説明

無線装置

【課題】接続制御装置を介さずに接続設定を行うことができる無線装置を提供する。
【解決手段】アレイアンテナ10は可変指向性アンテナである。無線ユニット制御回路16は、接続設定処理が完了する前の他の無線装置から送信されてアレイアンテナ10で受信された電波から識別される他の無線装置に対して接続設定処理を行う。位相制御回路17は、無線ユニット制御回路16が接続設定処理を開始してから完了するまでの期間にアレイアンテナ10の指向方向を所定の方向に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線装置間の無線接続を切り換えて無線通信を行うシステムとして、無線装置間の接続設定を行う接続制御装置を持つ通信システムが開発されている。例えば、特許文献1には、接続制御装置が、通信可能な範囲に存在する無線装置から識別子を収集し、収集した識別子を用いて各無線装置を特定すると共に、操作者による接続指示の内容に基づいて接続設定を行うことが示されている。
【0003】
近年、指向性が可変な可変指向性アンテナを具備した無線装置が開発されており、可変指向性アンテナを具備した無線装置を含んだ通信システムにおける接続設定の方法も各種開示されている。例えば、特許文献2には、無指向性アンテナと可変指向性アンテナとを具備する無線装置が、接続設定では無指向性アンテナを使用して接続対象の発見と選択を行い、接続設定後のデータ通信中は指向性アンテナを用いて通信を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3441422号公報
【特許文献2】特開2002-217914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、接続設定のために接続制御装置が送信装置及び受信装置から識別子を収集し、収集した識別子を用いて各装置を特定し、特定した各装置を接続制御装置の表示部に表示して操作者の接続指示を待つ。接続指示が行われた後、接続制御装置は、接続指示に沿って決定された内容に基づいた接続設定を行う。
【0006】
従来技術では、通信システムを構成する各装置の数が多い場合、接続設定が複雑となり設定ミスが発生する可能性が高くなる。又、通信システムを構成する各装置の数が少ない場合、単純な接続指示を行うために接続制御装置を使用するのはシステムのコストアップに繋がる。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、接続制御装置を介さずに接続設定を行うことができる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、指向特性が可変な可変指向性アンテナと、接続設定処理が完了する前の他の無線装置から送信されて前記可変指向性アンテナで受信された電波から前記接続設定処理に使用する制御情報を生成し、前記接続設定処理が完了した前記他の無線装置から送信されて前記可変指向性アンテナで受信された電波からデータ処理用のデータを生成する生成部と、前記制御情報から識別される前記他の無線装置に対して前記接続設定処理を行う接続設定部と、前記接続設定部が前記接続設定処理を開始してから完了するまでの期間に前記可変指向性アンテナの指向方向を所定の方向に制御するアンテナ制御部と、を有する無線装置である。
【0009】
又、本発明の無線装置は、通信環境が劣化しているか否かを判定する判定部を更に有し、前記接続設定部は、前記他の無線装置に対して前記接続設定処理を行っている間に、前記判定部により、前記通信環境が劣化していると判定された場合、前記他の無線装置に対する前記接続設定処理を中止する。
【0010】
又、本発明の無線装置において、前記接続設定部は、第1の無線装置に対する前記接続設定処理を中止した場合、前記第1の無線装置とは異なる第2の無線装置に対する前記接続設定処理が完了するまでは、前記第1の無線装置に対する前記接続設定処理を禁止する。
【0011】
又、本発明の無線装置において、前記接続設定部は、前記制御情報から複数の他の無線装置が識別された場合、前記制御情報に基づいて、他の無線装置がリセットされたときからの経過時間を識別し、前記経過時間が短い他の無線装置に対して優先して前記接続設定処理を行う。
【0012】
又、本発明の無線装置において、前記接続設定部は、前記制御情報から複数の他の無線装置が識別される場合、当該複数の他の無線装置から受信した電波の電波強度が最も強い無線装置に対して前記接続設定処理を行う。
【0013】
又、本発明の無線装置は、前記可変指向アンテナの指向方向の指針となる方向情報を操作者から受け付ける方向受付部を更に有し、前記アンテナ制御部は、前記可変指向性アンテナの指向方向を前記方向情報が示す方向に制御する。
【0014】
又、本発明の無線装置は、前記生成部で生成された前記データを処理する複数のアプリケーションのいずれかを起動して前記データを処理する処理部を更に有し、前記処理部は、前記接続設定処理が行われた前記他の無線装置に対応したアプリケーションを起動する。
【0015】
又、本発明の無線装置は、前記生成部で生成された前記データを処理する複数のアプリケーションのいずれかを起動して前記データを処理する処理部を更に有し、前記接続設定部は、前記制御情報から複数の他の無線装置が識別された場合、前記処理部が起動したアプリケーションに対応した他の無線装置に対して前記接続設定処理を行う。
【0016】
又、本発明の無線装置において、前記アンテナ制御部は、前記可変指向性アンテナの指向方向を所定の方向に制御すると共に前記可変指向性アンテナの指向特性の広がりを所定の範囲内に制御する。
【0017】
又、本発明の無線装置において、前記アンテナ制御部は、前記可変指向性アンテナの指向方向を、前記可変指向性アンテナが配置された平面に対して垂直な方向に制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接続設定部が接続設定処理を開始してから完了するまでの期間に可変指向性アンテナの指向方向が所定の方向に制御されるので、所定の方向に他の無線装置が存在する場合に、接続制御装置を介さずに他の無線装置と接続設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態による画像データ通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における接続設定処理の様子を示す参考図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における接続設定処理の様子を示す参考図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による画像表示装置の無線ユニット制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態における接続設定処理の様子を示す参考図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における接続設定処理の様子を示す参考図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における接続設定処理の様子を示す参考図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における接続設定処理の様子を示す参考図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による画像データ通信システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による無線ユニットが有する方向スイッチの構成を示す構成図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における指向方向の表示例を示す参考図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による通信アダプタの構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における接続設定処理でのアレイアンテナの指向パターンの制御の内容を示す参考図である。
【図15】本発明の第2の実施形態による通信アダプタの無線ユニット制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第2の実施形態による通信アダプタの無線ユニット制御回路の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、無線通信で画像を送信する2台のビデオカメラと、無線通信で伝送された画像を受信して表示する1台の表示装置とから成る画像データ通信システムに本発明を適用した場合を例に説明を行う。図1は、本実施形態による画像データ通信システムの構成を示している。まず、図1を用いて、画像データ通信システムの構成と動作を説明する。
【0022】
[構成]
図1に示す画像データ通信システムは、2台のビデオカメラ(ビデオカメラ1、ビデオカメラ5)と1台の画像表示装置9により構成されている。ビデオカメラ1とビデオカメラ5は、撮像した画像データを通信データとして無線送信する装置であり、同じ構成を有する。画像表示装置9は、ビデオカメラ1、ビデオカメラ5の何れかを選択して無線通信を行い、選択したビデオカメラから通信データを受信し、通信データを画像データに復元して画像を表示する。画像表示装置9は、本発明の無線装置の適用例である。
【0023】
ビデオカメラ1は、撮像ユニット2、無線ユニット3、アンテナ4により構成されている。撮像ユニット2は、撮像処理を行って画像データを出力する。無線ユニット3は、撮像ユニット2から出力される画像データを通信データに変換し、アンテナ4を介して無線送信する。アンテナ4は無指向性アンテナである。ビデオカメラ5は、撮像ユニット6、無線ユニット7、アンテナ8により構成されている。ビデオカメラ5の構成は、ビデオカメラ1の構成と同じであるので説明を省略する。
【0024】
画像表示装置9は、アレイアンテナ10、無線ユニット11、表示ユニット12、表示モニタ13により構成されている。アレイアンテナ10は、複数のアンテナ素子から構成され、指向性が可変な可変指向性アンテナであり、電波の送信及び受信を行う。アレイアンテナ10の指向性は無線ユニット11により制御される。アレイアンテナの指向性制御に関する動作原理の詳細については公知であるので説明を省略する。
【0025】
無線ユニット11は、アレイアンテナ10と接続されており、アレイアンテナ10の指向性の制御と、ビデオカメラとの接続処理と、接続後のビデオカメラから送信される通信データの受信処理とを行う。無線ユニット11が受信した通信データは画像データに再構成され、表示ユニット12に送られる。表示ユニット12は、画像データに画像処理を行って映像信号を生成し、表示モニタ13に出力する。表示モニタ13は、映像信号に基づいて画像の表示を行う。
【0026】
本実施形態による画像データ通信システムは接続設定動作と撮像表示動作を行う。接続設定動作は、接続相手(接続対象)のビデオカメラを選択して接続設定処理を行う動作である。操作者は、画像表示装置9に接続設定処理の開始を指示した後、アレイアンテナ10の正面を接続相手のビデオカメラに向けることで、選択するビデオカメラを決定する。この操作を可能とするため、画像表示装置9は、アレイアンテナ10と無線ユニット11が一体化され、アンテナの方向を任意の装置に向ける操作が可能な構造を有する。又、アレイアンテナ10は、無線ユニット11により指向性の制御が行われ、接続設定時、指向方向がアレイアンテナ10の正面方向に設定されると共に指向角(半値角)が所定の角度(数十度程度)に設定される。本実施形態におけるアレイアンテナ10の正面方向とは、アレイアンテナが形成されているプリント基板の平面に対して鉛直な方向である。
【0027】
撮像表示動作は、接続相手のビデオカメラが撮像した画像データに基づく画像を画像表示装置9が表示する動作である。ビデオカメラから無線送信された無線信号はアレイアンテナ10で電波として受信され、無線ユニット11で通信データに復調された後に画像データに再構成される。再構成された画像データは表示ユニット12により映像信号に変換され、表示モニタ13により画像が表示される。撮像表示動作中は、無線信号の受信が最適に行われるように、接続相手として指定されたビデオカメラに向けてアレイアンテナ10の指向性が制御される。
【0028】
図2は、画像表示装置9の構成を示している。図2に示すように、画像表示装置9は、アレイアンテナ10、無線ユニット11、表示ユニット12、表示モニタ13により構成されている。
【0029】
無線ユニット11は、高周波回路14、ベースバンド回路15、無線ユニット制御回路16、位相制御回路17、操作スイッチ18により構成されている。高周波回路14は、アレイアンテナ10に接続されており、高周波処理を行う。ベースバンド回路15は、高周波回路14に接続されており、ベースバンド処理を行う。高周波回路14及びベースバンド回路15(データ生成部)が処理を行うことにより、接続設定処理が完了する前のビデオカメラから送信されてアレイアンテナ10で受信された電波から接続設定処理に使用する制御情報(後述するID情報や経過時間情報)が生成され、接続設定処理が完了したビデオカメラから送信されてアレイアンテナ10で受信された電波から画像処理(データ処理)用の画像データが生成される。無線ユニット制御回路16は無線ユニット11全体の動作を制御する。位相制御回路17はアレイアンテナ10の指向性を制御する。操作スイッチ18は、操作者が操作可能なスイッチであり、操作者からの指示を無線ユニット制御回路16に伝える。
【0030】
表示ユニット12は、画像処理回路19、表示ユニット制御回路20により構成されている。画像処理回路19は、無線ユニット11から出力されるベースバンド処理後の画像データを受け取り、画像データを画像処理して映像信号として出力する。表示ユニット制御回路20は、画像処理回路19の制御を行い、無線ユニット11の無線ユニット制御回路16と連携して画像表示装置9全体の制御を行う。
【0031】
[動作]
次に、画像データ通信システムの動作の説明を行う。最初に、接続設定動作の説明を行う。接続設定動作時、画像表示装置9は、接続相手のビデオカメラを選択して接続設定処理を行う。接続設定処理は、アレイアンテナ10の正面方向に位置するビデオカメラと行われる。
【0032】
操作者は操作スイッチ18を押して接続設定処理の開始を指示した後、接続相手のビデオカメラにアレイアンテナ10の正面を向けることで、接続するビデオカメラを指定する。操作スイッチ18は、無線ユニット制御回路16に接続されており、操作スイッチ18の押下げにより接続設定処理開始の指示が無線ユニット制御回路16により認識される。
【0033】
無線ユニット制御回路16は、接続設定処理開始の指示を認識すると、位相制御回路17にアレイアンテナ10の指向性の制御を指示する。無線ユニット制御回路16から指示を受けた位相制御回路17は、前述したように指向方向をアレイアンテナ10の正面方向に設定する。
【0034】
その後、無線ユニット制御回路16は高周波回路14とベースバンド回路15を制御し、ビデオカメラとの接続設定処理を行う。無線ユニット制御回路16が行う接続設定処理については、後に詳細を説明する。
【0035】
次に、撮像表示動作の説明を行う。撮像表示動作時、位相制御回路17によりアレイアンテナ10の指向性が制御され、接続相手のビデオカメラの存在する方向に指向方向が制御される。指向方向は、アレイアンテナ10、高周波回路14、無線ユニット制御回路16、位相制御回路17により無線信号の受信感度が最適となるように制御される。指向方向の制御の方法は公知であるので、これ以上の説明は省略する。
【0036】
アレイアンテナ10により受信された無線信号は、高周波回路14により通信データに復調された後、ベースバンド回路15により画像データに再構成され、表示ユニット12に出力される。画像データは表示ユニット12により映像信号に変換され、表示モニタ13により画像が表示される。
【0037】
図3、図4は、接続相手である複数のビデオカメラが、画像表示装置9から見て別々の方向に存在する場合の接続設定処理の様子を示している。図3、図4を用いて、画像表示装置9が、ビデオカメラ1と接続している状態からビデオカメラ5と接続するように接続を変更する場合を例として説明を行う。
【0038】
図3(a)は、画像表示装置9とビデオカメラ1が接続している状態を示している。図中の指向パターン21はアレイアンテナ10の放射特性を示している。図示するように、指向パターン21は、撮像表示動作時の指向角として定められた所定の角度に指向角が絞られた状態で、アレイアンテナ10の正面方向Dr1(アンテナ正面の方向)を基準として角度θ1の方向Dr2に向けて設定されている。
【0039】
図3(b)は、画像表示装置9の操作スイッチ18が押されて、接続設定処理が開始された状態を示している。接続設定処理が開始されると、ビデオカメラ1との接続が切断される。指向パターン21は、接続設定処理時の指向角として定められた所定の角度に指向角が絞られた状態で、アンテナ正面(0度)の方向に設定されている。図3(b)の状態では、アンテナ正面にビデオカメラが存在しないので、ビデオカメラとの接続設定は開始されない。
【0040】
図4(a)は、操作者によりアレイアンテナ10と無線ユニット11の位置が変更され、アレイアンテナ10の正面がビデオカメラ5に向いている状態を示している。アレイアンテナ10の正面にビデオカメラがあると、ビデオカメラとの接続設定処理が開始され、仮接続が行われる。仮接続では、指向パターン21の指向方向をアンテナ正面の方向に固定した状態でビデオカメラとの通信が行われる。この時、表示モニタ13には、仮接続の相手のビデオカメラから受信した機器情報(機種名や、操作者が付けた識別用の名前等)、或いは仮接続の相手のビデオカメラが撮像した画像データに基づく画像が表示される。操作者は、表示モニタ13を観察して、画像表示装置9が所望のビデオカメラと接続されているか否かの確認を行う。仮接続の状態が所定期間継続すると、本接続の状態に移行する。
【0041】
図4(b)は、本接続の状態を示している。同図は、ビデオカメラ5と本接続を行っている状態を示している。本接続では、アレイアンテナ10と無線ユニット11の位置や向きに関わらず、選択したビデオカメラとの通信が最適に行われるように指向パターン21が制御される。そのため、図示するように、アレイアンテナ10と無線ユニット11の位置を図4(a)の状態から元に戻した場合には、指向パターン21が、アレイアンテナ10の正面方向Dr1(アンテナ正面の方向)を基準として角度θ2の方向Dr3に向けて設定されることになる。
【0042】
図5は、図3、図4を用いて説明した接続設定処理における無線ユニット制御回路16の動作を示している。無線ユニット制御回路16は、画像表示装置9の操作スイッチ18が押されると、接続設定処理を開始する(S1)。続いて、無線ユニット制御回路16は、ベースバンド回路15から出力される制御情報に基づいて、ビデオカメラと接続中であるか否かを判定する判定処理(S2)を実行する。接続中の場合には、無線ユニット制御回路16は、ビデオカメラとの接続を切断する切断処理(S3)を実行する。
【0043】
切断処理(S3)の実行後、又は、ビデオカメラと接続中でなかった場合、無線ユニット制御回路16は、指向方向設定処理(S4)を実行する。指向方向設定処理(S4)では、無線ユニット制御回路16は、指向パターン21の広がり(ビーム幅)を示す指向角を所定の角度に絞り、指向パターン21の指向方向をアンテナ正面(0度)の方向に設定する。
【0044】
続いて、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S5)を実行する。問合せ処理(S5)では、接続可能なビデオカメラから、ビデオカメラ毎に設定されているID情報(識別情報)等の、接続設定処理に使用する情報の収集が行われる。無線ユニット制御回路16はベースバンド回路15から出力される制御情報からID情報を収集する。アンテナ正面の方向にビデオカメラが存在する場合、1台以上の接続可能なビデオカメラのID情報が収集されており、無線ユニット制御回路16は、収集したID情報の中からいずれかを選択し、選択したID情報を有するビデオカメラと仮接続処理(S6)を実行する。問合せ処理(S5)中にアンテナ正面の方向にビデオカメラが存在しない場合、接続可能なビデオカメラのID情報が収集できないため、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S5)を継続して実行することになる。
【0045】
仮接続処理(S6)では、無線ユニット制御回路16は、指向パターン21の指向方向をアンテナ正面の方向に設定したまま、ビデオカメラとの通信を行う。無線ユニット制御回路16は、仮接続状態でのビデオカメラとの通信が継続している時間を計測し、仮接続状態でのビデオカメラとの通信が所定時間継続したか否かを判定する判定処理(S7)を実行する。
【0046】
仮接続状態でのビデオカメラとの通信が所定時間継続した場合には、無線ユニット制御回路16は本接続移行処理(S8)を実行する。操作者が別のビデオカメラを選択するためにアレイアンテナ10の方向を変えた等の原因によりビデオカメラとの通信が所定時間継続しなかった場合には、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S5)を再度実行する。
【0047】
本接続移行処理(S8)では、無線ユニット制御回路16は、指向パターン21の指向方向を接続中のビデオカメラに向けて絞る本接続動作への移行を位相制御回路17に指示する。本接続移行処理(S8)の後、無線ユニット制御回路16は接続設定処理を終了する(S9)。無線ユニット制御回路16は、接続設定処理の終了後、撮像表示処理を実行する。
【0048】
次に、複数のビデオカメラが同じ方向に存在する場合に、複数のビデオカメラから接続相手のビデオカメラを選択して接続設定を行う処理(同一方向接続設定処理)について説明を行う。同一方向接続設定処理は、無線ユニット制御回路16が行う処理であり、本実施形態では3種類の同一方向接続設定処理について説明を行う。
【0049】
3種類の同一方向接続設定処理は、いずれも図5に示した処理の流れに従って行われるが、問合せ処理(S5)と仮接続処理(S6)の内容がそれぞれの同一方向接続設定処理で異なっている。以下、図6〜図9を用いて3種類の同一方向接続設定処理の詳細な説明を行う。
【0050】
図6は、第1の同一方向接続設定処理の様子を示している。第1の同一方向接続設定処理では、リセット処理が行われた時点からの経過時間が短い方のビデオカメラが接続相手として選択される。図6を用いて、ビデオカメラ1とビデオカメラ5が画像表示装置9から見て同じ方向に位置する場合に、画像表示装置9が、ビデオカメラ1と接続している状態からビデオカメラ5と接続するように接続を変更する場合を例として説明を行う。
【0051】
図6(a)は、第1の接続設定処理の直前の状態を示している。図示するように、ビデオカメラ1とビデオカメラ5が画像表示装置9から見て同一方向に存在する場合、画像表示装置9はビデオカメラ1とビデオカメラ5のどちらとでも仮接続が可能である。本実施形態では、問合せ処理(図5のS5)で収集されたID情報の中に、前回の本接続で使用されたID情報がある場合には、画像表示装置9は、そのID情報を有する無線装置と接続する。前回の本接続で使用されたID情報が無い場合には、画像表示装置9は、問合せ処理で最初に獲得したID情報を有する無線装置と接続する。
【0052】
図6(a)では、画像表示装置9は、ビデオカメラ1と接続中であり、指向パターン21がビデオカメラ1の方向を向くようにアレイアンテナ10の指向方向が制御されている。第1の接続設定処理の直前に、操作者は、新たに接続を行いたいビデオカメラ5にリセット処理を指示する。本実施形態でのビデオカメラ5のリセット処理は、電源投入処理によって行われるので、第1の接続設定処理の直前に行われるリセット処理は、ビデオカメラ5の電源投入処理によって行われる。
【0053】
図6(b)は、第1の接続設定処理の開始直後に、操作者によってアレイアンテナ10の正面が、新たに接続したいビデオカメラ5の方向に向けられた状態を示している。第1の接続設定処理は、画像表示装置9の操作スイッチ18が押されることにより開始される。第1の接続設定処理中は、アレイアンテナ10の指向方向が正面方向に固定されるため、操作者は、新たに接続したいビデオカメラ5の存在する方向にアレイアンテナ10の正面を向ける必要がある。
【0054】
図6(c)は、画像表示装置9が、接続可能なビデオカメラの情報をビデオカメラ1とビデオカメラ5から収集する問合せ処理(図5のS5)を行っている状態を示している。接続可能なビデオカメラが複数台ある場合に、画像表示装置9の無線ユニット11における無線ユニット制御回路16は、各々のビデオカメラから、ID情報の他に、リセット処理が行われた時点からの経過時間を示す経過時間情報を収集する。無線ユニット制御回路16は、各々のビデオカメラから収集した経過時間情報が示す経過時間を比較し、経過時間が最も短いビデオカメラを接続相手として仮接続処理(図5のS6)を行う。この動作により、図6(a)でリセット動作が行われたビデオカメラ5が仮接続の相手として選択されることになる。
【0055】
図6(d)は、仮接続後に所定時間が経過し、ビデオカメラ5が接続先として選択され、画像表示装置9がビデオカメラ5と本接続を行っている状態を示している。この時、アレイアンテナ10の指向方向は、ビデオカメラ5の方向を向くように制御されている。上記手順により、ビデオカメラ1からビデオカメラ5への接続の切り換えが行われる。
【0056】
以上の方法により、同一方向に複数台のビデオカメラが存在する場合にも、リセット処理が行われた時点からの経過時間が最も短いビデオカメラを選択することで、所望のビデオカメラとの接続が可能となる。又、上記説明と異なり、接続設定処理の開始前にビデオカメラと画像表示装置9が接続されていない場合には、図6(b)の状態から接続設定処理が開始される。この場合、操作者がビデオカメラ5のリセット処理を指示し、ビデオカメラ5がリセット処理を行った後に、操作者が画像表示装置9の操作スイッチ18を押して画像表示装置9が接続設定処理を開始することで、画像表示装置9とビデオカメラ5が接続されることになる。
【0057】
図7、図8は、第2の同一方向接続設定処理の様子を示している。第2の同一方向接続設定処理では、仮接続を行ったビデオカメラが所望の接続相手ではない場合に、操作者が通信状態を劣化させて接続を切断した後に所望のビデオカメラが接続相手として選択される。図7、図8を用いて、ビデオカメラ1とビデオカメラ5が画像表示装置9から見て同じ方向に位置する場合に、画像表示装置9が、ビデオカメラ1と接続している状態からビデオカメラ5と接続するように接続を変更する場合を例として説明を行う。
【0058】
図7(a)は、第2の接続設定処理の直前の状態を示している。図示するように、ビデオカメラ1とビデオカメラ5が画像表示装置9から見て同一方向に存在する場合、前述したように、画像表示装置9はビデオカメラ1とビデオカメラ5のどちらとでも仮接続が可能である。本例では、画像表示装置9は、ビデオカメラ1と接続中であり、指向パターン21がビデオカメラ1の方向を向くようにアレイアンテナ10の指向方向が制御されている。この時、第1の同一方向接続設定処理とは異なり、ビデオカメラ1及びビデオカメラ5には何も行われない。
【0059】
図7(b)は、画像表示装置9の操作スイッチ18が押されて、接続設定処理が開始された後、操作者によってアレイアンテナ10の正面がビデオカメラ5の方向に向けられた状態を示している。この時、画像表示装置9は、接続設定処理の開始に伴い、ビデオカメラ1との切断処理を行った後、前回の接続時の接続相手であるビデオカメラ1との仮接続を行う。
【0060】
図7(c)は、仮接続中に操作者が通信環境を劣化させて接続を切断している状態を示している。操作者は、画像表示装置9の仮接続の相手を確認する。この時、前述したように操作者は、表示モニタ13を観察して、画像表示装置9が所望のビデオカメラと接続されているか否かの確認を行う。
【0061】
仮接続の相手が所望の相手ではない場合に操作者は、画像表示装置9のアレイアンテナ10を手で覆うこと等により通信環境を劣化させ、仮接続の相手の変更を画像表示装置9に指示する。この時、画像表示装置9の無線ユニット11における無線ユニット制御回路16は、受信強度の測定等により、通信環境が劣化しているか否かを判定しており、通信環境が劣化していると判定した場合、ビデオカメラ1に対する仮接続処理を中止する。この後、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(図5のS5)から処理を再開する。
【0062】
図8(a)は、仮接続の相手の変更を指示された画像表示装置9が、問合せ処理(図5のS5)を行った後、ビデオカメラ5を仮接続の相手として選択した状態を示している。無線ユニット制御回路16は、問合せ処理(図5のS5)において、接続可能なビデオカメラのID情報を収集し、収集したID情報の中から、前回の接続相手のID情報とは異なるID情報を選択し、選択したID情報を有するビデオカメラと仮接続処理を実行する。
【0063】
図8(b)は、ビデオカメラ5との仮接続の開始から所定時間が経過し、本接続に移行した状態を示している。この時、アレイアンテナ10の指向方向は、ビデオカメラ5の方向を向くように制御されている。上記手順により、ビデオカメラ1からビデオカメラ5への接続の切り換えが行われる。
【0064】
図9は、第3の同一方向接続設定処理の様子を示している。第3の同一方向接続設定処理では、電波強度の強いビデオカメラが接続相手として選択される。図9を用いて、第3の同一方向接続設定処理の説明を行う。具体的には、画像表示装置9は、問合せ処理(図5のS5)において、各ビデオカメラからの電波強度を測定し、電波強度の強いビデオカメラを接続相手として選択する。
【0065】
図9(a)は、第3の接続設定処理の直前の状態を示している。画像表示装置9とビデオカメラ1、ビデオカメラ5はいずれも未接続の状態である。
【0066】
図9(b)は、画像表示装置9の操作スイッチ18が押されて、接続設定処理が開始された後、操作者によってアレイアンテナ10の正面がビデオカメラ5の方向に向けられた状態を示している。画像表示装置9の無線ユニット11における無線ユニット制御回路16は、問合せ処理(図5のS5)を行い、この際に各ビデオカメラからの電波強度も測定する。接続可能なビデオカメラが複数台ある場合、無線ユニット制御回路16は、測定した電波強度の中で最も電波強度の強いビデオカメラを接続相手として仮接続処理を行う。この動作により、画像表示装置9により近いビデオカメラ5が仮接続の相手として選択されることになる。
【0067】
図9(c)は、ビデオカメラ5との仮接続の開始から所定時間が経過し、本接続に移行した状態を示している。この時、アレイアンテナ10の指向方向は、ビデオカメラ5の方向を向くように制御されている。上記手順により、接続設定処理では、画像表示装置9により近いビデオカメラ5が接続相手として選択されることになる。
【0068】
上述したように、本実施形態によれば、画像表示装置9が接続設定処理を開始してから完了するまでの期間にアレイアンテナ10の指向方向が所定の方向(本実施形態ではアレイアンテナ10の正面方向)に制御されるので、所定の方向に他の無線装置が存在する場合に、接続制御装置を介さずに他の無線装置と接続設定を行うことができる。又、接続制御装置を必要としないため、画像データ通信システムのコストを低減することができる。又、接続設定時に、操作者がアレイアンテナ10の指向方向を認識している状態で、接続相手の存在する方向を直接指定することが可能となるため、操作者は接続相手を直感的に把握することができ、設定ミスを低減することができる。
【0069】
又、画像表示装置9が接続設定処理を開始してから完了するまでの期間に、アレイアンテナ10の指向方向がアレイアンテナ10の正面方向に固定されるため、操作者は、接続相手の存在する方向にアレイアンテナ10の正面を向けることで接続相手を指定することができ、接続相手の指定が容易となる。
【0070】
又、第1の接続設定処理では、画像表示装置9から見て同じ方向に複数のビデオカメラが存在する場合、操作者が接続したいビデオカメラのリセット処理を行った後に、画像表示装置9が接続設定処理を開始することで、接続相手として所望のビデオカメラを選択することができる。
【0071】
又、第2の接続設定処理では、画像表示装置9から見て同じ方向に複数のビデオカメラが存在し、接続設定を行っているビデオカメラが所望の接続相手でなかった場合、操作者がアレイアンテナ10を手などで覆って画像表示装置9に接続相手の変更要求を通知し、接続相手を変更させることができる。
【0072】
又、第3の接続設定処理では、画像表示装置9から見て同じ方向に複数のビデオカメラが存在する場合、自動的に近くのビデオカメラを選択することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、無線通信で画像を送信する1台のセットトップボックスと、無線通信で画像を送信する2台のデジタルカメラと、無線伝送された画像を受信する通信アダプタが接続され、受信した画像をモニタに表示する1台のパーソナルコンピュータ(PC)とから成る画像データ通信システムに本発明を適用した場合を例に説明を行う。図10は、本実施形態による画像データ通信システムの構成を示している。まず、図10を用いて、画像データ通信システムの構成と動作を説明する。
【0074】
[構成]
図10に示す画像データ通信システムは、1台の無線セットトップボックス22と、2台のデジタルカメラ(デジタルカメラ26、デジタルカメラ30)と、通信アダプタ34が接続された1台パーソナルコンピュータ(PC) 37とにより構成されている。デジタルカメラ26とデジタルカメラ30は、撮像した画像データを通信データとして無線送信する装置であり、同じ構成を有する。通信アダプタ34は、本発明の無線装置の適用例である。
【0075】
PC37は、通信アダプタ34を介して、無線セットトップボックス22、デジタルカメラ26、デジタルカメラ30のいずれかと接続して無線通信を行い、受信した通信データから復元された画像データに基づく画像の表示を行う。
【0076】
無線セットトップボックス22は、セットトップボックス23、無線ユニット24、アンテナ25により構成されている。セットトップボックス23は、TVケーブルを介して入力されるTV信号をデコードし、所望のTVチャンネルの画像データを出力する。無線ユニット24は、セットトップボックス23から出力される画像データを通信データに変換し、アンテナ25を介して無線送信する。アンテナ25は無指向性アンテナである。
【0077】
デジタルカメラ26は、カメラユニット27、無線ユニット28、アンテナ29により構成されている。カメラユニット27は、撮像処理を行って画像データを出力する。無線ユニット28は、カメラユニット27からの画像データを通信データに変換してアンテナ29を介して無線送信する。アンテナ29は無指向性アンテナである。デジタルカメラ30は、カメラユニット31、無線ユニット32、アンテナ33により構成されている。デジタルカメラ30の構成は、デジタルカメラ26の構成と同じであるので説明を省略する。
【0078】
通信アダプタ34は、アレイアンテナ35、無線ユニット36により構成されている。アレイアンテナ35の構成は、第1の実施形態でのアレイアンテナ10の構成と同じであるので説明を省略する。無線ユニット36は、アレイアンテナ35と接続されており、アレイアンテナ35の指向性の制御と、無線セットトップボックス22及びデジタルカメラ26,30との接続処理と、接続後の無線セットトップボックス22及びデジタルカメラ26,30から送信される通信データの受信処理とを行う。無線ユニット36が受信した通信データは画像データに再構成され、PC37に送られる。PC37は、画像データに基づいて画像の表示を行う。
【0079】
本実施形態の画像データ通信システムは接続設定動作と撮像表示動作を行う。接続設定動作は、接続相手(接続対象)を選択して接続設定処理を行う動作である。操作者は通信アダプタ34の方向スイッチ(後述)若しくはPC37を用いて接続相手の方向を指示する。無線ユニット36は、指示された方向にアレイアンテナ35の指向方向を制御し、指示された方向に存在する接続相手との接続設定処理を行う。
【0080】
撮像表示動作は、接続相手から受信した画像データに基づく画像をPC37が表示する動作である。接続相手から無線送信された無線信号はアレイアンテナ35で電波として受信され、無線ユニット36で通信データに復調された後に画像データに再構成される。再構成された画像データはPC37に送られ、PC37のモニタに画像が表示される。撮像表示動作中は、無線信号の受信が最適に行われるように、接続相手に向けてアレイアンテナ35の指向性が制御される。
【0081】
操作者は、通信アダプタ34に設けられた方向スイッチ38又はPC37を操作することにより通信アダプタ34のアレイアンテナ35の指向方向を指示することができる。図11は、アレイアンテナ35の指向方向を操作者が指示するために通信アダプタ34に設けられた方向スイッチ38の構成例を示している。方向スイッチ38は、無線ユニット36に取り付けられており、操作者の指示に応じてアレイアンテナ35の指向方向を決定するために用いられる。図11に示すように、本実施形態では指向方向がA,B,C,Dの4方向であるとして説明を行う。
【0082】
方向スイッチ38は、各方向に対応した個別のスイッチ(SW-A〜SW-D)と、決定した方向を表示するために個別のスイッチ(SW-A〜SW-D)の近傍で点灯するLEDとにより構成されている。例えば、図10のように各装置が配置されている場合、無線セットトップボックス22若しくはデジタルカメラ26と接続する場合にはB方向がアレイアンテナ35の指向方向となり、デジタルカメラ30と接続する場合にはC方向がアレイアンテナ35の指向方向となる。B方向を指向方向として指示する場合、操作者はB方向に対応するスイッチ(SW-B)を押す。無線ユニット36内の無線ユニット制御回路16はスイッチ(SW-B)の押下げを検出し、B方向に対応するLEDを点灯することで指向方向の表示を行う。
【0083】
図12は、アレイアンテナ35の指向方向を指示するためにPC37がモニタに表示する指向方向の表示例を示している。操作者は、PC37を操作して指向方向を指示する。指示内容はPC37から無線ユニット36に伝えられ、アレイアンテナ35の指向方向が決定される。指向方向の詳細や指示方法については、公知であるので、説明を省略する。
【0084】
図13は、通信アダプタ34の構成を示している。図示するように、通信アダプタ34は、アレイアンテナ35、無線ユニット36により構成されている。アレイアンテナ35は、第1の実施形態のアレイアンテナ10と同等であるので、説明を省略する。無線ユニット36は、第1の実施形態の無線ユニット11に方向スイッチ38を追加した構成となっている。方向スイッチ38は、無線ユニット制御回路16に接続されており、操作者が方向スイッチ38の操作によって接続設定時のアレイアンテナ35の指向方向を指示することが可能である。方向スイッチ38によって指示された方向は、無線ユニット制御回路16を介して位相制御回路17に伝えられ、位相制御回路17によって、アレイアンテナ35の指向方向が、指示された方向に制御される。
【0085】
図14は、接続設定処理でのアレイアンテナ35の指向パターンの制御の内容を示している。本実施形態では、指向方向が4方向であるため、指向角(半値角)が約90度に設定される。図14は、接続設定処理でのアレイアンテナ35の指向方向としてB方向が選択されている場合を示している。この時の指向パターン40は、B方向に指向角(半値角)が約90度に設定されている。この場合、無線セットトップボックス22若しくはデジタルカメラ26が接続相手として指定されることになる。
【0086】
[動作]
図15と図16は、接続設定処理における通信アダプタ34の無線ユニット制御回路16の動作を示している。本実施形態でPC37は、接続設定処理で決定された接続相手の種類(機種)に応じて実行(起動)するアプリケーションを決定する接続先主導動作モードと、実行中のアプリケーションに応じて接続相手の種類を選択するアプリケーション主導動作モードとの2種類の動作モードを持っている。各装置が図14に示したように配置されている場合を例に、各動作モードにおける接続設定処理について、図15と図16を用いて説明を行う。
【0087】
図15は、接続相手の種類に応じて実行するアプリケーションが決定される接続先主導動作モードでの無線ユニット制御回路16の動作を示している。以下、各装置が図14に示したように配置され、デジタルカメラ26が接続相手となる場合を例として説明を行う。又、アレイアンテナ35の指向方向の指示は、方向スイッチ38の操作により行うこととする。又、PC37は、複数種類の接続相手に対応した複数のアプリケーションを有することとする。
【0088】
PC37からの指示で接続設定処理が開始される(S10)と、無線ユニット制御回路16は最初に指向方向設定処理(S11)を実行する。指向方向設定処理(S11)は、操作者による方向スイッチ38の操作を検出し、指示された方向にアレイアンテナ35の指向を向ける処理である。無線ユニット制御回路16は、方向スイッチ38から出力される信号に基づいて、操作者が指示した方向を検出し、検出した方向を位相制御回路17に通知する。位相制御回路17は、無線ユニット制御回路16から通知された方向にアレイアンテナ35の指向方向を制御する。図14に示すように、デジタルカメラ26はB方向に位置するので、方向スイッチ38のスイッチSW-Bが選択される。その結果、アレイアンテナ35の指向パターンは図14の指向パターン40に設定される。
【0089】
指向方向設定処理(S11)が終了すると、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S12)を実行する。問合せ処理(S12)では、接続可能な装置から、装置毎に設定されているID情報等の、接続設定処理に使用する情報の収集が行われる。アレイアンテナ35の指向方向に接続相手が存在する場合、無線ユニット制御回路16は仮接続処理(S13)を実行する。問合せ処理(S12)中、接続相手が検出できない場合、問合せ処理(S12)が継続して行われる。
【0090】
仮接続処理(S13)では、指向パターン40を維持したまま、デジタルカメラ26との通信が行われる。仮接続処理(S13)での接続相手の情報が無線ユニット制御回路16からPC37に送られ、PC37のモニタに接続相手の情報が表示される。PC37のモニタに表示された情報を確認した操作者により本接続を行うか否かの判断が行われ、判断結果がPC37に入力されると、PC37はその判断結果を無線ユニット制御回路16に通知する。
【0091】
無線ユニット制御回路16は、操作者による判断結果を受け取ると、接続装置確認処理(S14)を実行する。接続装置確認処理(S14)では、無線ユニット制御回路16は、操作者による判断結果を確認し、その内容に応じて次の処理内容を決定する。操作者による判断結果が、本接続を行うこと(OK)を示している場合、無線ユニット制御回路16は本接続移行処理(S15)を実行する。
【0092】
操作者による判断結果が、別の装置と接続すること(NG)を示している場合、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S12)を再度実行する。問合せ処理(S12)が再度実行される場合、次の接続相手は無線セットトップボックス22となる。複数の接続相手の候補が存在する場合、所定の順番で接続相手が順次選択されることになる。
【0093】
本接続移行処理(S15)では、無線ユニット制御回路16は、指向パターン40の指向方向を接続中のデジタルカメラ26に向けて絞る本接続動作への移行を位相制御回路17に指示する。本接続移行処理(S15)の後、無線ユニット制御回路16は接続設定処理を終了する(S16)。無線ユニット制御回路16は、接続設定処理の終了後、撮像表示処理を実行する。
【0094】
PC37は、操作者により本接続を行うか否かの判断が行われた後、操作者が選択した装置に適合するアプリケーションソフトウェア(以下、アプリソフトと記載)の起動を行う。例えば、デジタルカメラ26が接続相手に選択された場合、PC37はデジタルカメラ26のID情報に基づいて、接続相手がデジタルカメラであることを認識する。続いて、PC37は、デジタルカメラに関連付けられたデジタル写真用ソフトウェアを起動する。上記の処理を行うため、PC37は、装置のID情報と装置の種類との対応関係及び装置の種類と起動するアプリソフトとの対応関係をテーブル等で記憶している。
【0095】
図16は、実行中のアプリケーションに応じて接続相手の種類が決定されるアプリケーション主導動作モードでの無線ユニット制御回路16の動作を示している。以下、各装置が図14に示したように配置され、デジタルカメラ26が接続相手となる場合を例として説明を行う。又、アレイアンテナ35の指向方向の指示は、PC37の操作により行うこととする。又、PC37は、複数種類の接続相手に対応した複数のアプリケーションを有することとする。
【0096】
PC37では、デジタルカメラ関連のアプリソフトが実行中であるとする。アプリソフトからの接続開始の指示でデジタルカメラとの接続設定処理が開始される(S17)。接続設定処理が開始されると、最初に指向方向設定処理(S18)が行われる。指向方向設定処理(S18)は、操作者により設定された方向にアレイアンテナ35の指向を向ける処理である。操作者による指向方向の設定は、図12を用いて説明したように、PC37を介して行われる。無線ユニット制御回路16は、PC37から出力される信号に基づいて、操作者が指示した方向を検出し、検出した方向を位相制御回路17に通知する。位相制御回路17は、無線ユニット制御回路16から通知された方向にアレイアンテナ35の指向方向を制御する。図14に示すように、デジタルカメラ26はB方向に位置するので、PC37上でB方向が指示される。その結果、アレイアンテナ35の指向パターンは図14の指向パターン40に設定される。
【0097】
指向方向設定処理(S18)が終了すると、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S19)を実行する。問合せ処理(S19)では、接続可能な装置から、装置毎に設定されているID情報等の、接続設定処理に使用する情報の収集が行われる。実行中のアプリソフトがデジタルカメラ関連のアプリソフトであるため、デジタルカメラに限定した接続が行われる。具体的には、問合せ処理(19)の過程で無線ユニット制御回路16はデジタルカメラのID情報だけを収集し、デジタルカメラだけを仮接続の相手として選択する。
【0098】
接続相手となる装置の種類は、アプリソフトが接続開始を指示した時点で、アプリソフトの種類に応じて決定される。本説明では、デジタルカメラ関連のアプリソフトが接続開始を指示したため、接続相手となる装置はデジタルカメラとなる。PC37は、実行中のアプリソフトの情報を無線ユニット制御回路16へ出力する。無線ユニット制御回路16は、PC37から出力された情報に基づいて、実行中のアプリソフトがデジタルカメラ関連のアプリソフトであることを認識する。続いて、無線ユニット制御回路16は、デジタルカメラ関連のアプリソフトに関連付けられたデジタルカメラを接続相手として認識し、デジタルカメラのID情報だけを収集する。上記の処理を行うため、無線ユニット制御回路16は、アプリソフトの種類と接続相手になる装置の種類との対応関係及び装置の種類と装置のID情報との対応関係をテーブル等で記憶している。
【0099】
B方向にはデジタルカメラはデジタルカメラ26しかないため、自動的にデジタルカメラ26が仮接続の相手として選択される。続いて、無線ユニット制御回路16は仮接続処理(S20)を実行する。問合せ処理(S19)の間、実行中のアプリソフトに対応する種類の接続相手が検出できない場合、問合せ処理(S19)が継続して行われる。
【0100】
仮接続処理(S20)では、指向パターン40を維持したまま、デジタルカメラ26との通信が行われる。問合せ処理(S19)で複数台のデジタルカメラが見つかった場合、仮接続処理(S20)での接続相手の情報が無線ユニット制御回路16からPC37に送られ、PC37のモニタに接続相手の情報が表示される。PC37のモニタに表示された情報を確認した操作者により本接続を行うか否かの判断が行われ、判断結果がPC37に入力されると、PC37はその判断結果を無線ユニット制御回路16に通知する。
【0101】
無線ユニット制御回路16は、操作者による判断結果を受け取ると、接続装置確認処理(S21)を実行する。問合せ処理(S19)で複数台のデジタルカメラが見つかった場合、接続装置確認処理(S21)では、無線ユニット制御回路16は、操作者による判断結果を確認し、その内容に応じて次の処理内容を決定する。操作者による判断結果が、本接続を行うこと(OK)を示している場合、無線ユニット制御回路16は本接続移行処理(S22)を実行する。
【0102】
操作者による判断結果が、別の装置と接続すること(NG)を示している場合、無線ユニット制御回路16は問合せ処理(S19)を再度実行する。なお、問合せ処理(S19)で見つかったデジタルカメラが1台だけである場合、仮接続処理(S20)での接続相手の情報はPC37に通知されず、操作者により本接続を行うか否かの判断は行われず、本接続移行処理(S22)が実行される。図14の状態の場合、B方向に存在するデジタルカメラはデジタルカメラ26だけなので、本接続移行処理(S22)が実行される。
【0103】
本接続移行処理(S22)では、無線ユニット制御回路16は、指向パターン40の指向方向を接続中のデジタルカメラ26に向けて絞る本接続動作への移行を位相制御回路17に指示する。本接続移行処理(S22)の後、無線ユニット制御回路16は接続設定処理を終了する(S23)。無線ユニット制御回路16は、接続設定処理の終了後、撮像表示処理を実行する。
【0104】
上述したように、本実施形態によれば、異なる種類の装置(電子カメラとセットトップボックス等)と通信アダプタ34が接続可能な場合、接続相手が決定された後、接続相手の種類に対応するアプリケーションを動作させることが可能となり、利便性が向上する。又、接続設定時、同じ方向に機種の異なる複数の装置(電子カメラとセットトップボックス等)が存在する場合に、通信アダプタ34が動作中のアプリケーションに適合する装置を接続相手として選択する(例えば、PC37でフォトビューアーが動作中だった場合、電子カメラを選択する)ことが可能となり、利便性が向上する。
【0105】
又、接続設定時、画像表示装置9から見て異なる方向に複数の装置(電子カメラとセットトップボックス等)が存在する場合、操作者によって方向スイッチ38又はPC37の操作によって指示された方向にアレイアンテナ35の指向方向を設定して接続設定処理を行うことで、所望の装置と接続することができる。
【0106】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の説明では、接続設定時、アレイアンテナの指向方向はアレイアンテナの正面方向に制御されるが、これに限らず、操作者が認識可能な方向であればよい。
【符号の説明】
【0107】
1,5・・・ビデオカメラ、2,6・・・撮像ユニット、3,7,11,24,28,32,36・・・無線ユニット、4,8,25,29,33・・・アンテナ、9・・・画像表示装置、10,35・・・アレイアンテナ(可変指向性アンテナ)、12・・・表示ユニット、13・・・表示モニタ、14・・・高周波回路(生成部)、15・・・ベースバンド回路(生成部)、16・・・無線ユニット制御回路(接続設定部、判定部)、17・・・位相制御回路(アンテナ制御部)、18・・・操作スイッチ、19・・・画像処理回路、20・・・表示ユニット制御回路、22・・・無線セットトップボックス、23・・・セットトップボックス、26,30・・・デジタルカメラ、27,31・・・カメラユニット、34・・・通信アダプタ、37・・・PC(方向受付部、処理部)、38・・・方向スイッチ(方向受付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向特性が可変な可変指向性アンテナと、
接続設定処理が完了する前の他の無線装置から送信されて前記可変指向性アンテナで受信された電波から前記接続設定処理に使用する制御情報を生成し、前記接続設定処理が完了した前記他の無線装置から送信されて前記可変指向性アンテナで受信された電波からデータ処理用のデータを生成する生成部と、
前記制御情報から識別される前記他の無線装置に対して前記接続設定処理を行う接続設定部と、
前記接続設定部が前記接続設定処理を開始してから完了するまでの期間に前記可変指向性アンテナの指向方向を所定の方向に制御するアンテナ制御部と、
を有する無線装置。
【請求項2】
通信環境が劣化しているか否かを判定する判定部を更に有し、
前記接続設定部は、前記他の無線装置に対して前記接続設定処理を行っている間に、前記判定部により、前記通信環境が劣化していると判定された場合、前記他の無線装置に対する前記接続設定処理を中止する請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記接続設定部は、第1の無線装置に対する前記接続設定処理を中止した場合、前記第1の無線装置とは異なる第2の無線装置に対する前記接続設定処理が完了するまでは、前記第1の無線装置に対する前記接続設定処理を禁止する請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記接続設定部は、前記制御情報から複数の他の無線装置が識別された場合、前記制御情報に基づいて、他の無線装置がリセットされたときからの経過時間を識別し、前記経過時間が短い他の無線装置に対して優先して前記接続設定処理を行う請求項1に記載の無線装置。
【請求項5】
前記接続設定部は、前記制御情報から複数の他の無線装置が識別される場合、当該複数の他の無線装置から受信した電波の電波強度が最も強い無線装置に対して前記接続設定処理を行う請求項1に記載の無線装置。
【請求項6】
前記可変指向アンテナの指向方向の指針となる方向情報を操作者から受け付ける方向受付部を更に有し、
前記アンテナ制御部は、前記可変指向性アンテナの指向方向を前記方向情報が示す方向に制御する請求項1に記載の無線装置。
【請求項7】
前記生成部で生成された前記データを処理する複数のアプリケーションのいずれかを起動して前記データを処理する処理部を更に有し、
前記処理部は、前記接続設定処理が行われた前記他の無線装置に対応したアプリケーションを起動する請求項1に記載の無線装置。
【請求項8】
前記生成部で生成された前記データを処理する複数のアプリケーションのいずれかを起動して前記データを処理する処理部を更に有し、
前記接続設定部は、前記制御情報から複数の他の無線装置が識別された場合、前記処理部が起動したアプリケーションに対応した他の無線装置に対して前記接続設定処理を行う請求項1に記載の無線装置。
【請求項9】
前記アンテナ制御部は、前記可変指向性アンテナの指向方向を所定の方向に制御すると共に前記可変指向性アンテナの指向特性の広がりを所定の範囲内に制御する請求項1に記載の無線装置。
【請求項10】
前記アンテナ制御部は、前記可変指向性アンテナの指向方向を、前記可変指向性アンテナが配置された平面に対して垂直な方向に制御する請求項1に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−93804(P2013−93804A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236022(P2011−236022)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】