説明

無線送受信装置

【課題】受信機の異常を個別に検出することができ、2台以上で使用される場合でもどの受信機が異常であるかを判断することのできる無線送受信装置を提供する。
【解決手段】送信機及び受信機を備えた無線送受信装置において、送信機は、電波送信時に送信中であることを通知するものとし、受信機12は、受信信号の受信電界レベルを検出する検出部122と、ここで検出された受信電界レベルを異常検出閾値と比較する比較部127と、この受信電界レベルが異常検出閾値に達したとき、前記送信機11からの通知の有無を参照して、通知を受けている場合に当該受信機が異常状態であると判定する判定部128とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無線電話用中継装置等の無線送受信装置に係り、特に受信機の異常状態を検出する機能を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線電話用送受信装置にあっては、二組の同一送受信機を備えた2重系(現用/予備)を構成する場合がある。この場合、各受信機の持つスケルチ機能を利用し、2台共同じ受信電界であるにもかかわらず、一方の受信機のスケルチがオン、他方の受信機のスケルチがオフといった不一致を生じた場合に、受信機に異常があると判断していた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、その場合はまず2台の同一受信機であることが条件となり、1台のみで使用する場合は異常の判断ができないという問題が生じている。また、2台使用していても、それぞれの受信機のスケルチ設定レベルが同一である必要があり、一方の受信機が正常であっても、設定レベルの誤差、違いにより他方の受信機が異常と判断されてしまうことがある。このような場合に、2台のうちどちらの受信機が異常となってスケルチの不一致が生じているのかが実機を確認しないと判断することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−017740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の複数組で同一送受信機を備えた2重系を構成する無線送受信装置にあっては、受信機が異常であることは判っても、複数台正常で使用されていること、各台とも同一のスケルチ設定レベルであることが前提条件となり、またどの受信機が異常となっているかがその異常情報だけでは判断できないといった問題があった。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、受信機の異常を個別に検出することができ、2台以上で使用される場合でもどの受信機が異常であるかを判断することのできる無線送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、送信機及び受信機を備えた無線送受信装置において、前記送信機は、電波送信時に送信中であることを通知する通知手段を備え、前記受信機は、受信信号の受信電界レベルを検出する検出手段と、この手段で検出された受信電界レベルを異常検出閾値と比較する比較手段と、この手段で前記受信電界レベルが異常検出閾値に達したとき、前記送信機からの通知の有無を参照して通知を受けている場合に当該受信機が異常状態であると判定する判定手段とを備える構成とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、個々の受信機で送信機から送信中である旨の通知を受けているか否かで異常を判別することが可能となる。また、複数の受信機で運用される場合でも、どの受信機が異常なのかを判断することが可能となり、個々の受信機で任意に異常検出閾値を調整することができるので、設置環境による空中線状況に応じた設定をすることができ、また、運用方法による異常検出発報の重要性に応じた設定をすることが可能となる。
【0009】
したがって、本発明によれば、受信機の異常を個別に検出することができ、2台以上で使用される場合でもどの受信機が異常であるかを判断することのできる無線送受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線送受信装置を用いた移動通信システムを示す概略ブロック図。
【図2】上記実施形態に用いられる受信機の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】上記実施形態の異常検出処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る無線送受信装置を用いた移動通信システムを示す概略ブロック図である。図1において、1が本発明に係る無線送受信装置である。この無線送受信装置1は移動局2との間で無線通信を行うための送信機11と受信機12を備え、例えば山頂にある無線局に設置される。この無線送受信装置1は専用回線等を通じてビル等に設置される固定局3に接続され、移動局2と固定局3との間の通話を可能とする。
【0012】
また、上記無線送受信装置1の送信機11及び受信機12はそれぞれ異常検出機能を備え、異常を検出した場合には、送信機異常情報、受信機異常情報を異常監視装置4に送る。この異常監視装置4は、入力された異常検出結果から送信機11、受信機12それぞれの異常発生を監視し、異常発生時に予備系(図示せず)に切り替える等の処置を施すものである。
【0013】
上記システムにおいて、具体的な運用例について説明する。まず、上記移動局2から送話すると、音声を変調した移動局送信波S1が受信機12に届き、受信機12にて復調した音声信号S2が固定局13へ伝送されて受話される。逆に固定局3から送話すると、音声信号S3と送信起動制御信号(以下、送信起動と記す)S4が受信機12を介して送信機11に伝送される。尚、受信機12を経由せず、別の機器(制御器等)を経由したり、あるいは直接接続したりして送信機11へ音声信号S3と送信起動S4を伝送するようにしてもよい。送信起動S4が送信機11に入力されると、送信機11では音声信号S3を変調して送信波S5を送出する。この送信波S5は移動局2で受信復調され、これにより固定局3からの音声が受話される。
【0014】
ここで、上記送信機11から送出される送信波S5は受信機12でも受信される。送信機11と受信機12の各アンテナはいずれも無線局に設置され固定の場所にあるので、送信波S5は常にほぼ一定の受信電界レベルで受信機12のアンテナに到達することになる。これに対し、場所が移動する移動局1からの移動局送信波S1の受信電界レベルは一定ではない。一方、受信機12は、移動局2からの送信波S1の受信時と自局送信機11からの送信波S5の受信時とを識別する必要がある。そこで、送信機11にて、送信時は自局送信波を発射中であることを示すプレス信号S6を受信機12へ伝送(通知)し、受信機12内での異常判断条件に用いる。
【0015】
送信機11及び受信機12はそれぞれ異常を検出する機能を備え、異常を検出した際に異常情報S7,S8を送出する機能を備える。送信機11で検出された送信機異常情報S7及び受信機12で検出された受信機異常情報S8は、異常監視装置4へ送られ、送受信装置1の異常判断条件として用いられる。また、送信機異常情報S7は異常監視装置4を介して受信機12にも送られる。
【0016】
次に、前記受信機12の内部構成について、図2の概略ブロック図を用いて説明する。
【0017】
図2において、アンテナ(ANT)により入力された送信波の受信信号は、アンテナフィルタや高周波増幅部を含むRX−RF部121によりチャンネル選択及び増幅処理され中間周波数(IF)に変換されてIF−IC部122に入力される。IF−IC部122にて音声信号が検波され、音声増幅部や音声帯域フィルタを含むAF−AMP部123を通り、スピーカ(SP)124やライン出力端子(Line Out)125から外部機器へ出力される。
【0018】
また、IF−IC122からは受信電界レベルに応じた電圧(RSSI: Received Signal Strength Indicator)が出力され、その電圧を利用してスケルチ回路を含むSQ部126にてスケルチ制御(任意で設定した受信電界レベル以上の入力があった場合にAF−AMP部123への出力をONにする)を行う。
【0019】
本発明に係る受信機12では、さらにそのRSSI電圧を利用して、電圧比較器127、AND(論理積)回路128,129で受信機自体の異常検出を行う。その異常検出の処理の流れを図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0020】
受信機12では、常時自局送信機11から通知されるプレス信号S6と自局送信機異常情報S7を1/0の信号で取り込んでいる。移動局2または自局送信機11が送信すると、その送信波は受信機12で受信され(ステップS11)、IF−IC122にて受信電界レベル(a)が検出されてRSSI電圧として出力される(ステップS12)。
【0021】
受信機12では、任意の異常検出閾値(b)が設定されており、(a)と(b)の電圧が電圧比較器127によって比較され(ステップS13)、その比較結果(ステップS14)が(a)<(b)になった場合に電圧比較器127より“1”が出力される。
【0022】
このとき、移動局2からの送信であった場合は、移動局2の位置により(a)<(b)となり得てしまうため、プレス信号の有無を判別して自局送信時であったかどうかをAND(論理積)回路128にて判定し(ステップS15)、さらに異常監視装置4からの自局送信機異常情報から自局送信機11が異常であったかどうかをAND回路129にて判定し(ステップS16)、自局送信機11に異常がない場合には、結果として受信機12に異常があると判定して受信機異常情報S8を異常監視装置4へ出力する(ステップS17)。
【0023】
異常監視装置4では、送信機11及び受信機12から送られてくる異常検出情報に基づいてそれぞれの異常の有無をLED表示させ、システムの無線機系の異常の有無を遠隔にて確認する。
【0024】
上記構成によれば、受信機12側で送信機11から送信中である旨の通知を受けているか否かで異常を判別することが可能となる。また、複数の受信機で運用される場合でも、どの受信機が異常なのかを判断することが可能となり、個々の受信機で任意に異常検出閾値を調整することができるので、設置環境による空中線状況に応じた設定をすることができ、また、運用方法による異常検出発報の重要性に応じた設定をすることが可能となる。
【0025】
以上、本発明に係る受信機を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成及び受信機以上情報の用途は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0026】
例えば、上述した受信機異常情報を利用して、現用/予備2重系の無線システムにおいて、受信機を予備系に切り替えることもできる。
【0027】
さらに、上記各実施形態では、音声通話の無線送受信装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の送受信装置についても適用可能であり、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成することもできる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…無線送受信装置、11…送信機、12…受信機、121…RX−RF部、122…IF−IC部、123…AF−AMP部、124…スピーカ(SP)、125…ライン出力端子(Line Out)、126…SQ部、127…電圧比較器、128,129…AND(論理積)回路、2…移動局、3…固定局、4…異常監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機及び受信機を備えた無線送受信装置において、
前記送信機は、電波送信時に送信中であることを通知する通知手段を備え、
前記受信機は、受信信号の受信電界レベルを検出する検出手段と、この手段で検出された受信電界レベルを異常検出閾値と比較する比較手段と、この手段で前記受信電界レベルが異常検出閾値に達したとき、前記送信機からの通知の有無を参照して通知を受けている場合に当該受信機が異常状態であると判定する判定手段とを備えることを特徴とする無線送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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