説明

炭素繊維製造用処理剤

【課題】炭素繊維の製造工程において、耐炎化工程における優れた分繊性や融着防止性を与え、且つ焼成ムラがなく、良好な工程通過性を与える炭素繊維製造用処理剤を提供する。
【解決手段】特定のポリシロキサンと特定のポリアルキレンオキシドの交互の単位からなるコポリマーを含有する炭素繊維製造用処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維製造用処理剤に関するものであり、更に詳しくは炭素繊維の製造において、耐炎化工程前に前駆体として使用するアクリル系繊維やピッチ系繊維、レーヨン繊維(以下これらをプレカーサーと称する)へ付与し、該プレカーサーに優れた工程通過性を与えるとともに、耐炎化工程以降での繊維間の融着を防止し、焼成ムラのない良好な性能を有する炭素繊維を製造することができる炭素繊維製造用処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維はプレカーサーを酸化性雰囲気下で200〜300℃で加熱する耐炎化工程(不融化工程ともいう)で耐炎繊維と成したのち、不活性雰囲気下で700℃以上に加熱する炭素化工程を経て得られる。炭素繊維製造用処理剤は、通常耐炎化工程前、プレカーサー製造工程で付与され、通常の油剤と同様に平滑性、帯電防止性、集束性などの性能が求められるのはもちろんであるが、炭素繊維製造特有の製造条件や工程に即した性能、すなわち高度な耐熱性と、熱処理を受けても繊維が融着しないといった性能(融着防止性)が必要とされる。
【0003】
従来、炭素繊維製造用処理剤としては、ホスフェートのアルカリ金属塩、各種カチオン活性剤、ポリオキシアルキレンエーテルなどが知られている。これらは、平滑性、帯電防止性、集束性には一応の効果が見られるものの、本質的な耐熱性の悪さから、繊維間の融着防止性については不十分である。
【0004】
この問題を解決するために、融着防止性の観点からシリコーン化合物を使用した油剤が提唱されている。特にシリコーン化合物の中でも、プレカーサーへの吸着性が良いアミノ変性シリコーンが優れた融着防止性を示すことが知られており、例えば特許文献1には、アミノ変性基を有したオルガノポリシロキサンが開示されている。
【0005】
しかし、アミノ変性シリコーンは、融着防止性に優れる反面、アミノ基の耐熱性不良が引き金となって、脱落した処理剤の熱による樹脂化などを引き起こし、これによって繊維の毛羽や糸切れが発生するといった問題点を有している。耐熱性向上のため、アミノ基の含量をある一定量以下にすることで両立を計るという手法(例えば特許文献2等)もあるが、アミノ基の減少は炭素繊維への吸着性の低下を招き、ひいては分繊性、融着防止性の低下も引き起こす。したがって、耐熱性と融着防止性という相反する性能を十分に満足する処理剤の設計は困難であった。
【0006】
また、汎用のアミノ変性シリコーンは、ジメチルシリコーン成分も含まれている。乾燥熱処理時に架橋せず流動性を有するジメチルシリコーンは、その後、単繊維間の空間に合わせて自由に変形できるため、単繊維間に厚く堆積する可能性が高く、結果としてシーリング効果が高まるため、焼成むらが発生すると考えられる。
【0007】
一方、耐熱性と融着防止性を両立させるために、特許文献3では、チオエーテル基を導入したシリコーン化合物が提案されているが、熱処理工程時に熱分解によって硫化水素ガスを発生するため、安全上、使用が困難と考えられる。
【特許文献1】特開昭60−185879号公報
【特許文献2】特公昭64−508号公報
【特許文献3】特開平11−256481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、炭素繊維の製造工程において、耐炎化工程における優れた分繊性や融着防止性を与え、且つ焼成ムラがなく、良好な工程通過性を与える炭素繊維製造用処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成し、炭素繊維製造工程において高度の耐熱性を有し、かつ優れた融着防止性を持ち、高性能な炭素繊維を得ることのできる炭素繊維製造用処理剤を得ることについて鋭意検討を重ねた結果、分子内に特定の結合基とオルガノポリシロキサンセグメントとアミノーポリアルキレンオキシドから構成される化合物が、極めて良好な耐熱性と融着防止性および焼成むら防止を両立できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明は、式(1)で示されるポリシロキサンと式(2)で示されるポリアルキレンオキシドの交互の単位からなるコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤である。
[X(Ca2aO)b2{SiO(R12cSi(R122(OCa2abX] …(1)
[YO(Ca2aO)dY] …(2)
(但し、各R1は独立に炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R2は2価の有機基である。X及びYは2級及び3級アミン及び開環エポキシドからなる群から選ばれた2価の有機基であり、但しXが開環エポキシドであるときはYはアミンであり、Yが開環エポキシドであるときはXはアミンである。aは2〜4であり、bは0〜100であり、dは0〜100であり、(b+d)は1〜100であり、cは1〜500である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明に関わる炭素繊維製造用処理剤は、耐熱性良好で、融着防止性に優れ、プレカーサー製造工程や耐炎化工程において優れた工程通過性を有する。特に本発明の処理剤を付与することで、焼成ムラなく、耐熱性と融着防止性を同時に著しく向上する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
A.コポリマー構造
本発明のコポリマーは、[X(Ca2aO)b2{SiO(R12cSi(R122(OCa2abX]なるポリシロキサンと[YO(Ca2aO)dY]なるポリアルキレンオキシドとの交互単位をもっている。
【0013】
ここで、R1は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチルであり、R2は2価の有機基(少なくとも1の炭素をもつ2価の炭化水素基であり、水酸基をもっていてもよくまたエーテル結合をもっていてもよい。その炭素数は10より小さいことが好ましい。)であり、X及びYは2級及び3級アミン及び開環エポキシドからなる群から選ばれた2価の有機基であり、但しXが開環エポキシドであるときはYはアミンであり、Yが開環エポキシドであるときはXはアミンである。aは2〜4、好ましくは2〜3であり、bは0〜100であり、dは0〜100であり(b+d)は1〜100、好ましくは10〜50であり、そしてcは1〜500、好ましくは10〜100である。反復単位の合計数は、単位数の増加につれて粘度が増加するので、高粘度物質の処理能力によってのみ制限されるが、実用上好ましくは各単位が2以上で、1000単位以下である。
【0014】
アミンを含有する単位はコポリマーの末端単位、即ち(AB)nAのAであるべきである。X又はYのいずれかで示される開環エポキシドは脂肪族、脂環族でもまた芳香環を含有するものでもよい。それらはまた水酸基を含有していてもよくまたエーテル結合を含有していてもよい。好ましい開環エポキシドは、−CH2CH(OH)(CH2vCH(OH)CH2−,−CH{CH2OH}(CH2vCH{CH2OH}−,−CH2CH(OH)(CH2vCH{CH2OH}−,−(CH2v−OCH2CH(OH)CH2−,−(CH2vOCH2CH(CH2{OH})−(ここでvはそれぞれの場合2〜6である)、ω−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アルケン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチレン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−β−メチルエチレン及びβ−(3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル)−β−メチルエチレンからなる群から選ばれる。
【0015】
X又はYのいずれかで示されるアミンは2級又は3級アミンである。より好ましいアミンは下記構造式(3)で示されるものである。
−R4N(R3)(R4g− …(3)
ここで、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素、最も好ましくはメチルであり、R4はアルキレン基、脂環族アルキレン基又はアラルキレン基(ヘテロ原子を含有していてもよい)、アルキレン基の炭素数は10より小さいことが好ましく、gは0又は1である。
【0016】
(AB)nA分子内で、各R1,R2,R3及びR4は同一でも異なっていてもよい。(Ca2aO)又は(OCa2a)で示されるポリオキシアルケンブロックはエチレンオキシド(a=2)、プロピレンオキシド(a=3)及びブチレンオキシド(a=4)のランダム又はブロック状体からなっていることが好ましい。これらオキシドの比は重要ではないが、生成コポリマーの所望の溶解度パラメータを満たすように調節することが好ましい。
【0017】
コポリマーの分子量は、ポリシロキサンブロック内のオキシアルキレン単位の数及びシロキシ基の数をかえることによって、アミノ成分に対するエポキシ成分のモル比をかえることによって調節できる。高分子量の物質を生成することが、柔軟性や耐久性等の特性が分子量に依存するので好ましいが、非架橋構造即ち線状分子を生成することも重要である。
【0018】
コポリマーの性質を制御する別の重要因子に分子中の相対的なシリコーン含量、即ちc及び(b+d)の値がある。一般にシリコーン含量の高いコポリマーほど疎水性であり、従って水溶性に乏しくより優れた柔軟性を与える。c:(b+d)の好ましい比は10:1〜1:10であり、最も好ましくは2:1である。末端基が開環エポキシドである場合、コポリマー末端は水素になる。末端基がアミンである場合はコポリマーの末端は1級又は2級アミン基となる。特に好ましいコポリマーは次の式(4)で示されるものである。
【0019】
HN(R3)(Ca2aO)bCH(CH3)CH2N(R3)−{CH2CH(OH)CH2O(CH23(SiO(R12cSi(R12(CH23OCH2CH(OH)CH2N(R3)(Ca2aO)bCH2CH(CH3)N(R3)}yH …(4)
(但し、R1、R2、R3、a、b、cは前述の通りであり、yは少なくとも2であり高粘度物を与えうる大きさをもちうる。式(I)中のb及びcの値に依存し、通常2から約1000までの範囲である。
B.製造法
本発明の化合物は2つの反応種、即ち[Q(Ca2aO)b2{SiO(R12cSi(R122(OCa2abQ]及びポリアルキレンオキシド[ZO(Ca2aO)dZ]を反応させることによって製造できる。上記式は、各QとZが1級又は2級アミン又はエポキシド含有基のいずれかであり、Qがアミンを含有する場合はZはエポキシドであり、またはその逆であるという条件を除き、前記の式と同じである。これらの反応種は公知の方法で製造しうる。例示的な方法をあげれば、一般式H(SiO(R12zSi(R12Hのハイドロジェンポリシロキサンを、アリルグリシジルエーテルのような末端にオレフィン性基をもつ不飽和エポキシドと、ヘキサクロロ白金酸等のヒドロシリル化触媒の存在下、加熱下に反応させてエポキシ末端封鎖ポリシロキサンを製造する方法がある。これらの方法は米国特許3,761,444号及び英国特許1,213,779号に記載されているように公知である。末端にオレフィン性基をもつ好ましいエポキシドの例を下記する。
【0020】
【化1】

【0021】
第2工程では、エポキシ末端封鎖ポリシロキサンを1級又は2級アミノ基を末端にもつポリアルキレンオキシドと反応させる。これらのアミノポリアルキレンオキシドの例としてはHunsman社から市販されている、下記式(5)で示されるJEFFAMINEシリーズが挙げられる。
(CH3)CH2(OCa2abOCH2CH(CH3)NH2 …(5)
反応はアルコールやアルコールと水の混合物のような適宜の溶媒中還流下に行われる。通常はエポキシ末端封鎖ポリシロキサンをアミン溶液に添加する。
【0022】
同様に、α,ω−ハイドロジェンシロキサンをアリル開始エポキシ末端ポリオキシアルケンオキシドでヒドロシリル化してもよい。このエポキシ末端組成物を次にジアミン(たとえばエチレンジアミン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン)と反応させてポリエーテルシロキサン単位同士を結合する。他の製造法も当業者に公知である。実用上、反応はアミン含有反応種を1〜30%、好ましくは1〜10%過剰で行われる。コポリマーの製造中過剰のアミンを用い末端基の多くがアミンになっていると思われるという事実にもかかわらず、ポリシロキサン上のエポキシ末端基が溶媒、水又はアルコールと副反応を起こして対応するジオール又はエーテルアルコールを形成する可能性もある。反応後、コポリマーの溶液に酢酸、クエン酸、酒石酸等のブレンステッド酸を直接加えて中和してもよく、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びジプロピレングリコールメチルエーテル等の不燃性溶媒で溶媒交換してもよい。また大気圧又は減圧下に溶媒を留去して反応生成物を分離してもよく、コポリマーの分子量及びエチレンオキシド含量により、生成物は粘稠な油状物やワックス状物でありうる。
C.処理剤の調製
本発明のコポリマーはそのままでも用いうるが、基材への付与の容易性から、適宜の液媒体に溶解、分散又は乳化して用いることが好ましい。好ましくは水性の溶液、乳化液又は懸濁液として基材に付与される。またイソプロパノール系の非水性溶媒溶液やコポリマーの混合溶液としても使用可能である。たとえばイソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びジプロピレングリコールメチルエーテル等の水混和性溶媒に溶かしたコポリマー溶液を水と混合して所望のコポリマー濃度にすることによって製造できる。
【0023】
本発明の炭素繊維製造用処理剤は、さらに他の平滑剤、界面活性剤、制電剤のうち少なくとも一種を含有してなるものでも良い。
【0024】
平滑剤としては、鉱物油(精製スピンドル油、流動パラフィン)、動植物油(ヤシ油、ヒマシ油など)、脂肪酸エステル(イソステアリルラウレート、オレイルオレエート、ジオレイルアジペートなど)、アルキルエーテルエステル(ラウリルアルコールのエチレンオキサイド3モル付加物ラウレートなど)、ポリエーテル系潤滑剤(ブタノールのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物など)、シリコーン化合物(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなど)およびワックスなどが挙げられ、これらのうち好ましいものは、脂肪酸エステル、アルキルエーテルエステル、ポリエーテル系潤滑剤およびシリコーン化合物である。
【0025】
界面活性剤としては、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物(オクチルアルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド、ステアリルアルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物など)、多価アルコールエステルのアルキレンオキサイド付加物(硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド25モル付加物、ソルビタントリオレエートのエチレンオキサイド20モル付加物)などが挙げられる。
【0026】
制電剤としては、ホスフェート、ホスファイト、脂肪酸石鹸、イミダゾリン系添加剤(ラウリルイミダゾリン、オレイルイミダゾリンなど)などが挙げられる。
【0027】
さらに処理剤は、その性能を損なわない範囲で、その他の添加剤およびpH調整剤などを含有してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フッ素化合物、防腐剤などが挙げられる。pH調整剤としては、アルカリ金属、アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0028】
本発明の化合物の全処理剤中における含有量、およびその他の平滑剤、界面活性剤、制電剤などの含有量は特に制限されないが、目標とする高度な耐熱性と融着防止性を保持するという観点から、本発明の化合物を通常40重量%以上含有するのが好ましい。
【0029】
本発明の処理剤は、炭素繊維製造におけるプレカーサーの製造工程や耐炎化工程での工程通過性に優れ、特にプレカーサーの融着防止性に優れており、処理剤の脱落による樹脂化がなく、炭素繊維の毛羽、糸切れの発生を低減する。
【0030】
本発明の処理剤は、一般的にはプレカーサー製造工程または耐炎化工程前の段階で付与される。その付与形態は、非含水、あるいは水で乳化したエマルション、いずれの状態でも処理することができる。非含水処理剤の場合は、原油のまま、もしくは希釈剤(有機溶媒、低粘度鉱物油など)で希釈して使用する。希釈比率およびエマルションの濃度は特に限定されない。
【0031】
給油方法については特に限定はなく、処理剤の溶液やエマルションに糸条を浸漬した後にニップローラーや圧縮空気で所定の付着量に調整する方法が一般的であるが、ノズル給油、ローラー給油またはスプレー給油なども適用可能である。処理剤の付着量は、繊維に対して通常純分0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5.0重量%である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。先ず、本発明に用いるコポリマーの合成方法、その利用についての非制限的例を下記する。
製造例1:本発明の(AB)nAコポリマーの製造
撹拌機、添加ロート及び還流コンデンサつきの1リットルの4ツ首フラスコ中にて、一般式HSi(CH32O〔Si(CH32O〕pSi(CH32Hのα,ω−ハイドロジェンシロキサン(モル過剰のエポキシドに従い表1に記載の量)を80℃に加熱した。クロロ白金酸(Ptとして5〜10ppm)を加えた後、80℃でアリルグリシジルエーテルのゆるやかな添加を開始した。SiHが検知されなくなるまで80〜90℃に温度を保った。過剰のアリルグリシジルエーテルを50mmHg、120℃で真空吸収除去した。生成したエポキシ末端封鎖流体をエポキシ量重量で特定した。
【0033】
【表1】

【0034】
第2工程で、アミノポリアルケンオキシド(5モル%過剰)[JEFFAMINE ED-900;a=2.5、b=15.5(前記式(5)中))あるいはJEFFAMINE ED-2001;a=2.5、b=40.5(前記式(5)中)]表2に記載の量及び最終コポリマーの50%溶液をつくるに十分な量の2−プロパノールを、撹拌機、添加ロート、還流コンデンサ及び温度計をもつ1リットルの4ツ首フラスコに入れた。反応混合物の温度を80℃に調節し、α,ω−ジエポキシシランを添加ロートから各添加間を1〜2時間にして3回添加した。滴定によりエポキシ官能性がなくなったときに反応を終了した。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例1〜4、比較例1〜4
上記のようにして調製した本発明のコポリマーNo.1〜4および比較化合物No.1〜4の耐樹脂化性、融着防止性、平滑性、制電性、安全性をそれぞれ以下の方法で測定した結果を表3に示す。
[耐樹脂化性の評価]
各化合物を240℃の循風乾燥機中で4時間放置後、トルエンにて洗浄し、当初の処理剤重量に対するトルエン洗浄後の樹脂分重量の割合(%)を測定する。値が小さいほど耐樹脂化性良好である。
[融着防止性の評価]
各化合物85重量部をポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル15重量部と配合したものを水に乳化し、エマルションを作成した。該エマルションをアクリルトウ(2400デニール/3000フィラメント)に純分付着量1.0重量%となるように付与し、乾燥してプレカーサートウを得た。このプレカーサートウを、240℃の循風乾燥機中に30分間放置して耐炎化繊維とし、この耐炎化繊維の融着状態を白紙上で観察した。
評価
◎:繊維の融着見られない
○:僅かに繊維が融着している
△:所々に繊維の融着が見られる
×:繊維の融着極めて多い
[平滑性の評価]
融着防止性の評価と同様にして作成した各化合物のエマルションを、アクリルフィラメント(75デニール/40フィラメント)に純分付着量0.5重量%となるように付与、乾燥して試験糸を得た。初張力10g、糸速度100m/minでクロムメッキした梨地ピンと接触させ、摩擦係数を求めた。値は小さいほど平滑性良好である。
[制電性の評価]
上記平滑性の評価時に、梨地ピン上で発生する静電気を測定した。
評価
◎:静電気の発生ほとんど無し
○:やや静電気発生
×:静電気発生多い
【0037】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるポリシロキサンと式(2)で示されるポリアルキレンオキシドの交互の単位からなるコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
[X(Ca2aO)b2{SiO(R12cSi(R122(OCa2abX] …(1)
[YO(Ca2aO)dY] …(2)
(但し、各R1は独立に炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R2は2価の有機基である。X及びYは2級及び3級アミン及び開環エポキシドからなる群から選ばれた2価の有機基であり、但しXが開環エポキシドであるときはYはアミンであり、Yが開環エポキシドであるときはXはアミンである。aは2〜4であり、bは0〜100であり、dは0〜100であり、(b+d)は1〜100であり、cは1〜500である。)
【請求項2】
式(1)のXまたは式(2)のYである2級又は3級アミンが、下記構造式(3)で示される請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
−R4N(R3)(R4g− …(3)
(但し、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素であり、R4はアルキレン基、脂環族アルキレン基又はアラルキレン基であり、これらはヘテロ原子を含有していてもよい。gは0又は1である)
【請求項3】
式(1)のXが2級又は3級アミンであり、式(2)のYが開環エポキシドである請求項1又は2記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項4】
式(1)のXが開環エポキシドであり、式(2)のYが2級又は3級アミンである請求項1又は2記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項5】
式(AB)nAで示され、各Aが2級又は3級アミンが末端にある式(1)の単位であり、各Bが開環エポキシドが末端にある式(2)の単位であり、nが2〜1000である請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項6】
式(AB)nAで示され、各Aが2級又は3級アミンが末端にある式(2)の単位であり、各Bが開環エポキシドが末端にある式(1)の単位であり、nが2〜1000である請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項7】
aが2又は3である請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項8】
(b+d)が10〜50である請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項9】
各R1がメチルである請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項10】
c:(b+d)の比が10:1〜1:10である請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項11】
式(1)のXまたは式(2)のYである開環エポキシドが、−CH2CH(OH)(CH2vCH(OH)CH2−,−CH{CH2OH}(CH2vCH{CH2OH}−,−CH2CH(OH)(CH2vCH{CH2OH}−,−(CH2v−OCH2CH(OH)CH2−,−(CH2vOCH2CH(CH2{OH})−(ここでvはそれぞれの場合2〜6である)、ω−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アルケン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチレン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−β−メチルエチレン及びβ−(3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル)−β−メチルエチレンからなる群から選ばれる請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
【請求項12】
式(4)で示される請求項1記載のコポリマーを含有することを特徴とする炭素繊維製造用処理剤。
HN(R3)(Ca2aO)bCH(CH3)CH2N(R3)−{CH2CH(OH)CH2O(CH23(SiO(R12cSi(R12(CH23OCH2CH(OH)CH2N(R3)(Ca2aO)bCH2CH(CH3)N(R3)}yH …(4)
(但し、R1、R2、R3、a、b、cは前述の通りであり、yは2〜1000である。)
【請求項13】
さらに、他の平滑剤、界面活性剤および制電剤のうち少なくとも一種を含有してなる請求項1〜12の何れか1項記載の炭素繊維製造用処理剤。

【公開番号】特開2007−177349(P2007−177349A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374592(P2005−374592)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】