説明

無線データ通信システム

【課題】設置工事の電波での縁組動作時に縁組の動作確認を従来からの低速無線機器の設置と高速無線機器の設置が混在する場合においても、耳だけで合否確認ができるようにした無線データ通信システムの提供。
【解決手段】センタ側装置と、これに通信回線を介して接続された無線親機と、無線親機との間で無線通信を行う複数の無線子機とから構成され、子機は、親機を通じてセンタ側装置とデータ通信を行い、親機および子機は、可聴音周波数帯域以上の変調速度でFSK通信するシステムにおいて、親機と子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、少なくとも一つの電文に可聴音周波数帯域の変調信号を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線データ通信システムに関し、特に、センタ側装置に公衆回線等の通信回線を介して接続された端末網制御装置とガスメータ、水道メータ、センサ等の端末機器との間でのデータ伝送を無線によって行う無線テレメータシステム、あるいは異常事態を通報するセキュリティシステム等の無線データ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線テレメータシステムでは、センタ側網制御装置と通信回線を介して接続された端末網制御装置(以下、T−NCUと略す)と、T−NCUに接続された無線親機(以下、親機と略す)と、親機と無線回線を介して通信を行う複数の無線子機(以下、子機と略す)と、親機または子機に接続されたガス、水道、電気等のメータ、センサ等の端末機器とによって構成される。
【0003】
上記の無線テレメータシステムでは、親機および子機は、設置運用する前に親機子機間でマックアドレス(識別符号)を交換し、お互いが通信相手であることを記憶して「縁組」をする必要がある。このマックアドレスの交換手段には種々方法があり、設定機を利用して有線で親機と子機各々にお互いのマックアドレスを記憶させる方法や親機を縁組受信モードにして置き、子機から親機に向かって子機のマックアドレスを含む縁組要求電文を送信し、親機が縁組を受け入れたときに親機から折り返して親機のマックアドレスを含む縁組完了電文を送信し子機が受信する方法などがある。(例えば特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−199761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、この縁組電文交換時において通信電文の変調速度が20kbps以下の低速無線通信では市販の無線レシーバーで音に変換してスピーカーで電波を確認しているが、変調速度が20kbps以上の高速無線通信では変調音が可聴できなくなる。市販の無線レシーバーのディスプレイを見て電波強度を目視にてのみ確認できる。よって工事作業時にいちいちレシーバーのディスプレイを目視する必要がある。また従来からの低速無線通信のシステムが存在する市場で今後導入されてくる高速無線通信とが混在する現場では、従来からと無線レシーバーと高速無線確認用の高度な機器を持つ必要になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記に鑑み、設置工事の電波での縁組動作時に縁組の動作確認を従来からの低速無線機器の設置と高速無線機器の設置が混在する場合においても、耳だけで縁組の成否確認ができるようにした無線データ通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の無線データ通信システムは、センタ側装置と、これに通信回線を介して接続された無線親機と、該無線親機との間で無線通信を行う複数の無線子機とから構成され、前記子機は、前記親機を通じてセンタ側装置とデータ通信を行う無線データ通信システムであって、前記親機および前記子機は、可聴音周波数帯域以上の変調速度でFSK通信するシステムにおいて、前記親機と前記無線子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、少なくとも一つの電文に可聴音周波数帯域の変調信号を有することを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の無線データ通信システムは、前記親機と前記子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、各電文の先頭に可聴音周波数帯域の変調信号を付加することを特徴とする。
さらに本発明の無線データ通信システムは、前記親機と前記子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、各電文の最後に可聴音周波数帯域の低速電文を付加することを特徴とする。
さらに本発明の無線データ通信システムは、前記親機と前記子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、応答電文のみに最後に可聴音周波数帯域の低速電文を付加することを特徴とする。
さらに本発明の無線データ通信システムは、初めの電文が受信できなくても後方の低速電文が受信できた場合は応答の縁組応答電文は低速の電文のみで返信する事を特徴とする。
さらに本発明の無線データ通信システムは、低速電文で縁組が成立した場合は、その親機と子機は今後低速通信で通信することを特徴とする。
さらに本発明の無線データ通信システムは、前記親機と前記子機間で縁組動作終了後に、前記子機が前記親機からの縁組応答電文を正常に受信できた場合と正常に受信できなかった場合に分けて、可聴音周波数帯域の電文を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来からの低速の無線通信システムの現場に高速の無線通信システム機器が設置される状況下でも従来と同じ工事用の治具だけを所持しておれば新たな投資をすることなく、工事の装備を増やすことなく、無線通信の確認作業を可聴確認にて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の無線テレメータシステムの一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】本発明における無線子機、親機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】従来からの親機と子機間の縁組通信プロトコルを示す図である。
【図4】従来からの縁組要求コマンド構成図である。
【図5】従来からの縁組応答コマンド構成図である。
【図6】本発明における縁組要求や応答コマンドの一例を示す構成図である。
【図7】本発明における親機と子機間の縁組通信プロトコルの一例を示す図である。
【図8】本発明における縁組要求コマンドの別の一例を示す構成図である。
【図9】本発明における縁組応答コマンドの別の一例を示す構成図である。
【図10】プリアンブル図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明の無線データ通信システムの一実施形態としての無線テレメータシステムを図1に示す。ホストコンピュータ1に接続されたセンタ側網制御装置2からなるセンタ側装置と、センタ側網制御装置2と電話回線等の通信回線を介して接続されたT−NCU3と、T−NCU3に接続された親機4と、親機4と無線回線を介して無線通信を行う複数の子機5と、親機4および子機5に接続されたメータ6とによって構成される。なお、親機4、子機5を総称して無線機器とする。
【0013】
図2に親機4および子機5の概略構成のブロック図を示す。親機4および子機5は、アンテナ7と、アンテナ7に接続され相手局と無線通信を行うための無線通信ユニット8と、無線通信を制御する制御部9と、メータ6と接続するためのメータインターフェース部10と、自己の無線局の識別符号(呼出名称)およびユーザIDを記憶する自局ID記憶部11と、相手局(通信相手)の識別符号(呼出名称)およびユーザID等を記憶する相手局ID記憶部12と、相手局登録時に使用するスイッチ部13と、記憶している情報等を表示する表示部14とを有する。親機4は、さらにT−NCU3と接続するためのインターフェース部を有している。ただし商品形態によっては、図1の3のT−NCUと4の無線親機が一体化する場合もある。また、T−NCUの部分がPHS網やFOMA網やDOPA網等の移動体電話網に接続する機器の場合もある。また電源回路部は15である。
【0014】
無線親機4および無線子機5は、運用前に親機4と子機5間で縁組を実施し、お互いの識別符号を取り交わして記憶する必要がある。この時、大きく分けて事前に縁組専用端末などを使用して子機5の識別符号と親機4の識別符号を取り交わす方法や無線通信を利用して子機5と親機4間で識別符号を取り交わす方法がある。
【0015】
無線通信を利用して縁組をするとき、前もって親機4を縁組待機状態にして置き、配下にするための子機5からの縁組要求電文を受信できる状態にして置き、親機4の配下にするベく子機5から縁組要求電文が来るとこれを受信し、同じ属性の製品からの識別符号を含んだ無線電波を受信できた場合には、親機4はその子機5を縁組相手と登録し、子機5に対して縁組応答電文を送信し、親機4は縁組完了となり、子機5はその縁組応答電文を正常受信できれば子機5も縁組登録を完了する。これら通信の変調速度が可聴音周波数帯域、すなわち、例えば20kbps以下であれば無線レシーバーで周波数を合わせていればその無線信号は変調がかかっているので無線レシーバーのスピーカーで音を確認できる。しかし、可聴音周波数帯域以上の変調速度の無線通信では無線レシーバーの音では可聴できなくなる。ここで、可聴音周波数帯域以上とは、例えば通信速度20kbps以上の変調速度である。
【0016】
図3には、従来からの無線通信を利用して親機と子機とが縁組を行なうプロトコルを示したものである。親機4はスイッチ等の外部トリガにより縁組待機状態にしておき、子機からの電波を受信できる態勢にしておき、次に子機5のスイッチ等の外部トリガにより図4の縁組要求電文を送信する。この電文を親機4は受信すると電文内容を分析し、登録の可否を判断し、登録に値する子機からの電文であると相手局ID記憶部12に記憶し、子機に対して自局IDを付加した図5の縁組応答電文を送信する。この電文を子機5は受信すると電文内容を分析し、登録に値する内容だと親機4のIDを相手局ID記憶部12に記憶し、縁組登録成功を表示部14に表示する。この縁組応答電文が来なかったり、正規の電文が無い場合は、縁組NGを表示部14に表示する。また親機4も子機からの縁組要求電文が正規外の場合は縁組NGを自身の表示部14に表示する。
【0017】
図4、5は、縁組時の電文内容を示す。電文の先頭には、電文の始まりを示す図10に示すプリアンブルが付く。これはFSK信号のビットのマークとスペースを表す“1”と“0”を交互に並べたもので通常10ビット以上で構成され、受信側の同期合わせの役目を持っている。次に無線電文のヘッダとしてビット同期、フレーム同期、送信元の識別符号等で構成する。次に電文の本内容である縁組ID、送信先識別符号、縁組目的内容の電文(縁組要求コマンドや縁組応答コマンド)で構成する。これら低速通信の場合は全電文を同じ変調速度で送信する。
【0018】
従来からの20kbps以下の低速無線通信では、可聴音周波数帯域であり、この電文を無線レシーバーで音に変換するとブルブル音で変調の音をスピーカーにて確認している。しかし、今後の20kbps以上の高速無線通信が導入されてくると専用の表示モニターなどで無線を傍受しないと無線を音で確認することは不可能である。
【0019】
そのため、本発明では、従来の電文構成の先頭に図6のように低速(20kbps以下)のプリアンブルを付加する。すると、先頭の低速のプリアンブルにより電文送信の始まりを無線レシーバーにて可聴確認することができる。
【0020】
また図7には図3に示す従来からの縁組通信プロトコルに対して各電文の末尾に低速(20kbps以下)の同じ内容の電文を付加する別の実施形態の内容を示すものである。
【0021】
図8にはその縁組要求電文を示し、高速の無線電文の末尾に同じ内容の低速電文A(プリアンブル、縁組ID、送信先識別符号、縁組要求コマンド)を付加するものである。また図9では、縁組応答電文の末尾に低速電文B(プリアンブル、縁組ID、送信先識別符号、縁組応答コマンド)を付加したものである。どちらも無線レシーバーで聞いていると、初めの高速電文部では無線レシーバーのキャリア存在の表示は確認するも音は無音であるが、末尾に付いた低速電文を見極めるときには無線レシーバーのスピーカーからブルブルと言った可聴音が確認できる。
【0022】
また、縁組要求電文には低速の電文を付加せず、図9の縁組応答電文の末尾にのみ低速の電文を付加するようにして、少しでも縁組の時間を短縮してもよい。
【0023】
また無線の通信可能距離は通信速度と相容れないもので、通信速度が上がれば受信感度が悪くなり、通信距離が短縮するものである。このため、初めの高速電文が受信できなくても後方の低速電文が受信できた場合は応答の縁組応答電文は低速の電文のみで返信することや、低速電文で縁組が成立した場合はその親機と子機は今後低速通信で通信すること等、縁組通信において自動で通信速度を決めて通信可能距離を延ばすことができる。
【0024】
また、子機が親機からの縁組応答電文を正常に受信できた場合と正常に受信できなかった場合に分けて、可聴音周波数帯域の電文を送信するようにしてもよい。これは、正規スピードでの縁組動作終了後に子機から縁組の成否を可聴音周波数帯域(例えば4800bps)の信号を送信する。例えば成功時には数秒間の連続変調波で構成し、不成功時は数秒間のバースト変調波で構成する。
【0025】
このように運用時の通信スピードで縁組するのは通信距離が通信スピードと2次曲線的な関係にあり、通信スピードを上げると通信可能距離が減少するためであり、親機子機の設置位置で実通信のスピードで通信できるかの確認も兼ねているためである。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 ホストコンピュータ
2 センタ側網制御装置
3 T−NCU
4 無線親機
5 無線子機
6 メータ
8 無線通信ユニット
9 制御部
10 メータインターフェース部
11 自局ID記憶部
12 相手局ID記憶部
13 スイッチ部
14 表示部
15 電源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ側装置と、これに通信回線を介して接続された無線親機と、該無線親機との間で無線通信を行う複数の無線子機とから構成され、前記子機は、前記親機を通じてセンタ側装置とデータ通信を行う無線データ通信システムであって、前記親機および前記子機は、可聴音周波数帯域以上の変調速度でFSK通信するシステムにおいて、前記親機と前記無線子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、少なくとも一つの電文に可聴音周波数帯域の変調信号を有することを特徴とする無線データ通信システム。
【請求項2】
前記親機と前記子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、各電文の先頭に可聴音周波数帯域の変調信号を付加することを特徴とする請求項1記載の無線データ通信システム。
【請求項3】
前記親機と前記子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、各電文の最後に可聴音周波数帯域の低速電文を付加することを特徴とする請求項1記載の無線データ通信システム。
【請求項4】
前記親機と前記子機間で無線通信を利用して縁組動作するときに、応答電文のみに最後に可聴音周波数帯域の低速電文を付加することを特徴とする請求項1記載の無線データ通信システム。
【請求項5】
初めの電文が受信できなくても後方の低速電文が受信できた場合は応答の縁組応答電文は低速の電文のみで返信する事を特徴とする請求項3記載の無線データ通信システム。
【請求項6】
低速電文で縁組が成立した場合は、その親機と子機は今後低速通信で通信することを特徴とする請求項4記載の無線データ通信システム。
【請求項7】
前記親機と前記子機間で縁組動作終了後に、前記子機が前記親機からの縁組応答電文を正常に受信できた場合と正常に受信できなかった場合に分けて、可聴音周波数帯域の電文を送信することを特徴とする請求項1記載の無線データ通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−244465(P2012−244465A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113440(P2011−113440)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】