説明

炭酸ナトリウム結晶の取得方法

炭酸ナトリウムの製造方法であって、この方法によれば、塩化ナトリウム水溶液(5)が膜型槽(1)内で電解され、この槽から水酸化ナトリウム水溶液(9)が捕集され、そして二酸化炭素(15)と直接接触させることにより炭酸化されて無水炭酸ナトリウムの結晶のスラリー(16)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ナトリウム結晶の取得方法に関する。より特定的には、電解により得られた水酸化ナトリウム溶液からの炭酸ナトリウム結晶の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属炭酸塩、特定的には炭酸ナトリウムは、多くの用途を有する非常に広範にわたる工業製品である。ガラス工業では、炭酸ナトリウムは、ガラスの加工をより容易にするための必須成分である。洗剤工業、テキスタイル工業、パルプ工業、および製紙工業もまた、大量の炭酸ナトリウムを消費する工業の例である。
このように消費量がきわめて多いため、炭酸ナトリウムの製造方法は、経済上および環境上たいへん重要である。
【0003】
炭酸ナトリウムは、トロナ鉱床から採取された天然炭酸ナトリウムを精製することによりまたは合成により取得可能である。ほとんどの合成炭酸ナトリウムは、現在、アンモニア法とも呼ばれる「ソルベー(SOLVAY)」法により製造される。この方法では、塩化ナトリウム溶液によりアンモニアを吸収する。こうして形成されたアンモニア性食塩水を二酸化炭素に接触させて重炭酸塩を生成し、これを母液から分離してから仮焼する。母液中に存在するアンモニアおよび仮焼中に放出された二酸化炭素は、回収されて再循環される。
しかしながら、この方法は莫大な投資を必要とする。
【0004】
本出願人の特許BE861527には、他の方法が記載されている。その方法では、イオン選択透過性膜を有する槽内で塩化ナトリウム水溶液を電解して塩素および水酸化ナトリウム水溶液を生成し、これを炭酸化してからエバポレートすることにより炭酸ナトリウム結晶を製造する。この方法では、電解装置内で水酸化ナトリウムを重炭酸溶液と混合することにより炭酸化を行う。しかしながら、液体混合による効率的な炭酸化を達成することは困難であることが判明した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、実施が容易でありかつ炭酸ナトリウム結晶の経済的製造に好適である単純化された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、炭酸ナトリウムの製造方法に関する。この方法によれば、イオン選択透過性膜を有する槽内で塩化ナトリウム水溶液を電解して、塩素、水素、および水酸化ナトリウム含有水溶液を生成し、この水酸化ナトリウム含有水溶液を炭酸化する。本発明によれば、水溶液から無水炭酸ナトリウム結晶の水性スラリーへの変換を引き起こすような条件下で二酸化炭素を水酸化ナトリウム含有水溶液に直接接触させることにより炭酸化を行う。
本発明に係る方法では、イオン選択透過性膜を有する槽は、典型的には、液体(主に水溶液)に対しては実質的に不透過性であるがイオンに対しては選択透過性である少なくとも1つの膜により分離された少なくとも1つのアノード室と少なくとも1つのカソード室とを備えた電解槽である。膜型電解槽は、先行技術として周知であり、塩化ナトリウム水溶液の電解による水酸化ナトリウム水溶液の製造に一般に使用される。
本発明に係る方法では、槽の膜は、カチオン選択透過性であることが好ましい。定義によれば、そのような膜をアノードとカソードとの間の電解質に接触させた場合、電解質のカチオンは膜を通過するが、アニオンの移動に対して膜は実質的に不透過性である。
【0007】
本発明のこの好ましい実施形態では、槽のアノード室に塩化ナトリウム水溶液を導入し、槽のカソード室で水酸化ナトリウム水溶液を形成する。同時に、アノード室で塩素を生成し、カソード室で水素を生成する。
本発明の第1の態様によれば、炭酸化前に水酸化ナトリウム水溶液を槽外に取り出して、槽外に位置する反応器内で炭酸化する。
水酸化ナトリウム水溶液の炭酸化は、無水炭酸ナトリウムが結晶化するように調整された条件下、気液接触器内で、前記溶液を二酸化炭素含有ガスに直接接触させることにより行われる。二酸化炭素含有ガスに関するデータは、以下に与えられている。
本発明に係る方法は、3つの識別可能な相、すなわち、液相、気相、および液相中懸濁状態の結晶固相の存在下での反応という特有の特徴を有する。したがって、気液接触器は、有利には、これらの3つの相が共存するように適合化された反応器である。
【0008】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも2つの開口が穿孔された隔壁により分離された少なくとも2つの重ね合わされたセグメントのスタックからなる塔を備えた反応器内で二酸化炭素含有ガスに対して向流で水酸化ナトリウム水溶液を循環させることが推奨される。ただし、セグメントは、前記セグメント中で溶液の循環を引き起こすための少なくとも1つの横断壁を含む。そのような反応器は、ガスと液体との反応ひいては炭酸ナトリウムの結晶化を促進加速する。
【0009】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、水酸化ナトリウムを含有する水溶液は、二酸化炭素に直接接触させるときに炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンを本質的に含まない。したがって、本発明のこの実施形態では、二酸化炭素に直接接触させる前に前記水溶液を炭酸化または部分重炭酸化に付すことは、明確に回避される。
本発明に係る方法の推奨される変形態様では、炭酸化から捕集されたスラリーまたはその母液は、エバポレーションに付される。エバポレーションは、追加の結晶化を引き起こす機能を有する。それは、通常、蒸発器−結晶化器内で行われる。このユニットは、本発明を規定するうえでとくに重要ではない。多段蒸発器または機械的蒸気再圧縮式蒸発器は、有利に使用される。
【0010】
この変形態様の第1の実施形態では、スラリーは、そのままの状態でエバポレーションに付される。
この変形態様の第2の実施形態では、最初に、スラリーは、それに含まれる結晶の機械的分離に付され、次に、得られた母液(炭酸ナトリウム水溶液)は、エバポレーションに付される。
スラリーからの結晶の分離は、エバポレーションの前および/または後、任意の適切な機械的分離手段により、たとえば、沈降により、遠心分離により、濾過により、またはこれらの3つの分離手段の組合せにより、実施可能である。
【0011】
エバポレーションに続く機械的分離から捕集された母液は、本質的に炭酸ナトリウム水溶液からなる。それは、有利には、膜型電解槽に供給される塩化ナトリウム水溶液を精製するために使用可能である。次に、エバポレーションに続く機械的分離から捕集された結晶は、無水炭酸ナトリウム結晶の形態に乾燥される。その目的で、回転式乾燥機または流動床を使用することが可能である。回転式乾燥機は、燃焼ガスにより直接加熱可能である。しかしながら、たとえば一連のパイプ中を循環するスチームによる間接加熱を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の有利な実施形態では、膜型槽内での電解は、水酸化ナトリウム水溶液が25〜40質量%(好ましくは30〜35質量%)の水酸化ナトリウムを含有するように調整される。
水酸化ナトリウム水溶液が炭酸化される気液接触器内の温度は、好ましくは100℃超の値である。105℃超(好ましくは110℃超)かつ150℃未満(好ましくは140℃未満)の温度は、有利に使用される。115〜140℃の温度は、とくに好ましい。そのような温度は、接触器内の至る所で目的に合わせて到達されることが推奨される。炭酸ナトリウムの少なくとも90質量%、好ましくは95質量%、より好ましくは99質量%、最も好ましくは100質量%は、無水形であることが不可欠である。炭酸化の発熱性は、そのような高温を得るのに役立つ。反応の発熱性の利点を十分に活かすために、気液接触器を断熱することが推奨される。
【0013】
しかしながら、本発明の実施の対応する変形態様では、温度および圧力に関して、蒸発器−結晶化器内の運転条件は、生成される炭酸ナトリウムが本質的に炭酸ナトリウム一水和物の結晶からなるように調整される点に留意しなければならない。次に、気液接触器内で生成された無水結晶は、結晶化器内で一水和物結晶に変換される。
水酸化ナトリウム含有水溶液から無水炭酸ナトリウム結晶の水性スラリーへの本発明に係る変換は、そのような無水結晶が有利には続いて蒸発器−結晶化器内で一水和物結晶に変換されるという事実にもかかわらず、水性スラリーが一水和物炭酸ナトリウム結晶を含む状況と比較して、後続のエバポレーションに必要とされるエネルギーが低減されるという利点を有する。
【0014】
本発明の有利な実施形態では、生成された塩素の少なくとも一部は、ビニルクロリドモノマー(VCM)製造プラントで利用され、ビニルクロリドモノマープラントにより生成された塩酸の少なくとも一部は、炭酸化に用いられる二酸化炭素の少なくとも一部を生成するように石灰石と反応される。この実施形態では、オキシ塩素化を用いないVCM製造プラントであるいわゆる「単純化VCM」を用いることが有利である。実際には、熱分解で生成された塩酸は、石灰石と反応され、オキシ塩素化法で吸収させる必要はない。他の実施形態では、生成された水素の少なくとも一部は、過酸化水素プラントで利用され、かつ/または生成された塩素の一部は、MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)・TDI(トルエンジイソシアネート)プラントで利用される。この最後の実施形態では、MDI/TDIプラントで生成された塩酸を、少なくとも部分的にオキシ塩素化法に基づくVCMプラントで有効に利用することが推奨される。
【0015】
本発明に係る方法では、二酸化炭素含有ガスは、リッチガスまたはリーンガスでありうる。少なくとも50%、可能であれば60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、最も好ましくは90%の二酸化炭素を含有するリッチガスが推奨される。本発明の有利な実施形態では、リッチガスは、膜型槽内で生成された塩素と水素とを反応させることにより得られる塩化水素を水中に吸収させることにより得られる塩酸水溶液を石灰石に作用させることにより得られる。この実施形態では、水素と塩素との反応の発熱により生成されたエネルギーを取り出して、たとえば、蒸発器結晶化器(3)内で生成された一水和物炭酸ナトリウムを乾燥させるために使用することがとくに有利である。
【0016】
リーンガスを用いる本発明の他の実施形態では、これは、たとえば、熱と電力とを併給するための熱設備から放出される煙道ガスを含む。
有利には、熱電併給設備は、炭酸ナトリウム製造ユニットにより使用される二酸化炭素を生成する近接した塩素誘導体製造ユニットに、少なくとも部分的に、電気および/または水蒸気を供給する。また、有利には、電解装置に電気を供給し、蒸発器に水蒸気を供給する。
本発明に係る方法では、塩化ナトリウムの希薄食塩水は、膜型槽から捕集される。この食塩水は、排出可能であるかまたは他の製造ユニット内で使用可能である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、膜型槽から捕集された希薄食塩水は、精製されかつ塩化ナトリウムで濃厚化された後、槽のアノード室に再循環される。精製は、一般的かつ慣例的には、公知のように、脱塩素化、脱塩素酸化、および脱硫酸化を含む。希薄食塩水を濃厚化するために、固体塩化ナトリウムたとえば岩塩をそれに添加することが可能である。それを岩塩貯蔵器に通して循環させることが好ましい。
特定的には、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、および硫酸イオンを、濃厚食塩水からストリッピングしなければならない。カルシウムイオンを濃厚食塩水からストリッピングするために、有利には、炭酸ナトリウムの結晶化から得られた母液の一部で処理することが可能である。マグネシウムイオンをストリッピングするために、電解槽で生成された水酸化ナトリウム水溶液の一部で処理することが可能である。
【0018】
本発明に係る方法は、費用のかかる工業投資を必要とすることなく、特定的には、最適グレードの濃厚苛性ソーダから、高純度の炭酸ナトリウムを容易にかつ経済的に製造するのに好適である。
本発明に特有の特徴および細部は、本明細書に添付された図面の以下の説明から明らかなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係る方法の第1の実施形態を実施するための設備を模式的に示している。
【図2】図2は、本発明に係る方法の他の実施形態を実施するための他の設備を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
これらの図では、同様の参照番号は同一の要素を表す。
図1に模式的に示される設備は、電解槽1と、炭酸化塔2と、蒸発器−結晶化器3と、遠心分離室4と、を備える。
電解槽1は、カチオン選択透過性膜を有するタイプである。それは、アノード室と、カチオン選択透過性膜によりアノード室から分離されたカソード室と、を備える。槽は、単極型または二極型でありうる。
カチオン選択透過性膜を有する槽は、電解技術として周知であり、食塩水または塩化ナトリウム水溶液から水酸化ナトリウム水溶液を工業生産するために広く使用されている。
【0021】
本発明によれば、塩化ナトリウムで実質的に飽和された水溶液5を電解槽1のアノード室内に導入し、かつ水6を槽のカソード室内に導入する。電解時、塩素7が槽のアノード室内で発生し、そこから取り出される。同時に、水素8および水酸化ナトリウム水溶液9がカソード室内で生成され、そこから取り出される。
規定流量の水11も供給される反応室10に塩素7および水素8を送る。塩酸水溶液12を室10から取り出して、石灰石14が供給された反応器13に送る。反応器13では、石灰石に塩酸を作用させて分解することにより、二酸化炭素含有ガス15と塩化カルシウム廃水溶液39とを生成する。
【0022】
水酸化ナトリウム水溶液9および二酸化炭素含有ガス15を炭酸化塔2に送り、この塔内でそれらを向流でかつ互いに接触した状態で循環させる。有利な実施形態では、ガスと水溶液との接触を強化するために、ひいてはガスと溶液との間の反応の収率を向上させるために、カラムは、実質的に水平なまたはわずかに傾斜した隔壁で分離されたいくつかのセグメントのスタックからなる。それぞれの隔壁は、その外周近傍に、溶液を流下させるための開口が穿孔されており、かつその中心ゾーンに、ガスを流上させるための1つもしくは複数の開口が穿孔されている。セグメントは、溶液を循環させるためのバッフルを形成する垂直隔壁によりさらに区画化されている。
【0023】
無水炭酸ナトリウムを結晶化させるために、炭酸化塔2内を約130℃の温度に保持する。
無水炭酸ナトリウム結晶の水性スラリー16を炭酸化塔2内で捕集し、ただちに蒸発器−結晶化器3に送る。このユニットでは、スラリーを制御下のエバポレーションに付して炭酸ナトリウムを結晶化させる。蒸発は、通常、大気圧近傍の圧力でかつ一水和物の形態の炭酸ナトリウムの結晶化に対応する温度で行われる。有利には、蒸発器−結晶化器3から捕集されたスラリー17を遠心分離室4に送り、この室内で炭酸ナトリウム一水和物の結晶18と母液19とを分離する。遠心分離室4内ではまた、所要により、炭酸ナトリウム一水和物の結晶を制御下の水のストリームによる洗浄に付すことも可能である。
一水和物の結晶化から得られた母液19を2つの画分20および21に分ける。画分20は、蒸発器−結晶化器3内に再循環される。画分21の行先については以下で説明する。
【0024】
蒸発器−結晶化器3内ではまた、水蒸気23を生成し、凝縮し、そして岩塩貯蔵器22に送り、この容器内で塩化ナトリウムの飽和食塩水24を捕集する。これを反応器25に送り、この容器内で、母液の画分21と、電解槽1内で生成された水酸化ナトリウム水溶液の画分40と、を用いて、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをストリッピングする。次に、反応器25から捕集された食塩水を濾過し(26)、精製し(27)、次に、電解槽1のアノード室に送る。また、炭酸カルシウムを含有するスラッジ38を反応器25から捕集して反応器13に送る。
【0025】
電解槽1のアノード室から捕集された希薄食塩水29を一連の反応室30、31、32に送り、これらの室内で逐次的に脱塩素酸化、脱塩素化、および脱硫酸化の処理に付す。次に、希薄精製食塩水33を機械的蒸気再圧縮装置34内で処理して塩化ナトリウムで飽和させる。一方では、実質的に飽和された食塩水35を装置34から捕集して電解槽1のアノード室に送り、他方では、水蒸気36を凝縮して補給水37と共に岩塩貯蔵器22に送る。
【0026】
図2中の設備で実施された方法は、電解槽1のアノード室から捕集された希薄食塩水29の処理が図1中のものと異なる。反応室30および31内における脱塩素酸化および脱塩素化の後、希薄食塩水29を岩塩貯蔵器22に送り、この容器内で、それを蒸発器−結晶化器3からの凝縮蒸気23および補給水37と合流させる。岩塩貯蔵器22から捕集された飽和食塩水24を、反応器32内での脱硫酸化と反応器25内でのカルシウムおよびマグネシウムのストリッピングとを含む精製処理に付す。反応器32内での脱硫酸化は、反応器13からの塩化カルシウム廃水溶液39の一部を用いて行われる。カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンは、図1を参照して以上で説明したように反応器25内でストリッピングされる。次に、飽和精製食塩水41を濾過して(42)、電解槽1のアノード室内に導入される食塩水5を再構成する。
【0027】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を担う。それは図1を参照する。
【実施例】
【0028】
1kgあたり253gの塩化ナトリウムと7.0gの硫酸ナトリウムと740gの水とを含有する1,134.6t/hの実質的に飽和された食塩水(5)を膜型槽(1)のアノード室に導入する。以下のものが槽(1)から得られる。
1kgあたり185gの塩化ナトリウムと9.6gの硫酸ナトリウムと806gの水とを含有する830.1t/hの枯渇食塩水または希薄食塩水(29)。
1kgあたり320gの水酸化ナトリウムと680gの水とを含有する285.8t/hの水酸化ナトリウム水溶液(9)。
83.5t/hの塩化水素の生成に対応する量の塩素(7)および水素(8)。
【0029】
水酸化ナトリウム溶液(9)の画分(40)(4.3t/hに等しい)を精製反応器(25)に送る。水酸化ナトリウム水溶液の残分を約130℃の温度に保持された炭酸化塔(2)に送る。したがって、1kgあたり320gの水酸化ナトリウムと680gの水とを含有する281.6t/hの溶液が炭酸化塔(2)に送られる。
49.6t/hの二酸化炭素(15)を炭酸化塔(2)内に導入し、そこから1kgあたり48.7t/hの水と、421gの無水炭酸ナトリウムを含有する282.4t/hの水性スラリー(16)と、を取り出す。
【0030】
1kgあたり281.9gの溶解された炭酸ナトリウムと669gの水とを含有する262t/hの母液(20)との混合物としてスラリー(16)を蒸発器−結晶化器(3)内に導入する。1kgあたり162t/hの水(23)と、505gの炭酸ナトリウムを含有する382.3t/hのスラリー(17)と、を蒸発器−結晶化器(3)から取り出す。遠心分離室(4)では、炭酸ナトリウムの結晶を洗浄する役割を果たす28.5t/hの水(28)と共にスラリー(17)を導入する。142.6tの炭酸ナトリウムの結晶および268t/hの希薄母液(19)を遠心分離室(4)から捕集する。蒸発器−結晶化器(3)内に再循環される262t/hの(20)を分離した後、希薄母液の残分(21)(6.2t/h)を精製反応器(25)に送る。
【0031】
電解槽(1)から取り出された希薄食塩水(29)(830.1t/h)を精製装置(30、31、32)内で処理し、そこから772.7t/hの希薄精製食塩水(33)を取り出す。これを機械的蒸気再圧縮装置(34)に送り、そこから577.6t/hの飽和食塩水(35)および195.1t/hの水を捕集し、塩貯蔵器(22)に送る。飽和食塩水(35)は、1kgあたり250gの塩化ナトリウムを含有する。それを食塩水精製反応器(25、26、27)から送出される557.0t/hの飽和食塩水と共に槽(1)のアノード室に送る。
【0032】
炭酸化塔(2)内で使用される二酸化炭素を生成するために、以上で述べた塩化水素(83.5t/h)を185.8t/hの水中に分散し、こうして生成された塩酸(12)を、111.6t/hの石灰石(14)および食塩水の精製から送出された19.1t/hのスラッジ(38)と共に、反応器(13)内に導入する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ナトリウム水溶液が、イオン選択透過性膜を有する槽内で電解されて、水素と塩素と水酸化ナトリウム含有水溶液とを生成し、前記水酸化ナトリウム含有水溶液が炭酸化に付される、炭酸ナトリウムの製造方法であって、前記炭酸化(2)が、前記水溶液から無水炭酸ナトリウム結晶の水性スラリー(16)への変換を引き起こすような条件下、気液接触器内で、二酸化炭素(15)を前記水酸化ナトリウム含有水溶液(9)に直接接触させることにより行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記気液接触器内の温度が100℃超であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気液接触器内で前記二酸化炭素(15)を前記水酸化ナトリウム水溶液(9)に直接接触させることが、少なくとも2つの開口が穿孔された隔壁により分離された少なくとも2つの重ね合わされたセグメントのスタックからなる塔(2)内で、二酸化炭素含有ガスに対して向流で前記溶液を循環させることにより行われ、前記セグメントが、前記セグメント内で前記溶液の循環を引き起こすための少なくとも1つの横断壁を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水酸化ナトリウム含有水溶液が、前記二酸化炭素に直接接触させるときに(重)炭酸イオンを本質的に含まないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
塩素誘導体(39)が前記塩素(7)から生成され、かつ前記炭酸化(2)が、塩素誘導体製造ユニット(13)で生成された二酸化炭素(15)を少なくとも部分的に用いて行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラリー(16)が、分離された炭酸ナトリウム結晶と母液とを生成するようにエバポレートされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリー(16)をエバポレートするために、それが蒸発器−結晶化器(3)内で処理されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸発器−結晶化器(3)が多段蒸発器または機械的蒸気再圧縮式蒸発器を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水酸化ナトリウム水溶液(9)が約32質量%の水酸化ナトリウムを含むように、前記電解(1)が調整されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリー(17)のエバポレーションから得られる炭酸ナトリウム結晶が炭酸ナトリウム一水和物の結晶になるように、前記蒸発器−結晶化器(3)内の運転条件が調整されることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用される前記二酸化炭素(15)の少なくとも一部が、前記膜型槽(1)内で生成された塩素(7)を水素(8)と反応(10)させることにより得られた塩化水素を水(11)中に吸収させることにより得られた塩酸水溶液(12)を石灰石(14)に作用させることにより得られることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩素(7)の少なくとも一部がビニルクロリドモノマー製造プラントで利用され、前記ビニルクロリドモノマープラントにより生成された塩酸の少なくとも一部が石灰石(14)と反応されて、使用される二酸化炭素(15)の少なくとも一部を生成することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用される前記二酸化炭素の少なくとも一部が、熱と電力とを併給するための熱設備からの煙道ガスであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
希薄食塩水(29)が前記膜型槽(1)から捕集され、かつそれを精製し塩化ナトリウムを用いて濃厚化した後で前記槽のアノード室内に再循環されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記希薄食塩水(29)が、それを岩塩貯蔵器(22)内に循環させることにより濃厚化されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−503600(P2010−503600A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527811(P2009−527811)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059558
【国際公開番号】WO2008/031834
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】