説明

無機粒子の分散液の製造方法、その製造方法を用いたペースト組成物および樹脂組成物の製造方法

【課題】無機粒子の1次粒子までの分散を容易にかつ確実に実現できる分散条件を定め、20nm以下の平均粒子径を有する無機粒子が均一に分散された、分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも有機溶媒、無機粒子および分散剤を含有する無機粒子の分散液の製造方法であって、ビーズミルのベッセルに、平均粒子径0.01mm以上0.1mm以下のビーズを、ベッセル容積の20容積%以上85容積%以下充填し、ビーズミルのローターの回転周速が8m/s以上15m/s以下、分散処理時の分散液の温度が10℃以上40℃以下である条件で、無機粒子の量に対して0.1重量%以上の分散剤と、有機溶媒とを含有する分散媒中で、平均1次粒子径が1nm以上20nm以下の無機粒子を分散する無機粒子の分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒中に無機粒子を分散させた分散液の製造方法、および樹脂中に無機粒子を分散させた樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子を有機溶媒中へ分散させた分散液は、樹脂と混ぜ合わせることによりペーストを形成することができ、そのペーストは印刷用ペースト、潤滑剤、化粧品、接着剤、離型材、または、ディスプレイや実装基板の構成材料などに幅広く活用されている。無機粒子を樹脂中に分散させる目的は、熱機械特性や電磁特性、光学特性など、樹脂のみでは得ることができない優れた特性を付与することや、一般に高価な樹脂の混合比を減らし生産コストを抑えることなどがある。近年、材料の表面平滑性や透明性を向上させるため、または、半導体用材料など微小材料に対応するため、分散させる無機粒子の粒子径をナノメートルサイズに微小化する試みが各技術分野で進められている。なかでも、光配線技術では、光導波路材料の線膨張率や屈折率変動を抑えるために、無機粒子を樹脂中に分散させる技術が検討されている。
【0003】
無機粒子を樹脂中に分散させるには、まず、有機溶媒中へ無機粒子を良好に分散させた分散液を製造する必要がある。市販されている、平均粒子径がナノメートルオーダーである無機粒子は、個々の粒子(1次粒子)を適度に凝集させ、平均粒子径が数十μmの粉体状の粒子(2次粒子)として提供されている場合が多い。したがって、平均粒子径が20nm以下の無機粒子の分散液を製造するためには、有機溶媒中で、これら2次粒子の凝集を解し、1次粒子が安定に分散した分散液を製造する必要がある。しかしながら、無機粒子の粒子径がより微小になると、凝集した無機粒子にせん断応力を加えるための機構が粒子サイズに追随できなくなることから、無機粒子を分散媒中で均一分散させることが非常に困難となる。また、粒子重量に対する表面積の割合が高くなるため、分散が進行すると分散液の粘度が増加し、分散をさらに進めることが難しくなる。
【0004】
他方、無機粒子を1次粒子へと分散させる方法として、ホモジナイザーやビーズミル、超音波分散機などの分散機を用いる方法が知られている。特に、無機粒子を平均粒子径20nm以下の微小粒子へと分散するには、微小ビーズの摩擦によるせん断応力により分散を促進するビーズミルによる分散が優れている。
【0005】
例えば、粒子径70nm以下のシリカ粒子を有機溶媒中へ、ビーズミルを用いて分散させるものがある(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された方法は、シリカ粒子という極性が高く有機溶媒への分散が比較的容易な無機粒子についての方法であり、他の無機粒子に対しては有効でない。さらに、分散が容易なシリカ粒子においても、分散媒に使用する有機溶媒はアルコール系に限定され、ビーズミルでの分散後、遠心分離機を用いて、粒子径を小さくしている。アルミナなどのシリカ粒子よりも極性が低い粒子に関する分散例が示されているが、シリカ粒子以外については具体的な粒子径分布が示されておらず、1次粒子径までの分散は難しいと考えられる。
【0006】
また、ビーズミルによりナノメートルオーダーの炭素粒子の分散を行う方法も提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載された方法では、分散媒としては極性が高い水を用いており、一般的な有機溶媒よりも分散が容易である。したがって、一般的な有機溶媒に対しては、特許文献2に記載された方法は有効でない。
【0007】
これら従来の分散方法は、無機粒子の種類、大きさや分散媒の種類によって分散の度合いが左右されることが多く、なかでも硫酸バリウム粒子の分散に適用した場合、安定した分散性を実現することは非常に困難であった。
【特許文献1】特開2004−346288号公報(6頁、実施例)
【特許文献2】特開2005−1983号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの分散方法では、20nm以下の平均1次粒子径を有する無機粒子を有機溶媒中で1次粒子までに均一に分散することができなかった。本発明では、無機粒子の1次粒子までの分散を容易にかつ確実に実現できる分散条件を見出し、20nm以下の平均粒子径を有する無機粒子が均一に分散された、分散液の製造方法を提供する。また当該無機粒子の分散液を用いたペースト組成物および熱機械特性や光学特性の優れた樹脂組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、少なくとも有機溶媒、無機粒子および分散剤を含有する無機粒子の分散液の製造方法であって、ビーズミルのベッセルに、平均粒子径0.01mm以上0.1mm以下のビーズを、ベッセル容積の20容積%以上85容積%以下充填し、ビーズミルの回転周速が8m/s以上15m/s以下、分散処理時の分散液の温度が10℃以上40℃以下である条件で、無機粒子の量に対して0.1重量%以上の分散剤と、有機溶媒とを含有する分散媒中で、平均1次粒子径が1nm以上20nm以下の無機粒子を分散する無機粒子の分散液の製造方法である。また、当該製造方法によって得られる無機粒子の分散液を用いたペースト組成物および樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、無機粒子が平均粒子径20nm以下で均一に分散された分散液を提供することができる。また本発明の製造方法から得られた無機粒子分散液を用いた樹脂組成物においても、樹脂の種類に大きく依存することなく、無機粒子が均一に分散されている。したがって、熱機械特性や光学特性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、平均1次粒子径が1nm以上20nm以下である無機粒子の2次粒子を、ビーズミルを用いて1次粒子までに分散させる。平均1次粒子径が1nm以上の場合、微小ビーズによるせん断応力が有効に無機粒子に加えられる。また、平均1次粒子径が20nm以下の場合、微小ビーズによる比較的小さなせん断応力であっても、無機粒子の1次粒子までの分散が可能となる。
【0012】
本発明におけるビーズミルとしては、例えば、寿工業(株)製の“ウルトラアペックスミル”(商品名)やアシザワ・ファインテック(株)製の“スターミル”(商品名)などが挙げられる。ビーズミルにおいて、無機粒子の分散が行われるベッセルと呼ばれる部位は、外壁を形成する円筒形のステーターと、ステーターの中心で回転するローターによって形成される。そして、無機粒子と有機溶媒とを混合した分散液を、ステーターとローターとの間を送液させる。ローターからは放射状に複数のブレードが突出している。ベッセル内に分散メディアであるビーズを充填し、ローターを回転させることにより、ブレードによりビーズが攪拌され、それに伴い、ビーズが分散液中の無機粒子にせん断応力を与え、無機粒子が微小粒子に分散される。一度ベッセル内を通過した分散液を循環させ、繰り返しベッセル内へと送液することで、分散液中の無機粒子の平均粒子径を徐々に小さくする。
【0013】
分散液に含まれる無機粒子は1次粒子あるいは凝集体として存在するものであるが、本発明においては分散液中に存在するときの無機粒子の平均粒子径は、分散液中で幾つかの無機粒子の1次粒子が凝集した状態のものを体積基準で分布にしたときのメジアン径(50%粒子径)である。分散液中での無機粒子の平均粒子径を測定する方法としては、レーザーによる静的光散乱方式や動的光散乱方式が挙げられるが、平均粒子径20nm以下の粒子径を高精度で評価する場合は、動的光散乱方式を用いる方が好ましい。この方式による粒子径測定装置として、例えば、日機装(株)製の“ナノトラック”UPA−EX150(商品名)が挙げられる。
【0014】
動的光散乱方式では粒子のブラウン運動に伴う、散乱光強度の自己相関関数が得られる。そして自己相関関数の減衰特性から粒子の拡散定数および粒子径が算出される。拡散定数から粒子径を算出する際に、分散媒の粘度と屈折率を用いる。こうして得られた分散液中の粒子径は広がりを持った分布を示す。本発明の平均粒子径は、体積の重みを乗じた体積基準の粒子径分布のメジアン径とする。
【0015】
平均1次粒子径が20nm以下である無機粒子の2次粒子を、1次粒子にして分散するには、ビーズミルで使用するビーズの平均粒子径を0.1mm以下とすることが必要である。ビーズの平均粒子径が0.1mm以下である場合、ビーズの間を分散液が通過する際に、無機粒子がビーズと接触する頻度が高く、十分な分散効果が得られる。さらに高い分散効果を得るためには、ビーズの平均粒子径は0.05mm以下であることが好ましい。一方、ビーズの平均粒子径は0.01mm以上であることが必要である。ビーズの平均粒子径が0.01mm以上である場合、個々のビーズの持つ運動量が大きく、平均1次粒子径が20nm以下の無機粒子の2次粒子を分散するのに十分なせん断応力が得られる。その結果、十分な分散効果が得られる。さらに強いせん断応力を与えるためには、ビーズの平均粒子径は0.03mm以上であることが好ましい。
【0016】
ビーズの平均粒子径は数平均粒子径であり、評価方法としては、例えば以下のような方法を挙げることができる。ガラスなどの透明板の上にビーズを載せ、光学顕微鏡にて透明板の下側から光を当てた透過光像を観察し、ビーズの粒子径を評価する。任意の100個のビーズを観察し、それぞれのビーズに対して求めた粒子径の数平均値をビーズの平均粒子径とすることができる。ビーズの粒子径は、ビーズの観察像に対し各種の画像処理ソフトを用いた球形近似を行うことで求めることができる。具体的には、顕微鏡の接眼レンズ部の代わりに取り付けたCCDカメラによるデジタル画像をコンピューター上で画像処理することにより行う。このようなCCDカメラとしては(株)フローベル製のADP−240Mがあり、このような画像処理ができるソフトとしては(株)フローベル製のFlvFsなどがある。
【0017】
分散メディアであるビーズとしては、セラミックやガラス、金属などのビーズが使用できる。例えば、ソーダガラス、石英、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、スチール、ステンレスなどが挙げられる。特に、耐クラック性や耐摩耗性に優れるジルコニアビーズが好適に使用できる。ジルコニアは、ZrOを母結晶とするもので、ZrO単体だけでなく、これにCaO、MgO、Y、その他希土類酸化物などがドープされたものも含む。クラックや摩耗が少ないビーズを使用すると、分散処理時にビーズ小片がビーズ表面から削りとられて分散液中に混入することを低減することができるので、分散液と樹脂を混合した樹脂組成物の光透過性が良好になる。
【0018】
ジルコニアビーズの結晶構造には、単斜晶系、正方晶系、立方晶系の3種がある。正方晶系や立方晶系は応力誘起相変態効果により材料に与えられた応力を緩和する性質を有するため、正方晶系や立方晶系の量比が高いと、ジルコニアの靭性が向上し、クラックの発生を抑制する効果が高まる。一方、立方晶系の量比が高くなると硬度が低くなり摩耗しやすくなる。したがって、本発明においては、正方晶系の量比が90%以上100%以下であると、耐クラック性および耐摩耗がより向上するので好ましい。なお、ジルコニアは高温下では正方晶系や立方晶系になっているが、冷却時には単斜晶系に相変態するので、体積収縮によるクラックが発生しやすい。そこで、イットリアを少量添加することにより、常温でも正方晶系や立方晶系を安定に保持し、クラックの発生を抑制したものがある(安定化ジルコニア)。正方晶系の量比が90%以上100%以下であるジルコニアビーズとしては、“Plasma Beads”(商品名)(高周波熱錬(株)製)が挙げられる。
【0019】
ジルコニアビーズの結晶構造の解析方法としては、X線回折法が挙げられる。各晶系の量比は、以下に示す関係式より算出できる。
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、Xm、Xtet、Xcubは、それぞれ単斜晶系、正方晶系、立方晶系の量比を示す。Im、Itet,Icubはそれぞれ単斜晶系、正方晶系、立方晶系の各指数におけるX線回折ピークの積分強度を示す。I(cub、tet)(111)は正方晶系および/または立方晶系の指数(111)におけるX線回折ピークの積分強度を示す。
【0022】
ビーズミルのベッセル内のビーズ充填量は、ベッセル容積の20容積%以上85容積%以下であることが必要である。ビーズの充填量が20容積%以上である場合、近接するビーズの間隙が狭いため分散液中の無機粒子がビーズに接触する頻度が高く、分散が短時間で効率よく進行する。さらに効果を高めるために、ビーズの充填量は50容積%以上であることが好ましい。一方、ビーズの充填量が85容積%以下である場合、近接するビーズの間に十分な間隙が存在するため、分散液がベッセル内を詰まることなくスムーズに送液することができる。また、ビーズの充填量が85容積%以下である場合、ビーズ同士、あるいはビーズとベッセルのステーターやローターとの摩擦により発生する熱量が少ないため、分散剤などの分散液を構成する材料が変質しにくい。また、遠心力によりビーズをフィルタリングする方式のビーズミルにおいて、ビーズの充填量が多くなると、フィルタリング機能が十分に働かず、ベッセルから回収した分散液中にビーズが混入する可能性が大きくなるが、ビーズの充填量が85容積%以下である場合は、ビーズの混入がないか、あるいは非常に小さくて済む。さらに効果を奏するために、ビーズの充填量は75容積%以下であることが好ましい。
【0023】
ビーズミルのローターの回転周速は8m/s以上15m/s以下であることが必要である。本発明における回転周速とは、ローターから突出しているブレードの先端が回転するときの速度である。回転周速が8m/s以上である場合、無機粒子を平均粒子径20nm以下に分散するのに十分なせん断応力が得られる。その結果、十分な分散効果が得られる。また、回転周速が8m/s以上である場合、ビーズを遠心力によりフィルタリングする方式のビーズミルにおいて、回収した分散液中にビーズが混入しない。一方、回転周速が15m/s以下である場合、ビーズ同士、あるいはビーズとベッセルのステーターやローターとの摩擦による発熱量は少ないため、分散液が変質しにくい。
【0024】
分散処理時の分散液の温度は10℃以上40℃以下であることが必要である。ここで、分散処理時の分散液の温度は、ベッセルから送出された直後の分散液の温度とする。液温が40℃以下である場合、分散液中の有機溶媒の揮発量は少なく、分散液中の無機粒子や分散剤などの組成の濃度変化は少ない。液温が40℃よりも高いと、分散液組成の濃度変化が生じ、分散液の分散性が悪くなる場合がある。例えば、分散液の分散性はpHにより影響を受けることがあるが、分散液のpH値は分散液組成の濃度変化により変化する。したがって分散液の温度制御は分散液のpH値、また分散液中の無機粒子の分散性を制御する重要な条件の1つである。また、分散液中に温度により重合反応を示す材料や、温度により変質する材料を含有する場合は、温度変化により分散液が有する特性が変化するため、分散時の温度制御は必要である。さらに効果を高めるために、分散液の温度は35℃以下であることが好ましい。一方、分散処理時の分散液の温度が10℃よりも低い場合、ベッセルから送出した分散液を回収する容器内に結露が生じ、分散液中に水分が混入し、分散液の特性を劣化させる可能性があるため、分散処理時の分散液の温度は10℃以上である。また、分散液の温度が10℃以上であると、分散液の粘度が低くなるため、ビーズの運動エネルギーの減損が避けられ、分散効率が高くなる。さらに高い効果を得るためには、分散液の温度は20℃以上であることが好ましい。
【0025】
分散処理時の分散液の粘度は、1mP・s以上100mP・s以下であることが好ましい。ここで、分散処理時の分散液の粘度は、ベッセルから送出された分散液をサンプリングし、サンプリングから5分後に測定した際の粘度とする。測定温度は25℃とする。粘度測定は、例えば、東機産業(株)製の粘度計RE−115Lにて行うことができる。ビーズミルのベッセル内のビーズは回転するローターのブレードから運動エネルギーを獲得し、分散液中の無機粒子と接触することにより、せん断応力を発生する。しかし、分散液の粘度が高い場合は、ビーズが無機粒子へ達する前に、溶媒中で運動エネルギーが減損し、無機粒子に十分なせん断応力を与えることができない。分散処理時の分散液の粘度が100mP・s以下である場合は、上記問題を回避することができる。さらに効果を高めるために、分散処理時の分散液の粘度は、20mP・s以下であることが好ましい。一方、分散液の粘度が1mP・s以上であれば、製造した分散液と樹脂とを混ぜるペースト組成物の粘度が低くならず、ペースト組成物を基板上に塗布し膜状の樹脂組成物を製造する場合、膜厚の厚い膜を形成することができる。
【0026】
分散液中の無機粒子の濃度は5重量%以上70重量%以下であることが好ましい。無機粒子の濃度が5重量%以上である場合、製造した分散液と樹脂とを混ぜ合わせ、無機粒子が分散した樹脂組成物を形成する際に、材料中に存在する有機溶媒量が少なくて済むため、ペースト組成物からの有機溶媒の除去および樹脂組成物の製造を確実に行うことができる。また、有機溶媒量が少ないために、数十μm以上の厚膜形成も容易に行うことができる。一方、無機粒子の濃度が70重量%以下である場合、分散処理時の分散液の粘度が低いので、効率よく良好な分散状態が実現できる。
【0027】
本発明においては、分散液組成に分散すべき無機粒子と有機溶媒、および分散剤が必須である。
【0028】
無機粒子としては、Si、Al、Mg、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Ag、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどの酸化物、硫酸塩、炭酸塩、フッ化物などの単独塩もしくは、MgAlなどの複塩が挙げられる。本発明により製造される、無機粒子を分散させた樹脂組成物を光導波路のコア部の材料に使用する場合は、高屈折率の樹脂(〜1.6)と同程度の屈折率を持つ無機粒子を用いることが好ましい。例えば、硫酸バリウム粒子が挙げられる。
【0029】
本発明で用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。特に、アミン系のN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0030】
本発明で用いる分散剤は、ビーズミルにより細かく分散された無機粒子の表面に配位し、立体障害を生じさせ、無機粒子同士が再び凝集することを阻害する働きをする。分散剤としては、無機粒子との吸着基が酸性である硫酸エステル系、スルホン酸エステル系、リン酸エステル系、カルボン酸系などの分散剤や、無機粒子との吸着基が塩基性であるアミン系などの分散剤が挙げられる。特に、無機粒子が硫酸バリウム粒子の場合、リン酸エステル系の分散剤が好ましい。リン酸エステル系分散剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製の“Disperbyk−111”(商品名)や同社製の“BYK−W9010”などが挙げられる。
【0031】
分散剤の量は、無機粒子に対して、0.1重量%以上であることが必要である。分散剤の量が0.1重量%以上であると、ビーズミルによって分散した無機粒子同士の再凝集が阻害され、分散が確実に進行する。分散剤は、無機粒子を均一に分散させるには有効な材料ではあるが、一方で、分散剤が有する官能基と樹脂の官能基が相互作用し、樹脂の硬化反応時に硬化を阻害したり、分散剤が基板との接着性低下を引き起こしたりすることがあり、適切な含有量にする必要がある。また本発明の分散液の製造方法は分散剤の量を少なくすることができ、好ましくは15重量%以下とすることによって、樹脂組成物を製造したときの特性を低減させることがない。また、分散剤の量が15重量%以下であると、製造した分散液と樹脂とを混ぜた樹脂組成物の熱機械特性や光学特性が極めて良好となり好ましい。
【0032】
次に、本発明の分散液の製造方法について詳細に説明する。1次粒子径が20nm以下の粉体状態の無機粒子の2次粒子、分散剤、有機溶媒を所定の分量で混合し、攪拌する。混合直後は、無機粒子の表面を空気の層が覆っているため、無機粒子と有機溶媒との濡れが十分でなく、粘度が増加する場合がある。この場合は、無機粒子と有機溶媒が完全に濡れるまで、回転羽根などで時間をかけて攪拌するのが好ましい。
【0033】
無機粒子、分散剤、有機溶媒を混合、攪拌した後、ビーズミルにて無機粒子の分散処理を行う。まず、ビーズミルのベッセル内に所定粒子径のビーズを所定量投入し、ローターを回転させながら、分散液に用いるものと同じ有機溶媒をベッセル内へ送液/循環させビーズ洗浄を行う。洗浄時に有機溶媒の汚れが目立つ場合は、新しい有機溶媒と入れ替え、有機溶媒の汚れが目立たなくなるまで洗浄を続ける。ビーズ洗浄後、循環させた有機溶媒を回収し、次いで、上記無機粒子、分散剤、有機溶媒の混合液をベッセル内へ送液/循環させ分散処理を行う。初めにベッセル内から送出する分散液は、ベッセル内に残留した有機溶媒により濃度が薄くなっているため、ベッセルの大きさに応じて、ベッセル内から送出する分散液の濃度が一定になるまで初流を除去する。分散処理は一度に小さいビーズで実施してもよく、段階的にビーズの大きさを変えて行ってもよく、特に限定されない。例えば、粒子径が0.5mmのビーズで無機粒子の平均粒子径が100nm程度になるまで分散を行ってから、次に、微小ビーズでの分散を施してもよい。ここで、平均粒子径が100nm程度になるまでの分散処理を粗分散とよび、その後の20nm以下の微小粒子径への分散処理を本分散とよぶ。粗分散をホモジナイザーで行い、本分散をビーズミルで行うなど、粗分散と本分散を異なる装置にて行うこともできる。ビーズミルにおいては、サンプルをミル本体へチューブを通して送液する方式のものが多く、粗分散をビーズミルで行うと、粒子径の大きな粒子が送液チューブ中で目詰まりする場合がある。粗分散をホモジナイザーなど別の装置で行うと、これを避けることができる。
【0034】
粗分散をホモジナイザーで行う場合は、例えば、回転刃の先端の周速が1〜10m/sにて、1時間程度処理する。ホモジナイザー処理中は熱が発生するため、氷欲中で処理することが好ましい。ホモジナイザーとしては、“エクセルオート”(商品名)((株)日本精機製作所製)が挙げられる。
【0035】
分散処理時の分散液の粘度は無機粒子の分散性や分散処理の効率に影響するので、分散処理の経過に伴う分散液の粘度変化を把握することが好ましい。例えば、一定時間ごとに分散液をサンプリングし、粘度測定をすることにより、粘度の経時変化を把握することができる。分散処理時に分散液の粘度が上昇した場合は、循環させている分散液中に有機溶媒や分散剤、pH調整剤などを適量加えて、粘度を低下させることもできる。
【0036】
分散処理時の分散液の温度は、ベッセル外部を冷却する冷却水の温度や流量、分散液の循環速度により制御できる。分散液の温度上昇は、分散処理時の分散液の粘度が高い場合に発生しやすい。分散液の温度上昇が大きすぎる場合には、分散液の変質が起きることがある。
【0037】
ビーズミルのローターの回転周速は一定でもよく、分散処理時に段階的に変更してもよい。ローターの回転周速は分散処理時の分散液の温度に影響を与える場合があるので、分散処理時に回転周速を変更する場合は、分散液の温度上昇が大きくなりすぎないようにするのが好ましい。また、ビーズを遠心分離によりフィルタリングする方式のビーズミルの場合は、ローターを回転する前に送液ポンプを作動し、分散液の循環を開始すると、ベッセル内から送出する分散液中にビーズが混入することがあるので、ローターを回転した後に送液ポンプを作動するようにする。
【0038】
分散処理時間は無機粒子や有機溶媒、分散剤などの分散液を構成する材料の種類や組成比により適宜設定する。例えば、一定時間ごとに分散液をサンプリングし、分散液中での無機粒子の平均粒子径を測定することは、分散状態の経時変化を把握でき、分散処理の終了時点を判断することができるので好ましい。分散性が良好な組成の場合は、30分程度の分散処理時間で十分であるが、組成によっては、分散処理を24時間以上行ってもよい。分散処理時間が長い場合は、有機溶媒などの分散液を構成する材料が揮発することにより、分散液の組成比が変化し、分散性が変化する場合があるので、そのような場合は、適宜必要な成分を添加し、組成を調整する。また、分散液を回収後、超遠心分離機によって、無機粒子凝集体やビーズの小片などの不純物を取り除くこともできる。
【0039】
次に、本発明の無機粒子分散液の製造方法によって得られた分散液と、樹脂とを含有するペースト組成物の製造方法について説明する。
【0040】
用いられる樹脂としては、特に限定されず、ペースト組成物に求められる特性に応じた樹脂を使用することができる。具体的にはPMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂や、ポリイミド、ポリノルボルネン、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、BT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリシロキサンなどの熱硬化型樹脂などが挙げられる。また、紫外線硬化型樹脂や、アラミド樹脂なども用いることができる。本発明で得られる無機粒子を分散したペースト組成物を用いて光導波路を作製する場合は、使用する樹脂の屈折率が無機粒子の屈折率と近い値であると、光導波路の光伝搬損失が低減し、好ましい。例えば、無機粒子として屈折率が1.6程度の硫酸バリウム粒子を用いる場合は、大日本インキ化学工業(株)製の“エピクロン”(登録商標)HP4032D(商品名)(屈折率:1.607)や、ジャパンエポキシレジン(株)製の“エピコート”(登録商標)828(商品名)(屈折率:1.576)などが好適に使用される。
【0041】
分散液と樹脂を混合する場合は、樹脂中に分散液を所定量となるまで注入してもよいし、分散液中に樹脂を所定量となるまで注入してもよい。
【0042】
所定量の無機粒子と樹脂を混合して得られたペースト組成物を、さらに均質になるようにするために、ボールミルやロールミルを用いることができる。また、混合処理によりペースト組成物中に気泡が混入した場合は、静置する、あるいは攪拌脱泡機を用いるなどして、気泡を除去すると、ペースト組成物を用いて製造する樹脂組成物中への気泡の混入を避けることができる。
【0043】
ペースト組成物の粘度を調整するために、さらに有機溶媒を添加したり、加熱や減圧により有機溶媒を適量除去してもよい。また、加熱処理や紫外線照射により樹脂の架橋反応を進行させてもよい。その他、目的に応じて、消泡剤、酸化防止剤、可塑剤、シラン系やチタン系などのカップリング剤などをペースト組成物中に適宜添加してもよい。
【0044】
上記のように製造したペースト組成物を用いて、樹脂中に無機粒子が分散した樹脂組成物を製造することができる。
【0045】
樹脂組成物を製造する方法としては、ペースト組成物を基板上に塗布する、延伸してフィルム状または糸状にする、型に流し込む、などにより成形した後、加熱処理により有機溶媒を除去し、硬化させる方法が挙げられる。
【0046】
有機溶媒を除去するには、オーブンやホットプレートによる加熱乾燥の他、真空乾燥、赤外線やマイクロ波などの電磁波による加熱などが挙げられる。
【0047】
次いで、用いたペースト組成物の樹脂が熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂の場合は、有機溶媒を除去した後に、それぞれ加熱処理または紫外線照射などにより、架橋反応などの硬化反応を進行させることもできる。加熱処理の温度や時間、あるいは紫外線照射の露光量は、樹脂のみの硬化条件とは異なる場合があるので、ペースト組成物の組成により適宜設定することが好ましい。また、製造した樹脂組成物の硬化が不十分な場合は、ペースト組成物中に、樹脂の硬化を促進させるために、重合開始剤や架橋剤などを適量添加することも可能である。また、樹脂組成物を製造する際に、100℃以上の加熱処理を行う場合は、窒素などの不活性雰囲気下での処理をすることが、樹脂の酸化を抑制するので好ましい。
【0048】
また、上記ペースト組成物または樹脂組成物は印刷用ペースト、潤滑剤、化粧品、接着剤、離型材、または、ディスプレイや実装基板の構成材料などに幅広く使用することができる。なかでも、上記樹脂組成物は、極めて高い透明性を持ち、寸法や屈折率の温度変動が極めて小さいので、光導波路や合分波素子などの光配線材料に好ましく使用される。本発明の製造方法によって得られた樹脂組成物を用いて光導波路を作製する方法の一例を挙げて説明する。この場合、光透過性を上げるために、混ぜる無機粒子と樹脂の屈折率が近い方が好ましい。
【0049】
チャネル型と呼ばれる光導波路は、光の通り道である線状のコア部と、その周囲を覆うコア部よりも屈折率の低いクラッディング層を有しており、本発明の樹脂組成物をコア部とクラッディング層の両方に用いてもよいし、どちらか一方のみに用いてもよい。また、コア部とクラッディング層との屈折率差が大きい方が、伝搬光の閉じ込め効果が大きく好ましい。また、スラブ型と呼ばれる光導波路は、光の通り道である層状のコア部と、その上下を覆うコア部よりも屈折率の低いオーバークラッディング層とアンダークラッディング層の3層構造であり、チャネル型同様、樹脂組成物をそれぞれの層材料に適用できる。
【0050】
光導波路のクラッディング層、コア部の屈折率や厚みは、設計する光導波路により任意に選択することができる。マルチモード導波路の場合は、コア部とクラッディング層の屈折率差が大きく、コア部を厚くするのが適している。シングルモードの場合は、コア部とクラッディング層の屈折率差が小さく、コア部を薄くし、シングルモード伝搬を実現する。
【0051】
チャネル型光導波路を作製する方法は、例えば以下のようなものがある。ガラスやシリコンウエハー、ガラスエポキシ基板、プラスチックフィルムなどの基板上に、アンダークラッディング層用材料を塗布し、乾燥し、膜を形成する。さらに、コア部用材料を塗布し、乾燥し、膜を形成する。次いで、コア部にリアクティブイオンエッチングによりパターン形成を行う。コア部用材料に感光性樹脂を用いた場合は、露光、現像を行うフォトリソグラフィーによりパターン形成を行うことができる。次に、コア部の上にオーバークラッディング層用材料を塗布し、乾燥し、膜を形成する。
【0052】
塗布膜を形成する方法としては特に限定されず、例えば、スピンナー、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーターなどの装置を用いる方法が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また実施例で用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
γ−BL:γ−ブチロラクトン
無機粒子の分散液、樹脂組成物および光導波路の各特性の測定方法は以下の通りである。
【0054】
<分散液に含まれる無機粒子の平均粒子径の測定方法>
日機装(株)製の粒度分布測定装置UPA−150を用いて25℃で測定した。体積基準の粒子径分布のメジアン径を平均粒子径とした。分散処理を終了した時点から5分後に測定した。
【0055】
<分散液の粘度の測定方法>
東機産業(株)製の粘度計RE−115Lを用いて25℃で測定した。分散処理中の分散液をサンプリングした時点から5分後に測定した。
【0056】
<ジルコニアビーズの結晶構造解析>
ジルコニアビーズの結晶構造は、広角X線回折法で解析した。(株)リガク製のX線発生装置RU−200R(回転対陰極型)を用い、X線源はCuKα線を使用した。各晶系の量比は、以下に示す関係式より算出した。
【0057】
【数2】

【0058】
ここで、Xm、Xtet、Xcubは、それぞれ単斜晶系、正方晶系、立方晶系の量比を示す。Im、Itet,Icubはそれぞれ単斜晶系、正方晶系、立方晶系の各指数におけるX線回折ピークの積分強度を示す。I(cub、tet)(111)は正方晶系および/または立方晶系の指数(111)におけるX線回折ピークの積分強度を示す。
【0059】
<樹脂組成物の線膨張率の測定方法>
エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製のTMA測定装置TMA/SS6100を用いて、窒素雰囲気中、室温から120℃まで昇温し、再び室温まで降温したときのサンプルの変移を測定し、50℃から70℃における昇降温の平均の線膨張率を算出した。サンプルとして、樹脂組成物をガラス基板上に厚さ100μmの膜状に形成し、5mm×5mmにガラス基板ごと切断したものを用い、膜厚方向の変移を5gの押し込み荷重にて測定した。変移測定における昇降温は、サンプルの温度履歴を除去するために、連続して2度繰り返し、2度目の測定結果を用いた。また、ガラス基板の持つ温度変移を除去するため、ガラス基板のみの測定結果をサンプルの測定結果から差し引いた。
【0060】
<樹脂および樹脂組成物の屈折率の測定方法>
メトリコン社製のプリズムカップラー装置2010と専用のP−1プリズムを用いて25℃で測定した。また、同装置にて、40℃、60℃、80℃および100℃での屈折率を測定し、屈折率の温度に対する変化率を算出した。
【0061】
<光導波路の光伝搬損失の測定方法>
JPCA規格(JPCA−PE02−05−01S−2004)に準じてカットバック法で測定した。入射側および出射側の光ファイバーは、コア径が50μmで開口数が0.28のマルチモードタイプを用いた。測定温度は23℃で、測定波長は850nmで行った。
【0062】
実施例1
硫酸バリウム2次粒子(堺化学工業(株)製、BF−40:平均1次粒子径10nm)250g、リン酸エステル系分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、“Disperbyk−111”(商品名))30g、DMAc720gを混合し、ホモジナイザー“エクセルオート”(商品名)((株)日本精機製作所製)にて、氷浴中、回転刃先端の周速が5m/sで1時間処理し、硫酸バリウムを粗分散した。なお、硫酸バリウムの混合量はこれらの混合液全体の25重量%であり、分散剤は硫酸バリウムに対して12重量%であり、全混合液重量は1000gである。
【0063】
次いで、ホモジナイザーにて処理した上記の混合液を、ビーズミル“ウルトラアペックスミル”UAM−015(商品名)を用いて、分散処理した。ビーズは材質がジルコニアであり(比重:3.7g/cm)、平均粒子径が0.05mm、投入量が400gとした。ビーズミルのベッセル容積は170mlであるので、ビーズの充填量は64容積%である。また、ビーズミルのローターの周速は12m/sとした。最初にベッセルから送出された分散液の300gを除去し、残りの700gを循環させた。送液圧力は0.05MPaとした。送液を開始してから1時間後に分散処理を終了し、分散液を回収した(分散液1)。分散終了時の分散液の温度は34℃であり、粘度は2.2mP・sだった。また、分散液中の無機粒子の平均粒子径は16nmと1次粒子径に近い大きさで分散されていた。
【0064】
実施例2〜39、比較例1〜19
硫酸バリウム2次粒子(堺化学工業(株)製、BF−40:平均1次粒子径10nm)、リン酸エステル系分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、“Disperbyk−111”(商品名))、DMAcを混合したものを、ビーズミル“ウルトラアペックスミル”UAM−015(商品名)を用いて、表1〜3に示した条件にて、送液開始から1時間分散処理し、分散液を得た(分散液2〜58)。同表に、分散液中の硫酸バリウム粒子の平均粒子径の評価結果を示す。ただし、実施例32、33および比較例15では、分散処理前の混合液にリン酸を1重量%添加してから、分散処理を実施した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
実施例40
実施例1で得られた硫酸バリウム粒子の分散液1と液状エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、“エピクロン”HP4032D(商品名)、屈折率:1.607)がエポキシ樹脂:硫酸バリウム=40:60(重量比)の量になるようにし、また硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)をボールミルを用いて混合し、ペースト組成物を作製した。液状エポキシ樹脂と硬化促進剤の混合比は、重量比で100:2となるようにした。
【0069】
上記ペースト組成物をバーコーターを用いて、石英基板上に塗布し、大気中でオーブンを用いて80℃で1時間乾燥したのち、硬化のために窒素中180℃で1時間加熱し、厚さ100μmの膜を形成した。得られた膜の測定波長850nmでの屈折率は1.589であり、屈折率の温度変化率は51ppm/℃であった。また、膜厚方向の線膨張率は130ppm/℃であった。
【0070】
次に、100mm×100mmの石英基板上に、液状エポキシ樹脂(エポテック社製#314)をスピンコーターを用いて塗布し、大気中でオーブンを用いて80℃で1時間乾燥した後、硬化のために窒素中150℃で1時間加熱し、厚さ10μmのアンダークラッディング層を形成した。エポキシ樹脂の屈折率を測定したところ1.505であった。次に、得られたペースト組成物をバーコーターを用いて、石英基板上に形成したアンダークラッディング層上に塗布し、大気中でオーブンを用いて80℃で1時間乾燥したのち、硬化のために窒素中180℃で1時間加熱し、厚さ50μmのコア部を形成した。次に、通常の、フォトレジストによるマスク形成とリアクティブイオンエッチングにより、コア部を幅50μmの形状に形成した。
【0071】
さらにこの上にアンダークラッディング層と同じ材料をスピンコーターを用いて塗布し、80℃で1時間乾燥した後、硬化のために窒素中150℃で1時間加熱し、厚さ10μmのオーバークラッディング層を形成し、光導波路を得た。
【0072】
この光導波路を、光導波路に垂直な端面を形成するように、ダイシング装置でカットした。このようにして基板の両端に上記端面が形成され、光導波路の長さが7cmとなる基板を得た。一方の端面からのマルチモード光ファイバーによる波長850nm光の導入と、もう一方の端からのフォトディテクターによる受光を行い、カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、0.1dB/cmと小さな値であった。
【0073】
実施例41
液状エポキシ樹脂を“エピコート”828(商品名)(ジャパンエポキシレジン(株)製、屈折率:1.576)に換えた他は実施例40と同様にしてペースト組成物を作製した。また実施例40と同様にしてペースト組成物から厚さ100μmの膜を形成した。測定波長850nmでの屈折率は1.568であり、屈折率の温度変化率は49ppm/℃と小さな値であった。また、膜厚方向の線膨張率は98ppm/℃であった。
【0074】
次に、コア部を上記のペースト組成物で形成した他は、実施例40と同様にして光導波路を作製し、光伝搬損失を求めたところ、0.1dB/cmと小さな値であった。
【0075】
実施例42
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、実施例12で得られた分散液12を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。評価結果を表4に示す。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、0.1dB/cmと小さな値であった。
【0076】
実施例43
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、実施例17で得られた分散液17を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。評価結果を表4に示す。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、0.2dB/cmと小さな値であった。
【0077】
実施例44
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、実施例24で得られた分散液24を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。評価結果を表4に示す。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、0.1dB/cmと小さな値であった。
【0078】
実施例45
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、実施例25で得られた分散液25を使用する他は実施例40と同様の方法でペースト組成物を製造した。得られたペースト組成物の粘度は低すぎて、石英基板上に0.5μm以上の膜を形成することができなかった。したがって、屈折率および光伝搬損失の測定を行うことはできなかった。
【0079】
実施例46
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、実施例39で得られた分散液39を使用する他は実施例40と同様の方法でペースト組成物を得て、厚さ100μmの膜を形成した。評価結果を表4に示す。得られた膜の測定波長850nmでの屈折率は1.587であり、屈折率の温度変化率は72ppm/℃と大きかった。また、膜厚方向の線膨張率は220ppm/℃と大きかった。
【0080】
比較例20
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、比較例1で得られた分散液40を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。評価結果を表4に示す。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、2.1dB/cmと大きな値であった。
【0081】
比較例21
実施例1で得られた分散液を使用する換わりに、比較例9で得られた分散液48を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。評価結果を表4に示す。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、3.5dB/cmと大きな値であった。
【0082】
【表4】

【0083】
実施例47
硫酸バリウム2次粒子(堺化学工業(株)製、BF−40:平均1次粒子径10nm)250g、リン酸エステル系分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、“Disperbyk−111”(商品名))30g、DMAc720gを混合し、ホモジナイザー“エクセルオート”(商品名)((株)日本精機製作所製)にて、氷浴中、回転刃先端の周速が5m/sで1時間処理し、硫酸バリウムを粗分散した。なお、硫酸バリウムの混合量はこれらの混合液全体の25重量%であり、分散剤は硫酸バリウムに対して12重量%であり、全混合液重量は1000gである。
【0084】
次いで、ホモジナイザーにて処理した上記の混合液を、ビーズミル“ウルトラアペックスミル”UAM−015(商品名)を用いて、分散処理した。ビーズはジルコニアビーズ“Plasma Beads”(商品名)(高周波熱錬(株)製)(比重:3.7g/cm、平均粒子径:0.05mm)であり、投入量が400gとした。また、ジルコニアビーズの結晶構造の量比は、単斜晶系が4%、正方晶系が96%、立方晶系が0%であった。ビーズミルのベッセル容積は170mlであるので、ビーズの充填量は64容積%である。また、ビーズミルのローターの周速は12m/sとした。最初にベッセルから送出された分散液の300gを除去し、残りの700gを循環させた。送液圧力は0.05MPaとした。送液を開始してから1時間後に分散処理を終了し、分散液を回収した。分散終了時の分散液の温度は33℃であり、粘度は2.3mP・sだった。また、分散液中の無機粒子の平均粒子径は15nmと1次粒子径に近い大きさで分散されていた。本分散液を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、0.1dB/cmであった。
【0085】
実施例48
ビーズがジルコニアビーズ“YTZボール”(商品名)((株)ニッカトー製)(比重:3.7g/cm、平均粒子径:0.05mm)である他は実施例47と同様の方法で分散液を作製した。ジルコニアビーズの結晶構造の量比は、単斜晶系が3%、正方晶系が86%、立方晶系が12%であった。分散終了時の分散液の温度は36℃であり、粘度は2.4mP・sだったまた、分散液中の向き粒子の平均粒子径は20nmと1次粒子径に近い大きさで分散されていた。本分散液を使用する他は実施例40と同様の方法で光導波路を作製した。カットバック法により、光伝搬損失を求めたところ、0.6dB/cmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機溶媒、無機粒子および分散剤を含有する無機粒子の分散液の製造方法であって、ビーズミルのベッセルに、平均粒子径0.01mm以上0.1mm以下のビーズを、ベッセル容積の20容積%以上85容積%以下充填し、ビーズミルのローターの回転周速が8m/s以上15m/s以下、分散処理時の分散液の温度が10℃以上40℃以下である条件で、無機粒子の量に対して0.1重量%以上の分散剤と、有機溶媒とを含有する分散媒中で、平均1次粒子径が1nm以上20nm以下の無機粒子を分散する無機粒子の分散液の製造方法。
【請求項2】
ビーズミルのベッセルに、平均粒子径0.03mm以上0.05mm以下のビーズを、ベッセル容積の50容積%以上75容積%以下充填する請求項1記載の無機粒子の分散液の製造方法。
【請求項3】
前記ビーズがジルコニアビーズであり、該ジルコニアビーズの結晶構造において正方晶系の量比が90%以上100%以下である請求項1記載の無機粒子の分散液の製造方法。
【請求項4】
無機粒子が硫酸バリウムである請求項1記載の無機粒子の分散液の製造方法。
【請求項5】
分散剤の量が無機粒子の量に対して15重量%以下である請求項1記載の無機粒子の分散液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の無機粒子の分散液の製造方法から得られる分散液と樹脂を混ぜるペースト組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のペースト組成物の製造方法から得られるペースト組成物を硬化する樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−36626(P2008−36626A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170056(P2007−170056)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】