説明

無人搬送システム

【課題】走行路上の合流や分岐が近接する部分においても搬送車の衝突を確実に防止する。
【解決手段】無人搬送システムでは、搬送車は走行路を走行する。走行路は合流点や分岐点を含み、合流点又は分岐点が連続する複数接合点保有軌道には3本以上の誘導線が設けられる。搬送車は、複数接合点保有軌道を走行する際に誘導線と通信する2つの送受信部を有する。2つの送受信部は、通信モード設定情報に基づいて、複数の通信モードのいずれかに設定される。複数の通信モードは、送信モード及び受信モードを含む。3本以上の誘導線を設けるとともに、複数接合点保有軌道の形状に応じて各搬送車の送受信部の通信モードを設定、変更することにより、搬送車どうしの衝突を確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無人搬送車を走行させる無人搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車を所定の走行路に沿って走行させる無人搬送システムが知られている。各搬送車は無人走行するため、走行路に合流点などがあると搬送車どうしが衝突する恐れがある。このため、合流点などには、搬送車の衝突防止装置が必要となる。
【0003】
上記のような衝突防止装置の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1では、走行路の合流点に搬送車の進行、停止を制御するための誘導線を設けている。搬送車は送信部及び受信部を有し、合流点に進入する際に誘導線と通信する。具体的には、合流点に進入する前に他車の進入を示す信号を受信した場合には、搬送車は合流点に進入する前に停止する。一方、他車の進入を示す信号を受信しない場合には、そのまま走行するとともに、自車が進入していることを示す信号を誘導線に送出する。
【0004】
特許文献2は、特許文献1と類似した衝突防止装置において、誘導線を単線で構成するものを記載している。
【0005】
【特許文献1】特開平10−301626号公報
【特許文献2】特開2005−115590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の文献に記載された手法は、1つの合流点に対して2台の搬送車が進入する場合には正しく衝突を防止することができる。しかし、複数の合流点が近接している場合には衝突を防止できない場合が生じうる。例えば、1本の本流に対して2本の支流が近接して合流する形状を有する連続合流路に合計3台の搬送車が進入する場合がある。このとき、上記の本流を走行する搬送車と、2本の支流を走行する各搬送車とは通信により衝突を防止することができるが、2本の支流を走行する搬送車相互間で通信ができないため、衝突が発生する恐れがある。また、この例に限らず、合流や分岐が短い区間に連続して位置するような形状の走行路では、衝突防止が十分でなくなる場合がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、走行路上の合流や分岐が近接する部分においても搬送車の衝突を確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点では、無人搬送システムは、搬送車と、前記搬送車が走行する走行路と、前記走行路の合流点又は分岐点となる軌道接合点が複数個隣接配置されて構成される複数接合点保有軌道と、前記複数接合点保有軌道を包含する領域に敷設される前記複数接合点保有軌道の関軌道接合点数に1を加えた数の誘導線と、を備え、前記搬送車は、前記誘導線と通信する2つの送受信部と、前記複数接合点保有軌道を走行するときに、通信モード設定情報に基づいて前記送受信部の各々を、送信モード及び受信モードを含む複数の通信モードのいずれかに設定する通信モード設定部と、を有する。
【0009】
上記の無人搬送システムでは、搬送車は走行路を走行する。走行路は合流点や分岐点を含み、走行路の合流点又は分岐点となる軌道接合点が複数個隣接配置されて複数接合点保有軌道が構成される。複数接合点保有軌道を包含する領域には、敷設される前記複数接合点保有軌道の関軌道接合点数に1を加えた数の誘導線が設けられる。搬送車は、複数接合点保有軌道を走行する際に誘導線と通信する一対の送受信部を有する。一対の送受信部は、通信モード設定情報に基づいて、複数の通信モードのいずれかに設定される。複数の通信モードは、送信モード及び受信モードを含む。このように、複数接合点保有軌道の関軌道接合点数に1を加えた数の誘導線を設けるとともに、複数接合点保有軌道の形状に応じて各搬送車の送受信部の通信モードを設定、変更することにより、搬送車どうしの衝突を確実に防止することができる。
【0010】
上記の無人搬送システムの一態様では、前記複数接合点保有軌道には、前記搬送車に前記通信モード設定情報を供給する通信モード設定情報供給部が設けられており、前記搬送車は、前記通信モード設定情報供給部から前記通信モード設定情報を受け取って、各送受信部の通信モードを設定する。この態様では、搬送車は外部から通信モード設定情報を受け取り、それに応じて各送受信部の通信モードを設定する。
【0011】
この場合の好適な例では、前記通信モード設定情報供給部は、前記複数接合点保有軌道を構成する合流部へ進入する手前の位置、及び、前記複数接合点保有軌道内に設けられている。これにより、搬送車が複数接合点保有軌道に入る際、及び、複数接合点保有軌道内の必要な位置において各送受信部の通信モードを設定、変更することができる。
【0012】
好適な例では、前記通信モード設定部は、前記複数接合点保有軌道を構成する合流部へ進入する手前の位置では、1つの送受信部を送信モードとし、他の1つの送受信部を受信モードとする。また、この場合、前記通信モード設定部は、前記複数接合点保有軌道を構成する合流部へ進入した位置で前記送信モードに設定された送受信部が他車の進入信号を受信しなかった場合、前記1つの送受信部を送信モードに維持するとともに、前記他の送受信部を無通信モードとする。これにより、他車の進入信号を受信しなかった搬送車は排他的に進入を許可され、進入信号の送信のみを継続する。これにより、他の搬送車は当該進入信号を受信して停止するので、衝突の発生が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
図1に、本発明の無人搬送システムの基本構成を概略的に示す。図示のように、無人搬送システムでは、走行路10上を複数の無人搬送車(以下、単に「搬送車」とも呼ぶ。)1が走行する。搬送車1は走行路10上を自立走行する。なお、以下に使用する参照符号は、個々の要素を示すときは添え字を用い、それらを代表して示すときは添え字を省略する。例えば、個々の走行路を示すときは「走行路10a」、「走行路10b」などと表記し、走行路全体を指すときは「走行路10」と表記する。
【0015】
図1の例は走行路10の合流点15を示しており、本流である走行路10aに支流である走行路10bが合流している。搬送車1aは走行路10aを、搬送車1bは走行路10bをそれぞれ走行しており、ともに合流点15に進入しようとしている。
【0016】
走行路10には誘導線11が設けられる。誘導線11は、衝突防止のために複数の搬送車1間での通信を可能とする。図1の例では、走行路10aの進行方向右側に誘導線11xが設けられ、進行方向左側に誘導線11yが設けられている。なお、「進行方向」は、各走行路10において搬送車1が進む方向を指すものとする。誘導線11xは、破線で示すように走行路10aの下方をくぐって進行方向左側へ延び(破線参照)、さらに走行路10bの進行方向左側に延びている。一方、誘導線11yは、合流点15の手前で走行路10bに沿って折れ曲がり、走行路10bの進行方向右側に延びている。各誘導線11は導電線などにより構成され、電気的に1本の線を構成している。
【0017】
また、走行路10の近傍には、合流点15への進入前の位置に通信モード指示体12が設けられている。通信モード指示体12は、本発明における通信モード設定情報供給部として機能し、搬送車1の送受信部2、3の通信モードを指定する通信モード設定情報を提供する。
【0018】
図2に搬送車1の機能構成を示す。搬送車1は、送受信部2、3と、通信モード設定情報検出部4と、制御部5と、駆動部6とを備える。送受信部2、3は基本的には同一の構成を有し、制御部5からの制御信号により、送信モード、受信モード、無通信モードのいずれかに設定される。送受信部2、3は、例えば誘導線11に誘導電流を誘起させる励磁コイル及び誘導線11に誘起された電流を検出する受信コイルにより構成することができる。
【0019】
通信モード設定情報検出部4は、走行路10の近傍に配置された通信モード指示体12を検出し、そこから通信モード設定情報を取得する。通信モード設定情報は、搬送車1の送受信部2、3を、それぞれどの通信モードに設定すべきかを示す情報である。例えば、図1の例では、走行路10aを走行している搬送車1aは、通信モード指示体12aから受け取った通信モード設定情報に基づいて、送受信部2aが受信モードRに、送受信部3aが送信モードTに設定されている。
【0020】
通信モード指示体12は各種の形態で実現できる。一つの例では、通信モード指示体12をマークとして構成し、通信モード設定情報検出部4がそのマークを光学的に読みとって通信モード設定情報を取得するように構成することができる。他の例では、通信モード指示体12を送信器、通信モード設定情報検出部4を受信器として構成することもできる。
【0021】
駆動部6は搬送車1を駆動するユニットであり、例えばモータなどを備える。なお、駆動部6の構成は搬送車1の駆動方法に依存するが、本発明では搬送車1の駆動方法に制限はなく、電気モータによる駆動、リニアモータによる駆動など各種の駆動方法を採用することができる。駆動部6は、制御部5からの信号に基づいて、搬送車1の走行、加速、減速、停止などを行う。
【0022】
制御部5は、搬送車1の全体を制御する。特に本実施形態では、通信モード設定情報検出部4が取得した通信モード設定情報に基づいて、制御部5は送受信部2、3の通信モードを設定、変更する。また、搬送車1が合流部15に進入する際に、受信モードに設定されている送受信部2又は3が、他車が合流部15に進入したことを示す進入信号を誘導線11から受信すると、駆動部6を制御して搬送車1を減速させたり、停止させたりする。一方、搬送車1が合流部15に進入する際に他車の進入信号を受信しなかった場合、制御部5は送信モードに設定されている送受信部2又は3を制御して、自車が合流点15に進入することを示す進入信号を誘導線11に送出する。
【0023】
図1に戻り、搬送車1の衝突防止動作について具体的に説明する。図1において、走行路10aを搬送車1aが走行し、走行路10bを搬送車1bが走行している。搬送車1aは、通信モード指示体12aの位置を通過したときに通信モード設定情報を取得し、これに基づいて、送受信部2aが受信モード、送受信部3aが送信モードにそれぞれ設定されている。同様に、搬送車1bは、通信モード指示体12bの位置を通過したときに通信モード設定情報を取得し、これに基づいて、送受信部2bが受信モード、送受信部3bが送信モードにそれぞれ設定されている。
【0024】
各搬送車1は、合流点に進入する際に誘導線11と通信を行う。具体的には、受信モードに設定されている送受信部が誘導線11と通信し、誘導線11に他車の進入信号が送出されているか否かを判断する。他車の進入信号を受信した場合、その合流点には既に他車が進入しているので、搬送車1は停止する。そして、その後も誘導線11と通信を続け、他車の進入信号が無くなったときに合流点に進入する。一方、他車の進入信号を受信しない場合、その合流点に進入している他車は存在しないので、そのまま合流点に進入するとともに、送信モードに設定されている送受信部を通じて、自分が合流点に進入していることを示す進入信号を誘導線11に送出する。こうして、自分が合流点に進入した後で他車が合流点に進入することを防止する。
【0025】
図1において、仮に搬送車1aが先に合流点に進入したと仮定する。この場合、搬送車1aは、まず誘導線11xに他車の進入信号が送出されているか否かを判定する。この場合、他車の進入信号は存在しないのでそのまま走行し、誘導線11yに自車の進入信号を送出する。搬送車1aより後に合流点15に進入しようとする搬送車1bは、まず、誘導線11yと通信する。この時点で、誘導線11yには搬送車1aが進入信号を送出しているので、搬送車1bはこれを受信し、停止する。そして、搬送車1aが合流点15を通過し、誘導線11yに進入信号が送出されなくなったときに、搬送車1bは合流点15に進入する。こうして、衝突が防止される。搬送車1aと1bの順序が逆になった場合も同様である。
【0026】
さて、上記のような合流点が走行路10に独立して存在する場合には、上述の手順で衝突を防止することができる。しかし、このような合流点が近接する場合、即ち、短い距離に連続して存在する場合には、制御の対象となる搬送車1の数が増加するため、衝突防止制御が難しくなる場合がある。具体的に、図1の例では、2台の搬送車1に対して誘導線11が2本ある。一方の搬送車1aは一方の誘導線11yを使用して進入信号を送出し、他方の搬送車1bは他方の誘導線11xを使用して進入信号を送出するので、相互に自分の進入を相手に知らせることができ、衝突を防止できる。しかし、合流点などが近接し、制御の対象とある搬送車1が3台になった場合には、2本の誘導線で3台分の搬送車1の進入信号をそれぞれ他の搬送車1に伝えることができず、衝突が発生しうる。
【0027】
そこで、本発明では、合流点又は分岐点となる軌道接合点が近接して複数個連続する形状を有する軌道(「複数接合点保有軌道」と呼ぶ。)においては、その複数接合点保有軌道の軌道接合点数より1を加えた数の誘導線11を設けるとともに、各搬送車1の通信モードを適宜切り替えることにより、衝突を防止する。
【0028】
なお、合流点又は分岐点が「近接する」とは、搬送車1が即座に停止できない距離内に複数の合流点又は分岐点が存在することをいい、実際には搬送車1の通常の又は最大の走行速度、制動能力などに応じて決められた所定距離内に存在する場合が該当する。
【0029】
以下、各種のケースについて図面を参照して個々に説明する。なお、以下の図面は図示の便宜上、走行路10における複数接合点保有軌道のみを示しており、実際には図中の各走行路10の先端はさらに接続されている。
【0030】
(第1のケース)
図3(A)は第1のケースを示す。第1のケースでは、合流点と分岐点が連続する合流分岐部110が複数接合点保有軌道を構成している。走行路10aを走行する搬送車1aと、走行路10bを走行する搬送車1bと、走行路10cを走行する搬送車1cとの間で衝突の可能性がある。この場合、図示のように3本の誘導線11x、11y、11zを配置する。
【0031】
搬送車1aが最初に合流分岐部110に進入する場合、搬送車1aは通信モード指示体12aにより、右送信・左受信モードに設定される。なお、「右送信・左受信モード」とは、進行方向右側の送受信部2が送信モードに設定され、左側の送受信部3が受信モードに設定されることを意味する。
【0032】
搬送車1aは、まず左側の誘導線11y及び11zに他車の進入信号があるか否かを判断する。この場合、他車の進入信号は存在せず、走行路10aに沿った誘導線11y及び11zから他車の進入信号を受信しないので、搬送車1aは合流分岐部110に進入するとともに、右側の誘導線11xに対して自車の進入信号を送信する。搬送車1bは通信モード指示体12bにより、左送信・右受信モードに設定されており、先に搬送車1aが誘導線11xに送出した進入信号を受信して停止する。よって、衝突は生じない。
【0033】
搬送車1bが最初に合流分岐部110に進入する場合は、この逆である。即ち、搬送車1bが誘導線11zに送出した進入信号を搬送車1aが受信して停止する。
【0034】
次に、搬送車1cが最初に合流分岐路110に進入し、その後に搬送車1bが合流分岐路110に進入する場合を考える。この場合、搬送車1cは通信モード指示体12cにより左送信・右受信モードで合流分岐路110に進入する。搬送車1cは、誘導線11x及び11yが終了する位置までに他車の進入信号を受信しないため、左送信モードに変更してそのまま進行する。なお、「左送信モード」とは、進行方向左側の送受信部3が送信モードに設定され、右側の送受信部2は送受信を行わないモードをいう。
【0035】
そして、搬送車1cは、合流分岐部110内に設けられた通信モード指示体12cにより右送信モードに変更され、右側に位置する誘導線11x及び11yに進入信号を送出しながら走行路10cを走行していく。次に走行路10bに進入する搬送車1bは、先に搬送車1cが送出した進入信号を誘導線11x又は11yから受信するため、停止する。こうして、先に進入した搬送車1cと、次に進入する搬送車1bとの衝突も防止される。
【0036】
(第2のケース)
図3(B)は第2のケースを示す。第2のケースでは、合流点111と合流点112が連続し、複数接合点保有軌道を構成している。走行路10aを走行する搬送車1aと、走行路10bを走行する搬送車1bと、走行路10cを走行する搬送車1cとの間で衝突の可能性がある。この場合、図示のように3本の誘導線11x、11y、11zを配置する。
【0037】
搬送車1aが最初に複数接合点保有軌道に進入する場合、搬送車1aは通信モード指示体12aにより、右送信・左受信モードに設定される。搬送車1aは、まず左側の誘導線11y及び11zに他車の進入信号があるか否かを判断する。この場合、他車の進入信号は存在しないので、搬送車1aは合流点111に進入するとともに、左側の誘導線11y及び11zが無くなった位置で右送信モードに変更し、右側の誘導線11xに対して自車の進入信号を送信する。
【0038】
この後に進入しようとする搬送車1bは、通信モード指示体12bにより左送信・右受信モードに設定されており、先に搬送車1aが誘導線11xに送出した進入信号を受信して停止する。よって、衝突は生じない。
【0039】
同様に、この後に進入しようとする搬送車1cは、通信モード指示体12cにより左送信・右受信モードに設定されており、先に搬送車1aが誘導線11xに送出した進入信号を受信して停止する。よって、衝突は生じない。
【0040】
搬送車1bが最初に合流点111に進入する場合、搬送車1bは誘導線11zに進入信号を送出する。搬送車1aは、搬送車1bが誘導線11zに送出した進入信号を受信して停止する。同様に、搬送車1cも、搬送車1bが誘導線11zに送出した進入信号を受信して停止する。
【0041】
搬送車1cが最初に合流点112に進入する場合、搬送車1cは誘導線11yに進入信号を送出する。搬送車1aは、搬送車1cが誘導線11yに送出した進入信号を受信して停止する。同様に、搬送車1bも、搬送車1cが誘導線11yに送出した進入信号を受信して停止する。以上のようにして、いずれの場合も衝突が防止される。
【0042】
(第3のケース)
図4(A)は第3のケースを示す。第3のケースでは、分岐点113と114が連続して連続分岐部を構成している。走行路10aを走行する搬送車1aと、走行路10bを走行する搬送車1bと、走行路10cを走行する搬送車1cとの間で衝突の可能性がある。この場合、図示のように3本の誘導線11x、11y、11zを配置する。
【0043】
分岐部113及び114を直進する搬送車1aは、通信モード指示体12aにより右送信・左受信モードに設定される。よって、分岐点113の先の走行路10bに搬送車1bがいる場合、又は、分岐点114の先の走行路10cに搬送車1cがいる場合、搬送車1aはその進入信号を誘導線11yから受信し、停止する。また、自分より先に直進する搬送車1がいる場合、その搬送車1が誘導線11zに送出した進入信号を受信し、停止する。それ以外の場合、搬送車1aは進行し、誘導線11x、11zに順に進入信号を送出する。
【0044】
分岐点113を走行路10bへ分岐する搬送車1bは、通信モード指示体12aにより左送信・右受信モードに設定される。よって、自分より先に直進する搬送車1aがいる場合、搬送車1aが誘導線11xに送出する進入信号を受信して停止する。一方、誘導線11xから進入信号を受信しない場合、搬送車1bは左送信モードで誘導線11yに進入信号を送出する。よって、走行路10b上の誘導線11yが無くなる位置まで進行しない限り、誘導線11yには進入信号が存在するので、次の搬送車1aは停止する。
【0045】
分岐点114を走行路10cへ分岐する搬送車1cも同様に、通信モード指示体12aにより左送信・右受信モードに設定される。よって、自分より先に直進する搬送車1aがいる場合、搬送車1aが誘導線11xに送出する進入信号を受信して停止する。一方、誘導線11xから進入信号を受信しない場合、左送信モードで誘導線11yに進入信号を送出する。よって、走行路10c上の誘導線11yが無くなる位置まで進行しない限り、誘導線11yには進入信号が存在するので、次の搬送車1aは停止する。
【0046】
(第4のケース)
図4(B)は第4のケースを示す。第4のケースでは、分岐点115と合流分岐点116が連続した複数接合点保有軌道を構成している。このケースは、基本的に図3(A)に示す第1のケースと、図4(A)に示す第3のケースの最初の分岐部113とを組み合わせたものである。また、第1及び第3のケースの複合形であるため、合流分岐点116を通過する際に搬送車1を両側送信モードとする必要がある。「両側送信モード」とは、2つの送受信機2、3の両方を送信モードとすることをいう。
【0047】
(第5のケース)
図5は第5のケースを示す。第5のケースでは、2つの合流点と1つの分岐点がこの順序で連続し、複数接合点保有軌道を構成している。合計4台の搬送車1a〜1dが相互に衝突する可能性があるため、4本の誘導線11が使用されている。このケースは、基本的に図3(B)に示す合流部111と、図3(A)に示す合流分岐部110とを組み合わせたものである。
【0048】
(第6のケース)
図6は第6のケースを示す。第6のケースは3つの合流点が連続し、複数接合点保有軌道を構成している。合計4台の搬送車1a〜1dが相互に衝突する可能性があるため、4本の誘導線11が使用されている。このケースは、基本的に図3(B)に示す合流部111及び112に、もう1つの合流部を設けたものである。
【0049】
以上、第1乃至第6の代表的なケースを挙げて説明したが、本発明の適用はこれらの具体的な形態に制限されるものではない。本発明では、複数の合流点又は分岐点が近接して連続する各種の複数接合点保有軌道について適用可能である。
【0050】
[変形例]
上記の例では、走行路10の近傍に配置された通信モード指示体12から通信モード設定情報を供給することにより、搬送車1の送受信部2、3の通信モードを設定している。その代わりに、無線通信などにより複数の搬送車1の走行状態を管理するコントローラが存在する場合には、そのコントローラから無線通信により通信モード設定情報を各搬送車1に送信して通信モードを設定することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の無人搬送システムの、典型的な合流部における動作例を示す。
【図2】搬送車の概略構成を示すブロック図である。
【図3】第1及び第2のケースにおける誘導線の配置例を示す。
【図4】第3及び第4のケースにおける誘導線の配置例を示す。
【図5】第5のケースにおける誘導線の配置例を示す。
【図6】第6のケースにおける誘導線の配置例を示す。
【符号の説明】
【0052】
1 搬送車
2、3 送受信部
4 通信モード設定情報検出部
5 制御部
6 駆動部
10 走行路
11 誘導線
12 通信モード指示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車と、
前記搬送車が走行する走行路と、
前記走行路の合流点又は分岐点となる軌道接合点が複数個隣接配置されて構成される複数接合点保有軌道と、
前記複数接合点保有軌道を包含する領域に敷設される前記複数接合点保有軌道の関軌道接合点数に1を加えた数の誘導線と、
を備え、
前記搬送車は、
前記誘導線と通信する一対の送受信部と、
前記複数接合点保有軌道を走行するときに、通信モード設定情報に基づいて前記送受信部の各々を、送信モード及び受信モードを含む複数の通信モードのいずれかに設定する通信モード設定部と、を有することを特徴とする無人搬送システム。
【請求項2】
前記複数接合点保有軌道には、前記搬送車に前記通信モード設定情報を供給する通信モード設定情報供給部が設けられており、
前記搬送車は、前記通信モード設定情報供給部から前記通信モード設定情報を受け取って、各送受信部の通信モードを設定することを特徴とする請求項1に記載の無人搬送システム。
【請求項3】
前記通信モード設定情報供給部は、前記複数接合点保有軌道を構成する合流部へ進入する手前の位置、及び、前記複数接合点保有軌道内に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の無人搬送システム。
【請求項4】
前記通信モード設定部は、前記複数接合点保有軌道を構成する合流部へ進入する手前の位置では、1つの送受信部を送信モードとし、他の1つの送受信部を受信モードとすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の無人搬送システム。
【請求項5】
前記通信モード設定部は、前記複数接合点保有軌道を構成する合流部へ進入した位置で前記送信モードに設定された送受信部が他車の進入を示す信号を受信しなかった場合、前記1つの送受信部を送信モードに維持するとともに、前記他の送受信部を無通信モードとすることを特徴とする請求項4に記載の無人搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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