な態様および実施形態は、例示を目的とし、限定を意図せず、真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、第1の成分と、
(b)炭素の酸化物を吸着/吸収する、第2の成分と、
(c)光励起電子を使用して炭素の酸化物を炭素および酸素に分解する、第3の成分と
を含む光触媒複合材料。
【請求項2】
第1の成分が、光触媒を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
光触媒が、半導体を含む、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
光触媒が、オキシ硝酸チタンを含む、請求項2に記載の材料。
【請求項5】
ある特定の最小バンドギャップが、少なくとも約3.4eVである、請求項1に記載の材料。
【請求項6】
光触媒が、結晶質である、請求項2に記載の材料。
【請求項7】
第2の成分が、I族またはII族の炭酸塩を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項8】
第2の成分が、CaCO、MgCO、NaCO、NaHCOまたはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項9】
第3の成分が、WC、TaO、Pd、Pt、Ru、Snまたはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項10】
基板と、
(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、第1の成分と、
(b)炭素の酸化物を吸着/吸収する、第2の成分と、
(c)光励起電子を使用して炭素の酸化物を炭素および酸素に分解する、第3の成分と
を含む光触媒複合材料と
を備える、炭素隔離デバイス。
【請求項11】
基板が、透明または不透明な非導電性材料を含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
基板が、石英、プラスチック、ガラス、壁、屋根、またはこれらの組合せである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
基板と光触媒複合材料との間に導電層をさらに備える、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
導電層が、透明または不透明である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
導電層が、金属層、インジウム・スズ酸化物層、酸化亜鉛層、酸化アルミニウム層、またはこれらの組合せを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
炭素の酸化物を光触媒複合材料に曝露することと、炭素の酸化物を分解して炭素および酸素を形成することとを含み、光触媒複合材料は、光励起電子を生成し、炭素の酸化物を吸着/吸収し、光励起電子を使用して炭素の酸化物をカーボンブラックおよび酸素に分解する、炭素隔離方法。
【請求項17】
炭素の酸化物が、二酸化炭素、一酸化炭素、亜酸化炭素、またはこれらの組合せを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
光触媒複合材料が、
(a)光励起電子を生成し、可視光を吸収する少なくともある特定の最小バンドギャップおよび光励起電子と正孔の再結合を実質的に防止する構造を有する、第1の成分と、
(b)炭素の酸化物を吸着/吸収する、第2の成分と、
(c)光励起電子を使用して炭素の酸化物を炭素および酸素に分解する、第3の成分と
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
光触媒複合材料の表面からカーボンブラックを除去することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
炭素の酸化物を生成する領域において実行される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−508152(P2013−508152A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535962(P2012−535962)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054066
【国際公開番号】WO2011/051827
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(509348786)エンパイア テクノロジー ディベロップメント エルエルシー (117)
【Fターム(参考)】