説明

無機繊維質セラミックス多孔体及びその複合体、並びにそれらの製造方法

【課題】耐熱性及び高温における強度の面だけでなく、断熱性の面においても十分な性能を有する無機繊維質セラミックス多孔体及びそれを含む複合体、並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】実質的にSi、C、及びOからなる無機繊維結合セラミックス(6)と、無機繊維質セラミックス多孔体(5)とを含む無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体であって、前記無機繊維結合セラミックス(6)と前記無機繊維質セラミックス多孔体(5)とが直接接合していることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酷な温度条件下で使用可能であり、優れた耐熱性を有し、且つ高い断熱性と力学特性とを兼ね備えた無機繊維質セラミックス多孔体及びその複合体、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空宇宙分野や環境・エネルギー分野において用いられる断熱材・吸音材・フィルターなどの材料として、耐熱性や断熱性、力学的特性、化学的安定性などが優れた材料が望まれている。このような断熱材としては、耐火煉瓦などセラミックス製断熱材、ガラス繊維、アルミナ繊維、及びシリカ繊維等を用いたセラミックスファイバー製断熱材が知られている。しかし、一般的にアルミナ−シリカ等のセラミックスファイバーを用いた断熱材は、優れた断熱性能を示すが、力学的特性が非常に低いという問題がある。
【0003】
一方、このようなセラミックスファイバー断熱材に比べて十分な強度を有する様々な多孔質製断熱材が開発されている。例えば、アルミナ及びジルコニア多孔体は、優れた断熱性能を有し、SiC及びSi多孔体は、優れた力学的特性を有する。しかし、アルミナ及びジルコニア多孔体は、SiC及びSi多孔体に比べ強度が低く、SiC及びSi多孔体は、熱伝導率が高く十分な断熱性能を有しない。このように、一般的に、多孔質製断熱材は、断熱性と強度が相反する関係、すなわち、断熱性に優れるものは強度が低く、強度が高いものは断熱性が不十分であるという特性を有している。
【0004】
また、高強度な断熱材として金属繊維を用いたものがあるが(特許文献1)、金属はセラミックスに比べ耐薬品性等の化学的安定性に欠けるという問題がある。さらに、優れた耐熱性及び耐酸化性を有し、高温においても十分な強度を維持できるものとして、Si−M−C−Oからなる繊維を使用した無機繊維焼結体がある(特許文献2)。この特許文献2に記載された無機繊維焼結体は、1400℃においても、室温と同等の力学的特性を保持するとともに、優れた耐熱性を有し、SiC等の結晶質よりも熱伝導率が低く、比較的十分な断熱性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−146662号公報
【特許文献2】特開平5−43338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された無機繊維焼結体の断熱性は、必ずしも十分なものではない。そこで、本発明は、化学的に安定した無機質繊維を使用し、耐熱性及び高温における強度の面だけでなく、断熱性の面においても十分な性能を有する無機繊維質セラミックス多孔体及びその複合体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、無機質短繊維と無機物質との間、及び無機物質内の少なくとも一方に気孔を分散した構造、又はこれと繊維結合セラミックスの複合構造を形成することにより、耐熱性及び高温における強度の面だけでなく、断熱性の面においても十分な性能を有する無機繊維質セラミックス多孔体、及びその複合体を得ることができることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、(A)(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成される無機質短繊維と、(B)(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質の少なくとも一つから構成される無機物質とからなり、(A)無機質短繊維と(B)無機物質との間、及び(B)無機物質内の少なくとも一方に気孔が分散して形成されていることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体である。本願明細書において、実質的にとは、主要成分に影響を与えない範囲で、他の成分を微量に含んでもよいという趣旨である。
【0009】
また、本発明は、内面層が(A’)(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成され、表面層が(B’)(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質集合体の少なくとも一つから構成される無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置した予備成形体(I)を形成し、該予備成形体(I)を不活性ガス雰囲気中において1400〜1900℃の範囲の温度、5〜50MPaの範囲の圧力で加圧焼結することを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法である。
【0010】
さらに、本発明は、Si、C、及びOを含有する無機繊維結合セラミックスと、前記無機繊維質セラミックス多孔体とを含む無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体であって、前記無機繊維結合セラミックスと前記無機繊維質セラミックス多孔体とが直接接合していることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体である。
【0011】
またさらに、本発明は、内面層が(A’)(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成され、表面層が(B’)(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質の少なくとも一つから構成される無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置した予備成形体(I)を形成し、Si、C、及びOを含有する無機繊維結合セラミックスと前記予備成形体(I)とを接触させた状態で、不活性ガス雰囲気中、1400〜1900℃の範囲の温度、5〜50MPaの範囲の圧力で加圧焼結することを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、耐熱性及び高温における強度の面だけでなく、断熱性の面においても十分な性能を有する無機繊維質セラミックス多孔体及びその複合体、並びにそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】熱伝導率の複合則に関する説明図である。
【図2】実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体の断面組織構造である(FE−SEM)。
【図3】実施例4に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体における無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体との境界部の断面組織構造である(光学顕微鏡)。
【図4】実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体における気孔率と熱伝導率との関係を示す図である。
【図5】実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体における温度と室温曲げ強度に対する高温曲げ強度(曲げ強度維持率)との関係を気孔率別に示した図である。
【図6】実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体の断面組織構造である(光学顕微鏡写真)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔無機繊維質セラミックス多孔体〕
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体において、(A)無機質短繊維を構成する(a1)非晶質物質としては、Si、C及びOを含む非晶質物質が挙げられ、実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質であることが好ましい。Mは、Ti又はZrである。
【0015】
(A)無機質短繊維を構成する(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質としては、実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC1−x、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO及びMOの非晶質物質であることが好ましい。xは0以上1未満の数である。
【0016】
(A)無機質短繊維は、(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物であってもよい。(A)無機質短繊維を構成する各元素の割合は、Si:30〜60重量%、M:0.5〜35重量%、好ましくは1〜10重量%、C:25〜40重量%、O:0.01〜30重量%であることが好ましい。(A)無機質短繊維の相当直径は一般に5〜20μmであり、繊維長は、1〜70mmであることが好ましく、30〜50mmであることがさらに好ましい。
【0017】
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体において、(B)無機物質を構成する(b1)Si及びOを含む非晶質としては、実質的にSi、M、及びOからなる非晶質であることが好ましい。(B)無機物質を構成する(b2)Si及びOを含む結晶質としては、実質的に結晶質のSiO及びMOからなる結晶質集合体であることが好ましい。
【0018】
(B)無機物質は、これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体の混合物であってもよい。(B)無機物質を構成する各元素の割合は、Si:20〜65重量%、M:0.3〜40重量%、好ましくは1〜15重量%、O:30〜55重量%、C:0〜5重量%であることが好ましい。(B)無機物質は、(A)無機質短繊維の周りに存在し、無機繊維質セラミックス多孔体中において(A)無機質短繊維同士を結合するように作用する。
【0019】
(A)無機質短繊維と(B)無機物質との間には、厚さ1〜200nmの少なくとも非晶質及び結晶質のうちいずれかの炭素からなる境界層が形成されていてもよい。境界層は、偏在しており、無機繊維セラミックス多孔体が破壊される際の滑り層として作用し、亀裂を直線的に進行させないための働きを持つ。
【0020】
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体は、少なくとも(A)無機質短繊維と(B)無機物質との間、及び(B)無機物質内のいずれかに分散している気孔を有する。無機繊維質セラミックス多孔体に占める気孔の占有率(体積%)(以下、気孔率という)が、1〜70%であることが好ましく、5〜50%であることがさらに好ましい。気孔率の範囲は、無機繊維質セラミックス多孔体の用途により決定され、例えば、強度が必要ならば5〜10%、断熱性が必要ならば30〜50%であることが好ましい。
【0021】
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体は、1400℃以下の熱伝導率が0.1〜4.0W/m/Kであり、かつ曲げ強度が10〜160MPaであることが好ましい。
【0022】
〔無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法〕
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法において、原料となる(C)無機質繊維は、例えば、ジメチルジクロロシランを出発原料とし、これに金属ナトリウムで脱塩素縮合して合成されるポリジメチルシランを、450℃以上で加熱重縮合して合成されるポリカルボシランを前躯体とする。このポリカルボシランを溶融紡糸し、空気中100℃〜200℃で不融化処理し、さらに引き続いて窒素中1000〜1300℃で焼成することによって、Si、C、及びOからなる非晶質物質、又はβ−SiCの微結晶が非晶質中に分散しているSiC繊維を得ることができる。
【0023】
また、原料となる(C)無機質繊維は、例えば、(a1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質、(a2)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC1−x、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO及びMOの非晶質物質、並びに(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物の少なくとも一つからなるものを用いることができる。このような(C)無機質繊維は、例えば特開昭62−289614号公報に記載の方法に従って製造することができ、市販品、例えばチラノ繊維(登録商標,宇部興産社製)を用いることもできる。この(C)無機質繊維の相当直径は一般に5〜20μmである。
【0024】
次に、(C)無機質繊維を酸化性雰囲気下に、500〜1600℃の温度範囲で加熱する。酸化性雰囲気としては、空気、純酸素、オゾン、水蒸気、及び炭酸ガスが挙げられる。前記加熱によって、(C)無機質繊維は、無機質繊維の表面が酸化されて、(b1)実質的にSi、M、及びOからなる非晶質、(b2)実質的に結晶質のSiO及びMOからなる結晶質集合体、並びに(b3)これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体との混合物の少なくとも一つである(B)無機物質が、(C)無機質繊維の表面に形成される。この表面層の厚さは一般に10〜600nmである。このように形成された内面層(A’)及び表面層(B’)の無機物質からなる(C)無機質繊維は、無機繊維質セラミックス多孔体を形成する(A)無機質短繊維及び(B)無機物質と構成元素(物質)及びその割合が同じである。
【0025】
次に、予備成形体(I)を作製する。まず、前述のように製造された内面層が(A’)及び表面層が(B’)無機物質からなる無機質繊維をチョップ状に切断し無機質短繊維とする。無機質短繊維の繊維長は、1〜70mmであることが好ましく、30〜50mmであることがさらに好ましい。この無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置して予備成形体とする。三次元領域において不規則に配置するとは、無機質短繊維の向きを一定方向に配向させず、立体的に不規則に配置することを意味する。予備成形体は、無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置しフェルト状に加工したものであることが好ましい。
【0026】
次に、予備成形体(I)を不活性ガス雰囲気下において加圧焼結することによって、本発明に係る無機繊維セラミックス多孔体が得られる。不活性ガスとしては、アルゴン及び窒素が挙げられる。焼結温度は、1400〜1900℃、好ましくは1500〜1800℃の範囲の温度である。焼結温度が1400℃より低いと、無機質短繊維同士の結合が不十分であり、優れた力学的特性を発現することができない。一方、焼結温度が1900℃を超えると、無機質短繊維の熱分解反応が進行し、均質な多孔体を得ることが困難になる。焼結圧力は、5〜50MPa、好ましくは10〜40MPaである。焼結圧力が5MPaより低いと無機質短繊維同士の結合が不十分となり、優れた力学的特性を発現することができない。一方、焼結圧力が50MPaを超えると、気孔をほとんど有しない緻密体となるため、断熱性が低下する。
【0027】
焼結温度及び焼結圧力は、次の基準により選択することができる。無機質短繊維が三次元領域において不規則に配置している場合は、加圧軸方向に対して垂直に配向している無機質短繊維が、圧力の上昇により破断するため、焼結圧力を小さくする一方で、焼結温度を高くすることが好ましい。無機質短繊維が三次元領域において不規則に配置しているものの比較的一定方向に配向されている場合に、焼結圧力及び焼結温度の両方において高い値を選択すると、無機繊維質セラミックス中に気孔が形成されない。従って、無機質短繊維の方向が比較的一定方向に配向されている場合は、焼結温度及び焼結圧力の少なくとも一方を低い値に設定する必要がある。このように、無機質短繊維の配置、焼結温度及び焼結圧力により、気孔率を調節することができる。
【0028】
加圧焼結方法としては、成形と焼結を同時に行うホットプレス法、及び熱間等方加圧処理法(HIP法)が挙げられる。ホットプレス法で焼結を行う場合には、カーボンからなる押型に、離型剤としてカーボン製のシート又は窒化ホウ素をスプレーしたものを用い、不活性ガス雰囲気中において5MPa〜50MPaの圧力で予備成形体(I)を加圧しながら、同時に加熱し無機繊維質セラミックス多孔体とすることができる。
【0029】
HIP法で焼結を行う場合は、ガラス製、又は金属製のカプセル中に予備成形体(I)をセットし、そのカプセル内を真空封入して、不活性ガス雰囲気中において5〜50MPaの圧力で予備成形体を封入したカプセルに等方圧をかけながら、同時に加熱することによって無機繊維質セラミックス多孔体とすることができる。ガラス製のカプセルは、特に限定はないが、耐熱性に優れた溶融石英が好ましい。金属製のカプセルとしては、融点が1400℃以上の金属であり、タンタル、ニオブ等の高融点金属が好ましい。
【0030】
〔無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体〕
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体には、本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体とSi、C、及びOを含有する無機繊維結合セラミックスとを含む。無機繊維結合セラミックスは、(X)無機繊維、(Y)結晶質物質、及び(Z)境界層から構成されている。
【0031】
(X)無機繊維は、(x1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZrを示す)、並びに(x2)β−SiC、MC及びCのうち1以上からなる結晶質微粒子と、SiO及びMOの非晶質物質との集合体のうち、(x1)非晶質物質及び(x2)集合体の少なくとも一つから構成されるのが好ましい。
【0032】
(Y)結晶質物質は、前記(X)の無機繊維の間隙に存在する。好ましくは、間隙を充填するように存在する。(Y)結晶質物質は、(y1)Si及びOを含む非晶質物質と、(y2)結晶質のSiO及びMOからなる結晶質物質とのうち、(y1)非晶質物質及び(y2)結晶質物質のうち少なくとも一つから構成される。(y1)非晶質物質は、Mを含んでいてもよい。(Y)結晶質物質は、さらに(y3)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質が分散していてもよい。
【0033】
(Z)境界層は、(X)無機繊維の表面に形成されたCを主成分とする1〜100nmの境界層である。境界層(Z)中には、100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散していてもよい。
【0034】
無機繊維質セラミックス多孔体と無機繊維結合セラミックスの割合は、用途によって決定され、例えば、強度が必要ならば無機繊維結合セラミックスの割合を40〜80体積%、断熱性が必要ならば無機繊維結合セラミックスの割合を10〜50体積%とすることが好ましい。
【0035】
無機繊維結合セラミックスは、1400℃以下の熱伝導率が4.0W/m/K以下であり、且つ曲げ強度が200MPa以上であることが好ましい。
【0036】
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体は、無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体とが直接接合している。直接接合しているとは、無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体との間に、他の相が介在しないことを意味する。これにより、機械加工に耐える接着強度を有していることが重要である。ロウ材等により接合した場合は、無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体の間に熱伝導率、耐熱性、及び強度の異なる相が存在することになるため、耐熱性や強度が低下する。例えば、ロウ材として一般的な銀ロウを用いて接合されていれば、ロウ材の耐熱性が無機繊維質セラミックス多孔体より低いため、耐熱性が大きく低下する。また、ロウ材が無機繊維質セラミックス多孔体中に浸み込めば、熱伝導率が高くなり断熱性が低下することが容易に類推される。無機繊維結合セラミックスと多孔体が直接接合されていることが、本発明において重要なポイントである。
【0037】
無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の断熱特性を左右する熱伝導率については、複合則を適用することによって決定できる。熱伝導率の複合則は、図1に示す通りである。すわなち、無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の熱伝導率kcは、無機繊維質セラミックス多孔体と無機繊維結合セラミックスの体積割合によって決定される。熱伝導率の複合則は、理論値と実測値がよい一致を示すことが知られている。無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の熱伝導率を決定する上で最も重要なことは、無機繊維質セラミックス多孔体と無機繊維結合セラミックスが直接接合していることである。無機繊維質セラミックス多孔体と無機繊維結合セラミックスとの体積割合から算出される熱伝導率は、他の相を介すことなく、且つクラック等の損傷なく接合していれば、複合則に従うことが一般的である。一方、強度kcについては、一般的に界面の接着強度等の影響により理論値と実測値で差があることが知られている。無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の強度は、強度の低い無機繊維質セラミックス多孔体の方の強度をゼロとし、無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体の割合を決定することが好ましい。強度の高い無機繊維結合セラミックスを接合することによって、断熱性の低下を最小限に抑制し、強度を向上させることが可能となる。
【0038】
〔無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法〕
まず、上述した予備成形体(I)を作製する。そして、予備成形体(I)と、上述した無機繊維結合セラミックスとを接触させる。
【0039】
無機繊維結合セラミックスは、内面層と表面層とからなる無機繊維であって、内面層が、(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成され、表面層が(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質集合体の少なくとも一つから構成され、かつ、表面層の厚さT(単位μm)がT=aD(ここで、aは0.023から0.053の範囲内の数値であり、Dは無機繊維の直径(単位μm)である。)を満足する無機繊維の織物、繊維を一方向に配向したシート、繊維束、又は連続繊維を切断したチョップ状短繊維の少なくとも1種類の形状を含む積層物を所定形状に成形したカーボンダイスにセットした後、不活性ガス雰囲気中、1500〜2000℃の範囲の温度で10MPa〜100MPaの加圧下でホットプレス成形して製造することができる。無機繊維結合セラミックスとしては、例えばチラノヘックス(登録商標,宇部興産社製)を用いることもできる。
【0040】
予備成形体(I)と、無機繊維結合セラミックスとは、接触していればよいが、予備成形体(I)と、無機繊維結合セラミックスとが交互になるように配置されているのが好ましい。予備成形体(I)と、無機繊維結合セラミックスとをうまく配置できないときは、後述の加圧焼結によって分解し、且つ予備成形体(I)と、無機繊維結合セラミックスとの間に相を形成しないポリビニルアルコールやポリエチレンオキサイド等の有機バインダーを用いて接着してもよい。
【0041】
接触させた予備成形体(I)と、無機繊維結合セラミックスとは、例えば、カーボンダイスにセットした後、不活性ガス雰囲気中、1400〜1900℃の範囲の温度で、5〜50MPaの加圧下でホットプレス成形して加圧焼結することができる。これにより、予備成形体(I)は、無機繊維質セラミックス多孔体を形成する。無機繊維質セラミックス多孔体の成形に重点を置くことにより、無機繊維セラミックス多孔体中に気孔を含有することになるため、熱伝導率は向上するが、強度が低下する為、注意する必要がある。
【0042】
本発明に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有体の製造方法の特徴は、無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体との接合を無機繊維質セラミックス多孔体の成形と同時に達成できることである。接合面の強度については、接合面積の大小、及び機械加工の際の加工負荷により異なるが、5MPa以上であることが好ましい。接合面の強度が5MPaより下になると、接合面に作用する機械加工の負荷を細心の注意を払い低減する必要がある。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0044】
(実施例1)
繊維径13μmのチラノ繊維(Si;55 C;32 O;11 Ti;2(重量%),登録商標,宇部興産社製)を1000℃の空気中で40時間加熱処理して無機質繊維を得た。無機質繊維の表面には約200nmの均一な酸化層(無機物質)が形成されていた。この熱処理した無機質繊維は、内面層が(A’)(a1)Si、Ti、C及びOからなる非晶質物質から構成され、表面層が(B’)(b1)SiO及びTiOを主体とする非晶質物質から構成されていた。
【0045】
この無機質繊維を繊維長が約30〜50mmとなるようにチョップ状に裁断し無機質短繊維とした。この無機質短繊維を三次元領域において不規則(無配向)に配置しフェルト状に加工を施しフェルト状物を得た。得られたフェルト状物を50×50mm角に裁断した後、高さが約100mmとなるようにフェルト状物を積層し、離型剤を塗布した型にその積層体をセットし、10重量%のポリビニルアルコール(PVA)溶液に含侵させて、100℃の空気中で約30時間乾燥させ予備成形体(I)を製造した。
【0046】
予備成形体(I)をカーボン製のダイスに仕込み、富士電波工業株式会社製(FVHP−R−50)のホットプレス装置で、アルゴン雰囲気中に200℃/時間の速度で1400℃まで昇温して、1400℃を保持した状態で40MPaの圧力を加えた。引き続き1750℃まで200℃/時間の速度で昇温してホットプレス成形し、実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体を得た。
【0047】
(実施例2)
ホットプレス成形の圧力を20MPaに変えた以外は実施例1と同様の方法で実施例2に係る無機繊維質セラミックス多孔体を得た。
【0048】
(実施例3)
ホットプレス成形の圧力を5MPaに変えた以外は実施例1と同様の方法で実施例3に係る無機繊維質セラミックス多孔体を得た。
【0049】
(実施例4)
繊維径10μmのチラノ繊維(登録商標:宇部興産株式会社製)を950℃の空気中で15時間加熱処理し、表面層と内面層からなる無機質繊維を作製した。繊維表面にはa=0.030に相当する平均約300nmの均一な表面層が形成されていた。次に、この無機質繊維の繻子織物シートを作製し、90mm×90mmに切断した後、30枚を積層して、カーボンダイス中にセットし、アルゴン雰囲気下、温度1800℃、圧力50MPaでホットプレス成形し、無機繊維結合セラミックスを得た。得られた無機繊維結合セラミックスは、β−SiC、TiC、及びCからなる結晶質超微粒子が分散したSiO及びTiOからなる非晶質物質から構成される無機繊維と、その無機繊維同士の間隙に、粒子径が約5〜50nmの大きさのTiCからなる結晶質微粒子が分散した非晶質なSiO及びTiOから構成される無機物質と、この無機繊維の表面に形成された、粒子径が約5〜20nmの大きさのTiCからなる結晶質微粒子が分散した5〜30nmの非晶質及び結晶質な乱層構造をしたCを主成分とする境界層とから構成されていた。この無機繊維結合セラミックスから50mm×50mm×厚さ3mmの板材を薄切盤及び平面研削盤を用いて採取した。この板材の上に実施例1で製造した予備成形体(I)を配置し、実施例1と同様にカーボン製のダイスに仕込み、アルゴン雰囲気中に200℃/時間の速度で1400℃まで昇温して、1400℃を保持した状態で40MPaの圧力を加えた。引き続き1750℃まで200℃/時間の速度で昇温してホットプレス成形し、実施例4に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体を得た。
【0050】
(実施例5)
ホットプレス成形の圧力を40MPaとする代わりに、20MPaに変えた以外は実施例4と同様の方法で実施例5に係る無機繊維質セラミックス多孔体とその複合体を得た。
【0051】
(実施例6)
ホットプレス成形の圧力を40MPaとする代わりに、5MPaに変えた以外は実施例4と同様の方法で実施例6に係る無機繊維質セラミックス多孔体とその複合体を得た。
【0052】
組織構造:
図2に実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体の断面組織構造をFE−SEMで観察した結果を示す。また、図6に、実施例1に係る無機繊維質セラミックス多孔体の断面組織構造の光学顕微鏡写真を示す。図6は、図2の低倍図に相当する。実施例1で得られた無機繊維質セラミックス多孔体の組織構造は、β−SiC、TiC、及びCからなる結晶質超微粒子が分散したSiO及びTiOからなる非晶質物質から構成される無機繊維と、粒子径が約5〜50nmの大きさのTiCからなる結晶質微粒子が分散した非晶質なSiO及びTiOから構成される無機物質とが強固に結合し、その周りに不規則に気孔が点在した構造となっていた。そして、この無機繊維の表面には、5〜30nmの非晶質及び結晶質な乱層構造をしたCを主成分とする境界層が偏在した無機繊維質セラミックス多孔体であることが分かった。
【0053】
図3に実施例6に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体中の無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体の境界部の断面組織構造を光学顕微鏡で観察した結果を示す。成形圧力を5MPaと低く設定したにもかかわらず無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体との境界にクラックは観察されず、良好な接合強度を保持していた。さらに、厚さ3mmの無機繊維結合セラミックス中にもクラック等は観察されなかった。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
気孔率:
実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体について、アルキメデス法を用いて密度及び気孔率を求めた。結果を表1に示す。
【0057】
熱伝導率:
実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体から、それぞれ厚さ1.5mm、直径10mmの円盤試験片Aを採取した。ここでの厚さ方向は、加圧軸方向のことを示す。
【0058】
試験片Aを用いて、室温、600℃、1000℃、1200℃、1400℃の温度条件下で、室温のみ大気中、それ以外は真空中雰囲気においてそれぞれ熱伝導率の測定を行った。熱伝導率の測定には、レーザーフラッシュ法(アルバック理工株式会社製 TC−7000型)により熱拡散率α、投下法カロリーメータ(真空理工株式会社製)により比熱Cをそれぞれ求めて、次式により熱伝導率λを算出した。結果を表1に示す。
λ=ρCα (ρは密度を示す。)
【0059】
図4に実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体について得られた気孔率と熱伝導率との関係を各温度別に示す。実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体は、熱伝導率が0.5〜4.0W/m/Kであり、表2に示す従来の多孔体と比較しても同等以上であり、断熱性に優れた多孔体であることが分かる。また、図4に示すように、室温から1400℃の高温までの温度範囲において、気孔率が大きくなるにつれて熱伝導率は低下している。このことから、気孔部分は、熱伝導を阻害する効果を発揮しており、本発明に係る無機繊維セラミックス多孔体は、耐熱性及び断熱性が非常に優れていることが分かる。
【0060】
曲げ強度:
実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体から、それぞれ長さ40mm、幅4mm、厚さ3mmの短冊状試験片Cを採取した。ここでの厚さ方向は、加圧軸方向のことを示す。
【0061】
試験片Cを用いて、大気中で室温、1000℃、1400℃の温度条件下で4点曲げ強度試験を行った。曲げ強度の測定には、島津オートグラフ(AG−25TD)を用いてクロスヘッド速度0.5mm/min、昇温速度20℃/min、上部スパン10mm、下部スパン30mmの条件で試験を行った。結果を表1に示す。
【0062】
図5に実施例1乃至3に係る無機繊維質セラミックス多孔体における温度と室温曲げ強度に対する高温曲げ強度(曲げ強度維持率)の関係を気孔率別に示す。いずれも1400℃の高温まで約80%以上の強度を維持しており、高温領域においても強度劣化することなく、安定した状態を保つことが確認でき、表2に示す熱伝導率が5.0W/m/K以下の断熱性に優れた従来の高温用セラミックス多孔体と比較しても、実施例1乃至3に係る無機繊維セラミックス多孔体の曲げ強度は5〜10倍程度に向上しており、耐熱性及び力学的特性が非常に優れていることが分かる。
【0063】
熱伝導率:
実施例4乃至6に係る無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体から、それぞれの容積率が1:1の割合となるように、厚さ2.0mm、直径10mmの円盤試験片Bを採取した。
【0064】
試験片Bを用いて、室温、1000℃、1200℃の温度条件下で、室温のみ大気中、それ以外は真空中雰囲気において、図1に示す直列型の方向に、レーザー光の照射される側を無機繊維結合セラミックス、下側を無機繊維質セラミックス多孔体として、試験片Aと同様の方法でそれぞれ熱伝導率の測定を行った。この方法により測定した熱伝導率の実測値と図1に示した複合則の理論値を表3に示す。表3に示す理論値は無機繊維質セラミックス多孔体の熱伝導率は表1より、無機繊維結合セラミックスの熱伝導率はあらかじめ測定しておいた値、室温の場合3.45W/m/K、1000℃の場合3.87W/m/K、1200℃の場合4.14W/m/Kをそれぞれ用いて算出した。その結果、複合体の熱伝導率の実測値と理論値がおおよそ一致していることが確認された。このことから、無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体については、その用途により要求された熱伝導率を複合則から予測し、無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体の割合を決定することが可能である。
【0065】
【表3】

【0066】
曲げ強度:
実施例6に係る無機繊維質セラミックス多孔体とその複合体から、それぞれ長さ40mm、幅4mm、厚さ3mmの短冊状試験片Dを採取した。
【0067】
試験片Dを用いて大気中、室温で図1に示す並列型の方向で試験片Cと同様の方法で4点曲げ強度測定を行った。試験片Dは無機繊維結合セラミックスと無機繊維質セラミックス多孔体の容積率を変えた場合の強度の変化を確認すること及び、成形圧力を低く設定した実施例6の場合に接着強度が維持できるかを確認するために並列型の方向で強度測定を行った。結果を表4に示す。この結果より、強度が必要であれば、無機繊維結合セラミックスの割合を多くすることで複合体の強度を大きくすることが可能となることがわかる。また、接合面の強度に関しても、成形圧力を5MPaと低く設定したにも関わらず、曲げ試験中に接合面で層間剥離することなく、接着強度を維持していた。
【0068】
【表4】

【符号の説明】
【0069】
1 無機質短繊維
2 無機物質
3 気孔
4 境界層
5 無機繊維質セラミックス多孔体
6 無機繊維結合セラミックス
7 接合界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成される無機質短繊維と、
(B)(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質の少なくとも一つから構成される無機物質とからなり、
(A)無機質短繊維と(B)無機物質との間、及び(B)無機物質内の少なくとも一方に気孔が分散して形成されていることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体。
【請求項2】
(A)無機質短繊維は、
(a1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(Mは、Ti又はZr)、
(a2)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC1−x、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO及びMOの非晶質物質(xは0以上1未満の数である。)、並びに
(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物の少なくとも一つであり、
(B)無機物質は、
(b1)実質的にSi、M、及びOからなる非晶質、
(b2)結晶質のSiO及びMOからなる結晶質集合体、並びに
(b3)これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体の混合物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の無機繊維質セラミックス多孔体。
【請求項3】
(A)無機質短繊維と(B)無機物質の間に形成され、厚さ1〜200nmの非晶質及び結晶質の少なくとも一つの炭素からなる境界層をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2記載の無機繊維質セラミックス多孔体。
【請求項4】
前記気孔の占有率は、5〜50%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体。
【請求項5】
1400℃以下の熱伝導率が0.1〜4.0W/m/Kであり、曲げ強度が10〜160MPaであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体。
【請求項6】
内面層が(A’)(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成され、
表面層が(B’)(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質集合体の少なくとも一つから構成される
無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置した予備成形体(I)を形成し、
該予備成形体(I)を不活性ガス雰囲気中において1400〜1900℃の範囲の温度、5〜50MPaの範囲の圧力で加圧焼結することを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法。
【請求項7】
前記無機質短繊維は、
内面層(A’)が、
(a1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(Mは、Ti又はZr)、
(a2)実質的にβ−SiC、MC、β−SiCとMCとの固溶体、MC1−x、及びCのうち1以上からなる結晶質超微粒子が分散されたSiO及びMOの非晶質物質(xは0以上1未満の数である。)、並びに
(a3)これら(a1)非晶質物質及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の混合物の少なくとも一つであり、
表面層(B’)が、
(b1)実質的にSi、M、及びOからなる非晶質、
(b2)結晶質のSiO及びMOからなる結晶質集合体、並びに
(b3)これら(b1)非晶質及び(b2)結晶質集合体の混合物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項6記載の無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法。
【請求項8】
前記無機質短繊維の繊維長が1〜70mmであることを特徴とする請求項6又は7記載の無機繊維質セラミックス多孔体の製造方法。
【請求項9】
Si、C、及びOを含有する無機繊維結合セラミックスと、
請求項1乃至5いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体とを含む無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体であって、
前記無機繊維結合セラミックスと前記無機繊維質セラミックス多孔体とが直接接合していることを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
【請求項10】
前記無機繊維結合セラミックスは、
(X)(x1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZr)、並びに(x2)β−SiC、MC、及びCのうち1以上からなる結晶質微粒子とSiO及びMOの非晶質物質との集合体のうち、(x1)非晶質物質及び(x2)集合体の少なくとも一つから構成される無機繊維と、
(Y)少なくとも前記(X)無機繊維の間隙に存在し、(y1)Si及びOを含む非晶質物質、及び(y2)結晶質のSiO及びMOからなる結晶質物質のうち、(y1)非晶質物質及び(y2)結晶質物質の少なくとも一つから構成される無機物質と、
(Z)前記(X)無機繊維の表面に形成されたCを主成分とする1〜100nmの境界層とから構成されていることを特徴とする請求項9記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
【請求項11】
前記(Y)無機物質は、さらに前記(y1)非晶質物質にMが含まれていることを特徴とする請求項10記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
【請求項12】
前記(Y)無機物質には、さらに(y3)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質が分散されていることを特徴とする請求項10又は11記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
【請求項13】
前記(Z)境界層中には、100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散されていることを特徴とする請求項10乃至12いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体。
【請求項14】
内面層が(A’)(a1)非晶質物質、及び(a2)結晶質超微粒子が分散された非晶質物質の少なくとも一つから構成され、
表面層が(B’)(b1)Si及びOを含む非晶質、及び(b2)Si及びOを含む結晶質の少なくとも一つから構成される
無機質短繊維を三次元領域において不規則に配置した予備成形体(I)を形成し、
Si、C、及びOを含有する無機繊維結合セラミックスと前記予備成形体(I)とを接触させた状態で、不活性ガス雰囲気中、1400〜1900℃の範囲の温度、5〜50MPaの範囲の圧力で加圧焼結することを特徴とする無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
【請求項15】
前記接触は、前記予備成形体(I)と前記無機繊維結合セラミックスとを交互に配置して接触させていることを特徴とする請求項14記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
【請求項16】
前記無機繊維結合セラミックスは、
(X)(x1)実質的にSi、M、C及びOからなる非晶質物質(MはTi又はZr)、並びに(x2)β−SiC、MC、及びCのうち1以上からなる結晶質微粒子とSiO及びMOの非晶質物質との集合体のうち、(x1)非晶質物質及び(x2)集合体の少なくとも一つから構成される無機繊維と、
(Y)少なくとも前記(X)無機繊維の間隙に存在し、(y1)Si及びOを含む非晶質物質、及び(y2)結晶質のSiO及びMOからなる結晶質物質のうち、(y1)及び(y2)の少なくとも一つから構成される無機物質と、
(Z)前記(X)無機繊維の表面に形成されたCを主成分とする1〜100nmの境界層とから構成されていることを特徴とする請求項14又は15記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
【請求項17】
前記(Y)無機物質は、さらに前記(y1)非晶質物質にMが含まれていることを特徴とする請求項16記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
【請求項18】
前記(Y)無機物質には、さらに(y3)100nm以下の粒径のMCからなる結晶質微粒子無機物質が分散されていることを特徴とする請求項16又は17記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。
【請求項19】
前記(Z)境界層中には、100nm以下の粒径のMCからなる結晶質粒子が分散されていることを特徴とする請求項16乃至18いずれか記載の無機繊維質セラミックス多孔体含有複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248065(P2010−248065A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73377(P2010−73377)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】