説明

無機質汚れの除去性向上剤

【課題】 洗浄剤の水垢汚れの除去性能を向上できる無機質汚れの除去性向上剤の提供。
【解決手段】 (a)分子量90〜500の多価カルボン酸又はその塩及び(b)下記一般式(1)の化合物を(b)成分/(a)成分=0.01〜4の質量比で含有しており、25℃のpHが6〜8である無機質汚れの除去性向上剤。
−O−X (1)
〔式中、Rは2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシルから選ばれる基であり、XはCHCH(OH)CHOHである。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質汚れの除去性向上剤、それを用いた硬質表面用液体洗浄剤、前記硬質表面用液体洗浄剤を用いた無機質汚れの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多価カルボン酸(塩)を含有する、水垢汚れなどの無機質汚れに効果を有する洗浄剤の技術は、例えば特許文献1〜4などを参考にすることができる。
【特許文献1】特開2001−64686号公報
【特許文献2】特開2001−303095号公報
【特許文献3】特開平11−269491号公報
【特許文献4】特開平10−204480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
台所のシンク廻りなどに付着した水垢汚れは非常に頑固な汚れであり、一般の洗浄剤では十分に落としきれないため、研磨剤を含有する洗浄剤が用いられている。しかし、研磨剤入りの洗浄剤は、非常に高い水垢汚れ除去性能を有する一方で、ステンレス製や樹脂製のシンク表面を傷つけて、光沢を損なうという課題がある。このため、消費者の間では、研磨剤の入っていない中性の食器洗い洗浄剤を用いてシンクを洗浄することも行われているが、このような中性の食器洗い洗浄剤では、シンク廻りの水垢などの汚れを満足できる程度まで落とすことはできない。
【0004】
クエン酸などの多価カルボン酸は、水垢などの無機質汚れの除去に効果的であることが知られており、特許文献1〜4を参考にすることができるが、これら技術によっても十分満足できる洗浄力を得るまでには至っていない。また、クエン酸などの多価カルボン酸を用いた洗浄剤は、中性/アルカリ性では無機質汚れの除去効果が低下するため、特許文献1、2のようにpHを酸性にして用いることが一般的であり、中性の食器洗い洗浄剤にこれら技術を応用しても水垢などの無機質汚れを効果的に除去する効果は小さい。
【0005】
特許文献4には、中性において優れた洗浄力を有する技術が開示されており、多価カルボン酸と溶剤を併用することが記載されている。しかし、この技術においても、頑固な汚れである水垢などの無機質汚れに対しては、まだ満足できる洗浄レベルには至っていない。
【0006】
本発明の課題は、研磨剤を必要とせず、かつ中性領域であっても、無機質汚れに対して高い洗浄力を付与することができる無機質汚れの除去性向上剤を提供することである。
【0007】
更に本発明の他の課題は、前記した無機質汚れの除去性向上剤を含有する、無機質汚れの除去性が向上された硬質表面用液体洗浄剤、それを用いた無機質汚れの除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)分子量90〜500の多価カルボン酸又はその塩及び(b)下記一般式(1)の化合物を(b)成分/(a)成分=0.01〜4の質量比で含有しており、25℃のpHが6〜8である無機質汚れの除去性向上剤を提供する。
【0009】
−O−X (1)
〔式中、Rは2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシルから選ばれる基であり、XはCHCH(OH)CHOHである〕。
【0010】
本発明は、(a)成分を2.5〜8質量%、(b)成分を0.1〜10質量%及び水を含有する請求項1記載の無機質汚れの除去性向上剤を提供する。
【0011】
本発明は、請求項1記載の無機質汚れの除去性向上剤を含有する、無機質汚れの除去性が向上された硬質表面用液体洗浄剤を提供する。
【0012】
本発明は、請求項3記載の硬質表面用液体洗浄剤を用いて、無機質汚れを洗浄する無機質汚れの除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無機質汚れの除去性向上剤は、硬質表面用液体洗浄剤の無機質汚れ除去性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<無機質汚れの除去性向上剤>
〔(a)成分〕
本発明の無機質汚れの除去性向上剤で用いる(a)成分は、分子量90〜500の多価カルボン酸又はその塩であり、具体的には下記(a1)群及び(a2)群から選ばれる1種以上の化合物が好適である。
【0015】
(a1)群
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸、アルキルグリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンコハク酸などのアミノポリ酢酸又はこれらの塩、好ましくはアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩。
【0016】
(a2)群
ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキメチル酒石酸などの有機酸又はこれらのアルカリ金属塩、もしくはアルカノールアミン塩。
【0017】
本発明においては、特に(a2)群の化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いた場合に、(b)成分と併用することで無機質汚れ除去効果を相乗的に向上させることができるため好ましく、特にクエン酸が最も高い相乗効果を得ることができるため好ましい。
【0018】
〔(b)成分〕
本発明の無機質汚れの除去性向上剤で用いる(b)成分は、上記した一般式(1)で表される化合物である。一般式(1)中のRは、洗浄力の観点から、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0019】
(b)成分である一般式(1)の化合物は、例えば、Rが2−エチルヘキシルのとき、2−エチルヘキサノールとエピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物をBFなどの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法が一般的であり、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含む混合物である。
【0020】
具体的には、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとして、エポキシ化合物の1位に2−エチルヘキサノールが付加した化合物〔3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、以下(b1)という〕やエポキシ化合物の2位に付加した化合物〔2−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,3−プロパンジオール、以下(b2)という〕を挙げることができる。また、副生成物として、(b1)又は(b2)にさらにエポキシ化合物が付加した多付加化合物(以下(b3)という)を挙げることができる。
【0021】
本発明では、(b)成分中の(b3)成分の含有量が30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。残部は、(b1)成分と(b2)成分の混合物である。
【0022】
本発明の無機質汚れの除去性向上剤は、(a)成分を好ましくは2.5〜8質量%、より好ましくは2.5〜7質量%、更に好ましくは3〜6質量%含有し、(b)成分を0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜6質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%含有する。
【0023】
本発明の無機質汚れの除去性向上剤は、(b)成分/(a)成分を0.01〜4、好ましくは0.02〜3、特に好ましくは0.07〜2.5の質量比で含有する。
【0024】
(a)及び(b)成分以外の残部は水が好適であり、使用する水は、水に存在する微量の金属成分を除去したイオン交換水や蒸留水、もしくは次亜塩素酸塩や塩素で滅菌した滅菌水などを用いることが好適であり、特に鉄イオン、ニッケルイオン、銅イオンの合計量を1ppm未満(質量基準)に低減化させた水を使用することが好ましい。
【0025】
本発明の無機質汚れの除去性向上剤は、本発明の効果を発揮するため、25℃におけるpHが6〜8であり、好ましくは6〜7である。
【0026】
pH調整剤としては、塩酸や硫酸など無機酸や、上記(a)成分などの酸剤を用いることができる。また、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0027】
本発明の無機質汚れの除去性向上剤は、それ自体を用いて無機質汚れを洗浄除去することもできるが、洗浄効果を高める観点から、本発明の無機質汚れの除去性向上剤を添加した液体洗浄剤を用いて無機質汚れを洗浄する方法、本発明の無機質汚れの除去性向上剤と市販の液体洗浄剤を併用して(例えば、スポンジ等に両剤を含浸させる)無機質汚れを洗浄する方法を適用することが好ましい。
【0028】
<硬質表面用液体洗浄剤>
本発明の硬質表面用液体洗浄剤は、上記した無機質汚れの除去性向上剤を含有するものであり、(a)成分、(b)成分と共に、他の成分を含有するものである。
【0029】
〔(c)成分〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤は、(c)成分として界面活性剤を含有することが好ましい。(c)成分の界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好適である。
【0030】
陽イオン界面活性剤〔以下(c1)成分という〕としては、炭素数8〜16の炭化水素基を1〜3個と残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、もしくはベンジル基である4級アンモニウム化合物が好適である。(c1)成分としては、下記一般式(2)〜(4)の化合物を挙げることができる。
【0031】
【化1】

【0032】
〔式中、R11及びR21は、炭素数5〜16、好ましくは炭素数6〜14のアルキル基又はアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、R13、R14は、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である;
Aは−COO−、OCO−、−CONH−、−NHCO−
【0033】
【化2】

【0034】
である;
aは0又は1の数である;
12は、炭素数1〜6のアルキレン基、又は−(O−R16−である(ここでR16はエチレン基もしくはプロピレン基、好ましくはエチレン基であり、bは1〜10、好ましくは1〜5の数である);
15は、炭素数1〜5、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基である;
31、R32、R33、R34は、これらの内2つ以上(好ましくは2つ)は炭素数8〜12のアルキル基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である;
Xは、陰イオン基、好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンである。〕
本発明の特に好ましい陽イオン界面活性剤としては、下記の一般式(5)〜(7)のものを挙げることができる。
【0035】
【化3】

【0036】
〔式中、R41は、炭素数8〜12のアルキル基を示し、R42は、分岐していてもよい炭素数6〜10のアルキル基を示し、cは1〜5の数を示す〕。
【0037】
陰イオン界面活性剤〔以下(c2)成分という〕としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩又は脂肪酸から選ばれる陰イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0038】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、洗剤用界面活性剤市場に一般に流通しているものの中で、アルキル鎖の平均炭素数が8〜16のものであればいずれも用いることができ、例えば花王(株)製のネオペレックスF25、Shell社製のDobs102等を用いることができる。また、工業的には、洗剤用原料として広く流通しているアルキルベンゼンをクロルスルホン酸、亜硫酸ガス等の酸化剤を用いてスルホン化して得ることもできる。アルキル基の平均炭素数は10〜14が好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、平均炭素数10〜18、好ましくは10〜16の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールに、EOを1分子当たり平均0.5〜5モル付加させ、これを例えば特開平9−137188号記載の方法を用いて硫酸化して得ることができる。アルキル基の平均炭素数は10〜16が好ましい。
【0040】
アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜16、好ましくは10〜14の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールをSO又はクロルスルホン酸でスルホン化し、中和して得ることができる。
【0041】
α−オレフィンスルホン酸塩は、炭素数8〜18の−アルケンをSOでスルホン化し、水和/中和を経て製造することができ、炭化水素基中にヒドロキシ基が存在する化合物と不飽和結合が存在する化合物の混合物である。
【0042】
α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩としては、アルキル基の炭素数は10〜16が好ましく、メチルエステル又はエチルエステルが洗浄効果の点から好ましい。
【0043】
本発明では、皮膚刺激性及び洗浄効果の点から、炭素数10〜14、エチレンオキシド平均付加モル数1〜3のポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が特に良好である。
【0044】
脂肪酸としては、炭素数8〜14の飽和脂肪酸、好ましくはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。また、やし油やパーム核油から誘導されるアルキル分布を有する脂肪酸も使用することができる。なお、本発明でいう脂肪酸とは、アルキル基又はアルケニル基とカルボン酸基のみから構成される化合物であり、アルキルエーテルカルボン酸やアルキルアミドカルボン酸などの化合物が含まれない。
【0045】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好適であり、洗浄効果の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0046】
非イオン界面活性剤〔以下(c3)成分という〕としては、下記一般式(8)及び/又は一般式(9)の化合物が好ましい。
【0047】
51−O−(R52O)−H (8)
〔式中、R51は、炭素数8〜18、好ましくは10〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R52は、炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。dは、平均付加モル数として3以上20未満、好ましくは4以上15以下、特に好ましくは5以上10以下の数を示す〕。
【0048】
61−(OR61 (9)
〔式中、R61は、直鎖の炭素数8〜16、好ましくは10〜16、特に好ましくは10〜14のアルキル基、R62は、炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、特にエチレン基であり、Gは還元糖に由来する残基、eは平均値0〜6の数、fは平均値1〜10、好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜2の数を示す〕。
【0049】
一般式(8)の化合物において、特に好ましい化合物としては、下記一般式(8−1)の化合物又は一般式(8−2)の化合物を挙げることができる。
【0050】
53−O(EO)−H (8−1)
〔式中、R53は、炭素数10〜18、好ましくは10〜16の一級の直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基又は二級のアルキル基である。EOはエチレンオキサイドであり、gは平均付加モル数として3以上20未満である〕。
【0051】
54−O〔(EO)/(PO)〕−H (8−2)
〔式中、R54は、炭素数10〜18、好ましくは10〜16の一級のアルキル基である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。hは、平均付加モル数3〜15、iは、平均付加モル数1〜5であり、hとiの合計は20未満である。EOとPOは、ランダム付加又はEOを付加した後、POを付加してもよく、またその逆のようなブロック付加体でもよい〕。
【0052】
一般式(8)の化合物において、Gは還元糖に由来する残基であり、原料の還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数が3〜6個のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフラクトースを挙げることができる。
【0053】
本発明ではこれらの中でも特に炭素数5又は6のアルドペントースあるいはアルドヘキソースが好ましく中でもグルコースが最も好ましい。Gの還元糖としては上記単糖類が好ましいが、これら単糖が2〜5個、好ましくは2又は3個縮合したオリゴ糖を用いても差し支えない。さらには単糖とオリゴ糖が混合したものでもよく、この場合には平均縮合度は1〜5、好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2が好適であり、1〜1.5が最も好ましい。
【0054】
一般式(9)の化合物は、R61−(OR62−OHと還元糖とを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。これらはアセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0055】
両性界面活性剤〔以下(c4)成分という〕のより具体的化合物としては、下記一般式(10)の化合物、及び下記一般式(11)の化合物が好ましい。
【0056】
【化4】

【0057】
〔式中、R71は、炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R72は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、Bは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−から選ばれる基である。jは0又は1の数であり、R73、R74は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である〕。
【0058】
【化5】

【0059】
〔式中、R81は、炭素数9〜23のアルキル基又はアルケニル基であり、R82は、炭素数1〜6のアルキレン基である。Dは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、kは0又は1の数である。R83、R84は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R85は、ヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Eは−SO、−OSO、−COOから選ばれる基である〕。
【0060】
一般式(10)において、R71は、好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくはラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)である。Bは、好ましくは−COO−又は−CONH−であり、最も好ましくは−CONH−である。
【0061】
一般式(11)において、R81は、単独のアルキル(又はアルケニル)鎖長でもよく、異なるアルキル(又はアルケニル)鎖長を有する混合アルキル基(又はアルケニル基)であってもよい。後者の場合には、ヤシ油、パーム核油から選ばれる植物油から誘導される混合アルキル(又はアルケニル)鎖長を有するものが好適である。具体的にはラウリル基(又はラウリン酸残基)/ミリスチル基(又はミリスチン酸残基)のモル比が95/5〜20/80、好ましくは90/10〜30/70であることが洗浄効果、及び泡立ち性の点から好ましい。
【0062】
一般式(11)において、R81は、好ましくは炭素数9〜15、特に9〜13のアルキル基であり、R82は、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基である。Dは−CONH−が好ましい。R83、R84は、メチル基、又はヒドロキシエチル基が好ましい。Eは−SO、又は−COOが好ましく、Eが−SOの場合には、R85は−CHCH(OH)CH−が好ましく、Eが−COOの場合には、R85はメチレン基が好ましい。
【0063】
本発明では洗浄効果の点から、(c)成分の中でも(c1)成分、(c2)成分が好ましく、特に(c2)成分が好適である。
【0064】
〔(d)成分〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤は、更に(b)成分以外の水溶性溶剤〔以下(d)成分という〕を含有することが好ましく、沸点が100℃以上、好ましくは100〜300℃の水溶性溶剤が好適である。ここででいう水溶性とは、20℃において水に任意の割合で溶解する溶剤とする。
【0065】
(d)成分の好ましい具体的例としては、(I)炭素数4〜12の多価アルコール、(II)下記の一般式(12)で表される化合物、(III)下記の一般式(13)で表される化合物が貯蔵安定性の点から好適である。
【0066】
91O(CO)(CO)92 (12)
【0067】
【化6】

【0068】
(I)の炭素数4〜12の多価アルコールとしては、イソプレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが好適である。
【0069】
(II)の化合物は、一般式(12)において、R91、R92がアルキル基である場合は炭素数は1〜4が特に好ましい。また、一般式(12)中、エチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)の平均付加モル数のm及びnは、それぞれ0〜10の数のものが用いられるが、これらの付加順序は特に限定されず、ランダム付加したものであってもよい。
【0070】
(II)の化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=2〜3)ポリオキシプロピレン(p=2〜3)グリコールジメチルエーテル(pは平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(p=1〜5)グリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等が挙げられる。このうち、洗浄力及び貯蔵安定性の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(p=1〜4)グリコールフェニルエーテルが好ましい。
【0071】
(III)の化合物としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンが好適なものとして例示される。
【0072】
(d)成分としては、本発明の課題を解決するために(I)、(II)の水溶性溶剤が好ましく、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる水溶性溶剤が好ましい。
【0073】
〔(e)成分〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤は、貯蔵安定性を向上させる目的でハイドロトロープ剤〔以下、(e)成分という〕を含有することが好ましい。ハイドロトロープ剤としては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸及びこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にエタノール、p−トルエンスルホン酸が良好である。
【0074】
〔その他の成分〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤は、その他の成分として、通常液体洗浄剤に配合されている成分を含有することができる。例えば、香料成分、除菌成分、防腐剤、濁り剤、着色剤を挙げることができる。
【0075】
〔各成分の含有量〕
本発明の硬質表面用液体洗浄剤中における各成分の含有量は、以下のとおりである。
【0076】
(a)成分の含有量は、2.5〜8質量%が好ましく、2.5〜7質量%がより好ましく、3〜6質量%が更に好ましい。
【0077】
(b)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜6質量%がより好ましく、0.5〜5質量%が更に好ましい。
【0078】
(a)成分と(b)成分の質量比〔(a)/(b)〕は、(b)成分/(a)成分を0.01〜4、好ましくは0.02〜3、特に好ましくは0.07〜2.5である。
【0079】
(c)成分の含有量は、5.1〜65質量%が好ましく、11〜55質量%がより好ましく、12〜50質量%が更に好ましい。また、(c)成分として、(c1)成分、(c2)成分、を含むときは、洗浄剤中の各成分の含有量は、(c1)成分が0.1〜15質量%、(c2)成分を5〜50質量%であることが好ましい。
【0080】
(d)成分の含有量は、0〜10質量%が好ましく、より好ましくは0〜9質量%、更に好ましくは0〜8質量%である。
【0081】
(e)成分の含有量は、1〜13質量%が好ましく、より好ましくは2〜12質量%、更に好ましくは3〜11質量%である。
【0082】
(a)〜(e)成分等を除く残部は水が好適であり、使用する水は無機質汚れの除去性向上剤で用いたものと同じものが好ましい。
【0083】
本発明の硬質表面用液体洗浄剤の25℃におけるpHは、無機質汚れの除去性向上剤と同じ範囲に調整することが好ましい。
【0084】
<無機質汚れの除去方法>
本発明の無機質汚れの除去方法においては、硬質表面用液体洗浄剤を水垢汚れ(無機質汚れ)が付着した対象表面に接触させる方法を適用できる。
【0085】
接触方法としては、柔軟な液体吸収性材料、具体的にはスポンジや不織布などに前記洗浄剤を含浸させて擦る方法、トリガー式スプレーヤーにより、前記洗浄剤を被処理表面にスプレーする方法を挙げることができる。
【0086】
本発明の除去方法では、硬質表面用液体洗浄剤が被処理表面に接触したと同時又は接触させた後に対象表面を擦る方法が好適である。なお、本発明の除去方法では、除去作業時において、本発明の無機質汚れの除去性向上剤と市販の硬質表面用液体洗浄剤(本発明の無機質汚れの除去性向上剤を含んでいない)を併用した場合でも、本発明の硬質表面用液体洗浄剤を用いた場合と同等の効果を得ることができる。
【0087】
一般の無機質汚れ洗浄剤では、20℃におけるpHを6〜8に調整した場合には、通常は(a)成分の効果が損なわれるのに対して、本発明の無機質汚れの除去性向上剤及び硬質表面用液体洗浄剤では、このようなpH領域においても(a)成分の無機質汚れの除去効果を相乗的に高めることができるため、無機質汚れの除去方法に最適である。
【実施例】
【0088】
表1に示す成分を用いて硬質表面用液体洗浄剤を調製した。その際、pHは48%水酸化ナトリウムを用いて調整した(表1中は「+」表示)。調整後、これら洗浄剤の洗浄力及び水垢除去性能を下記の方法で評価した。結果を表1に併記する。
【0089】
<pHの測定方法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入した。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。
【0090】
次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mlビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行った。
【0091】
試料を100mlビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調整した。恒温に調整された試料にpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
【0092】
<水垢除去性能評価>
研磨仕上げしたSUS304のテストピースの重量を測定した後(初期ピース重量)、自動食器洗浄機(松下電器産業(株)製;NP-720)内のかごにあらかじめ取り付けてあったクリップに挟み固定した。洗剤投入口に牛乳23ml、水酸化カルシウム15g、炭酸カルシウム15gを投入し、通常モードで洗浄機を作動させた。この操作を2回繰り返した後、さらに牛乳23ml、オルトケイ酸ナトリウム15g、塩化カルシウム15gで洗浄機を通常モードで作動させた。操作終了後、自動食器洗浄機からテストピースを取り出し、テストピースの温度が室温に戻ってから、質量を測定し(評価前ピース質量)ピースに固着した汚れ量を算出した。
【0093】
次に、イオン交換水で10%の水溶液に希釈した表1の組成物中(120ml)に、モデル汚れ固着ピースを5分間浸漬し、30秒間流水で洗浄後、自然乾燥した。乾燥後に質量を測定することで(評価後ピース質量)、ピースに残留している汚れ量を求めた。
【0094】
水垢除去性能を示す基準として水垢除去率を以下に定義し、各組成物の水垢除去率を算出した。
【0095】
【数1】

【0096】
【表1】

【0097】
実施例1の硬質表面用液体洗浄剤は、(a)及び(b)成分を含有する無機質汚れの除去性向上剤を含有しているため、比較例と比べると、高い水垢除去率を示した。なお、(a)成分として、EDTAを用いても同程度の水垢除去率を示し、(b)成分として、GE−2EHの代わりに、一般式(1)中のRがイソノニル又はイソデシルであるものを用いても同程度の水垢除去率を示した。
【0098】
表1に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
(b)成分
・GE−2EH:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル(モノグリセリルエーテル98質量%)
(c)成分
・ES:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム[原料アルコールは、1−デセン及び1−ドデセン50/50(重量比)を原料にヒドロホルミル化して得られたアルコールである。このアルコールにEOを平均2モル付加させた後、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した。全ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム中の全ポリオキシエチレン分岐鎖アルキルエーテル硫酸の割合は42重量%であった。
・AO:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド
・スルホベタイン:ラウリルジメチルスルホベタイン
・ノニオン:アルキル基の組成がC12/C14=60/40の混合アルキルでグルコシド平均縮合度1.5のアルキルグルコシド
(e)成分
・ポリプロピレングリコール:平均分子量1000のもの
(その他の成分)
・防腐剤:プロキセルBDN(アビシア株式会社製)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子量90〜500の多価カルボン酸又はその塩及び(b)下記一般式(1)の化合物を(b)成分/(a)成分=0.01〜4の質量比で含有しており、25℃のpHが6〜8である無機質汚れの除去性向上剤。
−O−X (1)
〔式中、Rは2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシルから選ばれる基であり、XはCHCH(OH)CHOHである。〕
【請求項2】
(a)成分を2.5〜8質量%、(b)成分を0.1〜10質量%及び水を含有する請求項1記載の無機質汚れの除去性向上剤。
【請求項3】
請求項1記載の無機質汚れの除去性向上剤を含有する、無機質汚れの除去性が向上された硬質表面用液体洗浄剤。
【請求項4】
請求項3記載の硬質表面用液体洗浄剤を用いて、無機質汚れを洗浄する無機質汚れの除去方法。




【公開番号】特開2007−16130(P2007−16130A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199181(P2005−199181)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】