説明

無励磁ブレーキのカバー取付構造

【課題】カバーを取り外すことなく、無励磁ブレーキの手動解放作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】プレート4に設けたねじ穴4aにボルト8をねじ込むことで、カバー7をプレート4の外側に固定する。その際、スペーサー9も一緒に固定し、スペーサー9を挟むことでボルト8の先端とアーマチュア3との間に隙間が形成されるようにする。手動解放時は、一度ボルト8を緩めてスペーサー9のみ抜き取ってから、ボルト8をねじ込む。そうすることで、ボルト8によってアーマチュア3をステーター11側へ押し動かし、ローター2を回転フリーの状態にして制動トルクを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無通電状態で制動トルクが作用する無励磁ブレーキのカバー取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の産業車両の中には、駆動軸に制動トルクを作用させるための無励磁ブレーキを備えるものがある(例えば特許文献1参照)。無励磁ブレーキは、無通電状態で制動トルクを作用し、通電状態で制動トルクを解除するものである(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
一般に無励磁ブレーキは、回転軸と一体に回転するローターと、このローターを挟み回転軸に制動トルクを作用させるアーマチュア及びプレートと、アーマチュアをローターに押し付けるスプリングとを備え、さらにスプリングの押し付け力に対抗してアーマチュアを吸引するコイルを備える。
【0004】
コイルに通電しない状態(無通電状態)では、圧縮されたスプリングによりアーマチュアがローターを押し、ローターはアーマチュアとプレートとで挟まれて、その摩擦力によって回転軸が制動される。また、コイルに通電すると(通電状態)、コイルはスプリングの押し付け力を超えてアーマチュアを吸引し、ローターは回転フリーとなって回転軸が解放される。しかし、コイル等が故障して無通電状態が維持されてしまうと、スプリングの押し付け力によって回転軸を解放できない。
【0005】
そこで、無通電状態を維持された場合であっても手動で解放するために、例えば特許文献2に記載されているように、解放レバーを差し込んでプレートとアーマチュアとの間を押し広げることがある。また、プレートに設けられたねじ穴にボルトをねじ込み、さらにスプリングの押し付け力に対抗して締め込むことで、アーマチュアをローターから離すこともある。
【0006】
ボルトを使用して解放する場合、ボルトを取り付け及び取り外しするための作業スペースを確保しなければならず、装置全体の小型化の妨げになる。また、ボルトをプレートに付けっぱなしておくと作業はし易くなるが、手動解放しないときはアーマチュアと接触しないように間隙を設けておく必要がある。つまり、完全にねじ込んだ状態でボルトを維持できないため、車体の振動などによってボルトが緩んで脱落したり、制動不良の原因になったりしないようにする必要がある。
【0007】
ところで、無励磁ブレーキが乾式の場合、摩擦面が水に濡れると制動トルクが低下するので、無励磁ブレーキを保護するカバーなどが必要となる。しかし、前述のように無励磁ブレーキを手動で解放するにはカバーをその都度取り外すことになり、大きな作業スペースと手間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−255498号公報、図4等
【特許文献2】特開2005−69391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明が解決しようとする課題は、カバーを取り外す必要がなく、ボルトを予め取り付けておくことで手動解放作業を容易に行うことができる無励磁ブレーキのカバー取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無励磁ブレーキのカバー取付構造は、
制動対象となる装置に固定されるステーターと、
ステーターの外側に離間して設けられるプレートと、
ステーターとプレートとの間に配置される移動可能なアーマチュアと、
アーマチュアとプレートとの間に配置され、装置の回転軸と一体的に回転可能なローターと、アーマチュアをプレートへ向けて押し付けるスプリングと、を備え、
ローターをアーマチュアとプレートで挟みつけて回転軸に制動をかける無励磁ブレーキのカバー取付構造であって、
プレートに、アーマチュアの移動方向と同じ方向に延設されたねじ穴を備えると共に、
プレートの外側に取り付けられるカバーと、
カバーの外側に取り付けられるスペーサーと、ねじ穴に螺合される軸部と頭部とからなるボルトと、を備え、
ねじ穴は、回転軸の軸方向から見て、アーマチュアを投影した範囲内で、かつローターを投影した範囲外となる位置に設けられ、
カバー及びスペーサーには、ボルトの軸部を通すことのできる貫通穴がねじ穴と同軸状に形成され、スペーサーの貫通穴は外部に連通されボルトの軸方向と垂直な方向に開口されたものであり、
ボルトは、外側から貫通穴を通して挿入されねじ穴に螺合されることで、頭部によってカバー及びスペーサーをプレートに押し付けて固定するものであり、軸部は、カバー及びスペーサーを固定した状態ではその先端とアーマチュアとの間に隙間が確保され、かつスペーサーを取り外した状態ではねじ込むことでその先端でアーマチュアを押して制動が解除される位置まで移動させることができる軸方向長さに形成される。
【0011】
カバー及びスペーサーをボルトにより固定した状態で無励磁ブレーキが回転軸に制動をかけている場合、ボルトの軸部の根元、つまりスペーサーの外側面からアーマチュアの外側面までの寸法はスペーサー、カバー、プレート、及びローターの軸方向寸法を足し合わせたものとなる。従って、軸部の先端とアーマチュアとの間に隙間を確保するには、この合計した寸法より短くなるよう軸部の軸方向長さを設定すればよい。
【0012】
また、制動が解除される位置にアーマチュアがある場合、カバーの外側面からアーマチュアの外側面までの寸法はカバー、プレート、ローターそれぞれの軸方向寸法、並びにローターとプレートとの隙間、ローターとアーマチュアとの隙間の軸方向寸法を足し合わせたものとなる。従って、ボルトでアーマチュアを制動が解除される位置まで移動させるには、この合計した寸法より長くなるよう軸部の軸方向長さを設定すればよい。
【0013】
以上のようにボルトの軸方向長さを設定すると、スペーサーの軸方向寸法は、カバー及びスペーサーを固定した状態で回転軸に制動をかけている場合に、ボルトの先端とアーマチュアとの間に確保される隙間の軸方向寸法よりも大きくなる。そして、その差は少なくとも制動状態から制動が解除された状態となるまでアーマチュアが軸方向に移動する量よりも大きくなる。
【発明の効果】
【0014】
上記の通り、本発明に係る無励磁ブレーキのカバー取付構造は、プレートの外側にカバーが取り付けられ、このカバーの外側にスペーサーが取り付けられる。通常の使用状態では、カバーとスペーサーとはプレートにボルトで固定されており、ボルトを締め付けることでボルト、カバー及びスペーサーを強固に固定できる。これにより、制動対象となる装置が振動してもボルト等が緩んで抜け落ちることがなく、カバーによって無励磁ブレーキを確実に保護することができる。また、ボルトがアーマチュアの移動やローターの回転を妨げることはなく、何ら問題なく無励磁ブレーキを使用することができる。
【0015】
コイル等の故障によって手動で制動を解除する場合は、一度ボルトを緩めてスペーサーを抜き取り、その後、ボルトをねじ込むことで、ボルトの先端でアーマチュアをスプリングの押し付け力よりも大きな力でステーターへ向けて押し付ける。これにより、アーマチュアをローターから離してローターを回転フリーとし、制動トルクを解除させることができる。
【0016】
ここで、スペーサーの貫通穴は開口した形状であるため、ボルトを完全に取り外さなくともボルトを緩めてスペーサーだけを抜き取ることができる。そして、スペーサーを抜き取ることで、スペーサーの軸方向寸法の分だけボルトをさらにねじ込めるようになる。つまり、カバーを取り外すことなく手動で無励磁ブレーキを解放することができる。また、作業スペースは必要であるが、ボルトの締め付け・緩めに必要なスペースは、ボルトの取り付け・取り外しに必要なスペースよりも小さい。加えて、当然のことながら、カバーは無励磁ブレーキの外形以上の大きさで製作する必要があるが、スペーサーはカバーとボルトとの間に挟むことが可能な大きさであればよいので、カバーよりも充分小さく製作することができる。したがって、スペーサーを抜き取ることができることと相まって、スペーサーの取り付け・取り外しに必要なスペースはカバーのそれよりも小さくできるので、装置全体の小型化を図ることができる。
【0017】
なお、問題が解決した後、手動解放状態から通常の使用状態に戻すには、ボルトを緩めて元の位置にスペーサーを差し込み、再度ボルトを締め付けてカバー及びスペーサーを固定すればよい。この際もカバーを取り外す必要はなく、容易に作業を行うことができる。また、通常の使用状態ではスペーサーの取り付けが不可欠であるため、アーマチュアやローターを確認しなくとも、スペーサーを見れば無励磁ブレーキが使用できる状態にあるかどうかを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】無励磁ブレーキを備えたモーターを示す斜視図。
【図2】無通電状態の無励磁ブレーキを示す断面図。
【図3】手動解放状態の無励磁ブレーキを示す断面図。
【図4】無励磁ブレーキのカバー等を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る無励磁ブレーキのカバー取付構造について説明する。
【0020】
図1及び図2の通り、本実施形態では、無励磁ブレーキの対象となる装置はモーター15であり、モーター15は回転軸1の軸方向に延設された円筒形状のハウジング10を備える。ここで、モーター15はフォークリフト等を駆動するものであり、無励磁ブレーキはモーター15の回転軸(駆動軸)1に制動トルクを作用させるために使用される。
【0021】
図2の通り、本実施形態の無励磁ブレーキは、主にステーター11と、ステーター11の外側に設けられるプレート4と、ステーター11とプレート4との間に配置されるアーマチュア3と、このアーマチュア3とプレート4との間に配置されるローター2と、アーマチュア3をプレート4へ向けて押し付けるスプリング5とからなる。また、プレート4には、後述するようにカバー7が取り付けられ、このカバー7とハウジング10とによって無励磁ブレーキ全体が覆われる構造となっている。
【0022】
ステーター11は回転軸1を囲うように環状に形成されており、その内部にコイル6を備える。また、ステーター11はモーター15(ハウジング10の外側面)に固定され、コイル6は図示しない電源に接続されてこの電源から電力を供給される。プレート4は円盤状に形成されており、その内側面がステーター11の外側面から所定の距離に保たれるようステーター11に固定されている。そして、このプレート4にはねじ穴4aが設けられている。アーマチュア3はプレート4とほぼ同じ外径の円盤状に形成されており、ステーター11とプレート4との間で回転軸1の軸方向へ移動可能に設けられている。ローター2はプレート4やアーマチュア3よりも外径が一回り小さな円盤状に形成されており、プレート4とアーマチュア3との間に配置されると共に、回転軸1に固定されることにより回転軸1と一体に回転可能となっている。スプリング5は圧縮バネで構成されており、ステーター11とアーマチュア3との間で、回転軸1の軸方向に延設されている。これによりスプリング5がアーマチュア3をプレート4へ向けて押し付けるようになっている。
【0023】
なお、ステーター11、プレート4、アーマチュア3、及びローター2は回転軸1の軸方向から見て同心円状に配置され、スプリング5は回転軸1の軸方向から見て同一円上に等間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。また、ねじ穴4aは、アーマチュア3の外径よりもねじ径の分以上小さく、かつローター2の外径よりもねじ径の分以上大きな同一円上に等間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。このようにアーマチュア3の外縁とローター2の外縁との間にねじ穴4aを設けることで、無励磁ブレーキ本来の機能を損なうことなく、手動解放を行うことができるようにしている。
【0024】
コイル6に通電しない状態(無通電状態)では、アーマチュア3はスプリング5の押し付け力によってプレート4側へ押し付けられ、ローター2はアーマチュア3とプレート4とで挟まれる。その際の摩擦力によって、回転軸1に制動トルクが作用する。このとき、ステーター11とアーマチュア3との間には隙間3aが形成され、この隙間3aによってアーマチュア3は移動可能となる。
【0025】
そして、コイル6に通電すること(通電状態)で、アーマチュア3はスプリング5の押し付け力を超える力でステーター11に吸引される。ここで、前述の通り隙間3aだけアーマチュア3がステーター11側へ移動することから、同じ分だけローター2側に隙間が形成されることになる。その結果、ローター2はアーマチュア3及びプレート4から離れて回転フリーになり、回転軸1の制動トルクが解除される。
【0026】
さて、図1及び図2の通り、本実施形態の無励磁ブレーキは、プレート4の外側に取り付けられるカバー7と、カバー7の外側に取り付けられるスペーサー9とを備える。ハウジング10は無励磁ブレーキを取り付ける側の端部が円筒状に形成されており、ここにカバー7をはめ込むことで、カバー7がハウジング10と共に無励磁ブレーキの制動トルクを作用させる部分(ローター2、アーマチュア3、及びプレート4)を覆うように構成されている。また、カバー7とスペーサー9はボルト8によって固定され、このボルト8は、後述するように無励磁ブレーキの手動解放にも使用される。なお、本実施形態では、カバー7とハウジング10でローター2やアーマチュア3を覆うようにしているが、カバー7のみで覆うようにしてもよい。
【0027】
カバー7は円筒部と、この円筒部の一端を塞ぐ円盤部とからなり、円筒部をハウジング10の端部に嵌め込む構造となっている。円盤部には取付座が内側(円筒部と同じ側)に向かって突設されており、カバー7の円筒部を完全に嵌め込むと、取付座がプレート4に接触するようになっている。これにより、カバー7をプレート4に固定することができる。そして、この取付座の内側面から円盤部の外側面まで貫通して貫通穴7aが設けられている。貫通穴7aは、カバー7をハウジング10に嵌め込んだ状態で、プレート4のねじ穴4aと同一軸上となるよう配置され、ねじ穴4a(ボルト8)のねじ径以上の外径で形成されている。
【0028】
図1の通り、スペーサー9は所定幅の1つのプレート部材である。本実施形態では、3つのボルト8が回転軸1の軸方向から見て正三角形の各頂点の位置となるよう均等に配置されており、スペーサー9は中央に空間を有する三角形に形成されている。スペーサー9には貫通穴9aが設けられており、図4の通り、貫通穴9aはプレート4のねじ穴4aと同一軸上となるよう配置されている。また、スペーサー9には切欠き部20が設けられている。切欠き部20は、ボルト8の軸方向と直交する方向に延設され、貫通穴9aと連通されている。これにより貫通穴9aは外部に連通され、開口している。また、各切欠き部20は同一方向に延設されており、貫通穴9aの外径、及び切欠き部20の幅はねじ穴4a(ボルト8)のねじ径以上の大きさで形成されている。
【0029】
ボルト8は、ねじが形成されている軸部と、その一端に形成されている頭部とで構成されている。そして、ボルト8の軸部が貫通穴9a,貫通穴7aを通じてねじ穴4aにねじ込まれると、頭部がカバー7とスペーサー9とをプレート4に押し付けて固定する。そのため、ボルト8の頭部は、貫通穴9a,貫通穴7aの外径や切欠き部20の幅よりも一回り大きく形成されている。
【0030】
また、各穴の位置は、前述の通りアーマチュア3の外径よりもねじ径分以上小さく、かつローター2の外径よりもねじ径分以上大きな同一円上にある。そのため、ボルト8の軸部の延長上にアーマチュア3があるので、ねじ込んで行くことでボルト8をアーマチュア3に当てることができる。一方、ボルト8の軸部の延長上にローター2はないので、ボルト8をどこまでねじ込んでもローター2に接触することがなく、ボルト8はローター2の動作を妨げない。
【0031】
図2の通り、通常時、無通電状態では、ボルト8の軸部の先端とアーマチュア3の外側面との間に隙間3bが形成され、この隙間3bによってボルト8はアーマチュア3による制動トルクの付加を妨げない。つまり、ボルト8の軸部の軸方向長さは、ボルト8が通される部分での、スペーサー9、カバー7、プレート4、及びローター2の軸方向寸法を足し合わせたものより短く設定される。また、後述するようにアーマチュア3を制動が解除される位置まで移動させるために、ボルト8の軸部の軸方向長さは、ボルト8が通される部分での、カバー7、プレート4、ローター2の軸方向寸法、並びにローター2とプレート4との隙間、ローター2とアーマチュア3との隙間の軸方向寸法を足し合わせたものより長く設定される。
【0032】
このようにボルト8の軸部の軸方向長さを設定すると、スペーサー9の厚み9bは、隙間3bよりも大きく形成されることになる。そして、厚み9bと隙間3bとの差は、制動状態から制動が解除された状態となるまでアーマチュア3が軸方向に移動する量よりも大きくなる。
【0033】
次に、手動で制動トルクを解除する手順について説明する。無励磁ブレーキは、無通電状態ではスプリング5がアーマチュア3を常に押し付ける。そのため、故障時などコイル6に通電できない状態では、必要の有無にかかわらず、ローター2はアーマチュア3とプレート4とで挟まれた状態に維持され、回転軸1に制動トルクが作用する。そこで、コイル6に通電できないが回転軸1を回転させる必要がある場合、例えば故障したフォークリフト等を若干距離だけ移動させる場合には、下記の通り、ボルト8及びスペーサー9を使って、ローター2及び回転軸1を解放する。
【0034】
前述の通り、スペーサー9の各貫通穴9aは切欠き部20により同一方向に開口しているため、ボルト8を緩めて、スペーサー9を切欠き部20に沿ってスライドさせて取り外すことができる。こうしてスペーサー9を取り外すと、ボルト8の頭部とカバー7との間にスペーサー9の厚み9b分の間隙が形成されるので、この間隙分だけボルト8をねじ込む余裕ができる。スペーサー9を取り外してボルト8をねじ込んで行くと、ボルト8の軸部の先端がアーマチュア3の外側面に当たる。そこから、スプリング5の押し付け力に対抗してボルト8をさらにねじ込み、図3の通り、ローター2がアーマチュア3及びプレート4から離れて回転フリーになるまでボルト8をねじ込む。これにより、回転軸1が解放される。
【0035】
一方、再び制動トルクを作用させ得る状態に戻すには、まず、ボルト8を緩めて、ボルト8の頭部がカバー7から、スペーサー9の厚み9bを超えて離れるようにする。そうして、ボルト8の頭部とカバー7との間にスペーサー9を挿入し、各切欠き部20にボルト8が嵌るようにする。ボルト8が貫通穴9aの位置にくるようにスペーサー9をスライドさせてからボルト8を締め付け、カバー7とスペーサー9をプレート4に固定する。
【0036】
このように、カバー7を取り外す必要がなく、カバー7よりも小さなスペーサー9をスライドさせて取り外すだけなので、少ない作業スペースで手動解放作業を行うことができる。また、予めボルト8を取り付けているので、ボルト8を探したり別の作業場から搬入したりする手間がかからず、速やかに作業を開始することができる。また、通常時では、スペーサー7と共にきつく締め込まれているので、モーター15や車体の振動で抜け落ちることがない。さらに、スペーサー7を利用することで、手動解放を容易に行うことができる。もちろん、カバー7及びハウジング10により無励磁ブレーキを確実に保護し、性能の低下など不具合の発生を防ぐことができる。
【0037】
本実施形態では、ボルト8は、スプリング5と同一軸上に設けられている。これにより、ボルト8を1つずつ締め込む際に、それぞれのスプリング5の押し付け力に同軸上に対抗することができるので、スプリング5の押し付け力を適切に防いで、均等にボルト8を締め込むことができる。なお、ボルト8をスプリング5と同一軸上に設けられない場合でも、より近い位置に配置することが望ましく、均等な力が作用するようにすることが望ましい。また、本実施形態では、作業手間を少なくするために1つのスペーサー9で構成されているが、複数のスペーサー9が各ボルト8のそれぞれに設けられていてもよい。こうすれば、各スペーサー9をより小型化することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 回転軸
2 ローター
3 アーマチュア
3a ボルトの先とアーマチュアとの隙間
3b ステーターとアーマチュアとの隙間
4 プレート
4a ねじ穴
5 スプリング
6 コイル
7 カバー
8 ボルト
9 スペーサー
11 ステーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動対象となる装置に固定されるステーターと、前記ステーターの外側に離間して設けられるプレートと、前記ステーターと前記プレートとの間に配置される移動可能なアーマチュアと、前記アーマチュアと前記プレートとの間に配置され、前記装置の回転軸と一体的に回転可能なローターと、前記アーマチュアを前記プレートへ向けて押し付けるスプリングと、を備え、前記ローターを前記アーマチュアと前記プレートで挟みつけて前記回転軸に制動をかける無励磁ブレーキのカバー取付構造であって、
前記プレートに、前記アーマチュアの移動方向と同じ方向に延設されたねじ穴を備えると共に、前記プレートの外側に取り付けられるカバーと、前記カバーの外側に取り付けられるスペーサーと、前記ねじ穴に螺合される軸部と頭部とからなるボルトと、を備え、
前記ねじ穴は、前記回転軸の軸方向から見て、前記アーマチュアを投影した範囲内で、かつ前記ローターを投影した範囲外となる位置に設けられ、
前記カバー及び前記スペーサーには、前記ボルトの軸部を通すことのできる貫通穴が前記ねじ穴と同軸状に形成され、前記スペーサーの貫通穴は外部に連通され前記ボルトの軸方向と垂直な方向に開口されたものであり、
前記ボルトは、外側から前記貫通穴を通して挿入され前記ねじ穴に螺合されることで、前記頭部によって前記カバー及び前記スペーサーを前記プレートに押し付けて固定するものであり、前記軸部は、前記カバー及び前記スペーサーを固定した状態ではその先端と前記アーマチュアとの間に隙間が確保され、かつ前記スペーサーを取り外した状態ではねじ込むことでその先端で前記アーマチュアを押して制動が解除される位置まで移動させることができる軸方向長さに形成される
ことを特徴とする無励磁ブレーキのカバー取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167742(P2012−167742A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29405(P2011−29405)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】