説明

無機フィラーまたは顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤としてのアルキルポリグリコシドの使用、および該アルキルポリグリコシドを含む水中油型エマルジョン

【課題】無機フィラー又は顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤として特定のアルキルポリグリコシドの提供及び使用。
【解決手段】式R1−O(X1)p1(式中、R1は、6個から12個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖アルキル基を表し、X1は、キシロース残基を表し、平均重合度を表すp1は、1を超え、2.5以下の十進数である)の少なくとも1つの化合物、及び式R2−O(G)n(式中、R2は、6個から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、Gは、グルコース残基を表し、平均重合度を表すnは、1を超え、2.5以下の十進数である)の少なくとも1つの化合物の混合物(M)30重量%から100重量%と、局所的に許容可能な溶剤0%から70重量%からなることを特徴とする濃縮物(C)の、無機フィラー及び/又は顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤及びその使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明の主題は、無機フィラーまたは顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤としての特定のアルキルポリグリコシドの使用である。
【0002】
本発明は特に、化粧品の分野および製薬の分野に用途を見出す。
【0003】
エマルジョン中でのフィラーと顔料、特に無機フィラーと無機顔料の製剤は、複雑である。これは、フィラーまたは顔料の存在が、エマルジョンにそのエマルジョンを分離させる電荷を導入するからである。エマルジョンは、安定化させるのが困難であり、時間経過後のフィラーの再凝集を防止するために、しばしば水相のための1以上の安定剤または分散性界面活性剤のような複雑な乳化系を用いることを配合者に強いる。
【0004】
日焼け止めエマルジョンの場合には、フィラーのこの再凝集は、時間経過後に減少する低いかまたは不安定なUV保護率をもたらす。化粧品エマルジョンの場合には、エマルジョンそれ自体の色に貧弱な不均質性をもたらすかまたは皮膚に適用されるときフィラーの再凝集がやはり起こり得る。それら両方の場合に、フィラーの再凝集は、有意であれば、エマルジョンの質感に有害に影響し、このことは、滑らか(smooth)で光沢のある外観を与える代わりに、退色してざらざらしたものになる。
【0005】
それらの困難を克服するためには、しばしば、
− 一般的に16個および18個の炭素原子(飽和、不飽和または分枝鎖)の鎖長を有する脂肪鎖に基づく複雑な乳化系、
− または例えば、きわめてしばしば、UV排除機能を有する無機フィラーを油相または水相中に予め分散させるといった複雑な製造プロセス
のいずれかが用いられている。
【0006】
したがって、解決されるべき問題は、調製するのが容易であり、時間がたっても安定である、すなわち、顔料またはフィラーが再凝集しない無機フィラーまたは顔料を含む入手可能な水中油型エマルジョンを獲得することからなる。
【0007】
このたび予想外にも発見され、そしてこのことが本発明の基礎であることは、6個から12個の炭素原子を有するアルキル鎖長を有するアルキルポリグリコシド構造に基づく乳化剤は、無機フィラーおよび/または無機顔料を含む水中油型(本明細書では以後「O/W」)エマルジョンを容易に調製することを可能とするということである。この結果はひどく驚かせるものである。というのは、短鎖界面活性剤は、良好な乳化特性を示すとは推測されないからである。それらのエマルジョンはフィラーの良好な分散を示し、共乳化剤または分散剤を加える必要がなく、上記の特定の製造プロセスを適用することを有用なものとしない。さらに、本発明による乳化剤により得られる分散液は、時間経過後も安定である、すなわち、驚くべきことに、本乳化剤は、それ自体が、乳液のような流体エマルジョンにおける場合も含み、フィラーおよび/または顔料の再凝集を防止することを可能とする。
【0008】
したがって、第1の側面によれば、本発明の主題は、以下の式(Ia)または(Ib):
HO−R−O(X)r (Ia)
(X)s−OR−O−(X)t (Ib)
(式中、
Xは、C5またはC6糖の残基、好ましくはグルコースまたはキシロース残基を表し、
Rは、6個から12個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルキリデン基を表し、
r、sおよびtは、それぞれの糖残基の平均重合度を表す。それらは、1を超え、5以下、特に2.5以下である。)により表されるアルキルポリグリコシドである。
【0009】
Xがキシロース残基を表すとき、r、sおよびtは特に1.005ないし1.5である。
【0010】
Xがグルコース残基を表すとき、r、sおよびtは特に1.05ないし2である。
【0011】
本発明による式(Ia)または(Ib)の化合物は、所望の所定の割合で、還元糖と6個から12個の炭素原子を有するアルカンジオール、好ましくはヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールまたはドデカンジオールとの反応により調製され得る。
【0012】
この反応は、ジオールの2つのヒドロキシル基の1つのアセタール化由来の生成物(化合物(Ia))か、またはジオールの両方のヒドロキシル基のアセタール化由来の生成物(化合物(Ib))か、または化合物(Ia)および(Ib)の混合物かのいずれかをもたらす。
【0013】
工業的規模では、それらの化合物は、好ましくは、アルキルポリグルコシドの合成について通常用いられる2つの経路の1つにしたがって、例えば、酸性媒体中で、6から12個の炭素原子を有するアルカンジオールとグルコースまたはキシロースのような還元糖との間の反応により、調製されるであろう。
【0014】
そのような合成経路は当業者に周知である。
【0015】
適切であれば、この合成は、中和、ろ過または脱色操作または部分蒸留のための操作または過剰なジオールの抽出により補足され得る。
【0016】
本発明の第2の側面によれば、本発明の主題は、本質的に、
式(IIIa)
1−O(X1p1 (IIIa)
(式中、
1は、6個から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、
1は、キシロース残基を表し、
キシロース残基の平均重合度を表すp1は、1を超え、2.5以下の十進数である)の少なくとも1つの化合物
および式(IIIb)
2−O(G)n (IIIb)
(式中、
2は、6個から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキルラジカルを表し、
Gは、グルコース残基を表し、
キシロース残基の平均重合度を表すnは、1を超え、2.5以下の十進数である)の少なくとも1つの化合物
の混合物(M)30重量%から100重量%と
0%から70重量%の局所的に許容可能な(topically acceptable)溶剤
からなることを特徴とする濃縮物(C)である。
【0017】
上記定義の濃縮物(C)では、式(IIIa)と式(IIIb)の化合物の混合物(M)は、本質的に、
20重量%から99重量%の式(IIIa)の少なくとも1種の化合物、および
1重量%から80重量%の式(IIIb)の少なくとも1種の化合物
で構成されている。
【0018】
局所的に許容可能な溶剤の例は、水、エタノール、プロパノールまたはイソプロパノールのようなアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはヘキシレングリコールのようなグリコール、または水/アルコール混合物または水/グリコール混合物である。
【0019】
本発明の好ましい側面によれば、上記定義の濃縮物(C)は、1つまたは別のまたはいくつかの以下の特定の特性を示す。
【0020】
濃縮物(C)は、溶剤を含まない。
【0021】
濃縮物(C)は、混合物(M)の水溶液である。
【0022】
混合物(M)は、本質的に、20重量%から30重量%の少なくとも1種の式(IIIa)の化合物と70重量%から80重量%の少なくとも1種の式(IIIb)の化合物とからなる。
【0023】
式(IIIa)では、pは、≧1.005かつ≦1.5である。
【0024】
式(IIIb)では、nは、≧1.05かつ≦2である。
【0025】
第3の側面によれば、本発明の主題は、無機フィラーおよび/または顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤としての式(Ia)または(Ib)の少なくとも1種のアルキルポリグリコシドの使用である。
【0026】
第4の側面によれば、本発明の主題は、無機フィラーおよび/または顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤としての一般式(II):
R−O(X)p (II)
(式中、
Rは、6個から11個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、
Xは、C5またはC6糖の残基、好ましくはグルコースまたはキシロース残基を表し、
糖残基の平均重合度を表すpは、1を超え、5以下、特に2.5以下の十進数である)
の少なくとも1種のアルキルポリグリコシドの使用である。
【0027】
式R−O−(X)pでは、R−O−基は、アセタール官能基を形成するように糖残基のアノマー炭素を介してXに結合する。
【0028】
Xがキシロース残基を表すとき、pは特に1.005ないし1.5である。
【0029】
Xがグルコース残基を表すとき、pは特に1.05ないし2である。
【0030】
式R−O−(X)p の化合物は、当業者に周知の方法に従って調製され得る。
【0031】
本発明による濃縮物(C)中のアルキルポリグリコシドは、無機フィラーおよび/または顔料を含む水中油型(O/W)エマルジョンを調製することを可能とする。
【0032】
それらは有利には、O/Wエマルジョンの0.2から10重量%、好ましくは0.5から5重量%を構成する。
【0033】
無機フィラーおよび/または顔料は、板状または球状であり得、粒子サイズについては特別な限定はない。無機フィラーおよび顔料の例として、特に二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(黒、赤または黄)、チタン酸鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、チタン酸コバルト、ウルトラマリン、プルシアンブルー、酸化チタンで被覆されたマイカ、オキシ塩化ビスマス、パールエッセンス、タルク、アルミニウム粉、銅粉、金粉、マイカ、セリサイト、窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、または干渉性顔料(interferential pigment)を挙げることができる。それらのフィラーは、表面処理に供され得るかまたは、例えばナイロンマトリックスまたはポリマーのようなものの中に封入され得る。
【0034】
それらのフィラーおよび顔料は、一般的に、O/Wエマルジョンの0.5から40重量%、好ましくは、2から25重量%を構成する。
【0035】
O/Wエマルジョンはまた1から50重量%、好ましくは5から35重量%、より好ましくは5から25重量%の1以上の油および/または1以上のワックスで構成される脂肪相も含む。
【0036】
油は有利には、以下の油から選択される。
【0037】
スイートアーモンドオイル、ココナッツオイル、ひまし油、ジョジョバオイル、オリーブ油、菜種油、ピーナッツオイル、ヒマワリ油、小麦胚芽油、トウモロコシ胚芽油、大豆油、綿実油、アルファルファ油、ポピー油、パンプキンシードオイル、イブニングプリムローズオイル、ミレットオイル、大麦油、ライ麦油、サフラワーオイル、キャンドルナッツオイル、パッションフラワーオイル、へーゼルナッツオイル、ヤシ油、カリテバター、アプリコットカーネルオイル、カロフィラムオイル、シシンブリウムオイル、アボカド油、またはカレンデュラオイルのような植物起源の油。
【0038】
エトキシル化されている植物油およびそのメチルエステル。
【0039】
スクアレンまたはスクアランのような動物起源の油。
【0040】
液体パラフィン、液体ペトロラタムおよびイソパラフィンのような鉱油。
【0041】
合成油、特に、ブチルミリステート、プロピルミリステート、セチルミリステート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソプロピルステアレート、オクチルステアレート、イソセチルステアレート、ドデシルオレエート、ヘキシルラウレート、プロピレングリコールジカプリレートのような脂肪酸エステル、イソプロピルラノレートまたはイソセチルラノレートのようなラノリン酸由来のエステル、グリセリルトリヘプタノエートのような脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、安息香酸アルキル、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブテンのようなポリオレフィン、イソヘキサデカンまたはイソドデカンのような合成イソアルカン、ペルフルオロ化油、およびシリコーンオイル。
【0042】
このオイルは、脂肪酸、脂肪アルコール、天然または合成起源のワックス、そしてより一般的にはさらに、植物、動物または合成起源のいずれの脂肪性物質からもまた選択され得る。
【0043】
ワックスは、有利には、例えば、ビーズワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ウーリキュリーワックス、木蝋、コルク繊維またはサトウキビワックス、パラフィンワックス、リグナイトワックス、微小結晶性ワックス、ラノリンワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、水素化油、シリコーンワックス、植物ワックス、周囲温度で固体である脂肪アルコールおよび脂肪酸、または周囲温度で固体であるグリセリドのような周囲温度で固体である脂肪性物体から選択される。
【0044】
本発明によるO/Wエマルジョンはまた、10重量%まで、例えば0.1から10重量%の安定剤も含み得る。
【0045】
安定剤は、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、キサンタンガム、アカシアガム、ローカストビーンガム、スクレログルカンガム、ゲランガム、アルギン酸塩、セルロースおよびセルロース誘導体、クレー、デンプンおよびデンプン誘導体、カーボマー(carbomer)、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、アクリロイルジメチルタウレートポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドポリマーおよびコポリマー、またはポリウレタンから選択される1以上の化合物で構成され得る。
【0046】
O/Wエマルジョンはまた、化粧品で一般的に用いられ、
例えば、脂肪酸および脂肪酸石鹸、エトキシル化脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリソルベートを含むエトキシル化脂肪酸エステル、ポリグリセロールエステル、シュークロースエステル、12個を超える炭素原子の鎖長を有するアルキルポリグリコシド、エトキシル化脂肪アルコール、硫酸化脂肪アルコール、またはリン酸化脂肪アルコールのような共乳化剤、
化粧品で一般的に用いられる保存料、
(特に精油およびエッセンシャルワックスのような)においをつける機能を有する香料または他の添加剤、
化粧料活性成分、
例えば、グリセロール、ソルビトール、PEG、モノプロピレングリコール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、エタノール、またはヘキシレングリコール、
例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエタノールアミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、トリスヒドロキシアミノエタン、またはアミノメチルプロパノール、
特に、乳酸、クエン酸、酢酸または酒石酸のような酸
から選択される30重量%までの1以上の添加剤も含み得る。
【0047】
したがって、第5の側面によれば、本発明の主題は、特に式(Ia)、(Ib)または(II)に対応する少なくとも1種のアルキルポリグルコシドおよび顔料および/またはフィラーを含む水中油型エマルジョンである。
【0048】
本発明の第6の側面によれば、本発明の主題は、0.5重量%から10重量%、特に1重量%から5重量%の上記定義の濃縮物(C)および無機顔料および/またはフィラーを含む水中油型エマルジョンである。
【0049】
本発明によるO/Wエマルジョンは、例えば以下の段階を含む方法のような当業者に公知の方法により調製され得る。
【0050】
1)フィラーを含む水相を、例えばビーズミルまたはシルバーソンタイプの回転子−固定子(rotor-stator)タービンミキサーを有する装置を用いてミル操作に供する。この水相は、続いて、70から85℃の温度に加熱される。
【0051】
1)同時に、乳化剤と油分を含む脂肪相を70から85℃の同一温度に加熱する。
【0052】
1)本発明による組成物を脂肪相または水相に、区別すること無しに導入する。
【0053】
1)続いて、2相を例えば回転子−固定子乳化装置(例えば、シルバーソンタイプの実験室用ミキサー)を用いて混合し、乳化させる。
【0054】
O/Wエマルジョンの調製のための方法の別の例は、以下の段階を含む。
【0055】
2)水相を70〜85℃に加熱する。
【0056】
2)フィラー、乳化剤および油分を含む脂肪相を70から85℃の同一温度に加熱する。
【0057】
2)本発明による組成物を脂肪相または水相に、区別すること無しに導入する。
【0058】
2)続いて2相を、例えば、回転子−固定子乳化装置(シルバーソン実験室用ミキサー)を用いて混合し、乳化させる。数分間の乳化後、エマルジョンは、穏やかな攪拌とともに冷却される。
【0059】
エマルジョンの全ての構成成分が周囲温度で液体であるならば、加熱のない方法により前記エマルジョンを調製することもまた可能である。
【0060】
本発明の最後の側面によれば、本発明の主題は、0.2重量%ないし10重量%、特に0.5重量%ないし5重量%の上記定義の濃縮物(C)を前記組成物の他の構成成分と混合することを特徴とする局所的使用のための水中油型化粧または薬学エマルジョンの調製のための方法である。
【0061】
本発明は、以下の非限定的な例により例示される。それらの例において、調製されるエマルジョンは、以下によりモニターされる。
【0062】
40倍の倍率の顕微鏡を用いてモニターすることにより。
【0063】
滑らか(smooth)または粒状の外観、光沢があるかつや消しの外観、エマルジョンの表面での顔料の放出のまたは不均一な視覚効果を有する顔料の層形成の相分離の現象のモニターなどのフラスコ内でのエマルジョンの外観の3ヵ月後の確認によるエマルジョンの安定性の視覚的な(巨視的な)モニターをすることにより。最適の評価基準は、顔料およびフィラーの相分離または放出または層形成のない光沢のある完全に滑らかで均質のエマルジョンである。段階付けは以下のとおりである。もし全ての評価基準が満足であれば+、もし評価基準の少なくとも1つが不満足であれば+/−、もし評価基準の全てが不満足であれば0。
【0064】
プレクシグラス(登録商標)シート上での120μmに較正されたフィルムの調製物についてのテキスチャーのモニターおよびフィラーおよび顔料の凝集がないことについての確認により。段階付けは以下のとおりである。エマルジョンの製造3ヵ月後に斑点がなければ+、いくつかの斑点が存在すれば+/−、多くの斑点が存在すれば0。
【0065】
UV照射からの保護の機能を有するフィラーを含むエマルジョンの場合には、保護率は、以下に記載される方法に従って評価される。
【0066】
保護率は、皮膚表面を模擬する支持体上にエマルジョンのフィルムを広げた後UV−BおよびUV−A照射についての吸収力を測定することによりインビトロで評価される。
【0067】
エマルジョンは、IMSにより名称ビトロスキン(登録商標)の下で販売される予め水和したコラーゲンマトリックス上に較正された方式(2mg/cm2)で広げられる。15分間フィルムを乾燥させた後、被覆された支持体はラブスフェア(Labsphere)(登録商標)分光光度計を用いてUV照射への暴露に供される。太陽保護係数は、280ないし400nmの全スペクトルにわたるUV照射の透過からディフェイの式(the Diffey formula)にしたがって装置のソフトウエアにより計算される。
【0068】
皮膚がんの発症についてのUV−Aの役割の観点については、UV−A照射についての保護の相対的重要性は、UV−Bスペクトルでの吸収曲線の下の面積に対するUV−Aスペクトルでの吸収曲線の下の面積の比を求めることにより計算される。>0.6のUV−A/UV−B比が、UV−A照射についての影響保護について推奨される。
【0069】
例1:式(I)のアルキルポリキシロシドの調製
名称スペツィオール(Speziol)(登録商標)C10/2の下でコグニス(Cognis)により販売される908.4gの1,10−デカンジオールを、2リットルガラス反応器に徐々に導入する。1,10−デカンジオールを効果的に溶融させるために反応器を90℃の温度にもたらし、攪拌を開始し、390.0gのキシロースを触媒量の硫酸の存在下で分散させる。2時間80℃/85℃で真空下におき、水酸化ナトリウムで中和した後、生成物は以下の分析的特性を示す、
−外観(視覚的):オフ−ホワイト色の固体
−溶融した生成物の色調(NFT20030):1vcs
−5%分散液のpH(NFT73206):7.8
−水分含量:0.47%
−酸価(NFT60204):0.25
−ヒドロキシル価:689
−残留1,10−デカンジオール:37.3%。
【0070】
例2:式(I)のアルキルポリキシロシドの調製
例1の手順を反復するが、以下の分析的特徴を示す生成物をもたらすように500.6gの1,10−デカンジオールを430gのキシロースと反応させる:
−外観(視覚的):黒色固体
−5%分散液のpH(NFT73206):7.8
−水分含量:2.0%
−酸価(NFT60204):4.9
−ヒドロキシル価:726
−残留1,10−デカンジオール:9.0%。
【0071】
例3:UV保護が意図されるO/Wエマルジョンの調製
以下の成分を含むO/Wエマルジョンを調製する:
A 乳化剤 02.50%
安息香酸C12〜C15アルキル 20.00%
酸化チタン(20nm/ジメチコーンコーティング) 10.00%
B シクロメチコーン 05.00%
グリセロール 07.00%
C EDTA四ナトリウム 00.20%
水 100%とする量
カーボマー(登録商標) 00.05%
トロメタミン pH>7とする量
ケイ酸マグネシウム/ケイ酸アルミニウム 01.00%
キサンタンガム 00.15%
D DL−α−トコフェロール 00.05%
保存料 適量。
【0072】
カーボマー(登録商標)、ケイ酸マグネシウム/ケイ酸アルミニウムおよびキサンタンガムを、水相中に分散させる。その水相を70〜85℃に加熱し、次いで、EDTAおよびトロメタミンを加える。
【0073】
酸化チタン、乳化剤およびC12〜C15安息香酸アルキルを含む脂肪相を70から85℃の同一温度に加熱する。シクロメチコーンおよびグリセロールをこの温熱脂肪相に加える。
【0074】
続いて、その2相を回転子−固定子乳化装置(シルバーソン実験室用ミキサー)を用いて混合し、乳化させる。数分の乳化後、エマルジョンを穏やかな攪拌とともに冷却する。
【0075】
トコフェロールと保存料を、穏やかな攪拌を伴う冷却の終了時に加える。
【0076】
結果を表1に示す。
【表1】

【0077】
比較例1
例3の手順を、4個から12個の炭素原子を有する鎖を有するアルキルポリグルコシド系乳化剤とエトキシル化乳化剤を用いることにより反復する。結果を表2に表す。
【表2】

【0078】
ブチルグルコシドでは、エマルジョンを得ることは不可能であり、ドデシルグルコシドは、本発明によるアルキルグルコシドで得られたものより不安定であるエマルジョンをもたらす。セテアリールグルコシドおよびドデシルグルコシドは凝集物をもたらす。エトキシル化ノニオン性界面活性剤は、本発明によるアルキルポリグリコシドより効果が弱い。
【0079】
例4:顔料の分散およびO/Wエマルジョンの保護率の時間経過後の安定性
以下の成分を含むエマルジョンを調製する:
A 乳化剤 2.50%
アジピン酸ジイソプロピル 25.00%
酸化チタン(20nm/ジメチコーンコーティング) 10.00%
酸化亜鉛(50nm) 02.00%
B シクロメチコーン 03.00%
グリセロール 07.00%
C EDTA四ナトリウム 00.20%
水 100%とする量
カーボマー(登録商標) 00.05%
トロメタミン pH>7とする量
ケイ酸マグネシウム/ケイ酸アルミニウム 01.00%
キサンタンガム 00.15%
D DL−α−トコフェロール 00.05%
保存料 適量。
【0080】
カーボマー(登録商標)、ケイ酸マグネシウム/ケイ酸アルミニウムおよびキサンタンガムを、水相中に分散させる。水相を70〜85℃に加熱し、次いで、EDTAおよびトロメタミンを加える。
【0081】
酸化チタンおよび酸化亜鉛、乳化剤および油分を含む脂肪性相を70から85℃の同一温度に加熱する。シクロメチコーンおよびグリセロールをこの温熱脂肪性相に加える。
【0082】
続いて、その2相を回転子−固定子乳化装置(シルバーソン実験室用ミキサー)を用いて混合し、乳化する。数分間の乳化後、エマルジョンを穏やかな攪拌とともに冷却する。
【0083】
トコフェロールと保存料を穏やかな攪拌を伴う冷却の終了時に加える。
【0084】
結果を表3に示す。
【表3】

【0085】
本発明による乳化剤のデシルグルコシドは、比較例の乳化剤とは対照的に、貯蔵の間に、結果として、保護率の値およびUV−A/UV−B比の値により例示されるようにUV−BスペクトルおよびUV−Aスペクトルの両方について時間経過後も完璧に滑らかで、保護率も安定なままであるテキスチャーを有するフィラーの微細で均質な分散状態を保持することを可能とする。
【0086】
例5:加熱無しでのO/Wエマルジョンの調製
以下の成分を含むエマルジョンを調製する:
A 乳化剤 03.00%
カプリリック/カプリックトリグリセリド 20.00%
酸化亜鉛 05.00%
グリセロール 05.00%
C EDTA四ナトリウム 00.10%
水 100%とする量
セピゲル(登録商標)305 01.50%
トロメタミン pH>7とする量
ケイ酸マグネシウム/ケイ酸アルミニウム 01.00%
キサンタンガム 00.15%
D DL−α−トコフェロール 00.05%
保存料 適量。
【0087】
セピゲル(Sepigel)(登録商標)305(ポリアクリルアミドおよびC11〜C13イソパラフィンおよびラウレス−7;セピック(Seppic)より販売されている)、ケイ酸マグネシウム/ケイ酸アルミニウムおよびキサンタンガムを水相に分散させる。EDTAおよびトロメタミンを水相に加える。
【0088】
脂肪相を加熱せずに構成成分を単純に混合することにより製造する。
【0089】
続いて、その2相を回転子−固定子乳化装置(シルバーソン実験室用ミキサー)を用いて混合し、乳化させる。トコフェロールと保存料を穏やかに攪拌しながら加える。
【0090】
結果を表4に示す。
【表4】

【0091】
例6:メーキャップに用いられるエマルジョンの調製
A 乳化剤 2.50%
イソノニルイソノナノエート 08.00%
ジイソプロピルダイマージリノレエート 08.00%
B シクロメチコーン 04.00%
セピゲル(登録商標)305 01.50%
C 水 100%とする量
マイクロパール(登録商標)305
(架橋したメチルメタクリレートポリマー) 02.00%
EDTA四ナトリウム 00.50%
D 顔料ペースト
ブチレングリコール 04.00%
ポリエチレングリコール400 04.00%
二酸化チタン、E171 07.00%
タルク、ルゼナック000C 02.00%
黄酸化鉄
シコビット・イエロー10E172 00.80%
赤酸化鉄
シコビット・レッド30E172 00.30%
黒酸化鉄
シコビット・ブラック 00.05%
水 20.00%
NaOH pH>8とする量
E 保存料 適量
香料 00.20%
顔料ペーストは、予めビーズミルで粉砕されている。
【0092】
水を70〜75℃に加熱し、次いで、マイクロパール(登録商標)、EDTAおよび顔料ペーストを温水相に加える。
【0093】
乳化剤と油分を含む脂肪相を70から75℃の温度に加熱する。シクロメチコーンおよびセピゲル(登録商標)305をこの温熱脂肪性相に加える。
【0094】
続いて、その2相を回転子−固定子乳化装置(シルバーソン実験室用ミキサー)を用いて混合し、乳化させる。数分間の乳化後、エマルジョンを穏やかな攪拌とともに冷却させる。
【0095】
保存料および香料を穏やかな攪拌を伴う冷却の終了時に加える。
【0096】
結果を表5に示す。
【表5】

【0097】
フィラーの分散の微細さは、皮膚上の広がりの向上、均一な色、および皮膚上の演色性がより良くなること:白色度(パラメーターL)の減少、着色されたパラメーターa(赤の色相)およびb(青の色相)の強調により反映される。比較例での色の不均一性は、本発明による例におけるより高いaとbについての標準偏差値から明確に明らかである。
【0098】
例7:メーキャップに用いられるO/Wエマルジョンの調製
A イソノニルイソノナノエート 08.00%
トリイソステアリルシトレート 08.00%
サイマルゲル(登録商標)NS 04.00%
B 水 100%とする量
EDTA四ナトリウム 00.05%
乳化剤 0.8%
C 顔料ペースト
ブチレングリコール 04.00%
ポリエチレングリコール400 04.00%
二酸化チタン、E171 05.00%
黄酸化鉄
シコビット・イエロー10E172 00.80%
赤酸化鉄
シコビット・レッド30E172 00.30%
黒酸化鉄
シコビット・ブラック 00.05%
水 20.00%
NaOH pH>8とする量
D 保存料 適量
香料 00.20%
顔料ペーストは予めビーズミルで粉砕されている。
【0099】
サイマルゲル(登録商標)NS(ナトリウムアクリロイルジメチルタウレート/ヒドロキシエチルアクリレートコポリマーおよびスクアランおよびポリソルベート80;セピックにより販売されている)を油分と混合する。クリームゲルを調製するために水性相Bを相Aに加える。このとき、顔料ペースト(相C)および続いて相Dを、穏やかな攪拌とともにクリームゲルに直接加える。
【0100】
結果を表6に示す。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib):
HO−R−O(X)r (Ia)
(X)s−OR−O−(X)t (Ib)
(式中、
Xは、C5またはC6糖の残基、好ましくはグルコースまたはキシロース残基を表し、
Rは、6個から12個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルキリデン基を表し、
r、sおよびtは、それぞれの糖残基の平均重合度を表し、1を超え、5以下である。)のアルキルポリグリコシド。
【請求項2】
本質的に、
式(IIIa)
1−O(X1p1 (IIIa)
(式中、
1は、6個から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、
1は、キシロース残基を表し、
キシロース残基の平均重合度を表すp1は、1を超え、2.5以下の十進数である)の少なくとも1つの化合物、および
式(IIIb)
2−O(G)n (IIIb)
(式中、
2は、6個から12個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、
Gは、グルコース残基を表し、
キシロース残基の平均重合度を表すnは、1を超え、2.5以下の十進数である)の少なくとも1つの化合物
の混合物(M)30重量%から100重量%と、
局所的に許容可能な溶剤0%から70重量%
からなることを特徴とする濃縮物(C)。
【請求項3】
式(IIIa)と式(IIIb)の化合物の混合物(M)は、本質的に、
20重量%から99重量%の式(IIIa)の少なくとも1種の化合物、および
1重量%から80重量%の式(IIIb)の少なくとも1種の化合物
から構成されている請求項2記載の濃縮物。
【請求項4】
混合物(M)が、本質的に、
20重量%から30重量%の少なくとも1種の式(IIIa)の化合物、
70重量%から80重量%の少なくとも1種の式(IIIb)の化合物
からなる請求項3記載の濃縮物。
【請求項5】
無機フィラーおよび/または顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤としての請求項1ないし4のいずれか1項記載の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1種のアルキルポリグリコシドまたは濃縮物(C)の使用。
【請求項6】
無機フィラーおよび/または顔料を含む水中油型エマルジョンの調製のための乳化剤としての一般式(II):
R−O(X)p (II)
(式中、
Rは、6個から11個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を表し、
Xは、C5またはC6糖の残基、好ましくはグルコースまたはキシロース残基を表し、
糖残基の平均重合度を表すpは、1を超え、5以下、特に2.5以下の十進数である)の少なくとも1種のアルキルポリグリコシドの使用。
【請求項7】
前記水中油型エマルジョンが0.2から10重量%、好ましくは0.5から5重量%の式(Ia)、(Ib)または(II)の1以上の化合物、または濃縮物(C)を含むことを特徴とする請求項5または6記載の使用。
【請求項8】
前記水中油型エマルジョンが0.5から40重量%、好ましくは2から25重量%の無機フィラーおよび/または顔料を含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記水中油型エマルジョンが1から50重量%、好ましくは5から35重量%、より好ましくは5から25重量%の1以上の油分および/または1以上のワックスで構成される脂肪相を含むことを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記水中油型エマルジョンが0.1から10重量%の安定剤を含むことを特徴とする請求項5ないし9のいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記水中油型エマルジョンが、30重量%までの共乳化剤、保存料、香料またはにおいを付与する機能を有する他の添加剤、活性成分、共溶剤、塩基、または酸から選択される1以上の添加剤を含むことを特徴とする請求項5ないし10のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
式(Ia)、(Ib)または(II)の少なくとも1種の化合物および無機顔料および/またはフィラーを含む水中油型エマルジョン。
【請求項13】
0.5%から10重量%、特に1%から5重量%の請求項2ないし4のいずれか1項記載の濃縮物および無機顔料および/またはフィラーを含む水中油型エマルジョン。
【請求項14】
日焼け止めエマルジョンである請求項12または13記載のエマルジョン。
【請求項15】
メーキャップエマルジョンである請求項12または13記載のエマルジョン。
【請求項16】
水中油型化粧または薬学エマルジョンの製造方法であって、0.2%ないし10重量%、特に0.5ないし5重量%の請求項2ないし4のいずれか1項記載の濃縮物(C)を該組成物の他の構成成分と混合することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−77132(P2010−77132A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−242701(P2009−242701)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【分割の表示】特願2003−538172(P2003−538172)の分割
【原出願日】平成14年10月22日(2002.10.22)
【出願人】(398057293)ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック (27)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
【Fターム(参考)】