説明

炭酸ガス供給装置

【課題】飲料ディスペンサを旅客機に搭載可能とするための炭酸ガスの供給装置を提供する。
【解決手段】炭酸ガス供給装置40は、ドライアイスを封入するドライアイス容器41と、ドライアイス容器41に設けられてドライアイスが昇華して生じる炭酸ガスを送出する送出部42とを備え、ドライアイス容器41内が所定圧力として160kPaを超えると炭酸ガスを排出する安全弁よりなる回復性安全装置43と、所定圧力として200kPaを超えると炭酸ガスを排出する破裂板44cを有する非回復性安全装置44とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイスを昇華させて炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスカートリッジ内に封入した加圧炭酸ガスをビア樽内に供給し、ビア樽から炭酸ガスの圧力により圧送されるビールを冷却装置により冷却し、冷却されたビールを注出用のタップからカップに注出するようにした飲料ディスペンサが開示されている。この飲料ディスペンサは、旅客機に搭載することを目的としたものであり、底部にキャスターを備えた移動可能なカート内に注出用のタップを除いた各構成部品を取り付けたものである。この飲料ディスペンサによりビールを提供するときには、乗客の近くまで飲料ディスペンサをカートごと移動し、カート上面に固定した注出用のタップからビールをカップに注出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−225895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の飲料ディスペンサは、ガスカートリッジを用いてビア樽に炭酸ガスを送出してビア樽内のビールを圧送している。しかし、航空法施行規則には、高圧ガスとして、摂氏50℃で圧力300kPaを超える蒸気圧を持つ物質又は摂氏20℃で圧力101.3kPaにおいて完全に気体となる物質であって、摂氏20度でゲージ圧力200kPa以上となるものを航空機で輸送してはならないと規定されている。上記の飲料ディスペンサに用いるガスカートリッジの内圧は一般的に1200kPa程度あるために、ガスカートリッジを用いた上記の飲料ディスペンサを旅客機に搭載することができなかった。本発明は、飲料ディスペンサを旅客機に搭載可能とするための炭酸ガスの供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、ドライアイスを封入するドライアイス容器と、ドライアイス容器に設けられてドライアイスが昇華して生じる炭酸ガスを送出する送出部とを備えた炭酸ガス供給装置であって、ドライアイス容器内が所定圧力以上になると炭酸ガスを排出する安全弁よりなる回復性安全装置を備えたことを特徴とする炭酸ガス供給装置を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した炭酸ガス供給装置においては、ドライアイス容器内が所定圧力以上になると炭酸ガスを排出する安全弁よりなる回復性安全装置を備えたので、ドライアイス容器内が所定圧力を超えないようにすることができ、例えば所定圧力を航空法施行規則に規定される200kPaとすれば、このドライアイス容器を旅客機に搭載することができるようになる。
【0007】
上記のように構成した炭酸ガス供給装置においては、回復性安全装置は所定圧力より低い圧力で炭酸ガスを排出するのが好ましく、このようにしたときには、例えば所定圧力を航空法施行規則に規定される200kPaとしたときに、ドライアイス容器内の圧力がこの所定圧力より低い圧力を超えないので、ドライアイス容器内の圧力が確実に所定圧力を超えないようにすることができる。
【0008】
上記のように構成した炭酸ガス供給装置においては、ドライアイス容器には所定圧力以上になると破裂して炭酸ガスを排出する破裂板を有する非回復性安全装置を備えるのが好ましく、このようにしたときには、安全弁よりなる回復性安全装置に加えて破裂板を有する非回復性安全装置により、ドライアイス容器内の圧力が確実に所定圧力を超えないようにすることができる。また、安全弁よりなる回復性安全装置と破裂板を有する非回復性安全装置とのように、圧力の上昇を抑える2つの異なる機構の安全装置を用いているので、同じ機構の安全装置を2つ備えたものに比べて、ドライアイス容器内の圧力が確実に所定圧力を超えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による飲料ディスペンサの一実施形態であるビールディスペンサを示す斜視図である。
【図2】図1の筐体を縦方向に切断した断面斜視図である。
【図3】筐体を各部に分解した斜視図である。
【図4】(a)ドレンタンクと取付金具とを分解した斜視図であり、(b)ドレンタンクを取付金具により筐体に取り付けた斜視図である。
【図5】炭酸ガス供給装置の斜視図である。
【図6】図1の筐体を縦方向に切断した側断面図である(ドレンタンクと各ホースは省略した)。
【図7】非回復性安全装置を縦方向に切断した断面図である。
【図8】(a)ハンドドラフトの正面図であり、(b)ハンドドラフトの側面図である。
【図9】筐体をカートに収容して前面扉を開放した状態の正面図である。
【図10】ドレンタンクをカートの引き出しに取り付けた状態の斜視図である。
【図11】筐体の左右方向の内径より大きくカートの内径より小さな直径をしたビア樽を筐体とともにカートに収容した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明による炭酸ガス供給装置を使用した飲料ディスペンサの一実施形態であるビールディスペンサを図面を参照して説明する。ビールディスペンサ10は、旅客機に搭載することを目的としたものである。このビールディスペンサ10は、ガスボンベや炭酸ガスカートリッジを用いることなく、ドライアイスが昇華することで生じる炭酸ガスを用いて、ビア樽30内のビールをハンドドラフト50に圧送するものであり、旅客機に搭載可能な技術基準を満たしたキャスター付きのカート60に挿脱可能に収容されるものである。以下に、このビールディスペンサ10について詳述する。
【0011】
図1及び図2に示すように、ビールディスペンサ10は、炭酸ガス供給装置40をガスホースH1,H2によりビア樽30に接続し、ビア樽30をビールホースH3によりハンドドラフト50に接続したものであり、炭酸ガス供給装置40から送出される炭酸ガスの圧力によりビア樽30内のビールをハンドドラフト50に圧送して注出するものである。このビールディスペンサ10は、筐体11内にビア樽30と炭酸ガス供給装置40とを近接した位置にして収容している。
【0012】
図1〜図3に示すように、筐体11は、上面が開口して前後方向の長さが左右方向の長さより長い略直方体形状をした本体部12と、本体部12の上側に着脱可能に載置された中蓋収容部15と、中蓋収容部15の上側に着脱可能に載置されて上面開口を覆う上蓋18とを備えている。図2に示すように、本体部12は、前後方向の略中央部にビア樽30と、ビア樽30の前側に炭酸ガス供給装置40とを収容するものである。なお、ビア樽30と炭酸ガス供給装置40とは、本体部12内で漏出防止用の樹脂製袋(図示しない)に同封されている。この樹脂製袋は、ビア樽30から漏れたビールが筐体11から漏出するのを防ぐとともに、炭酸ガス供給装置40から発生する冷熱の拡散を防ぐためのものである。本体部12にはビア樽30の後側に仕切板13が設けられており、本体部12の後壁と仕切板13との間には、ビア樽30を冷却するためのドライアイスDを収容するための冷却空間が形成されている。
【0013】
図1及び図3に示すように、本体部12の左右の両側壁(長辺側の側壁)の水平方向の中間部には、上側が開いたU字形をしたU字切欠き部12aが形成されている。このU字切欠き部12aは本体部12の左右方向の内径(短辺側の内径)より大きな直径のビア樽を収容可能とするためのものである。本体部12の底壁上面には、ビア樽30を所定の位置として前後方向の中央部に収容するための2つの位置決め環状段部12b,12cが形成されている。これら2つの位置決め環状段部12b,12cは異なる大きさをしており、各々の位置決め環状段部12b,12cは、直径の異なるビア樽30に対応している。本体部12の前壁と後壁の上部には、筐体11を持ち運ぶための開口よりなる把手部12d、12eが形成されている。
【0014】
図1及び図3に示すように、本体部12の左右の両側壁(長辺側の側壁)には、U字切欠き部12aの上端部両側を繋いで本体部12の側壁を補強するステンレス製の補強部材14が設けられている。補強部材14は、本体部12の側壁に前側(一端側)をピン14aにより回動可能に軸支されて、後側(他端側)を抓み付きねじ14bにより着脱可能に固定にされている。補強部材14の中間部には、ビア樽30の上端を押さえてビア樽30が上下方向に移動しないように固定するための押さえ片14cが設けられている。本体部12にビア樽30を収容するときには、補強部材14の後側の抓み付きねじ14bを取り外して、補強部材14の前側を支点に上方に回動させてから本体部12にビア樽30を収容し、補強部材14の前側を支点に下方に回動させて、補強部材14の抓み付きねじ14bを本体部12に取り付けるようにする。このとき、ビア樽30は、下端部が本体部12の位置決め環状段部12bまたは12cに係止して水平方向に移動しないようになるとともに、上端が補強部材14の押さえ片14cに当接して上下方向に移動しないように固定される。なお、補強部材14は、本体部12の側壁に前側を回動可能に軸支されて後側を着脱可能に取り付けられているが、本体部12の側壁に後側を回動可能に軸支して前側を着脱可能に取り付けたり、本体部12の側壁に前側及び後側の両側を着脱可能に取り付けるようにしてもよい。また、高さの低いビア樽30を用いたときには、補強部材14に高さ方向の異なる押さえ片を取り付けるようにしてもよい。
【0015】
図2及び図3に示すように、中蓋収容部15は、減圧弁32を収容し、不使用時におけるハンドドラフト50とビールホースH3を収容するためのものである。中蓋収容部15は、本体部12の上側に載置された長方形の筒形をした筒部16と、筒部16の下部に設けられて本体部12とを仕切る仕切板17とを備えている。筒部16の前壁上部の左側部には、本体部12内に収容されたビア樽30から延出してハンドドラフト50に接続するビールホースH3を通すための深い切欠き16aが形成されている。筒部16の前壁上端部の中央部には、ドレンタンク20を取付金具21により取り付けるための浅い切欠き16bが形成されている。筒部16の内周壁下端には、仕切板17を載置するための突部16cが全周に形成されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、仕切板17は、本体部12と中蓋収容部15とを仕切り、本体部12内の冷却機能の低下を抑制するとともに、減圧弁32等の構成部品を載置するためのものである。仕切板17は、筒部16の突部16cの上側に着脱可能に載置されている。仕切板17は着脱可能であるので、清掃するとき等のメンテナンスが容易となっている。本体部12内でビア樽30と炭酸ガス供給装置40とを同封した樹脂製袋は、上部の開口縁を筒部16の突部16cと仕切板17とで挟んで固定されているので、樹脂製袋の固定に新たな固定部材を用いる必要がない。仕切板17の中央部には小判形をした大きな開口部17aが形成されている。この開口部17aは、仕切板17を外さなくても上蓋18だけを取り外せば、上方から開口部17aを介してビア樽30に取り付けられたディスペンスヘッド31の操作を可能にし、ディスペンスヘッド31を介してビールホースH3を本体部12から中蓋収容部15に導出させ、減圧弁32を仕切板17の上面に固定するためにガスホースH1,H2を通過させるために形成されたものである。
【0017】
図2及び図3に示すように、仕切板17の上面後部には、減圧弁32を固定するための減圧弁固定突部17bが形成されている。この減圧弁固定突部17bは、減圧弁32の表示部32aが上側となるように固定するものである。仕切板17の開口部17aの周縁の一部には、ビールホースH3とハンドドラフト50とを中蓋収容部15に収容するときに、ビールホースH3を開口部17aの周囲に巻回して収容するためのガイド部17cが上側に突設されている。ディスペンスヘッド31に接続されたビールホースH3を、このガイド部17cに巻き付けてから切欠き16aを通して筐体11外に導出すると、ハンドドラフト50からビールホースH3を引っ張ってもディスペンスヘッド31との接続部分に力が加わらないようになる。
【0018】
中蓋収容部15の上面には上蓋18が着脱可能に載置されていて、上蓋18を取り外せば中蓋収容部15の大きな開口によりビールホースH3とハンドドラフト50とを簡単に収容することができる。上蓋18を取り外しても、中蓋収容部15の下部に仕切板17があるので、本体部12の保冷機能の低下を抑制することができる。ビールホースH3とハンドドラフト50とを中蓋収容部15に収容するときには、ビールホースH3を切欠き16aから外せば、ビールホースH3が筐体11の外側に突出することなく、ビールホースH3とハンドドラフト50とを中蓋収容部15に収容することができる。中蓋収容部15に収容されたビールホースH3とハンドドラフト50は、本体部12内の冷気が開口部17aから導入されて冷却されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、筐体11の前面には、ドレンタンク20が取付金具21により着脱可能に取り付けられている。ドレンタンク20は、ハンドドラフト50の注出ノズル52から後たれするビールを受けたり、カップに過剰に注出された泡状態のビールを廃棄するためのものである。ドレンタンク20は上面が開口した略直方体形状をしており、右側壁上端には外側に延出する舌部20aが形成されている。舌部20aには、ハンドドラフト50を係止させるための切欠き20bが形成されている。図4に示すように、ドレンタンク20の後壁上端部には、取付金具21を係止するための横方向に長い取付孔20cと、取付孔20cの下側に形成された2つの細長い縦スリット20dが形成されている。
【0020】
図4に示すように、取付金具21は、ドレンタンク20を筐体11に着脱可能に取り付けるためのものである。取付金具21は、直角に折り曲げられた略Z字形の2枚の板金部材の一部を溶接により接合したものであり、中蓋収容部15の切欠き16bに係合する略コ字形の筐体取付部21aと、この筐体取付部21aの前側上端部に上方に延出して取付孔20cの上端に係止するドレンタンク係止部21bと、筐体取付部21aの上下方向の中間部における左右両端にて前方に突出して縦スリット20dに係止するアーム21cとを備えている。取付金具21の筐体取付部21aは、中蓋収容部15の浅い切欠き16bに係止して左右方向に移動しないようになっている。
【0021】
図2に示すように、ビア樽(飲料容器)30は、上部に取出口を有する有底円筒形状をしたビール(飲料)を貯えるものであり、本実施形態では10L容量のものを用いている。図2に示すビア樽30は、上部及び下部に円筒形状をしたゴム部材が固定されており、上部のゴム部材には、円周方向に取手部30aが形成されている。また、ビア樽30の取出口には、ガスホースH2とビールホースH3とを接続するためのディスペンスヘッド31が取り付けられている。ディスペンスヘッド31は、レバー31aを操作することでビア樽30からビールホースH3へのビールの流通路を開閉するものである。
【0022】
図2及び図5に示すように、炭酸ガス供給装置40は、ドライアイスを昇華させて炭酸ガスを供給するものである。炭酸ガス供給装置40は、ドライアイスを封入するドライアイス容器41を備えている。ドライアイス容器41は、ドライアイスを収容する有底筒形状をしたステンレス製の容器部41aとこの容器部41aの上面開口を塞ぐステンレス製の蓋部41cとを備えている。ドライアイス容器41は、容器部41aの上端面がパッキン部材を介して蓋部41cに覆われ、蓋部41cを締付金具として用いた2つのファスナー41dにより容器部41aに圧接させて密封されている。なお、本実施形態においては、ドライアイス容器41の容量は1.7Lとなっている。
【0023】
ドライアイス容器41は、各角部に大きなアール部が形成された略直方体形状をしており、ビア樽30の対向面である後面がビア樽30の外周面に沿った形状として、左右両側を後方に突出させて中央部が前方に凹むようにした略円弧形状をしている。容器部41aの上端縁(上端部)には水平方向に突出する鍔部41bが形成されており、蓋部41cはこの鍔部41bと同じ大きさとなっている。図6に示すように、ドライアイス容器41は、鍔部41bと蓋部41cとが容器部41a(の鍔部41bより下側部分)よりビア樽30側に突出しているので、容器部41a(の鍔部41bより下側部分)はビア樽30との間に生じる隙間Oによってビア樽30に直接接触しないようになっている。これにより、ビア樽30内のビールは容器部41a内のドライアイスによって凍結しないようになっている。なお、ドライアイス容器41においては、容器部41aの鍔部41bと蓋部41cとを容器部41a(の鍔部41bより下側部分)よりビア樽30側に突出させているが、何れか一方をビア樽30側に突出させても同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
ドライアイス容器41は、蓋部41cに炭酸ガスを送出するための送出用コネクタ(送出部)42と、回復性安全装置43と、非回復性安全装置44とを備えている。送出用コネクタ42は、容器部41a内に収容したドライアイスから生じる炭酸ガスを送出するためのものであり、ガスホースH1,H2によりビア樽30に接続されている。なお、ガスホースH1,H2との間には、ビア樽30内に送出される炭酸ガスの圧力を所定圧力として80kPaに減圧するための減圧弁32が取り付けられている。
【0025】
回復性安全装置43は安全弁よりなり、蓋部41cに形成された取付孔に取り付けられている。回復性安全装置43は、ばね部材の付勢力によりドライアイス容器41内の圧力が所定圧力として160kPaを超えると、弁部がばね部材の付勢力に抗して開放されて炭酸ガスを放出して、ドライアイス容器41内が160kPaを超えないようにするものである。航空法施行規則の規定では、ドライアイス容器41の内圧を200kPa以上とならないようにする必要があるが、ドライアイス容器41の内圧は回復性安全装置43により200kPaより低い圧力として160kPaを超えないようになっているので、瞬間的にであっても200kPaを超えないようになり、ドライアイス容器41をより安全にして旅客機に搭載可能とすることができる。なお、回復性安全装置43の設定圧力を200kPaを超えないようにしても、同様にドライアイス容器41を旅客機に搭載可能とすることができる。
【0026】
非回復性安全装置44は、所定圧力として200kPaを超えると破裂する破裂板44cを用いて、ドライアイス容器41内の圧力が200kPaを超えないようにするものである。図7に示すように、非回復性安全装置44は、蓋部41cに形成された取付孔に固定された略円筒形状のホルダ44aと、ホルダ44aの上側にシリコン性の環状パッキン部材44bを介して載置される円形をしたアルミニウム製の破裂板44cと、破裂板44cの上側に載置されたワッシャ44dと、ホルダ44aの外周に形成された雄ねじに螺合して破裂板44cをホルダ44aに固定するためのナット44eとを備えている。上述したように、航空法施行規則の規定では、ドライアイス容器41の内圧を200kPa以上とならないようにする必要があるが、ドライアイス容器41の内圧は非回復性安全装置44でも200kPaを超えないようになっており、ドライアイス容器41をさらに安全にして旅客機に搭載可能とすることができる。
【0027】
ドライアイス容器41内にドライアイスを収容すると、ドライアイス容器41の内圧はドライアイスが炭酸ガスになることによって上昇する。ドライアイス容器41の内圧が160kPaを超えると、回復性安全装置43である安全弁が一時的に開放されて炭酸ガスを排出して、ドライアイス容器41の内圧が160kPaを超えることがない。また、回復性安全装置43である安全弁が故障等により作動しなくなり、ドライアイス容器41の内圧が160kPaからさらに200kPaを超えると、非回復性安全装置44の破裂板44cが破裂して炭酸ガスが排出されて、ドライアイス容器41の内圧が200kPaを超えることがない。このように、炭酸ガス供給装置40においては、安全弁よりなる回復性安全装置43と破裂板44cを有する非回復性安全装置44とのように、圧力の上昇を抑える2つの異なる機構の安全装置を用いているので、同じ機構の安全装置を2つ備えたものに比べて、ドライアイス容器41内の圧力が確実に200kPaを超えないようにすることができる。
【0028】
図8に示すように、ハンドドラフト(ドラフト)50は、ビア樽30からビールホースH3を通って送出されるビールをカップに注出する手持ち式のドラフトである。ハンドドラフト50は、ビールの通る内孔内に弁機構部を備えた筒状の本体部51と、本体部51の周壁に一体的に形成されて内孔と連通した注出孔を有する注出ノズル52と、本体部51の下部に接続されたグリップ53と、弁機構部を操作するための操作レバー54と、注出ノズル52の注出口を覆うキャップ55とを備えている。
【0029】
操作レバー54は、弁機構部に接続されたアーム部54aとアーム部54aを回動させて弁機構部を操作するレバー部54bとからなる。操作レバー54は、本体部51の注出ノズル52の反対側で弁機構部にねじ54cにより固定したアーム部54aを注出ノズル52側まで延出させ、アーム部54aの先端部からレバー部54bをグリップ53に沿って下方に延出させている。ハンドドラフト50は、操作レバー54の非操作時には内蔵するばねの付勢力により弁機構部が閉弁するようになっており、操作レバー54のレバー部54bをグリップ53側に傾動操作をすると、内蔵するばねの付勢力に抗して弁機構部が開弁されて、内孔内を通るビールが注出孔に流入して注出ノズル52から注ぎ出される。
【0030】
キャップ55は、注出ノズル52の先端部に着脱可能かつ回転可能に嵌合して取り付けられている。キャップ55は、注出ノズル52の先端部を覆う有底円筒形の本体部55aと、本体部55aの外周下部に一体的に形成されて操作レバー54の傾動を規制するロック部55bとを備えている。ハンドドラフト50の不使用時には、図8に示すように、キャップ55の本体部55aを注出ノズル52に嵌合させ、ロック部55bを操作レバー54のレバー部54bのグリップ53側に係止させると、操作レバー54の傾動を規制することができる。この状態から、キャップ55を図8(a)に示す時計回りに回転させる(例えば90°)と、ロック部55bが操作レバー54のレバー部54bのグリップ53側に係止しなくなり、キャップ55を取り外すことができ、操作レバー54を傾動操作することが可能となる。このように、ハンドドラフト50の不使用時に注出ノズル52にキャップ55を取り付けてロック部55bを操作レバー54のレバー部54bに係止させれば、操作レバー54を誤って傾動させる力が生じても注出ノズル52からビールを注出することを防ぐことができる。また、キャップ55のロック部55bを操作レバー54のレバー部54bのグリップ53側に係止させておけば、振動があってもキャップ55が注出ノズル52から外れて落ちることがない。また、ハンドドラフト50を使用するときには、キャップ55を注出ノズル52から取り外してから本体部55aを操作レバー54の固定用のねじ54cに嵌合させて仮置きすることも可能である。
【0031】
上記のように構成したビールディスペンサ10を旅客機に搭載可能な技術基準を満たしたキャスター付きのカート60に収容して、このカート60により旅客機に搭載して使用する手順について説明する。まず、ドライアイス容器41内にドライアイス1.2kgを封入し、筐体11の本体部12の前側部で漏出防止用の樹脂製袋内に収容する。補強部材14を上方に回動させてから、予め約5℃に冷却したビア樽30を本体部12の中央部でドライアイス容器41とともに漏出防止用の樹脂製袋内に収容し、補強部材14を下方に回動させて後端を固定する。保冷用のドライアイスDを筐体11の本体部12の後側の冷却空間に収容する。炭酸ガス供給装置40の送出用コネクタ42をガスホースH1により減圧弁32に接続し、減圧弁32をガスホースH2によりビア樽30のディスペンスヘッド31に接続する。ディスペンスヘッド31には、ハンドドラフト50が接続されたビールホースH3を接続する。
【0032】
次に、本体部12の上側に中蓋収容部15を載せる。中蓋収容部15を載せたときには、上記の樹脂製袋の上縁を筒部16と仕切板17とで挟んで固定する。また、ガスホースH1,H2を仕切板17の開口部17aを通し、減圧弁32を仕切板17の上面の減圧弁固定突部17bに取り付ける。このとき、減圧弁32の表示部32aが上側となるように固定し、減圧弁32の表示部32aを見ながら減圧弁32の設定圧力を80kPaに調整する。また、仕切板17の開口部17aからディスペンスヘッド31のレバー31aを操作し、ビールの流通路を開放する。ディスペンスヘッド31に接続したビールホースH3を仕切板17の開口部17aから上方に導出させて、開口部17aの周囲に巻いた状態にしてハンドドラフト50とともに中蓋収容部15に収容して、上蓋18を中蓋収容部15の上側に載せる。
【0033】
このように、ビア樽30と炭酸ガス供給装置40とハンドドラフト50とを筐体11内に収容するとともに、ガスホースH1,H2及びビールホースH3を適宜接続した状態にしたビールディスペンサ10を図9に示すようにカート60に収容して空港まで輸送する。カート60に収容されたビールディスペンサ10を旅客機内に積み込んで、乗客にビールを提供するのに用いる。
【0034】
旅客機内でビールディスペンサ10を用いて乗客にビールを提供するときには、図9に示すように、カート60の前面扉を開けて前面を開口させ、上蓋18を取り外してから取付金具21を用いてドレンタンク20を筐体11の前面に取り付ける。なお、図10に示すように、ドレンタンク20を取付金具21によりカート60の上部に設けられたドロワと呼ばれる引き出し61に係止して取り付けるようにしてもよい。ビールホースH3を中蓋収容部15の切欠き16aを通してハンドドラフト50を筐体11から出してドレンタンク20の舌部20aの切欠き20bに係止させて固定する。ハンドドラフト50とビールホースH3は、筐体11から取り出すまで中蓋収容部15内に収容されているので、ビア樽30と同様に輸送中にドライアイス容器41と保冷用のドライアイスDにより冷却されている。これにより、ハンドドラフト50から注出されるビールは、ビールホースH3とハンドドラフト50とを通過するときに温められないようにすることができる。
【0035】
乗客にビールを提供する際には、カート60を乗客の近くまで移動させ、ハンドドラフト50をドレンタンク20から取り外し、ハンドドラフト50のキャップ55を注出ノズル52から取り外してから、カップにビールを注出する。ビールを注出し終えたら、ハンドドラフト50を再びドレンタンク20の切欠き20bに係止させて固定する。このとき、ハンドドラフト50の注出ノズル52はドレンタンク20の上側にあるので、注出ノズル52から後だれしたビールはドレンタンク20に落下するので床面を汚さないようにすることができる。
【0036】
このビールディスペンサ10を日本の国内線の旅客機で使用するときには、他の飲食物と同様にケータリング会社から空港までの輸送に2時間と、旅客機が目的地まで飛行するまでの最大の時間として3時間との合計5時間以上使用可能な状態となっていなければならない。上記のビールディスペンサ10では、炭酸ガス供給装置40のドライアイス容器41内に1.2kgのドライアイスを入れると、ドライアイス容器41の内圧は、5分程度で160kPaまで上昇し、炭酸ガスを送出しなければ約10時間この圧力が保持されていた。ビールディスペンサ10を使用してビールを注出したとしても、ドライアイス容器41の内圧は5時間以上160kPaを保持されていた。また、35℃の過酷条件においても、ドライアイス容器41の内圧は5時間以上160kPaを保持されていた。このとき、ビア樽30はドライアイス容器41の冷熱により十分冷却されていた。
【0037】
上記の1.2kgのドライアイスは空港までの輸送時間と飛行時間との合計5時間、ドライアイス容器41の内圧がビールを圧送可能な160kPaの圧力を維持でき、ビア樽30を十分に冷却できる量であって、ドライアイス容器41は1.2kgのドライアイスを収容できる体積となっている。また、ドライアイス容器41は蓋部41cを開閉することによりドライアイスを補充可能であるので、旅客機が目的地に到着してから、ドライアイス容器41内にドライアイスを補充すれば、復路に要する時間に応じてドライアイス容器41の内圧を160kPaに保持し、ビア樽30を十分に冷却することができる。
【0038】
上述したように、ビールディスペンサ10に使用した炭酸ガス供給装置40は、ガスカートリッジや炭酸ガスボンベのような高圧炭酸ガスを用いることなく、ドライアイス容器41内でドライアイスが昇華して生じる比較的低圧な炭酸ガスを用いたものであり、ドライアイス容器41に160kPaを超えると炭酸ガスを排出する安全弁よりなる回復性安全装置43と200kPaを超えると破裂して炭酸ガスを排出する破裂板44cを有する非回復性安全装置44との2つの安全装置を設けたので、航空法施行規則の規定を満たした安全な炭酸ガス供給装置として旅客機に搭載可能とすることができた。
【0039】
また、ビールディスペンサ10は、ドライアイス容器41とビア樽30とを同じ筐体11内に収容し、ドライアイス容器41から発生する冷熱によりビア樽30を冷却するようにした。これにより、ビールディスペンサ10には、別途冷却装置を設ける必要がなくビア樽30内のビールを冷却することができ、ディスペンサ装置を小型化することができるとともに製造コストを低く抑えることができた。また、ドライアイス容器41は、ビア樽30に対向する対向面をビア樽30の外周面に沿った形状として、左右両側を後方に突出させて中央部が前方に凹むようにした略円弧形状をしているので、ドライアイス容器41内の容積を十分に確保しうえで、筐体11が大きくなることを抑制することができる。
【0040】
また、ビールディスペンサ10においては、ドライアイス容器41内にドライアイスを封入すると、ドライアイス容器41の外面は約−40℃となり、ドライアイス容器41にビア樽30を密着させると、ビア樽30内のビールが凍結するおそれがあった。しかし、ドライアイス容器41は、容器部41aの上端部の鍔部41bと蓋部41cとをビア樽30側に突出させたので、ドライアイス容器41の上端部以外がビア樽30に密着してビールが凍結するのを防ぐことができる。
【0041】
また、ビールディスペンサ10においては、ドライアイス容器41とビア樽30とを同じ筐体11内に収容し、この筐体11を旅客機に搭載可能な技術基準を満たしたカート60に挿脱可能に収容し、ハンドドラフト50をカート60の前面扉を開けた開口からカート60外に配置可能としたので、筐体11をユニット化してカート60に容易に収容することができる。このとき、筐体11の本体部12の前壁と後壁の上部には把手部12d、12eが形成されているので、ユニット化した筐体11を持ち運ぶのが容易となっている。また、専用のカートに構成部品を取り付けたものと比較して、開発期間を短くすることができ、さらに、旅客機に搭載可能な技術基準を満たした既存のカート60を用いて収容したことによりコストを低く抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態のビールディスペンサ10においては、ビア樽30の直径は筐体11の左右方向の内径より小さな大きさであるが、図11に示すように、カート60の左右方向の内径より小さい範囲であれば、ビア樽30の一部を筐体11のU字切欠き部12aから突き出させることにより、筐体11の左右方向の内径より大きな直径のビア樽30を用いることが可能である。このとき、図11に示すように、ビア樽30の外周には環状突部30bの形成されたものもあるが、筐体11の本体部12の位置決め環状段部12b、12cにより、ビア樽30は環状突部30bがカート60の内側壁に設けられた引き出し61のレール60aに当たらないように高さを調整されている。また、このビールディスペンサ10においては、筐体11の本体部12の左右両側壁にU字切欠き部12aの上端部両側を繋ぐ補強部材14を設けたので、U字切欠き部12aの形成された側壁の強度の低下を抑えることができる。
【0043】
本実施形態のビールディスペンサ10においては、ハンドドラフト50をドレンタンク20に着脱可能に固定しているが、例えば、ハンドドラフト50に磁石を装着して金属製のカート60の上面または側面に着脱可能に固定したり、ハンドドラフト50に固定金具を用いて筐体11、カート60または引き出し61に着脱可能に固定してもよい。
【0044】
本実施形態のビールディスペンサ10においては、中蓋収容部15は減圧弁32を収容し、不使用時におけるハンドドラフト50とビールホースH3を収容しているが、さらに、ドレンタンク20を中蓋収容部15に収容可能な形状及び大きさとし、ドレンタンク20とともにビールの提供に供するカップ等の付属品の全てを中蓋収容部15を含む筐体11内に収容してユニット化すれば、ビールを注出する準備の整った飲料ディスペンサ10として輸送、ビールの提供の準備作業及び保管等の管理を容易に行うことができる。
【0045】
本実施形態のビールディスペンサ10においては、炭酸ガス供給装置40のドライアイス容器41に用いる安全装置として、安全弁よりなる回復性安全装置43により所定圧力として160kPaを超えないようにし、破裂板44cを有する非回復性安全装置44により所定圧力として200kPaを超えないようにしているが、破裂板44cを有する非回復性安全装置44に代えて安全弁よりなる第2の回復性安全装置を用いて所定圧力として200kPaを超えないようにしてもよい。
【0046】
本実施形態においては、飲料ディスペンサとしてビールを注出するビールディスペンサ10について説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、炭酸ガスにより圧送するようにしたジュースや酎ハイを注出する飲料ディスペンサであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
40…炭酸ガス供給装置、41…ドライアイス容器、42…送出部(送出コネクタ)、43…回復性安全装置、44…非回復性安全装置、44c…破裂板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスを封入するドライアイス容器と、
前記ドライアイス容器に設けられて前記ドライアイスが昇華して生じる炭酸ガスを送出する送出部とを備えた炭酸ガス供給装置であって、
前記ドライアイス容器内が所定圧力以上になると前記炭酸ガスを排出する安全弁よりなる回復性安全装置を備えたことを特徴とする炭酸ガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炭酸ガス供給装置において、
前記回復性安全装置は前記所定圧力より低い圧力で前記炭酸ガスを排出するようにしたことを特徴とする炭酸ガス供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭酸ガス供給装置において、
前記ドライアイス容器には前記所定圧力以上になると破裂して前記炭酸ガスを排出する破裂板を有する非回復性安全装置を備えたことを特徴とする炭酸ガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−1222(P2012−1222A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135765(P2010−135765)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【出願人】(000201674)全日本空輸株式会社 (10)
【Fターム(参考)】