説明

無機質繊維マットの製造装置

【課題】集綿コンベアの清掃作業を不要として作業負担を削減すると共に集綿コンベアに付着したバインダの回収を行うことを可能とした無機質繊維マットの製造装置を提供する。
【解決手段】集綿コンベア4の無機質繊維マット8を送り出した後の領域に、集綿コンベアにジェット水を吹き付けて洗浄する洗浄装置26と集綿コンベアの付着物を擦り落とすブラシ装置27を設け、走行中の集綿コンベアを常時清掃する構成とすると共に、集綿コンベアから除去されてピット13内に落下したバインダをバインダ回収装置15で回収する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維マット、ロックウールマットなどの、無機質繊維マットの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質繊維マットの製造装置は、無機質繊維を形成して送り出す紡糸装置と、該紡糸装置からの無機質繊維をマット状に堆積させるための無端状の集綿コンベアであって、所定の経路を循環走行するように設けられた有孔構造の集綿コンベアと、前記紡糸装置から集綿コンベアに送り出される無機質繊維にバインダを水溶液の形態で付与するバインダ付与装置と、前記集綿コンベアに隣接して配置され、該集綿コンベア上に形成された無機質繊維マットを受け取り、次工程に送り出す搬送コンベアと、その搬送コンベアで送り出された無機質繊維マットのバインダを硬化、乾燥させる装置と、硬化した無機質繊維マットを切断し、梱包する装置等を備えている。
【0003】
この種の製造装置において、紡糸装置で繊維化された無機質繊維はバインダを付与された後、集綿コンベアに向かって吹き付けられ、且つ集綿コンベアに作用させた負圧による吸引によって集綿コンベア上に堆積され、濡れた状態の無機質繊維マットを形成することが多い。そして集綿コンベア上に形成された濡れた状態の無機質繊維マットは、下流に送られ、バインダの硬化、乾燥、所定サイズへの切断、梱包等が行われる。ここで、バインダを付与された無機質繊維が集綿コンベア上に集綿される際、一部のバインダや綿カスが吸引気流に乗って集綿コンベアを通りぬけて排出されてしまう。そこで、集綿コンベアを通りぬけた気流から綿カスを除去し、バインダを回収する装置が、米国特許第4230471号公報に提案されている。
【特許文献1】米国特許第4230471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の無機質繊維マットの製造装置では、集綿コンベアを通り抜けた気流から、綿カスを除去し、バインダを回収する対策は採られているが、集綿コンベアに対する対策はなんら採られていない。集綿コンベアには、バインダを付与された無機質繊維が堆積しており、また、バインダ水溶液を含む気流が集綿コンベアを通り抜けるため、バインダが集綿コンベアに付着して固化してゆき、またそれに綿カスが付着して捕捉される。このため、運転継続に伴い、集綿コンベアに付着した綿カスやバインダ等の固着物が成長してゆく。集綿コンベアに付着した固形物の量が多くなると、有孔構造の集綿コンベアが目詰まりを起こし、無機質繊維を吸引して堆積させる効率が悪くなり、また、製造される無機質繊維マットの品質を低下させる。そこで、集綿コンベアへの固形物が有る程度多くなると、これを除去する必要があり、例えば、1カ月に1回、装置の運転を停止して集綿コンベアを清掃することが必要となる。ところが、集綿コンベアに付着した固形物は、バインダが固まったものであるので、強固にこびりついており、これを除去するには手作業で擦り落とすという面倒な除去作業が必要である。このため、多大な作業負担を強いると共に除去作業に時間がかかり、装置の生産性を悪化させる等の問題となっていた。また、集綿コンベアから擦り落とした固形物は、本来有用なバインダを含むものであるにも係わらず、産業廃棄物として処理しなければならず、廃棄費用がかさむといった問題もあった。
【0005】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたもので、集綿コンベアの清掃作業を大幅に削減するか或いは不要として、作業負担を軽減すると共に装置の生産性を上げることができ、且つ集綿コンベアに付着したバインダの回収を行うことも可能とした無機質繊維マットの製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、無機質繊維を形成して送り出す紡糸装置と、該紡糸装置からの無機質繊維をマット状に堆積させるための無端状の集綿コンベアであって、所定の経路を循環走行するように設けられた有孔構造の集綿コンベアと、前記紡糸装置から集綿コンベアに送り出される無機質繊維にバインダを水溶液の形態で付与するバインダ付与装置と、前記集綿コンベアに隣接して配置され、該集綿コンベア上に形成された無機質繊維マットを受け取り、次工程に送り出す搬送コンベア等を備えた無機質繊維マットの製造装置において、集綿コンベアの定期的な清掃作業を大幅に削減するか、或いは不要とするために、前記集綿コンベアの、前記無機質繊維マットを搬送コンベアに送り出した位置から前記紡糸装置からの無機質繊維を堆積させる位置の間の領域に、走行中の前記集綿コンベアを清掃するコンベア清掃装置を設けるという構成としたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記した請求項1に係る発明において、前記コンベア清掃装置を、前記集綿コンベアに洗浄水を吹きつけて付着物を洗い流す洗浄装置を備えた構成としたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記した請求項2に係る発明において、前記洗浄装置を、洗浄水を高圧で前記集綿コンベアに向けて噴射する噴射ノズルを備えた構成としたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記した請求項1から3のいずれか1項に係る発明において、前記コンベア清掃装置を、前記集綿コンベアを擦って付着物を掻き落とすブラシ装置を備えた構成としたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記した請求項4に係る発明において、前記ブラシ装置を、前記集綿コンベアに接触して回転する回転ブラシを備えた構成としたものである。
【0011】
請求項6に係る発明は、上記した請求項1から5のいずれか1項に係る発明において、更に、前記集綿コンベアの下方に形成されているピットから、該ピット内に落下して集められた廃液を取り出し、再使用可能な回収バインダ水溶液とするバインダ回収装置を設けるという構成としたものである。
【0012】
請求項7に係る発明は、上記した請求項6に係る発明において、前記バインダ回収装置で回収した回収バインダ水溶液を前記バインダ付与装置に用いるバインダ水溶液の作成に用いる構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無機質繊維マットの製造装置は、走行中の集綿コンベアを清掃するコンベア清掃装置を設けたことにより、集綿コンベアへのバインダや綿カスの固着、成長を抑制でき、このため、従来行っていた、装置を停止しての面倒な清掃作業が不要となるか、あるいは清掃の周期を大幅に延長でき、作業負担を大幅に低減できると共に装置の生産性を大幅に向上でき、しかも廃棄物処理費用を削減できる。また、集綿コンベアに形成している多数の孔に目詰まりを生じることがなく、このため、集綿吸引の効率が良くなり、吸引に用いる吸引ファンの動力負荷も少なくなる。
【0014】
ここで、前記したコンベア清掃装置として、集綿コンベアに洗浄水を吹きつけて付着物を洗い流す洗浄装置を用いることで、集綿コンベアから水溶性のバインダを良好に洗い流すことができ、それにつれて綿カスも洗い流すことができる。特に、洗浄装置として、洗浄水を高圧で集綿コンベアに向けて噴射する噴射ノズルを用いることで、高速のジェット水を集綿コンベアに吹き付けるジェット水洗浄を行うことができ、集綿コンベアに強固に付着したバインダや綿カスをも良好に除去できる。
【0015】
また、コンベア清掃装置として、集綿コンベアを擦って付着物を掻き落とすブラシ装置を用いることでも、集綿コンベアからバインダや綿カスを除去できる。特に、このブラシ装置を、上記した洗浄水による洗浄装置と併用することで、きわめて良好に集綿コンベアからバインダや綿カスを除去できる。ここで、ブラシ装置としては、集綿コンベアに接触して回転する回転ブラシを用いることが、一層良好な掻き落とし効果が得られるので、好ましい。
【0016】
更に、集綿コンベアの下方に形成されているピットから、該ピット内に落下して集められた廃液を取り出し、固形分を分離、除去して、再利用可能な回収バインダ水溶液とするバインダ回収装置を設けておくことで、集綿コンベアから除去されたバインダを有効に回収し、再使用することができる。また、バインダ回収装置で作成した回収バインダ水溶液を、バインダ付与装置に用いるバインダ水溶液の作成に用いる構成とすると、回収バインダ水溶液に含まれるバインダのみならず、水をも再利用できる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の好適な実施の形態に係る無機質繊維マットの製造装置の概略構成図である。全体を参照符号1で示す無機質繊維マットの製造装置は、無機質繊維3を形成して送り出す紡糸装置2と、その紡糸装置2からの無機質繊維3をマット状に堆積させるための無端状の集綿コンベアであって、所定の経路を循環走行するように設けられた有孔構造の集綿コンベア4と、紡糸装置2から集綿コンベア4に送り出される無機質繊維にバインダを水溶液の形態で付与するバインダ付与装置6と、集綿コンベア4に隣接して配置され、その集綿コンベア4上に形成された無機質繊維マット8を受け取り、次工程に送り出す搬送コンベア9と、搬送コンベア9の下流に設けられ、無機質繊維マット8のバインダを硬化、乾燥させる硬化装置(図示せず)と、成形された無機質繊維マットを所定サイズに裁断する切断装置(図示せず)と、集綿コンベア4の、無機質繊維マット8を搬送コンベア9に送り出した位置から紡糸装置2からの無機質繊維3を堆積させる位置の間の領域に設けられ、走行中の集綿コンベア4を清掃するコンベア清掃装置11と、集綿コンベア4の下方に形成されているピット13に集められた廃液からバインダを回収するバインダ回収装置15等を備えている。以下、各部を説明する。
【0018】
紡糸装置2は、溶融ガラス、溶融スラグ等の溶融した原料を繊維化し、集綿コンベア4上に送り出すものである。紡糸装置2における繊維化の方法は、吹き飛ばし法、火焔法、遠心法などの公知の方法を用いることができ、紡糸装置2の構造はいずれかの方法を実施できるものとすればよい。
【0019】
バインダ付与装置6は、無機質繊維マット8内における繊維同士を結合させるためのバインダを付与するものであり、所望濃度のバインダ水溶液を作成するためのバインダ水溶液調整タンク17と、バインダ水溶液供給管18と、バインダ水溶液を紡糸装置2と集綿コンベア4の間で無機質繊維3に噴霧して付着させるスプレー19等を備えており、バインダ水溶液調整タンク17にはバインダ原液を供給する原液供給管21と、バインダ回収装置15で回収した回収バインダ水溶液を供給する回収バインダ水溶液供給管22が接続されている。なお、紡糸装置2と集綿コンベア4の間で無機質繊維3にバインダを噴霧する代わりに、集綿コンベア4にマット状に堆積された無機質繊維に対してバインダ水溶液を噴霧するとか、塗布するなどして付与する構成としてもよい。
【0020】
バインダ付与装置6で無機質繊維3に付与するバインダは、硬化前においては使用対象の無機質繊維3への濡れ性と付着性に優れ、硬化後は無機質繊維3との接着性に優れ、その硬化物が耐水性、耐湿性、不燃性等を有するものであれば特に限定されず、好適な例としてはこれらの特性を備えた熱硬化性樹脂を挙げることができる。バインダに用いる熱硬化性樹脂としては、コスト、耐熱性、水溶性、扱い易い等の理由で、フェノール樹脂を用いることが好ましく、加熱硬化するレゾール型が特に好ましい。レゾール型に尿素を添加して変成されたものを使用することもできる。バインダとして、フェノール樹脂の他に、硬化促進剤、シランカップリング剤、防塵剤、着色剤、撥水剤などを含む混合物を使用することもできる。レゾール型は加熱硬化のほか、酸性化によっても硬化が進むので、硬化温度範囲で酸を生成する潜在性触媒を硬化促進剤として使用できる。潜在性触媒としては、強酸のアンモニウム塩を使用できる。例えば、硫酸アンモニウムを使用した場合、熱分解してアンモニアと硫酸が生成するので、アンモニアは揮発し、残渣の硫酸によってレゾールが酸性化して硬化が促進される。バインダは前記したように水溶液の形態で付与される。ここで用いるバインダ水溶液の濃度としては、0.2〜2.0重量%程度のものが用いられる。
【0021】
集綿コンベア4は、通気性を有し、無機質繊維の載架荷重に耐える強度を持ち、バインダ水溶液に腐食しない耐蝕性を持つ有孔構造のものであれば構造と材料には限定されない。ステンレス製の金網、ウェッジワイヤー、スクリーン、パンチングプレート(パンプレート)などが使用できるが、剛性の高いパンンプレートが特に好ましい。
【0022】
集綿コンベア4の下方には、集綿コンベア4を通りぬけて落下するバインダ水溶液や綿カス等を集めるためのピット13が形成されており、その一端には廃液を一次的に溜めておくための廃液溜24が形成されている。更に、ピット13上の空間は、吸引ファン(図示せず)によって吸引されるようになっており、この吸引によって、紡糸装置2からの無機質繊維3が集綿コンベア4の上に吸引されて堆積し、バインダで濡れた状態の無機質繊維マットを形成することができる。なお、ピットからの吸引経路の途中には、吸引気流中の異物を除去し且つバインダを回収するための装置(図示せず)も設けられている。
【0023】
コンベア清掃装置11は、走行中の集積コンベア4を、無機質繊維マット8を搬送コンベア9に送り出した位置から、紡糸装置2からの無機質繊維3を堆積させる位置の間の領域において、清掃し、付着していたバインダや綿カスを除去して下方のピット13に排出するものである。コンベア清掃装置11としては、この機能を果たすものであれば構造には限定されないが、この実施の形態では、集綿コンベア4に洗浄水を吹きつけて付着物を洗い流す洗浄装置26と、集綿コンベア4を擦って付着物を掻き落とすブラシ装置27を備えた構成としている。
【0024】
ここで用いる洗浄装置26は、集綿コンベア4に固着しているバインダや綿カスを水流によって洗い流すものであり、その作用を果たすことができれば、構造に限定されるものではないが、洗浄水を高圧で噴射して形成したジェット水を利用したものとすることが除去効率が良いので好ましい。図面の実施の形態では、ジェット水洗浄を行うことができるよう、洗浄水を高圧で集綿コンベア4に向けて噴射する噴射ノズル26aを備えたものを用いている。ここで、噴射ノズル26aに加える水圧としては、3〜15MPa程度とする。水圧と洗浄水量は大きい方が、除去効率は高いが、大きくすると設備費やランニングコストが高くなるので、これらを考慮して適切に定めればよい。噴射ノズル26aで形成するジェット水の噴射方向は、集綿コンベア4の進行方向に対向する方向で且つ集綿コンベア4に対して鋭角となるように設定することが除去効率が高いので好ましい。更に、噴射ノズルは、集綿コンベア4の表面側及び裏面側の両方に配置しておくことが、集綿コンベア4の両面を良好に清掃できるので好ましい。集綿コンベア4に固着していたバインダは、主として噴射されたジェット水に溶け込むことで除去されるので、ジェット水の温度は高いほうが、バインダの溶解性が高くなって好都合であるが、あまり高くなると、バインダが硬化して除去しにくくなる。このため、バインダの硬化をあまり促進しない温度とすることが好ましい。これらを考慮するとジェット水の温度としては、40〜70℃程度とすることが好ましい。噴射ノズル26aの使用個数や設置位置は特に限定されないが、集綿コンベア4の表面と裏面にそれぞれジェット水を噴射できるよう、2箇所に設けることが好ましい。
【0025】
ジェット水洗浄によって、集綿コンベア4から大抵のバインダや綿カスは除去できるが、粘稠性が高く集綿コンベア4に強く固着しているバインダはジェット水洗浄のみでは除去できない場合がある。そこで、ブラシ装置27を設けて集綿コンベア4から固着したバインダや綿カスを物理的に掻き落とす構成としている。ブラシ装置27は、集綿コンベア4を傷つけずに、固着したバインダや綿カスを除去しうるものであれば、その構造に限定はされないが、回転ブラシを用いることが、除去効率が高いので好ましく、図示の実施の形態では回転ブラシ27aを2箇所に配置している。回転ブラシ27aとしては、ロール表面に、ブラシ線材をスパイラル状に巻き付けて形成したスパイラル状ロールブラシを用いることが、製造が容易で低コストで得られると共に、集綿コンベア4の表面とむらなく接触できるので好ましい。ブラシ線材の材質は、集綿コンベア4を傷つけずに適度な腰の強さを持つナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ブチレン、アクリル系などのプラスチック製が望ましい。ブラシ線材の長さは、集綿コンベア4の孔を貫通して裏面に出る長さとすると、孔内面に固着している固着物を掻き取れて好都合であるが、裏面に出る長さが長過ぎるとブラシ線材先端が折れるので、10mm以下が好適である。回転ブラシ27aの回転方向は、集綿コンベア4の進行方向に対して順転でも逆順転でもかまわないが、回転ブラシ27aと集綿コンベア4の接触面で発生する剪断摩擦は逆順転が大きいので、逆順転が好適である。回転ブラシ27aで掻き取られたバインダは、ピット13内に落下して廃液溜24に流れ落ち、廃液溜24内で廃液中に溶け込む。なお、回転ブラシ27aに付着した固形物を除去するため、回転ブラシ27aに洗浄水を噴射する構成としてもよい。
【0026】
バインダ回収装置15は、廃液溜24に溜まっている廃液を取り出すポンプ31及び配管32と、廃液中の綿カスなどの比較的大きい(例えば、1mm以上の)固形物を分離、除去する固液分離装置33と、固液分離装置33で固形分を除去した後の分離液を送り出す配管34及びその分離液を蓄える分離液タンク35と、分離液タンク35から分離液を取り出すポンプ37及び配管38と、分離液中に残る顔料などの小さい固形物をろ過して除去し、清浄なバインダ水溶液(回収バインダ水溶液という)とするろ過装置39と、ろ過装置39からの回収バインダ水溶液を送り出す配管41と、その回収バインダ水溶液を貯留する回収バインダ水溶液タンク42と、その回収バインダ水溶液タンク42から回収バインダ水溶液を、バインダ水溶液調整タンク17に送り出すポンプ43及び回収バインダ水溶液供給管22等を備えている。ここで、固液分離装置33には、スクリーン式、加圧脱水機(フィルタプレス)、遠心脱水機、ベルトプレス、スクリュープレス式、真空分離機、回転ドラム式などを使用することができるが、大きな動力を必要としないスクリーン式が好ましい。スクリーン式には、傾斜式、回転式、バースクリーン、円筒スクリーンなどがあるが、自重で自然分離し、循環の流れを阻害しないバースクリーンが好適である。ろ過装置39には、回転ドラム型、浮上ろ過材型、繊維ろ過材型など使用できるが、ろ過速度と単位ろ材体積当たりの固形物捕捉量が大きく、ろ過による全損失水頭が小さい繊維ろ過材型が好ましい。ポンプ31、37、43には、渦巻きポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプなどの送水ポンプが使用される。
【0027】
搬送コンベア9の下流に設けられる硬化装置(図示せず)や切断装置(図示せず)は、従来の公知のものをそのまま用いればよいので、説明は省略する。
【0028】
次に、上記構成の無機質繊維マットの製造装置の動作を説明する。紡糸装置2で繊維化されて送り出された無機質繊維3にバインダ付与装置6からバインダ水溶液が吹き付けられ、バインダが付与される。バインダが付着した無機質繊維3は連続して走行中の集綿コンベア4の上に吸引されて、マット状に堆積してゆき、バインダで濡れた状態の無機質繊維マット8を形成する。その後、無機質繊維マット8は搬送コンベア9で下流に送り出され、バインダを硬化、乾燥して、無機質繊維マットに成形され、その後、所定サイズに裁断され、排出される。
【0029】
以上の無機質繊維マットの製造工程において、バインダ付与装置6から無機質繊維3に吹きつけられたバインダ水溶液のうち、バインダの大部分は無機質繊維に付着して運び去られるが、一部のバインダは水と共に無機質繊維マット8及び集綿コンベア4を通り抜けてピット13に落下する。この際、バインダの一部が集綿コンベア4に付着する。また、綿カスも集綿コンベア4に付着する。しかしながら、集綿コンベア4には回転ブラシ27aが回転しながら接触しているので、この回転ブラシ27aが集綿コンベア4に付着したバインダや綿カスを掻き落とす。また、集綿コンベア4には噴射ノズル26aがジェット水を噴射しているので、そのジェット水が、集綿コンベア4に付着したバインダや綿カスを洗い流す。かくして、集綿コンベア4が、その上に形成した無機質繊維マット8を送り出した後、新たな無機質繊維を堆積する位置に戻るまでの間に、付着していたバインダや綿カスが除去され、このため、バインダや綿カスが固着して成長するということがない。従って、集綿コンベア4を長期間に渡って支障なく連続運転することが可能となり、従来のように短期間で機械を停止し、集綿コンベア4に固着した固着物を手作業で除去するという作業が不要となる。更に、集綿コンベア4に固着物が付着して成長しないので、集綿コンベア4に形成している多数の孔に目詰まりを生じることがなく、このため、集綿吸引の効率が良くなり、吸引ファンの動力負荷も少なくなる。
【0030】
一方、集綿コンベア4の下方に設けているピット13内には、バインダ付与装置6から噴射されたバインダ水溶液の一部が集綿コンベア4を通り抜けて落下する。また、集綿コンベア4に吹き付けられ、バインダを溶解したジェット水や回転ブラシ27aで掻き落としたバインダや綿カス等もピット13内に落下する。これらのバインダや綿カスを含んだ廃液は、廃液溜24に集められ、そこに適当な時間滞留する。この間に、集綿コンベア4から掻き落とされた固形状のバインダも廃液に溶解する。廃液溜24内の廃液はポンプ31によって固液分離装置33に送られ、廃液中の綿カスなどの比較的大きい(例えば、1mm以上の)固形物が分離、除去される。固液分離装置33で固形分を除去した後の分離液は、一旦分離液タンク35に蓄えられ、その後、ポンプ37によってろ過装置39に送られ、含有していた顔料などの小さい固形物が除去される。固形物を除去して清浄となった廃液は、バインダ付与装置6によって無機質繊維3に吹き付けられるバインダ水溶液に比べると、バインダ濃度はかなり低いが、バインダを含んだ水溶液であるので、回収バインダ水溶液として、回収バインダ水溶液タンク42に蓄えられる。蓄えられた回収バインダ水溶液は、その後、ポンプ43でバインダ水溶液調整タンク17に送り出され、バインダ原液の希釈水として利用される。かくして、無機質繊維に吹き付けられたバインダ水溶液のうち、無機質繊維に付着しないでピット13内に落下したバインダや、集綿コンベア4に一旦付着した後、ジェット水或いは回転ブラシ27aによって除去され、ピット13内に落下したバインダは、その大部分が回収バインダ水溶液内に回収され、再利用される。このため、従来は、集綿コンベア4を手作業で清掃し、産業廃棄物として捨てていた固形物内に含まれていたバインダ分の大部分を回収でき、これに伴い、産廃処理費用を削減できると共に、バインダ原液の使用量を削減でき、バインダ原単位を良くすることができる。
【実施例】
【0031】
図1に示す構成の無機質繊維マットの製造装置によってグラスウールマットの製造を行った。製造装置の仕様は次の通りである。
・紡糸装置2:遠心方式
・バインダ付与装置6:ノズル吹き付け方式
・集綿コンベア4:孔形状が長孔状であるステンレス製パンプレート(SUS304、厚み3mm、幅1600mm、孔面積率40%)を駆動チェーンに連結してキャタピラ状に形成。
・洗浄装置26:噴射ノズル26aからジェット水を噴射する方式
使用噴射ノズル26a:
株式会社いけうち製、「1/4VV8010S303」(噴角80度)
パンプレート幅方向に7個設置(ノズル間距離 250mm)
噴射ノズル26aとパンプレートの距離 150mm
使用ポンプ:有光工業株式会社製プランジャーポンプ 「RV−709V」
ポンプ運転条件:吐出量16.4リットル/分、圧力8.8MPa
ジェット水温度:50℃
・ブラシ装置27:回転ブラシ方式
使用回転ブラシ27a:
直径120mmの鋼製中空パイプにポリプロピレン製ブラシ線材(線径1mm、長さ65mm)を保持したスパイラル状ロールブラシを使用した。先端がパンプレートの孔から裏面側に5mm程度出るように設置した。回転ブラシ27aの回転数は100rpmで使用。
・回収装置15:
固液分離装置33:傾斜式微細目スクリーン
東洋スクリーン工業株式会社製ウルトラスクリーンS1800型(スリット幅0.4mm)
ろ過装置39:東洋紡績株式会社製ポリエステル繊維不織布タイプのカートリッジフィルター(目付260g/m2 、厚み0.70mm)を使用。
ポンプ31、37、43:川本製作所製うず巻ポンプ 「QUFS−255−2MW1.5」
ポンプ吐出量:60リットル/分
【0032】
上記仕様の製造装置を用い、次の条件でグラスウールマットを製造した。
40%レゾール樹脂のバインダ原液に、回収バインダ水溶液を希釈水として加えて0.4%バインダ水溶液を作成し、これをバインダ付与装置6によって、紡糸装置2から紡出した溶融した綿飴状のガラス繊維に吹き付け、該バインダ水溶液が付着したガラス繊維を走行中の集綿コンベア4の上面に吸引、集綿して濡れた状態のガラス繊維マットを形成し、そのガラス繊維マットを搬送コンベア9で下流に送り、バインダの硬化、乾燥を行い、次いでガラス繊維マットを所定サイズに切断して、グラスウールマットを製造した。
【0033】
一方、集綿コンベア4においては、集綿コンベア4上面への集綿動作に並行して、集綿コンベア4の表面と裏面のそれぞれ1箇所にジェット水を吹き付けて洗浄し、且つ表面の2箇所に回転ブラシ27aを接触させ、付着物の除去を行った。集綿コンベア4を通り抜けたバインダ水溶液、集綿コンベアを洗浄した後のジェット水、回転ブラシ27aで掻き落とした固形物等はピット13に集め、廃液溜24に溜めた。廃液溜24に溜めた廃液は、固液分離装置33に通して大きい固形分を除去し、次いでろ過装置39に通して小さい固形分も除去し、回収バインダ水溶液として回収バインダ水溶液タンク42に溜め、その後、バインダ水溶液調整タンク17に送ってバインダ原液の希釈水として再使用した。回収バインダ水溶液タンク42内の回収バインダ水溶液のバインダ濃度を測定したところ、約0.12%であった。
【0034】
以上の製造を6ヶ月間継続した後、機械を停止して集綿コンベア4を検査したところ、集綿コンベア4には綿カス、樹脂カス(すなわち、バインダの固着したもの)はほとんど見られなかった。従って、更に長期の運転が支障なく可能な状態であった。
【0035】
比較例として、ジェット水洗浄を行わず、且つ回転ブラシによる掻き落としも行わない状態で、前記したのと同条件でガラス繊維マットの製造を行ったところ、約1カ月で集綿コンベア4に付着した固形物量が多くなり、吸引不良の恐れが生じた。そこで、機械を停止し集綿コンベア4に付着していた固形物を除去する清掃作業を行ったところ、2人の作業員で約2時間必要であった。また、この清掃作業によって、除去した固形物は約600kgもあり、これは産業廃棄物として処理した。固形物中の約80%はバインダ分であるため、かなりのバインダが廃棄されたこととなる。
【0036】
以上の実施例及び比較例から明らかなように、実施例では、走行中の集綿コンベア4を常に清掃する構成としたことにより、長期間に渡って固形物の付着を抑制でき、長期間の連続運転が可能となって、生産性を向上させることができた。また、集綿コンベア4を停止して行う手作業による清掃作業が不要となるため、作業負担を大幅に軽減できた。固液分離装置33及びろ過装置39で除去した固形物は産業廃棄物として処理する必要があり、この固定物の量は、比較例に比べて実施例の方が多くなるが、その増加した量は、比較例において集綿コンベア4から除去した固形物量に比べるとはるかに少なくなっており、従って、廃棄物の量を大幅に少なくでき、産廃処理費用を削減できた。更に、実施例では、集綿コンベアに付着したバインダを回収しているため、バインダ使用量を削減でき、比較例に比べてバインダ消費量を約10%削減できた。
【0037】
以上に本発明の好適な実施の形態及び実施例を説明したが、本発明はこれらの実施の形態や実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で適宜変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る無機質繊維マットの製造装置を示す概略構成図
【符号の説明】
【0039】
1 無機質繊維マットの製造装置
2 紡糸装置
3 無機質繊維
4 集綿コンベア
6 バインダ付与装置
8 無機質繊維マット
9 搬送コンベア
11 コンベア清掃装置
13 ピット
15 バインダ回収装置
17 バインダ水溶液調整タンク
18 バインダ水溶液供給管
19 スプレー
21 原液供給管
22 回収バインダ水溶液供給管
24 廃液溜
26 洗浄装置
26a 噴射ノズル
27 ブラシ装置
27a 回転ブラシ
31、37、43 ポンプ
32、34、38、41 配管
33 固液分離装置
35 分離液タンク
39 ろ過装置
42 回収バインダ水溶液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質繊維を形成して送り出す紡糸装置と、該紡糸装置からの無機質繊維をマット状に堆積させるための無端状の集綿コンベアであって、所定の経路を循環走行するように設けられた有孔構造の集綿コンベアと、前記紡糸装置から集綿コンベアに送り出される無機質繊維にバインダを水溶液の形態で付与するバインダ付与装置と、前記集綿コンベアに隣接して配置され、該集綿コンベア上に形成された無機質繊維マットを受け取り、次工程に送り出す搬送コンベアと、前記集綿コンベアの、前記無機質繊維マットを搬送コンベアに送り出した位置から前記紡糸装置からの無機質繊維を堆積させる位置の間の領域において、走行中の前記集綿コンベアを清掃するコンベア清掃装置を有する無機質繊維マットの製造装置。
【請求項2】
前記コンベア清掃装置が、前記集綿コンベアに洗浄水を吹きつけて付着物を洗い流す洗浄装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の無機質繊維マットの製造装置。
【請求項3】
前記洗浄装置が、洗浄水を高圧で前記集綿コンベアに向けて噴射する噴射ノズルを備えていることを特徴とする請求項2記載の無機質繊維マットの製造装置。
【請求項4】
前記コンベア清掃装置が、前記集綿コンベアを擦って付着物を掻き落とすブラシ装置を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の無機質繊維マットの製造装置。
【請求項5】
前記ブラシ装置が、前記集綿コンベアに接触して回転する回転ブラシを備えていることを特徴とする請求項4記載の無機質繊維マットの製造装置。
【請求項6】
更に、前記集綿コンベアの下方に形成されているピットから、該ピット内に落下して集められた廃液を取り出し、固形分を分離、除去して、再使用可能な回収バインダ水溶液とするバインダ回収装置を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の無機質繊維マットの製造装置。
【請求項7】
前記バインダ回収装置で回収した回収バインダ水溶液を前記バインダ付与装置に用いるバインダ水溶液の作成に用いる構成としたことを特徴とする請求項6記載の無機質繊維マットの製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−224439(P2007−224439A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44627(P2006−44627)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(591258738)ニットーボー東岩株式会社 (3)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】