説明

無煙ロースター用トップリング及び該トップリングを使用した無煙ロースター用内箱

【課題】排ガス吸引孔からの排ガス及び店内空気の吸引量を抑えて省エネルギー化を図っても、排ガスの店内への漏出を防止する。
【解決手段】内外箱11、13間の隙間上方の被冠部材1と、該被冠部材1の下部に設けた、下端が内箱13の上端に重なる、複数個の排ガス吸引孔6、6a…を有する内周環状壁部材2とを有し、上記被冠部材1の内周側部分に幅広な水平部4を、外周側に下方且つ外方への急傾斜部5を有し、上記内周環状壁部材2の内周面における排ガス吸引孔6、6a…より上方部位を所定高さの円筒部7としたトップリングを無煙ロースターに装着すれば、
排ガス吸引孔6、6a…からの吸引量を減少させても、水平部4に沿って発生する層流化された店内空気空気の水平流により、上昇気流が上方から抑えられて、排ガスが漏出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無煙ロースターの省エネルギー化を図るためのトップリング及び該トップリングを使用した無煙ロースター用内箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無煙ロースターにあっては、テーブルの下方に上方開口状の外箱を配置すると共に、外箱の上端部をテーブルの開口部内に配置し、外箱の内部に上方開口状の内箱を配設して、外箱と内箱との間に吸引空間を形成し、内箱内に加熱部を配設すると共に、該加熱部の上方に、焼き網、ロストル等の被調理物載置手段を配置し、該被調理物載置手段の外周部を、内箱の上端部位を拡径して形成された載置段部上に載置し、上記テーブルにおける開口部の内周面と内箱の上部との間の隙間をトップリングで閉鎖し、該トップリングは、中央開口部を有した外周側より内周側へ上方傾斜する環板状の被冠部材と、該被冠部材の内周縁部より下方へ連続形成された内周環状壁部材とを有し、該内周環状壁部材における上端部の近くに複数個の排ガス吸引孔が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、排ガス吸引孔より強制吸引した排ガスを排気ダクトを経由し、そのダクト経路の途中の集塵脱臭装置により清浄空気に処理した後に店外に排出させており、テーブル上面から店内への排ガスの漏れを抑止して、店内への臭気と熱の拡散を極力抑える様にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、排ガス吸引孔からの排ガス吸引量を一定量に保つ必要があり、店内空気もトップリングの上方から僅かではあるが中央開口部を通って排ガス吸引孔から強制吸引され続けることで、排ガスを上方で押さえつけて店内に漏出させない様に中央開口部での吸引圧力を設定することになるが、上記従来技術にあっては、トップリングの上面が傾斜状態でこの上面に沿って中央開口部の中心側へ流れる気流が弱く、この気流の被調理物載置手段上方の中心側への波及効果が弱いため、上昇する排ガスを上方から抑えるにはある程度の強い吸引力が必要で、而も内周環状壁部材の上部に沿った、トップリングの上面を流れ内周縁部で方向転換して垂直方向に流れる下降流は、排ガス吸引孔が被冠部材の上面に近いと、垂直下降流が形成されて間も無く排ガス吸引孔から吸引されてしまうことにより、この垂直下降流による排ガスの巻込み吸引効果が少なく、更に排ガス吸引孔での吸引力が開放空間である店内に作用してしまい、その結果排ガスの吸引効率が低く排ガスが店内に漏出し易い。
【0006】
そこで、上記不具合を解消するためには、中央開口部より排ガスを漏出させない様に店内空気を強制吸引させる様に、中央開口部に作用する店内空気の吸引圧力をある程度大きく設定させるべく、排ガス吸引孔からの吸引量もある程度大きく設定せねばならないなど、解決せねばならない課題があった。
つまり、店内空気の吸引を出来るだけ少なくして、被調理物載置手段の表面から発生する排ガスの全てと共に外部排出することで、排ガス吸引孔からの総吸引量を抑えることにより、店内空調負荷と排気ファンの出力を低減し省エネルギー化を図る、即ち店内への排ガスの漏出を防止しつつ店内空気の吸引量を可能な限り抑える必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来技術に基づく、排ガス吸引孔からの排ガス及び店内空気の吸引量を大きく設定せねばならない課題に鑑み、内外箱間の隙間上方の被冠部材と、該被冠部材の下部に設けた、下端が内箱の上端に重なる、複数個の排ガス吸引孔を有する内周環状壁部材とを有し、上記被冠部材の内周側部分に幅広な水平部を、外周側に下方且つ外方への急傾斜部を有し、上記内周環状壁部材の内周面における排ガス吸引孔より上方部位を円筒部としたトップリングを無煙ロースターに装着すれば、幅広な水平部の上面に沿った水平流が強い層流となって、被調理物載置手段上方の中心側に影響を及ぼすことで、排ガスの上昇位置を低く抑えられ、且つ排ガスのトップリング上面までの到達時間が長くなって吸引力が作用する時間が長くすることによって、排ガス吸引孔からの吸引量を抑えて省エネルギー化を図っても、中央開口部に作用する店内空気の吸引圧力を上記従来技術と同圧にすることを可能にして、排ガスの店内への漏出を防止する様にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、内外箱間の隙間上方の被冠部材と、該被冠部材の下部に設けた、下端が内箱の上端に重なる、複数個の排ガス吸引孔を有する内周環状壁部材とを有し、上記被冠部材の内周側部分に幅広な水平部を、外周側に下方且つ外方への急傾斜部を有しているので、トップリングの周縁部の店内空気が、幅広な水平部の上面に沿った水平流となって中央開口部の中心側に流れ、この水平流は強い層流となって安定状態で整流化出来ることから、その水平流の影響が被調理物載置手段上方の中心側に波及するため、上昇する排ガスを上方から抑えることが出来、よって排ガスは上昇するが、その上昇位置は低く抑えられ、店内に漏れることなく排ガス吸引孔に向かって吸引されるため、吸引量を抑えても排ガスを効率よく吸引排出出来る。
更に、上記内周環状壁部材の内周面における排ガス吸引孔より上方部位を円筒部としたので、排ガス吸引孔が被冠部材の上面から遠い、即ちトップリングの内周環状壁部材における排ガス吸引孔より上方部位が高さのある円筒部であれば、この円筒部で方向転換された垂直方向の下降流が層流を維持出来、この垂直下降流による排ガスの巻込み吸引効果が高く、而も排ガス吸引孔での吸引力の大部分が閉鎖空間であるトップリング内に作用し、更に排ガスのトップリング上面までの到達時間が長く吸引力が作用する時間が長くなり、その結果排ガスの吸引効率が高くなって排ガスを店内へ漏出し難くすることが出来る。
【0009】
つまり、水平部による安定した水平層流によって、中央側へ向けて排ガスの上昇を押さえ込んで、排ガスのトップリング上面までの到達時間が更に長くなるため、排ガスの吸引効率の更なる向上を図ることが出来ることから、排ガス吸引孔からの総吸引量を抑えても、即ち中央開口部からの店内空気の流入量を減らしても店内への排ガスの漏出を防止することが出来るため、自ずと排ガスの吸引量も抑えることが出来、よって店内空気及び排ガスの吸引量を抑えることで、温度管理された店内空気の排出量及び無煙ロースターから外部への排出熱量の低減化を図って電気消費量を抑えることが出来、更に被調理物載置手段の低温化を抑止出来ることに伴い、ガス供給量を絞っても高温状態を維持出来るため、ガス消費量を抑えることが出来、よって店舗全体での省エネルギー化を図ることが出来る。
而も、上述の如く、排ガス吸引量も自ずと減少することから、排ガスは高く立ち上った後に店内空気の流れに乗って排ガス吸引孔から吸引されるため、被調理物載置手段の上方での高温状態の排ガスの滞留時間も僅かながらに長くなって、被調理物の温度低下や表面乾燥を抑止することが出来る。
【0010】
更に、上記排ガス吸引孔の形状を縦長スリット状にしたので、この排ガス吸引孔を、内箱の上端に相当する位置から円筒部下端までの長さに設定出来、且つ隣接する排ガス吸引孔間が上下方向にわたり等間隔で狭く設定出来るため、更に吸引効率を向上させることが出来る。
【0011】
請求項1又は2のどちらか一方に記載のトップリング用の内箱であって、上端部位をカール加工したので、かかるカール加工部により吸引空間が入口側で狭まることから、この狭窄部での吸引速度が速くなるため、吸引空間内への吸引力の向上を図ることが出来、而も上記カール加工部の上部を、トップリングにおける排ガス吸引孔の下端と同レベルか下方近接位置に設定したので、吸引空間に吸引される直前後の排ガスの流れを概ね水平方向にすることが出来ることから、中央側の排ガスも誘引されて水平状態に近づくため、排ガスの上昇位置を更に低く抑えることが出来るため、更なる吸引効率の向上を図ることが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る無煙ロースター用トップリングの平面図である。
【図2(a)】図1のA−A断面図である。
【図2(b)】図2(a)の要部拡大図である。
【図3(a)】図1のB−B断面図である。
【図3(b)】図3(a)の要部拡大図である。
【図4】図1の無煙ロースター用トップリングを装着した無煙ロースターの概略断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るトップリングにあっては、基本的に、例えばステンレスのような金属製とし、環板状の被冠部材1と、該被冠部材1の内周縁部より下方へ連続形成された内周環状壁部材2とを有し、上記被冠部材1に中央開口部3を有し、内周側部分を幅広な、即ち安定した水平層流を形成可能な幅を有する水平部4、外周側部分を下方且つ外方への急傾斜部5とし、上記内周環状壁部材2に複数個の排ガス吸引孔6、6a…を全周にわたり等間隔で形成し、内周環状壁部材2における排ガス吸引孔6、6a…より上方部位を所定高さの、即ち垂直方向の下降層流を維持可能な高さの円筒部7としている。
以下、具体的に説明する。
【0014】
上記被冠部材1にあっては、図1〜4に示す様に、円環状に形成し、幅広な円環板状の水平部4の外周縁部に凹曲面状である急傾斜部5が連続形成されており、該急傾斜部5の下端側に垂壁状の着座部8を連続形成している。
【0015】
上記内周環状壁部材2にあっては、図2(a)〜図3(b)に示す様に、円筒形状を呈し、中間部に周設した所定幅の凹部9に上記排ガス吸引孔6、6a…が形成され、該排ガス吸引孔6、6a…は縦長幅狭なスリット形状としている。
但し、排ガス吸引孔6、6a…の形状はスリット形状にするのが好ましいが、例えば円孔にするなど、形状に何ら限定されない。
【0016】
又、上記トップリングを設置する無煙ロースターにあっては、図4に示す様に、基本的には、テーブル10の下方に上方開口状の外箱11を配置すると共に、外箱11の上端部をテーブル10の開口部12内に嵌合支持し、外箱11の内部に上方開口状の内箱13を配設して、外箱11と内箱13との間に吸引空間14を形成し、内箱13内に加熱部(図示せず)を配設すると共に、該加熱部(図示せず)の上方に、焼き網、ロストル等の被調理物載置手段16を配置し、該被調理物載置手段16の外周部を、内箱13の上端部位を拡径して形成された載置段部17上に載置している。
そして、上記トップリングにあっては、テーブル10における開口部12の内周面と内箱13の上部との間の隙間を閉鎖するものであって、被冠部材1にあっては、上記吸引空間14の上方に配置し、内周環状壁部材2にあっては、被冠部材1と内箱13の上部との間の隙間を閉鎖すべく、下端部位が内箱13の上端部位の内側に位置する様に重なり、排ガス吸引孔6、6a…は内箱13の上端部より上方部位に形成されて、上記吸引空間14内に排ガスを吸引可能にしている。
【0017】
次に、上記トップリングを設置する無煙ロースターにあっては、内箱13の上端部を外側へカール状に加工され、かかるカール加工部18の上部の位置を、上記トップリングにおける排ガス吸引孔6、6a…の下端部に対し同レベルか下方近接位置に設定する様にしている。
【0018】
尚、図面上、上記内周環状壁部位2の外側に、上端部を被冠部材1の下面に一体化した仕切り環状壁部材19が、上記被冠部位1における上記仕切り環状壁部材19より外周側部位に複数個の外気吸引口20、20a …が夫々形成されているが、無くても良い。
【0019】
次に、本発明に係る無煙ロースター用トップリングの作用について説明する。
排気ファン(図示せず)による吸引力が排ガス吸引孔6、6a…に作用して、該排ガス吸引孔6、6a…より吸引空間14内に店内空気及び排ガスが吸引されるが、トップリング周縁部から水平部4に沿って水平に店内空気が流れ、その水平流が層流化され、その影響が被調理物載置手段16の上方の中心側に波及して、上昇する排ガスを上方から抑えて、而も円筒部7に沿った垂直下降層流による排ガスの巻込み吸引効果がにより、排ガスが店内に漏れずに排ガス吸引孔6、6a…から吸引される。
従って、この水平流は、トップリングにおける水平部4の幅が広いほど層流が強くなって安定状態で整流化出来、又円筒部7が高いほど垂直方向の下降流が層流が強くなって安定状態で整流化出来且つ排ガスの吸引量が増すため、排気量が少なくても効率よく排ガスが吸引排出出来る。
【0020】
又、吸引された高温状態の排ガスは、直ぐに狭窄部を通過して被冠部材1に接触せず、被冠部材1の直下の空気は滞留したままとなり、この滞留空気による断熱作用で被冠部材1は加熱されない。
【0021】
尚、上記実施例及び図面におけるトップリングは円環状に形成されているが、四角環状であっても良い。
【符号の説明】
【0022】
1 被冠部材
2 内周環状壁部材
3 中央開口部
4 水平部
5 急傾斜部
6、6a… 排ガス吸引孔
7 円筒部
11 外箱
13 内箱
14 吸引空間
18 カール加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無煙ロースターにおける、外箱と該外箱内に収容された内箱との間の上方開口部を閉鎖して吸引空間を形成するトップリングにおいて、
内外箱間の隙間上方の被冠部材と、該被冠部材の下部に設けた、下端が内箱の上端に重なる、複数個の排ガス吸引孔を有する内周環状壁部材とを有し、上記被冠部材の内周側部分に幅広な水平部を、外周側に下方且つ外方への急傾斜部を有し、上記内周環状壁部材の内周面における排ガス吸引孔より上方部位を円筒部としたことを特徴とする無煙ロースター用トップリング。
【請求項2】
上記排ガス吸引孔の形状を縦長スリット状にしたことを特徴とする請求項1記載の無煙ロースター用トップリング。
【請求項3】
請求項1又は2のどちらか一方に記載のトップリング用の内箱であって、上端部位をカール加工し、このカール加工部の上部をトップリングにおける排ガス吸引孔の下端と同レベルか下方近接位置に設定したことを特徴とする内箱。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−152207(P2011−152207A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14301(P2010−14301)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(591031902)シンポ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】