説明

無線装置

【課題】受信ローカル信号を低雑音化する。
【解決手段】無線装置であって、送信ローカル信号を生成する信号発生器と、前記送信ローカル信号に基づいて、互いに直交する2つの搬送波を生成し、出力する移相器と、
入力データ列をシンボルにマッピングし、前記シンボルに対応する第1ベースバンド信号及び第2ベースバンド信号を生成して出力するI/Q信号生成器と、前記第1ベースバンド信号及び前記第2ベースバンド信号によって前記2つの搬送波をそれぞれ変調し、2つの変調された搬送波に基づいて第1のIF信号を生成し、出力する直交変調器と、前記第1のIF信号及び第2のIF信号のうちの1つをRF帯域の信号に変換して出力する周波数変換器とを有する。前記第2のIF信号は、前記移相器から出力された2つの搬送波のうちの1つであって、前記直交変調器を経由せずに前記周波数変換器に入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号を送受信する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号を送信及び受信する無線装置の例が特許文献1に記載されている。この無線装置では、搬送波を直交変調器で変調して変調信号を生成し、生成された変調信号をアップコンバートしてRF信号を生成する。この無線装置の受信回路では、RF信号を受信ローカル信号として用いて、受信信号をダウンコンバートする。受信ローカル信号を生成するための回路が必要ないので、無線装置の構成を簡略化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−177186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、直交変調器は複数の素子で構成されており、各素子に起因して雑音が発生する。このため、直交変調器が変調を行わず、搬送波がこれらの素子を通過するだけであっても、搬送波に雑音が加わる。その結果、受信ローカル信号のC/N(carrier to noise ratio)が低下してしまう。
【0005】
本発明は、周波数がより低い帯域の信号に受信信号を変換するために用いられる、受信ローカル信号を低雑音化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態による無線装置は、送信ローカル信号を生成する信号発生器と、前記送信ローカル信号に基づいて、互いに直交する2つの搬送波を生成し、出力する移相器と、入力データ列をシンボルにマッピングし、前記シンボルに対応する第1ベースバンド信号及び第2ベースバンド信号を生成して出力するI/Q信号生成器と、前記第1ベースバンド信号及び前記第2ベースバンド信号によって前記2つの搬送波をそれぞれ変調し、2つの変調された搬送波に基づいて第1のIF(intermediate frequency)信号を生成し、出力する直交変調器と、前記第1のIF信号及び第2のIF信号のうちの1つをRF(radio frequency)帯域の信号に変換して出力する周波数変換器とを有する。前記第2のIF信号は、前記移相器から出力された2つの搬送波のうちの1つであって、前記直交変調器を経由せずに前記周波数変換器に入力される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、直交変調器を経由しないIF信号を、RF帯域の信号に変換することができる。したがって、変換された信号を受信ローカル信号として用いることにより、受信ローカル信号を低雑音化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る無線装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の無線装置の動作の例を示すタイミングチャートである。
【図3】シミュレーション対象にした従来の無線装置の部分を示すブロック図である。
【図4】シミュレーション対象にした図1の無線装置の部分を示すブロック図である。
【図5】図1の無線装置についてのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【図6】図1の周波数変換器の構成例を示すブロック図である。
【図7】図1の周波数変換器の他の構成例を示すブロック図である。
【図8】図1の周波数変換器の更に他の構成例を示すブロック図である。
【図9】図8の周波数変換器の動作の例を示すタイミングチャートである。
【図10】図8の周波数変換器の構成例を具体的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図面において下2桁が同じ参照番号で示された構成要素は、互いに対応しており、同一の又は類似の構成要素である。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る無線装置の構成例を示すブロック図である。図1の無線装置は、信号発生器12と、移相器14と、直交変調器16と、I/Q信号生成器18と、周波数変換器20と、帯域通過フィルタ32と、増幅器34と、受信部40とを有している。受信部40は、低雑音増幅器(LNA)42と、ダウンコンバータ44と、復調器46とを有している。
【0011】
信号発生器12は、指定された周波数の送信ローカル信号LOを生成して出力する。移相器14は、送信ローカル信号LOを分周し、移相することにより、互いに直交する2つの搬送波CW1,IF2を生成して出力する。I/Q信号生成器18は、入力データ列TDを、変調に用いられる変調方式のシンボルにマッピングし、このシンボルに対応するベースバンド信号I及びベースバンド信号Qを生成し、直交変調器16に出力する。直交変調器16は、移相器から出力された搬送波CW1,IF2にベースバンド信号I,Qをそれぞれ乗算することによって、搬送波CW1,IF2を変調し、変調された搬送波に基づいて第1のIF(intermediate frequency)信号IF1を変調信号として生成し、周波数変換器20に出力する。
【0012】
周波数変換器20は、IF信号IF1、及び第2のIF信号としての搬送波IF2のうちの1つを、送信ローカル信号LOを用いてRF(radio frequency)帯域のRF信号RF1に変換して出力する。IF信号IF2は、移相器14から出力され、直交変調器16を経由せずに周波数変換器20に入力される。周波数変換器20は、例えば、IF信号IF1及びIF2から1つを選択し、選択されたIF信号を、これに送信ローカル信号LOを乗算することによって周波数変換し、RF信号RF1を求める。
【0013】
帯域通過フィルタ32は、RF信号RF1の所定のRF帯域の周波数成分を通過させて、信号LRとして出力する。増幅器34は、信号LRを増幅して送信信号TSを生成し、アンテナ(図示せず)に出力する。
【0014】
受信時には、信号LRは受信ローカル信号として用いられる。LNA42は、アンテナで受信された受信信号RSを増幅して出力する。ダウンコンバータ44は、LNA42で増幅された信号を、これに受信ローカル信号LRを乗算することによって、周波数がより低い帯域の信号に変換し、得られた信号を出力する。復調器46は、低い帯域に変換された信号を復調し、復調結果を出力する。このように、図1の無線装置は、1つの信号発生器12を用いて、送信信号TSと受信ローカル信号LRとを生成することができる。
【0015】
図2は、図1の無線装置の動作の例を示すタイミングチャートである。直交変調器16、I/Q信号生成器18、及び周波数変換器20は、送信時であるか受信時であるかを示す送信受信切換信号TRSに従って動作する。送信受信切換信号TRSは、例えば図示しない制御部から入力される。
【0016】
送信受信切換信号TRSが送信時であることを示している時には、直交変調器16及びI/Q信号生成器18は前述のように動作し、周波数変換器20は、IF信号IF1を変換する。送信受信切換信号TRSが受信時であることを示している時には、直交変調器16及びI/Q信号生成器18は動作を停止し、周波数変換器20は、IF信号IF2を変換する。なお、送信受信切換信号TRSが受信時であることを示している時に、直交変調器16及びI/Q信号生成器18のうちの1つのみが動作を停止するようにしてもよい。受信時に直交変調器16又はI/Q信号生成器18が動作を停止するので、図1の無線装置は、受信時の消費電力を小さくすることができる。
【0017】
このように、周波数変換器20は、受信時には第2のIF信号IF2に周波数変換を行う。IF信号IF2は直交変調器16を経由せずに周波数変換器20に入力されるので、IF信号IF2に基づいて生成される受信ローカル信号LRの雑音を低下させることができる。
【0018】
受信時のシミュレーション例について説明する。図3は、シミュレーション対象にした従来の無線装置の部分を示すブロック図である。この部分は、移相器14と、直交変調器16と、周波数変換器920とを含んでいる。周波数変換器920は、第2のIF信号IF2の入力や選択ができない点の他は、図1の周波数変換器20と同様である。
【0019】
移相器14及び周波数変換器920には、信号源902で生成された周波数4.676GHzの信号が送信ローカル信号LOとして入力される。移相器14は、送信ローカル信号LOを4分周する。受信時であるので、直交変調器16には、信号源904からベースバンド信号I,QとしてDC信号が与えられる。周波数変換器920によって周波数変換されたRF信号RF1のうち、受信ローカル信号LRとなる周波数5.845GHzの信号のC/Nを、周波数変換器920の出力端子でモニタする。
【0020】
図4は、シミュレーション対象にした図1の無線装置の部分を示すブロック図である。この部分は、移相器14と、直交変調器16と、周波数変換器20と、バッファ915とを含んでいる。
【0021】
移相器14及び周波数変換器20には、信号源902で生成された周波数4.676GHzの信号が送信ローカル信号LOとして入力される。移相器14は、送信ローカル信号LOを4分周する。受信時であるので、直交変調器16は動作を停止している。周波数変換器920によって周波数変換されたRF信号RF1のうち、受信ローカル信号LRとなる周波数5.845GHzの信号のC/Nを、周波数変換器20の出力端子でモニタする。
【0022】
図5は、図1の無線装置についてのシミュレーション結果の一例を示す図である。図3については、1MHzオフセットにおけるC/Nは、−94.6dBc/Hzであった。またこのときの移相器14、直交変調器16、及び周波数変換器920で消費される電流の和は17.2mAであった。図4については、1MHzオフセットにおけるC/Nは、−139.7dBc/Hzであった。またこのときの移相器14、直交変調器16、周波数変換器20、及びバッファ915で消費される電流の和は11.8mAであった。このように、図1の無線装置によれば、受信ローカル信号LRの低雑音化が可能である。
【0023】
図6は、図1の周波数変換器20の構成例を示すブロック図である。周波数変換器20は、負荷インピーダンス22と、ローカル信号入力部24と、IF信号入力部26と、セレクタ28とを有している。負荷インピーダンス22、ローカル信号入力部24、及びIF信号入力部26は、電源とグラウンドとの間に直列に接続されている。負荷インピーダンス22とローカル信号入力部24とが接続されるノードからは、RF信号RF1が出力される。
【0024】
セレクタ28は、送信受信切換信号TRSに従って、送信時にはIF信号IF1を、受信時にはIF信号IF2を選択し、IF信号入力部26に出力する。ローカル信号入力部24は、送信ローカル信号LOに従ってスイッチング動作をする。IF信号入力部26は、セレクタ28で選択された信号に従ってスイッチング動作をする。これにより、選択されたIF信号に周波数変換が行われ、変換後のRF信号RF1が得られる。
【0025】
セレクタ28において信号の選択をするので、負荷インピーダンス22、ローカル信号入力部24、及びIF信号入力部26の構成を同じにすることも可能である。この場合、周波数変換器20の面積を小さくすることができる。
【0026】
図7は、図1の周波数変換器20の他の構成例を示すブロック図である。図7の周波数変換器は、パッシブミキサ224と、セレクタ28とを有している。パッシブミキサ224は、セレクタ28によって選択された信号を、送信ローカル信号LOを用いてRF信号RF1に変換する。パッシブミキサ224は、例えばDBM(double-balanced mixer)である。このようにパッシブミキサを用いることにより、無線装置の消費電力を小さくすることができる。
【0027】
図8は、図1の周波数変換器20の更に他の構成例を示すブロック図である。図8の周波数変換器は、負荷インピーダンス322と、ローカル信号入力部324と、IF信号入力部326,327とを有している。IF信号入力部326とIF信号入力部327とが、並列に接続されている。図9は、図8の周波数変換器の動作の例を示すタイミングチャートである。
【0028】
送信受信切換信号TRSが送信時であることを示している場合には、イネーブル信号EN1が高電位、イネーブル信号EN2が低電位になり、送信受信切換信号TRSが受信時であることを示している場合には、イネーブル信号EN1が低電位、イネーブル信号EN2が高電位になる。イネーブル信号EN1,EN2は、例えば送信受信切換信号TRSに従って制御部によって生成される。
【0029】
IF信号入力部326は、イネーブル信号EN1が高電位である場合にはIF信号IF1に従ってスイッチング動作をし、低電位である場合には動作を停止する。IF信号入力部327は、イネーブル信号EN2が高電位である場合にはIF信号IF2に従ってスイッチング動作をし、低電位である場合には動作を停止する。ローカル信号入力部324は、送信ローカル信号LOに従ってスイッチング動作を行う。
【0030】
つまり、図2の場合と同様に、送信時にはIF信号IF1が、受信時にはIF信号IF2がRF信号RF1に変換されることになる。図8の周波数変換器によると、図6のセレクタ28を用いることなく、送信時と受信時とで異なるIF信号を選択することができる。
【0031】
図10は、図8の周波数変換器の構成例を具体的に示す回路図である。図10のIF信号入力部326は、トランジスタ52と、定電流源54とを有している。IF信号入力部327は、トランジスタ56と、定電流源58とを有している。
【0032】
トランジスタ52のゲート幅をW1、ゲート長をLとし、トランジスタ56のゲート幅をW2、ゲート長をLとする。定電流源54,58の電流をそれぞれI1,I2とする。ゲート幅W1,W2や、電流I1,I2の値を変えることにより、IF信号入力部326とIF信号入力部327の駆動能力を異なる値にすることができる。
【0033】
例えば、受信時に要求される駆動能力が送信時に要求される駆動能力よりも小さい場合には、W1>W2、かつI1>I2とする。これにより、受信時の駆動能力を下げ、同時に周波数変換器を流れる電流も小さくすることができる。図10に示されたIF信号入力部326及び327の構成は、一例であって、他の構成を採用してもよい。
【0034】
図8,10の周波数変換器は、送信時に用いられるIF信号入力部326と、受信時に用いられるIF信号入力部327とを有しているので、送信時と受信時とで周波数変換器に要求される出力レベルが異なる場合には、それぞれの場合に応じた駆動能力をIF信号入力部326,327に持たせることができる。このため、周波数変換器を最適化して、電流のロスを抑えることができる。一般に、受信時より送信時の方が、駆動能力を要する場合が多いので、受信時に動作するIF信号入力部327の駆動能力を、送信時に動作するIF信号入力部326の駆動能力より小さくすることができる。すると、受信時の消費電力を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、受信ローカル信号を低雑音化することができるので、本発明は、無線装置等について有用である。
【符号の説明】
【0036】
12 信号発生器
14 移相器
16 直交変調器
18 I/Q信号生成器
20 周波数変換器
24 ローカル信号入力部
26,326,327 IF信号入力部
28 セレクタ
40 受信部
224 パッシブミキサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信ローカル信号を生成する信号発生器と、
前記送信ローカル信号に基づいて、互いに直交する2つの搬送波を生成し、出力する移相器と、
入力データ列をシンボルにマッピングし、前記シンボルに対応する第1ベースバンド信号及び第2ベースバンド信号を生成して出力するI/Q信号生成器と、
前記第1ベースバンド信号及び前記第2ベースバンド信号によって前記2つの搬送波をそれぞれ変調し、2つの変調された搬送波に基づいて第1のIF(intermediate frequency)信号を生成し、出力する直交変調器と、
前記第1のIF信号及び第2のIF信号のうちの1つをRF(radio frequency)帯域の信号に変換して出力する周波数変換器とを備え、
前記第2のIF信号は、前記移相器から出力された2つの搬送波のうちの1つであって、前記直交変調器を経由せずに前記周波数変換器に入力される
無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置において、
受信ローカル信号を用いて受信信号を周波数がより低い帯域の信号に変換する受信部を更に備え、
前記周波数変換器は、送信時には前記第1のIF信号を、受信時には前記第2のIF信号を選択し、選択されたIF信号を前記RF帯域の信号に変換し、
前記受信部は、前記周波数変換器から出力された前記RF帯域の信号を、前記受信ローカル信号として用いる
無線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線装置において、
受信時には、前記I/Q信号生成器及び前記直交変調器のうちの少なくとも1つの動作が停止する
無線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線装置において、
前記周波数変換器は、前記第1のIF信号及び前記第2のIF信号のうちの1つを選択するセレクタを有する
無線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線装置において、
前記周波数変換器は、前記セレクタによって選択された信号を前記RF帯域の信号に変換するパッシブミキサを有する
無線装置。
【請求項6】
請求項1に記載の無線装置において、
前記周波数変換器は、
前記送信ローカル信号に従ってスイッチング動作をするローカル信号入力部と、
前記第1のIF信号に従ってスイッチング動作をする第1のIF信号入力部と、
前記第2のIF信号に従ってスイッチング動作をする第2のIF信号入力部とを有し、
前記第1のIF信号入力部と前記第2のIF信号入力部とが並列に接続されており、前記第1のIF信号入力部及び前記第2のIF信号入力部は前記ローカル信号入力部に直列に接続されている
無線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線装置において、
前記第1のIF信号入力部の駆動能力と前記第2のIF信号入力部の駆動能力とが異なる
無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−259146(P2011−259146A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131102(P2010−131102)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】