説明

無線装置

【課題】パケット信号の受信に欠落が発生することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】第1RF部56aは、第1アンテナ50aにおいて受信した信号に対する受信処理を実行する。第2RF部56bは、第2アンテナ50bにおいて受信した信号に対する受信処理と、第2アンテナ50bから送信すべき信号に対する送信処理とを切りかえて実行する。制御部60は、第2RF部56bによる送信処理が終了してからの所定の期間にわたって、第1RF部56aによる受信処理を有効にし、第2RF部56bによる受信処理を無効にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に所定の情報が含まれた信号を送受信する無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点の出会い頭の衝突事故を防止するために、路車間通信の検討がなされている。路車間通信では、路側機と車載器との間において交差点の状況に関する情報が通信される。路車間通信では、路側機の設置が必要になり、手間と費用が大きくなる。これに対して、車車間通信、つまり車載器間で情報を通信する形態であれば、路側機の設置が不要になる。その場合、例えば、GPS(Global Positioning System)等によって現在の位置情報をリアルタイムに検出し、その位置情報を車載器同士で交換しあうことによって、自車両および他車両がそれぞれ交差点へ進入するどの道路に位置するかを判断する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−202913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11等の規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御機能が使用されている。そのため、当該無線LANでは、複数の端末装置によって同一の無線チャネルが共有される。このようなCSMA/CAでは、キャリアセンスによって他のパケット信号が送信されていないことを確認した後に、パケット信号が送信される。
一方、ITS(Intelligent Transport Systems)のような車車間通信に無線LANを適用する場合、不特定多数の端末装置へ情報を送信する必要があるために、信号はブロードキャストにて送信されることが望ましい。
【0005】
このような端末装置において、パケット信号の送信後にパワーアンプをオフにした場合、その直後数μsecから十数μsec間では、パワーアンプの過渡現象によって振幅の大きな信号が発生してしまう。この振幅の大きな信号は、パワーアンプ自身から発生するノイズであり、この振幅の大きな信号が発生している間に受信回路が動作すると、受信の誤検出が発生する可能性がある。そのため、過渡現象の影響を受けている期間は、受信した信号に対する処理を停止することが望ましい。なお、CSMA/CAの手順が守られている場合、他の端末装置からブロードキャスト送信されたパケット信号を検知すれば、検知終了後にIFS(Inter Frame Space)時間以上待機してからでないとパケット信号の送信を開始できない。
【0006】
ここで、IFSがDIFSであれば、56μsec以上待機することになるので、過渡現象の影響を受けている期間において他の端末装置からのパケット信号を受信することはない。しかしながら、ITSでの車両に搭載された端末装置のように移動する場合、パケット信号を検知したときの無線環境とパケット信号を送信するときの無線環境が大きく異なることがある。その場合は、過渡現象の影響を受けている期間において他の端末装置からのパケット信号を受信することがあり得る。前述のごとく、この期間にわたって受信した信号に対する処理を停止してしまうと、パケット信号の受信に欠落が発生する。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パケット信号の受信に欠落が発生することを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、第1アンテナにおいて受信した信号に対する受信処理を実行する第1通信部と、第1アンテナとは異なった第2アンテナにおいて受信した信号に対する受信処理と、第2アンテナから送信すべき信号に対する送信処理とを切りかえて実行する第2通信部と、第2通信部による送信処理が終了してからの所定の期間にわたって、第1通信部による受信処理を有効にし、第2通信部による受信処理を無効にする制御部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パケット信号の受信に欠落が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1の基地局装置の構成を示す図である。
【図3】図3(a)−(d)は、図1の通信システムにおいて規定されるフレームのフォーマットを示す図である。
【図4】図1の車両に搭載された端末装置の構成を示す図である。
【図5】図4のベースバンド処理部の構成を示す図である。
【図6】図4の制御部の構成を示す図である。
【図7】図4の端末装置による動作のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車両に搭載された端末装置間において車車間通信を実行するとともに、交差点等に設置された基地局装置から端末装置へ路車間通信も実行する通信システムに関する。車車間通信として、端末装置は、車両の速度や位置等の情報(以下、これらを「データ」という)を格納したパケット信号をブロードキャスト送信する。また、他の端末装置は、パケット信号を受信するとともに、データをもとに車両の接近等を認識する。ここで、基地局装置は、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し規定する。基地局装置は、路車間通信のために、複数のサブフレームのいずれかを選択し、選択したサブフレームの先頭部分の期間において、制御情報等が格納されたパケット信号をブロードキャスト送信する。
【0013】
制御情報には、当該基地局装置がパケット信号をブローキャスト送信するための期間(以下、「路車送信期間」という)に関する情報が含まれている。端末装置は、制御情報をもとに路車送信期間を特定し、路車送信期間以外の期間(以下、「車車送信期間」という)においてCSMA方式にてパケット信号を送信する。このように、路車間通信と車車間通信とが時間分割多重されるので、両者間のパケット信号の衝突確率が低減される。つまり、端末装置が制御情報の内容を認識することによって、路車間通信と車車間通信との干渉が低減される。なお、基地局装置からの制御情報を受信できない端末装置、つまり基地局装置によって形成されたエリアの外に存在する端末装置は、フレームの構成に関係なくCSMA方式にてパケット信号を送信する。
【0014】
前述のごとく、送信が終了してから過渡現象の影響を受けている期間にわたって、受信処理を停止してしまうと、その間に到来したパケット信号の受信が欠落してしまう。これは、他の端末装置からのデータを受信できないことに相当し、車両の衝突を回避するという目的を鑑みても好ましくない。パケット信号の受信の欠落を抑制するために、実施例に係る端末装置は、少なくともふたつのアンテナを備える。一方のアンテナでは、送信処理と受信処理とが切りかえて実行される。そのため、このアンテナでは、送信が終了してから過渡現象の影響を受けている期間にわたって、受信処理を停止する。他方のアンテナでは、送信処理が実行されず、受信処理だけが実行される。このような他方のアンテナでは、過渡現象の影響が小さい。よって、一方のアンテナにおいて受信処理を停止する間においても、他方のアンテナにおいて受信処理が実行される。このように構成することによって、受信機会の低減が抑制される。なお、送信終了後の所定の期間が経過すると、ふたつのアンテナにてダイバーシチ受信が実行される。
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。これは、ひとつの交差点を上方から見た場合に相当する。通信システム100は、基地局装置10、車両12と総称される第1車両12a、第2車両12b、第3車両12c、第4車両12d、第5車両12e、第6車両12f、第7車両12g、第8車両12h、ネットワーク202を含む。ここでは、第1車両12aのみに示しているが、各車両12には、端末装置14が搭載されている。また、エリア212が、基地局装置10の周囲に形成され、エリア外214が、エリア212の外側に形成されている。
【0016】
図示のごとく、図面の水平方向、つまり左右の方向に向かう道路と、図面の垂直方向、つまり上下の方向に向かう道路とが中心部分で交差している。ここで、図面の上側が方角の「北」に相当し、左側が方角の「西」に相当し、下側が方角の「南」に相当し、右側が方角の「東」に相当する。また、ふたつの道路の交差部分が「交差点」である。第1車両12a、第2車両12bが、左から右へ向かって進んでおり、第3車両12c、第4車両12dが、右から左へ向かって進んでいる。また、第5車両12e、第6車両12fが、上から下へ向かって進んでおり、第7車両12g、第8車両12hが、下から上へ向かって進んでいる。
【0017】
通信システム100において、基地局装置10は、交差点に固定して設置される。基地局装置10は、端末装置間の通信を制御する。基地局装置10は、図示しないGPS衛星から受信した信号や、図示しない他の基地局装置10にて形成されたフレームをもとに、複数のサブフレームが含まれたフレームを繰り返し生成する。ここで、各サブフレームの先頭部分に路車送信期間が設定可能であるような規定がなされている。基地局装置10は、フレーム中の複数のサブフレームのうち、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレームを選択する。基地局装置10は、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。基地局装置10は、設定した路車送信期間においてパケット信号を報知する。
【0018】
パケット信号に含まれるべきデータとして、複数種類のデータが想定される。ひとつが、渋滞情報や工事情報等のデータであり、別のひとつが、路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報やフレームに関する情報である。特に、後者は制御情報に相当する。
【0019】
端末装置14は、前述のごとく、車両12に搭載されているので、移動可能である。端末装置14は、基地局装置10からのパケット信号を受信すると、パケット信号に含まれた制御情報、特に路車送信期間が設定されたタイミングに関する情報やフレームに関する情報をもとに、フレームを生成する。その結果、複数の端末装置14のそれぞれにおいて生成されるフレームは、基地局装置10において生成されるフレームに同期する。端末装置14は、車車送信期間においてパケット信号を報知する。車車送信期間の説明は後述するが、これは、フレーム中の路車送信期間とは異なった期間であるといえる。ここで、車車送信期間においてCSMA/CAが実行される。
【0020】
端末装置14は、データを取得し、データをパケット信号に格納する。データには、例えば、存在位置に関する情報が含まれる。また、端末装置14は、基地局装置10から受信した制御情報もパケット信号に格納する。つまり、基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置14によって転送される。一方、端末装置14は、エリア外214に存在していると推定した場合、フレームの構成に関係なく、CSMA/CAを実行することによって、パケット信号を報知する。
【0021】
図2は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、アンテナ20、RF部22、変復調部24、処理部26、制御部28、ネットワーク通信部30を含む。また、処理部26は、フレーム規定部32、選択部34、生成部36を含む。
【0022】
RF部22は、受信処理として、図示しない端末装置14や他の基地局装置10からのパケット信号をアンテナ20にて受信する。RF部22は、受信した無線周波数のパケット信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、ベースバンドのパケット信号を変復調部24に出力する。一般的に、ベースバンドのパケット信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線が示されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。RF部22には、LNA(Low Noise Amplifier)、ミキサ、AGC、A/D変換部も含まれる。
【0023】
RF部22は、送信処理として、変復調部24から入力したベースバンドのパケット信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のパケット信号を生成する。さらに、RF部22は、路車送信期間において、無線周波数のパケット信号をアンテナ20から送信する。また、RF部22には、PA(Power Amplifier)、ミキサ、D/A変換部も含まれる。
【0024】
変復調部24は、受信処理として、RF部22からのベースバンドのパケット信号に対して、復調を実行する。さらに、変復調部24は、復調した結果を処理部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、処理部26からのデータに対して、変調を実行する。さらに、変復調部24は、変調した結果をベースバンドのパケット信号としてRF部22に出力する。ここで、通信システム100は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式に対応するので、変復調部24は、受信処理としてFFT(Fast Fourier Transform)も実行し、送信処理としてIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)も実行する。
【0025】
フレーム規定部32は、図示しないGPS衛星からの信号を受信し、受信した信号をもとに時刻の情報を取得する。なお、時刻の情報の取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。フレーム規定部32は、時刻の情報をもとに、複数のフレームを生成する。例えば、フレーム規定部32は、時刻の情報にて示されたタイミングを基準にして、「1sec」の期間を10分割することによって、「100msec」のフレームを10個生成する。このような処理を繰り返すことによって、フレームが繰り返されるように規定される。なお、フレーム規定部32は、復調結果から制御情報を検出し、検出した制御情報をもとにフレームを生成してもよい。このような処理は、他の基地局装置10によって形成されたフレームのタイミングに同期したフレームを生成することに相当する。
【0026】
図3(a)−(d)は、通信システム100において規定されるフレームのフォーマットを示す。図3(a)は、フレームの構成を示す。フレームは、第1サブフレームから第Nサブフレームと示されるN個のサブフレームによって形成されている。例えば、フレームの長さが100msecであり、Nが8である場合、12.5msecの長さのサブフレームが規定される。Nは、8以外であってもよい。図3(b)−(d)の説明は、後述し、図2に戻る。
【0027】
選択部34は、フレームに含まれた複数のサブフレームのうち、路車送信期間を設定すべきサブフレームを選択する。具体的に説明すると、選択部34は、フレーム規定部32にて規定されたフレームを受けつける。選択部34は、RF部22、変復調部24を介して、図示しない他の基地局装置10あるいは端末装置14からの復調結果を入力する。選択部34は、入力した復調結果のうち、他の基地局装置10からの復調結果を抽出する。選択部34は、復調結果を受けつけたサブフレームを特定することによって、復調結果を受けつけていないサブフレームを特定する。これは、他の基地局装置10によって路車送信期間が設定されていないサブフレーム、つまり未使用のサブフレームを特定することに相当する。未使用のサブフレームが複数存在する場合、選択部34は、ランダムにひとつのサブフレームを選択する。未使用のサブフレームが存在しない場合、つまり複数のサブフレームのそれぞれが使用されている場合に、選択部34は、復調結果に対応した受信電力を取得し、受信電力の小さいサブフレームを優先的に選択する。
【0028】
図3(b)は、第1基地局装置10aによって生成されるフレームの構成を示す。第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第1基地局装置10aは、第1サブフレームにおいて路車送信期間に続いて車車送信期間を設定する。車車送信期間とは、端末装置14がパケット信号を報知可能な期間である。つまり、第1基地局装置10aは、第1サブフレームの先頭期間である路車送信期間においてパケット信号を報知可能であり、かつフレームのうち、路車送信期間以外の車車送信期間において端末装置14がパケット信号を報知可能であるような規定がなされる。さらに、第1基地局装置10aは、第2サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間のみを設定する。
【0029】
図3(c)は、第2基地局装置10bによって生成されるフレームの構成を示す。第2基地局装置10bは、第2サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第2基地局装置10bは、第2サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第3サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。図3(d)は、第3基地局装置10cによって生成されるフレームの構成を示す。第3基地局装置10cは、第3サブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。また、第3基地局装置10cは、第3サブフレームにおける路車送信期間の後段、第1サブフレーム、第2サブフレーム、第4サブフレームから第Nサブフレームに車車送信期間を設定する。このように、複数の基地局装置10は、互いに異なったサブフレームを選択し、選択したサブフレームの先頭部分に路車送信期間を設定する。図2に戻る。選択部34は、選択したサブフレームの番号を生成部36へ出力する。
【0030】
生成部36は、選択部34から、サブフレームの番号を受けつける。生成部36は、受けつけたサブフレーム番号のサブフレームに路車送信期間を設定し、路車送信期間において報知すべきパケット信号を生成する。パケット信号は、例えば、制御情報、データペイロードによって構成されている。制御情報には、路車送信期間を設定したサブフレーム番号等が含まれている。また、生成部36は、ネットワーク通信部30から、渋滞情報や工事情報等のデータを受けつけた場合、それらをデータペイロードに含める。ここで、ネットワーク通信部30は、図示しないネットワーク202に接続される。さらに、生成部36は、路車送信期間において報知すべき複数のパケット信号を生成してもよい。処理部26は、変復調部24、RF部22に対して、路車送信期間においてパケット信号をブロードキャスト送信させる。制御部28は、基地局装置10全体の処理を制御する。
【0031】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0032】
図4は、移動可能な車両12に搭載された端末装置14の構成を示す。端末装置14は、アンテナ50と総称される第1アンテナ50a、第2アンテナ50b、切替部52、パワーアンプ54、RF部56と総称される第1RF部56a、第2RF部56b、ベースバンド処理部58を含む。また、ベースバンド処理部58は、制御部60を含む。
【0033】
第1RF部56aは、第1アンテナ50aに接続されており、第1アンテナ50aにおいて受信したパケット信号を入力する。具体的に説明すると、第1RF部56aは、路車送信期間において、基地局装置10からのパケット信号を受信し、車車送信期間において他の端末装置14からのパケット信号を受信する。第1RF部56aは、図2のRF部22のうち、受信のみの機能、例えば、LNA、ミキサ、AGC、A/D変換部を備える。そのため、第1RF部56aは、パケット信号に対する受信処理を実行し、その結果をベースバンド処理部58に出力する。このように、第1アンテナ50a、第1RF部56aは、受信専用に設けられる。
【0034】
切替部52は、第1アンテナ50aとは異なった第2アンテナ50bに接続されている。切替部52は、制御部60からの指示に応じて、第2アンテナ50bにおいて受信したパケット信号を第2RF部56bに出力したり、パワーアンプ54からのパケット信号を第2アンテナ50bに出力したりする。これらの処理は、時分割で切りかえられる。
【0035】
第2RF部56bは、図2のRF部22と同様に構成されるが、説明の便宜上、パワーアンプを含まないものとする。第2RF部56bは、制御部60からの指示に応じて、受信処理と送信処理を時分割で切りかえて実行する。この指示にて示されるタイミングは、切替部52での切替タイミングに同期している。第2RF部56bは、切替部52からのパケット信号を入力し、パケット信号に対する受信処理を実行し、その結果をベースバンド処理部58に出力する。
【0036】
また、第2RF部56bは、ベースバンド処理部58からのパケット信号を入力し、パケット信号に対する送信処理を実行し、その結果をパワーアンプ54に出力する。なお、RF部56における受信処理と送信処理は、図2のRF部22と同様であるので、ここでは説明を省略する。パワーアンプ54は、第2RF部56bからのパケット信号を入力し、増幅した後に切替部52へ出力する。パワーアンプ54は、図2のRF部22に含まれたPAと同様である。
【0037】
制御部60は、端末装置14全体の動作タイミングを制御する。制御部60は、パケット信号を送信可能なタイミングになれば、切替部52、パワーアンプ54、第2RF部56bに対して送信処理を実行させるための指示を出力する。なお、パケット信号を送信可能なタイミングについては後述する。制御部60は、切替部52、パワーアンプ54、第2RF部56bによる送信処理が終了してからの所定の期間にわたって、これらによる受信処理を無効にする。ここで、所定の期間は、パワーアンプ54による過渡現象の影響を受けている期間よりも長くなるように設定される。送信が終了し、かつパワーアンプ54がオフにされた場合であっても、パワーアンプ54から出力された信号が、切替部52を介して第2切替部52bに回り込んでしまうからである。
【0038】
受信処理を無効にするために、第2RF部56bからベースバンド処理部58へパケット信号を出力させなくてもよいし、第2RF部56bからのパケット信号をベースバンド処理部58においてマスクしてもよい。ここでは、後者であるとして説明を進める。制御部60は、所定の期間経過後、切替部52、パワーアンプ54、第2RF部56bによる受信処理を有効にする。一方、制御部60は、切替部52、パワーアンプ54、第2RF部56bによる送信処理が終了してからの所定の期間であっても、第1RF部56aによる受信処理を有効にする。さらに、制御部60は、送信処理の期間においてパワーアンプ54をオンにし、受信処理の期間においてパワーアンプ54をオフにする。
【0039】
ベースバンド処理部58は、制御部60による制御に応じて、受信処理と送信処理とを切りかえて実行する。ベースバンド処理部58は、送信処理の期間において、パケット信号を第2アンテナ50bに出力する。また、ベースバンド処理部58は、受信処理の期間において、かつ送信処理が終了してからの所定の期間であれば、第1RF部56aからのパケット信号をもとに受信処理を実行する。一方、ベースバンド処理部58は、所定の期間を経過すれば、第1RF部56aからのパケット信号に加えて、第2RF部56bからのパケット信号も受信処理に使用する。ベースバンド処理部58の処理の詳細は後述する。
【0040】
図5は、ベースバンド処理部58の構成を示す。ベースバンド処理部58は、変復調部70、データ処理部72を含み、データ処理部72は、タイミング特定部74、転送決定部76、取得部78、生成部80、通知部86を含む。タイミング特定部74は、抽出部82、キャリアセンス部84を含む。
【0041】
変復調部70は、図2の変復調部24と同様に、送信処理と受信処理とを実行する。変復調部70は、送信処理において、データ処理部72からのパケット信号を変調し、変調したパケット信号を第2RF部56bに出力する。また、変復調部70は、受信処理において、第1RF部56aからのパケット信号と第2RF部56bからのパケット信号とを入力する。変復調部70は、前述の所定の期間において、第1RF部56aからのパケット信号を復調する。その際、第2RF部56bからのパケット信号は、マスクされる。一方、変復調部70は、第1RF部56aからのパケット信号と第2RF部56bからのパケット信号とを合成した後に、復調をする。変復調部70は、合成するために、ダイバーシチ処理やアダプティブアレイ処理を実行するが、これらには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。なお、選択ダイバーシチが使用されてもよい。
【0042】
抽出部82は、変復調部70からの復調結果が、図示しない基地局装置10からのパケット信号である場合に、路車送信期間が配置されたサブフレームのタイミングを特定する。具体的に説明すると、抽出部82は、パケット信号に含まれた制御情報をもとに、基地局装置10からのパケット信号であるか否かを判定する。また、抽出部82は、サブフレームのタイミングと、制御情報に含まれたタイミング情報とをもとに、フレームを生成する。その結果、抽出部82は、基地局装置10において形成されたフレームに同期したフレームを生成する。パケット信号の報知元が、他の端末装置14である場合、抽出部82は、同期したフレームの生成処理を省略する。
【0043】
抽出部82は、制御情報をもとに、使用されている路車送信期間を特定した後、残りの車車送信期間を特定する。抽出部82は、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報をキャリアセンス部84へ出力する。一方、抽出部82は、基地局装置10からのパケット信号を受けつけていない場合、つまり基地局装置10に同期したフレームを生成していない場合、フレームの構成と無関係のタイミングを選択する。抽出部82は、フレームの構成と無関係のタイミングを選択すると、フレームの構成に関係のないキャリアセンスの実行をキャリアセンス部84に指示する。これは、図1のエリア外214での動作に相当する。
【0044】
キャリアセンス部84は、抽出部82から、フレームおよびサブフレームのタイミング、車車送信期間に関する情報を受けつける。キャリアセンス部84は、車車送信期間において、キャリアセンスを実行することによって、干渉電力を測定する。また、キャリアセンス部84は、干渉電力をもとに、送信タイミングを決定する。具体的に説明すると、キャリアセンス部84は、所定のしきい値を予め記憶しており、干渉電力としきい値とを比較する。干渉電力がしきい値よりも小さければ、キャリアセンス部84は、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部84は、抽出部82から、キャリアセンスの実行を指示された場合、フレームの構成を考慮せずに、CSMAを実行することによって、送信タイミングを決定する。キャリアセンス部84は、決定した送信タイミングを変復調部70へ通知する。
【0045】
転送決定部76は、制御情報の転送を制御する。転送決定部76は、制御情報のうち、転送対象となる情報を抽出する。転送決定部76は、抽出した情報をもとに、転送すべき情報を生成する。ここでは、この処理の説明を省略する。転送決定部76は、転送すべき情報、つまり制御情報のうちの一部を生成部80に出力する。取得部78は、図示しないGPS受信機、ジャイロスコープ、車速センサ等を含んでおり、それらから供給されるデータによって、図示しない車両12、つまり端末装置14が搭載された車両12の存在位置、進行方向、移動速度等(以下、「位置情報」と総称する)を取得する。なお、存在位置は、緯度・経度によって示される。これらの取得には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取得部78は、位置情報を生成部80へ出力する。
【0046】
生成部80は、取得部78から位置情報を受けつけ、転送決定部76から制御情報の一部を受けつける。生成部80は、制御情報の一部を制御情報に格納し、位置情報をペイロードに格納することによって、パケット信号を生成する。生成部80は、パケット信号を変復調部70に出力する。
【0047】
通知部86は、路車送信期間において、図示しない基地局装置10からのパケット信号を取得するとともに、車車送信期間において、図示しない他の端末装置14からのパケット信号を取得する。通知部86は、取得したパケット信号に対する処理として、パケット信号に格納されたデータの内容に応じて、図示しない他の車両12の接近等を運転者へモニタやスピーカを介して通知する。
【0048】
図6は、制御部60の構成を示す。制御部60は、カウンタ90、第1受信マスク生成部92、第2受信マスク生成部94を含む。第1受信マスク生成部92は、第1RF部56aからのパケット信号を処理させないためのマスク(以下、「第1受信マスク」という)を生成する。また、第2受信マスク生成部94は、第2RF部56bからのパケット信号を処理させないためのマスク(以下、「第2受信マスク」という)を生成する。
【0049】
カウンタ90は、第1受信マスクと第2受信マスクを生成させるために基準となるカウンタ値を生成する。カウンタ90は、第2RF部56bによる送信処理が終了した場合に、第2RF部56bあるいはベースバンド処理部58から通知を受けつける。カウンタ90は、通知を受けつけると、カウンタ値をリセットして、カウントアップを開始する。
【0050】
以下では、図7も使用しながら、第1受信マスクと第2受信マスクとの生成を説明する。図7は、端末装置14による動作のタイミングチャートを示す。最上段には、送信期間が示されている。ここでは、ハイレベルが送信期間に相当し、ローレベルが受信期間に相当する。ハイレベルがローレベルに切りかわったタイミング「P1」が、送信処理の終了に相当するので、このタイミングにてカウントアップが開始される。
【0051】
第1受信マスク生成部92は、送信期間において第1受信マスクをハイレベルに設定する。第1受信マスクがハイレベルである場合、マスクが有効であることを示す。また、カウンタ90からのカウント値が「P2」に対応した値になったタイミングにおいて、第1受信マスク生成部92は、第1受信マスクをローレベルに設定する。「P2」は、「P1」の後に到来するタイミングであり、送信処理の影響が低減されるタイミングである。なお、「P2」が「P1」と同一のタイミングであってもよい。その後、受信期間が送信期間に切りかわったときに、第1受信マスク生成部92は、第1受信マスクをハイレベルに設定する。
【0052】
第2受信マスク生成部94は、送信期間において第2受信マスクをハイレベルに設定する。また、カウンタ90からのカウント値が「P3」に対応した値になったタイミングにおいて、第2受信マスク生成部94は、第2受信マスクをローレベルに設定する。なお、タイミング「P3」は、タイミング「P2」よりも後方に存在する。また、タイミング「P1」から「P3」の期間は、前述の所定の期間に相当する。その後、受信期間が送信期間に切りかわったときに、第2受信マスク生成部94は、第1受信マスク生成部92と同様に、第2受信マスクをハイレベルに設定する。
【0053】
このように、T0の期間では、受信処理がなされず、T0に続くT1の期間では、第1RF部56aからのパケット信号のみに対する受信処理がなされる。さらに、T1に続くT2の期間では、第1RF部56aおよび第2RF部56bからのパケット信号のみに対する受信処理がなされる。
【0054】
本発明の実施例によれば、送信処理が終了してからの所定の期間にわたって、第1RF部からのパケット信号に対する受信処理を有効にし、第2RF部からのパケット信号に対する受信処理を無効にするので、過渡現象の影響を低減しながら、受信機会の減少を抑制できる。そのことによって、パケット信号の受信に欠落が発生することを抑制できる。また、受信期間にパワーアンプをオフにするので、消費電力を低減できる。
【0055】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
本発明の実施例において、端末装置14は、ふたつのアンテナ50を備えている。しかしながらこれに限らず例えば、端末装置14は、3つ以上のアンテナ50を備えていてもよい。その場合、ひとつのアンテナ50が送信処理と受信処理に使用され、残りのアンテナ50が受信処理専用に使用される。本変形例によれば、受信処理に使用するアンテナ50の数が増加するので、受信特性を向上できる。
【符号の説明】
【0057】
10 基地局装置、 12 車両、 14 端末装置、 20 アンテナ、 22 RF部、 24 変復調部、 26 処理部、 28 制御部、 30 ネットワーク通信部、 32 フレーム規定部、 34 選択部、 36 生成部、 50 アンテナ、 52 切替部、 54 パワーアンプ、 56 RF部、 58 ベースバンド処理部、 60 制御部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナにおいて受信した信号に対する受信処理を実行する第1通信部と、
第1アンテナとは異なった第2アンテナにおいて受信した信号に対する受信処理と、第2アンテナから送信すべき信号に対する送信処理とを切りかえて実行する第2通信部と、
前記第2通信部による送信処理が終了してからの所定の期間にわたって、前記第1通信部による受信処理を有効にし、前記第2通信部による受信処理を無効にする制御部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記制御部は、所定の期間を経過してから、前記第1通信部に加えて、前記第2通信部による受信処理も有効にすることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
本無線装置は、移動車両に搭載されていることを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−51515(P2013−51515A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187689(P2011−187689)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】