説明

無線基地局及び無線通信方法

【課題】 無線通信端末の通信相手端末の通信品質(QoS)が保証されていない場合に、当該無線通信端末の通信品質を保証するために割り当てられたリソースが無駄になることを回避する。
【解決手段】 本発明の第1の特徴は、自制御エリア内の無線通信端末との間で実行される第1無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定し、無線通信端末の通信相手端末(無線通信端末2A)と通信相手端末の接続先基地局(無線基地局4A)との間で実行される第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するQoS判定部343と、第1無線通信の通信品質が保証されており、かつ、第2無線通信の通信品質が保証されていないと判定された場合、第1無線通信の通信品質の保証を解除するQoS制御部344とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質(QoS)保証を採用する移動体通信システムに用いられる無線基地局及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CDMA方式を用いた移動体通信システムでは、データ伝送の方式として、一般的に複数の方式が採用、導入されている。例えば、cdma2000では、1xEV−DO Rev.0(以下、単に「Rev.0」という)、及びRev.0よりも新しい方式である1xEV−DO Rev.A(以下、単に「Rev.A」という)が規定されている。
【0003】
Rev.0は、パケット交換方式を用い、最大で上り方向:153.6kbps、下り方向:約2.4Mbpsのデータレートを実現する。Rev.0をサポートする無線基地局では、電波状態が良く、高スループットが期待できる無線通信端末に対し、電波状態が悪い無線通信端末よりも優先してリソースを割り当てる。
【0004】
Rev.Aは、Rev.0を高速化し、最大で上り方向:約1.8Mbps、下り方向:約3.0Mbpsのデータレートを実現する。Rev.Aは、Rev.0と比較すると、データレートの高速化に加え、通信品質(QoS)保証が採用されていることが特徴である。
【0005】
Rev.Aをサポートする無線基地局では、無線通信端末の電波状態だけでなく、無線通信端末が実行するアプリケーションの種別に応じたリソースの割り当てを行う。また、Rev.Aをサポートする無線基地局では、レート調整バッファを用いて、無線通信端末との間で実行される無線通信のデータレートを一定に維持する。
【0006】
例えば、電波状態が良い無線通信端末でEメールアプリケーションを実行し、電波状態が悪い無線通信端末でVoIPアプリケーションを実行している場合、Rev.Aをサポートする無線基地局は、電波状態が良い無線通信端末よりも、電波状態が悪い無線通信端末に優先してリソースを割り当てる。
【0007】
一方で、VoIPアプリケーションの実行に必要なQoSを発呼側端末から伝送径路上の中継装置に通知し、伝送径路上の中継装置にQoSを保証させる手法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−258879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実際に稼動している移動体通信システムでは、Rev.Aに対応する無線基地局及び無線通信端末と、Rev.Aに対応しない無線基地局及び無線通信端末とが混在し得る。
【0009】
したがって、Rev.0に従った無線通信を行う無線通信端末と、Rev.Aに従った無線通信を行う無線通信端末との間で通信が行われる可能性がある。この場合、QoS保証のために割り当てられたリソース(例えば、無線基地局のレート調整バッファのバッファ容量)が無駄になる。リソースが無駄に消費されることによって、基地局当たりのQoSを使用する収容端末数が減少する。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明は、無線通信端末の通信相手端末の通信品質(QoS)が保証されていない場合に、当該無線通信端末の通信品質を保証するために割り当てられたリソースが無駄になることを回避可能な無線基地局及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の特徴は、自制御エリア(セルC1)内の無線通信端末(無線通信端末1A)との間で実行される第1無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する第1判定部(QoS判定部343)と、前記無線通信端末の通信相手端末(無線通信端末2A)と前記通信相手端末の接続先基地局(無線基地局4A)との間で実行される第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する第2判定部(QoS判定部343)と、前記第1無線通信の通信品質が保証されており、かつ、前記第2無線通信の通信品質が保証されていないと判定された場合、前記第1無線通信の通信品質の保証を解除する解除処理部(QoS制御部344)とを備える無線基地局であることを要旨とする。
【0012】
このような特徴によれば、解除処理部は、第2無線通信の通信品質(QoS)が保証されていない場合には、第1無線通信の通信品質が保証されていても、第1無線通信の通信品質の保証を敢えて解除する。第1無線通信の通信品質の保証を解除することによって、第1無線通信の通信品質を保証するために割り当てられたリソースが解放されるので、基地局当たりのQoSを使用する収容端末数が減少することがない。
【0013】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記無線通信端末から受信するメッセージであって、前記無線通信端末が前記通信相手端末との接続の確立を要求する接続要求メッセージ(“INVITE”メッセージ)を、呼制御サーバ(SIPサーバ8)を介して送信する送信部(SIPメッセージ処理部341)と、前記通信相手端末が前記接続要求メッセージに応答したことを示す応答メッセージ(“200 OK”メッセージ)を、前記呼制御サーバを介して受信する受信部(SIPメッセージ処理部341)とをさらに備え、前記応答メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、前記第2判定部は、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定することを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記通信相手端末から前記無線通信端末への接続の確立要求である接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して受信する受信部(SIPメッセージ処理部341)をさらに備え、前記接続要求メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、前記第2判定部は、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定することを要旨とする。
【0015】
本発明の第4の特徴は、自制御エリア内の無線通信端末との間で実行される第1無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップと、前記無線通信端末の通信相手端末と前記通信相手端末の接続先基地局との間で実行される第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップと、前記第1無線通信の通信品質が保証されており、かつ、前記第2無線通信の通信品質が保証されていないと判定された場合、前記第1無線通信の通信品質の保証を解除するステップとを備える無線通信方法であることを要旨とする。
【0016】
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記無線通信端末から受信するメッセージであって、前記無線通信端末が前記通信相手端末との接続の確立を要求する接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して送信するステップと、前記通信相手端末が前記接続要求メッセージに応答したことを示す応答メッセージを、前記呼制御サーバを介して受信するステップとをさらに備え、前記応答メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップでは、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定することを要旨とする。
【0017】
本発明の第6の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記通信相手端末から前記無線通信端末への接続の確立要求である接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して受信するステップをさらに備え、前記接続要求メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップでは、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無線通信端末の通信相手端末の通信品質(QoS)が保証されていない場合に、当該無線通信端末の通信品質を保証するために割り当てられたリソースが無駄になることを回避可能な無線基地局及び無線通信方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0020】
(移動体通信システムの全体概略構成)
図1は、本実施形態に係る無線通信端末1A,2Aを含む移動体通信システムの全体概略構成を示している。本移動体通信システムは、cdma2000に準拠した、いわゆる第3世代の移動体通信システムである。
【0021】
本移動体通信システムは、無線通信端末1A,2Aと、無線基地局3A,4Aと、PCF/PDSN(Packet Control Function/Packet Data Serving Node)5,6と、IP(Internet Protocol)網7と、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ8とを有する。
【0022】
無線通信端末1Aは、Rev.0及びRev.Aをサポートする無線通信端末である。無線通信端末1Aは、回線交換方式の音声通話機能に加えて、IPベースの音声通話(IP電話)機能や、IPベースのTV電話(IP−TV電話)機能を具備している。無線通信端末2Aは、Rev.0のみをサポートする無線通信端末である。
【0023】
無線通信端末1Aは、無線基地局3Aと通信可能なエリアであるセルC1内に位置している。無線通信端末2Aは、無線基地局4Aと通信可能なエリアであるセルC2内に位置している。
【0024】
無線通信端末1Aは、無線基地局3Aに接続し、無線基地局3Aとの間で無線通信を実行する。無線通信端末2Aは、無線基地局4Aに接続し、無線基地局4Aとの間で無線通信を実行する。本実施形態では、無線通信端末1Aから無線通信端末2Aに対して発呼を行うものとする。
【0025】
無線基地局3Aは、Rev.0及びRev.Aをサポートする無線基地局であり、QoS保証機能を有している。具体的には、無線通信端末1Aがリアルタイム型のアプリケーションを実行する場合、無線基地局3Aは、レート調整バッファ36(図2(a)参照)を用いて、無線通信端末1Aとの間で実行される無線通信のデータレートを一定に維持する。
【0026】
さらに、無線通信端末1Aがリアルタイム型のアプリケーションを実行する場合、無線基地局3Aは、セルC1内の他の無線通信端末よりも無線通信端末1Aに優先して帯域を割り当てる。具体的には、下り方向において、無線基地局3Aは、他の無線通信端末よりも無線通信端末1Aに優先してタイムスロットを割り当てる。上り方向においては、無線基地局3Aは、他の無線通信端末よりも無線通信端末1Aの送信電力を増加させる。
【0027】
無線基地局4Aは、無線基地局3Aと同様にRev.0及びRev.Aをサポートする無線基地局であり、QoS保証機能を有している。なお、本実施形態では、無線通信端末2AがRev.0のみをサポートする無線通信端末であるため、無線基地局4Aは、無線通信端末2Aに対し、Rev.0に基づく通信制御を行う。
【0028】
PCF/PDSN5,6は、無線パケットを終端する機能、及びIPパケットを終端する機能を有する。
【0029】
SIPサーバ8は、無線通信端末1A,2Aの接続の制御などをSIP(RFC3261など)に従って実行する。具体的には、SIPサーバ8は、無線通信端末1A及び無線通信端末2Aから送信されたSIPメッセージに応じて、無線通信端末1Aと無線通信端末2Aとの間のセッションを確立、管理、及び切断する。
【0030】
(無線基地局の構成)
次に、本実施形態に係る無線基地局3A,4Aの構成について説明する。
【0031】
図2(a)は、無線基地局3Aの機能ブロック構成図である。無線基地局4Aは、無線基地局3Aと同様の構成を有するため、無線基地局4Aの構成については説明を省略する。なお、以下、本発明との関連がある部分について主に説明する。
【0032】
図2(a)に示すように、無線基地局3Aは、アンテナ31、無線通信部32、通信I/F部33、制御部34、記憶部35、及びレート調整バッファ36を備える。
【0033】
無線通信部32は、無線通信端末1Aとの間において、CDMAに従った無線信号を、アンテナ31を介して送受信する。また、無線通信部32は、当該無線信号とベースバンド信号との変換を実行し、ベースバンド信号を制御部34との間において送受信する。
【0034】
通信I/F部33は、PCF/PDSN5とのインターフェースとして機能する。
【0035】
制御部34は、無線基地局3Aが具備する各種機能を制御する。制御部34のさらに詳細な機能ブロックについては後述する。
【0036】
記憶部35は、無線基地局3Aにおける制御などに用いられる各種情報を記憶する。記憶部35のさらに詳細な機能ブロックについては後述する。
【0037】
レート調整バッファ36は、QoS保証の対象となる無線通信端末(例えば無線通信端末1A)に対して送受信するデータのデータレートを一定に維持するため、データを一時的に記憶する。
【0038】
(2)制御部及び記憶部の詳細構成:
図2(b)は、制御部34及び記憶部35の詳細構成を示す機能ブロック構成図である。
【0039】
図2(b)に示すように、制御部34は、SIPメッセージ処理部341、QoS情報取得部342、QoS判定部343、及びQoS制御部344を備える。記憶部35は、QoS情報記憶部351を備える。
【0040】
SIPメッセージ処理部341は、無線通信端末1AがSIPに従って送受信するSIPメッセージを処理する。
【0041】
QoS情報取得部342は、QoS情報記憶部351から、無線通信端末1Aと無線基地局3Aとの間で実行される無線通信のQoS保証の有無又はQoSの種別を示すQoS情報(QoSα)を取得する。QoSの種別とは、例えばデータレートの値を意味する。
【0042】
QoS情報取得部342は、SIPメッセージ処理部341から、無線通信端末2Aと無線基地局4Aとの間で実行される無線通信のQoS保証の有無又はQoSの種別を示すQoS情報(QoSβ)を取得する。
【0043】
本実施形態では、SIPに従って無線通信端末2Aから送信される応答メッセージ(“200OK”メッセージ)において、SDP(Session Description Protocol)(RFC 2327)に従った形式でQoS情報(QoSβ)が記述される。又は、IP(Internet Protocol)中のQoSを定義するフィールドにQoS情報(QoSβ)が記述される。
【0044】
QoS判定部343は、QoS情報取得部342によって取得されたQoS情報(QoSα)に基づき、無線通信端末1AのQoSが保証されているか否かを判定する。QoS判定部343は、QoS情報取得部342によって取得されたQoS情報(QoSβ)に基づき、無線通信端末2Aと無線基地局4Aとの間で実行される無線通信のQoSが保証されているか否かを判定する。QoS判定部343による判定結果は、QoS制御部344に通知される。
【0045】
QoS制御部344は、無線通信端末1Aとの間でQoS保証を確立するためのQoS確立処理、及び確立されたQoS保証を解除するためのQoS解除処理を実行する。具体的には、QoS制御部344は、無線通信端末1AについてQoS保証がなされており、かつ、無線通信端末2AについてQoS保証がなされていない場合、無線通信端末1AについてのQoS保証を解除する。
【0046】
QoS情報記憶部351は、初期値として“NULL”を格納しており、QoS制御部344によってQoS保証が確立された場合、QoSの種別を示す情報(ProfileID)を格納する。具体的には、QoS情報記憶部351は、セルC1内の無線通信端末1Aを含む各無線通信端末の端末IDと、ProfileIDとを対応付けて記憶する。
【0047】
(移動体通信システムの動作)
次に、上述した本実施形態に係る移動体通信システムの動作について説明する。図3は、本実施形態に係る移動体通信システム全体の動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【0048】
ステップS101aにおいて、無線基地局3Aは、QoS情報(QoSα)に対して初期値“NULL”を設定する。ステップS101bにおいて、無線基地局4Aは、QoS情報(QoSβ)に対して初期値“NULL”を設定する。
【0049】
ステップS102a及びステップS102bにおいて、無線通信端末1A及び無線通信端末2Aは、“REGISTER”メッセージをSIPサーバ8に送信することで位置登録を行う。
【0050】
ステップS103aにおいて、無線基地局3Aは、無線通信端末1Aとの間でQoS確立処理を実行する。無線基地局3Aは、無線通信端末1AがRev.Aをサポートしているので、QoS保証を確立する。
【0051】
ステップS103bにおいて、無線基地局4Aは、無線通信端末2Aとの間でQoS確立処理を実行する。しかし、無線通信端末2AがRev.Aをサポートしていないので、無線基地局4Aは、QoS保証を確立することができない。
【0052】
ステップS104aにおいて、無線基地局3Aは、QoS保証の確立に成功したかを判定する。具体的には、無線基地局3Aは、無線通信端末1Aに対応するProfileIDが“NULL”でないかを判定する。ProfileIDが“NULL”でない場合には、ステップS105aの処理に進む。ステップS105aでは、無線基地局3Aは、QoS情報(QoSα)に対して、ステップS103aで取得したProfileIDを設定する。
【0053】
ステップS104bにおいて、無線基地局4Aは、ProfileIDが“NULL”でないかを判定する。ProfileIDが“NULL”でない場合、ステップS105bの処理に進む。無線通信端末2Aは、ステップS103bでProfileIDを取得できていないので、ステップS105bの処理は実行されない。
【0054】
ステップS106において、無線通信端末1Aは、無線通信端末2Aに対する発呼操作をユーザから受け付ける。
【0055】
ステップS107及びS108において、無線通信端末1Aは、セッションの確立を要求する“INVITE”メッセージを、無線基地局3Aを介してSIPサーバ8に送信する。
【0056】
ステップS109及びS110において、SIPサーバ8は、“INVITE”メッセージを、無線基地局4Aを介して無線通信端末2Aに送信する。
【0057】
ステップS111において、無線通信端末2Aは、ステップS110で受信した“INVITE”メッセージに応答して、“200OK”メッセージを無線基地局4Aに送信する。
【0058】
ステップS112において、無線基地局4Aは、“200 OK”メッセージをSIPサーバ8に送信する。“200OK”メッセージには、QoS情報(QoSβ)が記述される。無線通信端末2AがQoS保証の確立に失敗しているので、QoS情報(QoSβ)は“NULL”である。
【0059】
ステップS113において、SIPサーバ8は、ステップS112で受信した“200OK”メッセージを無線基地局3Aに送信する。
【0060】
ステップS114において、無線基地局3Aは、無線通信端末1AのQoSが保証されているかを判定する。具体的には、無線基地局3Aは、無線通信端末1AについてのQoS情報(QoSα)が“NULL”でないかを判定する。QoS情報(QoSα)が“NULL”でない場合には、無線通信端末1AのQoSが保証されていると判定し、ステップS115の処理に進む。一方、無線通信端末1AについてのQoS情報(QoSα)が“NULL”である場合には、無線通信端末1AのQoSが保証されていないと判定し、ステップS118の処理に進む。
【0061】
ステップS115において、無線基地局3Aは、ステップS113で受信した“200OK”メッセージ内にQoS情報(QoSβ)が記述されているかを判定する。“200OK”メッセージ内にQoS情報(QoSβ)が記述されている場合には、ステップS116の処理に進む。一方、“200OK”メッセージ内にQoS情報(QoSβ)が記述されていない場合には、ステップS117の処理に進む。
【0062】
ステップS116において、無線基地局3Aは、無線通信端末2AのQoSが保証されているかを判定する。具体的には、無線基地局3Aは、QoS情報(QoSβ)が“NULL”であるかを判定する。QoS情報(QoSβ)が“NULL”である場合には、無線基地局3Aは、無線通信端末2AのQoSが保証されていないと判定し、ステップS117の処理に進む。一方、QoS情報(QoSβ)が“NULL”でない場合には、無線基地局3Aは、無線通信端末2AのQoSが保証されていると判定し、ステップS118の処理に進む。
【0063】
ステップS117において、無線基地局3Aは、無線基地局3AについてのQoS保証を解除する。
【0064】
ステップS118において、無線基地局3Aは、ステップS113で受信した“200OK”メッセージを無線通信端末1Aに送信する。
【0065】
ステップS119において、無線通信端末1Aと無線通信端末2Aとの間にセッションが設定され、音声通話が行われる。
【0066】
(作用・効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、無線基地局3Aは、無線通信端末1AのQoSが保証されていても、無線通信端末2AのQoSが保証されていない場合には、無線通信端末1AのQoS保証を解除する。
【0067】
無線通信端末1AのQoS保証を解除することで、無線通信端末1AのQoSを保証するために割り当てられたリソースが解放される。具体的には、無線通信端末1Aに割り当てられていた無線基地局3Aのレート調整バッファが解放される。
【0068】
また、下り方向において、無線通信端末1Aに優先的に割り当てられていたタイムスロットが解放される。さらに、上り方向において、無線通信端末1Aの送信電力を減少させることができるので、無線通信端末1Aの消費電力を削減することができる。
【0069】
さらに、本実施形態によれば、無線通信端末2Aが送信する“200OK”メッセージに対し、無線基地局4Aは、無線通信端末2AのQoS情報(QoSβ)を記述する。無線基地局3Aは、“200OK”メッセージに記述されたQoS情報(QoSβ)に基づき、無線通信端末2AのQoS保証の有無を判定する。
【0070】
つまり、SIPに従った発呼時のシーケンスを利用しているので、既存のプロトコルを大幅に変更することなく、無線通信端末2AのQoS保証の有無を判定することができる。
【0071】
[変更例]
上述した実施形態では、発呼側の無線通信端末1Aを収容する無線基地局1AにおいてQoS保証を解除する構成について説明した。本変更例では、着呼側においてQoS保証を解除する構成について説明する。なお、本変更例では、上述した実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0072】
(移動体通信システムの全体概略構成)
図4は、本変更例に係る無線基地局3B,4Bを含む移動体通信システムの全体概略構成を示している。
【0073】
無線基地局3B,4Bは、Rev.0及びRev.Aをサポートする無線基地局であり、QoS保証機能を有している。
【0074】
無線通信端末1Bは、Rev.0をサポートする無線通信端末である。無線通信端末2Bは、Rev.0及びRev.Aをサポートする無線通信端末である。
【0075】
無線通信端末1Bは、無線基地局3Bに接続し、無線基地局3Bとの間で無線通信を実行する。無線通信端末2Bは、無線基地局4Bに接続し、無線基地局4Bとの間で無線通信を実行する。本変更例では、無線通信端末1Bから無線通信端末2Bに対して発呼を行うものとする。
【0076】
(移動体通信システムの動作)
次に、図5を参照して、上述した変更例に係る移動体通信システムの動作について説明する。
【0077】
ステップS201aにおいて、無線基地局3Bは、QoS情報(QoSα)に対して初期値“NULL”を設定する。ステップS201bにおいて、無線基地局4Bは、QoS情報(QoSβ)に対して初期値“NULL”を設定する。
【0078】
ステップS202a及びステップS202bにおいて、無線通信端末1B及び無線通信端末2Bは、“REGISTER”メッセージをSIPサーバ8に送信する。
【0079】
ステップS203aにおいて、無線基地局3Bは、無線通信端末1Bとの間でQoS確立処理を実行する。しかし、無線通信端末1BがRev.Aをサポートしていないので、無線基地局3Bは、QoS保証の確立に失敗する。
【0080】
ステップS204bにおいて、無線基地局4Bは、無線通信端末2Bとの間でQoS確立処理を実行する。無線通信端末2BがRev.Aをサポートしているので、無線基地局4Bは、QoS保証の確立に成功する。
【0081】
ステップS204aにおいて、無線基地局3Bは、QoS保証の確立に成功したかを判定する。ここでは、無線基地局3Bは、無線通信端末1BのQoS保証の確立に失敗していると判定される。
【0082】
ステップS204bにおいて、無線基地局4Bは、QoS保証の確立に成功したかを判定する。無線基地局4Bは、QoS保証の確立に成功しているので、ステップS205bの処理に進む。ステップS205bでは、無線基地局4Bは、QoS情報(QoSβ)に対して、ステップS203bで取得したProfileIDを設定する。
【0083】
ステップS206において、無線通信端末1Bは、無線通信端末2Bに対する発呼操作をユーザから受け付ける。
【0084】
ステップS207において、無線通信端末1Bは、“INVITE”メッセージを無線基地局3Bに送信する。
【0085】
ステップS208において、無線基地局3Bは、“INVITE”メッセージに対して、QoS情報(QoSα(=NULL))を記述し、QoS情報(QoSα(=NULL))が記述された“INVITE”メッセージをSIPサーバ8に送信する。
【0086】
ステップS209において、SIPサーバ8は、QoS情報(QoSα(=NULL))が記述された“INVITE”メッセージを無線基地局4Bに送信する。
【0087】
ステップS210において、無線基地局4Bは、無線通信端末2BのQoSが保証されているかを判定する。具体的には、無線基地局4Bは、QoS情報(QoSβ)が“NULL”でないかを判定する。QoS情報(QoSβ)が“NULL”でない場合には、無線基地局4Bは、無線通信端末2BのQoSが保証されていると判定し、ステップS211の処理に進む。一方、QoS情報(QoSβ)が“NULL”である場合には、無線基地局4Bは、無線通信端末2BのQoSが保証されていないと判定し、ステップS214の処理に進む。
【0088】
ステップS211において、無線基地局4Bは、ステップS209で受信した“INVITE”メッセージにQoS情報(QoSα)が記述されているかを判定する。“INVITE”メッセージにQoS情報(QoSα)が記述されている場合には、ステップS212の処理に進む。一方、“INVITE”メッセージにQoS情報(QoSα)が記述されていない場合には、ステップS213の処理に進む。
【0089】
ステップS212において、無線基地局4Bは、無線通信端末1BのQoSが保証されているかを判定する。具体的には、無線基地局4Bは、QoS情報(QoSα)が“NULL”であるかを判定する。QoS情報(QoSα)が“NULL”である場合には、無線基地局4Bは、無線通信端末1BのQoSが保証されていないと判定し、ステップS213の処理に進む。一方、QoS情報(QoSα)が“NULL”でない場合には、無線基地局4Bは、無線通信端末1BのQoSが保証されていると判定し、ステップS214の処理に進む。
【0090】
ステップS213において、無線基地局4Bは、無線通信端末2BのQoS保証を解除する。
【0091】
ステップS214において、無線基地局4Bは、ステップS209で受信した“INVITE”メッセージを無線通信端末2Bに送信する。
【0092】
ステップS215において、無線通信端末2Bは、“200OK”メッセージを無線基地局4Bに送信する。ステップS216において、無線基地局4Bは、“200OK”メッセージをSIPサーバ8に送信する。なお、本変形例においては、“200OK”メッセージにはQoS情報(QoSβ)は記述されていない。
【0093】
ステップS217及びS218において、SIPサーバ8は、“200 OK”メッセージを、無線基地局3Bを介して無線通信端末1Bに送信する。
【0094】
ステップS219において、無線通信端末1Bと無線通信端末2Bとの間にセッションが設定され、音声通話が行われる。
【0095】
(作用・効果)
以上説明したように、本変更例によれば、図1及び図3に示した実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。さらに、着呼側の無線通信端末2Bを収容する無線基地局4Bは、発呼側の無線通信端末1Bからの“INVITE”メッセージに記述されたQoS情報(QoSα)に基づき、QoS解除処理を実行するので、上述した実施形態よりも早い段階でQoS解除処理を実行することができる。
【0096】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0097】
図1及び図3に示した実施形態においては、無線基地局3A及び無線基地局4AのいずれもRev.A及びRev.0をサポートしていたが、無線基地局4Aは、必ずしもRev.Aをサポートしていなくてもよい。無線通信端末2A又は無線基地局4Aの少なくとも一方がRev.Aをサポートしていない場合には、Rev.0に従った無線通信が行われるためである。
【0098】
同様に、図4及び図5に示した実施形態においては、無線基地局3B及び無線基地局4BのいずれもRev.A及びRev.0をサポートしていたが、無線基地局3Bは、必ずしもRev.Aをサポートしていなくてもよい。
【0099】
上述した実施形態においては、QoS情報としてProfileIDを送信していたが、ProfileIDを送信する場合に限らず、単にQoS保証の有無を示す情報を送信してもよい。
【0100】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体通信システムの全体概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線基地局の構成を示す機能ブロック構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る移動体通信システム全体の動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態の変更例に係る移動体通信システムの全体概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の変更例に係る移動体通信システム全体の動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0102】
C1,C2…セル、1A,2A,1B,2B…無線通信端末、3A,4A,3B,4B…無線基地局、5,6…PCF/PDSN、8…SIPサーバ、31…アンテナ、32…無線通信部、33…通信I/F部、34…制御部、35…記憶部、36…レート調整バッファ、341…SIPメッセージ処理部、342…QoS情報取得部、343…QoS判定部、344…QoS制御部、351…QoS情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自制御エリア内の無線通信端末との間で実行される第1無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する第1判定部と、
前記無線通信端末の通信相手端末と前記通信相手端末の接続先基地局との間で実行される第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する第2判定部と、
前記第1無線通信の通信品質が保証されており、かつ、前記第2無線通信の通信品質が保証されていないと判定された場合、前記第1無線通信の通信品質の保証を解除する解除処理部と
を備える無線基地局。
【請求項2】
前記無線通信端末から受信するメッセージであって、前記無線通信端末が前記通信相手端末との接続の確立を要求する接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して送信する送信部と、
前記通信相手端末が前記接続要求メッセージに応答したことを示す応答メッセージを、前記呼制御サーバを介して受信する受信部とをさらに備え、
前記応答メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、
前記第2判定部は、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記通信相手端末から前記無線通信端末への接続の確立要求である接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して受信する受信部をさらに備え、
前記接続要求メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、
前記第2判定部は、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項4】
自制御エリア内の無線通信端末との間で実行される第1無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップと、
前記無線通信端末の通信相手端末と前記通信相手端末の接続先基地局との間で実行される第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップと、
前記第1無線通信の通信品質が保証されており、かつ、前記第2無線通信の通信品質が保証されていないと判定された場合、前記第1無線通信の通信品質の保証を解除するステップと
を備える無線通信方法。
【請求項5】
前記無線通信端末から受信するメッセージであって、前記無線通信端末が前記通信相手端末との接続の確立を要求する接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して送信するステップと、
前記通信相手端末が前記接続要求メッセージに応答したことを示す応答メッセージを、前記呼制御サーバを介して受信するステップとをさらに備え、
前記応答メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、
前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップでは、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する請求項4に記載の無線通信方法。
【請求項6】
前記通信相手端末から前記無線通信端末への接続の確立要求である接続要求メッセージを、呼制御サーバを介して受信するステップをさらに備え、
前記接続要求メッセージは、前記第2無線通信の通信品質に関する情報である通信品質情報を含み、
前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定するステップでは、前記通信品質情報に基づき、前記第2無線通信の通信品質が保証されているか否かを判定する請求項4に記載の無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−113250(P2008−113250A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294993(P2006−294993)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】