説明

点検用カメラ、配管点検装置、配管点検方法

【課題】多くの曲がり部を持ち、作業者が入ることができない細い配管の点検作業を効率良く実施することができる点検用カメラを提供すること。
【解決手段】点検用カメラ10は、排水管F内に挿入されて当該排水管Fを内側から撮影するカメラヘッド11と、前記カメラヘッド11に接続されるケーブル本体121と、前記ケーブル本体121を被覆して前記排水管Fの形状に応じて自在に湾曲する外装122とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内径が小さく、多くの曲がり部を有する配管の点検に使用される点検用カメラ、配管点検装置、配管点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に埋設される構造物には、電気、通信、ガスなどのライフライン設備を収容する、人が入れる大きさのトンネル(以下、「トンネル」とする。)がある。このようなトンネルは、滲入してくる地下水を貯留するための貯留施設を備えている。貯留施設に貯留された地下水は、所定の水位をオーバーした時点で、地中に埋設された排水管を通して下水管に排水される。
【0003】
ところで、排水管は、経年劣化によって、十分な排水機能を果たせなくなることがある。そのため、排水管の管理者は、定期的に排水管の点検作業を実施する必要がある。しかしながら、排水管の内径は非常に細いため、作業者が排水管内に入って点検作業をすることは不可能である。したがって、現在の点検作業では、排水管に点検用カメラを挿入して、点検用カメラを推進させながら、排水管を内側から撮影している(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平10−191522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の点検用カメラに使用されていたケーブルは、カメラヘッドを推進させる押し込み手段として使用されていたことから、剛性が比較的高く設定されていて、曲がり部の形状に応じて自在に湾曲することができない。そのため、排水管が多くの曲がり部を備えている場合、点検用カメラの推進が困難となり、点検作業の効率が低下することや、さらには点検作業そのものが不可能となることもある。
【0005】
本発明は、多くの曲がり部を持ち、作業者が入ることができない細い配管の点検作業を効率良く実施することができる点検用カメラ、配管点検装置、配管点検方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における点検用カメラ、配管点検装置、配管点検方法は、以下のように構成されている。
【0007】
(1)点検用カメラにおいて、配管内に挿入されて、当該配管を内側から撮影するカメラヘッドと、前記カメラヘッドに接続されるケーブルと、前記ケーブルを被覆して、前記配管の形状に応じて自在に湾曲する外装とを具備している。
【0008】
(2)(1)に記載された点検用カメラにおいて、前記外装の素材は、前記ケーブルの外皮素材よりも前記配管に対する摩擦係数が低い。
【0009】
(3)(1)に記載された点検用カメラにおいて、前記外装の素材は、鋼材である。
【0010】
(4)配管点検装置において、配管内に挿入され、当該配管を内側から撮影するカメラヘッドと、前記カメラヘッドに接続されるケーブルと、前記ケーブルを被覆して、前記配管の形状に応じて自在に湾曲する外装と、前記配管内に気流を形成して、前記配管内において前記カメラヘッドを推進させる気流形成手段とを具備している。
【0011】
(5)(4)に記載された配管点検装置において、前記気流形成手段は、エアーを圧縮して複数の気流を形成する圧縮手段と、前記圧縮手段によって形成された複数の気流を合成して、前記配管内に供給する合成手段とを具備している。
【0012】
(6)配管点検方法において、配管内に点検用カメラのカメラヘッドを挿入する工程と、前記配管内に気流を形成して、前記配管内において前記カメラヘッドを推進させつつ、前記配管を内側から撮影する工程とを具備している。
【0013】
(7)(6)に記載された配管点検方法において、前記点検用カメラのケーブルは、可撓性を有する外装で被覆されていて、前記カメラヘッドの推進時に、当該カメラヘッドに引き摺られて前記配管内を移動して、前記配管の形状に応じて自在に湾曲する。
【0014】
(8)(6)に記載された配管点検方法において、前記外装の素材は、前記ケーブルの外皮素材よりも前記配管に対する摩擦係数が低い。
【0015】
(9)(8)に記載された配管点検方法において、前記外装の素材は、鋼材である。
【0016】
(10)配管点検方法において、配管の第1の開口からワイヤを挿入して、前記配管内に挿通させるとともに、前記配管の第1の開口と前記配管の第2の開口から前記ワイヤを突出させる工程と、前記配管に挿通されたワイヤにおける、前記配管の第2の開口から突出した部位に、前記配管外に配置された点検用カメラのケーブルを繋ぐ工程と、前記ケーブルに繋がれたワイヤにおける、前記配管の第1の開口から突出した部位を引いて、前記配管内に前記ケーブルを挿通させるとともに、前記配管の第1の開口から前記ケーブルを突出させる工程と、前記配管内に挿通されたケーブルにおける、前記配管の第1の開口から突出した部位を引いて、前記配管内において前記点検用カメラのカメラヘッドを移動させつつ、前記配管を内側から撮影する工程とを具備している。
【0017】
(11)(10)に記載された配管点検方法において、前記配管内において前記カメラヘッドを移動させる前に、前記配管内に挿通されたケーブルにおける、前記配管の第1の開口から突出した部位に、前記配管外に配置された測定装置を接続する工程をさらに具備している。
【0018】
(12)(10)に記載された配管点検方法において、前記カメラヘッドが前記配管内で引っ掛かったとき、前記カメラヘッドに接続された引き戻しワイヤにおける、前記配管の第2の開口から突出した部位を引いて、前記カメラヘッドを引き戻す工程をさらに具備している。
【0019】
(13)(10)に記載された配管点検方法において、前記第1の開口は、前記第2の開口よりも高い位置にある。
【0020】
(14)(10)に記載された配管点検方法において、前記ケーブルは、可撓性を有する外装で被覆されていて、前記カメラヘッドの移動時に、前記配管の形状に応じて自在に湾曲する。
【0021】
(15)(10)に記載された配管点検方法において、前記外装の素材は、前記ケーブルの外皮素材よりも前記配管に対する摩擦係数が低い。
【0022】
(16)(10)に記載された配管点検方法において、前記外装の素材は、鋼材である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多くの曲がり部を持ち、作業者が入ることができない細い配管の点検作業を容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、第1の実施形態〜第3の実施形態について説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
先ず、図1〜図6を使用して、第1の実施形態について説明する。
【0026】
図1は本発明の第1の実施形態における排水管Fの点検作業を説明するための概略図である。なお、図1において、符号Aはトンネル、符号Bは特断部、符号Cは貯留部、符号Dはマンホール、符号Eは排水ポンプ、符号Fは排水管、符号Gは下水道、符号Iは排水枡を示している。
【0027】
図1に示すように、トンネルAは、地中に埋設されていて、所定間隔ごとに特断部Bに連結されている。トンネルAは、特断部Bに接近するにつれて低くなるよう傾斜している。そのため、トンネルAに滲入した地下水は、特断部Bに流下することになる。マンホールDは、特断部Bの直上に配設されていて、地上と特断部Bとを接続している。貯留部Cは、トンネルAから流下してきた地下水を貯留するものであって、その内部には排水ポンプEが配設されている。排水ポンプEは、貯留部Cに貯留されている地下水が所定の水位を超えると、地下水の吸い上げを開始する。排水管Fは、排水ポンプEと排水枡Iとを接続していて、排水ポンプEによって吸い上げられた地下水を排水枡Iに導く。排水枡Iは、地上に開口していて、地上で待機する作業者がアクセス可能となっている。通常、排水管Fは、地中に埋設された各種埋設物を迂回するために多くの曲がり部を具備しているが、迂回対象が無い特断部B内では、ほとんど垂直に配置されている。なお、図1における排水管Fには、切欠き部Lが存在しているが、これは排水管Fの点検作業のために形成されたものであって、普段から存在するものではない。
【0028】
本実施形態では、前述の排水管Fの点検にあたり、点検用カメラ10、測定装置20、コンプレッサ30、接続治具40が使用される。以下、これらの構成について、説明する。
【0029】
図2は同実施形態における点検用カメラ10の概略図である。図2に示すように、点検用カメラ10は、カメラヘッド11、ケーブル12、フック13を具備している。
【0030】
カメラヘッド11は、ほとんど球状に形成されていて、ケーブル12が接続される部分の裏側には、CCDカメラ11aと複数のLEDランプ11bとが配設されている。CCDカメラ11aは、いわゆる広角カメラであって、排水管F内に配置された状態で、排水管Fの内壁を撮影することができる。LEDランプ11bは、CCDカメラ11aを取り囲むように等間隔で配置されていて、CCDカメラ11aの撮影部位を照明する。なお、カメラヘッド11の外径は、排水管Fの内径よりも僅かに小さい。したがって、カメラヘッド11は、排水管F内において自由に移動できる。
【0031】
ケーブル12は、ケーブル本体121と外装122とで構成されている。ケーブル本体121は、CCDカメラ11aに接続されていて、CCDカメラ11aの反対にある端部には、測定装置20の接続パネル21に接続されるコネクタ123が取り付けられている。
【0032】
図3は同実施形態におけるケーブル12の概略図である。図3に示すように、ケーブル本体121は、自在に湾曲する程度の柔軟性を有していて、CCDカメラ11aの通信用の同軸ケーブル121aと、同軸ケーブル121aの周囲に配置される各種制御用メタルケーブル121bと、これらのケーブル121a、121bを被覆する外皮121cとを具備している。外皮121cの素材としては、防水性に優れたゴムが使用される。
【0033】
外装122は、ケーブル本体121を網状に被覆していて、張力に弱いケーブル本体121を補強している。外装122の素材としては、ケーブル本体121と共に自在に湾曲する程度の柔軟性を有していて、しかも、排水管Fに対する摩擦係数がケーブル本体121の外皮121cより低い鋼材(ステンレス材等)が使用される。
【0034】
フック13は、引き戻しワイヤ(第3の実施形態で使用される)60が接続される部分であって、CCDカメラ11aの周囲に接続された3本のワイヤ13aによってカメラヘッド11に取り付けられている。
【0035】
図4は同実施形態における測定装置20の概略図である。図4に示すように、測定装置20は、地上に設置されていて、接続パネル21と、モニタ22と、デジタルビデオ23を具備している。接続パネル21は、ケーブル12のコネクタ123が接続される部分であって、CCDカメラ11aからの画像データを取り込む。モニタ22は、接続パネル21から取り込まれた画像データに基づき、排水管Fの様子を映像として表示する。デジタルビデオ23は、接続パネル21から取り込まれた画像データを収録する。
【0036】
図5は同実施形態におけるコンプレッサ30の概略図である。図5に示すように、コンプレッサ30は、地上に配置されていて、周辺のエアーを取り込んで高圧に圧縮するものである。コンプレッサ30は、圧縮されたエアーを吐出する2つの吐出ポート31を具備していて、それぞれの吐出ポート31にはエアホースHが接続される。
【0037】
図6は同実施形態における接続治具40の概略図である。図6に示すように、接続治具40は、メインパイプ41と、2本のサブパイプ42と、連結パイプ43と、防音蓋44とを具備していて、排水枡I内に配置される。この接続治具40は、排水枡Iの側壁に開口する排水管Fに接続されていて、治具やエアバッグによって、排水枡Iの側壁に圧接されている。
【0038】
メインパイプ41は、ほとんど垂直に配置されていて、その上端が点検用カメラ10のカメラヘッド11を挿入するための挿入口として機能している。サブパイプ42は、メインパイプ41の周壁から斜め上に延び、それぞれの上端にはエアホースHが接続されている。連結パイプ43は、メインパイプ41の下端に連結されていて、排水枡Iの側壁に開口する排水管Fに接続される。防音蓋44は、メインパイプ41の上端に嵌め込まれ、エアーによる轟音が接続治具40の外部に漏れるのを防止する。この防音蓋44は、2つのピースで構成されていて、その中心にはケーブル12を挿入するための孔部p1が形成されている。孔部p1の内径は、ケーブル12の外径よりも僅かに大きい。これにより、コンプレッサ30が始動すると、孔部p1の近傍に、ケーブル12をメインパイプ41に吸い込もうとする、いわゆる吸込効果が現れる。
【0039】
(排水管Fの点検作業)
図1を参照しながら、排水管Fの点検作業について説明する。
排水管Fの点検作業では、先ず、特断部Bの内部において、排水管Fが上下2箇所で切断され、排水管Fに切欠き部Lが形成される。なお、切欠き部Lは、コンプレッサ30から供給されるエアーの抜け道として機能する。
【0040】
そして、これとは別工程で、排水枡I内に接続治具40が垂直に配置され、排水管Fと連結パイプ43とが接続される。このとき、連結パイプ43は、治具やエアバッグによって、排水枡Iの側壁に圧接される。これにより、連結パイプ43からのエアーは、ほとんど漏れることなく排水管Fに供給される。
【0041】
次に、2本のサブパイプ42の上端にそれぞれエアホースHが接続される。なお、エアホースHは、事前の作業によって、地上に設置されたコンプレッサ30の吐出ポート31に接続されている。
【0042】
以上の作業が完了したら、コンプレッサ30が起動され、エアホースHからサブパイプ42にエアーが供給される。すると、排水管F内には、排水枡Iから特断部Bへ向かう強烈な渦状の気流が形成される。これにより、排水管Fの下垂部分に残留している地下水が吹き飛ばされ、排水管Fから地下水がほとんど除去される。なお、除去された地下水は、特断部Bに吹き出したのち、貯留部Cに排水される。
【0043】
そして、排水管F内に排水枡Iから特断部Bへ向かう気流が形成されたら、点検用カメラ10のCCDカメラ11aが起動され、メインパイプ41の上端からカメラヘッド11が挿入され、さらにメインパイプ41の上端に防音蓋44が嵌め込まれる。このとき、排水管F内には、前述のように、排水枡Iから特断部Bへの強烈な渦状の気流が形成されている。そのため、地上で待機する作業者によって排水管Fに挿入されたカメラヘッド11は、ケーブル12を引き摺りながら、矢印aで示す方向に推進する。これにより、CCDカメラ11aは、カメラヘッド11と共に移動しながら、排水枡Iから特断部Bにかけて排水管Fを内側から撮影することになる。撮影によって取得された画像データは、ケーブル本体121を通して地上に設置された測定装置20に送信され、デジタルビデオ23によって収録されるとともに、映像としてモニタ22に表示される。これにより、地上で待機する作業者は、排水管Fの様子を点検することができる。しかも、排水管Fの点検作業に立ち会わない者も、デジタルビデオ23に収録された画像データに基づき、排水管Fの様子を点検することができる。
【0044】
そして、点検用カメラ10のカメラヘッド11が下水道Gに到達したら、コンプレッサ30によるエアーの供給が停止される。そして、地上で待機する作業者は、矢印bで示す方向に点検用カメラ10のケーブル12を引いて、排水管Fから点検用カメラ10を撤去する。なお、点検用カメラ10が撤去される最中も、CCDカメラ11aは、撮影を継続していて、デジタルビデオ23に排水管Fの様子が収録される。以上で、排水管Fの点検作業が終了する。
【0045】
(本実施形態による作用)
本実施形態において、点検用カメラ10のカメラヘッド11は、排水枡Iから排水管Fに挿入され、排水管F内に形成される気流によって推進しながら、排水枡Iから特断部Bにかけて排水管Fを内側から撮影する。そのため、排水管Fの点検作業が非常に簡単になる。
【0046】
しかも、排水枡Iは、特断部Bよりも高い位置に配設されている。そのため、カメラヘッド11の推進にあたり、カメラヘッド11自身の重力を利用することができるから、円滑な推進が可能となる。
【0047】
さらに、排水管Fの下垂部分に地下水などが残留していたとしても、排水管F内に形成される気流によって、排水管Fの撮影前に、ほとんど全ての地下水が排水管Fから除去される。そのため、排水管Fの撮影が地下水に邪魔されることがなくなるから、結果として、モニタ22bに表示される映像が非常に鮮明なものとなる。これによって、排水管Fの点検精度が大幅に向上する。
【0048】
本実施形態において、ケーブル12の外装122は、排水管Fの曲がり部の形状に応じて自在に湾曲できる鋼材(ステンレス材等)で形成されている。そのため、排水管F内においてカメラヘッド11が推進するときに、ケーブル12の移動が排水管Fの曲がり部にて抑制されない。これにより、排水管Fが多くの曲がり部を持っていても、カメラヘッド11は排水管F内を円滑に推進することができる。なお、発明者による実験では、6つの曲がり部を備える排水管であっても、カメラヘッド11が円滑に推進できることが確認されている。
【0049】
しかも、外装122の素材である鋼材(ステンレス材等)は、ケーブル12の外皮121cに比べて、排水管Fに対する摩擦係数が小さいから、外装122と排水管Fとの摩擦によってカメラヘッド11の推進が妨害されることがない。
【0050】
本実施形態において、接続治具40は、2本のサブパイプ42から供給される2系統のエアーを混合して、排水管F内に気流を形成している。そのため、排水管F内に形成される気流は強烈な渦状となるので、排水管F内に挿入されるカメラヘッド11が円滑に推進する。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、図7〜図8を使用して、第2の実施形態について説明する。なお、ここでは第1の実施形態と同じ構成・作用については、その説明を省略することとする。
図7は本発明の第2の実施形態における排水管Fの点検作業を説明するための概略図である。図7に示すように、本実施形態における排水管Fは、排水枡Iに接続されずに、下水道Gに接続されている。即ち、地上で待機する作業者は、排水管Fにアクセスすることができない。したがって、本実施形態のように、排水管Fが排水枡Iに接続されない場合には、点検用カメラ10のカメラヘッド11が特断部Bから排水管Fに挿入されることになる。
【0052】
図8は同実施形態における接続治具40Aの概略図である。図8に示すように、本実施形態における接続治具40Aは、特断部B内において、排水管Fに形成された切欠き部Kに配置され、特断部Bの天壁から特断部B内に突出した排水管Fの下端に接続される。したがって、接続治具40Aは、1本のメインパイプ41Aと、2本のサブパイプ42Aと、防音蓋44Aとを具備しているものの、第1の実施形態における接続治具40とは異なり、連結パイプ43を具備していない。
【0053】
メインパイプ41Aは、ほとんど垂直に配置されている。メインパイプ41Aの上端は、特断部Bから突出した排水管Fの下端に接続される。メインパイプ41Aの下端は、開放していて、点検用カメラ10のカメラヘッド11を挿入するための挿入口として機能する。サブパイプ42Aは、メインパイプ41Aの周壁から斜め下に延び、それぞれの下端にはエアホースHが接続される。防音蓋44Aは、メインパイプ41Aの下端に嵌め込まれ、エアーによる轟音が接続治具40Aから漏れるのを防止する。この防音蓋44Aは、2つのピースで構成されていて、その中心にはケーブル12を挿入するための孔部p2が形成されている。孔部p2の内径は、ケーブル12の外径よりも僅かに大きい。これにより、コンプレッサ30が始動すると、孔部p2の近傍に、ケーブル12をメインパイプ41Aに吸い込もうとする、いわゆる吸込効果が現れる。
【0054】
(排水管Fの点検作業)
図7を参照しながら、排水管Fの点検作業について説明する。
本実施形態における排水管Fの点検作業では、先ず、特断部Bの内部において、排水管Fが上下2箇所で切断され、排水管Fに切欠き部Kが形成される。次に、排水管Fに形成された切欠き部Kに接続治具40Aが垂直に配置され、特断部Bの天壁から特断部B内に突出した排水管Fの下端に、メインパイプ41Aの上端が接続される。これにより、接続治具40Aは排水管Fに固定される。
【0055】
次に、2本のエアホースHがマンホールDから特断部Bに導入され、それぞれサブパイプ42Aの下端に接続される。なお、エアホースHは、事前の作業によって、地上に設置されたコンプレッサ30の吐出ポート31に接続されている。
【0056】
また、これとは別工程で、点検用カメラ10がマンホールDから特断部Bに搬入される。なお、点検用カメラ10のコネクタ123は、事前の作業によって、特断部B内に設置された測定装置20の接続パネル21に接続されている。
【0057】
以上の作業が完了したら、コンプレッサ30が起動され、エアホースHからサブパイプ42Aにエアーが供給される。すると、排水管F内には、特断部Bから下水道Gへ向かう強烈な渦状の気流が形成される。これにより、排水管Fの下垂部分に残留している地下水が吹き飛ばされ、排水管Fから地下水がほとんど除去される。なお、除去された地下水は、下水道Gに排水される。
【0058】
排水管Fから地下水が除去されたら、点検用カメラ10のCCDカメラ11aが起動され、メインパイプ41Aの下端からカメラヘッド11が挿入され、さらにメインパイプ41Aの下端に防音蓋44Aが嵌め込まれる。このとき、排水管F内には、前述のように、特断部Bから下水道Gへの強烈な渦状の気流が形成されている。そのため、排水管Fに挿入されたカメラヘッド11は、ケーブル12を引き摺りながら、矢印aで示す方向に推進する。これにより、CCDカメラ11aは、カメラヘッド11と共に移動しながら、特断部Bから下水道Gにかけて排水管Fを内側から撮影することになる。撮影によって取得された画像データは、ケーブル本体121を通して特断部Bに設置された測定装置20に送信され、映像としてモニタ22に表示される。これにより、特断部Bで待機する作業者は、排水管Fの様子を点検することができる。さらに、撮影によって取得された画像データは、デジタルビデオ23によって収録される。したがって、排水管Fの点検作業に立ち会わない者も、デジタルビデオ23に収録された画像データに基づき、排水管Fの様子を点検することができる。
【0059】
そして、点検用カメラ10のカメラヘッド11が下水道Gに到達したら、コンプレッサ30によるエアーの供給が停止される。そして、特断部Bで待機する作業者は、矢印bで示す方向に点検用カメラ10のケーブル12を引いて、排水管Fから点検用カメラ10を撤去する。なお、点検用カメラ10が撤去される最中も、CCDカメラ11aは、撮影を継続していて、デジタルビデオ23に排水管Fの様子が収録される。以上で、排水管Fの点検作業が終了する。
【0060】
(本実施形態による作用)
本実施形態において、点検用カメラ10のカメラヘッド11は、特断部Bから排水管Fに挿入されて、排水管F内に形成される気流によって推進しながら、排水管Fを内側から撮影する。しかも、カメラヘッド11を推進させる気流は、特断部Bに設置された接続治具40Aから排水管Fに吹き込まれるエアーによって形成されている。
【0061】
即ち、本実施形態における排水管Fの点検は、排水管Fの片側からの作業によって実施されている。そのため、作業者が入ることができない下水道Gに接続された排水管Fであっても、簡単に点検することができる。
【0062】
しかも、排水管Fの下垂部分に地下水などが残留していたとしても、排水管F内に形成される気流によって、排水管Fの撮影前に、ほとんど全ての地下水が排水管Fから除去される。そのため、排水管Fの撮影が地下水に邪魔されることがなくなるから、結果として、モニタ22bに表示される映像が非常に鮮明なものとなる。これによって、排水管Fの点検精度が大幅に向上する。
【0063】
本実施形態において、ケーブル12の外装122は、排水管Fの曲がり部の形状に応じて自在に湾曲できる鋼材(ステンレス材等)で形成されている。そのため、排水管F内においてカメラヘッド11が推進するときに、ケーブル12の移動が排水管Fの曲がり部にて抑制されない。これにより、排水管Fが多くの曲がり部を持っていても、カメラヘッド11は排水管F内を円滑に推進することができる。なお、発明者による実験では、6つの曲がり部を備える排水管であっても、カメラヘッド11が円滑に推進できることが確認されている。
【0064】
しかも、外装122の素材である鋼材(ステンレス材等)は、ケーブル12の外皮121cに比べて、排水管Fに対する摩擦係数が小さいから、外装122と排水管Fとの摩擦によってカメラヘッド11の推進が妨害されることがない。
【0065】
本実施形態において、接続治具40Aは、2本のサブパイプ42Aから供給される2系統のエアーを混合して、排水管F内に気流を形成している。そのため、排水管F内に形成される気流は強烈な渦状となるので、排水管F内に挿入されるカメラヘッド11が円滑に推進する。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、図9〜図11を使用して、第3の実施形態について説明する。なお、ここでは第1、第2の実施形態と同じ構成・作用については、その説明を省略することとする。
図9は本発明の第3の実施形態における排水管Fの点検作業を説明するための概略図、図10は同実施形態における排水管Fの点検作業を説明するための概略図である。
【0067】
図9〜図10に示すように、本実施形態における排水管Fは、第1の実施形態と同様に、排水枡Iに接続されているものの、第1の実施形態に比べて著しく腐食していて、一部が欠落している。このように、排水管Fの劣化が著しく進行している場合、コンプレッサ30から供給されるエアーは、排水管Fの孔から地中に流出してしまい、点検用カメラ10のカメラヘッド11を推進させるのに十分な気流の形成が困難である。したがって、本実施形態のように、排水管Fが著しく劣化している場合には、カメラヘッド11を移動させるために通線装置50が使用されることがある。
【0068】
図11は同実施形態における通線装置50の概略図である。図9に示すように、通線装置50は、ワイヤ部51、噴射具52、操作部53を具備している。ワイヤ部51は、ウォータが流れる挿通孔を備えたホースであって、自在に湾曲する柔軟な鋼材(ステンレス材等)で形成されている。噴射具52は、π/4分の円弧に相当する形状をしていて、その先端にはノズル52aが形成されている。このノズル52aは、噴射具52の内面から円弧の曲率中心に向かって開口している。操作部53は、ワイヤ部51における、噴射具52の反対にある端部に接続されていて、レバー53aの操作によって、地上に設置されるウォータジェット発生装置55からの高圧ウォータをワイヤ部51に供給する。操作部53の操作によってウォータジェット発生装置55からワイヤ部51に供給された高圧ウォータは、ワイヤ部51の挿通孔を通って噴射具52のノズル52aから噴射する。これにより、噴射具52は、ウォータを噴射した反動によって、ウォータの噴射方向の反対方向に推進する。
【0069】
(排水管Fの点検作業)
図9〜図10を参照しながら、排水管Fの点検作業について説明する。
先ず、排水管Fにおける、特断部B内に露出した部位に、必要なサイズの開口部(第2の開口)Mが形成される。また、これとは別工程として、特断部B内に点検用カメラ10が搬入される。
【0070】
以上の作業が完了したら、地上の作業者によって、排水枡Iに開口する開口部(第2の開口)Nから排水管F内に通線装置50の噴射具52が挿入される。そして、操作部53のレバー53aの操作によって、ワイヤ部51に高圧ウォータが供給される。これにより、噴射具52に形成されたノズル52aから高圧ウォータが噴射され、その反動によって、噴射具52は、ワイヤ部51を引き摺りながら、矢印aで示す方向に推進する。
【0071】
そして、噴射具52が特断部Bに到達したら、特断部B内で待機する作業者によって、排水管Fに形成された開口部Mから噴射具52が引き出され、事前に特断部B内に搬入されていた点検用カメラ10のケーブル12のコネクタ123に繋がれる。なお、図9は噴射具52とコネクタ123が繋がれる直前の状態を示している。
【0072】
そして、噴射具52にケーブル12のコネクタ123が接続されたら、CCDカメラ11aが起動され、地上で待機する作業者によって、ワイヤ部51が巻き取られる。これにより、ケーブル12のコネクタ123は、ワイヤ部51に導かれて、矢印bで示す方向に移動する。
【0073】
そして、噴射具52に接続されたケーブル12のコネクタ123が排水枡Iに到達したら、地上に設置された測定装置20の接続パネル21にコネクタ123が接続される。そして、地上で待機する作業者によって、ケーブル12の排水枡Iから地上に突出した部分が引かれ、カメラヘッド11が排水管Fを通って矢印bで示す方向に引き寄せられる。これにより、CCDカメラ11aは、カメラヘッド11と共に移動しながら、特断部Bから排水枡Iにかけて排水管Fを内側から撮影することになる。なお、図10はケーブル12が引かれているときの状態を示している。
【0074】
ところで、排水管Fの曲がり部において、点検用カメラ10のカメラヘッド11が引っ掛かった場合、特断部Bで待機する作業者は、フック13に接続されている引き戻しワイヤ60を引いて、僅かにカメラヘッド11を矢印aで示す方向に後退させる。これにより、カメラヘッド11の引っ掛かりが解除され、スムーズな移動が再開される。そして、カメラヘッド11が排水枡Iに到達したら、CCDカメラ11aによる撮影が停止される。以上で、排水管Fの点検作業が終了する。
【0075】
(本実施形態による作用)
本実施形態において、点検用カメラ10のカメラヘッド11は、排水枡Iから地上に突出したケーブル12の引きによって、特断部Bから排水枡Iに向かって移動する。即ち、点検用カメラ10のカメラヘッド11は、ケーブル12が接続される部位、即ちCCDカメラ11aの裏側の部分を先頭にして移動する。そのため、排水管Fが多くの曲がり部を持っていても、カメラヘッド11の円滑な移動が実現される。
【0076】
しかも、点検用カメラ10のカメラヘッド11は、ケーブル12における、作業者が把持する部分より低い位置にあるから、作業者の力加減によって、カメラヘッド11の速度を自在に調整することができる。そのため、モニタ22に表示される排水管Fの映像は、非常に見やすいものとなり、排水管Fを正確に点検することができる。
【0077】
本実施形態において、ケーブル12の外装122は、排水管Fの曲がり部の形状に応じて自在に湾曲する鋼材(ステンレス材等)で形成されている。そのため、排水管Fが多くの曲がり部を持っていても、カメラヘッド11の推進が妨害されないから、排水管Fの点検作業が円滑に実施される。
【0078】
しかも、外装122の素材である鋼材(ステンレス材等)は、ケーブル12の外皮121cに比べて、排水管Fに対する摩擦係数が小さいから、外装122と排水管Fとの摩擦によってカメラヘッド11の推進が妨害されることがない。
【0079】
なお、第1〜第3の実施形態では、地下水を排水するための排水管Fの点検について述べてきた。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、曲がり部を多く持つ配管であれば、どんなものにも適用される。曲がり部を多く持つ配管としては、例えばマンションなどの建築物に配設される水道管、排水管、及びガス管、各種製造プラントにおける配管などがある。このような種々の配管に本発明が適用されても、第1〜第3の実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0080】
さらに、第1〜第3の実施形態では、外装122の素材に鋼材(ステンレス材等)が使用されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、排水管Fなどの曲がり部において、自在に湾曲できる材料であれば、どんなものであっても良い。
【0081】
また、第1〜第2の実施形態において、接続治具40、40Aは、それぞれ2本のサブパイプ42、42Aを備えている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、カメラヘッド11を推進させるのに十分な気流を形成できるのであれば、例えば1本、もしくは3本以上であっても良い。さらに、渦状の気流が形成されなくても構わない。
【0082】
本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態における排水管の点検作業を説明するための概略図。
【図2】同実施形態における点検用カメラの概略図。
【図3】同実施形態におけるケーブルの概略図。
【図4】同実施形態における測定装置の概略図。
【図5】同実施形態におけるコンプレッサの概略図。
【図6】同実施形態における接続治具の概略図。
【図7】本発明の第2の実施形態における排水管の点検作業を説明するための概略図。
【図8】同実施形態における接続治具の概略図。
【図9】本発明の第3の実施形態における排水管の点検作業を説明するための概略図。
【図10】同実施形態における排水管の点検作業を説明するための概略図。
【図11】同実施形態における通線装置の概略図。
【符号の説明】
【0084】
11…カメラヘッド、30…コンプレッサ(圧縮手段)、40…接続治具(合成手段)、40A…接続治具(合成手段)、51…ワイヤ部(ワイヤ)、60…引き戻しワイヤ、121…ケーブル本体(ケーブル)、121b…外皮、122…外装、F…排水管(配管)、N…開口部(第1の開口)、M…開口部(第2の開口)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内に挿入されて、当該配管を内側から撮影するカメラヘッドと、
前記カメラヘッドに接続されるケーブルと、
前記ケーブルを被覆して、前記配管の形状に応じて自在に湾曲する外装とを具備していることを特徴とする点検用カメラ。
【請求項2】
前記外装の素材は、前記ケーブルの外皮素材よりも前記配管に対する摩擦係数が低いことを特徴とする請求項1に記載された点検用カメラ。
【請求項3】
前記外装の素材は、鋼材であることを特徴とする請求項1に記載された点検用カメラ。
【請求項4】
配管内に挿入され、当該配管を内側から撮影するカメラヘッドと、
前記カメラヘッドに接続されるケーブルと、
前記ケーブルを被覆して、前記配管の形状に応じて自在に湾曲する外装と、
前記配管内に気流を形成して、前記配管内において前記カメラヘッドを推進させる気流形成手段とを具備していることを特徴とする配管点検装置。
【請求項5】
前記気流形成手段は、
エアーを圧縮して複数の気流を形成する圧縮手段と、
前記圧縮手段によって形成された複数の気流を合成して、前記配管内に供給する合成手段とを具備していることを特徴とする請求項4に記載された配管点検装置。
【請求項6】
配管内に点検用カメラのカメラヘッドを挿入する工程と、
前記配管内に気流を形成して、前記配管内において前記カメラヘッドを推進させつつ、前記配管を内側から撮影する工程とを具備していることを特徴とする配管点検方法。
【請求項7】
配管の第1の開口からワイヤを挿入して、前記配管内に挿通させるとともに、前記配管の第1の開口と前記配管の第2の開口から前記ワイヤを突出させる工程と、
前記配管に挿通されたワイヤにおける、前記配管の第2の開口から突出した部位に、前記配管外に配置された点検用カメラのケーブルを繋ぐ工程と、
前記ケーブルに繋がれたワイヤにおける、前記配管の第1の開口から突出した部位を引いて、前記配管内に前記ケーブルを挿通させるとともに、前記配管の第1の開口から前記ケーブルを突出させる工程と、
前記配管内に挿通されたケーブルにおける、前記配管の第1の開口から突出した部位を引いて、前記配管内において前記点検用カメラのカメラヘッドを移動させつつ、前記配管を内側から撮影する工程とを具備していることを特徴とする配管点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−206258(P2007−206258A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23396(P2006−23396)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(000129390)株式会社キュー・アイ (3)
【Fターム(参考)】