説明

無線通信システム、サーバ装置及び無線通信制御方法

【課題】無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うこと。
【解決手段】車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置1と、車載装置1と直接通信により通信可能な携帯端末装置3と、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定するサーバ装置4とを具備する無線通信システムにおいて、サーバ装置4は、車載装置1と携帯端末装置3とが直接通信により通信を行う場合、車載装置1及び携帯端末装置3が位置するエリアにおける電波状態に基づいて、前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を通知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、サーバ装置及び無線通信制御方法に関し、特に、携帯端末やカーナビゲーションシステムに代表される車載装置などの移動体間で直接的に通信を行う際の通信環境を向上する無線通信システム、サーバ装置及び無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載装置には、本来のナビゲーション機能を果たすカーナビゲーションシステムだけでなく、他の車両、歩行者などの移動体との通信や光ビーコンやETCに代表される路側装置との通信を備えてきている。例えば、車両に、外部のアクセスポイントとの間で無線LAN通信により各種情報のやり取りを行う無線LAN接続装置を搭載し、当該車両がアクセスポイントの通信エリアに入り込んだと判断した場合にそのアクセスポイントに合わせた通信形式を設定する無線通信接続装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−322999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、無線LAN通信は、オフィスや一般家庭などでも広く普及しており、オフィスビルや家屋など様々な場所にアクセスポイントが設置されている。このような環境下において、例えば、無線LAN接続装置を搭載した車両等が、アクセスポイントの通信エリアに入り込むと、予定していないアクセスポイントからの電波を受信してしまい、所望の通信相手との無線LAN通信を行うことができない事態が発生するという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことができる無線通信システム、サーバ装置及び無線通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無線通信システムは、車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置と、前記車載装置と直接通信により通信可能な携帯端末装置と、前記車載装置の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置からの電波情報に基づいて判定するサーバ装置とを具備し、前記サーバ装置は、前記車載装置と前記携帯端末装置とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアにおける電波状態に基づいて、前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を通知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による無線通信システム、サーバ装置及び無線通信制御方法によれば、車載装置の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態が当該車載装置からの電波情報に基づいて判定される。そして、車載装置と携帯端末装置とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアで直接通信を行う際に車載装置と携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数が通知されることから、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムを説明するための概略構成を示す図である。図1に示す無線通信システムは、車載装置1を搭載した車両と、歩行者により携帯される携帯端末3と、車載装置1及び携帯端末3と移動通信網2を介して接続されたサーバ装置4とから主に構成されている。なお、車載装置1と携帯端末3とは、所定の条件下で直接的に通信(直接通信:P2P無線通信)を行うことが可能である。以下においては、車載装置1と携帯端末3との間における直接通信として、無線LAN通信を用いる場合について説明する。
【0008】
車載装置1は、GPSを搭載しており、GPSにより自装置の位置を測位することができ、定期的に位置情報をサーバ装置4に送信する。また、車載装置1は、無線LAN接続装置を搭載しており、携帯端末3と無線LAN通信を行うことが可能である。携帯端末3と無線LAN通信を行う場合は、サーバ装置4から送信される無線LAN通信を行うためのパラメータ(携帯端末3のIPアドレス、無線LANにおける通信用のチャネル及び周波数)を利用する。車載装置1は、車両の走行中にアクセスポイントからの電波を検出すると、当該電波に関する情報(以下、「電波情報」という)をサーバ装置4に送信する。なお、この電波情報に含まれる情報については後述する。また、車載装置1は、携帯端末3と無線LAN通信中に電波強度等の情報を受信すると、これらの情報に基づいて電波環境を示す数値(以下、「電波環境値」という)を算出する。
【0009】
移動通信網2は、携帯端末3及び車載装置1と、サーバ装置4との間のネットワークである。この移動通信網2には、通常の移動通信網に加えて移動パケット通信網も含まれる。携帯端末3及び車載装置1と、サーバ装置4との間では移動通信網2を介する広域通信が行われる。一方、携帯端末3と車載装置1との間では移動通信網2を介することなく、直接通信(無線LAN通信)が行われる。
【0010】
携帯端末3は、GPS(Global Positioning System)を搭載しており、GPSにより自装置の位置を測位することができ、定期的に位置情報をサーバ装置4に送信する。また、携帯端末3は、無線LAN接続装置を搭載しており、車載装置1と無線LAN通信を行うことが可能である。車載装置1と無線LAN通信を行う場合は、サーバ装置4から送信される無線LAN通信を行うためのパラメータ(車載装置1のIPアドレス、無線LANにおける通信用のチャネル及び周波数)を利用する。また、携帯端末3は、車載装置1と無線LAN通信を行っている間、車載装置1からの電波強度等を測定し、車載装置1に送信する。さらに、携帯端末3は、オペレーティングシステム(移動機OS)を有しており、移動機OS上でブラウザ機能、ビューワ機能、JAM(Java(登録商標) Application Manager)その他の機能が動作する。
【0011】
サーバ装置4は、車載装置1から電波情報を受信し、当該電波情報に基づいて特定されるエリアの電波状態を示す情報(以下、「電波状態情報」という)を管理する。また、車載装置1及び携帯端末3の位置情報に基づいて、両者が一定距離内に接近すると、当該車載装置1及び携帯端末3に対して無線LAN通信の開始を指示する。この際、当該車載装置1及び携帯端末3の位置情報に対応するエリアにおいて車載装置1と携帯端末3との相互間で無線LAN通信可能となる最適なチャネル及び周波数を判定し、携帯端末3及び車載装置1のIPアドレスと共に当該車載装置1及び携帯端末3に通知する。
【0012】
このように、車載装置1から送信される電波情報に基づいて各種エリアの電波状態情報が管理されることから、各種エリアで無線LAN通信を行う際に最適なチャネル及び周波数が把握される。そして、特定のエリア内において、車載装置1及び携帯端末3が一定距離内に接近すると、当該エリアで無線LAN通信を行う際に最適なチャネル及び周波数が車載装置1及び携帯端末3に通知されることから、車両の走行するエリア内に無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。
【0013】
なお、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、車載装置1と携帯端末3との間で直接通信により通信される情報としては、例えば、互いの位置情報等が考えられる。このように一定距離内に接近した車載装置1と携帯端末3との間で互いの位置情報を交換することにより、車両の運転者及び歩行者の注意を喚起することができ、車両と歩行者との接触事故等の発生を未然に防止することが可能となる。なお、車載装置1と携帯端末3との間で直接通信により通信される情報については、これに限定されるものでなく、適宜変更が可能である。
【0014】
図2は、図1に示す車載装置1の概略構成を示すブロック図である。なお、図2に示す構成は、本発明を説明するために簡略化したものであり、通常の車載装置に搭載される構成要素は備えているものとする。この車載装置1は、カーナビゲーションシステムと通信機器とから構成されている。
【0015】
車載装置1は、装置全体を制御する制御部11と、移動通信網2を介してサーバ装置4との間で通信を行う通信制御部12と、種々のデータや情報を表示する表示部13と、自装置の位置を測位するGPS装置14と、装置に搭載され、あるいはダウンロードされた種々のアプリケーションを起動するアプリ制御部15と、外部からの電波の強度を測定する電波強度測定部16と、直接通信(無線LAN通信)によって他の端末装置(特に、携帯端末3)と通信を行う直接通信制御部17とから主に構成されている。
【0016】
通信制御部12は、サーバ装置4に対して、検出した電波の電波情報を送信する。この電波情報には、自装置の位置情報、通信相手となるアクセスポイント又は携帯端末3の識別情報、当該電波で使用されたチャネル及び周波数、並びに、当該電波の強度(電波強度)を示す情報、或いは、電波環境値が含まれる。この電波情報は、例えば、電波を検出したタイミングで送信されるが、これに限定されず、適宜、異なるタイミングで送信されるようにしても良い。また、通信制御部12は、サーバ装置4から直接通信(無線LAN通信)の開始指示を受信する。この直接通信の開始指示には、車載装置1の位置情報に応じて無線LAN通信を行う際に最適なチャネル情報及び周波数情報が含まれる。
【0017】
GPS装置14は、GPS用衛星(図示せず)を利用して車載装置1の現在位置(緯度、経度)を所定の精度で検出する。アプリ制御部15は、装置に搭載され、あるいはダウンロードされた電波状態判定アプリケーションを起動させる。この車載装置1用の電波状態判定アプリケーションは、電波を検出したタイミングで電波情報をサーバ装置4に送信すると共に、サーバ装置4から通知されたチャネル情報及び周波数情報を用いて携帯端末3との間で無線LAN通信を行うアプリケーションである。また、この車載装置1用の電波状態判定アプリケーションは、携帯端末3から電波強度等の情報を受信した場合に、電波環境値を算出するアプリケーションである。
【0018】
電波強度測定部16は、車両の走行するエリア付近のアクセスポイントから送出される電波の強度を測定する。電波強度測定部16で測定された電波強度は、電波情報に含まれる。直接通信制御部17は、サーバ装置4から受け付けた直接通信の開始指示で特定される携帯端末3との間で直接通信(無線LAN通信)を行う。
【0019】
図3は、図1に示す携帯端末3の概略構成を示すブロック図である。なお、図3に示す構成は、本発明を説明するために簡略化したものであり、通常の携帯端末に搭載される構成要素は備えているものとする。
【0020】
携帯端末3は、装置全体を制御する制御部31と、移動通信網2を介してサーバ装置4との間で通信を行う通信制御部32と、種々のデータ入力を受け付ける入力部33と、種々のデータや位置情報を表示する表示部34と、自装置の位置を測位するGPS装置35と、装置に搭載され、あるいはダウンロードされた種々のアプリケーションを起動するアプリ制御部36と、外部からの電波の強度を測定する電波強度測定部37と、直接通信(無線LAN通信)によって他の端末装置(特に、車載装置1)と通信を行う直接通信制御部38とから主に構成されている。
【0021】
通信制御部32は、サーバ装置4に対して、自装置の位置情報を送信する。また、通信制御部32は、サーバ装置4から直接通信の開始指示を受信する。この直接通信の開始指示には、携帯端末3の位置情報に応じて無線LAN通信を行う際に最適なチャネル情報及び周波数情報が含まれる。
【0022】
GPS装置35は、GPS用衛星(図示せず)を利用して携帯端末3の現在位置(緯度、経度)を所定の精度で検出する。GPS装置35は、測位した位置情報を表示部34に出力する。アプリ制御部36は、装置に搭載され、あるいはダウンロードされた電波状態判定アプリケーションを起動させる。この携帯端末3用の電波状態判定アプリケーションは、サーバ装置4から通知されたチャネル情報及び周波数情報を用いて車載装置1との間で直接通信(無線LAN通信)を行うと共に、当該直接通信(無線LAN通信)中における車載装置1からの電波強度、パケットの再送率及びロス率を測定し、車載装置1に送信するアプリケーションである。
【0023】
電波強度測定部37は、無線LAN通信中に車載装置1から送出される電波の強度を測定する。直接通信制御部38は、サーバ装置4から受け付けた直接通信の開始指示で特定される車載装置1との間で直接通信(無線LAN通信)を行う。
【0024】
図4は、図1に示すサーバ装置4の概略構成を示すブロック図である。なお、図4に示す構成は、本発明を説明するために簡略化したものであり、通常のサーバ装置に搭載される構成要素は備えているものとする。
【0025】
サーバ装置4は、装置全体を制御する制御部41と、移動通信網2を介して車載装置1や携帯端末3との間で通信を行う通信制御部42と、車載装置1と携帯端末3との間で行われる無線LAN通信における最適なチャネル及び周波数を判定する際に用いられる電波状態情報が登録される電波状態データベース(DB)43と、装置に搭載され、あるいはダウンロードされた種々のアプリケーションを起動するアプリ制御部44とから主に構成されている。
【0026】
通信制御部42は、車載装置1からの電波情報、並びに、携帯端末3からの位置情報を受信する。また、車載装置1及び携帯端末3に対して、両者間の直接通信(無線LAN通信)の開始を指示する信号を送信する。この場合において、通信制御部42は、当該無線LAN通信で最適な通信を行うためのチャネル情報及び周波数情報を含める。
【0027】
電波状態DB43は、無線LAN通信における電波状態の判定に用いられる電波状態情報が登録されるデータベースである。電波状態DB43は、図5に示すような管理テーブルを有する。図5に示す管理テーブルにおいては、車載装置1から送信される位置情報に基づく緯度及び経度で特定されるエリア情報51に対応して、電波情報を受信した日時情報52、電波の送出元であるアクセスポイント(基地局装置)又は携帯端末3の識別情報53、電波の送出に使用されたチャネル情報54及び周波数情報55、電波の強度を示す電波強度情報56、並びに、電波環境値情報57が登録される。
【0028】
なお、図5に示す管理テーブルにおいて、識別情報53にアクセスポイントのMACアドレス又は携帯端末3の電話番号を登録する場合について示しているが、これに限定されるものでなく、適宜変更が可能である。また、電波強度情報56及び電波環境値情報57には、「1.0」〜「15.0」が登録されるものとする。電波強度情報56及び電波環境値情報57は、数値が大きくなる程、電波環境が良好であることを示すものとする。なお、図5に示す管理テーブルにおける管理項目や管理方法については、これに限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0029】
電波状態DB43には、車載装置1が車両の走行中に検出した電波に基づく電波状態情報(例えば、図5に示すNo.1の電波状態情報)と、車載装置1と携帯端末3との間の無線LAN通信中に検出した電波に基づく電波状態情報(例えば、図5に示すNo.14の電波状態情報)とが登録されている。前者においては、電波強度情報56及び電波環境値情報57が登録される一方、後者においては、電波環境値情報57のみが登録される。なお、前者における電波環境値情報57には、電波強度情報56に応じた数値が登録される。
【0030】
例えば、図5に示すNo.1の電波状態情報においては、緯度「○○○〜△△△」及び経度「×××〜□□□」で特定されるエリア情報51に対応して、「2007/3/20 18:00」の日時情報52、「02:00:86:0a:5c:78」の識別情報53、「CH1」のチャネル情報54、「2.412」GHZの周波数情報55、並びに、「5.0」の電波強度情報56及び電波環境値情報57が登録されている。同様に、図5に示すNo.2〜No.13の電波状態情報においては、チャネル情報54、周波数情報55、電波強度情報56及び電波環境値情報57の内容が異なる電波状態情報が登録されている。これは、2007年3月20日の当該エリアにおいては、チャネル1〜3の電波強度が弱く、チャネル4〜6の電波強度が通常で、チャネル11〜13の電波強度が強い旨を示している。
【0031】
また、図5に示すNo.14の電波状態情報においては、同一のエリア情報51に対応して「2007/3/29 19:20」の日時情報52、「090−AAAA−BBBB」の識別情報53、「CH11」のチャネル情報54、「2.462」GHZの周波数情報55、並びに、「13.0」の電波環境値情報57が登録されている。これは、当該エリアにおいて、周波数2.462であるチャネル11を使用して無線LAN通信を行った場合に電波環境値が13.0(良好)であった旨を示している。同一のチャネルを示すNo.11の電波状態情報に比べ、電波環境値情報57が小さいのは当該無線LAN通信におけるパケットの再送率又はロス率が考慮されるからである。
【0032】
アプリ制御部44は、装置に搭載され、あるいはダウンロードされた電波状態判定アプリケーションを起動させる。このサーバ装置4用の電波状態管理アプリケーションは、車載装置1から送信される電波情報に基づいて車両が走行する道路上に存在する各エリアの電波状態を判定するアプリケーションである。すなわち、この電波状態判定アプリケーションは、電波状態判定部として機能する。具体的には、車載装置1から送信される電波情報に含まれる位置情報、識別情報、チャネル情報、周波数情報、電波強度情報及び電波環境値情報に基づいて電波状態DB43に登録される電波状態情報を更新する。
【0033】
また、このサーバ装置4用の電波状態判定アプリケーションは、車載装置1と携帯端末3とが一定距離内に接近した場合に両者間における直接通信(無線LAN通信)の開始を指示するアプリケーションである。すなわち、この電波状態判定アプリケーションは、直接通信指示部として機能する。直接通信の開始を指示する際、当該アプリケーションは、車載装置1と携帯端末3が存在するエリアにおいて、両者間における直接通信を行う際の最適なチャネル情報及び周波数情報を送信する。
【0034】
次に、本実施の形態に係る無線通信システムにおける動作について図6〜図8を用いて説明する。図6〜図8は、本実施の形態に係る無線通信システムにおける動作を説明するためのシーケンス図である。図6は、車両の走行中に車載装置1でアクセスポイントからの電波を検出した場合の動作を示し、図7は、車載装置1と携帯端末3とで直接通信を行った場合の動作を示し、図8は、車載装置1と携帯端末3とで直接通信を行う場合に最適なチャネル情報及び周波数情報を通知する場合の動作を示している。なお、図6においては、車載装置1の周囲に携帯端末3は存在していないものとする。また、図7及び図8に示すシーケンスは、並行して行われるものとする。
【0035】
本発明の無線通信システムにおいては、サーバ装置4において、車載装置1から送信される電波情報に基づいて特定されるエリアの電波状態情報を蓄積する一方、両者が一定距離内に接近すると、当該車載装置1及び携帯端末3に対して無線LAN通信の開始を指示する。この際、当該車載装置1及び携帯端末3の位置情報に対応するエリアにおいて無線LAN通信に用いる最適なチャネル及び周波数を判定し、携帯端末3及び車載装置1のIPアドレスと共に当該車載装置1及び携帯端末3に通知する。これにより、無線通信のためのアクセスポイントが設置されているエリアにおいても、最適なチャネル及び周波数を選択して所望の通信相手との適切な直接通信(無線LAN通信)が実現される。
【0036】
なお、以下においては、携帯端末3、車載装置1及びサーバ装置4において、それぞれアプリ制御部16、アプリ制御部35及びアプリ制御部46で電波状態判定アプリケーションが起動しているものとして、それ以降の動作を説明する。また、サーバ装置4においては、現在の日時情報を把握できるように構成されているものとする。さらに、図4に示すように、電波状態DB43は、サーバ装置4の構成要素であるが、説明の便宜上、図6〜図8においては、電波状態DB43をサーバ装置4の外部に構成した場合について示している。
【0037】
車両の周囲に歩行者が存在しない場合において、図6に示すように、車載装置1において、車両の走行中にアクセスポイントからの電波を検出すると、この電波を受信した位置情報、アクセスポイントの識別情報、電波の送出に利用されたチャネル情報及び周波数情報が取得されると共に、当該電波強度が測定される。そして、これらを情報が電波情報としてサーバ装置4に送信される(ST61)。
【0038】
電波情報を受信すると、サーバ装置4において、電波情報から位置情報が抽出され、当該位置情報を用いた電波状態情報の検索処理が行われる。具体的には、サーバ装置4から位置情報が電波状態DB43に送信される(ST62)。位置情報を受信すると、電波状態DB43において、これに対応する電波状態情報が検索され、この電波状態情報に含まれるチャネル情報54、周波数情報55及び電波強度情報56がサーバ装置4に送信される(ST63)。
【0039】
チャネル情報54等を受信すると、サーバ装置4において、このチャネル情報54等と、ST61で受信したチャネル情報等と比較して電波強度情報56を更新する処理(更新処理)を行う(ST64)。この更新処理においては、ST63で受信した電波強度情報56及びST61で受信した電波強度情報の新しさを考慮して、蓄積される電波強度情報を算出することが好ましい。例えば、それぞれの電波強度情報の新しさに応じた係数を掛けた後、それらを足し合わせた数値を2で割ることで得られる電波強度情報を蓄積することが考えられる。この場合、例えば、最新の情報には係数「1.0」を掛ける一方、1週間前の情報には係数「0.95」を掛けることが考えられる。これは、過去の電波強度よりも最新の電波強度を電波強度情報56に大きく反映させることを考慮したものである。
【0040】
なお、ST62で送信される位置情報を用いた電波状態情報の検索処理において、該当する電波状態情報が存在しない場合、更新処理は、ST61で送信された電波情報のみに基づいて行われる。この場合には、当該電波情報の内容が維持された状態で電波状態DB43に登録されることとなる。
【0041】
そして、更新処理を終えた後、サーバ装置4から電波状態DB43に対して更新後のチャネル情報54等が送信される(ST65)。この更新後のチャネル情報54等を受信すると、電波状態DB43において、更新後のチャネル情報等が電波状態情報として登録される。このとき、電波環境値情報57には、電波強度情報56に応じた数値が登録される。このように、車載装置1が車両の走行中に検出した電波情報をサーバ装置4に送信し、サーバ装置4において、電波情報に応じて電波状態情報が更新されていくことで、各エリアにおける電波強度の良好なチャネル情報及び周波数情報、或いは、電波強度が劣悪なチャネル情報及び周波数情報が把握されることとなる。
【0042】
一方、車両の周囲に歩行者が存在する場合において、図7に示すように、サーバ装置4から当該車載装置1及び携帯端末3に対して直接通信の開始が指示されると、車載装置1及び携帯端末3において無線LAN通信が行われる。なお、このようなサーバ装置4からの直接通信の開始指示に関連する動作については図8を用いて説明する。携帯端末3においては、この無線LAN通信を行っている間、車載装置1からの電波強度が測定されると共に、パケットの再送率及びロス率が測定され、車載装置1に対して送信される(ST71)。
【0043】
車載装置1においては、携帯端末1から受信した電波強度、パケットの再送率及びロス率に基づいて、電波環境値を算出する(ST72)。例えば、車載装置1は、受信した電波強度から、パケットの再送率及びロス率に応じた数値を差し引くことで、電波環境値を算出する。そして、電波環境値を算出した後、車載装置1からサーバ装置4に対して、電波環境値を含む電波情報が送信される(ST73)。具体的には、携帯端末3と無線LAN通信を行った位置情報、携帯端末3の識別情報、無線LAN通信で使用したチャネル情報、周波数情報及び電波環境値が送信される。
【0044】
電波情報を受信すると、サーバ装置4において、電波情報から位置情報が抽出され、当該位置情報を用いた電波状態情報の検索処理が行われる。具体的には、サーバ装置4から位置情報が電波状態DB43に送信される(ST74)。位置情報を受信すると、電波状態DB43において、これに対応する電波状態情報が検索され、この電波状態情報に含まれるチャネル情報54、周波数情報55及び電波環境値情報57がサーバ装置4に送信される(ST75)。
【0045】
チャネル情報54等を受信すると、サーバ装置4において、このチャネル情報54等と、ST73で受信したチャネル情報等と比較して電波環境値情報57を更新する処理(更新処理)を行う(ST76)。この更新処理においては、図6に示す更新処理と同様の要領で、ST75で受信した電波環境値情報57及びST73で受信した電波環境値の新しさを考慮して、蓄積される電波環境値を算出することが好ましい。例えば、それぞれの電波環境値情報の新しさに応じた係数を掛けた後、それらを足し合わせた数値を2で割ることで得られる電波環境値を蓄積することが考えられる。これは、過去の電波環境値よりも最新の電波環境値を電波環境値情報57に大きく反映させることを考慮したものである。
【0046】
なお、ST74で送信される位置情報を用いた電波状態情報の検索処理において、該当する電波状態情報が存在しない場合、更新処理は、ST73で送信された電波情報のみに基づいて行われる。この場合には、当該電波情報の内容が維持された状態で電波状態DB43に登録されることとなる。
【0047】
そして、更新処理を終えた後、サーバ装置4から電波状態DB43に対して更新後のチャネル情報54等が送信される(ST77)。この更新後のチャネル情報54等を受信すると、電波状態DB43において、更新後のチャネル情報等が電波状態情報として登録される。このように、車載装置1と携帯端末3との間の無線LAN通信中の電波情報をサーバ装置4に送信し、サーバ装置4において、電波情報に応じて電波状態情報が更新されていくことで、各エリアにおける電波環境値の良好なチャネル情報及び周波数情報、或いは、電波環境値が劣悪なチャネル情報及び周波数情報が把握されることとなる。
【0048】
上述のように、サーバ装置4から車載装置1及び携帯端末3に直接通信を指示する場合には、両者の位置情報に応じたエリアにおける無線LAN通信で最適なチャネル情報及び周波数情報が車載装置1と携帯端末3に送信される。具体的には、車載装置1と携帯端末3の位置情報に応じて両者の一定距離内の接近を検出すると、電波状態DB43に蓄積された電波状態情報に基づいて車載装置1及び携帯端末3の位置情報に応じたエリアにおける無線LAN通信で最適なチャネル情報及び周波数情報が判定され、車載装置1と携帯端末3に送信される。以下、このような場合における動作について図8を用いて説明する。図8において、車載装置1及び携帯端末3は、一定距離内に接近しているものとする。
【0049】
図8に示すように、本実施の形態に係る無線通信システムにおいては、所定のタイミングで車載装置1からサーバ装置4に位置情報が送信される(ST81)。位置情報を受信すると、サーバ装置4において、この位置情報を用いた電波状態情報の検索処理が行われる。具体的には、サーバ装置4から位置情報が電波状態DB43に送信される(ST82)。位置情報を受信すると、電波状態DB43において、これに対応する電波状態情報が検索され、この電波状態情報に含まれるチャネル情報54、周波数情報55及び電波環境値情報57がサーバ装置4に送信される(ST83)。
【0050】
チャネル情報54等を受信すると、サーバ装置4において、最適なチャネル情報54及び周波数情報55が選択され、車載装置1に送信される(ST84)。これにより、車載装置1の属するエリアにおいて無線LAN通信を行う際に最適なチャネル情報54及び周波数情報55が、車載装置1で把握されることとなる。
【0051】
一方、本実施の形態に係る無線通信システムにおいては、所定のタイミングで携帯端末3からサーバ装置4に位置情報が送信される(ST85)。位置情報を受信すると、サーバ装置4において、この位置情報を用いた電波状態情報の検索処理が行われる。具体的には、サーバ装置4から位置情報が電波状態DB43に送信される(ST86)。位置情報を受信すると、電波状態DB43において、これに対応する電波状態情報が検索され、この電波状態情報に含まれるチャネル情報54、周波数情報55及び電波環境値情報57がサーバ装置4に送信される(ST87)。
【0052】
チャネル情報54等を受信すると、サーバ装置4において、最適なチャネル情報54及び周波数情報55が選択され、携帯端末3に送信される(ST88)。これにより、携帯端末3の属するエリアにおいて無線LAN通信を行う際に最適なチャネル情報54及び周波数情報55が、携帯端末3で把握されることとなる。
【0053】
そして、車載装置1及び携帯端末3の双方で把握したチャネル情報54及び周波数情報55を用いて無線LAN通信を行うことにより、車載装置1及び携帯端末3が属するエリアで最適なチャネル及び周波数を用いて無線LAN通信を行うことができる。これにより、無線通信のためのアクセスポイントが設置されているエリアにおいても、最適なチャネル及び周波数を選択して所望の通信相手との適切に無線LAN通信を行うことが可能となる。
【0054】
このように本実施の形態に係る無線通信システムにおいては、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態が当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定される。そして、車載装置1と携帯端末3とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル情報及び周波数情報が通知されることから、車両が走行する道路上に存在するエリアに応じて最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信により通信を行うことができるので、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。
【0055】
特に、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、サーバ装置4は、車載装置1と携帯端末3とが一定距離内に接近した場合に車載装置1と携帯端末3との間で直接通信による通信開始を指示すると共に、車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアで直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数を通知する。これにより、車載装置1を搭載した車両が走行している場合において、常に最適なチャネル及び周波数を用いて携帯端末3との間で直接通信による通信を行うことが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、サーバ装置4は、電波情報として、アクセスポイントからの電波で使用されるチャネル及び周波数、並びに、当該電波の強度を車載装置1から受信している。このように、アクセスポイントからの電波で使用されるチャネル及び周波数、並びに、当該電波の強度が電波情報として受信されることから、当該アクセスポイントに対応するエリアで直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数を適切に特定することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態に係る無線通信システムにおいては、車載装置1が、携帯端末3との直接通信による通信中における電波強度、パケットの再送率及びロス率に基づいて電波環境値を算出し、サーバ装置4が、電波情報として、携帯端末3との直接通信で使用されたチャネル及び周波数、並びに、電波環境値を車載装置1から受信している。このように、携帯端末3との直接通信で使用されたチャネル及び周波数、並びに、電波強度やパケットの再送率等を加味した電波環境値が電波情報として受信されることから、携帯端末3と直接通信により通信を行った場合の情報から当該エリアで直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数を適切に特定することが可能となる。
【0058】
さらに、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、サーバ装置4は、車載装置1からの電波情報を受信すると、当該電波情報に含まれるチャネル及び周波数に対応する電波状態を更新する。このように電波情報の受信に応じて、当該電波情報に含まれるチャネル及び周波数に対応する電波状態が更新されることから、常に最新の電波情報に基づいた各エリアにおける電波状態を判定することが可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0060】
例えば、上記実施の形態においては、車載装置1及び携帯端末3が一定距離内に接近すると、対応するエリアにおいて無線LAN通信を行う際に最適なチャネル情報及び周波数情報を両者に通知する場合について示している。しかし、車載装置1及び携帯端末3に通知されるチャネル情報及び周波数情報については、これに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、無線LAN通信を行う際に最適なチャネル情報及び周波数情報に加えて、電波環境値(電波強度)が低いチャネル情報及び周波数情報を通知するようにしても良い。この場合には、電波環境値が低いチャネル及び周波数における出力電力の低減や、出力頻度の低減などの調整を行うことにより、周囲の電波環境の劣化を防止することが可能となる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、サーバ装置4が、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定し、車載装置1と携帯端末3とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装1置及び携帯端末3が位置するエリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル及び周波数を通知する場合について説明しているが、本発明に係る無線通信システムの構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、サーバ装置4と同等の機能を車載装置1に具備させ、車載装置1及び携帯端末3のみで本発明に係る無線通信システムを実現するようにしても良い。この場合、車載装置1は、上述した電波状態DB43の機能を備えると共に、自装置で検出する電波情報に基づいて車両が走行する道路上に存在する各エリアの電波状態を判定する機能と、自装置が携帯端末3と一定距離内に接近した場合に両者間における直接通信(無線LAN通信)の開始を指示する機能とを備える。
【0062】
このように車載装置1にサーバ装置4と同等の機能を具備させる場合には、車載装置1で外部のアクセスポイントから検出される電波に基づいて複数のエリアにおける電波状態が判定される。そして、携帯端末3と直接通信により通信を行う場合、車載装置1が位置するエリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル及び周波数が使用されると共に携帯端末3に通知される。この場合においても、上記実施の形態と同様に、車両が走行する道路上に存在するエリアに応じて最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信により通信を行うことができるので、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。
【0063】
なお、この場合には、車載装置1で個別に各エリアにおける電波状態情報を管理する必要があるものの、管理対象となる電波状態情報は、搭載される車両がよく走行するエリアにおける電波状態情報に限定されると考えられるため、極めて大きな負荷となることはないと考えられる。
【0064】
また、上記実施の形態においては、サーバ装置4が、車載装1置及び携帯端末3が位置するエリアにおける電波状態に応じて最適なチャネルを管理する場合について説明しているが、サーバ装置4が管理する対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアにおける最適なチャネルに加えて、当該エリアにおけるチャネルの使用状態を管理するようにしても良い。特に、この場合には、未使用のチャネルの電波状態を一緒に管理することが好ましい。
【0065】
例えば、あるエリアで未使用のチャネルが1つ存在するものとする。ここでは、最適なチャネルが未使用のチャネルであるものとする。この場合において、当該エリアに車両が進入すると、サーバ装置4は、上記未使用のチャネルを当該車両に搭載される車載装置1と携帯端末3との間の直接通信に割り当てる。そして、当該エリアから車両が退出すると、割り当てたチャネルを解放する。なお、割り当てている途中で他の車両が当該エリアに進入してきた場合、サーバ装置4は、未使用のチャネルが存在しないため、チャネルを割り当てることはない。
【0066】
また、例えば、あるエリアで未使用のチャネルが2つ存在するものとする。ここでは、最適なチャネルを含む未使用のチャネルが2つ存在するものとする。この場合において、当該エリアに車両が進入すると、サーバ装置4は、上記未使用のチャネルの一方(最適なチャネル)を当該車両に搭載される車載装置1と携帯端末3との間の直接通信に割り当てる。このとき、他の車両が当該エリアに進入してくると、サーバ装置4は、上記未使用のチャネルの他方を当該他の車両に搭載される車載装置1と携帯端末3との間の直接通信に割り当てる。なお、これらの車両の少なくとも一方が当該エリアから退出しない限り、更に他の車両が当該エリアに進入した場合においても、サーバ装置4は、未使用のチャネルが存在しないため、チャネルを割り当てることはない。なお、このように未使用のチャネルを順番に割り当てる際、サーバ装置4は、電波状態が良好なチャネルから割り当てる。
【0067】
このように車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアにおけるチャネルの使用状態を管理するようにした場合には、各エリアにおける未使用のチャネルを把握することができるので、車載装置1と携帯端末3との間で直接通信を行う際に確実に未使用のチャネルを割り当てることが可能となる。
【0068】
さらに、上記実施の形態においては、車載装置1が外部のアクセスポイントからの電波を検出し、これに基づく電波情報からサーバ装置4で各エリアにおける電波状態を判定し、直接通信により通信を行う車載装置1及び携帯端末3に対して当該エリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル及び周波数を通知する場合について説明している。しかしながら、サーバ装置4と共に、或いは、サーバ装置4に代わって特定のアクセスポイントから、当該アクセスポイントの近傍に存在する車載装置1及び携帯端末3に対して、各エリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル及び周波数を通知することは実施の形態として好ましい。この場合には、サーバ装置4における処理負担を軽減しつつ、上記実施の形態に係る無線通信システムと同様の効果を得ることが可能となる。
【0069】
なお、この場合には、特定のアクセスポイントがサーバ装置4と同様に、電波状態情報を取得し管理する必要があるが、その取得方法については、特に限定されるものではなく、いかなる方法を採用しても良い。例えば、サーバ装置4から所定のタイミングで特定の電波状態情報を受信することが考えられる。また、この場合には、車載装置1が特定のアクセスポイントと一時的に通信を行うことが必要となる。基本的に車載装置1は、任意のアクセスポイントと通信を行うことはないが、予め定められた特定のアクセスポイントとのみ一時的に通信を行うように設定しておくことで、サーバ装置4における処理負担を軽減することができるという優れた効果を得ることが可能となる。
【0070】
また、上記実施の形態においては、携帯端末3を携帯する歩行者と、車載装置1を搭載する車両との関係について説明している。しかし、本発明に係る無線通信システムは、このような場合に限定されるものではなく、車載装置1を搭載する車両同士、或いは、携帯端末3を携帯する歩行者同士の間にも適用することが可能である。
【0071】
さらに、上記実施の形態においては、携帯端末3を携帯する歩行者について説明しているが、この歩行者には自転車に乗った者を含むものとする。このように自転車に乗った者を歩行者に含むことにより、自転車に乗った者が携帯する携帯端末3と、車両に搭載される車載装置1との間においても、最適なチャネル及び周波数を選択して所望の通信相手との適切に無線LAN通信を行うことが可能となる。
【0072】
本実施の形態に係るサーバ装置4は、車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置1と、車載装置1と直接通信により通信可能な携帯端末3と接続されたサーバ装置4であって、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定する電波状態判定部と、車載装置1と携帯端末3とが一定距離内に接近した場合に当該車載装置1と携帯端末3との間で直接通信による通信開始を指示すると共に、当該車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアで直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数を通知する直接通信指示部とを具備している。
【0073】
本実施の形態に係るサーバ装置4によれば、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態が当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定される。そして、車載装置1と携帯端末3とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアで直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数が通知されることから、車両が走行する道路上に存在するエリアに応じて最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信により通信を行うことができるので、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。特に、車載装置1と携帯端末3とが一定距離内に接近した場合に両者間における直接通信の開始が指示されると共に、当該直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数が通知されることから、車両が走行している場合において、常に最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信による通信を行うことが可能となる。
【0074】
本実施の形態に係る無線通信制御方法は、車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置1と、車載装置1と直接通信により通信可能な携帯端末3と接続されたサーバ装置4における無線通信制御方法であって、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定する工程と、車載装置1と携帯端末3とが一定距離内に接近した場合に当該車載装置1と携帯端末3との間で直接通信による通信開始を指示すると共に、当該車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアにおける電波状態に応じて直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数を通知する工程とを具備している。
【0075】
本実施の形態に係る無線通信制御方法によれば、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態が当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定される。そして、車載装置1と携帯端末3とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装置1及び携帯端末3が位置するエリアで直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数が通知されることから、車両が走行する道路上に存在するエリアに応じて最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信により通信を行うことができるので、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。特に、車載装置1と携帯端末3とが一定距離内に接近した場合に両者間における直接通信の開始が指示されると共に、当該直接通信を行う際に最適なチャネル及び周波数が通知されることから、車両が走行している場合において、常に最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信による通信を行うことが可能となる。
【0076】
なお、上記実施の形態に係る無線通信制御方法においては、サーバ装置4が、車載装置1の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置1からの電波情報に基づいて判定し、車載装置1と携帯端末3とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装1置及び携帯端末3が位置するエリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル及び周波数を通知する場合について説明しているが、無線通信制御方法については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、サーバ装置4と同等の機能を車載装置1に具備させ、車載装置1及び携帯端末3のみで本無線通信制御方法を実現するようにしても良い。この場合、車載装置1は、上述した電波状態DB43の機能を備えると共に、自装置で検出する電波情報に基づいて車両が走行する道路上に存在する各エリアの電波状態を判定する機能と、自装置が携帯端末3と一定距離内に接近した場合に両者間における直接通信(無線LAN通信)の開始を指示する機能とを備える。
【0077】
このように車載装置1にサーバ装置4と同等の機能を具備させる場合には、車載装置1で外部のアクセスポイントから検出される電波に基づいて複数のエリアにおける電波状態が判定される。そして、携帯端末3と直接通信により通信を行う場合、車載装置1が位置するエリアにおける電波状態に応じて最適なチャネル及び周波数が使用されると共に携帯端末3に通知される。この場合においても、上記実施の形態と同様に、車両が走行する道路上に存在するエリアに応じて最適なチャネル及び周波数を用いて直接通信により通信を行うことができるので、無線通信のためのアクセスポイントが設置されている場合においても、所望の通信相手と適切に直接通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態に係る無線通信システムを説明するための概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すシステムにおける車載装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すシステムにおける携帯端末の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すシステムにおけるサーバ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】上記実施の形態に係るサーバ装置の電波状態データベースにおける管理テーブルの例を示す図である。
【図6】上記実施の形態に係る無線通信システムにおける動作を説明するためのシーケンス図である。
【図7】上記実施の形態に係る無線通信システムにおける動作を説明するためのシーケンス図である。
【図8】上記実施の形態に係る無線通信システムにおける動作を説明するためのシーケンス図である。
【符号の説明】
【0079】
1 車載装置
2 移動通信網
3 携帯端末
4 サーバ装置
11、31、41 制御部
12、32、42 通信制御部
13、34 表示部
14、35 GPS装置
15、36、44 アプリ制御部
16、37 電波強度測定部
17、38 直接通信制御部
33 入力部
43 電波状態DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置と、前記車載装置と直接通信により通信可能な携帯端末装置と、前記車載装置の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置からの電波情報に基づいて判定するサーバ装置とを具備し、
前記サーバ装置は、前記車載装置と前記携帯端末装置とが直接通信により通信を行う場合、当該車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアにおける電波状態に基づいて、前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、前記電波情報として、アクセスポイントからの電波で使用されるチャネル及び周波数、並びに、当該電波の強度を前記車載装置から受信することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記車載装置は、前記携帯端末装置との直接通信による通信中における電波強度、パケットの再送率及びロス率の少なくとも1つに基づいて電波環境を示す数値を算出し、前記サーバ装置は、前記電波情報として、前記携帯端末装置との直接通信で使用されたチャネル及び周波数、並びに、前記電波環境を示す数値を前記車載装置から受信することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、前記車載装置からの電波情報を受信すると、当該電波情報に含まれるチャネル及び周波数に対応する電波状態を更新することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記サーバ装置は、前記車載装置と前記携帯端末装置とが一定距離内に接近した場合に当該車載装置と携帯端末装置との間で直接通信による通信開始を指示すると共に、当該車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアで直接通信を行う際に前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を通知することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、前記車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアにおけるチャネルの使用状態を管理することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
車両に搭載され外部のアクセスポイントから検出される電波に基づいて複数のエリアにおける電波状態を判定する車載装置と、前記車載装置と直接通信により通信可能な携帯端末装置とを具備し、
前記車載装置は、前記携帯端末装置と直接通信により通信を行う際、自装置が位置するエリアにおける電波状態に基づいて、自装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を使用すると共に当該携帯端末装置に通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置と、前記車載装置と直接通信により通信可能な携帯端末装置と接続されたサーバ装置であって、
前記車載装置の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置からの電波情報に基づいて判定する電波状態判定部と、前記車載装置と前記携帯端末装置とが一定距離内に接近した場合に当該車載装置と携帯端末装置との間で直接通信による通信開始を指示すると共に、当該車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアで直接通信を行う際に前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を通知する直接通信指示部とを具備することを特徴とするサーバ装置。
【請求項9】
車両に搭載され自装置の位置情報を検出すると共に外部のアクセスポイントからの電波を検出する車載装置と、前記車載装置と直接通信により通信可能な携帯端末装置と接続されたサーバ装置における無線通信制御方法であって、
前記車載装置の位置情報から特定されるエリアにおける電波状態を当該車載装置からの電波情報に基づいて判定する工程と、前記車載装置と前記携帯端末装置とが一定距離内に接近した場合に当該車載装置と携帯端末装置との間で直接通信による通信開始を指示すると共に、当該車載装置及び携帯端末装置が位置するエリアにおける電波状態に応じて直接通信を行う際に前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を通知する工程とを具備することを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項10】
車両に搭載される車載装置と、前記車載装置と直接通信により通信可能な携帯端末装置とを用いた無線通信制御方法であって、
前記車載装置で外部のアクセスポイントから検出される電波に基づいて複数のエリアにおける電波状態を判定する工程と、前記携帯端末装置と直接通信により通信を行う際、前記車載装置が位置するエリアにおける電波状態に基づいて、前記車載装置と前記携帯端末装置との相互間で直接通信可能となるチャネル及び周波数を当該携帯端末装置に通知する工程と、当該チャネル及び周波数を用いて前記携帯端末装置と直接通信により通信を行う工程とを具備することを特徴とする無線通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−17101(P2009−17101A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175104(P2007−175104)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】