説明

炭素系物質の造粒方法

【課題】 フラーレン単体、フラーレン生成炉から発生する煤状物やカーボンブラック等からなる炭素含有化合物を所定の粒度になるように造粒する炭素系物質の造粒方法を提供する。
【解決手段】 粉状物12と粒状化補助剤13とを密閉可能で加熱可能な容器14に入れて、攪拌羽根15により攪拌しながら加熱手段18により加熱し、粒状化補助剤13を気化させながら、粉状物12から造粒物26を造る方法であって、粉状物12は(1)粉状のフラレーン、(2)燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物からフラレーンの全部又は大部分を除いた煤状物、及び(3)カーボンブラックの少なくとも1種からなり、容器14の内部を減圧して行ない、しかも、攪拌羽根15の周速度を調整して造粒物26の粒径dを制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン、燃焼法によってフラーレンを製造するフラーレン生成炉から発生するフラーレン(炭素からなって溶媒に溶けるもの、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96をいう)を含む若しくはこれらの一部又は全部を除去した煤状物、又はカーボンブラック等の粉状の炭素系物質を造粒する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1に示されるように、閉殻構造型のカーボンクラスターであるC60やC70と称されるフラーレン等が新しい炭素材料として提案されている。これらの材料は、特殊な分子構造から特異な物性を示すことから、ダイヤモンドコーティング、電池材料、塗料、断熱材、潤滑材、医薬品、化粧品などの分野への応用が期待されている。そして、このフラーレンの製造方法としては、例えば、特許文献2に示すように、炭素化合物を燃焼させてフラーレンを製造する方法も提案され、現在ではベンゼン等の芳香族炭化水素と酸素含有ガスを反応炉に導き、減圧下で不完全燃焼をさせてフラーレンを製造する方法がフラーレンの大量生産には有効である。
更には、例えば、特許文献3に記載のように、炭化水素を原料としてカーボンブラックが製造されており、製造されたカーボンブラックは粉状となっていた。
【0003】
【特許文献1】特許第2802324号公報
【特許文献2】特表平6−507879号公報
【特許文献3】特開2000−297228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの炭素系物質は、1ミクロン以下(即ち、サブミクロン程度)の粉体であり、大気中にそのまま放置すれば発塵し、そのハンドリングが極めて厄介であるという問題があった。
特に、フラーレンの生成炉から発生する煤状物(広義には粉状物)の場合、溶媒に溶解するフラーレンを除去した煤状物の有効利用が期待されてはいるが、フラーレン単体を含めてこのような煤状物の造粒について、従来全く行われてはいなかった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、例えば、フラーレン単体、フラーレン生成炉から発生する煤状物やカーボンブラック等からなる炭素含有化合物を所定の粒度になるように造粒する炭素系物質の造粒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う請求項1記載の炭素系物質の造粒方法は、(1)粉状のフラレーン、(2)燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物からフラレーンの全部又は大部分を除いた煤状物、及び(3)カーボンブラックの少なくとも1種からなる粉状物と、粒状化補助剤とを容器に入れて、加熱攪拌しながら前記粒状化補助剤を気化することによって、前記粉状物から造粒物を造る炭素系物質の造粒方法であって、前記容器の内部を減圧している。
【0007】
また、請求項2記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項1記載の炭素系物質の造粒方法において、前記容器の内壁面は実質的に逆円錐状とされており、前記容器の内壁に沿って下方に縮径した攪拌羽根(例えば、螺旋リボン翼)を備える。なお、この攪拌羽根は、粉状物を上方に掻き上げる方向に回転させる。これによって、掻き上げられた粉状物は容器の側面を下方に滑り落ちながら造粒される。
【0008】
請求項3記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項2記載の炭素系物質の造粒方法において、前記粒状化補助剤の気化は、生成される前記造粒物を覆う前記粒状化補助剤が除去される恒率乾燥の工程と、前記造粒物の内部に残存している前記粒状化補助剤を除去する減率乾燥の工程を経て行われる。造粒物の恒率乾燥と減率乾燥とは気化の条件が異なるので、これらを分けて別々の最適条件で気化させることができる。
【0009】
請求項4記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項3記載の炭素系物質の造粒方法において、前記恒率乾燥時の前記攪拌羽根の周速度は、0.1〜4m/秒の範囲である。ここで、攪拌羽根の周速度を0.1m/秒未満とすると、造粒物の直径が大きくなりすぎる他、造粒効率が悪くなる。一方、攪拌羽根の周速度が4m/秒を超えると、機械的強度の問題により強固な装置となり、不経済な装置となる。
【0010】
請求項5記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項3及び4に記載の炭素系物質の造粒方法において、前記容器に設けられた加熱手段により、前記恒率乾燥時には前記造粒物を加熱して前記粒状化補助剤を気化し、前記減率乾燥時には前記造粒物を前記粒状化補助剤の飽和蒸気圧温度より高い温度で加熱する。
なお、恒率乾燥時に造粒物の加熱温度が粒状化補助剤の飽和蒸気圧温度より低い場合には粒状化補助剤の蒸発が促進されず、粒状化補助剤の飽和蒸気圧温度より高すぎると、造粒物の中からの粒状化補助剤の気化が促進され造粒物の状態を保持でない場合がある。また、減率乾燥時の造粒物の加熱温度が、粒状化補助剤の飽和蒸気圧温度に近づいて低い(例えば、飽和蒸気圧温度に20℃を加えた温度より低い)と、粒状化補助剤の乾燥に時間がかかる。
【0011】
請求項6記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項5記載の炭素系物質の造粒方法において、前記加熱手段は前記容器の外周部の主要部を覆って、熱媒体が流通可能なジャケット構造を有している。これによって、容器の外周部の主要部を介して均一な加熱ができ、全体として装置がコンパクトになり、構造が複雑化しない。なお、更に、造粒物の加熱効率を高める場合には、シャフト等にも熱媒を循環させてもよい。
【0012】
請求項7記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項3〜6に記載の炭素系物質の造粒方法において、減圧ポンプにより、前記恒率乾燥時には前記容器内を10kPa以上で前記粒状化補助剤の飽和蒸気温度と加熱温度の差を150℃以下、好ましくは100℃以下、更に好ましくは50℃以下とし、前記減率乾燥時には前記容器内を10kPa以下とし加熱温度との差を50℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上とする。これによって、恒率乾燥時の粒状化補助剤の急速気化を防止し、減率乾燥時の粒状化補助剤の急速気化を促進している。
【0013】
請求項8記載の炭素系物質の造粒方法は、請求項1〜7に記載の炭素系物質の造粒方法において、前記粉状物は、燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物又は該生成物から特定のフラーレンを除去した残留物であって、前記粒状化補助剤は、トリメチルベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、1メチルナフタリン、及び1,2,3,5テトラメチルベンゼンのいずれか1又は2以上である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜8記載の炭素系物質の造粒方法は、粒状化補助剤の気化は、炭素系物質からなる粉状物と粒状化補助剤とを攪拌加熱し、更に容器の内部を減圧しているので、粉状の炭素系物質がより効率的に造粒され、しかも乾燥も行える。
【0015】
特に、請求項2記載の炭素系物質の造粒方法においては、容器は逆円錐状であって、攪拌羽根は容器の内壁に沿って下方に縮径しているので、容器と攪拌羽根との隙間が容易に調整できる。そして、この攪拌羽根によって造粒物を上方に掻き上げながら造粒及び乾燥が行われる。
【0016】
請求項3記載の炭素系物質の造粒方法においては、粒状化補助剤の気化は、生成される造粒物を覆う粒状化補助剤が除去される恒率乾燥の工程と、造粒物の内部に残存している粒状化補助剤を除去する減率乾燥の工程を経て行われるので、粒状化補助剤を少ないエネルギーで効率的に除去でき、造粒物の乾燥が行われる。
【0017】
請求項4記載の炭素系物質の造粒方法においては、恒率乾燥時の攪拌羽根の周速度は、0.1〜4m/秒の範囲であるので、一旦形成された造粒物を破壊することがなく、乾燥を行える。
【0018】
そして、請求項6記載の炭素系物質の造粒方法は、加熱手段は容器の外周部の主要部を覆って、熱媒体が流通可能なジャケット構造を有しているので、容器の外周部を均一に加熱でき、内部の原料及び造粒物の均一加熱ができる。
【0019】
請求項7記載の炭素系物質の造粒方法においては、減圧ポンプにより、恒率乾燥時には容器内を10kPa以上とし粒状化補助剤の飽和蒸気温度と加熱温度の差を小さくし徐々に気化させ、減率乾燥時には容器内を10kPa以下としているので、恒率乾燥時の粒状化補助材の急速気化を防止し、減率乾燥時の粒状化補助材の急速気化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る炭素系物質の造粒方法を適用した炭素系物質の造粒装置の構成図、図2は同炭素系物質の造粒方法の造粒のメカニズムを説明する模式図、図3は同炭素系物質の造粒方法の実施例における造粒物の粒径と積算値との関係を示す説明図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る炭素系物質の造粒方法を適用した炭素系物質の造粒装置(以降、単に造粒装置と呼ぶ)10は、造粒しようとする粉状物からなる原料12を入れる容器14と、容器14内の原料12を粒状化補助剤(この実施の形態及び以下の実施例では1,2,4−トリメチルベンゼンを使用している)13と共に攪拌する攪拌羽根の一例である螺旋リボン翼15を備えた攪拌手段16と、容器14内の原料12及び粒状化補助剤13を加熱するジャケット構造17を備えた加熱手段18とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
【0022】
図1に示すように、造粒装置10の容器14は下方に沿って縮径した逆円錐状に形成され、全体が密閉可能な構造となっており、容器14の外周部には、容器14の主要部を覆って、熱媒体の一例である蒸気19が流通可能なジャケット構造17となっている。ジャケット構造17は、平面視してリング状の断面が下方に沿って細くなるように形成されており、ジャケット構造17の上端部に設けられた蒸気入口20には、蒸気供給管21が接続され、一方、ジャケット構造17の下端部に設けられた蒸気出口22には、途中にスチームトラップ23が設けられた蒸気排出管24が接続されている。かかる構成によって、蒸気19をジャケット構造17に通して容器14の外周部を介して、容器14内の原料12及びその造粒物(中間製品)を均一に加熱することができる。なお、ジャケット構造17に入れる蒸気19の温度を変えて、例えば、容器14内の温度を90〜120℃の低温域と、170〜200℃の高温域に制御可能となっている。
【0023】
容器14の上板部29の半径方向の外側には、原料12及び粒状化補助剤13を投入するための投入口に投入用蓋25が密封可能に取付けられており、一方、容器14の下端部には、生成された造粒物26を取り出すための排出バルブ27が設けられている。
【0024】
攪拌手段16は、容器14の内周面14aとの間に所定の隙間G(約1〜10mm)を保持して設けられた帯状の2条からなり、容器14の内壁に沿って下方に縮径した螺旋リボン翼15と、螺旋リボン翼15が取付けられ、容器14の上板部29に軸シールされた回転軸28と、回転軸28の上端部に連結された減速機付き電動機30とを備えている。この構成によって、減速機付き電動機30を駆動して螺旋リボン翼15を回転させ、容器14内の原料12及び粒状化補助剤13を攪拌することができる。なお、減速機付き電動機30のモータはインバーターにより回転速度が可変制御されるようになっており、これにより螺旋リボン翼15(上端の最大半径の位置)の周速度は0.1〜4m/秒の範囲で調整することができる。螺旋リボン翼15の周速度を変化させることによって、造粒物26の粒径d(図2参照)を制御することができる。なお、この螺旋リボン翼15を昇降することによって、容器14との隙間を調整できる。
【0025】
容器14の上板部29には、容器14内に連通してバッグフィルター31が設けられており、バッグフィルター31には、下流側に沿って順次、凝縮器32、減圧ポンプ33が設けられた排気管34の上流端35が接続されている。この構成によって、減圧ポンプ33により容器14内を0.5〜1kPaまで減圧することができ、また、バッグフィルター31により攪拌中に発生する原料12の粉塵を集塵して、減圧ポンプ33側に移動するのを防止している。凝縮器32により、加熱によって気化した粒状化補助剤13を凝縮し、液体として回収することができる。
【0026】
次に、造粒装置10を用いた本発明の一実施の形態に係る炭素系物質の造粒方法について説明する。
先ず、図2を参照しながら、造粒のメカニズムについて説明する。
(a)造粒前
恒率乾燥の開始前、即ち、原料12及び粒状化補助剤13が容器14内に投入された状態を表しており、原料12の各微粒子12aは粒状化補助剤13により分離されている。ここで、原料12としては、燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物から特定のフラレーン(例えば、C60、C70)を除いた残留物(煤状となっている)を使用した。
【0027】
(b)造粒中
恒率乾燥の途中の状態を表しており、容器14内が加熱された状態で攪拌されると、粒状化補助剤13が蒸発しながら、ケーキ状物からなる原料12の各微粒子12aが核を介して順次結合され、造粒物の粒径が次第に大きくなる。
(c)造粒完
恒率乾燥の終了した状態を表しており、生成された造粒物26の外表面を覆う粒状化補助剤13が除去され、造粒物26の内部に粒状化補助剤13が残存している。減率乾燥の開始前の状態を表している。
【0028】
(d)乾燥完
真空に近い減圧状態で攪拌及び減率乾燥することにより、造粒物26の内部に残存していた粒状化補助剤13が限界まで除去される。
なお、前記(a)から前記(c)の工程を恒率乾燥工程と呼び、前記(c)から前記(d)の工程を減率乾燥工程と呼ぶ。
【実施例】
【0029】
図1に示す造粒装置10を用いて実験を行なった。実験の前提条件は以下の通りとした。
容器14には、フラーレン生成炉(図示せず)から発生する原料12(即ち、フラーレン生成炉から生成物から特定のフラーレンを除いた残留物)及び粒状化補助剤13を投入した。また、円錐形の容器14の内容積は約2m3 、螺旋リボン翼15は2条の螺旋羽根からなり、螺旋羽根の最大径Dは約1700mm(図1参照)、回転速度は最大32rpmであった。さらに、ジャケット構造17に流す蒸気19は、約9kg/cm2 の飽和水蒸気を用い、凝縮器32は多管式熱交換器を使用し、減圧ポンプ33はロータリ式真空ポンプを使用した。
表1に、実施例1、実施例2及び実施例3における運転条件及び実験結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1において、各項目の内容は以下の通りである。なお、表1中の含液率、加熱温度、圧力、回転数及び周速の「→」の前後はそれぞれ、上述した恒率乾燥時、減率乾燥時を表している。
仕込量は容器14に投入した粒状化補助剤13及び原料12の総重量を表している。
【0032】
含液率は、粒状化補助剤/(粒状化補助剤+原料)を表している。造粒前の含液率70〜75重量%が恒率乾燥により約20重量%程度となり、さらに、含液率約20重量%が減率乾燥により約1.5重量%程度となる。
処理時間は恒率乾燥時間及び減率乾燥時間の総時間を表しており、また、カッコ内は恒率乾燥時間を表している。
圧力は減圧ポンプ33の駆動を制御して生成される容器14内の圧力を表している。
【0033】
回転数は螺旋リボン翼15の回転速度を、また、周速はその際の螺旋羽根の最大径位置での速度を表している。なお、恒率乾燥時には加熱温度(品温)は100℃、圧力は100Torrとして、生成される造粒物の外表面を覆う粒状化補助剤13が突沸しないようにコントロールし、一方、減率乾燥時には加熱温度は176℃、圧力は1.5Torrとして、造粒物26の内部に残存している粒状化補助剤13を除去するようにコントロールしている。また、恒率乾燥時には、品温を粒状化補助剤13の溶液の飽和蒸気圧温度+0〜100℃(又は、150℃)で制御し、造粒物の表面に付着した粒状化補助材13を除去し、減率乾燥時には、品温を恒率乾燥時の加熱温度より高く、しかも粒状化補助剤13の溶液の飽和蒸気圧温度+20℃以上、50℃以上、好ましくは80℃以上、更に好ましくは150℃以上として、造粒物の内部に残っている粒状化補助材の殆ど全部を除去する。
【0034】
残溶媒は、減率乾燥が終了した造粒物(乾燥原料)の含液率を表している。
粒度分布は、生成された造粒物(乾燥FB)を乾式篩により分級したものである。
かさ密度の粗かさ密度は、タッピング無し、密かさ密度はタッピング有りを表している。
【0035】
図3に示すように、実施例1〜3における造粒物の粒径と積算値との関係から明らかな通り、乾燥FBの粒度は、恒率乾燥時における螺旋リボン翼15の周速(回転速度)と相関関係があることが分かる。即ち、実施例1のように周速が大きいと、乾燥FBの粒度は小さく(積算値50%=150μm)なり、一方、実施例3のように周速が小さいと、乾燥FBの粒度は大きく(積算値50%=1400μm)なることが分かる。ちなみに、周速が中間の実施例2では、積算値50%=1000μmであった。
【0036】
従って、攪拌手段16の螺旋リボン翼15の周速度を調整することによって、造粒物26の粒径dを制御することができることが分かる。特に、造粒物26の形成に大いに影響する恒率乾燥時の周速のコントロールが粒径に関係していることが確認できた。なお、例えば、鉄鉱石等の一般的な粉状物の造粒においては、周速度は20m/secであるが、本発明の粉状物においては、周速度は4m/sec程度で極端に小さくなっている。なお、この装置では螺旋リボン翼15の周速を4m/secより下げるとより大きな造粒物ができる。
【0037】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の炭素系物質の造粒方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、粉状物はフラーレン生成炉から発生する微粒状の炭素系物質の一例である原料12を用いたが、これに限定されず、必要に応じて、その他の微粒状の炭素系物質、例えば、(1)C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96のいずれか1又は2以上からなる粉状のフラレーン、(2)燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物、(3)この生成物からフラレーンの全部又は大部分を除いた煤状物、及び(4)カーボンブラックの1又は2以上からなるものを原料とすることもできる。
【0038】
攪拌羽根の周速度は0.1〜4m/秒の範囲で調整するようにしたが、これに限定されず、適用する粉状物の特性や運転条件に応じて、異なる周速度の範囲で調整することもできる。
造粒物の加熱温度を恒率乾燥時は100℃、減率乾燥は176℃としたが、これに限定されず、必要に応じて、例えば、運転条件や適用する粉状物の特性に応じて、変えることもできる。
容器14内の圧力を恒率乾燥時は100Torr、減率乾燥は1.5Torrとしたが、これに限定されず、例えば、恒率乾燥時には容器内を10kPa以上で粒状化補助剤の蒸気圧より低い圧力とし、減率乾燥時には容器内を10kPa以下とする等、必要に応じて、例えば、運転条件や適用する粉状物の特性に応じて、変えることもできる。
【0039】
攪拌羽根として、螺旋リボン翼を設けたが、これに限定されず、必要に応じて、その他の構造の攪拌羽根、例えば、放射状翼、ブレード翼、籠状翼等を用いてもよい。
蒸気を通すジャケット構造を備えた加熱手段としたが、これに限定されず、状況に応じて、その他の構造の加熱手段(例えば、他の熱媒、電力)を用いることもできる。
粒状化補助剤として、1,2,4−トリメチルベンゼンを用いたが、トリメチルベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、1メチルナフタリン、及び1,2,3,5テトラメチルベンゼンのいずれか1又は2以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係る炭素系物質の造粒方法を適用した炭素系物質の造粒装置の構成図である。
【図2】同炭素系物質の造粒方法の造粒のメカニズムを説明する模式図である。
【図3】同炭素系物質の造粒方法の実施例における造粒物の粒径と積算値との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10:炭素系物質の造粒装置、12:原料(ケーキ状物)、12a:原料の微粒子、13:粒状化補助剤、14:容器、14a:内周面、15:螺旋リボン翼、16:攪拌手段、17:ジャケット構造、18:加熱手段、19:蒸気、20:蒸気入口、21:蒸気供給管、22:蒸気出口、23:スチームトラップ、24:蒸気排出管、25:投入用蓋、26:造粒物、27:排出バルブ、28:回転軸、29:上板部、30:減速機付き電動機、31:バッグフィルター、32:凝縮器、33:減圧ポンプ、34:排気管、35:上流端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)粉状のフラレーン、(2)燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物からフラレーンの全部又は大部分を除いた煤状物、及び(3)カーボンブラックの少なくとも1種からなる粉状物と、粒状化補助剤とを容器に入れて、加熱攪拌しながら前記粒状化補助剤を気化することによって、前記粉状物から造粒物を造る炭素系物質の造粒方法であって、
前記容器の内部を減圧することを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項2】
請求項1記載の炭素系物質の造粒方法において、前記容器の内壁面は実質的に逆円錐状とされており、前記容器の内壁に沿って下方に縮径した攪拌羽根を備えることを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項3】
請求項2記載の炭素系物質の造粒方法において、前記粒状化補助剤の気化は、生成される前記造粒物を覆う前記粒状化補助剤が除去される恒率乾燥の工程と、前記造粒物の内部に残存している前記粒状化補助剤を除去する減率乾燥の工程を経て行われることを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項4】
請求項3記載の炭素系物質の造粒方法において、前記恒率乾燥時の前記攪拌羽根の周速度は、0.1〜4m/秒の範囲であることを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項5】
請求項3及び4のいずれか1項に記載の炭素系物質の造粒方法において、前記容器に設けられた加熱手段により、前記恒率乾燥時には前記造粒物を加熱して前記粒状化補助剤を気化し、前記減率乾燥時には前記造粒物を前記粒状化補助剤の飽和蒸気圧温度より高い温度で加熱することを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項6】
請求項5記載の炭素系物質の造粒方法において、前記加熱手段は前記容器の外周部の主要部を覆って、熱媒体が流通可能なジャケット構造を有していることを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の炭素系物質の造粒方法において、減圧ポンプにより、前記恒率乾燥時には前記容器内を10kPa以上で前記粒状化補助剤の飽和蒸気温度と加熱温度の差を150℃以下、好ましくは100℃以下、更に好ましくは50℃以下とし、前記減率乾燥時には前記容器内を10kPa以下とし加熱温度との差を50℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上とすることを特徴とする炭素系物質の造粒方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭素系物質の造粒方法において、前記粉状物は、燃焼法によるフラーレン生成炉から発生する生成物又は該生成物から特定のフラーレンを除去した残留物であって、前記粒状化補助剤は、トリメチルベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、1メチルナフタリン、及び1,2,3,5テトラメチルベンゼンのいずれか1又は2以上であることを特徴とする炭素系物質の造粒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−240921(P2006−240921A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59118(P2005−59118)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502236286)フロンティアカーボン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】