説明

無線通信システム、ハンドオーバ制御方法及び基地局

【課題】 高速移動端末においてハンドオーバの頻繁な発生を抑制し、基地局を含むネットワーク装置の負荷を低減する。
【解決手段】 基地局は、ハンドオーバ先候補となる隣接セルでの端末の滞在時間に応じて、ハンドオーバ先の基地局を決定する。高速移動端末のハンドオーバ先基地局を決定するための情報として、各基地局において一定値以上の移動速度の端末の滞在時間情報を測定、保持する。基地局が高速移動端末をハンドオーバさせる際には、隣接基地局、又は、各基地局から収集した滞在時間情報を保持するログサーバから、高速移動通信端末の平均滞在時間を取得し、各基地局のハンドオーバ基準値に滞在時間に応じたオフセットをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、ハンドオーバ制御方法及び基地局に関し、特にセルラ無線通信システム及びセルラ無線通信システムにおけるハンドオーバ制御方法、及び、当該方法を実現する基地局に関する。

【背景技術】
【0002】
セルラ無線通信システムにおいて、移動端末は、いずれかの基地局と接続し、データ通信を行う。移動端末は、移動に伴って、現在接続している基地局より通信品質の良い基地局に接続先を切り替える(ハンドオーバ)。セルラ通信システムの標準化団体である3GPP(3rd Generation Pertnership Project)では、セルラ通信システムの一つであるE−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)におけるハンドオーバ処理の手順を規定しており、その詳細が非特許文献1に記載されている。
また、高速移動する鉄道の車内や高速道路を通行している車両内で移動端末を使用して通信を行う場合、歩行時などに比べてハンドオーバが頻繁に発生することが想定される。

そこで、高速移動する端末(高速移動端末)と低速移動する端末を区別し、異なるハンドオーバ処理を実施することで高速移動端末においても安定した通信を提供するという技術が検討されている。

例えば、特許文献1では、移動端末が、各基地局のセル半径の大きさを判断し、当該移動端末の移動速度や送信パワー等に基づいて、セル半径の大きな基地局又はセル半径の小さい基地局のいずれかを優先して選択すべきかを判定する技術が開示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−010989
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS36.331 V10.2.0 Section 5.4 Intra−RAT mobility
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような高速移動端末でハンドオーバが頻繁に発生すると、ハンドオーバ処理により基地局を含むネットワーク装置の負荷が増大する。

さらに、昨今、通信可能エリアが狭い家庭用基地局(フェムトセル基地局)が普及し、旧来のマクロセル基地局との混在により、セル配置による通信エリア構成が複雑になると予想されるため、このような通信エリア環境を考慮したハンドオーバ制御技術が必要になる。
しかしながら、このような通信エリア環境において、特許文献1に記載の技術では十分な効果が得られない可能性がある。特許文献1では、ハンドオーバの頻度を下げるために、セル半径が大きい基地局がハンドオーバ先として選択されやすくする場合がある。しかしながら、かならずしもセル半径が大きい基地局において移動端末の滞在時間が長いとは限らない。よって、セル半径が大きい基地局が選択されたとしても、移動端末のその基地局での滞在時間が短い場合、ハンドオーバの頻発を防止できない場合がある。
本発明は、以上の点に鑑み、通信エリア環境を考慮し、高速移動する端末に対して、ハンドオーバが頻繁に生じないようにハンドオーバ先基地局を選択することを、ひとつの目的とする。
また本発明は、高速移動端末に対し所要の通信品質を保ちつつ、ハンドオーバの頻度を低減することで、高速移動端末に対して安定した通信環境を提供することを、他の目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る基地局は、ハンドオーバ先候補となる隣接セルでの端末の滞在時間の平均時間情報に応じて、ハンドオーバ先の基地局を決定することをひとつの特徴とする。
本発明では、高速移動端末のハンドオーバ先基地局を決定するための情報として、各基地局において一定値以上の移動速度の端末の滞在時間の平均時間情報を使用することができる。このときの、滞在時間とは、例えば、当該基地局における通信開始から通信終了までの時間である。

また、本発明では、当該基地局が高速移動端末をハンドオーバさせる際に、隣接基地局、又は、各基地局から収集した前記滞在時間情報を保持するログサーバから、高速移動通信端末滞在時間の平均時間情報を取得し、ハンドオーバ先候補の基地局の中で滞在時間が長い基地局をハンドオーバ先として選択することを他の特徴とする。また、ハンドオーバ先の基地局を選択する手段としては、前記滞在時間情報に加えて、各基地局のハンドオーバ基準値(例、各基地局からの信号の受信品質)に滞在時間に応じたオフセットを追加する手段、また、ハンドオーバ候補となる基地局が複数ある場合、ハンドオーバ対象端末における受信品質が一定値以下のひとつ又は複数の基地局を候補外とする手段等を用いることができる。
【0007】
本発明の第1の解決手段によると、
無線通信システムにおいて、
端末と通信中の基地局は、前記端末から報告された自セルの通信品質と、ひとつ又は複数の隣接セルの通信品質とを比較して、ハンドオーバを決定した場合、前記基地局は、ハンドオーバ対象となる前記端末の移動速度が予め定められた閾値と比べて高速か否かを判定し、
前記基地局は、前記端末の移動速度が前記予め定められた閾値以上の場合、ログサーバ又はひとつ若しくは複数の隣接基地局から取得した隣接セル毎の滞在時間情報に基づき、各ハンドオーバ候補セルについて、前記滞在時間情報に応じた各オフセット値を生成し、各ハンドオーバ候補セルの通信品質を各前記オフセット値でオフセットした各オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、各前記オフセット通信品質値を元にハンドオーバ先セルを決定し、
前記基地局は、決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持ついずれかの前記隣接基地局へハンドオーバ要求を行う
無線通信システムが提供される。
【0008】
本発明の第2の解決手段によると、
端末と通信する複数の基地局を備えた無線通信システムにおけるハンドオーバ制御方法であって、
端末と通信中の基地局は、前記端末から報告された自セルの通信品質と、ひとつ又は複数の隣接セルの通信品質とを比較して、ハンドオーバを決定した場合、前記基地局は、ハンドオーバ対象となる前記端末の移動速度が予め定められた閾値と比べて高速か否かを判定し、
前記基地局は、前記端末の移動速度が前記予め定められた閾値以上の場合、ログサーバ又はひとつ若しくは複数の隣接基地局から取得した隣接セル毎の滞在時間情報に基づき、各ハンドオーバ候補セルについて、前記滞在時間情報に応じた各オフセット値を生成し、各ハンドオーバ候補セルの通信品質を各前記オフセット値でオフセットした各オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、各前記オフセット通信品質値を元にハンドオーバ先セルを決定し、
前記基地局は、決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持ついずれかの前記隣接基地局へハンドオーバ要求を行う
ハンドオーバ制御方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の解決手段によると、
無線通信システムにおける基地局であって、
端末と通信中の基地局は、前記端末から報告された自セルの通信品質と、ひとつ又は複数の隣接セルの通信品質とを比較して、ハンドオーバを決定した場合、前記基地局は、ハンドオーバ対象となる前記端末の移動速度が予め定められた閾値と比べて高速か否かを判定し、
前記基地局は、前記端末の移動速度が前記予め定められた閾値以上の場合、ログサーバ又はひとつ若しくは複数の隣接基地局から取得した隣接セル毎の滞在時間情報に基づき、各ハンドオーバ候補セルについて、前記滞在時間情報に応じた各オフセット値を生成し、各ハンドオーバ候補セルの通信品質を各前記オフセット値でオフセットした各オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、各前記オフセット通信品質値を元にハンドオーバ先セルを決定し、
前記基地局は、決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持ついずれかの前記隣接基地局へハンドオーバ要求を行う
基地局が提供される。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信エリア環境を考慮し、高速移動する端末に対して、ハンドオーバが頻繁に生じないようにハンドオーバ先基地局を選択することを可能にする。
また、本発明によれば、高速移動端末に対し所要の通信品質を保ちつつ、ハンドオーバの頻度を低減することで、高速移動端末に対して安定した通信環境を提供することを可能にする。


【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の無線通信システムの構成図の例。
【図2】本実施の形態の基地局の構成図の例。
【図3】本実施の形態の端末の構成図の例。
【図4】本実施の形態のログサーバの構成図の例。
【図5】基地局が端末から報告された滞在時間情報を算出、保持しログサーバへ報告するシーケンス図。
【図6】基地局が端末からMeasurement Reportを受信後に実施するハンドオーバのシーケンス図。
【図7】高速移動端末の滞在時間測定処理のフロー図。
【図8】ハンドオーバ候補セル判定処理のフロー図。
【図9】基地局がハンドオーバ候補セルを判定する第一の方法を説明する図。
【図10】基地局がハンドオーバ候補セルを判定する第二の方法を説明する図。
【図11】基地局がハンドオーバ先セルを判定する第一の方法のフロー図。
【図12】基地局がハンドオーバ先セルを判定する第二の方法のフロー図。
【図13】基地局で管理される各端末に対するRS測定結果報告値テーブル。
【図14】基地局で管理される高速移動端末のハンドオーバ先を決めるためのテーブル。
【図15】基地局で管理される自セルの高速移動端末の滞在時間テーブル。
【図16】基地局で管理される他セルの高速移動端末の滞在時間テーブル。
【図17】ログサーバにおける高速移動端末の滞在時間処理のフロー図。
【図18】ログサーバで管理される高速移動端末の滞在時間テーブル。
【図19】基地局がハンドオーバ候補の各基地局から直接滞在時間情報を取得する方法を示しているシーケンス図。
【図20】ハンドオーバ手順についてのシーケンス図。
【図21】ハンドオーバ手順2についてのシーケンス図。
【図22】端末の移動経路と滞在時間の関係を示す説明図。
【図23】端末移動速度テーブル。
【図24】本実施の形態を適用しない場合の高速移動端末のハンドオーバ先を決めるためのテーブル。
【図25】基地局で管理される高速移動端末のハンドオーバ先を決めるためのテーブル(他の例)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、E−UTRANを例として、図面を用いて説明する。
なお、以下でリファレンス信号(RS:Reference Signal)とは受信信号を復調する際の振幅及び位相の基準信号として、あるいは受信電力又は伝搬路情報を推定するための基準信号として用いられる固定ないしは半固定のパターンを持つ信号を指す。なお、リファレンス信号として、例えば、パイロット信号を用いることもできる。また復調する際の基準信号として用いるリファレンス信号と受信電力又は伝搬路情報を推定するための基準信号として用いるリファレンス信号とが同一であっても良いし、別の信号であっても良い。また、リファレンス信号はセル内の複数の端末で共通に用いても良いし、端末ごとに個別に用いても良い。
以下でセルとは、例えば、基地局から送信される無線信号が受信可能なエリアであり、端末はいずれか一つのセルに対してデータ通信を行うものとする。基地局は、1つないし複数のセルを傘下に持つ。また、隣接セルとは、あるセルに対して、周辺に存在する基地局の傘下のセルを含むものとし、必ずしも地理的に隣接しているセルである必要はない。
【0013】
1.システム構成

図1は、E−UTRAN無線通信システムの構成例を示している。無線通信システムは、図1に示すように複数の基地局と複数の端末、及びコアネットワーク装置を備える。図1のシステムにおいて、セル101A〜104Aはそれぞれの基地局101〜104と無線接続により、接続する端末111〜114が通信可能な範囲を示している。基地局のセル半径は、各基地局の運用形態、利用周波数、セル配置等の要因により決定される。たとえば、広いエリアをカバーするためのマクロ基地局のセル半径は大きくなり、小さいエリアをカバーするフェムト基地局のセル半径は小さくなる。また、図1のセル101B〜101D、102B〜102D、103B〜103Dのように、基地局は、周波数の利用効率を上げるために複数のセルを持つことがある。一方、基地局104の様に、通信カバーエリアが小さい基地局等は単一のセルのみを持つこともある。図1の基地局101〜104は、NW(Network)123を通じ、有線回線によってコアネットワーク装置122に接続される。また、基地局101〜104は、NW123を通じ、ログサーバ121に接続される。図1において、端末111は基地局101に、端末112は基地局102に、端末113は基地局103に、端末114は基地局104に、それぞれ無線によって接続することで通信が可能となる仕組みになっている。なお、これ以降の説明において、基地局とは、基地局101〜104の少なくともいずれか1つを示し、端末とは端末111〜114のいずれか1つを示すものとする。
【0014】
図2は、本実施の形態の基地局装置の構成例を示しており、図1に示している基地局の一例である。なお、図1では、単一のセルを持つ基地局装置の構成を示しているが、前述のように、単一の基地局が複数のセルを持っていてもよい。図2において、基地局は、メモリ201、CPU202、端末と無線通信を行うための無線インタフェース203、誤り訂正符号化などを行う論理回路204、コアネットワーク装置122やログサーバ121や隣接基地局と通信を行うための有線インタフェース205を備えている。
メモリ201は、RS測定結果報告値テーブル221、自セルにおける高速移動端末の滞在時間情報テーブル222、他セルにおける高速移動端末の滞在時間情報テーブル223を含む。RS測定結果報告値テーブル221は、端末から報告される、リファレンス信号受信品質情報を格納する。自セル高速移動端末の滞在時間情報テーブル222は、傘下のセルの高速移動端末の滞在時間情報を格納する。他セル高速移動端末の滞在時間情報テーブル223は、他のセルの高速移動端末の滞在時間情報を格納する。各テーブルの詳細は、後述する。
CPU202は、送信データ処理部211、受信データ処理部212、ハンドオーバ処理部213、ハンドオーバ先セル判定部214、高速移動端末の滞在時間測定部215、ハンドオーバ候補セル判定部216を含む。送信データ処理部211は、端末へ送信するデータを処理する。受信データ処理部212は、端末から受信されるデータを処理する。ハンドオーバ処理部213は、端末を隣接セルへハンドオーバさせる処理をする。ハンドオーバ先セル判定部214は、端末から報告されて来た、リファレンス信号の通信品質情報等を参照し、ハンドオーバ先のセルを決定する。高速移動端末の滞在時間測定部215は、当該セルにおける高速移動端末の滞在時間を測定し、自セル高速移動端末の滞在時間テーブル322にて保持する。ハンドオーバ候補セル判定部216は、端末から送られてくる通信品質情報等を用いて、ハンドオーバを起動するか否かを決定し、さらに隣接セルの中からハンドオーバ候補のセルを決定する。
【0015】
図3は、本実施の形態の端末装置の構成例を示しており、図1に示している端末の一例である。図3において、端末は、メモリ301、CPU302、基地局と無線通信を行うための無線インタフェース303、誤り訂正符号化などを行う論理回路304を備えている。
メモリ301は、RS測定値テーブル321、移動速度測定値テーブル322を含む。RS測定値テーブル321は、端末が測定したリファレンス信号、通信品質情報を格納する。移動速度測定値テーブル322は、端末が測定した移動速度情報を格納する。各テーブルの詳細は、後述する。
CPU302は、送信データ処理部311、受信データ処理部312、RS電力測定部313、移動速度検出部314を含む。送信データ処理部311は、基地局へ送信するデータを処理する。受信データ処理部312は、基地局から受信されるデータを処理する。RS電力測定部313は、端末が測定した通信しているセル、及び隣接セルの通信品質情報を測定し、メモリ301に含まれるRS測定値テーブル321にて保持し、無線インタフェース303を通じて、通信中の基地局へ報告する。移動速度検出部314は、端末の移動速度を検出し、端末が測定した移動速度情報をメモリ301に含まれる移動速度測定値テーブル322にて保持し、無線インタフェース303を通じて、通信中の基地局へ報告する。端末の移動速度の検出は、例えば、端末にGPSを備え、GPS情報を利用することにより行うことができる。
【0016】
図4は、本実施の形態のログサーバを示しており、図1に示しているログサーバの一例である。図4において、ログサーバは、メモリ401、CPU402、コアネットワーク装置122や基地局101〜104と通信を行うための有線インタフェース403を備えている。
メモリ401は、各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421を含む。各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421は、各基地局101〜104から報告される各基地局における高速移動端末の滞在時間情報を格納する。
CPU402は、送信データ処理部411、受信データ処理部412、高速移動端末の滞在時間処理部413を含む。送信データ処理部411は、基地局へ送信するデータを処理する。受信データ処理部412は、基地局から受信されるデータを処理する。高速移動端末の滞在時間処理部1713は、これまでに各基地局101〜104から報告されている各基地局における滞在時間情報を用いて、各基地局に高速移動端末が滞在する平均時間を計算し、各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421に格納する。
【0017】
2.シーケンス

2.1 滞在時間管理
図1の無線通信システムにおいて、基地局101〜104は、それぞれの傘下のセルにおける、高速移動端末の滞在時間情報を保持している。次に、ハンドオーバ時に最適な基地局を選択する方法の第1の実施の形態について説明する。
図5に、各基地局における高速移動端末の滞在時間管理についてのシーケンス図を示す。まずは、図5のシーケンス図を用いて、各基地局が自身と通信している高速移動端末の滞在時間情報の取得方法、及びログサーバへの通知方法について説明する。まず、シーケンス501において、端末511は自身の移動速度を、端末に備えられている移動速度検出部314において定期的に又は予め定められた時刻・タイミング等で検出し、端末ID、検出された移動速度を通信中の基地局512へ通知する。

【0018】
図23に、端末の移動速度のテーブルを示す。
基地局512には、端末IDに対して端末の移動速度を端末移動速度テーブル224に記憶する。なお、端末511は周期的又は適度のタイミングで移動速度情報を基地局512に送り、基地局512は、端末IDに対してその情報を端末移動速度テーブル224に記憶することができる。

端末511から移動速度情報を受信した基地局512の動作について図7を用いて説明する。図7は、基地局が、高速移動端末の滞在時間測定部215において行う、高速移動端末の滞在時間測定処理を示すフロー図である。まず、基地局はフロー701において、予め定められた閾値と比較して、端末511から通知された移動速度が高速であるか否かを判定する。端末511から報告された移動速度が一定値以上だった場合、フロー702において、基地局512は当該端末511の滞在時間を算出、保持する。当該端末511の滞在時間は、例えば、当該端末511の通信開始の時刻から終了までの時刻により算出してもよい。その後、フロー703において、基地局512は、自セル高速移動端末の滞在時間を以下の式を用いて更新する。
【0019】
【数1】


ただし、式中のnはこれまでに通信の開始時刻、終了時刻を算出した端末の合計値である。

基地局512は、更新した高速移動端末の滞在時間を自セルの高速移動端末の滞在時間デーブル222に格納する。図15は、自セルの高速移動端末の滞在時間テーブル222の例を示している。同図において、基地局512は、自身の傘下の各セルID1501それぞれについて高速移動端末の滞在時間1502を保持する。
【0020】
一方、フロー701において端末511から通知された移動速度が予め定められた閾値以下だった場合は、フロー702及び703の処理を行わない。なお、図7では、端末511自身が、端末511の移動速度を測定しているが、基地局512が端末511の移動速度を測定してもよい。これは、例えば、端末511が基地局512との間の無線伝搬路品質を定期的に基地局512に報告し、基地局512は報告された無線伝搬路品質の変動が一定値の閾値以上であれば、端末511が高速移動していると判定することにより、可能である。

シーケンス503において、基地局512〜515は、自セル高速移動端末の滞在時間テーブル222を参照し、自セルIDと、高速移動端末が自セルに更新した滞在時間情報をログサーバ516に通知する。
【0021】
図17に、高速移動端末の滞在時間処理についてのフロー図を示す。
基地局512〜515から高速移動端末の滞在時間情報を受信したログサーバ516の動作について図17を用いて説明する。まずログサーバ516はフロー1701において、当該基地局から過去に高速移動端末の滞在時間情報を受信したことがあるか否かを判定する。例えば、ロングサーバ516は、各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421を参照して、滞在時間情報とともに受信したセルIDに該当する高速移動端末の平均滞在時間テーブル1802又は報告数1803のデータの有無により、この判定をすることができる。過去に高速移動端末の滞在時間情報を受信したことがある場合、フロー1702において、該当するセルIDに対して、当該基地局がこれまでに送信してきた高速移動端末の滞在時間情報と今回送信してきた高速移動端末の滞在時間情報、これまでの報告してきた総数を用いて高速移動端末の滞在時間情報の平均値を算出し、フロー1703において当該基地局における高速移動端末の滞在時間情報を更新する。フロー1701において、当該基地局から過去に高速移動端末の滞在時間情報を受信したことが無い場合、ログサーバ516はフロー1703において受信した滞在時間情報をセルIDに対して、保持する。
図18は、ログサーバ516が保持する、各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421の例である。ログサーバ516は、セルID(1801)で指定されるセルごとに、フロー1702で計算した高速移動端末の滞在時間の平均値(平均滞在時間)1802と、セルからの滞在時間情報の報告回数1803を、各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421として保持する。
【0022】
2.2 ハンドオーバ制御(第1のシーケンス)
図6に、ハンドオーバ手順についてのシーケンス図を示す。
次に、図6のシーケンス図を用いてハンドオーバ制御方法について説明する。シーケンス601において端末611は、端末ID、通信中の基地局612のセルID及び通信品質、及び隣接基地局におけるセルID及び通信品質をMeasurement Reportとして接続先の基地局612へ報告する。この時の、通信品質とは、例えばリファレンス信号受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)、リファレンス信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)等である。また、端末は、基地局からの指示に応じて、周期的に、あるいは、通信品質が一定の基準を満たした場合に、基地局にMeasurement Reportを送信する。

Measurement Reportを受信した基地局612は、通信品質情報をRS測定結果報告値テーブル221に格納する。
図13は、RS測定結果報告値テーブル221の例を示している。同図において、基地局612は各端末ID1301に対して自セル1302A及び、他セル1302B〜1302D毎のRS測定結果値1302をそれぞれ保持する。
【0023】
次に、シーケンス602において端末611からMeasurement Reportを受信した通信中の基地局612の動作を、図8を用いて説明する。図8は、基地局が、ハンドオーバ候補セル判定部216において行う、ハンドオーバ候補セル判定処理を示すフロー図である。まず基地局612はフロー801において、RS測定結果報告値テーブル221を参照し、端末611から報告された自セルの通信品質と隣接セルの通信品質を比較し、ハンドオーバ決定条件を満たしているか否かを判定する。例えば、隣接セルの通信品質が、自セルの通信品質に対し一定値以上良ければ、基地局612は、ハンドオーバ決定条件を満たしていると判定する。ハンドオーバ決定条件を満たしていない場合(801のNO)は、基地局612は、フロー803において、ハンドオーバを実行しないことを決定する。ハンドオーバ決定条件を満たしている場合(801のYES)、基地局612は、フロー802において、端末移動速度テーブル224を参照して、ハンドオーバ対象となる端末611の移動速度が高速か否かを判定する。端末の移動速度が予め定められたある閾値未満の場合(802のNO)、基地局612は、フロー805において本実施の形態のアルゴリズムを使用しない通常のハンドオーバを起動する。すなわち、基地局は、図6のシーケンス603〜605の処理は実施せずに、シーケンス606以降の処理を実施する。一方、フロー802において、端末611の移動速度がある閾値以上の場合(802のYES)、基地局612は、ハンドオーバ先での通信品質を確保するため、フロー804において、端末612との間の通信品質が良好なセルをハンドオーバ候補として抽出する。例えば、通信中の基地局612は、RS測定結果報告値テーブル221を参照して、端末611の端末IDのRS測定結果値が予め定められた閾値より大きいひとつ又は複数のセルを、ハンドオーバ候補として抽出することができる。
ハンドオーバ候補セルに対しこのような制限を加えない場合、ハンドオーバ後に端末612の通信品質が大きく劣化し、データレートの低下や、基地局との間のコネクションの切断などが発生する場合があるかもしれないが、各セルと端末の間の通信品質を指標としてハンドオーバ候補セルを制限することにより、ハンドオーバ後の通信品質の劣化を防止しつつ、端末をハンドオーバさせることができる。
【0024】
図9に、ハンドオーバ候補セルの判定方法(1)についての説明図を示す。また、図10に、ハンドオーバ候補セルの判定方法(2)についての説明図を示す。
以下は、図9及び図10を用いて、フロー804におけるハンドオーバ候補セル決定方法の例を説明する。まず、端末が一定の通信品質を得られるセルをハンドオーバ候補として選択するハンドオーバ候補セル決定方法を、図9を用いて説明する。図9は、端末が一定の通信品質を得られるセルをハンドオーバ候補として選択する、ハンドオーバ候補セル決定方法を示す図である。図9では、端末から基地局に、セル1〜6の通信品質が報告されたとする。基地局は、予め定められた閾値以上の通信品質であるセルを、ハンドオーバ候補として選択する。図9の例では、セル1、セル2、セル3、セル4、セル6がハンドオーバ候補として選択され、セル5はハンドオーバ候補から除外される。
次に、端末が報告してきた最も通信品質の良いセルからハンドオーバ許容値を満たす範囲のセルをハンドオーバ候補として選択するハンドオーバ候補セル決定方法を、図10を用いて説明する。図10は、端末が報告してきた最も通信品質の良いセルからハンドオーバ許容値を満たす範囲のセルをハンドオーバ候補として選択する、ハンドオーバ候補セル決定方法を示す図である。図10では、端末から基地局に、セル1〜6の通信品質が報告されたとする。基地局は、端末が報告してきた最も通信品質の良いセル(図10のセル6)からハンドオーバ許容値内であるセルをハンドオーバ候補として選択する。図10の例では、セル1、セル2、セル4、セル6がハンドオーバ候補として選択され、セル3、セル5はハンドオーバ候補から除外される。
【0025】
図6に戻り、次にシーケンス603において、基地局612は、ログサーバ616にハンドオーバ候補セルにおける高速移動端末の滞在時間情報を問い合わせる。シーケンス604において、ログサーバ616は、各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル421を参照し、基地局612に、ハンドオーバ候補セルにおける滞在時間情報(高速移動端末の平均滞在時間)を通知する。

基地局612は、受信した滞在時間情報をハンドオーバ候補セルIDに対応して他セル高速移動端末の滞在時間テーブル223に記憶する。
図16は、シーケンス604において通知される他セルの高速移動端末の滞在時間テーブル223の例を示している。同図において、基地局512の各隣接セルID1601毎の高速移動端末の滞在時間1602が格納されている。

【0026】
基地局612は、ログサーバ616から通知されたハンドオーバ候補セルにおける高速移動端末の滞在時間情報を用いて、ハンドオーバ先セルの決定、ハンドオーバを行う。
基地局612がハンドオーバ先セル判定部214において行う、ハンドオーバ先セル決定処理を、図11を用いて説明する。図11は、基地局が、ハンドオーバ先セル判定部214において行う、ハンドオーバ先セル判定処理の第1の方法のフロー図である。まず基地局612はフロー1101において、ログサーバ616から受信した各滞在時間情報(高速移動端末の平均滞在時間)に応じてoffset値を生成する。基地局612は、例えば、通信品質の値を元にハンドオーバ先セルを決定するため、ハンドオーバが頻繁に生じないように滞在時間が長いセルには値の大きいoffset値を生成し、滞在時間が短いセルには値の小さいoffset値を生成する。このoffset値を求めるためには、滞在時間情報に比例するような数式で計算したり、予め定められた値を記憶したテーブルを参照するなど適宜の手法を用いることができる。その後、フロー1102において、RS測定結果報告値テーブル221を参照して、ハンドオーバ候補の各セルの通信品質にフロー1101で生成したoffset値を加算し、通信品質値を更新する。基地局612はフロー1103において、フロー1102で生成された通信品質を元にハンドオーバ先セルを決定する。
【0027】
基地局612が当該高速移動端末611のハンドオーバ先セルを決める方法を、図14を用いて説明する。図14は、基地局612のメモリ201で保持されている高速移動端末のハンドオーバ先を決めるためのテーブル225の詳細を示している。図14では、当該高速移動端末611のハンドオーバ候補としてセル1〜6が決定されたとする。当該高速移動端末611と通信中の基地局612は、ハンドオーバ候補セルにおける高速移動端末の平均滞在時間1402(ログサーバから受信した値がセット)を考慮して、平均滞在時間1402が大きいほどoffset値が大きくなるよう、offset値1404を生成する。さらに生成したoffset値1404と、当該端末が測定したハンドオーバ候補の通信品質1403(RS測定結果報告値テーブル221からセット)の和を計算し、offset値を考慮した通信品質1405を生成する。当該基地局612は、offset値を考慮した通信品質1405を用いてハンドオーバ先セルの優先順位1406を決定する。すなわち、基地局612はセル3をハンドオーバ先セルとして決定する。なお、特に高速移動端末のハンドオーバ先を決めるためのテーブル225を設けずに、各値を、CPU201が計算上用いるようにしてもよい。
本実施の形態を適用しない場合、基地局612は、端末の通信品質1403のみに着目してハンドオーバ先セルの優先順位1408を決定する。すなわち、基地局612は、図24の1408のようにハンドオーバ先セルの優先順位を決定し、セル4をハンドオーバ先セルとして選択する。このとき、セル4へのハンドオーバ後、端末611に対して最も良い通信品質を実現できると期待されるが、滞在時間が短いセルをハンドオーバ先セルとして決定しているため、ハンドオーバが頻繁に生じてしまうおそれがある。一方、本発明を適用した場合は、基地局612は、所要の通信品質を満たしており、かつ滞在時間の長いセルをハンドオーバ先セルとして決定する。すわなち、上述のように、滞在時間を考慮してハンドオーバ先セルを選択することにより、ハンドオーバの頻発を防止できる。
【0028】
また、上述のハンドオーバ先セルを決定する手段として図12の様な手段を用いても良い。図12に、ハンドオーバ先セル判定処理(2)についてのフロー図を示す。図12の手段において、基地局612はフロー1201において、最も滞在時間が長いセルをハンドオーバ先セルとして決定する。
当該高速移動端末がハンドオーバをする際のハンドオーバ先セルを決める処理を、図25を用いて説明する。図25に、高速移動端末のハンドオーバ先を決めるためのテーブルの他の例を示す。図25では当該高速移動端末のハンドオーバ候補としてセル1〜6が決定されたとする。当該基地局612は、ハンドオーバ候補セルの滞在時間を考慮してハンドオーバ先セルを決定1407する。すなわち、基地局612は、セル3をハンドオーバ先として決定する。このように、高速移動端末の滞在時間の長いセルに、端末をハンドオーバさせることにより、さらなるハンドオーバの頻発を防止することができる。
【0029】
図6に戻り、次に、基地局612は、シーケンス606でハンドオーバを起動する。ハンドオーバ起動後、当該端末611と通信中の基地局612は、シーケンス605で決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持つ基地局へシーケンス607でハンドオーバ要求を行う。図6の例では、ハンドオーバ先セルが基地局614の傘下に含まれるとし、基地局612は、基地局614にハンドオーバ要求を行う。ハンドオーバ要求を受信した基地局614は、当該端末611を受け入れ可能なときシーケンス608でハンドオーバ受け入れ応答を当該端末611と通信中の基地局612に送信する。ハンドオーバ受け入れ応答を受信した当該端末611と通信中の基地局612は当該端末611にシーケンス609でハンドオーバ指示を行う。その後、ハンドオーバ指示された当該端末611とハンドオーバ先基地局614はシーケンス610で接続を確立し、ハンドオーバを完了する。
【0030】
2.3 ハンドオーバ制御(第2のシーケンス)
図20に、ハンドオーバ手順についてのシーケンス図を示す。
なお、図6では、隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を、ハンドオーバ候補セルの決定602の後に行うが、図20に示す様にこれに先んじて隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を行ってもよい。すなわち、隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の、ログサーバからの取得を、例えば一定の周期で定期的に行い、隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報を次回の取得時まで、他セル高速移動端末の滞在時間テーブル223に保持する(シーケンス2004)。ハンドオーバ手順においては、基地局は、他セル高速移動端末の滞在時間テーブル223を参照して、すでに保持している隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報を使用する。
【0031】
2.4 ハンドオーバ制御(第3のシーケンス)
また、上述の「2.2 ハンドオーバ制御(第1のシーケンス)」及び「2.3 ハンドオーバ制御(第2のシーケンス)」では、図6のように、隣接セルの高速移動端末における滞在時間情報の取得を、ログサーバ616を通じて行うものとしたが、基地局612は、隣接基地局613〜615から高速移動端末の滞在時間情報を取得を行ってもよい。隣接基地局613〜615から高速移動端末における滞在時間情報の取得を行う場合の動作を、図19を用いて説明する。図19は、当該基地局1912が隣接基地局1913〜1915から高速移動端末における滞在時間情報の取得を行う場合の、ハンドオーバ手順のシーケンス図である。当該基地局1912は、シーケンス1902においてハンドオーバを決定、ハンドオーバ候補セルを決定後、各隣接基地局1913〜1915それぞれにシーケンス1903において、各隣接基地局1913〜1915における高速移動端末1911の滞在時間情報を問い合わせる。シーケンス1904において、各隣接基地局1913〜1915は当該基地局1912に、自基地局における高速移動端末の滞在時間情報をセルIDとともに通知する。シーケンス1921において、基地局1912は、図16に示したような、他セルの高速移動端末の滞在時間のテーブル223に通知を受けた基地局のセルIDに対して滞在時間情報を記憶する。
図19では、隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を、ハンドオーバ候補セルの決定1902の後に行うが、これに先んじて隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を行ってもよい。すなわち、隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を、基地局間インタフェースを通じて、例えば一定の周期で定期的に行い、隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報を次回の取得時まで保持する。ハンドオーバ手順においては、基地局は、すでに保持している隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報を使用する。
【0032】
2.5 ハンドオーバ制御(変形例)
さらに、上述では、図6のシーケンス607〜608、及び、図19のシーケンスの1907〜1908のような、ハンドオーバを実行するための基地局間の情報のやりとりを、基地局間インタフェースを用いて行うものとしたが、基地局は、他の基地局と、コアネットワーク装置122を経由してハンドオーバを実行するための情報のやりとりを行っても良い。

また、上述の実施の形態では、図8のように端末の移動速度を高速か否かの2段階に分類したが、移動速度を3段階以上に分類してもよい。移動速度を3段階以上に分類することにより、例えば、新幹線で移動している端末、高速道路を車で移動している端末等を区別することができ、乗り物の移動速度に応じたハンドオーバ制御が可能となる。
【0033】
上述のように、高速移動端末を、滞在時間の長いセルにハンドオーバさせることにより、滞在時間の長いセルの接続端末数が増加し、滞在時間の長いセルを傘下に持つ基地局の深が増大する場合がある。このような特定の基地局への負荷の集中は、例えば、低速で移動する端末を、滞在時間が短いセルにハンドオーバさせることにより、回避できる。

図22は、端末の移動経路と滞在時間の関係を示している。図22において、セル2231、2232はそれぞれの基地局2201、2202と無線接続により通信が可能な範囲を示している。半径の大きいセル2231と半径の小さいセル2232が隣接しており、端末2210は2220の経路で高速移動するものとする。この時、区間2222及び区間2221はそれぞれセル2231、2232における端末2210の滞在区間を表す。セル半径の大きい基地局2201にハンドオーバさせた場合、セル半径の小さい基地局2202にハンドオーバさせた場合と比較して、端末2210のハンドオーバ先セルにおける滞在時間が短くなる。しかしながら本発明及び本実施の形態を適用することにより、端末2210を滞在時間の長いセル2232にハンドオーバさせることができる。


【産業上の利用可能性】
【0034】
以上の実施の形態では、主にE−UTRANを例として説明したが、本発明は、これ以外にも、セルラ通信システム等の様々な無線通信システム及びハンドオーバ制御及び基地局に適用することができる。

【符号の説明】
【0035】
101、102、103、104 基地局
101A〜104D 各基地局のセル
121 ログサーバ
122 コアネットワーク装置
123 ネットワーク

201 基地局のメモリ
202 基地局のCPU
203 基地局の無線インターフェース
204 基地局の論理回路
205 基地局の有線インターフェース
211 基地局の送信データ処理部
212 基地局の受信データ処理部
213 基地局のハンドオーバ処理部
214 基地局のハンドオーバ先セル判定部
215 基地局の高速移動端末の滞在時間測定部
216 基地局のハンドオーバ候補セル判定部
221 基地局のRS測定結果報告値テーブル
222 基地局の自セル高速移動端末の滞在時間テーブル
223 基地局の他セル高速移動端末の滞在時間テーブル

301 端末のメモリ
302 端末のCPU
303 端末の無線インターフェース
304 端末の論理回路
311 端末の送信データ処理部
312 端末の受信データ処理部
313 端末のRS電力測定部
314 端末の移動速度検出部
321 端末のRS測定値テーブル
322 端末の移動速度測定値テーブル

401 ログサーバのメモリ
402 ログサーバのCPU
403 ログサーバの有線インターフェース
411 ログサーバの送信データ処理部
412 ログサーバの受信データ処理部
413 ログサーバの高速移動端末の滞在時間処理部
421 ログサーバの各セルにおける高速移動端末の滞在時間テーブル

501 端末の速度情報の通知
502 高速移動端末の滞在時間判定処理
503 高速移動端末の滞在時間情報の通知
504 高速移動端末の滞在時間処理
511 端末
512〜515 基地局
516 ログサーバ

601 Measurement Report
602 ハンドオーバ候補セル判定処理
603 各基地局の滞在時間情報問い合わせ
604 滞在時間情報の通知
605 ハンドオーバ先セル判定処理
606 ハンドオーバ起動
607 ハンドオーバ要求
608 ハンドオーバ受け入れ応答
609 ハンドオーバ指示
610 接続確立
611 端末
612 通信中の基地局
613〜615 ハンドオーバ候補の基地局
616 ログサーバ

701 端末の速度がある閾値以上かの判定
702 通信の開始時刻、終了時刻の算出、保持処理
703 端末の滞在時間情報の更新処理

801 端末から通知された通信品質が基地局におけるハンドオーバ決定条件を満たしているかの判定処理
802 端末の移動速度がある閾値以上か否かの判定
803 ハンドオーバを実行をしないという処理
804 端末から見て一定値以下の通信品質 のセル、又は最も通信品質の良いセルを基準にしてハンドオーバ許容値を満たさないセルをハンドオーバ候補から除外する処理
805 ハンドオーバ処理

1101 滞在時間に応じたoffsetを生成する処理
1102 各セルに適したoffsetを加算し通信品質を更新する処理
1103 更新された通信品質を元にハンドオーバ先セルを決定する処理

1201 滞在時間が最も長いセルを選定し、ハンドオーバ先セルに決定する処理

1301 端末ID
1302 RS測定結果値
1302A〜1302D 各セルにおけるRS測定結果値

1401 端末のハンドオーバ候補セル
1402 平均滞在時間
1403 端末の通信品質
1404 offset値
1405 offsetを考慮した通信品質
1406 offsetを考慮したときのハンドオーバ先優先順位
1407 滞在時間のみを考慮したときのハンドオーバ先優先順位
1408 本発明を適用しないハンドオーバ先優先順位

1501 自セルID
1502 高速移動端末の滞在時間

1601 隣接セルID
1602 高速移動端末の滞在時間

1701 当該基地局傘下のセルから過去に滞在時間情報を受信したか否かの判定
1702 これまでに送られてきた情報と今回の情報の平均値を算出 する処理
1703 当該セルにおける高速移動端末の滞在時間情報を更新 する処理

1801 自セルID
1802 高速移動端末の平均滞在時間
1803 報告数

1901 Measurement report
1902 ハンドオーバ候補セル判定処理
1903 各基地局の滞在時間情報問い合わせ
1904 滞在時間情報の通知
1905 ハンドオーバ先セル判定処理
1906 ハンドオーバ起動
1907 ハンドオーバ要求
1908 ハンドオーバ受け入れ応答
1909 ハンドオーバ指示
1910 接続確立
1911 端末
1912 通信中の基地局
1913〜1915 ハンドオーバ候補の基地局
1916 ログサーバ
1921 各基地局毎の滞在時間保持

2001 各基地局の滞在時間情報問い合わせ
2002 滞在時間情報の通知
2003 Measurement Report
2004 滞在時間情報の保持
2005 ハンドオーバ候補セル判定処理
2006 ハンドオーバ先セル判定処理
2007 ハンドオーバ起動
2008 ハンドオーバ要求
2009 ハンドオーバ受け入れ応答
2010 ハンドオーバ指示
2011 接続確立
2012 端末
2013 通信中の基地局
2014〜2016 ハンドオーバ候補の基地局
2017 ログサーバ


2101 各基地局の滞在時間情報問い合わせ
2102 滞在時間情報の通知
2103 Measurement report
2104 ハンドオーバ候補セル判定処理
2105 ハンドオーバ先セル判定処理
2106 ハンドオーバ起動
2107 ハンドオーバ要求
2108 ハンドオーバ受け入れ応答
2109 ハンドオーバ指示
2110 接続確立
2111 端末
2112 通信中の基地局
2113〜2115 ハンドオーバ候補の基地局
2116 ログサーバ
2121 各基地局毎の滞在時間保持

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおいて、
端末と通信中の基地局は、前記端末から報告された自セルの通信品質と、ひとつ又は複数の隣接セルの通信品質とを比較して、ハンドオーバを決定した場合、前記基地局は、ハンドオーバ対象となる前記端末の移動速度が予め定められた閾値と比べて高速か否かを判定し、
前記基地局は、前記端末の移動速度が前記予め定められた閾値以上の場合、ログサーバ又はひとつ若しくは複数の隣接基地局から取得した隣接セル毎の滞在時間情報に基づき、各ハンドオーバ候補セルについて、前記滞在時間情報に応じた各オフセット値を生成し、各ハンドオーバ候補セルの通信品質を各前記オフセット値でオフセットした各オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、各前記オフセット通信品質値を元にハンドオーバ先セルを決定し、
前記基地局は、決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持ついずれかの前記隣接基地局へハンドオーバ要求を行う
無線通信システム。

【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記基地局は、
前記端末が測定した移動速度を前記端末から受信し、
i)該移動速度が予め定められた一定値以上であれば、前記端末の移動速度が高速であると判定すること、又は、
ii)前記基地局は、前記端末から報告された無線伝搬路品質の変動が予め定められた他の一定値以上であれば、前記端末の移動速度が高速であると判定すること
を特徴とする無線通信システム。

【請求項3】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記端末は、定期的に移動速度を検出し、通信中の前記基地局へ通知し、
前記基地局は、前記端末から通知された移動速度が、前記予め定められた閾値より高速であるか否かを判定し、
前記端末から報告された移動速度が該閾値以上だった場合、前記基地局は、前記端末の滞在時間を算出し、セル毎に高速移動端末の滞在時間情報を記憶した自セル滞在時間テーブルを更新し、
前記基地局は、前記自セル滞在時間テーブルを参照して、前記滞在時間情報を前記ログサーバ又はひとつ又は複数の他の基地局へ送信する
ことを特徴とする無線通信システム。

【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記ログサーバは、
セル毎に、高速移動端末の平均滞在時間と、セルからの滞在時間情報の報告回数を記憶する各セル滞在時間テーブル
を備え、
前記ログサーバは、前記各セル滞在時間テーブルを参照して、前記基地局がこれまでに送信してきた高速移動端末の滞在時間情報と今回送信してきた高速移動端末の滞在時間情報、報告回数を用いて高速移動端末の平均滞在時間を算出し、前記各セル滞在時間テーブルを更新又は保持し、
前記基地局が、前記ログサーバに、各ハンドオーバ候補セル又は各隣接セルにおける高速移動端末の平均滞在時間を含む滞在時間情報を問い合わせたとき、前記ログサーバは、前記各セル滞在時間テーブルを参照して、前記基地局に、滞在時間情報を通知する
ことを特徴とする無線通信システム。

【請求項5】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記基地局は、一定の周期又は定期的又は予め定められたときに、各隣接基地局に、各隣接基地局における高速移動端末の滞在時間情報を問い合わせ、
各隣接基地局は、前記基地局に、自局のセル毎の高速移動端末の滞在時間情報を通知し、
前記基地局は、各隣接基地局のセル毎の高速移動端末の滞在時間情報を、他セル滞在時間テーブルに保持する
ことを特徴とする無線通信システム。

【請求項6】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記基地局は、ハンドオーバ候補セルにおける高速移動端末の平均滞在時間が大きいほどオフセット値が大きくなるように、オフセット値を生成し、生成したオフセット値と、前記端末が測定したハンドオーバ候補の通信品質との和又は積を計算して、前記オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、前記オフセット通信品質値を用いてハンドオーバ先セルの優先順位を決定する
ことを特徴とする無線通信システム。

【請求項7】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記基地局は、各隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を、ハンドオーバを決定及び/又はハンドオーバ候補セルを決定後に行うことを特徴とする無線通信システム。

【請求項8】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記基地局は、各隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報の取得を、一定の周期又は定期的又は予め定められたときに行い、隣接セル毎の高速移動端末の滞在時間情報を他セル滞在時間テーブルに保持し、
前記基地局は、前記他セル滞在時間テーブルにすでに保持している隣接セルの高速移動端末の滞在時間情報を使用してハンドオーバを実行する
ことを特徴とする無線通信システム。

【請求項9】
端末と通信する複数の基地局を備えた無線通信システムにおけるハンドオーバ制御方法であって、
端末と通信中の基地局は、前記端末から報告された自セルの通信品質と、ひとつ又は複数の隣接セルの通信品質とを比較して、ハンドオーバを決定した場合、前記基地局は、ハンドオーバ対象となる前記端末の移動速度が予め定められた閾値と比べて高速か否かを判定し、
前記基地局は、前記端末の移動速度が前記予め定められた閾値以上の場合、ログサーバ又はひとつ若しくは複数の隣接基地局から取得した隣接セル毎の滞在時間情報に基づき、各ハンドオーバ候補セルについて、前記滞在時間情報に応じた各オフセット値を生成し、各ハンドオーバ候補セルの通信品質を各前記オフセット値でオフセットした各オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、各前記オフセット通信品質値を元にハンドオーバ先セルを決定し、
前記基地局は、決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持ついずれかの前記隣接基地局へハンドオーバ要求を行う
ハンドオーバ制御方法。

【請求項10】
無線通信システムにおける基地局であって、
端末と通信中の基地局は、前記端末から報告された自セルの通信品質と、ひとつ又は複数の隣接セルの通信品質とを比較して、ハンドオーバを決定した場合、前記基地局は、ハンドオーバ対象となる前記端末の移動速度が予め定められた閾値と比べて高速か否かを判定し、
前記基地局は、前記端末の移動速度が前記予め定められた閾値以上の場合、ログサーバ又はひとつ若しくは複数の隣接基地局から取得した隣接セル毎の滞在時間情報に基づき、各ハンドオーバ候補セルについて、前記滞在時間情報に応じた各オフセット値を生成し、各ハンドオーバ候補セルの通信品質を各前記オフセット値でオフセットした各オフセット通信品質値を生成し、
前記基地局は、各前記オフセット通信品質値を元にハンドオーバ先セルを決定し、
前記基地局は、決定されたハンドオーバ先セルを傘下に持ついずれかの前記隣接基地局へハンドオーバ要求を行う
基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−90203(P2013−90203A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229914(P2011−229914)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】