無線タグ読み取り装置及び搬送物管理システム
【課題】搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる無線タグ読み取り装置及び搬送物管理システムを提供する。
【解決手段】搬送物Cに設けられた無線タグ回路部Toが搬送経路に沿って順次移動してくるとき、当該無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する。これにより、通信感度が高い無線タグ回路部Toや通信感度が低い無線タグ回路部Toが混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、先行する無線タグ回路部Toは先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部Toは後の順番で検出できる。
【解決手段】搬送物Cに設けられた無線タグ回路部Toが搬送経路に沿って順次移動してくるとき、当該無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する。これにより、通信感度が高い無線タグ回路部Toや通信感度が低い無線タグ回路部Toが混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、先行する無線タグ回路部Toは先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部Toは後の順番で検出できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた複数の無線タグ回路部を検出する無線タグ読み取り装置及びこれを備えた搬送物管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を記憶する無線タグ回路部と無線タグ読み取り装置との間で非接触で情報の送受信を行うRadio Frequency Identification(RFID)システムが様々な分野において実用化されている。
【0003】
上記無線タグ読み取り装置において、一方向に移動する無線タグ回路部を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、無線タグ回路部の移動方向に沿って重複通信範囲を形成する2つの通信アンテナを設ける。そして、コマンド送信後の無線タグ回路部からの応答信号をどのアンテナで受信したかを判別することにより、応答時点における無線タグ回路部の位置を特定することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、無線タグ回路部は、ICチップの性能や、タグアンテナとICチップとの取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響、等により、通信感度にばらつきが生じる。このため、無線タグ読み取り装置側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が狭くなる。
【0006】
上記従来技術のように、2つの通信アンテナが重複通信範囲を形成する場合でも同様であり、通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部の通信感度の高低によって重複通信範囲の大きさが変動することとなる。
【0007】
このため、搬送物に設けられた無線タグ回路部が搬送経路に沿って順次移動してくるとき、例えば通信感度が低い無線タグ回路部の次に通信感度が高い無線タグ回路部が移動してきた場合には、通信可能範囲が広くなる後者の無線タグ回路部を先に検出する可能性がある。したがって、上記従来技術のように重複通信範囲を形成する構成であっても、搬送経路における各搬送物の搬送順序を正しく把握できないおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる無線タグ読み取り装置及び搬送物管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1発明の無線タグ読み取り装置は、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送される複数の搬送物のそれぞれに設けられ、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた、複数の無線タグ回路部を、順次検出する無線タグ読み取り装置であって、前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナと前記第2通信アンテナとが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本願第1発明においては、搬送物の搬送経路に沿って、第1通信アンテナの第1通信可能範囲と、第2通信アンテナの第2通信可能範囲とが、それぞれ形成される。また、切替制御手段により、第1通信アンテナと第2通信アンテナとは、互いに交互に通信を行うように切り替えられる。ここで、第1通信アンテナの第1通信可能範囲と第2通信アンテナの第2通信可能範囲とは、一部が重なり合って重複通信範囲を形成している。このため、搬送により順次移動してくる無線タグ回路部は、上記重複通信範囲を移動している間は、前述のように切り替えられる第1通信アンテナからの信号と第2通信アンテナからの信号との、両方の信号に応答可能となる。
【0011】
ところで、一般に、無線タグ回路部は、ICチップの性能や、タグアンテナとICチップとの取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響、等により、通信感度にばらつきが生じるのは避けられない。このため、無線タグ読み取り装置側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部の通信感度の高低によって通信アンテナからの通信可能範囲が伸び縮みすることになる。
【0012】
本願第1発明のように、2つの通信アンテナが重複通信範囲を形成する場合も、上記同様である。通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部の通信感度の高低によって重複通信範囲の大きさが変動することとなる。しかしながら、このときの重複通信範囲の大きさの変動は、もともとは各通信アンテナからの通信可能範囲の伸び縮みに由来するものである。したがって、広くなったときの重複通信範囲の中心位置と、狭くなったときの重複通信範囲の中心位置とは、ほとんど変化しないという特性がある。
【0013】
本願第1発明はこの特性を応用し、搬送物に設けられた無線タグ回路部が搬送経路に沿って順次移動してくるとき、通過判定手段が、当該無線タグ回路部の重複通信範囲の通過時間を判定する。これにより、通信感度が高い無線タグ回路部や通信感度が低い無線タグ回路部が混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、必ず、先行する無線タグ回路部は先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部は後の順番で検出するようになる。すなわち、無線タグ読み取り装置が、無線タグ回路部を、搬送されてくる順序とは異なる順序で誤って検出するのを防止することができる。このようにして、本願第1発明によれば、各無線タグ回路部の重複通信範囲の通過時間を検出することで、搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる。
【0014】
第2発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1発明において、前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで前記無線タグ回路部からの応答信号を受信した時間を計時する計時手段と、前記計時手段で計時した時間を通信時間として記憶する記憶手段とを有し、前記通過判定手段は、記憶手段に記憶した通信時間を用いて、重複通信範囲の通過時間を判定することを特徴とする。
【0015】
本願第2発明においては、計時手段で無線タグ回路部の重複通信範囲への進入時間を計時して記憶手段で当該進入時間を記憶し、また計時手段で無線タグ回路部の重複通信範囲からの退出時間を計時して記憶手段で当該退出時間を記憶することが可能である。これにより、通過判定手段で記憶された進入時間と退出時間との中間の時間を判定することにより、各無線タグ回路部が重複通信範囲を通過するタイミング時間を正確に検出することができる。
【0016】
第3発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1又は第2発明において、前記通過判定手段は、前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第2通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信されない状態から、当該応答信号が受信されるようになったことにより、前記重複通信範囲への進入時間を判定する進入判定手段と、前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第1通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信される状態から、当該応答信号が受信されなくなったことにより、前記重複通信範囲からの退出時間を判定する退出判定手段と、前記進入時間と前記退出時間との中間の時間を判定する中間判定手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
進入判定手段が無線タグ回路部の重複通信範囲への進入時間を判定し、退出判定手段が無線タグ回路部の重複通信範囲からの退出時間を判定する。これらの判定結果に基づき、進入時間と退出時間との中間の中間時間が中間判定手段によって判定されるので、各無線タグ回路部が重複通信範囲の中心を通過する時間を、より正確に検出することができる。
【0018】
第4発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、当該第1通信アンテナの軸心位置と当該第2通信アンテナの軸心位置とを結ぶ線が、前記搬送経路における前記無線タグ回路部の移動方向と平行となるように、配置されていることを特徴とする。
【0019】
このような配置にすることにより、2つの通信範囲が重なる重複通信範囲の中心位置を、無線タグ回路部の感度の高低に関係なく、確実に一定とすることができる。
【0020】
第5発明の無線タグ読み取り装置は、上記第4発明において、前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、当該第1通信アンテナのメインローブ方向の線と当該第2通信アンテナのメインローブ方向の線とが、前記搬送経路上において交差するように、配置されていることを特徴とする。
【0021】
このような配置にすることにより、2つの通信範囲が重なる重複通信範囲の大きさをより広くすることができる。
【0022】
第6発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記第1通信アンテナと情報送受信するための第1状態、及び、前記第2通信アンテナと情報送受信するための第2状態、のいずれかに切替可能な切替識別子を前記記憶部に記憶した前記無線タグ回路部に対し、前記第1状態から前記第2状態へ切り替えるための第1切替コマンドを、前記第1通信アンテナを用いて送信する第1切替コマンド送信手段と、前記無線タグ回路部に対し、前記第2状態から前記第1状態へ切り替えるための第2切替コマンドを、前記第2通信アンテナを用いて送信する第2切替コマンド送信手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、無線タグ回路部が、搬送経路上流側において第1通信アンテナと一度通信を行うと以降は同じ第1通信アンテナとは通信しなくなり、搬送経路下流側において第2通信アンテナと一度通信を行うと、以降は同じ第2通信アンテナとは通信しなくなる。この結果、重複通信範囲以外での無駄な通信をなるべく避け、通信効率を向上することができる。
【0024】
上記目的を達成するために、第7発明の搬送物管理システムは、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置とを有する搬送物管理システムであって、前記搬送制御手段は、前記搬送手段の搬送速度が第1搬送速度である場合における、前記通過判定手段により判定された1つの前記無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間と、前記通過判定手段により判定された前記1つの前記無線タグ回路部とは別の無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間との時間差が、前記第1時間区分及び第2時間区分の和よりも小さかった場合に、前記搬送手段の搬送速度を前記第1搬送速度よりも減少させるように制御する減少制御手段を備えることを特徴とする。
【0025】
本願第7発明においては、第1通信アンテナ及び第2通信アンテナが切替制御手段により切り替えられ、交互に無線タグ回路部との通信を試みるとき、第1通信アンテナは第1時間区分を持ち時間とし、第2通信アンテナは第2時間区分を持ち時間とする。この結果、無線タグ回路部の検出時において発生しうる最大検出誤差はこれら第1時間区分と第2時間区分との和になる。したがって、通過判定手段が判定した2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間が、これら2つの時間区分の和より小さかった場合には、検出分解能を超え、搬送物の搬送順序が正しく検出されていない可能性がある。
【0026】
そこで、このような場合には、搬送制御手段に備えられた減少制御手段が、搬送手段の搬送速度を減少させる。これにより、それ以降は、通過判定手段が判定する2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間を、第1時間区分と第2時間区分との和より大きくすることができる。この結果、搬送物の搬送順序を、確実に正しく検出することができる。
【0027】
第8発明の搬送物管理システムは、上記第7発明において、前記搬送制御手段は、前記搬送手段の搬送速度が第2搬送速度である場合における前記時間差が、前記第1時間区分の3倍以上、若しくは、前記第2時間区分の3倍以上、であった場合には、前記搬送手段の搬送速度を前記第2搬送速度よりも増大させるように制御する増大制御手段を備えることを特徴とする。
【0028】
前述したように、検出時の最大検出誤差は第1時間区分と第2時間区分との和であり、2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間がそれら2つの和よりも小さいと正しい検出ができない可能性がある。しかしながら、2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間が、第1時間区分や第2時間区分の3倍より大きい場合には、検出分解能に対し余裕が大きすぎ、搬送物どうしの間隔が無駄に空きすぎている。
【0029】
そこで、本願第8発明では、このような場合に、搬送制御手段に備えられた減少制御手段が、搬送手段の搬送速度を減少させる。これにより、上記の無駄をなくし、効率のよい搬送順序の検出を行うことができる。
【0030】
上記目的を達成するために、第9発明の搬送物管理システムは、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置とを有する搬送物管理システムであって、前記切替制御手段は、前記第1時間区分及び前記第2時間区分を増減しつつ、当該増減させた第1時間区分及び第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行うことを特徴とする。
【0031】
本願第9発明においては、搬送手段の搬送速度が第1搬送速度である場合における、1つの無線タグ回路部の通過時間と別の無線タグ回路部の通過時間との時間差が、第1時間区分及び第2時間区分の和よりも小さかった場合には、切替制御手段で第1時間区分及び第2時間区分を減少させて、上記時間差を第1時間区分及び第2時間区分の和より大きくすることが可能である。この結果、搬送手段の搬送速度を変更せずとも、搬送物の搬送順序を正しく検出することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態のリーダの概略を表すシステム構成図である。
【図2】無線タグに備えられた無線タグ回路部の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図3】リーダの第1アンテナ及び第2アンテナと無線タグ回路部との間で送受される信号のタイムチャートの一例を表す図である。
【図4】各無線タグ回路部の通信感度にばらつきがある場合でも、搬送物の搬送順序を正確に検出可能である原理を説明するための図である。
【図5】高感度の場合及び低感度の場合における、無線タグ回路部のエリアの中心位置の通過タイミングを判定する手法を説明するための図である。
【図6】リーダの制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図7】第1アンテナによる通信処理であるステップS100の詳細内容を表すフローチャートである。
【図8】第2アンテナによる通信処理であるステップS200の詳細内容を表すフローチャートである。
【図9】重複通信可能領域の範囲を拡大させる変形例のリーダの概略を表すシステム構成図である。
【図10】ベルトコンベアの搬送速度制御を行う変形例の搬送物管理システムの概略を表すシステム構成図である。
【図11】ベルトコンベアの搬送速度制御を行う変形例における、リーダの制御回路により実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図12】ベルトコンベアの搬送速度制御を行う変形例における、リーダの制御回路により実行される他の制御内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態のリーダ100の概略を表すシステム構成図である。
【0035】
リーダ100(無線タグ読み取り装置)は、ベルトコンベアBCにより所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送される複数の搬送物Cのそれぞれに設けられた無線タグTを順次検出し、各搬送物Cの搬送順序を管理するためのものである。無線タグTは、情報を記憶する後述のメモリ部155を備えたIC回路部150と情報を送受信するためのタグアンテナ151とを備えた無線タグ回路部Toを備えている。
【0036】
リーダ100は、リーダ本体10と、第1アンテナA及び第2アンテナBとを有している。第1アンテナA(第1通信アンテナ)は、搬送物Cの搬送経路の所定の部分に第1通信可能領域21(第1通信可能範囲)を形成し、第2アンテナB(第2通信アンテナ)は、搬送経路の上記第1通信可能領域21より搬送方向下流側の部分に、第1通信可能領域21と一部重なるような第2通信可能領域22(第2通信可能範囲)を形成する。これら第1通信可能領域21と第2通信可能領域22とが重なる領域である重複通信可能領域23(重複通信範囲)では、第1アンテナA及び第2アンテナBの双方が無線タグTを検出可能である。以下、第1通信可能領域21から重複通信可能領域23を除いた領域を「エリア1」、第2通信可能領域22から重複通信可能領域23を除いた領域を「エリア2」、重複通信可能領域23に相当する領域を「エリア3」と呼称する。
【0037】
第1アンテナA及び第2アンテナBは、当該第1アンテナAの軸心位置と当該第2アンテナの軸心位置とを結ぶ線または面L1が、ベルトコンベアBCによる搬送経路における無線タグ回路部Toの移動方向と平行となるように配置されている。なお、上記軸心位置はアンテナの基準位置の一例であり、例えば第1アンテナA及び第2アンテナBがループアンテナやコイルアンテナである場合にそのコイルの軸心の位置を表すものである。
【0038】
リーダ本体10は、制御回路11と、高周波回路12と、切替スイッチ13と、計時部14と、記憶部15とを有している。制御回路11は、無線タグ回路部ToのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに、無線タグ回路部ToのIC回路部150へアクセスするための各種コマンドを生成する。高周波回路12は、上記各種コマンドに基づき、第1アンテナA又は第2アンテナBを介し無線タグ回路部ToのIC回路部150の情報へアクセスする。切替スイッチ13は、制御回路11の制御に基づき、第1アンテナAと第2アンテナBとが交互に通信を行うようにアンテナA,Bの切替を行う。この第1アンテナAと第2アンテナBとの切替タイミングは予め設定されている。
【0039】
計時部14(計時手段)は、第1アンテナA及び第2アンテナBで無線タグ回路部Toからの応答信号としてのタグ情報を受信したタイミングを計時する。また記憶部15(記憶手段)は、上記計時部14で計時したタイミングを通信タイミングとして記憶する。なお、この計時部14で計時して記憶部15に記憶するタイミングは特許請求の範囲に記載の通信時間に相当し、所定の基準時からの相対的な時間であってもよいし、時刻でもよい。
【0040】
上記制御回路11は、切替制御される第1アンテナA及び第2アンテナBで受信された無線タグ回路部Toからの応答信号の有無に基づき、記憶部15に記憶された通信タイミングを用いて、搬送経路に沿って移動する無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する。この判定内容の詳細については後述する。
【0041】
図2は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路部Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0042】
図2において、無線タグ回路部Toは、上述したようにリーダ100の第1アンテナA又は第2アンテナBと非接触で信号の送受信を行うタグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続されたIC回路部150とを有している。
【0043】
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155(記憶部)と、タグアンテナ151に接続された変復調部156と、リーダ100からの応答要求コマンドの受信時に当該無線タグ回路部Toが応答信号をどの識別スロットに出力するかを決定するための乱数を発生させる乱数発生器158と、上記メモリ部155、クロック抽出部154、乱数発生器158、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路部Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0044】
変復調部156は、タグアンテナ151により受信されたリーダ100の第1アンテナA又は第2アンテナBからの質問波の復調を行い、また、制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波として送信する。
【0045】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出し、当該クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0046】
乱数発生器158は、リーダ100からの応答要求コマンドに指定されているスロット数指定値Qに対し、0から2Q−1までの乱数を発生させる。
【0047】
制御部157は、変復調部156により復調された受信信号を解釈し、メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を乱数発生器158により発生させた乱数に対応する識別スロットで変復調部156によりタグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0048】
なお、メモリ部155には、その時点でのインベントリ状態を判別するためのインベントリフラグ(切替識別子)が、自動的にその内容を反転変化可能に記憶されている。ここでインベントリ状態とは、その時点での無線タグ回路部Toの通信状態を表すものであり、本実施形態では無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は「A」と「B」の2種類の状態があり、このインベントリフラグの内容から当該無線タグ回路部Toがインベントリを完了しているかどうかを判別できるようになっている。なお、このようにメモリ部155にインベントリフラグを記憶させるのではなく、制御部157内のレジスタを用いて実質的に同等の機能を果たすようにしてもよい。
【0049】
ここで、本実施形態のリーダ100では、第1アンテナA及び第2アンテナBによるそれぞれの無線通信において、インベントリフラグの内容が互いに異なる内容である無線タグ回路部Toに対してのみタグ情報を要求する。すなわち、第1アンテナAによる無線通信の場合、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対してのみタグ情報を要求するコマンドを送信する。また第2アンテナBによる無線通信の場合、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対してのみタグ情報を要求するコマンドを送信する。なお、インベントリフラグの内容が「A」である状態が特許請求の範囲に記載の第1状態に相当し、インベントリフラグの内容が「B」である状態が第2状態に相当する。次に、この詳細について説明する。
【0050】
図3は、リーダ100と無線タグ回路部Toとの間で送受される信号のタイムチャートの一例を表す図であり、図3(a)は第1アンテナAによる無線通信を行う場合、図3(b)は第2アンテナBによる無線通信を行う場合を示している。なお、この図3に示す信号の送受方法は、公知のRandom−Slotted Collision arbitration方式に基づくEPC global Class−I Generation−IIの規格に準じたものであり、図中では左側から右側に向かって時系列変化するよう示している。また、リーダ100と無線タグ回路部Toとの間に記載されている矢印は信号の送信方向を示しており、送信相手が不特定である場合には破線で示し、送信相手が特定されている場合には実線で示している。
【0051】
まず、図3(a)を用いて第1アンテナAによる無線通信の場合を説明する。図3(a)において、リーダ100は、まず最初にエリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対して「Select」コマンドを送信する。この「Select」コマンドは、それ以降にリーダ100が無線通信を行う無線タグ回路部Toの条件を指定するコマンドであり、ここではインベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toを指定する。これにより、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。
【0052】
なお、本実施形態では、例えば事前に図示しない無線通信装置によって各無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容を変更する等によって、最初にエリア1内に進入する全ての無線タグ回路部Toについて、そのインベントリフラグの内容は「A」に統一されている。
【0053】
次にリーダ100は、無線タグ回路部Toに対しタグ情報を応答発信させるよう要求する「Query」コマンドを送信する。この「Query」コマンドには、所定の数で指定するスロット数指定値Qが含まれている。高周波回路12から第1アンテナAを介し「Query」コマンドが送信されると、各無線タグ回路部Toは0から2Q−1(=2のQ乗−1)までの乱数を乱数発生器158により生成し、スロットカウント値SCとして保持する。
【0054】
また、この「Query」コマンドでは、応答を要求する無線タグ回路部Toをインベントリフラグの内容で限定することができる。ここでは、「Query」コマンドはインベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対してのみ応答を要求し、図中に示しているようにインベントリフラグの内容が「A」となっている無線タグ回路部Toがその後にリーダ100に応答する。
【0055】
「Query」コマンドの送信後、リーダ100は所定の識別スロットで無線タグ回路部Toからの応答を待ち受ける。この識別スロットとは、この「Query」コマンドまたは後述する「QueryRep」コマンドを始めに送信してから所定の期間で区分される時間枠である。識別スロットは、通常、「Query」コマンドの第1識別スロットの1回に「QueryRep」コマンドの第2以降の識別スロットの2Q−1回を足した2Q回連続して繰り返される。
【0056】
そして、図示の例のように無線タグ回路部Toでスロットカウント値SCとして値0を生成したものは、この「Query」コマンドを含んだ第1識別スロットで応答する。このとき、当該無線タグ回路部Toはタグ情報を送信する許可を得るための例えば16ビットの擬似乱数を用いた「RN16」レスポンスを応答信号としてリーダ100へ送信する。
【0057】
そして、この「RN16」レスポンスを受信したリーダ100は、この「RN16」レスポンスに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを送信する。この「Ack」コマンドを受信した無線タグ回路部Toは、その無線タグ回路部To自身が先に送信した「RN16」レスポンスと受信した「Ack」コマンドが対応していると判断した場合に、当該無線タグ回路部Toの個体がタグ情報の送信を許可されたものとみなしてタグ情報を送信する。このタグ情報にはタグIDが含まれる。このようにして、一つの識別スロットにおける信号の送受信が行われる。
【0058】
その後、さらに2番目以降の識別スロットでは、リーダ100は「Query」コマンドの代わりに「QueryRep」コマンドを送信し、その直後に設けられる識別スロット時間枠で他の無線タグ回路部Toの応答を待つ。このとき、上記EPC global Class−I Generation−IIの規格に準拠する仕様の無線タグTの無線タグ回路部Toでは、この「QueryRep」コマンドを受信した際にインベントリフラグの内容をそれまでとは異なる他の内容に自動的に反転変化させるよう前出の「Select」コマンドで指定できる。ここでは、「QueryRep」コマンドを受信した無線タグ回路部Toは、それまで「A」となっていたインベントリフラグの内容を他方の「B」に自動的に反転させる。これにより、それ以降でインベントリフラグの内容を「A」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても、応答動作を行うことのないスタンバイ状態となる。
【0059】
この「QueryRep」コマンドもまた、応答を要求する無線タグ回路部Toをインベントリフラグの内容で限定することができる。そして、この「QueryRep」コマンドを受信した各無線タグ回路部Toでインベントリフラグが一致するものは、自身の上記スロットカウント値SCの値を一つだけ減算して保持し、当該スロットカウント値SCが値0になった時点の識別スロットで「RN16」レスポンスを初めとした信号の送受信をリーダ100との間で行う。
【0060】
なお、各識別スロットで該当する無線タグ回路部To、すなわち当該識別スロットでスロットカウント値SCが0となるものがない場合には、「Query」コマンドまたは「QueryRep」コマンド以外の送受信が行われないまま所定の時間枠でその識別スロットを終了する。また、送受信する複数のコマンドの間の時間間隔は、適切な間隔となるよう適宜タイミングが調整される。
【0061】
このように各無線タグ回路部Toが異なる識別スロットで応答信号を返信することで、第1アンテナAを介し、リーダ100は混信を受けることなく一つ一つの無線タグ回路部Toのタグ情報を明確に受信し取り込むことができる。また、同一の無線タグ回路部Toが同じインベントリフラグの内容を指定する「Query」コマンドを複数回受信しても、最初の1回だけ正常に「Query」コマンドに応答できてからはその後に受信する「Query」コマンドには応答しなくなるため、同一の無線タグ回路部Toがタグ情報の送信をムダに繰り返すことを防ぐことができる。
【0062】
次に、図3(b)を用いて第2アンテナBによる無線通信の場合を説明する。第2アンテナBによる無線通信の場合も、インベントリフラグの対応関係が反対となること以外は、信号の送受信内容は上述した第1アンテナAの場合と同様である。すなわち第2アンテナBによる無線通信では、最初にエリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対して「Select」コマンドを送信し、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toを指定する。これにより、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。なお、本実施形態においては、上述したようにエリア1において第1アンテナAとの無線通信により無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は「A」から「B」に反転されるため、最初にエリア3に進入する無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は「B」となっている。
【0063】
そして、「Query」コマンドでインベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対して応答を要求し、該当する無線タグ回路部Toがリーダ100に応答する。その後、「RN16」レスポンスを受信したリーダ100は「Ack」コマンドを送信し、この「Ack」コマンドを受信した無線タグ回路部Toからタグ情報を受信する。その後、2番目以降の識別スロットでリーダ100は「QueryRep」コマンドを送信し、この「QueryRep」コマンドを受信した無線タグ回路部Toは、それまで「B」となっていたインベントリフラグの内容を他方の「A」に自動的に反転させる。これにより、それ以降でインベントリフラグの内容を「B」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても、応答動作を行うことのないスタンバイ状態となる。
【0064】
上記構成であるリーダ100は、搬送経路に沿って移動する無線タグ回路部Toのエリア3の略中心位置の通過タイミングを判定することにより、各搬送物Cの搬送順序を検出する。次に、この詳細内容について説明する。
【0065】
まず、無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定することにより、各無線タグ回路部Toの通信感度にばらつきがある場合でも、搬送物Cの搬送順序を正確に検出可能である原理を説明する。
【0066】
図4はこの原理を説明するための図であり、図4(a)は感度が比較的高い無線タグ回路部Toの場合、図4(b)は感度が比較的低い無線タグ回路部Toの場合を示している。
【0067】
一般に、無線タグ回路部Toは、ICチップ150の性能や、タグアンテナ151とICチップ150との取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響等により、通信感度にばらつきが生じる。このため、リーダ側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によって通信アンテナからの通信可能領域が伸び縮みすることになる。
【0068】
本実施形態のように、2つのアンテナA,Bが重複通信可能領域23を形成する場合も上記と同様である。すなわち、図4(a)に示すように、通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては、第1アンテナA及び第2アンテナBの通信可能領域21,22がそれぞれ広くなることから、重複する領域であるエリア3の範囲が相対的に広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては、図4(b)に示すように、第1アンテナA及び第2アンテナBの通信可能領域21,22がそれぞれ狭くなることから、重複する領域であるエリア3の範囲が相対的に狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によってエリア3の大きさが変動することとなる。しかしながら、このときのエリア3の大きさの変動は、もともとは各アンテナA,Bからの通信可能領域の伸び縮みに由来するものである。したがって、図4中に示す中心線L2に示すように、広くなったときのエリア3の中心位置と、狭くなったときのエリア3の中心位置とは、ほとんど変化しないという特性がある。
【0069】
図5は、無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する手法を説明するための図であり、図5(a)は感度が比較的高い無線タグ回路部Toの場合、図5(b)は感度が比較的低い無線タグ回路部Toの場合を示している。なお、図中では左側から右側に向かって時系列変化するよう示している。
【0070】
図5(a)及び図5(b)において、アンテナ「A」「B」はそれぞれ第1アンテナA及び第2アンテナBによる通信を示しており、図に示すように第1アンテナAと第2アンテナBとが交互に通信を行うように切替制御が行われる。また通信範囲は、第1アンテナA及び第2アンテナBによって形成される前述のエリア1〜3であり、図5(a)及び図5(b)に示すように感度の高い無線タグ回路部Toの方が感度の低い無線タグ回路部Toよりも各エリアの大きさが大きくなっている。またIFは、無線タグ回路部Toに記憶されたインベントリフラグの内容であり、前述したように「A」「B」の2種類の状態がある。また通信タイミングは、無線タグ回路部Toからタグ情報の読み取りを行ったタイミング、すなわち前述したようにリーダ100が「Ack」コマンドを受信した無線タグ回路部Toからタグ情報を受信したタイミングである。
【0071】
まず感度の高い無線タグ回路部Toの場合を説明する。図5(a)において、最初にエリア1内に進入する無線タグ回路部Toは、前述したようにインベントリフラグの内容が「A」となっている。この無線タグ回路部Toがエリア1内に進入すると、エリア1内では第1アンテナAとの通信のみが行われることから、第2アンテナBによる通信の間はタグ情報の読み取りが行われない。その後、第1アンテナAによる通信に切り替えられると、無線タグ回路部Toのタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、1回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。これにより、無線タグ回路部Toは、これ以降エリア1内において第1アンテナAとの通信によってインベントリフラグの内容を「A」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても応答動作を行わなくなる。なお、第2アンテナBから第1アンテナAへの切替タイミングと上記通信タイミングとの間には、無線タグ回路部Toの応答遅れによる若干のずれが生じている。
【0072】
その後、インベントリフラグの内容が「B」となった無線タグ回路部Toがエリア3内に進入すると、エリア3内では第1アンテナA及び第2アンテナBの双方との通信が行われる。ここでは、まず第2アンテナBによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、2回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。その後第1アンテナAによる通信に切り替えられると、第1アンテナAによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、3回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。このようにして、エリア3内におけるアンテナの切替が連続して行われ、インベントリフラグの内容が連続して反転される。
【0073】
その後、この例では第1アンテナAによる通信によって7回目のタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転された状態で、無線タグ回路部Toがエリア2内に進入する。エリア2内では第2アンテナBとの通信のみが行われることから、第2アンテナBによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、8回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。これにより、無線タグ回路部Toは、これ以降エリア2内において第2アンテナBとの通信によってインベントリフラグの内容を「B」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても応答動作を行わなくなる。その結果、無線タグ回路部Toはインベントリフラグの内容が「A」となった状態でエリア2外へ退出する。
【0074】
上述したような状況において、リーダ100は、記憶部15に記憶された通信タイミングの中から、2回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3への進入タイミングであり、8回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3からの退出タイミングであると判定し、これらの判定結果に基づき、進入タイミングと退出タイミングとの中間の中間タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。すなわち上記の例では、2〜8回目の7個の通信タイミングの中央である5回目の通信タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。図5(a)では、このエリア3の中心位置の通過タイミングと判定された通信タイミングを黒色の三角形で図示している。
【0075】
次に感度の低い無線タグ回路部Toの場合を説明する。図5(b)において、無線タグ回路部Toがエリア1内に進入すると、第1アンテナAによる通信によって無線タグ回路部Toのタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、1回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。これ以降は、前述したようにエリア1内において第1アンテナAとの通信によってインベントリフラグの内容を「A」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても応答動作を行わない。
【0076】
その後、インベントリフラグの内容が「B」となった無線タグ回路部Toがエリア3内に進入すると、第2アンテナBによる通信によってタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、2回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。その後第1アンテナAによる通信に切り替えられると、第1アンテナAによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、3回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。このようにして、エリア3内におけるアンテナの切替が連続して行われ、インベントリフラグの内容が連続して反転される。
【0077】
その後、この例では第2アンテナBによる通信によって4回目のタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転された状態で、無線タグ回路部Toがエリア2内に進入する。エリア2内では第2アンテナBとの通信のみが行われることから、上記4回目のタグ情報の読み取りによってインベントリフラグの内容が「A」となった状態の無線タグ回路部Toは、タグ情報の読み取りが行われない。その結果、無線タグ回路部Toはエリア2内においてインベントリフラグの内容を反転されることなく「A」の状態のままでエリア2外へ退出する。
【0078】
上述したような状況において、リーダ100は、記憶部15に記憶された通信タイミングの中から、2回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3への進入タイミングであり、4回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3からの退出タイミングであると判定し、これらの判定結果に基づき、進入タイミングと退出タイミングとの中間の中間タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。すなわち上記の例では、2〜4回目の3個の通信タイミングの中央である3回目の通信タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。なお図5(b)でも上記と同様に、このエリア3の中心位置の通過タイミングと判定された通信タイミングを黒色の三角形で図示している。
【0079】
以上のようにしてエリア3の中心位置の通過タイミングを判定することで、前述の図4において示したように、無線タグ回路部Toの感度の高低に関わらずエリア3の中心位置はほとんど変化しないことから、先行する無線タグ回路部Toは先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部Toは後の順番で検出することができる。すなわち、通信感度が高い無線タグ回路部Toや通信感度が低い無線タグ回路部Toが混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、各搬送物Cの搬送順序を正しく把握することができる。
【0080】
なお、上記エリア3の中心位置の通過タイミングの判定を行う際に、無線タグ回路部Toの検出時において発生しうる最大検出誤差は、第1アンテナAによる通信時間ΔT(第1時間区分)及び第2アンテナBによる通信時間ΔT(第2時間区分)との和、すなわちΔTの2倍になる。したがって、連続する2つの無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置における通過タイミングの時間差が、上記通信時間ΔTの2倍より小さい場合には、検出分解能を超え、搬送物Cの搬送順序を正しく検出できない可能性があることから、上記2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍より大きくなるように、ベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度と搬送物Cの搬送間隔を設定することにより、上記判定誤差の有無に関わらず各搬送物Cの搬送順序を正しく把握することができる。
【0081】
図6は、リーダ100の制御回路11によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【0082】
ステップS10では、制御回路11は、第1アンテナA及び第2アンテナBの切替タイミングの設定等、無線通信に係わる必要なパラメータの初期設定を行う。
【0083】
ステップS100では、制御回路11は、切替スイッチSWを第1アンテナA側に切り替え、第1アンテナAによる通信処理を行う。
【0084】
ステップS200では、制御回路11は、切替スイッチSWを第2アンテナB側に切り替え、第2アンテナBによる通信処理を行う。
【0085】
ステップS20では、制御回路11は、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが存在するか否かを判定する。ここでタグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toとは、エリア1内において一度タグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転されたことによって応答しなくなった無線タグ回路部Toと、エリア2内においてタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転されたことによって、又はエリア2への進入時にインベントリフラグの内容が「A」であることによって、エリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toとの2種類の無線タグ回路部Toを指すものである。通信可能領域内にいずれの無線タグ回路部Toも存在しない場合には、判定が満たされずに後述のステップS50に移る。一方、通信可能領域内にいずれかの無線タグ回路部Toが存在する場合には、判定が満たされてステップS30に移る。
【0086】
ステップS30では、制御回路11は、上記ステップS20で存在すると判定した無線タグ回路部Toのタグカウントが−1であるか否かを判定する。ここでタグカウントとは、エリア1での1回目の通信時に−1に設定され、その後通信が行われるごとに1ずつ加算されるカウント値である。すなわち、本ステップにおいてタグカウントが−1である場合には、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが、上述したエリア1内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合に該当し、エリア1〜3における通信タイミングのカウントが完了していないことを意味する。一方、タグカウントが−1でない場合には、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが、上述したエリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合に該当し、エリア1〜3における通信タイミングのカウントが完了したことを意味する。タグカウントが−1である場合には、判定が満たされて後述のステップS50に移る。一方、タグカウントが−1でない場合には、判定が満たされずにステップS40に移る。
【0087】
ステップS40では、制御回路11は、上述したようにエリア1〜3における通信タイミングのカウントが完了していることから、タグカウント値を2で割った値に対応する時間を出力する。この出力結果は例えば適宜の記憶手段に記憶され、搬送物Cの搬送順序の判定に用いられる。
【0088】
ここで、タグカウント値を2で割ることでエリア3の中心位置の通過タイミングを判定できる理由を説明する。前述の図5に示すように、本実施形態では無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は最初は「A」であり最終的にも必ず「A」となる。したがってエリア1〜3内における通信タイミングの総数は偶数となる。ここで、1回目の通信タイミングはエリア1に最初に進入した時点で行われるものであるから、エリア3の中心位置の通過タイミングを判定する際には除外する必要がある。よって上記偶数である通信タイミングの総数より1を減じた値である奇数の中心の数に対応するタイミングが、エリア3の中心位置の通過タイミングとなる。
【0089】
本実施形態では、上述したようにタグカウントの初期値を−1とし、当該カウント結果を2で割ることにより、上記奇数の中心の数を求めることが可能である。例えば前述の図5(a)に示す例では、通信タイミングの総数が8であるからタグカウントは−1より開始して6が最終値となる。したがって、タグカウント3に対応する5回目の通信タイミングがエリア3の中心位置の通過タイミングとなる。また図5(b)に示す例では、通信タイミングの総数が4であるからタグカウントは−1より開始して2が最終値となる。したがって、タグカウント1に対応する3回目の通信タイミングがエリア3の中心位置の通過タイミングとなる。
【0090】
ステップS50では、制御回路11は、通信処理を終了するか否かを判定する。この判定は、例えば操作者によって通信処理を終了する旨の指示入力がなされたか否かにより行われる。通信処理を終了しない場合には、判定が満たされずに先のステップS100に戻る。一方、通信処理を終了する場合には、判定が満たされて本フローを終了する。
【0091】
上記において、ステップS100、ステップS200、及びステップS50は、特許請求の範囲に記載の切替制御手段を構成する。また、ステップS20及びステップS30が退出判定手段を構成し、ステップS40が中間判定手段を構成し、これらステップS20、ステップS30、及びステップS40と、後述の図8に示すステップS225とが、通過判定手段を構成する。
【0092】
図7は、第1アンテナAによる通信処理である上記ステップS100の詳細内容を表すフローチャートである。
【0093】
ステップS105では、制御回路11は、切替スイッチSWを第1アンテナA側に切り替え、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対し、「Select」コマンドを送信する。これにより、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。また、この「select」コマンド中で、タグのIDが読み取れられた際にインベントリフラグの内容を自動的に反転変化させるよう指定する。
【0094】
ステップS110では、制御回路11は、スロット数指定値Qの値をQmaxに設定する。この設定値Qmaxは、当該第1アンテナAによる通信処理において、どれだけの識別スロット数でタグ情報の検出を行うかを設定するパラメータである。この設定値Qmaxは、アンテナA,Bの通信可能領域21,22の大きさや、その中において無線通信が可能であると予想される無線タグ回路部Toの個数に応じて、あらかじめ設定されている。
【0095】
ステップS115では、制御回路11は、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対し、タグ情報を応答発信させるよう要求する「Query」コマンドを送信する。この「Query」コマンドには、上記ステップS110で設定したスロット数指定値Qmaxが含まれている。
【0096】
ステップS120では、制御回路11は、スロット数をカウントするための変数nを1に初期化する。
【0097】
ステップS125では、制御回路11は、当該識別スロットに対応する所定の受信時間の間に無線タグ回路部Toからの応答信号として「RN16」レスポンスを正常に受信したか否かを判定する。「RN16」レスポンスを正常に受信しない場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在しないとみなし、判定が満たされずに後述のステップS155へ移る。一方、「RN16」レスポンスを正常に受信した場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在するとみなし、判定が満たされてステップS130に移る。
【0098】
ステップS130では、制御回路11は、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する無線タグ回路部Toに対し、上記ステップS115で受信された「RN16」レスポンスに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを送信する。
【0099】
ステップS135では、制御回路11は、上記「Ack」コマンドに対応して無線タグ回路部Toより返信されたタグ情報を受信し、このタグ情報に含まれるタグIDに基づき既読の無線タグ回路部Toであるか否かを判定する。なお、制御回路11は、初めて読み取ったタグIDを適宜の記憶手段に記憶するようになっており、上記判定は取得したタグIDと当該記憶されたタグIDとを比較することにより行われる。初めて読み取ったタグIDである場合には、当該無線タグ回路部Toに対するエリア1での1回目の通信であるとみなし、判定が満たされずにステップS140に移る。
【0100】
ステップS140では、制御回路11は、前述したタグカウントを−1に設定する。その後、後述するステップS155に移る。
【0101】
一方、上記ステップS135において、既読のタグIDである場合には、当該無線タグ回路部Toに対するエリア3以降での複数回目の通信であるとみなし、判定が満たされてステップS145に移る。
【0102】
ステップS145では、制御回路11はタグカウントの値に1を加え、ステップS150では、制御回路11は計時部14より時間情報を取得し、上記タグカウントに対応する通信時間として記憶部15に記憶する。
【0103】
ステップS155では、制御回路11は、スロット数をカウントするための上記変数nが2Qであるか否かを判定する。スロット数が2Qに達していない場合には、判定が満たされずにステップS160に移る。
【0104】
ステップS160では、制御回路11は上記変数nに1を加え、ステップS165では、制御回路11は、次の識別スロットにおいて、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対し、「QueryRep」コマンドを送信する。そして、先のステップS125に戻る。なお、本ステップにおいて送信する「QueryRep」コマンドが、特許請求の範囲に記載の第1切替コマンドに相当し、本ステップが第1切替コマンド送信手段を構成する。
【0105】
一方、上記ステップS155において、制御回路11は、スロット数が2Qに達した場合には、判定が満たされてステップS170に移る。
【0106】
ステップS170では、制御回路11は、上記ステップS110でQmaxに設定したスロット数指定値Qが0であるか否かを判定する。スロット数指定値Qが0でない場合には、判定が満たされずにステップS175に移り、スロット数指定値Qより1を減じて先のステップS115に戻る。一方、上記ステップS170において、スロット数指定値Qが0である場合には、判定が満たされて本フローを終了する。
【0107】
図8は、第2アンテナBによる通信処理である上記ステップS200の詳細内容を表すフローチャートである。
【0108】
ステップS205では、制御回路11は、切替スイッチSWを第2アンテナB側に切り替え、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対し、「Select」コマンドを送信する。これにより、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。また、この「select」コマンド中で、タグのIDが読み取れられた際にインベントリフラグの内容を自動的に反転変化させるよう指定する。
【0109】
ステップS210では、制御回路11は、スロット数指定値Qの値をQmaxに設定する。
【0110】
ステップS215では、制御回路11は、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対し、タグ情報を応答発信させるよう要求する「Query」コマンドを送信する。この「Query」コマンドには、上記ステップS210で設定したスロット数指定値Qmaxが含まれている。
【0111】
ステップS220では、制御回路11は、スロット数をカウントするための変数nを1に初期化する。
【0112】
ステップS225では、制御回路11は、当該識別スロットに対応する所定の受信時間の間に無線タグ回路部Toからの応答信号として「RN16」レスポンスを正常に受信したか否かを判定する。「RN16」レスポンスを正常に受信しない場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在しないとみなし、判定が満たされずに後述のステップS255へ移る。一方、「RN16」レスポンスを正常に受信した場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在するとみなし、判定が満たされてステップS230に移る。
【0113】
ステップS230では、制御回路11は、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する無線タグ回路部Toに対し、上記ステップS215で受信された「RN16」レスポンスに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを送信する。
【0114】
なお、エリア3又はエリア2内において第2アンテナBとの無線通信によりタグ情報の読み取りを行った無線タグ回路部Toは、その前にエリア1内において第1アンテナAとの無線通信により必ず既読となっているため、本フローチャートでは前述のステップS135及びステップS140に対応する手順は含まれない。
【0115】
ステップS245では、制御回路11はタグカウントの値に1を加え、ステップS250では、制御回路11は計時部14より時間情報を取得し、上記タグカウントに対応する通信時間として記憶部15に記憶する。
【0116】
ステップS255では、制御回路11は、スロット数をカウントするための上記変数nが2Qであるか否かを判定する。スロット数が2Qに達していない場合には、判定が満たされずにステップS260に移る。
【0117】
ステップS260では、制御回路11は上記変数nに1を加え、ステップS265では、制御回路11は、次の識別スロットにおいて、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対し、「QueryRep」コマンドを送信する。そして、先のステップS225に戻る。なお、本ステップにおいて送信する「QueryRep」コマンドが、特許請求の範囲に記載の第2切替コマンドに相当し、本ステップが第2切替コマンド送信手段を構成する。
【0118】
一方、上記ステップS255において、制御回路11は、スロット数が2Qに達した場合には、判定が満たされてステップS270に移る。
【0119】
ステップS270では、制御回路11は、上記ステップS210でQmaxに設定したスロット数指定値Qが0であるか否かを判定する。スロット数指定値Qが0でない場合には、判定が満たされずにステップS275に移り、スロット数指定値Qより1を減じて先のステップS215に戻る。一方、上記ステップS270において、スロット数指定値Qが0である場合には、判定が満たされて本フローを終了する。
【0120】
上記において、ステップS225は、特許請求の範囲に記載の進入判定手段を構成する。
【0121】
以上説明した実施形態のリーダ100においては、搬送物Cの搬送経路に沿って、第1アンテナAの第1通信可能領域21と、第2アンテナBの第2通信可能領域22とが、それぞれ形成される。また、制御回路11により、第1アンテナAと第2アンテナBとは、互いに交互に通信を行うように切り替えられる。ここで、第1アンテナAの第1通信可能領域21と第2アンテナBの第2通信可能領域22とは、一部が重なり合って重複通信可能領域であるエリア3を形成している。このため、搬送により順次移動してくる無線タグ回路部Toは、上記エリア3内を移動している間は、前述のように切り替えられる第1アンテナAからの信号と第2アンテナBからの信号との、両方の信号に応答可能となる。
【0122】
ここで、一般に無線タグ回路部Toは、前述したようにICチップ150の性能や、タグアンテナ151とICチップ150との取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響等により、通信感度にばらつきが生じる。このため、リーダ側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によってアンテナからの通信可能領域が伸び縮みすることになる。
【0123】
本実施形態のリーダ100のように、2つのアンテナA,Bが重複通信可能領域であるエリア3を形成する場合も、上記同様である。通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては相対的にエリア3が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては相対的にエリア3が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によって重複通信可能領域であるエリア3の大きさが変動することとなる。しかしながら、このときのエリア3の大きさの変動は、もともとは各アンテナA,Bからの通信可能領域21,22の伸び縮みに由来するものである。したがって、広くなったときのエリア3の中心位置と、狭くなったときのエリア3の中心位置とは、ほとんど変化しないという特性がある。
【0124】
本実施形態はこの特性を応用し、搬送物Cに設けられた無線タグ回路部Toが搬送経路に沿って順次移動してくるとき、当該無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する。これにより、通信感度が高い無線タグ回路部Toや通信感度が低い無線タグ回路部Toが混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、必ず、先行する無線タグ回路部Toは先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部Toは後の順番で検出するようになる。すなわち、リーダ100が、無線タグ回路部Toを、搬送されてくる順序とは異なる順序で誤って検出するのを防止することができる。このようにして、本実施形態によれば、各無線タグ回路部Toのエリア3の略中央位置の通過タイミングを検出することで、搬送経路における各搬送物Cの搬送順序を確実に正しく把握することができる。
【0125】
また、本実施形態では特に、無線タグ回路部Toのエリア3への進入タイミングを判定し、且つ無線タグ回路部Toのエリア3からの退出タイミングを判定する。そして、これらの判定結果に基づき、進入タイミングと退出タイミングとの中間の中間タイミングを判定するので、各無線タグ回路部Toがエリア3の中心を通過するタイミングを、より正確に検出することができる。
【0126】
また、本実施形態では特に、第1アンテナA及び第2アンテナBは、当該第1アンテナAの軸心位置と当該第2アンテナBの軸心位置とを結ぶ線L1が、ベルトコンベアBCによる搬送経路における無線タグ回路部Toの移動方向と平行となるように配置されている。このような配置にすることにより、2つのアンテナA,Bの通信可能領域21,22が重なるエリア3の中心位置を、無線タグ回路部Toの感度の高低に関係なく、確実に一定とすることができる。
【0127】
また、本実施形態では特に、第1アンテナAによる無線通信によりタグ情報の読み取りが行われると、無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転され、第2アンテナBによる無線通信によりタグ情報の読み取りが行われると、無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。これにより、無線タグ回路部Toが、搬送経路上流側において第1アンテナAと一度通信を行うと以降は同じ第1アンテナAとは通信しなくなり、搬送経路下流側において第2アンテナBと一度通信を行うと、以降は同じ第2アンテナBとは通信しなくなる。この結果、重複通信可能領域であるエリア3以外での無駄な通信をなるべく避け、通信効率を向上することができる。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0129】
(1)エリア3の範囲を拡大させる場合
上記実施形態では、第1アンテナA及び第2アンテナBをそれらの軸心位置を結ぶ線が無線タグ回路部Toの移動方向と平行となるように配置したが、エリア3の範囲を拡大させるために、第1アンテナA及び第2アンテナBを互いに傾斜させて設けてもよい。
【0130】
図9は、本変形例のリーダ100の概略を表すシステム構成図である。この図9に示すように、第1アンテナA及び第2アンテナBは、当該第1アンテナAのメインローブ方向の線Laと当該第2アンテナBのメインローブ方向の線Lbとが、ベルトコンベアBCの搬送経路上において交差するように、配置されている。なお、上記メインローブ方向とは、第1アンテナA及び第2アンテナBが指向性を有するアンテナである場合に、電波の放射が最大となる方向である。このような配置にすることにより、2つのアンテナA,Bの通信可能領域21,22が重なる重複通信可能領域23であるエリア3の大きさをより広くすることができる。その結果、エリア3内での通信タイミングの回数を増加させることができるので、無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングの判定精度を向上することができる。
【0131】
(2)ベルトコンベアの搬送速度制御を行う場合
上記実施形態ではベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度は一定としたが、第1アンテナA及び第2アンテナBによる通信結果に基づき搬送速度を制御するようにしてもよい。
【0132】
図10は、本変形例の搬送物管理システムLSの概略を表すシステム構成図である。この図10に示すように、搬送物管理システムLSは、前述の実施形態と同様の構成であるリーダ100と、ベルトコンベアBC(搬送手段)と、このベルトコンベアBCの搬送速度を制御するための搬送コントローラ200とを有している。リーダ100の制御回路11と搬送コントローラ200とはネットワークNWを介して信号を送受信可能に接続され、また搬送コントローラ200はベルトコンベアBCを駆動する駆動モータMに接続されている。
【0133】
制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を制御する。本変形例では、ベルトコンベアBCによる搬送速度が第1搬送速度である場合における、連続する2つの無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置における通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍よりも小さかった場合、前述したように搬送物Cの搬送順序を正しく検出できない可能性があるため、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも減少させ、上記2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍より大きくなるように制御する。
【0134】
図11は、リーダ100の制御回路11により実行される上記制御内容を表すフローチャートである。なお、この図11において前述の図6と同様の手順には同符号を付し、適宜説明を省略する。
【0135】
ステップS10〜ステップS20は、前述の図6と同様であり、制御回路11は、無線通信に係わる初期設定を行った後、切替スイッチSWを第1アンテナA側に切り替えて第1アンテナAによる通信処理を行うと共に、切替スイッチSWを第2アンテナB側に切り替えて第2アンテナBによる通信処理を行う。なお、ここでのベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度は第1搬送速度に設定されている。そして、ステップS20において、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが存在するか否かを判定する。エリア1内において応答しなくなった無線タグ回路部To、及びエリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toのいずれの無線タグ回路部Toも存在しない場合には、判定が満たされずにステップS25に移る。
【0136】
ステップS25では、制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも増大させるように制御する。その後、後述のステップS50に移る。
【0137】
一方、上記ステップS20において、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが存在しない場合には、判定が満たされてステップS30に移る。ステップS30は前述の図6と同様であり、制御回路11は、上記ステップS20で存在すると判定した無線タグ回路部Toのタグカウントが−1であるか否かを判定する。タグカウントが−1である場合、すなわちタグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toがエリア1内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合には、上記ステップS25に移り、制御回路11は、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも増大させるように制御する。
【0138】
一方、上記ステップS30において、タグカウントが−1でない場合、すなわちタグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが上述したエリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合には、ステップS33に移る。
【0139】
ステップS33では、制御回路11は、タグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが複数存在するか否かを判定する。当該無線タグ回路部Toが複数存在する場合、すなわちエリア2内に応答しなくなった無線タグ回路部Toが複数存在する場合には、判定が満たされてステップS35に移る。この場合、連続する2つの無線タグ回路部のエリア3の中心位置の通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍よりも小さく、ベルトコンベアBCの搬送速度が早すぎると考えられるため、制御回路11はステップS35において、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも減少させるように制御する。このとき、2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍より大きくなるように、搬送速度を減少させることで、搬送物Cの搬送順序を確実に正しく検出できる。その後、ステップS40に移る。
【0140】
一方、上記ステップS33においてタグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが単一のみ存在する場合には、判定が満たされずにステップS40に移る。その後のステップS40及びステップS50は前述の図6と同様であるので説明を省略する。
【0141】
なお、上記において、ステップS35が特許請求の範囲に記載の減少制御手段を構成し、このステップS35及びステップS25と、後述する図12に示すステップS45とが、搬送制御手段を構成する。
【0142】
以上説明した変形例においては、搬送物Cの搬送順序を正しく検出できる速度範囲において、ベルトコンベアBCによる搬送速度を増大させることができるので、搬送順序を正しく検出しつつベルトコンベアBCによる搬送効率を向上することができる。
【0143】
なお、上記の変形例においては、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの2倍より大きくなるように搬送速度を減少させるようにしたが、上記通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの3倍以上となった場合には、反対に検出分解能に対し余裕が大きすぎ、搬送物どうしの間隔が無駄に空きすぎてベルトコンベアBCの搬送効率が低下する。したがって、搬送速度が第2搬送速度である場合における、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの3倍以上となった場合に、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第2搬送速度よりも増大させるようにしてもよい。
【0144】
図12は、リーダ100の制御回路11により実行される上記制御内容を表すフローチャートである。なお、この図12において前述の図6及び図11と同様の手順には同符号を付し、適宜説明を省略する。
【0145】
ステップS10〜ステップS33は前述の図11と同様であるので説明を省略する。なお、ここでのベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度は第2搬送速度に設定されている。
【0146】
ステップS33において、タグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが複数存在する場合には、判定が満たされてステップS35に移り、制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第2搬送速度よりも減少させるように制御する。その後、ステップS40に移る。
【0147】
一方、上記ステップS33においてタグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが単一のみ存在する場合には、判定が満たされずにステップS40に移る。ステップS40は前述の図6等と同様であるので説明を省略する。
【0148】
ステップS43では、制御回路11は、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差がアンテナA,Bの切替時間である通信時間ΔTの3倍以上であるか否かを判定する。上記時間差が通信時間ΔTの3倍未満である場合には、判定が満たされずにステップS50に移る。一方、上記時間差が通信時間ΔTの3倍以上である場合には、判定が満たされてステップS45に移る。
【0149】
ステップS45では、制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第2搬送速度よりも増大させるように制御する。その後、ステップS50に移る。ステップS50は前述の図6等と同様であるので説明を省略する。
【0150】
上記において、ステップS45は、特許請求の範囲に記載の増大制御手段を構成する。また前述したように、このステップS45と、前述の図11に示すステップS25及びステップS35とが、搬送制御手段を構成する。
【0151】
以上説明した変形例によれば、ベルトコンベアBCによる搬送速度を、2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍と3倍との間となるような、適宜の速度範囲内となるように制御することができる。これにより、前述した搬送速度の減少のし過ぎによる検出分解能に対し無駄な余裕、及び搬送物どうしの無駄な間隔を抑制しつつ、効率のよい搬送順序の検出を行うことができる。
【0152】
(3)その他
上記実施形態では、アンテナA,Bの切替パターンを「A→B→A→B→A・・・」というように交互に1回ずつ切り替えるようにしたが、これに限られず、例えば「A→A→B→B→A→A→B→B→A・・・」といったように複数回ずつ交互に切り替えるようにしてもよい。この場合、複数回連続で情報の読み取りができなかった場合が通信不可と判定することで、通信が不安定である重複通信可能領域23における判定精度を向上できる。
【0153】
また上記実施形態では、リーダ100のリーダ本体10が計時部14と記憶部15とを有する構成としたが、リーダ100が必ずしもこれらを有する必要はない。例えば、リーダ100と情報送受信可能であるサーバ等の外部機器にこれら計時部14及び記憶部15を設けておき、リーダ100が無線タグ回路部Toと通信した際にその旨を知らせる信号を外部機器に対して送信し、当該外部機器において通信タイミングを記憶する構成としてもよい。
【0154】
また、上述した変形例(2)においては、第1アンテナA及び第2アンテナBによる通信結果に基づきベルトコンベアBCの搬送速度を制御するようにしたが、これに限られず、制御回路11により第1アンテナAによる通信時間ΔT(第1時間区分)及び第2アンテナBによる通信時間ΔT(第2時間区分)を増減させるようにしてもよい。例えば、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの2倍より小さい場合には、アンテナA,Bの切替タイミングを早くして第1アンテナAによる通信時間ΔT及び第2アンテナBによる通信時間ΔTを減少させることにより、上記時間差を通信時間ΔTの2倍より大きくすることができる。この結果、ベルトコンベアBCの搬送速度を変更せずとも、搬送物Cの搬送順序を正しく検出することができる。
【0155】
なお、以上において、図2中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。また、図6、図7、図8等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0156】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0157】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0158】
13 切替スイッチ(切替制御手段)
14 計時部(計時手段)
15 記憶部(記憶手段)
21 第1通信可能領域(第1通信可能範囲)
22 第2通信可能領域(第2通信可能範囲)
23 重複通信可能領域(重複通信範囲)
100 リーダ(無線タグ読み取り装置)
150 IC回路部
151 タグアンテナ
155 メモリ部(記憶部)
A 第1アンテナ(第1通信アンテナ)
B 第2アンテナ(第2通信アンテナ)
BC ベルトコンベア(搬送手段)
C 搬送物
L 線
LS 搬送物管理システム
IF インベントリフラグ(切替識別子)
To 無線タグ回路部
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた複数の無線タグ回路部を検出する無線タグ読み取り装置及びこれを備えた搬送物管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を記憶する無線タグ回路部と無線タグ読み取り装置との間で非接触で情報の送受信を行うRadio Frequency Identification(RFID)システムが様々な分野において実用化されている。
【0003】
上記無線タグ読み取り装置において、一方向に移動する無線タグ回路部を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、無線タグ回路部の移動方向に沿って重複通信範囲を形成する2つの通信アンテナを設ける。そして、コマンド送信後の無線タグ回路部からの応答信号をどのアンテナで受信したかを判別することにより、応答時点における無線タグ回路部の位置を特定することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、無線タグ回路部は、ICチップの性能や、タグアンテナとICチップとの取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響、等により、通信感度にばらつきが生じる。このため、無線タグ読み取り装置側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が狭くなる。
【0006】
上記従来技術のように、2つの通信アンテナが重複通信範囲を形成する場合でも同様であり、通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部の通信感度の高低によって重複通信範囲の大きさが変動することとなる。
【0007】
このため、搬送物に設けられた無線タグ回路部が搬送経路に沿って順次移動してくるとき、例えば通信感度が低い無線タグ回路部の次に通信感度が高い無線タグ回路部が移動してきた場合には、通信可能範囲が広くなる後者の無線タグ回路部を先に検出する可能性がある。したがって、上記従来技術のように重複通信範囲を形成する構成であっても、搬送経路における各搬送物の搬送順序を正しく把握できないおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる無線タグ読み取り装置及び搬送物管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1発明の無線タグ読み取り装置は、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送される複数の搬送物のそれぞれに設けられ、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた、複数の無線タグ回路部を、順次検出する無線タグ読み取り装置であって、前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナと前記第2通信アンテナとが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本願第1発明においては、搬送物の搬送経路に沿って、第1通信アンテナの第1通信可能範囲と、第2通信アンテナの第2通信可能範囲とが、それぞれ形成される。また、切替制御手段により、第1通信アンテナと第2通信アンテナとは、互いに交互に通信を行うように切り替えられる。ここで、第1通信アンテナの第1通信可能範囲と第2通信アンテナの第2通信可能範囲とは、一部が重なり合って重複通信範囲を形成している。このため、搬送により順次移動してくる無線タグ回路部は、上記重複通信範囲を移動している間は、前述のように切り替えられる第1通信アンテナからの信号と第2通信アンテナからの信号との、両方の信号に応答可能となる。
【0011】
ところで、一般に、無線タグ回路部は、ICチップの性能や、タグアンテナとICチップとの取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響、等により、通信感度にばらつきが生じるのは避けられない。このため、無線タグ読み取り装置側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に通信可能範囲が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部の通信感度の高低によって通信アンテナからの通信可能範囲が伸び縮みすることになる。
【0012】
本願第1発明のように、2つの通信アンテナが重複通信範囲を形成する場合も、上記同様である。通信感度が高い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部に対しては相対的に重複通信範囲が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部の通信感度の高低によって重複通信範囲の大きさが変動することとなる。しかしながら、このときの重複通信範囲の大きさの変動は、もともとは各通信アンテナからの通信可能範囲の伸び縮みに由来するものである。したがって、広くなったときの重複通信範囲の中心位置と、狭くなったときの重複通信範囲の中心位置とは、ほとんど変化しないという特性がある。
【0013】
本願第1発明はこの特性を応用し、搬送物に設けられた無線タグ回路部が搬送経路に沿って順次移動してくるとき、通過判定手段が、当該無線タグ回路部の重複通信範囲の通過時間を判定する。これにより、通信感度が高い無線タグ回路部や通信感度が低い無線タグ回路部が混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、必ず、先行する無線タグ回路部は先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部は後の順番で検出するようになる。すなわち、無線タグ読み取り装置が、無線タグ回路部を、搬送されてくる順序とは異なる順序で誤って検出するのを防止することができる。このようにして、本願第1発明によれば、各無線タグ回路部の重複通信範囲の通過時間を検出することで、搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる。
【0014】
第2発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1発明において、前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで前記無線タグ回路部からの応答信号を受信した時間を計時する計時手段と、前記計時手段で計時した時間を通信時間として記憶する記憶手段とを有し、前記通過判定手段は、記憶手段に記憶した通信時間を用いて、重複通信範囲の通過時間を判定することを特徴とする。
【0015】
本願第2発明においては、計時手段で無線タグ回路部の重複通信範囲への進入時間を計時して記憶手段で当該進入時間を記憶し、また計時手段で無線タグ回路部の重複通信範囲からの退出時間を計時して記憶手段で当該退出時間を記憶することが可能である。これにより、通過判定手段で記憶された進入時間と退出時間との中間の時間を判定することにより、各無線タグ回路部が重複通信範囲を通過するタイミング時間を正確に検出することができる。
【0016】
第3発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1又は第2発明において、前記通過判定手段は、前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第2通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信されない状態から、当該応答信号が受信されるようになったことにより、前記重複通信範囲への進入時間を判定する進入判定手段と、前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第1通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信される状態から、当該応答信号が受信されなくなったことにより、前記重複通信範囲からの退出時間を判定する退出判定手段と、前記進入時間と前記退出時間との中間の時間を判定する中間判定手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
進入判定手段が無線タグ回路部の重複通信範囲への進入時間を判定し、退出判定手段が無線タグ回路部の重複通信範囲からの退出時間を判定する。これらの判定結果に基づき、進入時間と退出時間との中間の中間時間が中間判定手段によって判定されるので、各無線タグ回路部が重複通信範囲の中心を通過する時間を、より正確に検出することができる。
【0018】
第4発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、当該第1通信アンテナの軸心位置と当該第2通信アンテナの軸心位置とを結ぶ線が、前記搬送経路における前記無線タグ回路部の移動方向と平行となるように、配置されていることを特徴とする。
【0019】
このような配置にすることにより、2つの通信範囲が重なる重複通信範囲の中心位置を、無線タグ回路部の感度の高低に関係なく、確実に一定とすることができる。
【0020】
第5発明の無線タグ読み取り装置は、上記第4発明において、前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、当該第1通信アンテナのメインローブ方向の線と当該第2通信アンテナのメインローブ方向の線とが、前記搬送経路上において交差するように、配置されていることを特徴とする。
【0021】
このような配置にすることにより、2つの通信範囲が重なる重複通信範囲の大きさをより広くすることができる。
【0022】
第6発明の無線タグ読み取り装置は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記第1通信アンテナと情報送受信するための第1状態、及び、前記第2通信アンテナと情報送受信するための第2状態、のいずれかに切替可能な切替識別子を前記記憶部に記憶した前記無線タグ回路部に対し、前記第1状態から前記第2状態へ切り替えるための第1切替コマンドを、前記第1通信アンテナを用いて送信する第1切替コマンド送信手段と、前記無線タグ回路部に対し、前記第2状態から前記第1状態へ切り替えるための第2切替コマンドを、前記第2通信アンテナを用いて送信する第2切替コマンド送信手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、無線タグ回路部が、搬送経路上流側において第1通信アンテナと一度通信を行うと以降は同じ第1通信アンテナとは通信しなくなり、搬送経路下流側において第2通信アンテナと一度通信を行うと、以降は同じ第2通信アンテナとは通信しなくなる。この結果、重複通信範囲以外での無駄な通信をなるべく避け、通信効率を向上することができる。
【0024】
上記目的を達成するために、第7発明の搬送物管理システムは、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置とを有する搬送物管理システムであって、前記搬送制御手段は、前記搬送手段の搬送速度が第1搬送速度である場合における、前記通過判定手段により判定された1つの前記無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間と、前記通過判定手段により判定された前記1つの前記無線タグ回路部とは別の無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間との時間差が、前記第1時間区分及び第2時間区分の和よりも小さかった場合に、前記搬送手段の搬送速度を前記第1搬送速度よりも減少させるように制御する減少制御手段を備えることを特徴とする。
【0025】
本願第7発明においては、第1通信アンテナ及び第2通信アンテナが切替制御手段により切り替えられ、交互に無線タグ回路部との通信を試みるとき、第1通信アンテナは第1時間区分を持ち時間とし、第2通信アンテナは第2時間区分を持ち時間とする。この結果、無線タグ回路部の検出時において発生しうる最大検出誤差はこれら第1時間区分と第2時間区分との和になる。したがって、通過判定手段が判定した2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間が、これら2つの時間区分の和より小さかった場合には、検出分解能を超え、搬送物の搬送順序が正しく検出されていない可能性がある。
【0026】
そこで、このような場合には、搬送制御手段に備えられた減少制御手段が、搬送手段の搬送速度を減少させる。これにより、それ以降は、通過判定手段が判定する2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間を、第1時間区分と第2時間区分との和より大きくすることができる。この結果、搬送物の搬送順序を、確実に正しく検出することができる。
【0027】
第8発明の搬送物管理システムは、上記第7発明において、前記搬送制御手段は、前記搬送手段の搬送速度が第2搬送速度である場合における前記時間差が、前記第1時間区分の3倍以上、若しくは、前記第2時間区分の3倍以上、であった場合には、前記搬送手段の搬送速度を前記第2搬送速度よりも増大させるように制御する増大制御手段を備えることを特徴とする。
【0028】
前述したように、検出時の最大検出誤差は第1時間区分と第2時間区分との和であり、2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間がそれら2つの和よりも小さいと正しい検出ができない可能性がある。しかしながら、2つの無線タグ回路部の重複通信範囲における通過時間が、第1時間区分や第2時間区分の3倍より大きい場合には、検出分解能に対し余裕が大きすぎ、搬送物どうしの間隔が無駄に空きすぎている。
【0029】
そこで、本願第8発明では、このような場合に、搬送制御手段に備えられた減少制御手段が、搬送手段の搬送速度を減少させる。これにより、上記の無駄をなくし、効率のよい搬送順序の検出を行うことができる。
【0030】
上記目的を達成するために、第9発明の搬送物管理システムは、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置とを有する搬送物管理システムであって、前記切替制御手段は、前記第1時間区分及び前記第2時間区分を増減しつつ、当該増減させた第1時間区分及び第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行うことを特徴とする。
【0031】
本願第9発明においては、搬送手段の搬送速度が第1搬送速度である場合における、1つの無線タグ回路部の通過時間と別の無線タグ回路部の通過時間との時間差が、第1時間区分及び第2時間区分の和よりも小さかった場合には、切替制御手段で第1時間区分及び第2時間区分を減少させて、上記時間差を第1時間区分及び第2時間区分の和より大きくすることが可能である。この結果、搬送手段の搬送速度を変更せずとも、搬送物の搬送順序を正しく検出することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、搬送経路における各搬送物の搬送順序を確実に正しく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態のリーダの概略を表すシステム構成図である。
【図2】無線タグに備えられた無線タグ回路部の機能的構成の一例を表すブロック図である。
【図3】リーダの第1アンテナ及び第2アンテナと無線タグ回路部との間で送受される信号のタイムチャートの一例を表す図である。
【図4】各無線タグ回路部の通信感度にばらつきがある場合でも、搬送物の搬送順序を正確に検出可能である原理を説明するための図である。
【図5】高感度の場合及び低感度の場合における、無線タグ回路部のエリアの中心位置の通過タイミングを判定する手法を説明するための図である。
【図6】リーダの制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図7】第1アンテナによる通信処理であるステップS100の詳細内容を表すフローチャートである。
【図8】第2アンテナによる通信処理であるステップS200の詳細内容を表すフローチャートである。
【図9】重複通信可能領域の範囲を拡大させる変形例のリーダの概略を表すシステム構成図である。
【図10】ベルトコンベアの搬送速度制御を行う変形例の搬送物管理システムの概略を表すシステム構成図である。
【図11】ベルトコンベアの搬送速度制御を行う変形例における、リーダの制御回路により実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図12】ベルトコンベアの搬送速度制御を行う変形例における、リーダの制御回路により実行される他の制御内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態のリーダ100の概略を表すシステム構成図である。
【0035】
リーダ100(無線タグ読み取り装置)は、ベルトコンベアBCにより所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送される複数の搬送物Cのそれぞれに設けられた無線タグTを順次検出し、各搬送物Cの搬送順序を管理するためのものである。無線タグTは、情報を記憶する後述のメモリ部155を備えたIC回路部150と情報を送受信するためのタグアンテナ151とを備えた無線タグ回路部Toを備えている。
【0036】
リーダ100は、リーダ本体10と、第1アンテナA及び第2アンテナBとを有している。第1アンテナA(第1通信アンテナ)は、搬送物Cの搬送経路の所定の部分に第1通信可能領域21(第1通信可能範囲)を形成し、第2アンテナB(第2通信アンテナ)は、搬送経路の上記第1通信可能領域21より搬送方向下流側の部分に、第1通信可能領域21と一部重なるような第2通信可能領域22(第2通信可能範囲)を形成する。これら第1通信可能領域21と第2通信可能領域22とが重なる領域である重複通信可能領域23(重複通信範囲)では、第1アンテナA及び第2アンテナBの双方が無線タグTを検出可能である。以下、第1通信可能領域21から重複通信可能領域23を除いた領域を「エリア1」、第2通信可能領域22から重複通信可能領域23を除いた領域を「エリア2」、重複通信可能領域23に相当する領域を「エリア3」と呼称する。
【0037】
第1アンテナA及び第2アンテナBは、当該第1アンテナAの軸心位置と当該第2アンテナの軸心位置とを結ぶ線または面L1が、ベルトコンベアBCによる搬送経路における無線タグ回路部Toの移動方向と平行となるように配置されている。なお、上記軸心位置はアンテナの基準位置の一例であり、例えば第1アンテナA及び第2アンテナBがループアンテナやコイルアンテナである場合にそのコイルの軸心の位置を表すものである。
【0038】
リーダ本体10は、制御回路11と、高周波回路12と、切替スイッチ13と、計時部14と、記憶部15とを有している。制御回路11は、無線タグ回路部ToのIC回路部150から読み出された信号を処理して情報を読み出すとともに、無線タグ回路部ToのIC回路部150へアクセスするための各種コマンドを生成する。高周波回路12は、上記各種コマンドに基づき、第1アンテナA又は第2アンテナBを介し無線タグ回路部ToのIC回路部150の情報へアクセスする。切替スイッチ13は、制御回路11の制御に基づき、第1アンテナAと第2アンテナBとが交互に通信を行うようにアンテナA,Bの切替を行う。この第1アンテナAと第2アンテナBとの切替タイミングは予め設定されている。
【0039】
計時部14(計時手段)は、第1アンテナA及び第2アンテナBで無線タグ回路部Toからの応答信号としてのタグ情報を受信したタイミングを計時する。また記憶部15(記憶手段)は、上記計時部14で計時したタイミングを通信タイミングとして記憶する。なお、この計時部14で計時して記憶部15に記憶するタイミングは特許請求の範囲に記載の通信時間に相当し、所定の基準時からの相対的な時間であってもよいし、時刻でもよい。
【0040】
上記制御回路11は、切替制御される第1アンテナA及び第2アンテナBで受信された無線タグ回路部Toからの応答信号の有無に基づき、記憶部15に記憶された通信タイミングを用いて、搬送経路に沿って移動する無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する。この判定内容の詳細については後述する。
【0041】
図2は、上記無線タグTに備えられた無線タグ回路部Toの機能的構成の一例を表すブロック図である。
【0042】
図2において、無線タグ回路部Toは、上述したようにリーダ100の第1アンテナA又は第2アンテナBと非接触で信号の送受信を行うタグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続されたIC回路部150とを有している。
【0043】
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155(記憶部)と、タグアンテナ151に接続された変復調部156と、リーダ100からの応答要求コマンドの受信時に当該無線タグ回路部Toが応答信号をどの識別スロットに出力するかを決定するための乱数を発生させる乱数発生器158と、上記メモリ部155、クロック抽出部154、乱数発生器158、及び変復調部156等を介して上記無線タグ回路部Toの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0044】
変復調部156は、タグアンテナ151により受信されたリーダ100の第1アンテナA又は第2アンテナBからの質問波の復調を行い、また、制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波として送信する。
【0045】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出し、当該クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0046】
乱数発生器158は、リーダ100からの応答要求コマンドに指定されているスロット数指定値Qに対し、0から2Q−1までの乱数を発生させる。
【0047】
制御部157は、変復調部156により復調された受信信号を解釈し、メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を乱数発生器158により発生させた乱数に対応する識別スロットで変復調部156によりタグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0048】
なお、メモリ部155には、その時点でのインベントリ状態を判別するためのインベントリフラグ(切替識別子)が、自動的にその内容を反転変化可能に記憶されている。ここでインベントリ状態とは、その時点での無線タグ回路部Toの通信状態を表すものであり、本実施形態では無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は「A」と「B」の2種類の状態があり、このインベントリフラグの内容から当該無線タグ回路部Toがインベントリを完了しているかどうかを判別できるようになっている。なお、このようにメモリ部155にインベントリフラグを記憶させるのではなく、制御部157内のレジスタを用いて実質的に同等の機能を果たすようにしてもよい。
【0049】
ここで、本実施形態のリーダ100では、第1アンテナA及び第2アンテナBによるそれぞれの無線通信において、インベントリフラグの内容が互いに異なる内容である無線タグ回路部Toに対してのみタグ情報を要求する。すなわち、第1アンテナAによる無線通信の場合、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対してのみタグ情報を要求するコマンドを送信する。また第2アンテナBによる無線通信の場合、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対してのみタグ情報を要求するコマンドを送信する。なお、インベントリフラグの内容が「A」である状態が特許請求の範囲に記載の第1状態に相当し、インベントリフラグの内容が「B」である状態が第2状態に相当する。次に、この詳細について説明する。
【0050】
図3は、リーダ100と無線タグ回路部Toとの間で送受される信号のタイムチャートの一例を表す図であり、図3(a)は第1アンテナAによる無線通信を行う場合、図3(b)は第2アンテナBによる無線通信を行う場合を示している。なお、この図3に示す信号の送受方法は、公知のRandom−Slotted Collision arbitration方式に基づくEPC global Class−I Generation−IIの規格に準じたものであり、図中では左側から右側に向かって時系列変化するよう示している。また、リーダ100と無線タグ回路部Toとの間に記載されている矢印は信号の送信方向を示しており、送信相手が不特定である場合には破線で示し、送信相手が特定されている場合には実線で示している。
【0051】
まず、図3(a)を用いて第1アンテナAによる無線通信の場合を説明する。図3(a)において、リーダ100は、まず最初にエリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対して「Select」コマンドを送信する。この「Select」コマンドは、それ以降にリーダ100が無線通信を行う無線タグ回路部Toの条件を指定するコマンドであり、ここではインベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toを指定する。これにより、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。
【0052】
なお、本実施形態では、例えば事前に図示しない無線通信装置によって各無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容を変更する等によって、最初にエリア1内に進入する全ての無線タグ回路部Toについて、そのインベントリフラグの内容は「A」に統一されている。
【0053】
次にリーダ100は、無線タグ回路部Toに対しタグ情報を応答発信させるよう要求する「Query」コマンドを送信する。この「Query」コマンドには、所定の数で指定するスロット数指定値Qが含まれている。高周波回路12から第1アンテナAを介し「Query」コマンドが送信されると、各無線タグ回路部Toは0から2Q−1(=2のQ乗−1)までの乱数を乱数発生器158により生成し、スロットカウント値SCとして保持する。
【0054】
また、この「Query」コマンドでは、応答を要求する無線タグ回路部Toをインベントリフラグの内容で限定することができる。ここでは、「Query」コマンドはインベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対してのみ応答を要求し、図中に示しているようにインベントリフラグの内容が「A」となっている無線タグ回路部Toがその後にリーダ100に応答する。
【0055】
「Query」コマンドの送信後、リーダ100は所定の識別スロットで無線タグ回路部Toからの応答を待ち受ける。この識別スロットとは、この「Query」コマンドまたは後述する「QueryRep」コマンドを始めに送信してから所定の期間で区分される時間枠である。識別スロットは、通常、「Query」コマンドの第1識別スロットの1回に「QueryRep」コマンドの第2以降の識別スロットの2Q−1回を足した2Q回連続して繰り返される。
【0056】
そして、図示の例のように無線タグ回路部Toでスロットカウント値SCとして値0を生成したものは、この「Query」コマンドを含んだ第1識別スロットで応答する。このとき、当該無線タグ回路部Toはタグ情報を送信する許可を得るための例えば16ビットの擬似乱数を用いた「RN16」レスポンスを応答信号としてリーダ100へ送信する。
【0057】
そして、この「RN16」レスポンスを受信したリーダ100は、この「RN16」レスポンスに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを送信する。この「Ack」コマンドを受信した無線タグ回路部Toは、その無線タグ回路部To自身が先に送信した「RN16」レスポンスと受信した「Ack」コマンドが対応していると判断した場合に、当該無線タグ回路部Toの個体がタグ情報の送信を許可されたものとみなしてタグ情報を送信する。このタグ情報にはタグIDが含まれる。このようにして、一つの識別スロットにおける信号の送受信が行われる。
【0058】
その後、さらに2番目以降の識別スロットでは、リーダ100は「Query」コマンドの代わりに「QueryRep」コマンドを送信し、その直後に設けられる識別スロット時間枠で他の無線タグ回路部Toの応答を待つ。このとき、上記EPC global Class−I Generation−IIの規格に準拠する仕様の無線タグTの無線タグ回路部Toでは、この「QueryRep」コマンドを受信した際にインベントリフラグの内容をそれまでとは異なる他の内容に自動的に反転変化させるよう前出の「Select」コマンドで指定できる。ここでは、「QueryRep」コマンドを受信した無線タグ回路部Toは、それまで「A」となっていたインベントリフラグの内容を他方の「B」に自動的に反転させる。これにより、それ以降でインベントリフラグの内容を「A」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても、応答動作を行うことのないスタンバイ状態となる。
【0059】
この「QueryRep」コマンドもまた、応答を要求する無線タグ回路部Toをインベントリフラグの内容で限定することができる。そして、この「QueryRep」コマンドを受信した各無線タグ回路部Toでインベントリフラグが一致するものは、自身の上記スロットカウント値SCの値を一つだけ減算して保持し、当該スロットカウント値SCが値0になった時点の識別スロットで「RN16」レスポンスを初めとした信号の送受信をリーダ100との間で行う。
【0060】
なお、各識別スロットで該当する無線タグ回路部To、すなわち当該識別スロットでスロットカウント値SCが0となるものがない場合には、「Query」コマンドまたは「QueryRep」コマンド以外の送受信が行われないまま所定の時間枠でその識別スロットを終了する。また、送受信する複数のコマンドの間の時間間隔は、適切な間隔となるよう適宜タイミングが調整される。
【0061】
このように各無線タグ回路部Toが異なる識別スロットで応答信号を返信することで、第1アンテナAを介し、リーダ100は混信を受けることなく一つ一つの無線タグ回路部Toのタグ情報を明確に受信し取り込むことができる。また、同一の無線タグ回路部Toが同じインベントリフラグの内容を指定する「Query」コマンドを複数回受信しても、最初の1回だけ正常に「Query」コマンドに応答できてからはその後に受信する「Query」コマンドには応答しなくなるため、同一の無線タグ回路部Toがタグ情報の送信をムダに繰り返すことを防ぐことができる。
【0062】
次に、図3(b)を用いて第2アンテナBによる無線通信の場合を説明する。第2アンテナBによる無線通信の場合も、インベントリフラグの対応関係が反対となること以外は、信号の送受信内容は上述した第1アンテナAの場合と同様である。すなわち第2アンテナBによる無線通信では、最初にエリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対して「Select」コマンドを送信し、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toを指定する。これにより、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。なお、本実施形態においては、上述したようにエリア1において第1アンテナAとの無線通信により無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は「A」から「B」に反転されるため、最初にエリア3に進入する無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は「B」となっている。
【0063】
そして、「Query」コマンドでインベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対して応答を要求し、該当する無線タグ回路部Toがリーダ100に応答する。その後、「RN16」レスポンスを受信したリーダ100は「Ack」コマンドを送信し、この「Ack」コマンドを受信した無線タグ回路部Toからタグ情報を受信する。その後、2番目以降の識別スロットでリーダ100は「QueryRep」コマンドを送信し、この「QueryRep」コマンドを受信した無線タグ回路部Toは、それまで「B」となっていたインベントリフラグの内容を他方の「A」に自動的に反転させる。これにより、それ以降でインベントリフラグの内容を「B」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても、応答動作を行うことのないスタンバイ状態となる。
【0064】
上記構成であるリーダ100は、搬送経路に沿って移動する無線タグ回路部Toのエリア3の略中心位置の通過タイミングを判定することにより、各搬送物Cの搬送順序を検出する。次に、この詳細内容について説明する。
【0065】
まず、無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定することにより、各無線タグ回路部Toの通信感度にばらつきがある場合でも、搬送物Cの搬送順序を正確に検出可能である原理を説明する。
【0066】
図4はこの原理を説明するための図であり、図4(a)は感度が比較的高い無線タグ回路部Toの場合、図4(b)は感度が比較的低い無線タグ回路部Toの場合を示している。
【0067】
一般に、無線タグ回路部Toは、ICチップ150の性能や、タグアンテナ151とICチップ150との取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響等により、通信感度にばらつきが生じる。このため、リーダ側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によって通信アンテナからの通信可能領域が伸び縮みすることになる。
【0068】
本実施形態のように、2つのアンテナA,Bが重複通信可能領域23を形成する場合も上記と同様である。すなわち、図4(a)に示すように、通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては、第1アンテナA及び第2アンテナBの通信可能領域21,22がそれぞれ広くなることから、重複する領域であるエリア3の範囲が相対的に広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては、図4(b)に示すように、第1アンテナA及び第2アンテナBの通信可能領域21,22がそれぞれ狭くなることから、重複する領域であるエリア3の範囲が相対的に狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によってエリア3の大きさが変動することとなる。しかしながら、このときのエリア3の大きさの変動は、もともとは各アンテナA,Bからの通信可能領域の伸び縮みに由来するものである。したがって、図4中に示す中心線L2に示すように、広くなったときのエリア3の中心位置と、狭くなったときのエリア3の中心位置とは、ほとんど変化しないという特性がある。
【0069】
図5は、無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する手法を説明するための図であり、図5(a)は感度が比較的高い無線タグ回路部Toの場合、図5(b)は感度が比較的低い無線タグ回路部Toの場合を示している。なお、図中では左側から右側に向かって時系列変化するよう示している。
【0070】
図5(a)及び図5(b)において、アンテナ「A」「B」はそれぞれ第1アンテナA及び第2アンテナBによる通信を示しており、図に示すように第1アンテナAと第2アンテナBとが交互に通信を行うように切替制御が行われる。また通信範囲は、第1アンテナA及び第2アンテナBによって形成される前述のエリア1〜3であり、図5(a)及び図5(b)に示すように感度の高い無線タグ回路部Toの方が感度の低い無線タグ回路部Toよりも各エリアの大きさが大きくなっている。またIFは、無線タグ回路部Toに記憶されたインベントリフラグの内容であり、前述したように「A」「B」の2種類の状態がある。また通信タイミングは、無線タグ回路部Toからタグ情報の読み取りを行ったタイミング、すなわち前述したようにリーダ100が「Ack」コマンドを受信した無線タグ回路部Toからタグ情報を受信したタイミングである。
【0071】
まず感度の高い無線タグ回路部Toの場合を説明する。図5(a)において、最初にエリア1内に進入する無線タグ回路部Toは、前述したようにインベントリフラグの内容が「A」となっている。この無線タグ回路部Toがエリア1内に進入すると、エリア1内では第1アンテナAとの通信のみが行われることから、第2アンテナBによる通信の間はタグ情報の読み取りが行われない。その後、第1アンテナAによる通信に切り替えられると、無線タグ回路部Toのタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、1回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。これにより、無線タグ回路部Toは、これ以降エリア1内において第1アンテナAとの通信によってインベントリフラグの内容を「A」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても応答動作を行わなくなる。なお、第2アンテナBから第1アンテナAへの切替タイミングと上記通信タイミングとの間には、無線タグ回路部Toの応答遅れによる若干のずれが生じている。
【0072】
その後、インベントリフラグの内容が「B」となった無線タグ回路部Toがエリア3内に進入すると、エリア3内では第1アンテナA及び第2アンテナBの双方との通信が行われる。ここでは、まず第2アンテナBによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、2回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。その後第1アンテナAによる通信に切り替えられると、第1アンテナAによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、3回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。このようにして、エリア3内におけるアンテナの切替が連続して行われ、インベントリフラグの内容が連続して反転される。
【0073】
その後、この例では第1アンテナAによる通信によって7回目のタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転された状態で、無線タグ回路部Toがエリア2内に進入する。エリア2内では第2アンテナBとの通信のみが行われることから、第2アンテナBによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、8回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。これにより、無線タグ回路部Toは、これ以降エリア2内において第2アンテナBとの通信によってインベントリフラグの内容を「B」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても応答動作を行わなくなる。その結果、無線タグ回路部Toはインベントリフラグの内容が「A」となった状態でエリア2外へ退出する。
【0074】
上述したような状況において、リーダ100は、記憶部15に記憶された通信タイミングの中から、2回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3への進入タイミングであり、8回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3からの退出タイミングであると判定し、これらの判定結果に基づき、進入タイミングと退出タイミングとの中間の中間タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。すなわち上記の例では、2〜8回目の7個の通信タイミングの中央である5回目の通信タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。図5(a)では、このエリア3の中心位置の通過タイミングと判定された通信タイミングを黒色の三角形で図示している。
【0075】
次に感度の低い無線タグ回路部Toの場合を説明する。図5(b)において、無線タグ回路部Toがエリア1内に進入すると、第1アンテナAによる通信によって無線タグ回路部Toのタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、1回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。これ以降は、前述したようにエリア1内において第1アンテナAとの通信によってインベントリフラグの内容を「A」で指定する「Query」コマンド又は「QueryRep」コマンドを受信しても応答動作を行わない。
【0076】
その後、インベントリフラグの内容が「B」となった無線タグ回路部Toがエリア3内に進入すると、第2アンテナBによる通信によってタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、2回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。その後第1アンテナAによる通信に切り替えられると、第1アンテナAによる通信によりタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転される。このタイミングが計時部14によって計時され、3回目の通信タイミングとして記憶部15に記憶される。このようにして、エリア3内におけるアンテナの切替が連続して行われ、インベントリフラグの内容が連続して反転される。
【0077】
その後、この例では第2アンテナBによる通信によって4回目のタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転された状態で、無線タグ回路部Toがエリア2内に進入する。エリア2内では第2アンテナBとの通信のみが行われることから、上記4回目のタグ情報の読み取りによってインベントリフラグの内容が「A」となった状態の無線タグ回路部Toは、タグ情報の読み取りが行われない。その結果、無線タグ回路部Toはエリア2内においてインベントリフラグの内容を反転されることなく「A」の状態のままでエリア2外へ退出する。
【0078】
上述したような状況において、リーダ100は、記憶部15に記憶された通信タイミングの中から、2回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3への進入タイミングであり、4回目の通信タイミングが無線タグ回路部Toのエリア3からの退出タイミングであると判定し、これらの判定結果に基づき、進入タイミングと退出タイミングとの中間の中間タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。すなわち上記の例では、2〜4回目の3個の通信タイミングの中央である3回目の通信タイミングをエリア3の中心位置の通過タイミングと判定する。なお図5(b)でも上記と同様に、このエリア3の中心位置の通過タイミングと判定された通信タイミングを黒色の三角形で図示している。
【0079】
以上のようにしてエリア3の中心位置の通過タイミングを判定することで、前述の図4において示したように、無線タグ回路部Toの感度の高低に関わらずエリア3の中心位置はほとんど変化しないことから、先行する無線タグ回路部Toは先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部Toは後の順番で検出することができる。すなわち、通信感度が高い無線タグ回路部Toや通信感度が低い無線タグ回路部Toが混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、各搬送物Cの搬送順序を正しく把握することができる。
【0080】
なお、上記エリア3の中心位置の通過タイミングの判定を行う際に、無線タグ回路部Toの検出時において発生しうる最大検出誤差は、第1アンテナAによる通信時間ΔT(第1時間区分)及び第2アンテナBによる通信時間ΔT(第2時間区分)との和、すなわちΔTの2倍になる。したがって、連続する2つの無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置における通過タイミングの時間差が、上記通信時間ΔTの2倍より小さい場合には、検出分解能を超え、搬送物Cの搬送順序を正しく検出できない可能性があることから、上記2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍より大きくなるように、ベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度と搬送物Cの搬送間隔を設定することにより、上記判定誤差の有無に関わらず各搬送物Cの搬送順序を正しく把握することができる。
【0081】
図6は、リーダ100の制御回路11によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【0082】
ステップS10では、制御回路11は、第1アンテナA及び第2アンテナBの切替タイミングの設定等、無線通信に係わる必要なパラメータの初期設定を行う。
【0083】
ステップS100では、制御回路11は、切替スイッチSWを第1アンテナA側に切り替え、第1アンテナAによる通信処理を行う。
【0084】
ステップS200では、制御回路11は、切替スイッチSWを第2アンテナB側に切り替え、第2アンテナBによる通信処理を行う。
【0085】
ステップS20では、制御回路11は、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが存在するか否かを判定する。ここでタグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toとは、エリア1内において一度タグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転されたことによって応答しなくなった無線タグ回路部Toと、エリア2内においてタグ情報の読み取りが行われ、インベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転されたことによって、又はエリア2への進入時にインベントリフラグの内容が「A」であることによって、エリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toとの2種類の無線タグ回路部Toを指すものである。通信可能領域内にいずれの無線タグ回路部Toも存在しない場合には、判定が満たされずに後述のステップS50に移る。一方、通信可能領域内にいずれかの無線タグ回路部Toが存在する場合には、判定が満たされてステップS30に移る。
【0086】
ステップS30では、制御回路11は、上記ステップS20で存在すると判定した無線タグ回路部Toのタグカウントが−1であるか否かを判定する。ここでタグカウントとは、エリア1での1回目の通信時に−1に設定され、その後通信が行われるごとに1ずつ加算されるカウント値である。すなわち、本ステップにおいてタグカウントが−1である場合には、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが、上述したエリア1内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合に該当し、エリア1〜3における通信タイミングのカウントが完了していないことを意味する。一方、タグカウントが−1でない場合には、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが、上述したエリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合に該当し、エリア1〜3における通信タイミングのカウントが完了したことを意味する。タグカウントが−1である場合には、判定が満たされて後述のステップS50に移る。一方、タグカウントが−1でない場合には、判定が満たされずにステップS40に移る。
【0087】
ステップS40では、制御回路11は、上述したようにエリア1〜3における通信タイミングのカウントが完了していることから、タグカウント値を2で割った値に対応する時間を出力する。この出力結果は例えば適宜の記憶手段に記憶され、搬送物Cの搬送順序の判定に用いられる。
【0088】
ここで、タグカウント値を2で割ることでエリア3の中心位置の通過タイミングを判定できる理由を説明する。前述の図5に示すように、本実施形態では無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容は最初は「A」であり最終的にも必ず「A」となる。したがってエリア1〜3内における通信タイミングの総数は偶数となる。ここで、1回目の通信タイミングはエリア1に最初に進入した時点で行われるものであるから、エリア3の中心位置の通過タイミングを判定する際には除外する必要がある。よって上記偶数である通信タイミングの総数より1を減じた値である奇数の中心の数に対応するタイミングが、エリア3の中心位置の通過タイミングとなる。
【0089】
本実施形態では、上述したようにタグカウントの初期値を−1とし、当該カウント結果を2で割ることにより、上記奇数の中心の数を求めることが可能である。例えば前述の図5(a)に示す例では、通信タイミングの総数が8であるからタグカウントは−1より開始して6が最終値となる。したがって、タグカウント3に対応する5回目の通信タイミングがエリア3の中心位置の通過タイミングとなる。また図5(b)に示す例では、通信タイミングの総数が4であるからタグカウントは−1より開始して2が最終値となる。したがって、タグカウント1に対応する3回目の通信タイミングがエリア3の中心位置の通過タイミングとなる。
【0090】
ステップS50では、制御回路11は、通信処理を終了するか否かを判定する。この判定は、例えば操作者によって通信処理を終了する旨の指示入力がなされたか否かにより行われる。通信処理を終了しない場合には、判定が満たされずに先のステップS100に戻る。一方、通信処理を終了する場合には、判定が満たされて本フローを終了する。
【0091】
上記において、ステップS100、ステップS200、及びステップS50は、特許請求の範囲に記載の切替制御手段を構成する。また、ステップS20及びステップS30が退出判定手段を構成し、ステップS40が中間判定手段を構成し、これらステップS20、ステップS30、及びステップS40と、後述の図8に示すステップS225とが、通過判定手段を構成する。
【0092】
図7は、第1アンテナAによる通信処理である上記ステップS100の詳細内容を表すフローチャートである。
【0093】
ステップS105では、制御回路11は、切替スイッチSWを第1アンテナA側に切り替え、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対し、「Select」コマンドを送信する。これにより、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。また、この「select」コマンド中で、タグのIDが読み取れられた際にインベントリフラグの内容を自動的に反転変化させるよう指定する。
【0094】
ステップS110では、制御回路11は、スロット数指定値Qの値をQmaxに設定する。この設定値Qmaxは、当該第1アンテナAによる通信処理において、どれだけの識別スロット数でタグ情報の検出を行うかを設定するパラメータである。この設定値Qmaxは、アンテナA,Bの通信可能領域21,22の大きさや、その中において無線通信が可能であると予想される無線タグ回路部Toの個数に応じて、あらかじめ設定されている。
【0095】
ステップS115では、制御回路11は、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対し、タグ情報を応答発信させるよう要求する「Query」コマンドを送信する。この「Query」コマンドには、上記ステップS110で設定したスロット数指定値Qmaxが含まれている。
【0096】
ステップS120では、制御回路11は、スロット数をカウントするための変数nを1に初期化する。
【0097】
ステップS125では、制御回路11は、当該識別スロットに対応する所定の受信時間の間に無線タグ回路部Toからの応答信号として「RN16」レスポンスを正常に受信したか否かを判定する。「RN16」レスポンスを正常に受信しない場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在しないとみなし、判定が満たされずに後述のステップS155へ移る。一方、「RN16」レスポンスを正常に受信した場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在するとみなし、判定が満たされてステップS130に移る。
【0098】
ステップS130では、制御回路11は、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する無線タグ回路部Toに対し、上記ステップS115で受信された「RN16」レスポンスに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを送信する。
【0099】
ステップS135では、制御回路11は、上記「Ack」コマンドに対応して無線タグ回路部Toより返信されたタグ情報を受信し、このタグ情報に含まれるタグIDに基づき既読の無線タグ回路部Toであるか否かを判定する。なお、制御回路11は、初めて読み取ったタグIDを適宜の記憶手段に記憶するようになっており、上記判定は取得したタグIDと当該記憶されたタグIDとを比較することにより行われる。初めて読み取ったタグIDである場合には、当該無線タグ回路部Toに対するエリア1での1回目の通信であるとみなし、判定が満たされずにステップS140に移る。
【0100】
ステップS140では、制御回路11は、前述したタグカウントを−1に設定する。その後、後述するステップS155に移る。
【0101】
一方、上記ステップS135において、既読のタグIDである場合には、当該無線タグ回路部Toに対するエリア3以降での複数回目の通信であるとみなし、判定が満たされてステップS145に移る。
【0102】
ステップS145では、制御回路11はタグカウントの値に1を加え、ステップS150では、制御回路11は計時部14より時間情報を取得し、上記タグカウントに対応する通信時間として記憶部15に記憶する。
【0103】
ステップS155では、制御回路11は、スロット数をカウントするための上記変数nが2Qであるか否かを判定する。スロット数が2Qに達していない場合には、判定が満たされずにステップS160に移る。
【0104】
ステップS160では、制御回路11は上記変数nに1を加え、ステップS165では、制御回路11は、次の識別スロットにおいて、エリア1及びエリア3を含む第1通信可能領域21内に存在する、インベントリフラグの内容が「A」である無線タグ回路部Toに対し、「QueryRep」コマンドを送信する。そして、先のステップS125に戻る。なお、本ステップにおいて送信する「QueryRep」コマンドが、特許請求の範囲に記載の第1切替コマンドに相当し、本ステップが第1切替コマンド送信手段を構成する。
【0105】
一方、上記ステップS155において、制御回路11は、スロット数が2Qに達した場合には、判定が満たされてステップS170に移る。
【0106】
ステップS170では、制御回路11は、上記ステップS110でQmaxに設定したスロット数指定値Qが0であるか否かを判定する。スロット数指定値Qが0でない場合には、判定が満たされずにステップS175に移り、スロット数指定値Qより1を減じて先のステップS115に戻る。一方、上記ステップS170において、スロット数指定値Qが0である場合には、判定が満たされて本フローを終了する。
【0107】
図8は、第2アンテナBによる通信処理である上記ステップS200の詳細内容を表すフローチャートである。
【0108】
ステップS205では、制御回路11は、切替スイッチSWを第2アンテナB側に切り替え、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する全ての無線タグTの無線タグ回路部Toに対し、「Select」コマンドを送信する。これにより、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toだけがその後に無線通信を行える状態となる。また、この「select」コマンド中で、タグのIDが読み取れられた際にインベントリフラグの内容を自動的に反転変化させるよう指定する。
【0109】
ステップS210では、制御回路11は、スロット数指定値Qの値をQmaxに設定する。
【0110】
ステップS215では、制御回路11は、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対し、タグ情報を応答発信させるよう要求する「Query」コマンドを送信する。この「Query」コマンドには、上記ステップS210で設定したスロット数指定値Qmaxが含まれている。
【0111】
ステップS220では、制御回路11は、スロット数をカウントするための変数nを1に初期化する。
【0112】
ステップS225では、制御回路11は、当該識別スロットに対応する所定の受信時間の間に無線タグ回路部Toからの応答信号として「RN16」レスポンスを正常に受信したか否かを判定する。「RN16」レスポンスを正常に受信しない場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在しないとみなし、判定が満たされずに後述のステップS255へ移る。一方、「RN16」レスポンスを正常に受信した場合、当該識別スロットで応答する無線タグ回路部Toが存在するとみなし、判定が満たされてステップS230に移る。
【0113】
ステップS230では、制御回路11は、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する無線タグ回路部Toに対し、上記ステップS215で受信された「RN16」レスポンスに対応する内容でタグ情報の送信を許可する「Ack」コマンドを送信する。
【0114】
なお、エリア3又はエリア2内において第2アンテナBとの無線通信によりタグ情報の読み取りを行った無線タグ回路部Toは、その前にエリア1内において第1アンテナAとの無線通信により必ず既読となっているため、本フローチャートでは前述のステップS135及びステップS140に対応する手順は含まれない。
【0115】
ステップS245では、制御回路11はタグカウントの値に1を加え、ステップS250では、制御回路11は計時部14より時間情報を取得し、上記タグカウントに対応する通信時間として記憶部15に記憶する。
【0116】
ステップS255では、制御回路11は、スロット数をカウントするための上記変数nが2Qであるか否かを判定する。スロット数が2Qに達していない場合には、判定が満たされずにステップS260に移る。
【0117】
ステップS260では、制御回路11は上記変数nに1を加え、ステップS265では、制御回路11は、次の識別スロットにおいて、エリア2及びエリア3を含む第2通信可能領域22内に存在する、インベントリフラグの内容が「B」である無線タグ回路部Toに対し、「QueryRep」コマンドを送信する。そして、先のステップS225に戻る。なお、本ステップにおいて送信する「QueryRep」コマンドが、特許請求の範囲に記載の第2切替コマンドに相当し、本ステップが第2切替コマンド送信手段を構成する。
【0118】
一方、上記ステップS255において、制御回路11は、スロット数が2Qに達した場合には、判定が満たされてステップS270に移る。
【0119】
ステップS270では、制御回路11は、上記ステップS210でQmaxに設定したスロット数指定値Qが0であるか否かを判定する。スロット数指定値Qが0でない場合には、判定が満たされずにステップS275に移り、スロット数指定値Qより1を減じて先のステップS215に戻る。一方、上記ステップS270において、スロット数指定値Qが0である場合には、判定が満たされて本フローを終了する。
【0120】
上記において、ステップS225は、特許請求の範囲に記載の進入判定手段を構成する。
【0121】
以上説明した実施形態のリーダ100においては、搬送物Cの搬送経路に沿って、第1アンテナAの第1通信可能領域21と、第2アンテナBの第2通信可能領域22とが、それぞれ形成される。また、制御回路11により、第1アンテナAと第2アンテナBとは、互いに交互に通信を行うように切り替えられる。ここで、第1アンテナAの第1通信可能領域21と第2アンテナBの第2通信可能領域22とは、一部が重なり合って重複通信可能領域であるエリア3を形成している。このため、搬送により順次移動してくる無線タグ回路部Toは、上記エリア3内を移動している間は、前述のように切り替えられる第1アンテナAからの信号と第2アンテナBからの信号との、両方の信号に応答可能となる。
【0122】
ここで、一般に無線タグ回路部Toは、前述したようにICチップ150の性能や、タグアンテナ151とICチップ150との取り付け部分の抵抗及び取り付け位置の誤差や、貼り付け対象物の物性の影響等により、通信感度にばらつきが生じる。このため、リーダ側の通信アンテナの出力が一定であっても、通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては相対的に通信可能領域が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によってアンテナからの通信可能領域が伸び縮みすることになる。
【0123】
本実施形態のリーダ100のように、2つのアンテナA,Bが重複通信可能領域であるエリア3を形成する場合も、上記同様である。通信感度が高い無線タグ回路部Toに対しては相対的にエリア3が広くなり、通信感度が低い無線タグ回路部Toに対しては相対的にエリア3が狭くなる。すなわち、無線タグ回路部Toの通信感度の高低によって重複通信可能領域であるエリア3の大きさが変動することとなる。しかしながら、このときのエリア3の大きさの変動は、もともとは各アンテナA,Bからの通信可能領域21,22の伸び縮みに由来するものである。したがって、広くなったときのエリア3の中心位置と、狭くなったときのエリア3の中心位置とは、ほとんど変化しないという特性がある。
【0124】
本実施形態はこの特性を応用し、搬送物Cに設けられた無線タグ回路部Toが搬送経路に沿って順次移動してくるとき、当該無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングを判定する。これにより、通信感度が高い無線タグ回路部Toや通信感度が低い無線タグ回路部Toが混在しつつ搬送経路に沿って移動してくる場合でも、必ず、先行する無線タグ回路部Toは先の順番で検出するとともに、後続する無線タグ回路部Toは後の順番で検出するようになる。すなわち、リーダ100が、無線タグ回路部Toを、搬送されてくる順序とは異なる順序で誤って検出するのを防止することができる。このようにして、本実施形態によれば、各無線タグ回路部Toのエリア3の略中央位置の通過タイミングを検出することで、搬送経路における各搬送物Cの搬送順序を確実に正しく把握することができる。
【0125】
また、本実施形態では特に、無線タグ回路部Toのエリア3への進入タイミングを判定し、且つ無線タグ回路部Toのエリア3からの退出タイミングを判定する。そして、これらの判定結果に基づき、進入タイミングと退出タイミングとの中間の中間タイミングを判定するので、各無線タグ回路部Toがエリア3の中心を通過するタイミングを、より正確に検出することができる。
【0126】
また、本実施形態では特に、第1アンテナA及び第2アンテナBは、当該第1アンテナAの軸心位置と当該第2アンテナBの軸心位置とを結ぶ線L1が、ベルトコンベアBCによる搬送経路における無線タグ回路部Toの移動方向と平行となるように配置されている。このような配置にすることにより、2つのアンテナA,Bの通信可能領域21,22が重なるエリア3の中心位置を、無線タグ回路部Toの感度の高低に関係なく、確実に一定とすることができる。
【0127】
また、本実施形態では特に、第1アンテナAによる無線通信によりタグ情報の読み取りが行われると、無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容が「A」から「B」に反転され、第2アンテナBによる無線通信によりタグ情報の読み取りが行われると、無線タグ回路部Toのインベントリフラグの内容が「B」から「A」に反転される。これにより、無線タグ回路部Toが、搬送経路上流側において第1アンテナAと一度通信を行うと以降は同じ第1アンテナAとは通信しなくなり、搬送経路下流側において第2アンテナBと一度通信を行うと、以降は同じ第2アンテナBとは通信しなくなる。この結果、重複通信可能領域であるエリア3以外での無駄な通信をなるべく避け、通信効率を向上することができる。
【0128】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0129】
(1)エリア3の範囲を拡大させる場合
上記実施形態では、第1アンテナA及び第2アンテナBをそれらの軸心位置を結ぶ線が無線タグ回路部Toの移動方向と平行となるように配置したが、エリア3の範囲を拡大させるために、第1アンテナA及び第2アンテナBを互いに傾斜させて設けてもよい。
【0130】
図9は、本変形例のリーダ100の概略を表すシステム構成図である。この図9に示すように、第1アンテナA及び第2アンテナBは、当該第1アンテナAのメインローブ方向の線Laと当該第2アンテナBのメインローブ方向の線Lbとが、ベルトコンベアBCの搬送経路上において交差するように、配置されている。なお、上記メインローブ方向とは、第1アンテナA及び第2アンテナBが指向性を有するアンテナである場合に、電波の放射が最大となる方向である。このような配置にすることにより、2つのアンテナA,Bの通信可能領域21,22が重なる重複通信可能領域23であるエリア3の大きさをより広くすることができる。その結果、エリア3内での通信タイミングの回数を増加させることができるので、無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置の通過タイミングの判定精度を向上することができる。
【0131】
(2)ベルトコンベアの搬送速度制御を行う場合
上記実施形態ではベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度は一定としたが、第1アンテナA及び第2アンテナBによる通信結果に基づき搬送速度を制御するようにしてもよい。
【0132】
図10は、本変形例の搬送物管理システムLSの概略を表すシステム構成図である。この図10に示すように、搬送物管理システムLSは、前述の実施形態と同様の構成であるリーダ100と、ベルトコンベアBC(搬送手段)と、このベルトコンベアBCの搬送速度を制御するための搬送コントローラ200とを有している。リーダ100の制御回路11と搬送コントローラ200とはネットワークNWを介して信号を送受信可能に接続され、また搬送コントローラ200はベルトコンベアBCを駆動する駆動モータMに接続されている。
【0133】
制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を制御する。本変形例では、ベルトコンベアBCによる搬送速度が第1搬送速度である場合における、連続する2つの無線タグ回路部Toのエリア3の中心位置における通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍よりも小さかった場合、前述したように搬送物Cの搬送順序を正しく検出できない可能性があるため、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも減少させ、上記2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍より大きくなるように制御する。
【0134】
図11は、リーダ100の制御回路11により実行される上記制御内容を表すフローチャートである。なお、この図11において前述の図6と同様の手順には同符号を付し、適宜説明を省略する。
【0135】
ステップS10〜ステップS20は、前述の図6と同様であり、制御回路11は、無線通信に係わる初期設定を行った後、切替スイッチSWを第1アンテナA側に切り替えて第1アンテナAによる通信処理を行うと共に、切替スイッチSWを第2アンテナB側に切り替えて第2アンテナBによる通信処理を行う。なお、ここでのベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度は第1搬送速度に設定されている。そして、ステップS20において、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが存在するか否かを判定する。エリア1内において応答しなくなった無線タグ回路部To、及びエリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toのいずれの無線タグ回路部Toも存在しない場合には、判定が満たされずにステップS25に移る。
【0136】
ステップS25では、制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも増大させるように制御する。その後、後述のステップS50に移る。
【0137】
一方、上記ステップS20において、タグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが存在しない場合には、判定が満たされてステップS30に移る。ステップS30は前述の図6と同様であり、制御回路11は、上記ステップS20で存在すると判定した無線タグ回路部Toのタグカウントが−1であるか否かを判定する。タグカウントが−1である場合、すなわちタグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toがエリア1内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合には、上記ステップS25に移り、制御回路11は、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも増大させるように制御する。
【0138】
一方、上記ステップS30において、タグカウントが−1でない場合、すなわちタグ情報の読み取りができなくなった無線タグ回路部Toが上述したエリア2内において応答しなくなった無線タグ回路部Toである場合には、ステップS33に移る。
【0139】
ステップS33では、制御回路11は、タグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが複数存在するか否かを判定する。当該無線タグ回路部Toが複数存在する場合、すなわちエリア2内に応答しなくなった無線タグ回路部Toが複数存在する場合には、判定が満たされてステップS35に移る。この場合、連続する2つの無線タグ回路部のエリア3の中心位置の通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍よりも小さく、ベルトコンベアBCの搬送速度が早すぎると考えられるため、制御回路11はステップS35において、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第1搬送速度よりも減少させるように制御する。このとき、2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍より大きくなるように、搬送速度を減少させることで、搬送物Cの搬送順序を確実に正しく検出できる。その後、ステップS40に移る。
【0140】
一方、上記ステップS33においてタグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが単一のみ存在する場合には、判定が満たされずにステップS40に移る。その後のステップS40及びステップS50は前述の図6と同様であるので説明を省略する。
【0141】
なお、上記において、ステップS35が特許請求の範囲に記載の減少制御手段を構成し、このステップS35及びステップS25と、後述する図12に示すステップS45とが、搬送制御手段を構成する。
【0142】
以上説明した変形例においては、搬送物Cの搬送順序を正しく検出できる速度範囲において、ベルトコンベアBCによる搬送速度を増大させることができるので、搬送順序を正しく検出しつつベルトコンベアBCによる搬送効率を向上することができる。
【0143】
なお、上記の変形例においては、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの2倍より大きくなるように搬送速度を減少させるようにしたが、上記通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの3倍以上となった場合には、反対に検出分解能に対し余裕が大きすぎ、搬送物どうしの間隔が無駄に空きすぎてベルトコンベアBCの搬送効率が低下する。したがって、搬送速度が第2搬送速度である場合における、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの3倍以上となった場合に、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第2搬送速度よりも増大させるようにしてもよい。
【0144】
図12は、リーダ100の制御回路11により実行される上記制御内容を表すフローチャートである。なお、この図12において前述の図6及び図11と同様の手順には同符号を付し、適宜説明を省略する。
【0145】
ステップS10〜ステップS33は前述の図11と同様であるので説明を省略する。なお、ここでのベルトコンベアBCによる搬送物Cの搬送速度は第2搬送速度に設定されている。
【0146】
ステップS33において、タグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが複数存在する場合には、判定が満たされてステップS35に移り、制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第2搬送速度よりも減少させるように制御する。その後、ステップS40に移る。
【0147】
一方、上記ステップS33においてタグ情報の読み取りができなくなった、タグカウントが−1でない無線タグ回路部Toが単一のみ存在する場合には、判定が満たされずにステップS40に移る。ステップS40は前述の図6等と同様であるので説明を省略する。
【0148】
ステップS43では、制御回路11は、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差がアンテナA,Bの切替時間である通信時間ΔTの3倍以上であるか否かを判定する。上記時間差が通信時間ΔTの3倍未満である場合には、判定が満たされずにステップS50に移る。一方、上記時間差が通信時間ΔTの3倍以上である場合には、判定が満たされてステップS45に移る。
【0149】
ステップS45では、制御回路11は、ネットワークNWを介して搬送コントローラ200に制御信号を出力し、ベルトコンベアBCの搬送速度を上記第2搬送速度よりも増大させるように制御する。その後、ステップS50に移る。ステップS50は前述の図6等と同様であるので説明を省略する。
【0150】
上記において、ステップS45は、特許請求の範囲に記載の増大制御手段を構成する。また前述したように、このステップS45と、前述の図11に示すステップS25及びステップS35とが、搬送制御手段を構成する。
【0151】
以上説明した変形例によれば、ベルトコンベアBCによる搬送速度を、2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が上記通信時間ΔTの2倍と3倍との間となるような、適宜の速度範囲内となるように制御することができる。これにより、前述した搬送速度の減少のし過ぎによる検出分解能に対し無駄な余裕、及び搬送物どうしの無駄な間隔を抑制しつつ、効率のよい搬送順序の検出を行うことができる。
【0152】
(3)その他
上記実施形態では、アンテナA,Bの切替パターンを「A→B→A→B→A・・・」というように交互に1回ずつ切り替えるようにしたが、これに限られず、例えば「A→A→B→B→A→A→B→B→A・・・」といったように複数回ずつ交互に切り替えるようにしてもよい。この場合、複数回連続で情報の読み取りができなかった場合が通信不可と判定することで、通信が不安定である重複通信可能領域23における判定精度を向上できる。
【0153】
また上記実施形態では、リーダ100のリーダ本体10が計時部14と記憶部15とを有する構成としたが、リーダ100が必ずしもこれらを有する必要はない。例えば、リーダ100と情報送受信可能であるサーバ等の外部機器にこれら計時部14及び記憶部15を設けておき、リーダ100が無線タグ回路部Toと通信した際にその旨を知らせる信号を外部機器に対して送信し、当該外部機器において通信タイミングを記憶する構成としてもよい。
【0154】
また、上述した変形例(2)においては、第1アンテナA及び第2アンテナBによる通信結果に基づきベルトコンベアBCの搬送速度を制御するようにしたが、これに限られず、制御回路11により第1アンテナAによる通信時間ΔT(第1時間区分)及び第2アンテナBによる通信時間ΔT(第2時間区分)を増減させるようにしてもよい。例えば、連続する2つの無線タグ回路部Toの通過タイミングの時間差が通信時間ΔTの2倍より小さい場合には、アンテナA,Bの切替タイミングを早くして第1アンテナAによる通信時間ΔT及び第2アンテナBによる通信時間ΔTを減少させることにより、上記時間差を通信時間ΔTの2倍より大きくすることができる。この結果、ベルトコンベアBCの搬送速度を変更せずとも、搬送物Cの搬送順序を正しく検出することができる。
【0155】
なお、以上において、図2中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。また、図6、図7、図8等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0156】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0157】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0158】
13 切替スイッチ(切替制御手段)
14 計時部(計時手段)
15 記憶部(記憶手段)
21 第1通信可能領域(第1通信可能範囲)
22 第2通信可能領域(第2通信可能範囲)
23 重複通信可能領域(重複通信範囲)
100 リーダ(無線タグ読み取り装置)
150 IC回路部
151 タグアンテナ
155 メモリ部(記憶部)
A 第1アンテナ(第1通信アンテナ)
B 第2アンテナ(第2通信アンテナ)
BC ベルトコンベア(搬送手段)
C 搬送物
L 線
LS 搬送物管理システム
IF インベントリフラグ(切替識別子)
To 無線タグ回路部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送される複数の搬送物のそれぞれに設けられ、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた、複数の無線タグ回路部を、順次検出する無線タグ読み取り装置であって、
前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、
前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、
前記第1通信アンテナと前記第2通信アンテナとが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、
前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段と
を有することを特徴とする無線タグ読み取り装置。
【請求項2】
前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで前記無線タグ回路部からの応答信号を受信した時間を計時する計時手段と、
前記計時手段で計時した時間を通信時間として記憶する記憶手段とを有し、
前記通過判定手段は、
記憶手段に記憶した通信時間を用いて、重複通信範囲の通過時間を判定する
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項3】
前記通過判定手段は、
前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第2通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信されない状態から、当該応答信号が受信されるようになったことにより、前記重複通信範囲への進入時間を判定する進入判定手段と、
前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第1通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信される状態から、当該応答信号が受信されなくなったことにより、前記重複通信範囲からの退出時間を判定する退出判定手段と、
前記進入時間と前記退出時間との中間の時間を判定する中間判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項4】
前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、
当該第1通信アンテナの軸心位置と当該第2通信アンテナの軸心位置とを結ぶ線が、前記搬送経路における前記無線タグ回路部の移動方向と平行となるように、配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項5】
前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、
当該第1通信アンテナのメインローブ方向の線と当該第2通信アンテナのメインローブ方向の線とが、前記搬送経路上において交差するように、配置されている
ことを特徴とする請求項4記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項6】
前記第1通信アンテナと情報送受信するための第1状態、及び、前記第2通信アンテナと情報送受信するための第2状態、のいずれかに切替可能な切替識別子を前記記憶部に記憶した前記無線タグ回路部に対し、前記第1状態から前記第2状態へ切り替えるための第1切替コマンドを、前記第1通信アンテナを用いて送信する第1切替コマンド送信手段と、
前記無線タグ回路部に対し、前記第2状態から前記第1状態へ切り替えるための第2切替コマンドを、前記第2通信アンテナを用いて送信する第2切替コマンド送信手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項7】
情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、
搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、
前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置と
を有する搬送物管理システムであって、
前記搬送制御手段は、
前記搬送手段の搬送速度が第1搬送速度である場合における、前記通過判定手段により判定された1つの前記無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間と、前記通過判定手段により判定された前記1つの前記無線タグ回路部とは別の無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間との時間差が、前記第1時間区分及び第2時間区分の和よりも小さかった場合に、前記搬送手段の搬送速度を前記第1搬送速度よりも減少させるように制御する減少制御手段を備える
ことを特徴とする搬送物管理システム。
【請求項8】
前記搬送制御手段は、
前記搬送手段の搬送速度が第2搬送速度である場合における前記時間差が、前記第1時間区分の3倍以上、若しくは、前記第2時間区分の3倍以上、であった場合には、前記搬送手段の搬送速度を前記第2搬送速度よりも増大させるように制御する増大制御手段を備える
ことを特徴とする請求項7記載の搬送物管理システム。
【請求項9】
情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、
搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、
前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置と
を有する搬送物管理システムであって、
前記切替制御手段は、
前記第1時間区分及び前記第2時間区分を増減しつつ、当該増減させた第1時間区分及び第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う
ことを特徴とする搬送物管理システム。
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送される複数の搬送物のそれぞれに設けられ、情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた、複数の無線タグ回路部を、順次検出する無線タグ読み取り装置であって、
前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、
前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、
前記第1通信アンテナと前記第2通信アンテナとが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、
前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段と
を有することを特徴とする無線タグ読み取り装置。
【請求項2】
前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで前記無線タグ回路部からの応答信号を受信した時間を計時する計時手段と、
前記計時手段で計時した時間を通信時間として記憶する記憶手段とを有し、
前記通過判定手段は、
記憶手段に記憶した通信時間を用いて、重複通信範囲の通過時間を判定する
ことを特徴とする請求項1記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項3】
前記通過判定手段は、
前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第2通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信されない状態から、当該応答信号が受信されるようになったことにより、前記重複通信範囲への進入時間を判定する進入判定手段と、
前記記憶手段に記憶された通信時間の中から、前記第1通信アンテナにおいて前記無線タグ回路部からの応答信号が受信される状態から、当該応答信号が受信されなくなったことにより、前記重複通信範囲からの退出時間を判定する退出判定手段と、
前記進入時間と前記退出時間との中間の時間を判定する中間判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項4】
前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、
当該第1通信アンテナの軸心位置と当該第2通信アンテナの軸心位置とを結ぶ線が、前記搬送経路における前記無線タグ回路部の移動方向と平行となるように、配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項5】
前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナは、
当該第1通信アンテナのメインローブ方向の線と当該第2通信アンテナのメインローブ方向の線とが、前記搬送経路上において交差するように、配置されている
ことを特徴とする請求項4記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項6】
前記第1通信アンテナと情報送受信するための第1状態、及び、前記第2通信アンテナと情報送受信するための第2状態、のいずれかに切替可能な切替識別子を前記記憶部に記憶した前記無線タグ回路部に対し、前記第1状態から前記第2状態へ切り替えるための第1切替コマンドを、前記第1通信アンテナを用いて送信する第1切替コマンド送信手段と、
前記無線タグ回路部に対し、前記第2状態から前記第1状態へ切り替えるための第2切替コマンドを、前記第2通信アンテナを用いて送信する第2切替コマンド送信手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の無線タグ読み取り装置。
【請求項7】
情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、
搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、
前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置と
を有する搬送物管理システムであって、
前記搬送制御手段は、
前記搬送手段の搬送速度が第1搬送速度である場合における、前記通過判定手段により判定された1つの前記無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間と、前記通過判定手段により判定された前記1つの前記無線タグ回路部とは別の無線タグ回路部の前記重複通信範囲の前記通過時間との時間差が、前記第1時間区分及び第2時間区分の和よりも小さかった場合に、前記搬送手段の搬送速度を前記第1搬送速度よりも減少させるように制御する減少制御手段を備える
ことを特徴とする搬送物管理システム。
【請求項8】
前記搬送制御手段は、
前記搬送手段の搬送速度が第2搬送速度である場合における前記時間差が、前記第1時間区分の3倍以上、若しくは、前記第2時間区分の3倍以上、であった場合には、前記搬送手段の搬送速度を前記第2搬送速度よりも増大させるように制御する増大制御手段を備える
ことを特徴とする請求項7記載の搬送物管理システム。
【請求項9】
情報を記憶する記憶部を備えたIC回路部と情報を送受信するタグアンテナを備えた無線タグ回路部がそれぞれ設けられた複数の搬送物を、所定の搬送経路に沿って一方向に順次搬送する搬送手段と、
搬送手段の搬送速度を制御する搬送制御手段と、
前記搬送経路の所定の部分に第1通信可能範囲を形成する第1通信アンテナと、前記搬送経路の前記所定の部分より搬送方向下流側の部分に、前記第1通信可能範囲と一部重なるような第2通信可能範囲を形成する第2通信アンテナと、前記第1通信アンテナの通信に第1時間区分を割り当てるとともに、前記第2通信アンテナの通信に第2時間区分を割り当てて、前記第1時間区分及び前記第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う切替制御手段と、前記切替制御手段の制御により切替制御される前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナで受信された、前記無線タグ回路部からの応答信号の有無に基づき、前記搬送経路に沿って移動する前記無線タグ回路部の、前記第1通信可能範囲と前記第2通信可能範囲とが重なる重複通信範囲の通過時間を判定する通過判定手段とを有する無線タグ読み取り装置と
を有する搬送物管理システムであって、
前記切替制御手段は、
前記第1時間区分及び前記第2時間区分を増減しつつ、当該増減させた第1時間区分及び第2時間区分により前記第1通信アンテナ及び前記第2通信アンテナが交互に通信を行うように、それら第1通信アンテナ及び第2通信アンテナの切替制御を行う
ことを特徴とする搬送物管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−28470(P2011−28470A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172731(P2009−172731)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]