説明

無線認識によってラボ用自動分析装置内の液体容器を追跡するためのシステム

システム内で使用される容器および液体容器、ならびにそれらの内容物の識別に無線認識(RFID)タグおよび無線認識(RFID)読取装置を利用するラボ用分析装置の自動化のためのシステム。ISO14443またはISO15693またはISO18000の指針に適合する無線認識タグは、たとえば試薬容器、試料容器、およびマイクロプレートなどの対象物上に配置される。これらのタグは、RFID読取装置の可動アンテナまたはRFID読取装置の固定アンテナによって読み取られ、書き込まれ得る。RFIDタグの読み取りおよびRFIDタグへの書き込みは、ソフトウエアによって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラボ用自動分析装置を利用するシステムに関し、より詳細には、生物試料および試薬の容器の識別を必要とするラボ用自動分析装置を利用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラボ用自動分析装置用の試薬および他の消耗品の識別の実施は、バーコード技術を使用してきた。バーコードは、たとえば試薬容器、たとえば試験管などの試料容器、および試験管ラックなどの対象の物品に取り付けられ、それら物品に関連付けられた情報を識別および追跡する目的でバーコード読取装置によって選択的に走査されている。
【0003】
バーコード技術には、ラボラトリで使用する自動分析装置の最適で効率的なアーキテクチャを妨げるいくつかの制約がある。バーコードの読み取りには、バーコード読取装置からバーコードにかけて直接見通せることが必要になる。さらに、バーコードは、通常、試薬容器または試験管の表面の大部分を占有する。バーコードがそのような広い表面積を占有するため、試薬容器および試料容器は、遠く離して分離されねばならず、その結果、試薬容器および試料容器は、分析装置の広い面積を占めるようになる。分析装置の広い面積の使用による別の弊害は、たとえばピペットおよび冷凍設備などの吸引装置の可動域が、著しく増大されねばならないことである。バーコード技術のさらに別の弊害は、バーコード読取装置は様々な被写界深度を必要とするため、複雑性が増したバーコード読取装置が使用されねばならないことである。バーコードのサイズならびに試薬容器および試料容器の表面は、容器に結合され得るデータの量を限定する。バーコードは、試薬または試料の量における、すなわち、残存する試験数における変更、または試薬容器が開封された後の試薬の搭載時の有効期限の変更を示す(account for)ように更新され得ない。さらに、バーコード読取装置の窓の洗浄および位置合わせが、現場で報告されるバーコード読み取り問題の約半数を占めている。
【0004】
無線認識(これ以降代替的に「RFID」と称される)技術は、分析装置のより効率的なアーキテクチャを向上させるために、バーコードおよびバーコード読取装置の代用品として使用され得る。RFIDタグが、試薬容器の表面の小さい部分に配置され、RFID読取装置に近接近して読み取られ得るため、分析装置の必要面積が最小限に抑えられ、さらにたとえばピペットおよび冷凍設備などの吸引装置に必要とされる可動域が最小限に抑えられる。RFIDタグは、通常、バーコードの何倍もの情報を含むことができるシリコンベースのメモリチップを利用する。RFIDタグは、分析装置、環境、および試薬容器に関する情報で書き込みおよび更新され得、それによって分析装置の機能の向上、加工、流通過程の管理の向上、消費者に対する安全性の向上がもたらされる。RFIDタグは、幅広い範囲の環境条件において読み取り可能であり、そのため、バーコードの洗浄および位置合わせは必要とされない。
【0005】
ラボ用自動分析装置の環境においてRFIDタグを利用するための試みがいくつかなされてきた。たとえば米国特許第6,879,876号明細書、米国特許公開第2004/0258565号明細書、米国特許公開第2005/0019943号明細書、米国特許公開第2005/0036907号明細書、米国特許公開第2005/0106747号明細書、米国特許公開第2005/0186114号明細書、国際公開第2004/044824号パンフレット、および国際公開第2005/024385号パンフレットを参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,879,876号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2004/0258565号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2005/0019943号明細書
【特許文献4】米国特許公開第2005/0036907号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2005/0106747号明細書
【特許文献6】米国特許公開第2005/0186114号明細書
【特許文献7】国際公開第2004/044824号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2005/024385号パンフレット
【特許文献9】米国特許第4,735,778号明細書
【特許文献10】米国特許公開第2005/0242963号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「RFID Traceability;A Multilayer Problem」、Glidas Avoine and Philippe Oechslin、Ecole Polytechnique Federale De Lausanne、2005年
【非特許文献2】ISOプロトコル14443
【非特許文献3】ISOプロトコル15693
【非特許文献4】ISOプロトコル18000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
試料および試薬に関するデータを更新するためのシステムに対する要望が存在する。自動システムの故障時、1つの自動システムから別のシステムへの試薬の移行を可能にするシステムに対する要望が存在する。患者のデモグラフィック(demographic of patient)の更新を可能にする自動システムに対する要望が存在し、それによって多数の生物試料の分析結果が、生物試料を提供するこうした患者に関連付けられた様々な統計値に相互に関連付けられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、システム内で使用される容器および液体容器、ならびにそれらの内容物の識別に無線認識(RFID)タグおよび無線認識(RFID)読取装置を利用するラボ用分析装置の自動化のためのシステムを提供する。ISO14443またはISO15693またはISO18000の指針に適合する無線認識タグは、たとえば試薬容器、試料容器、およびマイクロプレートなどの対象物上に配置される。これらのタグは、RFID読取装置の可動アンテナまたはRFID読取装置の固定アンテナによって読み取られ、書き込まれ得る。RFIDタグの読み取りおよびRFIDタグへの書き込みは、ソフトウエアによって制御される。
【0010】
1つの態様では、本発明のシステムは、複数の容器を備え、その各々は、容器上の適切な位置において容器に取り付けられた無線認識タグを有する。1つの実施形態では、システムは、少なくとも1つの可動式の無線認識読取装置を含む。無線認識読取装置が、容器に結合された無線認識タグからのデータを読み取るために、読取装置は、無線認識タグの近傍の位置に移動させられ、その結果、タグからの情報は、RFID読取装置によって読み取られたデータの完全性に悪影響を及ぼさない程度の、他の容器上の近接する無線認識タグからのノイズ量および干渉で読み取られ得る。この実施形態では、少なくとも1つのRFID読取装置が容器の中で移動するのを可能にするための伝動サブシステムが提供されねばならない。
【0011】
別の実施形態では、システムは、少なくとも1つの固定の無線認識読取装置を含む。少なくとも1つの無線認識読取装置が、容器に結合された無線認識タグからのデータを読み取るために、容器は、少なくとも1つの無線認識読取装置の近傍の位置、好ましくは該無線認識読取装置に位置合わせするように移動させられ、その結果、タグからの情報は、RFID読取装置によって読み取られたデータの完全性に悪影響を及ぼさない程度の、他の容器上の近接する無線認識タグからのノイズ量および干渉で読み取られ得る。この実施形態では、少なくとも1つの読取装置が容器の中で移動するのを可能にするための伝動サブシステムは提供される必要がない。
【0012】
上記の実施形態を実施するために少なくとも2つの方法が存在する。第1の方法によれば、試料用容器および試薬用容器が、少なくとも1つのRFID読取装置の近傍の位置に運ばれ得、それによって容器上のRFIDタグが、少なくとも1つのRFID読取装置によって読み取られ得る。第2の方法によれば、印刷回路基板上の各々の配線(trace)である各々のアンテナが、RFID読取装置の別個のアンテナとして機能する。言い換えれば、RFID読取装置は、複数のチャンネルを有し、各々のチャンネルは別個のアンテナを有する。アンテナの長さは、使用される無線周波数との関係を決定付けるので重要である。アンテナの長さは、たとえば半波長、1/4波長などのいくつかの多波長の無線周波エネルギーに対応する。
【0013】
本発明のシステムを実施するために、無線認識タグが容器の最も低い部分に配置され得る。カプセルに入れられた無線認識タグを容器の最も低い部分に配置することが、しばしば望ましい。
【0014】
別の態様では、上記で説明されたシステムが、容器に取り付けられた無線認識タグからのデータを読み取ることができる方法が提供される。
【0015】
本明細書で説明されるシステムは、試料識別子または試薬識別子に加えて、容器に関する読み取り情報を集約する能力を提供する。試料容器の場合、試料識別子以外の読み取り情報は、(a)患者のデモグラフィック、(b)試料が入手された年月日、(c)試料で実施される試験、(d)試料のタイプ、(e)容器のタイプなどを含むことができる。システムは、生物試料の完全性に影響を及ぼすことがある搬送および保管状態を追跡する能力を提供する。さらに、システムは、たとえば実施される遠心分離作動、実施される吸引作動、吸引装置の先端によって持ち越された材料による試料の潜在的汚染または希釈、試料の温度条件、試料の凍結融解条件などの情報を書き込むために使用され得る。
【0016】
試薬容器の場合、試薬識別子以外の読み取り情報は、(a)試薬の較正データ、(b)試薬のロット番号、(c)試薬のシリアル番号、(d)試薬の成分の識別、(e)分析の識別、(f)試薬の有効期限、(g)キットのサイズ、(h)パッケージ挿入情報などを含むことができる。システムは、試薬の完全性に影響を及ぼすことがある搬送および保管状態を追跡する能力を提供する。さらに、システムは、(a)残存する試験、(b)搭載時の有効期限(容器が開封された後)、(c)実施される吸引作動、および(d)吸引装置の先端によって持ち越された材料による試料および試薬の潜在的汚染または希釈などの情報を書き込むために使用され得る。
【0017】
マイクロプレートの場合、マイクロプレート識別子以外の読み取り情報は、(a)マイクロプレートの製造ロット番号、(b)マイクロプレートのシリアル番号、(c)マイクロプレート内の試薬の有効期限などを含むことができる。システムは、マイクロプレートの完全性に影響を及ぼすことがある搬送および保管状態を追跡する能力を提供する。さらに、システムは、(a)使用された年月日、(b)マイクロプレートの搭載時の有効期限(マイクロプレートが開封された後)などの情報を書き込むために使用され得る。
【0018】
RFIDシステムの使用は、見通しおよび空間的分離要件を解消することにより、(b)容器、液体容器およびマイクロプレート上の情報を読み取る(極限の環境における)信頼性を向上させることにより、バーコード技術で可能であったであろうものよりも小型の物理的アーキテクチャを可能にする。RFIDシステムの使用はまた、容器の適切な物理的配向も可能にし、すなわち、システムは、所与の容器、液体容器、マイクロプレートが使用前に適切な場所にあることを確実にする。
【0019】
無線認識は、容器、液体容器、またはマイクロプレート上の情報量を増加させるために使用され得る。さらに、無線認識タグは更新され得るが、バーコードは更新され得ない。さらに、情報はデータベースに直接リンクされ得、それによって(a)システム内の自動分析装置の機能の向上、(b)加工、流通過程の管理の向上、すなわち現在および現在までの過去の時点において所与の容器によって占有された場所に関する情報の向上、および(c)正確な分析結果を保証することによる患者に対する安全性の向上がもたらされる。こうした情報は、分析装置、環境、すなわち容器の内容物の搬送、保管および使用中に経験される環境に関する情報を含む。
【0020】
システムはまた、吸引または分注中、明確に試料を確認する、または試薬を識別する能力も提供し、それによって現在吸引されているまたは分注されている試料および試薬を除いた試料および試薬にシステムのオペレータを物理的にアクセスさせることが可能になる。現在吸引されているまたは分注されている試料または試薬への物理的アクセスは、オペレータの安全を確保するためにオペレータに対して禁止されねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】2つの試料容器、すなわち試料管を保持する試料容器運搬装置の断面図である。無線認識タグは、試料管の最も低い端部に取り付けられている。
【図2】3つの試薬容器を保持する試薬容器運搬装置を示す側面図である。無線認識タグは、試薬容器の最も低い端部に取り付けられている。図示された試薬容器の1つの内容物は、臨床化学分析に使用される。図示された試薬容器の2つの内容物は、免疫学的検定に使用される。
【図3】マイクロプレートを示す斜視図である。無線認識タグは、マイクロプレートの基板に取り付けられている。
【図4】図1に示されたタイプの試料容器、図2に示されたタイプの試薬容器、および図3に示されたタイプのマイクロプレートを保管およびステージングするためのシステムの領域の一部分の上部平面図である。
【図5】ステッピングモータ、歯車、歯車軸、親ねじ、および可動式ロッドを備える伝動システムの上部平面図である。図示されたシステムは、キャリッジ上に取り付けられた無線認識読取装置を平面内の2方向に移動させることができる。
【図6】ステッピングモータ、駆動ベルト、滑車、親ねじ、および可動式ロッドを備えるシステムの上部平面図である。図示されたシステムは、キャリッジ上に取り付けられた無線認識読取装置を平面内の2方向に移動させることができる。
【図7】無線認識読取装置アンテナの配列を有する印刷回路基板の上部平面図である。図7に示された印刷回路基板は、図4に示されたシステムの領域の部分と共に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される、「無線認識」、すなわちRFIDという表現は、電波を使用してたとえば生物試料用容器および生物試料を分析するための試薬用容器などの物体を自動的に識別する技術の総称である。最も一般的な識別方法は、物体を識別するシリアル番号および恐らくは物体またはその内容物に関する他の情報をアンテナに取り付けられたマイクロチップ上に格納することである。マイクロチップおよびアンテナは一緒にして、RFIDトランスポンダまたはRFIDタグと呼ばれている。アンテナは、マイクロチップが識別情報および他の情報をRFID読取装置に送信するのを可能にする。RFID読取装置は、RFIDタグから反射された(reflected back)電波をデジタル情報に変換し、次いでこのデジタル情報は、それを利用することが可能なコンピュータに伝えられ得る。
【0023】
本明細書で使用される、「無線認識システム」、すなわちRFIDシステムという表現は、アンテナを有するマイクロチップからなるRFIDタグ、およびアンテナを有するRFIDインテロゲータ(interrogator)、またはRFID読取装置を備えるもののことである。RFID読取装置は、電磁波を送出する。タグアンテナは、これらの電波を受信するように同調される。受動型RFIDタグは、読取装置によって作り出された場から電力を引き出し、その電力を使用してマイクロチップの回路を動かす。次いでマイクロチップは、受動型RFIDタグがRFID読取装置に返信する電波を調節し、RFID読取装置はRFID読取装置によって受信された電波をデジタルデータに変換する。
【0024】
本明細書で使用される、RFIDタグ内のマイクロチップは、「読み書き両用マイクロチップ」、「読み取り専用マイクロチップ」、または「追記型マイクロチップ」でよい。読み書き両用マイクロチップの場合、RFIDタグがRFID読取装置の範囲内にあるときに、情報がRFIDタグに追加され得、あるいは既存の情報が上書きされ得る。読み書き両用マイクロチップは、通常、上書きされ得ないシリアル番号を有する。追加のブロックデータが、RFIDタグが取り付けられた物品についての付加情報を格納するために使用され得る。こうしたRFIDタグは、データの上書きを防止するためにロックされ、あるいは所有者データの開示、または患者のプライバシーを損なうであろうデータの開示を防止するために暗号化され得る。読み取り専用マイクロチップは、製造プロセス時にそれら上に格納された情報を有する。読み取り専用マイクロチップ上の情報は、決して変更され得ない。追記型マイクロチップは、それらに1回だけ書き込まれたシリアル番号を有し、この情報はその後上書きされ得ない。
【0025】
本明細書で使用する、「能動型RFIDタグ」という表現は、送信機およびそれら自体の電源、通常は電池を有するもののことである。電源は、マイクロチップの回路を作動させ、信号をRFID読取装置に一斉送信するために使用される。「受動型RFIDタグ」は、電池を有さない。その代わり、受動型RFIDタグは、タグアンテナ内の電流を誘発する電磁波を送出するRFID読取装置から電力を引き出す。「半受動型タグ」は、マイクロチップの回路を作動させるために電池を使用するが、RFID読取装置から電力を引き出すことによって通信する。上記のタイプのいずれのRFIDタグも、本発明のシステムにおいて使用され得る。
【0026】
本明細書で使用する、「タグの衝突」という表現は、2つ以上のトランスポンダが同時に1つの信号を反射し、RFID読取装置を混乱させるときに生じるもののことである。タグを「単一化(singulate)」するためのアルゴリズムが使用され得る。
【0027】
本明細書で使用する、「RFID読取装置」または「読取装置」という用語は、RFIDタグと通信し、RFIDタグへおよびRFIDタグからのデータの転送を円滑に進めるための手段を提供する機能を有する装置を意味する。RFID読取装置によって実行される機能は、非常に高度な信号調節処理、パリティエラーチェック、および訂正を含むことができる。RFIDタグからの信号が正しく受信され、符号化されると、アルゴリズムが、信号が反復送信であるかどうかを決定するために適用され得、次いで、このアルゴリズムは送信を停止するようにRFIDタグを導くことができる。このタイプの問い合わせは、「コマンド応答プロトコル」として知られており、短時間で複数のRFIDタグを読み取るといった問題を防ぐために使用される。代替の技術には、特有の性質を有するRFIDタグを探し、次いで順にそれらに問い合わせするRFID読取装置を含む。単一のRFID読取装置または複数のRFID読取装置を使用することは、本発明の範囲内である。RFID読取装置は、単一のアンテナまたは複数のアンテナを有することができる。
【0028】
本発明での使用に適した市販の構成要素が、以下の表に記載される。
【表1】

【0029】
無線認識タグは、成形プロセス手段によって、または結合プロセスによって所与の構成要素、すなわち容器に永久的に取り付けられ得る。成形または結合によって取り付けられた無線認識タグは、再利用可能ではない。しかし、無線認識タグは、試薬容器、試料容器、またはマイクロプレートが破壊され、無線認識タグが再生されることを確実にすることにより、再利用可能にされ得る。
【0030】
無線認識タグの読み取りおよび無線認識タグの書き込みは、その全てが参照によって本明細書に組み込まれる、ISOプロトコル14443、15693、または18000、あるいは前述のISOプロトコルの組合せを用いて実施され得る。このようなプロトコルは、3層の通信モデルを利用し、それらは以下の通りである。
(a)アプリケーション層
(b)通信層
(c)物理層
3層の通信モデル、最初に通信層は、エラー検知、エラー訂正、識別認証、衝突回避などの機能をもたらす。こうした機能は、無線認識読取装置を無線認識タグと通信可能にするためのプロトコルの一部であるため、自動であると考えられ得る。
【0031】
アプリケーション層は、無線認識タグ内に含まれた情報を処理する。そのような情報は、以下の表の情報の少なくとも一部を含むことができる。
【表2】

【0032】
通信層は、RFID読取装置とRFIDタグが通信する方法を定義する。通信層は、それだけに限定されないが、衝突回避アルゴリズム、パリティチェックアルゴリズム、エラーチェックアルゴリズム、および識別認証アルゴリズムを含む。RFIDタグの一意識別子が認識された後、選択性を確保するために決定論プロトコルが使用され得る。決定論プロトコルの動作は、たとえば参照によって本明細書に組み込まれる「RFID Traceability;A Multilayer Problem」、Glidas Avoine and Philippe Oechslin、Ecole Polytechnique Federale De Lausanne、2005年に記載されている。
【0033】
物理層は、実際のインターフェースを定義し、少なくとも以下を規定する:無線周波数(たとえば13.56MHz、860MHz、960MHz)、変調、データ符号化、タイミングなど。
【0034】
本発明での使用に適した無線認識タグの記憶容量は、通常、約112から736バイトの範囲である。こうした量のバイトは、一般的なバーコードラベルのものを上回ることができる。(ISO14443またはISO15693またはISO18000で規定されるように)無線認識読取装置および他の無線認識タグは、4000バイトまでの記憶容量を維持することができる。
【0035】
本発明のシステムの作動詳細は、コンピュータによって制御され得る。さらに、一部のより高レベルのデータ完全性アルゴリズムが、実装され得る。より高レベルのデータ完全性アルゴリズムの一例は、複数のアンテナからの同一の無線認識タグの読み取りがエラーであることを示すものである。本発明での使用に適したより高レベルのアルゴリズムは、当業者に知られている。
【0036】
高い選択性は、読取装置と無線認識タグが近接近することを必要とする。さらに、金属または金属様の特性を示す材料(添着炭プラスチックなど)の使用は、金属が無線認識信号を妨害するため、システムにおいて回避されることが好ましい。
【0037】
図1〜図7は、試薬容器、試料容器、RFID読取装置用伝動サブシステム、および複数のRFID読取装置を含む印刷回路基板の様々な実施形態を示している。図1は、無線認識タグが試料容器に取り付けられ得る場合を示している。ここで図1を参照すると、ラック10は、試料容器14、たとえば試験管を保持するための複数のスロット12を有している。各々のスロット12は、弾性の把持装置16によって隣接するスロットから分離されている。各々の弾性の把持装置16は、管把持部16aおよび管把持部16bを備える。弾性の把持装置16は、1つの把持装置16の把持部16aが隣接する把持装置16の把持部16bに面するように配置される。試料容器、すなわち試験管を立ててしっかりと保持するために、試料容器14は把持装置16の把持部16aと隣接する把持装置16の把持部16bの間に挿入される。各々の弾性の把持装置は、通常、たとえば弾性ポリマー材料などの弾性材料から構築される。図1では、試料容器14は、管形状である。各々の無線認識タグ18が、各々の試料容器14の最も低い端部14aに取り付けられ、RFID読取装置(図示せず)によって容器14の下方から読み取られる。システムは、試料容器に取り付けられた(ISO14443またはISO15693またはISO18000に従って構築された)無線認識タグによって試料を識別および追跡することが可能でなければならない。上記で述べたように、無線認識は、試料識別子に加えて試料に関連する読み取り情報を集約する能力を提供する。情報は、(a)患者のデモグラフィック、(b)試料が入手された年月日、(c)試料で実施される試験、(d)試料のタイプ、(e)容器のタイプなどを含むことができる。無線認識はまた、試料の完全性に影響を及ぼすことがある搬送および保管状態を追跡するためにも使用され得る。さらに、無線認識は、たとえば試料で実施される遠心分離、実施される吸引作動、吸引装置の先端によって持ち越された材料による試料の潜在的汚染または希釈、試料の凍結融解歴などの情報を書き込むために使用され得る。無線認識はまた、吸引または分注中、明確に試料識別子を確認する能力も提供し、それによって現在吸引されているまたは分注されている試料および試薬を除いた試料および試薬にシステムのオペレータを物理的にアクセスさせることが可能になる。現在吸引されているまたは分注されている試料または試薬への物理的アクセスは、オペレータの安全を確保するためにオペレータに対して禁止されねばならない。
【0038】
図2は、無線認識タグが試薬容器に取り付けられ得る場合を示している。ここで図2を参照すると、試薬容器ホルダ20は、複数の試薬容器22、24、および26を保持している。図2では、試薬容器22は、平坦な底部を有する円筒ボトルの形状である。試薬容器22は、臨床化学分析のための試薬用として使用され得る。試薬容器24および26は、曲線状の底部を有する円筒ボトルの形状である。試薬容器24および26は、免疫学的検定のための試薬用として使用され得る。試薬容器26は、試薬容器24よりも低い高さを有する。容器22の最も低い端部は、参照番号22aによって示されており、容器24の最も低い端部は、参照番号24aによって示されており、容器26の最も低い端部は、参照番号26aによって示されている。無線認識タグ28a、28bおよび28cが、容器22の最も低い端部22a、容器24の最も低い端部24a、および容器26の最も低い端部26aにそれぞれ取り付けられ、RFID読取装置(図示せず)によって試薬容器22、24、および26の下方から読み取られる。図2では、試薬容器22、24、および26は、サブシステムによって支持され保持され、そのサブシステムは、ロッキング、すなわちアダプタ、プレート30、基板32a、下側部分32bおよび上側部分32cを含むホルダ、上側部分32cを支持するための垂直支持体33、その上に試薬容器が取り付けられ得るプラットフォーム34、プラットフォーム34用の少なくとも1つの垂直支持体35、座部36a、36bおよび36c、ならびに持ち上げハンドル38を含む。座部36a、36bおよび36cは、免疫学的検定のための試薬用の試薬容器が、図2に示されるサブシステムのプラットフォーム34にしっかりと、しかし取り外し可能に固定されることを可能にするように構築される。ホルダの下側部分32bおよび上側部分32cは、その中に形成された開口(図示せず)を有する。こうした開口は、臨床化学分析のための試薬用の試薬容器が、その中にしっかりと、しかし取り外し可能に挿入され得るような寸法のものである。基板32aは、少なくとも1つの支持体35を介してプラットフォーム34をロッキングプレート30に連結させる中間要素である。持ち上げハンドル38は、試薬容器を保持するサブシステムを図4に示される保管およびステージングシステムから導入および取り外す手段を提供する機能を有する。ロッキングプレート30は、基板32aおよびホルダの下側部分32bを図4に示される保管およびステージングシステムに固定する機能を有する。
【0039】
システムは、試薬容器に取り付けられた(ISO14443またはISO15693またはISO18000に従って構築された)無線認識タグによって試薬を識別および追跡することが可能でなければならない。上記で述べられたように、無線認識は、試薬識別子に加えて、試薬に関連する読み取り情報を集約する能力を提供する。情報は、較正データ、試薬のロット番号、試薬のシリアル番号、成分識別子、分析識別子、試薬の有効期限、キットのサイズ、パッケージ挿入情報などを含むことができる。無線認識はまた、試薬の完全性に影響を及ぼすことがある搬送および保管状態を追跡するためにも使用され得る。さらに、無線認識は、残存するテスト回数、搭載時の有効期限(容器が開封された後)、実施される吸引作動、吸引装置の先端によって持ち越された材料による試料の潜在的汚染または希釈などの情報を書き込むために使用され得る。無線認識はまた、吸引または分注中、明確に試薬識別子を確認する能力も提供し、それによって現在吸引されているまたは分注されている試料および試薬を除いた試料および試薬にシステムのオペレータを物理的にアクセスさせることが可能になる。現在吸引されているまたは分注されている試料または試薬への物理的アクセスは、オペレータの安全を確保するためにオペレータに対して禁止されねばならない。
【0040】
図3は、無線認識タグのマイクロプレートへの取り付けを示している。マイクロプレートは、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,735,778号明細書および米国特許公開第2005/0242963号明細書により詳細に記載されている。米国特許公開第2005/0242963号明細書の図7は、本明細書では図3に示されているマイクロプレート40の構造に類似する構造を有するマイクロプレートを示している。破線で示される無線認識タグ42が、マイクロプレート40に結合されている。図3では、マイクロプレート40は、基板46に取り付けられた上側部分44を有する。複数のくぼみ(wells)48が、マイクロプレート40の上側部分44内に形成される。マイクロプレート40の上側部分44は、基板46上に載っている。無線認識タグ42は、基板46に取り付けられる。無線認識タグ42は、マイクロプレート40の一部に埋め込まれる。代替の実施形態では、無線認識タグは、マイクロプレートの外面に取り付けられ得る。8、16、24、48、96、384、768、1536個などのくぼみを有するいずれのマイクロプレートも、本明細書で説明される本発明と共に使用するように企図されている。無線認識タグ42は、マイクロプレート40の下方から読み取られ得る。無線認識読取装置と無線認識タグの間の距離が小さいため、無線認識タグ42の配置はまた、マイクロプレート40の物理的配向を示す。たとえば無線認識タグ42が、常にマイクロプレート40上のA1位置に隣接して位置する場合、無線認識タグ42の読み取りは、マイクロプレート40が、位置A1がRFID読取装置上にあるように(すなわちマイクロプレートの左上角の位置に)配向されることを確実にする。システムは、マイクロプレート上の(ISO14443またはISO15693またはISO18000に従って構築された)無線認識タグによってマイクロプレートを識別および追跡することが可能でなければならない。無線認識は、マイクロプレート識別子に加えて、たとえば装填、分注などの分析ステップ、およびマイクロプレート中の試薬に関連する読み取り情報を集約する能力を提供する。情報は、マイクロプレートのロット番号、マイクロプレートのシリアル番号、マイクロプレートの有効期限などを含むことができる。無線認識はまた、マイクロプレートの完全性に影響を及ぼすことがある搬送および保管状態を追跡するためにも使用され得る。さらに、無線認識は、使用された年月日、搭載時の有効期限(容器が開封された後)などの情報を書き込むために使用され得る。
【0041】
図4は、試薬、試料、および他の供給物のための保管領域/ステージング領域50を示している。保管領域/ステージング領域50は、図1に示された試料容器、図2に示された試薬容器、および図3に示されたマイクロプレートの位置を提供する。マイクロプレート40は、保管領域/ステージング領域50の図の左側の適切な位置にあるように示されている。臨床化学分析のための試薬を含む試薬容器22は、図2により詳細に示されるように、ホルダの上側部分32cおよび下側部分32bの開口(図示せず)内に配置されている。免疫学的検定のための試薬を含む試薬容器24および26は、図2により詳細に示されるように、座部36cおよび36bにそれぞれ配置されている。生物試料を含む試料容器14は、図1により詳細に示されるように、ラック10のスロット12内に配置されている。使い捨てチップ用ホルダ54aおよび54bは、マイクロプレート52に隣接して位置している。使い捨てチップ用ホルダのさらなる場所は、54c、54d、54e、および54fで示されている。無線認識タグは、保管領域50下方の様々な位置で読み取られ得る。
【0042】
図5および図6は、無線認識タグを読み取るために無線認識読取装置ヘッドを移動させるためのシステムを示している。図5では、X−Y軸受キャリッジ72上に取り付けられた無線認識読取装置ヘッド70は、X軸に平行な方向およびY軸に平行な方向に伝動システムによって移動され得、その伝動システムは、モータ74aおよび74b、歯車76a、76b、76c、76d、76e、76f、76g、76h、76i、76j、76k、76l、76m、および76n、歯車軸78a、78b、78c、および78d、親ねじ80a、80b、80c、および80d、ならびに可動式ロッド82aおよび82bを備える。親ねじ80a、80b、80c、および80dは、ねじ切りされている。可動式ロッド82aおよび82bはねじ切りされていない。図5に示されるように、歯車はかさ歯車であるが、他のタイプの歯車が使用されてもよい。ナット84aおよび84cは、無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72が、親ねじ80aおよび80bが伝動システムによって回転させられたときにX軸に平行な方向に可動式ロッド82aと共に移動することを可能にするように機能する。ナット84bおよび84dは、無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72が、親ねじ80cおよび80dが伝動システムによって回転させられたときにY軸に平行な方向に可動式ロッド82bと共に移動することを可能にするように機能する。ナット84a、84b、84c、および84dは、それらが必要に応じて親ねじ80a、80b、80c、および80dのねじ山上を移動し、必要に応じて親ねじ80a、80b、80c、および80d上のそれらの適切な位置で不動の状態を維持することを可能にするようにねじ切りされる。軸受け86a、86b、86c、および86dは、それぞれ親ねじ80a、80b、80c、および80dを支持し、誘導し、それらの摩擦を低減するように機能する。図5に示されるように、無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をX軸に平行な方向に移動させるための親ねじ80aおよび80b、ならびに可動式ロッド82aは、無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をY軸に平行な方向に移動させるための親ねじ80cおよび80d、ならびに可動式ロッド82bの上方に配置されている。
【0043】
無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をX軸に平行な方向に移動させるために、モータ74aが作動される。モータ74aは、ステッピングモータでよい。モータ74aのシャフトが、歯車76kを回転させ、回転する歯車76kが歯車76jおよび76lを回転させる。歯車76jおよび76lの回転は、それぞれ歯車軸78aおよび78bを回転させる。歯車軸78aおよび78bの回転は、それぞれ歯車76iおよび76mの回転を引き起こす。歯車76iおよび76mの回転は、それぞれ歯車76hおよび76nを回転させる。歯車76hおよび76nの回転は、親ねじ80aおよび80bを回転させ、それによって可動式ロッド82aを支持するナット84aおよび84cが、無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をX軸に平行な方向に移動させる。無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をY軸に平行な方向に移動させるために、モータ74bが作動される。モータ74bは、ステッピングモータでよい。モータ74bのシャフトが、歯車76dを回転させ、回転する歯車7dkが歯車76cおよび76eを回転させる。歯車76cおよび76eの回転は、それぞれ歯車軸78cおよび78dを回転させる。歯車軸78cおよび78dの回転は、それぞれ歯車76bおよび76fの回転を引き起こす。歯車76bおよび76fの回転は、それぞれ歯車76aおよび76gを回転させる。歯車76aおよび76gの回転は、親ねじ80cおよび80dを回転させ、それによって可動式ロッド82bを支持するナット84bおよび84dが、無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をY軸に平行な方向に移動させる。無線認識読取装置ヘッド70を支えるX−Y軸受キャリッジ72をX軸およびY軸に平行な方向に適切に移動させることにより、無線認識読取装置ヘッド70は、無線認識読取装置ヘッド70が所望の無線認識タグを読み取ることを可能にするように配置され得る。
【0044】
図6では、X−Y軸受キャリッジ92上に取り付けられた無線認識読取装置ヘッド90が、X軸に平行な方向およびY軸に平行な方向に伝動システムによって移動され得、その伝動システムは、ステッピングモータ94aおよび94b、駆動ベルト96a、96b、滑車98a、98b、98c、および98d、親ねじ100a、100b、100c、および100d、ならびに可動式ロッド102aおよび102bを備える。親ねじ100a、100b、100c、および100dは、ねじ切りされている。可動式ロッド102aおよび102bはねじ切りされていない。ナット104aおよび104cは、無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92が、親ねじ100aおよび100bが伝動システムによって回転させられたときにX軸に平行な方向に可動式ロッド102aと共に移動することを可能にするように機能する。ナット104bおよび104dは、無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92が、親ねじ100cおよび100dが伝動システムによって回転させられたときにY軸に平行な方向に可動式ロッド102bと共に移動することを可能にするように機能する。ナット104a、104b、104c、および104dは、それらが必要に応じて親ねじ100a、100b、100c、および100dのねじ山上を移動し、必要に応じて親ねじ100a、100b、100c、および100d上のそれらの適切な位置で不動の状態を維持することを可能にするようにねじ切りされる。軸受け106a、106b、106c、および106dは、それぞれ親ねじ100a、100b、100c、および100dを支持し、誘導し、それらの摩擦を低減するように機能する。図6に示されるように、無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をX軸に平行な方向に移動させるための親ねじ100aおよび100b、ならびに可動式ロッド102aは、無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をY軸に平行な方向に移動させるための親ねじ100cおよび100d、ならびに可動式ロッド102bの上方に配置されている。
【0045】
無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をX軸に平行な方向に移動させるために、モータ94aが作動される。モータ94aは、ステッピングモータでよい。モータ94aのシャフトが、滑車98aを駆動し、それによって滑車98aおよび98bにわたって移動する駆動ベルト96aが駆動され、それによって親ねじ100aおよび100bが回転させられ、次いでこの回転により、可動式ロッド102aを支持するナット104aおよび104cが無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をX軸に平行な方向に移動させる。無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をY軸に平行な方向に移動させるために、モータ94bが作動される。モータ94bは、ステッピングモータでよい。モータ94bのシャフトが、滑車98cを駆動し、それによって滑車98cおよび98dにわたって移動する駆動ベルト96bが駆動され、それによって親ねじ100cおよび100dが回転させられ、次いでこの回転により、可動式ロッド102bを支持するナット104bおよび104dが無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をY軸に平行な方向に移動させる。無線認識読取装置ヘッド90を支えるX−Y軸受キャリッジ92をX軸およびY軸に平行な方向に適切に移動させることにより、無線認識読取装置ヘッド90は、無線認識読取装置ヘッド90が所望の無線認識タグを読み取ることを可能にするように配置され得る。
【0046】
図7では、印刷回路基板110は、複数の無線認識読取装置アンテナ112を含む。各々のアンテナ112は、電子機器(electronics)によって選択的に作動される。図7では、印刷回路基板110の下側部分における5×5配列のアンテナは、図4の保管領域/ステージング領域50の、試料容器14が位置する部分に相当する。印刷回路基板110の右上部分における3×8配列のアンテナは、図4の保管領域/ステージング領域50の、免疫学的検定のための試薬を含む試薬容器24および26が位置する部分に相当する。印刷回路基板110の左上部分における2×11配列のアンテナは、図4の保管領域/ステージング領域50の、臨床化学分析のための試薬を含む試薬容器22が位置する部分に相当する。図7に示されるような複数のアンテナを含む大きな印刷回路基板は、図5および図6に示されるタイプの機構によって読取装置ヘッドを移動させる必要性を解消する。図7に示されるような複数のアンテナを含む大きな印刷回路基板を使用することにより、容器に取り付けられたRFIDタグからの信号が、固定のアンテナ112によって読み取られてアンテナ112に結合されたRFID読取装置によってさらに処理され得る。図7に示されるタイプの印刷回路基板と共に複数のRFID読取装置を使用することもまた、本発明の範囲である。
【0047】
信号をRFIDタグのアンテナとRFID読取装置のアンテナの間で送信するために、RFIDタグのアンテナとRFID読取装置のアンテナの間にアンテナアパーチャが存在しなければならない。ここで図2を参照すると、軸受け(図示せず)、図2では参照番号120によって示される分散スピンドル、および図2では参照番号122によって示される分散スピンドルを回転させるための歯車は、RFIDタグのアンテナとRFID読取装置のアンテナの間で送信される信号に対して透過性でなければならない。軸受け、分散スピンドルおよび歯車は、ポリマー材料から製造されることが好ましい。RFIDタグのアンテナとRFID読取装置のアンテナの間で送信される信号の経路内に存在しない障壁の材料は、金属材料または添着炭プラスチックから形成されてよい。適切な材料を使用することにより、アンテナアパーチャは、適度な感受性ならびに選択性をもたらすように構築され得る。複数のアンテナ基板を含むプロトタイプの印刷回路基板が完成した後、アンテナアパーチャ用の付加的な成形技術が使用されねばならないことを試験が示すことがある。追加の金属または金属様の特性を示す材料が、無線周波の選択性および伝播性を高めるために様々な幾何形状に使用され得る。無線認識タグのコストを低減するための新しい技術が利用可能になってきているため、そのような技術が使用されることが期待される。
【0048】
読み取り範囲を狭め、選択性を増大し、物理的配向性能をもたらすために、より小型の無線認識タグアンテナが使用されることがあるが、そのようなアンテナは、無線認識タグが無線認識読取装置により近接近することを必要とする。
【0049】
本発明のシステムによれば、無線認識タグは、試薬容器の各々の位置において、またはたとえば試料管などの試料容器の各々の位置において、試薬容器または試料容器の下方のある地点から選択的に読み取られ得る。無線認識読取装置から無線認識タグの距離は、通常短く(たとえば1インチ(2.54cm)未満)、アンテナアパーチャが副ローブを限定するため、無線認識タグの配置はまた、分析装置のタイプおよび容器のタイプに関する情報を提供することができ、それによって(a)システム内の自動分析装置の機能の向上、(b)加工、流通過程の管理の向上、すなわち現在および現在までの過去の時点において所与の容器によって占有された場所に関する情報の向上、および(c)分析の正確な結果を保証することによる患者に対する安全性の向上がもたらされる。
【0050】
作動
無線認識タグは、たとえば試薬容器、たとえば試料管など試料容器、マイクロプレート内などに取り付けられる、または成形されてよい。最初の製造情報は、通常、無線認識タグ内にプログラム化される。保管および搬送情報(たとえばロジスティックス)は、通常、無線認識タグ内の前のデータに連結される。
【0051】
試薬容器、試料容器、およびマイクロプレートなど上の無線認識タグは、本発明の無線認識システム上に置かれたときに読み取られる。無線認識タグを有する物体は、無線認識読取装置に近接近する位置に移動され得る。あるいは、無線認識タグを保持する物体は、無線認識読取装置を無線認識タグに近接近する位置に移動させることにより、定位置で読み取られてよい。さらに別の代替策では、無線認識読取装置に結合された複数のアンテナが、可動式の無線認識読取装置の代わりに使用されてよい。容器の1つまたは複数のアンテナが選択され、次いでこの容器の無線認識タグ内の情報が読み取られ得る。試薬容器、試料容器などの情報および物理的場所が、実証され得る。
【0052】
試薬容器、試料容器、マイクロプレートなどの内容物がアクセスされ、その内容物が分析実施中に消費されるとき、付加情報が無線認識タグ内の前のデータに結び付けられ得る。図7に示されるタイプのような複数のアンテナを含む大きな印刷回路基板は、図5および図6に示されるタイプの機構を有するアンテナを移動させる必要性を解消する。
【0053】
無線認識読取装置の電力は、4ワットEIRPに限定される。本明細書に説明されるシステムでは、無線認識読取装置アンテナおよび無線認識タグアンテナの平面は、読み取られる際、互いに平行であることが好ましく、各々の無線認識タグアンテナの中央が無線認識読取装置アンテナの中央上に配置されることが好ましい。無線認識読取装置から無線認識タグの距離は、通常、約0.100インチ(0.254cm)から約1.25インチ(3.175cm)の範囲である。
【0054】
試薬用容器、試料用容器、マイクロプレートなどについての情報の精度を高めるために、無線認識が使用され得、その結果それらの情報は、データベースに直接リンクされ、(a)システム内の自動分析装置の機能の向上、(b)加工、流通過程の管理の向上、すなわち現在および現在までの過去の時点において所与の容器によって占有された場所に関する情報の向上、および(c)分析の正確な結果を保証することによる患者に対する安全性の向上をもたらすことができる。この情報は、それだけに限定されないが、自動分析装置に関連する情報、容器の内容物の搬送、保管、および使用中に経験する環境に関連する情報、および容器に関連する情報を含む。
【0055】
RFIDタグは、処理の場所(すなわち、吸引場所、分注場所など)で読み取られ得るため、現在吸引されているまたは分注されている試料および試薬を除いた試料および試薬へのオペレータの物理的アクセスを増大させることができる。しかし、現在吸引されているまたは分注されている試料または試薬への物理的アクセスは、オペレータの安全を確保するためにオペレータに対して禁止されねばならない。
【0056】
本発明の無線認識システムと共に使用され得る自動分析装置は、それだけに限定されないが、自動免疫学的検定分析器、自動臨床化学分析器、自動血液分析器、たとえば自動核酸マイクロアレイ分析器および自動核酸増幅分析器などの自動核酸分析器、自動スライドプロセッシング装置、および自動タンパク質分析器を含む。当然ながら、上述の機器は、その作動を可能にするために必要とされるサブシステム、たとえば免疫学的検定読取装置、臨床化学読取装置、ソフトウエア、流体移送機構などを含むことになる。無線認識測定装置と共に使用され得る自動分析器は、さらに、自動試料処理ステーション、たとえば生物試料から核酸を抽出するための装置などを含むことができる。また、本発明のシステムが複数の分析ステーションを有することも可能であり、この場合、複数の分析ステーションの各々は、生物試料の自動分析のための装置を含む。分析ステーションは、上記で述べられた分析装置のリストからの分析装置を使用することができる。さらに、特定の実施形態では、本発明のシステムは、さらに、自動試料処理ステーションを含むことができる。
【0057】
本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な改変形態および変更形態が当業者に明確になり、さらに、本発明が、本明細書に記載された例示的な実施形態に必要以上に限定されないものとすることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの分析ステーションを有する自動分析装置を備えるシステムであって、
(a)少なくとも1つの容器を自動分析装置の少なくとも1つの分析ステーションに、および自動分析装置の少なくとも1つの分析ステーションから輸送するための機構であって、少なくとも1つの容器が無線認識タグを含む、機構と、
(b)輸送機構に隣接して配置された無線認識読取装置とを備え、
(c)少なくとも1つの分析ステーションが、患者からの生物試料の自動分析のための装置を備え、
(d)該システムが、該システム内の少なくとも1つの容器の場所を追跡することができるサブシステムを備える、
システム。
【請求項2】
少なくとも1つの分析ステーションが、自動免疫学的検定分析器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの分析ステーションが、自動臨床化学分析器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの分析ステーションが、自動血液分析器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの分析ステーションが、自動核酸分析器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
自動核酸分析器が、自動核酸マイクロアレイ分析器および自動核酸増幅分析器からなる群から選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの分析ステーションが、自動スライドプロセッシング装置を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの分析ステーションが、自動タンパク質分析器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
さらに、自動試料処理ステーションを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
自動試料処理ステーションが、生物試料から核酸を抽出するための装置を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各々が生物試料の自動分析のための装置を備える、複数の分析ステーションを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも2つの分析ステーションを備え、前記少なくとも2つの分析ステーションが、自動免疫学的検定分析器、自動血液分析器、自動核酸分析器、自動スライドプロセッシング装置、および自動タンパク質分析器からなる群から選択される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
さらに、自動試料処理ステーションを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
各々が容器上の適切な位置において容器に取り付けられた無線認識タグを有する、複数の容器を備えるシステムであって、少なくとも1つの可動式の無線認識読取装置をさらに含む、システム。
【請求項15】
可動式の無線認識読取装置が、無線認識タグ近傍の位置に移動されることが可能であり、それによって無線認識タグからの情報が、無線認識読取装置によって読み取られたデータの完全性に悪影響を及ぼさない程度の、他の容器上の近接する無線認識タグからのノイズ量および干渉で読み取られ得る、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
さらに、少なくとも1つの読取装置がシステム内で移動することを可能にするための伝動サブシステムを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
各々が容器上の適切な位置において容器に取り付けられた無線認識タグを有する、複数の容器を備えるシステムであって、複数の固定アンテナを有する少なくとも1つの無線認識読取装置をさらに含む、システム。
【請求項18】
複数の容器の各々が、少なくとも1つの無線認識読取装置の複数の無線認識アンテナの1つの近傍の位置に移動されることが可能であり、それにより、無線認識タグからの情報が、前記少なくとも1つの無線認識アンテナによって読み取られたデータの完全性に悪影響を及ぼさない程度の、他の容器上の近接する無線認識タグからのノイズ量および干渉で読み取られ得る、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記無線認識読取装置の前記複数の固定無線認識アンテナの各々が、印刷回路基板上の配線である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
各々の無線認識タグが、使用される無線周波数との関係を決定付ける各々のアンテナの長さを有するアンテナを有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
無線認識タグが、容器の最も低い部分に配置される、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
無線認識タグが、カプセルに入れられている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
少なくとも1つの無線認識読取装置のアンテナが、デカルト座標によって特徴付けられる配列内に配置される、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
自動分析装置を備えるシステムにおいて生物試料を分析する方法であって、
(a)容器内に生物試料を提供するステップであって、当該容器が、該容器に結合された無線認識タグを有している、提供するステップと、
(b)前記生物試料を含む少なくとも1つの容器上の無線認識タグに問い合わせして保管情報に関する情報をそこから入手するステップと、
(c)その保管情報を許容される保管状態の組と比較するステップと、
(d)(c)において実施された比較するステップに基づいて、試料の分析に対して試料容器を拒絶するまたは受け入れるステップとを含み、
ステップ(b)、(c)および(d)が、自動分析装置システムによって自動的に実施される、方法。
【請求項25】
さらに、生物試料の少なくとも1つの分析を実施するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
分析が、自動免疫学的検定分析器、自動臨床化学分析器、自動血液分析器、自動核酸分析器、自動スライドプロセッシング装置、および自動タンパク質分析器からなる群から選択された少なくとも1つの機器を用いて実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
さらに、自動分析装置システム内に存在する各々の試料容器の場所を明細にするように情報データベースを更新するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
さらに、自動分析装置システム内に存在する各々の試料容器から取り除かれた液体量を明細にするように情報データベースを更新するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
自動分析装置システムにおける生物試料の自動分析方法であって、
(a)容器内に少なくとも1つの試薬を提供するステップであって、当該容器が、該容器に結合された無線認識タグを有しており、無線認識タグが、試薬容器がさらされている保管状態に関する情報を含む情報デバイスを備える、提供するステップと、
(b)前記少なくとも1つの試薬容器上の無線認識タグに問い合わせして少なくとも1つの試薬容器の保管状態に関する情報について判断するステップと、
(c)その保管状態に関する情報を許容される保管状態の組と比較するステップと、
(d)ステップ(c)において実施された比較するステップに基づいて、自動分析装置システムにおける使用に対して試薬容器を拒絶するまたは受け入れるステップとを含み、
ステップ(b)、(c)および(d)が、自動分析装置システムによって自動的に実施される、方法。
【請求項30】
さらに、使用が許容されると決定された少なくとも1つの試薬容器を使用して試料の少なくとも1つの自動分析を実施するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
自動分析が、自動免疫学的検定分析器、自動臨床化学分析器、自動血液分析器、自動核酸分析器、自動スライドプロセッシング装置、および自動タンパク質分析器からなる群から選択された少なくとも1つの機器を用いて実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
さらに、自動分析装置システム内に存在する各々の試薬容器の場所を明細にするように情報データベースを更新するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
さらに、自動分析装置システム内に存在する各々の試料容器から取り除かれた試料量を明細にするように情報データベースを更新するステップを含む、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−544972(P2009−544972A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521889(P2009−521889)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/073201
【国際公開番号】WO2008/014117
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】