説明

無線通信システム、基地局、無線通信端末及びアクセススケジューリング方法

【課題】特定の時刻に一斉に通信が開始されることに起因する無線アクセスネットワークの輻輳を低減または防止する。
【解決手段】基地局は、基地局に接続している少なくとも1つの無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、その少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻が他の無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、その少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局、無線通信端末及びアクセススケジューリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話システムに代表される広域無線通信システムが対象とする通信の用途は拡大の一途であり、例えばマシンコム(Machine Communication)と呼ばれるような、機械デバイスとデータセンター等との間の通信に広域無線通信システムを適用することが考えられている。マシンコムの用途の代表例としては、自動販売機、電力計等のスマートメーター、またITS(Intelligent Transportation Systems)と呼ばれる高度道路交通システムが挙げられる。
【0003】
上記のようなマシンコムの通信は概して、送受信するデータは間欠的であり、かつ一度に送受信されるデータ量は少ない一方で、通信に関する無線通信端末数は非常に多いという特徴を持つ。特に自動販売機やスマートメーターに適用されるマシンコムの主たる用途は、定時毎の販売データの収集あるいは消費量データの収集である。したがって、通信データはその発生が間欠的に周期性をもって発生し、そのデータ量は比較的少量であることが確認できる。
【0004】
上記マシンコムにおいては、マシンコムに係る無線通信端末(以下、マシンコム端末と称する)が同一の適用先(例えば特定の事業者のスマートメーター)に帰属する場合、その通信周期が同一となる可能性が十分考えられる。すなわち、上記マシンコム端末が一斉に同じ時刻に通信を行い、データセンター等にデータを送信するユースケースは十分考え得るものである。
【0005】
しかしながら、多数のマシンコム端末が一斉に通信を開始すると、広域無線通信システムに対するアクセス要求が集中し、無線通信システムが輻輳状態に陥ることが予想される。無線通信システムが輻輳状態になると、マシンコム端末はデータの送受信に失敗する。
【0006】
上記アクセス集中による輻輳を回避するために、非特許文献1では、携帯電話システムにおいて基地局が無線通信端末のコネクション確立を抑制することにより、コアネットワークの輻輳を抑止することが議論されている。しかしながら、この方法では、無線通信端末と基地局間の無線アクセスネットワークにおいて、コネクション確立要求のためにランダムアクセス要求やコネクション確立要求が送受信されるため、無線アクセスネットワークの輻輳の抑止には効果がない。
【0007】
一方で特許文献1に記載された技術では、端末にダウンロードされるアプリケーションに自動起動情報を付与することにより、端末の通信開始時間をスケジューリングすることができる。特許文献1に記載の方法をマシンコム端末に適用し、マシンコム端末に搭載のアプリケーションの通信開始時間を分散させれば、輻輳を抑止することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−190847号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】"Establishment Cause indication", R2-110269, 3GPP TSG-RAN WG2 #72bis, Dublin, Ireland, 17th- 21st of January 2011、インターネット(http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_72bis/Docs/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
周期性を持つマシンコムにおいては、通信の発生に周期性があるが故に、特定の時刻に一斉に通信が開始され、無線通信システムが輻輳状態に陥る可能性がある。
【0011】
周期性に起因する輻輳を回避するために、非特許文献1に提案されているように、コアネットワークでコネクション確立を抑制することが考えられるが、この方法は無線アクセスネットワークの輻輳抑止には不十分である。
【0012】
他方、特許文献1に記載の方法をマシンコム端末に適用して、さらにアプリケーションの起動時間を分散させれば、非特許文献1の方法と異なり、コアネットワークのみならず無線アクセスネットワークの輻輳抑止も可能である。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、アプリケーションに自動起動情報が記述されているだけなので、各基地局に接続するマシンコム端末数の多寡を把握できないため、基地局で各マシンコム端末の通信開始時間をどの程度分散させるべきかを判断できない。また、各マシンコム端末がいずれの基地局配下に存在するかも把握できないため、ある基地局に接続するマシンコム端末に搭載されるアプリケーションの全てに同じ通信開始時間を設定してしまう可能性も考えられる。したがって、特定の時刻に一斉に通信が開始されることに起因する各基地局の輻輳の抑止には不十分である。
【0013】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の時刻に一斉に通信が開始されることに起因する無線アクセスネットワークの輻輳を低減または防止することができる無線通信システム、基地局、無線通信端末及びスケジューリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る無線通信システムは、複数の無線通信端末と、前記無線通信端末と無線通信を行う基地局を備えるネットワークとを備える無線通信システムであって、前記ネットワークは、前記基地局に接続している少なくとも1つの無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と前記基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻が他の前記無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻を調整する通信開始時刻調整部と、前記通信開始時刻調整部によって調整された通信開始時刻に基づいて、前記無線通信端末が通信を開始する時刻を設定する通信開始時刻設定部とを備える。
【0015】
本発明に係る基地局は、複数の無線通信端末と無線通信を行う基地局であって、前記基地局に接続している少なくとも1つの無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と前記基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻が他の前記無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻を調整する通信開始時刻調整部を備える。
【0016】
本発明に係る無線通信端末は、通信希望時刻を基地局に通知する通信希望時刻要求メッセージ送信部と、前記基地局から通信開始時刻の通知を受信する通信開始時刻通知受信部と、前記通信開始時刻通知受信部で受信された通知で示された通信開始時刻に、次回の通信を開始する送信部とを備えることを特徴とする無線通信端末。
【0017】
本発明に係るアクセススケジューリング方法は、基地局に接続している無線通信端末の通信をスケジューリングする方法であって、前記無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と、前記基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、前記通信希望時刻を送信した前記無線通信端末の通信開始時刻が他の前記無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、前記通信希望時刻を送信した前記無線通信端末の通信開始時刻を調整することと、調整された前記通信開始時刻に基づいて、前記無線通信端末が通信を開始する時刻を設定することとを備える。
【0018】
本発明においては、基地局に接続している少なくとも1つの無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻が他の無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻を調整する。したがって、特定の時刻に一斉に通信が開始されることに起因する無線アクセスネットワークの輻輳を低減または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基地局と、無線通信端末との構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態において通信希望時刻要求メッセージとして用いられる「RRC Connection Setup Complete message」の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において通信開始時刻を無線通信端末に通知するためのフィードバックメッセージとして用いられる「RRC Connection Release message」の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るスケジューリング方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係るスケジューリング方法を示す情報フローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
図1に示すように、実施の形態に係る無線通信システムは、IP(Internet Protocol)ネットワーク100と、無線アクセスネットワーク200とを備える。IPネットワーク100は、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network、RAN)を制御するRAN制御装置101を含むコアネットワーク110を含んでいてもよい。また、IPネットワーク100には、無線通信端末のアプリケーションを制御するための装置であるアプリケーション制御サーバ102が接続されていてもよい。
【0021】
無線アクセスネットワーク200は少なくとも1つ(通常は複数)の基地局210を備える。各基地局210は少なくとも1つ(通常は複数)の無線通信端末220と通信する。無線通信端末220は、その無線通信端末があるセルの基地局210と無線を用いて通信する。
【0022】
各無線通信端末220は、例えば携帯電話(UMTS LTE(Universal Mobile Telecommunications System Long Term Evolution)のUE(User Equipment))の機能を備えるものであってよい。特に、無線通信端末220は、マシンコムを行う端末であってよい。また、各基地局210はUMTS LTEでのeNB(evolved Node B)であってもよいし、WiFiでのアクセスポイントであってもよい。無線アクセスネットワークを制御するRAN制御装置101はUMTS LTEでのMME(Mobility Management Entity)であってもよい。
【0023】
次に、実施の形態に係る基地局210及び無線通信端末220について、図2を用いて説明する。
実施の形態に係る基地局210は、通信希望時刻要求メッセージ受信部211、通信開始時刻調整部212、通信開始時刻管理部213(通信開始時刻保存装置)、およびフィードバックメッセージ送信部214(通信開始時刻通知部)を備える。通信希望時刻要求メッセージ受信部211は、基地局210が無線通信端末220から無線受信を行うための受信回路であり、フィードバックメッセージ送信部214は基地局210が無線通信端末220へ無線送信を行うための送信回路である。通信開始時刻調整部212は、基地局210の図示しないCPU(central processing unit)がコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。通信開始時刻管理部213はメモリである。
【0024】
通信希望時刻要求メッセージ受信部211は、各無線通信端末220から送信される通信希望時刻要求メッセージを受信する。通信希望時刻要求メッセージは、その送信元の無線通信端末220の通信希望時刻を示す。
【0025】
通信開始時刻調整部212は、通信希望時刻要求メッセージを解析して、通信希望時刻要求メッセージを送信した無線通信端末220の通信希望時刻を把握する。また、通信開始時刻調整部212は、通信開始時刻管理部213において管理されている他の各無線通信端末の通信開始時刻を参照することで、通信希望時刻要求メッセージを送信した無線通信端末220の通信開始時刻を調整する。より具体的には、通信希望時刻要求メッセージに示されるこのメッセージの送信元の無線通信端末220の通信希望時刻と基地局210に接続可能な他の無線通信端末220の通信開始時刻に基づいて、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信開始時刻が他の無線通信端末220の通信開始時刻とは異なるように、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信開始時刻を調整する。通信開始時刻調整部212は、好ましくは、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信開始時刻が、基地局210に接続可能な他のすべての無線通信端末220の通信開始時刻とは異なるように、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信開始時刻を調整する。但し、これには限定されず、例えば多くの無線通信端末220のうち、いくつかの無線通信端末220の通信開始時刻が一致してもよい。
【0026】
通信開始時刻調整部212によって調整された無線通信端末220の通信開始時刻は、通信開始時刻管理部213に保管される。複数の無線通信端末について通信開始時刻調整部212が通信開始時刻を調整する結果、通信開始時刻管理部213には、基地局210に接続する複数の無線通信端末220の通信開始時刻の集合が蓄積される。
【0027】
フィードバックメッセージ送信部214は、通信開始時刻調整部212によって調整された無線通信端末220の通信開始時刻を、当該無線通信端末220にフィードバックする。
【0028】
実施の形態に係る無線通信端末220は、通信希望時刻設定部221、通信希望時刻要求メッセージ送信部222(送信部)、フィードバックメッセージ受信部223(通信開始時刻通知受信部)、通信開始時刻設定部224を備える。フィードバックメッセージ受信部223は、無線通信端末220が基地局210から無線受信を行うための受信回路であり、通信希望時刻要求メッセージ送信部222は無線通信端末220が基地局210へ無線送信を行うための送信回路である。通信希望時刻設定部221および通信開始時刻設定部224は、無線通信端末220の図示しないCPU(central processing unit)がコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することによって実現される機能ブロックである。
【0029】
通信希望時刻設定部221は、無線通信端末220の次回の通信開始希望時刻(すなわち最も近い将来の通信開始希望時刻)を設定する。この設定は、無線通信端末220が現在通信を行う際に、コンピュータプログラムによって行うことができる。例えば、現在通信の時刻から所定の時間後の時刻を設定することができる。
【0030】
通信希望時刻要求メッセージ送信部222は、通信希望時刻設定部221によって設定される通信希望時刻を示す通信希望時刻要求メッセージを、無線通信端末220が通信する際に、通信データと共に基地局210に送信する。
【0031】
フィードバックメッセージ受信部223は、基地局210のフィードバックメッセージ送信部214からフィードバックされる無線通信端末220の通信開始時刻を示すフィードバックメッセージを受信する。
【0032】
通信開始時刻設定部224は、フィードバックメッセージ受信部223によって受信されたフィードバックメッセージを解析し、このメッセージで示された通信開始時刻を無線通信端末220の次回通信データを送信する時刻として設定する。また、その通信開始時刻に到達すると、通信開始時刻設定部224は、通信希望時刻要求メッセージ送信部222に対して次回通信データの通信の開始を指示する。
【0033】
無線通信端末220の通信希望時刻要求メッセージ送信部222が基地局210に送信する通信希望時刻要求メッセージは、無線通信端末220が現在の通信が完了した後に、次に送信を予定している時刻を示すメッセージである。通信希望時刻要求メッセージは、例えば図3に示すように、UMTS LTEにおけるRRC(Radio Resource Control)の接続セットアップ完了メッセージである「RRC Connection Setup Complete message」(3GPP TS 36.331 V10.0.0のClause 6.2.2参照)であってよいが、図3に示す形態に限定されない。
【0034】
図3に示す「RRC Connection Setup Complete message」において、太字は今回提案される新規な部分である。「nextTransmissionSchedule」は、次回通信希望時刻を示す情報要素である。「nextTransmissionSchedule」は、通信希望時刻「nextTransmission」 と時間幅 「allowableDuration」とから構成される。「nextTransmission」は具体的な時刻をUTCTimeまたはGeneralizedTimeで示す。UTCTimeは西暦の年を下位2桁で表示する表記法であり、GeneralizedTimeは西暦の年を4桁で表示する表記法である。「allowableDuration」は、通信希望時刻からの許容可能なずれを示す。図3に示す「(0..MAX)」は許容可能なずれの範囲を示し、本図の形態においては最小値が0,すなわち非負であることと、最大値は規定しないこととを示すが、図3に示す形態に限定されるものではなく、必要に応じて最小値と最大値とを規定してもよい。
【0035】
基地局210のフィードバックメッセージ送信部214が無線通信端末220に送信するフィードバックメッセージは、基地局210の通信開始時刻調整部212が決定した無線通信端末220が次に送信可能な時刻を示すメッセージである。フィードバックメッセージは、例えば図4に示すように、UMTS LTEにおけるRRC接続解放メッセージである「RRC Connection Release message」(3GPP TS 36.331 V10.0.0のClause 6.2.2参照)であってよいが、図4に示す形態に限定されない。
【0036】
図4に示す「RRC Connection Release message」において、太字は今回提案される新規な部分である。「RRCConnectionRelease-vaxy-IEs」は、今回提案される情報要素である。「RRCConnectionRelease-vaxy-IEs」は、基地局210の通信開始時刻調整部212で決定された通信開始時刻を示す「nextScheduledTime」と、時間幅「durationTime」とから構成される。「nextScheduledTime」は具体的な時刻をUTCTimeまたはGeneralizedTimeで示す。「durationTime」は通信開始時刻からの許容可能なずれを示す。図4に示す「(0..MAX)」は許容可能なずれの範囲を示し,本図の形態においては最小値が0,すなわち非負であることと,最大値は規定しないこととを示すが,図4に示す形態に限定されるものではなく,必要に応じて最小値と最大値とを規定してもよい.
【0037】
図5と図6とを参照し、実施の形態に係る無線通信システムにおける通信開始時刻(すなわち次回通信可能時刻)のスケジューリング方法を説明する。図5は、実施の形態に係る無線通信端末220と基地局210で実行される、無線通信端末に対する次回通信開始時刻のスケジューリング方法を示すフローチャートである。図6は基地局210と無線通信端末220の間の情報フローと処理の流れを示す情報フローダイアグラムである。
【0038】
図5の処理は、無線通信端末220において通信要求が発生した場合に開始する。無線通信端末220で通信要求が発生したことを無線通信端末220が確認すると(ステップ301)、無線通信端末220は通信開始時刻設定部224によって次回通信開始時刻が設定済みかどうかを判定する(ステップ302)。次回通信開始時刻が設定されている場合、無線通信端末220は設定済みの通信開始時刻まで通信を待機し(ステップ303)、通信開始時刻に達すると基地局210との無線リンクを確立して通信を開始する(ステップ304)。
【0039】
一方、ステップ302において次回通信開始時刻が設定されていない場合、無線通信端末220は直ちに基地局210との無線リンクを確立し、通信を開始する(ステップ304)。いずれの場合も無線リンクの確立後、無線通信端末220は基地局210に対して次回の通信希望時刻を要求する(ステップ305)。つまり、通信希望時刻要求メッセージ送信部222は通信希望時刻要求メッセージを送信する。基地局210の通信希望時刻要求メッセージ受信部211は、無線通信端末220の通信希望時刻要求メッセージ送信部222から通信希望時刻要求メッセージを受信する。通信開始時刻調整部212は、その通信希望時刻要求メッセージに示される通信希望時刻と、既に通信開始時刻が設定済みの他の無線通信端末220に設定された通信開始時刻とを参照し、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信開始時刻を調整する(ステップ306)。
【0040】
基地局210のフィードバックメッセージ送信部214は無線通信端末220に対して調整済みの通信開始時刻を示すフィードバックメッセージを送信し、然る後に通信用の無線リンクを解放する(ステップ307)。その後無線通信端末220は再び通信要求が発生するまで待機状態に遷移する。
【0041】
上記動作は、図6を用いて、次のように説明することもできる。無線通信端末220の通信開始時刻が未だ設定されていない場合、無線通信端末220で通信要求が発生したことを無線通信端末220が確認すると(ステップ401)、無線通信端末220は直ちに基地局210との間の無線リンクを確立し、通信を開始する。通信中の任意の時期において、無線通信端末220は基地局210に対して、次回に通信を開始するための希望時刻を示す通信希望時刻要求メッセージを通知する(ステップ402)。通信希望時刻の通知を受けた基地局210の通信開始時刻調整部212は、現在時刻以降に通信開始時刻が設定されている他の無線通信端末の通信開始時刻に関する情報を通信開始時刻管理部213に問い合わせる(ステップ403)。ステップ403にて問い合わせた他の無線通信端末の通信開始時刻と、ステップ402で無線通信端末220より通知された通信希望時刻に基づいて、基地局210の通信開始時刻調整部212は無線通信端末220の次回通信開始時刻を決定する。
【0042】
決定された無線通信端末220についての通信開始時刻は、無線リンクが確立されている間の任意の時期において、基地局210のフィードバックメッセージ送信部214から無線通信端末220に送信されるフィードバックメッセージで無線通信端末220に通知される。通信開始時刻の送信後の任意の時期において、基地局210は無線通信端末220との無線リンクを解放する(ステップ404)。ステップ404の後、基地局210の通信開始時刻調整部212は通信開始時刻管理部213に決定した無線通信端末220に関する通信開始時刻を書き込み(ステップ405)、一連の処理を終了する。なお、ステップ405はステップ404の前に行ってもよい。図6において、破線で囲まれた部分A(ステップ401〜405)は、無線通信端末220の通信開始時刻が未だ設定されていない場合の動作を示す。
【0043】
一方、無線通信端末220の通信開始時刻が既に設定されている場合、無線通信端末220で通信要求が発生したことを無線通信端末220が確認すると(ステップ411)、無線通信端末220は設定された通信開始時刻に達するまで待機状態に遷移する(ステップ412)。設定された通信開始時刻に達すると、無線通信端末220は直ちに基地局210との間の無線リンクを確立し、通信を開始する。通信中の任意の時期において、無線通信端末220は基地局210に対して、次回に通信を開始するための希望時刻、通信希望時刻を示す通信希望時刻要求メッセージを通知する(ステップ413)。通信希望時刻の通知を受けた基地局210の通信開始時刻調整部212は、現在時刻以降に通信開始時刻が設定されている他の無線通信端末の通信開始時刻に関する情報を通信開始時刻管理部213に問い合わせる(ステップ414)。ステップ414にて問い合わせた他の無線通信端末の通信開始時刻と、ステップ413で無線通信端末220より通知された通信希望時刻に基づいて、基地局210の通信開始時刻調整部212は無線通信端末220の次回通信開始時刻を決定する。
【0044】
決定された無線通信端末220についての通信開始時刻は、無線リンクが確立されている間の任意の時期において、基地局210のフィードバックメッセージ送信部214から無線通信端末220に送信されるフィードバックメッセージで無線通信端末220に通知される。通信開始時刻の送信後の任意の時期において、基地局210は無線通信端末220との無線リンクを解放する(ステップ415)。ステップ415の後、基地局210の通信開始時刻調整部212は通信開始時刻管理部213に決定した無線通信端末220に関する通信開始時刻を書き込み(ステップ416)、一連の処理を終了する。なお、ステップ416はステップ415の前に行ってもよい。図6において、破線で囲まれた部分B(ステップ414〜416)は、無線通信端末220の通信開始時刻が既に設定されている場合の動作を示す。
【0045】
以上、本発明をその好適な実施の形態を参照しながら詳細に図示して説明したが、請求の範囲に記載されたこの発明の区域内で、形式および細部に関する様々な変更が可能であることは当業者であれば理解できることだろう。かかる変更、代替、修正もこの発明の範囲に含まれるものであると出願人は意図している。そのような変更には下記のものがある。
【0046】
上記の実施の形態では、基地局210の通信開始時刻調整部212は、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信希望時刻と基地局210に接続可能な他の無線通信端末220の通信開始時刻に基づいて、通信希望時刻要求メッセージの送信元の無線通信端末220の通信開始時刻を調整する。これに加えて、通信開始時刻調整部212は、無線通信端末220の各々が有する通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮して通信開始時刻を調整してもよい。そのようなパラメータとしては、通信1回あたりのデータの量、通信1回あたりに要すると予測される時間、上りリンク通信のために各無線通信端末220に割り当てられるリソースの量、または通信の成功および失敗ならびに再送回数に関わる無線通信端末220の地理的環境(例えば無線通信端末220と基地局210の間の距離)がある。特に、無線通信端末相互の通信開始時刻の差異をどの程度に設定するのかは、これらのパラメータに基づいて決定すると好ましい。
【0047】
これに加えて、あるいはこれに代えて、通信開始時刻調整部212は、基地局210が有する通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮して通信開始時刻を調整してもよい。そのようなパラメータとしては、基地局210のセルにある無線通信端末220の数、または基地局210の処理速度がある。特に、無線通信端末相互の通信開始時刻の差異をどの程度に設定するのかは、これらのパラメータに基づいて決定すると好ましい。
【0048】
上記の実施の形態において基地局210に設けられた通信開始時刻調整部212および通信開始時刻管理部213のいずれかまたは全部を、基地局210とは物理的に離れた別個の装置に設けてもよい。
【0049】
基地局210および無線通信端末220において、CPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array),DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
上記の変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
100…IPネットワーク、101…無線アクセスネットワーク制御装置、102…アプリケーション制御サーバ、110…コアネットワーク、200…無線アクセスネットワーク、210…基地局、211…通信希望時刻要求メッセージ受信部、212…通信開始時刻調整部、213…通信開始時刻管理部(通信開始時刻保存装置)、214…フィードバックメッセージ送信部(通信開始時刻通知部)、220…無線通信端末、221…通信希望時刻設定部、222…通信希望時刻要求メッセージ送信部(送信部)、223…フィードバックメッセージ受信部(通信開始時刻通知受信部)、224…通信開始時刻設定部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信端末と、前記無線通信端末と無線通信を行う基地局を備えるネットワークとを備える無線通信システムであって、
前記ネットワークは、
前記基地局に接続している少なくとも1つの無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と前記基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻が他の前記無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻を調整する通信開始時刻調整部と、
前記通信開始時刻調整部によって調整された通信開始時刻に基づいて、前記無線通信端末が通信を開始する時刻を設定する通信開始時刻設定部と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記通信開始時刻調整部は、前記無線通信端末の各々が有する、通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮して前記通信開始時刻を調整することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記通信開始時刻調整部は、前記基地局が有する、通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮して前記通信開始時刻を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線通信端末は、前記無線通信端末に設定された通信開始時刻に至るまでは、前記無線通信システムにおけるあらゆる通信を待機することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線通信端末のために前記通信開始時刻調整部が調整した通信開始時刻を保存する通信開始時刻保存装置を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記基地局は、
前記通信開始時刻調整部と、
前記通信開始時刻調整部で調整された前記無線通信端末の通信開始時刻を前記無線通信端末に通知する通信開始時刻通知部を備え、
前記通信開始時刻調整部は、前記無線通信端末の次回の通信開始時刻を、現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に調整し、
前記通信開始時刻通知部は、現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に、前記通信開始時刻調整部で調整された前記無線通信端末の次回の通信開始時刻を前記無線通信端末に通知することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線通信システム。

【請求項7】
複数の無線通信端末と無線通信を行う基地局であって、
前記基地局に接続している少なくとも1つの無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と前記基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻が他の前記無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、前記少なくとも1つの無線通信端末の通信開始時刻を調整する通信開始時刻調整部
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項8】
前記通信開始時刻調整部は、前記無線通信端末の各々が有する、通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮して前記通信開始時刻を調整することを特徴とする請求項7に記載の基地局。
【請求項9】
前記通信開始時刻調整部は、前記基地局が有する、通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮して前記通信開始時刻を調整することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の基地局。
【請求項10】
前記無線通信端末のために前記通信開始時刻調整部が調整した通信開始時刻を保存する通信開始時刻保存装置を備えることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項11】
前記通信開始時刻調整部で調整された前記無線通信端末の通信開始時刻を前記無線通信端末に通知する通信開始時刻通知部を備え、
前記通信開始時刻調整部は、前記無線通信端末の次回の通信開始時刻を、現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に調整し、
前記通信開始時刻通知部は、現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に、前記通信開始時刻調整部で調整された前記無線通信端末の次回の通信開始時刻を前記無線通信端末に通知することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の基地局。

【請求項12】
通信希望時刻を基地局に通知する通信希望時刻要求メッセージ送信部と、
前記基地局から通信開始時刻の通知を受信する通信開始時刻通知受信部と、
前記通信開始時刻通知受信部で受信された通知で示された通信開始時刻に、次回の通信を開始する送信部と
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項13】
前記無線通信端末に設定された通信開始時刻に至るまでは通信を待機することを特徴とする請求項12に記載の無線通信端末。
【請求項14】
前記通信開始時刻通知受信部は、現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に、前記基地局から次回の通信開始時刻の通知を受信することを特徴とする請求項12または請求項13に記載の無線通信端末。

【請求項15】
基地局に接続している無線通信端末の通信をスケジューリングする方法であって、
前記無線通信端末から受信したその無線通信端末の通信希望時刻と、前記基地局に接続可能な他の無線通信端末の通信開始時刻に基づいて、前記通信希望時刻を送信した前記無線通信端末の通信開始時刻が他の前記無線通信端末の通信開始時刻とは異なるように、前記通信希望時刻を送信した前記無線通信端末の通信開始時刻を調整することと、
調整された前記通信開始時刻に基づいて、前記無線通信端末が通信を開始する時刻を設定すること
とを備えることを特徴とするアクセススケジューリング方法。
【請求項16】
前記無線通信端末の通信開始時刻を調整することは、前記無線通信端末の各々が有する、通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮することを含む請求項15に記載のアクセススケジューリング方法。
【請求項17】
前記無線通信端末の通信開始時刻を調整することは、前記基地局が有する、通信の特徴または性能に関するパラメータを考慮することを含む請求項15または請求項16に記載のアクセススケジューリング方法。
【請求項18】
前記無線通信端末のために調整された通信開始時刻を保存することを備えることを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか1項に記載のアクセススケジューリング方法
【請求項19】
前記無線通信端末の通信開始時刻を調整することは、前記無線通信端末の次回の通信開始時刻を、現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に調整することであり、
現在前記基地局と前記無線通信端末との間で行われている通信中に、調整された前記無線通信端末の次回の通信開始時刻を前記無線通信端末に通知することをさらに備えることを特徴とする請求項15乃至請求項18のいずれか1項に記載のアクセススケジューリング方法。
【請求項20】
前記無線通信端末が通信要求の発生を確認することと、
前記無線通信端末が次回の通信開始時刻が設定済みか否かを確認することと、
次回の通信開始時刻が設定済みの場合は、前記無線通信端末が次回の通信開始時刻まで通信を待機することと、
設定された通信開始時刻に至るか、または次回の通信開始時刻が設定されていない場合に前記無線通信端末が無線通信を行う基地局との間で無線リンクを確立し、通信を開始することと、
前記無線通信端末が前記基地局に対して次回の通信を開始する通信希望時刻を通知することと、
前記無線通信端末の通信開始時刻を調整することによって調整された前記通信可能時刻を、前記無線通信端末に対して通知し、前記基地局と前記無線通信端末の間の無線リンクを解放することと、
をさらに備えることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載のスケジューリング方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−195722(P2012−195722A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57609(P2011−57609)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】