説明

無線読取装置

【課題】従来のゲート型アンテナは、2つのゲートアンテナの間を通過する無線タグの情報を迅速にかつ正確に読み取ることができなかった。また、上記アンテナの位相を変更する機能の動作は極めて複雑かつ煩雑なものとなっていた。
【解決手段】本発明では、読取部1000Bが所定の条件において上記受信信号が解読できないことを検出する検出部と、当該検出部が上記所定の条件において解読できない場合、アンテナ部から送信する搬送波の相互の位相差を変更して送信部1000が上記搬送波を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶媒体に記憶された情報を読み取る無線読取装置に関し、特に、複数のアンテナを有する無線読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導により供給された電力で動作する非接触情報記憶媒体として無線タグや非接触ICカード等がある。これらの無線IDタグや非接触ICカードは、非接触で様々な情報が読み取ることができるので、入退室管理、電子乗車券、物流管理、機密文章管理等の広い分野で今後も拡がっていくことが予想される。特に、非接触情報記憶媒体を使用する誘導式読取装置を入退室管理用に用いる場合、2つ以上のアンテナを対向配置したゲート型アンテナが用いられる。このような用途では、ゲート型のアンテナ間を通過する非接触情報記憶媒体とゲート型アンテナ間で確実な通信を行うためにゲート間の各位置、各方向成分において、均一な磁界強度が要求される。この要求事項に対応するための一例が(特許文献1)に記載されている。
【0003】
(特許文献1)に記載のゲートアンテナは、それぞれ対向に配置された8字型のループアンテナに加え、8字型のループアンテナに磁気的結合する無給電のループアンテナを有しており、更に、8字型のループアンテナに供給される誘導電流の位相を180°ずらし、無給電ループアンテナに供給される誘導電流の位相を90°ずらし、ゲートアンテナの互いにおける誘導電流の位相を90°ずらすことによって磁束分布の均一化を図るものである。
【特許文献1】特開2003−258545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、(特許文献1)に記載のゲート型アンテナは、ゲートアンテナの構造として8字型以上のループアンテナと、8字型のアンテナと電磁結合を起こすための無給電ループアンテナを必要とし、更に、それぞれのアンテナに供給される誘導電流の位相を90°単位でずらす必要があり、その構造とアンテナ制御において複雑又は煩雑なものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡潔な構造であり、かつそのアンテナ制御が容易な無線読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、無線タグからの情報を読み取る無線読取装置において、お互いに対向するアンテナを有するアンテナ部と、当該アンテナ部から送信信号を含む搬送波を送信する送信部と、当該送信部からの上記搬送波の送出により上記無線タグからの情報を受信する受信部と、当該受信部が受信した受信信号を解読する読取部と、当該読取部が所定の条件において上記受信信号が解読できないことを検出する検出部と、当該検出部が上記所定の条件において解読できない場合、前記アンテナ部から送信する搬送波の位相差を変更して前記送信部が上記搬送波を送信するように制御する制御部と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、対向して設置されたゲートアンテナが、アンテナより出力される誘導電流の位相差を適切な値に設置することによって、ゲートアンテナ間に存在する無線タグが各位置又は各方向成分に拘わらず、無線タグ内に格納された情報を迅速かつ確実に読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
請求項1に記載される第1の発明では、無線タグからの情報を読み取る無線読取装置において、お互いに対向するアンテナを有するアンテナ部と、当該アンテナ部から送信信号を含む搬送波を送信する送信部と、当該送信部からの上記搬送波の送出により上記無線タグからの情報を受信する受信部と、当該受信部が受信した受信信号を解読する読取部と、当該読取部が所定の条件において上記受信信号が解読できないことを検出する検出部と、当該検出部が上記所定の条件において解読できない場合、上記アンテナ部から送信する搬送波の位相差を変更して上記送信部が上記搬送波を送信するように制御する制御部と、を備えて構成される。この構成により、互いに対向するアンテナ間に位相差を設けて、無線タグに内蔵されるアンテナとの良好な向きをもって無線タグの情報を正確に読み取ることができる。
【0009】
請求項2に記載される第2の発明は、第1の発明にて、上記検出部が所定の条件において上記受信信号を解読できない場合の所定の条件が、無線タグからの受信信号が所定の時間内に受信できない場合の無線読取装置である。この構成により、不十分又は不適切な情報の入手状況を迅速に検出して、読取部による解読動作を即座に行うことできる。
【0010】
請求項3に記載される第3の発明は、第1の発明にて、上記検出部が所定の条件において上記受信信号を解読できない場合の所定の条件が、所定の時間内に受信した上記受信信号が所定の情報量でない場合の無線読取装置である。この構成により、不十分又は不適切な情報の入手状況を迅速に検出して、読取部による解読動作を即座に行うことできる。
【0011】
請求項4に記載される第4の発明は、第1の発明にて、上記制御部は、上記検出部が上記受信した受信信号を解読できないことを検出した場合、上記相互の位相差を設定された複数の位相差により段階的に変更しながら上記送信部から上記搬送波を送信するように構成される。この構成により、解読できない状態を解消する為に、位相差を段階的に変更して対応することができ、無線タグのアンテナの向きに即座に対応することができる。
【0012】
請求項5に記載される第5の発明は、第4の発明にて、更に、入力部を有し、当該入力部によって上記記憶部に複数の任意の位相差を設定するように上記制御部に指示するように構成されている。この構成により、無線タグのアンテナ固有の向きに関する特性にも対応することができる。
【0013】
請求項6の発明は、無線タグからの情報を読み取る無線読取装置において、お互いに対向するアンテナを有するアンテナ部と、当該アンテナ部から送信信号を含む搬送波を送信する送信部と、当該送信部からの上記搬送波の送出により上記無線タグからの情報を受信する受信部と、当該受信部が受信した受信信号を解読する読取部と、上記アンテナ部から送信する搬送波の相互の位相差を所定時間内にて自動的に変更して上記送信部が上記搬送波を送信するように制御する制御部と、を備えて構成される。この構成により、無線タグのアンテナの向きに拘わらず無線タグに記憶された情報を即座に読み取ることができる。
【0014】
請求項7の発明は、更に、複数の位相差の値が記憶された記憶部を有し、上記制御部は、上記位相差を設定された複数の位相差により段階的に変更して上記送信部から上記搬送波を送信するように構成した。この構成により、解読できない状態を解消する為に、位相差を段階的に変更して対応することができ、無線タグのアンテナの向きに即座に対応することができる。
【0015】
請求項8は、更に、入力部を有し、当該入力部からの入力によって上記制御部が上記記憶部に複数の任意の位相差を設定させるように構成した。この構成により、無線タグのアンテナ固有の向きに関する特性にも対応することができる。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における無線読取装置について、図面に沿って説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る無線読取装置の全体構成を示す図であり、図2は、図1における無線読取装置の機能構成ブロック図である。また、図3は、本発明の実施の形態1に係る無線読取装置のゲートアンテナ間で無線タグの各方向成分における磁界強度と位相差との関係を示す図である。
【0017】
先ず、図1に沿って上記無線読取装置の全体構成について説明する。図1に示すように、無線読取装置10は、電源(電池)を有しない無線タグ20と13.56MHz帯を使用して非接触で通信することが可能な装置であり、無線タグへ電磁誘導によりデータを出力する。
【0018】
また、本読取装置は、無線タグによるアンテナの負荷変動によって無線タグ20からのデータを受信するループアンテナ101、103と無線タグ20を読み書きする無線読取装置105及び無線読取装置本体に接続されるパーソナルコンピュータ(以下、「PC」)106とを備えている。このPC106は、上記アンテナ間の任意の位相差を設定する入力手段であり、詳細は後述する。
【0019】
更に、本読取装置は、同軸ケーブル102、104によってループアンテナ101、103が無線読取装置本体105に接続されている。ループアンテナ101、103は、無線読取装置本体の送信信号を無線タグ20へ送信することで無線タグ20への電力を供給する。その後、無線タグによるアンテナの負荷変動により、アンテナは受信信号を取得する。
【0020】
無線タグがループアンテナ101、103の間を通過することを前提に装置が構成されているため、2つのループアンテナから同時に送信信号を送信し、無線タグからの受信信号を同時に受信する場合がある。その場合、先に受信した信号を優先的に処理し、後から受信した同じ信号は無視する。また、受信したデータを誘導式読取装置本体105からPC106に転送し、受信したデータに対する認証処理などを行う。
【0021】
次に、無線読取装置105の詳細について図2に基づいて説明する。図2に示すように、無線読取装置105の装置本体には、送信部1001と、1つの出力波形を同じ出力波形2つに分ける分配部1002と、分配した出力波形のうち1つの波形を任意に遅らせる位相変更部1003と、無線タグから受けたアンテナの負荷変動データを受信する送信結合部1004と、受信したデータを増幅する増幅部1005と、受信したデータをアナログからデジタルデータに変換するAD変換部と、変換されたデータを解析し、解析不可のデータを受信した時に、位相変更部へ遅れ位相値の変更を指示し、再度、送信部へ送信データを渡すように指示する制御部1000が設けられている。
【0022】
以下に、各部の個々の機能について詳細に説明する。
【0023】
先ず、送信部1001は、送信すべきデータを振幅変調して送信信号を生成し、分配部1002へ出力する機能を備えている。
【0024】
分配部1002は、送信部1001から受けた送信信号を信号の状態を変更することなく、全く同じ2つの送信信号に分ける機能を備えている。また、2つに分けた送信信号のうち、一方はアンテナ101へ出力されており、他方は位相変更部1003へ出力されている。位相変更部1003は、分配部1002より分配された送信信号のうち、1つの送信信号について、信号の振幅、周期等は全く変更させずに、信号の位相のみ変更し、アンテナ103へ出力する機能を備えている。結合部1004は、アンテナ101へ出力される分配部1002からの送信信号が受信部(増幅部1005を含む側)へ流れ込むことを抑制するために設けられている。増幅部1005は、アンテナ101、103により受信された無線タグによる負荷変動により出力されたデータを増幅する。変換部1006は、増幅部1005より出力された信号を必要な信号とノイズとに分けて、2値変換し、デジタルデータとして出力する。
【0025】
制御部1000は、無線タグに送信するデータを送信部1001経由で出力し、変換部1006から出力された受信データを解析し、位相変更部1003に位相変更の信号を出力し、入出力インターフェース部1007へコマンドを出力するなど、上記各部を統括した制御をする。ここで、制御部1000は、記憶部1000A及び読取部1000Bを有し、この記憶部には、予め1/8π〜3/8π(rad)の範囲にて所定の3つの位相差(第1の位相差、第2の位相差、第3の位相差)が選択されており、この記憶部に格納されている。また、デジタルデータとなった受信信号は、読取部1000Bにより解読される。
【0026】
次に、読取装置本体105の動作について図3に沿って説明する。先ず、ステップ1にて、送信部1001は、ゲートアンテナ101、103の間を通る無線タグ20に格納された情報を読み取るために出力データを送信する。
【0027】
ステップ2にて、送信部1001によって振幅変調されて生成された送信信号は、分配部1002に出力されて、1つであった送信信号が全く同じ2つの送信信号に分けられ、後述の通り、一方はゲートアンテナ101へ、他方は位相変更部1003へ出力されるようになる。
【0028】
ステップ3にて、分配部1002からの送信信号を受信した位相変更部1003は、初期の主搬送波位相(第1の搬送波)における搬送波をゲートアンテナ103へ出力する。
【0029】
ステップ4にて、主搬送波に適切な位相差を持った2つの出力信号がゲートアンテナ101、103から出力され、ゲートアンテナ間を通る無線タグへ電磁誘導により十分な電力が供給され、アンテナは、負荷変動により無線タグ20からデータを受信する。
【0030】
ステップ5にて、アンテナから受信されたデータは、結合部1004、増幅部1005、AD変換部1006を経由してデジタル信号データとして制御部1000へ出力される。
【0031】
ステップ6にて、制御部1000は、受信された信号データを読取部1000Bに解読させる。
【0032】
次に、ステップ7にて、本実施の形態では、4回の解読動作により読取動作が終了するように設定されており、即ち、後述のように、搬送波の位相を3回変更して読み取るようになっている。このステップ7にて、現在、1回目であるために、ステップ8に移行する(第1の搬送波)。
【0033】
ステップ8では、主搬送波の基本位相に1/8πラジアンだけ加えた変更搬送波(第2の搬送波)に変更してステップ1からステップ3を経てアンテナ部103より出力する。
【0034】
ここで、ステップ7にて、2回目である場合、ステップ8では、主搬送波の基本位相に2/8πラジアンだけ加えた変更搬送波(第3の搬送波)に変更してステップ1からステップ3を経てアンテナ部103より出力する。続いて、ステップ7にて、ステップ8では、主搬送波の基本位相に3/8πラジアンだけ加えた変更搬送波(第4の搬送波)に変更してステップ1からステップ3を経てアンテナ部103より出力する。
【0035】
次に、ステップ7にて、4回の解読動作となった場合、ステップ9に移行して搬送波の出力を停止して読み取り動作を終了する。即ち、変更搬送波が4種類設定されている場合、5回の解読動作が実行される。尚、入力手段から、上記読み取り動作を行う時間を任意に設定することができる。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、極めて短い所定時間内に異なる4種類の位相を有する搬送波をアンテナ部から出力することによりアンテナ101、103間の通過する無線タグを極めて迅速に読み取ることができる。
【0037】
また、ユーザは、入力手段であるPC106から複数の任意の位相を設定することができ、この位相の値を基本主搬送波に加えた変更搬送波をアンテナから出力する。従って、所定時間(通常、人が通過する時間の範囲)内に複数の設定された位相差を有する搬送波がアンテナから出力されて、読み取り動作を経て、無線タグの任意の姿勢に拘わらず、迅速な無線タグの読み取りが可能となる。
【0038】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における無線読取装置について、図面に沿って説明する。本発明の実施の形態2に係る無線読取装置の全体構成は、図1と同様であり説明を省略する。図1における無線読取装置の機能構成ブロック図も図2と同様であり説明を省略する。図5は、本発明の実施の形態2に係る無線読取装置のゲートアンテナ間で無線タグの各方向成分における磁界強度と位相差との関係を示す図である。即ち、実施の形態2の構成は、実施の形態1のものと同じであるが、制御部による読み取り動作が異なるものである。
【0039】
次に、読取装置本体105の読み取り動作について図4に沿って説明する。先ず、ステップ11にて、送信部1001は、ゲートアンテナ101、103の間を通る無線タグ20に格納された情報を読み取るために出力データを送信する。
【0040】
ステップ12にて、送信部1001によって振幅変調されて生成された送信信号は、分配部1002に出力されて、1つであった送信信号が全く同じ2つの送信信号に分けられ、後述のように、一方はゲートアンテナ101へ、他方は位相変更部1003へ出力されるようになる。
【0041】
ステップ13にて、分配部1002からの信号を受信した位相変更部1003は、予め1/8π〜3/8π(rad)の所定の位相に対して設定している位相分だけ出力信号の主搬送波位相を遅らせ、ゲートアンテナ103へ出力する。
【0042】
ステップ14にて、主搬送波に適切な位相差を持った2つの出力信号がゲートアンテナ101、103から出力され、ゲートアンテナ間を通る無線タグへ電磁誘導により十分な電力が供給され、アンテナは、負荷変動により無線タグ20からデータを受信する。
【0043】
ステップ15にて、アンテナから受信されたデータは、結合部1004、増幅部1005、AD変換部1006を経由してデジタル信号データとして制御部1000へ出力される。
【0044】
ステップ16にて、制御部1000は、受信された信号データを判別し、適正なデータであれば、データの処理を完了してゲートアンテナ101、103間を通過する無線タグ20のデータを読むための処理に移る(ステップ17)。その後、ステップ18にて、送信部は、上記搬送波の出力を停止する(ステップ18)。
【0045】
ステップ16にて、もし、(1)制御部1000が受けた信号データが正しくなく(所定の情報でない場合を含む)、または、(2)制御部1000が所定の時間内に信号データが受信できなかった場合は、検出部はそれを検出し、そのデータ処理を中断し(ステップ19)、位相変更部1003へ予め設定していた所定の位相差に変更する(第1の位相差を採用する)指示を出す(ステップ20)と共に、再度、ステップ11からステップ16を繰り返して、送信部1001から無線タグ20に格納された情報を読み込むための出力データを送信し、当該出力データがアンテナから送出される。更に、上記(1)又は(2)の状況であれば、位相変更部1003は、第2の位相差に変更し、ステップ11に移行し、再度、上記(1)又は(2)の状況であれば、位相変更部1003は、第3の位相差に変更し、ステップ1に移行する。このような処理を順次繰り返し行うことで無線タグを確実に読み取ることができる。
【0046】
尚、図1に示したPC106は、入力手段であり、ユーザは、上記位相差を任意の値に入力設定でき、制御部1000の記憶部1000Aは、その設定された位相差を記憶しておく。この設定される位相差の数に制限はなく、通常、3から20程度の値が設定される。従って、制御部は、設定記憶された複数の位相差のうち、小さい値から大きい値へと順に位相差を変更することになる。
【0047】
図2にて互いに対向した位置にあるゲートアンテナ101、103より、任意の位相差を持った搬送波出力が送信可能であることを記載したが、無線タグ20が電磁誘導による動作を実現するための任意の位相差での搬送波出力に対する各方向成分の磁界強度シュミレーションしたものを図5に示す。
【0048】
ゲートアンテナ101、103を通過する無線タグ20が、x、y及びzの各方向を向いていた場合を仮定し、その無線タグ20が向けられている各方向を平面とした磁界強度を示している。
【0049】
図4において、上記分布図は、上段、中段及び下段に分かれており、上段は無線タグ20のアンテナ平面がゲートアンテナ101、103に対して進行方向(x方向)を向いている時の磁界強度分布を示している。上段左側の磁界強度分布では、ゲートアンテナ101、103から互いに出力される主搬送波の位相差が0°になった場合のy−z平面の磁界強度を表しているが、互いのゲートアンテナ101、103より放射される磁束がx方向に向いた無線タグ20のアンテナをほとんど通過せず、磁界強度が小さくなる。また、一方のゲートアンテナ101に対し、他方のゲートアンテナ103の位相が180°遅れた場合の磁界強度を上段右側に示す。このように、位相が180°遅れることにより、y−z平面のほぼ全ての場所において無線タグとの通信に必要十分な磁界強度を得ることができる。更に、一方のゲートアンテナ101に対し、他方のゲートアンテナ103の位相差を1/8π〜3/8π(rad)遅らせたものを上段中央に示す。このとき磁界強度は180°の時とほぼ同じ結果となり無線タグ20との通信を行うことが可能である。
【0050】
また、中段は、無線タグ20がゲートアンテナに対して垂直方向(y方向)を向いている時の磁界強度分布を示しており、中段左側の磁界強度分布では、ゲートアンテナ101、103から互いに出力される主搬送波の位相差が0°になった場合のx−z平面の磁界強度を表しているが、互いのゲートアンテナ101、103より放射される磁束がy方向に向いた無線タグ20のアンテナをほとんど通過せず、磁界強度が小さくなる。また、一方のゲートアンテナ101に対し、他方のゲートアンテナ103の位相が180°遅れた場合の磁界強度を中段右側に示す。位相が180°遅れることにより、y−z平面のほぼ全ての場所において無線タグとの通信に必要十分な磁界強度を得ることができる。更に、一方のゲートアンテナ101に対し、他方のゲートアンテナ103の位相差を1/8π〜3/8π(rad)遅らせたものを中段中央に示す。このとき磁界強度は180°の時とほぼ同じ結果となり無線タグ20との通信を行うことが可能である。
【0051】
更に、下段は無線タグ20がゲートアンテナに対して平行方向(z方向)を向いている時の磁界強度分布を示しており、下段左側の磁界強度分布では、ゲートアンテナ101、103から互いに出力される主搬送波の位相差が0°になった場合のy−z平面の磁界強度を表しているが、互いのゲートアンテナ101、103より放射される磁束がx方向に向いた無線タグ20のアンテナを通過し、必要十分な磁界強度を得ることができる。また、一方のゲートアンテナ101に対し、他方のゲートアンテナ103の位相が180°遅れた場合の磁界強度を下段右側に示す。位相が180°遅れることにより、y−z平面のほぼ全ての場所において無線タグ20のアンテナをほとんど通過せず、磁界強度が小さくなる。また、一方のゲートアンテナ101に対し、他方のゲートアンテナ103の位相差を1/8π〜3/8π(rad)遅らせたものを下段中央に示す。このとき磁界強度は0°の時とほぼ同じ結果となり無線タグ20との通信を行うことが可能である。
【0052】
以上のように互いのループアンテナの位相差を0°と180°の中間の位置にあたる1/8π〜3/8π(rad)で遅らせると、x、y及びzの全ての無線タグの位置及び各方向において、無線タグを動作させる必要十分な磁界強度を得ることが可能であり、単純ループアンテナで構成されるゲート型アンテナ装置を使用しても、安定して、無線タグ20の通信を可能であると判断できる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態2について説明してきたが、本発明は実施の形態1に限定されるものでなく、ゲートアンテナの数が2つ以上となった場合や、アンテナの形状が単純ループアンテナ以外の場合でも同様に各々のループアンテナに任意の位相差を設定することにより、無線タグを動作させるのに必要な磁界強度を得ることが可能であり、安定して無線タグと通信することができる装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ゲートアンテナに無線タグ付きの物品又はカード型無線タグを携帯した人が通る時など、無線タグ内のループアンテナ方向が3次元方向に特定していない場合でも、高い精度で無線タグから負荷変動により送信される信号を受信できるので、より精度の高い物品管理ゲートや認証ゲートに適用できる。また、無線読取装置にて、対向に位置した2つ以上のループアンテナ間を通過する無線タグの供給電力がもっとも高くなるように、互いのループアンテナに供給される電力の位相差を適時変更することによって、更に高精度なゲートアンテナとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における無線読取装置の全体外観構成図
【図2】本発明の実施の形態1における無線読取装置の全体構成ブロック図
【図3】本発明の実施の形態1における無線読取装置の動作を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態2における無線読取装置の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態における無線読取装置のゲートアンテナ間の各方向における磁界分布図
【符号の説明】
【0056】
10 無線ID装置
20 無線タグ
101 ループアンテナ1
102 アンテナケーブル1
103 ループアンテナ2
104 アンテナケーブル2
105 誘導式読取装置本体
106 PC
1000 制御部
1001 送信部
1002 分配部
1003 位相変更部
1004 結合部
1005 増幅部
1006 変換部
1007 入出力インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグからの情報を読み取る無線読取装置において、
お互いに対向するアンテナを有するアンテナ部と、
当該アンテナ部から送信信号を含む搬送波を送信する送信部と、
当該送信部からの上記搬送波の送出により上記無線タグからの情報を受信する受信部と、
当該受信部が受信した受信信号を解読する読取部と、
当該読取部が所定の条件において上記受信信号が解読できないことを検出する検出部と、
当該検出部が上記所定の条件において解読できない場合、前記アンテナ部から送信する搬送波の相互の位相差を変更して前記送信部が上記搬送波を送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とする無線読取装置。
【請求項2】
前記検出部が所定の条件において上記受信信号を解読できない場合の所定の条件が、無線タグからの受信信号が所定の時間内に受信できない場合であることを特徴とする請求項1記載の無線読取装置。
【請求項3】
前記検出部が所定の条件において上記受信信号を解読できない場合の所定の条件が、所定の時間内に受信した上記受信信号が所定の情報量でない場合であることを特徴とする請求項1記載の無線読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部が上記受信した受信信号を解読できないことを検出した場合、上記相互の位相差を設定された複数の位相差により段階的に変更しながら前記送信部から上記搬送波を送信することを特徴とする請求項1記載の無線読取装置。
【請求項5】
更に、入力部を有し、当該入力部からの入力によって前記制御部が前記記憶部に複数の任意の位相差を設定させることを特徴とする請求項1記載の無線読取装置。
【請求項6】
無線タグからの情報を読み取る無線読取装置において、
お互いに対向するアンテナを有するアンテナ部と、
当該アンテナ部から送信信号を含む搬送波を送信する送信部と、
当該送信部からの上記搬送波の送出により上記無線タグからの情報を受信する受信部と、
当該受信部が受信した受信信号を解読する読取部と、
前記アンテナ部から送信する搬送波の位相差を所定時間内にて自動的に変更して前記送信部が上記搬送波を送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とする無線読取装置。
【請求項7】
更に、複数の位相差の値が記憶された記憶部を有し、
前記制御部は、上記位相差を設定された複数の位相差により段階的に変更して前記送信部から上記搬送波を送信することを特徴とする請求項6記載の無線読取装置。
【請求項8】
更に、入力部を有し、当該入力部からの入力によって前記制御部が前記記憶部に複数の任意の位相差を設定させることを特徴とする請求項6記載の無線読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−294877(P2008−294877A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139877(P2007−139877)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】