説明

点火プラグ

【課題】簡素な構造で従来と同等もしくは低い電圧を用いたとしても確実に安定した火炎核を形成するとともに、燃焼室側への火炎核の成長を円滑に行うことができる内燃機関用の点火装置を提供する。
【解決手段】中心電極5と、当該中心電極5から所定の間隔の火花ギャップを空けて配置される接地電極6と、を備え、中心電極5および接地電極6の先端側をエンジンの燃焼室100に挿入し、前記中心電極5から前記接地電極6へ放電させることでエンジンの燃焼室100内の混合気を点火させる点火プラグ1であって、火花ギャップが形成される前記接地電極6の先端部と対向する前記中心電極5の先端部には、基端側から先端側に位置するほど抵抗値が小さくなる放電電極部51を有し、前記火花ギャップは、基部側が短く、基部側から先端側に向うにつれて長くなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火プラグの技術に関する。詳細には点火プラグにおける電極の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関用の点火プラグは、中心電極と接地電極とを有し、中心電極に高電圧が印加されることで、それら電極間に形成された火花ギャップに放電がなされる。その放電によって、火花ギャップに存在する混合気は点火される。この構成を基本として、より確実なる混合気の点火を実現するため様々な工夫がなされている。
例えば、特許文献1に示す点火プラグは、陰極(接地電極)とそれに対応する電極間距離(火花ギャップ)の異なる第一および第二の陽極(中心電極)を二つ備え、先ず、電極間距離の短い第一の陽極に電圧を印加して陰極へと放電することで混合気を励起(イオン化)させる。その後、第二の陽極に電圧を印加するように切替えて陰極へと放電することでイオン化された混合気を利用して安定した火炎核を形成する。
【0003】
また、特許文献2に示す点火プラグは、補助電極と主電極を備えており、各電極が高圧電極(中心電極)と接地電極を有する。補助電極間は、主電極間よりも長く形成され、先ず、補助電極間に電圧を印加することで混合気からプラズマ雰囲気を生成させる。その後、制御装置によってタイミングが計られてから、主電極間に電圧を印加することでアーク放電を起こし、プラズマ雰囲気となった混合気によって着火性を確保する。
【0004】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載されている点火プラグは、中心電極が二つ配置されており、中心電極に高電圧を印加するための回路などの構成が複雑となるという不具合がある。
【0005】
特許文献3に示す点火プラグは、電極(中心電極および接地電極)を備え、電極の対向する箇所に、電極の第一の範囲と電極の別の範囲とが形成される。電極の第一の範囲と電極の別の範囲は異なる材料から成っており、電極の第一の範囲での間隔(火花ギャップ)は電極の別の範囲での間隔(火花ギャップ)に比べ小さく形成される。そのため、間隔の小さな電極の第一範囲から間隔の大きな電極の別の範囲へと放電を連続的に移行させながら、火炎を成長させる。
【0006】
また、特許文献4に示す点火プラグは、中心電極と接地電極とを備えている。中心電極は、接地電極との距離(火花ギャップ)が短く抵抗値の大きなチップと、接地電極との距離が長くチップに比べ抵抗値の小さなケーシングとを有している。先ず、放電距離の短いチップから接地電極への放電がなされ、その後、放電距離の長いケーシングから接地電極へと放電が移行することで火炎を成長させる。
【0007】
しかし、特許文献3および特許文献4に記載されている点火装置は、火炎核の燃焼室方向への成長と放電の移動とが、同期するように構成されておらず、火炎核の燃焼室全体への成長方向の途中に電極の構造体(接地電極)が配置されているため、燃焼室全体への円滑な火炎核の成長が妨げられるという不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−272441号公報
【特許文献2】特開2007−32349号公報
【特許文献3】特開2000−30835号公報
【特許文献4】特開平10−172715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、簡素な構造で従来と同等もしくは低い電圧を用いたとしても確実に安定した火炎核を形成するとともに、燃焼室側への火炎核の成長を円滑に行うことができる内燃機関用の点火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、中心電極と、当該中心電極から所定の間隔の火花ギャップを空けて配置される接地電極と、を備え、中心電極および接地電極の先端側をエンジンの燃焼室に挿入し、前記中心電極から前記接地電極へ放電させることでエンジンの燃焼室内の混合気を点火させる点火プラグであって、火花ギャップが形成される前記接地電極の先端部と対向する前記中心電極の先端部には、基端側から先端側に位置するほど抵抗値が小さくなる放電電極部を有し、前記火花ギャップは、基部側が短く、基部側から先端側に向うにつれて長くなるように構成されるものである。
【0012】
請求項2においては、前記放電電極部は、抵抗値の異なる複数の抵抗チップによって形成されるものである。
【0013】
請求項3においては、前記放電電極部は、基端から先端に向うにつれて細くなるように構成したものである。
【0014】
請求項4においては、前記火花ギャップが形成される接地電極の中心電極側には、前記放電電極部の抵抗値の変化方向と同じ方向の一つまたは複数の稜線を有する突起部が形成されるものである。
【0015】
請求項5においては、前記火花ギャップが形成される中心電極の接地電極側には、前記放電電極部の抵抗値の変化方向と同じ方向の稜線を有する突起部が形成されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、回路や制御装置などを有することのない簡素な構造で、火花ギャップの狭い箇所から広い箇所へと放電を移動させながら必要な要求電圧が低減されつつ、確実に安定した火炎核を形成することができる。中心電極および接地電極の先端によって形成される火花ギャップが長く消炎効果が低減され、放電の移動方向側に部材が配置されていないため、火炎核の成長が阻害されにくく、燃焼室側への火炎核の成長を円滑に行うことができる。
【0018】
請求項2においては、抵抗チップの抵抗値を変えることによって、放電電極部の抵抗値を容易に変更することができる。
【0019】
請求項3においては、容易に火花ギャップを中心電極の基端から先端に向うに従って長くすることができる。
【0020】
請求項4においては、火炎核に対面する側の接地電極の面積が小さくなり、接地電極の消炎作用による火炎核の形成の阻害を軽減することができる。加えて、放電し易くなり、火炎核の形成が促進される。
【0021】
請求項5においては、火炎核に対面する側の中心電極の面積が小さくなり、中心電極の消炎作用による火炎核の形成の阻害を軽減することができる。加えて、中心電極の突起部の電界が強められ局所的な混合気の絶縁破壊がなされるため、放電し易くなり、火炎核の形成が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態に係る点火プラグの全体的な構成を示す部分側断面図。
【図2】同じく火花ギャップの形成状態を示す図。(a)部分側面図、(b)(a)におけるA−A線断面図。
【図3】同じく中心電極および接地電極の周辺を示す下方斜視図。
【図4】(a)放電による混合気のイオン化を示す側面図、(b)イオン化された混合気による火炎核の形成を示す側面図、(c)火炎核の成長を示す側面図。
【図5】第二実施形態に係る点火部の火花ギャップの形成状態を示す図。(a)部分側面図、(b)(a)におけるB−B線断面図。
【図6】第三実施形態に係る点火部の火花ギャップの形成状態を示す図。(a)部分側面図、(b)(a)におけるC−C線断面図。
【図7】第四実施形態に係る突起部を有する接地電極の周辺を示す下方斜視図。
【図8】第五実施形態に係る突起部を有する接地電極の周辺を示す下方斜視図。
【図9】(a)図7におけるD−D線断面図、(b)図8におけるE−E線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る点火プラグは、ガスエンジンやガソリンエンジンの燃焼室内に混合気が吸い込まれて圧縮されたときに点火させて混合気を燃焼させるためのものである。
【0024】
本発明に係る点火プラグの全体的な構成について、図1から図3を用いて説明する。
点火装置は、主として蓄電池から適切なタイミングで供給される低電圧を高電圧へと変換するイグニッションコイルを有する電圧変換部と、この高電圧が印加されることにより放電する点火部(以下、点火プラグ1とする)とによって構成される。点火プラグ1は、その先端に設けられる電極を燃焼室100内に突出するように挿入配置される。
【0025】
点火プラグ1は、主としてハウジング2、碍子3、中軸4、電極(中心電極5、および接地電極6)によって構成される。
【0026】
ハウジング2は、点火プラグ1全体をエンジン(シリンダヘッド101)に固定し設置するための部材である。ハウジング2は、略円筒状に形成され、上部はナット部としその下部の外周にはネジ部21が形成される。当該ネジ部21をエンジンのシリンダヘッド101に螺設することで、点火プラグ1の先端部が燃焼室100内に配置されるようにエンジンに固定される。
【0027】
碍子3は、その内部の中心電極5とその外周のハウジング2(接地電極6)との間を絶縁する部材である。
碍子3は、陶磁器等の絶縁部材で構成され、その上部を略円筒状に形成し、さらに下部を上部よりも半径が小さな略円筒状に形成される。碍子3はターミナル41および中心電極5が挿入できるように軸心方向に挿入孔31が形成される。碍子3は、その上下中途部をハウジング2に内挿することによってハウジング2に支持される。
【0028】
中軸4は、前記電圧変換部からの電流を中心電極5へと伝達するための部材である。中軸4は、略円柱状の部材であって、碍子3の挿入孔31の上部から中途部まで挿入され、その上端部に、ターミナル41が取り付けられる。ターミナル41は、前記電圧変換部からの電流を中軸4へと伝達するための端子である。中軸4の下端には、レジスターシール42の上端が当接される。当該レジスターシール42はスパーク時に点火ノイズを軽減するための部材であって、挿入孔31内に挿入される。
【0029】
中心電極5は、高電圧が印加されたときに、先端部において接地電極6との間で放電される部材である。中心電極5は、主として芯部50および放電電極部51(抵抗チップ52・53・54)によって構成される。
【0030】
芯部50は、棒状に形成されレジスターシール42と放電電極部51との間に配設される。芯部50は高伝導の金属を材料とし、本実施形態ではNi系合金であるNi−Cr合金を、略円柱状とすることで形成される。ただし、芯部50は、その素材をNi−Cr合金と限定するものではなく、高伝導性を有する材料であればよい。芯部50は、碍子3に内挿され、その上端が、レジスターシール42を介して中軸4につながるように配置される。芯部50の下端部は、碍子3の下端よりも突出しこの突出部の外周に放電電極部51が設けられる。
【0031】
放電電極部51は、リング状に形成された、第一抵抗チップ52、第二抵抗チップ53、第三抵抗チップ54からなる。
【0032】
各抵抗チップ52・53・54は、接地電極6の先端部と対向して配置され、芯部50に高電圧が印加されると、接地電極6へと放電するためのものである。各抵抗チップ52・53・54は、SiC等の半導体セラミック、前記半導体セラミックにAlなどの金属を混入した混合物、またはAlなどよりなるセラミックスにAlなどの金属を混入した混入物を、略リング状とすることにより形成される。抵抗チップ52・53・54は、その内径に芯部50の下端部が挿入され、中軸4(中心電極5の基端側)に近い方から遠い方へと向うにつれて、抵抗値が小さくなるように並列に配置される。そして、放電電極部51の半径は、碍子3の下部と同半径の略円柱状に形成される。ただし、抵抗チップの数は4個以上設ける構成であってもよく、先端部ほど電気抵抗が小さい抵抗チップであればよい。
【0033】
中心電極5における抵抗値の関係は、抵抗値の大きいものから順に、抵抗チップ52>抵抗チップ53>抵抗チップ54>芯部50となる。
【0034】
接地電極6は、側面視略L字状に形成され、先端部が前記放電電極部51と対向するように配設される。接地電極6は、高温に強く耐久性に優れたPt、Ir合金などを略板状とすることで形成される。接地電極6の上端(基部側)は、ハウジング2の下端面の一部分に溶接等によって固設される。接地電極6の先端部の放電電極部51と対向する部分は、側面視において、円弧状または直線状として、基部側が、放電電極部51に対して近く、先端側が放電電極部51に対して遠くなるように形成される。つまり、抵抗チップ52と接地電極6との間の距離(以下、第一火花ギャップG1とする)は所定の距離だけ離れるように構成され、下方(燃焼室100側)に向うにつれて、抵抗チップ52・53・54と接地電極6との間の距離(間隔)が徐々に長くなるように構成される。そして、接地電極6と抵抗チップ53との間の距離を第二火花ギャップG2とし、接地電極6と抵抗チップ54との間の距離を第三火花ギャップG3とする。また、図2の(b)に示すように、接地電極6の内側面は、平面視において、抵抗チップ52・53・54の外側面に沿うように所定の間隔を空けて略円弧状に形成される。
【0035】
次に、放電に伴う火炎核の形成および火炎核の成長について、図1から図4を用いて説明する。ただし、図中の芯部50から抵抗チップ52・53・54に至る線は、並列に電圧が印加されている状態を模式的にあらわしており、太さは放電時の電流の大きさを表している。また、図中の波線は放電を表したものである。
【0036】
先ず、抵抗チップ52・53・54に高電圧が印加されると、接地電極6と放電電極部51との間の距離が最も短い第一抵抗チップ52から火花ギャップG1を介して接地電極6に放電する。このとき、火花ギャップG1で放電可能となるのは、第一火花ギャップG1が下方の第二火花ギャップG2・第三火花ギャップG3に比べて短いため、第一火花ギャップG1の混合気はより絶縁抵抗が小さいためである。
この第一火花ギャップG1での放電により、混合気の活性化(イオン化、ラジカル化)が行われる。この放電が生じる印加電圧は、接地電極6と放電電極部51との間の距離が短い程、低くすることができる。
【0037】
この混合気のイオン化によって、接地電極6と放電電極部51との間の空間における電気抵抗が小さくなり、抵抗チップ52よりも電気抵抗が小さい抵抗チップ53と接地電極6との間で放電が生じ、更に、電気抵抗の小さい抵抗チップ54と接地電極6との間で放電が生じるようになる。こうして、図4の白抜き矢印に示すように、第一火花ギャップG1から第二火花ギャップG2、第三火花ギャップG3(中心電極5の基部側から先端側)に向かって、次々に放電は移行され、火炎核の形成が行われる。
【0038】
このとき、放電電極部51の先端側ほど放電電流は徐々に大きくなるため、混合気の活性化が促進され、火炎核も順次拡大し、火花ギャップが徐々に長くなることにより、放電による火炎核も成長することとなる。そして、火炎核の形成に有効な放電の距離が長くなるため、消炎作用が軽減される。よって、放電により促進された混合気の火炎核の成長により確実に着火することが可能となる。
【0039】
つまり、第一火花ギャップG1周辺のイオン化に伴い、放電が第二火花ギャップG2へと移行する途中で火炎核が形成され、さらに、火花ギャップが長くなるにつれて、その火炎核は、下方(第三火花ギャップG3側)への成長を促進させられ、火炎核が燃焼室100方向へと伝播して行くことで、燃焼室100内の混合気が点火される。
【0040】
なお、放電電極部を抵抗チップ52・53・54として複数の部材で構成しているが、放電電極部の基部側(上部)から先端側(下部)に向うにつれて、抵抗値が徐々に低くなるような一つの抵抗部材で構成してもよい。
【0041】
以上の如く、本実施形態の点火プラグ1は、
中心電極5と、当該中心電極5から所定の間隔の火花ギャップを空けて配置される接地電極6と、を備え、中心電極5および接地電極6の先端側をエンジンの燃焼室100に挿入し、前記中心電極5から前記接地電極6へ放電させることでエンジンの燃焼室100内の混合気を点火させる点火プラグ1であって、火花ギャップが形成される前記接地電極6の先端部と対向する前記中心電極5の先端部には、基端側から先端側に位置するほど抵抗値が小さくなる放電電極部51を有し、前記火花ギャップは、基部側が短く、基部側から先端側に向うにつれて長くなるように構成されるものである。
【0042】
このように構成することにより、抵抗を変更するための回路や制御装置などを有することのない簡素な構造で確実に点火できる点火プラグを提供できる。つまり、高電圧を印加したときには、火花ギャップの狭い箇所(第一火花ギャップG1)から広い箇所(第二火花ギャップG2)へと放電を移動させ、確実に安定した火炎核を形成することができ、確実に点火することができる。また、中心電極5と接地電極6の先端との間に形成される火花ギャップは先端ほど長くなるので、火炎核を形成する過程で消炎効果が低減され、確実に点火できる。この時、放電の移動方向側に部材が配置されていないため、火炎核の成長が阻害されにくく、燃焼室100側への火炎核の成長を円滑に行うことができる。また、最初の放電が、火花ギャップが短い部分(第一火花ギャップG1)で生じるので、必要な要求電圧を低く押さえることができ、コスト低減化も図れる。更に、火炎核は先端側、つまり、燃焼室の中心側に移動するため、着火性も向上できる。
【0043】
本実施形態の点火プラグ1は、
放電電極部51が、抵抗値の異なる複数の抵抗チップ52・53・54によって形成されるものである。
【0044】
このように構成することにより、抵抗値の異なる抵抗チップ52・53・54をエンジンの仕様に合わせて放電電極部に設けることで、点火性能を更に向上することができる。この場合、仕様の変更に対して抵抗チップの抵抗値を容易に変更することができる。
【0045】
次に、図5を用いて、第一実施形態を基とする、電極(中心電極5と接地電極6)の形状の異なる第二実施形態の点火プラグ201を説明する。ただし、以下において第一実施形態と同じ構造および形状であるものは、同じ符号を付す。
【0046】
中心電極205の先端部に位置する芯部250は、略円柱状に形成される。芯部250は、碍子3に内挿され、その上端が、レジスターシール42を介して中軸4の下端となるように配置される(図1参照)。芯部250の下端部は、碍子3の下端よりも突出するように配置され、その形状は、下方に向うに従って細くなるテーパー状に形成される。
【0047】
中心電極205の先端部に位置する放電電極部251は、複数の抵抗チップ252・253・254によって構成される。
抵抗チップ252・253・254は、略リング状に形成され、芯部250の下端部に挿入された状態で、その基端から先端に向うにつれて細くなるテーパー状に形成される。抵抗チップ252・253・254は、中心電極205の基端部に近い方から遠い方へと向うにつれて、抵抗値が小さくなるように並列に配置される。
【0048】
接地電極206は、略板状の部材を適宜曲折することによって形成される。接地電極206の上端(基端)は、ハウジング2の下端面の一部分に溶接等によって固設される。接地電極206の上部はハウジング2の下端面から垂直に延設される。接地電極206の中途部は、抵抗チップ252側に曲げられる。接地電極206の先端部の放電電極部251と対向する面は、中心電極205の軸心と平行となるように上下方向の面としている。また、図5の(b)に示すように、接地電極206の内側面は、平面視において、抵抗チップ252・253・254の外側面に沿うように所定の間隔(火花ギャップG21・G22・G23)を空けて略円弧状に形成される。
【0049】
図5に示すように、放電電極部251がその先端に向うにつれて細くなるように形成されているため、接地電極206と中心電極205によって形成される火花ギャップは、放電電極部251の基端から先端に向うにつれて火花ギャップが徐々に長くなる。つまり、第一抵抗チップ252と接地電極206によって形成される第一火花ギャップG21は最も短く、第三抵抗チップ254の先端(下端)と接地電極206の先端(下端)によって形成される第三火花ギャップG23が最も長くなる。
【0050】
従って、第二実施形態の点火プラグ201も、放電電極部251が下方の燃焼室100に向うにつれて、火花ギャップが長くなるように形成されているため、第一実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0051】
以上の如く、第二実施形態の点火プラグ201は、
前記放電電極部251が、基端から先端に向うにつれて細くなるように構成したものである。
【0052】
このように構成することにより、容易に火花ギャップを中心電極205の基端から先端に向うに従って長くすることができる。よって、放電時に火炎核を成長させて、点火を確実に行うことができる。
【0053】
第三実施形態の点火プラグ301としては、図6に示すように、第二実施形態の中心電極205(図5参照)と、第一実施形態の接地電極6(図2参照)とを組み合わせることで、火花ギャップを電極の下方に向うに従って長くすることもできる。
【0054】
第三火花ギャップG33を第二実施例における第三火花ギャップG23よりも容易に長く形成することができる。また、第一火花ギャップG31から第二火花ギャップG32、第三火花ギャップG33の微細な長さの調整は、加工の容易な放電電極部251のテーパー面の角度で調節することができる。
【0055】
次に、図1から図6に示す第一実施形態から第三実施形態の接地電極6・206の詳細な形状について、以下の第四実施形態および第五実施形態の点火プラグ401・501において説明をする。ただし、両実施形態ともに説明容易のため、第一実施形態の接地電極6の形状を基にして説明を行う。
【0056】
図7および図9の(a)に示すように、第四実施形態の接地電極406の中心電極5側には、前記放電電極部51の抵抗値の変化方向と略同じ方向の稜線R1を有する突起部461が形成される。接地電極406の中心電極5側にこのような突起部461を形成するためには、高温に強く耐久性に優れたPt、Ir合金等を用いた方がよりよい。
【0057】
次に、第四実施形態を基として、図8および図9の(b)を用いて、第五実施形態の中心電極505および接地電極506の形状について説明する。
【0058】
中心電極505は、第一実施形態と同様の芯部50を有し、当該芯部50の先端部に放電電極部551を形成する抵抗チップ552・553・554が嵌装される。
第二抵抗チップ553は、図9の(b)に示すように平面視において、リング状の部材が接地電極506側に向かって突出するように形成される。他の第一抵抗チップ552および第三抵抗チップ554も同じように形成される。
したがって、図8に示すように、各抵抗チップ552は、芯部50に嵌装された状態において、接地電極506側に、放電電極部551の抵抗値の変化方向(芯部50の軸心方向)と同じ方向で、略平行の稜線R2を有する突起部555が形成される。
【0059】
火花ギャップが形成される接地電極506の中心電極505側には、前記放電電極部551の抵抗値の変化方向と略同じ方向の二本の稜線R3を有する突起部561が形成される。第四実施形態と同様に、接地電極506の内側面にこのような突起部561を形成するためには、高温に強く耐久性に優れたPt、Ir合金等を用いた方がよりよい。
【0060】
このように構成することにより、中心電極505および接地電極506が火炎核と接触することによる消炎作用を低減することができ、火炎核の形成および成長が促進される。
中心電極505の突起部555によってその周辺の電界が強められ、放電に伴う混合気のイオン化とは別途に局所的な混合気の絶縁破壊がなされるため比較的低い電圧で、放電がなされる。中心電極505および接地電極506の消耗時の絶縁破壊に有利である。
【0061】
各実施形態の接地電極6・206・406・506は、ハウジング2の下端面の一部から下方へと突出するように形成されているが、ハウジング2の下端面の全周から、中心電極5・405・505・506を覆うように配置してもよい。また、接地電極6・206・406・506を、平面視においてハウジング2の下端面に等間隔を空けて複数配置してもよい。
【0062】
以上の如く、本実施形態の点火プラグ401・501は、
前記火花ギャップが形成される接地電極406・506の中心電極5・505側には、前記放電電極部51・551の抵抗値の変化方向と同じ方向の一つまたは複数の稜線R1・R3を有する突起部461・561が形成されるものである。
【0063】
このように構成することにより、図9に示すように、火炎核が接地電極406・506と接触する面積が小さくなり、接地電極406・506の消炎作用による火炎核の形成の阻害を軽減することができる。加えて、放電され易くなり、火炎核の形成が促進される。
【0064】
本実施形態の点火プラグ501は、
前記火花ギャップが形成される中心電極505の接地電極506側には、前記放電電極部551の抵抗値の変化方向と同じ方向の稜線R2を有する突起部555が形成されるものである。
【0065】
このように構成することにより、火炎核が中心電極505と接触する面積が小さくなり、中心電極505の消炎作用による火炎核の形成の阻害を軽減することができる。加えて、中心電極の突起部555の電界が強められ局所的な混合気の絶縁破壊がなされるため、放電し易くなり、火炎核の形成が促進される。
【符号の説明】
【0066】
1 点火プラグ
5 中心電極
6 接地電極
10 点火プラグ
51 放電電極部
52 第一抵抗チップ
53 第二抵抗チップ
54 第三抵抗チップ
100 燃焼室
201 点火プラグ
205 中心電極
251 放電電極部
401 点火プラグ
406 接地電極
461 突起部
501 点火プラグ
505 中心電極
506 接地電極
551 放電電極部
555 突起部
561 突起部
G1 第一火花ギャップ
G2 第二火花ギャップ
G3 第三火花ギャップ
R1 稜線
R2 稜線
R3 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、当該中心電極から所定の間隔の火花ギャップを空けて配置される接地電極と、を備え、
中心電極および接地電極の先端側をエンジンの燃焼室に挿入し、
前記中心電極から前記接地電極へ放電させることでエンジンの燃焼室内の混合気を点火させる点火プラグであって、
火花ギャップが形成される前記接地電極の先端部と対向する前記中心電極の先端部には、基端側から先端側に位置するほど抵抗値が小さくなる放電電極部を有し、
前記火花ギャップは、基部側が短く、基部側から先端側に向うにつれて長くなるように構成されることを特徴とする点火プラグ。
【請求項2】
前記放電電極部は、抵抗値の異なる複数の抵抗チップによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ。
【請求項3】
前記放電電極部は、基端から先端に向うにつれて細くなるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点火プラグ。
【請求項4】
前記火花ギャップが形成される接地電極の中心電極側には、前記放電電極部の抵抗値の変化方向と同じ方向の一つまたは複数の稜線を有する突起部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の点火プラグ。
【請求項5】
前記火花ギャップが形成される中心電極の接地電極側には、前記放電電極部の抵抗値の変化方向と同じ方向の稜線を有する突起部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の点火プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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