説明

無線装置

【課題】効率的な中継処理を実現すること。
【解決手段】本発明は、複数の無線装置20のうちの基幹装置10を根元として、複数の無線装置によってツリー状に形成されたセンサネットワークシステムに関する。ネットワークを構成する無線装置20ごとに、固有の送信タイミングを規定する。無線装置20は、他の無線装置20のデータを中継する場合、他の無線装置20に割り当てられたタイミングを用いる。以上のような態様により、衝突を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線技術に関し、特に、複数の無線装置によって形成されたマルチホップ無線ネットワークにおける無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複数の無線端末によってネットワークを構成し、隣接した無線端末間でパケットを中継することによって、直接電波の届かない無線端末同士間での通信を実現するマルチホップ無線ネットワーク方式が提案されている。しかしながら、ネットワークに参加する無線端末の数が多くなるにつれて、ネットワーク内における無線資源の利用領域が重なり合い、通信の衝突が多発するといった問題がある。従来、送信元の無線端末からの中継回数に応じて、送信すべきタイミングを決定することによって、衝突の発生を抑制していた(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−157637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、マルチホップ無線ネットワークの応用例であるセンサネットワークの場合、消費電力の増大を回避できるような効率の良い中継処理が望まれる。本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝突を防止し、効率的な中継処理を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、複数の無線装置によって形成されたマルチホップ無線ネットワークへの参加を要求する無線装置であって、上り通信用時間領域と上りランダムアクセス用時間領域とを含んだ上り用タイムスロットと、下り通信用時間領域と下りランダムアクセス用時間領域とを含んだ下り用タイムスロットとによって形成されたフレームが連続しており、上りランダムアクセス用時間領域と下りランダムアクセス用時間領域のそれぞれの先頭からの共通の第1オフセット量を決定する決定部と、マルチホップ無線ネットワークを管理する管理装置に対して、決定部において決定した第1オフセット量を使用しながら、上りランダムアクセス用時間領域にて、上り通信用時間領域と下り通信用時間領域のそれぞれの先頭からの共通の第2オフセット量の割り当てを要求する割当要求部と、決定部において決定した第1オフセット量を使用しながら、下りランダムアクセス用時間領域にて、割当要求部での要求に対する応答を取得するオフセット量取得部と、オフセット量取得部において取得した応答に含まれた第2オフセット量を使用しながら、上り通信用時間領域と下り通信用時間領域にて、マルチホップ無線ネットワーク内での通信を実行する通信部と、を備える。
【0005】
この態様によると、ランダムアクセス領域を用いて第2オフセット量を要求し、取得するため、ランダムアクセス領域以外の領域を用いた中継処理との衝突を回避でき、効率的な中継処理を実現できる。
【0006】
複数の無線装置のうちの基幹装置を根元としてツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワークにおいて、基幹装置に至るまでのホップ数を取得するホップ数取得部と、ホップ数取得部によって取得されたホップ数に応じて、フレームを形成する複数の上り用タイムスロットと複数の下り用タイムスロットから、本無線装置が使用すべき上り用タイムスロットと下り用タイムスロットとをそれぞれ特定する第1特定部と、オフセット量取得部において取得した第2オフセット量と、第1特定部において特定した上り用タイムスロットに含まれた上り通信用時間領域との組み合わせによって送信タイミングを特定し、かつ、オフセット量取得部において取得した第2オフセット量と、第1特定部において特定した下り用タイムスロットに含まれた下り通信用時間領域との組み合わせによって受信タイミングを特定する第2特定部と、をさらに備えてもよい。通信部は、第2特定部において特定した送信タイミングと受信タイミングにて、通信を実行してもよい。
【0007】
ここで、「ホップ数」とは、基幹装置に至るまでの中継回数を示し、たとえば、基幹装置と無線装置との間に存在する中継装置の台数に1を加えた値を示す。この場合、ホップ数において規定されたタイムスロットと、個別に割り当てられた第2オフセット量との組み合わせによってタイミングを決定することによって、他の無線装置における中継処理に与える影響を低減でき、衝突を回避できる。
【0008】
割当要求部からの要求は、他の無線装置においてホップ数によって特定された上り用タイムスロットと、決定部によって決定された第1オフセット量を使用しながら基幹装置に向けて中継されるように規定されており、オフセット量取得部において取得される応答は、他の無線装置においてホップ数によって特定された下り用タイムスロットと、決定部によって決定された第1オフセット量が使用されながら中継されるように規定されている。この場合、第2オフセット量の要求、取得に際しての送信処理、中継処理においては、第1オフセット量を共通的に使用することによって、他の無線装置における中継処理との衝突を回避でき、効率的な中継処理を実現できる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数の無線装置のうちの基幹装置を根元として、複数の無線装置によってツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワークにおいて、基幹装置との通信を要求する無線装置と、基幹装置との間の経路に含まれた無線装置であって、基幹装置に至るまでのホップ数を取得する第1取得部と、第1取得部によって取得されたホップ数に応じて、複数のタイムスロットのうちのいずれかを特定する第1特定部と、基幹装置との通信を要求する無線装置に対して固有に規定されたサブスロットであって、タイムスロットを形成する複数のサブスロットのうちのいずれかを取得する第2取得部と、第2取得部において取得したサブスロットと、第1特定部において特定したタイムスロットとの組み合わせによって、送信タイミングを特定する第2特定部と、第2特定部において特定した送信タイミングにて、基幹装置との通信を要求する無線装置についての信号を送信する送信部と、を備える。
【0010】
ここで、「ツリー状」とは、木構造を含み、たとえば、親と子の関係が1対多の関係を有する階層構造を含む。この態様によると、ホップ数に応じて割り当てられたタイムスロットと、基幹装置との通信を要求する無線装置に対して固有に規定されたサブスロットとの組み合わせによって、送信タイミングを決定することによって、衝突を回避できる。
【0011】
第1特定部において特定したタイムスロットとは異なるタイムスロットと、第2取得部において取得したサブスロットとの組み合わせによって、受信タイミングを特定する第3特定部と、第3特定部において特定した受信タイミングにて、基幹装置との通信を要求する無線装置についての信号を受信する受信部とをさらに備えてもよい。送信部は、受信部によって受信した信号を中継してもよい。ここで、「異なるタイムスロット」は、第1特定部において特定したタイムスロットに従属して決定されてもよく、たとえば、第1特定部において特定したタイムスロットから1を減じたタイムスロットであってもよい。この場合、送信タイミングに関連して受信するタイミングが規定されるため、効率的に中継できる。
【0012】
本発明の別の態様もまた、無線装置である。この装置は、複数の無線装置のうちの基幹装置を根元として、複数の無線装置によってツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワークにおいて、基幹装置との間で通信を実行する無線装置であって、基幹装置に至るまでのホップ数を取得する第1取得部と、第1取得部によって取得されたホップ数に応じて、複数のタイムスロットのうちのいずれかを特定する第1特定部と、当該無線装置に対して固有に規定されたサブスロットであって、タイムスロットを形成する複数のサブスロットのうちのいずれかを取得する第2取得部と、第2取得部において取得したサブスロットと、第1特定部において取得したタイムスロットとの組み合わせによって、送信タイミングを特定する第2特定部と、第2特定部において特定した送信タイミングにて、当該無線装置についての信号を送信する送信部と、を備える。この態様によると、当該無線装置において予め規定された固有のタイミングをもとに送信処理を実行することによって、衝突を回避できる。
【0013】
送信タイミングを特定した後に、第1取得部によって新たにホップ数が取得された場合、第2取得部において新たにサブスロットを取得させることなく、第2特定部は、新たに取得されたホップ数と、第2取得部においてすでに取得されているサブスロットとにもとづいて、送信タイミングを再特定してもよい。この場合、ホップ数の変化により特定されるスロットが変化した場合であっても、サブスロットを割り当て直すことなく、送信タイミングを特定できる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率的な中継処理を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施形態は、センサネットワークシステムに関する。センサネットワークシステムは、さまざまなセンサが無線で自律的に情報を伝達しあい、収集したデータからその場に適したサービスを提供するためのシステムである。このシステムは、災害時の被災状況の把握、建築物の劣化診断、住宅内の防犯・防火装置などの多種多様な分野への応用が考えられている。
【0017】
一般的に、センサネットワークシステムにおいては、マルチホップ無線ネットワークが形成される。通常、マルチホップ無線ネットワークにおいては、ネットワーク内の無線装置の数が増えるほど、同一の無線リソースが同時に使用される可能性が増え、無線パケットの衝突が多発することとなる。
【0018】
また、各々の無線装置は、センサとしての機能と、取得したセンサ情報を送信したり、他の無線装置から通知されたセンサ情報を基幹装置に中継するための通信機能とを有する。このように、マルチホップ無線ネットワークにおける無線装置においては、自己の通信だけでなく、他の無線装置から送信されたデータを中継する必要があるため、消費電力が増大する。
【0019】
一般的に、センサネットワークシステムに使用される無線装置には、電池で駆動されるタイプが多い。したがって、上述したような衝突の発生の防止や、消費電力の増大を回避できるような、効率の良い中継処理の実現が望まれる。
【0020】
したがって、本発明の実施形態においては、ネットワークを構成する無線装置ごとに、固有の送信タイミングを規定することによって、衝突を回避することとした。このような態様をとることによって、効率の良い中継処理を実現できる。詳細は後述する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかるセンサネットワークシステム100の構成例を示す。センサネットワークシステム100は、サーバ90と、基幹装置10で代表される第1基幹装置10aと第2基幹装置10bと、無線装置20で代表される第1無線装置20a〜第5無線装置20eとを含む。基幹装置10はゲートノード(Gate Node)、それぞれの無線装置20はセンサノード(Sensor Node)である。図1においては、2台の基幹装置10と5台の無線装置20を示したが、それ以外の台数であってもよい。また、サーバ90と基幹装置10は、有線網80を介して、図示しない他のネットワークと接続されてもよい。
【0022】
サーバ90は、センサネットワークシステム100を管理する装置である。サーバ90は、有線網80を介して、第1基幹装置10aと第2基幹装置10bと接続し、それぞれの基幹装置10に対して、また、それぞれの基幹装置10との間で経路が形成された無線装置20に対して、使用すべきタイミングを割り当てる。ここで、基幹装置10や無線装置20に割り当てることができるタイミングは有限であるため、サーバ90は、センサネットワークシステム100に参加する無線装置20の台数の上限を管理し、上限を超えるような場合、センサネットワークシステム100への新たな参加を拒否する。
【0023】
基幹装置10は、たとえば、無線通信機能を有するコンピュータであってもよい。基幹装置10は、センサネットワークシステム100における無線経路の確立、制御や、各々の無線装置20から報告されるセンサ情報を管理する。また、基幹装置10は、サーバ90に対して、管理しているセンサ情報を報告する。基幹装置10は、複数の無線装置20との間における通信に先立って、無線装置20の無線ネットワークへの参加処理を実行し、経路を形成する。図1に示すセンサネットワークシステム100において、第1基幹装置10aは、第1無線装置20aとの間で経路を形成した状態となっている。また、第2基幹装置10bは、第3無線装置20cとの間で経路を形成した状態となっている。
【0024】
一方、第1無線装置20aと第3無線装置20c以外の第2無線装置20b、第4無線装置20d、第5無線装置20eは、基幹装置10との距離が遠く、基幹装置10と直接通信することができない。したがって、第2無線装置20bは、第1無線装置20aとの間の経路を形成し、第1無線装置20aを経由することによって、第1基幹装置10aとの間で通信を実行できるようになる。同様に、第4無線装置20dと第5無線装置20eは、第3無線装置20cをそれぞれ経由するように、経路が形成される。経路は、それぞれの基幹装置10を根元として、ツリー状に階層関係が構成される。
【0025】
以下においては、センサネットワークシステム100における2つの無線装置20の間の直接的な経路において、基幹装置10に近いほうの無線装置20を親、上位、もしくは、上層の無線装置20と呼び、また、基幹装置10から遠いほうの無線装置20を子、下位、もしくは、下層の無線装置20と呼ぶ。たとえば、第1無線装置20aと第2無線装置20bにおいては、第1無線装置20aが上位となり、第2無線装置20bが下位となる。
【0026】
また、ツリー状とは、親と子の関係が1対多の関係にあることを示す。いいかえると、基幹装置10から任意の無線装置20への経路は1以上存在し、逆に、任意の無線装置20から基幹装置10へ向かう上りの経路は1つのみ存在することとなる。このような態様により、上り通信においては、中継局数の増大による通信の爆発を回避できる。一方、上りの経路が1つのみとなるため、衝突などによる通信の失敗を極力回避しなければならないことになる。詳細は後述するが、本実施形態においては、個々の基幹装置10、個々の無線装置20に固有の送信タイミングを設定することによって、衝突による通信の失敗を防止している。
【0027】
それぞれの無線装置20は、それぞれが有するセンサ機能によって、さまざまなセンサ情報を取得し、基幹装置10に報告する。このような報告処理に先立って、無線装置20は、まず、センサネットワークシステム100に参加するために、参加処理を実行する。参加処理において、無線装置20は、親子関係を形成すべき他の無線装置20を選択する。他の無線装置20ではなく、基幹装置10を選択してもよい。また、この選択は、基幹装置10との間に存在する他の無線装置20の数が最小になるように実施される。なお、以下においては、「基幹装置10との間に存在する他の無線装置20の数」に1を加えた値を「ホップ数」という。
【0028】
ここで、センサネットワークシステム100におけるフレーム構成、および、スロットとサブスロットの関係について説明する。図2(a)は、図1のセンサネットワークシステム100におけるフレームフォーマット200の構成例を示す図である。図示するごとく、フレームフォーマット200においては、1スーパフレームはFsec(Fは整数)として規定されてもよい。また、スーパフレームは、時分割(TimeDivisionDuplex)され、1フレーム中の前半のmスロット(mは整数)が下り通信用として割り当てられ、後半のmスロットが上り通信用として割り当てられる。なお、下り通信用、上り通信用としてそれぞれ割り当てられるスロット数は、システムで許容する最大ホップ数によって決定されればよい。
【0029】
図2(b)は、図2(a)のスロットのスロットフォーマット210の例を示す図である。また、スロットは、1からnまでのn個のサブスロット区間212と、予備区間214とを含む。サブスロット区間212においては、データやハローパケットなどが送信される。なお、サブスロット区間212に存在するサブスロットの個数は、システムで許容するセンサノードの最大数によって決定されてもよい。データとは、それぞれのセンサノードに備えられたセンサによって測定されたセンサ情報が含まれる。ハローパケットは、経路を確立するための報知情報であって、報知元の無線装置20を示す識別情報や、基幹装置10から報知元の無線装置20までのホップ数などが含められる。なお、図2(b)に示したスロットフォーマット210の構成は、図2(a)に示す下りスロットと上りスロットとで共通となる。
【0030】
図2(c)は、図2(b)のサブスロット区間212に含まれるフォーマットの例を示す図である。サブスロット区間212は、通信時間領域216とランダムアクセス時間領域218とを含む。通信時間領域216は、k個のサブスロットを含む。ランダムアクセス時間領域218は、(n−k)個のサブスロットを含む。
【0031】
サーバ90は、通信時間領域216の中から、それぞれの無線装置20に割り当てられるサブスロットを決定する。また、サーバ90は、センサネットワークシステム100に参加する無線装置20の総数がkを超えないように、参加の管理を行う。ランダムアクセス時間領域218は、新たにセンサネットワークシステム100に参加する無線装置20がサブスロットの割り当てをサーバ90に要求する際に用いられる。この場合、無線装置20は、(n−k+1)個のサブスロットの中から、使用するサブスロットをランダムに選択する。
【0032】
ここで、(1)参加処理、(2)中継処理について具体的に説明する。図3は、図1のセンサネットワークシステム100の第2の構成例を示す図である。第2の構成例においては、第1基幹装置10aは、第1無線装置20aとの間で経路を形成している。また、第2基幹装置10bは、第3無線装置20cとの間で、経路を形成している。また、第1無線装置20aは第2無線装置20bとの間で、また、第3無線装置20cは第5無線装置20eとの間でそれぞれ経路を形成している。以上の状況の下、第4無線装置20dがセンサネットワークシステム100に新たに参加する場合について説明する。
【0033】
(1)参加処理
(1−1)送信スロットの特定
スロットは、図2(b)に図示するごとく複数のサブスロットより構成される。したがって、各々の無線装置20は、送信タイミングとして、スロットとサブスロットの双方を決定する必要がある。ここでは、送信スロットの特定について説明する。
【0034】
第4無線装置20dは、まず、基幹装置10、もしくは、すでにネットワークに参加している無線装置20から報知されたハローパケットを受信する。図示するごとく、第4無線装置20dは、第1無線装置20aから報知されたハローパケットAと第3無線装置20cから報知されたハローパケットCと第5無線装置20eから報知されたハローパケットEとをそれぞれ受信する。受信したそれぞれのハローパケットには、そのハローパケットの報知元の無線装置20を示す情報や、報知元の無線装置20におけるホップ数が含まれる。
【0035】
前述したように、経路の形成は、基幹装置10との間に存在する他の無線装置20の数が少なくなるように実行される。ここで、ハローパケットAには、ホップ数として「1」が含まれており、ハローパケットCには、ホップ数として「1」が含まれており、ハローパケットEには、ホップ数として「2」が含まれている。したがって、第4無線装置20dは、取得したホップ数のうち、最小のホップ数「1」にかかるハローパケットを送信した第1無線装置20aと第3無線装置20cを選択する。このように選択することによって、第4無線装置20dは、基幹装置10との間の中継回数を低減でき、通信の確実性を向上できる。
【0036】
前述したように、第4無線装置20dの上層として接続できる無線装置20は1台のみであるため、ここでは、第1無線装置20aと第3無線装置20cのうちの一方に絞る必要がある。このような場合、第4無線装置20dは、伝搬品質の良いほうを選択する。伝搬品質のより良い無線装置20と接続することによって、再送回数を低減できるからである。ここでは、第3無線装置20cとの間の伝搬品質のほうが第1無線装置20aとの間よりも良好であると仮定する。この場合、第3無線装置20cを上位として経路が形成される。そうすると、第4無線装置20dにおけるホップ数は、第3無線装置20cのホップ数に「1」を加えた「2」となる。
【0037】
つぎに、第4無線装置20dは、選択したホップ数を用いて、自己の送信スロットを特定する。ここで、第4無線装置20dは、自己のホップ数「2」に応じて、たとえば、「2」に「1」を加えて、図2(a)の3スロット目を送信スロットとして特定する。このように、ホップ数に応じて送信スロットのタイミングを決定することによって、スムーズな通信が可能となる。
【0038】
別の図を用いて、スロット割り当ての作用効果を示す。図4は、本発明の実施形態にかかるスロット割当ての例を示す図である。ここでは、基幹装置10を根元として、最大ホップ数がmホップからなるマルチホップ無線ネットワークが形成されているものと仮定している。図4において、縦軸は、任意のフレームにおけるスロット番号を示す。横軸は、それぞれの無線装置20におけるホップ数を示す。なお、1ホップ目は、図3の基幹装置10から無線装置20へのホップに対応し、2ホップ目以上においては、図3の無線装置20同士のホップに対応する。なお、図4においては、基幹装置10や無線装置20の図示を省略している。
【0039】
タイムスロット1からmにおいては、1ホップ目の基幹装置10を起点として、2ホップ目の無線装置20に下り信号を送信し、3ホップ目の無線装置20、4ホップ目の無線装置20の順で中継され、mホップ目の無線装置20までデータが伝わる様子を示している。ここで、下り信号は、ハローパケットなどを含む。ハローパケットには、たとえば、経路を確立するための情報や、個々の無線装置20に割り当てられるべきサブスロット番号などが含まれる。
【0040】
タイムスロット(m+1)から2mにおいては、mホップ目の無線装置20を起点として、上り信号が(m−1)ホップ目の無線装置20に送信され、順に中継されて、基幹装置10まで伝わる様子を示している。上り信号には、モニタデータ、経路情報などや、サブスロット割当要求などの信号が含まれる。
【0041】
図示するごとく、それぞれの無線装置20の下り送信スロットのタイミングは、下層にいくにつれて、1スロットずつずれていく。そのため、下り信号が滞ることなく、mホップ目の無線装置20まで到達している。上り送信についても同様である。このような態様により、いずれの無線装置20においても、中継データを余分に長く保持する必要がないため、消費電力を低減できる。また、保有バッファ量を低減できるため、小型化を促進できる。
【0042】
なお、図4のように、上り送信と下り送信とでスロットを異ならせる場合、一方を他方に従属させて特定してもよい。たとえば、前述した例の場合、第4無線装置20dは、送信スロットとして3スロット目を特定している。この場合、上りスロットとして、(2m−2)スロット目を特定してもよい。「(2m−2)」という値は、図2(a)に示す1フレームあたりのスロット数の「2m」から、ホップ数「2」を引くことによって得られる値である。
【0043】
(1−2)サブスロットの割り当て
図3に戻る。サブスロットの割り当てにおいて、サーバ90は、無線装置20ごとに、固有の値を設定する。サブスロット番号を基幹装置10、無線装置20に固有の値とすることで、同一ネットワーク内における衝突を完全に防止できる。また、無線装置20が移動し同一ネットワーク上の他の経路に切り替わる場合においても、そのサブスロット番号を継続して使用できる。以下においては、説明の便宜上、固有に割り当てられたサブスロット番号を通信サブスロット番号と表記する。
【0044】
具体的に説明する。スロットの割り当ての後、第4無線装置20dは、第3無線装置20cを介して、基幹装置10との間で通信を実行できることとなる。しかしながら、この段階においては、通信サブスロット番号は割り当てられていない。したがって、第4無線装置20dは、通信サブスロット番号を基幹装置10に要求する際に用いるサブスロットの番号(以下、「ランダムサブスロット番号」と表記する。)を決定する。具体的には、第4無線装置20dは、図2(c)に示されるランダムアクセス時間領域218の中から、ランダムにランダムサブスロット番号を選択する。
【0045】
選択されるランダムサブスロット番号は、図2(c)において、「1」で示されるサブスロットの番号を基準としたオフセット量であるともいえる。「1」ではなく「k+1」で示されるランダムアクセス時間領域218の先頭を基準としたオフセット量であってもよい。このオフセット量は、上りにおけるランダムアクセス時間領域218と下りにおけるランダムアクセス時間領域218とで共通に使用される。
【0046】
すなわち、このランダムサブスロット番号は、割当要求に係る上り信号がサーバ90に伝えられる際に用いられ、さらに、サーバ90が割り当てた通信サブスロット番号についての情報を第4無線装置20dに向けて下り送信する際にも用いられることとなる。このように上りと下りで共通に使用させることによって、ランダムサブスロット番号の管理を容易にできるだけでなく、他の無線装置20が選択するランダムサブスロット番号との衝突の可能性を低減できることとなる。
【0047】
ランダムサブスロット番号を決定した後、第4無線装置20dは、すでに決定したスロットにおけるランダムサブスロット番号のタイミングで、サーバ90に向けて、割当要求信号を送信する。サーバ90は、要求に応じて、第4無線装置20dに対して固有の通信サブスロット番号として、たとえば、Xを割り当てる。Xは、図2(c)における通信時間領域216の中から選択される。割り当てられたXを第4無線装置20dに通知するために用いられるサブスロットの番号は、前述のとおり、ランダムサブスロット番号が用いられる。
【0048】
第4無線装置20dは、割り当てられた通信サブスロット番号Xを記憶する。以後、第4無線装置20dは、3スロット目のXのサブスロットにおいて、送信処理を実行することとなる。参加処理が完了した後、第4無線装置20dは、定期的に、ハローパケットを報知する。このハローパケットには、自己の識別情報や、自己のホップ数である2が含められる。また、第4無線装置20dは、自己の送信処理や、他の無線装置20から送信された信号の中継処理を実行する。
【0049】
(2)中継処理
次に、中継処理について説明する。中継処理は、参加処理時において特定したスロットにおいて実行される。しかし、通信サブスロット番号は、自己に割り当てられた通信サブスロット番号ではなく、基幹装置10との通信を要求する無線装置20に割り当てられた通信サブスロット番号を用いる。基幹装置10との通信を要求する無線装置20とは、送信するデータを生成し、そのデータを基幹装置10に向けて送信をした無線装置20を示す。以後、説明の便宜上、このような無線装置20を起点無線装置と呼ぶ。
【0050】
中継処理の例について、図を用いて説明する。図5は、図1のセンサネットワークシステム100における送信タイミングの例を模式的に示す図である。図5においては、図1に示したセンサネットワークシステム100において、個々の無線装置20における送信タイミングの関係を示している。また、図5においては、第2無線装置20bと第4無線装置20dとが、それぞれ起点無線装置となる。ここで、第2無線装置20bには、固有の通信サブスロット番号として、Xが割り当てられていると仮定する。また、第4無線装置20dには、固有の通信サブスロット番号として、Yが割り当てられていると仮定する。なお、X、Yは、図2(c)における通信時間領域216に含まれるサブスロットを示す。すなわち、X、Yは、1以上k以下の値となる。
【0051】
また、第2無線装置20bと第4無線装置20dにおいては、(2m−2)スロット目が上りスロットとして特定され、第1無線装置20aと第3無線装置20cにおいては、(2m−1)スロット目が上りスロットとして特定されているものとする。なお、それぞれの無線装置20における受信タイミングは、図示を省略している。
【0052】
この場合、第2無線装置20bが基幹装置10に対して上りデータを送信する場合、第2無線装置20bは、(2m−2)スロット目のXのタイミングで第1無線装置20aに送信する。第2無線装置20bからの上り信号を受信した第1無線装置20aは、自己の送信スロットタイミングである(2m−1)スロット目において、起点無線装置である第2無線装置20bの通信サブスロット番号であるXのタイミングで基幹装置10に中継する。
【0053】
同様に、第4無線装置20dは、(2m−2)スロット目のYのタイミングで第3無線装置20cに送信する。第3無線装置20cは、(2m−1)スロット目のYのタイミングで基幹装置10に送信する。
【0054】
このように、第1無線装置20a〜第4無線装置20dにおいて、同一のフレームにおいて複数の送信処理が実行されているが、それぞれの送信タイミングがずれているために、互いに衝突することはない。なお、第1無線装置20aは、起点無線装置である第2無線装置20bの通信サブスロット番号を知っているものとする。第1無線装置20aは、第2無線装置20bがセンサネットワークシステム100に参加した後、第1無線装置20aに対して最初にデータを送信した際に、通信サブスロット番号を通知されてもよい。また、第1無線装置20aは、第2無線装置20bに割り当てるべき通信サブスロット番号を中継する際に、その通信サブスロット番号を読み取ってもよい。
【0055】
図5を用いて、別の中継処理の例として、新たに参加する無線装置20から送信された通信サブスロット番号の割当要求を中継処理する場合について説明する。図5においては、第2無線装置20bと第4無線装置20dは、それぞれ、新たにセンサネットワークシステム100に参加した無線装置20である。また、第2無線装置20bと第4無線装置20dは、それぞれ、第1無線装置20a、第3無線装置20cに対して、通信サブスロット番号の割当要求の中継を要求しているものと仮定する。
【0056】
ここで、第2無線装置20bは、通信サブスロット番号の割当要求の際に用いるランダムサブスロット番号として、Xを選択したものと仮定する。また、第4無線装置20dは、ランダムサブスロット番号として、Yを選択したものと仮定する。なお、X、Yは、図2(c)におけるランダムアクセス時間領域218に含まれるサブスロットを示す。すなわち、X、Yは、(k+1)以上n以下の値となる。その他の処理の詳細、特に、中継タイミングについては、上述と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
このように、通信サブスロット番号の割当要求の際に用いられるランダムサブスロット番号は、無線装置20に割り当てられることのないランダムアクセス時間領域218から選択されるため、他の無線装置20の通信に影響を与えることはない。なお、図5のように、同時に複数の無線装置20が通信サブスロット番号の割り当てを要求する場合において、それぞれランダムに選択したはずのXとYとが偶然同じ値になった場合、双方の割当要求が衝突し、割当処理が中断されることとなる。しかしながら、ランダムサブスロット番号として選択できるサブスロットとして、ランダムアクセス時間領域218内に予め複数のサブスロットが用意されているため、ランダムサブスロット番号が重なることは希であり、また、ランダムサブスロット番号を用いるのは割り当て要求時のみであるため恒常的に衝突が発生するわけではなく、さらに、割当要求が衝突したとしても、再送すればよいため、問題となることはほとんどないと考えられる。いいかえると、本実施形態においては、割当要求同士の衝突を多少許容することによって、割当要求と他の無線装置20の通信との衝突を回避することとしている。
【0058】
ここで、無線装置20について、図を用いて説明する。なお、ここでの無線装置20は、基幹装置10を含まないものとする。図6は、図1のセンサネットワークシステム100の無線装置20の構成例を示す図である。無線装置20は、受信部22と、解析部24と、タイミング割当部26と、記憶部28と、タイミング設定部30と、送信制御部32と、送信部34と、センサ36とを含む。以下においては、参加処理時、および、自己のセンサ36による測定結果についての送信処理、他の無線装置20による送信データの中継処理のそれぞれの場合に分けて説明する。
【0059】
まず、参加処理時の場合について説明する。参加処理時において、受信部22は、基幹装置10または他の無線装置20から報知されたハローパケットを受信する。解析部24は、ハローパケットを受信部22から受け取った場合、ハローパケットから、ホップ数と報知元の無線装置20を示す識別情報を読み取ってタイミング割当部26に通知する。その後、一定期間の間に受信されるハローパケットについても、同様にホップ数を通知する。
【0060】
タイミング割当部26は、解析部24から通知されたホップ数のうち、最小のホップ数を検索する。つぎに、タイミング割当部26は、「検索したホップ数を含むハローパケットを報知した無線装置20の識別情報」を記憶部28に記憶する。さらに、タイミング割当部26は、検索したホップ数に1を加えた値を自己の下り送信スロットの番号として特定し、記憶部28に記録してもよい。また、タイミング割当部26は、1フレーム中のスロット数から、下り送信スロットの番号を引いた値を上り送信スロットの番号として、記憶部28に記録してもよい。
【0061】
つぎに、タイミング割当部26は、送信制御部32に対して、自己の通信サブスロット番号の割り当てを要求させる。また、タイミング割当部26は、通信サブスロット番号の割当要求の送信タイミングとして、タイミング設定部30に対して、設定した上り送信スロット番号と、所定のサブスロット番号とを通知する。
【0062】
この段階においては、まだ、固有の通信サブスロット番号を割り当てられていない。したがって、タイミング割当部26は、ランダムサブスロット番号を決定する。ランダムサブスロット番号は、他の無線装置20に割り当てられていないサブスロットから決定されるため、システム内の既存の無線装置20に対する通信妨害を防止できる。まとめると、通信サブスロット番号が割り当てられる前においては、タイミング割当部26は、タイミング設定部30に対して、設定した上り送信スロット番号と、ランダムサブスロット番号との組み合わせを通知する。通信サブスロット番号が割り当てられた後においては、タイミング割当部26は、タイミング設定部30に対して、設定した上り送信スロット番号と、通信サブスロット番号との組み合わせを通知する。
【0063】
送信制御部32は、タイミング割当部26からの指示にしたがって、送信部34を介して、通信サブスロット番号の割当要求を基幹装置10に向けて送信する。ここで、タイミング割当部26において検索されたホップ数が2以上の場合、当該無線装置20と基幹装置10との間に他の無線装置20が存在するため、宛先は、他の無線装置20となる。なお、他の無線装置20は、記憶部28に記憶された「検索したホップ数を含むハローパケットを報知した無線装置20の識別情報」によって識別される。
【0064】
割当要求後、受信部22は、自己の無線装置20に割り当てられた通信サブスロット番号を受信する。この受信の際の受信タイミングは、ランダムサブスロットが用いられる。なお、一定期間を経過しても受信できなかった場合、割当要求を再送してもよい。解析部24は、自己の無線装置20に固有に割り当てられた通信サブスロット番号を受信部22から通知された場合、タイミング割当部26に転送し、記憶部28に記憶させる。
【0065】
タイミング設定部30は、通知されたタイミングに従って、送信部34、または、受信部22を制御する。通知されるタイミングは、上り送信スロット番号と、通信サブスロット番号もしくはランダムサブスロット番号である。タイミング設定部30は、通知された上り送信スロット番号から、下り送信スロット番号を導出する。また、タイミング設定部30は、上り送信スロット番号、下り送信スロット番号から、1を引くことによって、上り受信スロット番号、下り受信スロット番号をそれぞれ導出する。なお、タイミング設定部30は、上り/下り送信スロット番号、上り/下り受信スロット番号の全てを通知されてもよい。なお、このタイミング設定部30の処理は、参加処理、送信処理、中継処理にかかわらず、共通の処理となる。
【0066】
つぎに、送信処理時の場合について説明する。ここでの送信処理とは、自己の無線装置20が主体的に送信する場合の送信処理を指す。上り送信処理においては、センサ36からの送信要求を契機として、開始される。センサ36は、温度や湿度などのセンサデータを観測し、定期的に、送信制御部32に対して、観測したセンサデータの送信を要求する。タイミング割当部26は、タイミング設定部30に対し、特定した送信スロット番号と、当該無線装置20に固有に割り当てられた通信サブスロット番号とを通知して、タイミングを設定させる。送信制御部32は、送信すべきデータを送信部34を介して、基幹装置10に向けて送信する。
【0067】
下り送信処理においては、タイミング割当部26は、タイミング設定部30に対し、特定した下り送信スロット番号と、自己の通信サブスロット番号とを通知する。また、送信制御部32は、自己の識別番号やホップ数を含ませたハローパケットを送信部34に報知させる。
【0068】
つぎに、中継処理時の場合について説明する。まず、上り中継処理について説明する。まず、受信部22は、1つ下の層の無線装置20から中継すべきデータを受信して、解析部24に通知する。ここでの中継すべきデータは、たとえば、起点無線装置において観測されたセンサ情報やサブスロット割当要求信号などである。解析部24は、中継すべきデータから、起点無線装置を割り出して、データと共にタイミング割当部26に通知する。
【0069】
中継すべき上りデータがサブスロット割当要求である場合、起点無線装置において通信サブスロット番号は未割当のため、タイミング割当部26は、起点無線装置において決定されたランダムサブスロット番号をタイミング設定部30に通知する。他の無線装置20への干渉を低減するためである。起点無線装置において決定されたランダムサブスロット番号は、その番号を示す情報が中継すべき無線パケットに含まれていてもよい。また、中継すべき無線パケットを受信した際のサブスロット番号をランダムサブスロット番号として推定してもよい。なお、受信するスロットと中継するスロットとは1スロットずれているため、推定処理を実行するための時間的な猶予は充分であるといえる。
【0070】
一方、中継すべき上りデータがサブスロット割当要求以外の情報、たとえば、センサ情報である場合、タイミング割当部26は、記憶部28から、起点無線装置に対応付けて記憶されている通信サブスロット番号を読み出して、タイミング設定部30に通知する。ここで、タイミング割当部26は、解析部24から通知された中継すべきデータを送信制御部32に転送する。送信制御部32は、転送されたデータを送信部34に送信させる。
【0071】
つぎに、下り中継処理について説明する。まず、受信部22は、1つ上の層の無線装置20から中継すべきデータを受信して、解析部24に通知する。ここでの中継すべきデータは、たとえば、起点無線装置に割り当てられるべき通信サブスロット番号である。
【0072】
タイミング割当部26は、中継すべき通信サブスロット番号と、その通信サブスロット番号が割り当てられる起点無線装置を示す識別番号とを対応づけて、記憶部28に記憶する。すなわち、上位の無線装置20は、下位における1以上の無線装置20の通信サブスロット番号を管理することとなる。
【0073】
また、タイミング割当部26は、タイミング設定部30に、下り送信スロット番号と、中継すべき通信サブスロット番号そのものを中継時のサブスロット番号として通知する。衝突を防止するためである。送信制御部32は、送信部34を介して、通信サブスロット番号の割り当てを要求した起点無線装置に向けて、起点無線装置に割り当てられるべき通信サブスロット番号を中継する。
【0074】
また、上り送信/下り送信において、任意の無線装置20における受信タイミングは、自己の送信タイミングの1スロット前となる。いいかえると、自己の送信タイミングを基準に、受信タイミングが規定されるため、タイミング管理が容易となる。
【0075】
つぎに、基幹装置10の構成について説明する。なお、図6に示した無線装置20の構成と同等の構成については、同じ符号を用いて説明を簡略化する。
【0076】
基幹装置10は、図6に示した無線装置20の構成に加え、図示しない有線通信部を含む。有線通信部は、有線網80を介して、サーバ90との間で有線通信を行う。有線通信部は、下層の無線装置20から受信した無線パケットを有線通信用のフォーマットに変換して、サーバ90に送信する。また、サーバ90から送信された有線通信用のフォーマットで構成されたパケットを無線パケットのフォーマットに変換して、下層の無線装置20に送信する。なお、有線通信は、たとえば、公知の有線LAN(Local Area Network)方式を用いればよいため、説明を省略する。
【0077】
上述したこれらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0078】
図7は、図1のセンサネットワークシステム100における動作シーケンスの例を示す図である。この動作シーケンスの例は、図3を用いて説明した例に基づいている。すなわち、第3無線装置20cと第5無線装置20eは、すでに、基幹装置10を根元とするセンサネットワークシステム100に参加しているものとする。なお、以下においては、第4無線装置20dにおいて受信されるハローパケット以外のハローパケットについては、図示を省略している。
【0079】
まず、第3無線装置20cは、ハローパケットを報知する(S10)。このハローパケットには、「ホップ数=1」を示す情報が含まれているものとする。第5無線装置20eは、ハローパケットを報知する(S12)。このハローパケットには、「ホップ数=2」を示す情報が含まれているものとする。第4無線装置20dは、第3無線装置20cと第5無線装置20eから報知されたハローパケットをそれぞれ受信する。
【0080】
第4無線装置20dは、受信したそれぞれのハローパケットに含まれるホップ数のうち、最小のホップ数を検索する(S14)。ここでは、「ホップ数=1」が最小となる。つぎに、第4無線装置20dは、検索した最小ホップ数に1を加えて、自己のホップ数を2と設定する。さらに、自己のホップ数にしたがって、上り送信スロットを特定する(S18)。
【0081】
ここで、第4無線装置20dは、特定した送信スロットのタイミングで、基幹装置10を経由しサーバ90に対して、通信サブスロット番号の割り当てを要求する(S20)。この要求は、第3無線装置20cにおいて受信される。ここで、第3無線装置20cは、自己の上り送信スロットを設定して(S22)、基幹装置10に割当要求に係る信号を中継する(S24)。
【0082】
基幹装置10は、第3無線装置20cから中継された割当要求を受信する。さらに、基幹装置10は、受信した割当要求を有線通信用の有線パケットにフォーマット変換する(S28)。さらに、基幹装置10は、フォーマット変換した有線パケットをサーバ90に中継する(S30)。
【0083】
ここで、S20の送信処理とS24、S30の中継処理とにおいて使用されるサブスロット番号は、サーバ90が割り当てることのない時間領域に存在するランダムサブスロット番号が用いられる。このため、これらの処理は、既存の無線装置20における中継処理に干渉することはない。
【0084】
サーバ90は、基幹装置10によって中継された割当要求を受信したことを契機として、第4無線装置20dに対して、固有のサブスロット番号を割り当てる(S32)。サーバ90は、割り当てた通信サブスロット番号を有線通信用の有線パケットに含めて、有線網80を介して基幹装置10に通知する(S34)。基幹装置10は、サーバ90から通知された通信サブスロット番号が含まれた有線パケットを受信する。ここで、基幹装置10は、受信した有線パケットに含まれた通信サブスロット番号を取り出して、無線パケットに含めるようにフォーマット変換する(S36)。
【0085】
さらに、基幹装置10は、無線パケットに含めた通信サブスロット番号を送信するために、自己の下り送信スロットを設定して(S38)、第3無線装置20cに対して、通信サブスロット番号を通知する(S40)。第3無線装置20cは、受信した通信サブスロット番号を送信するために、自己の下り送信スロットを設定して(S42)、第4無線装置20dに対して、通信サブスロット番号を中継する(S44)。第3無線装置20cは、中継の際に、第4無線装置20dの通信サブスロット番号と、第4無線装置20dを示す情報とを対応づけて記憶してもよい。第4無線装置20dは、第3無線装置20cから受信した通信サブスロット番号を記憶する(S46)。
【0086】
なお、S34の通知処理とS40、S44の中継処理とにおいて使用されるサブスロット番号は、S20の送信処理とS24、S30の中継処理とにおいて用いられたランダムサブスロット番号が共通に用いられる。
【0087】
図8は、図5の無線装置20における参加処理時の動作例を示すフローチャートである。この処理は、無線装置20の電源がオンされた場合や、経路が切断され、新たに経路を確立する場合に開始されてもよい。
【0088】
まず、無線装置20は、他の無線装置20から報知されたハローパケットを受信する(S50)。ハローパケットの受信は、所定時間が経過するまで、繰り返される(S52のN)。所定時間を経過した場合(S52のY)、無線装置20は、受信したハローパケットに含まれるホップ数のうち、最小のホップ数を検索する(S54)。つぎに、無線装置20は、検索したホップ数に1を加えて、自己の送信スロットを特定する(S56)。
【0089】
ここで、無線装置20は、ランダムサブスロット番号を決定する。さらに、無線装置20は、割り当てた送信スロット内のランダムサブスロット番号を使用して、通信サブスロット番号の割り当てを基幹装置10に要求する(S58)。ここで、所定時間経過しても通信サブスロット番号を受信できなかった場合(S60のN)、受信できるまで、S58の処理を繰り返す。通信サブスロット番号を受信した場合(S60のY)、無線装置20は、受信した通信サブスロット番号を記憶する(S62)。なお、S60における受信処理においても、S58の要求処理において用いられたランダムサブスロットが共通に用いられる。
【0090】
図9は、図5の無線装置20における中継処理時の動作例を示すフローチャートである。このフローチャートは、図8に示した参加処理が完了した後に実施される処理である。この処理は、送信すべきデータが発生した場合や、他の無線装置20からの中継すべきデータを受信したことを契機として開始されてもよい。
【0091】
まず、無線装置20は、他の無線装置20のための中継処理、あるいは、自己の無線装置20のための送信処理のいずれであるかを判定する(S80)。中継処理である場合(S80のY)、無線装置20は、起点無線装置の通信サブスロット番号を読み出して、タイミングの設定をする(S82)。中継データが通信サブスロット番号の割り当て要求の場合、起点無線装置で決定されたランダムサブスロット番号を設定する。一方、中継処理でない場合(S80のN)、無線装置20は、自己に割り当てられた固有の通信サブスロット番号を送信タイミングとして設定する(S84)。
【0092】
つぎに、無線装置20は、上り送信か下り送信かを判定する(S86)。上り送信である場合(S86のY)、無線装置20は、記憶されている上り送信スロット番号を読み出して、タイミングの設定をする(S88)。下り送信である場合(S86のN)、下り送信スロット番号を読み出して、タイミングの設定をする(S90)。タイミングの設定後、無線装置20は、送信処理を実行する。
【0093】
本実施形態によれば、ホップ数に応じて割り当てられたスロットを形成する複数のサブスロットのうち、基幹装置10との通信を要求する無線装置20に対して割り当てられた通信サブスロット番号で示されたサブスロットにおいて、送信処理を実行することによって、衝突を回避できる。基幹装置10との間に存在する他の無線装置20の数が少なくなるように経路を選択することによって、中継回数を低減でき、通信の確実性を向上できる。自己の送信タイミングを基準に、受信タイミングを規定できるため、間欠受信等の制御を効果的に実行できる。
【0094】
また、ランダムアクセス領域を用いてサブスロットの割り当てを要求、取得するため、ランダムアクセス領域以外の領域を用いた他の無線装置20における通信処理、中継処理との衝突を回避でき、効率的な中継処理を実現できる。また、サブスロットを要求する際の上り送信/中継処理と、取得に際しての下り送信/中継処理においては、ランダムサブスロット番号を共通的に使用することによって、基幹装置、他の無線装置に対してランダムサブスロット番号を指示、通知することなく、サブスロット番号の割り当て処理に関する送信/中継処理の制御を容易にできる。また、ホップ数において規定されたタイムスロットと、固有に割り当てられたサブスロットとの組み合わせによってタイミングを決定することによって、他の無線装置における中継処理に与える影響を低減でき、衝突を回避できる。
【0095】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0096】
前述した本実施形態においては、新たにセンサネットワークシステム100に参加する際に、接続すべき無線装置20が複数存在する場合、伝搬品質にもとづいて選択するとして説明した。しかしながらこれにかぎらず、たとえば、接続するツリー内のシステム負荷によって、選択すべき無線装置20を決定してもよい。特に、図3に示すように、選択した第1無線装置20aと第3無線装置20cとがそれぞれ異なる基幹装置10に接続されているような場合、それぞれの基幹装置10を根元とするツリーにおいて、参加している無線装置20の台数が少ないほうのツリーに所属している無線装置20を選択すればよい。台数が少ない方が、中継負荷を少なくできるほか、センサネットワークシステム100全体の負荷を分散できるからである。
【0097】
また、前述した本実施形態においては、サーバ90と基幹装置10とが別々の構成として説明したが、これにかぎらず、サーバ90と基幹装置10とが一体となって構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施形態にかかるセンサネットワークシステムの構成例を示す図である。
【図2】図2(a)は、図1のセンサネットワークシステムにおけるフレームフォーマットの構成例を示す図である。図2(b)は、図2(a)のフレームに含まれるスロットのスロットフォーマットの例を示す図である。図2(c)は、図2(b)のサブスロット区間に含まれるフォーマットの例を示す図である。
【図3】図1のセンサネットワークシステムの第2の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態にかかるスロット割当ての例を示す図である。
【図5】図1のセンサネットワークシステムにおける送信タイミングの例を示す図である。
【図6】図1のセンサネットワークシステムの無線装置の構成例を示す図である。
【図7】図1のセンサネットワークシステムにおける動作シーケンスの例を示す図である。
【図8】図5の無線装置における参加処理時の動作例を示すフローチャートである。
【図9】図5の無線装置における中継処理時の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
10 基幹装置、 20 無線装置、 22 受信部、 24 解析部、 26 タイミング割当部、 28 記憶部、 30 タイミング設定部、 32 送信制御部、 34 送信部、 36 センサ、 80 有線網、 90 サーバ、 100 センサネットワークシステム、 200 フレームフォーマット、 210 スロットフォーマット、 212 サブスロット区間、 214 予備区間、 216 通信時間領域、 218 ランダムアクセス時間領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線装置によって形成されたマルチホップ無線ネットワークへの参加を要求する無線装置であって、
上り通信用時間領域と上りランダムアクセス用時間領域とを含んだ上り用タイムスロットと、下り通信用時間領域と下りランダムアクセス用時間領域とを含んだ下り用タイムスロットとによって形成されたフレームが連続しており、上りランダムアクセス用時間領域と下りランダムアクセス用時間領域のそれぞれの先頭からの共通の第1オフセット量を決定する決定部と、
前記マルチホップ無線ネットワークを管理する管理装置に対して、前記決定部において決定した第1オフセット量を使用しながら、上りランダムアクセス用時間領域にて、上り通信用時間領域と下り通信用時間領域のそれぞれの先頭からの共通の第2オフセット量の割り当てを要求する割当要求部と、
前記決定部において決定した第1オフセット量を使用しながら、下りランダムアクセス用時間領域にて、前記割当要求部での要求に対する応答を取得するオフセット量取得部と、
前記オフセット量取得部において取得した応答に含まれた第2オフセット量を使用しながら、上り通信用時間領域と下り通信用時間領域にて、前記マルチホップ無線ネットワーク内での通信を実行する通信部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記複数の無線装置のうちの基幹装置を根元としてツリー状に形成されたマルチホップ無線ネットワークにおいて、基幹装置に至るまでのホップ数を取得するホップ数取得部と、
前記ホップ数取得部によって取得されたホップ数に応じて、フレームを形成する複数の上り用タイムスロットと複数の下り用タイムスロットから、本無線装置が使用すべき上り用タイムスロットと下り用タイムスロットとをそれぞれ特定する第1特定部と、
前記オフセット量取得部において取得した第2オフセット量と、前記第1特定部において特定した上り用タイムスロットに含まれた上り通信用時間領域との組み合わせによって送信タイミングを特定し、かつ、前記オフセット量取得部において取得した第2オフセット量と、前記第1特定部において特定した下り用タイムスロットに含まれた下り通信用時間領域との組み合わせによって受信タイミングを特定する第2特定部と、
をさらに備え、
前記通信部は、前記第2特定部において特定した送信タイミングと受信タイミングにて、通信を実行することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記割当要求部からの要求は、他の無線装置においてホップ数によって特定された上り用タイムスロットと、前記決定部によって決定された第1オフセット量を使用しながら基幹装置に向けて中継されるように規定されており、
前記オフセット量取得部において取得される応答は、他の無線装置においてホップ数によって特定された下り用タイムスロットと、前記決定部によって決定された第1オフセット量が使用されながら中継されるように規定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−228178(P2008−228178A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66904(P2007−66904)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】