炭酸カルシウム−シリカ複合材料およびその製造方法
【課題】
印刷適性を向上させるために、吸油性が高く、また、填料として用いた紙の嵩高効果が高い炭酸カルシウム-シリカ複合材料の提供。
【解決手段】 (1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60の範囲にあり、(2)該複合体の有する細孔の細孔半径rを下記式
【数1】
で表し、該aが−3〜23である範囲での細孔容積を水銀圧入法によって測定した場合に、aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、Vaが最大となる細孔半径範囲は12<a≦16の区分範囲内にあり、かつa≦16となる細孔半径を有する細孔の細孔容積合計が1.6〜2.5cc/gの範囲にある炭酸カルシウム−シリカ複合材体。所定比の塩化カルシウムと硫酸カルシウムの双方を含むスラリーに対してケイ酸ソーダを混合してケイ酸カルシウムとし、これを二酸化炭素とを反応させることにより製造できる。
印刷適性を向上させるために、吸油性が高く、また、填料として用いた紙の嵩高効果が高い炭酸カルシウム-シリカ複合材料の提供。
【解決手段】 (1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60の範囲にあり、(2)該複合体の有する細孔の細孔半径rを下記式
【数1】
で表し、該aが−3〜23である範囲での細孔容積を水銀圧入法によって測定した場合に、aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、Vaが最大となる細孔半径範囲は12<a≦16の区分範囲内にあり、かつa≦16となる細孔半径を有する細孔の細孔容積合計が1.6〜2.5cc/gの範囲にある炭酸カルシウム−シリカ複合材体。所定比の塩化カルシウムと硫酸カルシウムの双方を含むスラリーに対してケイ酸ソーダを混合してケイ酸カルシウムとし、これを二酸化炭素とを反応させることにより製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムの優れた特性と合成シリカの優れた特性とを併せ持つ炭酸カルシウム−シリカ複合材料とその好適な製造方法に関する。詳しくは、高い白色度等の炭酸カルシウムの優れた機能と、高比表面積、高吸油性等のシリカの優れた機能とを合わせ持つことを特徴とするシリカ−炭酸カルシウム複合材料とその好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙に際しては、紙の改質を目的として、パルプ繊維以外の無機系材料からなる微粒子を添加することが多い。これらに用いられる無機系材料は無機填料と呼ばれており、白色度等の光学的性質を改善する、填料自身の高吸油性による印刷時のインクの裏抜けを防止する、紙の平滑性を向上させるなどの目的に従い、各々の種類の無機填料の持つ特性によって各用途に用いられている。
【0003】
近年、環境問題への対応や輸送時のコスト削減の必要性、紙ユーザーからの品質向上への要求などから、低密度(嵩高)で印刷適性が高い紙への需要が高まっており、このような性能を向上させる填料の開発が望まれている。低密度な紙を抄紙する方法として、多くの細孔を持つ嵩高な填料をパルプ繊維の間に入り込ませ、填料由来の細孔を紙に持たせる方法がある。
【0004】
また、紙の印刷適性を向上させる方法としては、白色度の高い填料を用いて紙の白色度と不透明度を向上させる方法や、吸油性が高い填料を用いて、印刷時におけるインクを吸収させてインクの裏抜けやにじみなどを防止する効果を向上させる方法がある。填料の吸油性は、填料の持つ細孔容積の分布とその細孔容積に依存することが特許文献1に開示されており、高い吸油性によりインクの吸収効果を得るためには、細孔半径10000オングストローム以下の細孔によるインクの吸収が重要である。
【0005】
抄紙に用いられている填料には、タルク、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカなどがある。近年、pH4.5付近で紙を抄く酸性抄紙から、pH7.0〜8.5で紙を抄く中性抄紙に移行されている。炭酸カルシウムは、酸と反応、分解してしまうため酸性抄紙条件では用いられないが、中性抄紙においては他の填料と比較して安価であり、また高い白色度を持つという特徴のため汎用されている。
【0006】
炭酸カルシウムには、鉱山で採掘した結晶質石灰石を粉砕・分級して得られる重質炭酸カルシウムと、水酸化カルシウムを二酸化炭素もしくは炭酸ナトリウムと炭酸化反応させることで製造される軽質炭酸カルシウムがある。この軽質炭酸カルシウムには、アラゴナイト質結晶、カルサイト質結晶、バテライト質結晶の3種の結晶質があり、結晶形状はアラゴナイト質結晶が針状、カルサイト質結晶が立方体状、バテライト質結晶が球状となる。アラゴナイト質結晶はさらに二次凝集させてイガグリ状とすることができ、これにより抄紙の際の歩留まりを向上させることができる。またバテライト質結晶は光散乱効果が高く、紙の不透明度向上の効果がいっそう高い。さらに軽質炭酸カルシウムは後述するシリカに比べて填料として加えることによる紙の強度低下が少ないため、高配合することが容易であり、これによる嵩高効果も得ることができる。このように多様な結晶形状を持つこと、安価で経済性に優れることや白色度の高さ、中性域での安定性の高さなどの特徴から、中性抄紙には軽質炭酸カルシウムが多く利用されている。
【0007】
しかし、炭酸カルシウムを用いて抄紙した紙の印刷適性は、紙の白色度、不透明度が向上していることによる裏写り防止効果は大きいが、インクの吸収性が不十分であるためにインクの裏抜けに対する改善が不十分であるという問題がある。
【0008】
一方、中性抄紙における紙の填料としてはシリカも使用されている。填料として用いるシリカはアルカリ性であるケイ酸アルカリと、硫酸を代表とする鉱酸との中和反応により製造する方法が一般的である。即ち、このようにして製造されたシリカは一次粒子が凝集した、非晶質構造の二次凝集粒子であるため、決まった形状を持たず、多孔性物質である。この多孔性という特質により高比表面積であり、高い液体吸着能が得られ、また吸着力も高い。そのためシリカを填料として用いて抄紙した場合には、他の填料と比較して嵩高で、印刷時のインクの裏抜けの防止効果が高い紙を抄紙することができる。しかしながらシリカは、炭酸カルシウムに比べるとその白色度は低い。
【0009】
これら炭酸カルシウムとシリカ両方の特徴を活かすことにより、高い白色度と吸油性を持つ材料を得ることを目的として研究が行われてきた。例えば、炭酸カルシウム存在下でケイ酸アルカリを鉱酸によって中和し、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカを担持もしくは被覆させた材料が提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。しかし、熟成に昇温工程が必要であることや、反応時〜反応終了時のpHをアルカリ性とするために、析出したシリカの一次粒子が大きくなりすぎ、吸油性が高くならず、また、細孔容積も高くならないため、紙の嵩高効果も出にくいという問題があった。さらに上記製造方法では、鉱酸として一般的である硫酸を用いた場合、炭酸カルシウムとの反応が生じ、シリカ析出と共に不純物として硫酸カルシウムが生成析出することがスケーリングの原因となることや、塩酸を用いた場合は、炭酸カルシウムが反応により塩化カルシウムとなって溶出してしまうなどの問題もある。
【0010】
さらに水酸化カルシウムを炭酸ガスで炭酸化して炭酸カルシウムを製造する工程中に、シリカ粒子を添加して炭酸カルシウム−シリカ複合体を製造する技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながらこの方法では、炭酸カルシウムに担持出来るシリカが少なく、炭酸カルシウムとシリカとのモル比が55:45〜99:1となる。炭酸カルシウムに対するシリカの比率が低いと複合体の細孔容積が少なくなるため、紙に抄紙したときのインクの吸収性、嵩高効果が低くなるという問題がある。
【0011】
また、炭酸カルシウムとシリカによる材料を得る他の技術として、カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応によりケイ酸カルシウムを得て、該ケイ酸カルシウムと炭酸ガスを反応させることにより、炭酸カルシウム-シリカ複合体を得る技術がある。
【0012】
しかし該方法において、カルシウム質原料として塩化カルシウムを用いた場合には、得られる炭酸カルシウム-シリカ複合体は、細孔径分布において細孔半径1000〜3000オングストロームと小さい範囲にピークを持つため、全体の細孔容積が低いものにしかならない。
【0013】
また、カルシウム質原料として硫酸カルシウムを用いた場合には、得られる炭酸カルシウム-シリカ複合体が、細孔半径10000オングストローム以上の範囲に細孔径分布のピークを持つ。そのため、全体の細孔容積は高くなるが、吸油性に寄与する細孔半径10000オングストローム以下の細孔容積が低く、高い吸油性を得ることが困難である。
【0014】
また、硫酸カルシウムとケイ酸ソーダとの反応で得られたケイ酸カルシウムを、水熱反応により結晶質を変化させ、より細孔容積を高くする技術なども研究されているが、水熱反応にかかる熱量や耐圧設備などコストが高くなるという問題があった。
【0015】
【特許文献1】特許第3084125号公報
【特許文献2】特開2006−307229号公報
【特許文献3】特開2007−70164号公報
【特許文献4】特開2005−281925号公報
【特許文献5】特開2003−20223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、印刷適性を向上させるために、吸油性が高く、また、填料として用いた紙の嵩高効果が高い炭酸カルシウム-シリカ複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を続けてきた。カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応によりケイ酸カルシウムを得て、該ケイ酸カルシウムと炭酸ガスを反応させることにより、炭酸カルシウム−シリカ複合材料を得る方法において、カルシウム質原料として塩化カルシウムと硫酸カルシウムをある特定の混合割合で反応に用いること、カルシウム質原料の濃度、ケイ酸ソーダにおけるモル比(SiO2/Na2O)とシリカ(SiO2)濃度、カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応時間などの条件を検討した結果、該複合材料における、細孔半径10000オングストローム以下の細孔容積が高く、中性紙抄紙に最適な填料を見出し、本発明の完成に至った。
【0018】
即ち、本発明は 炭酸カルシウム−シリカ複合体であって、
(1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60の範囲にあり、
(2)該複合体の有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を、水銀圧入法によって測定した場合に、
(2−1)aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが12を超え16以下である区分範囲内にあり、かつ
(2−2)aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計すると1.6〜2.5cc/gの範囲にある、
ことを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、構成する炭酸カルシウムとシリカの効果により、多くの細孔と高い吸油性をもつ複合体である。高吸油性であることからインク吸収性に優れ、また、多くの細孔を持つことから嵩高であるため、填料として抄紙した場合、嵩高で印刷適性が高い紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、炭酸カルシウムとシリカによって構成される複合材料であり、単に炭酸カルシウムとシリカを混ぜ合わせたものではなく、炭酸カルシウムとシリカが相互に凝集した状態で粒子を形成している複合体である。
【0021】
本発明を構成するシリカは非晶質であり、細孔を多く持つため、高い吸油性を発揮する。しかしながら、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体(以下、単に「複合体」ともいう)を構成するシリカの割合が多ければ吸油量が高くなるというわけではなく、炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60、より好適には25:75〜30:70である時に高い吸油量を得ることができる。これは炭酸カルシウムとシリカそれぞれに由来する細孔のバランスにより、複合体の細孔分布がちょうど吸油に適した状態となるためであると推測される。換言すれば、炭酸カルシウムとシリカとの割合が上記範囲を外れると、以下に述べるような細孔分布や容積の複合体とすることができず、よって高い吸油量を得ることもできない。
【0022】
本発明の複合体は、複合体が有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表したとき、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を、水銀圧入法によって測定した場合に、aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが12を超え16以下である区分範囲内にある。
【0023】
該Vaが最大である細孔半径範囲が、a=12(r=3162オングストローム)未満の細孔半径範囲にある場合には細孔の総容積も小さくなるため、吸油量の低下に加えて、嵩高性も共に低下する。また、細孔半径が10000オングストローム以下の細孔が吸油性に寄与しているため、該Vaが最大である細孔半径範囲が、a=16(r=10000オングストローム)を超えた範囲にある場合には、全体の細孔容積は大きくなり複合体は嵩高になるが、10000オングストローム以下の細孔容積が小さくなり、複合体の吸油量が低下してしまう。より良好な吸油量と嵩高効果を得られる点で、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが13(r=4217オングストローム)を超え15(r=7499オングストローム)以下である区分範囲にあることが好ましい。
【0024】
本発明の複合体は、前述の式におけるaが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計すると1.6〜2.5cc/gの範囲にある。aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積の合計値が1.6cc/g未満の複合体は、填料として抄紙に用いた場合、複合体全体の細孔容積が低くなって嵩比容積が低下するため、紙の嵩高効果が期待できない。また、吸油性が低下し、インクの裏抜けやにじみを防止する効果が不十分となるため、印刷適正が低下する。一方で、本発明の発明者らの検討では、炭酸カルシウムとシリカとの複合体においては、aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積の合計値を2.5cc/g以上とすることは実質的にできない。より高い吸油量と嵩高効果を得られるという点で、aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計値が1.7cc/g以上であることが好ましい。また2.0cc/g以下であるものが、その製造がより容易である。
【0025】
本発明の複合体を構成する成分のうち、炭酸カルシウムの結晶質の構成は、通常、針状結晶であるアラゴナイト質結晶及び/又は球状結晶であるバテライト質結晶とにより構成されており、立方体状結晶構造のカルサイト質結晶は含まれていない。カルサイト質結晶が含まれる場合、細孔容積が低下しやすく、本発明の複合体が有するような細孔パターンや容積とはなり難い。本発明の複合体は、多くの場合には、アラゴナイト質結晶とバテライト質結晶とが、0:100〜90:10(質量比)の範囲にある。アラゴナイト質結晶による歩留まり向上性と、バテライト質結晶の光散乱性による白色度と不透明度の向上効果を複合体粒子に付加するため、アラゴナイト質結晶とバテライト質結晶の双方が含まれていることが好ましく、特に、アラゴナイト質結晶とバテライト質結晶とが50:50〜85:15であることが好ましい。
【0026】
本発明の複合体は、上記のような細孔分布及び容積を持つため高い吸油量を示し、通常は吸油量が150〜200[mL/100g]以上となり、好ましくは160[mL/100g]以上とすることも可能である。吸油量が150[mL/100g]以上あることにより、填料として用いて抄紙した場合、インクの裏抜け、にじみに対する効果が十分となる。なお、炭酸カルシウムとシリカとの複合体においては、その吸油量を200[mL/100g]を超えるものとすることは難しく、多くの場合には170[mL/100g]以下である。
【0027】
また本発明の複合体は、その見掛け比容が大きく、通常は3.7mL/g以上ある。従って、紙の填料として用いた場合に良好な嵩高効果を得ることができる。
【0028】
ついで以下に、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法について述べるが、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体はこの製造方法によって製造されたものに制限されるものではなく、如何なる製造方法によって製造してもよい。
【0029】
本発明の複合体を製造するための好適な製造方法は、塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で30:70〜55:45の範囲で含むスラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合してケイ酸カルシウムを生じさせ、ついで該ケイ酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させる方法である(以下、この製造方法を「本発明の製造方法」ともいう)。なお以下の記載においては、Ca、Naなどの濃度は、その実際の存在形態に係らず酸化物(CaO、Na2Oなど)としての換算値で示す場合がある。
【0030】
当該方法においては、まず、塩化カルシウムと硫酸カルシウムからなるカルシウム原料を水に分散させスラリー(以下、「カルシウム質原料スラリー」ともいう)とする。該カルシウム質原料スラリーは塩化カルシウムと硫酸カルシウムのモル比を30:70〜55:45とし、さらに好適には40:60〜50:50の割合とする。塩化カルシウムと硫酸カルシウムの比率がこの範囲を外れた場合、細孔容積の最大ピーク位置が好適な範囲を外れてしまい、本発明の複合体とすることが困難となり、高い吸油性と嵩高性を発揮できる複合体とすることができない。
【0031】
該カルシウム質原料スラリーはCaO換算濃度として6〜9[g/100mL]とすることが好ましい。CaO換算濃度が6[g/100mL]未満であると炭酸化後の該炭酸カルシウム結晶の構成比率においてカルサイト質結晶が生じるため好ましくなく、9[g/100mL]を超えると反応時のスラリー粘度が高くなり、十分な攪拌が得られなくなるため好ましくない。該カルシウム質原料スラリーの調製方法は限定しないが、塩化カルシウム水溶液に硫酸カルシウム分散させた後、水を加え容量を調整する方法により、簡便に目的濃度のスラリーに調製することができる。
【0032】
本発明の製造方法においては、上記のようなカルシウム質原料スラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合する。この混合により反応液(混合液)中にケイ酸カルシウムが生じる。逆にケイ酸ソーダに対してカルシウム質原料スラリーを混合すると、カルシウム原料を核とした凝集物が生じ、反応が不完全となるという問題を生じる。
【0033】
ケイ酸ソーダを混合する際には、カルシウム質原料スラリーを十分に攪拌しながら、これへケイ酸ソーダを連続で添加して、ケイ酸カルシウムスラリーを得る方法が好ましい。
【0034】
混合するケイ酸ソーダとしてはSiO2とNa2Oのモル比がSiO2/Na2O=2.0〜3.0のものであることが好ましく、より好ましくは2.2〜2.7である。
【0035】
また、ケイ酸ソーダの添加量はCaOに対するNa2Oのモル比がCaO/Na2O=1.0〜1.2となるように加えることが好ましい。これにより、最終的に得られる複合体の炭酸カルシウムとシリカとのモル比が25:75〜40:60の範囲となるようにすることが容易となる。前述の通り、炭酸カルシウムとシリカのモル比上記範囲を外れると、細孔容積の分布に影響があり、炭酸カルシウムのモル比が増加すると10000オングストローム(a=16)以上の大きい細孔半径の分布が増加して全体の細孔容積は増加するが、吸油性に寄与する細孔半径10000オングストローム以下の細孔容積が低下してしまう。逆にシリカのモル比が増加すると10000オングストローム以下の細孔の容積は増加するが、全体の細孔容積が減少するため、嵩高性が期待できなくなる。
【0036】
該ケイ酸ソーダのシリカ(SiO2)濃度は、5.0〜15.0[g/100mL]であることが好ましい。5.0[g/100mL]未満では添加するケイ酸ソーダの薬液量が増加し現実的ではなく、15.0[g/100mL]を超えると反応で生じた該ケイ酸カルシウムスラリーの濃度が高くなり、スラリーの粘度が上昇することにより攪拌が十分でなくなるため好ましくない。
【0037】
該ケイ酸カルシウムを得る反応は、常温で行うことが出来る。スラリー温度が摂氏10度未満、又は60度を超える温度で反応を行うと、炭酸化後の結晶比率が変化し、カルサイト質結晶の存在比が増加するため好ましくない。
【0038】
加えて、該ケイ酸ソーダを50分から70分の時間で添加し反応を行うことが好ましい。これは、該ケイ酸カルシウムの生成速度に影響するためで、50分未満もしくは70分を越える時間で該ケイ酸ソーダの添加反応を終了させると、炭酸化した後の細孔容積分布が好適な範囲から外れてしまうため、好ましくない。
【0039】
本発明の製造方法においては、上記のようにして得たケイ酸カルシウムと、二酸化炭素(炭酸ガス)とを反応(炭酸化反応)させ、ケイ酸カルシウム−シリカ複合体を得る。
【0040】
炭酸化反応に際し、ケイ酸カルシウムと炭酸ガスとを反応させる方法は特に制限されないが、好適には、上記のようにしてカルシウム質原料スラリーにケイ酸ソーダを混合して得たケイ酸カルシウムスラリーを、そのまま原料とし、これへ炭酸ガスを吹き込めばよい。
【0041】
炭酸ガスの吹込みによる炭酸化反応においては、常温下で十分に攪拌しながらの炭酸ガスを吹き込むことが好ましい。炭酸化反応は常温で十分に進むことから、温度操作の必要はない。むしろ、高温のスラリー中では炭酸ガスが溶解しにくくなり、炭酸化反応に非常に長い時間がかかるため効率的ではない。
【0042】
炭酸ガスの吹き込みは、実質的にすべてのケイ酸カルシウムが炭酸カルシウム(及びシリカ)に変換されるまで行えばよい。炭酸化反応の終点は、スラリー内での中和反応が完了したことを、反応液のpHをモニターすることにより把握できる。
【0043】
このようにして得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体は炭酸カルシウムとシリカが相互に凝集した粒子の懸濁液となる。この懸濁液をそのまま抄紙工程等に使用しても良いが、小規模であればろ紙やメンブランフィルター、大規模であればベルトフィルタやドラムフィルタなどのろ過による固液分離を行うことが好ましい。これは、炭酸化反応で生成する副生成物である塩類を除くことが目的で、余分な塩類が抄紙工程において難溶性の金属塩などに変化し、スケールなどのトラブルの原因となるおそれがあるためである。加えて、固液分離を行い得られたケークを水洗するなど、余分な塩を除く操作を行うことがより好ましい。
【0044】
また得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体の用途にもよるが、例えば抄紙工程において填料として使用する場合には、大きい祖粒物を除くため、振動篩やスクリーンを用いて、150μmを越える粗大粒子を除去することが好ましい。むろん、炭酸カルシウム−シリカ複合体の用途に応じ、篩い分け等を行う粒子径は適宜設定すればよい。
【0045】
本発明の製造方法によると、通常は得られる複合体の平均粒子径が25〜45μmとなる。中性紙抄紙に填料として用いる場合、平均粒子径がこの範囲にあるときパルプ繊維への歩留まりが最も良い。一方で、製造中における撹拌強度により粒子形状をコントロールすることも可能であり、粒子の構造が炭酸カルシウムとシリカが混ざり合ったものとなっているため、反応終了後に得られた複合体を湿式粉砕機によって、任意の平均粒子径に調整しても良い。
【0046】
また、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体はゴム用充填材及び、感熱紙用のフィラーなど中性紙の填料以外の他の用途にも使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を更に具体的に説明するため実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明における形質炭酸カルシウム-シリカ複合材料の各特性値の測定方法を下記に示す。
【0048】
炭酸カルシウムとシリカのモル比:蛍光X線分析装置(リガク製 ZSX PrimusII)を用いて分析した。
【0049】
細孔容積分布の測定:水銀ポロシメーター(Thermo Electron Pascal240)を用いて、JIS R1655に基づいて行った。測定結果の評価は、細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲で、上記式においてaの差が1となるように区分した細孔半径範囲ごとに、各々区分範囲における細孔容積Vaを算出した。即ち、aが−3〜−2となる細孔半径(42〜56オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V−2)、aが−2〜−1となる細孔半径(56〜75オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V−1)、・・・・、aが22〜23となる細孔半径(56234〜74989オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V23)を各々求めた。なお、各区分細孔容積Vaの算出においては、区分点となる細孔半径値を有する細孔の細孔容積は、該区分点よりも小さい細孔半径を有する側の細孔容積に含めるものとした。なお、この測定での有効数字は3桁である。
【0050】
吸油量:JIS K5101−13−1による。
【0051】
結晶質の同定:X線回折装置(リガク製 RINT−1400)を用いて分析を行った。
【0052】
見掛け比容:サンプルを乾燥させて得られる粉体を、目開き150umのふるいを用いて粒子径をそろえた上で、メスシリンダーを用い、十分にタンピングした上で容積を測定し、単位重量当たりの容積を測定した。
【0053】
実施例1
CaCl2濃度で10.65[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.4L、硫酸カルシウム(二水石膏)240gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が50:50となるスラリーを反応槽(内径190mmで高さ320mm、邪魔板付)に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.65、SiO2濃度が10.97[g/100mL])3.2Lを1時間かけて連続で添加し、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0054】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを炭酸化用容器(内径125mmで高さ495mmH、邪魔板付)にいれ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了とした。
【0055】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が29:71、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.91[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.76[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは13<a≦14となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V14)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0056】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は165[mL/100g]、見掛け比容は4.1[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:バテライト=80:20であった。
【0057】
実施例2
CaCl2濃度で10.65[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.1L、硫酸カルシウム(二水石膏)290gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が40:60となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.57、SiO2濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0058】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0059】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が30:70、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.88[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.73[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0060】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は160[mL/100g]、見掛け比容は3.8[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:バテライト=60:40であった。
【0061】
実施例3
CaCl2濃度で10.15[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.4L、硫酸カルシウム(二水石膏)240gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が50:50となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.22、SiO2濃度9.68[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0062】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0063】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が30:70、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.45[cc/g] であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.92[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは、14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V14)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0064】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は155[mL/100g]、見掛け比容は4.1[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はバテライトのみであった。
【0065】
実施例4
CaCl2濃度で10.15[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.4L、硫酸カルシウム(二水石膏)240gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が50:50となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.74、SiO2濃度12.97[g/100mL])2.9Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0066】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0067】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が26:74、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.21[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16である細孔半径を有する細孔の細孔容積は1.65[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0068】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は150[mL/100g]、見掛け比容は4.1[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はバテライトのみであった。
【0069】
比較例1
CaCl2濃度で14.53[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液2.0Lを実施例1で使用したものと同じ反応槽入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.52、SiO2濃度10.79[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0070】
ここで得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0071】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が39:61、aが−3〜23の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.48[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16となる範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.35[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは9<a≦10となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V10)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0072】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は130[mL/100g]、見掛け比容は3.5[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=10:90であった。
【0073】
比較例2
CaCl2濃度で11.38[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液2.0L、硫酸カルシウム(二水石膏)100gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が80:20となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.2となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.61、SiO2濃度9.84[g/100mL])3.5Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0074】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0075】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が32:68、aが−3〜23の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.31[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.29[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは10<a≦11となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V11)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0076】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は135[mL/100g]、見掛け比容は3.7[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=70:30であった。
【0077】
比較例3
CaCl2濃度で10.65[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.7L、硫酸カルシウム(二水石膏)200gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が60:40となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.57、SiO2濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0078】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0079】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が27:73、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.69[cc/g]、そのうちaが−3〜16の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.60[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは12<a≦13となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V13)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0080】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は145[mL/100g]、見掛け比容は4.0[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はアラゴナイト:カルサイト=90:10であった。
【0081】
比較例4
CaCl2濃度で11.38[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液0.5L、硫酸カルシウム(二水石膏)390gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が20:80となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.57、SiO2濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0082】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0083】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が37:63、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.11[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.11[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V13)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0084】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は120[mL/100g]、見掛け比容は3.6[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はアラゴナイト:バテライト=30:70であった。
【0085】
比較例5
硫酸カルシウム(二水石膏)450gからなるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.52、SiO2濃度10.79[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0086】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。その後、スラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が40:60、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は0.643[cc/g]であり、そのうち、aが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は0.354[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは19<a≦20となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V20)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0087】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は75[mL/100g]、見掛け比容は2.0[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はバテライトのみであった。
【0088】
比較例6
軽質炭酸カルシウムをスラリー化し、目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は0.953[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は0.908[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0089】
またこの炭酸カルシウムの吸油量は65[mL/100g]、見掛け比容は2.0[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=30:70であった。
【0090】
比較例7
比較例1で使用したものと同じ反応容器中に軽質炭酸カルシウム150gを水に分散し、ここにSiO2濃度16.03[g/100mL]、Na2O濃度5.69[g/100mL]のケイ酸ソーダ溶液を955mL加えた後、水を加え、全量を3Lとした。この混合スラリーを十分に攪拌しながら加熱し、85℃とした。
【0091】
混合スラリーに、10%硫酸溶液を加えた。なお、硫酸添加後の最終pHが7.5、全硫酸添加時間は120分間となるように、一定速度で硫酸を添加した。このスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.12[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔容積(V−2からV16までの合計値)は0.799[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは16<a≦17となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0092】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は120[mL/100g]、見掛け比容は2.5[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=30:70であった。
【0093】
上記実施例1〜4、比較例1〜6における各原料の組成等を表2に、得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体の物性を表3にまとめて示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施例1で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図2】実施例2で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図3】実施例3で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図4】実施例4で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図5】比較例1で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図6】比較例2で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図7】比較例3で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図8】比較例4で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図9】比較例5で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図10】比較例6に示した炭酸カルシウムの細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図11】比較例7で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムの優れた特性と合成シリカの優れた特性とを併せ持つ炭酸カルシウム−シリカ複合材料とその好適な製造方法に関する。詳しくは、高い白色度等の炭酸カルシウムの優れた機能と、高比表面積、高吸油性等のシリカの優れた機能とを合わせ持つことを特徴とするシリカ−炭酸カルシウム複合材料とその好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙に際しては、紙の改質を目的として、パルプ繊維以外の無機系材料からなる微粒子を添加することが多い。これらに用いられる無機系材料は無機填料と呼ばれており、白色度等の光学的性質を改善する、填料自身の高吸油性による印刷時のインクの裏抜けを防止する、紙の平滑性を向上させるなどの目的に従い、各々の種類の無機填料の持つ特性によって各用途に用いられている。
【0003】
近年、環境問題への対応や輸送時のコスト削減の必要性、紙ユーザーからの品質向上への要求などから、低密度(嵩高)で印刷適性が高い紙への需要が高まっており、このような性能を向上させる填料の開発が望まれている。低密度な紙を抄紙する方法として、多くの細孔を持つ嵩高な填料をパルプ繊維の間に入り込ませ、填料由来の細孔を紙に持たせる方法がある。
【0004】
また、紙の印刷適性を向上させる方法としては、白色度の高い填料を用いて紙の白色度と不透明度を向上させる方法や、吸油性が高い填料を用いて、印刷時におけるインクを吸収させてインクの裏抜けやにじみなどを防止する効果を向上させる方法がある。填料の吸油性は、填料の持つ細孔容積の分布とその細孔容積に依存することが特許文献1に開示されており、高い吸油性によりインクの吸収効果を得るためには、細孔半径10000オングストローム以下の細孔によるインクの吸収が重要である。
【0005】
抄紙に用いられている填料には、タルク、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカなどがある。近年、pH4.5付近で紙を抄く酸性抄紙から、pH7.0〜8.5で紙を抄く中性抄紙に移行されている。炭酸カルシウムは、酸と反応、分解してしまうため酸性抄紙条件では用いられないが、中性抄紙においては他の填料と比較して安価であり、また高い白色度を持つという特徴のため汎用されている。
【0006】
炭酸カルシウムには、鉱山で採掘した結晶質石灰石を粉砕・分級して得られる重質炭酸カルシウムと、水酸化カルシウムを二酸化炭素もしくは炭酸ナトリウムと炭酸化反応させることで製造される軽質炭酸カルシウムがある。この軽質炭酸カルシウムには、アラゴナイト質結晶、カルサイト質結晶、バテライト質結晶の3種の結晶質があり、結晶形状はアラゴナイト質結晶が針状、カルサイト質結晶が立方体状、バテライト質結晶が球状となる。アラゴナイト質結晶はさらに二次凝集させてイガグリ状とすることができ、これにより抄紙の際の歩留まりを向上させることができる。またバテライト質結晶は光散乱効果が高く、紙の不透明度向上の効果がいっそう高い。さらに軽質炭酸カルシウムは後述するシリカに比べて填料として加えることによる紙の強度低下が少ないため、高配合することが容易であり、これによる嵩高効果も得ることができる。このように多様な結晶形状を持つこと、安価で経済性に優れることや白色度の高さ、中性域での安定性の高さなどの特徴から、中性抄紙には軽質炭酸カルシウムが多く利用されている。
【0007】
しかし、炭酸カルシウムを用いて抄紙した紙の印刷適性は、紙の白色度、不透明度が向上していることによる裏写り防止効果は大きいが、インクの吸収性が不十分であるためにインクの裏抜けに対する改善が不十分であるという問題がある。
【0008】
一方、中性抄紙における紙の填料としてはシリカも使用されている。填料として用いるシリカはアルカリ性であるケイ酸アルカリと、硫酸を代表とする鉱酸との中和反応により製造する方法が一般的である。即ち、このようにして製造されたシリカは一次粒子が凝集した、非晶質構造の二次凝集粒子であるため、決まった形状を持たず、多孔性物質である。この多孔性という特質により高比表面積であり、高い液体吸着能が得られ、また吸着力も高い。そのためシリカを填料として用いて抄紙した場合には、他の填料と比較して嵩高で、印刷時のインクの裏抜けの防止効果が高い紙を抄紙することができる。しかしながらシリカは、炭酸カルシウムに比べるとその白色度は低い。
【0009】
これら炭酸カルシウムとシリカ両方の特徴を活かすことにより、高い白色度と吸油性を持つ材料を得ることを目的として研究が行われてきた。例えば、炭酸カルシウム存在下でケイ酸アルカリを鉱酸によって中和し、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカを担持もしくは被覆させた材料が提案されている(例えば特許文献2〜4参照)。しかし、熟成に昇温工程が必要であることや、反応時〜反応終了時のpHをアルカリ性とするために、析出したシリカの一次粒子が大きくなりすぎ、吸油性が高くならず、また、細孔容積も高くならないため、紙の嵩高効果も出にくいという問題があった。さらに上記製造方法では、鉱酸として一般的である硫酸を用いた場合、炭酸カルシウムとの反応が生じ、シリカ析出と共に不純物として硫酸カルシウムが生成析出することがスケーリングの原因となることや、塩酸を用いた場合は、炭酸カルシウムが反応により塩化カルシウムとなって溶出してしまうなどの問題もある。
【0010】
さらに水酸化カルシウムを炭酸ガスで炭酸化して炭酸カルシウムを製造する工程中に、シリカ粒子を添加して炭酸カルシウム−シリカ複合体を製造する技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながらこの方法では、炭酸カルシウムに担持出来るシリカが少なく、炭酸カルシウムとシリカとのモル比が55:45〜99:1となる。炭酸カルシウムに対するシリカの比率が低いと複合体の細孔容積が少なくなるため、紙に抄紙したときのインクの吸収性、嵩高効果が低くなるという問題がある。
【0011】
また、炭酸カルシウムとシリカによる材料を得る他の技術として、カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応によりケイ酸カルシウムを得て、該ケイ酸カルシウムと炭酸ガスを反応させることにより、炭酸カルシウム-シリカ複合体を得る技術がある。
【0012】
しかし該方法において、カルシウム質原料として塩化カルシウムを用いた場合には、得られる炭酸カルシウム-シリカ複合体は、細孔径分布において細孔半径1000〜3000オングストロームと小さい範囲にピークを持つため、全体の細孔容積が低いものにしかならない。
【0013】
また、カルシウム質原料として硫酸カルシウムを用いた場合には、得られる炭酸カルシウム-シリカ複合体が、細孔半径10000オングストローム以上の範囲に細孔径分布のピークを持つ。そのため、全体の細孔容積は高くなるが、吸油性に寄与する細孔半径10000オングストローム以下の細孔容積が低く、高い吸油性を得ることが困難である。
【0014】
また、硫酸カルシウムとケイ酸ソーダとの反応で得られたケイ酸カルシウムを、水熱反応により結晶質を変化させ、より細孔容積を高くする技術なども研究されているが、水熱反応にかかる熱量や耐圧設備などコストが高くなるという問題があった。
【0015】
【特許文献1】特許第3084125号公報
【特許文献2】特開2006−307229号公報
【特許文献3】特開2007−70164号公報
【特許文献4】特開2005−281925号公報
【特許文献5】特開2003−20223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、印刷適性を向上させるために、吸油性が高く、また、填料として用いた紙の嵩高効果が高い炭酸カルシウム-シリカ複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を続けてきた。カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応によりケイ酸カルシウムを得て、該ケイ酸カルシウムと炭酸ガスを反応させることにより、炭酸カルシウム−シリカ複合材料を得る方法において、カルシウム質原料として塩化カルシウムと硫酸カルシウムをある特定の混合割合で反応に用いること、カルシウム質原料の濃度、ケイ酸ソーダにおけるモル比(SiO2/Na2O)とシリカ(SiO2)濃度、カルシウム質原料とケイ酸ソーダとの反応時間などの条件を検討した結果、該複合材料における、細孔半径10000オングストローム以下の細孔容積が高く、中性紙抄紙に最適な填料を見出し、本発明の完成に至った。
【0018】
即ち、本発明は 炭酸カルシウム−シリカ複合体であって、
(1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60の範囲にあり、
(2)該複合体の有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を、水銀圧入法によって測定した場合に、
(2−1)aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが12を超え16以下である区分範囲内にあり、かつ
(2−2)aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計すると1.6〜2.5cc/gの範囲にある、
ことを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、構成する炭酸カルシウムとシリカの効果により、多くの細孔と高い吸油性をもつ複合体である。高吸油性であることからインク吸収性に優れ、また、多くの細孔を持つことから嵩高であるため、填料として抄紙した場合、嵩高で印刷適性が高い紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、炭酸カルシウムとシリカによって構成される複合材料であり、単に炭酸カルシウムとシリカを混ぜ合わせたものではなく、炭酸カルシウムとシリカが相互に凝集した状態で粒子を形成している複合体である。
【0021】
本発明を構成するシリカは非晶質であり、細孔を多く持つため、高い吸油性を発揮する。しかしながら、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体(以下、単に「複合体」ともいう)を構成するシリカの割合が多ければ吸油量が高くなるというわけではなく、炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60、より好適には25:75〜30:70である時に高い吸油量を得ることができる。これは炭酸カルシウムとシリカそれぞれに由来する細孔のバランスにより、複合体の細孔分布がちょうど吸油に適した状態となるためであると推測される。換言すれば、炭酸カルシウムとシリカとの割合が上記範囲を外れると、以下に述べるような細孔分布や容積の複合体とすることができず、よって高い吸油量を得ることもできない。
【0022】
本発明の複合体は、複合体が有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表したとき、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を、水銀圧入法によって測定した場合に、aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが12を超え16以下である区分範囲内にある。
【0023】
該Vaが最大である細孔半径範囲が、a=12(r=3162オングストローム)未満の細孔半径範囲にある場合には細孔の総容積も小さくなるため、吸油量の低下に加えて、嵩高性も共に低下する。また、細孔半径が10000オングストローム以下の細孔が吸油性に寄与しているため、該Vaが最大である細孔半径範囲が、a=16(r=10000オングストローム)を超えた範囲にある場合には、全体の細孔容積は大きくなり複合体は嵩高になるが、10000オングストローム以下の細孔容積が小さくなり、複合体の吸油量が低下してしまう。より良好な吸油量と嵩高効果を得られる点で、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが13(r=4217オングストローム)を超え15(r=7499オングストローム)以下である区分範囲にあることが好ましい。
【0024】
本発明の複合体は、前述の式におけるaが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計すると1.6〜2.5cc/gの範囲にある。aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積の合計値が1.6cc/g未満の複合体は、填料として抄紙に用いた場合、複合体全体の細孔容積が低くなって嵩比容積が低下するため、紙の嵩高効果が期待できない。また、吸油性が低下し、インクの裏抜けやにじみを防止する効果が不十分となるため、印刷適正が低下する。一方で、本発明の発明者らの検討では、炭酸カルシウムとシリカとの複合体においては、aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積の合計値を2.5cc/g以上とすることは実質的にできない。より高い吸油量と嵩高効果を得られるという点で、aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計値が1.7cc/g以上であることが好ましい。また2.0cc/g以下であるものが、その製造がより容易である。
【0025】
本発明の複合体を構成する成分のうち、炭酸カルシウムの結晶質の構成は、通常、針状結晶であるアラゴナイト質結晶及び/又は球状結晶であるバテライト質結晶とにより構成されており、立方体状結晶構造のカルサイト質結晶は含まれていない。カルサイト質結晶が含まれる場合、細孔容積が低下しやすく、本発明の複合体が有するような細孔パターンや容積とはなり難い。本発明の複合体は、多くの場合には、アラゴナイト質結晶とバテライト質結晶とが、0:100〜90:10(質量比)の範囲にある。アラゴナイト質結晶による歩留まり向上性と、バテライト質結晶の光散乱性による白色度と不透明度の向上効果を複合体粒子に付加するため、アラゴナイト質結晶とバテライト質結晶の双方が含まれていることが好ましく、特に、アラゴナイト質結晶とバテライト質結晶とが50:50〜85:15であることが好ましい。
【0026】
本発明の複合体は、上記のような細孔分布及び容積を持つため高い吸油量を示し、通常は吸油量が150〜200[mL/100g]以上となり、好ましくは160[mL/100g]以上とすることも可能である。吸油量が150[mL/100g]以上あることにより、填料として用いて抄紙した場合、インクの裏抜け、にじみに対する効果が十分となる。なお、炭酸カルシウムとシリカとの複合体においては、その吸油量を200[mL/100g]を超えるものとすることは難しく、多くの場合には170[mL/100g]以下である。
【0027】
また本発明の複合体は、その見掛け比容が大きく、通常は3.7mL/g以上ある。従って、紙の填料として用いた場合に良好な嵩高効果を得ることができる。
【0028】
ついで以下に、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法について述べるが、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体はこの製造方法によって製造されたものに制限されるものではなく、如何なる製造方法によって製造してもよい。
【0029】
本発明の複合体を製造するための好適な製造方法は、塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で30:70〜55:45の範囲で含むスラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合してケイ酸カルシウムを生じさせ、ついで該ケイ酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させる方法である(以下、この製造方法を「本発明の製造方法」ともいう)。なお以下の記載においては、Ca、Naなどの濃度は、その実際の存在形態に係らず酸化物(CaO、Na2Oなど)としての換算値で示す場合がある。
【0030】
当該方法においては、まず、塩化カルシウムと硫酸カルシウムからなるカルシウム原料を水に分散させスラリー(以下、「カルシウム質原料スラリー」ともいう)とする。該カルシウム質原料スラリーは塩化カルシウムと硫酸カルシウムのモル比を30:70〜55:45とし、さらに好適には40:60〜50:50の割合とする。塩化カルシウムと硫酸カルシウムの比率がこの範囲を外れた場合、細孔容積の最大ピーク位置が好適な範囲を外れてしまい、本発明の複合体とすることが困難となり、高い吸油性と嵩高性を発揮できる複合体とすることができない。
【0031】
該カルシウム質原料スラリーはCaO換算濃度として6〜9[g/100mL]とすることが好ましい。CaO換算濃度が6[g/100mL]未満であると炭酸化後の該炭酸カルシウム結晶の構成比率においてカルサイト質結晶が生じるため好ましくなく、9[g/100mL]を超えると反応時のスラリー粘度が高くなり、十分な攪拌が得られなくなるため好ましくない。該カルシウム質原料スラリーの調製方法は限定しないが、塩化カルシウム水溶液に硫酸カルシウム分散させた後、水を加え容量を調整する方法により、簡便に目的濃度のスラリーに調製することができる。
【0032】
本発明の製造方法においては、上記のようなカルシウム質原料スラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合する。この混合により反応液(混合液)中にケイ酸カルシウムが生じる。逆にケイ酸ソーダに対してカルシウム質原料スラリーを混合すると、カルシウム原料を核とした凝集物が生じ、反応が不完全となるという問題を生じる。
【0033】
ケイ酸ソーダを混合する際には、カルシウム質原料スラリーを十分に攪拌しながら、これへケイ酸ソーダを連続で添加して、ケイ酸カルシウムスラリーを得る方法が好ましい。
【0034】
混合するケイ酸ソーダとしてはSiO2とNa2Oのモル比がSiO2/Na2O=2.0〜3.0のものであることが好ましく、より好ましくは2.2〜2.7である。
【0035】
また、ケイ酸ソーダの添加量はCaOに対するNa2Oのモル比がCaO/Na2O=1.0〜1.2となるように加えることが好ましい。これにより、最終的に得られる複合体の炭酸カルシウムとシリカとのモル比が25:75〜40:60の範囲となるようにすることが容易となる。前述の通り、炭酸カルシウムとシリカのモル比上記範囲を外れると、細孔容積の分布に影響があり、炭酸カルシウムのモル比が増加すると10000オングストローム(a=16)以上の大きい細孔半径の分布が増加して全体の細孔容積は増加するが、吸油性に寄与する細孔半径10000オングストローム以下の細孔容積が低下してしまう。逆にシリカのモル比が増加すると10000オングストローム以下の細孔の容積は増加するが、全体の細孔容積が減少するため、嵩高性が期待できなくなる。
【0036】
該ケイ酸ソーダのシリカ(SiO2)濃度は、5.0〜15.0[g/100mL]であることが好ましい。5.0[g/100mL]未満では添加するケイ酸ソーダの薬液量が増加し現実的ではなく、15.0[g/100mL]を超えると反応で生じた該ケイ酸カルシウムスラリーの濃度が高くなり、スラリーの粘度が上昇することにより攪拌が十分でなくなるため好ましくない。
【0037】
該ケイ酸カルシウムを得る反応は、常温で行うことが出来る。スラリー温度が摂氏10度未満、又は60度を超える温度で反応を行うと、炭酸化後の結晶比率が変化し、カルサイト質結晶の存在比が増加するため好ましくない。
【0038】
加えて、該ケイ酸ソーダを50分から70分の時間で添加し反応を行うことが好ましい。これは、該ケイ酸カルシウムの生成速度に影響するためで、50分未満もしくは70分を越える時間で該ケイ酸ソーダの添加反応を終了させると、炭酸化した後の細孔容積分布が好適な範囲から外れてしまうため、好ましくない。
【0039】
本発明の製造方法においては、上記のようにして得たケイ酸カルシウムと、二酸化炭素(炭酸ガス)とを反応(炭酸化反応)させ、ケイ酸カルシウム−シリカ複合体を得る。
【0040】
炭酸化反応に際し、ケイ酸カルシウムと炭酸ガスとを反応させる方法は特に制限されないが、好適には、上記のようにしてカルシウム質原料スラリーにケイ酸ソーダを混合して得たケイ酸カルシウムスラリーを、そのまま原料とし、これへ炭酸ガスを吹き込めばよい。
【0041】
炭酸ガスの吹込みによる炭酸化反応においては、常温下で十分に攪拌しながらの炭酸ガスを吹き込むことが好ましい。炭酸化反応は常温で十分に進むことから、温度操作の必要はない。むしろ、高温のスラリー中では炭酸ガスが溶解しにくくなり、炭酸化反応に非常に長い時間がかかるため効率的ではない。
【0042】
炭酸ガスの吹き込みは、実質的にすべてのケイ酸カルシウムが炭酸カルシウム(及びシリカ)に変換されるまで行えばよい。炭酸化反応の終点は、スラリー内での中和反応が完了したことを、反応液のpHをモニターすることにより把握できる。
【0043】
このようにして得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体は炭酸カルシウムとシリカが相互に凝集した粒子の懸濁液となる。この懸濁液をそのまま抄紙工程等に使用しても良いが、小規模であればろ紙やメンブランフィルター、大規模であればベルトフィルタやドラムフィルタなどのろ過による固液分離を行うことが好ましい。これは、炭酸化反応で生成する副生成物である塩類を除くことが目的で、余分な塩類が抄紙工程において難溶性の金属塩などに変化し、スケールなどのトラブルの原因となるおそれがあるためである。加えて、固液分離を行い得られたケークを水洗するなど、余分な塩を除く操作を行うことがより好ましい。
【0044】
また得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体の用途にもよるが、例えば抄紙工程において填料として使用する場合には、大きい祖粒物を除くため、振動篩やスクリーンを用いて、150μmを越える粗大粒子を除去することが好ましい。むろん、炭酸カルシウム−シリカ複合体の用途に応じ、篩い分け等を行う粒子径は適宜設定すればよい。
【0045】
本発明の製造方法によると、通常は得られる複合体の平均粒子径が25〜45μmとなる。中性紙抄紙に填料として用いる場合、平均粒子径がこの範囲にあるときパルプ繊維への歩留まりが最も良い。一方で、製造中における撹拌強度により粒子形状をコントロールすることも可能であり、粒子の構造が炭酸カルシウムとシリカが混ざり合ったものとなっているため、反応終了後に得られた複合体を湿式粉砕機によって、任意の平均粒子径に調整しても良い。
【0046】
また、本発明の炭酸カルシウム−シリカ複合体はゴム用充填材及び、感熱紙用のフィラーなど中性紙の填料以外の他の用途にも使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を更に具体的に説明するため実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明における形質炭酸カルシウム-シリカ複合材料の各特性値の測定方法を下記に示す。
【0048】
炭酸カルシウムとシリカのモル比:蛍光X線分析装置(リガク製 ZSX PrimusII)を用いて分析した。
【0049】
細孔容積分布の測定:水銀ポロシメーター(Thermo Electron Pascal240)を用いて、JIS R1655に基づいて行った。測定結果の評価は、細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲で、上記式においてaの差が1となるように区分した細孔半径範囲ごとに、各々区分範囲における細孔容積Vaを算出した。即ち、aが−3〜−2となる細孔半径(42〜56オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V−2)、aが−2〜−1となる細孔半径(56〜75オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V−1)、・・・・、aが22〜23となる細孔半径(56234〜74989オングストローム)を有する細孔の細孔容積(V23)を各々求めた。なお、各区分細孔容積Vaの算出においては、区分点となる細孔半径値を有する細孔の細孔容積は、該区分点よりも小さい細孔半径を有する側の細孔容積に含めるものとした。なお、この測定での有効数字は3桁である。
【0050】
吸油量:JIS K5101−13−1による。
【0051】
結晶質の同定:X線回折装置(リガク製 RINT−1400)を用いて分析を行った。
【0052】
見掛け比容:サンプルを乾燥させて得られる粉体を、目開き150umのふるいを用いて粒子径をそろえた上で、メスシリンダーを用い、十分にタンピングした上で容積を測定し、単位重量当たりの容積を測定した。
【0053】
実施例1
CaCl2濃度で10.65[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.4L、硫酸カルシウム(二水石膏)240gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が50:50となるスラリーを反応槽(内径190mmで高さ320mm、邪魔板付)に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.65、SiO2濃度が10.97[g/100mL])3.2Lを1時間かけて連続で添加し、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0054】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを炭酸化用容器(内径125mmで高さ495mmH、邪魔板付)にいれ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了とした。
【0055】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が29:71、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.91[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.76[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは13<a≦14となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V14)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0056】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は165[mL/100g]、見掛け比容は4.1[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:バテライト=80:20であった。
【0057】
実施例2
CaCl2濃度で10.65[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.1L、硫酸カルシウム(二水石膏)290gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が40:60となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.57、SiO2濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0058】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0059】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が30:70、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.88[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.73[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0060】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は160[mL/100g]、見掛け比容は3.8[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:バテライト=60:40であった。
【0061】
実施例3
CaCl2濃度で10.15[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.4L、硫酸カルシウム(二水石膏)240gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が50:50となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.22、SiO2濃度9.68[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0062】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0063】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が30:70、aが−3〜23である細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.45[cc/g] であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.92[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは、14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V14)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0064】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は155[mL/100g]、見掛け比容は4.1[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はバテライトのみであった。
【0065】
実施例4
CaCl2濃度で10.15[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.4L、硫酸カルシウム(二水石膏)240gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が50:50となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.74、SiO2濃度12.97[g/100mL])2.9Lを1時間かけて連続で添加し、反応によりケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0066】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0067】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が26:74、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.21[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16である細孔半径を有する細孔の細孔容積は1.65[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0068】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は150[mL/100g]、見掛け比容は4.1[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はバテライトのみであった。
【0069】
比較例1
CaCl2濃度で14.53[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液2.0Lを実施例1で使用したものと同じ反応槽入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.52、SiO2濃度10.79[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0070】
ここで得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0071】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が39:61、aが−3〜23の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.48[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16となる範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.35[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは9<a≦10となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V10)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0072】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は130[mL/100g]、見掛け比容は3.5[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=10:90であった。
【0073】
比較例2
CaCl2濃度で11.38[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液2.0L、硫酸カルシウム(二水石膏)100gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が80:20となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.2となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.61、SiO2濃度9.84[g/100mL])3.5Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0074】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0075】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果、炭酸カルシウムとシリカのモル比が32:68、aが−3〜23の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.31[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.29[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは10<a≦11となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V11)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0076】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は135[mL/100g]、見掛け比容は3.7[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=70:30であった。
【0077】
比較例3
CaCl2濃度で10.65[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液1.7L、硫酸カルシウム(二水石膏)200gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が60:40となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.57、SiO2濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0078】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0079】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が27:73、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.69[cc/g]、そのうちaが−3〜16の範囲となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.60[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは12<a≦13となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V13)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0080】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は145[mL/100g]、見掛け比容は4.0[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はアラゴナイト:カルサイト=90:10であった。
【0081】
比較例4
CaCl2濃度で11.38[g/100mL]の塩化カルシウム水溶液0.5L、硫酸カルシウム(二水石膏)390gからなり、CaCl2とCaSO4のモル比が20:80となるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.57、SiO2濃度10.27[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0082】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。
【0083】
得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体のスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が37:63、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は2.11[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は1.11[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは17<a≦18となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V13)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0084】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は120[mL/100g]、見掛け比容は3.6[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はアラゴナイト:バテライト=30:70であった。
【0085】
比較例5
硫酸カルシウム(二水石膏)450gからなるスラリーを実施例1で使用したものと同じ反応槽に入れ、全量が2Lとなるように希釈水を加えた。常温下で十分に攪拌しながら、モル比CaO/Na2O=1.1となるようにケイ酸ソーダ(SiO2/Na2O=2.52、SiO2濃度10.79[g/100mL])3.3Lを1時間かけて連続で添加して反応を行い、ケイ酸カルシウムスラリーとした。
【0086】
得られたケイ酸カルシウムスラリーの内の4Lを実施例1で使用したものと同じ炭酸化用容器に入れ、常温下で十分に撹拌しながら、塔下部から炭酸ガスを0.36[L/min.]で吹き込み炭酸化反応を行った。スラリーのpHが6.5となったところで反応を終了した。その後、スラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、炭酸カルシウムとシリカのモル比が40:60、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は0.643[cc/g]であり、そのうち、aが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は0.354[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは19<a≦20となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V20)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0087】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は75[mL/100g]、見掛け比容は2.0[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質はバテライトのみであった。
【0088】
比較例6
軽質炭酸カルシウムをスラリー化し、目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV23までの合計値)は0.953[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔の細孔容積(V−2からV16までの合計値)は0.908[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは14<a≦15となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V15)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0089】
またこの炭酸カルシウムの吸油量は65[mL/100g]、見掛け比容は2.0[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=30:70であった。
【0090】
比較例7
比較例1で使用したものと同じ反応容器中に軽質炭酸カルシウム150gを水に分散し、ここにSiO2濃度16.03[g/100mL]、Na2O濃度5.69[g/100mL]のケイ酸ソーダ溶液を955mL加えた後、水を加え、全量を3Lとした。この混合スラリーを十分に攪拌しながら加熱し、85℃とした。
【0091】
混合スラリーに、10%硫酸溶液を加えた。なお、硫酸添加後の最終pHが7.5、全硫酸添加時間は120分間となるように、一定速度で硫酸を添加した。このスラリーは目開き150μm篩で粗粒分を分離した後、市販5A濾紙にて濾過し、摂氏110度の乾燥機で一昼夜乾燥させた。この乾燥品について、各種物性等を評価した。その結果は、aが−3〜23の範囲にある細孔半径を有する細孔容積(V−2からV23までの合計値)は1.12[cc/g]であり、そのうちaが−3〜16の範囲にある細孔半径を有する細孔容積(V−2からV16までの合計値)は0.799[cc/g]であった。この範囲で各区分範囲での細孔容積Vaを比較した場合、Vaが最大となるのは16<a≦17となる細孔半径を有する細孔の細孔容積(V17)であった。これら各区分範囲における細孔容積(Va)は表1に示した。
【0092】
またこの炭酸カルシウム−シリカ複合体の吸油量は120[mL/100g]、見掛け比容は2.5[mL/g]、炭酸カルシウム結晶質比率はアラゴナイト:カルサイト=30:70であった。
【0093】
上記実施例1〜4、比較例1〜6における各原料の組成等を表2に、得られた炭酸カルシウム−シリカ複合体の物性を表3にまとめて示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施例1で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図2】実施例2で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図3】実施例3で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図4】実施例4で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図5】比較例1で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図6】比較例2で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図7】比較例3で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図8】比較例4で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図9】比較例5で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図10】比較例6に示した炭酸カルシウムの細孔容積分布を示すヒストグラム。
【図11】比較例7で得た炭酸カルシウム−シリカ複合体の細孔容積分布を示すヒストグラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウム−シリカ複合体であって、
(1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60の範囲にあり、
(2)該複合体の有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を水銀圧入法によって測定した場合に、
(2−1)aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが12を超え16以下である区分範囲内にあり、かつ
(2−2)aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計すると1.6〜2.5cc/gの範囲にある、
ことを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体。
【請求項2】
炭酸カルシウム成分が、アラゴナイト質結晶及び/又はバテライト質結晶からなる請求項1記載の炭酸カルシウム−シリカ複合体
【請求項3】
中性紙用の填料である請求項1又は2記載の炭酸カルシウム−シリカ複合体。
【請求項4】
塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で30:70〜55:45の範囲で含むスラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合してケイ酸カルシウムを生じさせ、ついで該ケイ酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させることを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法。
【請求項5】
炭酸カルシウム−シリカ複合体が中性紙用の填料である請求項4記載の製造方法。
【請求項1】
炭酸カルシウム−シリカ複合体であって、
(1)炭酸カルシウムとシリカとがモル比で25:75〜40:60の範囲にあり、
(2)該複合体の有する細孔の細孔半径rを下記式
r = 10(16+a)/8オングストローム
で表し、上記aが−3〜23の範囲の細孔半径を有する細孔の細孔容積を水銀圧入法によって測定した場合に、
(2−1)aの差が1となるように区分した各細孔半径範囲ごとの細孔容積Vaを比較すると、該Vaが最大である細孔半径範囲は、aが12を超え16以下である区分範囲内にあり、かつ
(2−2)aが16以下である細孔半径を有する細孔の細孔容積を合計すると1.6〜2.5cc/gの範囲にある、
ことを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体。
【請求項2】
炭酸カルシウム成分が、アラゴナイト質結晶及び/又はバテライト質結晶からなる請求項1記載の炭酸カルシウム−シリカ複合体
【請求項3】
中性紙用の填料である請求項1又は2記載の炭酸カルシウム−シリカ複合体。
【請求項4】
塩化カルシウムと硫酸カルシウムとをモル比で30:70〜55:45の範囲で含むスラリーに対してケイ酸ソーダ水溶液を混合してケイ酸カルシウムを生じさせ、ついで該ケイ酸カルシウムと二酸化炭素とを反応させることを特徴とする炭酸カルシウム−シリカ複合体の製造方法。
【請求項5】
炭酸カルシウム−シリカ複合体が中性紙用の填料である請求項4記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−40612(P2009−40612A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203857(P2007−203857)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】
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