説明

無線送信装置、無線送受信システム、無線送信装置の制御方法及びプログラム

【課題】無線通信のネットワーク環境でのより適切な実効転送速度に関する情報をユーザに提供することができる。
【解決手段】無線LANシステム10の印刷サーバ30は、複数の転送レートのうちから実行転送レートを設定し、無線で送信する実際の情報量を含む実効転送速度の計測条件をユーザの入力に基づいて設定し、設定したデータサイズを有する実効速度計測用データを、設定された実行転送レートで無線によりルータ20へ送信する。実効速度計測用データを受信したルータ20は、受信時間を計測し、計測した受信時間を印刷サーバ30へ送信する。印刷サーバ30は、受信した受信時間と実効速度計測用データのサイズに基づいて実効転送速度を算出し、この実効転送速度をユーザに表示出力又は印刷出力する。このように、実際に送信するデータサイズに基づいて定められた実効速度計測用データの送信を利用して実効転送速度を求めて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信装置、無線送受信システム、無線送信装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線送信装置としては、複数の転送レートを設定可能なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された装置は、無線受信装置に伝送速度を試験するパケットを送信し、無線受信装置から受信成功の信号(ACK信号)が返信されないときには現在よりも小さい転送レートに設定する。そして、電波状況の異なる複数の機器において、各機器に設定されている転送レートを機器の数で除算することにより各機器の実効転送速度を計算により求め、各機器の転送レートをなるべく近い値に設定する。
【特許文献1】特開2004−221710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1に記載された装置では、設定した転送レートで速度計測用のパケットを送信し、ACK信号が帰ってきたか否かに基づいて転送レートを設定するだけであるため、例えば、ユーザによって比較的大きなデータ(例えば数Mb)を送信する際などには、壁などの固定物による電波障害や他の無線LANシステムからの電波干渉などの影響を受けることがあり、この設定した転送レートは一瞬の値である場合が多く、必ずしも実データの送信の実効転送速度を表しているとは限らなかった。また、各機器の転送レートを機器の台数で除算することにより理論的な実効転送速度を計算によって求めるものであるため、実データを転送した際の転送速度とかけ離れてしまうことがあった。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、無線通信のネットワーク環境でのより適切な実効転送速度に関する情報をユーザに提供することができる無線送信装置、無線受信装置、それらの方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の無線送信装置は、
無線受信装置に無線で情報を送信可能な無線送信手段と、
情報を出力可能な出力手段と、
複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定する転送レート設定手段と、
ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定する条件設定手段と、
前記転送レート設定手段によって設定された実行転送レート及び前記条件設定手段によって設定された計測条件で実効速度計測用情報を前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させ該送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を前記出力手段に出力させる送信出力制御手段と、
を備えたものである。
【0007】
この無線送信装置では、複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定し、ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定し、設定した実行転送レート及び設定した計測条件で実効速度計測用情報を無線受信装置へ送信し、この送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力する。このように、実際に送信する情報量に基づいて定められた実効速度計測用情報の送信に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力する。したがって、無線通信のネットワーク環境でのより適切な実効転送速度に関する情報をユーザに提供することができる。ここで、「実効転送速度に関する情報」は、実効転送速度自体のほか、実効転送速度を求めるに際して用いられる情報、例えば実効速度計測情報の情報量や無線受信装置が実効速度計測用情報を受信した受信時間などを含む。
【0008】
本発明の無線送信装置において、前記条件設定手段は、前記実効転送速度の計測条件をユーザの入力に基づいて設定するものとしてもよい。こうすれば、ユーザが入力した実効転送速度の計測条件で実効転送速度が計測されるため、ユーザが望む無線通信のネットワーク環境での実効転送速度に関する情報を提供することができる。
【0009】
本発明の無線送信装置において、前記転送レート設定手段は、前記無線送信手段によって前記無線受信装置へ前記実効速度計測用情報が送信開始されてから送信終了するまでの間に、前記実効速度計測用情報の一部が送信されたのちに前記無線受信装置から受信すべき信号に基づいて前記複数の転送レートから前記実行転送レートを設定するものとしてもよい。こうすれば、実効速度計測用情報を送信している間に無線受信装置から受信すべき信号に基づいて実行転送レートが切り替わるため、比較的安定した情報の送信を行うことができる。このとき、前記転送レート設定手段は、前記無線受信装置から受信すべき信号に基づいて前記実行転送レートを設定するに際して、前記実効速度計測用情報の一部を受信した旨の受信成功信号を前記無線受信装置から受信できなかったときには、現在の転送レートよりも小さな転送レートに前記実行転送レートを設定するものとしてもよい。こうすれば、確実に情報を無線受信装置に送信することができる。
【0010】
本発明の無線送信装置において、前記転送レート設定手段は、前記送信出力制御手段が前記出力手段に出力させる前記実効転送速度に関する情報に基づいて複数の転送レートのうち1つに固定した転送レートを以降の前記実行転送レートに設定し、前記送信出力制御手段は、ユーザが送信を指定した送信情報を前記転送レート設定手段が固定して設定した実行転送レートで前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させるものとしてもよい。こうすれば、情報を実際に送信するときに、実効転送速度に関する情報に基づいて実行転送レートを固定することによって、現在の転送よりも実行転送レートを上げることが可能か否かを調べたり無線通信の状態によって転送レートを下げたりなど実行転送レートを変動させることにより生じる無駄な時間を抑制可能であるため、結果的に適切な実効転送速度を得ることができる。このとき、前記転送レート設定手段は、前記実効転送速度に関する情報に基づいて以降の前記実行転送レートを設定するに際して、前記実効速度計測用情報を送信中に最も長く設定した転送レートを前記実行転送レートに設定するものとしてもよい。
【0011】
本発明の無線送信装置において、前記出力手段は、画像表示、光表示及び音声のうち少なくとも1つを含む態様で前記実効転送速度に関する情報をユーザに報知可能な報知手段であるものとしてもよい。こうすれば、画像、光及び音を利用するため、ユーザは実効転送速度に関する情報を比較的容易に認識することができる。
【0012】
本発明の無線送信装置において、前記出力手段は、着色剤により印刷媒体に印刷する印刷装置が印刷可能である態様で前記実効転送速度に関する情報を該印刷装置へ出力するものとしてもよい。こうすれば、前記実効転送速度に関する情報が印刷媒体に印刷されるため、ユーザは実効転送速度に関する情報を確認しやすい。
【0013】
本発明の無線送信装置は、情報を保存可能な情報記憶手段、を備え、前記送信出力制御手段は、前記求めた実効転送速度に関する情報を前記情報記憶手段に保存出力するものとしてもよい。こうすれば、実効転送速度に関する情報をあとで利用しやすい。このとき、前記情報記憶手段は、前記ユーザが1回あたりに送信した送信情報の情報量の統計値をも保存し、前記条件設定手段は、前記情報記憶手段に保存された送信情報の情報量の統計値に基づいて前記実効速度計測用情報の情報量を設定するものとしてもよい。
【0014】
本発明の無線送信装置は、前記無線受信装置と有線によって接続され該無線受信装置から情報を受信可能な有線受信手段、を備え、前記送信出力制御手段は、前記実効速度計測用情報を前記転送レート設定手段によって設定された実行転送レートで前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させると共に前記有線受信手段に前記無線受信装置から該実効速度計測用情報を受信させ該送受信した結果に基づいて前記実効転送速度を求めるものとしてもよい。こうすれば、無線受信装置において特別な処理を行うことなく実効転送処理に関する情報を求めることが可能であるため、1つの装置で簡潔に実効転送速度を計測することができる。
【0015】
なお、本発明の無線送信装置は、前記無線受信装置から情報を受信可能な情報受信手段、を備え、前記送信出力制御手段は、前記無線受信装置によって求められた前記実効転送速度を前記実効転送速度に関する情報として前記情報受信手段に受信させるものとしてもよい。こうすれば、無線受信装置によって実効転送速度を求めるため、処理の分散を図ることができる。あるいは、本発明の無線送信装置は、前記無線受信装置から情報を受信可能な情報受信手段、を備え、前記送信出力制御手段は、前記無線受信装置から前記実効速度計測用情報の受信時間を前記実効転送速度に関する情報として前記情報受信手段に受信させ、前記送信した実効速度計測用情報の情報量を前記受信した受信時間により除算することにより前記実効転送速度を求めるものとしてもよい。こうすれば、無線送信装置によって実効転送速度を求めるため、比較的確実に実効転送速度を得ることができる。
【0016】
本発明の無線送受信システムは、
上述したいずれかに記載の無線送信装置と、
前記無線送信装置から無線により情報を受信可能な無線受信手段と、前記無線送信装置へ情報を送信可能な情報送信手段と、前記無線送信装置によって送信された実効速度計測用情報に関する情報を前記無線送信装置へ前記情報送信手段に送信させる受信制御手段と、を備えた無線受信装置と、
を備えたものである。
【0017】
この無線送受信システムでは、無線送信装置が、複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定し、ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定し、設定した実行転送レート及び設定した計測条件で実効速度計測用情報を無線受信装置へ送信し、無線受信装置が、無線送信装置によって送信された実効速度計測用情報に関する情報を無線送信装置へ送信し、無線送信装置が、この送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力する。このように、実際に送信する情報量に基づいて定められた実効速度計測用情報の送信に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力する。したがって、無線通信のネットワーク環境でのより適切な実効転送速度に関する情報をユーザに提供することができる。
【0018】
本発明の無線受信装置において、前記受信制御手段は、前記無線送信装置によって送信された実効速度計測用情報の受信時間を計測し、該計測した受信時間を前記実効速度計測用情報に関する情報として前記情報送信手段に前記無線送信装置へ送信させるものとしてもよい。こうすれば、実効転送速度を求めるのに必要な実効速度計測用情報の受信時間を無線送信装置で利用することができる。
【0019】
本発明の無線受信装置において、前記受信制御手段は、前記無線送信装置によって送信された実効速度計測用情報の受信時間を計測し、前記無線受信手段が受信した前記実効速度計測用情報の情報量を前記受信時間で除算することにより前記実効転送速度を求め、該求めた実効転送速度を前記実効速度計測用情報に関する情報として前記情報送信手段に前記無線送信装置へ送信させるものとしてもよい。こうすれば、実効転送速度を求める処理を無線受信装置が行うため、処理の分散を図ることができる。
【0020】
あるいは、本発明の無線受信装置は、無線受信装置と有線によって接続された態様の無線送信装置から無線により情報を受信可能な無線受信手段と、前記無線送信装置と有線によって接続され前記無線送信装置へ情報を送信可能な有線送信手段と、前記無線受信手段が受信した前記実効速度計測用情報を前記有線送信手段に前記無線送信装置へ送信させる受信制御手段と、を備えたものとしてもよい。こうすれば、無線を使って送信された実効速度計測用情報が、比較的転送速度が大きく周囲の環境に影響されにくい有線を使ってそのまま無線送信装置へ送信されるため、無線によって送信されたときの実効転送速度を求めやすい。
【0021】
本発明の無線送信装置の制御方法は、
無線受信装置に無線で情報を送信可能な無線送信手段、を備えた無線送信装置の制御方法であって、
(a)複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定するステップと、
(b)ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定するステップと、
(c)前記ステップ(a)で設定した実行転送レート及び前記ステップ(b)で設定した計測条件で実効速度計測用情報を前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させるステップと、
(d)前記ステップ(c)で送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力するステップと、
を含むものである。
【0022】
この無線送信装置の制御方法では、複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定し、ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定し、設定した実行転送レート及び設定した計測条件で実効速度計測用情報を無線受信装置へ送信し、この送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力する。このように、実際に送信する情報量に基づいて定められた実効速度計測用情報の送信に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力する。したがって、無線通信のネットワーク環境でのより適切な実効転送速度に関する情報をユーザに提供することができる。なお、この無線送信装置の制御方法において、上述した無線送信装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した無線送信装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0023】
本発明のプログラムは、上述した無線送信装置の制御方法の各ステップを1又は複数のコンピュータに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した無線送信装置の制御方法の各ステップが実行されるため、該制御方法と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
【0025】
次に本発明を具現化した一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である無線LANシステム10の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の印刷指令印刷実行システム10は、本発明の無線送信装置及び無線受信装置としての機能を備えインターネット70に接続したルータ20と、本発明の無線送信装置及び無線受信装置としての機能を備えルータ20と無線LAN72を介して通信する印刷サーバ30と、印刷サーバ30とUSBケーブルで接続され受信した印刷データの印刷などを行うマルチファンクションプリンタ50と、ルータ20と無線LAN72を介して接続されたユーザパソコン(以下ユーザPCとする)60とによって構成されている。この無線LANシステム10のルータ20と印刷サーバ30は、通信規格のIEEE802.gにより2.4GHz帯のISMバンドの複数段の転送レート(54Mbps,48Mbps,36Mbps…など)のうち所定の実行転送レートでデータを送信するようになっている。なお、この印刷指令印刷実行システム10では、説明の便宜により、1つのマルチファンクションプリンタ50と1つのユーザPC60とが無線LAN72に接続されているものとしたが、複数のマルチファンクションプリンタ50及び複数のユーザPC60が無線LAN72に接続されているものとしてもよい。
【0026】
ルータ20は、マルチファンクションプリンタ50やユーザPC60などのクライアントから送信されたデータを通信経路が記述されたルーティングテーブルに従って、指定された送信先へルーティングするものであり、装置全体の制御を司るコントローラ21と、無線LAN72に接続しデータの送受信を行う無線LANボード27と、LANケーブルをLAN端子28aに接続し有線で外部機器とデータの送受信を行う有線LANボード28と、ユーザの指示を入力可能である操作パネル29と、を備える。コントローラ21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM23と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM24と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリ25と、を備えている。このコントローラ21は、バス26を介して無線LANボード27や有線LANボード28,操作パネル29と接続されている。ROM23には、アプリケーションプログラムである転送速度計測用データ送信プログラム、転送速度計測用データ受信プログラムが記憶されている。操作パネル29は、ユーザがルータ20に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、無線LAN72に接続されている機器の実効転送速度を計測するとき、ルータ20を受信側に設定する際に押下される受信設定ボタン29aや送信側に設定する際に押下される送信設定ボタン29b、計測結果を例えばマルチファンクションプリンタ50に印刷出力させたり実効速度計測用データのデータサイズを設定する際に押下される出力ボタン29cなどが設けられている。
【0027】
印刷サーバ30は、ユーザPC60などのクライアントから送信された印刷データをマルチファンクションプリンタ50に送信したりマルチファンクションプリンタ50のスキャナ部52で読み取ったスキャンデータをユーザPC60へ送信したりする装置であり、装置全体の制御を司るコントローラ31と、USB端子36aに接続された外部機器(例えばマルチファンクションプリンタ50)との間でデータの入出力を行うUSBコントローラ36と、無線LAN72に接続しデータの送受信を行う無線LANボード37と、LANケーブルをLAN端子38aに接続し有線で外部機器とデータの送受信を行う有線LANボード38と、ユーザの指示を入力可能である操作パネル40と、を備える。コントローラ31は、CPU32を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM33と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM34と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリ35と、を備えている。このコントローラ31は、バス39を介して無線LANボード37や有線LANボード38,操作パネル40と接続されている。ROM33には、アプリケーションプログラムである転送速度計測用データ送信プログラム、転送速度計測用データ受信プログラムが記憶されている。フラッシュメモリ35には、図2に示すように、実効転送速度を計測する際の条件を含む計測条件情報35aと現在の設定内容などを含む転送速度設定情報35bとが保存されている。図2は、フラッシュメモリ35に保存されている計測条件情報35a及び転送速度設定情報35bの一例の説明図である。計測条件情報35aには、実効転送速度を測定する転送方向と、実効転送速度を計測する際に転送されるデータである実効速度計測用データのサイズと、実効転送速度を測定中に転送レートを変動させるか固定するかのいずれかの情報である転送モードとが含まれている。転送速度設定情報35bには、無線LAN72に接続された各機器の上記転送方向と、各機器の実行転送レートと、各機器の転送方向に対応する計測値である実効転送速度と、実際に印刷データなどを送受信する際の実行転送レートをデータの送受信中に変動させるか固定するかのいずれかの情報である転送モードとが含まれている。操作パネル40は、図1に示すように、ユーザがルータ20に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、各種の指示に応じた文字、図形又は記号が表示される表示パネル41や、無線通信中に点灯するワイヤレスランプ42a、LAN端子38aに接続されたLANケーブルで通信中に点灯するLANランプ42b、印刷サーバ30の状態が正常なときに緑色で点灯し注意時に黄色で点灯し異常時に赤色で点灯するステータスランプ42c、USB端子36aに接続されたUSBケーブルで通信中に点灯するUSBランプ42dなどを備えている。また、操作パネル40は、無線LAN72に接続されている機器の実効転送速度を計測するとき、印刷サーバ30を受信側に設定する際に押下される受信設定ボタン44aや印刷サーバ30を送信側に設定する際に押下される送信設定ボタン44b、計測結果を例えばマルチファンクションプリンタ50に印刷出力する際や実効速度計測用データのデータサイズを設定する際に押下される出力ボタン44cなどを備えている。
【0028】
マルチファンクションプリンタ50は、媒体に記録された画像を読み取るスキャナ部52と、記録紙Sにインクを用いて記録紙Sに印刷を行うプリンタ部54と、装置全体の制御を司るコントローラ56とを備えている。スキャナ部52は、いわゆるフラットベッド型であり、ガラス面の上部に載置された媒体に記録された画像を光学的にラインイメージセンサにより読み取るものである。プリンタ部54は、プリントヘッド内の圧電素子に電圧をかけてこの圧電素子を変形させることによりインクカートリッジ内のインクを加圧して記録紙Sに向かって吐出するインクジェット方式を採用している。なお、プリンタ部54は、電子写真方式の印刷機構としてもよい。
【0029】
ユーザPC60は、周知の汎用パソコンであり、図示しないHDDにインストールされたプログラムによりファイルの印刷指令を無線LAN72を介してマルチファンクションプリンタ50に送信したりマルチファンクションプリンタ50からの応答を受信したりする。また、図示しないHDDには、上述したROM23やROM33に記憶されている転送速度計測用データ送信プログラムや転送速度計測用データ受信プログラムをユーザPC60から実行する転送速度計測実行プログラムがインストールされている。このユーザPC60は、各種情報を画面表示するディスプレイ62や、ユーザが各種指令を入力するキーボード等の入力装置64などを備え、ディスプレイ62に表示されたカーソル等をユーザが入力装置64を介して入力操作するとその入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。
【0030】
次に、こうして構成された本実施形態の無線LANシステム10の動作について、特に、印刷サーバ30の無線通信の実効転送速度を計測する動作について説明する。図3は、ディスプレイ62に表示される転送速度測定条件設定画面80の一例を表す説明図であり、図4は、印刷サーバ30のCPU32により実行される実効速度計測用データ送信ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図5は、ルータ20のCPU22により実行される実効速度計測用データ受信ルーチンの一例を示すフローチャートである。まず、ユーザは、ユーザPC60の入力装置64を操作してユーザPC60にインストールされた転送速度計測実行プログラムを実行する。すると、ユーザPC60は、図3に示すように、印刷サーバ30のROM33に記憶された転送速度測定条件設定画面80をROM33から読み出しディスプレイ62に表示させる。ここでは、説明の便宜のため、図3に示すように、実効転送速度を計測する転送方向を印刷サーバ30からルータ20へとし(即ち、印刷サーバ30を本発明の無線送信装置とすると共にルータ20を本発明の無線受信装置とし)、転送速度計測用データサイズを3Mb、転送モードを変動モードに設定して実効転送速度を計測する場合について説明する。
【0031】
ここで、転送速度測定条件設定画面80について説明する。この転送速度測定条件設定画面80の上段には、計測する転送方向を選択する転送方向設定欄82や受信側の装置へ転送する実効速度計測用データのサイズを指定する計測データサイズ設定欄83,転送モードを選択可能な転送モード設定欄84,転送モードが固定モードに選択されたときに固定する実行転送レートを入力する計測転送レート設定欄85など、実効転送速度の計測条件の入力が可能な欄が設けられている。転送方向設定欄82は、予め無線LAN72に接続されている各機器について上り下りの方向がプルダウンで選択可能となっている。計測データサイズ設定欄83は、ユーザがデータ転送を実行すると予想される複数のデータサイズ(例えば1Mb,3Mb,5Mb,10Mb…など)がプルダウンで選択可能となっている。転送モード設定欄84は、できる限り速い転送レートに実行転送レートを変更しながらデータを送信するモードである変動モードと、予め指定した転送レートに実行転送レートを固定してデータを送信するモードである固定モードとが選択可能となっている。計測転送レート設定欄85は、転送モード設定欄84で固定モードが選択されたときのみ入力可能であり、予め定められた転送レート(例えば54Mbps,48Mbps,36Mbps…など)がプルダウンにより選択可能になっている。また、この転送速度測定条件設定画面80の中段には、現在の印刷サーバ30に設定されている実行転送レートや計測した実効転送速度,選択されている転送モードなどを含む実際のデータ転送に用いられる設定内容などの情報を表示する設定表示欄86が設けられている。この無線LANシステム10では、設定表示欄86に表示されている内容で、実際のデータ転送が行われるようになっている。なお、この設定表示欄86では、実効転送速度の計測で変動モードと固定モードとが選択可能となっているのと同様に、実際のデータ転送においても変動モードと固定モードとが選択可能となっている。転送速度測定条件設定画面80の下段には、ユーザへのメッセージを表示するメッセージ表示欄87,選択した内容をキャンセルするときに押下されるキャンセルボタン88,実効転送速度を計測するときに押下される計測実行ボタン89などが配置されており、カーソル81により上述した設定欄に指示などを入力可能となっている。
【0032】
さて、図3に示した計測条件の内容で計測実行ボタン89がカーソル81により選択され入力装置64のクリック操作により押下されると、転送方向設定欄82に設定された転送方向に基づいて、図4に示すROM33に記憶された実効速度計測用データ送信ルーチンを印刷サーバ30のCPU32に実行させると共に、図5に示すROM23に記憶された実効速度計測用データ受信ルーチンをルータ20のCPU22に実行させる。なお、実効速度計測用データ受信ルーチンについては、詳しくは後述する。この実効速度計測用データ送信ルーチンを実行すると、CPU32は、まず、受信装置としてのルータ20へコネクションの実行を行い(ステップS100)、コネクションが確立したか否かを判定する(ステップS110)。コネクションが確立したか否かの判定は、ルータ20から所定信号(例えばハンドシェイクのACK信号)を受信したか否かに基づいて行う。コネクションが確立していないものと判定したときには、CPU32は、そのまま待機し、コネクションが確立したものと判定されたときには転送速度測定条件設定画面80で設定された転送速度計測条件を読み出すと共に、実効転送速度を測定する際の実行転送レートの設定など、実効転送速度の計測の準備を行う(ステップS120)。ここで、実効転送速度の計測の準備として、実効速度計測用データのサイズを計測データサイズ設定欄83に設定されているサイズに設定し、転送モードを転送モード設定欄84に設定されているモードに設定し、実行転送レートをRAM34に記憶されている現在の転送レートに設定するものとした。
【0033】
次に、CPU32は、実効速度計測用データをルータ20へ送信する(ステップS130)。ここでは、実効速度計測用データには、特に意味のあるデータが含まれている必要はなく、例えば、予め定められた所定サイズのデータを複数用いて設定されたサイズとするものとしてもよい。また、ここでは、実効速度計測用データを所定容量のパケットごとに送信するものとした。続いて、CPU32は、受信を成功した信号であるACK信号をルータ20から受信できたか否かを判定し(ステップS140)、ACK信号を受信できなかったときには、実行転送レートを減少し(ステップS150)、ステップS130以降の処理を実行する。ここでは、同じパケットを3回送信してもACK信号を受信できなかったときに実行転送レートを減少させるものとした。また、この実行転送レートの減少は、現在の実行転送レートから2段階下げるよう設定されている。
【0034】
一方、ACK信号を受信できたときには、CPU32は、現在の実行転送レートに設定してから所定時間(例えば数十秒など)経過したか否かを判定する(ステップS160)。現在の実行転送レートに設定してから所定時間経過していないと判定されたときには、CPU32は、実効速度計測用データをすべて送信したか否かを判定し(ステップS190)、実効速度計測用データをすべて送信していないと判定されたときにはステップS130以降の処理を行う。一方、ステップS160で現在の実行転送レートに設定してから所定時間経過したと判定されたときには、設定されている実行転送レートが最大値(ここでは54Mbps)であるか否かを判定し(ステップS170)、実行転送レートが最大値でないと判定されたときには実行転送レートを増加し(ステップS180)、ステップS130以降の処理を実行する。この実行転送レートの増加は、現在の実行転送レートから1段階大きくするよう設定されている。ここでは、現在の実行転送レートに設定してから所定時間経過したときには、無線環境が改善された可能性があるものとして転送レートを増加して送信を試みるのである。このように、ACK信号を受信できたか否かや実行転送レートに設定してからの時間などに基づいて実行転送レートを変更しながら実効速度計測用データを送信し続けるのである。
【0035】
ステップS170で実行転送レートが最大値であると判定されたあと、または、ステップS160で現在の実行転送レートに設定してから所定時間経過していないと判定されたあとに、実効速度計測用データをすべて送信したと判定されたときにはコネクション断信号をルータ20に送信する(ステップS200)。
【0036】
続いて、CPU32は、ルータ20が計測した実効速度計測用データの受信時間を受信したか否かを判定し(ステップS210)、受信時間を受信していないと判定されたときには、そのまま待機する。一方、受信時間を受信したと判定されたときには、CPU32は、実効速度計測用データのサイズと受信時間とに基づいて実効転送速度を算出する(ステップS220)。ここでは、実効転送速度は、実効速度計測用データのサイズを受信時間で除算することにより求める。そして、CPU32は、算出した実効転送速度をフラッシュメモリ35の所定領域に保存出力し(ステップS230)、実効転送速度を出力し(ステップS240)、このルーチンを終了する。ここでは、計測した実効転送速度は、設定表示欄86の実効転送速度欄に計測した実効転送速度の値を埋め込み(例えば後述図7参照)、この計測値を埋め込んだ転送速度測定条件設定画面80をユーザPC60へ無線LANボード37を介して送信出力すると共に、この転送速度測定条件設定画面80の画像をマルチファンクションプリンタ50で印刷可能な印刷データに変換してUSBコントローラ36を介してマルチファンクションプリンタ50で印刷出力するものとした。そして、ユーザPC60は、ディスプレイ62に受信した転送速度測定条件設定画面80の画像を表示する。また、マルチファンクションプリンタ50は、入力した印刷データに基づいてプリンタ部54を駆動し、記録紙Sに上記転送速度測定条件設定画面80の画像を印刷する。ユーザは、ディスプレイ62や記録紙Sにより計測した結果を確認する。
【0037】
次に、実効速度計測用データ送信ルーチンと並行してルータ20のCPU22により実行されるROM23に記憶された実効速度計測用データ受信ルーチンについて説明する。このルーチンは、ROM23に記憶され、ユーザPC60で実効転送速度の計測の実行指令を受けて実行される。このルーチンが実行されると、まず、ルータ20のCPU22は、転送速度計測用データを受信する準備を行う(ステップS300)。転送速度計測用データを受信する準備は、例えば、RAM24の所定領域をクリアしたり、実効転送速度を計測する機器以外からのコネクション要求を受け付けないようにしたりする。次に、CPU22は、印刷サーバ30からのコネクション要求を受信したか否かを判定し(ステップS310)、コネクション要求を受信していないときにはそのまま待機し、コネクション要求を受信したと判定されたときにはコネクションが確立した旨の信号を印刷サーバ30へ送信し(ステップS320)、実効速度計測用データを受信したか否かを判定する(ステップS330)。実効速度計測用データを受信していないと判定されたときには、CPU22は、そのまま待機し、実効速度計測用データを受信したと判定されたときには、図示しないタイマによる実効速度計測用データの受信時間の計測を開始する(ステップS340)。
【0038】
次に、CPU22は、実効速度計測用データの受信が成功したか否かを判定し(ステップS350)、実効速度計測用データの受信が成功したときには、ACK信号を印刷サーバ30へ送信する(ステップS360)。ACK信号を印刷サーバ30へ送信したあと、または、ステップS350でデータ受信ができなかったと判定されたあと、CPU22は、実効速度計測用データのすべてが送信された信号としてのコネクション断信号を印刷サーバ30から受信したか否かを判定し(ステップS370)、コネクション断信号を受信していないときには、CPU22は、ステップS340以降の処理を実行し、コネクション断信号を受信したと判定されたときには、実効速度計測用データをすべて受信したものとみなし、実効速度計測用データの受信時間の計測を終了すると共に計測した受信時間を印刷サーバ30へ送信し(ステップS380)、コネクションを断ち(ステップS390)、このルーチンを終了する。
【0039】
最後に、ユーザPC60、ルータ20及び印刷サーバ30で行われる各処理と通信の様子について説明する。図6は、無線LANシステム10の各処理及び通信の様子をシーケンシャルに示す説明図である。なお、図6に示した各ステップ番号は、図4〜5の各ルーチンのステップ番号に対応している。ユーザPC60で転送速度測定条件設定画面80の計測実行ボタン89をクリックされると、ユーザPC60のCPUは、転送速度測定条件設定画面80に設定されている内容に基づいて、印刷サーバ30を送信側、ルータ20を受信側として実効転送速度の計測を開始させる。まず、受信側のルータ20のCPU22は、受信準備を行う(ステップS300)。一方、印刷サーバ30のCPU32は、ルータ20へコネクションの実行を行い(ステップS100)、ルータ20から送信された(ステップS320)コネクションが確立した旨の信号を受信すると、実効転送速度の計測の準備を行い(ステップS120)、ユーザが実際に転送するデータサイズに基づいて定めた実効速度計測用データをルータ20へ無線で送信する(ステップS130)。実効速度計測用データを受信したルータ20は、受信時間の計測を開始し(ステップS340)、実効速度計測用データの一部であるパケットを受信するたびにACK信号を送信する(ステップS360)。ここで、印刷サーバ30やルータ20などの無線による通信機器は、周囲の環境、例えば、他の無線LANによる干渉や電磁波などを発生する他の機器の稼働などによってデータ転送のしやすさが変化する。このため、印刷サーバ30は、ルータ20からのACK信号を受信できなかったときには実行転送レートを減少させ、所定時間経過したときには実行転送レートを増加させる処理を行うのである(ステップS150〜S180)。続いて、印刷サーバ30は、最後のデータを送信し、コネクションを断つ信号をルータ20へ送信する(ステップS200)。この信号を受信したルータ20は、実効速度計測用データの受信時間の計測を終了し(ステップS380)、計測した受信時間を印刷サーバ30へ送信する(ステップS390)。受信時間を受信した印刷サーバ30は、実効速度計測用データのデータサイズと受信時間とに基づいて実効転送速度を求め(ステップS220)、求めた実効転送速度を保存出力し(ステップS230)、計測した実効転送速度をユーザPC60とマルチファンクションプリンタ50とに出力する(ステップS240)。このようにして、ユーザの使用環境に即した実効速度計測用データを印刷サーバ30が無線で送信したときの実効転送速度を計測し、計測した内容をユーザに出力するのである。
【0040】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の無線LANシステム10が本発明の無線送受信システムに相当し、ルータ20が無線受信装置に相当し、印刷サーバ30が無線送信装置に相当し、マルチファンクションプリンタ50が印刷装置に相当する。本実施形態の印刷サーバ30において、無線LANボード37が本発明の無線送信手段に相当し、フラッシュメモリ35が情報記憶手段に相当し、USBコントローラ36及び無線LANボード37が出力手段に相当し、CPU32が転送レート設定手段、条件設定手段及び送信出力制御手段に相当する。また、本実施形態のルータ20において、無線LANボード27が無線受信手段及び情報送信手段に相当し、CPU22が受信制御手段に相当する。そして、ACK信号が本発明の無線受信装置から受信すべき信号に相当し、印刷データ及びスキャンデータが送信情報に相当する。なお、本実施形態では、無線LANシステム10の動作を説明することにより本発明の無線送信装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0041】
以上詳述した本実施形態の無線LANシステム10によれば、印刷サーバ30は、複数の転送レートのうちから実行転送レートを設定し、無線でユーザが送受信するデータサイズを含む実効転送速度の計測条件をユーザの入力に基づいて設定し、設定したデータサイズを有する実効速度計測用データを、設定された実行転送レートで無線によりルータ20へ送信する。実効速度計測用データを受信したルータ20は、受信時間を計測し、計測した受信時間を印刷サーバ30へ送信する。そして、印刷サーバ30は、受信した受信時間と実効速度計測用データのサイズに基づいて実効転送速度を算出し、この実効転送速度をユーザに表示出力又は印刷出力する。このように、実際に送信するデータサイズに基づいて定められた実効速度計測用データの送信を利用して実効転送速度を求めて出力する。したがって、無線通信のネットワーク環境での、より適切な実効転送速度をユーザに提供することができる。また、ユーザが入力した実効転送速度の計測条件で実効速度が計測されるため、ユーザが望む実効転送速度を提供することができる。また、ルータ20が、印刷サーバ30によって送信された実効速度計測用データの受信時間を計測し、この計測した受信時間を実効速度計測用データに関する情報として印刷サーバ30へ送信するため、実効転送速度を求めるのに必要な実効速度計測用データの受信時間を印刷サーバ30で利用することができる。更に、このネットワーク環境に関する情報である実効転送速度を利用して、例えば無線送信装置や無線受信装置の位置を変えたりすることで、より適切な実効転送速度となるようなネットワーク環境を構築することができる。また、無線の電波状況を測定する測定器などを別途用いて間接的に転送速度を計測するものと比べ、実際にその場所で使用している機器で直接的にそのものの転送速度を計測するため、実状に合う実効転送速度をユーザに提供することができる。
【0042】
また、ルータ20へ実効速度計測用データが送信開始されてから送信終了するまでの間に、実効速度計測用データの一部であるパケットが送信されたのちに、ACK信号を受信したか否かに基づいて複数の転送レートから実行転送レートを設定するため、比較的安定したデータ送信を行うことができる。このとき、ACK信号をルータ20から受信できなかったときには、現在の転送レートよりも小さな転送レートに実行転送レートを設定するため、確実にデータをルータ20に送信することができる。更に、マルチファンクションプリンタ50の印刷データとして実効転送速度をマルチファンクションプリンタ50へ出力するため、実効転送速度が記録紙Sに印刷され、ユーザは実効転送速度に関する情報を確認しやすい。更にまた、求めた実効転送速度をフラッシュメモリ35に保存出力するため、実効転送速度をあとで利用しやすい。そして、印刷サーバ30がルータ20から実効速度計測用データの受信時間を受信し、実効速度計測用データのデータサイズをこの受信時間により除算することにより実効転送速度を求めるため、比較的確実に実効転送速度を得ることができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、印刷サーバ30を無線送信装置とし、ルータ20を無線受信装置として説明したが、印刷サーバ30を無線受信装置とし、ルータ20を無線送信装置としてもよい。つまり、図3の設定表示欄86の転送方向をルータ20から印刷サーバ30の方向に設定して実効転送速度を計測するものとしてもよい。あるいは、ユーザPC60を無線受信装置とし、ルータ20を無線送信装置としてもよいし、ルータ20を無線受信装置とし、ユーザPC60を無線送信装置としてもよい。こうしても、各機器間の実効転送速度を計測することができるため、無線通信のネットワーク環境でのより適切な実効転送速度をユーザに提供することができる。
【0045】
上述した実施形態では、ルータ20が受信時間を計測し、印刷サーバ30がこの受信時間を用いて実効転送速度を算出するものとしたが、ルータ20が、印刷サーバ30によって送信された実効速度計測用データの受信時間を計測し、無線受信手段が受信した実効速度計測用データのデータサイズを受信時間で除算することにより実効転送速度を求め、この求めた実効転送速度を印刷サーバ30へ送信させるものとしてもよい。こうすれば、実効転送速度を求める処理をルータ20が行うため、処理の分散を図ることができる。
【0046】
上述した実施形態では、実効速度計測用データ送信ルーチンのステップS130〜S190で実行転送レートを変動させながら実効転送速度を求めるものとしたが、図7に示すように、計測した実効転送速度を通常のデータ転送(実効転送速度の計測時以外のデータ転送)の実行転送レートに反映させるものとしてもよい。図7は、実効転送速度を通常のデータ転送時の実行転送レートに反映させる一例の説明図である。具体的には、実効転送速度の計測中に設定された各々の転送レートで送信が成功した時間を積算し、最も長く設定された転送レートを以降の実行転送レートに固定して設定する。そして、ユーザがマルチファンクションプリンタ50からユーザPC60へ送信を指定したスキャンデータなどの送信データをこの固定した実行転送レートで印刷サーバ30からルータ20へ送信させたり、ユーザがユーザPC60からマルチファンクションプリンタ50へ送信を指定した印刷データなどの送信データをこの固定した実行転送レートでルータ20から印刷サーバ30へ送信させたりしてもよい。転送レートの状態によっては、現在の転送レートよりも実行転送レートを上げることが可能か否かをACK信号の受信に基づいて調べる処理、つまり、転送レートを上げてみて同一のパケットを複数回送信しACK信号を受信できなかったときには転送レートを下げるという処理によって無駄な時間が生じることがあり、転送レートを変動させるとかえって実効転送速度が低下してしまう場合がある。ここでは、実行転送レートを固定して実行転送レートを変動させることにより生じる無駄な時間を抑制するため、結果的に適切な実効転送速度を得ることができる。なお、実行転送レートを固定するか否かの判定は、実行転送レートを変動させるよりも実行転送レートを固定した方が大きな実効転送速度が得られるような閾値を経験的に求め、この閾値を用いて行うものとしてもよい。また、実行転送レートを固定するときには、図7に示すように、その旨のメッセージをメッセージ表示欄87に表示してユーザに報知するものとしてもよいし、表示パネル41に表示してユーザに報知するものとしてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、転送速度測定条件設定画面80の計測条件として転送モードを変動モードとした場合、つまり実効速度計測用データ送信ルーチンのステップS130〜S190で実行転送レートを変動させるものとして説明したが、転送速度測定条件設定画面80の計測条件として転送モードを固定モードとする、つまり実効速度計測用データ送信ルーチンのステップS130〜S190を省略したものとしてもよい。具体的には、計測転送レート設定欄85に入力された実行転送レートに固定して実効速度計測用データを送信し、受信時間に基づいて実効転送速度を求める。こうすれば、ユーザが計測を望む実行転送レートでの実効転送速度を求めることができる。なお、現在のネットワーク環境では計測できないほど大きな実行転送レートが設定され、ACK信号が所定の計測不能時間を超えても受信できないときには、設定された実行転送レートでは実効転送速度が計測できない旨のメッセージを表示パネル41やディスプレイ62に表示してもよい。
【0048】
上述した実施形態では、計測した実効転送速度を転送速度測定条件設定画面80として画像表示するよう出力するものとしたが、例えば、印刷サーバ30の表示パネル41に文字表示させてもよい。あるいは、ワイヤレスランプ42a(又はステータスランプ42c)の点滅速度により実効転送速度を表示するものとしてもよい。このとき、実効転送速度が速くなるとワイヤレスランプ42aの点滅速度が速くなるように設定してもよい。あるいは、ワイヤレスランプ42aの点灯色によって実効転送速度を表示するものとしてもよい。このとき、例えば実効転送速度が遅いときには赤色とし、速度が高くなるに伴い、橙色、黄色、緑色、青色となるように設定してもよい。あるいは、スピーカを設け、実効転送速度を音声により報知するものとしてもよい。こうすれば、画像、光及び音を利用するため、ユーザは実効転送速度に関する情報を比較的容易に認識することができる。
【0049】
上述した実施形態では、ルータ20と印刷サーバ30との間のデータの送受信を無線のみで行うものとしたが、図8に示すように、ルータ20のLAN端子28aと印刷サーバ30のLAN端子38aとを有線のLANケーブルで接続し、設定された実行転送レートで実効速度計測用データを印刷サーバ30から無線LANボード37と無線LANボード27とを介してルータ20へ送信させると共にルータ20からLAN端子28a及びLAN端子38aを介してこの実効速度計測用データを印刷サーバ30に受信させ、送受信した結果に基づいて実効転送速度に関する情報を求めるものとしてもよい。図8は、無線LAN72と有線のLANとを用いて実効転送速度を計測する説明図である。このとき、送信元としての印刷サーバ30で実効速度計測用データを受信する受信時間を計測すると共に実効転送速度を算出する。こうすれば、ルータ20において特別な処理を行うことなく実効転送処理に関する情報を印刷サーバ30で求めることが可能であるため、1つの装置で簡潔に実効転送速度を計測することができる。また、無線を使って送信された実効速度計測用データが、比較的転送速度が大きく周囲の環境に影響されにくい有線を使ってそのまま印刷サーバ30へ送信されるため、無線によって送信された部分での実効転送速度を求めやすい。
【0050】
上述した実施形態では、無線LAN72の通信の実効転送速度の計測をユーザPC60の転送速度測定条件設定画面80の計測実行ボタン89を押下して開始するものとしたが、実効転送速度の計測をユーザPC60を用いないで開始するものとしてもよい。具体的には、印刷サーバ30の出力ボタン44cの押下回数で実効速度計測用データのデータサイズを設定するものとし、実効速度計測用データ受信ルーチンの起動指令としてルータ20の受信設定ボタン29aを押下しこの実効速度計測用データ受信ルーチンを起動しルータ20を受信待機状態としたあと、実効速度計測用データ送信ルーチンの起動指令として印刷サーバ30の送信設定ボタン44bを押下しこの実効速度計測用データ送信ルーチンを起動し、図6に示した処理を実行させ、計測結果を表示パネル41に表示出力したり、計測結果をマルチファンクションプリンタ50に印刷出力したりする。同様に、ルータ20の出力ボタン29cの押下回数で実効速度計測用データのデータサイズを設定するものとし、実効速度計測用データ受信ルーチンの起動指令として印刷サーバ30の受信設定ボタン44aを押下しこの実効速度計測用データ受信ルーチンを起動し印刷サーバ30を受信待機状態としたあと、実効速度計測用データ送信ルーチンの起動指令としてルータ20の送信設定ボタン29bを押下しこの実効速度計測用データ送信ルーチンを起動するものとしてもよい。こうすれば、ユーザPC60を必要としない簡単な構成で無線LAN72の実効転送速度を計測することができる。
【0051】
上述した実施形態では、印刷サーバ30が表示パネル41や受信設定ボタン44a,送信設定ボタン44b,出力ボタン44cなどを備えたものとしたが、計測結果の報知方法や計測の開始方法に合わせて適宜省略するものとしてもよい。また、ルータ20においても、受信設定ボタン29aや送信設定ボタン29b,出力ボタン29cなどを備えたものとしたが、計測結果の報知方法や計測の開始方法に合わせて適宜省略するものとしてもよいし、画像を表示可能な表示パネルを備えるものとしてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、実効転送速度の計測条件の設定で実効速度計測用データのデータサイズをユーザが入力するものとしたが、印刷サーバ30のCPU32がユーザにより実効転送速度の計測以外で転送されている1回の送信あたりのデータサイズの統計をとり、データ転送時の平均データサイズをフラッシュメモリ35に記憶しておき、その平均データサイズの値を実効速度計測用データのサイズに設定するものとしてもよい。こうすれば、ユーザが通常時に転送しているデータサイズを気に留めることなく実際の条件に即した実効転送速度を計測することができる。
【0053】
上述した実施形態では、計測条件情報35aや転送速度設定情報35bは印刷サーバ30のフラッシュメモリ35に記憶するものとしたが、ルータ20のフラッシュメモリ25に記憶するものとしてもよいし、ユーザPC60の図示しないHDDに記憶するものとしてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、計測した実効転送速度をフラッシュメモリ35へ保存出力し、ディスプレイ62へ表示出力すると共にマルチファンクションプリンタ50で印刷出力するものとしたが、これら保存出力、表示出力及び印刷出力のうち少なくとも1つ以上を適宜選択して出力させてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、実効速度計測用データ送信ルーチンのステップS160で、転送レートを増加するか否かの判定を現在の転送レートに設定されてから所定時間経過するか否かに基づいて行うものとしたが、転送レートを増加するか否かの判定を現在の転送レートに設定されてから所定パケット数送信所定時間経過するか否かに基づいて行うものとしてもよいし、現在の転送レートに設定されてから所定のデータサイズが送信されたか否かに基づいて行うものとしてもよい。
【0056】
上述した実施形態では、無線LANシステム10の無線通信機器を、ルータ20、印刷サーバ30及びユーザPC60としたが、無線を利用して通信する機器(例えば携帯電話など)であれば特に限定されずに本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】無線LANシステム10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】計測条件情報35a及び転送速度設定情報35bの一例の説明図である。
【図3】転送速度測定条件設定画面80の一例を表す説明図である。
【図4】実効速度計測用データ送信ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】実効速度計測用データ受信ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】無線LANシステム10の各処理及び通信の様子の説明図である。
【図7】実効転送速度を通常時の実行転送レートに反映させる一例の説明図である。
【図8】無線LAN72と有線LANとで実効転送速度を計測する説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10 無線LANシステム、20 ルータ、21 コントローラ、22 CPU、23 ROM、24 RAM、25 フラッシュメモリ、26 バス、27 無線LANボード、28 有線LANボード、28a LAN端子、29 操作パネル、29a 受信設定ボタン、29b 送信設定ボタン、29c 出力ボタン、30 印刷サーバ、31 コントローラ、32 CPU、33 ROM、34 RAM、35 フラッシュメモリ、35a 計測条件情報、35b 転送速度設定情報、36 USBコントローラ、36a USB端子、37 無線LANボード、38 有線LANボード、38a LAN端子、39 バス、40 操作パネル、41 表示パネル、42a ワイヤレスランプ、42b LANランプ、42c ステータスランプ、42d USBランプ、44a 受信設定ボタン、44b 送信設定ボタン、44c 出力ボタン、50 マルチファンクションプリンタ、52 スキャナ部、54 プリンタ部、56 コントローラ、60 ユーザPC、62 ディスプレイ、64 入力装置、70 インターネット、72 無線LAN、80 転送速度測定条件設定画面、81 カーソル、82 転送方向設定欄、83 計測データサイズ設定欄、84 転送モード設定欄、85 計測転送レート設定欄、86 設定表示欄、87 メッセージ表示欄、88 キャンセルボタン、89 計測実行ボタン、S 記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線受信装置に無線で情報を送信可能な無線送信手段と、
情報を出力可能な出力手段と、
複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定する転送レート設定手段と、
ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定する条件設定手段と、
前記転送レート設定手段によって設定された実行転送レート及び前記条件設定手段によって設定された計測条件で実効速度計測用情報を前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させ該送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を前記出力手段に出力させる送信出力制御手段と、
を備えた無線送信装置。
【請求項2】
前記条件設定手段は、前記実効転送速度の計測条件をユーザの入力に基づいて設定する、請求項1に記載の無線送信装置。
【請求項3】
前記転送レート設定手段は、前記無線送信手段によって前記無線受信装置へ前記実効速度計測用情報が送信開始されてから送信終了するまでの間に、前記実効速度計測用情報の一部が送信されたのちに前記無線受信装置から受信すべき信号に基づいて前記複数の転送レートから前記実行転送レートを設定する、
請求項1又は2に記載の無線送信装置。
【請求項4】
前記転送レート設定手段は、前記送信出力制御手段が前記出力手段に出力させる前記実効転送速度に関する情報に基づいて複数の転送レートのうち1つに固定した転送レートを以降の前記実行転送レートに設定し、
前記送信出力制御手段は、ユーザが送信を指定した送信情報を前記転送レート設定手段が固定して設定した実行転送レートで前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させる、
請求項1〜3のいずれかに記載の無線送信装置。
【請求項5】
前記出力手段は、画像表示、光表示及び音声のうち少なくとも1つを含む態様で前記実効転送速度に関する情報をユーザに報知可能な報知手段である、
請求項1〜4のいずれかに記載の無線送信装置。
【請求項6】
前記出力手段は、着色剤により印刷媒体に印刷する印刷装置が印刷可能である態様で前記実効転送速度に関する情報を該印刷装置へ出力する、
請求項1〜5のいずれかに記載の無線送信装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の無線送信装置であって、
情報を保存可能な情報記憶手段、を備え、
前記送信出力制御手段は、前記求めた実効転送速度に関する情報を前記情報記憶手段に保存出力する、
無線送信装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の無線送信装置であって、
前記無線受信装置と有線によって接続され該無線受信装置から情報を受信可能な有線受信手段、を備え、
前記送信出力制御手段は、前記実効速度計測用情報を前記転送レート設定手段によって設定された実行転送レートで前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させると共に前記有線受信手段に前記無線受信装置から該実効速度計測用情報を受信させ該送受信した結果に基づいて前記実効転送速度を求める、
無線送信装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の無線送信装置と、
前記無線送信装置から無線により情報を受信可能な無線受信手段と、前記無線送信装置へ情報を送信可能な情報送信手段と、前記無線送信装置によって送信された実効速度計測用情報に関する情報を前記無線送信装置へ前記情報送信手段に送信させる受信制御手段と、を備えた無線受信装置と、
を備えた無線送受信システム。
【請求項10】
無線受信装置に無線で情報を送信可能な無線送信手段、を備えた無線送信装置の制御方法であって、
(a)複数の転送レートのうち情報送信の実行に用いる実行転送レートを設定するステップと、
(b)ユーザが送受信する情報量に基づいて定められる実効速度計測用情報の情報量の条件を含む実効転送速度の計測条件を設定するステップと、
(c)前記ステップ(a)で設定した実行転送レート及び前記ステップ(b)で設定した計測条件で実効速度計測用情報を前記無線送信手段に前記無線受信装置へ送信させるステップと、
(d)前記ステップ(c)で送信した結果に基づいて求められた実効転送速度に関する情報を出力するステップと、
を含む無線送信装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の無線送信装置の制御方法の各ステップを1以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−22453(P2008−22453A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194304(P2006−194304)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】