説明

無線基地局装置、及び、接続試験方法、無線基地局システム

【課題】 新規に無線基地局装置を増設する際に、実際に運用されている監視装置を使用して、「ネットワーク接続確認試験」を行っていたため、試験時間の制約や運用機器を使用するリスクがあった。
【解決手段】 本発明の無線基地局装置4は、監視装置1への監視・制御信号を無線基地局装置4内部で無線側インタフェースに折り返し、無線基地局装置4内に設定した監視・制御信号用の試験用呼を使って、試験用監視装置7から監視、制御ができる機能を保有する。このため、装置制御部4aは保守端末装置6から上記試験用呼の設定の指示を受けて装置制御部4aと試験用監視装置7との間に試験用呼を設定する。また、装置制御部4aは、有線信号処理部4bへ無線側インタフェースへ折り返す指示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスネットワークシステムを構成する無線基地局装置、及び、無線基地局システム、接続試験方法において、無線基地局装置を監視または制御する監視・制御装置との信号経路を、無線基地局装置の有線側インタフェースだけでなく無線側インタフェースにも有する無線基地局装置、及び、無線基地局システム、接続試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線アクセスネットワークシステムは、無線制御装置と無線基地局装置とで構成され、上位の交換網を介して、監視装置によって運用保守を行う構成となっている。そのシステムがサービス規模を拡大するにあたり、新規に無線基地局装置を増設したり、バージョンアップの為に無線基地局装置を交換したりすることが必要となる。その際、設置する無線基地局装置の正常性を確認する為に、各種の設置試験を実施することとなる。例えば、一般的に無線基地局装置の設置試験には、試験内容により「単体設置確認試験」と「ネットワーク接続確認試験」に大別され実施される。
【0003】
「単体設置確認試験」は、主にローカル接続された保守端末から無線基地局装置を制御し、無線基地局装置単独での初期設定、診断、機能確認や、特定の移動局との無線測定等を目的としている。
【0004】
また、「ネットワーク接続確認試験」は、監視装置、無線制御装置により、遠隔から無線基地局装置の制御や運用状態の監視をする。または、無線基地局装置の設置状況によって変化する無線環境下における品質、性能測定等の機能の確認を目的としている。これらの試験を全て正常に完了して無線基地局装置の運用を開始することができる。
【0005】
無線基地局装置を屋外(電柱やビル壁等)に設置する場合は、「単体設置確認試験」については、無線基地局装置と保守端末との接続には、長いケーブルを使用したり、無線LANなどの無線信号により制御をする(特許文献1参照)ことで実施される。
【0006】
「ネットワーク接続確認試験」については、すでにサービス運用されている上位の無線制御装置、または監視装置に接続することで制御が実施される。その際、運用状態にあるこれらの機器と接続するには、運用サービスに影響を与えないように、細心の注意が必要であった。しかし、ネットワークに接続して行う試験のボリュームが非常に多く、試験が完了するまでに多くの試験時間を必要としていた。特に運用実績の少ない無線基地局装置を導入する初期の段階には、それらの上位装置からの導通確認や機能動作確認を含めて十分な検証をする必要があるが、極力、短時間で終わらせる必要があった。
【特許文献1】特開2002―246990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように無線基地局装置を容易にアクセスできない屋外(特に電柱やビル壁等)に設置する際、保守監視用のケーブルを取り付けたり外したりすることが困難なため、容易に基地局装置の監視・制御をすることができなかった。
【0008】
また、無線基地局装置の設置試験手順は、「単体設置確認試験」と「ネットワーク接続確認試験」との2つのフェーズとにわかれており、それぞれのフェーズで試験項目が定められている。しかし、その中で、「ネットワーク接続確認試験」時の、無線基地局装置を制御する監視装置が、実際の運用装置を使用することになるため、試験時間の制約や運用機器を使用するリスクがあった。また、障害が発生した場合は、無線基地局装置の制御機器が運用中であるがゆえ、サービスに影響を与えないように、細心の注意が必要であり、再確認などの十分な状況検証ができなかった。
【0009】
また、「ネットワーク接続確認試験」には、
(1)監視装置から遠隔で無線基地局装置に対し制御を行う
(2)無線基地局装置は監視装置から制御された動作を行う
(3)その変化((2)の動作を行った結果の変化)を監視装置に伝える
という一連の動作があり、多くの試験を実施するため多大な時間が必要であった。しかし、(1)と(3)については、各種試験毎に同じ経路の繰返しとなるため、毎試験ごとに、運用装置への経路を通さなくても、十分実ネットワークに接続できるという確証が得られていた。
【0010】
「ネットワーク接続確認試験」をする場合、無線基地局装置の設置作業者と監視装置の操作作業者が、それぞれの設置場所である作業エリアに入局し、機器の状況を確認しあいながら、接続確認試験を行なっていた。そのため、確認試験をする毎に、監視装置側、無線基地局装置側での相互確認が必要となり、何らかの通信手段を用いて装置状況を伝えながら作業しなければならず、正確性に欠けていた。
【0011】
場所、時間などとともに状況が変化する無線環境下において、無線基地局から離れた遠隔(例えばオペレーションセンター)での制御や運用状態の監視、または、品質、性能負荷測定等の機能確認をすることが困難であった。
【0012】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、無線基地局装置の設置試験における「ネットワーク接続確認試験」において、無線基地局装置との無線インタフェースを使って、無線側に配した非運用の監視装置を使用して、容易に監視・制御する試験を実施することができることを目的としている。また、「単体設置確認試験」において、無線インタフェースを使って、試験確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る有線信号を処理する有線信号処理部と、無線信号を処理する無線信号処理部とを備える無線基地局装置は、無線基地局装置の状態を監視して監視結果情報を上記有線信号処理部へ送信するとともに、送信した監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信する監視制御部と、上記無線基地局装置と無線基地局装置の監視制御を行う監視装置との呼を設定する指示を、上記監視制御部に対して行う保守端末装置を接続する保守用インタフェース部とを備え、上記監視制御部は、上記保守用インタフェース部から呼を設定する指示を受信して、上記監視装置との間の呼を設定し、上記有線信号処理部は、上記監視制御部が送信した折り返し指示に基づいて、上記監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返し、上記無線信号処理部は、上記有線信号処理部によって折り返された上記監視結果情報を、上記監視制御部によって設定された呼を用いて上記監視装置に対して送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
無線基地局装置が屋外(例えば電柱やビル壁等)に設置されている場合でも、監視装置と無線基地局装置の間を無線インタフェースで接続されるため、容易に保守監視することができる効果がある。
【0015】
また、無線基地局装置の設置試験手順である「ネットワーク接続確認試験」の一部であっても、非運用装置である試験用監視装置を使用することにより試験実施することができ、実運用のネットワークを使う試験に費やす時間を短縮することができる効果がある。
【0016】
また、上記した時間の短縮により、試験時間の制約や運用機器を使用するリスクを少なくし、万が一、障害が発生した場合でも、再確認などの十分な時間を確保することができる効果がある。
【0017】
また、「ネットワーク接続確認試験」をする場合、無線基地局装置の作業者と監視装置の作業者が、同じ作業エリアで作業をすることができるので、機器の状況を確認しあいながら、接続確認試験を行うことができ、状況変化に対応した制御や運用状態の監視等の機能確認をすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施の形態1.
この実施の形態では、無線基地局装置の「ネットワーク接続確認試験」を試験用監視装置を用いて行う場合の無線基地局装置と、無線基地局システムと、接続試験方法の一例を説明する。
【0019】
図1に、本発明に関する無線基地局システムの構成図を示す。図1において、無線基地局システム100の無線基地局装置4は、有線側インタフェースと無線側インタフェースとを有する。有線側インタフェースには、無線制御装置3と交換網2と監視装置1とがある。監視装置1は、無線基地局装置を監視・制御するための装置である。監視装置1の操作は、システムのオペレータが行うものとする。無線制御装置3は、無線リソースの管理、無線基地局の制御を行う装置である。監視装置1は、無線基地局装置4を監視するため、交換網2および無線制御装置3を経由して、無線基地局装置4の制御中枢である装置制御部4aと通信を行う。無線基地局装置4の有線信号処理部4bは、無線制御装置3を接続する。有線信号処理部4bは、有線回線I/FおよびATM処理を行う機能部である。装置制御部4aは、無線基地局装置の制御を行う機能部である。交換網2は、全ての無線基地局装置とつながっており、無線基地局装置からの情報を、交換網2を通して他の無線基地局装置との中継を行う。また、無線基地局装置4からの信号、例えば装置状態の通知などは、装置制御部4aからメッセージとして送出され、有線信号処理部4bを経由して無線制御装置3または監視装置1へ送出される。有線側インタフェースにある要素及び、各要素の動作は従来と同じであるものとする。
【0020】
また、無線側インタフェースには、監視装置12があり、監視装置12は、利用者端末装置であるUE端末(User Element端末)5と、UE端末5に接続された試験用監視装置7とを備える。UE端末5は、無線基地局装置と無線インタフェースで接続される端末で、試験用監視装置と接続されるインタフェースを持つ。試験用監視装置7は、UE端末と接続され、監視装置1と同等の機能を持ち無線基地局を監視・制御する装置である。無線基地局装置4の装置制御部4a(監視制御部の一例)は、無線側インタフェースに存在する試験用監視装置7と通信するため、無線基地局装置4内の有線信号処理部4bで、監視制御信号を無線側インタフェースへ折り返す指示を行う機能を有している。その際、有線信号処理部4bからUE端末5までの経路を、保守端末装置6より試験用呼として設定できるものとする。保守端末装置6は、無線基地局装置と有線接続し、保守制御を行う端末である。さらに、UE端末5は受信した監視制御信号を試験用監視装置7に送出することで、無線基地局装置4の監視および制御を試験用監視装置7から行うことができる構成である。
【0021】
無線基地局装置4は、装置制御部4aと有線信号処理部4bの他に、BB(Base Band)信号処理部4cと、無線信号処理部4dと、保守端末装置6を接続する保守用インタフェース部11とを備える。BB信号処理部4cは、データ変調・拡散変調等のベースバンド処理を行う機能部である。無線信号処理部4dは、ベースバンド処理された信号を無線周波数信号に変換する処理を行う機能部である。
【0022】
図2には、従来の無線アクセスネットワークシステムの主たる形態を示す。従来のシステムは、主に無線制御装置3と無線基地局装置4とで構成され、上位の交換網2を介して、監視装置1によって運用保守を行うシステムであった。監視装置1は、無線基地局装置4を監視するため、交換網2および無線制御装置3を経由して、無線基地局装置4の制御中枢である装置制御部4aと通信を行う。また、無線基地局装置4からの信号、例えば装置状態の通知などは、装置制御部4aからメッセージとして送出され有線信号処理部4bを経由して無線制御装置3または監視装置1へ信号を送出する構成のシステムである。他の構成要素は、図1の同じ符号の要素と同様の要素であるものとする。
【0023】
次に、無線基地局装置4の「ネットワーク接続確認試験」の試験手順について説明する。図3は、接続試験手順を示すフローチャート図である。図3において、はじめに、保守端末装置6を保守用インタフェース部11に接続して、保守端末装置6が保守用インタフェース部11を介して装置制御部4aに対して監視装置12と試験用の呼を設定する指示を行う(S10,接続工程)。無線基地局装置4の通常の動作として、有線信号処理部4bと携帯電話等の利用者端末装置との間の呼の設定は、装置制御部4aが有線信号処理部4b,BB信号処理部4c,無線信号処理部4dのリソースを確保し、それぞれの部のリンク接続設定を行い、通話をすることができるようになる。この装置制御部4aによる手順と同様の手順を行うことを、S10において保守端末装置6から装置制御部4aに対して指示する。この指示によって、有線信号処理部4bからUE端末5との間の通信が可能となる。具体的には、装置制御部4aが、保守端末装置6からの指示を受けとり、有線信号処理部4b,BB信号処理部4c,無線信号処理部4dのリソースを確保し、それぞれの部のリンク接続設定を行う(S12の1,呼設定工程)。これにより、有線信号処理部4bとUE端末5との間の通信が可能となる。さらに、この無線基地局装置4は、装置制御部4aと有線信号処理部4b間の通信を可能にするため、保守端末装置6は、装置制御部4a経由で有線信号処理部4bに対して監視制御信号をBB信号処理部4cへ送出するためのVPI/VCI(virtual path identifier/virtual channel identifier)の付け替えと、内部折り返しする設定を行う(S12の2,呼設定工程)。これにより、装置制御部4aと有線信号処理部4bとの間の通信が可能になる。上記したS12の1とS12の2との処理により装置制御部4aと有線信号処理部4bとの間の通信が可能となる。
【0024】
なお、従来の図2に示した無線基地局装置4では、上記したS12の1の処理は行えるが、S12の2の処理は行えない。従来の有線信号処理部4bでの折り返し機能とは、装置制御部4aから送出されたものを装置制御部4aに折り返すことを指す。一方、この実施の形態の「折り返し」とは、装置制御部4aから送出されたものがBB信号処理部4cに向けて送出されることを指す。この点が従来と異なる点である。
【0025】
次に、装置制御部4aは、無線基地局装置4の運用状態を監視して監視結果情報を生成する(S14,監視制御工程)。この処理と、上記したS12の1とS12の2との処理は並行して行ってもかまわない、また、S14をS12の1及びS12の2の処理よりも先に行ってもかまわない。
【0026】
装置制御部4aは、監視結果情報を有線信号処理部4bへ送信する。また、有線信号処理部4bに対して、監視結果情報を無線信号処理部4dへ折り返す指示を行う(S16,監視制御工程)。有線信号処理部4bは、折り返し指示を受けると、監視結果情報を無線信号処理部4dへ送信する(S18,折り返し工程)。無線信号処理部4dは、S12の1とS12の2で設定された呼を用いて監視結果情報をUE端末5へ送信する。UE端末5は受信した監視結果情報を試験用監視装置7へ送出する(S20,情報送信工程)。
【0027】
以下に、無線基地局装置4と試験用監視装置7との間の通信にSNMP(Simple Network Management Protocol)を使用する例を説明する。図4は、無線基地局装置4と試験用監視装置7との間の通信にSNMPを使用する例を説明する図である。無線基地局装置4の監視において、ネットワーク管理用プロトコルであるSNMPを使用する場合、無線基地局装置4の装置制御部4a(ここでは、装置制御部4aは無線基地局装置のCPUであるものとする)は、SNMPのエージェントとして機能する。また、試験用監視装置7はSNMPマネージャとして機能する。図4において、装置制御部4aは、有線信号処理部4bに対して、監視結果情報をSNMPメッセージとしてInternet Protocol(IP)で送出する。有線信号処理部4bでは、装置制御部4aよりIPで送出されたSNMPメッセージを無線フレームであるFrame Protocol(FP)に変換してBB信号処理部4cへ送出する。BB信号処理部4cへ送出されたメッセージは、無線信号処理部4dを経由してUE端末5に到着する。UE端末5では、到着したメッセージをFPから再度IPに変換して、試験用監視装置7に送出する。試験用監視装置7は、SNMPマネージャによってSNMPメッセージを受信することで通信を行う。以上が、SNMPによる無線基地局装置4と試験用監視装置7との通信である。
【0028】
試験完了後は、保守端末装置6により試験用呼を解放して、有線信号処理部4bの折り返しを解除する。この解除によって、上位にある監視装置1からの監視・制御が可能となる。
【0029】
なお、装置制御部4aは、SNMPのエージェントとして機能し、試験用監視装置7はSNMPマネージャとして機能すると説明を行った。このことは、試験用監視装置7及び無線基地局装置4の製造段階でインプリメントすることによって実現する。すなわち、試験用監視装置7には、SNMPマネージャ機能を搭載し、装置制御部4aには、SNMPクライアント機能を搭載して、互いに共通のMIB(management information base)を保有する。
【0030】
また、試験用監視装置7の機能をUE端末5に備えるようにして、試験用監視装置7とUE端末5とを1つの装置としてもかまわない。この場合、SNMPメッセージは試験用監視装置7に送る前に既にUE端末5内でIP化されるので、一例として無線基地局装置4の監視制御をWebベースでのGUI(graphical user interface)操作にすることによって実現することが考えられる。
【0031】
また、SNMPの他にCORBA(Common Object Request Broker Architecture)等の管理プロトコルを使用しても同様の効果を得られる。
【0032】
以上のように、この実施の形態では、無線基地局装置が屋外(例えば電柱やビル壁等)に設置されている場合でも、監視装置と無線基地局装置との間を無線インタフェースで接続されるため、容易に保守監視することができる効果がある。
【0033】
また、無線基地局装置の設置試験手順である「ネットワーク接続確認試験」の一部であっても、非運用装置である試験用監視装置を使用することにより試験実施することができ、実運用のネットワークを使う試験に費やす時間を短縮することができる効果がある。
【0034】
また、上記した時間の短縮により、試験時間の制約や運用機器を使用するリスクを少なくし、万が一、障害が発生した場合でも、再確認などの十分な時間を確保することができる効果がある。
【0035】
この実施の形態では、無線アクセスネットワークシステムにおいて、無線基地局を監視する監視制御装置への信号を、無線基地局装置内で、無線インタフェース側へ折り返す機能と、無線基地局装置から試験用UE端末までの経路を、保守端末装置より試験用呼として設定できる機能を有する無線基地局装置の一例を説明した。
【0036】
実施の形態2.
この実施の形態では、装置制御部4aが、無線制御装置との制御信号経路と、監視装置との監視制御信号経路とをそれぞれ有する無線基地局装置の一例を説明する。
【0037】
図5は、この実施の形態の無線基地局装置の構成図である。図5において、無線基地局装置4は無線側インタフェースにUE端末5と試験用監視装置7との間に試験用無線制御装置8を備える。この試験用無線制御装置8は、無線制御装置3と同様の機能を有するものである。また、無線基地局装置4の装置制御部4aは、試験用無線制御装置8とのNBAP/ALCAP(Node B Application Protocol(Node B用のプロトコル)/Access Link Control Application Protocol)等の制御信号経路(第2の呼)と、試験用監視装置7との監視制御信号経路(第1の呼)とを別に持つ。
【0038】
図5の無線基地局装置4の装置制御部4aは、無線インタフェース側に存在する試験用監視装置7と通信するため、無線基地局装置4内の有線信号処理部4bで、無線インタフェース側へ折り返す指示を有線信号処理部4bに対して行い、かつ、無線制御装置3に対するNBAP/ALCAP等の制御信号を無線インタフェース側へ折り返す指示を有線信号処理部4bに対して行う機能を合わせて有している。NBAP/ALCAP等の制御信号は、UE端末5の先に設置した試験用無線制御装置8との制御信号として通信することを可能とする。これにより、試験用無線制御装置8からの無線基地局制御が可能となり、さらに多くの「ネットワーク接続確認試験」を試験用監視装置7で行うことができる。
【0039】
次に、図5の無線基地局装置4と試験用監視装置7との間の通信の一例を説明する。図6は、無線基地局装置4と試験用監視装置7の通信について、一例を説明する図である。無線基地局装置4の監視を、ネットワーク管理用プロトコルであるSNMP(Simple Network Management Protocol)を使用して行う場合、装置制御部4aは、上記実施の形態1と同様に保守端末装置6から、装置制御部4aと試験用監視装置7との間の第1の呼を設定する指示と、装置制御部4aと試験用無線制御装置8との間の第2の呼を設定する指示とを受ける。それぞれの指示はいっしょに行われても、別々に行われてもいずれでもかまわない。第1の呼と、第2の呼とを設定する指示を受けた装置制御部4aは、第1の呼については実施の形態1と同様の手順で設定する。第2の呼については、保守端末装置6は、装置制御部4aからの制御信号を有線信号処理部4bでBB信号処理部4cへ送出するため、VPI/VCIの付け替えと、内部折り返しする設定を装置制御部4a経由で行う。これにより、装置制御部4aと試験用無線制御装置8との間の通信が可能となる。
【0040】
第1と第2との呼の設定を行った後、試験用無線制御装置8から制御信号を受信して、制御信号に対する制御した結果を示す制御結果情報を送信する。装置制御部4aは、有線信号処理部4bに対して、生成した制御結果信号をSNMPメッセージとしてATM(IPoverATM)で送出する。有線信号処理部4bでは、装置制御部4aから送出されたSNMPメッセージを無線フレームであるFrameProtocol(FP)に変換して、BB信号処理部4c、無線信号処理部4dを経由して、無線側インタフェースのUE端末5へ送出する。SNMPメッセージを受信したUE端末5は、FPを再度ATMに変換して、試験用無線制御装置8に送出する。試験用無線制御装置8は、ATMに変換されたメッセージを受信する。この受信したメッセージが制御信号である。
【0041】
また、監視制御信号(監視結果情報)については、制御信号と同様に装置制御部4aはATMに変換して有線信号処理部4bへ送出し、有線信号処理部4bはFPに変換する。その後、BB信号処理部4c、無線信号処理部4dを経由してUE端末5に到着する。UE端末5は、さらにATMに変換して、試験用無線制御装置8に送信する。試験用無線制御装置8は、監視制御信号をIPに変換し、試験用監視装置7と通信を行い、送信する。
【0042】
試験完了後は、保守端末装置6により試験用呼を解放し、有線信号処理部4bの折り返しを解除することで、上位にある監視装置1からの監視・制御が可能となる。
【0043】
以上のように、この実施の形態の無線基地局システム、無線基地局装置、接続試験方法では、無線制御装置を使用する試験についても、試験監視装置を使用する試験と同様に無線側インタフェースに試験用の無線制御装置を設置して行うことができる。このため、無線基地局装置が屋外(例えば電柱やビル壁等)に設置されている場合でも、無線制御装置と無線基地局装置との間を無線インタフェースで接続されるため、容易に保守監視することができる効果がある。
【0044】
また、無線基地局装置の設置試験手順である「ネットワーク接続確認試験」の一部であっても、非運用装置である試験用無線制御装置を使用することにより試験実施することができ、実運用のネットワークを使う試験に費やす時間を短縮することができる効果がある。
【0045】
また、上記した時間の短縮により、試験時間の制約や運用機器を使用するリスクを少なくし、万が一、障害が発生した場合でも、再確認などの十分な時間を確保することができる効果がある。
【0046】
この実施の形態2では、無線基地局を監視する監視制御装置への信号だけでなく、NBAP/ALCAP等の無線基地局制御信号も無線側インタフェースに折り返す機能を有する無線基地局装置の一例を説明した。
【0047】
実施の形態3.
上記した実施の形態1と実施の形態2の無線基地局装置では、「ネットワーク接続確認試験」を行う場合に、無線基地局装置の作業者と監視装置の作業者とが同じ作業エリアで作業することができることについて説明する。
【0048】
図7は、従来技術における「単体設置確認試験」と「ネットワーク接続確認試験」の作業(入局)エリアを示す図である。図8は、本発明の無線基地局装置による「単体設置確認試験」と「ネットワーク接続確認試験」の作業(入局)エリアを示す図である。図9は、図7,図8中の「OPC(オペレーションセンター)」と「無線サービスエリア(RSA)」との関係を示す図である。図9において、OPC13には監視装置1が設置され、監視装置1は交換局に設置された無線制御装置3と交換網2により接続されている。また、無線制御装置3は、複数のRSAにそれぞれ設置された無線基地局装置4をネットワークを介して接続する。また、複数のRSAそれぞれには、UE端末5が少なくとも1つ設置されている。
【0049】
従来技術の「ネットワーク接続確認試験」では、機能試験(監視・制御)を実施する際は、無線基地局装置が設置してある無線サービスエリアでの作業(図7中「RSA」)と、監視装置が設置してあるオペレーションセンターでの作業(図7中「OPC」)が必須であり、必要に応じて無線制御装置が設置してある交換局にも入局していた。しかし、本発明の無線基地局装置では、無線基地局装置が設置されている同じ無線サービスエリア内にあるUE端末に試験用監視装置7や試験用無線制御装置8を接続した。このため、「ネットワーク接続確認試験」の機能試験(監視・制御)の一部を、無線基地局装置が設置してある無線サービスエリア(図8中の太線で囲んだ部分の「RSA」)だけでの作業とすることができるメリットがある。
【0050】
例えば、無線制御装置3から無線基地局装置4に対して異常な制御をかけてALM(アラーム状態)にする試験において、試験終了後、無線基地局装置4からリセットしてもとの状態に戻したい場合、試験終了後の復旧のためだけにOPCに入局する必要があった。これに対し、無線サービスエリア内だけで、すなわち実運用に使用している監視装置を使わずに試験を行うことができる実施の形態1や2の無線基地局装置4では、OPCに入局することなく元の状態に戻すことが可能である。
【0051】
また、無線基地局装置4の各機能の状態を監視する場合、無線基地局装置で装置の状態をいろいろ変化させながら、OPCで装置状態を監視するという試験においては、いくつかの装置の状態を監視できることを監視装置が設置されているOPCで確認するが、監視装置までの信号経路は同じ信号経路を繰り返し使用して行う。信号経路の使用は、一度確認すればいいことが多く、繰り返し行われる状態監視において信号経路の使用を繰り返しOPCで監視する必要はない。このことについて、OPCでの確認は1度だけ行い、2度目からの試験は無線サービスエリア内だけでの試験にすることができる利点がある。
【0052】
上記した実施の形態1,2の無線基地局装置、無線基地局システム、接続試験方法は、遠隔からの監視制御が必要となる無線基地局装置に利用できる。
【0053】
以上の実施の形態の説明において「〜部」として説明したものは、一部或いはすべてコンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。これらのプログラムは、例えば、C言語により作成することができる。
【0054】
また、実施の形態の説明において「〜部」として説明したものは、ROM(Read Only Memory)に記憶されたファームウェアで実現されていてもかまわない。或いは、ソフトウェア或いは、ハードウェア或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組みあわせで実施されてもかまわない。
【0055】
また、上記各実施の形態を実施させるプログラムは、記録媒体に記録される。記録媒体は、磁気ディスク装置、FD(Flexible Disk)、光ディスク、CD(コンパクトディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)等その他の記録媒体による記憶装置を用いてもかまわない。
【0056】
上記プログラムは、コンピュータにロードされ、プロセッサの制御に基づいて実行される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に関する無線基地局システムの構成図である。
【図2】従来の無線アクセスネットワークシステムの主たる形態を示す図である。
【図3】接続試験手順を示すフローチャート図である。
【図4】無線基地局装置4と試験用監視装置7との間の通信にSNMPを使用する例を説明する図である。
【図5】実施の形態2の無線基地局システムの構成図である。
【図6】実施の形態2の無線基地局装置4と試験用監視装置7の通信について、一例を説明する図である。
【図7】従来技術における「単体設置確認試験」と「ネットワーク接続確認試験」の作業(入局)エリアを示す図である。
【図8】本発明の無線基地局装置による「単体設置確認試験」と「ネットワーク接続確認試験」の作業(入局)エリアを示す図である。
【図9】図7,図8中の「OPC(オペレーションセンター)」と「無線サービスエリア(RSA)」との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 監視装置、2 交換網、3 無線制御装置、4 無線基地局装置、4a 装置制御部、4b 有線信号処理部、4c BB信号処理部、4d 無線信号処理部、5 UE端末、6 保守端末装置、7 試験用監視装置、8 試験用無線制御装置、11 保守用インタフェース部、12 監視装置、13 OPC、100 無線基地局システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線信号を処理する有線信号処理部と、無線信号を処理する無線信号処理部とを備える無線基地局装置において、
無線基地局装置の状態を監視して監視結果情報を上記有線信号処理部へ送信するとともに、送信した監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信する監視制御部と、
上記無線基地局装置と無線基地局装置の監視制御を行なう監視装置との呼を設定する指示を、上記監視制御部に対して行なう保守端末装置を接続する保守用インタフェース部とを備え、
上記監視制御部は、上記保守用インタフェース部から呼を設定する指示を受信して、上記監視装置との間の呼を設定し、
上記有線信号処理部は、上記監視制御部が送信した折り返し指示に基づいて、上記監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返し、
上記無線信号処理部は、上記有線信号処理部によって折り返された上記監視結果情報を、上記監視制御部によって設定された呼を用いて上記監視装置に対して送信する
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
上記監視制御部は、無線基地局装置の動作制御に関する制御した結果を示す制御結果情報を上記有線信号処理部へ送信するとともに、送信した制御結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信し、
上記有線信号処理部は、上記監視制御部が送信した上記制御結果情報を折り返す折り返し指示に基づいて、上記制御結果情報を上記無線信号処理部へ折り返し、
上記無線信号処理部は、上記有線信号処理部によって折り返された上記制御結果情報を、上記監視制御部によって設定された呼を用いて上記監視装置に対して送信することを特徴とする請求項1記載の無線基地局装置。
【請求項3】
有線信号を処理する有線信号処理部と、無線信号を処理する無線信号処理部とを備える無線基地局装置のネットワーク接続試験を行なう接続試験方法において、
無線基地局装置の状態を監視して監視結果情報を上記有線信号処理部へ送信するとともに、送信した監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信する監視制御工程と、
無線基地局装置の監視制御を行なう監視装置との呼を設定する指示を行なう保守端末装置を接続する接続工程と、
上記接続工程により接続された保守端末装置から呼を設定する指示を受信して、上記監視装置との間の呼を設定する呼設定工程と、
上記監視制御工程によって送信された上記監視結果情報を折り返す折り返し指示に基づいて、上記監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折返し工程と、
上記折り返し工程によって折り返された上記監視結果情報を、上記監視制御工程によって設定された呼を用いて上記監視装置に対して送信する情報送信工程と
を有することを特徴とする接続試験方法。
【請求項4】
上記監視制御工程は、無線基地局装置の動作制御に関する制御した結果を示す制御結果情報を上記有線信号処理部へ送信するとともに、送信した制御結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信し、
上記折り返し工程は、上記監視制御工程によって送信された制御結果情報を折り返す折り返し指示に基づいて、上記制御結果情報を上記無線信号処理部へ折り返し、
上記情報送信工程は、上記折り返し工程によって折り返された上記制御結果情報を、上記監視制御工程によって設定された呼を用いて上記監視装置に対して送信する
ことを特徴とする請求項3記載の接続試験方法。
【請求項5】
有線信号を処理する有線信号処理部と、無線信号を処理する無線信号処理部とを備える無線基地局装置の接続試験を行う無線基地局システムにおいて、
上記無線基地局装置の監視制御を行う監視装置と、
上記無線基地局装置と上記監視装置との間の第1の呼を設定する指示を行う保守端末装置とを備え、
上記無線基地局装置は、
無線基地局装置の状態を監視して監視結果情報を上記有線号信号処理部へ送信するとともに、送信した監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信する監視制御部と、
上記監視制御部に対して、上記保守端末装置を接続する保守用インタフェース部とを備え、
上記監視制御部は、上記保守用インタフェース部から上記第1の呼を設定する指示を受信して、上記監視装置との第1の呼を設定し、
上記有線信号処理部は、上記監視制御部が送信した折り返し指示に基づいて、上記監視結果情報を上記無線信号処理部へ折り返し、
上記無線信号処理部は、上記有線信号処理部によって折り返された上記監視結果情報を、上記監視制御部によって設定された上記第1の呼を用いて上記監視装置に対して送信する
ことを特徴とする無線基地局システム。
【請求項6】
上記無線基地局システムは、上記無線基地局装置と上記監視装置との間に上記無線基地局装置の動作を制御する制御装置を備え、
上記保守端末装置は、上記制御装置との間の第2の呼を設定する指示を上記保守用インタフェース部から上記監視制御部に対して送信し、
上記監視制御部は、上記無線基地局装置の動作制御に関する制御した結果を示す制御結果情報を上記有線信号処理部へ送信して、送信した制御結果情報を上記無線信号処理部へ折り返す折り返し指示を上記有線信号処理部に対して送信するとともに、上記保守用インタフェース部から上記無線基地局装置と上記利用者端末装置と上記制御装置との間の上記第2の呼を設定する指示を受信して第2の呼を設定し、
上記有線信号処理部は、上記監視制御部が送信した上記制御結果情報を折り返す折り返し指示に基づいて、上記制御結果情報を上記無線信号処理部へ折り返し、
上記無線信号処理部は、上記有線信号処理部によって折り返された上記制御結果情報を、上記監視制御部によって設定された上記第2の呼を用いて上記制御装置に対して送信することを特徴とする請求項5記載の無線基地局システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−60305(P2006−60305A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237362(P2004−237362)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】