説明

炭素含有供給原料からの低級オレフィンの製造方法

【課題】多数のプロセス工程及び輸送を一体化した、炭素質供給原料からのエチレン及び/又はプロピレンの製造法を提供する。
【解決手段】(aa)炭素質供給原料から一酸化炭素及び水素を製造する工程、(bb)工程(aa)で得られたガス状混合物を用いてフィッシャー・トロプシュ合成工程を行って、未転化の一酸化炭素及び水素を混合したフィッシャー・トロプシュ生成物を得る工程、(cc)工程(bb)の未転化一酸化炭素及び未転化水素と混合したフィッシャー・トロプシュ生成物を熱分解する工程を行う、炭素質供給原料からのエチレン及び/又はプロピレンの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素含有供給原料からの低級オレフィンの製造に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
メタンを低級オレフィンに転化する種々の方法が知られている。その一例は、メタンを合成ガスに転化し、次いでこれをフィッシャー・トロプシュ反応によりパラフィン生成物に転化する方法である。例えば前記フィッシャー・トロプシュ生成物から単離したナフサパラフィン生成物を水蒸気分解器の供給原料として用いると、低級オレフィンが製造できる。この方法は、工業的規模で適用される。例えば“The Markets for Shell Middle Distillate Synthesis Products”,Presentation of Peter J.A.,Tijm,Shell International Gas Ltd.,Alternative Energy ’95,バンクーバー,カナダ,May 2−4,1995、第5頁には、SMDSナフサ、即ち、シェルMDS法のフィッシャー・トロプシュ誘導ナフサフラクションは、例えばシンガポールでは水蒸気分解器供給原料として使用されていると述べている。
【特許文献1】US−A−4836831
【特許文献2】EP−A−759886
【特許文献3】EP−A−772568
【特許文献4】US−A−5803724
【特許文献5】US−A−5931978
【特許文献6】WO−A−03036166
【特許文献7】WO−A−2004092060
【特許文献8】WO−A−2004092061
【特許文献9】WO−A−2004092062
【特許文献10】WO−A−2004092063
【特許文献11】EP−A−0583836
【特許文献12】EP−A−776959
【特許文献13】EP−A−668342
【特許文献14】US−A−4943672
【特許文献15】US−A−5059299
【特許文献16】WO−A−9934917
【特許文献17】WO−A−9920720
【特許文献18】WO−A−200014179
【特許文献19】EP−A−532118
【特許文献20】US−A−6376732
【特許文献21】US−A−4498629
【非特許文献1】“The Markets for Shell Middle Distillate Synthesis Products”,Presentation of Peter J.A.,Tijm,Shell International Gas Ltd.,Alternative Energy ’95,バンクーバー,カナダ,May 2−4,1995、第5頁
【非特許文献2】C.Higman及びM.van der Burgtによる“Gasification”,Elsevier Science(米国),2003,ISBN 0−7506−7707−4、第4〜5章
【非特許文献3】Heurich等による“Partial Oxidation in the Refinery Hydrogen Management Scheme”,AICHE 1993,Spring Meeting,ヒューストン,1993年3月30日
【非特許文献4】Petroleum Review 1990年6月,311〜314頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記工業的方法では、ナフサ供給原料をフィッシャー・トロプシュ法で作り、水蒸気分解器に送り、ここで低級オレフィンを製造している。この方法は、かなり多数のプロセス工程及び輸送を含むので厄介である。したがって、更に一体化された方法が要求される。以下の方法は、まさにこのような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(aa)炭素質供給原料から一酸化炭素及び水素を製造する工程、
(bb)工程(aa)で得られたガス状混合物を用いてフィッシャー・トロプシュ合成工程を行って、未転化の一酸化炭素及び水素を混合したフィッシャー・トロプシュ生成物を得る工程、
(cc)工程(bb)の未転化一酸化炭素及び未転化水素と混合したフィッシャー・トロプシュ生成物を熱分解する工程、
を行うことを特徴とする炭素質供給原料からのエチレン及び/又はプロピレンの製造方法。
【発明の効果】
【0005】
出願人は、フィッシャー・トロプシュ合成生成物が熱分解工程の原料として直接、使用できることを見い出した。工程(bb)の流出流中に存在するガス状化合物を工程(cc)において希釈ガスとして使用すると、工程(bb)と工程(cc)間でこれらガスの分離が回避できる。更に好ましい実施態様を以下に検討する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
工程(aa)で使用される炭素質供給原料は、一酸化炭素と水素との混合物に転化可能ないかなる炭素含有流であってもよい。このような供給原料の例は、石炭、例えばアンスラサイト、褐炭、歴青炭、亜(sub−)歴青炭、亜炭、石油コークス、歴青油、例えばORIMULSION(Intevep S.A.ベネゼラの商標)、バイオマス、例えば木材チップ、鉱物原油又はそのフラクション、例えば前記原油の残留フラクション、及びメタン含有供給原料、例えば製油所ガス、炭田ガス、随伴ガス、天然ガスである。工程(aa)に使用可能な原料及び使用方法は周知で、C.Higman及びM.van der Burgtによる“Gasification”,Elsevier Science(米国),2003,ISBN 0−7506−7707−4、第4〜5章に記載されている。石炭又は石油コークスのように灰分含有原料を処理する際、工程(aa)はこの参考文献に記載される例えばShell石炭ガス化法のような非接触部分酸化で行うことが好ましい。供給原料が原油の残留フラクションであれば、好ましい方法は、前記参考文献に記載される例えばShell石炭ガス化法;Heurich等による“Partial Oxidation in the Refinery Hydrogen Management Scheme”,AICHE 1993,Spring Meeting,ヒューストン,1993年3月30日;及びPetroleum Review 1990年6月,311〜314頁に記載のTEXACO法に記載されるような非接触部分酸化を用いることである。好ましい実施態様では工程(aa)は、ガス状炭化水素原料、更に好ましくはメタン含有原料、なお更に好ましくは天然ガスから出発して行われる。
【0007】
ガス状炭化水素原料から出発すると、一酸化炭素と水素との混合物の製造に多くの方法が使用できる。好適な方法は、改質、水蒸気改質、自熱式水蒸気改質、対流式水蒸気改質、接触的又は非接触的部分酸化、及びこれら方法の組合せである。この種の方法は、例えばUS−A−4836831、EP−A−759886、EP−A−772568、US−A−5803724、US−A−5931978、WO−A−03036166、WO−A−2004092060、WO−A−2004092061、WO−A−2004092062及びWO−A−2004092063に記載されている。
【0008】
工程(aa)で得られる、合成ガスともいわれる水素と一酸化炭素との混合物は、工程(bb)で使用される。必要ならば、合成ガス製造法で得られる水素対一酸化炭素のモル比は特定のフィッシャー・トロプシュ触媒及び方法に適合させる。ガス化法により形成される合成ガスのH/COモル比は、一般に約1以下で、石炭誘導合成ガスについては普通、0.3〜0.6、重質残留物誘導合成ガスについては普通、0.5〜0.9である。工程(bb)では、このようなH/CO比を用いることは可能であるが、更に満足する結果は、H/CO比を増大して得られる。これは水性ガスシフト反応によるか、又は合成ガス混合物に水素を添加することにより、好適に達成できる。副流の組合せで形成される合成ガス流中のH/CO比は、1.5を超え、好ましくは1.6〜1.9、更に好ましくは1.6〜1.8である。
【0009】
工程(bb)ではフィッシャー・トロプシュ反応は、一酸化炭素及び水素を適当な触媒の存在下、通常、高温、例えば125〜300℃、好ましくは175〜200℃、及び/又は高圧、例えば5〜100バール、好ましくは12〜80バールで長鎖、通常、パラフィン系炭化水素に転化する。
n(CO+2H)=(−CH−)+nHO+熱
【0010】
通常、パラフィン系炭化水素のフィッシャー・トロプシュ合成用触媒は、触媒活性成分として、周期表第VIII族金属、特にルテニウム、鉄、コバルト又はニッケルを含む。このような触媒の好適例は、例えばEP−A−0583836に記載されている。フィッシャー・トロプシュ反応器は、例えば多管状反応器又はスラリー反応器であってよい。可能なフィッシャー・トロプシュ合成法の例は、例えばいわゆる商用Sasol法、Shell Middle Distillate Synthesis(SMDS)法又はExxonMobilのACG−21法により得られる。これらの方法及びその他の方法は、例えばEP−A−776959、EP−A−668342、US−A−4943672、US−A−5059299、WO−A−9934917及びWO−A−9920720に更に詳細に記載されている。通常、これらフィッシャー・トロプシュ合成生成物は、炭素原子数が1〜100、更には100を超える炭化水素を含有する。この炭化水素生成物は、イソパラフィン、n−パラフィン、酸素化生成物及び不飽和生成物を含有する。芳香族含有量は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満である。ナフテン系化合物の含有量は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満である。
【0011】
工程(bb)の直接生成物は、工程(cc)で使用することが好ましい。ここで直接生成物とは、フィッシャー・トロプシュ反応の合成生成物が水素化、水素化分解又は接触分解のような処理により化学的に変化されていないことを意味する。例えばフィッシャー・トロプシュ反応器では、ガス状生成物及び液体生成物が別々に得られ、工程(cc)において組合わせて又は単独で使用してよい。ガス状生成物は工程(cc)に直接、供給してもよく、一方、液体生成物からは、まず高沸点フラクションが分離され、工程(cc)の原料として使用される。こうすると、工程(cc)を以下に説明する熱分解炉中で行う場合に有利である。このような熱分解炉では、コークスの形成を減らすため、熱分解反応を気相で行うのに有利であることが見い出された。工程(cc)の条件下で蒸発しないフィッシャー・トロプシュ分子を分離すると、過剰なコークス形成は避けられる。
【0012】
好ましい実施態様では、フィッシャー・トロプシュ合成生成物中の高沸点化合物の分離は、工程(cc)で使用した希釈ガスの存在下で低沸点化合物をガス及び液体フラクション中に蒸発させ、更にこの液体フラクションを残りのガス及び低沸点化合物から分離して行われる。フィッシャー・トロプシュ反応器から直接、単離されたガス状フィッシャー・トロプシュ生成物も前記蒸発中、存在していることが好ましい。得られたガス/油混合物は、更に加熱してから、工程(cc)の実際の熱分解帯に供給することが好ましい。
【0013】
本発明方法は、工程(cc)で原料としてフィッシャー・トロプシュ合成生成物を使用する。フィッシャー・トロプシュ合成生成物は、100%フィッシャー・トロプシュ誘導原料としてそれ自体で存在してもよいし、或いは好ましい熱分解炉に使用可能な他の好適な供給原料との混合物で存在してもよい。このような追加の供給原料が存在する場合、本方法は、高沸点非蒸発性フラクションを含む供給原料で出発することが可能である。この非蒸発性フラクションを重質フィッシャー・トロプシュ生成物に加えて、前述の蒸発工程を行ってよい。このような追加の供給原料は、好適には以下の特性を有する軽質原油供給原料である。この供給原料の各沸点範囲の特徴は、 ASTM D−2887に従って測定して、供給原料の85重量%以下、好ましくは65重量%以下が350℃で気化し、供給原料の90重量%以下、好ましくは75重量%以下が400℃で気化する。通常の好ましい原油供給原料は、API比重が45未満である。前記特性範囲内の供給原料は、ここで説明する操作条件下で熱分解炉の対流部管内でコークス形成を最小化する。
【0014】
フィッシャー・トロプシュ誘導原料の次に存在できる他の好適な供給原料の好適例は、鉱油誘導のナフサ、ケロシン及びガス油である。追加の供給源は、好ましくは原油供給原料、原油の常圧蒸留のロング残留物(レシジュー)又はガス田凝縮物である。本発明に好適な原油供給源の例は、いわゆる蝋状原油、例えばGippsland、Bu Attifel、Bombay High、Minas、Cinta、Taching、Udang、Sirikit及びHandilである。この種の供給原料は、いわゆるピッチを含有するが、本発明方法により液体フラクションとして効果的に除去される。原油原料叉はガス田凝縮物生成物をフィッシャー・トロプシュ誘導生成物と組合わせて共(co−)処理すると、低級オレフィンの収率向上と共に、難事業遂行の利点及び炉のランレングス延長が同時に達成できるので有利である。フィッシャー・トロプシュ合成法は、通常、原油も見つかるような遠隔地域で天然ガスに対して行っている。これら炭化水素源を共処理すれば、難事業遂行及び汚染の問題は解消される。
【0015】
脱塩原油の処理及び分留に使用される常圧蒸留塔の残油は、普通、常圧塔底物又はロング残留物として知られている。このような常圧蒸留塔は、重油から、ディーゼル、ケロシン、ナフサ、ガソリン及び軽質成分を分離する。ロング残留物は、フィッシャー・トロプシュ生成物と有利に混合できる。ロング残留物の特性は、好ましくは35重量%以下、更に好ましくは15重量%以下、なお10重量%以下が350℃で気化し、好ましくは55重量%以下、更に好ましくは40重量%以下、なお30重量%以下が400℃で気化することである。
【0016】
前記蒸発工程での圧力及び温度は、供給原料が流動可能である限り、重要ではない。圧力は一般に7〜30バール、更に好ましくは11〜17バールの範囲であり、供給原料の温度は一般に周囲温度〜300℃、好ましくは140〜300℃に設定される。蒸発工程は、好ましくは熱分解炉対流帯の第一段予熱器中で行われる。供給速度は重要ではないが、1時間当たり供給原料17〜200トン、更に好ましくは25〜50トンの供給速度で行うのが望ましい。対流部中の第一段予熱器は、通常、複数管のバンク(bank)からなり、管中の内容物は、主として熱分解炉の放射部から出る燃焼ガスの対流的熱伝達により加熱される。一実施態様では、供給原料は、第一段予熱器を通過する際、コークス非形成性フラクションに対して蒸気状態への蒸発を促進すると共に、コークス形成性フラクションの一部に対しても蒸気状態への蒸発を促進しながら、同時に残部のコークス形成性フラクションに対して液体状態を維持する温度に加熱される。我々は、フィッシャー・トロプシュ供給原料を含む供給原料によって、第一段予熱器中でコークスの形成を促進しない原料フラクションを十分、蒸発させ、かつ第一段予熱器及び/又は第二段予熱器の管に対しコークスの形成を促進するフラクションからなる供給原料化合物の一部を更に蒸発させるのに十分高い温度を維持するのが望ましいことを見い出した。第一段予熱器管でのコークス形成現象は、これら加熱管の管壁上に濡れ表面を維持することにより、実質的に少なくなる。加熱面が十分な液体表面速度で濡れている限り、これら表面のコークス形成は防止される。
【0017】
対流帯の第一段予熱器で加熱する供給原料の最適温度は、特定の供給原料組成、第一段予熱器での供給原料の圧力、及び蒸気/液体分離器の性能及び操作に依存する。本発明の一実施態様では、第一段予熱器の供給原料は、出口温度で375℃以上、更に好ましくは400℃以上に加熱される。一実施態様では、第一段予熱器の出口温度は、415℃以上である。第一段予熱器内の供給原料の出口温度は、好ましくは約520℃以下、最も好ましくは500℃以下である。
【0018】
第一段予熱器で前述のように同定される温度はいずれも、第一段予熱器の出口を含む第一段予熱器内のいかなる箇所でも、この気体−液体混合物が達する温度として測定される。供給原料の温度は、供給原料が第一段予熱器を出るまで管内を流れる際、一般に上昇する連続体(continuum)に亘って変化することが認められているので、第一段予熱器管内の供給原料の温度は、熱分解炉対流帯の第一段予熱器出口で測定することが望ましい。出口温度では、コークス形成促進性フラクションは、気相に蒸発しながら、残部のコークス形成促進性フラクションは、全ての加熱面の管壁を十分、濡らすため液相に維持する。蒸発工程で蒸発後の気体−液体比(重量)は、十分に濡れた管壁を維持し、コークスの形成を最小限にし、かつ収率を促進、向上するために、好ましくは60/40〜98/2、更に好ましくは90/10〜95/5の範囲である。
【0019】
本発明の任意であるが好ましい実施態様では、フィッシャー・トロプシュ合成生成物中に既に存在していなければ、未転化の一酸化炭素及び水素を含む希釈ガスが、装置のメンテナンス及び交換が容易なことから、熱分解炉の外部の箇所で第一段予熱器の供給原料に添加される。前記蒸発工程の前に追加の希釈ガスを添加することが好ましい。追加の希釈ガスは、任意の水素化転化法における再循環二酸化炭素又はオフガスであってよい。
【0020】
希釈ガス原料は、管内の供給原料の流れ体制を維持する助けともなり、これにより管は濡れた状態に維持され、また層別流は回避される。未転化の水素及び一酸化炭素の次に存在してよいガスの例は、希釈流(その露点での飽和流)、メタン、エタン、窒素、水素、天然ガス、乾燥ガス、又は気化ナフサである。好ましい追加ガスは、希釈流、二酸化炭素、気体乃至液体(gas−to−liquid)プラントのオフガス、更に好ましくはプロパン含有オフガス、気化ナフサ又はそれらの混合物である。
【0021】
工程(cc)に使用される希釈ガスとしての工程(bb)の未転化の水素及び一酸化炭素は、工程(cc)で行ってよい通常の熱分解法のいわゆるコールドボックス中で有利に回収できる。こうして得られた精製合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ合成工程(bb)に再循環することが好ましい。或いは好適には合成ガス製造工程(aa)に再循環してもよい。
【0022】
希釈ガス中に二酸化炭素が存在すれば、熱分解工程(cc)で部分的に一酸化炭素に転化される。したがって、工程(cc)の方法で単離された二酸化炭素を添加すると、今度は二酸化炭素を、工程(bb)で使用可能な一酸化炭素に転化する方法が得られる。二酸化炭素の一供給源は、好ましくはCO吸収器で分解流出流から分離された二酸化炭素である。この二酸化炭素は、前述の蒸発工程に再循環することが好ましい。一酸化炭素及び水素は、分解ガスからメタンと一酸化炭素と水素との混合物として分離するのが好ましい。この精製工程では、比較的純粋なメタン流も得られる可能性がある。通常の熱分解法では、このメタンは加熱炉の燃焼に使用される。本方法では、このメタンは、好適には水蒸気改質による水素の製造法で水素を製造する原料として使用するか、或いは一酸化炭素及び水素を製造するため、工程(aa)の原料に添加することが好ましい。
【0023】
他の好ましい実施態様では、蒸発工程で得られた液体フィッシャー・トロプシュフラクションに対しマイルドな熱分解法を行う。マイルドな熱分解法は、好ましくは希釈ガスの不存在下で行ういかなる公知のマイルドな熱分解法であってもよい。極めて好適には、この熱分解法は炉分解法であるが、好ましくはソーカービスブレーキング法である。ソーカービスブレーキング法では原料は、炉中で好適には380〜500℃、好ましくは400〜480℃の温度で、好適には滞留時間5分以内、好ましくは3分以内、加熱した後、更にソーカー容器中で更に転化する。ソーカー容器での滞留時間は、好適には0.5〜2時間である。圧力は、通常、3〜5バールである。550℃を超える沸点を有する材料が550℃未満の沸点を有する材料に転化して得られる転化率は、好適には20重量%以上、好ましくは60重量%以上である。転化率は、550℃を超える沸点を有する材料に対し、特に30〜98重量%、好ましくは60〜95重量%である。沸点が750℃を超える材料の99重量%以上は、除去することが好ましく、更に好ましくは沸点が650℃を超える材料の99重量%以上は除去する。炉分解の場合、温度は好適には420〜540℃、好ましくは460〜520℃、圧力は好適には5〜50バール、好ましくは15〜20バール、滞留時間は通常、1〜15分、特に4〜12分である。添加水準は、ソーカー法と同様である。
【0024】
マイルドな熱分解で得られた生成物は、工程(cc)に再循環することが好ましい。この生成物は、好ましくは軽質フラクションと重質フラクションとに分離され、更に好ましくはこの分離は、前述の蒸発工程で行う。或いは分離は、フラッシュ分離により行ってよい。軽質フラクションの沸点は、好適には450℃以下、好ましくは500℃以下、更に好ましくは550℃以下又は更に650℃以下である。重質フラクションは、マイルドな熱分解工程に再循環してよい。再循環の場合、この流れの5〜40重量%をブリード流として除去することが好ましい。このようなブリード流は、マイルドな熱分解工程又は第二分解工程での燃料として有利に使用される。
本発明の別の実施態様では、マイルドな熱分解工程で得られた生成物は、工程(cc)で使用する前に、水素化してよい。
【0025】
他の実施態様では、蒸発工程で得られた液体フィッシャー・トロプシュフラクションに対し、好ましくは接触分解法、例えば流動接触分解(FCC)法を行う。この方法は、フィッシャー・トロプシュ誘導原料の水素化処理を含む慣用の方法に比べて比較的高オクタン価のガソリンが得られる可能性があるので、有利である。前記方法で得られたガソリンよりも高沸点の生成物は、工程(cc)に有利に再循環できる。このような接触分解法では、好ましくは原料は、450〜650℃の温度で触媒と接触させる。更に好ましくはこの温度は475℃を超える。余分なガス状化合物への過剰分解を避けるため、この温度は600℃未満が好ましい。この方法は各種の反応器で行ってよい。石油誘導原料に対して操作するFCC法に比べてコークスの生成が比較的少ないことから、この方法は、固定床反応器で行うことが可能である。しかし、触媒を更に簡単に再生可能にするには、流動床反応器又は立上り管反応器が好ましい。この方法を立上り管反応器で行う場合、好ましい接触時間は、1〜10秒、更に好ましくは2〜7秒である。触媒対油比は、好ましくは2〜20kg/kgである。良好な結果は、15kg/kg未満、更には10kg/kg未満の低触媒対油比で得られることが見い出された。
【0026】
この接触分解工程で使用される触媒系は、少なくとも母材及び大細孔モレキュラーシーブを含む。好適な大細孔モレキュラーシーブは、ホウジャサイト型、例えばゼオライトY、超安定ゼオライトY及びゼオライトXである。母材は好ましくは酸性母材である。好適な触媒の例は、市販のFCC触媒である。この触媒系は、ガソリンフラクションの他、プロピレンを高収率で得るためにも、中間細孔サイズのモレキュラーシーブも含むと有利である。好ましい中間サイズのモレキュラーシーブは、ゼオライトβ、エリオナイト、フェリエライト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23又はZSM−57である。この方法で存在するモレキュラーシーブ全量に対する中間細孔結晶の重量分率は、好ましくは2〜20重量%である。
【0027】
他の好ましい実施態様では、蒸発工程で得られた液体フィッシャー・トロプシュフラクションに対し水素化転化/水素化異性化工程を行って、全体として又は部分的に工程(cc)において追加の原料として使用できる流出流を得ることが好ましい。この流出流からは、ナフサ、ケロシン及び/又はガス油生成物が単離され、燃料生成物又は燃料成分として使用される。この水素化転化/水素化異性化工程は、好ましくは水素及び触媒の存在下で行われる。触媒は、この反応に好適であるものとして当業者に知られているものから選択できる。触媒は、通常、酸性官能価及び水素化/脱水素化官能価を有する非晶質触媒である。好ましい酸性官能価成分は、耐火性金属酸化物担体である。好適な担体材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア及びそれらの混合物が挙げられる。本発明方法で使用される触媒に含まれる好ましい担体材料は、シリカ、アルミナ及びシリカ−アルミナである。特に好ましい触媒は、シリカ−アルミナ担体上に白金を担持して構成される。環境上の理由から一般的には好ましくないが、所望ならば、担体にハロゲン部分、特に弗素又は塩素を適用して、触媒担体の酸性度を高めてもよい。好適な水素化分解/水素化異性化方法及び好適な触媒は、WO−A−200014179、EP−A−532118及び前述のEP−A−776959に記載されている。
【0028】
好ましい水素化/脱水素化官能価成分は、第VIII族非貴金属、例えばWO−A−0014179、US−A−5370788又はUS−A−5378348に記載されるように、ニッケルであり、更に好ましくは第VIII族貴金属、例えばパラジウム、最も好ましくは白金である。触媒は、水素化/脱水素化活性成分を担体材料100重量部当り0.005〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部含んでよい。水素化転化段階で使用される特に好ましい触媒は、白金を担体材料100重量部当り0.05〜2重量部、更に好ましくは0.1〜1重量部の量で含有する。触媒の強度を高めるため、触媒は、バインダーを含んでもよい。バインダーは、非酸性であってよい。これらの例は、当業者に公知の粘土、及びその他のバインダーである。好ましくは触媒は実質的に非晶質であり、これは触媒中に結晶相が存在しないことを意味する。水素化転化/水素化異性化工程では、高沸点フィッシャー・トロプシュフラクションは、高温高圧下、触媒の存在下に水素と接触させる。温度は通常、175〜380℃、好ましくは250℃より高く、更に好ましくは300〜370℃の範囲である。圧力は通常、10〜250バール、好ましくは20〜80バールの範囲である。水素は、ガスの1時間当り空間速度 100〜10000Nl/l/hr、好ましくは500〜5000Nl/l/hrで供給してよい。炭化水素原料は、重量の1時間当り空間速度 0.1〜5kg/l/hr、好ましくは0.5kg/l/hrを超え、更に好ましくは2kg/l/hr未満で供給してよい。水素と炭化水素原料との比は、100〜5000Nl/kgの範囲が可能で、好ましくは250〜2500Nl/kgである。
1パス当り370℃よりも高い沸点を有する原料が、370℃より低い沸点を有するフラクションまで反応する重量パーセントとして定義する転化率は、好ましくは少なくとも20重量%、更に好ましくは少なくとも25重量%であるが、好ましくは80重量%以下である。
【0029】
ガス油が優れた自動車燃料成分であることは、例えばShell MDSマレーシアの経験から周知である。しかし、ナフサはオクタン価が低いため、ガソリンのブレンド成分として直接、使用できない。出願人は、このナフサ生成物を、工程(cc)の流出流から単離した、熱分解ガソリンとも言われるガソリンフラクションとブレンドすると、オクタン価の点で良好なガソリン生成物が得られることを見い出した。好ましい実施態様では、この熱分解ガソリンは、前述の水素化転化/水素化異性化工程に供給する。これにより、最終ブレンドの収率に悪影響を与えることなく、最終ガソリンブレンドのオレフィン含有量が有利に低下することを見い出した。したがって、本発明は、いかなる種類の水蒸気分解法でも得られる熱分解ガソリン生成物をフィッシャー・トロプシュ誘導原料に添加し、引続きこの混合物に対し、水素化転化/水素化異性化工程(好ましい触媒及び反応条件については先に詳細に説明した)を行う更に一般的な方法にも向けたものである。
【0030】
熱分解ガソリンは、前述の可能な接触分解法で得られるガソリンフラクションと有利にブレンドできる。
他の好ましい実施態様では、蒸発工程で得られ液体フィッシャー・トロプシュフラクションは、合成ガスに転化するため工程(aa)に再循環するか、或いは工程(cc)の好ましい実施態様で使用される熱分解炉を燃焼させるため使用される。後者は、この方法を慣用の燃料が容易に入手できない環境下で行う場合に有利である。例えば工程(aa)の出発炭素質原料が石炭の場合、水素又は一酸化炭素と水素との混合物を製造すると共に、残りの高沸点フィッシャー・トロプシュフラクションを前記熱分解炉に燃料として使用するため、供給原料として分解流出流から分離したメタンを使用することが更に好ましい。
【0031】
フィッシャー・トロプシュ生成物に希釈ガスを添加する場合、希釈ガスの温度は、この流れをガス状態に維持するのに十分な最低温度である。希釈ガスの温度は、流れをガス状態に維持するのに十分な最低温度である。希釈ガスについては、水の凝縮を確実に阻止できるように、注入箇所で測定した原油供給原料の温度よりも低い温度で添加するのが好ましい。この水は、希釈ガス自体であってもよいし、或いは前述の希釈ガスの幾つかに汚染物として存在してもよい。この温度は、更に好ましくは、注入箇所での供給原料の温度よりも25℃以上低い。希釈ガス/供給原料接点での希釈ガスの温度は、通常、140〜260℃、更に好ましくは150〜200℃の範囲である。
【0032】
希釈ガスの圧力は、特に限定されないが、好ましくは注入するのに十分な圧力である。原油に添加する希釈ガスの圧力は、一般に6〜15バールの範囲内である。第一段予熱器への希釈ガスの添加量は、原油1kg当たりガス、0.5以下:1kg(up to 0.5:1kg of gas)が望ましく、好ましくは原油及び/又はロング残留物供給原料1kg当たりガス、0.3以下:1kgである。この油は、フィッシャー・トロプシュ生成物及び任意に追加の鉱物原料である。
【0033】
炭化水素供給原料は、気体−液体混合物を作るため、一旦、加熱した後、第一段予熱器から取出し、加熱気体−液体混合物として直接又は間接的に蒸気/液体分離器に送られる。蒸気/液体分離器は供給原料の非気化部分を除去し、非気化部分は、供給原料の完全に気化したガスから取出され分離される。蒸気/液体分離器は、サイクロン分離器、遠心機、又は重質油の処理に普通、使用されている分別装置等、いずれの分離器であってもよい。蒸気/液体分離器は、分離器の頂部から蒸気が出て、分離器の底部から液体が出る側方供給口を受容するか、或いは分離器の側方から生成物ガスが出る頂部供給口を受容するように構成できる。
【0034】
蒸気/液体分離器の操作温度は、気体−液体混合物の温度を375〜520℃、好ましくは400〜500℃の範囲内に維持するのに十分な温度である。この蒸気/液体温度は、蒸気/液体分離器行きの気体−液体混合物への過熱希釈ガス流を増やす、及び/又は炉の供給原料の温度を外部熱交換器で上げる等、いずれの手段によっても調節できる。好ましい実施態様では、US−A−6376732(この文献はここに援用する)に記載されるような蒸気/液体分離器が使用される。
【0035】
第一段予熱器から気体−液体混合物として蒸気/液体分離器に供給する原料のガス状気化部分は、好ましくは引き続き気化混合器に供給される。気化混合器では、蒸気は過熱ガス、好ましくは過熱水蒸気と混合して、高温に加熱される。蒸気中の炭化水素の部分圧を低下させ、これにより流れを確実にガス状態に保持するため、蒸気は過熱ガスと混合することが望ましい。蒸気/液体分離器を出る蒸気は飽和しているので、過熱ガスを添加すると、蒸気中のコークス形成性フラクションが蒸気/液体分離器と第二段予熱器とを接続する未加熱の外部配管内面で凝縮する可能性は最小となる。過熱ガスの好適な温度は、上限については特に限定されないが、好適には、蒸気の露点よりも高温に過熱するのに十分な温度である。一般に過熱ガスは、約450〜600℃の範囲の温度で気化混合器に導入される。
【0036】
気化混合器は、メンテナンスが容易なことから、熱分解炉の外部に配置することが好ましい。従来のいずれの混合ノズルも使用できるが、US−A−4498629(ここに全体を援用する)に記載されるような混合ノズルを使用するのが好ましい。
【0037】
本方法を実質的に100%のフィッシャー・トロプシュ誘導原料に対し操作する場合、原料に若干の硫黄源を添加することが好ましい。好ましい実施態様では、硫黄成分、例えばDMDSは、蒸発工程を行った後、熱分解反応を行う前に添加される。そうすると、蒸発工程で得られた液体フラクションに硫黄は添加しないので有利である。この硫黄を含まない高沸点フィッシャー・トロプシュ生成物は、気体乃至液体生産設備の水素化転化/水素化異性化工程に、該設備を硫黄で汚染することなく、有利に再循環できる。
【0038】
蒸発工程で得られる気体/気体混合物の温度は、熱分解工程を行う前に、更に上げられる。気体/気体混合物の該加熱工程での出発温度は、好ましくは480℃以上、更に好ましくは510℃以上、最も好ましくは535℃以上である。加熱工程を行った後の気体/気体混合物の温度は、好ましくは730℃以上、更に好ましくは760℃以上、最も好ましくは760〜815℃である。加熱工程は、好ましくは熱分解炉の第二段予熱器で行われる。第二段予熱器では気体/気体混合物は、炉の放射部の煙道ガスにより加熱された管内を流れる。第二段予熱器では気体/気体混合物は、供給原料の実質的な分解及び予熱器中の随伴コークスの脱落(laydown)が起こる温度附近又はそれ以下の温度に十分、予熱される。加熱された混合物は工程(cc)で使用される。
【0039】
工程(cc)の熱分解反応は、熱分解炉の放射部で行うことが好ましく、ここでガス状炭化水素は、オレフィンに熱分解されると共に、種々の生成物を随伴する。熱分解炉の生成物としては、限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、水素、メタン、及びその他のオレフィン系、パラフィン系及び芳香族系関連生成物が挙げられる。主要な生成物はエチレンで、気化した供給原料の重量に対し、通常、15〜40重量%の範囲で含まれる。第二の重要な生成物はプロピレンである。低級オレフィンと言う場合は、エチレン、プロピレン及びC−オレフィンを意味する。
【0040】
熱分解炉は、特に管状ガス分解炉を含む、低分子量オレフィンの製造用に操作される従来のいかなる種類の熱分解炉であってもよい。熱分解炉対流帯内の複数の管は、管バンクとして並列に配置してもよいし、或いは対流帯に供給原料の単流を通すために配置してもよい。入口では供給原料は数個の単流管に分割してもよいし、或いは供給原料は、全ての供給原料が第一段予熱器の入口から出口まで流れる、更に好ましくは対流帯の全体を通る1つの単流管に供給してもよい。好ましくは第一段予熱器は、熱分解炉の対流帯中に複数管の1つの単流バンクを配置して構成される。このような好ましい実施態様では対流帯は、原料が流れる2バンク以上の単流管を有する。各バンク内では、複数の管をコイル型又は蛇型配列で1列(row)内に配置してもよく、また各バンクは、複数管の数個の列を持っていてもよい。
【0041】
第一段予熱器の管内、更に下流の管内及び蒸気/液体分離器内でコークスの形成を更に最小化するため、供給原料流の表面速度は、管中のコークス形成性フラクション気化ガスの滞留時間を短縮するように選択しなければならない。適切な表面速度は、薄く均一に濡れた管表面の形成も促進する。第一段予熱器の管を通る供給原料の表面速度が高いと、コークスの形成速度は低下するが、特定の供給原料には表面速度の最適範囲がある。この範囲を超えると、供給原料をポンプ送りするのにエネルギーを余分に必要とする上、最適速度範囲よりも高速度に適合する管の大きさを必要とすることから、有利なコークス減少速度は低下し始める。一般に第一段予熱器の管を通る供給原料の表面速度は、対流部において1.1〜2.2m/s、更に好ましくは1.7〜2.1m/s、最も好ましくは1.9〜2.1m/sの範囲が、炉の管コスト及びエネルギーの要件とコークスの形成現象とのバランスの点で最適の結果が得られる。
【0042】
工程(cc)の熱分解反応の生成物であるガス混合物の温度は、好ましくは750〜860℃である。後者の温度は、コイル出口温度と言うことがある。このガス温度は、不必要な反応を終らせるため、300℃未満に急速に低下させる。温度の低下手段の例は、周知のトランスファーライン交換器及び/又は急冷油取付け部品(fitting)である。好ましくは前記温度は、トランスファーライン交換器により440℃未満に低下し、更に急冷油取付け部品により240℃未満に低下する。生成物ガス又は分解ガスは、更に、当業者に周知の方法により、前述した各種の異なる生成物に分離される。
【0043】
図1は、本発明の好ましい実施態様を示す。工程(1)では水素と一酸化炭素との合成ガス混合物(2)は、工程(aa)において供給原料(3)から非接触部分酸化により製造される。合成ガス混合物(2)は、工程(bb)においてガス状生成物(5)及び液体生成物(6)を生成するフィッシャー・トロプシュ反応器(4)の原料として使用される。このガス状生成物及び液体生成物を組合わせ、予熱器(7)中で予備加熱する。予熱器(7)は、熱分解炉(9)放射部の煙道ガス(8)と間接熱交換する。気体−液体分離器(10)ではガス/油混合物(11)及び重質液体フラクション(12)が得られる。ガス/油混合物は、工程(cc)を行うため、熱分解炉(9)の放射部に供給される。炉は燃料(26)により燃焼させる。工程(cc)の流出流(13)から、熱分解ガソリン生成物(14)が単離され、二酸化炭素(15)が単離され、前述のような慣用のオレフィン生成物(18)に続いて、一酸化炭素と水素(16)とメタン(17)との混合物が単離される。二酸化炭素(15)は予熱器(7)に再循環され、水素及び一酸化炭素(16)は、フィッシャー・トロプシュ反応器(4)に再循環され、メタン(17)は、工程(aa)又は水素製造工程(19)に再循環される。このような工程で製造した水素は、水素対CO比を最適化するため、合成ガス混合物(2)に添加してもよいし、或いは水素化分解/水素化異性化工程(20)で使用してもよい。この工程(20)では、液体フラクション(12)は、常圧蒸留工程(24)で単離される高品質のガス油(21)、ケロシン(22)及びナフタ(23)に転化してよい。ナフサ(23)は、水素化分解/水素化異性化工程(20)の原料の一部として、熱分解ガソリン(14)を液体(12)に添加して、ガソリンブレンド成分を得るため、熱分解ガソリン(14)とブレンドしてよい。蒸留(24)で得られた残留物(25)は、工程(20)に再循環してもよいし、或いは任意に炉(9)の燃料として使用してもよい。オレフィン生成物及び熱分解ガソリン煮対する価値が高ければ、ナフサ及びケロシンは任意に予熱器(7)の原料に添加してよい。
【実施例】
【0044】
実施例1
その10重量%は620℃を超える沸点を有するフィッシャー・トロプシュ蝋と水素と一酸化炭素との混合物を480℃の温度に加熱した。水蒸気/炭化水素混合物が得られた。この炭化水素は第1表に示す特性を有する。
【0045】
【表1】

【0046】
合成ガス/炭化水素混合物を石英反応管中、炭化水素流速52g/h、水蒸気流速43.7Nl/h、圧力2.15バール絶対圧及びコイル出口温度800〜860℃で熱分解した。その結果を第3表に示す。標準希釈ガスを用いて実験を繰返し、同じ結果を得たので、本発明方法に従って合成ガスが使用できることが判った。
【0047】
比較実験A
第2表に示す特性を有するナフサを用いて実施例1を繰返した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
第3表の結果から、本発明方法によれば比較的重質のフィッシャー・トロプシュ合成生成物を用いると、優れた収率が得られることが判る。またこれらの結果から、非常に重質のフィッシャー・トロプシュ原料を用いると、C以下の範囲の化合物に対し非常に高い収率が得られることが判る。これは意外なことである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の好ましい実施態様を示す。
【符号の説明】
【0052】
1 工程(aa)
2 水素と一酸化炭素との合成ガス混合物
3 供給原料
4 フィッシャー・トロプシュ反応器又は工程(bb)
5 ガス状生成物
6 液体生成物
7 予熱器
8 煙道ガス
9 熱分解炉又は工程(cc)
10 気体−液体分離器
11 ガス/油混合物
12 重質液体フラクション
13 工程(cc)の流出流
14 熱分解ガソリン生成物
15 二酸化炭素
16 一酸化炭素及び水素
17 メタン
18 オレフィン生成物
19 水素製造工程
20 水素化分解/水素化異性化工程
21 ガス油
22 ケロシン
23 ナフサ
24 蒸留
25 残留物
26 燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(aa)炭素質供給原料から一酸化炭素及び水素を製造する工程、
(bb)工程(aa)で得られたガス状混合物を用いてフィッシャー・トロプシュ合成工程を行って、未転化の一酸化炭素及び水素を混合したフィッシャー・トロプシュ生成物を得る工程、
(cc)工程(bb)の未転化一酸化炭素及び未転化水素を混合したフィッシャー・トロプシュ生成物を熱分解する工程、
を行うことを特徴とする炭素質供給原料からのエチレン及び/又はプロピレンの製造方法。
【請求項2】
工程(aa)の炭素質原料がメタン含有原料である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィッシャー・トロプシュ生成物中の高沸点化合物が、蒸発工程において、低沸点化合物を希釈ガスの存在下でガス及び液体フラクション中に蒸発させ、更に残りの希釈ガスと低沸点化合物との混合物から液体フラクションを分離することにより分離される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
低沸点化合物の蒸発工程の前に、フィッシャー・トロプシュ生成物に次いで、ASTM D−2887で測定して350℃で気化する化合物は85重量%以下であり、400℃で気化する化合物は90重量%以下である軽質原油が存在する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(cc)の流出流中に存在する希釈ガスが該流出流から回収され、更に工程(bb)に再循環される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
二酸化炭素が分解ガス圧縮部中で工程(cc)の流出流から分離され、更に該二酸化炭素が蒸発工程に再循環される請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(cc)の流出流からメタンが分離され、水素の製造プロセスに原料として使用される請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
蒸発工程で得られた液体フラクションに対しマイルドな熱分解プロセスを行い、このマイルドな熱分解で得られた生成物を工程(cc)に再循環する請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
蒸発工程で得られた液体フラクションに対し接触分解工程を行って、ガソリンフラクション及び該ガソリンフラクションよりも高沸点のフラクションを得る請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ガソリンフラクションよりも高沸点のフラクションが工程(cc)に再循環される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガソリンフラクションが、工程(cc)の流出流から単離されたガソリンフラクションと混合される請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(cc)の原料に全体として又は部分的に使用される流出流を得るため、蒸発工程で得られた液体フラクションに対し水素化転化/水素化異性化工程を行う請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水素化転化/水素化異性化工程の流出流から、ナフサフラクションが単離され、更に該フラクションが、工程(cc)の流出流から単離されたガソリンフラクションと組合わされる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(cc)の流出流から単離されたガソリンフラクションが水素化転化/水素化異性化工程の原料に添加され、更に該水素化転化/水素化異性化工程の流出流からガソリンフラクションが単離される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
いずれかの種類の水蒸気分解方法で得られた熱分解ガソリン生成物をフィッシャー・トロプシュ誘導原料に添加し、次いで、得られた混合物に対し水素化転化/水素化異性化工程を行うことを特徴とするガソリン生成物の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516033(P2008−516033A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535175(P2007−535175)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055078
【国際公開番号】WO2006/037805
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】