説明

無水の金属酸化物コロイドおよび金属酸化物ポリマー、それらの製造法および使用

非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合物中の一般式:[M(O)X(1)[式中、M=Si、Ge、Sn、Ti、ZrまたはHfであり;かつXおよびX=互いに無関係にO1/2、H、アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し、1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリールであり、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を有してよく;かつnは10〜1,000,000の典型値をとる]の無水の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水の金属酸化物ゾル、もしくは金属酸化物コロイドおよび金属酸化物ポリマーならびにそれらの製造法およびそれらの使用に関する。
【0002】
ゾルはコロイド溶液であり、その中で固体または液体の物質が極めて微細に分布して、例えば液体媒体中に分散している。液体媒体の種類に応じて、オルガノゾル(これは有機溶媒中の懸濁液である)またはハイドロゾル(これは水性懸濁液、例えばシリカゾルである)とに区別される。凝析(凝集)によりゾルはいわゆるゲルに変わるが、このことは通常、流動性の減少、つまり凝固もしくはコアセルベーションによって表面的に明らかになる。
【0003】
例えばSiOのような不溶性金属酸化物は、アルカリ金属酸化物またはアルカリ金属水酸化物の添加により水中で溶解しえ、その際、いわゆる水ガラスが発生する。この粘性溶液は、様々の方法でゾル、ゲルまたは真の懸濁液(例えばケイ酸の製造)に変化させることができる。そこからいわゆるシリカゲルが製造されえ、該シリカゲルはガスおよび有機液体の乾燥のために、クロマトグラフィーための固定相として、塗料のバインダーとしてまたは例えば表面処理(例えば建造物保護剤)のために使用することができる。
【0004】
シリコーン(ポリオルガノシロキサン)は、その中でケイ素原子が酸素原子を介して架橋している化合物であるが、どのSi原子もしかし1つ以上の有機基を有する。これらのオリゴマーまたはポリマーは、一般的にハロゲンシランから加水分解またはアルコール分解および引き続く重縮合、例えば
【化1】

により製造される。
【0005】
重縮合は酸性触媒の存在下で実施されかつ、形成される反応水が除去されることが望まれる。十分に高いモル質量に到達した際、ゴム状特性を有するシリコーンポリマーが発生する(H.H. Moretto, M. Schulze, G. Wagner, in: Ullmann's Encyclopeidia of Industrial Chemistry, 第A24巻、第57頁〜第93頁、1993)。
【0006】
上記の処理および合成全ての欠点は、懸濁液、オリゴマーおよびポリマーが水中でかまたはプロトン性溶媒中で製造されかつ/または水もしくは類似するプロトン活性物質(例えばアルコール)が製造の際に遊離され、このことが感水性の構造基(Strukturgruppen)の使用を難しくするかまたは不可能にするという事実である。
【0007】
不均一(つまり固体担持)触媒のための基体として、頻繁にSiO含有固体が用いられる。例えば、以下のように
【化2】

SiO/MgClからなる、チーグラーのポリオレフィン製造のために適した触媒担体が製造される。
【0008】
これはとりわけ次の欠点を有する多段階の複雑な処理である;炭化水素中でのジアルキルマグネシウム化合物の合成に際して、費用を掛けて処分されなければならないMgCl廃棄物が発生するという欠点;それ以外に、ジアルキルマグネシウム化合物は空気流入に際して自動的に発火しうるので、それには極めて注意深い取り扱いが望まれる。
【0009】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することおよび無水の金属酸化物コロイドまたは金属酸化物ポリマーおよびそれらの合成経路を示すことである。殊に、水またはアルコールのようなプロトン活性物質の使用または形成ならびに、取り扱いが困難な、殊に自己発火性物質の使用が回避されるべきである。
【0010】
前記課題は、非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合物中の一般式
【化3】

[式中、
M=Si、Ge、Sn、Ti、ZrまたはHfであり;かつXおよびX=互いに無関係にO1/2、H、アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し、1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリールであり、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を有してよく;かつnは10〜1,000,000の典型値をとる]の無水の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーにより解決される。
【0011】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーは、金属ハロゲン化物M′Hal
[式中、
M′=希土類金属、Mn、Zn、Fe、Mg、Ca、Ba、Srから選択された金属であり、Hal=基Cl、Br、Iから選択されたハロゲンであり、かつx=金属M′の価数である]を含有してよい。有利には、金属ハロゲン化物M′Halのモル濃度は、金属酸化物コロイド、もしくは金属酸化物ポリマーMOXのモル濃度の0.1〜200%、とりわけ有利には、0.001〜20%である。
【0012】
有利な一実施態様において、金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーは、M=SiまたはTiであるMOを含有する。
【0013】
有利な他の一実施態様において、金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーは1つ以上の以下の化合物を有する:CSiO1.5、HSiO1.5、HalCSiO1.5(Hal=Cl、Br、I)、(HC)SiO;CTiO1.5、HTiO1.5、HalCTiO1.5(Hal=Cl、Br、I)、(HC)TiO。
【0014】
有利には、金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーは、1つ以上の以下の極性非プロトン性溶媒を含有する:エーテル(開鎖状かまたは環状の一官能性または多官能性)、エステル(カルボン酸エステルかまたは炭酸エステル)、ケトン、アミド、ニトリル、ハロゲン不含の硫黄化合物または第3級アミン。とりわけ有利なのは以下の溶媒である:THF、2−MeTHF、ジメチルカルボナート、アセトン、プロピオノン、プロピレンカルボナートおよびジエチルエーテル。
【0015】
有利には、金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーの濃度は、0.001〜2モル/l、とりわけ有利には0.01〜1モル/lである。
【0016】
本発明による金属酸化物コロイド、もしくは金属酸化物ポリマーは、一般式
【化4】

[式中、
M=Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hf
Hal=Cl、Br、I
、X=互いに無関係にCl、Br、I、H、アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し、1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリールであり、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を有してよい]の金属ハロゲン化合物を、希土類金属酸化物、金属(II)酸化物(例えばMgO、CaO、BaO、SrO、ZnO、MnO)またはFeの群から選択されたハロゲン受容体と極性非プロトン性溶媒中で反応させる方法により製造することができる。
【0017】
Mは、この式中において常に4価である。
【0018】
有利な金属ハロゲン化合物は、テトラハロゲン化合物MHal(MおよびHal=意味は上記を参照のこと)である;CMHal;HMHal;CHal=例えばクロロフェニル、ブロモフェニルまたはヨードフェニルであるCHalMHal;またはそれらからなる化合物。とりわけ有利な金属ハロゲン化合物は以下のものである:SiCl、SiBr、GeCl、SnCl、TiCl、TiBr、CSiCl、4−ClCSiCl、4−BrCSiCl、HSiCl、または(CHSiCl
【0019】
希土類金属酸化物(ハロゲン受容体)として、SE=スカンジウム、イットリウム、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuである化合物SEが一般的に市販の形で使用される。有利には、Nd、SmまたはLaが使用される。
【0020】
金属(II)酸化物(ハロゲン受容体)として、有利にはMgO、ZnOまたはMnOを使用してよい。
【0021】
有利には、ハロゲン受容体は粉末状の形においてかつ水不含で、つまりHO含有率<0.5%で使用される。
【0022】
極性非プロトン性溶媒として、エーテル化合物を使用してよい。前記化合物は、
−R−O−R(RおよびRは互いに無関係に1〜8個のC原子を有するアルキルまたはアリールである)のような開鎖状;または

【化5】

(n=3または4かつR=Hまたは1〜8個のC原子を有するアルキル)のような環状;または
−R−O−(−CH−CH−O)−R′(RおよびR′は互いに無関係に1〜8個のC原子を有するアルキル基かつn=1〜100である)のような多官能性
であってよくかつ純粋な形においてかまたは混合物において使用してよい。エーテル溶媒として、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルまたはメチル−tert−ブチルエーテルまたはそれらからなる混合物を使用してよい。
【0023】
さらに以下の非プロトン性極性溶媒を使用することができる:
−エステル、例えばカルボン酸エステル(例えばエチルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート)、または炭酸エステル(例えばジメチルカルボネート、ジエチルカルボネート、プロピレンカルボネート、エチレンカルボネート)、またはそれらからなる混合物;または
−ケトン(例えばアセトン、プロピオノン);または
−アミド(例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、NMPU);または
−ニトリル(例えばアセトニトリル、ブチロニトリル);または
−ハロゲン不含の硫黄化合物(例えばジメチルスルホキシド);または
−第3級アミン(例えばトリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン)。
【0024】
極性非プロトン性溶媒に、場合により1つ以上の炭化水素、例えばアルカン(例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンまたはオクタン)または芳香族化合物(例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメンまたはキシレン)を、溶媒:炭化水素=1:最大5の質量比で添加してよい。
【0025】
意想外にも、上記の希土類金属酸化物、金属(II)酸化物およびFeは懸濁液として極性非プロトン性溶媒中で、例えば≦30℃の温度ですでに式(2)の金属ハロゲン化合物と以下のように:
【化6】

反応することが見つかった。
【0026】
、Xは互いに無関係である:Cl、Br、I、H;アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し;1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリールであり、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を含有してよい。yは、ハロゲンを表さない置換基Xの数を示し、かつ0、1、または2の値をとる。置換基X、Xのどれもハロゲンでない場合、y=2である;置換基X、Xの全てがハロゲンである場合、y=0である。
【0027】
反応生成物[M(O)X中で、基XおよびXは以下のような意味をもつ:
および/またはXが金属ハロゲン化合物MHalHalにおいてハロゲン(Cl、Br、I)の意味を有していた場合、XおよびXは生成物[M(O)Xにおいて(O)1/2の意味を有する。Xおよび/またはXが金属ハロゲン化合物MHalHalにおいてハロゲンの意味を有していなかった場合(X、X≠Hal、Xおよび/またはXは、例えばアルキルまたはアリールである)、XおよびXは生成物[M(O)Xにおいて、金属ハロゲン化合物における場合と同じ、変化していない意味を有する。
【0028】
明確にするために、3つの選択された原料組み合わせにおける化学量論比が示される:
【化7】

【0029】
aに従う金属酸化物の簡単な形成法は、本発明により使用される溶媒の不存在下での逆反応(die umgekehrte Reaktion)が文献公知であることから、従って当業者にとって意想外である。例えば、Gmelin's Handbook of Inorg. Chem., 第8版、Sc, Y, La-Lu, C4a部、第152頁には、石英(つまり純粋なSiO)およびケイ酸ガラスが、液体および固体の希土類塩化物と方程式
【化8】

に従って、高められた温度で反応することが記載されている。さらに多数の酸化物ケイ酸塩(Oxidsilikaten)およびクロロケイ酸塩(例えばYb(SiOCl)が形成しうる。
【0030】
この場合これと対照的に、四塩化ケイ素は希土類酸化物と室温ですでに、例えば溶媒としてのテトラヒドロフラン(THF)中で素早くかつ不可逆的に反応し所望された金属酸化物となる:
【化9】

【0031】
とりわけ意想外なのはまた、形成された金属酸化物、例えばSiOがまず可溶性の形で、おそらく準安定な可溶性ポリマーゾルとして生じることである。それに対して希土類ハロゲン化物は、一般に本発明による溶媒または溶媒混合物中においてわずかな溶解度しか有さないので、それにより希土類ハロゲン化物は固体の形で、たいてい溶媒和化合物として、使用される非プロトン性極性溶媒とともに、固体/液体分離により金属酸化物ゾルから分離されうる。
【0032】
例えば、THF中でのNdとSiClとの反応の際に、THF中でほんのわずかしか溶けず(NdClに対して、約1〜1.5%)かつ結晶形で濾過により所望されたSiOゾルから分離されうるNdCl・2THF錯体が形成される。
【0033】
しばしば、金属酸化物は一定の期間(数時間〜数日)しかゾルとして溶解しないが、しかし次いでゲル形に変わることが観察される。固体の希土類ハロゲン化物の容易な分離(例えば、濾過、デカンテーションまたは遠心分離による)はその時にはもはや不可能であるので、本発明の有利な一実施態様は、固体/液体分離をゲル状態への移行前に行うことにある。
【0034】
3価の金属の酸化物(希土類酸化物および酸化鉄)の代わりに、他の金属酸化物も金属ハロゲン化物化合物の酸化のために使用してよい。例えば、M′=Mg、Ca、Ba、Sr、Mn、Znである2価の酸化状態における金属を有するいくつかの酸化物M′Oは、金属ハロゲン化合物を以下の方程式
【化10】

に従って酸化することができる。
【0035】
、Xは互いに無関係である:Cl、Br、I、H;アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し;1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリール、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を含有してよい。yは、ハロゲンを表さない置換基Xの数を示し、かつ0、1、または2の値をとる。置換基X、Xのどれもハロゲンでない場合、y=2である;置換基X、Xの全てがハロゲンである場合、y=0である。
【0036】
および/またはXが金属ハロゲン化合物MHalHalにおいてハロゲン(Cl、Br、I)の意味を有していた場合、生成物[M(O)Xにおける基XおよびXの意味は(O)1/2であり、またはX、X≠Halの場合での金属ハロゲン化合物におけるように変化しない。明確にするために、3つの選択された原料組み合わせにおける化学量論比が示される:
【化11】

【0037】
有意義には、理論的な反応比が主として保たれる。示された一般的な化学量論比から、意図される適用に応じてそれ以上またはそれ以下に、例えば有利には50%までずれてよい。これらの場合、一般に不溶性でありかつそれゆえ濾過により容易に除去することができる未反応のハロゲン受容体(過剰のハロゲン受容体)が残る;または、一般に可溶性でありかつそれゆえ均一な不純物として金属コロイド相に留まる、変化しなかった金属ハロゲン化合物が残る。一般的に後者の化合物は、金属酸化物ポリマーもしくは金属酸化物コロイドが可能な限り高い純度で所望される場合には不利である。
【0038】
本発明による金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーは、例えば固体の表面処理において、つまり
−場合によりハロゲン受容体によって導入された金属カチオンでドープされているMOX層を用いて全ての種類の材料、殊に金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、電気活性材料等を被覆するために、または
−金属コロイドの直接蒸発または金属コロイドの沈殿/乾燥による不均一触媒(MOX含有固体)[そのような触媒は、ポリマー合成のために、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたは混合ポリマーおよびコポリマーまたはポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフテナート(PEN)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)の製造のために使用される]の製造のために
使用される。
【0039】
さらに、コロイド溶液はゲル化剤として有機組成物または無機組成物のために使用されうる。溶媒の除去後にかつ残留するMOX生成物の凝集状態に応じて、さらに以下の使用可能性が存在する:
−熱媒油、潤滑剤、または消泡剤(油状生成物に適用される)としての使用可能性[その際、Mは有利にはSiである]または
−作業物質(ゴム弾性のまたは樹脂の生成物に適用される)としての使用可能性。
【0040】
本発明の対象は、以下の例を基にして詳細に説明される:
例1:THF中でのSiCl/NdからのSiOゾルの製造
還流冷却器および滴下漏斗を備えた、不活性化された、つまり乾燥されたかつアルゴンで充填された0.5リットルの二重壁反応器中で、酸化ネオジム25.2g(75ミリモル)(Aldrich社の99%)をTHF140g中に懸濁させた。攪拌下で30分以内に四塩化ケイ素20.5g(120ミリモル)を25〜30℃の内部温度で計量供給した。
【0041】
反応は明らかに発熱をともない、かつ淡青色の懸濁液が形成された。滴下の終了後、約30℃でさらに1.5時間後攪拌し次いで20℃に冷却した。
【0042】
次いで懸濁液をG3ガラスフリット上に受けかつ結晶の濾過残留物をTHF48gで一回後洗浄した。残留物を25℃で真空乾燥させかつNdCl・2THF(50.8g、理論の90%)と同定した。濾液および洗浄濾液を混ぜ合わせた。
【0043】
質量:123g、透明、ほぼ無色
分析(ミリモル/g):
Si=0.89; Nd=0.11; Cl=0.35
ケイ素に対してこれは91%の収率に相応する。生成物溶液中では、わずかな量の副生成物NdClが溶解していた。
【0044】
29Si−NMRスペクトルにおいて、幅広いシグナルがδ=112.8ppmで記録された(比較のために:SiClはδ=−18.5ppmのシフトを有する)。ガスクロマトグラフィーによって、どの揮発性副生成物も著しい量では認められなかった(THF=表面積99.8%)。
【0045】
まず流動し易い溶液が、貯蔵約二日後に室温で凝固し固体ゲルになった。
【0046】
例2:THF中でのTiCl/NdからのTiOゾルの製造
不活性化された、250mlの三つ口フラスコ中で、酸化ネオジム12.4g(37.2ミリモル)をTHF76g中に懸濁させかつ氷浴を用いて0℃に冷却した。次いで、半時間以内にTiCl11.4g(61ミリモル)を、噴霧法を用いて十分な攪拌下で添加した(非常に激しい発熱反応)。
【0047】
0℃でさらに20分、次いで室温で2時間後攪拌し次いで濾過した。濾過残留物をTHF20mlにより洗浄した。NdCl・2THF錯体と同定された薄い青灰色の結晶16.7gを得た。
【0048】
黄−緑がかった濾液(83g)を以下のように分析した:
Ti=0.62ミリモル/g Nd=0.061ミリモル/g Cl=0.25ミリモル/g
チタンに対してこれは84%の収率に相応する。TiOゾルは、系において約1.5質量%の溶解度を有するNdClでドープされている。
【0049】
ガスクロマトグラフィーによって、揮発性副生成物の著しい量、殊にTHFの分解を示す成分、例えばブタノールは認められなかった。
【0050】
さらに他の本発明による例は、以下の表から読み取られるべきである。
【0051】
例3〜13:
表1:金属酸化物ゾルの製造
【表1】

【0052】
表2:金属酸化物ゾル製造の試験結果
【表2】

【0053】
例1と比較して、例3では有機シラン(フェニルトリクロロシラン)をSiClの代わりにハロゲン化剤として使用した。濾過後、一般式[SiPhO1.5のSiポリマーを含有する透明の、流動し易い溶液を得た。比較的長い貯蔵の場合でも、生成物溶液は変化しなかった。つまりゲル形成は起こらなかった。
【0054】
例4および7においては、Ndの代わりに他の希土類酸化物(La、Sm)を使用した。いずれの場合においても、濾液は数日後に凝固下でゲル状態に変わった。反応溶媒として純粋なTHFの代わりにTHF/トルエンからなる混合物が使用される場合、例5において選択された原料組み合わせにおいてゲル化は観察されなかった。
【0055】
それに対してジメチルカルボナート(DMC)が使用される際、比較的長い据え置き時間後にゲル化が起こった(例7)。
【0056】
例8〜12は希土類金属酸化物以外の他のハロゲン受容体を扱っている:酸化亜鉛(例8)、酸化マンガン(例9)、酸化マグネシウム(例10〜12)。最終的に例13が示すのは、塩素系金属ハロゲン化合物の代わりにまた臭素化合物、この場合四臭化ケイ素も使用できることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合物中の一般式
【化1】

[式中、
M=Si、Ge、Sn、Ti、ZrまたはHfであり;かつXおよびX=互いに無関係にO1/2、H、アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し、1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリールであり、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を有してよく;かつnは10〜1,000,000の典型値をとる]の無水の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項2】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーが金属ハロゲン化物M′Halを含有し、その際、M′=希土類金属、Mn、Zn、Fe、Mg、Ca、Ba、Srの群から選択された金属であり、Hal=群Cl、Br、Iから選択されたハロゲンであり、かつx=金属M′の価数であることを特徴とする、請求項1記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項3】
金属ハロゲン化物M′Halのモル濃度が、金属酸化物コロイドMOXのモル濃度の0.1〜200%であることを特徴とする、請求項2記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項4】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーが、さらに他の金属塩を0.001〜20質量%の濃度において含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項5】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーが、M=SiまたはTiであるMOを含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項6】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーが以下の実験式の化合物:CSiO1.5、HSiO1.5、HalCSiO1.5(Hal=Cl、Br、I)、(HC)SiO;CTiO1.5、HTiO1.5、HalCTiO1.5(Hal=Cl、Br、I)、(HC)TiOを含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項7】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーが、1つ以上の以下の極性非プロトン性溶媒:エーテル(開鎖状かまたは環状の一官能性または多官能性)、エステル(カルボン酸エステルかまたは炭酸エステル)、ケトン、アミド、ニトリル、ハロゲン不含の硫黄化合物、第3級アミンまたは炭化水素を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項8】
溶媒としてTHF、2−MeTHF、ジメチルカルボナート、アセトン、プロピオノン、プロピレンカルボナートおよび/またはジエチルエーテルが使用されることを特徴とする、請求項7記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項9】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーの濃度が0.001〜2モル/lであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項10】
金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーの濃度が0.01〜1モル/lであることを特徴とする、請求項9記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマー。
【請求項11】
非プロトン性の有機溶媒または溶媒混合物中の一般式
【化2】

の無水の金属酸化物コロイドまたは金属酸化物ポリマーの製造法であって、その際、一般式
【化3】

の金属ハロゲン化合物
[式中、
M=Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hf
Hal=Cl、Br、I
、X=互いに無関係にCl、Br、I、H、アルコキシ(−OR)、その際、Rは1〜20個のC原子を有する有機基を表し、1〜20個のC原子を有するアルキルまたは6〜20個のC原子を有するアリール、その際、アルキル基またはアリール基は、群F、Cl、BrまたはIから選択された1つ以上のさらに他のハロゲン置換基を有してよい]
を、希土類金属酸化物SE(SE=Sc、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuである)、金属(II)酸化物またはFeの群から選択されたハロゲン受容体と、極性非プロトン性溶媒中で反応させる、無水の金属酸化物コロイドまたは金属酸化物ポリマーの製造法。
【請求項12】
金属ハロゲン化合物としてテトラハロゲン化合物MHalを使用することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
金属ハロゲン化合物として以下の化合物:CMHal、HMHal、CHalMHal、(HC)MClCHHal、(CHMHal、(CHMHalまたはそれらからなる混合物を使用することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項14】
金属ハロゲン化合物として以下の化合物:SiCl、SiBr、GeCl、SnCl、TiCl、TiBr、CSiCl、4−ClCSiCl、4−BrCSiCl、HSiClまたは(CHSiClを使用することを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
希土類金属酸化物としてNd、SmまたはLaを使用することを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
金属(II)酸化物としてMgO、CaO、BaO、SrO、ZnOまたはMnOを使用することを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ハロゲン受容体を粉末状の形においてかつHO含有率<0.5%で使用することを特徴とする、請求項11から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
極性非プロトン性溶媒として1つ以上のエーテル化合物を使用し、その際、前記化合物はR−O−R(RおよびRは互いに無関係に1〜8個のC原子を有するアルキルまたはアリールである)のような開鎖状であってよい;または
【化4】

(n=3または4でかつR=Hまたは1〜8個のC原子を有するアルキル)のような環状であってよい;またはR−O−(−CH−CH−O)−R′(RおよびR′は互いに無関係に1〜8個のC原子を有するアルキル基でかつn=1〜100である)のような多官能性であってよくかつ純粋な形においてかまたは混合物において使用することを特徴とする、請求項11から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
1つ以上の以下の非プロトン性極性溶媒:エステル(カルボン酸エステル、例えばエチルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート、または炭酸エステル、例えばジメチルカルボネート、ジエチルカルボネート、プロピレンカルボネート、エチレンカルボネート)、またはそれらからなる混合物;またはケトン(例えばアセトン、プロピオノン);またはアミド(例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、NMPU);またはニトリル(例えばアセトニトリル、ブチロニトリル);またはハロゲン不含の硫黄化合物(例えばジメチルスルホキシド);または第3級アミン(例えばトリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン)を使用することを特徴とする、請求項11から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
極性非プロトン性溶媒に1つ以上の炭化水素、例えばアルカンまたは芳香族化合物を溶媒:炭化水素=1:最大5の質量比において添加することを特徴とする、請求項11から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
炭化水素としてペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメンまたはキシレンを使用することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
固体の表面処理における、請求項1から10までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーの使用。
【請求項23】
場合によりハロゲン受容体によって導入された金属カチオンによりドープされているMOXの層を用いて全ての種類の材料、殊に金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、電気活性材料等を被覆するための請求項22記載の使用。
【請求項24】
金属コロイドの直接蒸発または金属コロイドの沈殿/乾燥により不均一触媒(MOX含有固体)を製造するための請求項22記載の使用。
【請求項25】
ポリマー合成のための触媒として、例えばポリオレフィン、混合ポリマーおよびコポリマーおよびポリエステルを製造するための請求項24記載の固体の使用。
【請求項26】
有機組成物または無機組成物のためのゲル化剤として、熱媒油として、潤滑剤として、消泡剤としてまたは作業物質としての、請求項1から10までのいずれか1項記載の金属酸化物コロイドおよび/または金属酸化物ポリマーの使用。

【公表番号】特表2008−523230(P2008−523230A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545914(P2007−545914)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013287
【国際公開番号】WO2006/063757
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(500399116)ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D−60487 Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】