説明

炭素繊維紙及びその製造方法

【課題】物質移動、伝熱に優れた性質を有する炭素繊維紙を提供する。
【解決手段】繊維同士の間隙で形成される平均孔径が10〜20μmの細孔と、平均孔径が50〜500μmの、一方の面4から他方の面6にわたって貫通されてなる貫通孔8とを複数有する炭素繊維紙2であって、炭素繊維紙2の一方の面4から他方の面6にわたる垂直な面に沿った貫通孔8の断面が台形状で、台形の上底Buと下底Blとの比(Bu/Bl)が1.1〜2.0であり、炭素繊維紙2の一方の面4及び他方の面6に平行な面に沿った貫通孔8の断面が円状で、貫通孔断面の真円度が20%以下である炭素繊維紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維同士の間隙で形成される多数の微細な細孔と、前記細孔よりも大径で、一方の面から他方の面にわたる貫通孔を複数有する炭素繊維紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維紙(例えば、特許文献1、2参照)は、炭素繊維織物と比較すると厚みや孔径が小さく、炭素繊維不織布と比較すると通気性や厚みに斑が少なく、シート内における物質移動、伝熱に優れた性質を有する。
【0003】
物質移動、伝熱に加えて更に異なる性質を持たせるため、一方の面から他方の面にわたる貫通孔を複数持たせた炭素繊維紙は、高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層電極基材(例えば、特許文献3、4参照)、プリント配線板用基材に用いられる。
【0004】
この貫通孔を有する炭素繊維紙は、高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層電極基材に用いる場合、反応生成水を貫通孔からスムーズに排出でき、反応生成水が燃料ガスの供給を遮断するフラッディングの発生を防止できるので、上記基材として適している。
【0005】
この貫通孔は通常、炭素繊維紙に針等を突き刺して得られる。しかし、炭素繊維紙は脆性材料であるため、針等で孔を空ける際に、孔の形状及び孔径を均一に且つ安定して空けることが難しい。また、孔を空けたことにより炭素粉末が発生し、装置の漏電や故障原因等になる可能性が高いことから工業的にも製造が難しいと考えられる。
【特許文献1】特開2005−302588号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−190518号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−38738号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−331786号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、上記問題について鋭意検討しているうち、酸化繊維紙にレーザー加工装置にて開孔処理を施し、これを不活性雰囲気で焼成して得られる炭素繊維紙は、一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面が台形状であり、炭素繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が真円に近い円状であることを知得した。
【0007】
この炭素繊維紙は、その製造工程において炭素粉末が発生することが無く、孔の形状及び孔径が均一なものを安定して得られ、得られた炭素繊維紙は、物質移動、伝熱に優れた性質を有していることを知得し本発明を完成するに到った。
【0008】
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した炭素繊維紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
【0010】
[1] 繊維同士の間隙で形成される平均孔径が10〜20μmの細孔と、一方の面から他方の面にわたって貫通されてなる平均孔径が50〜500μmの貫通孔とを複数有する炭素繊維紙であって、炭素繊維紙の一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面が台形状で、台形の上底と下底との比が1.1〜2.0であり、炭素繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が円状で、前記貫通孔断面の長径と短径の差を平均直径で除した値で示される真円度が20%以下である炭素繊維紙。
【0011】
[2] 単位面積当りの貫通孔の数が100〜1000個/cm2である[1]に記載の炭素繊維紙。
【0012】
[3] 炭素繊維紙が、繊維状炭素と非繊維状炭素を含み、炭素繊維紙中の繊維状炭素の割合が20質量%以上である[1]に記載の炭素繊維紙。
【0013】
[4] 厚みが50〜400μmである[1]に記載の炭素繊維紙。
【0014】
[5] 酸化繊維紙を、レーザー加工により開孔処理を施して一方の面から他方の面にわたる貫通孔を複数有する酸化繊維紙を得、次いで前記酸化繊維紙を不活性雰囲気下、1300〜2500℃の温度で焼成することを特徴とする、繊維同士の間隙で形成される平均孔径が10〜20μmの細孔と、一方の面から他方の面にわたって貫通されてなる平均孔径が50〜500μmの貫通孔とを複数有する炭素繊維紙であって、炭素繊維紙の一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面が台形状で、台形の上底と下底との比が1.1〜2.0であり、炭素繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が円状で、前記貫通孔断面の長径と短径の差を平均直径で除した値で示される真円度が20%以下である炭素繊維紙の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炭素繊維紙は、物質移動、伝熱に優れた性質を有する。
【0016】
本発明の炭素繊維紙の製造方法によれば、原料酸化繊維紙にレーザー加工装置で開孔処理を施して得た所定の貫通孔を有する酸化繊維紙を所定の温度で焼成しているので、炭素繊維紙において所定の大きさ、形状の貫通孔を任意の位置に形成することが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の炭素繊維紙の一例を示す概念図であって、炭素繊維紙の一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の炭素繊維紙2は、貫通孔8の断面が台形状である。この断面は、一方の面[図1では上面(表の面)]4から他方の面[図1では下面(裏の面)]6にわたる垂直な面に沿ったものである。貫通孔断面形状の台形における上底Buと下底Blとの比[表裏直径比(Bu/Bl)]は1.1〜2.0である。
【0020】
台形の上底Buと下底Blとの比(Bu/Bl)が上記範囲から逸脱する場合は、炭素繊維紙内における物質移動性が低下し、例えば炭素繊維紙を高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層電極基材に用いる場合、反応生成水を貫通孔からスムーズに排出できなくなり、反応生成水が燃料ガスの供給を遮断するフラッディングが発生し易くなるので好ましくない。
【0021】
本発明の炭素繊維紙は、一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が円状で、貫通孔断面の長径と短径の差を平均直径で除した値で示される真円度(以下、単に真円度と称す)が20%以下である。
【0022】
貫通孔断面の真円度が20%を超える場合は、炭素繊維紙内における物質移動性に斑が発生し、例えば炭素繊維紙を高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層電極基材に用いる場合、均一な反応生成水の排出が困難となり、局所的なフラッディングを発生せしめ、燃料電池の発電性能の低下が生じ易くなるので好ましくない。
【0023】
炭素繊維紙内における物質移動性を良好なものにするには、貫通孔の平均孔径は50〜500μmであり、好ましくは90〜250μmである。単位面積当りの貫通孔の数は100〜1000個/cm2が好ましく、300〜500個/cm2がより好ましい。
【0024】
本発明の炭素繊維紙は、繊維状炭素と非繊維状炭素を含む。炭素繊維紙を高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層電極基材に用いる場合、強度、導電性を高くするため、炭素繊維紙中の繊維状炭素の割合は20質量%以上であることが好ましく、炭素繊維紙の厚みは50〜400μmであることが好ましい。
【0025】
本発明の炭素繊維紙を得るためには、例えば、原料酸化繊維紙を、レーザー加工により開孔処理を施して一方の面から他方の面にわたる貫通孔を複数有する酸化繊維紙を得、次いで前記酸化繊維紙を不活性雰囲気下、1300〜2500℃の温度で焼成し炭素化することにより製造することが好ましい。
【0026】
〔原料酸化繊維紙〕
本例の炭素繊維紙の製造用原料酸化繊維紙は、所定繊維長の酸化繊維と、有機高分子とを混合し、既存の湿式抄紙法にて得ることが出来る。酸化繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、フェノール系、レーヨン系等の酸化繊維を用いることが出来るが、酸化繊維及び得られた炭素繊維の強度特性より、PAN系酸化繊維が好ましい。有機高分子としては炭素化後の残炭率の高さから芳香族ポリアミド(アラミド)、フェノール樹脂、ポリイミド、PAN等が好適であり、液状、パウダー状、ペレット状、短繊維状、パルプ状等の形態で利用できる。
【0027】
〔熱圧縮処理〕
上述した原料酸化繊維紙には、均質化や高嵩密度化を目的に、100〜350℃の温度下、圧力0.30〜20MPaの条件で熱圧縮処理が施され、その原料酸化繊維紙の嵩密度は1.0〜0.2g/cm3に制御される。
【0028】
熱圧縮処理による均質化は、例えばカレンダー加工、プレス加工で行うことができる。
【0029】
この熱圧縮処理の結果、酸化繊維同士は圧縮され、その圧縮により酸化繊維同士の間隙で形成される細孔径は制御される。
【0030】
本発明においては、このようにして細孔径を制御した原料酸化繊維紙を用いて後述するレーザー加工を行う。
【0031】
〔開孔処理〕
上記原料酸化繊維紙は、レーザー加工装置にて開孔処理を施して直径54〜540μm、100〜10000個/cm2の貫通孔を有する酸化繊維紙にする。レーザー加工装置の種類は、YAG、CO2、半導体レーザーなどを利用することが出来る。
【0032】
レーザーの照射エネルギーは、照射面からその反対面に向かって減少するため、照射面の貫通孔径は、その反対面の貫通孔径よりも大きくなる。
【0033】
以上のように、酸化繊維紙のレーザー加工を行うことにより、一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面は台形状になる。台形の上底と下底との比は1.1〜2.0であり、酸化繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面は円状で、貫通孔断面の真円度が20%以下である酸化繊維紙を容易に得ることができる。
【0034】
レーザー加工条件は、例えば従来公知の炭酸ガスレーザー等におけるレーザー照射条件を適宜採用できる。炭酸ガスレーザーでは、赤外線波長域にある9.3〜10.6μmの波長が一般的に使用され、エネルギーは4〜60mJが好適に使用される。
【0035】
〔炭素化処理〕
上記酸化繊維紙を、窒素等の不活性ガス雰囲気下、500℃付近で予備焼成する工程を経由して1300〜2500℃で焼成して炭素化し、炭素繊維紙を得る。
【0036】
なお、昇温下で炭素化する場合の昇温速度は200℃/分以下が好ましい。
【0037】
以上の製造方法で得られた炭素繊維紙は、一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面が台形状で、台形の上底と下底との比が1.1〜2.0であり、炭素繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が円状で、貫通孔断面の真円度が20%以下であると共に、平均細孔径が10〜20μm、通気度が10000ml/min以上であり、その表面に膜状炭化物が形成されること無く、曲げ強さは10MPa以上である。
【0038】
また、この炭素繊維紙は、厚さが50〜400μm、目付が20〜180g/m2、嵩密度が0.2〜0.6g/cm3である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、操作条件の評価、各物性の測定は次の方法によった。
【0040】
〔酸化繊維紙、炭素繊維紙の細孔径〕
パームポロメーター[PMI(Porous Material,Inc.)社製:商品名CFP−1100AEX]を用い、酸化繊維紙、炭素繊維紙の細孔分布を測定し、この細孔分布から体積平均細孔径を求めた。
【0041】
〔酸化繊維紙、炭素繊維紙の貫通孔〕
デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製:商品名VH−8000C)を用い、酸化繊維紙、炭素繊維紙の貫通孔について諸寸法を測定し、これらの測定値から、前述の算出方法により、平均貫通孔径、貫通孔密度、貫通孔真円度、貫通孔表裏直径比を求めた。
【0042】
〔酸化繊維の比重〕
アルキメデス法(溶媒アセトン)により測定した。
【0043】
〔酸化繊維紙、炭素繊維紙の厚さ〕
直径5mmの円盤状圧板で荷重1.2Nを負荷したときの厚さを測定した。
【0044】
〔酸化繊維紙、炭素繊維紙の目付〕
100mm角のシートを120℃、1時間乾燥させた質量より、単位面積当たりの質量を算出した。
【0045】
〔酸化繊維紙、炭素繊維紙の嵩密度〕
上記条件により測定した厚さ及び目付から算出した。
【0046】
〔実施例1〕
酸化繊維としてポリアクリロニトリル(PAN)系酸化繊維(平均繊維太さ2.2dtex、平均繊維長5mm、比重1.42)と、有機高分子としてアラミドファイブリッド(平均繊維長1.2mm)と、PET繊維(平均繊維太さ2.5dtex、平均繊維長5mm)とを、配合比が65/15/20wt%となるように混合し、湿式抄紙し、原料酸化繊維紙を得た。この原料酸化繊維紙を温度120℃、圧力0.5MPaの条件下にて圧縮処理することにより、目付146g/m2、厚さ318μm、嵩密度0.46g/cm3、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径17μmの酸化繊維紙を得た。
【0047】
この酸化繊維紙に、レーザー加工装置で開孔処理を施し、直径110μm、400個/cm2の貫通孔を有する酸化繊維紙を得た。続いて、この酸化繊維紙を窒素ガス雰囲気下にて500℃で10分間、2000℃で10分間焼成することにより、目付73g/m2、厚さ202μm、嵩密度0.36g/cm3の炭素繊維紙が得られた。
【0048】
得られた炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が102μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.3、貫通孔断面の真円度が13%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が15μmであった。
【0049】
〔実施例2〕
酸化繊維紙における貫通孔の平均直径を220μmとしたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維紙を得たところ、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が202μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.2、貫通孔断面の真円度が5%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が15μmであった。
【0050】
〔実施例3〕
酸化繊維紙における貫通孔の平均直径を500μm、貫通孔の密度を200個/cm2としたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維紙を得たところ、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が453μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.4、貫通孔断面の真円度が6%であった。
【0051】
〔実施例4〕
酸化繊維紙における貫通孔の平均直径を75μmとしたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維紙を得たところ、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が70μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.1、貫通孔断面の真円度が15%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が15μmであった。
【0052】
〔比較例1〕
酸化繊維紙における貫通孔の平均直径を800μm、貫通孔の密度を40個/cm2としたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維紙を得たところ、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が723μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.2、貫通孔断面の真円度が5%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が15μmであった。
【0053】
〔比較例2〕
酸化繊維紙における貫通孔の平均直径を600μm、貫通孔の密度を60個/cm2としたこと以外は実施例1と同様にして炭素繊維紙を得たところ、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が550μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.3、貫通孔断面の真円度が6%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が15μmであった。
【0054】
〔比較例3〕
目付360g/m2、厚みを780μm、嵩密度0.46g/cm3、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径17μmの酸化繊維紙に、比較例2と同条件のレーザー加工を施し、貫通孔の平均直径が550μm、貫通孔の密度が60個/cm2の酸化繊維紙を得た。この酸化繊維紙を、実施例1と同様に炭素化し、目付180g/m2、厚み500μm、嵩密度0.36g/cm3の炭素繊維紙を得た。その結果、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が500μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が2.5、貫通孔断面の真円度が6%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が15μmであった。
【0055】
〔比較例4〕
目付240g/m2、厚みを320μm、嵩密度0.75g/cm3、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径9μmの酸化繊維紙に、実施例2と同条件のレーザー加工を施した後、実施例1と同様に炭素化し、目付120g/m2、厚み208μm、嵩密度0.58g/cm3の炭素繊維紙を得た。その結果、炭素繊維紙は、表面から裏面までの貫通孔の平均直径が200μm、貫通孔の表面と裏面の孔径比が1.3、貫通孔断面の真円度が7%、繊維同士の間隙で形成される細孔の平均孔径が8μmであった。
【0056】
〔評価例〕
実施例1〜4で得られた炭素繊維紙を用いて、高分子電解質型燃料電池用ガス拡散層電極基材を作製し、電極基材としての評価テストを行った。その結果、実施例1〜4で得られた炭素繊維紙の何れについても、反応生成水が燃料ガスの供給を遮断するフラッディングの発生は無く、電極基材としての評価は良好なものであった。
【0057】
比較例1〜4で得られた炭素繊維紙を用いて、同様の評価テストを行った結果、何れの炭素繊維紙についても、反応生成水の排出が十分でなく、電極機材として満足のいく結果が得られなかった。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の炭素繊維紙の一例を示す概念図であって、炭素繊維紙の一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0061】
2 炭素繊維紙
4 炭素繊維紙の上面
6 炭素繊維紙の下面
8 貫通孔
u 台形状した貫通孔断面の上底
l 台形状した貫通孔断面の下底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維同士の間隙で形成される平均孔径が10〜20μmの細孔と、一方の面から他方の面にわたって貫通されてなる平均孔径が50〜500μmの貫通孔とを複数有する炭素繊維紙であって、炭素繊維紙の一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面が台形状で、台形の上底と下底との比が1.1〜2.0であり、炭素繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が円状で、前記貫通孔断面の長径と短径の差を平均直径で除した値で示される真円度が20%以下である炭素繊維紙。
【請求項2】
単位面積当りの貫通孔の数が100〜1000個/cm2である請求項1に記載の炭素繊維紙。
【請求項3】
炭素繊維紙が、繊維状炭素と非繊維状炭素を含み、炭素繊維紙中の繊維状炭素の割合が20質量%以上である請求項1に記載の炭素繊維紙。
【請求項4】
厚みが50〜400μmである請求項1に記載の炭素繊維紙。
【請求項5】
酸化繊維紙を、レーザー加工により開孔処理を施して一方の面から他方の面にわたる貫通孔を複数有する酸化繊維紙を得、次いで前記酸化繊維紙を不活性雰囲気下、1300〜2500℃の温度で焼成することを特徴とする、繊維同士の間隙で形成される平均孔径が10〜20μmの細孔と、一方の面から他方の面にわたって貫通されてなる平均孔径が50〜500μmの貫通孔とを複数有する炭素繊維紙であって、炭素繊維紙の一方の面から他方の面にわたる垂直な面に沿った貫通孔の断面が台形状で、台形の上底と下底との比が1.1〜2.0であり、炭素繊維紙の一方の面及び他方の面に平行な面に沿った貫通孔の断面が円状で、前記貫通孔断面の長径と短径の差を平均直径で除した値で示される真円度が20%以下である炭素繊維紙の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−190072(P2008−190072A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24725(P2007−24725)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】