説明

炭酸カルシウムを含有する組成物の造粒助剤および造粒方法

【課題】少量の造粒助剤により炭酸カルシウムを含有する組成物を造粒させることができ、水の添加量により造粒物の粒径を自由にコントロールすることができるようにする造粒助剤および造粒方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る造粒助剤は、炭酸カルシウムを含有する組成物を造粒するための造粒助剤であって、カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有することを特徴とする造粒助剤である。これにより、組成物の造粒効率を高めることができる。また、組成物を、本発明に係る造粒助剤および水の存在下において造粒することにより、炭酸カルシウムを含有した組成物同士が強固に結合した造粒物を得ることができる。さらに、水の添加量により、造粒物の粒径を自由にコントロールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料、土壌改良剤、防滑剤もしくは融雪剤等に用いられる、炭酸カルシウムを含有する例えばライムケーキ等の組成物を、効率的に造粒するための造粒助剤および造粒方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、てん菜から砂糖(てん菜糖)を製造する際の副産物の一つであるライムケーキは、土壌改良剤として用いられる他には、産業廃棄物として埋立処分をされていた。しかし、地球規模での環境問題の高まりにより、産業廃棄物の減量化や再資源化の社会的要請は急速に高まってきている。そこで、ライムケーキの再資源化について、様々な取り組みが行われている。
【0003】
ライムケーキを再資源化する際には、取り扱いの容易さ、粉塵の減少等の理由から、ライムケーキを造粒して使用することが望ましい。従来の技術では、ライムケーキに造粒助剤を添加して造粒することが試みられている(特許文献1〜5)。例えば、特許文献1では、ライムケーキに造粒促進剤としてリグニンを主成分とするパルプ廃液、PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)等を添加することによる粒状肥料の製造方法が示されている。また、特許文献2では、ライムケーキにバインダーとして澱粉等の水溶性材料、ポリカプロラクトン系の生分解性材料等を添加することによる粒状防滑材の製造方法が示されている。
【特許文献1】特開昭51−45058号公報(昭和51年4月17日公開)
【特許文献2】特開2004−204637号公報(平成16年7月22日公開)
【特許文献3】特開昭59−82937号公報(昭和59年5月14日公開)
【特許文献4】特開2002−331300号公報(平成14年11月19日公開)
【特許文献5】特開2004−204165号公報(平成16年7月22日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の造粒技術では、少量のバインダーでライムケーキを造粒させることができず、また、造粒物の粒径を自由にコントロールすることができないという問題点を有している。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、少量の造粒助剤によりライムケーキを造粒させることができ、水の添加量により造粒物の粒径を自由にコントロールすることができる造粒助剤および造粒方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の造粒助剤は、上記課題を解決するために、炭酸カルシウムを含有する組成物を造粒するための造粒助剤であって、カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有することを特徴としている。
【0007】
上記の発明によれば、組成物表面とカルボキシル基との作用により、組成物の微粉を分散安定化させて、造粒時の組成物同士の接触面積を増加させることができると推察される。その結果、組成物の造粒効率を高めることができる。
【0008】
また、本発明の造粒助剤は、上記高分子化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の単量体を酸型換算で50質量%以上、100質量%以下の範囲で含む単量体組成物の重合物であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の造粒助剤は、上記高分子化合物が、ポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸塩であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の造粒助剤は、上記炭酸カルシウムを含有する組成物が、ライムケーキであることが好ましい。
【0011】
本発明の造粒方法は、上記課題を解決するために、炭酸カルシウムを含有する組成物を、カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有する造粒助剤、および、水の存在下において造粒することを特徴としている。
【0012】
上記の発明によれば、組成物表面とカルボキシル基との作用により、組成物の微粉を分散安定化させて、造粒時の組成物同士の接触面積を増加させることができると推察される。その結果、組成物の造粒効率を高めることができる。また、組成物の造粒が水の存在下において行われることにより、造粒助剤に流動性を持たせることができる。これにより、造粒助剤を組成物全体に行き渡りやすくさせることができる。その結果、組成物同士が強固に結合した造粒物を得ることができる。また、水の添加量により、造粒物の粒径を自由にコントロールすることができる。
【0013】
また、本発明の造粒方法は、パン型、ドラム型またはアイリッヒ型造粒機を用いて造粒することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の造粒助剤は、以上のように、炭酸カルシウムを含有する組成物を造粒するための造粒助剤であって、カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有するものである。
【0015】
それゆえ、組成物表面とカルボキシル基との作用により、組成物の微粉を分散安定化させて、造粒時の組成物同士の接触面積を増加させることができると推察される。その結果、組成物の造粒効率を高めることができるという効果を奏する。
【0016】
本発明の造粒方法は、以上のように、炭酸カルシウムを含有する組成物を、カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有する造粒助剤、および、水の存在下において造粒するものである。
【0017】
それゆえ、組成物表面とカルボキシル基との作用により、組成物の微粉を分散安定化させて、造粒時の組成物同士の接触面積を増加させることができると推察される。その結果、組成物の造粒効率を高めることができるという効果を奏する。また、組成物の造粒が水の存在下において行われることにより、造粒助剤に流動性を持たせることができる。これにより、造粒助剤を組成物全体に行き渡りやすくさせることができる。その結果、組成物同士が強固に結合した造粒物を得ることができるという効果を奏する。また、水の添加量により、造粒物の粒径を自由にコントロールすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。
【0019】
なお、本明細書中、範囲を示す「A〜B」は、A以上、B以下であることを示す。
【0020】
一実施形態において、本発明に係る造粒助剤は、炭酸カルシウムを含有する例えばライムケーキ、食品工場から排出される炭酸カルシウムスラッジ等の組成物を造粒するための造粒助剤である。ここで、ライムケーキとは、てん菜から砂糖(てん菜糖)を製造する際の副産物をいう。具体的には、ライムケーキとは、てん菜から抽出された糖液に含まれている砂糖成分以外の有機物や色素等を、石灰石を焼成した粉末と炭酸ガスとにより吸着させて取り出し、それを脱水したものをいい、炭酸カルシウムを主成分としている。また、ライムケーキは、炭酸カルシウム以外に、P、KO、各種有機物等を含んでいる。ライムケーキは、固形物のみからなるものであってもよいが、固形物に10〜50質量%の水を含有していてもよい。
【0021】
本発明に係る造粒助剤は、カルボキシル基を有する重量平均分子量(以下、「Mw」という)1500〜50万の高分子化合物、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびこれらの塩なる群から選ばれる単量体を含む単量体組成物を重合することによって得られる重合物である高分子化合物を含有する。また、上記高分子化合物は、Mw3000〜3万であることが特に好ましい。また、上記高分子化合物は、ポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸塩であることが特に好ましい。
【0022】
また、高分子化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびこれらの塩なる群から選ばれる単量体について、一種以上を使用することができる。上記塩としては、特に限定されるものではない。例えば、上記塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ヒドロキシアンモニウム塩、アミン塩、アルキルアミン塩等を用いることができる。
【0023】
これら単量体を含む単量体組成物が用いられていれば、単量体組成物に占める単量体の量は特に限定されるものではないが、酸型換算で50質量%以上、100質量%以下の範囲となるように上記単量体を含んでいることが好ましい。酸型換算とは、塩について、対応する酸として質量%を計算することを意味する。例えば、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等は、酸型のアクリル酸として質量%を計算する。すなわち、−COONa,−COOK,−COONH,−COOH等は、すべて−COOHとして計算する。
【0024】
ただし、本実施形態に係る造粒助剤に含まれる上記高分子化合物は、これに限られるものではない。すなわち、上記高分子化合物は、上記単量体のみを含む単量体組成物を重合させたものであってもよいし、上記単量体以外の単量体を含む単量体組成物を重合させたものであってもよい。
【0025】
上記単量体以外の、重合可能な単量体(以下、便宜上「単量体A」という)としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、イソプレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびそれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等を挙げることができる。
【0026】
本発明に係る造粒助剤に含まれる高分子化合物となるべき単量体組成物に占める上記単量体Aの量は、酸型換算で50質量%未満であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
単量体組成物を重合する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の種々の重合法を用いることができる。単量体組成物を重合する方法として、例えば、水中油型乳化重合法、油中水型乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈澱重合法、溶液重合法、水溶液重合法、塊状重合法等を用いることができる。これらの中でも、重合コスト(生産コスト)の低減及び安全性等の観点から、水溶液重合法を用いることが好ましい。
【0028】
単量体組成物を重合する態様は特に限定されるものではなく、ラジカル重合であってもイオン重合であってもよい。また、単量体組成物の重合を開始させるためには、重合開始剤、あるいは、放射線、電子線、紫外線、電磁線等の活性化エネルギー線、熱等を用いることができる。
【0029】
上記ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、熱、光又は酸化還元反応によってラジカル分子を発生させる化合物であればよい。また、水溶液重合法により重合を行う場合には、水溶性を備えた重合開始剤を用いることが好ましい。
【0030】
ラジカル重合の重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス−(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解性開始剤;ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等の光分解型開始剤;過酸化水素及びアスコルビン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びロンガリット、過硫酸カリウム及び金属塩、過硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の組み合わせからなるレドックス系重合開始剤が好適である。
【0031】
イオン重合は、カチオン重合であってもアニオン重合であってもよい。カチオン重合の開始剤としては、特に限定されるものではないが、硫酸等のプロトン酸や、BF、AlCl、TiCl等のルイス酸等が好適である。また、アニオン重合の開始剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリアルコラート、ピリジン等の塩基性化合物等が好適である。
【0032】
これらの重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体組成物の成分や重合条件等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
単量体組成物を重合する際には、分子量の調節を目的として、連鎖移動剤を用いることもできる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;四塩化炭素;イソプロピルアルコール;トルエン;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の連鎖移動係数の高い化合物が挙げられる。これらの連鎖移動剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量としては、重合に用いる全単量体組成物1molに対し、0.005mol以上、0.15mol以下の範囲とすることが好ましく、0.01mol以上、0.1mol以下の範囲とすることがより好ましい。
【0034】
本発明に係る造粒助剤は、上記高分子化合物のみからなるものであってもよいが、さらに水を含有することが好ましい。造粒助剤が水を含有することにより、造粒助剤に流動性を持たせることができるので、造粒助剤を組成物全体に行き渡りやすくさせることができる。造粒助剤は、組成物全体への行き渡りやすさを考慮すると、水を含有することにより水溶液となっていることが好ましいが、必ずしも水溶液となっている必要はなく、例えば、スラリー状であっても構わない。
【0035】
水を含有する場合における上記造粒助剤の固形分濃度は、5〜70質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜50質量%である。上記造粒助剤の固形分濃度が70質量%を超えると、造粒助剤が組成物全体に行き渡りにくくなり、造粒時にムラが生じるおそれがある。
【0036】
水を含有する上記造粒助剤を組成物に添加する際の当該造粒助剤の温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、造粒時の組成物の温度も可能な限り上記温度に調整することが好ましい。
【0037】
水を上記造粒助剤に含有させる方法については特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、水と上記造粒助剤とを円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、レディゲミキサー等で混合する方法や、水を上記造粒助剤にスプレー等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。
【0038】
ただし、本発明に係る造粒助剤が上記高分子化合物以外に含有しうる物質としては、水に限定されるものではなく、上記造粒助剤の造粒効果を阻害しない範囲において他の物質を適宜含むことができる。例えば、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等のpHを調整するための無機塩、グリセリン、プロピレングリコール等の溶剤、クエン酸、EDTA等のキレート剤等が挙げられる。また、本発明に係る造粒助剤は、固形状のものであっても液状のものであってもよい。
【0039】
上記組成物と上記造粒助剤との混合方法は特に限定されるものではない。例えば、造粒機に組成物を仕込み、そこに造粒助剤を添加すればよい。造粒助剤が水溶液等の液体状の場合は、造粒助剤をスプレー等で噴霧して添加することもできる。組成物は、造粒前に予め粉砕等を行い粒度を調整しておくことが好ましい。その粒度は、造粒機の種類や造粒条件に依存するが、一般的に細かい粒度、例えば、235メッシュ通過の割合を30%以上にすることが好ましく、235メッシュ通過の割合が40%以上にすることがさらに好ましい。
【0040】
造粒の方法としては特に限定されるものではなく、従来公知の造粒機を用いて、従来公知の方法によって造粒することができる。造粒機としては、例えば、ドラム型、パン型、パッグミル型、流動層型、噴霧型、ピン型、アイリッヒ型、押し出し型等の造粒機を用いることができる。また、ドラム型、パン型、アイリッヒ型等の回転式造粒機を用いることが好ましい。具体的には、組成物と造粒助剤とを造粒機に仕込んだ後、これらを混合することによって造粒することができる。好適な混合時間については、使用する造粒機、攪拌条件によって異なるが、一般的にバッチ式造粒機で造粒する場合には30秒以上、10分以下の範囲であることが好ましい。また、連続式造粒機で造粒する場合には、滞留時間を30秒以上、10分以下の範囲に設定することが好ましい。
【0041】
上記組成物に上記造粒助剤を添加する量としては、組成物の固形分量に対する造粒助剤の固形分量の割合が0.01〜2質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましい。
【0042】
上述したように、本発明に係る造粒助剤は、水を含有することが好ましいが、組成物に水を含有した造粒助剤を添加した場合であっても、さらに、水を添加することが好ましい。その際の造粒方法は、例えば、造粒機に組成物を仕込み、そこに造粒助剤および水を添加すればよい。
【0043】
上記水を添加する量としては、例えば造粒機中に仕込まれる物の全質量に対する水の質量の割合が5〜60質量%となるように調整することが好ましく、10〜40質量%となるように調整することがより好ましく、20〜40質量%となるように調整することがさらに好ましい。
【0044】
また、一実施形態において、本発明に係る造粒助剤を、市販されている従来公知のバインダーと併用してもよい。これにより、造粒物の製造コストを下げつつ、組成物の造粒効率を向上させることができる。上記従来公知のバインダーとしては、例えば、廃糖蜜、CMC、澱粉、石膏、アルギン酸ソーダ、リグニンスルホン酸またはその塩等を用いることができる。
【0045】
ここで、組成物に、本発明に係る造粒助剤と従来公知のバインダーとを併用して添加する場合には、本発明に係る造粒助剤と従来公知のバインダーとの質量比は、造粒助剤を1としたとき、バインダーは1以上、50以下の範囲であることが好ましく、2以上、30以下の範囲であることがより好ましく、5以上、20以下の範囲であることがさらに好ましい。バインダーの質量比が50を越える場合には、本発明に係る造粒助剤を用いることによって得られる効果が乏しくなる。
【0046】
上記高分子化合物と、従来公知のバインダーとの混合は、従来公知の混合方法を用いることができる。例えば、上述の種々の混合機を用いて混合することができる。上記高分子化合物と、従来公知のバインダーとは、造粒の際、別々に添加してもよい。
【0047】
本発明に係る造粒助剤は、従来のバインダーと比較して非常に少ない添加量で十分に組成物の造粒効率を向上させることができる。したがって、本発明に係る造粒助剤は、組成物を造粒することによって製造される可能性のある製品、例えば、肥料用原料、コンクリート用材、舗装用材、地盤改良材、裏込材等の製造の効率化に寄与することができる。
【0048】
本発明に係る造粒助剤は、従来のバインダーよりも非常に少ない量で組成物の造粒効率を著しく向上させることから、それ自体がバインダーとして働くというよりは、組成物の微粉を分散安定化させることにより、造粒時の組成物同士の接触面積を増加させ、その結果造粒効率を向上させていると推察される。
【0049】
また、一実施形態において、上記組成物に本発明に係る造粒助剤等を添加する際に、各種粘土、砕石粉、フライアッシュ、ベントナイト、各種スラグ類等の無機粉体等を添加してもよい。
【0050】
組成物の造粒後は、造粒物を必要に応じて乾燥させ、従来公知の篩を用いて分級することにより、所望の平均粒径の造粒物を得ることができる。造粒物の平均粒径は、2〜10mmであることが好ましい。
【0051】
なお、本発明は以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0052】
〔実施例1〕
混合容器としての600ccのポリプロピレン製プラスチック容器に組成物としてのライムケーキ100g(水31.9gを含む)を採取し、さらに、Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液(株式会社日本触媒製)0.93g(水0.51gを含む)および水0.9gを添加し、攪拌機としてのスリーワンモーター(新東科学株式会社製)を用い、回転数を300rpmに設定して、スクリュー型攪拌羽根を設置して、25℃(室温)で2分間混合することにより予備混合を行った。
【0053】
その後、予備混合した混合物を、直径300mmのパン型造粒機(株式会社井内盛栄堂製)を用い、回転数を20rpm、パンの角度を水平に対して30度に設定して、3分間混合することにより造粒処理を行った。
【0054】
そして、得られた造粒物を120℃で1時間乾燥し、平均粒径の測定を行った。
【0055】
〔実施例2〕
Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.93g(水0.51gを含む)および水0.9gに代えて、Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.45g(水0.25gを含む)および水1.0gを用いる他は、実施例1と同様にして造粒物の平均粒径の測定を行った。
【0056】
〔実施例3〕
Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.93g(水0.51gを含む)および水0.9gに代えて、Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.45g(水0.25gを含む)および水3.0gを用いる他は、実施例1と同様にして造粒物の平均粒径の測定を行った。
【0057】
〔実施例4〕
Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.93g(水0.51gを含む)および水0.9gに代えて、Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.45g(水0.25gを含む)および水2.0gを用いる他は、実施例1と同様にして造粒物の平均粒径の測定を行った。
【0058】
〔比較例1〕
Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.93g(水0.51gを含む)および水0.9gに代えて、水3.0gを用いる他は、実施例1と同様にして造粒処理を試みた。
【0059】
〔比較例2〕
Mw6000のポリアクリル酸ソーダの45質量%水溶液0.93g(水0.51gを含む)および水0.9gに代えて、Mw80万のポリアクリル酸ソーダの10質量%水溶液2.5g(水2.25gを含む)および水1.0gを用いる他は、実施例1と同様にして造粒処理を試みた。
【0060】
表1は、実施例1〜4および比較例1,2において求めた造粒物の平均粒径をまとめたものである。ポリアクリル酸ソーダを添加しない比較例1およびMw50万を超えるポリアクリル酸ソーダを添加した比較例2の結果は、造粒自体が不可能であった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示したように、実施例2〜4を比較すると、水の添加料が最も多い実施例3の造粒物の平均粒径が最も小さく、逆に、水の添加量が最も少ない実施例2の造粒物の平均粒径が最も大きいという結果になった。すなわち、本発明に係る造粒助剤を用いてライムケーキを造粒すると、水の添加量によって造粒物の平均粒径が変化することが明らかとなった。
【0063】
これにより、水の添加量により造粒物の粒径を自由にコントロールすることができることとなった。
【0064】
また、特許文献1では、ライムケーキ100g(水30.0gを含む)に対するバインダーの添加量は4.0〜8.0g(水2.0〜4.0gを含む)であることが開示されている。このことと、実施例1〜4の結果とを鑑みると、本発明の造粒助剤は、特許文献1等の従来のバインダーよりも非常に少ない量でライムケーキを造粒させることができることが判る。
【0065】
つまり、本発明の造粒助剤は、バインダーとして作用するというよりはむしろ、従来のバインダーとは別の作用機構、例えば、ライムケーキの微粉を分散安定化させることにより、造粒時のライムケーキ同士の接触面積を増加させるという作用機構を有するものと推察される。その結果、組成物の造粒効率を高めることができる。
【0066】
なお、ポリアクリル酸ソーダのMwは、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定は、カラムとしてG−3000PWXL(東ソー株式会社製)、移動相としてリン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムの水溶液、検出器としてL−7110(株式会社日立製作所製)を用いて行った。具体的には、移動相としては、リン酸水素二ナトリウム12水和物(特級試薬)34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物(特級試薬)46.2gに全質量が5000gとなるように純水を加え、その後0.45μmのメンプランフィルターで濾過した水溶液(固形分濃度0.1質量%)を用いた。また、検出器では、検出波長214nm、UV測定モードで検出を行った。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明に係る造粒助剤を用いると、炭酸カルシウムを含有する例えばライムケーキ等の組成物を、従来のバインダーを用いる場合よりも非常に効率的に造粒することができる。このため、本発明は、炭酸カルシウムを含有する例えばライムケーキ等の組成物を造粒することによって製造される可能性のある製品、例えば、肥料用原料、防滑剤、コンクリート用材、舗装用材、地盤改良材、裏込材等の製造に広く利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムを含有する組成物を造粒するための造粒助剤であって、
カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有することを特徴とする造粒助剤。
【請求項2】
上記高分子化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸およびこれらの塩からなる群から選ばれる一種以上の単量体を酸型換算で50質量%以上、100質量%以下の範囲で含む単量体組成物の重合物であることを特徴とする請求項1に記載の造粒助剤。
【請求項3】
上記高分子化合物は、ポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の造粒助剤。
【請求項4】
上記炭酸カルシウムを含有する組成物は、ライムケーキであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の造粒助剤。
【請求項5】
炭酸カルシウムを含有する組成物を、
カルボキシル基を有し重量平均分子量が1500〜50万である高分子化合物を含有する造粒助剤、および、水の存在下において造粒することを特徴とする造粒方法。
【請求項6】
パン型、ドラム型またはアイリッヒ型造粒機を用いて造粒することを特徴とする請求項5に記載の造粒方法。

【公開番号】特開2008−23433(P2008−23433A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197209(P2006−197209)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】