説明

無線使用率測定装置、プログラムおよび集積回路

【課題】CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定する。
【解決手段】CDMA方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定する無線使用率測定装置であって、無線使用率測定部12は、プリアンブルの逆拡散を行なう逆拡散処理部13と、各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する電力算出部14と、逆拡散の結果と算出した電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで無線制御装置から無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する無線使用率算出部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDMA方式を利用したシステムの無線使用率を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルラ通信システムや無線LANなど多種多様な無線システムが広く普及している。これらの無線システムを用いて通信サービスを展開する上で、端末の通信品質確保は非常に重要な課題である。端末の通信品質の影響を与える要素の一つとして、無線リンクの使用率(無線使用率)がある。無線使用率は、通信中の端末数と各端末の通信量に依存し、一般的に、端末数が多い程または各端末の通信量が多い程、無線使用率は高くなる傾向にある。
【0003】
無線使用率が低いか、または無線使用率が高くても通信中の端末数が少ない場合、端末の通信の品質に与える影響は少ない。しかし、無線使用率が高く、かつ通信中の端末数が多い場合、ある端末が通信を要求しているにも関わらず、基地局が該当端末に対して十分な通信機会を与えることができず、端末の通信品質が劣化する可能性がある。従って、無線使用率を測定することで、端末の通信品質が劣化する可能性のある場所や時間帯の特定、更には品質劣化に対する対策を講じることが可能となる。特許文献1には、このような無線使用率を測定する技術として、無線環境の時間占有率を監視する無線環境装置およびプログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−049588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、無線LANシステムを対象としており、CDMA方式を利用したシステムの無線使用率の測定を行なうことはできない。また、既存の通信端末においては、報知情報と自端末宛ての情報のみを検出して復調動作を行なうが、端末ごとの無線使用率を把握しようとした場合には、測定対象となる基地局が収容可能な端末数分だけ測定用端末を用意し、受信機能だけ動作させる必要があり、装置構成が大きくなるという問題がある。また、基地局装置は各端末に対して通信機会を割り当てる役割を担うため、端末ごとの無線使用率をロギングすることが可能であるが、無線使用率のロギングを行なうことで基地局装置の処理負荷が増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能な無線使用率測定装置、プログラムおよび集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線使用率測定装置は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定する無線使用率測定装置であって、前記無線制御装置からスロットを受信する受信信号処理部と、前記受信したスロットに含まれる情報に基づいて、いずれかの前記無線端末装置への無線使用率を測定する無線使用率測定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように、受信したスロットに含まれる情報に基づいて、いずれかの前記無線端末装置への無線使用率を測定するので、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能となる。また、無線制御装置や無線端末装置に改変を加える必要はなく、単一の無線使用率測定装置で無線使用率を測定することが可能となると共に、無線制御装置の処理負荷を増加させることが一切ない。
【0009】
(2)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記無線使用率測定部は、プリアンブルの逆拡散を行なう逆拡散処理部と、各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する電力算出部と、前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する無線使用率算出部と、を備える。
【0010】
このように、プリアンブルの逆拡散を行ない、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出し、逆拡散の結果と電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで無線制御装置から無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定するので、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能となる。
【0011】
(3)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記無線使用率算出部は、前記プリアンブルのプリアンブル長と使用スロット数との相関性に基づいて、前記最大送信スロット数を算出し、前記算出した最大送信スロット数に基づいて、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定することを特徴とする。
【0012】
このように、プリアンブルのプリアンブル長と使用スロット数との相関性に基づいて、最大送信スロット数を算出し、算出した最大送信スロット数に基づいて、無線制御装置から無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定するので、無線使用率の測定精度を高めることが可能となる。
【0013】
(4)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記無線使用率算出部は、前記逆拡散の結果、MAC(Media Access Control) Indexを検出することができたかどうかを判定すると共に、前記算出した電力値に基づいて前記スロットがアクティブスロットであるかどうかを判定し、前記各判定結果に基づいて、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定することを特徴とする。
【0014】
このように、逆拡散の結果、MAC(Media Access Control) Indexを検出することができたかどうかを判定すると共に、算出した電力値に基づいてスロットがアクティブスロットであるかどうかを判定することで、無線制御装置から無線端末装置への無線リンクの無線使用率が測定可能となる。
【0015】
(5)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記逆拡散処理部は、MAC Indexを引数とした128系列のWalsh符号を用いて、前記プリアンブルをプリアンブル長であると想定される長さ分だけ逆拡散し、各プリアンブル長においてWalsh符号ごとに相関値を算出することを特徴とする。
【0016】
このように、MAC Indexを引数とした128系列のWalsh符号を用いて、前記プリアンブルをプリアンブル長であると想定される長さ分だけ逆拡散し、各プリアンブル長においてWalsh符号ごとに相関値を算出するので、無線制御装置から無線端末装置への無線リンクの無線使用率が測定可能となる。
【0017】
(6)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記無線使用率算出部は、前記スロットに割り当てられた電力値と前記パイロットシンボルに割り当てられた電力値とから1チップ当たりの電力値を算出し、算出したデータチャネルの1チップ当たりの電力値とパイロットチャネルの1チップ当たりの電力値との比が閾値以下である場合に、前記スロットがアクティブスロットであると判定する。
【0018】
このように、スロットに割り当てられた電力値と前記パイロットシンボルに割り当てられた電力値とから1チップ当たりの電力値を算出し、算出したデータチャネルの1チップ当たりの電力値とパイロットチャネルの1チップ当たりの電力値との比が閾値以下である場合に、前記スロットがアクティブスロットであると判定するので、複雑な処理を経ることなく、簡易かつ迅速に無線使用率を測定することが可能となる。
【0019】
(7)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記無線使用率算出部は、前記逆拡散処理部が算出した相関値の中で、プリアンブル長が最短である逆拡散範囲内で相関値の第一最大値と第二最大値を選択し、前記第一最大値、または、前記第一最大値と前記第二最大値の比の少なくとも一方が閾値を超えた場合、前記第一最大値を持つWalsh符号を生成するために用いたMAC Indexをプリアンブルに含まれていたMAC Indexと判定することを特徴とする。
【0020】
このように、逆拡散処理部が算出した相関値の中で、プリアンブル長が最短である逆拡散範囲内で相関値の第一最大値と第二最大値を選択し、第一最大値、または、第一最大値と第二最大値の比の少なくとも一方が閾値を超えた場合、第一最大値を持つWalsh符号を生成するために用いたMAC Indexをプリアンブルに含まれていたMAC Indexと判定するので、複雑な処理を経ることなく、簡易かつ迅速に無線使用率を測定することが可能となる。
【0021】
(8)また、本発明の無線使用率測定装置において、前記無線使用率算出部は、前記逆拡散処理部が算出したWalsh符号ごとの相関値の第一最大値と第二最大値の比をプリアンブル長ごとに求め、前記比の最大値が閾値を超えた場合、前記比が最大となる時のプリアンブル長を、前記スロットのプリアンブル長と判定することを特徴とする。
【0022】
このように、逆拡散処理部が算出したWalsh符号ごとの相関値の第一最大値と第二最大値の比をプリアンブル長ごとに求め、同比の最大値が閾値を超えた場合、比が最大となる時のプリアンブル長を、前記スロットのプリアンブル長と判定するので、複雑な処理を経ることなく、簡易かつ迅速に無線使用率を測定することが可能となる。
【0023】
(9)また、本発明のプログラムは、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定するプログラムであって、前記無線制御装置からスロットを受信する処理と、プリアンブルの逆拡散を行なう処理と、各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する処理と、前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する処理と、を含む一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0024】
このように、受信したスロットに含まれる情報に基づいて、いずれかの前記無線端末装置への無線使用率を測定するので、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能となる。また、無線制御装置や無線端末装置に改変を加える必要はなく、単一の無線使用率測定装置で無線使用率を測定することが可能となると共に、無線制御装置の処理負荷を増加させることが一切ない。
【0025】
(10)また、本発明の集積回路は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定する無線使用率測定装置に実装されることにより、前記無線使用率測定装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、前記無線制御装置からスロットを受信する機能と、プリアンブルの逆拡散を行なう機能と、各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する処理と、前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記データスロットの宛先端末を識別することで、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する機能と、を含む一連の機能を、前記無線使用率測定装置に発揮させることを特徴とする。
【0026】
このように、受信したスロットに含まれる情報に基づいて、いずれかの前記無線端末装置への無線使用率を測定するので、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能となる。また、無線制御装置や無線端末装置に改変を加える必要はなく、単一の無線使用率測定装置で無線使用率を測定することが可能となると共に、無線制御装置の処理負荷を増加させることが一切ない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、受信したスロットに含まれる情報に基づいて、いずれかの前記無線端末装置への無線使用率を測定するので、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能となる。また、無線制御装置や無線端末装置に改変を加える必要はなく、単一の無線使用率測定装置で無線使用率を測定することが可能となると共に、無線制御装置の処理負荷を増加させることが一切ない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る無線使用率測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】CDMA2000 1xEV−DOシステムにおいて、基地局と端末間で送信されるスロットの構成例を示す図である。
【図3A】アクティブスロットを示す図である。
【図3B】アイドルスロットを示す図である。
【図4】CDMA2000 1xEV−DOシステムにおいて規定されているデータレート、使用スロット数、プリアンブル長の関係の一部を示す図である。
【図5】4スロット周期でスロット割り当てを行なう様子を示す図である。
【図6】各スロットの先頭にプリアンブルが挿入されている様子を示す図である。
【図7】無線使用率測定の方法の一覧表である。
【図8】プリアンブル長ごとの最大送信スロット数を示す図である。
【図9A】逆拡散処理部13から無線使用率算出部15に入力された結果の一例を示す図である。
【図9B】逆拡散処理部13から無線使用率算出部15に入力された結果の一例を示す図である。
【図10】電力算出部14から無線使用率算出部15に入力された結果の一例を示す図である。
【図11】本実施形態に係る無線使用率測定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、セルラ通信システムとして普及しているCDMA方式を利用したシステムの下りリンクの無線使用率を対象とし、端末毎の無線使用率を測定する。なお、端末毎の無線使用率が測定できれば、端末毎の無線使用率を加算することで、全端末の無線使用率(総無線使用率)を測定することは容易である。本明細書では、一例として、本発明をCDMA2000 1xEV−DOシステムに適用した場合を説明する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る無線使用率測定装置の概略構成を示すブロック図である。この無線使用率測定装置は、アンテナ10で基地局(無線制御局装置)からの無線信号を受信し、RF信号処理部11で受信信号を処理する。無線使用率測定部12は、端末を識別する情報に対応する拡散符号を用いて逆拡散を行なう逆拡散処理部13と、パイロットチャネルの電力とデータチャネルの電力を算出する電力算出部14と、逆拡散処理部13と電力算出部14の結果より無線使用率を算出する無線使用率算出部15と、から構成される。なお、パイロット部は常に送信されている情報である一方、データ部は基地局から特定の端末宛てに送られる情報がある場合のみ送信される。
【0031】
(CDMA2000 1xEV−DOシステムについて)
図2は、CDMA2000 1xEV−DOシステムにおいて、基地局と端末間で送信されるスロットの構成例を示す図である。1スロットはデータチャネル(400chip)、MACチャネル(64chip)、パイロットチャネル(96chip)から構成され、スロット長は1.67msである。従って、1秒間に600スロット(すなわち、1000/1.67)が使用可能となる。基地局は、スケジューリング指標に基づき、端末に対して各スロットを時分割で割り当てる。図3Aおよび図3Bに示すように、あるスロットに対して、割り当て端末が存在する場合にはデータチャネルに該当端末向けのデータが含まれる(Active Slotと呼ばれる)が、割り当てる端末が存在しない場合、データチャネルは送信されず、MACチャネル、パイロットチャネルのみが送信される(Idle Slotと呼ばれる)。
【0032】
CDMA2000 1xEV−DOシステムでは、基地局と端末間の無線品質に応じて割り当てられるスロット数は変化し、割り当てられるスロット数に応じてデータレートが変動する。図4は、CDMA2000 1xEV−DOシステムにおいて規定されているデータレート、使用スロット数、プリアンブル長の関係の一部を示す図である。無線品質の低い端末ほど低速のデータレートが選択されるが、その際は多くのスロットを割り当てることで、同一データを繰り返し伝送することで通信の成功確率を向上させる。なお、2スロット以上に渡る通信が行なわれる場合は、4スロット周期で該当端末に対するスロットが割り当てられる。
【0033】
図5は、4スロット周期でスロット割り当てを行なう様子を示す図である。ここでは、端末Aは2スロット伝送を、端末Bは1スロット伝送を選択した場合を例としている。図5に示すように、端末Aの2番目のスロットは1番目のスロットの4スロット後に挿入される。なお、複数スロットが割り当てられた場合、端末は各スロットを受信する度にこれまで受信したスロットから得たデータ系列と、新しく受信したスロットから得たデータ系列を合成し、復調成功可否の判定を行なう。復調成功可否の判定の結果、正しくデータが復調されたと判断された場合、使用スロット数の上限に達していない場合でも通信を終了する。
【0034】
図6は、各スロットの先頭にプリアンブルが挿入されている様子を示す図である。プリアンブルは、端末識別用の情報であるMAC Indexを引数としたWalsh符号で拡散されており、各端末はプリアンブル部をWalsh符号で逆拡散し相関値を検出することで、自分宛てのデータであるか否かを判定することが可能となる。MAC Indexは合計128個用意されており、MAC Indexごとに異なるWalsh符号系列が生成される。また、プリアンブル長は64/128/256/512/1024chipのいずれかとなり、図4に示すようにデータレートによって異なる値をとる。なお、複数スロットに渡ってデータが送信される場合、第一番目のスロットにのみデータチャネル部にプリアンブルが挿入される。
【0035】
(無線使用率の測定について)
本実施形態に係る無線使用率測定装置の起動後は、測定対処となる基地局との初期同期を確立する。初期同期が正常に確立した後、無線使用率の測定を開始する。逆拡散処理部13は、端末を識別する情報であるMAC Indexを引数としたWalsh符号を用いてプリアンブルの逆拡散を行なう。この逆拡散処理では、逆拡散範囲Lをプリアンブル長と同じL=64,128,256,512,1024とし、スロットの先頭から範囲LだけWalsh符号による逆拡散を128系列分独立に行ない、1chip当たりの相関値を算出し、その結果を無線使用率算出部へ入力する。電力算出部14は、データチャネルとパイロットチャネルにおける電力をChip単位で計算し、1スロット範囲での計算が完了した後、Chip長で正規化することで、Chip当たりの電力値を算出し、無線使用率算出部15へ入力する。
【0036】
無線使用率算出部15は、逆拡散処理部13と電力算出部14の測定結果に基づき、無線使用率の測定を行なう。図7は、無線使用率測定の方法の一覧表である。MAC Indexが検出できた場合、対象スロットはアクティブスロットであると判定され、検出したMAC Indexが対象スロットの宛先として保存される。MAC Indexが検出されない、かつアイドルスロットと判定された場合、対象スロットはアイドルスロットであると判定される。MAC Indexが検出されないが、アクティブスロットであると判定された場合、処理対象スロットは複数スロットに渡る伝送の2番目以降のスロットであると想定される。処理対象スロットがプリアンブル長から求めた最大送信スロット数以下である、かつ4スロット前のMAC Indexが検出済みの場合、対象スロットの宛先を4スロット前に検出したMAC Indexとする。処理対象スロットが最大送信スロット数を上回っている、または処理対象スロットがプリアンブル長から求めた最大送信スロット数以下であっても4スロット前のMAC Indexが未検出の場合、処理対象スロットの宛先は不明であるとする。
【0037】
(MAC Indexと最大送信スロット数の検出について)
MAC Indexと最大送信スロット数の検出は、逆拡散処理部13の出力結果を用いて行なう。図4に示すように、プリアンブル長と使用スロット数には関係性があり、プリアンブル長を検出することで、使用スロット数の最大値(最大送信スロット数)を見積もることが可能となる。図8に、プリアンブル長ごとの最大送信スロット数を示す。
【0038】
検出判定では、逆拡散範囲Lごとに「相関値の第一最大値」と「相関値の第一最大値と第二最大値の比」を算出する。その後、L=64の範囲での「相関値の第一最大値」と「相関値の第一最大値と第二最大値の比」を求め、第一最大値が閾値ΔD1st以上か、第一最大値と第二最大値の比がΔDRATIO以上かどうかを判定する。両方共に閾値以上である場合、「相関値の第一最大値」の最大値を持つMAC IndexをMAC Indexとする。一方、閾値以下である場合、該当スロットにはMAC Indexが含まれていないと判定する。また、相関値の第一最大値と第二最大値の比」が最大となるときの逆拡散範囲をプリアンブル長として判定する。
【0039】
図9Aおよび図9Bは、逆拡散処理部13から無線使用率算出部15に入力された結果の一例を示す図である。図9Aに示すように、設定1は、MAC Index=3がプリアンブル長=1024chipに含まれていた場合であり、図9Bに示すように、設定2は、プリアンブル自体が含まれていなかった場合の入力結果である。
【0040】
設定1での結果を見ると、
L=64での「相関値の第一最大値」=106
L=64での「相関値の第一最大値と第二最大値の比」=2.65
「相関値の第一最大値と第二最大値の比」の最大値=11.27 (L=1024)
となる。
【0041】
一方、設定2では、
L=64での「相関値の第一最大値」=64
L=64での「相関値の第一最大値と第二最大値の比」=1.21
相関値の第一最大値と第二最大値の比」の最大値=1.27 (L=512)
となる。
【0042】
本実施形態では、例えば、ΔD1st=100、ΔDRATIO=2程度に設定することで、設定1においてMAC Index=3を検出できる一方、設定2においてはMAC Indexが含まれていないと判定することができる。また、設定1において、L=1024のとき、相関値の第一最大値と第二最大値の比が最大(=11.27)となることから、プリアンブル長=1024と判定することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では「相関値の第一最大値」と「相関値の第一最大値と第二最大値の比」を判定に用いたが、MAC Indexやプリアンブル長の検出方法はこれら指標を用いる方法に限らず、例えば「相関値の第一最大値」と「相関値の第二最大値」の差の絶対値を用いてプリアンブル長を検出してもよい。
【0044】
(アクティブスロットの検出について)
CDMA2000 1xEV−DOシステムでは、パイロットチャネルはアクティブスロット/アイドルスロットに依らず送信されているのに対して、データチャネルはアクティブスロットのみ送信されるため、パイロットチャネルの電力とデータチャネルの電力を比較することで、アクティブスロットの検出をすることが可能となる。
【0045】
図10は、電力算出部14から無線使用率算出部15に入力された結果の一例を示す図である。図10に示すように、アクティブスロットにおいてはデータチャネルとパイロットチャネルの1chip当たりの電力値は同じ程度の値であるのに対し、アイドルスロットにおいてはパイロットチャネルの電力値はデータチャネルの電力値と比較して大きくなっていることが分かる。ここで、データチャネルとパイロットチャネルの電力値の比を求めると、アクティブスロットでは0.99となるのに対し、アイドルスロットでは8.89となる。
【0046】
従って、本実施形態の場合、例えばΔDdata=1と設定することで、アクティブスロットかアイドルスロットを判定することが可能となる。なお、本実施形態では「データチャネルの電力」と「パイロットチャネルの電力」の比を判定に用いたが、アクティブスロットの検出方法は比を用いる方法に限らず、例えば「データチャネルの電力」と「パイロットチャネルの電力」の差の絶対値を用いる方法でもよい。
【0047】
図11は、本実施形態に係る無線使用率測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、受信したスロットの信号を取得する(ステップS1)。次に、PN符号を用いてプリアンブルの逆拡散、および逆拡散処理を行なう(ステップS2、ステップS3)。ステップS3では、MAC Indexの検出、およびプリアンブル長(すなわち、最大送信スロット長)の検出を行なう。次に、MAC Indexを検出したかどうかを判断し(ステップS4)、MAC Indexを検出した場合は、宛先は検出したMAC Indexであり、使用スロット数は1であるとして(ステップS5)、ステップS1へ遷移する。
【0048】
一方、ステップS4において、MAC Indexを検出しない場合は、電力検出を行なう(ステップS6)。ここでは、アクティブスロットの検出を行なう。アクティブスロットを検出したかどうかを判断し(ステップS7)、アクティブスロットを検出しなかった場合は、宛先はアイドルスロットであるとし(ステップS8)、ステップS1へ遷移する。一方、ステップS7において、アクティブスロットを検出した場合は、(1)使用スロット数が最大送信スロット数以下であり、かつ、(2)4スロット前のMAC Indexが既知であるかどうかを判断する(ステップS9)。これらの(1)および(2)を同時に満たさない場合は、宛先は不明であり、使用スロット数は0であるとして、ステップS1へ遷移する(ステップS10)。一方、ステップS9において、これらの(1)および(2)を同時に満たす場合は、宛先は4スロット前に検出したスロットのMAC Indexであり、使用スロットを1つ増やして、ステップS1へ遷移する(ステップS11)。
【0049】
なお、本発明の特徴的な動作は、コンピュータにプログラムを実行させることによっても実現することが可能である。すなわち、本発明のプログラムは、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定するプログラムであって、前記無線制御装置からスロットを受信する処理と、プリアンブルの逆拡散を行なう処理と、各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する処理と、前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する処理と、を含む一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0050】
また、本発明の特徴的な機能を発揮する集積回路を実装してもよい。すなわち、本発明の集積回路は、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定する無線使用率測定装置に実装されることにより、前記無線使用率測定装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、前記無線制御装置からスロットを受信する機能と、プリアンブルの逆拡散を行なう機能と、各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する処理と、前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記データスロットの宛先端末を識別することで、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する機能と、を含む一連の機能を、前記無線使用率測定装置に発揮させる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、CDMA方式を用いた無線通信システムにおいて、端末毎の無線使用率を測定することが可能となる。また、基地局や端末に改変を加える必要はなく、単一の無線使用率測定装置で無線使用率を測定することが可能となると共に、基地局の処理負荷を増加させることが一切ない。
【符号の説明】
【0052】
10 アンテナ
11 RF信号処理部
12 無線使用率測定部
13 逆拡散処理部
14 電力算出部
15 無線使用率算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定する無線使用率測定装置であって、
前記無線制御装置からスロットを受信する受信信号処理部と、
前記受信したスロットに含まれる情報に基づいて、いずれかの前記無線端末装置への無線使用率を測定する無線使用率測定部と、を備えることを特徴とする無線使用率測定装置。
【請求項2】
前記無線使用率測定部は、
プリアンブルの逆拡散を行なう逆拡散処理部と、
各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する電力算出部と、
前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する無線使用率算出部と、を備えることを特徴とする請求項1記載の無線使用率測定装置。
【請求項3】
前記無線使用率算出部は、前記プリアンブルのプリアンブル長と使用スロット数との相関性に基づいて、前記最大送信スロット数を算出し、前記算出した最大送信スロット数に基づいて、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定することを特徴とする請求項2記載の無線使用率測定装置。
【請求項4】
前記無線使用率算出部は、前記逆拡散の結果、MAC(Media Access Control) Indexを検出することができたかどうかを判定すると共に、前記算出した電力値に基づいて前記スロットがアクティブスロットであるかどうかを判定し、前記各判定結果に基づいて、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定することを特徴とする請求項3記載の無線使用率測定装置。
【請求項5】
前記逆拡散処理部は、MAC Indexを引数とした128系列のWalsh符号を用いて、前記プリアンブルをプリアンブル長であると想定される長さ分だけ逆拡散し、各プリアンブル長においてWalsh符号ごとに相関値を算出することを特徴とする請求項2記載の無線使用率測定装置。
【請求項6】
前記無線使用率算出部は、前記スロットに割り当てられた電力値と前記パイロットシンボルに割り当てられた電力値とから1チップ当たりの電力値を算出し、算出したデータチャネルの1チップ当たりの電力値とパイロットチャネルの1チップ当たりの電力値との比が閾値以下である場合に、前記スロットがアクティブスロットであると判定することを特徴とする請求項2記載の無線使用率測定装置。
【請求項7】
前記無線使用率算出部は、前記逆拡散処理部が算出した相関値の中で、プリアンブル長が最短である逆拡散範囲内で相関値の第一最大値と第二最大値を選択し、前記第一最大値、または、前記第一最大値と前記第二最大値の比の少なくとも一方が閾値を超えた場合、前記第一最大値を持つWalsh符号を生成するために用いたMAC Indexをプリアンブルに含まれていたMAC Indexと判定することを特徴とする請求項2記載の無線使用率測定装置。
【請求項8】
前記無線使用率算出部は、前記逆拡散処理部が算出したWalsh符号ごとの相関値の第一最大値と第二最大値の比をプリアンブル長ごとに求め、前記比の最大値が閾値を超えた場合、前記比が最大となる時のプリアンブル長を、前記スロットのプリアンブル長と判定することを特徴とする請求項2記載の無線使用率測定装置。
【請求項9】
CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定するプログラムであって、
前記無線制御装置からスロットを受信する処理と、
プリアンブルの逆拡散を行なう処理と、
各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する処理と、
前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記スロットの宛先端末を識別することで、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する処理と、を含む一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用して無線制御装置から無線端末装置への通信を行なう通信システムにおける無線使用率を測定する無線使用率測定装置に実装されることにより、前記無線使用率測定装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
前記無線制御装置からスロットを受信する機能と、
プリアンブルの逆拡散を行なう機能と、
各スロットにおいて、データを含むデータチャネルおよびパイロットシンボルを含むパイロットチャネルに割り当てられた電力値を算出する処理と、
前記逆拡散の結果と前記算出した電力値とに基づいて、前記データスロットの宛先端末を識別することで、前記無線制御装置から前記無線端末装置への無線リンクの無線使用率を測定する機能と、を含む一連の機能を、前記無線使用率測定装置に発揮させることを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−21503(P2013−21503A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153226(P2011−153226)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】