説明

無線センサーネットワークシステム

【課題】 温度変化の大きい部屋に端末を設置する場合に、アクセスポイントにおける受信動作時間を短くしても受信を確実に行うことができ、消費電力を低減することができる無線センサーネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 端末3が設置されている温度変化の大きい部屋に温度センシング用端末30を設け、アクセスポイント20が、温度情報と各端末3及び温度センシング用端末30からの受信動作のタイミングを補正する補正値とを対応付けて記憶する補正テーブルを備え、特定の間隔で受信時間T1で温度センシング用端末30から温度情報を受信すると、制御部23が、補正テーブルを参照して受信した温度情報に対応する補正値を読み出して、当該補正値を用いて全ての端末3からの受信タイミングを補正すると共に、受信時間をT1より短いT2とし、温度情報の受信に失敗すると受信時間をT2より長いT3とする無線センサーネットワークシステムとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線センサーネットワークシステムに係り、特に、アクセスポイントにおける受信動作時間を短縮して消費電力を低減することができる無線センサーネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[無線センサーネットワーシステムクの概要]
オフィスビル、工場、ホテル、デパート、病院等の施設に、電気、ガス、上下水道等のサービスが提供されており、サービスの運用状況について監視するために、センサーと無線端末とを接続し、無線信号で監視状況のデータを収集する無線センサーネットワークが知られている。
【0003】
無線センサーネットワークシステムは、電気、ガス等のサービスの運用が正常に為されているかを監視するにとどまらず、火災や外部からの侵入も監視でき、サービスが無駄なく適正に運用されるよう制御することで、地球温暖化抑制のための省エネルギー対策の基盤技術として脚光を浴びてきている。
【0004】
[無線センサーネットワークシステムの構成例:図8]
無線センサーネットワークシステムの構成例について図8を用いて説明する。図8は、無線センサーネットワークシステムの構成例を示す説明図である。
図8に示すように、無線センサーネットワークシステムは、中継機1と、アクセスポイント2と、複数の端末3と、複数の各種センサー4と、監視サーバ5とを備えている。
中継機1は、地区毎に設けられ(ここでは地区A)、LAN(Local Area Network)によって監視サーバ5と接続されている。
【0005】
アクセスポイント2は、地区内のエリア毎に設けられ(ここではエリアA,エリアB,エリアC)、複数の端末3及び中継機1と無線通信を行う。使用される周波数はエリア毎に異なる。アクセスポイント2と端末3との通信は、時分割で行われる。
各端末3には各種センサー4が接続され、端末3は、各種センサー4からのデータ(センサ情報)を無線によって自己のエリアのアクセスポイント2に送信する。端末3は、特定の時間間隔でアクセスポイント2への送信を行う。
【0006】
そして、上記構成の無線センサーネットワークシステムにおいては、端末3は、各種センサー4から入力された監視データを記憶しておき、随時又は定期的にアクセスポイント2に無線送信する。端末3とアクセスポイント2との通信は、例えば微弱電波の通信方式が用いられる。
【0007】
アクセスポイント2は、各端末3からの受信のタイミングになると受信動作を行って、端末3から受信したデータを記憶し、随時又は定期的に中継機1に無線送信する。アクセスポイント2と中継機1との通信には、例えば、特定小電力の通信方式が用いられる。
中継機1は、無線で受信した各エリアの端末情報(センサー情報)をTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルに変換して、LANを介して監視サーバ5に送信する。
【0008】
[温度変化が大きい部屋に端末を設置する場合:図9]
次に、無線センサーネットワークシステムの運用例として、温度変化が大きい部屋に端末3を設置する場合について図9を用いて説明する。図9は、温度変化が大きい部屋に端末3を設置した無線センサーネットワークシステムの構成例を示す説明図である。
図9に示すように、温度変化が大きい部屋に端末3を設置した場合、アクセスポイント2を当該温度変化の大きい部屋に設置すると装置の劣化が進む等の不具合があるため、アクセスポイント2を当該部屋の外部で、部屋の内部の端末3との無線通信可能な場所に設ける。
【0009】
[アクセスポイントにおける従来の受信動作:図10]
ところで、設置場所の温度が変化すると、各端末3の送信タイミング(送信時刻)にずれが生じる。例えば、−10℃の温度変化により送信タイミングが30ppmずれる。
従来のアクセスポイントにおける受信動作について図10を用いて説明する。図10は、従来のアクセスポイントの受信動作を示す模式説明図である。
図10に示すように、端末3が設置されている室内の温度が変化した場合、送信タイミングが早まったり、遅くなったりしてずれてしまう。
そこで、従来のアクセスポイント2は、端末3からの送信タイミングがずれた場合でもセンサー情報を確実に受信できるように、受信動作時間を長く設定している。図9の例では、端末3からの送信動作時間は1秒であるが、アクセスポイント2における受信動作時間は10秒としている。
【0010】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2009−100416号公報「無線システム」(シャープ株式会社、特許文献1)、特開2007−243478号公報「センサネットシステム、基地局及びセンシングデータの中継方法」(株式会社日立製作所、特許文献2)がある。
特許文献1には、無線システムにおいて、子局が、定期的にあるいは周囲の温度変化が大きくなったときに、周波数補正のための参照信号を親局に送信し、親局が参照信号に基づいて基準通信周波数と子局の通信周波数とのズレを補正する周波数補正情報を作成して子局に送信し、子局がそれに基づいて通信周波数を補正することが記載されている。
【0011】
特許文献2には、無線センサーネットワークシステムにおいて、設置場所の温度をセンシングする端末を設けて温度を測定して、設置場所の外に設置したアクセスポイントに温度情報を送信し、半導体ひずみデータを補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−100416号公報
【特許文献2】特開2007−243478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の無線センサーネットワークシステムでは、温度変化の大きい部屋に端末を設置する場合、アクセスポイントが、温度変化による端末の送信タイミングのずれを考慮した受信時間で受信動作を行うため、実際にデータが送信されていないのに受信動作を行う無駄な受信動作時間が長く、消費電力が大きくなってしまうという問題点があった。
【0014】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、温度変化の大きい部屋に端末を設置する場合に、アクセスポイントにおける受信動作時間を短くしても受信を確実に行うことができ、消費電力を低減することができる無線センサーネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、エリア内に設けられたセンサーに接続する端末と、端末から無線送信されるデータを受信して中継機に無線送信するアクセスポイントとを有する無線センサーネットワークシステムであって、エリア内の温度を測定して温度情報として無線送信する温度測定端末を設け、アクセスポイントが、受信部と、送信部と、制御部と、記憶部とを備え、記憶部が、温度情報と受信タイミングの補正値とを対応付けて記憶する補正テーブルを備え、制御部が、特定の時間間隔で第1の受信時間の受信動作を行って、温度測定端末からの温度情報を受信部で受信すると、受信した温度情報に対応する補正値を補正テーブルから取得し、全ての端末からの受信動作について当該補正値で受信タイミングを補正すると共に受信時間を第1の受信時間より短い第2の受信時間とし、特定の時間間隔での温度情報の受信に失敗すると、全ての端末からの受信動作について、受信時間を第2の受信時間より長い第3の受信時間とすること特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記無線センサーネットワークシステムにおいて、第3の受信時間を、第1の受信時間と等しい時間とすることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記無線センサーネットワークシステムにおいて、第3の受信時間を、第1の受信時間より短く、第2の受信時間より長い時間とすることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記無線センサーネットワークシステムにおいて、アクセスポイントの制御部は、第1及び第3の受信時間での受信動作を、第2の受信時間での受信動作時間を中心にして前後に広がりを持つ時間帯で行うよう、受信タイミングを調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エリア内に設けられたセンサーに接続する端末と、端末から無線送信されるデータを受信して中継機に無線送信するアクセスポイントとを有する無線センサーネットワークシステムであって、エリア内の温度を測定して温度情報として無線送信する温度測定端末を設け、アクセスポイントが、受信部と、送信部と、制御部と、記憶部とを備え、記憶部が、温度情報と受信タイミングの補正値とを対応付けて記憶する補正テーブルを備え、制御部が、特定の時間間隔で第1の受信時間の受信動作を行って、温度測定端末からの温度情報を受信部で受信すると、受信した温度情報に対応する補正値を補正テーブルから取得し、全ての端末からの受信動作について当該補正値で受信タイミングを補正すると共に受信時間を第1の受信時間より短い第2の受信時間とし、特定の時間間隔での温度情報の受信に失敗すると、全ての端末からの受信動作について、受信時間を第2の受信時間より長い第3の受信時間とする無線センサーネットワークシステムとしているので、端末が温度変化の大きい場所に設置されている場合でも、アクセスポイントは温度変化に応じて受信タイミングを補正して、短い受信時間でセンサー情報を受信することができ、消費電力を低減することができると共に、温度情報を受信できなかった場合には、受信時間を長くして、センサー情報を受信できる確率を向上させて、システムの信頼性を維持できる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、第3の受信時間を、第1の受信時間と等しい時間とする上記無線センサーネットワークシステムとしているので、センサー情報を確実に受信することができ、システムの信頼性を維持できる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、第3の受信時間を、第1の受信時間より短く、第2の受信時間より長い時間とする上記無線センサーネットワークシステムとしているので、消費電力低減を図りつつ、センサー情報を受信する確率を向上させることができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、アクセスポイントの制御部は、第1及び第3の受信時間での受信動作を、第2の受信時間での受信動作時間を中心にして前後に広がりを持つ時間帯で行うよう、受信タイミングを調整する上記無線センサーネットワークシステムとしているので、端末からの送信タイミングが早くなっても遅くなっても、いずれの場合でもセンサー情報を受信する確率を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの構成例を示す説明図である。
【図2】本システムにおけるアクセスポイント20の受信動作の概要を示す説明図である。
【図3】アクセスポイント20の構成ブロック図である。
【図4】受信時間とその受信タイミングとの関係を示す説明図である。
【図5】アクセスポイント20の補正テーブルの説明図である。
【図6】温度センシング用端末30の制御部における処理を示すフローチャートである。
【図7】アクセスポイント20の制御部23における処理を示すフローチャートである。
【図8】無線センサーネットワークシステムの構成例を示す説明図である。
【図9】温度変化が大きい部屋に端末3を設置した無線センサーネットワークシステムの構成例を示す説明図である。
【図10】従来のアクセスポイントの受信動作を示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムは、温度変化の大きい部屋に端末を設置する場合には、当該室内に、温度センサーを備えて温度情報を定期的に送信する温度センシング用端末を設け、アクセスポイントが、運用開始時に第1の受信時間で受信動作を行って、温度センシング用端末から温度情報を受信すると、当該温度情報に基づいて全ての端末からの受信タイミングを補正すると共に、受信動作時間を第1の受信時間より短い第2の受信時間に設定して、各端末からのセンシング情報の受信を行うようにしているので、温度の変動によって端末からの送信タイミングがずれたとしても、アクセスポイントは、そのタイミングに合わせて短い時間の受信動作を行うことで端末から確実にセンサー情報を受信することができ、消費電力を低減することができるものである。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムは、アクセスポイントが、第2の受信時間での受信動作で、温度センシング用端末からの温度情報の受信に失敗した場合、受信動作時間を第2の受信時間より長い第3の受信時間に設定して他の端末からのセンサー情報の受信動作を行うようにしているので、センサーシステムの信頼性を維持できるものである。
【0026】
[実施の形態に係る無線センサーネットワークシステム:図1]
本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムの構成例を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムは、温度変化の大きい部屋に、各種センサーからセンサー情報を取得してアクセスポイント20に送信する複数の端末3と、本システムの特徴部分である温度センシング用端末30が設けられ、当該部屋の外にアクセスポイント20が設けられている。
尚、ここでは図示は省略するが、本システムの全体の構成は、図8に示した無線センサーネットワークシステムと同様であり、アクセスポイント20は更に中継機に無線伝送路で接続され、中継機は監視サーバに有線伝送路等で接続されている。
また、温度センシング端末30は、請求項に記載した「温度測定端末」に相当する。
【0027】
本システムの特徴部分について説明する。
温度センシング用端末30は、温度センサーを備え、温度を計測して、定期的(例えば1時間毎)に温度情報をアクセスポイント20に送信する。
アクセスポイント20は、従来と同様に、端末3から時分割でセンシング情報を受信して中継機に送信するものであるが、本システムの特徴として、定期的に温度センシング用端末30から温度情報を受信して解析し、それに基づいて各端末3からのデータを受信する際の受信動作のタイミングを補正するものである。
【0028】
更に、アクセスポイント20は、温度センシング用端末30からの温度情報の受信の成否に基づいて、受信動作を行う時間(受信時間)を設定し、設定された受信時間で各端末3からのデータ受信を行う。
温度センシング用端末30及びアクセスポイント20の処理については後で説明する。
【0029】
[アクセスポイント20の受信動作:図2]
アクセスポイント20の具体的な構成を説明する前に、本システムにおけるアクセスポイント20の受信動作の概要について図2を用いて説明する。図2は、本システムにおけるアクセスポイント20の受信動作の概要を示す説明図である。
つまり、補正情報は、予め設定されている基本の受信タイミングに対するずれの時間である。
【0030】
[受信タイミングの制御]
図2に示すように、本システムのアクセスポイントは、端末3の送信タイミングに合わせて、理想的には送信動作時間とほぼ等しい時間だけ受信動作を行うことが可能である。図2の例では、端末3の送信時間を1秒間(1s)としており、アクセスポイント20での受信動作時間も1秒間としている。
【0031】
そして、端末設置場所の室内温度が変化した場合、送信タイミングが早くなったり遅くなったりしてずれた場合でも、本システムの特徴として、アクセスポイント20は、温度情報センシング端末30から温度情報を受信すると、受信した温度情報に基づいて受信動作の開始タイミングを補正して、補正されたタイミングで短い時間(1秒間)の受信動作を行う。
アクセスポイント20には、予め、温度情報と補正情報とを対応付けたテーブル等が記憶されており、受信した温度情報に対応する補正情報を用いて、各端末3及び温度センシング用端末30からの受信動作のタイミングを早めたり遅くしたりして補正する。
【0032】
これにより、本システムのアクセスポイント20は、短い受信動作であっても確実に端末3からのセンシング情報を受信することができ、無駄な受信動作を行わずにすみ、消費電力を低減することができるものである。
【0033】
[受信時間の制御]
更に、本システムの特徴として、アクセスポイント20は、受信動作のタイミングの補正に加えて、受信動作時間の制御も行う。
アクセスポイント20は、運用開始時には従来と同様の長い受信時間(T1)で受信動作を行って、温度センシング用端末30からの温度情報を確実に受信して、温度情報を受信すると、それに基づく受信タイミングの補正を行うと共に、受信時間をT1より短いT2に設定し、各端末3からのセンサー情報を受信する通常運用を行う。
図2の例ではT2を1秒間としており、消費電力を大幅に低減させることが可能であるが、より確実に受信するためには、例えば、T2の時間帯を中心として、3秒間程度の受信時間とすることが望ましい。
【0034】
そして、本システムのアクセスポイント20は、温度センシング用端末30からの温度情報を受信できなかった場合には、T2より長いT3に設定して、通常運用を行う。T3は、信頼性を重視する場合にはT1と同じ時間としてもよいが、T2<T3<T1の範囲(例えば5秒間)として消費電力の低減を図ることも可能であり、システムに応じて任意に設定可能とする。
【0035】
更に、一旦受信時間をT3に設定した後でも、再び温度センシング用端末30からの温度情報の受信に成功すると、再度受信時間を短いT2に設定する。
これにより、本システムでは、受信タイミングと受信時間とを適宜補正、選択して、センサー情報や温度情報を確実に受信すると共に、消費電力の削減を図ることができるものである。
尚、T1は、請求項に記載した「第1の受信時間」、T2は「第2の受信時間」、T3は「第3の受信時間」にそれぞれ相当している。
【0036】
[アクセスポイント20の構成:図3]
次に、本システムにおけるアクセスポイント20の構成について図3を用いて説明する。図3は、アクセスポイント20の構成ブロック図である。
図3に示すように、アクセスポイント20は、受信アンテナ21と、受信部22と、制御部23と、記憶部24と、送信部25とを備えている。
【0037】
受信アンテナ21は、微弱電波を入力する。
受信部22は、制御部23からの指示に基づいて受信動作を行う。
送信部25は、特定小電力の通信方式でデータの送信処理を行う。
送信アンテナ26は、特定小電力の通信方式の信号を送出する。
【0038】
制御部23は、端末3及び温度センシング用端末30からの無線信号を受信するタイミングになると、設定されている受信時間だけ受信部22に受信動作を行わせる。
更に、制御部23は、受信した温度情報に基づいて受信タイミング及び受信時間の制御を行う。制御部23の処理については後で詳細に説明する。
【0039】
また、従来と同様に、制御部23は、中継機1への送信時間帯になると、記憶部24に記憶したデータを送信部25に出力し、送信部25に送信動作を行わせて送信アンテナ26から送信させる。
【0040】
記憶部24は、端末3及び温度センシング用端末30から受信したデータを記憶すると共に、温度情報と受信タイミングの補正値とを対応付けた補正テーブルを記憶している。また、記憶部24は、受信動作を行う受信時間を複数種類記憶している。ここではT1、T2、T3の3種類の受信時間を受信時間テーブルに記憶している。
更に、記憶部24には、制御部23によって選択され現在設定されている受信時間を記憶されている。
【0041】
尚、ここではアクセスポイント20の構成を示したが、端末3も同様の構成であり、受信アンテナの代わりに各種センサーからの出力が有線又は無線で受信部に入力され、送信部が微弱電波の通信方式で送信処理を行い、送信アンテナが微弱電波を送出するようになっている。
温度センシング用端末30は、上記端末3と同様の構成で、センサーが温度センサーになっているものである。
【0042】
[受信時間と受信タイミング:図4]
受信時間とその受信タイミングについて図4を用いて説明する。図4は、受信時間とその受信タイミングとの関係を示す説明図である。
図4では、端末3からの送信タイミングに対応する受信時間毎の受信タイミング示している。受信時間は、最も短い受信時間T2を送信時間と同じ1秒間とし、T1を10秒間、T3を5秒間としている。
【0043】
そして、T2を基準として、受信時間をそれより長くする場合には、T2での受信動作時間帯が他の受信動作時間の中央付近になるよう、受信タイミングを早めている。これにより、予想される送信タイミングの前後両側に受信時間を広げることができ、端末3からの送信タイミングが前後どちらにずれてもある程度受信可能とするものである。
【0044】
具体的には、受信時間T1の場合、受信時間は10秒であるから、T2の受信タイミングよりも4.5秒早く受信動作を開始する。また、T3の場合には、T2の受信タイミングよりも2秒早く受信動作を開始する必要がある。
そのため、本システムでは、送信時間と同じ受信時間(T2)を基準として補正された受信タイミングから、どの程度早める必要があるかを示す調整時間を、各受信時間に対応して記憶部24の受信時間テーブルに記憶している。
【0045】
[補正テーブルと受信時間テーブル:図5]
補正テーブルについて図5を用いて説明する。図5は、アクセスポイント20の補正テーブルと受信時間テーブルの説明図である。
図5(a)に示すように、補正テーブルは、温度情報とそれに対応する受信タイミングの補正値とを記憶している。本システムにおいては、補正テーブルでは、送信時間と同じ受信時間であるT2で受信動作を行う場合の補正値を記憶している。
【0046】
また、(b)は記憶部24に記憶された受信時間テーブルを示しており、受信時間テーブルには、受信時間とそれに対応する調整時間が記憶されている。
調整時間は、受信時間をT2に設定した場合の受信タイミングから、どれだけ早めるかを示す時間であり、T1では4.5秒、T2では0秒(調整時間なし)、T3では2秒となっている。
そして、制御部23が、温度情報によって補正された受信タイミングを更に受信時間に対応する調整時間で調整するようになっている。
【0047】
[温度センシング用端末30の処理:図6]
次に、温度センシング用端末30の処理について図6を用いて説明する。図6は、温度センシング用端末30の制御部における処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、温度センシング用端末30の制御部は、温度センサーからのセンシングデータを常時入力して(100)、温度情報を送信するタイミングになったかどうかを判断して(102)、送信タイミングになった場合には、最新の温度センシングデータを温度情報として送信する(104)。
尚、温度センシング用端末30は、温度センシングデータを記憶部に記憶しておき、送信タイミングになると最新の温度センシングデータを含む複数のデータを送信してもよい。送信された温度情報は、メンテナンスに利用可能である。
【0048】
[アクセスポイント20の処理:図7]
次に、アクセスポイント20の処理について図7を用いて説明する。図7は、アクセスポイント20の制御部23における処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、アクセスポイント20の制御部23は、運用が開始されると、まず受信時間をT1に設定する(200)。T1は、例えば従来と同様に、温度変化によって温度センシング用端末30や端末3の送信タイミングがずれたとしても受信可能な時間である。
【0049】
そして、制御部23は、温度センシング用端末30からの温度情報の受信タイミングになったかどうかを判断し(202)、受信タイミングになった場合には、設定されている受信時間だけ受信部22に受信動作を行わせる(204)。最初は受信時間T1で確実に温度情報を受信する。温度センシング用端末30からの送信/受信タイミングは、例えば1時間間隔とする。
【0050】
アクセスポイント20の制御部23は、受信が完了したかどうかを判断し(206)、受信が完了した場合には、記憶部24の補正テーブルを参照して、受信した温度情報に対応する補正値を読み出し、温度情報に基づく受信タイミングの補正を行う(208)。受信タイミングが補正されると、温度センシング用端末30だけでなく全ての端末3からの受信を補正されたタイミングで行う。
【0051】
更に、アクセスポイント20の制御部23は、受信時間をT2に設定する(210)。T2は、T1よりも短い時間としており、理想的には端末3及び温度センシング用端末30(以下、「端末3等」とする)からの送信時間と同等の時間とする。また、受信の確実性を向上させるために、T2を端末3等における送信時間の3倍程度としてもよい。
そして、温度情報に基づいて補正されたタイミング及び受信時間により端末3からのセンサー情報を受信する通常運用を行い(220)、処理202に戻る。
【0052】
また、処理206で温度情報を受信できなかった場合、アクセスポイント20の制御部23は、受信時間をT3に設定し(212)、通常運用に移行する(220)。T3は、T2より長くT1より短い時間、例えば送信時間の5倍程度とすることが考えられるが、初期設定のT1と同じ時間であってもよい。受信時間をT2以外とする場合には、制御部23は、選択された受信時間に対応して受信時間テーブル記憶された調整時間を考慮して、受信タイミングを適宜補正する。また、T1〜T3の時間は、システム利用者のニーズに応じて予め記憶部24に記憶しておく。
【0053】
このような処理を行うことにより、温度情報を正常に受信できるときには、できるだけ短い受信時間(T2)として消費電力の低減を図り、温度情報の受信に失敗したらそれより長い受信時間(T3)として、端末3からのセンサー情報を確実に受信できるようにするものである。また、一旦受信時間をT3にしても、次に温度情報を正常に受信した場合には再び短いT2にすることができ、状況に応じて適切な受信時間を設定できるものである。
【0054】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る無線センサーネットワークシステムによれば、端末3が設置されている温度変化の大きい部屋に温度センシング用端末30を設け、アクセスポイント20が、温度情報と各端末3及び温度センシング用端末30からの受信動作のタイミングを補正する補正値とを対応付けて記憶する補正テーブルを備え、温度センシング用端末30から温度情報を受信すると、制御部23が、補正テーブルを参照して受信した温度情報に対応する補正値を読み出して、当該補正値を用いて全ての端末3及び温度センシング用端末30からの受信タイミングを補正すると共に、受信動作時間を短くしているので、端末3の設置場所の温度変化が大きい場合でも、アクセスポイント20は短い受信時間で確実にセンサー情報を受信することができ、消費電力を低減することができる効果がある。
【0055】
また、本システムによれば、受信動作時間として、端末3及び温度センシング用端末30の送信タイミングがずれた場合でも十分に受信可能な時間T1と、消費電力を有効に低減する受信時間T2と、T2より長い受信時間T3とを記憶しており、運用開始時(電源投入時)には、受信時間をT1に設定し、温度情報の受信に成功した場合には、受信時間をT2に設定して端末3からの受信を行い、温度情報の受信に失敗した場合には、受信時間をT3に設定して端末3からの受信を行うようにしているので、運用開始時には確実に温度情報を受信して適切な受信タイミングに補正することができ、温度情報の受信に成功すると受信時間を短縮して消費電力を大幅に低減することができ、温度情報の受信に失敗した場合には、受信時間を長くして端末3からのセンサー情報を受信する確率を向上させて、システムの信頼性を維持できる効果がある。
【0056】
また、本システムによれば、受信時間T3をT1と同一とすることもできるので、センサー情報を確実に受信可能とし、システムの信頼性を十分高くすることができる効果がある。
【0057】
また、本システムによれば、受信時間T1及びT3における受信動作は、受信動作T2での受信動作時間帯の両側に幅を広げた時間帯で行うよう、各受信時間に応じて受信タイミングのずれを記憶しているので、端末3からの送信タイミングが前後どちらに変動しても受信可能とすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、アクセスポイントにおける受信動作時間を短縮して消費電力を低減することができる無線センサーネットワークシステムに適している。
【符号の説明】
【0059】
1...中継機、 2,20...アクセスポイント、 3...端末、 4...各種センサー、 5...監視サーバ、 21...受信アンテナ、 22...受信部、 23...制御部、 24...記憶部、 25...送信部、 26...送信アンテナ、 30...温度センシング用端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に設けられたセンサーに接続する端末と、前記端末から無線送信されるデータを受信して中継機に無線送信するアクセスポイントとを有する無線センサーネットワークシステムであって、
前記エリア内の温度を測定して温度情報として無線送信する温度測定端末を設け、
前記アクセスポイントが、受信部と、送信部と、制御部と、記憶部とを備え、
前記記憶部が、温度情報と受信タイミングの補正値とを対応付けて記憶する補正テーブルを備え、
前記制御部が、特定の時間間隔で第1の受信時間の受信動作を行って、前記温度測定端末からの温度情報を前記受信部で受信すると、前記受信した温度情報に対応する補正値を前記補正テーブルから取得し、全ての端末からの受信動作について当該補正値で受信タイミングを補正すると共に受信時間を前記第1の受信時間より短い第2の受信時間とし、前記特定の時間間隔での温度情報の受信に失敗すると、前記全ての端末からの受信動作について、受信時間を前記第2の受信時間より長い第3の受信時間とすること特徴とする無線センサーネットワークシステム。
【請求項2】
第3の受信時間を、第1の受信時間と等しい時間とすることを特徴とする請求項1記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項3】
第3の受信時間を、第1の受信時間より短く、第2の受信時間より長い時間とすること特徴とする請求項1記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項4】
アクセスポイントの制御部は、第1及び第3の受信時間での受信動作を、第2の受信時間での受信動作時間を中心にして前後に広がりを持つ時間帯で行うよう、受信タイミングを調整することを特徴とする請求項1乃至3記載の無線センサーネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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